第二次聖杯戦争⑳〜いのちのゆくえ
男は、生命を撒く槍の主であった。
とおい過去で、槍は男はを聖別し、この世界で己を振るう唯一の主とした。
だが、男は過去へと流れ逝き、槍はそれよりも遥かに長い時を経て、己が撒いた生命を賛える者達を連れて新たな世界へ旅立った。
――はず、だったのだ。
●
「お疲れさまです」
神塚・深雪(光紡ぐ|麟姫《りんき》・f35268)が、頭を下げた。その表情は、固い。
「ディアボロスランサーが、この世界に喚び戻されようとしています」
生命を撒く槍、ディアボロスランサー。この世界に生命を撒き、新たな|宇宙《せかい》へと旅立った筈だった。その槍が、喚び戻されようとしているのだ。
「金沢湾を占拠した、|都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》。
確かにかつて敦賀で、当時対立関係だった大陸妖狐と戦った際に早々に倒された|強敵《ネームド》の神将だったのですが……」
この|都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》が、|生命を撒く槍《ディアボロスランサー》に、唯一振るう事を許された者なのだという。彼は、神将の軛から解かれ、骸の海へ至った際何かを見て、生命に絶望したのだという。
「彼が骸の海で何を見て、どうして絶望したのかは、今は判りません」
ただ、それにより、彼は自身が拵えていた術式を、当時の目的と変えて発動させ、|生命を撒く槍《ディアボロスランサー》を、その手に喚び戻したのだ。
「現状、まだ、|生命を撒く槍《ディアボロスランサー》そのもの全てが喚び戻せてはいないようで、大きさも小さいですし、そこに宿っていた生命の光も失せています」
ただ、と、深雪は続ける。
「|生命を撒く槍《ディアボロスランサー》は、この世界を去っていく際、能力者達で望んだ者を共に連れて去りました。彼等が、あの中で眠っているんです」
|都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》が倒されれば、彼が発動させた術式の効力は消え、|生命を撒く槍《ディアボロスランサー》は再び本来の旅路へと還るのだという。
「ですので、今は、彼等を旅路へ還すのが先決です」
とはいえ、それも一筋縄ではいかない。過去の戦争の時こそ即倒せてしまったのだが、今の|都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》は、神気を放ち、明らかに「強敵」の佇まいである。猟兵達の到来を察知した彼は、猟兵達に即座に攻撃を仕掛けてくる。
その攻撃を対処したとしても、|生命を撒く槍《ディアボロスランサー》の本来の所持者を謳うのは伊達ではない。彼がただ槍を振るうだけで、ヒトともケモノともつかない、見たことのない「生命」がその斬撃から現れるのだ。
「それも、彼が放つ神気で知性を壊され、攻撃力だけに特化した状態で、襲ってきます」
これらの対処をしつつ、|都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》を倒さねばならない。
「厳しい戦いだと思います。
ですが、越えなければいけない戦いです。どうか、宜しくお願いします」
そう言うと、深雪は銀光珠のカタチを取るグリモアに力を籠める。銀光の羽根が、猟兵達を包み込んだ。
白神 みや
お世話になります、|白神《しらかみ》です。
周回遅れは重々承知の上ですが、ここから3連続で書きたいなっておもいまして。
もしよろしければ、お付き合いください。
生命を撒く槍、ディアボロスランサーの主を謳う神気纏いし|都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》との戦いです。
到着と共に攻撃を仕掛けてくる|都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》に対処すること、彼が槍を振るう事で現れる謎の「生命」に対処すること。この2点がプレイングボーナスとなります。
●お願い
MSページはお手数ですが必ずご一読ください。
先行でだしているミントたんシナリオ完結後にプレイング受付となります。
第1章 ボス戦
『都怒我阿羅斯等』
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POW : 天地開闢の祝詞槍
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【純粋生命力 】属性の【ディアボロスランサー】を、レベル×5mの直線上に放つ。
SPD : 舒弗邯閼智(ソブルハンアルチ)
【全身に生えた七本の蒼き角 】を纏い空中高く舞い上がった後、敵めがけて急降下し、[全身に生えた七本の蒼き角 ]が尽きるまで【ディアボロスランサー】で攻撃し続ける。
WIZ : 魂よわだつみに還れ
【ディアボロスランサーから生命の奔流 】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
イラスト:いもーす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
天城・潤
この世界の英雄なんですね
そんな過去の遺物が今更二度も三度も蘇って
…迷惑ですね
僕の恩人が皆血相を変え怒っています
ある意味一番許せない事をしたと
僕はその怒りの本当の意味は分かりません
その槍に宿る知己が居たかどうかさえも
ですが
「貴方は僕の大切な人達を怒らせ、悲しませた」
僕が戦う意味はそれだけで十分
UC絶望の福音を詠唱しただただ戦う事にしましょう
大層な攻撃を沢山繰り出して来るようですが
「当たらないなら何もないのと同じですね」
笑顔で挑発
発動すれば常時その状態ですから
恐れる事は何もありません
寧ろ僕と言う羽虫が纏い付く
そこに意味があります
僕の団長たちが鉄槌を下すまで
「僕は離れませんよ」
笑顔で切り結びましょう
●
「僕の恩人が皆血相を変え怒っています」
天城・潤(未だ御しきれぬ力持て征く・f08073)は青い体躯の男を前にそう零した。
「その恩人は槍に眠る者達の縁者か。
であればその怒りは当然のものだろう」
男は淡々とそう返し、潤を見据える。その目にからは表情は読み取れず、声音と同様に淡々としている。例えるならば、凪の海。
「この世界の英雄なんだそうですね。
そんな過去の遺物が今更二度も三度も蘇って……」
潤はその口の端に笑みを見せつつ、穏やかな声でそう返すが、その目には剣呑な光を宿している。
「……迷惑ですね」
その光を受ける男は、しかし変わらず凪のままで潤を見据える。
「迷惑と言うか。其方自身にはこの世界も槍に眠る者達も無縁のものであろう」
男が言う通り、今の潤は恩人達が「ある意味一番許せない事をした」と怒るその理由を知らない。|銀の雨降る世界《この世界》の出身であるらしい、潤の源流ともいうべきが存在が知る誰かが、男が手にする槍にて眠るという能力者達の中に居るのかどうかは、今の彼には知る由が無い。だから、男の言葉には同意を示し、言葉を続ける。
「確かにその通りです。
ですが、貴方は僕の大切な人達を怒らせ、悲しませた」
ただそれだけの事かもしれない。しかし、それは潤が刀を持ち、此処に立つには十分すぎる理由なのだ。
「槍と槍の同道者、その縁者達が我に怒りを抱くのは必然と理解している」
その言葉と共に男はその身から角を生やし、地を蹴る。
「しかし、我は知ってしまったのだ……」
そのまま落下の勢いのままに、|生命を撒く槍《ディアボロスランサー》を振るう。
一撃目を武器で強引にいなしながら、潤もユーベルコードを展開する。そのユーベルコードの少し未来を導く力を以て、続く攻撃を躱し始める。
「導き生み出した生物達の攻撃すら躱すか……!」
槍の斬撃の狭間から生まれ出でる、見たこともない生物達を切り伏せる微笑む潤に、男は声を漏らす。それは、かつて英雄であったが為に生じた、立ちはだかる強者への対抗心故か。
「僕は離れませんよ」
現れ出でた生物を切り伏せながら、潤はいつもと変わらぬ笑顔でそう言った。
大成功
🔵🔵🔵
雨野・クラリス
宇宙へ旅立った皆サンの旅路を邪魔することは、許さないのデス!
都怒我阿羅斯等サン、アナタが何を見たのかは知りませんが、全力で阻止させて貰うのデス。
ヒトともケモノともつかない、見たことのない「生命」には『落ち着き』と『覚悟』をもって対応。
『斬撃波』を放ちなるべくダメージを軽減。
私の術はダメージを受けると解除してしまいマス、だから。転移を拒否し、痛みに耐えて耐えて、そのあとに。
騎士サン、蛇竜サン、後は頼みマス……!
WIZ『リザレクト・オブリビオン』
●
「宇宙へ旅立った皆サンの旅路を邪魔することは、許さないのデス!」
雨野・クラリス(止まぬ雨・f35423)は勢いよくそう言った。
「我が見た絶望を知れば、この者達も汝も理解できるのであろうな」
男は凪の瞳を向け、クラリスへと言葉を返すと、手にした|生命を撒く槍《ディアボロスランサー》を振るう。その軌跡から巻き起こる生命の奔流を掻き分けて現れるのは、見たこともない生命達の群れ。
「|都怒我阿羅斯等《つぬがあらしと》サン、アナタが何を見たのかは知りませんが、全力で阻止させて貰うのデス!」
クラリスは奔流を受け止めながら叫ぶ。その海の如き奔流は、クラリスを此処ではない場所――棲家へと押し流さんと押し寄せ、此処に立つのだと抗うクラリスの身を荒々しく翻弄する。容赦のない荒波がこの身を削ることはクラリスも覚悟して此処に立っている。そして、自分が戦う術は、自身が攻撃を受けてしまう訳にはいかないことも。故に、クラリスはただひたすらに耐え、荒波が流れ去って行ったその瞬間にユーベルコードを発動させた。
「騎士サン、蛇竜サン、後は頼みマス……!」
大成功
🔵🔵🔵
エミリヤ・ユイク
※アドリブ歓迎、ソロ希望
ほう、見る限り中々の強敵なオーラを纏ってますね。それに槍の使い手。これは私も本気で行かないとなりませんか。貴方が武人として存在してるなら、私も武人として相手をしましょう。
それでは、黒狼らしく突っ切ることにしましょうか。覚悟、気合、根性を心に持ち、ダッシュで接近して黒狼牙爪を抜刀します。謎の生命は空いてる手の手袋を口ではずし覇壊之念で塵にします。
都怒我阿羅斯等の攻撃は残像で回避し、怪力と限界突破を発動した黒狼天地無双で反撃します。
貴方の槍の突きと私の黒狼としての牙たる黒狼天地無双の一撃と返し刀、どちらか上か勝負といきましょうか。速度は威力、この一撃は重く疾く痛いですよ?
●
「……汝は槍との縁を持たぬ者か」
エミリヤ・ユイク(黒き狼を継ぐもの・f39307)を一瞥して、男はそう言った。|生命を撒く槍《ディアボロスランサー》と縁を持つ者は一様に男へ怒りの彩を向ける。しかし、エミリヤの眼には、武人としての興味の彩が色濃くあった。
「ええ。私は|銀の雨降る世界《この世界》の者ではないからね」
エミリヤが此処にやってきたのは純粋にその武に興味があったからだ。こうして対峙してみると、目の前に立つ男が纏う強い者故の気が、身を灼くような気がしてくる。しかし、武人であればこそ、この感覚は心地が良い。
「一時の戯れに相手をしてやろう」
男は言葉と共に槍を振るう。ヒトとも動物ともつかぬ生命がその振るう軌跡から姿を顕し、エミリヤに向けその爪と牙を向けた。
「黒狼らしく突っ切ることにしましょうか」
エミリヤは刀を抜くとそのまま走り出した。男の槍の力を残像を利用し回避すると、そのまま口で逆手の手袋を外し、薄紫のオーラを纏った素手を突き出し、行く手を阻む生物達を塵と化していく。
「貴方の槍とわたしの黒狼としての牙、どちらか上か勝負といきましょう。この一撃は重く疾く痛いですよ?」
その言葉と共にエミリヤはユーベルコードを以て、男を攻撃する。神速の突きと、槍の重い一撃が交錯した。
大成功
🔵🔵🔵
キアラ・ドルチェ
銀の雨降る時代を戦い抜いた我が両親の戦友達が眠るその槍…解放して頂きますよ!
「魂よわだつみに還れ」は、私の「棲家」はこの母なる大地、地球そのもの! よって効きませんっ
さて、では来ませい、子犬たち!
私の指示に従い、行動を
①相手は知性のない獣同然
まずは襲い掛かってくる生命を鶴翼(V)の陣で迎撃、包囲できる位置取りになったら上部を閉じ、包囲殲滅陣形(O)を
相手には一対一ではなく、複数対一を必ず維持し、こちらの数的優位を生かして撃破を
②そしてこれを繰り返し、長い名前の槍男まで到達したら、全員で包囲殲滅!
ぶんなぐりなさいっ!
勿論私もドルイドの杖振り上げて、その澄ましたお顔をぼこぼこにして差し上げますっ!
葛城・時人
神臣(f35429)と
俺も許さない
彼らの旅の夢を邪魔させない
闘うのにそれ以上の理由はない
転移即大鎌で『生命』と戦う
絶対に後ずさらず引かない
此処で神臣を護り自分の身を護り切る事が
何よりも大切な事
空中を駆け大鎌で死を浴びせ切り結び
彼らが消えたら先制攻撃はそこまで
飛び退り神臣の傍まで戻って
「此処から後は腕の見せ所だ!神臣!」
神臣と並び、大鎌を掲げ完全に挙動を併せて
UC白燐大拡散砲詠唱
神臣の桜吹雪と俺のククルカンが戦場を覆い尽くす
「護り!癒し!噛み裂け!」
敵の猛攻と受傷があろうと桜と蟲の癒しが上回る!
「癒し手俺達が倒れなければ必ず勝つ!」
必要なら幾度でも掛け直し貢献
「元々こっちが本職だしねっ」
神臣・薙人
【葛城さん/f35294】と
全てを呼び戻せていなくても
そこにあの人達がいるのなら
戦う理由はそれで十分です
到着時から敵及び槍の様子に警戒
少しでも変化があれば
飛び退く・散開する等回避行動を
葛城さんにも注意喚起
その後葛城さんと合わせて
白燐桜花合奏を使用
私達の本領発揮はここからです
攻撃よりも支援に重点を置き
立ち位置を調節します
蟲笛の演奏が途切れた際は
速やかに再開
謎の生命は攻撃に巻き込みつつ様子を観察
動き等に何らかの法則性が見られれば
他の猟兵達とも情報共有します
生命の奔流が現れた際は散開して回避を
巻き込まれた場合は転移拒否
ダメージは演奏で回復します
余裕があれば白燐蟲に
敵に噛み付く等
動きを阻害するよう指示
●
「全てを呼び戻せていなくても、そこにあの人達がいるのなら」
神臣・薙人(落花幻夢・f35429)は、此処に立ち戦う理由としては十分だと、言葉を零す。
「そうだね。俺も許さない」
共に立つ葛城・時人(光望護花・f35294)が蒼い男を睨むように見上げる。|生命を撒く槍《ディアボロスランサー》と共に永い旅へと赴いた能力者達の中には、親しかった者もいる。彼等の旅を阻むのであれば、それは彼にとっては敵以外の何者でもない。
対峙する男は、無言で二人の怒りの眼を受け止める。
「我は、汝等に糾弾される事は承知の上で此処に立っている。
しかし、我が知った真実は、こうするに足りうる真実だったのだ」
男の言葉に、時人が思わずその真意を問い質そうしかける。そんな張り詰めた空気の中にふわりと割って入るように姿を顕したのは、キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)だった。
「キアラ?!」
気配に振り返りその姿を目にした時人が思わず名を呼び、傍らの薙人もその瞳に僅かな驚きの彩をみせる。
「銀の雨降る時代を戦い抜いた我が両親の戦友達が眠るその槍……解放して頂きますよ!」
二人の心配を知ってか知らずか。キアラは手にした杖をくるりと回し、男に突き付けながら宣言する。
そうだった。この娘は、友人の娘であり戦友で、嫋やかな乙女でありながら幼い少女であり、大切な護り子でありながら彼等よりもほんの少し先輩の|戦士《猟兵》であるのだ。それならば、此処に立つ事も至極当然の事であり、自然な事だった。
「ああ、そうだね。彼らの、皆の旅の夢を邪魔させない」
時人がその手に携えた大鎌を一振りすれば、薙人はそれが常であるというように無言で蟲笛を手にする。
「時人さんと薙人さんとご一緒なら、百人力ですっ!」
キアラのその言葉が、この戦いの嚆矢となった。
「汝等は、在るべき棲家へ還るがいい」
男がキアラと薙人へ向けて|生命を撒く槍《ディアボロスランサー》を振るう。カタチを成さない生命の奔流が二人に向けて流れ襲おうとする。二人は地を蹴り、直撃は避ける。
奔流の力に抗わんとする二人を一瞥すると男は地を蹴り、二人の攻撃の間に中空を駆けてきた時人より更に上へと舞う。
「いま一人は空からか。我の死角を突ける等とは思わぬ事だ」
|生命を撒く槍《ディアボロスランサー》の攻撃を、時人は大鎌で以て受け流そうとする。体躯からして違う男の攻撃は重く、幾合か武器を合わせたものの、その攻撃の重さからバランスを崩し地へと落とされた。
「俺は、絶対に後ずさらず引かない……!」
時人はそれでも猶、武器を振るい、男の槍の斬撃の軌跡を割り割くように姿を顕す生命達を切り伏せる。
「私の「棲家」はこの母なる大地、地球そのもの!」
キアラはそれ故に己にその力は効かぬのだと謳い、奔流がこの地から押し流そうとする力に抗う。
「そう、です。それに、今この場から去る訳にはいきません、から……」
キアラの言葉に頷く薙人が、抗った反動によるダメージを堪えながら、笛を奏で始める。薙人の立つ場所を中心に、桜の花吹雪が、地の雪と共に嵐のように巻き上がった。
「護り! 癒し! 噛み裂け!
|癒し手《俺達》が倒れなければ必ず勝つ!」
そこに重なるように、|白羽の白燐蟲《ククルカン》の群れが姿を顕した。襲い掛かる見たことのない生命達が、花吹雪にその身体を斬り刻まれ、|白羽の白燐蟲《ククルカン》達が襲い掛かる。その一方で、|輝く珠のような白燐蟲《残花》が三人が負った傷を癒していく。
「私も……来ませい、子犬たち!」
二人の白燐蟲の癒しの力を受けたキアラも、ユーベルコードを展開し、子犬たちを喚び出す。
「先ずはあの生命たちを迎撃、包囲殲滅!
槍男まで到達したら包囲殲滅! ぶんなぐりなさいっ!」
白燐蟲の輝きを纏った子犬たちが、海のように襲い来る生命達を割って男への道を拓いていった。
大成功
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シリルーン・アーンスランド
夫の陸井さま(f35296)と
能力者の姿
これがわたくしの真なる姿
神に等しき者と知れど決して許しは致しませぬ
「斯様な手前勝手が許されるとお思い?」
お義姉さまの想い出宿るお屋敷から旅立たれた方も
その中にはおいでになるのです
「今更…過去の縁用い生命の槍を操るなど!」
まずは初撃先制攻撃を技能使用にて全力回避
陸井さまのお傍で戦えます事何より心強く
笑顔でお顔見てから剣を構え
「では邪悪なる『生命』を!」
襲い来るモノに切り込みます
倒さば届かぬというのなら
全て切り裂きましょう
いかで精強であれ『生命』なれば薙げば血しぶき
手足落とさば絶命へ至る定め
…無残とは思えど今は些末
何より今のわたくしは『生命の埒外』にて!
全て陸井さまと切り刻みましたら…首魁へと
陸井さまのお言葉に
「もとよりご助力お願いするつもりにて!」
戦争なればこそ特に!
メガリス・さまよえる舵輪詠唱
転移に抗いつつ一礼を
「どうか此度もお力お貸し下さいませ…!」
わたくしの傷なぞ問題ではありませぬ
どうかその強い腕でかの者に鉄槌を!
世界と、槍に宿る皆様に安寧を!
凶月・陸井
妻のシリル(f35374)と参加
真の姿:全盛期の能力者、装備は着流しに「護」の字の羽織
シリルと二人で強大な敵を怯まず見据える
あの頃も、皆と共に戦って
その末に皆で未来を掴んできた
だけどその掴んできた未来の一部が
あの頃の仲間達が今、目の前にもある
「返してもらうぞ」
まずは敵の先制攻撃に対処
振われる槍は見切って紙一重で回避
シリルは俺が傍にいてと言ってくれるけど
心強いのも支えてもらっているのも本当は俺だ
「あぁ、此処で消し去る!」
その後の槍から生み出される生命には二人で切り込む
シリルの動きに合わせ、踊るような気持ちで
右手の銃で射撃し、左手の扇と手甲で打ち払い
全て切り開く
「通してもらおうか」
都怒我阿羅斯等にたどり着いたら
【戦文字「切裂弾」】を使用
装填しつつ弾丸に文字を付与して
シリルに合図の言葉を
「そろろそ、彼らにも力を借りようか」
転移は勿論拒否してダメージを耐えきり
銃を構えて詠唱
「俺は、護る為に」
そのまま弾丸と文字を、ロボの攻撃と合わせて叩き込む
「ただの弾丸じゃないんだ…これが、俺達の鉄槌だ」
●
凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)とその妻シリルーン・アーンスランド(最強笑顔の護り風・f35374)は、共に銀の雨降る時代を戦い抜いた能力者であった。それ故に、共に新たな世界へ旅立つ|生命を撒く槍《ディアボロスランサー》へ同道を申し出た能力者達の中には、旧知の存在も数多く居た。
その|生命を撒く槍《ディアボロスランサー》は、今目の前に立つ男の手にある。見送ったあの槍よりも小さく、神々しき生命の輝きもかつてより弱弱しいものとなっている。それは、男に無理やり喚び戻されたが故なのか、それとも、その裡に居るはずの同道者達が眠りに就いている為なのか。
「斯様な手前勝手が許されるとお思い?」
「汝等からすれば、我の行いは斯様に映るのであろう。しかし、その問答は平行線であると理解するがいい」
その言葉に更に言葉を重ねんとするシリルーンの肩に、陸井はそっと手を置いて押しとどめる。
「陸井さま、止めないでくださいませっ!」
あの槍の裡には懐かしい人が今も居るのだと、そう振り返ったシリルーンが息を飲む。シリルーンの肩に手を置いた状態で男を見据える陸井のその表情に宿っていたのは、怒りの彩。常は泰然を全てを見ている陸井には珍しいその彩は、共に傍に在り続けるシリルーンや、今この戦場には立っていない彼の相棒であればこそいち早く気付けるもの。
「返してもらうぞ」
ただ、静かに発せられたその一言と共に、陸井はその力を解放し、運命の糸が巻き戻した時を一時的に元に戻す。それは、生命の埒外と世界に選ばれた所以たる証。
「神に等しき者と知れど決して許しは致しませぬ。お覚悟なさいませ!」
シリルーンもまた、共鳴するように、力を解き放つ。その長い髪の、毛先から頬のあたりまであった藍が金を染め上げ尽くして、その身に秘められ眠っていた、異界への梯たる力を呼び覚まさんとする。
その様に陸井が何かを言いたそうに視線を向けるが、それに対してシリルーンは笑みで応える。それだけで、彼女がそれだけの決意を以てそれを選択した事を理解する。それならば、共にこの戦場に立つ以上、彼が口にしたかった言葉は無粋であろう。
「参りましょう、陸井さま」
「――ああ、往こう」
●
彼等が抱く義憤等は些末な事だと言わんばかりに男は無造作に槍を振るう。蒼い生命の奔流が、見たことのない|姿態《フォルム》の生命を生み出しながら流れ襲う。
「今更……過去の縁用い生命の槍を操るなど!」
「あぁ、此処で消し去る!」
奔流から伸びる生命の腕が、二人を奔流の裡へと引きずり込もうとしてくる。その腕に任せ奔流へ吞み込まれてしまえば、恐らくこの金沢の地から遠く離されてしまうだろう。
夫婦二人、抗う為に武器を取る。伸ばされる腕を扇と手甲打ち払う陸井の動きと、生命達を切り伏せるシリルーンの動きはさながら舞を舞うようにも見える。その舞の優雅さと裏腹に、腕を、生命そのものを斬り伏せていく様は凄惨を極めていた。
常のシリルーンであれば、それを無残を目を伏せたかもしれない。しかし、この戦いは、この世界の行く末を、親しき者達の旅路の分水嶺と心得ている。故に、今は些末と振り切って伴侶と共に駆け、蒼き男の元へと二人辿り着く。
「シリル。そろそろ、彼らにも力を借りようか」
陸井は男を見据えたまま戦文字を付与した弾丸を短刀銃へと装填しながら、シリルーンへと伝える。
「もとよりご助力お願いするつもりにて!」
頷くシリルーンもまた、迷いなく常から携えるメガリスを手にする。縁深きメガリスはシリルーンにとっては友であり、護りであり、そして。
「皆様! どうか此度もお力お貸し下さいませ……!」
願うシリルーンの声に応えるのは、鋼の巨躯。
(傷だらけじゃないの! 今は仕方ないけど、ちゃんと手当しないとダメよ!)
(……今はそんな話をしている場合ではないだろう。今は我々の力が必要なのだろう?)
「……は、はいっ! どうかその強い腕でかの者に鉄槌を! そして、世界と、槍に宿る皆様に安寧を!」
そんな懐かしい声が聞こえた気がして、思わず郷愁が溢れそうになったシリルーンが頷き求めれば、それに応じて巨躯が蒼い男に向かって動き出す。
「槍より零れ落ちた力の欠片か……!」
鋼の巨躯より繰り出される攻撃を槍で受け止めながら零す男の声はどこか苦々しい。彼等のやり取りを合間を縫って、陸井が駆ける。
「……俺は、護る為に」
銃の照準を合わせながら、静かに陸井がそう宣言し、放たんとするユーベルコードに更なる力を与える。シリルーンの友たる鋼の巨躯が放つ光線に併せ撃ちだす、切り裂く力を与えれた弾丸が狙いを過たず男の身体のみを貫き穿った。
「ただの弾丸じゃないんだ……これが、俺達の鉄槌だ」
骸の海へと静かに送り還されていく男と、正しき旅路へと回帰せんと消えゆく|生命を撒く槍《ディアボロスランサー》をシリルーンと見守りながら、陸井は静かにそう言った。
大成功
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