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銀河帝国攻略戦㉖～ゴーゴー暗号大作戦！？

作者：銀條彦

「さっそくなんだけど――、拉致されてムリヤリ働かされてる技術者や科学者のヒトたちを助け出しに、帝国の科学技術センターへ向かってくれないかなぁ？」
　グリモア猟兵の１人である巳六・荊（枯涙骨・f14646）曰く、先に勝利したアマルテア情報艦隊から得た情報によって彼らが帝国旗艦インペリウム艦内のセンター施設で生体コンピュータに部品として繋がれ酷使されていると判明したらしい。
　中央コンピュータと通称されるそれは機械仕掛けの巨大樹を思わせる外見をしており、そこに鈴なりの果実のようにぶらさがるモノはすべて直結ユニットによって自由を奪われた技術者や科学者たちだという。
「今回は荒事いっさいナシ……というか、囚われてる科学者サンたちをただコンピュータからひっこ抜くだけだともれなくあっさり死んじゃうんだって！」
　たいへんだねーと、あんまり大変ではなさそうな朗らかな口調で述べられる感想。
　ともあれ、特に優秀な技術者や科学者揃いである上にドクター・オロチの研究に携わり高度な知識や技術に接し続けてきた彼らが解放されれば、今後のスペースシップワールドの発展に大きく役立ってくれるであろうことは間違いない。
「コンピュータ前までボクがみんなをパパパッと転送させるから、そこで、コンピュータとナゾ解き勝負を１発おねがいできるかな？」
　それは唐突とも思える依頼だったが……コンピュータユニットが提示した謎を解いて、正しい解答をコンピュータへ入力する。
　安全な解除の為にはそれらの手順が不可欠なのだそうだ。
「で、コレが今回みんなに解いてきてもらう謎なんだけどー……？？？」

『NEVELESEMITEVIF』

　このたった１行のみで、他にヒントや補足説明などは全く存在しなかったらしい。
　同時に入力画面も表示された為この文字の羅列の中には何らかの意味が隠されているのは間違いない筈だが……さっぱりわかんないと荊は早々に匙を投げている。
「入力欄は全２文字だったからそれだけがヒントかなぁ。ま、みんなならきっとナゾ解きも救出も、バッチリ、キメてきてくれるってボク信じてるから！」
　だからゴーゴーとあっかるい声援とともに猟兵たちは送り出されてゆくのだった。

第1章 冒険 『中央コンピューターの謎かけ』

POW   :    総当たりなど、力任せの方法で謎の答えを出して、救出します。 SPD   :    素早く謎の答えを導き出した後、救出した人のケアを行います。 WIZ   :    明晰な頭脳や、知性の閃きで、謎の答えを導き出して、救出します。 👑3 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

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「ゴーゴー！　マッハゴーゴーゴー！　うおおー！」
　グリモア猟兵からのエールを上回るテンションの神羅・アマミ（凡テ一太刀ニテ征ク・f00889）は仲間とともに転移を果たした後も絶好調であった。
「ゴーゴー！　けいちゃんのまねっこ！　るるるもがんばるよ～」
　愛らしくルル・ル（ニンナナンナ・f01886）を飾るおリボンもこだわりのおしゃれさん角度をキープしたままひらひらと跳ねる。
　およそ敵艦内とは思えぬ少女たちのほほえましい光景がそこには繰り広げられていた。
　一方で――。
「さて、謎解きなら探偵たる僕の出番だな」
　霧生・真白（fragile・f04119）はそれこそ今にもゴーゴー踊りださんばかりの喜びを隠そうともしなかった。
　激闘続く銀河帝国攻略戦の真っ只中に、予想だにしなかった形で舞い降って来た任務。
「謎解き、そういうのもあるか」
　無性に感心した様子でぼそり呟いたヴィクトル・サリヴァン（星見の術士・f06661）はしっとりつるりと丸みを帯びた頭上遥か遠くを振り仰いだ。
　そのつぶらで深く澄んだ漆黒の視線の先では。
　――邪悪な機械樹からドクター・オロチの研究に対する奉仕の為、奴隷以下の消耗品である事を強いられたまま垂れ下がる人々の無惨な光景。
「全く……よくもこんな悪趣味な装置が思いつくな」
　毒吐かれたのは堪えるようにきゅっと閉じられた大きなシャチの口からではなく、そのずっと下。
　真白の双眸は鮮やかな真紅を揺らめかせ、いつしか、静かな怒りを噴いていた。
「犯罪者だってここまでのレベルの奴はそうそういないだろう」
　知への探求と悪への断罪、その両翼とともに天使は探偵として羽ばたくのだから。
「ええ、ええ、ひどい！　機械に直接繋ぐだなんて……悪趣味なことこの上ないわ」
　心優しきが故にハーモニア・ミルクティー（太陽に向かって・f12114）もすっかりとご立腹である。
　今回参戦の猟兵の中で一番ちっちゃなフェアリーは、一番の長身であるヴィクトルの頭の上にちょこんと留まって羽をふるわせた。
「おお……ひとのなる木。りんごーりんごーゴーゴー！」
　無垢すぎるが故にルルの感性にはまだ正邪という線引きが存在しない。キラキラと瞳を輝かせてりんごたべたくなってきたと無邪気に零す彼女を真正面から咎めることは思いの外難しい。研究者のおじさんたちだって真っ赤な林檎だって生命なのだから。
「すぐに暗号を解除して皆様の治療に入りたいです」
　囚われの者達の心身に掛かる負担を慮ったアニエス・エーラ（オラトリオの聖者・f13932）の真摯な発言がその場の空気を引き締める。
「りんごーじゃなくて、あんごー？」
「アニエスの言うとおりまずはこの暗号だ。何とか……というより確実に一回で成功させなきゃね」
　改めて使命感を燃やすヴィクトルが件の暗号文とにらめっこを開始する。

『NEVELESEMITEVIF』

「……それにしても意味が分からないね。二文字ごとに子音が入ってるから二文字で一文字表してるのかなって思ったけど最後が一文字でNでもないし」
「Eが一杯あるからなんじゃろなー、全部なくしてもNVLSMITVIF……」
「飛ばして拾っても、区切りを変えても、意味ある文にはならないようだね。NをO、EをFみたいに一定ずつずらす、のも違う」
　ああでもないこうでもないと、鯱と羅刹は、様々な知識や思い付きを総動員して推理をワイワイ進めてゆく。
「うーん、いっそひっくり返し……いや逆さ読みか、な、……って、ああっ！」
「この一文は逆さから読むものではないのでしょうか？」
　頭抱えんばかりに知恵を振り絞ったヴィクトルと、ここまでずっと無言で画面だけに集中し続けていたアニエスの閃きが正解へと辿り着いたのは、ほぼ同時。
「ふぁいぶ、いれぶん、これしってる！　そういえばね～、かけ算もおぼえたんだよ～。るるる、もしかしてかしこい～！？」
「うむ、将来有望な助手役だぞルル君。　……そう、これはまぎれもなく積算の式。さらに解り易く然るべき場所にスペースを入れようか。そうすると『FIVE TIMES ELEVEN』――つまり入力すべき答えは『５５』さ」
　ビシリとキメたポーズとともにみごと暴かれた謎。なんて簡単なんだ、ひと目見ただけでわかったと真白は余裕の笑みさえ浮かべてみせた。
　――そんな名探偵の裾をちょいちょいと引っ張ったのはハーモニア。
「もうとっくにアマミが『ああもうめんどくせー！』ってサクッと解除しちゃった」
「何イィ！？　君、ついさっきまでさんざん的外れな推理を披露していたではないかっ。『答えはゴーゴー……つまり５５か』『いやそんなはずはない！　そんなに簡単に解けてたまるかー！』って今思えばうっかりマグレ当たりさせかねなかったノリツッコミで完っ全にタダの賑わし役ロリBBAだったではないかっ！！」
「すまん、勿体ぶった」
　実はアマミは、わりと初見で、完璧に解いてしまっていたのだ。心底全力で真剣だったのに付き合わされた格好のシャチのおじちゃんはちょっと涙目。
「転送即正答入力も吝かではなかったのじゃが……それだと動画の盛り上がりがのぅ」
「ならば仕方ないな」
　知るヒトぞ知る、真白のもう１つの名はHN『Shellingford』。
　自身も動画配信者であるネット探偵はあっさりと納得してその場は収まった。
　撮れ高は正義。

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　かくして救出任務は達成されたがまだここで終わりでは無い。
　持てる技術やユーベルコードの限りを尽くして猟兵達は救出活動を進めてゆく。
「意識は……うんうん、大丈夫みたいね。どこかに痛みはあるかしら？」
　丁寧な体調チェックから始まったハーモニアの検診を元にしてきわめて無駄なく迅速に手当ての順番や割り振りが弾き出されてゆく。
「オレ達助かったのか……」
「医療機関にはもう手配が済ませてあるから安心して」
　小さくも頼もしき紫丁香花がくるくると小気味良く、文字通り、飛びまわる様子は長らく閉ざされていた人々の心と肉体を太陽の如く温めてくれた。

「つまり、りんごーはあんごーだったんだね。みんな、おうちにかえったらりんごたべて、元気になってね」
　科学者たちにとってはまったく脈絡の無い幼い言葉は、だが、意味は分からずとも自分たちを気遣い助けようとするいじらしいルルの純心をちゃんと届けてくれる。
「ようやく妻と娘にまた逢えるんだな……ありがとうお嬢ちゃん」
　ひとりひとりの手をしっかりと包みながら懸命に手当てを続ける黒きタールの感触は、不思議に心地よい。
「辛い事ならば忘れてしまったほうが良いかもしれません」
「……いいや……この先どれほど苦しくとも儂は見知った全てを余さず飲み込みこの世界の為に役立ててみせる。これまでもこれからもずっと、それが儂達の闘い方だ」
　治療のさなか交わされたアニエスととある老科学者との会話。
　未来喰らう過去たるオブリビオンにどれほど踏みつけられようとも決して折れる事なく前進する彼等の在り様は聖なる癒光にも劣らずまばゆい。
　彼ら『闘士』の往く道程に祝福あれと、女聖者は白百合と木蓮のロザリオへ、一心に、祈りを捧げる。

　さしあたっての応急手当と介抱とが一通り済んだのを見計らうタイミングで、こんな非人道的な場所とはおさらばだと真白が仲間に指示を出した。
（――まあ謎解きはそれなりに楽しめたけれどね）
　ひと知れず微笑む少女に、最後に１つやり残した用事をとアマミはいそいそ配信の準備を始めた。
「見てるかドクターオロチ、妾の頭脳をもってすればこんなもん楽勝じゃよー！　そして――見てるか銀河皇帝ッ！　妾の頭脳が貴様の野望を打ち砕くぞー！！」
　撮影地は、帝国旗艦『インペリウム』科学技術センター。
　敵地奥深くから鳴り響いた猟兵の咆哮は高らかに現在と未来の勝利を告げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年02月20日