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第二次聖杯戦争㉒〜水晶宮殿の決戦

#シルバーレイン #第二次聖杯戦争 #聖杯剣揺籠の君

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#聖杯剣揺籠の君


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「第二次聖杯戦争への参戦に感謝します。リムは戦況を報告します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は金沢市内の地図を広げ、語り始めた。
「皆様の活躍のお陰で、ついにオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』に決戦を挑めるようになりました」
 金沢市の果てにそびえる「金沢大学」。そこに揺籠の君はいる。超メガリス「聖杯」の力を引き出した彼女の全身からは、あらゆる生命を「死の絶頂」に至らしめる「いんよくのかぜ」が吹き荒れており、その影響で金沢大学周辺は白く輝く淫欲の領域に変貌している。

「揺籠の君は『いんよくのかぜ』で死に至らしめた者から生命を吸収し、際限なく自己を強化することができます。その力が完全に解き放たれれば、数日以内に地球全土が彼女の支配下に入ると予知されています」
 オブリビオン・フォーミュラに違わぬ圧倒的な力。もしも彼女が世界の外に出る方法を手に入れれば、シルバーレインだけでなく全ての世界が「いんよくのかぜ」の猛威に晒されるだろう。その前に、何としても彼女の暴挙を止めなければならない。
「皆様が接近すれば、聖杯は猟兵を『揺籠の君を殺しうる者』と認識し、揺籠の君に『いんよくのかぜ』の放出を一時停止させます。そして催淫効果に充てていた力の全てを『聖杯武器』の戦闘力に変換し、全力で戦いを挑んでくるでしょう」
 聖杯の効果によって美しい水晶宮殿のような姿と化した金沢大学――そこにかかる陸橋『アカンサスインターフェイス』の直上が、決戦の舞台になる。揺籠の君にとってもここが自らの望みを叶える正念場であり、互いに死力を尽くしての戦いとなるだろう。

「揺籠の君が装備する聖杯武器は、あらゆる物質を引き寄せる『神の左手』、突き刺した対象に宇宙の終焉まで癒える事のない毒を注ぐ『リリスの槍』、そして射程距離無限かつ命中した対象のユーベルコードを全て奪う『聖杯剣』の3つです」
 通常のユーベルコードによる攻撃手段に加えて、揺籠の君はこれらの追加能力を駆使した先制攻撃を仕掛けてくる。リリスの槍と聖杯剣はどちらも当たれば致命傷になりかねない武器であり、神の左手の引き寄せ効果が回避をより困難にしている。
「この聖杯武器と先制ユーベルコードにどう対処するかが、勝敗の分かれ目になるでしょう」
 何かしらの対策を講じておかなければ、聖杯とフォーミュラの力の前に為す術なく倒れるのは確実。策を練った上で全身全霊を賭けてようやく勝機が見える、そういうレベルの相手だ。それでも絶対にここで勝たなければ、シルバーレインの世界に未来はない。

「シルバーレインの……いえ、全ての世界の全ての生命を守るために、皆様の力をお貸しください」
 説明を終えたリミティアは手のひらの上にグリモアを浮かべ、水晶宮殿と化した金沢大学への道を開く。
 聖杯戦争最終戦――大いなるメガリスの力を顕現した『聖杯剣揺籠の君』との決戦の火蓋が、ここに切って落とされる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回のシナリオはいよいよシルバーレインのオブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』との決戦です。

 このシナリオでは下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。

 プレイングボーナス……聖杯武器の追加能力に対処する/揺籠の君の先制ユーベルコードに対処する。

 この戦いでは揺籠の君は無差別広範囲催淫能力「いんよくのかぜ」を停止しており、代わりに3つの聖杯武器の効果が強化されています。詳細についてはオープニングをご確認ください。
 これらの追加能力と先制ユーベルコードによる攻撃に対策を講じなければ、揺籠の君を打倒するのは困難でしょう。その上で死力を尽くしての戦いが予想されます。どうか万全を期して挑んでいただければ幸いです。

 彼女を撃破することができれば、第二次聖杯戦争は猟兵の勝利です。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『聖杯剣揺籠の君』

POW   :    うずまくいんよく
【神の左手】による近接攻撃の軌跡上に【いんよくのたつまき】を発生させ、レベルm半径内に存在する任意の全対象を引き寄せる。
SPD   :    せいはいうぇぽんず
【あらゆる物質を引き寄せる「神の左手」】【癒える事なき毒を注ぐ「リリスの槍」】【対象のユーベルコード全てを奪う「聖杯剣」】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
WIZ   :    みだらなひとみ
【揺籠の君の淫靡な眼差し】が命中した部位に【淫欲に満ちた思念】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ネフラ・ノーヴァ
共闘、アドリブOK

色事は私の好む所だが、この瞳は何より血を好む。咲き乱れる血を、白を赤く染める血を。
距離が関係ないのであれば返り血を浴びるほどに近づくのみ。
降りかかる連撃は見切り、残像の技能で回避。さらにUCで加速、接近すれば動きのリズムを読みダンスをするように剣を交えよう。奴も底無しだろうが、限界突破で付き合おうじゃないか。
ここぞというタイミングで超電磁砲の一撃を放つ。さあ、血の花を咲かせるが良い。



「色事は私の好む所だが、この瞳は何より血を好む。咲き乱れる血を、白を赤く染める血を」
 その瞳を翠から煌々たる赤に染めて、ネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)はかく語る。
 穏やかな同族達の中で、闘争を求める異端な性格。その乾きを満たす今日の相手――『聖杯剣揺籠の君』に、彼女は艶やかな笑みを向けた。
「ゆりゆりは、あなたのちもあいえきもたんじゅうもいのちも、ぜんぶほしいです」
 淫欲の化身リリスの女王から、世界に破滅をもたらすオブリビオン・フォーミュラと化したゴーストの女。
 その望みは全ての世界の全ての生命。大それた願いに手が届くだけの力を持っている。恐らく、彼女との戦いは第二次聖杯戦争最後にして最大のものとなるだろう。

「さあ、いのちをください」
 揺籠の君はそう言って、3つの【せいはいうぇぽんず】を振るう。左手に装着された黄金の籠手がすっと差し伸べられると、不可思議な引力がネフラの身体を彼女の元に引き寄せる。その先で待ち構えているのは、無限の射程を誇る「聖杯剣」と、猛毒を帯びた「リリスの槍」だ。
(距離が関係ないのであれば返り血を浴びるほどに近づくのみ)
 離れていた所でどの道引き寄せられるか聖杯剣の餌食になるだけ。ならばとネフラは「神の左手」の引力に逆らわず、自分から距離を詰めることにした。迫る毒槍の穂先をじっと見極め、寸前で身を翻す――致命の刺突は白きクリスタリアンの残像だけを貫いていった。

「にげないでほしいです」
 揺籠の君はさらに攻撃を繰り出す。催淫能力を停止させて強化した3つの聖杯武器を組み合わせた、途切れることの無い連続攻撃。圧倒的な手数に加えて、どの武器も掠めるだけでも危険ときている。間一髪の向こう側に死が待っている実感――それを味わった上で、ネフラは笑った。
「雷電の如き神速こそ力……」
 発動するのは【電激血壊】。超伝導性の血紋を身に纏うことで、自身を加速させるユーベルコードだ。驚異的なスピードに加えて、相手の動きのリズムを読むことで、次々に来る攻撃を見切り、躱し、剣を交える。美しくも殺意を秘めた「血棘の刺剣」が、聖杯剣とぶつかり剣戟のリズムを奏でた。

「まあ。だんすがとてもおじょうずです」
 揺籠の君が指摘するように、ネフラの戦いはまるでダンスのようだった。何度斬り掛かっても突き込んでも、紙一重の差で躱される。水晶宮殿と化した戦場でクリスタリアンが舞い踊る様は、見惚れる程絵になっていた。
「貴殿も底無しだろうが、限界の向こうまで付き合おうじゃないか」
 既にネフラも限界などとうに突破している。一手でも読み違えれば、あるいは一瞬でも動きが遅れれば、それだけで生命を落とすスリリングな剣舞だ。交わした剣戟の数が百を超え、二百を超え――先制ユーベルコードの効果が切れる時。永遠にも思える拮抗が崩れる時はついに来る。

「さあ、血の花を咲かせるが良い」
 連撃が終了し、敵が次の行動に移るまでの、ここぞというタイミングでネフラは血棘の刺剣の切先を向ける。
 折れても再生するその刀身を弾体として、全身に帯びた電磁気力により射出する。【電激血壊】の切り札たる超電磁砲の一撃が、超至近距離から揺籠の君に放たれた。
「きゃっ……いたいです……!」
 傷ひとつなかった陶器のような肌を、棘の刃の弾丸が貫き。その中からぱっと鮮烈な血飛沫が吹き上がる。
 リリスの女王を彩る紅の花。その返り血を受けたネフラは高揚した表情で微笑むと、満足げに退いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
雑魚ならえっちでもいいんだが…強敵ならばマジに戦わねば…無作法と言うもの…

【神の左手】が放つ竜巻に向かって全速前進DA!竜巻にぶつかる前に【流体金属】君と拙者と合体!メタルヒゲマン爆誕!
逆に考えるんだ…引き寄せられちゃってもいいさと考えるんだ!むしろ勢いを利用して全力で接近できる!逃げれば|一つ《敗北》!進めば|二つ《地獄と勝利》!
そして金属の身体であれば淫気を吸わずに済む!槍の毒とやらも吸収しないでござる!
剣は流体化にてその場緊急回避!とにかく近づくんだ!

そして淫ファイトならぬインファイトに持ち込んでしまえば武器のリーチを活かせまいて!
ボクシングの時間だ!鉄の拳によるデンプシーでござる!



「雑魚ならえっちでもいいんだが……強敵ならばマジに戦わねば……無作法と言うもの……」
 普段は破天荒なノリでふざけているようにも見えるエドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)だが、本気でやる時はやる男である。発言がどこかの作品に出てきたオタク知識のもじりなのはご愛嬌だが、欲望任せに挑んで勝てる相手でないのは理解している。
「がまんしなくていいですよ。いっぱいえっちになって、ゆりゆりにいのちをささげてください」
 対する『聖杯剣揺籠の君』は、あどけない微笑みと共に誘うように左手を伸ばす。聖杯がその姿を変じた武装のひとつ、神の左手から放たれる【うずまくいんよく】が、獲物を呑み込み、彼女の御下に招き寄せんとする。

「全速前進DA!」
 どうせ逃げ切れないと踏んだか、エドゥアルトは揺籠の君に向かって自らの足で駆けていく。淫欲の竜巻にぶつかる前に、流体金属生命体「オウガメタル・Spitfire」と【Innovator】で融合。他人から見た時のヤバげな感じと引き換えに、各能力を大幅に強化する。
「合体! メタルヒゲマン爆誕!」
「おとこのこってかんじがします」
 そのセンスが理解できなかった揺籠の君は、気にせず淫欲の竜巻に彼を巻き込むが――普通なら正気を保っていられないほどの淫気に晒されても、彼は我を失わなかった。マイペースなノリと口数の減らなさはそのまま、ぐんぐん敵の元に引き寄せられていく。

「逆に考えるんだ……引き寄せられちゃってもいいさと考えるんだ! むしろ勢いを利用して全力で接近できる! 逃げれば|一つ《敗北》! 進めば|二つ《地獄と勝利》!」
 退かず、媚びず、省みずの心意気のもと、猛スピードで前進を続けるエドゥアルト。相手の武器やユーベルコードの特性を鑑みれば、むしろ下手に距離を置こうとするほうが悪手。歴戦の傭兵(自称)としての戦いのカンは今日も冴えているようだ。
「そして金属の身体であれば淫気を吸わずに済む! 槍の毒とやらも吸収しないでござる!」
「なら、けんはどうですか?」
 まっすぐ向かってくる男に合わせて、揺籠の君が振るったのは「聖杯剣」。無限の射程を誇るその斬撃に斬られた者は、全てのユーベルコードを奪い取られる。【Innovator】も解除されて生身に戻れば、それまで防げていた状態異常は一斉にエドゥアルトの身を苛むだろう。ピンチだ。

「緊急回避!」
 エドゥアルトはその場で咄嗟に身体の形状を変え、聖杯剣の斬撃を避ける。不定形な流体金属でなければ不可能な避け方だ。もはや人間としての原型を半ば失いながらも、必死に、懸命に、全力で前に前にと進み続ける。
「とにかく近づくんだ!」
 立て続けに飛んでくる斬撃を何度もギリギリで躱し、淫欲の竜巻吹き荒れる戦場の中、ついに彼は揺籠の君に肉迫する。槍や剣の間合いよりさらに近い、それこそ抱き合えるほどの超至近距離に。ニヤリと笑みを浮かべるエドゥアルトと対照的に、揺籠の君の表情が驚きに変わった。

「淫ファイトならぬインファイトに持ち込んでしまえば武器のリーチを活かせまいて!」
「むむ。こまりました」
 それぞれが必殺の性能を持つ聖杯武装も、満足に振るえなければ宝の持ち腐れ。揺籠の君は後退して距離を取り直そうとするが、エドゥアルトがそんな真似を許すはずもなく。これまでのお返しとばかりに猛攻を始める。
「ボクシングの時間だ!」
「あうっ……!? い、いたい、です……!」
 左右に上体を振ってから勢いと体重を乗せて放つ。鉄の拳によるデンプシー・ロールが揺籠の君を打ち抜く。
 クリーンヒットを貰った敵はクラクラとよろめき膝を突く――流石に一撃ノックダウンとはならなかったが、与えたダメージは決して小さくなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミヤビクロン・シフウミヤ
※アドリブ歓迎

さて、と…、ふぅ…今のままでは、死にかかってる僕の身体はもうほとんど動きませんか。まぁ、無理に数多の戦場を疾走してきた代償ですかね。ふふ…、まるで朽ちかけた黒狼だな…だが、まだだ…まだ…やれる…、ならばこそ、最後まで疾走しよう…。これが…黒狼の最後の咆哮だ!紫桜 夜雅を握り命を注入し、目を閉じて集中し、ESPバイオニューロンで反応速度を強化し激痛は激痛耐性で抑え込み、敵の攻撃を残像で躱しきったら迷うことなく禍津之黒狼の斬撃の衝撃波を何度も放ちつつ攻撃を高速移動で疾走して回避しながら接近…速度は威力、この斬撃波は痛いよ?移動しながら斬撃波で斬る斬る、何度も何度も…限界がくるまで…。



「さて、と……、ふぅ……今のままでは、死にかかってる僕の身体はもうほとんど動きませんか」
 揺籠の君の待つ金沢大学の構内に入った時には、ミヤビクロン・シフウミヤ(多重人格の壊れかけてきてる黒狼・f04458)は既に満身創痍だった。刀の鞘を杖代わりにして、足を引きずりながら歩く姿は、本来なら絶対安静が求められる重症者のそれだろう。
「まぁ、無理に数多の戦場を疾走してきた代償ですかね。ふふ……、まるで朽ちかけた黒狼だな……」
 度重なる戦闘で命と寿命を削り、肉体の大部分は「ESPバイオニューロン」に浸食され機械化が進んでいる。
 もはや身体も心もボロボロであり、そんな自分を本人も自嘲するように語る。自分に残された時間がもう長くはないことを、誰よりも彼女自身がよく理解していた。

「だが、まだだ……まだ……やれる……、ならばこそ、最後まで疾走しよう……」
 戦闘用実験体として作られた自分には、これ以外の道などありはしない。本当は戦いから離れ、人として生き直す道もあったのかもしれないが――ミヤビクロンはそれを望まなかった。身も心も完全に擦り切れる時まで、彼女は戦場で己が生命を使い切ると決めたのだ。
「きえかけのいのち、もったいないです。きえるまえにゆりゆりにください」
 そんな彼女から燃え尽きる寸前の蝋燭のような生命の輝きを感じた『聖杯剣揺籠の君』は、慈しむように手を伸ばす。左手には「神の左手」、右手には「リリスの槍」、そして背後には「聖杯剣」。三種の【せいはいうぇぽんず】を用いた必殺の連撃が、少女の生命を刈り取らんと迫る。

「さあ、行こう……」
 ミヤビクロンはこれまで戦場を共にした妖刀「紫桜 夜雅」を握りしめ、己の命を注入する。そして目を閉じて集中し、バイオニューロンの浸食と引き換えに反応速度を増強。全身に走る激痛を意志の力で抑え込みながら――かっと両目を見開くとともに、叫ぶ。
「これが……黒狼の最後の咆哮だ!」
 その瞬間、爆発的な規模の怨念と怨嗟が妖刀から溢れ出し、彼女の身体を包み込んだ。その足で地面をひと蹴りすれば凄まじい加速が生まれ、残像だけを残して敵の攻撃は空を切る。これぞ【禍津之黒狼】、ミヤビクロンに残された全てを賭して発動させた、神速のユーベルコードである。

「おんなのこがおおかみさんになりました。とってもはやいです」
 揺籠の君はなおも連撃を続けるが、反応速度と移動速度が飛躍的に強化されたミヤビクロンには当たらない。
 ユーベルコードを奪う聖杯剣も、癒えぬ毒を注ぐリリスの槍も、当たらなければ意味はない。漆黒の怨念を纏って戦場を駆ける彼女の姿は、まさしく黒狼であった。
「驚かれるのは、まだ早いよ」
 聖杯武器の猛攻を凌ぎきれば、ミヤビクロンは迷うことなく妖刀を振るう。紫色に輝くその刃は、周囲の時間を吸収することで超加速する斬撃波を放つ――貯蔵限界を超えた怨念と怨嗟、そして少女の命を乗せた一撃が、音速を超えて戦場を薙いだ。

「……速度は威力、この斬撃波は痛いよ?」
「きゃぁっ?!」
 超高速の斬撃に切り裂かれた揺籠の君の身体から、真っ赤な血潮があふれ出す。オブリビオン・フォーミュラと言えども、決して無敵でも不死不滅の存在でもない。それを証明するかのように、ミヤビクロンは移動しながら何度も追撃を放った。自分の移動速度を相乗させれば、斬撃波の威力はさらに増す。
「まだ……まだだ。まだ、やれる……!」
 何度も、何度も、何度も。体が軋み、意識が遠のきかけても、少女は攻撃を止めなかった。激痛のあまり末端の感覚がなくなっても、刀だけは手放さない。一撃でも多く、速く、鋭く、敵を斬る。それが自分の生きた証とばかりに――少女は、限界がくるまで戦場に命を咲かせ続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリュファシオン・アルティウス
…未来は消させないよ

情報収集と視力で状況と動きの癖を把握して反撃する隙を狙う

UCの連続攻撃は反射属性(属性攻撃)のオーラ防御を使用する蟲を呼んで一緒に防御する

神の左手は万能時間覇気のワイヤーを障害物に固定して引き寄せられない様にしてガンナイフの凍結攻撃の呪殺弾を喰らわせる

リリスの槍は念動力を纏ったオーラ防御で防ぎ音響弾の衝撃波で体勢を崩す

聖杯剣は念動力を纏ったオーラ防御で守りスタイリッシュ(軽業)に回避する
障害物も利用する


UC発動
同時発動UCは幽銃逆行王零と滅詩逆行王命

零は回避しながら幽銃を連射して敵に攻撃


命も回避しながら迷彩の消滅魔法弾幕で攻撃する


行こう!オーさん!零!命!
敵に総攻撃を放った



「……未来は消させないよ」
 そう言って『聖杯剣揺籠の君』をきつく睨みつけるのはエリュファシオン・アルティウス("やんきー"を目指す『時間逆行』を使う不思議な旅人・f39208)。オブリビオン・フォーミュラの野望が成就すれば、世界は正常な時を失い、全ての生命が奪われる。カタストロフという終焉を阻止するために、彼女は来た。
「みらいはいらないです。ゆりゆりがほしいものは、すべてのいのち」
 対する揺籠の君は歌うようにそう言って、3つの【せいはいうぇぽんず】を構える。その1つ、「神の左手」による不可視の引力が、エリュファシオンを彼女の元に引き寄せようとする。肉迫した先に待っているのは癒えぬ毒をもたらす「リリスの槍」、ユーベルコードを奪う「聖杯剣」、そのどちらかだ。

「生命は渡さない!」
 エリュファシオンはワイヤー状に変化させた「万能時間覇気」を水晶化した建物の柱などに固定して、引き寄せられないようにしつつ「シャドウ・ガンナイフ」を抜く。両脚と左手で踏ん張りながら、右手だけで照準を合わせトリガーを引けば、凍結効果を含んだ呪殺弾が放たれた。
「いじわるしないで、ください」
 揺籠の君は神の左手でそれを握りつぶすように防ぎ、不満げに頬を膨らませる。リリスの女王らしい蠱惑的な振る舞いだが、その言動は殺意に満ちている。近付いて来ないならばと今度は聖杯剣を構え、射程無限の斬撃を繰り出してきた。

「この程度!」
 その瞬間エリュファシオンは覇気のワイヤーを解除し、自分の身に念動力を纏わせながら回避を行う。付近の建物や壁が切り倒されていく中、彼女はそれらも利用してスタイリッシュな身のこなしで斬撃を躱してのける。
「えいっ」
 しかし固定が外れたのを狙って、揺籠の君はもう一度神の左手を使用。回避中の相手を強制的に自分の元まで引き寄せ、そのままリリスの槍で貫こうとするが――エリュファシオンは咄嗟に「瓢箪型の蟲笛」を吹き鳴らし、大量の蟲達を呼び寄せた。

「むしさんもちいさないのち。いっしょにおいしくいただきます」
 即席の盾となったオーラを纏う蟲達は、リリスの槍に貫かれて次々に散っていく。力量と武器の性能に差がありすぎて、持ち前の反射能力もあまり機能していないようだ。引き換えに、エリュファシオンの身が毒に侵されることだけは辛うじて防がれる。
「お返しだ!」
「きゃっ?」
 蟲で刺突の勢いを弱め、覇気と念動力で矛先をギリギリ受け流した彼女は、もう一度ガンナイフのトリガーを引く。今度は放たれたのは呪殺弾ではなく音響弾。至近距離で炸裂する音の衝撃波が、耳鳴りと共に揺籠の君の体勢をわずかに崩した。

「IT'S SHOWTIME! 二人の王よ! 私に力を貸してくれ!」
 この機を逃さずエリュファシオンは【幽銃逆行王零と滅詩逆行王命】を召喚。仮面を装着した双子の少女が、虚空より現れて揺籠の君に攻撃を仕掛ける。水色髪の零は膨大な魔力を込めた幽銃を連射し、ピンク髪の命は迷彩を施した消滅魔法弾幕を浴びせた。
「またいのちがふえました。おいしそうです」
 揺籠の君は崩れた体勢のまま剣と槍で身を守るが、防戦一方でさらなる隙を生む。一連の攻防で彼女の動きの癖を見抜いたエリュファシオンは、ここが攻め時だと判断し【逆行奥義・総攻撃】の発動を高らかに宣言した。

「行こう! オーさん! 零! 命!」
 零と命、そしてエリュファシオンの愛騎であるオオサンショウウオ型バイク「オーさん」が、一斉に総攻撃を放つ。ガンナイフと銃撃と魔法、そして駄目押しの突撃まで喰らわされれば、流石の揺籠の君も凌ぎきれない。
「きゃあぁぁぁ……!!」
 真っ赤な血の花を咲かせながら、吹き飛んでいくリリスの女王。聖杯と共に手に入れた膨大な力は少しずつ、だが確実に削られているようだ。まだ油断はできないが、勝算は決して低くない――冷静に状況を把握しながらエリュファシオンは気を引き締め直すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花咲・月華
やろう…朱雀!世界を壊させない!

『ああ…行くぞ』
朱雀も返事してくれた

私と朱雀は敵のUCの連続攻撃はオーラ防御で防ぐ
念のためオーラ防御と影縛りと呪殺弾の力を使う蟲達を呼び出して防御と攻撃に参加してもらう

神の左手は障害物を凍結攻撃で凍らせて氷の壁を作って引き寄せられない様にする
その後斬撃波を敵に放つ

リリスの槍は衝撃波で振動させたオーラ防御で防ぎ
反撃は爆撃の弾幕を素早く放つ

聖杯剣は反射属性のオーラ防御を纏い体勢を崩したら矢弾の雨と急所突きで攻撃する

攻撃が終わったらUC発動

これで決める!
この世の条理を超えて行く焔の槍で敵を貫く

同時発動UCは鳳凰烈火
『これで…落ちろ!』
朱雀は敵に爆焔怒号術で敵に攻撃した



「やろう……朱雀! 世界を壊させない!」
『ああ……行くぞ』
 従者にしてお目付け役である赤鬼「朱雀」を連れて、水晶宮殿と化した金沢大学に赴いたのは花咲・月華(『野望』を抱く?花咲の鬼姫・f39328)。全ての世界を守らんとするの強い意志の籠もった言葉に、相手も力強い返事で頷いた。
「おにさんがふたり。どっちもおいしそうないのちです」
 そんな二人に『聖杯剣揺籠の君』は情欲の籠もった眼差しを向け、【せいはいうぇぽんず】による先制攻撃を仕掛けてきた。まずはこっちに来てもらおうと「神の左手」を伸ばし、二人を自分の元に引き寄せようとする。

「そっちには行かない!」
 月華は妖術で付近の障害物を凍結させ、氷の壁を作って引き寄せられないようにする。そこから壁越しに振り下ろすのは巨大なマシンガンソード。鋭利な斬撃波が襲い掛かるが、揺籠の君も負けじと左手でそれをガード。
「ならゆりゆりがいきます」
 真っ白い翼を羽ばたかせて、驚くほどの速さで肉薄してきた彼女は、右手に持った「リリスの槍」で月華と朱雀を同時に貫こうとする。この槍に触れたものは宇宙の終焉まで癒えぬ毒を注がれるという――妖怪や猟兵の耐久力でも、耐えられるかどうかは未知数だ。

「当たらないで、朱雀!」
『分かってる!』
 月華は蟲達を呼び出して防御に参加させるが、リリスの槍は小さきものの生命を一蹴するが如く奪い去っていく。それでも彼らの献身のお陰で二人は防御体勢を整えることができた。振動を帯びたオーラの鎧が、槍の矛先を弾いて逸らし、致命の毒を逃れる。
「お返しだ!」
「きゃっ。うるさいです……!」
 すかさず月華がマシンガンソードのトリガーを引けば、爆撃の弾幕が揺籠の君を後退させる。爆音と衝撃に眉をひそめた彼女は、ならばと流れるような手つきで「聖杯剣」を抜き、射程を無視した渾身の斬撃を放つ――。

「……ここだ!」
 敵が大振りな攻撃を仕掛けてきたタイミングを狙って、月華は全ての妖力を身に纏ったオーラに集中させる。
 反射効果を付与されたオーラの鎧は、聖杯剣の斬撃を跳ね返し、相手を傷つけるまでは叶わなかったものの、反動で体勢を崩させるのに成功した。
「あらら……?」
 きょとんと目を丸くする揺籠の君に、リリスの槍から生き残った蟲達が攻撃を仕掛ける。彼らの放つ呪殺弾は命中すれば影縛りで標的の身動きを封じ――そこにエリュファシオンが矢弾の雨をばら撒きながら、マシンガンソードを構えて突撃する。

「うっ……!」
 柔らかそうな腹を剣で思いきり突かれると、流石の揺籠の君も痛みに呻いた。これ以上の好機を作り出すのは後にも先にも難しいだろう。体勢を立て直される前に、月華は【虹華万暁】と【鳳凰烈火】を同時に発動する。
「これで決める!」
『これで……落ちろ!』
 この世の条理を超えていく焔の槍の一撃と、鬼の力を解放した朱雀の爆焔怒号術が、一体となって敵を貫く。
 鬼の姫と従者による渾身の大技を食らった揺籠の君は、「きゃああぁぁーーーっ!」と絹を裂くような悲鳴を上げ、爆炎と共に吹き飛んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニーニアルーフ・メーベルナッハ
かつての戦いの果てに勝ち取った未来、無に帰させるわけにはいきません。
この戦い…必ず勝ちます!

神の左手による先制UCに敢えて引き寄せられる形で接近を試みます。竜巻に巻き込まれる事態だけは避けねばなりませんので、【蟲使い】で操る蟲達に引っ張らせる等して回避を。
聖杯剣は攻撃動作の軌道から「動作時点で私のいる位置に攻撃範囲が発生する」ものと推測し、其に基づいて回避行動を取ります。
槍はブレンネン・ナーゲルで防ぎ受け流すことでの回避も選択肢に。聖杯剣と槍は片方を避けた処にもう片方での攻撃がくることも考えられるので回避動作の際はそれも考慮の上で。

接近したら黒燐奏甲にて自己強化、肉薄し肉弾戦を挑みます!



「かつての戦いの果てに勝ち取った未来、無に帰させるわけにはいきません」
 |銀の雨が降る時代《シルバーレイン》を知る者の一人として、ニーニアルーフ・メーベルナッハ(黒き楽園の月・f35280)には譲れぬ決意があった。銀誓館学園の仲間達と共に駆け抜けた死と隣り合わせの青春を、こんな形でひっくり返されるなんて、認められるはずがない。
「この戦い……必ず勝ちます!」
「めらめらしてますね。ゆりゆりもこうふんしてきました……!」
 彼女の意気に呼応するように『聖杯剣揺籠の君』も傷つけられた自分の体をなぞり、高揚した笑みを見せる。
 全ての記憶や思い出を聖杯に捧げた今の揺籠の君は、ただ己の欲望と本能のままに行動する。強く輝かしい目の前の生命を自分のものにしたいという欲が、穢された「神の左手」を起動する。

「あなたもこっちにきて、えっちになってください」
 神の左手より放たれる【うずまくいんよく】の竜巻が、戦場にある全てを引き寄せていく。ニーニアルーフは敢えてそれを受ける形で接近を試みつつ、蟲笛「ヴァイス・リート」を吹いて蟲達を自分の元に呼び寄せる。
(竜巻に巻き込まれる事態だけは避けねばなりません)
 あの竜巻にも「いんよくのかぜ」と同様の催淫効果があるとすれば厄介だ。リリスの女王の淫気にあてられれば待っているのは快楽の果ての確実な死。これを回避するために彼女は蟲達に自分の体を引っ張らせ、竜巻に呑まれないようコースを変更する。

「えっちなのはきらいですか? じゃあけんでおでむかえします」
 淫欲の竜巻を避けてこちらに近付いてくるニーニアルーフを見て、揺籠の君は「聖杯剣」を振り上げる。無限の射程を持ち、斬った対象から全てのユーベルコードを奪う、この聖杯武器はかつての戦いでも見た覚えのある代物だ。絶対に当たってはいけないが、幸いにして攻撃を予測できない訳では無い。
「……今ですっ」
 攻撃動作の軌道から「動作時点で標的のいる位置に攻撃範囲が発生する」ものと推測したニーニアルーフは、タイミングを見計らって虫達と一緒に回避行動を取る。間一髪のところで斬撃が彼女のいた場所を通過し、建物の柱を代わりに真っ二つにした。

「押し通らせて、もらいます……!」
 そのまま接近を果たしたニーニアルーフは【黒燐奏甲】を発動。紅炎手「ブレンネン・ナーゲル」に黒燐蟲を浸食融合させ、攻撃力を上昇すると共に対装甲破壊能力と強化反転呪詛を付与する。挑むのは純粋なる肉弾戦、正面きっての殴り合いだ。
「かぜもだめ、けんもだめ、ならちょくせつつらぬいてあげます」
 迎え撃つ揺籠の君は「リリスの槍」を繰り出し、癒えぬ猛毒を注ぎ込もうとする。この攻撃も触れるわけにはいかないと見切ったニーニアルーフは、紅炎手の装甲で穂先を防ぎ、受け流す。だがそこに間髪入れず、追撃の聖杯剣が襲い掛かった。

「ふぇいんとです……あら?」
「ええ、読んでいました」
 片方を避けたところにもう片方での攻撃が来ることも考慮していたニーニアルーフは、紙一重の動作で聖杯剣の斬撃を躱す。連続攻撃を完全に凌ぎきられた揺籠の君が、きょとんと首をかしげた直後――カウンターの一撃が叩き込まれる。
「この一撃で、決めます……!」
「きゃんっ……!?!」
 抉りこむように鋭い黒燐紅炎手の鉤爪が、敵を切り裂き、傷口に呪詛を注ぐ。渾身の一撃を食らった揺籠の君は血飛沫を散らしつつ、ふらふらとよろめいて後ろに下がった。聖杯の力をもってしても奪えない「いのち」がこんなに強いのは、彼女にとって予想外のことだっただろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソラウ・エクステリア
よし!行くよ!

先制UCは結界術で防ぎ電撃を相手に放つ

『スゲー引力だな…』
神の左手はライズサンが念動力の鎖属性のオーラ防御で引っ張られない様に障害物に固定する

リリスの槍は結界術を反射属性(属性攻撃)と念動力で強化して防ぎ爆撃で距離を離す

『防ぎ切るわ!』
聖杯剣はエミリアーノとライズサンと僕は念動力で強度を上げてオーラ防御と結界術で守る
音響弾で反撃する

UC発動
同時発動UCはエクステリア・クロノス・ライジング
次元能力で瞬間移動して電撃で攻撃する
これでどうだ!行っけー!
時空槍の連撃を敵に放ち攻撃

『行くぜ!』
ライズサンは回避しながら斬撃波を放つ

『止めよ!』
エミリアーノはオーラ防御しながら爆破と呪殺弾で攻撃



「よし! 行くよ!」
『おう!』『ええ!』
 第二次聖杯戦争も最終盤となり、ソラウ・エクステリア(歌姫の時空騎士と時空龍の協奏曲・f38698)は決戦の舞台に勇ましく歩を進める。彼女に同行するのは二体の時空龍「ライズサン」と「エミリアーノ」。共に数々の激戦を乗り越えてきた仲間達だ。
「りょうへいにどらごん。おいしそうないのちばかりで、ゆりゆりはおなかがなりそうです……!」
 待ち受ける『聖杯剣揺籠の君』は興奮を隠そうともせずに「神の左手」を向ける。「いんよくのかぜ」を中断して強化された【せいはいうぇぽんず】の効果は、通常時の比に非ず。まさに見えざる神の手に鷲掴みにされるような感覚が三人を襲った。

『スゲー引力だな……』
「みんな、踏ん張って!」
 ソラウは結界を張って皆を包み、さらにライズサンが念動力の鎖を障害物に固定して、引っ張られないように耐える。聖杯武器の強大な力に耐えるにはこちらも出し惜しみはしていられない、三人が持てる力を出し合って防御しなければ即座にお陀仏だ。
「かみのひだりてではつかめませんか。ならゆりゆりからいきます」
『やらせない!』
 相手が踏ん張っているのを見た揺籠の君は、自分から距離を詰めて「リリスの槍」を突き出す。宇宙の終焉まで癒やされぬ猛毒を帯びた矛先が、結界を貫く――かに思われたがその時、エミリアーノが念動力で結界の強化に加わることで攻撃を弾き返した。

「こっちに来るな!」
「あらあら。もしかしてゆりゆりはきらわれてますか?」
 即座にソラウは「時空騎士銃槍」から爆撃を放って敵を押し返す。踊るような身のこなしで距離を離した揺籠の君は、そのまま流れるように次の攻撃へ。三種の武器を活用したユーベルコードの連続攻撃は、この戦いで最も彼女が披露している得意技だ。
「これならどうですか?」
『防ぎ切るわ!』
 振り下ろされるは「聖杯剣」。距離を無視した必殺の斬撃を、エミリアーノを中心にライズサンとソラウが力を合わせ、結界の強度を限界まで高める。三人のオーラをまとった結界は水晶よりも燦然と煌めき、敵の攻撃を防ぎきった。

「今度は僕達の番だ!」
 ソラウは亀裂の入った結界の向こうから銃槍を突き出し、音響弾と電撃を放つ。轟音と雷鳴が水晶宮殿化した金沢大学の構内に響き渡り、敵の聴覚をマヒさせる。「あら?」と首を傾げながら揺籠の君がよろめいた瞬間、時空騎士と時空龍達は一気に反撃に移った。
「動きを封じる時空騎士の奥義の1つ……轟雷縛天陣!」
 天より降り注ぐは轟雷の嵐。【時空騎士奥義・轟雷縛天陣】が、揺籠の君の思考と行動を一時的に封印する。
 同時にソラウは【エクステリア・クロノス・ライジング】も発動し、エクステリア家に伝わる英霊と合体して突撃を仕掛けた。

「これでどうだ! 行っけー!」
 次元操作能力による瞬間移動で距離を詰めたソラウの、電撃と時空槍による連続攻撃が揺籠の君を刺し貫く。
 ここぞとばかりにライズサンも斬撃波を、エミリアーノも爆撃と呪殺弾を放って、敵に追い打ちをかけた。
『行くぜ!』『止めよ!』
「きゃうっ……! とってもつよいです。ゆりゆりはぴんちかもしれません」
 三者三様の猛攻を凌ぎきれず、じりじりとダメージを蓄積させていく揺籠の君。その裸体を彩る血の感触に、劣勢を感じながら――それでも彼女はまだ聖杯を手放そうとはしない。全ての生命を我が物にするという欲は、その胸の内に今なお煮えたぎっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリン・エーテリオン
…行くぜ、ゆりゆり
『サイキョウデハナクサイテイデスネ!』『行こうマスター!』
ブラッドムーンとエキドゥーマも臨戦態勢である

敵の先制UCはいんよくのたつまきを衝撃波と斬撃波を纏ったオーラ防御で防ぐ

神の左手は虹神炎覇気をワイヤー(罠使い)に宮殿の柱に括り付けて引き寄せられない様にしてからヴァルカライナーの制圧射撃で攻撃

リリスの槍は念動力で強化したオーラ防御で防ぎ呪殺弾と爆破で反撃しながら距離を取りながら斬撃波を放つ

聖杯剣は反射属性(属性攻撃)を纏うオーラ防御で守り衝撃波で反撃する

『サヨナライオネル!』
ブラッドムーンは電撃の斬撃波を放ち

『ばいばーい!』
エキドゥーマは衝撃波と神罰で攻撃する

UC発動した



「……行くぜ、ゆりゆり」
 絢爛豪華な水晶の宮殿で待ち受ける『聖杯剣揺籠の君』を睨みつけ、エリン・エーテリオン(邪神龍と虹炎の神と共に世界を駆ける元ヤンの新米猟兵・f38063)は身構える。この世界に生きる生命を守るための戦いも、いよいよここがクライマックスだ。
『サイキョウデハナクサイテイデスネ!』『行こうマスター!』
 彼女の仲間である「崩壊邪神王龍ブラッドムーン」と「邪神スマホ龍エキドゥーマ」も、すでに臨戦態勢だ。
 三位一体のパワーでオブリビオン・フォーミュラを打倒する。意気盛んな彼女らの生命力を目にして、揺籠の君は陶然と笑みを浮かべた。

「ゆりゆりの『さいきょう』のために、あなたたちのいのちもください」
 揺籠の君が「神の左手」をかざすと【うずまくいんよく】が吹き荒れ、周囲にいる者を引き寄せようとする。
 エリン達は衝撃波と斬撃波を纏ったオーラで身を守り、淫欲の竜巻に呑まれまいとするが、強化された神の左手の引力はそれだけでは抗えそうにない。
「負けるか!」
 そこでエリンは「虹神炎覇気」をワイヤー状に変えて宮殿の柱に括り付け、自身を固定して引き寄せを防ぐ。
 そして生きたロケットランチャー「邪神砲龍ヴァルカライナー」を肩に担ぐと、揺籠の君目掛けて思いっきりぶっ放した。

「喰らえ!」
「きれいなはなびです」
 龍の咆哮が如き砲声が轟き、爆炎と砲弾の制圧射撃が敵を襲う。だが揺籠の君は苦もなくそれをかい潜ると、今度は「リリスの槍」による近接攻撃を仕掛けてきた。毒の滴る魔槍を防ぐために、エリンは念動力を駆使してオーラ防御をもう一段階強化する。
「あなたもつらぬいてきもちよくしてあげます」
「お断りだ!」
 オーラと念の壁で槍の穂先を逸らし、ヴァルカライナーから反撃の呪殺弾を撃ち込む。着弾した砲弾は爆発を起こし、その反動を活かしてエリンは敵から距離を取る。おまけで斬撃波も放ってやれば、揺籠の君は少しだけ嫌そうに眉をひそめた。

「ぜんぜんこっちにきてくれません。もういいです」
 そう言って揺籠の君が手に取ったのは「聖杯剣」。ユーベルコードを奪い取る射程無視の斬撃が、防御もろとも相手を真っ二つにしようと振り下ろされる。ここが正念場だとばかりに、エリン達も総力を結集させて防御にあたった。
「耐えきってやる!」
『オウ!』「やるわ!」
 三人分のオーラを束ねた反射効果つきの障壁が、聖杯剣とぶつかり合い、激しい衝撃波が周囲に巻き起こる。
 互いに全力を叩きつけた反動は、揺籠の君を少しだけよろめかせる。逆転のチャンスがあるとすれば、今この時をおいて他にはない。

『サヨナライオネル!』『ばいばーい!』
「きゃっ……?!」
 ブラッドムーンが電撃の斬撃波を放ち、エキドゥーマが神罰の衝撃波を放つ。直撃を食らった揺籠の君が吹き飛ばされた直後、エリンは邪神龍の背に飛び乗って【虹炎邪神龍槍貫通撃】を発動。虹色の炎でできた槍を握りしめ、猛然と敵に突っ込んでいく。
「ラッドムーン! エキドゥーマ! 行くぞ!」
『アヒャヒャヒャ! ジゴクノバスガイドデス!』
『ああ! 行こう! マスター! ウ……私の力見せるよ!』
 三人の力をひとつにした全身全霊の一撃は、あらゆる耐性、反射、吸収、無敵を突破して、確実に敵を貫く。
 虹炎の突撃を受けた揺籠の君は、穿たれた痛みと焼かれる苦しみを味わい、「……ッ!!」と言葉にならない悲鳴を上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
【旅神】
元が強ぇ上に、聖杯の力で超武装か。そんなに強くなって何を目指す気なんだか。
ああ、いつにも増して震えが酷いや。怖くて堪らねえ。
けど、負けられねえ気持ちもいつも以上だ!

奴さんの先制攻撃と武装は〈第六感〉を活かし〈見切る〉。詩乃の援護に自前の〈逃げ足〉と〈オーラ防御〉も重ね凌ぎきる。

第一波を防げたら、相手の攻撃を引き続き〈第六感〉で回避しつつ詩乃に〈援護射撃〉を撃ってサポート。
相手がこっちを引き寄せにかかったら、《狂気耐性》で平静を保ちつつ、カウンター気味に《針の一刺、鬼をも泣かす》で動きを止め、突破口を切り拓きに行く。
チャンスがあれば〈マヒ攻撃〉や〈武器落とし〉で妨害することも忘れずに。


大町・詩乃
【旅神】

この世界を護った銀誓館学園に敬意を表して学生服で戦いに臨みます。

先制と聖杯武器は厄介ですね。まずは凌ぎます。

第六感と心眼で攻撃を予測した上で、
結界術・高速詠唱による防御壁。
オーラ防御を纏った天耀鏡による盾受け(一つは自分、もう一つは嵐さんを守護)。
身体から発する衝撃波で攻撃受け流し。
空中浮遊で浮き、念動力で自身を動かし、空中戦・見切りで回避。
によって対応。

相手が『神の左手』で自分を引き寄せた時に、《猫招きの術》で相手も引き寄せる。
迷彩で幻惑しつつ念動力も使って加速、相手の予想を超える速度で接近。
嵐さんの援護の下、煌月に神罰・多重詠唱による雷と光の属性攻撃を籠めて貫通攻撃・急所突きです!



「元が強ぇ上に、聖杯の力で超武装か。そんなに強くなって何を目指す気なんだか」
 水晶の宮殿に座するリリスの女王『聖杯剣揺籠の君』を見据えて、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は嘆息混じりに呟く。現状でさえオブリビオン・フォーミュラとなった揺籠の君を超える強者はこの世界に殆ど居るまい。それでもなお強さを求めて世界中の生命を我が物にしようと言うのだから、まったく迷惑な話だ。
「ああ、いつにも増して震えが酷いや。怖くて堪らねえ。けど、負けられねえ気持ちもいつも以上だ!」
「はい。必ず勝って、この世界を護りましょう。銀誓館学園の皆さんのように」
 臆病風に吹かれそうになる心を勇気で奮い立たせ、毅然と相手から目を逸らさない。そんな彼と並び立つのは大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)。その身に纏う学生服は、この世界を護った学園に敬意を表しての装い。死と隣り合わせの青春を戦い抜いた者達の想いを継いで、今度は猟兵がこの世界を護る番だ。

「ゆうかんなおとこのことかわいいめがみさま。どちらもたいせつないのちです」
 慈しむような言葉の裏に隠しきれぬ肉欲を潜ませて、うっとりと微笑む揺籠の君。彼女がそっと「神の左手」をかざすと、猛烈な竜巻が発生して猟兵達を吸い込もうとする。この【うずまくいんよく】に呑み込まれれば、正気を保つことは難しい。
「先制と聖杯武器は厄介ですね。まずは凌ぎます」
 第六感と心眼で攻撃が来るタイミングを予測していた詩乃は、素早い詠唱で結界を張り、さらに巨大化させた一対の「天耀鏡」を一つは自分、もう一つは嵐の傍に浮かべて盾にする。清浄なる神気のオーラを帯びた防御壁は、淫欲の竜巻を決して通そうとはしなかった。

「きらきらのかべ。ぴかぴかのかがみ。こわしてしまうのがもったいないです」
 【うずまくいんよく】を凌がれた揺籠の君は、間髪入れず【せいはいうぇぽんず】による追撃に移行。背後に浮かんだ「聖杯剣」を手に取ると、そのサイズに見合わぬ早業で斬撃を繰り出す。この攻撃は射程無限に加え、当たれば全てのユーベルコードを奪われる。聖杯武器の中でも特に危険な代物だ。
「こいつを食らったら反撃どころじゃねえ」
 嵐は第六感を研ぎ澄ませて超射程の斬撃を見切り、詩乃の神鏡に自前のオーラも重ねて防御する。盾と剣がぶつかり合って澄んだ音色を奏で、散った火花が水晶の宮殿に反射する。敵はそれをうっとりと眺めながら、さらなる追撃を仕掛けてきた。

「まだまだあんこーるです」
 三種の聖杯武器を用いた揺籠の君の連続攻撃は止まらない。手数は多いが一撃は軽いという弱点を、聖杯武器の性能で補っている。だが、その手数も決して無限ではないと信じて、二人の猟兵は回避と防御に徹し続ける。
「がんばれよ、詩乃」
「嵐さんも、気をつけて」
 空中に浮かび、念動力で自分を動かし、紙一重の見切りで敵の攻撃を躱し、あるいは衝撃波で受け流す詩乃。
 持ち前の逃げ足を活かして宮殿の中を駆け回り、臆病さを警戒心の強さに変えて危険を察知し、回避する嵐。
 互いに警告や援護を発しあうことで、時には危ういケースもギリギリで凌ぐ。そうなれば先に焦れてくるのは揺籠の君のほうだ。

「ぜんぜんあたりません。もうすこしこっちにきてください」
 剣を振り回すのにも飽きた揺籠の君は、もう一度神の左手をかざして相手を引き寄せようとする。狙われたのは詩乃のほうだ――見えない引力が強烈に自分の身体を引っ張るのを感じると、彼女はすかさず猫の付け耳を装着し、招き猫のポーズを取る。
「こっち来るニャン♪」
 突然何を、と思うかもしれないが、これはれっきとしたユーベルコード【猫招きの術】。相手が自分を引き寄せるのに合わせて、こちらも相手を引き寄せるつもりだ。まるで磁石のように相互に引力を働かせあった結果、二人の距離はあっという間に縮まる。

「あらあら?」
 まさか自分も引っ張られるとは思わなかった揺籠の君。彼女の予想を超えるために詩乃は念動力も使って自分を加速させている。さらに学生服の上から施した神力が迷彩効果を発揮し、僅かながら相手の視覚を幻惑する。
「ここからが反撃です!」
 持てる技能を尽くして、相手の虚を突きながら接近を果たした詩乃は、神器の薙刀「煌月」を振るう。神力の稲妻を帯びた刃は三日月のような軌跡を煌めかせて、不浄なる敵を討つ――避けそこねた揺籠の君の身体から、ぱっと赤い血の花が咲いた。

「いたいです、もう……きゃっ?!」
「やらせるかよ」
 揺籠の君が「リリスの槍」で反撃しようとすると、即座に嵐が妨害を入れる。お手製のスリングショットから放たれた弾丸は標的の手首にヒットし、動きを一瞬マヒさせる。前線で戦う詩乃にとっては最高の援護射撃だ。
「隙ありです!」
 相手の槍さばきが止まった瞬間を狙って、詩乃は薙刀をもう一振り。揺籠の君の白い肌に刀傷が増えていく。
 片方だけを引き寄せたのは失敗だった。一人が前衛として切り込み、もう一人が後衛として援護する、完璧な連携攻撃の前ではいくらオブリビオン・フォーミュラとて分が悪い。

「あなたもこっちにきてください」
 ならばと揺籠の君は嵐にも神の左手を使い、自分の元に引き寄せようとする。あまり思慮深いタイプではなさそうな彼女ではあるが、面倒な援護役のほうを先に仕留めるくらいの戦術・戦略眼は持ち合わせているようだ。
 実際、強大な敵の至近距離まで強制的に連れて行かれるのは、嵐にとっては恐怖でしかない。だが、こうなるであろうことを予想もしていた彼は、平静を保ったままカウンターを仕掛けることができた。
「麦藁の鞘、古き縫い針、其は魔を退ける霊刀の如し、ってな!」
 引力に逆らわずに敵の懐に飛び込み、取り出すのは一本の縫い針。長年大切に使い込まれ、持ち主の思いが込められた針には、特別な霊力が宿る――あらゆる異常を退ける【針の一刺、鬼をも泣かす】が、オブリビオン・フォーミュラに突き刺さった。

「っ……いたい、いたいいたいいたいいたいいたいっ!!!?!」
 たかが針一本とは思えない壮絶な痛みを感じて、揺籠の君が泣き叫ぶ。世界の"異常"そのものである彼女にとって、それは頭の中が真っ白になるほどの激痛だった。針を引き抜くまでの数秒間、彼女の戦闘行動は停止し、彼女と敵対する者には最大の好機が訪れる。
「後は任せた」
「はい!」
 突破口を開いた嵐の期待を受けて、詩乃は薙刀に力を籠める。女神の裁きを体現する雷光の力を、その刀身に集約させ、研ぎ澄まし。月光の如く煌めく神器の穂先を、敵の急所目掛けて全身全霊をもって突き立てる――。

「世の為、人の為、祓い清め致します!」
「あ、あぁぁぁぁぁぁ―――っ!!!!」
 詩乃の一撃に深々と貫かれた揺籠の君は、血の混じった吐息と共に悲鳴を漏らす。淫欲で穢れきった肉体を焦がす神罰の痛みは、退魔の針の痛みにも並ぶもので。ぽたりぽたりと傷口から滴り落ちる血のしずくは、再びの"死"が彼女に迫りつつあることを示していた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルマ・アルカレイト
ぎゃあぁぁぁぁぁ!へぶっ!痛った…

『なんや?!いきなり人が落ちて来た?!』
男と敵が私を見る

えっ…何ここ?

敵はいきなり攻撃を仕掛けてきた

先制UCは男の凍結攻撃の結界術で防御する
『アンタ一般人やろ?守ったる安心せえよ!』

…ありがとう
お礼を言いながら私は敵の動きを視力で見ていた

神の左手は男が周りを凍結攻撃と結界術で凍らせて氷の壁を作った

リリスの槍は私に向かって来たので視力で動きを読んで軽業で槍の柄に乗って回避する
男は結界術と刀で受けた
『躱した?!』

聖杯剣は二人とも軽業で回避した


『ただの一般人じゃないな?アンタ』
ええ!後敵の弱点分かったよ

『何やて?』
敵は攻撃する時に眉が動く癖がある
そこをつくのよ!

『何か偉そうやな!けど…乗ったるわ!』

そう言うと男は結界術と氷と電撃を腕に纏い敵に突っ込む

敵は余裕そうに攻撃しようと眉が動いた

UC発動
彼に貸して貰った銃を握りしめてマントを翻して閃光の様な弾丸が敵の剣を持つ方の手に当たった

痛みに動揺する敵に
『くらえや!晴れ舞台は勝利で終わらせるで!』
敵に男は拳を振るった



「ぎゃあぁぁぁぁぁ! へぶっ! 痛った……」
 激戦が繰り広げられる金沢大学構内、その中にかかる陸橋「アカンサスインターフェイス」の直上から、1人の少女が降ってくる。彼女――アルマ・アルカレイト(異世界からの来訪者『無能の錬金術士』・f39594)はしたたかに地面に落下した後、痛そうに鼻の頭をさすった。
「あら。またあたらしいいのちがきてくれました」
「なんや?! いきなり人が落ちて来た?!」
 たまたまそこに居た『聖杯剣揺籠の君』と「東・慶喜」という男が、揃って彼女を見る。どうしてここに迷い込んだのかは知らないが、前者が己の糧となる生命を見逃すはずがない。ならば敵対する後者のほうも取るべき対応は決まっていた。

「えっ……何ここ?」
「あなたのいのちをゆりゆりにください」
 アルマが状況を把握する前に、揺籠の君はいきなり攻撃を仕掛けてきた。3種の【せいはいうぇぽんず】の1つ、猛毒の「リリスの槍」による刺突――当たれば未来永劫苦しむことになるであろう一撃から、彼女を救ったのは慶喜だった。
「アンタ一般人やろ? 守ったる安心せえよ!」
 彼の張った氷の結界が、毒の穂先をギリギリで防ぎ止める。その言動からは、たとえ初対面の相手だろうと弱き者を見捨てない、快活で真っ直ぐな性格が窺えるが、逆に不可解な点もある。彼がアルマのことを何の疑問もなく「一般人」だと認識していることだ。

「……ありがとう」
 アルマは男にお礼を言いながら、揺籠の君の動きをじっと見ていた。そう、彼女は目の前の|非常識《オブリビオン》を認識している。世界結界の存在するこの世界では、一般人は常識の埒外にある神秘を認識できず、そもそも無意識に神秘から遠ざかるように行動するはずなのだ。
「じゃまをするなら、さきにあなたのいのちをもらいます」
「やれるもんならやってみいや!」
 揺籠の君は標的を変更して「神の左手」を使うが、慶喜は自分の周りを凍らせてより大きな氷の結界を作り、引き寄せられるのを防ぐ。どちらもアルマのことを無力な一般人だと、脅威ではないと信じて疑わない対応だ。
 空から落下したのにケガひとつない様子からしても、普通の人間でないのは明らかなのに――この認識の錯誤こそ、本人にも原因不明な彼女の特殊能力のひとつだった。

「ならふたりともくしざしです」
 聖杯武器を組み合わせた揺籠の君の連続攻撃は止まらず、再びリリスの槍を構えて突きかかってくる。今度は結界でも防ぎきれず、慶喜は咄嗟に刀を抜いて矛先を受け流すが、"無力な一般人"は――アルマは、全身のバネを使って地面から飛び上がると、軽業めいた身のこなしで槍の柄に乗った。
「躱した?!」
「あら?」
 それまで彼女のことを誤解していた二人から、驚きの声が漏れる。オブリビオン・フォーミュラの動きを読んで攻撃を回避するなど、ただの一般人にできる事ではない。魔法や神秘の類を使った気配はないが、人間離れした身体能力だ。

「おりてください」
 揺籠の君が「聖杯剣」をぶんと振り回すと、アルマは槍から飛び降りて回避し、慶喜のいるところまで戻る。
 一度ならず二度までも避けたとなれば、ただの幸運や偶然という線も完全に消えた。現地の能力者という感じでもなし、ならば異世界からやって来た猟兵か。
「ただの一般人じゃないな? アンタ」
「ええ! 後敵の弱点分かったよ」
「何やて?」
 問い詰めればあっさりと答え、さらに驚くべきことを事もなげに言うアルマに、慶喜はますます戸惑いを隠せない。嘘やハッタリという訳ではなく、彼女はその優れた観察眼をもって揺籠の君の弱点を見抜いていたのだ。

「敵は攻撃する時に眉が動く癖がある。そこをつくのよ!」
「何か偉そうやな! けど……乗ったるわ!」
 このまま戦っても攻めあぐねるばかり。ならば賭けてみるのも一興かと、慶喜は腰のホルスターから一丁の銃をアルマに手渡し、自分は両腕に氷と電撃を纏って敵に突っ込んだ。結界術でガードを固めているとはいえ、傍から見れば無謀な特攻である。
「じぶんからきてくれるなんてうれしいです」
 揺籠の君は余裕の表情で聖杯剣を振るおうとするが――その寸前、アルマが指摘したように微かに眉が動く。
 これを予兆としてアルマは【錬金術師士奥義『神速の射撃者』】を発動。慶喜に貸して貰った銃を握りしめ、マントを翻して早撃ちを仕掛ける。それはまばたきする暇もない、まさしく"目にも留まらぬ"早業だった。

「私には魔力も神秘の力も無いけど……『|技能《これ》』があるわ!」
 それは魔力を使えないアルマが故郷の腐った魔術師共に対抗するために、極限まで鍛え上げた人の業。閃光の如き弾丸が揺籠の君の聖杯剣を持つほうの手にヒットし、今まさに攻撃を繰り出そうとしていた彼女を、痛みで動揺させた。
「いたっ。なにを……?」
 その動揺は僅かだが致命的な隙を、対する慶喜には絶好のチャンスを与える。得体の知れない少女だったが、どうやら賭けには乗って正解だったようだと、彼はニヤリと笑みを浮かべながら拳を握りしめ、敵と肉薄した。

「くらえや! 晴れ舞台は勝利で終わらせるで!」
 慶喜の振るう氷と電撃の拳が、揺籠の君のボディを打ち抜く。純粋な打撃力に加えて、身体の芯まで痺れさせる電気と凍結のダメージを叩き込まれた敵は、「きゃあっ?!」と甲高い悲鳴を上げて吹き飛ばされていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
|封印を解く、脱衣《体外離脱》し娘のエヴァ(f39384)に|降霊、かばう《憑依》して肉体はグリモア猟兵に預けて出発。先制攻撃&聖杯武器の追加能力対策担当。
お任せプレ汝が為したいように為すがよい。

はいはい、もう来ちゃったんだから文句言わないのエヴァ。

|高速詠唱早業先制攻撃重量攻撃凍結攻撃身体部位封じマヒ攻撃気絶攻撃禁呪《タイムフォールダウン、時間質量を解放し一切合切の活動を禁じる》。|カウンター連続コンボ追撃《時止めで連続攻撃に割り込みをかけつつ》、空間の切断解体から切断部位の接続で再構築し空間ジャンプで引き寄せから逃れ、多重詠唱拠点構築結界術で位相ずらしや量子的可能性から回避の可能性を収斂させて槍と聖杯剣を回避するわ。
さて、エヴァ|の封印を解く、化術肉体改造、リミッター解除、限界突破、オーバロード。《と同化し完全邪神として覚醒する》。『夜』空への階、ゆりゆりの領域まで駆け上がる。そのコスプレも今なら真打ちの一振りと同等よエヴァ。さぁ、思う存分ヤッちゃいなさい


エヴァ・スノードロップ
ママ(f05202)に憑依されて参戦。
お任せプレ、お好きなように。

あの、ママ?初陣でいきなりフォーミュラ戦とかスパルタ過ぎませんか?はーい、ヤレばいいんでしょヤレば、もう。
さっそく訳解んないこと始めてるし、でもこのままおんぶに抱っこって訳にもいかないからボクも|闇に紛れる結界術で《『夜』の帳を降ろして》少しでも被弾する確率を下げるよ。雀の涙ほどの効果でもそれで首の皮一枚繋がることもあるんだ。
ほぼほぼママにかばわれてた気がするけどそれでも凌げたぞ、クランケンヴァッフェを|化術《変形》しておどろかせ力をアップする|揺り籠の君《ゆりゆり》のコスプレを……むしゅ!?ママ!?なにこれなにこれ聖杯武器まで完コピされてるんだけど?ええぇ?ゆりゆりと同じ位階に至るって、ええぇ?エンジョイ勢のママでこれって、猟兵こっわ。
ともあれ今ならゆりゆりと同じことができるってことね。きゅーきゅっきゅ、いや経験不足で相殺するのが精一杯だわ。でもママのユベコのおかげで一振り毎に洗練されていくぞ、このまま押し切っちゃえ!!



「あの、ママ? 初陣でいきなりフォーミュラ戦とかスパルタ過ぎませんか?」
 いかにもヤバそうな雰囲気に包まれた水晶宮殿の中で、困惑混じりにぼやくのはエヴァ・スノードロップ(時間と空間を超越する窮極的かつ永遠の“幼女”・f39384)この場には彼女と敵以外誰もいないように見えるが、ちゃんとママが"憑いて"きている。
『はいはい、もう来ちゃったんだから文句言わないのエヴァ』
 頭の中から聞こえる声の主はアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202)。自らの魂を体外離脱させ、抜け殻の肉体はグリモア猟兵に預けた上で、"娘"であるエヴァに憑依した状態での参戦である。目的は娘に強敵との実戦経験を積ませること、あたりだろうか。

「はーい、ヤレばいいんでしょヤレば、もう」
 ここまで来て尻尾を巻くわけにもいかず、しぶしぶながら身構えるエヴァ。果たして今の自分がどこまで通用するか分からないが、敵もこっちの事情を汲み取ってはくれないだろう。『聖杯剣揺籠の君』の熱い眼差しは、すでに彼女をロックオンしている。
「おいしそうないのちがふたつでひとつ。まとめていっしょにいただきます」
 三種の【せいはいうぇぽんず】のひとつ、絢爛なる「神の左手」が向けられると、不可視の引力がエヴァ達を引き寄せる。まずは距離を詰めて、それから槍と剣でおいしく料理しようとの魂胆だろう。いずれも必殺の効果を秘めた聖杯武器、被弾するのは何としても避けなければならない。

『タイムフォールダウン。汝に一切合切の活動を禁じる』
 神の左手が発動するのとほぼ同時に、アリスは魂に蓄積していた時間質量を解放。周囲の時間を停止させ、敵の行動に割り込みをかけた。時すらも支配する脅威の禁呪だが、敵もオブリビオン・フォーミュラ――すなわち『過去』という膨大な時間の具現体。停めていられる猶予は数秒にも満たない。
「ママ、何を?」
『いいから、ここは任せなさい』
 現象を理解できないエヴァに説明を放置しつつ、アリスは自分達の周辺の空間を切断・解体し、パズルのように組み替えることで空間跳躍を実現する。神の左手がこちらを引き寄せる力よりも、さらに遠くへ。まだここで捕まる訳にはいかない。

「あら? いま、ちょっとだけへんなかんじがしました」
 時止めと空間跳躍によりエヴァ達を引き寄せるのに失敗した揺籠の君は、首を傾げながらも追撃を仕掛ける。
 えい、と軽い調子で振り下ろされるのはユーベルコードを奪う「聖杯剣」。催淫能力と引き換えに強化されたそれは無限の射程を誇るが、幸いにも必中が約束されている訳ではない。
『今のエヴァが避けられる可能性は低いけれど、ゼロでないなら引き寄せればいいのよ』
 アリスは結界術によって自分達の存在する位相をずらし、さらには量子的可能性の海からこちらにとって都合のいい可能性を収斂させて攻撃を回避する。相手の視点からは、まるで聖杯剣が標的をすり抜けたか、あるいは「偶然」当たらなかったように見えるだろう。

「さっそく訳解んないこと始めてるし、でもこのままおんぶに抱っこって訳にもいかないし」
 常軌を逸脱したアリスの混沌魔術は、娘であるエヴァの理解も超えている。だが、それが敵の攻撃から自分を護るための行為だということは分かる。半ば無理やり連れて来られたとはいえ、何もせずに戦いが終わるまで待つのを良しとしないくらいは、彼女にもプライドがあった。
(雀の涙ほどの効果でもそれで首の皮一枚繋がることもあるんだ)
 なおも続く揺籠の君の連続攻撃から、エヴァは『夜』の帳を降ろして被弾確率を下げる。新世代ゴーストでありながらエンドブレイカーでもあり、「具現化された夜」と融合したデモンでもある彼女の力は、まさに混沌。自分の身に迫る|終焉《エンディング》を打破する才能は、なかなかのものがあった。

「ぜんぶよけられちゃいました」
 かくして数百に達する揺籠の君の猛攻は、エヴァの懸命な努力とアリスの援護により回避される。何度となく危ういケースはあったが、奇跡的に傷ひとつ負っていない。逆説的にそれは、掠り傷すら致命傷になりかねない危機だったという事でもあるが。
「ほぼほぼママにかばわれてた気がするけどそれでも凌げたぞ」
 ここからが反撃のターンだと、エヴァは【創世神術・似姿同化】を発動。クランケンヴァッフェを槍に変形させ、自身は揺籠の君のボディペイント姿に変身する。一見ただのコスプレだが、強力なオブリビオンの姿を真似ることで、その相手と一時的に同一視して力を借りるユーベルコードである。

「……むしゅ!? ママ!? なにこれなにこれ聖杯武器まで完コピされてるんだけど?」
 だが、今回のそれは"ただのコスプレ"に収まらない、どころの話では無かった。あくまで形を模しただけの筈の槍からは、本物の「リリスの槍」と同じ魔力を感じるし、おまけに聖杯剣と神の左手までいつの間にか装着されている。そして自分の身体からは、自分のものではないような絶大な力が湧き上がっていた。
『|大物食い《ジャイアントキリング》を成すために、至りましょうその高みへと。そのための|階《きざはし》はこの手の内に』
 この異常なまでのパワーアップの原因はアリスだ。エヴァと同化したまま魂のリミッターを外し、完全なる邪神として|覚醒《オーバーロード》を遂げた彼女は、【『夜』空への階】を発動して自分ごとエヴァの|階位《レベル》を引き上げた。この場で自分達と最も近接する対象、すなわち揺籠の君と同じ値まで。

『そのコスプレも今なら真打ちの一振りと同等よエヴァ。さぁ、思う存分ヤッちゃいなさい』
「ええぇ? ゆりゆりと同じ位階に至るって、ええぇ?」
 過程も経験値も無視していきなりオブリビオン・フォーミュラの領域まで駆け上がらされたエヴァは、驚きと困惑を隠せない。いくらユーベルコードが世界の理を超える力だとしても、この芸当はまさに常識の埒外としか言いようがない。
「エンジョイ勢のママでこれって、猟兵こっわ……ともあれ今ならゆりゆりと同じことができるってことね。きゅーきゅっきゅ」
「にせゆりゆりがでてきました。にせものでもじぶんをたべちゃうなんて、すてきなちゃんすです」
 降って湧いた強大なパワーにちょっぴり調子に乗るエヴァと、それを見てうっとり微笑む揺籠の君。能力まで自分と同じなら、その生命を喰らえば今よりずっと強くなれるだろう――という目論見の元で、彼女は聖杯剣を思いっきり振り下ろした。

「いや経験不足で相殺するのが精一杯だわ」
 エヴァの中で膨らみかけた自信と慢心は、戦いが再開されるとあっという間に萎んでしまった。|階位《レベル》や能力は同等でも、その力を十分に使いこなせるか否かでは歴然たる差が生じる。斬撃を斬撃で止めれば即座に刺突が、それを防いでも今度は神の左手で引き寄せられる。聖杯武器の熟練度では揺籠の君のほうが上だ。
(でもママのユベコのおかげで一振り毎に洗練されていくぞ)
 エヴァに与えられた優位性は母、アリスの補助。敵と同等まで|階位《レベル》を引き上げた後も【『夜』空への階】の効果は継続し、徐々にレベルを上昇させ続けている。腕力、スピード、そしてひらめき――基礎能力で揺籠の君に優越し始めた彼女は、防戦一方の状態から拮抗、そして反撃に転じていく。

「あら? あなた、にせものなのにゆりゆりよりつよくないですか?」
 鏡写しのようにそっくりな自分のコスプレが、次第に自分を上回る力で切り込んでくるのを感じて、揺籠の君はきょとんと目を丸くした。聖杯剣で払っても、左手で受けても、防御も回避も追いつかなくなるほどの勢いでエヴァは攻勢を加速させる。
「このまま押し切っちゃえ!!」
 攻守ともにママの力を借りっぱなしだったが、せめて敵に与える一撃は自分の手で。まだ未熟で幼いからこそ瞬間的な爆発力は誰にも止められず。そして遂に、クランケンヴァッフェが変化したリリスの槍が、揺籠の君を刺し貫いた。

「っ……!!」
 一時の模倣とはいえ効果まで再現された聖杯武器だ。宇宙の終焉まで癒えることのないという毒が、揺籠の君の身体を蝕み始める。それまで微笑を絶やさなかったリリスの女王が、苦悶の呻きと共に表情を陰らせる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シノギ・リンダリンダリンダ
全ての世界の全ての命が欲しいという強欲さ。親近感を覚えますが…それは私の強欲に反します。命もまたお宝の可能性を持つ。阻止させてもらいますよ、揺籠の。

神の左手の引き寄せは距離を詰めるのを省略化のためにあえて受けましょう
リリスの槍の毒。数多の呪詛と毒に塗れ耐性どころか呪詛毒そのものな私にはむしろ呪詛毒を成長させる良い餌です
聖杯剣だけは、厄介です。集中力を以て見切り、場合によっては浮遊手甲ユニット喧嘩殺法の左右でガードします

淫欲の竜巻は軌跡上に出るなら見切るのは容易い。すでに至近距離なのもあるので左手に集中して避けていきます

さぁ、揺籠の。お前がお陰で得たお宝で、お前を倒します
【全てを略奪せし者】を着用
数多の宝石の欠片で腕を何本も生やし、悪魔じみた姿に
聖杯剣の攻撃には宝石の欠片の腕で対処し攻撃を受けたら切り離す
欠片の爪に己の呪詛毒を染みこませ、考え得る全ての毒を切り替えながら与える。何本も生え替わる腕で蹂躙

我が強欲が、お宝も、お前自身も全て略奪します
だから安心して、私を呪ってくださいな?



「全ての世界の全ての命が欲しいという強欲さ。親近感を覚えますが……それは私の強欲に反します」
 欲望のままに略奪と蹂躙の限りを尽くすことを是とするシノギ・リンダリンダリンダ(|強欲の溟海《グリードオーシャン》・f03214)にも、『聖杯剣揺籠の君』の野望を認められぬ理由があった。或いは当然の事と言うべきかもしれない。宝を狙う強欲者が二人以上いれば、奪い合いになるのは必然なのだから。
「命もまたお宝の可能性を持つ。阻止させてもらいますよ、揺籠の」
「あげません。すべてをうばいつづけて、ゆりゆりは『さいきょう』をめざします」
 譲り合うという選択肢は端から議場にも上らない。敵同士だから、猟兵とオブリビオンだからという話以前の問題だ。生命という宝を狙うものとして、欲望のままに海賊と淫魔は刃を研ぐ。邪魔をするならまずはお前から奪い取るだけだ。

「あなたもゆりゆりとひとつになりましょう」
 揺籠の君が「神の左手」を差し出せば、招かれるようにシノギの身体が引き寄せられる。接近戦の間合いまで距離を詰めるのを省略できるなら、こちらにとっても好都合だと、彼女はあえて引力に逆らわずに身を任せた。
「つらぬいてあげます」
「ええ、どうぞ」
 引き寄せられた先で待っているのは「リリスの槍」。宇宙の終わりまで決して癒えぬという、恐るべき猛毒を注ぐ聖杯武器だが――シノギはこれもあえて受けた。無防備なボディに赤黒い槍の矛先が突き刺さるが、彼女は顔色ひとつ変えない。

「数多の呪詛と毒に塗れ耐性どころか呪詛毒そのものな私には、むしろ呪詛毒を成長させる良い餌です」
 これまでにも倒してきたオブリビオンの呪詛毒を吸収し蓄積してきたシノギにとっては、ここでリリスの槍を食らっても毒のレパートリーが1つ増えるだけだ。無効化できぬ毒だろうと取り込み、蝕まれながら同化する。常人には真似のできない狂気の所業によって、彼女は2つめの聖杯武器に耐えた。
「どろどろのぐちゃぐちゃがいっぱいです。なんだかむらむらしてきました」
 そんな異常な所業にも揺籠の君は怯まず、3つ目の聖杯武器「聖杯剣」を振るう。毒で殺せぬ相手なら、力を根こそぎ奪い尽くす。使い手の身の丈よりも巨大な水晶の刃が、呪詛毒もろとも海賊人形を斬り伏せんとする。

(これだけは、厄介です)
 流石のシノギもユーベルコードを収奪されて平気とはいかない。集中力を研ぎ澄ませて軌道を見切ろうとするが、それでも向こうの攻撃のほうがこちらの回避より速い。咄嗟に手甲型浮遊ユニット「喧嘩殺法」の右腕・左腕を重ねてガードする。
「ばっさりです」
 聖杯剣の切れ味はその二つの護りを纏めて斬り捨てるのに十分だった。だが、本来の標的の間に挟まった異物のせいで、剣速が僅かに鈍くなる。その間にシノギは手甲の裏側で上体を逸らし、紙一重で己の死を回避した。

「がんばりやさんですね。がまんせずにいのちをささげれば、とってもきもちよくなれますよ」
 間髪入れず揺籠の君は【うずまくいんよく】を放つが、神の左手を動かした軌跡上に出現する淫欲の竜巻は、分かっていればこれまでの攻撃よりも見切るのは容易い。すでに至近距離にいるのもあって、シノギは敵の左手に意識を集中させて避ける。
「さぁ、揺籠の。お前がお陰で得たお宝で、お前を倒します」
 竜巻の余波にピンク色の髪をなびかせながら、彼女は改めてここで宣言する。その掌中で輝くのは、美しくも禍々しい紅い光――「万能宝石エリクシル」の欠片だ。この戦争に紛れてシルバーレインの世界に顕現しようとしていたエリクシルの萌芽を、彼女はその阻止がてらに自分の物としていたのだ。

「我が願いはひとつ。お前の蹂躙と、お宝の略奪です」
 略奪した数多の万能宝石の欠片を装甲化し、着用する【全てを略奪せし者】。宝石の腕を何本も生やし、悪魔じみた「宝石災魔(海賊ver)」の姿に変貌を遂げたシノギは、サメのように笑いながら獲物に襲い掛かった。
「きらきらきれいです。でもかわいくないです」
 その宝石から放たれる異常な魔力を感じ取っているのか、揺籠の君はまとめて聖杯剣で斬り払おうとする。
 対するシノギは先ほどの「喧嘩殺法」のように宝石の腕を交差してガード。斬られた腕を自切することで能力の収奪を防ぐ。この宝石は全部自分のもの、たとえ一欠片だって渡してやるつもりはない。

「ですがお前から貰った物なら、特別に熨斗付けて返してやってもいいですよ」
 煌びやかな宝石の欠片の爪に染み込ませたのは、体内を巡る呪詛毒。宝物の呪いである「Curse Of Tomb」、災魔の怨嗟である「Dead or Die」、そして先ほど貰ったリリスの毒など、一本一本に違う毒が宿っている。シノギはそれを力任せに振りかざし、揺籠の君の柔肌に突き立てた。
「あっ……いたい……あつい、くるしい? からだのなか、ぐちゃぐちゃにされる、かん、かく……です」
 強烈な毒素に蝕まれ、ぶるりと身悶えする揺籠の君。一種類から数種類程度の呪詛毒であれば、オブリビオン・フォーミュラなら克服できたかもしれない。しかしシノギは考え得る全ての毒を切り替えながら与えており、耐性を身に付けるにも限界があった。

「我が強欲が、お宝も、お前自身も全て略奪します。だから安心して、私を呪ってくださいな?」
 その呪いこそが自分にとっての祝福となる。敵の反撃を受けながら、シノギは破壊された腕を何度も生え変わらせ、眼前の獲物を蹂躙する。純粋な欲望に応えて力を発揮するエリクシルの剛腕、この力が彼女の手に渡ったのも第二次聖杯戦争の勃発が原因だと考えれば、この結末も因果が巡り巡った結果と言えるかもしれない。
「のろいは、あんまりおいしくありま、せん……ゆりゆりはまだ、みたされていないのに……」
 あらゆる毒を投与された揺籠の君の動きが、徐々に鈍くなってくる。強欲同士の激突に、軍配が上がったのはどうやら海賊のほうらしい。同時に、この戦いそのものの決着も、ゆっくりとだが着実に迫りつつあった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
聖杯武器、なるほど、すごいのでっす!
ですが藍ちゃんくんのキャバリア、|藍色の灯火《藍ゼン・シュテルン》もすごいのでっすよー!
何せ藍ちゃんくんの歌や演奏をスピーカーなどで発信するステージ兼用ロボットですのでー!
一緒に歌えるのでっす!
というわけで搭乗して挑むのでっす!
この機体、ドレスアーマーの換装ができるのでっしてー。
引き寄せに対してアーマーパージ!
先に吸い込ませることで目潰し&竜巻へのデコイに!
そのまま本体でといきたいとこでっすが!
まだ剣と槍が!
片方で灯火を、もう片方でコクピットの藍ちゃんくんを……等と思ってましたかー?
藍色の灯火もまた陽動、目眩まし時に脱出済みなのです!
この機体、歌で操縦できるので搭乗必須ではないのでっす!
それでも藍ちゃんくんだけが歌ってたなら音でバレたやもでっすがー!
藍色の灯火からも歌が流れてたので気付かせはしなかったのでっす!
それでは時間も稼げたことでっすし!
真打ち登場、藍ちゃんくんでっすよー!
藍ちゃんくんの作り出した銀の雨上がりの虹の世界で包み込んで幕引きでっす!



「聖杯武器、なるほど、すごいのでっす!」
 揺籠の君が聖杯の力と共に手に入れた3つの武器、すなわち「神の左手」「リリスの槍」「聖杯剣」を見て、称賛の言葉を送るのは紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)。あれらは間違いなくこの世に二つとない神秘の産物であり、敵に回すとなれば恐るべき脅威だろう。
「ですが藍ちゃんくんのキャバリア、|藍色の灯火《藍ゼン・シュテルン》もすごいのでっすよー! 何せ藍ちゃんくんの歌や演奏をスピーカーなどで発信するステージ兼用ロボットですのでー! 一緒に歌えるのでっす!」
「それはすごいです。どこでもうたいほうだいです」
 自信満々な様子で自分が搭乗するキャバリアを見せつける藍に、『聖杯剣揺籠の君』もぱちぱち拍手を送る。
 恐らく、からかいや皮肉の意図は込められていない。淫魔である彼女が音楽や芸術の持つ力を理解していないはずは無いだろう。その素晴らしさを認めた上で、彼女は全ての生命を喰らい、滅ぼすのだ。

「えっちなれくいえむをゆりゆりのそばできかせてください」
 そう言って揺籠の君は聖杯武器の1つ、神の左手を振るう。その指先がなぞった軌道上には【うずまくいんよく】の竜巻が発生し、周囲の物を引き寄せ始める。いかなる物質であれこの引力に逆らうことは難しく、それは猟兵やキャバリアであっても例外は無かったが。
「この機体、ドレスアーマーの換装ができるのでっしてー」
 藍は素早く|藍色の灯火《藍ゼン・シュテルン》のアーマーパージを行い、分離したパーツを先に吸い込ませる。本体と自分が引き寄せられる前に、装甲だけを竜巻へのデコイにしたのだ。同時に派手で巨大なドレスアーマーは、敵の視界を遮る目潰しにもなる。

(そのまま本体でといきたいとこでっすが! まだ剣と槍が!)
 淫欲の竜巻を回避した|藍色の灯火《藍ゼン・シュテルン》は、藍と共に歌と音楽を奏でながら敵に接近していく。だが、このまま都合よく事は進まないだろうと、彼も覚悟していた通りになった。視界を塞がれた揺籠の君は少しだけ眉を潜めてから、背後に浮かぶ聖杯剣の柄に手をかけ――。
「じゃまです」
 一閃。無限の射程を誇る水晶の刃が、デコイもろともキャバリアを斬り裂いた。横一文字に抉られたインナーフレームの隙間から、コックピット内部が露出する。揺籠の君は間髪入れず、その隙間目掛けて「リリスの槍」をねじ込んだ。

「片方で灯火を、もう片方でコクピットの藍ちゃんくんを……等と思ってましたかー?」
「……あら?」
 キャバリアのスピーカーから聞こえる藍の声。だが、そこに乗っていたはずの本人はいない。パージした装甲だけではなく、この|藍色の灯火《藍ゼン・シュテルン》自体もまた揺動であり、藍自身は目くらましを仕掛けた時に脱出済みだったのだ。猛毒を注ぐはずのリリスの槍は、ただ無人のコックピットを貫いただけに過ぎない。
「この機体、歌で操縦できるので搭乗必須ではないのでっす!」
「まあ。さっぱりきがつきませんでした」
 それでも藍だけが歌っていたなら音でバレたやもしれないが、キャバリアのスピーカーからも同時に歌が流れていたため、音源のズレに気付かれることはなかった。その役割を十分に果たした|藍色の灯火《藍ゼン・シュテルン》は、最後までBGMを奏でながらゆっくりと倒れ伏す。

「それでは時間も稼げたことでっすし! 真打ち登場、藍ちゃんくんでっすよー!」
 いざ生身で戦場というステージに現れた藍は、持ち歌の【藍ノ空】を歌い始める。一片の曇りもない晴れやかな笑顔と、スピーカー越しよりもずっとよく通る澄んだ声で。その歌声は反響しながらどこまでも遠い彼方まで届き、聖杯の力で変質した水晶の宮殿を、藍ドルたる彼のための世界に変貌させていく。
「歌声よこの宇宙に響け ああ 彼方をも超えて 広がるこの世界を塗り替えて行こう 藍で」
 完成するのは銀の雨上がりの虹の世界。絶え間なく降り続いていた|銀色の雨《シルバーレイン》は止み、青空にかかる虹が敵味方を包み込む。それは闇夜を照らさんとする藍の愛と希望が作りだした景色。銀の雨が降る時代に別れを告げ、新時代を歩んでいく生命への讃歌だ。

「これで幕引きでっす!」
「まあ……きれい」
 藍の歌声と虹の世界は、リリスの女王たる揺籠の君でさえ、思わず聞き惚れずにはいられないものだった。
 神秘の根源たる銀の雨を絶たれ、その身はゆっくりと弱体化に崩壊を始める。止まない雨はないと藍が示したように、この戦いの終わりも間もなくとなっていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…どうやらこれが最後の戦いみたいね。ならば、此方も出し惜しみは無しよ

…この世界だけでは無い。全ての世界に生きる人々の為に、お前を討つ

肉体改造術式により強化した第六感が捉えた微かな殺気から敵の行動を先読みして見切り、
星の精霊を降霊する事で「神の左手」の能力を斥力のオーラで防御して抵抗し、
積み重ねてきた戦闘知識から最適な動作で聖杯武器の攻撃を回避して受け流しUCを発動

…確かに、いずれ劣らぬ強力な武装だけど、情報があるなら対策は出来るわ

…それに、本来の持ち主とは違うのに無理して使っている反動かしらね
微かに攻撃の気配が漏れている。それでは私には通用しない

「時間王の鏡」を代償に時間跳躍の神剣を召喚して時間流の魔力を溜め、
敵の攻撃を死角へと転移する零時間移動で回避しながら神剣をなぎ払い、
刃に触れた物質を転移させる事であらゆる防御を無視する時属性攻撃を行う

…さあ、これで終幕よ。来たれ、あまねく時の内外を跳躍するⅧの剣

…お前の望みを叶えさせる訳にはいかない。消えなさい、この世界から永遠に…。



「……どうやらこれが最後の戦いみたいね。ならば、此方も出し惜しみは無しよ」
 |銀の雨が降る時代《シルバーレイン》の強敵達との戦いを経て、決戦の舞台に立ったリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。絢爛なる水晶宮殿と化した金沢大学の構内で、彼女はまっすぐに最後の敵を睨みつける。
「……この世界だけでは無い。全ての世界に生きる人々の為に、お前を討つ」
「いやです。ゆりゆりはまだまんぞくしていません」
 猟兵としての使命と守るべき生命のために立ち向かう彼女に、子供のような返事をする『聖杯剣揺籠の君』。
 聖杯に過去を捧げてしまった彼女に残るものは、シンプルな欲望と目的だけ。この世の全ての生命を喰らい尽くすまで止まらない、妖女の姿をした災害がそこに在った。

「あなたのいのちもおいしそうです」
 揺籠の君が「神の左手」を振るうと、見えざる引力がリーヴァルディの身体を引き寄せる。まずはコレで強制的に間合いを詰めてから他の武器による連続攻撃に繋げるのが、彼女の【せいはいうぇぽんず】の基本戦術だ。
「……星の精霊よ、私に力を」
 対抗するためにリーヴァルディは精霊の力を我が身に降ろし、神の左手に抵抗する斥力のオーラを生み出す。
 完全に拮抗とまではいかずとも、踏み留まれる程度までは引力を弱めることができた。彼女は油断なく意識を研ぎ澄ませ、次の攻撃に備える。

「……確かに、いずれ劣らぬ強力な武装だけど、情報があるなら対策は出来るわ」
 神の左手による引き寄せが失敗したのなら、次に来るであろう攻撃は無限射程の「聖杯剣」。身の丈をゆうに超える大剣を揺籠の君が振り下ろす、その寸前でリーヴァルディは身を翻し、斬撃の延長線上から飛び退いた。
「……それに、本来の持ち主とは違うのに無理して使っている反動かしらね。微かに攻撃の気配が漏れている。それでは私には通用しない」
「むむむ。もしかしてぜんぶよまれてますか?」
 冷静かつ的確に対応されて頬を膨らませながらも、今度は自分の足と翼で踏み込み、猛毒の「リリスの槍」を突き放つ揺籠の君。しかし、肉体改造術式により強化されたリーヴァルディの第六感は、彼女が発する殺気を完全に捉えていた。次の行動が読めれば、あとは積み重ねてきた戦闘知識に照らして最適な動作を取れば良い。

「ぜんぜんあたりません。こまりました」
 刺突、斬撃、斬り上げ、薙ぎ払い。三種の聖杯武器の組み合わせから放たれる揺籠の君の連続攻撃は、全てリーヴァルディに見切られていた。回避と受け流しを行いながら、黒衣の少女は左眼に宿る聖痕――名も無き神との契約の証である「代行者の羈束」を輝かせる。
「……名も無き時の支配者、天の獄に座する異端の神の力を此処に」
 その聖痕に刻まれた可能性分岐術式「時間王の鏡」を贄に、発動するのは【代行者の羈束・時間王の神剣】。
 別次元との接続が開かれ、神が振るいし剣が顕現する。十二本で一揃いとなるそれらは、それぞれ異なる時間にまつわる権能を有していた。

「……さあ、これで終幕よ。来たれ、あまねく時の内外を跳躍するⅧの剣」
 リーヴァルディが手にしたのは「Ⅷ」の数字が浮かんだ時間跳躍の神剣。代償とした左眼より血を流しながらも、残った右眼は毅然と敵を睨みつけている。その禍々しき刃に満ちた膨大な時間流の魔力は、オブリビオン・フォーミュラである揺籠の君にも分かるだろう。
「それ、すごくいやなかんじがします……!」
 何かされる前に力を奪ってしまおうと、揺籠の君は聖杯剣で斬り掛かるが――リーヴァルディの動きが速い。
 時を跳び越える権能を利用した零時間移動。まるで古いコマ落ちの映画のように、敵の眼前から消え、死角に転移した彼女は、そのまま敵に振り返らせもせずに神剣を薙ぎ払う。

「……お前の望みを叶えさせる訳にはいかない。消えなさい、この世界から永遠に……」
 Ⅷの神剣の刃に触れた物質は、異なる時間に転移する。それ即ち、あらゆる防御を無意味にする必殺の斬撃。
 さっと横一文字に斬り払われた揺籠の君の身体に、あまりに滑らかすぎる断面が生じ――一瞬遅れて、血飛沫が勢いよく噴き出した。
「あ、あぁぁ……ゆりゆりの、いのち……」
 奪い集めた生命、そして自分の生命を抱え込むように傷口を抑える揺籠の君。だが出血が治まる気配はない。
 リーヴァルディが告げた通り、過去の時代より来たりし怪異に、この世界に居座る権利はない。本来あるべき骸の海に、還るべき時が迫っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

龍巳・咲花
揺り籠の君よ、今となっては真相は闇の中でござるが、お主なりに何かを想い全てを捧げ、骸の海を破壊するという目的を掲げたのでござろう
しかしお主が求めた強さは、拙者等とは相容れぬ強さでござった

先制攻撃と聖杯武器の引き寄せは、周囲に生やした龍脈鎖を巻き付け耐えつつ引き寄せる力を利用した牽制用の手裏剣投擲
直線攻撃の槍は動き回り周囲から生やした龍脈鎖を掴む形の急制動で回避
線攻撃の剣は縦切りや突きは槍と同様に、横凪は上半身を鎖に引っ張らせて屈むか足元狙いなら鎖を利用して飛びつつも空中で次の動きに備え、袈裟斬りは自分から生やした鎖も利用して方向に対して平行に身体を反らす様に回避する感じでござるな

先制攻撃後は引き寄せる力も利用した、身体に絡みつき動きを鈍らせるための鋼糸付きクナイの投擲、生やした龍脈鎖を武器へ巻付けによる牽制と共に、一気に距離を詰め敵に触れ龍牙葬爪を叩き込むでござる!
これは銀の雨降る世界に生まれ猟兵と成った拙者からの手向けでござる
来世では罪を犯すことなく求めるモノが手に入ると良いでござるな



「揺り籠の君よ、今となっては真相は闇の中でござるが、お主なりに何かを想い全てを捧げ、骸の海を破壊するという目的を掲げたのでござろう」
 その手段として聖杯に全てを捧げた結果、己の目的や本当に欲しかったものさえ忘れてしまった『揺籠の君』に、龍巳・咲花(バビロニア忍者・f37117)は少しだけ憐憫や共感に似た情を抱く。叶うならば理由を聞いてみたかったが、それはもう無理な話だ。
「しかしお主が求めた強さは、拙者等とは相容れぬ強さでござった」
 "いんよくのかぜ"にて全ての生命を奪い尽くし、世界の壁を超えて無限大に成長を続ける。彼女はもはやいちゴーストの器に収まらぬ、世界に迫る|終焉の危機《カタストロフ》そのものだ。この世界の守護者たる猟兵として、そして能力者として、絶対に見過ごす事はできない。

「あなたもゆりゆりがきらいですか。でもゆりゆりはみんなだいすきです。すべてたいせつないのちですから」
 激戦の末に満身創痍となった『聖杯剣揺籠の君』は、それでもまだ艶やかな笑みを浮かべて言う。自身の血で染め上げられた肢体は凄絶ながらも倒錯した美しさをたたえ、追い詰められてなおリリスの女王としての威厳は微塵も失われていない。
「ゆりゆりはおなかがすきました。あなたのいのちたべたいです」
 彼女が「神の左手」を振るえば【うずまくいんよく】が生じ、左手の権能と共に全てを引き寄せようとする。
 あの竜巻に呑まれてはいけない。咲花がぱしんと地面を叩くと、水晶化した建物の床から「龍脈鎖」が現れ、彼女の身体に巻き付いた。

「ここが正念場でござるな」
 吸い込まれないように鎖を片手で握りしめ、もう片方の手で手裏剣を投げつける咲花。引き寄せる力を利用して加速した投擲は、牽制としては十分以上の威力をもって標的に飛来する。揺籠の君は微かに目を細め、上体を反らしてそれを躱した。
「ゆりゆりもだいぴんちです。だけどがんばります」
 回避の動作で身体のバネをしならせ、全身の力で「聖杯剣」を袈裟懸けに振り下ろす。ユーベルコードを奪う無限射程の斬撃は、どれだけ遠くにいようが必ず届く――咲花は鎖に自分の身体を引かせ、斬撃の方向に対して平行に身体を反らすことで、辛くもそれを回避した。

「まだまだがんばります」
「大した根性でござるな……!」
 間髪入れずに揺籠の君は「リリスの槍」に武器を持ち替え、高速の刺突を繰り出してくる。無限に広がる"線"の攻撃だった聖杯剣に対し、こちらは直線上の"点"の攻撃。当たれば致命傷になるのは変わらないが、避ける側としてはまだ対処は容易か。
「拙者からも行くでござるよ」
 咲花は忍び走りで戦場を動き回り、周囲に生やした龍脈鎖を方向転換や急制動の軸に使って敵の攻撃を躱す。
 そして今度はクナイを二本取り出すと、足を止めることなく同時に投げつける。先程の手裏剣と同じように、揺籠の君はこれも躱そうとするが――。

「……あら? なにかひっかかりました」
 クナイとクナイの間に結ばれていた極細の鋼糸「龍糸銕線」が揺籠の君の身体に絡みつき、動きを鈍らせた。
 すかさず咲花は龍脈鎖を操り、リリスの槍と神の左手に巻きつける。最初からこれを狙っていたのであろう、一瞬の早業だ。ここが勝機とみた彼女は、体内で龍脈の力を練り上げる。
「捕らえたでござる」
「まだです、まだ!」
 2つの武器を封じられた揺籠の君は、残された聖杯剣を振るう。まずは接近を阻むために足元狙いの一振りを。咲花が跳躍で回避すれば、直後に返す刃が横薙ぎに襲い掛かる。空中では避けようがないように思われたが――彼女は残しておいた龍脈鎖に自分の上半身を引っ張らせ、強引に刃の延長線上から逃れた。

「これは銀の雨降る世界に生まれ、猟兵と成った拙者からの手向けでござる」
 紙一重の死線を潜り抜け、一気に距離を詰めた咲花は、「龍陣手甲」を装着した両の手で揺籠の君に触れる。
 その瞬間、龍脈から流れ込む破壊的な力の奔流が、標的の肉体を内部から破壊し尽くす。厳しい修行の果てに少女が編み出した、その技の名は――。
「龍陣忍法 龍牙葬爪」
 形なき龍の牙と爪が、悪に堕ちたゴーストに引導を渡す。水を打ったような静寂が戦場を満たし、揺籠の君がよろめく。彼女の身体は、まるで降り続ける銀色の雨に溶けるように、ゆっくりと薄く透明になっていき――。

「ざんねんです。ゆりゆりはまだ、ちっとも、みたされていないのに……」

 その言葉を最期に、オブリビオン・フォーミュラ『聖杯剣揺籠の君』は骸の海に還った。
 3つの聖杯武器も同時に消滅し、水晶の宮殿も元の姿に戻っていく。それは戦いの終わりを告げるように。
「来世では罪を犯すことなく求めるモノが手に入ると良いでござるな」
 彼女が消えた場所をしばし見つめてから、咲花はくるりと踵を返し、自らが生きる世界に、自らが護った世界に帰っていく。度重なる激戦により肉体は疲労しきっていたが、その胸中は穏やかな達成感で満たされていた。



 ――かくして、オブリビオン・フォーミュラの死をもって、第二次聖杯戦争は終結する。
 |銀の雨が降る時代《シルバーレイン》から蘇ったかつての強敵達から、猟兵達はこの世界を再び守り抜いたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月25日


挿絵イラスト