第二次聖杯戦争⑯〜わんわん大乱闘
●ビャウォヴィエジャの森ではないけれど
のどかな石川県庁前に、一匹のゴーストウルフがいた。
狼の精悍さとはやや離れた、何だか弱そうなそのゴーストウルフこそ銀誓館学園が関わった戦争に三度参戦し、二度生還した歴戦のゴーストウルフ『震えるミント』である。
寂しげになくミントだが、恐れる事はない。
何よりも強大な護衛を呼び出す力が、その身には移植されているのだから。
ただ、頭の上に浮かんでいる奇妙な無限大マークの渦が気になるよう。だれかどうにかしてとでも言いたいかのように、一頭鳴き続けているのであった。
「……ゴーストウルフにもアイドル的存在? っているんだね」
疑問形だらけでクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)は集まった猟兵達にそんな風に切り出す。
「第二次聖杯戦争は順調に進行しているみたいだね。今回私が拾った予知もその戦争に纏わるもので、石川県庁前にいる震えるミントってゴーストウルフをどうにかしてきてほしいんだ」
震えるミント、その名前をかつて銀誓館学園の能力者であった猟兵の中には思い出す者もいるかもしれない。
人工島の戦い、ヨーロッパ人狼戦線2、そしてその最期の戦いとなったヨーロッパ人狼戦線3――何故か生き延び続けた普通よりはやや強い、けれど能力者には敵わない強さのゴーストウルフである。
「力は当時と同じらしくて、まあ弱い。弱いんだけどとんでもなく厄介なユーベルコードをハビタント・フォーミュラに移植されていてね。……フェンリルを群れで召喚してくるんだ。しかもミント自身の意志に拘わらず勝手に慕って出てくる個体さえいるみたいだよ」
人狼勢力の一部でもアイドル扱いされてたらしいけど、そのカリスマ性みたいなものを増幅されてるようだとクーナは説明する。
「単騎でも厄介なフェンリルだ。群れで出てきたら真っ向勝負で戦うのはまず不可能だろう。だからどうにか勝手に出てくるフェンリルの大群とミント自身が呼び出すフェンリルを上手く躱してミントを撃破してきてほしいんだ。もしくはミントの頭上には移植された膨大な魔力がこう、無限大マークの渦として顕現してるから、それを砕けばフェンリル達も全滅してそれでも勝利になるよ。ミント自身は狙われたら即座にフェンリルに守らせてくるから頭上の渦を狙う方がミントの反応も遅れてやり易いかもしれない」
渦を破壊された場合、フェンリルが消え去るのと同時に震えるミントはどっかに撤退するみたいで倒せないと予知されてるよ、とクーナは説明を終える。
「弱そうな相手だけどフェンリルの力は本物だ。上手くやり過ごして……逆に戯れる位の気合で? フェンリルを突破してどうにかしてきてね」
それじゃ、頑張ろうか、とクーナは話を締め括り、灯篭のようなグリモアを輝かせ猟兵達を石川県庁前に転送したのであった。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
弱いままでも大出世。
このシナリオはシルバーレインの『石川県庁前』で『フェンリルを統べる者『震えるミント』』をどうにかするシナリオとなります。
震えるミント自身は弱いのですが、ミントを慕う魔狼フェンリルの『群れ』が勝手に召喚されてしまいます。ミントの頭上に膨大な魔力が無限大マークの渦として顕現しているので、フェンリルが全力で守ってくるミントを撃破するかミント頭上の渦を破壊できればフェンリルの群れは全滅します(後者の場合ミントはフェンリル消滅のどさくさに紛れきゃんきゃん鳴きながらどこかに逃げるようです)
また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。
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プレイングボーナス……フェンリルの群れに対処する。
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追記、基本的には緩い感じのシナリオになる予定です。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『フェンリルを統べる者『震えるミント』』
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POW : なぜかフェンリルに慕われている
【魔狼フェンリル】を召喚する。騎乗すると【フェンリルの毛並みに隠れた】状態となり、【フェンリル頼みのパワー】属性とレベル×5km/hの移動力を得る。
SPD : けなげっぽい目で見つめて噛み付く
【かみつき】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【顔】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : くぅ〜ん、きゃんきゃん!
自身が【ぷるぷる不安な気持ち】を感じると、レベル×1体の【魔狼フェンリル】が召喚される。魔狼フェンリルはぷるぷる不安な気持ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
栗花落・澪
フェンリルさんと戯れて良いと聞いて
あわよくばミントさんとも戯れたいんですけど
無理かなぁ…
自身に【オーラ防御】を纏いつつ翼の【空中戦】
更に【催眠術】を乗せた【歌唱】でフェンリル達の寝かしつけが出来るか
無理でも動きを鈍らせる事が出来るか試してみます
優しい優しい子守唄
ミントさんも落ち着いてくれればいいんだけど
確実に間に合う距離まで掻い潜ったらダメ押しの【指定UC】
多幸感で一時的にフェンリル達の戦意を奪い
その隙にミントさんの方に接近
怖い思いさせてごめんね、驚かせたね
大丈夫、僕はすぐ帰るから
だからせめて君を助けるお手伝いさせてね
頭上の渦に狙いを定め
UC解除と同時に【高速詠唱】で雷魔法の【属性攻撃】
●歌声は魔狼に響き
ただ一頭、県庁前でふるふる震えるゴーストウルフは心細いのだろうか。
(「フェンリルさんと戯れて良いと聞いて……!」)
こそりと木の陰から様子を窺うオラトリオは栗花落・澪(泡沫の花・f03165)。
「あわよくばミントさんとも戯れたいんですけど、無理かなぁ…」
今はミントだけしか見えないが、近づけば現れたフェンリルや血に飢えたゴーストウルフのの群れにめちゃくちゃにされてしまうことだろう。
ただ今の状況はミント自身もあまり良くわかっていないようで、フェンリル召喚のエネルギー源である頭上の無限大マークの渦を時折見上げて不安そうにしている。あれを破壊しなければミントはこのまま勝手に召喚されるフェンリル達により破壊をばらまくことになるだろう。
だからまずは止めるために、澪はオラトリオの翼広げ飛翔する。突然現れた影にミントは毛を逆立たせ、それに伴い数十頭のフェンリルが出現する。
恐ろしい形相の彼らの目が一斉に澪を捉え、空間を引き裂きゴーストウルフ達を召喚。一斉に襲いかかってくる。
防御のためのオーラ纏う澪は魔狼の波状攻撃を回避しつつ、優しい声で子守唄を歌う。歌で眠りにつくという地獄の番犬とは別物であるが、催眠術を乗せた歌声は僅かにフェンリルの動きを鈍らせる。
(「これだけじゃ寝かしつけまでは無理ですか」)
少々残念ではあるが、生じた隙を突いてゴーストウルフの中に隠れた震えるミントへ距離を詰めていく。無限大マークが目立つから見間違えることはないミント、歌声が聞こえてないのか余裕がないのか毛を逆立てぷるぷる震えている。
フェンリル達は澪をミントに近づけぬよう間に割り込むよう飛び込んでくるが、この距離なら届く――そう判断した澪は羽ばたきを止めて祈りを捧げ、ユーベルコードを起動。
「ちょっと時間稼ぎに付き合ってもらうよ」
ふわりと。
日本海側の厳冬の冷たさが和らぎ春風がやってきたような幸福感が戦場を包みこむ。
ユーベルコードで澪の体から放出された多幸感は、魔狼たちの戦意を削ぎ落とし、その攻撃行動を停止させることに成功した。
心なしか震えるミントの表情もほんわか和らいでいるように見える。
ただこのユーベルコードには制限時間がある。あまり時間をかければ澪自身の命も危険にさらされるから、手早くごろりと寝そべり始めたフェンリルやゴーストウルフ達の間を抜けて、ミントの側へと翼羽ばたかせ飛んでいく。
多幸感の中に見知らぬ人の接近という恐怖、不安が混じりどうすればいいのかわからないかのように固まったゴーストウルフ。
「怖い思いさせてごめんね、驚かせたね」
大丈夫、僕はすぐ帰るからと優しく怖がらせぬよう優しくその毛並みを人撫でして、
「だからせめて君を助けるお手伝いさせてね」
ユーベルコードの解除と共に詠唱を開始。
多幸感が消えて敵対の意志を取り戻した魔狼たちが動き出す前に詠唱を終え、雷の魔術をミント頭上の渦に叩き込んだ。
落雷のような一撃は無限の渦を一瞬乱し、すぐに元の形へと戻る。このまま攻撃を数度重ねれば渦は元の形を保てず霧散することだろう。
魔狼の咆哮と共に血に飢えたゴーストウルフの群れが澪に襲いかかる。それを空中に飛んで回避した澪は、フェンリルの噛みつきや前足の叩きつけを避けつつ一旦ミントの側を離れたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
中村・裕美
「フェンリル相手に斬り込む……うふふ、心ときめくシチュエーションですわね」
副人格のシルヴァーナで参戦
「まずは近づかないことには始まりませんわね」
【早業】で【残像】を残すような緩急つけたステップでフェンリルの視線や光線をかわしつつ、接近したらフェンリルの足元を【九死殺戮刃】で二刀の斬殺ナイフで斬り進んで(一発は自傷しつつ)ミントの元を目指す
「チャオ、照れ屋さん♪」
噛みつかれても「これでわたくしの顔、覚えてくださいまして?」などとチャーミングに笑いかけつつ『 Zanne di squalo』の刃を射出して魔力の渦を撃ち抜く
「貴方はとても面白い存在ですもの。殺すにしても別の機会に、ですわ」
ローズ・ベルシュタイン
アドリブや連携歓迎
■心情
ミントも生き延びると、カリスマ性を持つのですね。
強大なフェンリルを多数従えるのは厄介ですし
早く無限大マークの渦を破壊しましょう。
■行動
フェンリルの群れに対抗ですわ。
敵の数も多いでしょうから、私は夕暮れ時に薔薇は踊り咲く(UC)を使用して
戦います。
敵が私の攻撃範囲内に入る位置まで【ダッシュ】で移動し
そこから【範囲攻撃】でUCを発動させて纏めて攻撃しますわ。
【マヒ攻撃】も織り交ぜつつ敵の動きを止める様にしながら戦いますわ。
敵に囲まれない様に注意し死角からの攻撃は【第六感】で察知し
【盾受け】で防御。
無限大マークの渦は『プリンセス・ローズ』を用いた【スナイパー】で破壊しますわ。
●令嬢たちと魔狼の舞踏
召喚されたフェンリル達は、彼らと比較して遥かに小さな震えるミントを気遣う様に伏せてその様子を伺っていた。
「フェンリル相手に斬り込む……うふふ、心ときめくシチュエーションですわね」
優雅な所作の白髪の令嬢、中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)――の副人格のシルヴァーナがうっとりとした声で言う。
「ミントも生き延びると、カリスマ性を持つのですね」
その様子を見ながら夕焼け色の髪をなびかせ、ローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)は呟く。
ミント自身は状況がよく分かっていない風に尾を丸めて耳も伏せているけれども、仮にあのカリスマが攻撃性の方に転がってしまえばどのような惨事になる事か。
「強大なフェンリルを多数従えるのは厄介ですし、早く無限大マークの渦を破壊しましょう」
あのミントの頭上に浮かんでいる禍々しい渦、アレを破壊してフェンリル召喚術式を破壊すれば少なくともフェンリル達はこの場から消滅するのだという。
だが、近づかねばフェンリルが身を挺してミント、或いは無限大の渦を庇い攻撃は届かないだろう。
「まずは近づかないことには始まりませんわね……ええ、行きましょう」
シルヴァーナも狙いを同じくし、二人の令嬢はフェンリル達の群れに隠れた震えるミントを目指し、攻撃を開始した。
ダッシュでフェンリル達に接近するローズは、愛用の剣を抜いてユーベルコード【|夕暮れ時に薔薇は踊り咲く《ローズ・ワルツ》】を発動する。
「さぁ、数多に咲き誇りなさい!」
彼女の武器たる剣が無数の夕焼けの色の薔薇の花弁に変わり、舞い始める。標的はフェンリル、その大きな顔に橙の花弁が舞ってマヒにより動きを鈍らせながらダメージを刻んでいく。
だが、
「……大きい、ですわね」
数が多く一体一体が精強なフェンリルだが、特に厄介なのは巨大さ。
見上げるような高さに見合った体長であり、ローズの間合いの中に一度に捕捉できる数自体はそれほど多くない。
更にその精強さで薔薇の花弁に耐えながら、怒りも露に空間を引き裂きゴーストウルフたちを召喚してくる。
直に襲い掛かってこないのはマヒの影響だろうか。飛びかかってくるゴーストウルフ、そして範囲外からいきなり飛び込んでくるフェンリルの攻撃を第六感で察知しつつ橙薔薇の意匠の盾で受け流し、ダメージを避けながらローズは痺れ齎す橙の花弁をばら撒いていく。
華やかに舞う薔薇の花弁で積極的に攻撃するローズとは対照的に、シルヴァーナの方は静かにフェンリル達の隙間をすり抜けるようにして進んでいた。
魔狼と比べ小さい事を活かした隠密行動、そもそもそれはシルヴァーナの得意とするところだ。
緩急付けたステップでフェンリルやゴーストウルフ達の虚を突きながら視線を向けられないように進んでいく彼女は、二振りの惨殺ナイフを抜いてユーベルコードを起動、すれ違ったフェンリルの脚先を切り裂き足止めを仕掛ける事も忘れない。
刃の一つで自身を傷つけ、寿命を減らさないようにしつつフェンリルを混乱させて、ようやく震えるミントを視界に捉えた。
「チャオ、照れ屋さん♪」
チャーミングに微笑むシルヴァーナ、だがその表情に邪気を感じたのかミントはけなげな瞳で見つめ彼女に噛みついてきた。
「……これでわたくしの顔、覚えてくださいまして?」
痛みはある。けれども微笑みを崩さず、シルヴァーナはミントの頭上を見上げて惨殺ナイフの片割れの『 Zanne di squalo』を向けて、刃を発射。
「今ですわ!」
そこで夕焼け空色の髪の令嬢が精霊銃『プリンセス・ローズ』を抜いて、シルヴァーナに合わせ渦に向かって発砲。
刃と銃弾の連続攻撃が無限の渦を一瞬かき乱す。渦は直ぐに戻ったが、時折ノイズが走るかのように揺らぎ、不安定になっている事は間違いない。
だが二人の攻撃もそれまで、渦やミントを攻撃すると明確に認識したフェンリルの群れが彼女達に攻撃を仕掛けてきたのだ。
「貴方はとても面白い存在ですもの。殺すにしても別の機会に、ですわ」
シルヴァーナはミントに笑顔を向けて言い残し、襲い掛かるフェンリル達を華麗に回避しながら撤退にかかる。
「こっちですわ!」
退路を確保していたローズと合流し、二人の令嬢は一時戦場を離脱するのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ロラン・ヒュッテンブレナー
・アドリブ絡み歓迎
ミントさん、姿が見えないくらいフェンリルがいっぱい居る…
かすかに声が聞こえる…
助けてあげられるかな?
生後10ヶ月程度の子狼に変身
これで身体も小さくなるし、あのフェンリルの足下に紛れて盾にすれば少しは凌げるかな?
結界を多重詠唱して、勇気を出して、ダッシュなの!
狼の脚力を活かして渦に近づいていくよ
あの渦の下に、多分、居るはずなの
ミントさん、怖がらないで
今、あれをどうにかするからね?
噛まれても反撃はしないの
フェンリルにも、ね
巨体を駆け上って渦を捉えるの
高速詠唱、UC発動
増えた分の槍も全部、渦に撃ち込むの
ミントさん、ここは怖い物がいっぱいだから、静かなところに逃げて
●狼の中に隠れるには
人狼の少年、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)が金沢県庁へやってきた時、周囲は既にフェンリルの群れがうろつく魔境と化していた。
「ミントさん、姿が見えないくらいフェンリルがいっぱい居る……」
ただでさえ巨体のフェンリル、それが群れでいるなら遥かに小柄な震えるミントの姿が見えなくなっても無理はない。
フェンリル自体は震えるミントを慕っている様子で、踏み潰したりわざと攻撃の余波に巻き込みはしないだろう事は有難くあるが、それでも不安げなか細い声は止まらない。
「……助けてあげられるかな?」
優しい少年は、先の猟兵と同様にミントを害さずこのフェンリル達だけをどうにかする方法を思案する。
フェンリル達の間に見えるあの無限大マークの渦、それさえ破壊できれば魔力の供給源を失った召喚術式は停止し、この場のフェンリル達は消え失せるとのこと。
しかしフェンリル達を掻い潜ってあの渦に攻撃を加える事は困難だ。何か近づく為の作戦が必要だろう。
ロランは思案し、人狼としての力で子狼に変身する。生後10か月程度――小さな姿はフェンリルに召喚されるゴーストウルフより二回りは小さく、目立つ事もないように思われる。
小柄な体でできるだけ気配を隠しながら結界でその身を覆い、大胆にもフェンリルの足元付近を走り渦の近くへと向かっていくロラン。
敵であると気づいたフェンリルは体を倒しその巨大な胴体で踏みつぶそうとするが、それをすんでの所で滑りぬけて子狼は速度を落とさずに走っていく。
子供といえど狼の脚力は素晴らしく、見る見るうちに元凶である渦へと近づいて行って、
(「あの渦の下に、多分、居るはずなの」)
――いた。
毛並みを逆立て震える姿は歴戦のゴーストウルフとは思えないミント。その真上には禍々しいほどの魔力の塊が見える。
そして現れた彼に対し、震えるミントはけなげっぽい目で見つめた後に子狼に噛みついた。
「ミントさん、怖がらないで。今、あれをどうにかするからね?」
優しく語り掛けるロラン、結界に守られているから彼に傷はない。
反撃はしない。それは、フェンリルに対してもだ。
攻撃しているミントを巻き込まぬよう動きを止めたフェンリルの前足に向かって一気にロランが駆け出した。
エネルギーの体を一気に登り、渦が真横に見える程度の高さまで近づいて跳躍、変身を解除しユーべるコードを起動する。
「身に受けし傷、流れる滴に、乾く槍。我が敵を追い、悉くを、喰らい退けよ。ヒュッテンブレナー式殲滅結界、射出」
高速詠唱から放たれたのは破邪結界の槍。フェンリルやミントの攻撃で受けたダメージ量に応じ攻撃対象の数を増やすそれは、標的の力を吸収して威力を増す。
標的が魔力の塊であるならばどうなることか、ロランは増えた分も含めた槍を一斉に渦に向かって射出した。
穿たれる渦、形を崩しややゆっくりとした速度で元の形に戻っていく。まだまだ攻撃を重ねる必要はありそうだ。
着地したロランは離脱する前に、ミントに一言だけ残し再び子狼に変身して離脱する。
――ミントさん、ここは怖い物がいっぱいだから、静かなところに逃げて。
その願いが届くのかどうかはわからないが、震えるミントはきょとんとした顔で子狼の背と尾を見つめ続けていた。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
戯れる位の気合ででっすかー!
つまりつまり、踊ればよいということでっすねー!
急にハイテンションで話しかけても驚かせちゃうでっしょうからねー!
のどかさに惹かれてるようですし、ホームシックもあるかと!
故郷の森を思わせる広大で長閑な歌でリラックスしていただきましょう!
フェンリルさんがいらっしゃった時もそのままゆったり踊るのでっす!
ミントさんやフェンリルさんが痛くないよう、無理のないゆるゆる~っとした踊りで!
ゆるゆる過ぎてフェンリルさんの攻撃も痛くない位に!
ミントさんとフェンリルさん達が互いにぶつかったりしないようにも注意!
踊り疲れてゆったりしてらっしゃるようならその隙に渦を壊させてもらいましょう!
●わんわん魔狼の為に藍ドルは踊る
「戯れる位の気合ででっすかー!」
賑やかにやってきた素敵なお洋服姿のダンピールは紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)。
ここでのフェンリルは数が多い、真っ向勝負は自殺行為だから戯れる気概で魔狼の巨体から繰り出される暴力を適度に受け流しつつ挑むのが良策なのだろう。
つまりは目立たず隠れて近づいたりだとか、敵意を無効化してどうにかするとかそういう類の作戦であり、
「つまりつまり、踊ればよいということでっすねー!」
どこをどうしたらその解釈になるだろう。
「急にハイテンションで話しかけても驚かせちゃうでっしょうからねー!」
それは正しい。いきなり大声で叫ばれたら誰でも警戒してしまう。
ちなみに藍は動物会話の技能を高めているため意思疎通はそれなりにできるとも思われる。
「のどかさに惹かれてるようですし、ホームシックもあるかと!」
ゴーストウルフの故郷は欧州のビャヴォウィエジャの森にあると聞く。つまりその森を思わせる広大で長閑な歌を歌いリラックスして貰おう、というのが藍の作戦である。
「それでは皆様、ご一緒に! レッツ・ダンシングなのでっすよー!」
テンション最高な藍はまずはゆったりとしたリズムで踊り始める。
魔狼にとってはよくわからない動きを披露する藍に対し、なんやなんやとフェンリル達が寄ってくる。引き裂かれた空間からゴーストウルフ達の増援付きだ。
じーっと魔狼の群れに見つめられる圧は相当なものだが、藍は動じない。鼻先が目の前にまで迫って鼻息が感じられる距離まできても動じない。
ゆったりと動き続ける藍の動きを見つめ続ける魔狼に変化が生じる。
藍のリズムに合わせるように体を揺らし始め、まるで釣られて踊るかのように体を動かし始めたのだ。
ユーベルコード【|藍ちゃんくんと愉快な観客達!《リー・アー・アイチャンクーンッ》】発動中の今、藍が最高のパフォーマンスからダンスを繰り出したことでフェンリル及びゴーストウルフ達は、ついつい釣られて体を動かしてしまう。
ゆるゆるすぎる動きに制限されたフェンリル達の動きはうっかり藍がはたかれても大して痛くはない程度、ミントが踏み潰されたりすることもないよう微調整を加えた気遣いの行き届いたダンス。
暫く慣れない踊りを続け疲れた様子の狼たち、その隙に藍は伏せている震えるミントの頭上の渦へと狙いを定めて。
歌声が響き、また渦がかき乱される。じりじりと揺らぐそれは、あと一手で崩れる事だろう。
ただ、魔狼達を惹きつけつつ渦を攻撃するのもこれが限界だと藍は直感する。
後の破壊は他の猟兵に託すことにし、藍は最高のパフォーマンスを披露し続けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ルエリラ・ルエラ
【アドリブ・改変大歓迎】
おっと可愛いお犬様発見伝
もふもふしたいな…もふもふしよう!
というわけで「ヘイ、ミント!もふもふしにきたよ!」と即宣言
ふっ、上手く行くとは思ってないよ。ぷるぷる不安な気持ちに当然なるだろうから【どこでも芋煮会の会場設置】!
いいんだよフェンリルを沢山呼び出してもいいんだよ
みんな纏めて犬用の美味しい芋煮をご馳走してあげるからね!!!
美味しい芋煮を振舞って、敵意のなくなったフェンリルに私の目的はもふもふするだけだからとフェンリルもミントももふもふしてみんなで記念写真もパシャリ
満喫した後は、ミントも困ってるからマークは壊しとくね。またもふもふさせてねってバイバイしながら破壊するね
●唐突な芋煮会が魔狼の群を饗す
「おっと可愛いお犬様発見伝」
金沢県庁前の魔狼たちひしめく光景を見たルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)という青髪のエルフは、街中でよさげなお店を見つけたような軽いノリで評する。
それもその筈、猟兵のユーベルコードがあれやこれやでフェンリルにゴーストウルフがゆったりとした踊りを踊り続けているのだから。
疲れてぐでっと伏せているゴーストウルフ、巨体でゆったり踊るフェンリル、その中になんか震えながら恐る恐るというように踊る震えるミントをルエリラは視認する。
思考。
フェンリル達はヤバい。これは間違いない。ゴーストウルフも血に飢えてるから囲まれればヤバいかもしれない。今はダンスしているが、うっかりすれば震えるミントを慕う魔狼たち全ての敵意が自分に向いてくるかもしれない。
そう、触ろうとして怖がらせてしまうとか逆鱗に触れてしまう可能性のが普通に考えれば高いだろう。
「もふもふしたいな……もふもふしよう!」
――彼女は、極めて欲望に正直であった。
そっと震えるミントへと近づいた彼女は、
「ヘイ、ミント! もふもふしにきたよ!」
元気に挨拶。なんかダンスっぽい動きをしている震えるミントがびくっとし、ルエリラの方を振り返る。
心の底からの好意から発された言葉だが、勢い良すぎて逆に不安になってしまったようだ。
フェンリル達がボディガードのような険しい表情で睨みつけてくるが、ダンスに釣られ続けているからか或いはまだミント自身が不安な気持ちになっていないからか、攻撃行動にまでは移ってこない。
この状態は薄氷、少しでもルエリラが近づくか何もせず時間が経てば不安な気持ちのが上回ってしまう事だろう。
「ふっ、上手く行くとは思ってないよ。ぷるぷる不安な気持ちに当然なるだろうからね」
だから、ルエリラはユーベルコードを起動した。
「いらっしゃーい! ここが芋煮会の会場だよー!」
その言葉と同時、緑豊かな金沢県庁の広々とした空間の一部が芋煮会の会場へと様変わりした。
ルエリラから半径120メートル以内、その空間は芋煮会の会場となり射程内に捉えられたフェンリルやゴーストウルフをその影響下に置く。
つまり、平和を愛する心と芋煮への愛と食欲を強化され、同時に戦闘行動と敵意が弱体化されるやさしい空間。
「いいんだよフェンリルを沢山呼び出してもいいんだよ。みんな纏めて犬用の美味しい芋煮をご馳走してあげるからね!!!」
犬、もとい魔狼用の芋煮をたーんと準備したルエリラに魔狼達は顔を見合わせ、けれど湧き上がる芋煮への愛に誘われるまま近くの芋煮鍋を味わい始める。
味自体は彼らの満足のいくものだったらしく、巨大なフェンリルなどは鍋ごと喰らう勢いだ。
範囲外から近づいてくるフェンリルも、範囲に入った瞬間に敵意が弱体化されて芋煮の虜にされてしまう。
「大丈夫大丈夫! 私の目的はもふもふするだけだから!」
そんな事を宣いながらフェンリルをさらっとなでもふしつつ、小さく取り分けた芋煮にチャレンジしているミントへと近づいたルエリラは、そーっと、慎重にそっと触れてみる。
――毛並みは意外に狼らしい固さ、それでももふもふふかふか指先で堪能するには十分。
不安にさせぬようにほんの少しだけその手触りを楽しんだエルフは、次にフェンリルも一緒になるようにカメラの角度を調整してタイマーで記念写真をぱしゃり、出来た写真は中々の出来栄えだろう。
「さて、そろそろ……」
十分魔狼達との時間を満喫したルエリラは、本来の目的に取り掛かる。
この震えるミントを困らせている頭上の無限大マーク、それを破壊する事がルエリラの狙いなのだ。この距離なら外しはしないだろう。
そして、ミント頭上の悪しき渦に向け、矢を放つ。
敵意を弱体化されているこの空間では妨げるものはなく、けれど攻撃の威力は弱められている。
それでもここまで猟兵たちが破壊せんとしてきた渦はあとひと押しで砕ける、十分だ。
射抜かれた渦がとうとう砕け散り、それと同時に召喚を維持するエネルギーを絶たれたフェンリルとゴーストウルフのの群れはその姿を消失させていく。
後に残るは震えるミントただ一匹。
「またもふもふさせてね」
きゃんきゃん鳴いて走り出したミントの背に、バイバイと手を振るルエリラ。
そして、どこかに去っていくミントの姿をこの場に集った猟兵たちは見送ったのだった。
かくしてフェンリルを統べし偉大なるゴーストウルフ『震えるミント』は討たれる事無く、金沢県庁に平和が取り戻された。
大成功
🔵🔵🔵