第二次聖杯戦争㉒〜ゆりかごのいる丘から
「しッかしお前ら、数ヶ月あれば見違えるように強くなるモンだな! 可能性の塊か?」
猟兵たちへと惜しみない称賛の言葉と拍手を送るのは明・金時(アカシヤ・f36638)だ。
「いや実際、流石の俺もここまで早く敵の喉元に喰らいつけるとは思ってなかったぜ。知り合いに何人かこの世界出身のグリモア猟兵がいるんだが、そいつらも驚いてたよ」
勿論いい意味でな、と目配せする金時。
「とは言え敵の親玉が、そうあっさりやられてくれるワケもねェ。まァ正直お前らならやっちまいそうな気もするが……油断は大敵だからな」
ある意味では、揺籠の君以上に。
そして、その揺籠の君――否、聖杯剣揺籠の君だが。彼女は今、聖杯の力で美しい水晶宮殿へと変貌を遂げた金沢大学、そこに架かる陸橋アカンサスインターフェイスの上で、猟兵たちを待ち構えていると言う。
「揺籠の君は『いんよくのかぜ』なるモンを周辺に巻き起こしてる。これをまともに喰らっちまった奴は、まぁ死ぬほど平べったく言っちまえば最終的には性こ――」
おおっと何処かから銃声が聞こえたぞ! 戦場だから仕方ないね!!
「何だよ、医学的表現だぞ」
それでも開け透けなので駄目です。
金時もそこにこだわりは大してないようで、説明を続けた。倫理は守られた。
「要するに、それで死んだ生命を食らった揺籠の君が延々強化されちまうワケだな。更に始末の悪いことに、この戦争が長引いちまえば、この風は極端に拡散されていく。この県の全域と来て、日本全域、世界全域――ッてな具合にな。ただ幸い、お前らが揺籠の君と対峙している間は、この風は止まるらしい」
しかしそれは同時に、揺籠の君が猟兵との戦いに全ての力を注力してくることを意味する。
聖杯が猟兵たちを『揺籠の君を殺しうる者』と認識し、己の力の全てを『聖杯武器』の戦闘力に変換したということなのだから。
「あらゆる物質を引き寄せる黄金の篭手『神の左手』! 突き刺した対象に宇宙の終焉まで癒える事のない毒を注ぐ『リリスの槍』! そして射程距離無限かつ命中した対象のユーベルコードを全て奪う『聖杯剣』! この能力を、ユーベルコードの他に使ってきやがるぜ」
これらにも対処出来なければ、聖杯剣揺籠の君を討ち果たすことは叶わないだろう。
その上、揺籠の君は猟兵たちが目的の陸橋へと辿り着いた瞬間、先んじてユーベルコードで機先を制そうとしてくる。そちらへの対策も練った上で、彼女の元へ向かわなければいけない。
「考えるべきことが多いのは、いつものことさ」
だが、この男は勝利を疑っていない。
猟兵たちを、信じているからだ!
「後は、ここまで想像以上の力と速さで辿り着いた、お前らの底力――魅せてやれッ!!」
絵琥れあ
お世話になっております、絵琥れあと申します。
金時はSEIKOSHIと言いたかったようです。成功したのに死んでしまうって意味かな?
※Attention!!
現在、筆者の執筆状況が著しく不安定です。
そのため、今回は【ソロ参加】かつ【オーバーロードのみ受付】とさせていただきます。
そして【最低成功数を達成した時点で締め切り】ます。
(※但し期待に添えないと判断したor全年齢から外れるプレイングはオーバーロードでも流します。完結後お返しいたします)
締め切りましたらタグにて告知いたします。
【戦争終了時or29日の0:00時点で戦争が終了していない場合】のみ、通常プレイングを受付けます。
私事で大変恐縮ですが、ご理解いただけますと幸いです。
戦争シナリオのため、今回は1章構成です。
第1章(ボス戦):『聖杯剣揺籠の君』
揺籠の君の先制ユーベルコードに対処することと、聖杯武器の追加能力に対処することでもプレイングボーナスが得られます。
追加能力に関してはオープニングまたは戦争ページをご参照ください。
断章なし、公開された時点で受付開始です。
それでは、よろしくお願いいたします!
第1章 ボス戦
『聖杯剣揺籠の君』
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POW : うずまくいんよく
【神の左手】による近接攻撃の軌跡上に【いんよくのたつまき】を発生させ、レベルm半径内に存在する任意の全対象を引き寄せる。
SPD : せいはいうぇぽんず
【あらゆる物質を引き寄せる「神の左手」】【癒える事なき毒を注ぐ「リリスの槍」】【対象のユーベルコード全てを奪う「聖杯剣」】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
WIZ : みだらなひとみ
【揺籠の君の淫靡な眼差し】が命中した部位に【淫欲に満ちた思念】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
イラスト:飴茶屋
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
よしこれは一発でももらったら詰むやつね、結界術受けは割られるんでしょ知ってるわ。
|高速詠唱早業先制攻撃封印術重量攻撃凍結攻撃マヒ攻撃気絶攻撃禁呪《タイムフォールダウン、時間質量の解放で時を凍結しあらゆる行動を禁じる》ことで回避の時間を稼ぎ、空間の切断解体から切断部位の接続で再構築し空間ジャンプで引き寄せから逃れ、仙術で位相をずらし或いは多重詠唱結界術で量子的可能性から回避の可能性へ収斂させることで槍と聖杯剣を回避するわ。
凌ぎきれたらリミッター解除、限界突破、オーバロード。精神寄生体として私の内にいる|『あの子』《アリス・ロックハーツ》の封印を解く。毛細血管を流れる|血潮《赤い糸》が|死がふたりを分かつまで《紡がれる愛は永遠に》私達を繋ぐ。
この身は|かばう《盾》、『あの子』まで攻撃は届かせない。故に私達は|継戦能力《同時に死ぬことはない》。|人造生命の創造《肉体の再構築》はなれたものよ。
さぁ、|大食い、魔力吸収《何もかも全てを喰らい尽くしましょう》
●
「ああ」
少女と女性の狭間。
その声音すら、生々しい色気を孕んで耳を、脳を溶かしかねない淫蕩の華。
「おまちしておりました」
揺籠の君は、確かにそこで咲っていた。
たおやかな乙女のかたちをして、しかし纏う武装は清く、禍々しく、物々しい。
アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202)は瞬時に悟る。
(「よしこれは一発でももらったら詰むやつね」)
今も肌を灼く圧倒的な聖杯の力が、警鐘を鳴らす。
(「結界術受けは割られるんでしょ知ってるわ」)
下手な小細工は通用すまい。
ならば最初から全開だ。出し惜しみはなしで行く。
「かわいらしいりょうへいさん。そのいのちもゆりゆりにください」
神の左手が縋るようにアリスへと向く。
ユーベルコードは間に合わない。ならば!
「|高速詠唱早業先制攻撃封印術重量攻撃凍結攻撃マヒ攻撃気絶攻撃禁呪《タイムフォールダウン、時間質量の解放で時を凍結しあらゆる行動を禁じる》」
「あら」
一瞬、ほんの一瞬!
それだけでも動きを止められれば、違う!
傾ぎかけた身体を藻掻くように捻り、空間を切断、解体。更に繋ぎ直して再構築。空間を跳躍、神の支配を振り切って。
「おもしろいことをしますね」
ではこれではどうですか――と。
向けられる刃と鋒!
(「使えるものは何だって使うわ」)
それが|混沌魔術師《ケイオト》の真髄なれば!
仙術で位相をずらす。槍を避ける。だが剣の一振りが迫る! けれどアリスには多重詠唱結界術がある。量子的可能性から回避の可能性へ収斂させる。聖杯剣は既のところで虚空を斬った。
さぁ、反撃の時間だ!
「リミッター解除、限界突破、オーバロード」
己自身の支配からすら、|己《アリス》を解き放って。
「わたし達が一緒なら――」
指先から伸びるは運命の絲。
「不可能なことなどなにもない!」
おいで、わたしの愛しい『|あの子《アリス・ロックハーツ》』!
毛細血管を流れる|血潮《赤い糸》が|死がふたりを分かつまで《紡がれる愛は永遠に》。
ふたりを繋ぎ、共に在り。結ばれた小指の主の鼓動が片一方でも途切れぬ限りは、どくどくと。ときめくように脈打ち続け。
(「この身は|かばう《盾》、『あの子』まで攻撃は届かせない」)
ゆえにふたりは、|継戦能力《同時に死ぬことはない》!
(「|人造生命の創造《肉体の再構築》はなれたものよ」)
こくり、小さく生唾を飲むような音が、微かにアリスの鼓膜に届く。
「かわいいひとがふえました」
「でも『あの子』は渡せないわね」
揺籠の君の眼差しを、アリスはただ一人で受ける。
甘く痺れる感覚がある。だが笑う。
ああ、そういうのも悪くない。
何でもないことのように流して、その口を開く。
「さぁ、|大食い、魔力吸収《何もかも全てを喰らい尽くしましょう》」
その強大な力も、それを象る魂すらも!
全部纏めて、アリスの中へとご案内!
大成功
🔵🔵🔵
凶月・陸井
真の姿:全盛期の能力者、装備は着流しに「護」の字の羽織
此処が最後の戦場だ。しかも相手は揺籠の君
俺は猟兵として、そして能力者として
絶対に勝って終わらせる
「見てろよ、これが俺達の力だ」
戦っている間はあの風が止まるなら好都合だ
これ以上犠牲を出させる気も
お前を強化させるつもりもない
「さぁ、俺の相手をしてもらおうか」
まずは敵の先制攻撃と聖杯武器に対処
せいはいうぇぽんずの発動に合わせて突進
引き寄せはこっちから近づくなら意味はなさない
槍と剣紙一重で避け、必ず効果を受けないよう
武器受けと見切りで対処
手数が多くとも極限まで集中して全て避け斬る
「悪いな、当たらないよ」
射程距離無限も離れないなら脅威ではない
至近距離であれば槍は元より剣も扱いづらいはず
超至近で【水遁「水刃手裏剣」】を使用
文字と水の鎖で縛り上げ
手の内に握った水刃手裏剣を敵に直接叩きつける
「喰らっておけ!」
だけど俺の一撃で倒せなくてもいい
俺が戦っている間少しでも一般人を護れて
俺の一撃のダメージが残ればいい
更に仲間達が準備を整えられる
「俺達が、勝つ」
●
(「此処が最後の戦場だ」)
揺籠の君と対峙して、凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)はその背に留紺をはためかせ。
背負うは変わらず『護』一文字。これまでも、これからも。
(「俺は猟兵として、そして能力者として、絶対に勝って終わらせる」)
俄に身体が震える。
――武者震いだ。
「見てろよ、これが俺達の力だ」
平素は秘めた全盛期の力も、全て解き放って向かう!
「つぎのおあいてはあなたですね」
揺籠の君は悠然と微笑む。既に手負いの筈だが、攻めの勢いが衰える気配はない。
だが、陸井は冷静だ。能力者であった時分から、強敵と相対してきた場数が物を言う。
(「戦っている間はあの風が止まるなら好都合だ」)
これ以上の犠牲は出させない。
だからもう、お前が強化されることもない。
護るために、止めるのだ。それが陸井の戦いだ!
「さぁ、俺の相手をしてもらおうか」
宣すると同時、揺籠の君が武器を構える――その動きに喰らいつくように陸井は突進!
引き寄せてこようと言うのなら、こちらから近づいてやるまでだ!
「せっきょくてきでうれしいです。てまがひとつはぶけました」
「生憎だが、お前の期待に添えそうにはないな」
神の左手が降ろされるも、続く槍と剣の連撃が待っている。だが、何度斬り掛かられようと構うものか。
それを往なすことに注力するのだ。紙一重でいい、研ぎ澄ませた精神で、全てを避け切って見せるのだ!
まずは赤黒き鋒――抜き放った短刀銃の、その『護身』の名の通りに銃身で我が身に迫るそれの先端を弾き!
息も吐かせぬ清き聖杯の水の色宿した剣は、既にその軌道を目で追っている。横薙ぎ一閃――見極めて、跳び上がる!
「悪いな、当たらないよ」
「ではゆりゆりとおどりますか。あなたがつかれてねむるまで」
距離すらものともせずに、刃を届かせるその剣も。
敢えて肉薄し、その特性も殺し。
(「至近距離であれば槍は元より剣も扱いづらいはず」)
あれほどまでの大剣だ。威力は推して知るべし――しかしその分、小回りも利くまい。
そこに、付け入る!
(「これが、俺の原点――この一撃は、確実に差し込む!」)
大振りの返す刃が戻る、その前に。
がら空きになった、剥き出しの細く白い脇腹に、狙いを定めて。
手の内に潜むは清水の|手裏剣《やいば》。
同時に展開させた戦文字と、浮かび上がる水流の鎖でその身を戒め。
「きんばくというものですか。わるくはないですね」
「言っていろ」
惑いはしない。
照準はぶれない!
「喰らっておけ!」
倒せなくてもいい。
護るための、繋げるための刃が今、至近距離で弾ける!
「いまのはけっこうききました」
揺籠の君が、少し驚いたような表情を見せる。
実際に、手応えを感じた。だが、倒れる気配までは見られない。
けれど陸井は絶望しない。寧ろ、この道の後には希望が続いていると、確信している。
(「俺が戦っている間、少しでも一般人を護れて、俺の一撃のダメージが残ればいい」)
陸井は独りで戦っているのではない。それを知っているから、続く仲間たちを信じて、託すのだ。
この世界を、そこに生きる人々を護る、その意志を!
「俺達が、勝つ」
大成功
🔵🔵🔵
葛城・時人
真の姿:全盛期の能力者・大人・錫杖装備
聖杯を持とうがどんな力を使おうが
銀誓館より出た者として
世界の敵だというなら倒す
錫杖を構え
「勝負だ!揺り籠の君!」
強く想起する
俺と命を共にするククルカン
能力が減衰し共に弱っていった時も
それでも離れなかった俺の蟲
「頼む」
命令でなく願う
強大な敵を倒す力になってくれと
「力を貸してくれ…!」
既に引き寄せが始まる中
全ての技能を励起し全力で集中し
抗う間に…炯々と輝く俺の蟲が無限にあふれ出す
可能な限り避け躱しククルカンにも護って貰うが
万一貫かれてもリリスの槍はまだ抗えるだろう
だが聖杯剣だけは話が違う
絶対に直撃を避ける
また蟲が溢れ出し俺を包み進路変更にも追従する
このまま高速で動く事にこそ勝機がある!
引き寄せに抗うのを止め身を躍らせ流れに乗る
猛攻でククルカンが俺を庇い消えていく…が
揺り籠の君が見えたっ!
UC光蟲の槍詠唱
更に引き寄せが来てももう構わない!
ククルカンを信じ全身で集中して
至近から気合を込め槍を叩き込む
「受けるがいい!俺の!光を!」
「俺達は!絶対に負けない!」
●
「やはりりょうへいのみなさんはつよいですね。せいはいけんがゆりゆりをころせるとみなしただけあります」
揺籠の君は猟兵を、それほどまでの強敵と認識している。聖杯剣だけではないのだ。
だが、それを解っていて、あまつさえ現実に傷つき徐々に追い詰められつつあると言うのに、彼女は微笑みを絶やさない。
葛城・時人(光望護花・f35294)は、少年の姿をしていない。
全盛期――青年の身と変じた彼は、澄んだ音を奏でる銀の錫杖を手に、凛と立つ。
(「それでも譲れない一線が、ここにはある」)
聖杯の力を手に入れ、その力を最大限に振るってくるだろう。
だが、時人のすべきことは、成し遂げたいと願うことは、その程度では決して揺るがない!
「銀誓館より出た者として、世界の敵だというなら、俺はお前を倒す」
そのひとつだけ。ひとつだけ、真っ直ぐに通す!
「かくごをきめたかお。かっこいいですね」
燦然たる生命の輝き。揺籠の君はそれが欲しい。
だが、渡さない。時人自身も、他の誰の生命も!
「勝負だ! 揺籠の君!」
手招くように翳された、神の左手を振り払うように。
しゃらん、歌う錫杖を突きつける。
それすらもお構いなしに、揺籠の君は招き寄せる。
陸橋からその足が離れる直前、時人強く想起した。
(「俺と命を共にするククルカン」)
あの日。
世界結界がオブリビオン化し、修復されたその時から、ククルカンもまた弱り続けていった。
それでも、純白の羽は変わらず時人と共に在った。
今も、時人の|蟲《とも》だ。
「頼む」
願う。命ずるでなく。
強大な敵を倒すために。
「その力を貸してくれ……!」
きゅい、と。
ひとつ鳴き声。同時に、時人の身体が傾いだ。
「ッ!!」
来た。それを悟る。
集中!
(「信じろ、ククルカンを、俺自身を!」)
炯々と輝く|俺の蟲《ククルカン》よ。
今、お前は無限に溢れ出て、この身を護ってくれている。
ならば、応えねば友として甲斐がない!
(「せめて聖杯剣だけでも万一を――」)
必ず避けて、反撃に転じなければならぬ!
そのためにも!
光の結界で阻み一瞬、タイミングをずらし、それでも割り入ってきた刃であれば反応する時間がある。
宙で身を捻り、敢えて刃の下へと滑り込むと錫杖の柄で受け、払い、転がる!
背中へ腕へ胸へ、道路の硬さを感じる。一先ず逃れた、その実感。だが終わりではない!
(「このまま高速で動く事にこそ勝機がある!」)
再び溢れ出す燐光が、時人を包み導く。
機を窺うように駆け巡れば、揺籠の君が焦れた。
「いまはちょっとじかんがないので。ごめんなさい」
甘い香気の混じる竜巻が、再び時人を呼び寄せる。
けれど今度は抗わなかった。竜巻の中央に身を踊らせれば、ククルカンが風に剥がされてゆく。
再び、迫る刃。これも護りの結界となった蟲たちが、光となって散り消えた。
(「けど、揺籠の君が見えたっ!」)
ありがとう、と。
そして、もう一度、を!
「受けるがいい! 俺の! 光を!」
後は突き抜けるだけだ!
「俺達は! 絶対に負けない!」
何度でも、|時人《とも》のため集う光蟲たちの槍を。
今こそ、揺籠の君に叩き込む――!
大成功
🔵🔵🔵
ユニ・バンディッド
アドリブ歓迎
「いんよくのかぜ」がとまっているなら…!
基本の悪魔的視力で、動きを盗み先読み回避スタイルで「リリスの槍」や「聖杯剣」を回避、あらゆる物質を引き寄せる「神の左手」には爆発物に武器改造・錬成したダガーを投擲・叩き込んでいくね。
爆風は咄嗟の一撃でヤバそうな「リリスの槍」や「聖杯剣」の緊急回避にも活かしていくよ。
隙を見て【デモン・フェイカー】発動、手品の様に生やすのは、精巧なる贋作「偽神の左手」「リリスの偽槍」「聖杯剣・偽」!
偽物?本当に?この存在感の前でも言い切れるかな?「神の左手」引き寄せには「偽神の左手」で対抗する様に引き寄せ合い無力化しつつ、「リリスの偽槍」「聖杯剣・偽」で応戦、凌いでいくね!。
そう何度も使える手じゃないから、きっとチャンスは1度きり!ボクのユーベルコードは、贋作生成だけじゃないよ!。それは、贋作対象になった「本物」の操作権を盗むこと!。
ゆりゆりの「せいはいうぇぽんず」の操作を盗って操り、騙し討ち!
だって、ボクはあくまで盗賊だもん。盗むのがお仕事だよ。
●
輝ける水晶の御殿、その主は淫蕩の姫君。
ユニ・バンディッド(贋作の悪魔・f31473)の靴音は、彼女へと至る橋へと響く。
「たくさんうごいておなかがすきました。あなたをたべてもいいですか」
問いかける、その声音も消耗を感じさせない。
確かにあと少しだと言うのに、圧倒的な強者の風格は崩れない。
だが、打つ手がないわけでは決してない。
(「『いんよくのかぜ』がとまっているなら……!」)
舌なめずりすら淫靡な光景。
彼女の白き器を満たせと、神の左手はユニの身体へと命ずる。
だが、素直に呑み込まれては贋作の悪魔の名が廃る!
「魅せてあげるよ、ボクの真髄を!」
待ち受ける黄金の掌へと、爆発物を改造した無数のダガーを瞬時に錬成、一斉に叩き込む!
爆風の反動で後退、宙返り。しかし聖杯剣の刃は何処へ逃れようとも迫る!
「にげてはいやですよ」
「ボクだって痛いのは嫌だからね……っと!」
更にダガーを投擲!
爆風で飛ぶ。しかし刃は空間を縮めるかのようにユニを追い続ける。だが、これで回避出来るなどとは思っちゃいない!
追撃が来るのは読めている。更に槍での連撃が待ち受けていることも。揺籠の君から『まず』奪ったのは、それを読み取るための時間だ!
今なら引き寄せも使えない。計算の上で己の身体を繰り軽やかに避ける!
伝え聞くのみなら隙のない武装と能力――しかし実際に相対して攻防を交わせば、見えてくるものもある。
(「流石に武器が大振りで、攻撃の直後はすぐに対応出来ないみたいだね。なら!」)
両手を広げる。
左手には黄金の籠手。
右手には赫く黒い大槍。
そして背負うは蒼く輝く十字剣――!
「あら、ゆりゆりのまねですか?」
「|贋作《まね》? 本当に?」
聖杯武器の模倣を掲げ、けれど贋作の悪魔は大胆不敵に笑う。
「この存在感の前でも言い切れるかな?」
余りにも精巧な偽りの財貨は――真実すら揺るがすほどに、その性質すら模倣する!
予め、敢えて距離を取ったユニを神の左手が捉える。だが、ユニもまた『偽神の左手』を翳して逆に相手を引き寄せる。
暫しの拮抗――破ったのは揺籠の君だった。
神の左手に頼るのをやめ、自ら肉薄。踊るように振るわれる槍をユニは『聖杯剣・偽』で食い止め、合間を縫って襲い来る剣を『リリスの偽槍』で巻き落とした。
だがこれでは防戦一方。ユニは目を光らせていた。
(「これはそう何度も使える手じゃないから、きっとチャンスは一度きり! 仕掛けどころ、間違えないよ!」)
まだだ。今はまだ耐え忍ぶ時。
耐えて、耐えて耐えて耐え抜いて――そして。
「!」
聖杯剣・偽が、ユニの手から弾かれる!
「ちぇっくめいとです」
今度こそ、真なる聖杯剣がユニの真横で輝いた。
首が落ちるのを待つばかりのユニは。
――笑っていた。
「つよがりですか」
「ううん、いつも通りだよ。教えてあげる、ボクのユーベルコードは、贋作生成だけじゃないんだよ!」
「――え」
距離に依らず確実に狙い外さぬ聖杯剣。
それが今、主である筈の揺籠の君の胴を裂く――!
ユーベルコード――デモン・フェイカーのもうひとつの能力。それは、贋作対象になった『本物』の操作権を盗むこと!
「だって、ボクはあくまで盗賊だもん。盗むのがお仕事だよ」
盗賊魔術流の――騙し討ちだ!
●
「ゆりゆりはまけたのですね」
両断された華奢な細腰。
薄れ消えゆく聖杯武器。
それでも、彼女の湛える微笑みは、清らかでありながら淫らな、彼女のものだった。
「やっぱり、さよならはいえませんでしたか」
ぽつり、向けられた言葉は誰へのものだっただろうか。
「うん? さよならなんてだれにいおうというのでしょう。おもいだすことはかなわないけれど、たぶんきっとそのため」
今は顔も名前も思い出せぬ、かの人のために。
叶っても二度と解らぬと、知っていても。
骸の海を、壊すと決めた。
「けれどゆりゆりがみたゆめも、これでおしまい」
きらきら、零れ落ちた想いと共に。
その存在も希薄になってゆく。
「りょうへいのみなさん、おやすみなさい」
そして君は一人になる。
見送りこそがせめてもの餞。
せめてどうか、素敵な夢を。
大成功
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