『TEMPEST FALOON OF LOVE!』
「ねぇソフィア? 前に戦ってくれた時の歌、何処で覚えたの?」
アリシア・マクリントックは妖精モードのまま、魔法少女マジカルソフィアへ尋ねた。
今回はユーベルコードを用いた訓練ということで、UDCアースにてUDC組織の管轄する訓練場でトレーニングをしている。
そこでアリシアは気になっていたことを思い切ってソフィアへぶつけてみたのだ。
「ほら、ソフィアって……ずっと私の実家にいたはずでしょ? そういう情報ってどこから知ったのか、気になっちゃって……」
これにソフィアが愉快そうに口元を抑えてくすくすと笑う。
「ああ、これ? 実はウチ、ソフィアを探して旅をしている間、少しの間だけ他人に飼われてたことがあってね……?」
「え、待って? 他の誰かに飼われてたの?」
衝撃の事実にアリシアは羽ばたくのを一瞬忘れて墜落しかけた。
それをソフィアが掌で受け止める。
「わわ、危ない! そんなに驚くことかな? ウチが野生に戻れない事くらい、アリシアが一番分かってるはずなのに?」
「え、ええ。確かに、そうよね……狩りの経験なんて、私が飼っている間はほぼないものね。お父様がご友人方と趣味の狩りでソフィアを連れていくことはあったけど……仕留めるのは結局、大人の皆様だったものね」
「そういうことー。ウチは上空から獲物を見つけて教えるだけで、仕留めさせてはくれなかったからねー」
だけど、それが他人に拾われる要因だったらしい。
「大人しいハヤブサなんて珍しいみたいで、サーカス団の一員として拾われてね? しばらく世界中を渡り歩いてたよ! アリシアを探すついでにもなったし、そこで歌と踊りを覚えたんだ!」
「なんかソフィアが凄い経験をしてる……!」
ハヤブサは頭がいいというが、まさかこれほどとは。
人間以上の行動力を持つハヤブサに、アリシアはただただ驚愕するばかりだ。
「あれ? そういうことは……ソフィア、サーカス団を脱走しちゃったの?」
そう、ここにソフィアがいるということは、そういうことなのだ。
アリシアは慌てる。
「ソフィアが駆け付けたっていうなら……サーカス団って、まさか今、日本の横浜に来てるあのサーカス!?」
割と有名でTVのCMも放映されてるアレである。
「勝手に脱走しちゃってよかったの!?」
「あはは……今頃、ウチを探してるかも……?」
「ソフィア~!」
こうしてはいられない。
アリシアはソフィアを連れて、有名なサーカス団の元へ事情を直接話に行こうとする。
と、ここでソフィアがある提案を持ちかけられた。
その内容に、妖精モードのアリシアは今度こそめまいを起こしてポトッと地面へ落ちてしまうのだった。
――横浜・サーカス団の応接室にて。
「事情は分かりました。リュカ……失礼、うちではあのハヤブサをそう呼んでましたので」
「いいえ、お構いなく!」
団長へ受け答えしたのは、なんと魔法少女マジカルソフィア(私服の姿)であった。
ソフィアたっての希望で、自分で団長への感謝を述べたいらしい。
「リュカがそちらの飼われていたハヤブサだったなんて。人懐っこいのも納得です」
「団長さん! ウチを……じゃなかった、ソフィアを大切にしてくれてありがとう!」
頭を下げるソフィアに団長が恐縮してしまう。
「いえ、リュカは芸を覚えるのも早いし、お客様にも大人気だったんだ。でも元の飼い主の元が一番だろう」
「うん、一番だよ! ……あっ」
「ははは、それだけ断言されたら引き留められないなぁ。残念だ、稼ぎ頭の一角を失うんだからね」
「あ、あの団長さん! 恩返しというか、今日の興行、飛び入りで手伝わせて!」
唐突なお願いに団長は最初こそ目を丸くしたが、ソフィアの熱意にとうとう根負けしてしまった。
「そうか……リュカの飼い主さんの熱意、伝わったよ。それじゃ、準備は任せてくれ」
「よろしくお願いします、団長さん!」
急遽の出演を知り、小さくなった妖精アリシアは冷や汗が止まらない。
「え、本当に歌って踊るの、ソフィア……?」
そして、遂にステージが始まる……!
★
(ステージが暗転後、照明が一点を指し示す)
(光が重なった先の床から、競り上がってくる魔法少女マジカルソフィアの姿が登場!)
♪~(電子ピアノの壮大かつエレクトロニクスな前奏が流れ始める)
♪~(これは……まさかの90年代流行のユーロビート調の楽曲だ!)
♪~(高速打ち込みサウンドに合わせて、キレキレのダンスを踊りながらステージに中央へ移動!)
♪~(そして空中からマイクを具現化させて掴めば熱唱開始!)
♪感じてるか 吹き荒ぶ風
♪心音! 体温! |急《きゅ・う》・|上《じょ・う》・|昇《しょう》!
♪この声が 届くまで激唱
♪速攻! 悪を! 打・ち・|砕《く・だ》・け!
♪ほらね 青空が遠く遠く どこまでも広がっているから
♪ハヤブサのように疾く 全力を懸けていざ飛べよ!
♪助けを求める声が聞こえたなら
♪誰よりも一番に駆けつけてあげるから!
(セリフ)
「ウチに任せて♪(カワイイポーズ☆)」
♪嵐を呼べ! この歌声が届く限り!
♪熱く熱く 気持ちを高ぶらせたいなら!
♪叫べ! 愛を歌に乗せて!
♪この世界の中心で 愛が最強だから!
♪ラブ&ヴィクトリー!
(コーラス:FuUuUu~ Like the Falcon……!)
♪巻き起こして 喜びの風
♪勇気! 希望! き・ら・め・い・て!
♪力の限り 声を張り上げて
♪夢を! 掴め! 無・我・夢・中!
♪ゆこう 星が遠く遠く きらめき続けるから
♪|宇宙《そら》を目指して 全身全霊で羽ばたく!
♪いのち輝く音が聞こえたら
♪愛の歌声がきっと届くはず!
セリフ
「キミも一緒に!(カワイイポーズ☆)」
♪|雷《いかづち》よ鳴れ! この歌声が響く限り!
♪眩い光 迸らせたいなら!
♪超えろ! 愛に不可能なんてない!
♪この世界の中心で 愛が最強だから!
♪ラブ&ヴィクトリー!
(コーラス:FuUuUu~ Like the Falcon……!)
(間奏にはいると、激しいダンスを披露するソフィア!)
(うねるようなギターソロをバックに、プロ顔負けの身のこなしを披露する!)
(色とりどりの照明が乱舞し、火柱がステージの周囲に上がって観客の大歓声が上がる!)
♪大切な人を探して 遠くまで来た旅は
♪愛と正義の再会で 幕を閉じた
♪でもここからが 本当のストーリーの始まり
♪未来を守るため 今できることを 全力で進もう!
(ラスサビの転調!)
♪嵐を呼べ! この歌声が届く限り!
♪熱く熱く 気持ちを高ぶらせたいなら!
♪叫べ! 愛を歌に乗せて!
♪この世界の中心で 愛が最強だから!
♪まだ終われない!!(もう1回!)
♪|雷《いかづち》よ鳴れ! この歌声が響く限り!
♪眩い光 迸らせたいなら!
♪超えろ! 愛に不可能なんてない!
♪この世界の中心で 愛が最強だから!
♪ラブ&ヴィクトリー!
(コーラス:FuUuUu~ Like the Falcon……!)
♪ウチの歌は嵐を呼ぶぜー☆
♪TEMPEST FALOON OF LOVE!
★
曲が終わると、サーカスを観に来ていた観客は総立ちで拍手を送った!
この公演はたちまちネットで評判となり、あの歌手の素性の憶測が飛び交う!
そしてアリシアは、この状況に苦笑いするしかできなかった……。
成功
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