第二次聖杯戦争㉑〜冥府の大海獣、再臨
●閻魔王と巨大海獣
かつて金沢大学のあったという小立野は、漆黒の闇に包まれた大穴と化していた。
暗闇の中は人類の過去から未来の全てが混ざったような街並みと化しており、その一部は海に面した港町のような一角になっていて、水際に一体の巨大な異形が佇んでいる。
醜悪な巨影は人に似たかたちをしているが、肉体を構成しているのは触手、人間などでない事は明らか。
顔を覆うおぞましき触手に鮫の如き鋭い牙を生やした口、爛々と輝く瞳は罪を見通すかのような恐ろしい印象を与える。
胴体を構成する触手がもぞもぞと醜悪に蠕動し、そこから明らかに体積を無視した巨大な影がぬるりと姿を表す。
現れたのは巨大な白黒の体に金の一つ目を輝かせる巨大な海獣――ここではない、欲望の大海に存在した元七大海嘯『森羅』、かつて猟兵達に討たれた存在。
現れたかの存在はざぶんと水の中へ巨体を滑りこませていく。
その存在をこの地へと召喚したかの異形が名乗る名は、閻魔王『生と死を分かつもの』。かつてこの世界の生と死の境界線そのものであった存在は、オブリビオンとして変質してなお強大な力を有していた。
二体の巨大なオブリビオンは暗闇の大穴の中で静かに、やってくる猟兵達を待ち構えていた。
「第二次聖杯戦争も大詰めだね」
シャチのキマイラ、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)が集まった猟兵を前にそう切り出す。
「それで今回皆に行ってほしいのはかつて金沢大学の工学部があったという小立野だ。突然現れた闇の大穴……キリング・フィールドの中にいる生と死を分かつものを撃破してきてほしい」
生と死を分かつもの――かつて銀誓館学園で生命の敵である異形達と戦った者たちならその恐ろしさを知らない者はいないだろう存在の名。
「閻魔王……カクリヨファンタズムの世界で行方不明になってた存在を名乗ってるみたいだけど、どういう訳かこの場所に漆黒の大穴と共に顕現しているんだ。その穴の中は人類の過去から未来の全てが混ざったような、古今東西関係なしの建物がごっちゃになっている広大な空間で、何とも奇妙な感じ」
かつて銀誓館学園が決戦を仕掛けた時も奇妙な空間になってたらしいね、と首を傾げるヴィクトル。
「で、生と死を分かつものだけど……この大穴に入った者だけを自動的に攻撃してきて、戦場制圧してもトドメさせるかさえわからない。聖杯剣揺籠の君を撃破するまでに倒せなかったら閻魔王自身は消え失せてどこかに行くみたいだよ」
ちなみに閻魔王が去ってキリング・フィールドが消えても街並みは元に戻らないみたい、とシャチは付け加える。
「戦法については懐から一体の強大なオブリビオンを取り出して二体がかりで先制攻撃を仕掛けてくる。今回取り出されるのは……グリードオーシャンで元七大海嘯やってた『森羅冠す『オルキヌス』』、馬鹿でかいシャチっぽい一つ目の巨大海獣だね。海じゃないけど穴の中の漆黒の空間を海であるかのように泳ぎ、海水の呪いやどこからか海の生物を呼んで襲いかからせてくる。生と死を分かつもの自身も強力で、死の渦を放ってきたり、戦場全体に触手を放ち死を与えたり逆に味方を癒やしたり、問いかけとともに浄玻璃鏡から光線放ち続けたりしてくるみたいだよ。ちなみに問いかけの内容は『何の為に生き、罪を重ね続けるのか』、だって。あと、生と死を分かつものは猟兵の戦いを見ながら何か学ぶような仕草見せてくるけど、それを気にできるほど余裕はないと思うから全力で打倒してきてほしい」
説明はそれくらいになるかな、とヴィクトルは首にかけた鍵型のグリモアを手に取って。
「この生と死を分かつものは当然強敵だ。その上元七大海嘯とも共闘してくるから非常に厄介なことは言うまでもないよね。でも皆なら勝てると、信じてるよ」
そう締め括ったヴィクトルは鍵のグリモアを手にし、巨大な二体のオブリビオン待ち受ける冥き大穴への転送を開始するのであった。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
冥府から帰ってきたようです。
このシナリオはシルバーレインの『小立野』が変化した『|闇の大穴《キリング・フィールド》』で『生と死を分かつもの』および『森羅冠す『オルキヌス』』と戦うシナリオとなります。
閻魔王を名乗る生と死を分かつものは、その懐からオルキヌスを召喚し、2体がかりで猟兵に先制攻撃を仕掛けて戦いを挑んできます。
『羅針盤戦争〜冥府よりの大海獣』(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=32009)に登場した『森羅冠す『オルキヌス』』のユーベルコードは以下の通りです。
・POW : 冥海銀河オルキヌス・オルカ
【支配下にある海の生物】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[支配下にある海の生物]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
・SPD : 海帝覇濤ディープブルー
敵より【海に適応した生態をしている】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
・WIZ : 回帰狂濤ティクターリク
攻撃が命中した対象に【「海に帰りたい」という強迫観念】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【肺から海水が湧き出す呪い】による追加攻撃を与え続ける。
また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。
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プレイングボーナス……閻魔王とオルキヌスの「先制ユーベルコード」に、両方とも対処する。
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それではご武運を。
皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『生と死を分かつもの』
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POW : テンタクル・ボーダー
戦場全体に【無数の触手】を発生させる。レベル分後まで、敵は【死の境界たる触手】の攻撃を、味方は【生の境界たる触手】の回復を受け続ける。
SPD : キリングホール
レベルm半径内に【『死』の渦】を放ち、命中した敵から【生命力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ : 閻魔浄玻璃鏡
対象への質問と共に、【無数の触手の中】から【浄玻璃鏡】を召喚する。満足な答えを得るまで、浄玻璃鏡は対象を【裁きの光】で攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ニーニアルーフ・メーベルナッハ
羅針盤戦争当時はまだ猟兵ではなかった私ですが、このような敵もいたのですね…
しかし、生と死を分かつもの。かつて以上の恐るべき敵となったようですが…
負けるわけには、いきません…!
【蟲使い】で呼び寄せた蟲達を戦域に放出。
触手や海の生物達に襲いかからせてこれを喰わせ【継続ダメージ】、敵数を減らすことで両者の先制UCへの対策とします。
触手に対しては、私自身も【瞬間思考力】で周囲の状況を逐次確認しての回避やブレンネン・ナーゲルでの【切断】も交え対処を。
オルキヌスなり分かつものなりへの肉薄を果たせましたら、これへブレンネン・ナーゲルでの紅蓮撃を叩き込み、【焼却】して一気にダメージを与えていこうかと。
天王寺・七海
あら、かなり前に倒した相手が出てくるなんて。
七海ちゃん、久しぶりにやっていくのね。
海に帰りたい呪い、今回は避けまくるのね。(前回は海の中だった故、受けようが、種族的に問題なかったが、今回は空に浮いているが故、当たるとやばい)
だって、ここ、海じゃないし。
生きることが罪?
そんなわけないのね。
動物を食うのが罪だっていうなら、肉食は生きていけないのね。
そんな肉食だって、生を終えれば養分として大地や海に戻っていくのね。
というわけで、そこの魚類には、七海ちゃんがエアロストーム打つぜ!
なんせ、空気があるから、呼吸が続く限り何度でも打つことが出来るぜ!
そこの触手にも撃ってやるんだぜ!!
●そこはまるで冥界のようで
光すべてを吸収するような暗闇の大穴の底へ、転送された猟兵は降り立った。
地獄の底のような暗闇の穴の中に広がる混沌とした街並み。
東南アジアのような、地中海沿岸のような、或いは中南米のような、どことも定められぬ建築様式の建物が立ち並ぶ水上都市。
混然とした水上の街並みの領域の水際に、一体の巨大なオブリビオンはいた。
生と死を分かつもの――閻魔王を名乗る強大なオブリビオンは、触手で構成された巨体をやってきた猟兵達へと向ける。
それと同時に、その後方に広がる暗い海のような水面からぬっと巨大な海獣の頭部が突き出して、その金の瞳を向けた。
白と黒の巨大海獣、かつてグリードオーシャンの七大海嘯であったオルキヌスは如何なる道理かこの銀の雨の降る世界へと顕現していて、閻魔王と共に猟兵に敵意を向けてくる。
「あら、かなり前に倒した相手が出てくるなんて」
カラーリングだけならオルキヌスとよく似ている白黒の巨体を超能力で宙へ浮かべながら、シャチのバイオモンスターである天王寺・七海(大海の覇者・f26687)が口を開く。
グリードオーシャンで実際に戦った時と変わらぬ威圧感のあの金の単眼、声に反応しぎょろりと焦点を合わせてくる。
「このような敵もいたのですね……」
かつて能力者として戦っていたニーニアルーフ・メーベルナッハ(黒き楽園の月・f35280)、オロチ大乱の超巨大オロチなど巨大な敵と相対した事はあったが、この巨大海獣と相対するのは初めてとなる。
「しかし、生と死を分かつもの。かつて以上の恐るべき敵となったようですが……」
オルキヌスと同じくらいの巨体の触手の異形――銀誓館学園が人魔共存の勢力と共に概念空間で討ち果たした、生と死を分かつものは水の傍に佇み、禍々しい眼光を猟兵へと向けてくる。
かつてと同じ、それ以上の死と力の気配を感じ取りながら、ニーニアルーフは二枚一組のイグニッションカードを取り出して、起動の言葉と共に瞬時に武器を装着。
「負けるわけには、いきません……!」
オルキヌスが音もなく頭部を水に沈め、すると水の中から海の生き物たちが這い出して来る。
妖獣ではホワイトランスが近いか。水上の土蜘蛛を狙い次々と飛び出してきて、突撃の余波で水上都市の建築を砕き沈めていく。
それらを躱すニーニアルーフであったが、更に暗黒の空間に無数の触手が出現。生死の境界線たるそれは、生命遣いとして戦った彼女を死の側へと引きずり込もうと襲いかかる。
縦笛型の蟲笛を唇にあて、蟲を呼び寄せて襲いかからせる。虫には肉食のものも多く、次々に海の生物や触手に齧り付き潰されまた喰らい、互いに数を減らしていく。当然全てを食らい尽くすことは叶わないが、残りは紅炎の手甲で薙ぎ払い、瞬間的な判断で対応を選択し致命打を防ぎ凌いでいく。
そしてオルキヌスがの金の瞳が空を向く。その視線の先には空舞うシャチが一頭。
「七海ちゃん、久しぶりにやっていくのね」
超能力で飛翔する彼女を狙い、オルキヌスは口から水弾――ジェットカッターのような水流に等しいそれで撃ち落さんと狙う。
オルキヌスの呪いを乗せた水流を空舞う七海は超能力を駆使してひらり、ひらりと的を絞らせぬように回避していく。
(「だって、ここ、海じゃないし」)
この呪いは以前の交戦と同様に、海への回帰の強迫観念を駆り立てて肺に海水を溢れ出させる恐ろしいものだ。その時は戦場が海中であったから強迫観念の方は種族的にさして影響はなかったが、この暗闇の大穴で宙を舞っている今喰らってしまえばその影響がもろに現れてしまうだろう。
あのオルキヌスのおわす水たまりが海であろうとそうでなかろうと、思考を制限されるのは非常にまずい。野生の感覚でそう判断した七海は回避に専念する。
しかし、七海に対しても閻魔王の魔の手が伸びる。
触手の異形の腹の位置からずるりと出現したのは酷く清らかな気配を纏う水晶如き美しき鏡。
『何の為に生き、罪を重ね続けるのか』
問いかけと共に浄玻璃鏡から放たれる光線はオルキヌスの跳躍や音波攻撃を何とか回避している七海を狙い、裁きを下さんとしてくる。
しかしその問いかけへとの答えを七海は有している。
「――生きることが罪? そんなわけないのね」
罪を重ね続ける、それを彼女はあっさりと否定してみせる。
「動物を食うのが罪だっていうなら、肉食は生きていけないのね」
そして、そんな肉食の動物も生を終えれば養分として大地や海に戻っていく――シンプルでいて、生命には当たり前の循環の論理。
本来の死の宇宙の立場で生そのものを否定する異形である生と死を分かつものであったのならば、この答えは通じなかったかもしれない。
だが閻魔王に変質したからか、その答えに納得したようで浄玻璃鏡からの輝きが止んだ。
同時にニーニアルーフを襲う死の触手の勢いもやや弱まった。
閻魔王とオルキヌスの猛攻を凌ぎ切った猟兵達、今こそ反撃の時だ。
だがここで業を煮やしたか空中の七海を目掛け、そして水上都市の屋根を渡るニーニアルーフを建物ごと押しつぶすように、オルキヌスが大きく高く水面から跳ねた。
ギリギリ回避は間に合わない――迎撃の構えを取ろうとしたニーニアルーフに七海の声が響く。
「そこの魚類は七海ちゃんに任せていいんだぜ!」
荒っぽい口調に切り替えた七海がユーベルコード【エアロストーム】を起動、
「空気の有り難味、知っておくのね」
大きく息を吸って頭頂の呼吸器から一気に大量の空気を噴射する。
その空気が巻き起こすものは暴風、発生した乱気流がジャンプしたオルキヌスを空中に拘束、巨大海獣の眷属たる海の生物たちも範囲に巻き込んだ乱気流は彼らの動きを一時的に封じる事に成功する。
七海がわざわざ空中戦を選んだ理由はこれだ。呼吸が続く限り持続可能な拘束――とはいえ、50メートルほどもある暴れ回る巨体を完全に封じ続ける事は難しいだろう。
しかし時間を稼ぐことができたのならば。
「有難うございます! 一気に攻めます!」
ニーニアルーフは上空のシャチの猟兵に礼を言いつつ、閻魔王目掛け駆け出したユーベルコード【紅蓮撃】を起動、
「この一撃で、決めます……!」
速度を上げる彼女愛用の赤手に魔力で生み出した炎が灯り、触手で構成される異形の巨体の胴に鋭き爪を突きこんで、妖炎をその内側で弾けさせた。
内側から焼却されていく感覚を厭うてか触手が激しく蠕動し、暴れ狂う触手の余波で建物が破壊されていく。
燃え尽きる――とまではいかないその巨体、しかしダメージを確かに刻む事ができた。
そのタイミングで空中のオルキヌスを拘束する乱気流が途切れ、その巨体が水上都市を破壊しながら着水する。
即興の連携で最初の一撃は閻魔王に無事叩き込まれた。されど異形と巨大海獣は平静を取り戻し、全身から発せられる恐るべき死の圧力は健在。
この不気味な異形を討つべく、猟兵達は次な一撃を叩き込むために行動を開始する。
大成功
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キノ・コバルトリュフ
キノキノ、火力が足りないんだって?
だったら、焼き舞茸はいかが?
キノ!バルくんどんどん焼いていくよ!!
トリュフ!バルくん、いい焼き加減だね。
キノも奉納の舞いを頑張っちゃうよ!
マツタケ!!おいしく焼けたかな?
●闇に神火燃え上がり
猟兵達と巨大なオブリビオン達の戦いは激しさを増していた。
異形の触手と海獣の巨体、そして海の眷属達は時代も場所も混沌とした水上都市のような街並みを砕き、圧し潰し破壊していく。
幾つか攻撃を受けてなおオブリビオン達の攻める勢いは衰えない。巨大なだけあって生命力も強いのだろうか。
「キノキノ、火力がもっと必要そうだね」
この戦場にやってきたキノコつむり、キノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)というピュアリィはまだ無事な石造りの橋の上からオブリビオン達を眺めていた。
急所が分かればそこを狙うという手段もあるだろうけれども、彼女は巨大なオブリビオンの体全てを包み込むような強烈な火力が必要だと考える。
「だったら、焼き舞茸をあげないと」
そう言って彼女は星霊バルカンの『バルくん』を召喚、そんな彼女に気付いた閻魔王とオルキヌスは同時に彼女に襲い掛かる。
触手の異形が無数の触手の中から浄玻璃鏡をずるりと召喚、問いかけと共に裁きの光を放つと同時に黒白の巨体がキノ目掛け街並みを薙ぎ倒しながら突っ込んでくる。
「キノ! まずはしのぐよ!」
バルくんに呼びかけたキノは石造りの街並みを走り出す。
浄玻璃鏡から連続で放たれる裁きの光をギリギリのところで躱しつつ、突っ込んでくるオルキヌスを避けるよう大きく弧を描くように走り、時には屋根の上に飛び乗って追撃を回避する。
とはいえサイズ差は圧倒的、地の利を活かしながらもそれらを丸ごと無視して砕氷船のように突き進んでくるオルキヌスは見る見るうちに距離を詰めてきている。
攻撃を受ければ海に還りたいという強迫観念を植え付けられ、肺に満ちた海水で呼吸も奪われてしまう――そうなれば手の打ちようがない。
それを何とか回避して裁きの光を掠めさせつつ、キノはユーベルコード【神火大嵐舞】での反撃にかかる。
「キノ! バルくんどんどん焼いていくよ!!」
扇を開き舞い始めたキノの呼びかけに尾の先に炎を灯したバルくんがたっと駆け出した。そしてぐるぐると円を描くように走り、その中心に炎の渦が出現する。
バルくんが加速、更に炎の渦は勢いを増して向かってくるオルキヌスをも飲み込んだ。
その火力は極めて強烈、海の生物であるオルキヌスでは一たまりもない。悲鳴のような音を漏らした巨大な海獣は向きを反転させて、消火のため巨大な水溜まりの方へと体を沈めていく。
「トリュフ! バルくん、いい焼き加減だね。じゃあ向こうもやっちゃおう」
奉納の舞を捧げながらバルくんに指示するキノ、そのお願い通りにバルくんはより大きく円を描くように走り、閻魔王へと創世記の炎の渦を誘導した。
浄玻璃鏡からの光線は止まらないが、その直撃を躱しながらキノは頭のキノコの笠を大きく揺らし炎の渦の制御の為に舞いを続け。
火焔が閻魔王を呑み込む。触手が熱に縮み炭化して巨体の異形の全身が引きつるように痙攣するが、閻魔王はその状態から特に強烈な裁きの光をキノ目掛け放った。
足元の地面が裁きの光によって砕かれ、舞が乱れた。制御不能になる前にキノは咄嗟にユーベルコードを解除、創世記の炎の渦はふっと消え去った。
全身の触手を焼かれながら変わらず聳え立つ生と死を分かつものの巨体、そして水溜まりの方からは殺意に満ち満ちたオルキヌスが再び近づいてきている。
十分な打撃、しかしもう一押しがなければこのオブリビオン達の撃破はならないだろう。
そう判断しつつ、キノは彼女の元に返ってきたバルくんと共に次の行動にかかるのであった。
成功
🔵🔵🔴
宵空・鈴果(サポート)
こんにちりん☆ 夜空にキラめくエアライダー♪ りんかですりん☆
なるべく明るく前向きに振舞うりん♪ 新しいものや珍しいものを見かけたらとっても気にしちゃうところもありますりん☆
戦う理由は、夜の星や月の様に、夜の灯りとして暗闇を照らしてみんなを笑顔にするため。
隠れて努力をするけれど、ここぞという時はどっせいと泥臭く突撃する事も☆
都会に強い憧れ有り。
ランダム設定されるユベコは使っても使わなくてもどちらでもOKですりん☆ アドリブなどなどお任せしますりん☆
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
ティエン・ファン(サポート)
シルバーレイン出身の除霊建築士です。
明るく善良な性格で、できることがあるならば、できる限りを全うしようとします。
除霊建築士というジョブに拘りがあるため、その知識や技術が活かせそうな場面では、積極的にそれらを使って問題解決に取り組みます。
戦闘時は主武器のT定規と副武器の浄銭貫を用いて、近距離戦も遠距離戦も行います。
キャバリアが有効な場面では、『蚩尤』を使用します。
『蚩尤』は普段イグニッションカードに収納しています。
ユーベルコードは『蚩尤』搭乗時は”蚩尤”とついたものを、そうでないときはその他のものを状況に応じて使用します。
以上を基本として、シナリオに合わせて思うままに動かして頂ければと思います。
●夜に煌めく星とキャバリア
元能力者であり除霊建築士であるティエン・ファン(除霊建築学フィールドワーカー・f36098)の目で見てもこの街並みはぐちゃぐちゃだ。
様々な地域の建築様式が歪に継ぎ接ぎされたような渾然とした水上都市らしき街並みからは、知識があればあるほどに違和感とグロテスクさが感じられる。
そんな部分部分で見れば過去存在していた建築として載っていそうな建築群は今現在、怪獣の如き巨大なオブリビオンたちに蹂躙され破壊され続けている。
巨大な異形の放つ、これまた巨大な死の渦があらゆる生命を死の静寂へと導かんと勢いを増していく。
「すっごくでっかい怪獣りん☆」
都市の屋根から屋根へと軽やかに飛び渡り続ける宵空・鈴果(星と月のエアライダー・f37140)の明るい声が響く。
オルキヌスの突進も恐ろしいが、生と死を分かつものの放っている死の渦もあの巨大異形を中心とした領域に広がっており、大渦の如く建築物を破壊している。
アレに呑み込まれればひとたまりもないだろう。
着地地点の足場が砕かれた。とっさにティンクルスターを取り出して、そのやわらかな星を足場にして跳ねてティエンの傍へと着地する。
「それにしても厄介だね。あれ近づくのもかなり難しくない?」
追ってくるオブリビオン達を見、ティエンが呟く。
閻魔王を中心に放たれた死の渦を突っ切るように突撃してくるオルキヌス――この場の何よりも海に適応した生態であるからユーベルコードにより強化されている巨大海獣のような強引な方法は流石に真似できないだろう。
それでもどこかで反撃に転じねばジリ貧だ。二人は顔を一瞬見合わせ、状況を打開する為に反転する。
「|起動《イグニッション》!」
イグニッションカードを翳したティエンの言葉と共に出現した彼女の愛機『蚩尤』、それに搭乗してユーベルコード【蚩尤閃身撃】を起動する。
「グラビティコントローラー起動! foo、全力で機動制御! ――さあ、行くよ!」
サイキックキャバリアが背のメガスラスターを噴射、一気に加速する。
「あっちのシャチさんはりんかにまかせるりん☆」
コミュニケーターによる通信をキャバリアへと飛ばし、りんかは高速で突っ込んでくるオルキヌスへと向かう。
サイズの割に極めて機敏な事は既に承知、生半可な速度では対応されてしまうだろう。
だがりんかは星のエアライダーだ。銀誓館学園と接触する前はクジラを友とし極夜を求め半年ごとに北極と南極を交互に移動し続けていたというそのジョブは、闇の夜にこそ輝き照らすもの。
ティンクルスターも活用して連続で跳躍し一気に高度を稼ぎ、更に詠唱ハングライダーを広げる。
エアライダーの速度とオルキヌスの突進の余波による風圧を受けて空へと舞い上がり回避し、そしてくるりと一回転してユーベルコードを起動。
「お星さまにしてあげるりん☆」
その落下地点にはオルキヌスの頭部、キャバリアと比較しても遥かに巨大なオブリビオン達、いくら回避命中が強化されていようとこの位置関係なら外すことはない。ましてや、彼女の蹴りの速度ならば。
とりゃっ☆ と、極超音速蹴りがオルキヌス頭部の金の眼を撃ち抜いた。
そしてティエンは生と死を分かつものへとぐんぐん距離を詰めていく。
死の渦はサポートAIであるfooの補助もあり、的確に回避する地点を見出し接触を最小限に抑えている。
時折瓦礫に衝突するがその影響はない。驚異的な軌道で死の渦を掻い潜り空中から異形へと接敵する。
「これで終わりだよ!」
生と死を分かつものの巨体に蚩尤の両腕のインパクトパイルが突き刺さる。ティエンのユーベルコードにより蚩尤の攻撃はあらゆる守りを貫通する状態になっていて、触手はあっさりとぶち抜かれ生と死を分かつものに致命傷を与える。
その一撃が決め手、二体の巨大なオブリビオンが消滅したのは同時であった。
かくして激戦を終えた猟兵達は、グリモアベースへと帰還したのであった。
成功
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