銀河帝国攻略戦㉓~母艦ナグルファル
●沈まぬ母艦
『ダメか……』
解放軍戦艦の艦橋。
声が枯れる程、攻撃指示を出し続けた艦長は呻くように呟いた。
メインモニターに映る敵母艦は、幾度の砲撃を浴びてもずっとそこに漂っている。
『一時撤退せよ』
その姿を睨みながら出した艦長の決断に、異論は上がらなかった。
『今は退け。補給を受けて、「彼ら」の援護に回るのだ――!』
皆、判っていたのだ。
自分達の力だけでは、あの母艦は越えられないと。
「単刀直入に言おう。ちょっと敵の母艦を墜として来てくれ」
グリモアベースに集まった猟兵達に、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)はろくな前置きもなしに話を切り出した。
白城艦隊を突破した事で、戦線はインペリウム護衛軍にまで届いた。
「だけどねえ。流石に帝国旗艦『インペリウム』を守護する艦隊だ。守りが堅い上に銀河皇帝の力で自動で回復すると来てる」
特に『自動回復能力』が厄介で、その損傷回復能力が、解放軍の戦力を上回ってしまっている状況なのだ。
火力が足りない。
ならば足そうではないか。
猟兵と言う名の炎を。
「戦場は宇宙空間。敵は帝国戦闘機母艦――機体名『ナグルファル』だ」
母艦だけあって、とにかく大きい。
「そして堅いだけじゃなく火力もある。連続発射可能なビーム砲に、小型の戦闘用【帝国式兵器】を満載。兵器を回復する機構もあると来てる」
だからこそ、解放軍だけでは突破しきれなかったのだ。
だが。
「解放軍も完全に諦めたわけじゃない。艦隊の一部が、一時撤退して補給中だよ。猟兵の出撃に合わせて攻撃する為にね」
宇宙戦艦からの援護射撃を受けられるのは、期待していい。
「この戦争も、大詰めが近いからね。連戦続きの人もいるだろうけれど、もうひと頑張り頼むよ」
泰月
泰月(たいげつ)です。
目を通して頂き、ありがとうございます。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
銀河帝国攻略戦㉓、インペリウム護衛軍シナリオとなります。
OPにも記載しましたが、敵は帝国戦闘機母艦。
宇宙空間を舞台に、解放軍の戦艦からの援護射撃を貰いつつ、敵艦をぶっ壊すお仕事です。物理法則的なアレコレは余り気にしない方向で行きましょう。
執筆予定は20日(水)中です。
ではでは、よろしければご参加下さい。
第1章 ボス戦
『帝国戦闘機母艦』
|
POW : サイキックファイア
【ビーム砲撃】が命中した対象を爆破し、更に互いを【サイキックエナジーの鎖】で繋ぐ。
SPD : インペリアルレギオン
レベル×5体の、小型の戦闘用【帝国式兵器】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ : リペアアーム
【修復用アーム】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リグレース・ロディット
良い考えができる人は好きだよ。うん。援護に回ってね。……まだ皇帝の所まで行ってないからこの程度倒せなきゃだめだよね!
【POW】装備の『ドロップシャドウ』で攻撃……と見せかけてこれは『フェイント』。相手がサイキックエナジー使ってくるからさ、負けてられないね!装備の『束縛する黒』『解放する白』でサイキックエナジーを強化。UCの『サイコキネシス』で攻撃するよ。
ビームは『導きの銀』でどこからくるか予測して避けてみるね。もし、サイキックエナジーの鎖でつながっちゃったら『クライウタ』で切れるか試してみるね。だってこの鎖邪魔だもん。切れなかったら……もうこの状態で頑張るしかないよね!
(絡み・アドリブ大歓迎)
ユア・アラマート
こういう戦場はあまり経験したことがないから、少し慣れないな
まあ、動けさえすれば戦えるんだ。あまり気にせずいこう
仕事の時間だ
【属性魔法】で自身に風の魔力をまとわせて速度を強化
【ダッシュ】を使用して敵からの攻撃の的を絞らせないように高速で移動し、撹乱を行いながら進行
それでも防ぎきれなさそうな攻撃に関しては【見切り】で回避を行い自身のユーベルコードの範囲内まで母艦へ接近し
【全力魔法】【二回攻撃で】で威力を高めた無数の風の杭を、高速治癒の速度を上回るダメージを与えるように一斉に降らせる
よく効くだろう? 治している暇はないぞ
なにせ、ここにいてお前達を倒そうとしている猟兵は私一人じゃないんだからな
シキ・ジルモント
◆SPD
※アドリブ歓迎
宇宙バイクに騎乗
邪魔な帝国式兵器をまずは減らす
…が一人で壊すのは時間がかかる
戦いながら複数の帝国式兵器の索敵範囲に入り、こちらに照準を向けさせ友軍の安全を確保
バイクの『騎乗』技術と『逃げ足』の速さで敵の攻撃を躱しつつ解放軍戦艦へ援護射撃を要請
こちらに意識が向いている兵器を破壊してもらう
帝国式兵器を破壊したら反撃
修復される前に本体の空母に接近し攻撃する
ウェポンエンジン全開で加速(『ダッシュ』)
残った兵器の攻撃を警戒し、蛇行や『地形を利用』した上下移動で的を絞らせないよう移動
ビームの射出口等、装甲の薄い部分を狙って『2回攻撃』で重ねたユーベルコードで狙撃する(『スナイパー』)
シェラフィール・ディー
アドリブ歓迎
「平らげましょう。一口に」
…若干はしたなくは御座いました
皇帝との戦も進む中、敵戦力を削るためにも解放軍の援護を行います
味方より一隻高速艇を借用(もしくは乗せて頂き)一気に彼我の距離を詰め
抵抗厳しく思いますが攻撃を【見切り】、最低限の回避行動
ダメージ覚悟で、人一人取り付く程度ならば
艇が破壊されれば、その爆発も加速元として
燃え上がる制御不能の桜炎のフォースセイバー『ダムド』の【封印を解き】『滅却剣』
接近速度をそのまま利用し【鎧砕き・捨て身の一撃】
抜き打ちの刃をその力が尽きるまで母艦装甲を切り崩し続けます
…味方艦援護に猟兵の皆様方のお力もあれば、沈められぬはずは御座いません
エスペラ・アルベール
解放軍のみんなも、笑顔を取り戻すために戦ってるんだ。その邪魔をする奴は、ボクが残らず、吹っ飛ばす!
ビーム砲撃を『見切り』ながら接近、『全力魔法』での【雷鳴の叫び】で攻撃を加えるよっ
リペアアームで回復してこようとしたら、修復用アームに狙いを集中! こいつを壊せば、デタラメな回復はできないよねっ!
敵の戦闘用兵器は援護射撃で数を減らしてもらえると助かるかなっ、残党ぐらいならボクの雷に巻き込んで倒してやるっ!
自分で使う雷とはいえ、やっぱり怖いけど……っ、この世界の笑顔を取り戻せるまで後一歩なんだ、怯んでなんて、いられないっ!
リュカ・エンキアンサス
宇宙って……なんていうか、宇宙だなあ。まんまか。
いや、こうして立ってみると、星とは違うんだなって、ちょっと思った。
ともあれ、攻撃を開始する。
この銃でどれだけ攻撃がきくかはちょっとわからないけれど……。やってみよう。
なお、優先順位は修復用のアーム。そして帝国式兵器から。
流石にビーム攻撃を防ごうって気にはなれないけれども、これくらいなら出来そうだからね。
ある程度それらを封じてから、本体を攻撃する。
出来るだけ、援護するように立ち回っていこう。期待を背負ってど派手な戦闘とか、得意じゃない。
でも、決め手に欠けるようなら……どうしようね。バイクで突撃でもかまそうか。
……いや、言ってみただけ。多分。
シュトフテア・ラルカ
帝国の母艦…回復能力付きとはまた大層な物持ち出してきたですね。
でかすぎてどうにかできるとは思えぬですが…私達は猟兵。一人でもないのです。
取り巻きの露払いはお任せを。どでかいの決めちゃってくださいです。
ガジェットを巡航モードに変形させそれに牽引される形で突入するです。
UCを発動し、周囲に円を組むように配置しながら【念動力】で随行させるです。
四方八方に銃弾の雨を散らしながらも【スナイパー】し【援護射撃】を通すです。
邪魔はさせぬのです、硬い敵には火力を集中させて【二回攻撃】。ぶち抜くです。
数だけ持ってきたところでこれだけ脆いなら殲滅してみせるですよ。
道は作るのです。
※絡み、アドリブ歓迎
來米良亭・ぱん太
修復用アームを壊す目的で忍び寄ります。【野生の勘】しかないけど、お仲間が正攻法で戦ってる脇をすりぬけるとかして、ひたすら修復アームを目指す。
「やっぱ自動回復能力ってのがやっかいですからねェ。こいつがなけりゃ『解放軍』の艦にも存分に働いていただけるんでしょ?」
そこそこ接近できたらUC発動(詠唱の中身はお任せ)して【リペアアーム】を封じます。
寿命をあまり削らないうちに、お仲間の猟兵さんに修復用アーム自体を破壊してもらえるとありがたく。
自身でも壊せるよう努力しますが【ネタ帳】の衝撃波くらいしか壊せそうな武器がないもんで(こっちのダジャレもお任せ)。
※もちろんアドリブ連携ネタ大歓迎。
ワン・シャウレン
ほう、流石に母艦ともなると
今まで落として来た艦とは一味違うの。
じゃがいよいよ皇帝に手をかけようという正念場じゃ。
落とさせて貰おうぞ。
他の猟兵達とも連携協力する。
移動・戦闘共に水霊駆動を駆使し、
水の放射を推進力にも使い高速移動。
砲撃の射線は避け、
レギオンは相手せねばならぬ敵だけ水の放射も用い撃破していく。
目的は内部への侵入、中枢部の破壊じゃ。
中から壊すのが一番なのは変わらぬだろうしの。
どこまで回復するか知らぬがこちらも派手にやるとしよう。
内部の行動でハッキングや忍び足等が有効なら活用。
十分破壊出来たら長居は無用。
爆発等に巻き込まれぬよう脱出じゃな。
ガーネット・グレイローズ
帝国の母艦に立ち向かうなら、彼らの力を借りるとしよう。
【ブレイカーシップ・ブレイブナイツ】を発動、AIを搭載した小型のスペースシップを22機召喚。〈戦闘知識〉を活用してそれらに指示を与え、7-7-8の3チームに分けて3方向から攻撃させよう。標的は、敵が呼び出してくるインペリアルレギオン。数には数で対抗だ! ビームキャノンで、一撃で吹き飛ばしてやる。AI機ゆえ、敵からのハッキングに注意。ハッキング攻撃を受けた機体はまともな機体に合体させて組み込み、力付くで制御しよう。私自身も、ブラスターを使って戦うぞ。〈空中戦〉の要領で宇宙空間を泳ぐように飛行し、〈援護射撃〉で味方猟兵を支援だ。
●宇宙
星の海に、猟兵達の姿が現れる。
「宇宙って……なんていうか、宇宙だなあ。まんまか」
ゴーグルを降ろしながら、リュカ・エンキアンサス(人間の探索者・f02586)は周囲に星の輝きが広がる空間を見回し、そんな呟きを溢していた。
「こうして立ってみると星とは違うんだな」
ここに立って、身体で感じて。リュカは宇宙を実感する。
「ふむ。これが宇宙なのだな」
同様に、ユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)も慣れない浮遊感に、宇宙を感じていた。
「あまり経験した事がない戦場が――まあ、気にせずにいこう。仕事の時間だ」
経験のない戦場でも、動けさえすれば戦える。
風の魔力を自身に纏わせながら、ユアが顔を上げが先には、山か城の様に巨大な帝国の母艦――ナグルファルが佇んでいる。
「帝国の母艦……回復能力付きとは、また大層な物持ち出してきたですね」
解放軍の艦隊と戦った後とは思えないナグルファルの様子を前にしても、シュトフテア・ラルカ(伽藍洞の機械人形・f02512)の表情は、いつもと変わっていなかった。
「でか過ぎて、どうにかできるとは思えぬですが……」
淡々と呟く声にも、その言葉とは裏腹に不安を感じている様子はない。
事実、シュトフテアは何も心配していなかった。
「私達は猟兵。1人でもないのです。それに――」
シュトフテアの呟きを引き継ぐように、猟兵達の後ろから艦隊が現れる。
補給を終えた解放軍だ。
一度は撤退を余儀なくされた彼らだったが、まだ戦う意志は折れていない。
「良い考えができる人は好きだよ。うん」
タイミングばっちりに現れた艦隊の一隻の艦橋に向けて手を振って、リグレース・ロディット(夢みる虚・f03337)はナグルファルと向き直る。
阻むは帝国戦闘機母艦――ナグルファル。
対するは、猟兵と解放軍。
星々が見守る戦いが、始まる。
●幕間
母艦との会敵前。
「高速艇を一機、使わせて頂けますか? パイロットは不要です」
補給中の解放軍の戦艦に、1人のメイドが訪れていた。
「私が得意とするのは接近戦――彼我の距離を一気に詰めたいのです」
シェラフィール・ディー(オニキスロード・f03454)から訪問の理由を聞いた艦長は、しばし黙考し――。
「そう言う事ならば高速艇よりも良いモノがある」
続く艦長の提案に、シェラフィールの方が目を丸くした。
●開戦
艦隊と艦隊がぶつかれば、始まるのは砲撃戦だ。
戦場は、すぐにビーム飛び交う空間となった。
「ふむ。流石に母艦ともなると、今まで墜として来た艦とは一味違うの」
そんな空間に身を置いても、ワン・シャウレン(潰夢遺夢・f00710)はいつもと変わらぬ強かな笑みを崩していなかった。
掌から飛ばした水を推進力に自身を押しやり、飛び交う光を躱していく。
――水霊駆動。
ワンは既に、その身体に宿した水の精霊の加護を纏っている。
「舞うとしようぞ」
その言葉通り、掌から放つ変幻自在の水を推進力に、ワンは宇宙を舞い跳ぶ。
敵艦が放つ光に合わせて水を放つ。その動きに、長い金髪が翻る。
だが――優雅な動きとは裏腹に、ワンは内心もどかしいものを感じていた。
狙っているのは、撃ち合いではない。
狙っているのは母艦内部への侵入。
直接乗り込んで、中枢部を破壊しようというのだ。
「どれだけでかくなろうが、中から壊すのが一番なのは変わらぬだろうしの」
だが、見ている限り、今のところそんな隙が見つからなかった。
「ああ、もう! これじゃ中々近寄れない!」
もどかしそうな声を上げながら、エスペラ・アルベール(元気爆発笑顔の少女・f00095)が、迫るビームをフォニックブレイドで散らす。
「砲門の位置は見えたんだけど――多過ぎて!」
リグレースの右目につけたモノクル型演算デバイス『導きの銀』には、敵艦の砲門の位置の分析結果が表示されていた。
分析通りなら、機体外周に幾つもの砲門がある。
それが交互に放たれているのだ。
「次の砲撃――まずい、一気に来るよ!」
『導きの銀』に映ったこれまで以上の砲撃予測を告げながら、リグレースは自らも回避を試みる。
声を聞いた猟兵達はその場から離れたが、艦隊はそうは行かない。一瞬遅れたリグレースと艦隊を守ろうとしたエスペラが光を浴びてしまい、爆発に飲まれた。
拡散したサイキックエナジーが、鎖になって2人に纏わり付く。
「……ダメだね。これは切れない」
鎖に視線を落とし、リグレースが呟く。
この鎖は純粋なサイキックエナジー。クライウタの金色の刃で喰らう、命がない。
「だけど、手がないわけじゃない」
サイキックエナジーを使えるのは、敵だけじゃない。
「サイキックエナジー使ってくるならさ、負けてられないね!」
リグレースの指で藍と黒の薔薇が輝きを放つ。
その輝きが次第に強くなって行き――ビームの鎖がふわりと浮き上がり、リグレースとエスペラはその拘束から脱した。
●レギオン
『気をつけろ。おそらく兵器群が来るぞ!』
解放軍の艦隊から、猟兵達に警告が発せられる。
その言葉通り、敵母艦からは大量の何かが飛び出してきていた。
その数、ざっと数百体。
ビームの鎖が効かない。
そう気づいた敵母艦が放った、3回分に相当するインペリアルレギオンが、連続で放たれたのだ。質より量、と言う事だろう。
だが――この帝国兵器群に対する作戦は、既に決まっていた。
「俺はこっちだ。墜せるもんなら墜してみな!」
1台の宇宙バイクと、わざとレギオンの索敵に引っかかるように寸前を通り過ぎ、その上の猟兵が声を上げる。
シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)だ。
レギオンは形も様々。
母艦をそのまま縮めたような円盤型に、既に見た兵器もいる。
「こいつは1人で壊すには、骨が折れるな」
種類すら数え切れない兵器群を見やり、シキが呟く。
だから、1人で壊さない。
「そうだ。追ってきな」
レギオン――全てではないにせよ、ある程度の数が追ってきているのを確認しながら、シキは敢えて振り切らない程度の逃げ足で、レギオンを誘導していく。
シキの騎乗技術と、実用性を追究してカスタムしたレラの丈夫さがあってこそだ。
そして――。
「ここだ! 頼むぜ!」
シキが合図を発した直後、彼の後ろにいたレギオンを解放軍の艦隊から放たれた光が残らず薙ぎ払った。
「数で来るか。ならば、彼らの力を借りるとしよう」
宇宙空間に悠然と立ち、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は軽く片手を掲げて――告げた。
「勇敢なる騎士たちよ、今ここに集え!」
ガーネットの周囲に、小型自律スペースシップが22体現れる。
「フォーメーション7-7-8。3隊に別れた後、各隊、鶴翼に布陣。3方向より発進し、攻め立てろ」
ガーネットの声が、戦闘知識を活かして指示を告げると、すぐにブレイブナイツとレギオンの戦いが始まった。
「怯むな。数では劣るが、アレは一撃で吹き飛ぶ雑魚ばかりだ」
ガーネットの召喚したブレイブナイツは、その指示通りに3つの部隊に別れ、AIでレギオンを認識し攻撃を仕掛けていく。
だが、ブレイブナイツも無傷とは行かない。特に、弱点もあった。
ブレイブナイツの1機に、レギオンの機体から何かのケーブルが伸びていく。
「ハッキングか――想定内だ。A3機、ケーブル切断の後、A4機と合体せよ」
AI制御ゆえのリスク。ガーネットが想定していない筈もない。
ガーネットは正常な機体にあえて合体させて機能を向上させることで、さらにそれを上書きして制御権をこちらに取り戻す。
だが、合体の隙を突いて、一部の兵器がガーネットに向かっていた。
指揮官を倒そうと言うのか。
「ふん。私が弱いと思ったか!」
巨大な十字架を模したビーム砲塔デバイスを、ガーネットが構える。
放たれた光は、一撃で兵器群を跡形もなく消していた。
数百のレギオンが、シキとガーネット2人の活躍であっと言う間に数を減らした。
「脆いのです。この程度なら、数撃つまでもねえですね」
残る機体も、シュトフテアの様に射撃を得意とする猟兵達によって次々と撃ち落とされている。
「あいや、矢張り見つかっちまいますかい」
そんな中、母艦を目指して忍び寄っていた來米良亭・ぱん太(魔術落語家・f07970)の前に残るレギオンの数体がいた。
「でもまぁ、何となくこうなる思っとりました」
ぱん太の野生の勘が告げていた。準備しておけと。
だからぱん太は、慌てず懐からネタ帳を取り出し――決めていた頁を開いて、レギオンに突きつける。
右の頁に書かれたネタは――仏像がぶつぞう。
左の頁に書かれたネタは――布団がふっとんだ。
仏像がぶっ叩いて布団をふっとばしたみたいな衝撃波が走り、レギオン数体を宇宙の彼方にふっとばしていった。
「前座は終まいでさぁ」
次の妨害が来る前に、ぱん太は少し早足で母艦に向かって行った。
●追撃
「邪魔な兵器はアレで打ち止めか?」
シキの疑問に、誰も答える術を持たない。
だが――少なくとも一時、途絶えている事は確かだ。
「逃す手はねえな」
シキは宇宙バイクを反転させて、ウェポンエンジン全開に母艦へ飛び出す。
敵母艦もまだ残る砲門を開いてビームを放とうとするが、シキは加減速や蛇行、小さな宇宙の屑石も利用して、縦横無尽にレラを駆って狙いを絞らせない。
「……」
足だけでレラを駆り続けながら、シキはシロガネを両手で構えて、その銃口を逆に砲門に向けた。
並みのハンドガンであれば、まだ届く距離ではない。
しかし、放たれるはブルズアイ・エイム――瞬間、呼吸すらも止める程に集中して引鉄を引く、牛の目を射抜く精密射撃から放たれた弾丸が、敵の砲門の中心を撃ち抜いた。
そしてもう1人。
(「うん――慣れて来たね」)
全身に纏った風を足元で渦巻かせながら、ユアが滑るように宇宙を進んでいた。
その足元では、纏った風を多めに集めて渦巻かせている。
「おっと」
纏った風の揺らぎと、高い第六感で何かに気づいたユアは、風の向きを変えて瞬転。
次の瞬間、それまでユアがいた空間を、敵の放った光が撃ち抜いた。
長引かせれば、狙われるリスクは高まる。
ユアは風の勢いを強め一気にダッシュし、母艦との距離を詰める。
「さあ、捉えたよ。――荒れ狂え古の風。残るものは何も無し」
そして――星の海で、風が荒れ狂う。
ユアが魔力で起こした古の風が、彼女の周りの彼方此方で渦を巻く。
「これは良く効くぞ?」
インサイド・アクゥイロー。古い風の神格の名を冠した風の業。
ユアが降り注がせた二百を超える風の杭が、着弾した瞬間に爆風に変わって機体を揺らし、砕いていく。
「ああ。そう来るだろうな」
伸びてくる修復アームを見ながら、ユアの口元には笑みが浮かぶ。
「だが、治している暇はないぞ。なにせ、ここにいてお前達を倒そうとしている猟兵は私一人じゃないんだからな」
事実、そのアームを狙った猟兵達が動き出していた。
●リペアアーム
「そうはさせないよ!」
機体の各所から伸びてきた修復用アーム。
それを見たエスペラが、敵母艦へと近づいていく。
「こいつを壊せば、デタラメな回復はできないよねっ!」
(「自分で使うとは言え、やっぱり雷は怖いけど……解放軍のみんなも、笑顔を取り戻すために戦ってるんだ」)
エスペラの片手が、もう片方の手首にあるミサンガに触れる。
そこに込められているのは、笑顔溢れる平和への願い。今は亡き友のための。
「怯んでなんて、いられないっ!」
パチリ。
決意を口にするエスペラの掌で、小さな雷花が爆ぜる。
その背中に、壊滅したレギオンの、まだ残っていた一体が忍び寄る。
「この世界の笑顔を取り戻せるまで後一歩なんだ。その邪魔をする奴は、ボクが残らず、吹っ飛ばす!」
しかしエスペラは気づいていて、後ろを振り向かない。
「ボクの前で、笑顔を奪うなぁぁぁ!!!」
銀河帝国に感じる怒りを、雷鳴に変えて叫びと共に解き放つ。エスペラ本人にも制御出来ない雷撃の嵐が宇宙に雷火と迸り、背後の兵器も焼き尽くす。
そして母艦が伸ばしていた修復アームの大半が、避雷針代わりとなって雷に焼かれ、炭化して崩れ落ちていった。
「うひゃあ。何か不気味な動きしてますなァ」
ぱん太が母艦に辿り着いた時、修復用アームが何本も伸びてせっせと動いていた。
――畳んだ扇子でつんつん突いて、それ自体が攻撃してこない事を確かめる。
そして、ぱん太は――正座した。
落語家としてネタを放つのならば、これが正しい姿勢である。
「下手な洒落を言いなしゃれ」
そして、ぱん太は渾身のネタを言い放った。
しかもただ聞かせたのではない。
ネタ振り込みである。
『――……リカイフノウ――リカイフノウ――リカイ――ガピー』
なんと、その急なネタ振りで修復用AIが機能不全を引き起こした。もはや回復どころではなくなっていた。と言うか、AIだったのか。
「やっぱ自動回復能力ってのが厄介ですからねェ。こいつがなけりゃ『解放軍』の艦にも存分に働いていただけるんでしょ?
ま――これあっしも疲れるんですけどねェ?」
動きを止めたアームをへし折りながら、寿命があまり削れない内に決着つくといいんですが、と独り零した。
右舷側のアームは、エスペラが。
左舷側のアームは、ぱん太が。
それぞれ大半は無力化したが――それでも全てではない。
そして全てではない以上、残るアームが壊れたアームを直そうと伸びていく。
「さて。ちょっとやってみる」
そんなアームを狙ってリュカはいつもの愛銃、灯り木の銃口を向ける。
耳慣れた銃声を響かせて放たれた弾丸は、いつもと変わらない弾道を描いて狙った修復アームを撃ち抜いた。
「この銃でどれだけ効くかと思ったけど、いけるな」
見事に撃ち抜いた感慨も表情には出さず、リュカは灯り木を片手に構えたまま、残る片手でアルビレオのハンドルを握って発進させた。
(「こんな風に、星の中をアルビレオに乗る日が来るとはね」)
何度も見上げた夜空とこの宇宙は、同じものではないのだろうけれど。
そんな事を考えながら、リュカはアルビレオを操りながらり木の銃口を向けて、無表情に淡々と撃っていた。
放たれる弾丸はこの宇宙では夜明けの星よりも小さな瞬きに過ぎないが、リペアアームを確実に壊していく。
「でも、決め手にかけるかな……?」
もう何本撃ち壊したかそろそろ数えるのが面倒になった所で、リュカは表情を変えずにふと呟いた。
着実に戦力を削っている。それは間違いないが――。
「……突撃でも、かまそうか」
何となく口をついて出ていた言葉を、頭を振って否定する。
「期待を背負ってど派手な戦闘とか、得意じゃないよね。今まで通り、援護するように立ち回って行こう」
そしてリュカは、再びアルビレオを発進させた。
なお、もしもリュカがこの戦いで瀕死の重傷を負って戦場の亡霊が現れていたら――亡霊は突撃かましていたかもしれない。
決め手にかける。
リュカが感じた懸念は、確かにその通りだった。
だが、趨勢は明らかに猟兵達に傾いていた。ナグルファルには最早、切り札はなく――猟兵達には、まだ切り札を温存している者がいるのだから。
そして、それは間もなく放たれる。
●母艦ナグルファル
「む。まだ取り巻きを残していたですか」
再び、敵母艦から放たれるレギオン。
それを見たシュトフテアが、面白くなさそうに呟く。
「くろう君、行きますよ」
シュトフテアがそう告げると、肩に止まっていたふくろう型のガジェットが――突然変形した。元々メカメカしかった外見がさらにゴテゴテと変わっていく。
「取り巻きの露払いはお任せを」
告げて、シュトフテアは翼を広げたふくろうの様な巡航モードになったくろうくんに掴まって、レギオンへ突っ込んでいった。
散開する前に、一気に片をつけるつもりだ。
「脆いのを数だけ持ってきたところで――殲滅してみせるのです」
ふぉこんくん。
すかーれるちゃん。
熱線と弾丸。2つの異なる銃を幾つも複製し、それを全て念動力で操り自分の周囲に随行させながら、レギオンの只中へ。
「数撃ちゃ当たるです。蜂の巣にしてやるのです」
ツルベウチ。
シュトフテアが四方八方に向けた銃口から、熱線と弾丸が雨と降り注ぐ。
数撃ちゃ当たる――そうは言いつつも、シュトフテアのスナイピングは硬い個体には熱線を、対ビーム装甲を持つ個体には弾丸と、撃ち分ける事が可能になっていた。
瞬く間に、レギオンが数を減らしていく。
「道は作ったのです――どでかいの、決めちゃってくださいです」
複製を維持する余力もなく、浴びた反撃で傷だらけになりながら、シュトフテアが後ろに告げると――解放軍の艦隊から轟音が響いて来た。
『いまだ! 対艦宇宙魚雷弾――射ェ!』
解放軍戦艦が飛ばす、射撃指示。
その巨大さ故に、弾数が限られる最大のミサイル兵器が艦首前方のミサイルポッドから放たれ――艦首に立っていたシェラフィールがそれに跳び乗った。
「成程、高速艇より速いですね。乗り心地は最悪ですけれど」
巨大ミサイルの上に立ったシェラフィールは、前に出した足にぐっと体重をかけた。ミサイルの機首が下がった直後、敵の放った光がさっきまでいた空間を薙いだ。
既にビーム砲門の大半が破壊され、レギオンも蹴散らされた。
今なら、こんな操縦機能すらない『乗り物』で取れる最低限の回避行動でも、充分距離を詰める事が出来る。
「二度は通じない手でしょうね――よろしい。平らげましょう。一口に」
覚悟を決めて封印を解いたシェラフィールの掌から、桜色の炎が立ち上る。
どの道、今から使うのは一撃限りの切り札(エクセレント)だ。
だからまだだ。もう少し、距離を詰めなければ。
小型兵器の残骸を避けようともせず、シェラフィールはミサイルの速度で敵に迫る。
僅かに残ったレギオンが追いかけるが、ぱん太のネタ帳の衝撃や、リュカの放った弾丸に撃ち落されていた。
「光刃接続可能時間0.78秒――ダムド、最大出力です」
揺らめいていた炎が、桜色の光剣と化す。最大出力のフォースの刃。この形を保っていられる時間は、僅かだ。
だが、捨て身の一太刀を浴びせるには、十分な時間だ。
「滅却剣!」
ミサイルから飛び降りたシェラフィールが、抜き打った桜光の剣を敵艦の装甲を砕いて突き立て、勢いそのままに滑らせる。
(「味方艦の援護に、猟兵の皆様方のお力も合わせたのです。沈められぬ筈は御座いませんっ!」)
維持限界直前、シェラフィールは斬れると信じて光剣を振り抜く。その衝撃が、ナグルファルの頭から尾までも真っ直ぐに斬り抜けた。
だが――だが、だ。
ナグルファルは、真っ二つに切り裂かれて尚、戻ろうとしていた。
敵艦の修復能力は、リペアアームのみにあらず。
その機体に帯びた銀河皇帝の力も、それを助けている。とは言え、流石にこれは瞬時に直る筈もない。だが、放っておいて力尽きるとは限らない。
「これは良いのう。使わんなら、わしが借りるぞ」
そこに響くワンの声。
シェラフィールが乗り捨てたミサイルに、いつの間にか乗り移っていた。
そのまま水を放ち軌道を変えて、目指すはまだ真っ二つにな敵艦中枢、奥深く!
「ここまでやっても回復するか。なら、わしも派手にやるだけの事じゃ!」
周囲に放った水をそのままにせずに渦巻かせ、自身とミサイルを守る壁にしながらワンは中枢目指して突き進む。
「時間かかったけどね……やっと奪えたよ。これ。だから返すね」
そこに、リグレースが鎖片手に現れる。
ビーム砲撃で放たれたサイキックエナジーの鎖。その操作権全てを、リグレースは『束縛する黒』と『解放する白』で高めたサイキックエナジーで奪い取っていた。
「こんな鎖で――僕達の邪魔をするな」
奪い取った鎖にドロップシャドウの影も鎖と変えて束とし、敵艦に叩き付ける。
戻ろうとしていた敵艦が伸ばしていた金属が、ぶつりと切れた。
「騎士たちよ! 全合体せよ!」
ガーネットが残るスペースシップ全てを、1つに合体させる。
「突っ込め!」
ガーネットの指示で、最早小型機とは言えなくなった機体が戻ろうとする敵艦の間に楔と打ち込まれた。
「これ以上、何もさせないっ!」
エスペラも恐怖を押し殺し、雷鳴の叫びを放って戻ろうとする機体の動きを阻む。
そして――。
「見えたのじゃ!」
ワンが中枢に到達する。その時既に、中枢部は傷つき光を失っていた。切断されたような状態から見て、シェラフィールの一撃はここまで届いていたのだ。
ミサイルは、おそらくもう必要ない。だが――念には念を。
「確実に墜とさせて貰うぞ。いよいよ皇帝に手がかかった、正念場じゃからの!」
ミサイルを蹴って飛び降りると、ワンは水を槍の様に放った。放ち続ける。水の勢いに乗って、機体の外へ。急げ。爆発よりも早く。
その時、仄かに花香る風が宇宙を舞った。
「――荒れ狂え古の風」
ユアが外から放った風の杭が爆ぜて荒れ狂う。
風によって宇宙の奥へと押しやられる巨大な機体の中から飛び出してきたワンに、どこからか伸びてきたワイヤーが絡みついた。
「離れるぞ! 口閉じてろ!」
シキが片腕からワイヤーを伸ばしたまま、レラを急発進させ、その場から離脱する。
そして完全に力を失った母艦ナグルファルは、猟兵達の見ている前で、2つに分かたれ崩れてゆく。その巨体の中から光が溢れ出し――宇宙に大きな爆発が起きた。
インペリウム護衛軍。
その一角を為すナグルファルは、ここに撃沈されたのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴