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銀河帝国攻略戦㉖~煌らかなるエニグマ

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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「もう知っている方もいらっしゃいますでしょうか。戦争の成果により、銀河帝国に囚われている技術者や研究者の所在が確認されました。救出のため、皆さんの力をお借りしたいのです」
 集まった猟兵たちを見回して、プルミエール・ラヴィンス(はじまりは・f04513)は話を始めた。

 囚われた人々は生体部品としてコンピューターに繋がれている。
 彼等を救う方法は、コンピューターが提示する問題に答えるしかない。
 問題に答えず、コンピューターを破壊したり、繋がれた彼等を無理やりコンピューターから引きはがせば、脳にかかる負荷に耐えきれず死亡してしまうのだ。

「どうか、彼等を助け出すために皆様のお知恵をお貸し下さい」
 プルミエールは深く頭を下げると、移転の準備に移った。


 帝国旗艦インペリウムの科学技術センター。

 転移を終えた猟兵の前には、無機質な金属塊の大樹がそびえ立つ。
 金属部品の組み合わさったふとぶとしい枝を広げ、幹の表面を覆うケーブルはもつれ合いながら、血管のように張り巡らされている。息苦しさを感じるような重厚な空間の中、重たく震えるような動作音だけが、休みもなく鳴り続けていた。
 幾つも生え伸びた金属の枝先から、人が収まる程大きさのコンピューターユニットが幾つもぶら下がっている。
 そう、その中に人がいるのだ。
 中央コンピューターに、技術者や研究者は生きたまま繋がれている。
 ユニットに組み込まれ、ただの部品として、思考を支配され、脳は効率よく強制的に休むことも許されず、今この時も銀河帝国の研究に利用され続けているのだ。

 操作パネルに問題が表示された。

 三人のクリスタリアンにそれぞれ尋ねた。
 貴方達の体の事を教えてほしいって。
 Aは「私はNaAlSi2O6」
 Bは「ボクはZrSiO4」
 Cは、硬い声で言った。

 さて、Cはなんて答えたのかな?


鍵森
 ご覧頂き有難うございます。鍵森と申します。
 こちらは謎を解き、囚われた科学者を救出する依頼です。


 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。


 推理をするプレイングや、救出者達への対応などがあれば嬉しいです。
 皆様のご参加を心よりお待ちしています。
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第1章 冒険 『中央コンピューターの謎かけ』

POW   :    総当たりなど、力任せの方法で謎の答えを出して、救出します。

SPD   :    素早く謎の答えを導き出した後、救出した人のケアを行います。

WIZ   :    明晰な頭脳や、知性の閃きで、謎の答えを導き出して、救出します。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

違法論・マガル
なるほど、回答者がクリスタリアンなのか。
となればその宝石を構築する化学組成の事を指しているのかもしれないな。
単純に考えるならAがジェイド、Bがジルコン。硬い声から連想して硬い宝石なら無難に金剛……ダイヤモンドを指しているように思える。
ダイヤモンドは炭素の集まり、つまり回答者と同じ名前の「C」の一文字になるが……パスワードがたった一文字っていうのはセキュリティ的にあんまりよろしくないんじゃないのか。
おまけに画面にパスワードがでかでかと書かれていることになる。本当にこれで合ってるのか?

大丈夫なのか銀河帝国……不安になってきたな……。
まあいい、合っているなら僥倖だ。早く技術者や研究者を解放しよう。


文月・ネコ吉
全く、悪趣味なモノを作りやがるぜ。
(何とか救出の力になれると良いが)

■解答
AのNaAlSi2O6は硬玉、BのZrSiO4はジルコンの化学式だな。
クリスタリアンの体の事を聞かれたから、それぞれの宝石の化学式について答えてる訳だ。
そして問題のCについてだが、硬い宝石といえばやっぱりダイアモンドだろうか。
化学式はそのものズバリの『C』だしな。
つまり答えは【C】となるが、さて合ってるだろうか。

■救出時
研究者が枝から降りる際に落下で怪我をしない様に支え…ようとするも、転んで下敷きになったり?
それはそれで良いクッションだけど、ええと何て誤魔化そう(汗

無事を確認して安全な場所へ移送する

※合わせやアドリブ歓迎


ヌル・リリファ
【WIZ】

マスターなら捕まってはないとおもうけど、それでも可能性がすこしでもあるならわたしはたすけにいく。
わたしはマスターの人形だもの。
それに、マスターみたいな優秀なひとたちをこんなふうに利用するのは許せないっておもうから


きっと鉱物についていってるとおもう。
硬いこえだから、Cさんは硬い鉱物じゃないかなぁ。
硬い鉱物といえばダイヤモンドだよね。そして、ほかのひとは化学式でこたえてる。
だから、その化学式でC、かなぁ?

たすけられたら、まずはマスターがいないことを確認する
それでちょっと安心したら、お水をわたしたり、治療が必要なひとをはこんだりするよ

比較的簡単な言葉は平仮名、難しい言葉は漢字でお願いします



 猟兵達は操作パネルに表示された問題を読み、謎解きをはじめた。

「なるほど、回答者がクリスタリアンなのか。となればその宝石を構築する化学組成の事を指しているのかもしれないな」違法論・マガル(有耶無耶・f03955)が呟く。

 クリスタリアンは、スペースシップワールドに存在する人型の鉱石生命体だ。少数民族ではあるものの、猟兵として活躍する者もいるためその存在を知る者も多い。
 ならば、回答者AとBが答えた文字列の意味も想像がつく。

「うん。わたしもきっと鉱物についていってるとおもう」ヌル・リリファ(出来損ないの魔造人形・f05378)も頷きながら同意した。
「AのNaAlSi2O6は硬玉、BのZrSiO4はジルコンの化学式だな」
 悪趣味極まりない中央コンピューターの有様に眉をひそめながら答えたのは、文月・ネコ吉(ある雨の日の黒猫探偵・f04756)。

 硬玉は翡翠やジェダイトの名も持つ鉱石、ジルコンも同じく鉱石だ。
 ならばCは。

「硬いこえだから、Cさんは硬い鉱物じゃないかなぁ」
「硬い宝石といえばやっぱりダイアモンドだろうか」
「ダイアモンドは炭素の集まり、つまり回答者と同じ名前の『C』の一文字になるが……」

 さて、Cはなんて答えたのかな?
 問題の最後はこう締めくくられている。

 Cの正体がダイアモンドのクリスタリアンであるならば、A、B、と同じようにCも化学式で答えるはず。
 したがって猟兵達は『C』が答えだと導き出した。

「……パスワードがたった一文字っていうのはセキュリティ的にあんまりよろしくないんじゃないのか。おまけに画面にパスワードがでかでかと書かれていることになる。本当にこれで合ってるのか?」
 マガルの訝しがる様子に、ネコ吉の片眉が上がる。
「まあそう言いたくなる気持ちは解るが、研究者を助けるにはパスワードを答える以外の方法はないらしいからな。やってみるしかないだろう」

 ネコ吉は手を伸ばし、操作パネルを叩いてパスワードを入力した。
 操作パネルからファンファーレの音が鳴り、画面がブラックアウトする。その変化に緊張が走ったのも束の間。
 うなるような機械音がして、床や天井が振動を始める。機械仕掛けの大樹が、その実を地上へ降ろそうとしていた。

「大丈夫なのか銀河帝国……不安になってきたな……」
 大樹の動きを見上げながら。あまりに呆気なくて、何か裏があるのでは勘ぐりたくなるほどにマガルは違和感を覚えていた。
「まあいい、合っているなら僥倖だ」

 見えない場所で歯車が動き出し、轟音を立てている。
 昇降機のような動きで降りてくるコンピューターユニットは三つ。
 ネコ吉は真っ先に駆け寄り、安全に降りてくるか確かめながら下で待ち受けた。
 人が放り出されるようにことがあれば、その身で受け止める覚悟だったがどうやらその必要はなさそうだ。

 ヌルもネコ吉とは別のコンピューターユニットへと駆け寄った。
 彼女がここへ来たのは、捕まった人を救うため。
 そして、確かめるために来た。
 マスターはすごいひと、だから。
 もしかしたら、ここにいる研究者の人たちのなかにマスターもいるかもしれない。
 マスターは、天才だから。
 マスターなら捕まってはないとおもうけど、それでも可能性がすこしでもあるならわたしはたすけにいく。
「わたしはマスターの人形だもの」
 ヌルは一縷の望みを求めるように足を踏み出す。


 床に降ろされたコンピューターユニットは棺桶のようにも見えた。
 はぜるような音を立てて蒸気を排出しながら、一つ目のコンピューターユニットの扉が開いた。中にいた人影が、体をつなぐコードをまだ残したまま、這うように出てこようとする。コンピューターからの接続を外されたばかりで、思うように動かないのか。体の動きがぎこちない。
 緑色に煌めくその髪の色を見て、猟兵達は気がついた。
 そこにいたのは、硬玉のクリスタリアンだ。
 混乱しているのか、開口部から這ったまま身を乗り出して床へ落ちそうになっている。
「落ち着け、急に動くな!」只ならぬ様子を感じ取ったネコ吉は叫びながら、その体を支えようと両手を広げて抱きとめた。
 体格差もあり、ほとんど下敷きのようにされたネコ吉だったが、その温もりと柔らかな感触に救い出された事に気がついたのか、硬玉のクリスタリアンは、舌をもつれさせながら必死に言葉を紡ぐ。
「な、かま、が……まだ……捕まって、いるんです」
「仲間? ……まさか」

 残りのコンピューターユニットの扉が開く。
 中から現れた二人目もクリスタリアンだ。猟兵達は思わず互いに目を見合わせた。
 二人目はジルコン。そしてやはり三人目は、ダイアモンドの輝きを持つクリスタリアンだ。

「あの問題はこの人達になぞらえて設定されてたって事か?」
 ネコ吉は硬玉のクリスタリアンを介抱しながら顔をしかめた。
 スペースシップワールドの種族である彼等がここにいること事態はありえないことではない。けれど、この三人が一同に集められていたのは偶然ではない筈だ。

 コンピューターユニットの扉が開く瞬間、ヌルは迷い子のような目をしてその様子を見た。けれど思っていた通り、現れた人達はマスターではなかった。
 そのことに安心して……けれどほんの少しだけ、胸の片隅に小さな穴があくような気持ちを感じながら、ヌルは救出された人の側へ寄って座った。
 ジルコンのクリスタリアンは、信じられないような事がおこったというような様子で、ぎこちなく手を動かし、視線をさまよわせている。
「うごく……体が、やっと……」
「うん、もう大丈夫だよ」
 震える手をヌルは自分の両手でやさしく包んだ。
「たすけに来たよ、だからもう大丈夫。ほかの人も無事だよ」
 ヌルの言葉に勇気づけられて、クリスタリアンの顔に安心したような微笑みが浮かぶ。
 よかった。とヌルも思った。
 マスターみたいな優秀なひとたちを助けることができた。

 ああ、でも。
 マスターはどこにいるんだろう。
 どうしてもその思いは残っている。


 救出者の手当は他の者に任せて、マガルはクリスタリアン達が閉じ込められていたコンピューターユニットを調べていた。データやくわしい情報は調べられないが、ざっと見た目だけを確認する。
 中の様子を一目見ただけでも、機械仕掛けの大樹と同じように、これがいかに残酷で小賢しい人物によって作られたものか伝わってくるようだった。
 救出したクリスタリアン達の言葉、侵入者に対して無防備にすら感じられるこの状況。
「……そういう事か」マガルは忌々しげに呟いた。

 生体コンピューターだった彼等は、思考を奪われていた。
 だが、それでも微かに自我を取り戻す瞬間があったのだとしたら。
 わずかな希望があれば、叶わぬと知っていてもその手を伸ばそうとするだろう。
 いやでも自分が何者かを思い出させるような問題。わかりきったパスワード。
 必要なのは、たった一文字。
 たった一文字だけだ。
 彼等は外部からの操作でしか解放されないように仕組まれていた。
 指先一つで事足りる操作さえ出来ない身体を呪い、声なき苦悶の叫びを上げながら、中央コンピューターの内側で、彼等はなんど絶望したのだろう。

 そこにあるのは這い上がろうとする者を蹴落とすような純然たる悪意。
 だが。掌の上で弄ぶような事をしておいて尚、この施設の状況は、彼等に対する執着がまるで感じられない。
 マガルはそこに違和感を覚えていた。
 いや。ほんとうは、すでに理解していたのかも知れない。
 その先に悍ましい悪意しかないと解っていながらも、マガルは一つの結論に辿り着く。

 何故だ。頭の中でそう問えば。
 推理が作り上げた架空の犯人像が、想像の中で輪郭を持つ。
 どうしてそんな必要があるんだい? とそれは答える。

 囚われた科学者達は、その頭脳を利用された。
 生み出された研究は数知れないだろう、銀河帝国の急激な発展は彼等無しではありえない。
 だからどうした? イメージの中でそれは笑っている。
 彼等は部品だ。ネジ、歯車。便利だけれど、ありふれて、換えの利く道具。そんな物を、手厚く丁寧に守ってやる必要があるのかい。欲しければどうぞ持っていきなよ。

 侮辱でしか無い。
 囚われの身となり無理やり利用されてきた人々を、命がけで此処までの道を切り開いた者達を、踏み躙るような胸の悪くなる答えだ。


「全く、悪趣味なモノを作りやがるぜ」
 そう言ったのはネコ吉だ。
 この部屋にある物は、まるで残留する思考を読み取ろうとする者の為に、わざと仕掛けているように思える。
 裏の裏まで読もうとすればするほど、深く昏い闇がそこにある事に気がつくように。

 そうして脳裏に浮かんだものも全て憶測でしかない。
 どこまでも、悪趣味だ。
 深く被ったキャップの下で、マガルはひっそりと息を吐いた。


 ただ一つ確かな事は、自由の身となり無事と再会を喜び合う三人のクリスタリアンの姿。
 猟兵達への感謝の言葉を繰り返しながら、救出された者達は解放軍の移送船へと送り届けられるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月20日


挿絵イラスト