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無窮の宙

#スペースシップワールド #ブルーアルカディア #戦後 #プリンセス・エメラルド

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「これだけの時間を戴ければ、流石に充分でした」
 輝石の体。翠玉の指先が星々を繋ぐようになぞる。目の前に広がるモニターに映るのは『姫』が集めた無数の手足。
 帝国軍の再集結。漿船の回収。オブリビオンである闇の騎士の編成。クエーサービーストの洗脳。そして「希望の聖地オーンブル」にて鹵獲した、空の世界の魔獣達。
 配下の猟書家の大半を失った姫――プリンセス・エメラルド。
 だが彼女が長い期間をかけて集めたのは大軍勢であった。もはやかつての銀河帝国など足元にも及ばぬ程の軍備。恐ろしきは猟兵ですら手を焼いたクエーサービーストですら洗脳し、その手中へと収めている。

「私は此処に、『帝国継承軍の完成』を宣言致します」

 謡うように紡ぐ。優雅な笑みは最早勝利を確信して疑っていない。

 姫の号令と共に、モニター全てを埋め尽くすほどの大艦隊が一気呵成に進撃する。目指すは絢爛たるスペースオペラワールド。
 クエーサービーストの宙域すら突破可能となった艦隊を使った大攻勢。いくら繁栄せしオペラワールドとて、この規模の艦隊をすぐに迎え撃てる軍備など準備出来ようはずもない。待っているのは蹂躙。そして――再びの支配の時代。


「タイミングとしては最悪だ。けれど、本当にギリギリのところで間に合ったことだけは喜ぶべきだろうね」
 忙しなく猟兵が行き交うグリモアベース。既に門を構築しはじめているディフ・クライン(雪月夜・f05200)に、常の笑みはない。
 第二次聖杯戦争の最中。猟兵もグリモア猟兵も駆けずり回っているこの状況を狙い澄ましたかのような一手は、猟兵にとってもスペースオペラワールドにとっても致命的と言える。だが、その魔手がオペラワールドの喉を切り裂く寸前のところで予知が間に合った。
 ディフは背のモニターをかつんと指で弾く。映し出されたのは簡略化された地図と思わしきものだが、その大半を赤色の点が埋め尽くしている。
「御覧の通りの大軍勢だ。クエーサービーストすら従えている状態では、まず正攻法は使えない。そもそもにオペラワールド各惑星の軍配備がとてもじゃないが間に合わない。だからこの状況で出来ることはひとつだけだ」
 奇襲には奇襲を。大軍勢には少数精鋭を。大軍全てを相手どれないのならば、大将首だけを狙う一点突破。それ以外に方法はないとディフは断言した。

「詳しく説明するよ。作戦は3フェーズ。まず第1フェースでプリンセス・エメラルドが居る旗艦の座標を特定する為に、継承軍が誇る最強戦力「|闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》」を倒して血路を開く。まず皆に相手してもらうのは、『彼』」
 モニターが切り替わった。現れたのはオレンジの機体に無数の殺戮兵器。残虐にして無慈悲な戦闘機械。デストロイウォーマシンだ。宇宙仕様に改造を施され、宇宙空間でも問題なく行動できるようになっている。
「これ一体でも十分脅威だけど、更に問題なのは大量のオブリビオン艦隊とクエーサービーストの群れも引き連れて航行している点だ。その上戦略上の圧倒的優位を利用し、機先を制す」
 闇の騎士一体ですら強敵だ。その上悪いことに、先制攻撃に加えて大量の配下による攻撃もかぶせてくる。まずは途轍もなく分が悪いこの一撃目を、猟兵たちはどうにか凌がねばならない。
「無事プリンセス・エメラルドの旗艦漿船ソング・オブ・オーンブルの座標を割り出せたら、すぐにそちらへ向かう。ただ、旗艦の前には小惑星級の何かが居ることだけは予知出来た。第2フェーズはそれの排除と旗艦への突入。第3フェーズでプリンセス・エメラルドとの決戦になると思う」
 そこまで一気に説明して、ディフは深い息を吐いた。少しだけ、表情が曇る。
「これは電撃戦だ。敵が奇襲に気づいて対応しきる前に肉薄し、プリンセスを倒す必要がある。休む暇はほとんどない。疲労と傷を抱えたまま、大軍や強敵との連戦になる。……それでも、この大軍勢を即座に瓦解させる為には、やるしかない」
 傷も痛みも疲労も抱え、それでも駆け抜けなければならない。それだけが人形の気がかりではあるが。

 やがて構築していた門が完成し、扉を開く。門の先は広大な宇宙空間。そして、それを埋め尽くす程の大艦隊という悪夢の光景。
「……楽な戦いには決してならない。プリンセス・エメラルドも強敵だ。怪我をしてしまうかもしれない。それでも」
 顔を上げた。皆の背を押すように、静かな笑みを浮かべて。祈るように穏やかに紡ぐ。
「皆なら成し遂げて、無事に帰ってくるって信じてるよ」

 宇宙の闇は暗黒ではなく安寧であると証明する為に。
 死の宙へと飛び込め、|猟兵《イェーガー》。


花雪海
 閲覧頂きありがとうございます。花雪 海で御座います。
 この度はスペースシップワールドより、プリンセス・エメラルドとの決戦へとご案内致します。

●第一章:デストロイウォーマシン
 闇の騎士たるウォーマシンと、彼が引き連れた無数の艦隊、そしてクエーサービーストの群れとの戦闘になります。
 敵は必ず先制攻撃をし、その上大量の配下による攻撃もかぶせてきます。まずはその対処をした上で、敵への攻撃を行って下さい。

●第二章・第三章:
 各章断章をご確認下さい。

●プレイングに関しまして
 各章とも、プレイングの受付日時を設定しております。ご参加の際はお手数ですが、『マスターページ・各章の断章・シナリオタグ・お知らせ用ツイッター』の何処かにて、一度ご確認下さりますようお願い申し上げます。
 ご一緒の方がいらっしゃる場合は『お名前とID』もしくは『グループ名』を明記して下さい。
 今回は花雪のキャパシティから【1グループ2名様まで】とさせて下さいませ。
 また、再送はお願いせず締め切りまで書けるだけを書く、少数採用にて進行致します。

●第一章は断章追加の後、【1/10(月)8:31~】の受付を予定しております。
 締め切りはまた後程タグなどでお知らせ致します。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『デストロイウォーマシン』

POW   :    デストロイトリガー
【一切殺戮モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    クリムゾンバースト
【全武装から全力砲撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ユーベルアナライザー
対象のユーベルコードを防御すると、それを【自身の戦闘プログラムで高速解析し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。

イラスト:V-7

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 無限の大宇宙も、視界を埋め尽くしてしまえば簡単に有限になる。
 途方もない大艦隊。その一部隊を引き連れた橙の魔は、冷たき翠の|瞳《モノアイ》に切り取られた世界を映して虚空を往く。ただの一部隊と侮ってはいけない。巨大な宇宙戦艦や戦闘機、更にはクエーサービーストすら無数に内包する様は、最早ただの一部隊程度で大隊と変わりないのだ。
 その隊を任されているデストロイウォーマシンに心などなく、意思すらない。あるのはたったひとつの命令だけだ。

 ――殲滅すべし。

 その命令を遂行する為だけに存在し、蹂躙し、殲滅する。
 銃で。ビームサーベルで。ミサイルポッドで。或いはその体そのもので。
 一切の容赦なく。一切の慈悲なく。一切の例外を許さず。

 キュイ、とモノアイが上空を見た。そこに『敵』の姿を認識した殲滅機械は、即座に配下へと命令を下す。
 後方に控える戦艦の砲門が次々と開かれる。照準を合わせていく無数の兵器。クエーサービーストが蹂躙せんと宙を強く蹴った。
 殲滅機械自身も全ての銃身を『敵』に向け、一切の逡巡なく。

『――|発射《Fire》』

 感情なき声音を合図に、宙を照らす無数のビーム砲、レーザー、弾丸が迸る。狙うは『猟兵』のみ。
 直撃すれば猟兵とてただでは済まない光線の雨を搔い潜り、クエーサービーストの猛攻を凌ぎ、殲滅機械の蹂躙を払い除けて。
 死地を駆け抜けろ。
テリブル・カトラリー
ウォーマシンか。

ブースターで【推力移動】デストロイウォーマシンへ接近しつつ
スラスターで【空中機動】を行い砲撃を回避、
避けきれない攻撃は絶対物質盾で【盾受け】、
マシンヘルム【索敵情報収集】

……言葉はいらんな。

デストロイウォーマシンの接近攻撃を【見切り】猛攻を盾で防いで
『アリスナイト・イマジネイション』発動。
【防具改造】絶対物資を元に想像から創造した無敵の戦闘鎧を纏い、
デストロイウォーマシンを受け止め【カウンター】
装甲の薄い所を狙い機械刀で【貫通攻撃】
振り落とされないよう【怪力】で装甲にしがみ付き、
強引に機械刀を捻じり込んで溶断【属性攻撃】躯体内部を溶解させ続ける。



 門を抜けた瞬間、無重力に体が浮いた。問題ない。慣れた感覚だ。
 広大な宇宙を侵食するような大艦隊を睥睨し、それを率いる将を捉える。闇に似た宇宙空間でも目立つ橙の機体。
「ウォーマシンか」
 無機質な声音でテリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)は呟く。それは敵を示す言葉であり、自分を示す言葉だ。
 テリブルのブースターが稼働する。推力にする為のエネルギーが活性化し光を帯びる。音が響かぬ宇宙空間にあって、光は存在を周囲に知らしめる手段のひとつだ。光に気づいたデストロイウォーマシンがテリブルを見た。
 視線が交錯する。敵も己を|同類《ウォーマシン》と見抜いたろう。あれも、己も。等しく戦う為に作られた機械。ウォーマシンが互いに敵を認識したならば、それ以上は――。
「……言葉はいらんな」
 戦端はテリブルのブースターの全力稼働とデストロイウォーマシンのスラスターの起動、そして大艦隊による砲台の一斉射撃によって落とされた。

 一切殺戮モードへと自身を切り替えたデストロイウォーマシンは、この場で誰よりも早く動くテリブルだけを見ていた。全ての武装を開放し、その砲門と切っ先をテリブルへと向けながら、数多の砲撃と共に迫る。
 最大出力で点火したブースターで飛び、経験とマシンヘルムから齎される情報を瞬時に判断したスラスター操作で砲撃を回避する。この物量差だ、全てを避け切れるとは最初から思っていない。どうしても回避できぬものは盾で受ける。
「……!」
 突然、盾が弾かれんばかりの衝撃を感じた。咄嗟に振り向けば、デストロイウォーマシンが肩のミサイルポットから無数の小型ミサイルを放ちながら迫っている。振り上げられたビームサーベルをギリギリで見切って躱し、擦れ違いざまに放たれる重火器を盾で受けて、どうにか重すぎる一撃目を凌ぎきった。ならば今度は、テリブルが攻め手となる番だ。
 発動せしユーべルコードは想像から創造する『無敵』。絶対物質を基に創造し纏う戦闘鎧。
 急制動をかけて無理矢理に方向転換したデストロイウォーマシンが、再び高速で飛ぶテリブルを標的と定める。銃口全てをテリブルに向けて放たれた無数のレーザーは、然して無敵を疑わないテリブルの鎧に全て弾かれる。
 テリブルは知っているのだ。疑わぬ限り無敵であるのならば、威力を知る重火器など恐るるに足らずということを。
 黒と橙の流星が再びぶつかり合う。レーザーもビームサーベルもミサイルポットも全てを受け止めながら、しかしどの攻撃にも一つも傷つかぬまま、テリブルは巨大なデストロイウォーマシンの突撃を受け止めた。片手と両足で力強く装甲にしがみつき、もう片手に握った|機械刀《サムライブレイド》を思い切り突き立てる。

『……!?』

 デストロイウォーマシンがテリブルを振り落とさんと暴れて身を捩る。だが自らの体に張り付いたテリブルを打ち払うには、彼のどの腕もが適さない。
 その隙に、テリブルは突き立てた機械刀を強引にデストロイウォーマシンへと捻じ込む。機械刀が帯びる超高熱で溶断し、躯体内部まで溶解させ続けるまで。
 ――この手を離しはしない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

烏丸・都留
POWアドリブ共闘可


自身装備群(自立型、数百m級約5億機、CICユニット、アサルトユニットα/γ、ガードユニット、クラスタード・デコイ/リレイ)の内、物理攻撃型部隊(上記混合数百機)を各1隻の宇宙戦艦に集合擬態した数十万隻を、自身は後方で隠密状態器物内から適宜召喚運用。

艦仕様:
全長8km
高さ/幅1km
機動力1800km/s〜
各アサルトユニットによる毎秒、射程11.5光秒、エネルギー系口径40m艦載砲56基、口径5m対空兵装224基、対消滅反応型極機動ミサイル無数。
多数のガードユニットで攻性防御。

上記艦隊がワープアウト/ステルス解除した感じで、先制攻撃から味方等をかばう/攻性防御を主とする。


空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎だ

「へっ!無数の敵船に巨大な化物か!
全力でぶち当たらせてもらうぜ!」
デストロイウォーマシンが振るう武器を[オーラ防御]を展開して防ぎ、
[誘導弾]でミサイルなどを打ち落としていく
続けてくる無数の艦隊とクエーサービーストの攻撃を
[気合い]で避けて[怪力]で殴り飛ばし、[限界突破]の先に捌ききる

「さあ、此処からはオレの番だ…。
やるぜ相棒!今が戦いの時だ!!」
UCを発動させて巨大ロボを創造して乗り込む
即座に背部武装を展開して艦隊やクエーサービーストを
ミサイルやビームによって次々撃墜していく
そして迫るデストロイウォーマシンの
拳によって[鎧を砕き]、防御力を低下させてぶっ壊す!




 飛び込んだ先は死地であった。
 見渡す限りの大艦隊。宇宙の異形たるクエーサービーストの群れ。それを引き連れるただ一体の殺戮戦闘機械。だが、それがどうした。
「へっ!無数の敵船に巨大な化物か! 全力でぶち当たらせてもらうぜ!」
空桐・清導(ブレイザイン・f28542)はなんでもないことのように鼻で笑い飛ばす。死線ならば何度だって潜り抜けてきた。容易くない戦場もあった。だが、それでへこたれているようならばヒーローなどと名乗りはしない。どんな状況だって諦めずに戦ってきた。
「分の悪い戦い上等だ! かかってきやがれ!」
 威勢とは自信である。猛々しく吠えた清導を、デストロイウォーマシンの冷徹なモノアイが捉えた。
 叫ぶ言葉さえ持たなデストロイウォーマシンは、銃口とブースターを全開にした突進、そして引き連れた艦隊の一斉射撃を以て返答とした。
 清導の視界を埋め尽くすかの如き砲撃。流石にすべてを避け切るのは難しいかと清導が舌を鳴らした瞬間。

 唐突にワープアウトし、全てのステルスを解除した超弩級の塊が、清導とデストロイウォーマシンの間に割り込んだ。

「うぉ、なんだ!?」
「味方よ。この先制攻撃は私に任せて!」
 思わず上げた声に、女性の声が返る。見上げて、見上げるだけでは足りなくて、ぐるりと首を動かしてみれば、それは巨大な宇宙戦艦であった。全長8kmというサイズ感は最早人の目測では正確に測りきれない。
 無数と言える程自立ユニット群を従えしその戦艦の名は、恒星間侵略型強襲揚陸艦 烏丸級二番艦|鶴丸《つるま》。猟兵、烏丸・都留(ヤドリガミの傭兵メディック・f12904)の本体である。
 迫りくる砲撃やクエーサービーストを、数多の物理攻撃型部隊の砲撃によって迎撃し、撃ち落とし、また装備ユニットの一部を犠牲にすることで本体と清導を守り切る。たった一人のヤドリガミが、まるで宇宙軍の様相を呈していた。その頼もしさと格好良さに目を輝かせながら、清導は視界の端を幾何学的機動で飛ぶ橙の閃光が己に迫るのを見た。
 咄嗟に展開したオーラの防御がギリギリで間に合う。ビームサーベルが通り抜ける嫌な音を聞きながら、続けざまに放たれるデストロイウォーマシンの小型ミサイルを誘導弾で撃ち落とし、都留の援護射撃を受けながら清導は一定の距離を取った。デストロイウォーマシンと入れ替わるように襲い来るクエーサービーストの凶悪な攻撃を気合で回避し、打ち据えようとした触腕の一本を掻い潜り――。
「うぅぅぅおぉぉぉぉぉぉお!!!!!」
 雄叫びと共に、清導は渾身の力でクエーサービーストの横っ面を殴り飛ばした。続けざまの連撃は限界すら超えて、巨大なクエーサービーストを遂には弾き飛ばすに至る。その隙を、都留は逃しはしなかった。よろめいたクエーサービーストに迫るアサルトユニットα部隊が貫通し、千々と裂いていった。
「サンキュー、助かる!」
「どういたしまして! でもまだ初撃を凌いだだけよ!」
「問題ねぇ!」
 恐怖も恐れも微塵もない。清導は快活な笑顔を戦艦に向けてから、ぐっと両の拳を握る。
「さあ、此処からはオレの番だ……。やるぜ相棒! 今が戦いの時だ!!」
 熱い叫びと共に、清導の想像は現実となる。力強き紅の偉容。クエーサービーストとも渡り合える程の巨大な戦闘ロボが創造されると同時、清導は迷うことなく操縦席へと乗り込む。機神の目に光が宿った。
「炎を纏い、勇気は鋼となる!!“また”頼むぜ、ブレイザイン・ギガース!!」
 即座に背部武装を展開し、清導――ブレイザイン・ギガースは赤き流星と化した。高速で飛び、艦隊やクエーサービーストをミサイルやビームによって次々撃墜していく。清導の動きを察した都留もまた、自身の艦隊を敵艦隊へと突入させていく。
 数多のビームが飛び交い、クエーサービーストが猛り、攻撃ユニットが飛ぶ。その最中で駆け抜ける橙、デストロイウォーマシンを相手どるの清導の役目だ。
 放たれるビーム兵器も、ブレイザイン・ギガースの無敵を信じて疑わない清導には何のダメージもない。狙うは先に相対した猟兵によって溶断されているビームガン持つ左腕。清導は力強く振りかぶり。
「覚悟しやがれ!!」
 自身に向けられたビームガンを真正面から拳で迎え撃った。衝撃に耐えきれずに拳の軌道通りに破壊されるビームガンの破片が飛び散る。
 即座に腕の一本を捨てて離脱するデストロイウォーマシンを、都留も清堂も見逃してなどやらない。
 この戦いには、宇宙の平和がかかっているのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウィルヘルム・スマラクトヴァルト
「プリンセス・エメラルド……同じエメラルドのクリスタリアンとして、その野望は阻止します!」

敵UCと配下の攻撃は、『緑の斧槍』による【武器受け】、『緑の大盾』による【盾受け】、そして受けきれなかった分は【オーラ防御】と【激痛耐性】で耐えます。
その際、高速移動するものは無差別攻撃されるので極力動きませんが、【第六感】と【見切り】も働かせて、出来るだけダメージが最小になるようにします。

先制UCと配下の同時攻撃を耐えしのいだら、こちらもUC発動。
『緑の斧槍』を構えて、時速11500km≒マッハ約9.5でデストロイウォーマシンに【ランスチャージ】です!

「この速度で突撃すれば、装甲が如何に硬かろうとも!」




 開戦の幕は既に開けている。
 宙域を高速で飛ぶ橙の悪魔――デストロイウォーマシンは既に正気に無く、一切殺戮モードへと移行している。
 戦闘宙域へと飛び込んだウィルヘルム・スマラクトヴァルト(緑の騎士・f15865)は、改めて眼前に、そして遥か彼方までを埋め尽くす艦隊を鋭く見据えた。プリンセス・エメラルドが嘗ての銀河帝国以上と言った規模に、恐らく偽りはないのだろう。そうしてオペラワールドへと土足で踏み入り、蹂躙し、そして支配する。平穏を取り戻したスペースシップワールドごと、この宇宙を遍く手中に収めるつもりなのだ。
 そんな凶行を、誰が許すものか。
「プリンセス・エメラルド……同じエメラルドのクリスタリアンとして、その野望は阻止します!」
 騎士の矜持に賭けて。美しき翠玉の騎士は斧槍を構えた。

 無数の砲撃が飛び交う戦場に身を躍らせる。観察によって、デストロイウォーマシンはより素早く動くものを無差別に攻撃していることにウィルヘルムは気づいていた。敵も味方も関係ない。目の前で動いているものが猟兵であろうとクエーサービーストだろうと、より素早いものであればビームサーベルを突き立て銃口を向けるのだ。
(ならば……!)
 見境のない狂犬の目にわざわざ止まってやることもない。彼が気づかなくとも、後ろの艦隊とクエーサービーストがウィルヘルムに気づいているのだ。向けられた砲身と殺意に、ウィルヘルムは身長程もある緑の大楯を構えた。
 敵艦のひとつへと降り立ったウィルヘルムは、出来るだけ動かぬように腰を据える。もはや生物なのかそうでもないのかすら定かではないクエーサービーストの強大な攻撃を斧槍で見切り、受け、捌き。続く艦砲射撃やビーム砲は、避け切れないと思うや否や、オーラを纏わせた緑の大楯を甲板にめり込ませるように叩きつけて身を守る。吸収しきれない衝撃や熱がウィルヘルムを襲った。それでも歯を食いしばって耐え抜く。
 まだ問題ない。まだ耐えられる。幸い最低限以外の動きを抑えたおかげで、デストロイウォーマシンの目に留まることはなかった。第一波を凌ぎきったのだ。
 ならば次は、己の番。
 緑の斧槍を構え、大きく旋回する橙の閃光をきっと見据える。屠るべき敵の姿をウィルヘルムは決して見失ったりはしない。
「この世界も……そこに住まう人々も……私が護るんだ!」
 全身をエメラルドに輝くオーラで覆う。意思は言葉となり、言葉は力となってウィルヘルムに翼を与える。
 ――たった一瞬。
 橙の閃光と視線があった瞬間。ウィルヘルムは甲板を強く蹴った。反動だけで甲板に大穴が開く。当然だ。意思の強さをくみ取った力はウィルヘルムにマッハ約9.5で飛ぶ力を与えている。
「この速度で突撃すれば、装甲が如何に硬かろうとも!」
『……?!?』
 デストロイウォーマシンが機械音を鳴らしている。構わない。もはや意思疎通などできないのだから。

 エメラルドの流星が、デストロイウォーマシンの左肩を刺し貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神咲・七十
アドリブ・連携お任せ

ウォーマシンですか……相手したことはあまりないですけど確かに忠実で容赦なさそうな方ですね。

(キャバリアを呼び出し、強力な攻撃に絞って回避してショットガンで迎撃できそうな攻撃は迎撃。回避できそうにない攻撃はキャバリアに受けて貰いダメージを抑えて耐える)


本当に容赦ない攻撃ですね
……今度はこっちから行きますよ

(UCを使用。敵に突撃して艦隊と言う密集した状況を利用して敵を障害物にして攻撃を鈍らせ、それと一緒に敵UCの無差別攻撃も使い、どんどん切り込んでいき敵を減らす。)

味方ごといってますね……
忠実過ぎて、私みたいなタイプに対応できてないのに攻撃を続けているのは哀れにも思えてきますね




「ウォーマシンですか……相手したことはあまりないですけど確かに忠実で容赦なさそうな方ですね」
 乗り込んだキャバリアのコックピット内。
 戦場を縦横無尽に飛び回る橙の機体――デストロイウォーマシンをモニターに収めながら、神咲・七十(まだ迷子中の狂食者・f21248)は呟く。
 戦闘がはじまっているこの宙域は、有体に言って「しっちゃかめっちゃか」であった。無数の艦隊から放たれる艦砲射撃。巨大なクエーサービーストの群れの凶悪な攻撃。このほとんどの攻撃が敵のものであり、この地に飛び込むということがどういうことなのか、七十は正確に理解する。
 ここは死地だ。気を抜けば簡単に命を持っていかれる。だが、臆病風に吹かれていては何も変えられない地なのだ。ならばやるしかない。七十は乱戦の中へとキャバリアを突っ込ませた。

 一直線に七十を狙うビーム砲は、巨大なクエーサービーストを盾にすることで回避する。攻撃されたことで怒り暴れるビーストの無数の触腕を掻い潜り、ショットガンで迎撃し軌道を逸らして飛ぶ。
「……っと!」
 いつの間にか真横にデストロイウォーマシンが迫っていた。銃のひとつと左肩を大きく損傷しながらも、残る武器を全て解放して銃口を向ける。同時に振り上げられるビームサーベルの軌道から咄嗟に飛び退く。あれで両断されるのはまずい――!
 弾幕を張るように広く斉射される小型ミサイルだけはショットガンで迎撃したが、無数の銃口までは避けられない。着弾の衝撃と被弾箇所のアラートがコックピットを埋める中、七十は衝撃に耐えながらもモニターから目を離さなかった。
「本当に容赦ない攻撃ですね……今度はこっちから行きますよ」
 幸い七十にダメージはほとんどない。キャバリアの損傷も浅い。これならばすぐに反撃に移ることができる。七十は一気に制約の力を開放した。

 キャバリアを敵陣のど真ん中に突撃させる。砲撃が当たろうがクエーサービーストの襲撃を受けようがお構いなしだ。敵の攻撃を防御しないという制約の力によって、瞬時に負傷が回復するほどに強化された再生能力はその程度の攻撃を意にも介さない。
 艦隊という密集した状況を利用し、敵を障害物にすることでフレンドリーファイアを誘発させ、またそれを躊躇する状況を作り出していく。
 七十の背を追ってデストロイウォーマシンが接近する。全武装を開放し、全力の砲撃でキャバリアを落とさんと迫るが、七十は冷静に戦艦の陰へと飛ぶ。
 戦艦を邪魔だと思ったのか、もはや敵味方の区別すらほとんどないのか。デストロイウォーマシンは射線上に味方の戦艦が居ようが関係がなかった。
「味方ごといってますね……」
 味方戦艦を銃撃に巻き込みながらも、戦闘機械は執拗に七十の背を追う。ならば、七十としてはその性質すら利用し、どんどん切り込んで敵を減らすのみだ。
「忠実過ぎて、私みたいなタイプに対応できてないのに攻撃を続けているのは哀れにも思えてきますね」
 目を細め、バックモニターに映る朱の機体を見据えながらも、七十は手を緩めなかった。
 この場がまだ序章でしかないことを知っている。一刻も早くプリンセス・エメラルドへと辿り着くために、七十は更に敵陣深くへと切り込んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

早乙女・翼
怪我程度で済む様に尽力してくるかね
にしても凄い艦隊
良くこんなに集めてきたな?

宇宙とは言え空中戦には変わらない
無重力空間を羽で叩く様に推進しながら向こうの攻撃は見切り避け
弾幕系シューティングの感覚に似てるさね?
オーラ防御は差し詰めバリアか
あのイメージですり抜けてやるさよ

親玉が仕掛けて来ないのはカウンターUCかね…なら此方から行く
UC発動
幾何学模様の如く一斉発射する光の剣
まずは周囲の取り巻きから倒していこう
アイツに当てるのは後回し
向かって来るようなら距離取って他のを優先
仲間がその間に奴に攻撃すりゃ僥倖

真似された所で品行方正で清廉潔白な俺には浄化される要素ねぇし
そんなに効かないと思いたいさよ、うん


ジャスパー・ドゥルジー
敵がちょー強ェならそれを利用しねえ手はねえな
先ずは最高速度で空を飛びつつ敵の一切殺戮モードを誘発
初撃は…避けられたらラッキーだけど
避けられなくてもまあそれはそれで?
致命傷にだけはならねェように気ィつけるわ

その後【バンダースナッチの影】を用い
ビーストたちの影に紛れ込む
破壊力の為に自立思考力を犠牲にした状態で
一度「空を速く飛ぶ敵」と認識した相手が
影を伝ってじっくり距離を詰めてきたら
――果たしてちゃんと認識できんのかな?

理想は『速く動く』ビーストを誤射してくれる事だけど
そこまで誘発できなくてもまァ上々
ウォーマシンに距離を詰めたらナイフでキツい一撃をお見舞いするぜ




「怪我程度で済む様に尽力してくるかね」
 激戦の宇宙空間に、軽い調子で降り立った赤の天使が一人。アンタレスの如き色彩は、それでも無数の艦砲射撃や爆発、クエーサービーストの異様が飛び交う空間とあっては多少目立たぬか。……いや、紛れることが出来ているということだ。
 銀河帝国戦でも着用した無色透明の宇宙服を纏う早乙女・翼(彼岸の柘榴・f15830)は、目の前に広がる激戦区に目を細める。
「にしても凄い艦隊。良くこんなに集めてきたな?」
 見渡せぬ程の広大な宇宙空間の中で、視界を埋め尽くす大艦隊。戦艦に負けぬほどに巨大なクエーサービーストの群れの随行が、殊更に艦隊を大きく見せている。
 ――否、見せているのではない。実際にこの艦隊は、スペースオペラワールドを墜とすに足る戦力があるのだ。その中でピンポイントに大将首だけを狙う奇襲戦。どれだけ無茶なことかも、それでもやらなければならないことだということも翼は十二分に理解できている。
 だからこそ、翼は唇に笑みを。思考に余裕を意図的に作るのだ。翼は緋紅の翼を大きく広げた。

 宇宙とはいえ空中戦には変わりない。無重力空間を羽で叩くようにすれば、宇宙服の特殊効果もあって大気中と変わらずに推進力を得られた。これならば飛行に問題はない。
 戦域に飛び込んだ翼に最初に気づいたのはデストロイウォーマシンだった。既に何人もの猟兵によって少なくない負傷を負っているが、意に介した様子はなかった。もともとそんなことを気にする意思はないのだろう。
 物言わぬそれが指令を出したか、近くにいた戦艦の銃座が一斉に翼に向く。その砲門が熱を帯びると同時、翼は強く強く羽ばたいた。
 無重力を叩くように緋紅が駆ける。複数方向から襲い来るビーム砲を躱し、合間を縫うように放たれる砲弾を見切ってくるりと身を捩る。
「ふぅん……弾幕系シューティングの感覚に似てるさね?」
 敵艦の攻撃をゲームに落とし込んで考えてみれば、まあ慣れたものだ。ならば翼が今纏っているオーラの盾は、差し詰めバリアと言ったところか。メカや怪獣が相手だというのも、宇宙を舞台にしたシューティングゲームにはよく居るボスだ。そう考えると、現状も途端にゲーム性を帯びてくる。
「あのイメージですり抜けてやるさよ」
 翼の口角が上がった。
 一層力強く羽ばたいてスピードを得た翼は、上も下もない空間を戦艦や、時にクエーサービーストすら盾に利用してすり抜ける。まともに喰らえば一撃でもただでは済まない攻撃も、当たらなければ意味がないとばかりに笑みを残し。
(親玉が仕掛けて来ないのははカウンターUCかね……なら)
 戦艦の陰に隠れた翼は、激しい先制攻撃の中にデストロイウォーマシンが居ないことに気づいている。正確には周囲にいるのだ。だが不気味な程に何もしてこないところを見るに、こちらの攻撃を誘発して返すトラップだと踏んだ。
 ならば利用してやろうか、その罠。

「此方から行く」

 広大な宇宙の戦場の只中で。十字を切って祈る。その姿はまさしく聖職者であり、悪魔祓いにも似て。溢れ出る浄化の光を無数の聖剣へと織り上げて、己が周囲に展開し――。
「哀れにも穢れたる|存在《もの》ものすべてに、主の救いの光が届かん事を」
 遍く浄化せしめん。
 一斉に解き放たれた聖剣が幾何学的な軌道を描きながら飛ぶ。だがそれらはデストロイウォーマシンをすり抜けて周囲の取り巻きたち――宇宙戦艦やクエーサービーストへと一直線に飛ぶ。
 カウンターであるとわかっていて、わざわざ最初に攻撃などしない。あれに当てるのは後回しだ。向かってくるようならば距離を取って他の敵を優先するし、仲間がその間に奴を攻撃するなら――。
「おっ、翼じゃーん? おつおつ」
「うん? ジャスパー?」
 聞きなれた声に振り返れば、悪魔のような男が気安い笑みを浮かべて傍に居た。たった今戦闘宙域に転送されてきたばかりという男――ジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)は、翼にひらひらと手を振る。
 端的に今の状況を翼から聞いたジャスパーは、鮮やかなピンク色に染まった髪を指でくるくると弄びながら考える。
「どうするんさね?」
「決まってる、敵がちょー強ェならそれを利用しねえ手はねえな」
「じゃあ役割分担は決まりさね」
「そーゆーこと!」
 チロリと舌を出して笑うジャスパーに、翼も目を細めて不敵に笑った。翼が周囲を、ジャスパーがデストロイウォーマシンを。そうと決まれば二人の行動は早い。
「んじゃちょっくら行ってくらあ」
「あいさ、気を付けてな」
 無数の聖剣を手繰ってクエーサービーストの一体を叩き落としながら、翼は友の背に一瞬だけの祈りを向けて。
 その祈りを背負った悪魔のような聖者は、深紅の翼を広げて唇をぺろりと舐めた。

 わざとデストロイウォーマシンの視界に入るようにしながら、ジャスパーは宙を飛ぶ。
 デストロイウォーマシンは、素早く動くものに対して異様に執着するという”クセ”があった。何かしらの意味があるのだろうが、今はその意味もきっと無くしているのだろう。
 全ての武装を解き放ち、デストロイウォーマシンはジャスパーを追う。破壊されて十分に動かなくなった左腕もお構いなしに動かして、無理矢理に照準を合わせようとしている。痛覚などない機械だからこそ出来ることか。|なんてもったいない《・・・・・・・・・》。
 随行するクエーサービーストと艦隊は翼が抑えてくれている。抑えきれない砲撃と、迫るデストロイウォーマシンの銃撃を躱しながら、ジャスパーは速度を維持しながら飛び続ける。
「……ってぇ!」
 デストロイウォーマシンのビーム砲がジャスパーの足を掠めた。避けられたらラッキーだとは思っていたけれど、流石に全てを避け切るのはこの物量差では難しいか。掠めただけで火傷を負ったような痛みが走ったが、ジャスパーにとっては悪くない痛み、というだけ。ああむしろ、この高揚感は久しぶりだ!
 自然と浮かぶ笑みを見せつけるようにわざと振り返りながら、舌を出して挑発する。
「ジャスパー!」
「助かる!」
 翼の声と同時に聖剣がジャスパーとデストロイウォーマシンの間に割り込んだ。構わず突っ込むデストロイウォーマシンのミサイルポットに聖剣が突き刺さり爆発が起こった。衝撃にデストロイウォーマシンの態勢が崩れる。その隙に、ジャスパーは己を黒い魔炎へと変異させてビーストの影に紛れ込んだ。

 ユーべルコードによる攻撃と認識したデストロイウォーマシンは、即座にそれを解析する。だが防御らしい防御をしなかった為に、戦闘プログラムによる解析があまりに不十分だ。盗用出来た聖剣の数は少なく、既に不可思議な軌道を描きはじめていることからもコントロールにも難はあるだろう。だが、それでも放ったデストロイウォーマシンの聖剣は――。

 これは実験だ。
 破壊力の為に自立思考力を犠牲にした状態で、一度「空を速く飛ぶ敵」と認識した相手が影を伝ってじっくりと距離を詰めてきたら。
(――果たしてちゃんと認識できんのかな?)
 答えは否だ。否だったのだ。

 『速く動く』ビーストに吸い込まれていく聖剣。『そこに向かった』という事実のみを追ったにしては、すぐに銃を構えなかったことがそれを証明している。デストロイウォーマシンは今、完全にジャスパーを見失っていた。
 聖剣が突き刺さりもがくビーストの影から次の影へ。ジャスパーが影を渡る間に、翼が次々と聖剣を正しく手繰りながら誤射の被害にあったビーストを正確に屠る。
「そら取り着いたぜ!」
 影を辿ったジャスパーがデストロイウォーマシンの首筋にいつの間にか取り付いていた。武骨な武器の腕ではここまで接近されると対処のしようがない。ジャスパーはバタフライナイフを閃かせた。
「なあ。機械でもやっぱ首ってやべえモンなの?」
 凄絶な笑み浮かべて、大きくナイフを振り上げる。

「教えてくれよ」

 装甲の薄いそこへ、思い切りナイフを突き立てた瞬間。
 デストロイウォーマシンの声にならぬ声のような何かが、宙域に響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マシュマローネ・アラモード
【エイリアンツアーズ】

モワ、無差別攻撃は素早く動くものに反応と……権能斥力(吹き飛ばし)最大出力、デブリの残骸を破砕して打ち出して標的を分散、斥力を乗せて艦隊やクエーサービーストの動きを乱しましょう!

そこから、UC、|巨躯屠る栄誉《ジャイアントキリング・アーナー》!
クエーサービーストを連れてきたのが災いしましたわね。
既にここは射程内!最大火力をお見舞いしますわ!

パウルさんと連携を意識して、敵艦隊をオブリビオンの攻撃の目標に変え、UCで吹き飛ばしたクエーサービーストをぶつけて盾にしつつ巻き込んでいきましょう!

モワ!この宇宙の平和のために!
帝国の野望はここで打ち止めに致しましょう!


パウル・ブラフマン
【エイリアンツアーズ】
愛機Glanzに【騎乗】して戦場へ!
戦況に応じて、マロちゃんを後部座席へお招きするね♪

▼先制攻撃&敵艦隊&ビースト対策
マロちゃん超冴えてるじゃん、その作戦でいこ☆

他猟兵さん達の交戦状況を【コミュ力】を活かして【情報収集】。
ウォーマシンの最大射程を割り出しておくね。

【悪路走破】ならお手の物。
展開したKrakeで【威嚇射撃】を繰り返し
残骸と敵勢力を『ウォーマシンの射程内』へ誘導。

マロちゃんの一撃が決まったら、共に後方(敵射程外)へ。
御気を付けを、プリンセス―此処は今から悪魔の海域だ。
ウォーマシンの射程内に敵勢だけ残し
UC発動!射程を伸ばした【一斉発射】で悉く塵になって貰うよ。




「マロちゃん情報聞いてきたよっ」
「モワ! ありがとうございますわ、パウルさん!」
 戦闘宙域――より少しだけ離れた場所。
 グリモア猟兵と一旦帰還するために撤退した猟兵より戦況を聞いたパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)は、行動を共にするマシュマローネ・アラモード(第十二皇女『兎の皇女』・f38748)の隣に宇宙バイクを寄せる。
 今回倒すべき『闇の騎士』デストロイウォーマシンの特性。引き連れている艦隊やクエーサービーストの規模。先制攻撃の方法。そしてそれら全ての撃破、もしくは損傷状況。猟兵たちの交戦状況。
 短時間で聞き取ったにしては詳細な情報に、マシュマローネは目を丸くした。にっと人好きのする笑みを浮かべるパウルは、二人の所属するツアー会社、エイリアンツアーズ内では『コミュ力オバケ』と称される程のコミュニティ力を持つ。この程度は彼にとって朝飯前だ。
「モワ、無差別攻撃は素早く動くものに反応と……」
 パウルから得た情報を基に、マシュマローネは唇に指を当てて思案する。自然な仕草にも品を感じるのは、マシュマローネがスペースオペラワールド、ラモード星第十二皇女たるゆえであろう。
「でしたら、私の『権能』斥力でデブリの残骸を破砕して打ち出して標的を分散。斥力を乗せて艦隊やクエーサービーストの動きを乱しましょう!」
「マロちゃん超冴えてるじゃん、その作戦でいこ☆」
 11歳の少女としてはやや大人びている考えも、れっきとした王族の一員であることを考えれば頷ける。一つの星を統べる者の血族であるからこそ、今回の一斉蜂起は見逃せるものではない。
 そしてこの蜂起を決して許せないのは、笑みの下に煮え滾る想いを隠すパウルとて同じなのだ。
「では行きますわよ!」
「集客はオレにお任せあれ~!」
 兎の皇女は銀の月に乗り、怪物は愛機Glanzの戦闘機エンジンを力強く吹かして。
 二人は戦闘宙域へと躍り出た。

 猟兵たちとの交戦によって、周囲には多くのデブリが舞っていた。細かなものから戦艦の装甲、クエーサービーストの肉片までがのんびりと、或いは高速で飛ぶ。
 そのうちの一つ。破壊された戦艦の大きな残骸へと触れたマシュマローネは、きっと前を見据える。既に二人に気づいたデストロイウォーマシンは、配下の戦艦とクエーサービーストを従えて此方に向かっている。
 だが、その特性は既に暴かれているのだ。
 マシュマローネはキネティック・リパルサーを大きく振り上げた。宇宙プリンセスには、|不思議な力《プリンセス・エフェクト》がある。マシュマローネが得た権能は、『斥力』。
「せーの、モワ!!」
 その力を最大出力で発揮しながら、デブリの残骸を力強く打ち据えた。強烈な斥力によって破砕されたデブリはそれぞれが高速で分散していく。それが、デストロイウォーマシンの目に留まった。
 視界内で動く無数の『敵』を認識したデストロイウォーマシンは、そちらへとバーニアの向きを変える。|やはり《・・・》融通が利かないらしい。
 吹き飛ばしたデブリにはまだ斥力が乗っている。デブリは激突しても尚強い斥力によって吹き飛ばされて、艦隊やビーストを貫き、動きを乱して混乱を生む。
 狙い通りの動きににこっと嬉し気な笑みを咲かせたマシュマローネの隣を、銀の閃光が青を纏って走り抜けた。

 普段からどんな場所であっても客を乗せて運転してきた。ずば抜けた動体視力と、それを運転に反映する反射神経と運転技術。そしてなによりその自分の技術と経験をどんな悪路であっても信じられる度胸。
 そのどれも持ち合わせる怪物の名を、パウル・ブラフマンと言う。
 悪路走行ならお手の物だ。パウルはデブリと砲撃が無秩序に飛び交う宙域を愛機で駆ける。展開したKrakeで威嚇射撃を繰り返し、誘い出された艦隊やビーストをテールランプで嘲笑う。
 そうして残骸と敵勢力、そして早いものを追うウォーマシンを誘導しながらも、パウルが見ているのはウォーマシンの『最大射程』であった。その実測も終わった今、あとは誘導を繰り返しながらタイミングを待つだけ。

 攻撃目標を定めきれないウォーマシンが惑う。『素早く動くもの』が多すぎる。それが有機物かそうでないのか、敵なのか味方なのか。そういった判断能力すら犠牲にした一切殺戮モードの弱点をモロに露呈することになったウォーマシンは、手近な『|素早く動くもの《敵》』を無差別に攻撃し続けていた。
 その隙を、マシュマローネは見逃さない。
「クエーサービーストを連れてきたのが災いしましたわね。既にここは射程内!最大火力をお見舞いしますわ!」
 月に騎乗した兎は、己よりも大きなものへの力が増す。その点に於いてクエーサービーストとは、絶好の的。

 ――『権能』斥力、最大。 

 パウルが集めてくれた敵の集団に向けて、マシュマローネは傷付き悶えるクエーサービーストを全力の権能で思い切り叩きつけた。

 とんでもない速度で巨大なクエーサービーストが吹き飛んでいく。
 速度を得た大質量は弾丸と同じだ。周囲の戦艦、他のクエーサービースト、デブリ、果てはデストロイウォーマシンまで全てを巻き込み吹き飛ばす。
「マロちゃん!」
 轟音と爆発をあげて大打撃を受ける艦隊からいち早く脱出したパウルは、マシュマローネを後部座席に乗せて迅速に後方へと離脱した。
 艦隊からもデストロイウォーマシンからも射程外となった場所へと辿り着けば、パウルはにっと不敵に口角を上げて笑う。 
「御気を付けを、プリンセス――此処は今から悪魔の海域だ」
 Krakeを全て展開する。
 ここは既に怪物が治める海域。
 船の上から攻撃すること能わず。海に飛び込んだものの手が届くこと能わず。ただ一方的に蹂躙されるのみ。
「地獄へヨウコソ!」
 大混乱へと陥った敵勢に向けて、Krakeを一斉発射した。

「モワ!この宇宙の平和のために! 帝国の野望はここで打ち止めに致しましょう!」
「もっちろん! ……粉微塵にしてやんよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
暗黒の宙を埋め尽くす幾多の光。
様々な色の熱線が混ざり合い、宛ら、高熱のスポットライトだ。
猟兵は踊る舞台に事欠かない。…が、今回は少しばかり熱の入れようが過ぎるぜ。ま、嫌いじゃないが。こういう催しはよ。

大軍勢の弱点は小さすぎる個に対して対応し切れないこと。
俺を出迎える為の大量の|スポットライト《配下による攻撃》。その俺の眼前にデストロイウォーマシンを誘導するとどうなるか。
俺の代わりにマシンの方を照らし出してくれるって寸法さ。
マシンの方は無差別攻撃、だそうだ。UCで躱しつつ、周辺の花火が上がるのを口笛でも吹いて眺めようか。
|デストロイウォーマシン《殺戮戦闘機械》とはよく言ったモンだ。幾つかの艦隊、周辺に被害が出りゃ良し。出なくても多少の混乱は巻き起こせるだろ?
ギャラリーの熱狂が聴こえそうだ。生ライブというには些か血生臭いがね。

魔剣を顕現。
致命傷を狙えそうな動力部に【串刺し】を狙って魔剣を押し込む。
続けて【怪力】込みで魔剣を斬り上げて。
アンタ、闇の騎士なんだろ?剣で負けるなら本望じゃないか?




 暗黒の宇宙を埋め尽くす幾多の光。広大なはずの世界を切り取る大軍勢。様々な色の熱線が混ざり合い、宛ら高熱のスポットライトのようだ。
「猟兵は踊る舞台に事欠かない。…が、今回は少しばかり熱の入れようが過ぎるぜ」
 眼下の光景を睥睨しながら、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)はふん、と鼻を鳴らした。
 猟書家プリンセス・エメラルドが集めた帝国継承軍の規模は、かつての銀河帝国軍以上。クエーサービーストすら従えて宇宙を突き進む大軍は、圧し潰すような威圧感を放っている。
「ま、嫌いじゃないが。こういう催しはよ」
 ふ、と細めた目に宿る剣呑と高揚。分の悪い戦いは、生憎と嫌いではないのだ。
 大軍に挑む者が居る。再びの殺戮と支配を許せぬ者が居る。そんな者たちによる反撃が始まっている。この圧倒的な戦力差を覆さんと、首魁の喉元に刃を突きつけんと集った者が此処に居る。
 イカれていると言えばそうなのか。だがしかし、|それが猟兵というもの《・・・・・・・・・・》なのだと此処に示してみるのも一興だ。

 事前に準備されたジェットパックを使い、敵陣の目の前へと躍り出た。わざと身を晒すような危険行為だが、無論そこには意味がある。
 大軍勢の弱点は、小さすぎる個に対して対応しきれない事にある。象が蟻一匹を気にしないように、膨れ上がった勢力に慢心して小さな個を些事と侮り、また、小さすぎるが故に的にすることを苦手とする。
 デストロイウォーマシンがカイムに気づいた。既に少なくない負傷は、猟兵という小さな個の行動の結果だ。
 指示が飛んだか、周囲の戦艦の砲台がカイムに向けられはじめる。数体のクエーサービーストも向かってきている。個を攻撃するには過剰すぎる程の戦力だ。だが、だからこそ利用しがいがある。
「俺を出迎える為の|大量のスポットライト《配下による攻撃》。その俺の眼前にデストロイウォーマシンを誘導するとどうなるか」
 両手を広げて、カイムは笑った。まるで「狙え」と言わんばかりに、大胆不敵に。
 放たれる熱線。高速で向かい来るビースト。そして、その場から動かぬカイムを的の一つとして狙うデストロイウォーマシン。

 ――そう。スポットライトの中心に、デストロイウォーマシンは飛び込むことになる。

 放たれた砲撃は、もう軌道を変えることはできない。
 勝手に目の前に飛び込んできて、勝手に熱線の盾となってくれる。眼前で起こる大爆発に、カイムはにやりと口角を釣り上げてその場を離脱した。
 予想通りだ。思ったように演者が動いてくれると、演出家としてはなかなかに面白い。同時に危険な賭けでもあったわけだが。それをやってのける決断力と度胸こそ、カイムがカイムたる所以なのであろう。

 爆発の閃光が収まったそこには、右半身を失ったデストロイウォーマシンが居た。まだ、健在だ。まだ動こうとしている。
 首をやられているおかげでぎこちない動きではあったが、明滅するようになった翠のモノアイをカイムに向ける。機械に感情があるならば、その目線にはきっと憎悪が宿っていた。けれども残念なことに、彼はプログラムに沿って動く機械にすぎない。
 一切の戦術思考を捨て、残る全武装を解き放ってウォーマシンは誰かれ構わず|反撃《・・》をはじめる。傷付いたウォーマシンにはもう敵も味方もないのだろう。彼にあるのはたった一つの命令、一切の殺戮だけだ。
「|デストロイウォーマシン《殺戮戦闘機械》とはよく言ったモンだ」
 無差別攻撃の射線を避けながら、カイムは皮肉たっぷりに呟き口笛を吹いた。
 周囲の艦隊やビーストには少なくない被害が出ている。破壊されて爆発する戦艦もあれば、宇宙の残骸となったビーストの死骸がある。
 帝国継承軍の誰が予想できたろうか。この艦隊の被害のは半分は、闇の騎士デストロイウォーマシン自身によって引き起こされたこと。そしてそれは、猟兵たちが彼の特性を理解し利用した結果なのだと言うことを。
 カイムの上方で、戦艦一隻がまた大爆発を起こした。さながら大輪の花火と言ったところか。
「ギャラリーの熱狂が聴こえそうだ。生ライブというには些か血生臭いがね」
 その様を笑い飛ばして、カイムは魔剣を顕現させた。

 周囲にあるもの一切を殺戮せんと攻撃を続けるデストロイウォーマシンに肉薄する。振り向いたウォーマシンと目が合ったが、もう遅い――!!
「アンタ、闇の騎士なんだろ?」
 外側からではイマイチわかりにくい、デストロイウォーマシンの装甲の内部。だが、砲撃によって右半身を失った今ならば内部が丸見えだ。恐らく動力部と思しき箇所に目途をつけ、カイムはスピードを乗せてそこを深々と突き刺す。
 緑の単眼が、カイムを見ている。そこに感情の色などない。
「剣で負けるなら本望じゃないか?」

 だから、まずはそろそろ第一幕の幕引きとしよう。

 カイムは最大限の力を込めて、突き刺したままの魔剣でウォーマシンを斬り上げた。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

クラウン・メリー
かーくん(f00455)と

何処からか友達のSOSが聴こえてくる
それは、小さくて今にも消えてしまいそうな声だったから
早く君の元へ行きたいと翼をはためかせた

どんなに遠く離れていても
どんなに危険な場所でも
にっこりと笑顔を向けながら君の手を取って

かーくん、いっしょに戦おうっ!

ふふー、俺達はヒーロー!
星の海のヒーローが困っているのなら
助けに行くのが当たり前!
それに、一人より二人の方がずっと心強いもんね!

うんうんっ!操縦はよろしくね!
俺はかーくんを守ってみせる!

どんな状況だって笑顔は忘れない
色鮮やかなボールをジャグリングして敵を惑わせて
ふふー、普通のボールだと思った?

ボールを布で隠せば、あら不思議!
黒剣に早変わり!

接近してもらえれば
かーくんと息を合わせて敵を斬ってみせるよ
ほら、ほら!こっちこっち!よそ見しないで!

ショーはまだまだ始まったばかり!
火吹き芸や手品だって魅せちゃうよ!

みんなの、かーくんの笑顔を守る為に
俺は此処に立っているんだ

――絶対に守ってみせる!


カーティス・コールリッジ
クラウ(f03642)と

『――被験体XX、識別No.00455に告ぐ』

母艦の皆がおれをそう呼ぶとき
おれは『そちら側』のいきものではないんだと理解する
『生命維持装置を解除することを許可する』、その意味は
つまりは、ああ、そういうことなんだ

何の感慨もなく、イエスと答えた瞬間
不意にともだちの笑顔が網膜の裏をよぎった

『たすけて、ヒーロー』

無意識に零れ落ちたことば、それは、成層圏を越えて
ほんとうに来てくれたきみは、スーパーヒーローだ!

クラウ、行こう!
経路は任せて、おれがきみの翼になる!

Lightningによる速度の底上げ
Stingrayを操縦し限界まで速度を上げ
敵の先制攻撃の経路を算出し縫うように旋回すると同時
殲滅機械を解析し回路にハッキングをかけてノイズを走らせよう
銃口が一斉にこちらを向いたなら全砲門を解除して制圧射撃
光線を穿ち、軌道を逸らしてクラウの射程圏内まで接近してみせる

おれは道具で、兵器だ
だけど、それでも生きている
みんなを守るためにここに立っている
――この感情は、不要なものなんかじゃない!




 ――時は少し遡る。

 艦内をけたたましいアラームが駆け巡る。真っ赤なライトは最上級の緊急事態を表していて、カーティス・コールリッジ(CC・f00455)は『Stingray』と名付けられた愛機に飛び乗った。
 システムを起動し、数多のスイッチを操作して淀みなく出撃準備を整えている最中、通信が入った。
『――被験体XX、識別No.00455に告ぐ』
 感情の乗らない冷たい声だった。いっそ機械のようだったけれど、カーティスは声の主が母艦のにんげんであることを判っている。そして、母艦の皆がカーティスをそう呼ぶとき、カーティスは『そちら側』のいきものではないんだと理解する。何度も。何度だって突きつけられる。何度目? これが最初だったろうか。……わからない。
『生命維持装置を解除することを許可する』
 ――ああ。
 いつも前を向いていた目線が、ゆっくりとゆっくりと下がっていく。生命維持装置の解除。つまりは、ああ、そういうことなんだ。
 生まれた意味を果たせと言っている。
 命を賭して果たせと言っている。
 カーティスは兵器だ。そう生み出された。わかっている。きちんとわかっているから――平気だ。
「……Yes」
 いらえた声が自分のものではないみたいだった。何の感慨も抑揚もない。ただそう生まれたからその責務を果たすだけ。|それだけなんだ《・・・・・・・》と、自分に言い聞かせて。
(なのに。どうして。おれは顔をあげられないんだろう)
 わかっている。理解はしている。けれど――世界を渡り、世界と関わり、友が出来て、笑って、戦って、楽しくて、嬉しくて。嬉しくて楽しくて。……だから、もしかしたらお別れになってしまうかもしれないことが、悲しくて寂しくて。|   《・・・》。
 不意にともだちの笑顔が網膜の裏をよぎった。

「……たすけて、ヒーロー……」

 無意識に零れ落ちたことば。宇宙の闇に消え入りそうなSOS。
 けれどもそれは消えることなく、成層圏を越えて。

「……かーくん?」

 地上から|天《そら》を見上げる友。クラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)に、確かに届いたのだ。

 何処からか、確かにともだちのSOSが聴こえてくる。
 それは小さくて今にも消えてしまいそうな声だったから、早く君の元へ行きたいとクラウンは翼をはためかせた。

 飛ぶ。どこまでも高く。

 ――どんなに遠く離れていても。

 駆ける。君の許へ行くための門を繋ぐ場所へ。

 ――どんなに危険な場所でも。俺はいくよ。

 大好きな友達が零した声を辿って、空を越えて、宙の先へ。俯いたまま顔をあげられない、君のところへ笑顔を届けに。
 
 ――にっこりと笑顔を向けながら君の手を取って、言うんだ。

「かーくん、いっしょに戦おうっ!」
「クラウ!」

 カーティスの母艦へと直接繋いだ門から飛び出したクラウンは、Stingrayのコックピットに飛び乗ってとびきりの笑顔を向けた。
 いつも通りに明るくて、優しくて、温かいクラウンの笑顔が本当に目の前にある。此処はスペースシップワールドで、宇宙で、もしかしたらクラウンは違う世界に居たかもしれないのに。それでも届いた。あまりに微かなSOSを受け取って――。
「……ほんとうに来てくれた君は、スーパーヒーローだ!」
 差し伸べられた手をしっかりと掴んで、カーティスは滲みだしそうだった涙を堪えて精一杯の笑みを返した。
「ふふー、俺達はヒーロー! 星の海のヒーローが困っているのなら、助けに行くのが当たり前!」
 それに、とクラウンは片目を瞑ってみせる。
「一人より二人の方がずっと心強いもんね!」
 その言葉に、カーティスは何度だって頷いた。SOSが届いたことも|ともだち《クラウン》が来てくれたことも、本当に心強くて。
 嗚呼、さっきまでの不安な気持ちなんか何処かへ飛んで行ってしまったんだ。
「クラウ、行こう! 経路は任せて、おれがきみの翼になる!」
 カーティスはクラウンをStingrayの後部座席へと誘って、力強く告げた。その瞳にはもう憂いはない。額にかけていたバイザーを下げ、止まっていた出撃シークエンスを最終チェックへと進めていく。
「うんうんっ!操縦はよろしくね! 俺はかーくんを守ってみせる!」
 どんな状況でも、クラウンは笑顔を忘れない。クラウンは人々に笑顔を咲かせるピエロ。ピエロが笑っていなければ誰も笑えないだろう。
『3,2,1......Stingray. Lift-off』
 ――いざ友を乗せて、飛ぶ。

 猟兵たちの行動によって、デストロイウォーマシンが率いる艦隊は甚大なダメージを受けていた。既に少なくない数の戦艦が墜とされ、クエーサービーストの死骸が漂っている海。それでもまだ、艦隊の機能が失われていると言い切れる状況ではなかったのは流石というべきだろう。
 だがそもそもに、猟兵たちの目的はこの艦隊の壊滅ではない。目指すべき敵は今、たった一人だけ。ここはまだ、ただ一人へと至る為の道筋でしかない。
 右半身を失ったデストロイウォーマシンは、火花を散らせながらもまだ機能を停止していない。きっと、壊れるまで戦うのだろう。|その為に生まれた《・・・・・・・・》のだと思えば、カーティスにも思うことがないわけではなかったが。Stingrayの速度を限界まで押し上げる。アカエイは一条の流星へと姿を変え、デストロイウォーマシンと生き延びている戦艦の砲門。そしてクエーサービーストの敵視を一心に集める。そのどれもを、流星は置き去りにしていく。
 旋回しながらもカーティスはコンソールに指を走らせる。傷付いた今のウォーマシンにならば、ハッキングも容易い。回路に侵入して走らせたノイズは確かにウォーマシンの行動を止めた。その隙に、一気に距離を詰める。
 先制攻撃の経路を算出して艦砲射撃の隙間を縫い、放たれた砲撃にはStingrayの全砲門を解除し制圧射撃を放つ。光線を穿ち、軌道を逸らし、カーティスは一心に操縦桿を手繰る。全ては、クラウンの射程圏内まで持ち込む為。

 眼前にクエーサービーストが立ちはだかる。けれどもここでStingrayを止めるわけにはいかない。まだ止まれない。止まってはいけない。まだ、殲滅機械が動けぬうちに――!

 その瞬間Stingrayのハッチが開いた。後部座席で立ち上がったクラウンに不敵な笑み。手には色鮮やかなボール。それを確かな手際でジャグリングしてみせる。予期せぬ動きだったか、ビーストの動きに疑問が揺れた。
「ふふー、普通のボールだと思った?」
 一つの手にまとめたボールに布を被せる。そうして、それを一瞬で取り払えば――。
「あら不思議! 黒剣に早変わり!」
 クラウンの手には漆黒の剣があった。
 激突を避けながらもギリギリまで寄せたStingrayの軌道のままに、クラウンはビーストに剣を突き立てる。そのまま一気に胴体を切り裂けば、禍々しい色の血液が迸った。
「ほら、ほら!こっちこっち!よそ見しないで! ショーはまだまだ始まったばかり! 火吹き芸や手品だって魅せちゃうよ!」
 さらにクラウンは迫りくるビーストの目を惹こうと声を張り上げる。人好きのする笑みを咲かせ、カーティスと息を合わせてビーストを斬り払う。痛みに悶えるビーストすら置き去りにして、二人は更に後方。理性を捨てて残りの武装を全方位に向けるデストロイウォーマシンへと迫る。殲滅機械の名を欲しいままにするように激しい攻撃を繰り返す機械の、その目前まで。戦艦の爆風を避け、銃弾を光線で穿ち、ウォーマシンがクラウンの射程に入るまで……あと少し。
「おれは道具で、兵器だ」
 オブリビオンに対抗する為に人工的に作られた生命。それが、カーティス・コールリッジという少年で。
 それはカーティス自身にもよくわかっていることで。
 操縦桿を手繰り、ボタンをめぐるましく操作し、――あと、距離500。
「だけど、それでも生きている。みんなを守るためにここに立っている」
 使命がある。生まれた意味がある。
 けれどこの体には命があり、意思があり、心がある。
 ユーべルコードの力も合わせ、限界まで速度を上げた戦闘機が熱を持つ。それでもペダルでバーニアを操作し、スラスターを微調整して攻撃を避け続け、――あと200。

 おれは生きてる。
 兵器として生まれたって、心が抱いた感情も思いも。過ごしてきた記憶も全て本物だ。全て、おれ自身が感じたたった一つの想いだ。どんなことがあったって、全てなかったことになんかならない。
 だから。

「――この感情は、不要なものなんかじゃない!」

 ウォーマシンは、目の前に。
 カーティスが全ての砲門をウォーマシンに向ける。

「みんなの、かーくんの笑顔を守る為に、俺は此処に立っているんだ」

 黒剣を構えたクラウンは笑っている。みなの笑顔を咲かせる為に、クラウンはいつだって笑みを絶やさない。
 ウォーマシンの銃口が向けられるよりも早く、黒剣の切っ先を向けて。

「――絶対に守ってみせる!」

 黒の斬光と光の熱線が、デストロイウォーマシンを貫いた。



 デストロイウォーマシンが完全に破壊され、艦隊は一時的な混乱状態に陥った。
 そのはずだ。向かうところ敵なしと思われた闇の騎士の部隊のひとつが、オペラワールドに辿り着くよりも早く襲撃され、甚大な被害を被ったのだから。指揮系統を失い、被害を立て直そうと部隊が慌てているうちに、カーティスとクラウンは破壊されて宇宙を漂う残骸となり果てたデストロイウォーマシンの中枢コンピューターにハッキングを仕掛けていた。
 ハッキング中のカーティスを守るように、クラウンはその背に立って周囲の警戒を怠らない。暫くそうしていたが、やがてカーティスが「あった!」と声をあげた。
「見つけた、プリンセス・エメラルドの旗艦の座標! すぐにみんなに知らせなくっちゃ!」
「うんうんっ! あいつらがまた攻撃をはじめる前に、次に行っちゃおう!」
 すぐさまStingrayの通信機能を通じて座標を送信した。これで次の場所へすばやく転送してもらえるはずだ。
 快活な笑顔で笑い合ってしたハイタッチの音が、二人の心に響く。

 まだ生きている。笑っている。そうしてこの先も、そうであるように。
 銀河の皆が生きて、笑っていられるように。
 この進撃を、必ず生きて止めてみせる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『主天魔怪獣ドミニオン』

POW   :    コールオブドミネーター
自身が装備する【大杖】から【破壊衝撃波と支配感応波】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【洗脳】の状態異常を与える。
SPD   :    パーフェクトドミネーション
【口から黒雲を吐き、嵐を引き起こす。雨】が命中した部位に【障害を無視して浸透する体を支配する水】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
WIZ   :    ドミニオンクラッシュ
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【眼】から【支配洗脳効果を持つ破壊光弾】を放つ。

イラスト:柴一子

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●フェーズ2
 デストロイウォーマシンとの激戦を制した猟兵たちは、その残骸からプリンセス・エメラルドが居る巨大|漿船《クリスタルシップ》「ソング・オブ・オーンブル」が居る座標を手に入れた。
 戦いの疲れも傷も癒す間もなく、すぐさまその場所へとピンポイントで転送される。これは電撃戦。数で圧倒出来る相手に時間を与えれば与える程、不利になっていくのは此方だ。稲妻のように素早く、この奇襲作戦をこなさねばならない。

 だが転送された直後に猟兵が見たものは、予想を上回る巨大な船と、船を守るように配置された小惑星級の怪物の姿であった。
 もしかしたらこの怪物の姿を別世界で見たものも居るだろう。怪物はブルーアルカディアから連れてこられたものだ。だが空の世界に居た時よりも明らかに巨大な理由は、クエーサービーストを餌として与えられたがゆえ。言葉に寄らずとも、気配によってそれを察することが出来る者もいるかもしれない。

『従いなさい。従いさない。継承軍に従い、忠誠を誓うのです』

 怪物は囁く。
 それは妙に脳に届く声音で、精神に直接語り掛けてくる言葉。

『どうして戦うのです』
『従いなさい。プリンセス・エメラルドの威光の許に、遍く銀河はひとつとなるのです』
『従いなさい。従いなさい。平和も安寧も帝国継承軍の統一をもって齎しましょう』

 怪物は囁く。
 それは優しいふりをして妙に力強く響く声音。油断をすれば、気を抜けば、従ってしまいそうになる言葉。

『戦う理由ならば継承軍が差し上げましょう』
『静かに暮らしたいのならば、プリンセス・エメラルドの御意思の許に、安息を約束しましょう』
『彼女は正当なる宇宙の支配者の「帝国継承規約」を引継ぎし者』
『従いなさい。従いなさい。抗ってはなりません。従いなさい。従いなさい』
『従えないのならば、従わせてさしあげましょう』

 怪物はゆっくりと猟兵たちを見つめ、ひと時も休まずに語り掛け続ける。
 どんな爆音でも声は防げない。どんなに耳を塞いでも、『支配』の力は常に猟兵たちを襲う。脳に滑り込み、心を滑り込み、心も体も支配する為に。
 『支配』の権能を持った巨大な怪物が、歪な口を開いて笑っている。

 戦いながらも常に囁き、心を掌握せんと『支配』の力を放ち続ける怪物に抗うには、攻撃を加えながらも決して『支配』に屈しない精神力が必要だ。
 ゆえにこそ思い出せ。
 何故戦うのか。何を守りたいのか。何をしたいのか。何故抗うのか。何故許せないのか。
 己の体に強く刻んだ理由を思い出せ。その『理由』を心に武装して、怪物の『支配』の声に耐えながら打ち砕くのだ。

 此度はプリンセス・エメラルドだけを狙った奇襲作戦。惑星ロボのような巨大なものは当然持ち込めなかった。
 小惑星級の巨大な敵に、己の力とユーべルコード、そして精神力だけで立ち向かわねばならない。
 それでも負けられない理由があるのなら。

 『支配』に抗え、|猟兵《イエーガー》。
マシュマローネ・アラモード


お断りしますわ!
巨大な武力を振り回して、帝政のレガシーもロマンのカケラもないプロパガンダの怪物を引き連れて、後継者などと語るに落ちますわ。

洗脳効果のある光線、斥力(吹き飛ばし)で防げますが、アグレッシブ・ディスペルの副次効果で構えますわ!
私の権能の本質は反射、斥力は単なるパワーに留まりませんわ、力を返し、術を解く、反魔の力でもありますわ!
洗脳効果で、自分自身で問答なさい!その隙に攻撃手段の眼を破壊して、推力移動で機動して各所にある眼を、徹底的に斥力を解放して機能を解除しましょう!

スペースオペラワールドの姫として、流儀を教えて差し上げますわ!




『従いなさい。従いなさい。そうすることがこの宇宙の正しき道なれば』

 小惑星級にまで巨大化した怪物――名を主天魔怪獣ドミニオンと言ったが、巨大な顔を引きつらせるように笑っていた。どうしようもない程の欺瞞に満ちた優しさで、猟兵を継承軍へと引き摺りこもうとしている。

「お断りしますわ!」
 だからそんな声を吹き飛ばすように、マシュマローネ・アラモードは力いっぱい叫んだ。
 常ならば天真爛漫の笑みを浮かべるかんばせも、今は幼くもひとつの星の姫君としての責務と誇りをもって、真正面からドミニオンを見据えている。
「巨大な武力を振り回して、帝政のレガシーもロマンのカケラもないプロパガンダの怪物を引き連れて、後継者などと語るに落ちますわ」
 マシュマローネはスペースオペラワールドの星のひとつ、ラモード星の皇女だ。多くの民を養い、慈しみ、守るラモード王族としての誇りは強く胸に刻まれている。だがドミニオンはそんなことはお構いなしに巨体を前傾姿勢へと変える。突っ込んでくる気だ。

『歴史はこれから刻まれます。伝説は今生まれようとしています。浪漫は後世の者が勝手に見出すものです。貴女は今、誕生の瞬間に立ち会おうとしているのです』
『それは素晴らしきこと。宇宙ではもう二度と見られない瞬間でしょう』
『さあ、従いなさい。崇めなさい。受け入れなさい』
 
 巨大な顔が嘲笑いながら徐々に加速していく。自身の質量を武器としながらも、更に攻め立てるようにドミニオンは無数の眼から破壊光弾を放たれた。黒き思念が渦を巻く光弾は、当たればマシュマローネのような小さき存在など簡単に消し飛ばしてしまいかねない。
「お断りですわ!」
 けれども、マシュマローネは絶対に怯まなかった。強い精神力は滑り込もうとする声を悉く弾き返す。
 迫る光弾も、常ならば『斥力』の権能で弾き返すのだが。此度、代わりにマシュマローネはキネティック・リパルサーを構える。
 破壊光弾を前にして、武器に込めるのは『斥力』の権能。けれどもそれは単なるパワーには留まらないことを、ドミニオンは知らない。
「私の権能の本質は反射。力を返し、術を解く。反魔の力でもありますわ! ……ごめんあそばせ!!」
 マシュマローネは思い切り、キネティック・リパルサーで光弾を打ち返した。自身の何倍もあろうかという破壊光弾は、一瞬たりとてマシュマローネに触れることは叶わぬままに真っすぐにドミニオンへと向かう。
 支配と破壊に特化し、なおかつまっすぐにマシュマローネに向かって加速していたドミニオンに、それを避ける術はない――!!

『…………!!!!!』

 光弾を放った眼の一つが爆発した。声にならぬ叫びをあげて悶えるドミニオンへと飛び乗ったマシュマローネは、そのまま駆ける。
 破壊光弾には洗脳の効果も当然乗せられていた。それをそのままお返ししたのだから、しばらくの間は自分自身で問答していてくれるはずだ。その隙に、攻撃手段の一つであった『眼』へと迫る。スカートの推力を利用し、巨大で不気味な視線を一身に浴びながら、キネティック・リパルサーを振り上げて――。

「スペースオペラワールドの姫として、流儀を教えて差し上げますわ!」

 兎の皇女は、ラモード星は、オペラワールドは決して屈することはないのだと。
 大きな想いを斥力に変えて、マシュマローネはドミニオンの『眼』に力いっぱい叩きつけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎だ

「従えだって?冗談じゃない!
お前達の支配は人々を苦しめ、自由を、笑顔を奪う!
このブレイザイン、そんな悪事は見過ごせない!
なんとしてもお前達を倒す!」
圧倒的な精神力で『支配』を完全に押し返す

大杖から放たれる衝撃波は[オーラ防御]で防ぎ、
洗脳は[気合い]でぶっ飛ばす
無数の船や怪物の攻撃もはじき、[怪力]で投げ飛ばす
更に[仙術]で傷を断続的に回復する

「こっからはオレの番だ!
いくぜ!究極!変身!!」
UCを発動して光の巨人に変貌
怪物達を光線や光の剣で撃破していく
相手が増える度に[限界突破]し、ドンドン巨大化していく
最後に巨大な光線を放って、プリンセス・エメラルドの元まで飛翔




 オペラワールドを侵攻せんとする大艦隊。その只中にある巨大漿船「ソング・オブ・オーンブル」と、護衛のように付き従う小惑星級の怪獣。
 そこにピンポイントで転移した猟兵と怪獣との闘いは、激闘となっていた。
『従いなさい、従いなさい。継承軍を受け入れなさい。それがこの宇宙の為。宇宙の平和にとって唯一の道なのです。従いなさい。従いなさい』
「従えだって? 冗談じゃない!」
 主天魔怪獣ドミニオンが持つ大杖から放たれる衝撃波を纏ったオーラで防ぎながら、空桐・清導が高らかに吼える。
「お前達の支配は人々を苦しめ、自由を、笑顔を奪う! このブレイザイン、そんな悪事は見過ごせない! なんとしてもお前達を倒す!」
 優しい声音で美しい言葉をはいくら吐かれたところで、清導の強い精神力はそれを意に介さない。
 清導は知っているのだ。その言葉は全て欺瞞であることを。何故なら、圧倒的武力を以て銀河を一度は統一した銀河帝国の所業を知っているから。クエーサービーストすら従えた大艦隊が、これからオペラワールドで何をするのかを。
 ドミニオンが囁くのは、そんな蹂躙と支配への道へと加担しろということだ。そんなことを、熱きヒーローである清導がどうして許せるのか。
 ――否。絶対に、許せるわけがない!!

 ドミニオンが手にした大杖から続けざまに放たれる衝撃波を防ぎ、支配しようとする洗脳の声音を気合で吹っ飛ばしながら、清導はドミニオンとの距離を詰める。護衛として配置されている戦艦やクエーサービーストの攻撃を掻い潜り、戦闘の邪魔にならぬよう怪力で遠くへ投げ飛ばして更に先へ飛ぶ。
 防ぎきれない衝撃波が清導に傷を作っても、それをないがしろにはしない。まだこの後も戦いが控えているのだ。仙術で傷を回復しながら、清導は自分の胸をぎゅっと掴む。
「こっからはオレの番だ! いくぜ!究極!変身!!」
 この状況を、この艦隊がもたらす未来を許せない。
 熱い思いと魂から溢れ出る光を黄金のオーラに変え、眩く美しい光の巨人へと変身した。

『どう足掻こうと無駄なこと。正義ならばプリンセス・エメラルドと帝国継承軍の名のもとに与えてさしあげましょう。さあ、受け入れなさい。従いなさい』
「お断りだ!! オレはオレの正義を信じる! 誰かに与えられた正義なんか必要ない!」

 ドミニオンと真正面から相対した清導は、杖から放たれる衝撃波も支配も光の剣と気合で斬り裂いて、跳ぶ。巨大な巨大な顔と、無数の眼。その眼が攻撃手段であることも、また眼であるが故に防御が薄いことは想像に難くない。ならば。

「そのデッケェ眼でよーく見ておくんだな! このブレイザインの光を!!」

 力を溜めるようにぎゅっと身を縮めれば、清導が纏う光が強くなっていく。その太陽のような眩さにドミニオンが目を眩ませた瞬間。

「くらいやがれ!!」

 巨大な光の奔流が|光の巨人《清導》から放たれた。眩い光はドミニオンの眼を焼き、そのまま貫通する。聞くに堪えぬ絶叫が響き渡った。
 それでも清導は攻撃の手を緩めない。敵の首魁たるプリンセス・エメラルドはもう目の前。支配者気取りの怪獣になど手を焼いてはいられないのだと言うように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テリブル・カトラリー
私はオブリビオンと戦う為に目覚めた。
敵に阿る事は|私《ウォーマシン》のする事じゃない。

『黒剣装甲』発動。
流動黒剣の装甲を纏い、装甲に触れる支配感応波から逆に【生命力吸収】精神エネルギーを喰らい【エネルギー充填】、流動黒剣を増幅。
破壊衝撃波を液状の装甲で【受け流し】
ブースター【推力移動】主天魔怪獣ドミニオン目掛け飛翔し、
増幅し纏った流動黒剣を回し、円錐状となって一点【貫通攻撃】

従わない理由などそれで十分だ。

腹の大口へ突っ込み、流動黒剣を流し込んで【切断属性攻撃】
腹から内部を斬り裂き、傷口に入り込んで生命力を喰らい、増幅した流動黒剣でまた斬り裂き、生命力吸収、を繰り返す【範囲攻撃】




 光が主天魔怪獣ドミニオンを貫いていく。
 三つ目の眼が潰されてドミニオンは苦悶に震えたが、それでもまだ、怪獣は『支配』も攻撃もやめる様子はない。クエーサービーストを喰らって小惑星程に巨大化した怪獣は、それでもまだ有り余る体力と力を以て猟兵たちの前に立ちはだかる。プリンセス・エメラルドが自身の護衛としてこれを配置したのにも頷けた。
 ――だが、それがどうした。
 ドミニオンの持つ大杖から放たれる破壊と支配の感応波を乗せた衝撃波を、ユーべルコード『|黒剣装甲《ゲル・コート》』によって纏った液体黒剣で受け流し、テリブル・カトラリーは宇宙空間を飛翔する。

『従いなさい。お前はウォーマシンですね。戦う為に作られた銀河帝国の武器ですね。ならばお前の居場所は此処です。帝国継承軍へと従いなさい』

 さも当然と言わんばかりのドミニオンの口調。この怪獣は一体、クエーサービーストと何を取り込んでこんなにも饒舌になったのか。元より口と思考が達者であったのか。……そんなことはテリブルにとってはどうでもいい。ドミニオンが語る言葉も同じこと。

「私はオブリビオンと戦う為に目覚めた。敵に阿る事は|私《ウォーマシン》のする事じゃない」

 淡々としたテリブルの声音は、それでもドミニオンには届いている。それはテリブルの黒剣装甲に触れた支配感応波から、逆に精神エネルギーを喰らった反動かもしれない。精神にハッキングを仕掛けられたようなものだ。だから決して張り上げたわけではないテリブルの声は、はっきりとドミニオンの精神に響くのだ。

 確かにテリブルは銀河帝国の生まれだ。帝国の為に戦うことが存在理由であった。
 だがそれは既に過去の話だ。帝国は滅び、戦うことだけが存在理由となって戦場を転々とし、やがて平和になった宇宙船の片隅で一度は眠りについたのだ。それでも今此処に立っている理由は、猟兵に選ばれて強制起動したからに他ならない。
 今のテリブルは銀河帝国の残党兵ではない。ウォーマシンの|猟兵《・・》である。

「従わない理由などそれで十分だ」

 ブースターの残光が、一条の雷を描いた。
 ドミニオンの精神エネルギーを十分に喰らった流動黒剣は、当初の三倍程に増幅している。その液体を力強く回す。流動する液体剣を円錐状とし自らを黒き弾丸と化したテリブルは、ドミニオンの腹にある大口へと突っ込んだ。

『…………っ!!!!!!』
「……ほう」

 思念が苦痛に塗れるのを感じ取って、テリブルは目を細めた。小惑星級とて内部を攻撃されれば痛いか。――ならば。
 テリブルは容赦なく、流動黒剣で内部を斬り裂いた。聞くに堪えぬ悲鳴を聞き流し、傷口に入り込んで生命力を喰らい、更に増幅した流動黒剣でまた斬り裂く。それを繰り返す。
 たとえ相手が小惑星級の相手であっても、己の中までは攻撃できまい。ならばテリブルは繰り返すだけ。それが今のテリブルのすべきことならば、そこに疑念の余地はない。
 膨れ上がった流動黒剣が、ドミニオンの内部を深く貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神咲・七十
アドリブ・連携お任せ

う~ん、私と似たような力を持ってますね……
でも今はまだ使いたくないのですが……

(キャバリアを呼び出し、UCを使用。攻撃が届かない位置を保ちながら捕食する結界で敵を攻撃していく)

あぁ~、あの嵐にもそういう力があるのですね……私の場合、近づいたら面倒な事にしかなりませんね

(結界の範囲から出さずなおかつ攻撃も届かない、ぎりぎりの位置を結界の探知能力を使って維持し続ける)

……本当に面倒な相手ですね、と戦っている時に思ってましたけどよく考えたら私も似た力を持っていますのでブーメランが刺さってしましますね……
考えないようにして目当ての相手に力を使う事に集中しましょう……




「う~ん、私と似たような力を持ってますね……でも今はまだ使いたくないのですが……」

 主天魔怪獣ドミニオン。ブルーアルカディアに生息する怪獣であり、『支配』の力持つもの。
 その権能とも呼ぶべき力はあらゆる攻撃に乗せられており、それとは別に常時範囲内の敵の脳内に滑り込むような精神感応波を出し続けているようだった。
 他の猟兵たちとの情報共有からそれを察した神咲・七十は、キャバリアの中で悩ましげに表情を曇らせていた。
 どうにも似ている。だから困る。
 特にあの精神感応波が良くなかった。十全に対応できる策やユーべルコードが思いつかなかった七十は、代わりに別のユーべルコードを展開する。
 名を、『制約:征服者』。
 血や寿命、生命力などを捕食する、まるでヴァンパイアのような攻勢結界。それを自分を中心に張ると、七十は結界の範囲内から出ないギリギリの距離で、ドミニオンと対峙する。
 かの怪獣の口からは、言葉の代わりに黒雲が溢れていた。宇宙に於いては本来存在できぬはずの嵐を呼ぶ黒雲だ。だが、クエーサービーストを喰らって力が変質したのか、その雲は宇宙空間でも力を維持しながら雨を降らせている。
 わざわざ吐き出す程だ。どんな力があるのかと解析してみれば――やはり。
「あぁ~~、あの嵐にもそういう力があるのですよね……私の場合、近づいたら面倒な事にしかなりませんね」
 七十は面倒くさげに形の良い眉根を顰める。
 解析結果はある意味予想通りとも言えた。あの雨にも、当然のように体を支配する効果がある。しかも障害を無視して浸透するものだ。つまり、いくらキャバリアに搭乗していようがあの雨は浸透し、どんな防具を纏っていようが七十の体の支配を奪わんとしてくるということだ。舌打ちのひとつもしたくなったが、そうも言っていられずに、七十はキャバリアを操った。

 幸い、嵐も雨も急速に広がってくるということはない。指向性を持ち、操作して此方を攻撃してくるような攻撃でもなかったことだけは、不幸中の幸いと言えただろう。七十はドミニオンの攻撃が届かない距離を保ちながら、相手を捕食する結界を使ってドミニオンの体力と生命力を削ることに専念することと、自らの目標を定めた。
 決して結界の範囲からは出さず、なおかつ攻撃も届かない。そんなギリギリの位置をつねに結界の持つ探知能力を使って維持し続けるのだ。そうやって、見えない部分からもドミニオンを削っていく。
 不用意にドミニオンに近づけば、雨はきっと七十へと染み込む。そうして体の支配権を奪い取り、やがては継承軍へと取り込むのだろう。
「……本当に面倒な相手ですね」
 一人で戦っていたのなら詰みだったかもしれない。だが、猟兵とは協力し、得手を活かし不得手を補い合い、個々の力を編み上げて強大な相手をも打ち倒す戦い方を主軸としている。
 他の猟兵が近くで目を惹いてくれている間に、七十は七十の戦い方をすればいい。いくら小惑星級の敵と言えど、派手に傷つけられつつ、見えぬ何かによって生命力まで削られていくのはつらかろう。
 とはいえ、だ。
 面倒な相手、というのは七十の正直な感想だが。
 よく考えれば、七十自身も似た力を持っている。つまり、盛大にブーメランが刺さっているとも言えなくもなく。いや言えてしまう。困ったことに。
「……考えないようにして、目当ての相手に力を使うことに集中しましょう……」
 敵にとって自分が厄介な相手であるということはいいことだ。きっと。
 七十はそれ以上を考えるのをやめ、目の前の戦いに集中するのだった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

パウル・ブラフマン
引き続きGlanzに【騎乗】したまま戦場へ。
Krakeで【弾幕】を張ったら
噴かすエンジン音で雑音を掻き消すように、UC発動―!
垂れ流しの御高説を置き去りにする速さで敵の背面へ周ろう。

それでも雨が凌げなさそうであれば
Faustを傘代わりにしつつ
他猟兵さんの戦況報告から【情報収集】した
敵被ダメージが大きい箇所を狙って【零距離射撃】を。
可能なら【悪路走破】の技量を活かして
実際に敵の背中(頭頂部)をGlanzで駆け上がるよ。

拭い切れなかった雫が隻眼に触れ
フラッシュバックする、帝国軍による処刑の一部始終。
あの時もこんな風に後ろから
―…違う!イマはオレの意志で。
オレが帰りたい場所に帰る為に引金を引くんだ!




『従いなさい。従いなさい。プリンセス・エメラルド率いる帝国継承軍に従いなさい』
『新たなる秩序の許、支配を受け入れなさい』

 主天魔怪獣ドミニオンの声なき声が響く。それは無酸素の空間を渡り、ひとの内部へと滑り込み、心や脳の中に勝手に入り込んで囁くのだ。
 ――従いなさい。|おまえはそうしていたでしょう?《・・・・・・・・・・・・・・・》。
「……」
 耳障り、心障りな雑音を掻き消すように、パウル・ブラフマンは愛機Glanzのエンジンを噴かした。垂れ流しの御高説を置き去りにする速度で、パウルはドミニオンの背面へと周る。
 腸が煮えくり返るような熱と疼きがある。友と一旦分かれることを選んだのは、常の笑顔を維持できそうになかったからだ。こんな顔を誰に見せる必要もないし、見せたいとも思わなかった。それほどの昏い疼きを抱えて、怪獣に「やかましい」と叫ばなかっただけ、まだ理性的であるとは思いたいが。

 言葉を吐かない代わりに、ドミニオンの口からは本来宇宙に広がるはずのない嵐の黒雲が吐き出されていた。
 もともとは空の世界の怪物だが、クエーサービーストを喰らったことで体内や力にも変化があったのだろう。黒雲はドミニオンを中心にゆっくりと広がっていき、散ることも凍り付くこともなく雨を降らせ始める。無論、ただの雨であるわけがない。
 ドミニオンの背を駆けあがりながらも、その体の部位を巧み使いながらパウルは出来うる限り雨を避ける。どうしても避け切れなさそうな時は、指貫きグローブを嵌めた手を庇替わりにした。――雨に触れてほしくない場所があるのだ。
 直前の情報収集で、ドミニオンの眼が潰されていっていること。目の一つを光によって後頭部まで貫通されていること。内部に飛び込んで内から撃破しようとしている猟兵がいることは把握済みだ。そして現状、敵の攻撃を掻い潜りながら更に大きなダメージを与えられる傷跡は――。

「……そこ!」

 血液のようなものが噴き出している箇所を見つけた。赤黒い雨の源泉にGlanzを寄せ、更に傷口を広げるように零距離で容赦なく撃つ。撃つ。撃つ――。

 自分をコントロールすることは得意なはずだった。なのに今、パウルは明らかに『怒って』いて、内側を閉じ込めた蓋から溢れてる感情にどこか流されかけている。そんな自覚がありながら、パウルは引き金を引く手を止めない。
 だが、拭いきれなかった雫が隻眼に触れた一瞬、パウルの視界に記憶がフラッシュバックした。
 明滅。明滅。勝手につまびらかに暴かれる過去の光景。銀河帝国軍による処刑の一部始終。罪のない者たちに向けられる銃口。銃を握っているのは――パウル自身。
 嗚呼。あの時もこんな風に後ろから……。
『引いたのでしょう? 何の疑問もなく。そうでしょう、帝国軍の落とし子よ』
『従いなさい。帰っておいでなさい。おまえの居場所は此処ですよ。意味も理由もすべてが此処にあります。帰っておいでなさい』
「違う!! オレの居場所は……、帰る場所は|過去《そこ》じゃない!!」
 わかっている。感じている。この戦場のどこかに友がいること。最愛がいて、想ってくれていること。
 ならばどうして引きずられていられようか。どうしてこんな声と記憶に惑わされていられようか。
「―――……イマはオレの意思で。オレが帰りたい場所に帰る為に引金を引くんだ!」 
 友が居る場所。家族がいる場所。――たったひとりの最愛の隣へ帰る為。
 かつて怪物と呼ばれた青年は、過去と決別するように引金を引いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ドゥルジー
【双翼】
やーだね
美人サンは大好きだけど安寧だの安息だのってには飽き飽きしてんの
感応波に揺さぶられそうになったら
思い起こすのはたった一人
この戦場のどこかで
怒りを背負って立ち向かっている隻眼の最愛

善悪を知る前の命に
支配と虐殺の舵を取らせた
それを平和だなんて
俺よりよーっぽど頭の螺子がブッ飛んでやがる!

それとこーんなイケメン天使サンが隣にいるってェのに
「モドキ」に付き従う道理なんてねェよなァ?
翼に並ぶように俺も飛翔
喰らった己の血肉で黒い炎を呼び起こす
衝撃波でも消せねえくらいに|相棒《ジャバウォック》の怒りは滾ってるぜ
負傷は顧みず突撃だ
ありったけを喰らわせてやる


早乙女・翼
【双翼】
ドミニオン…主天使の名を騙るなんて、俺としては気に入らないさね
実家が教会だからもあるけど

魔剣召喚し手に構え
デカブツ相手だ、派手に行くさよジャスパー!
イケメンっておい…(苦笑い
まぁアレに負ける気はしねぇかな!

響く感応波には徹底して抗う
悪いけど俺が忠誠捧げるのは我が主のみ
授けて下さったこの背の羽にかけ、俺は世界を守り邪悪を滅すると誓った
誰が緑のクソBBAに従うか!
信仰と誓い、そして後悔が俺の原動力 

空中戦はお手の物
防御オーラ纏い攻撃に己から吶喊、魔剣を以て切り開く
接敵したら剣でぶった斬る様に断罪の神雷叩き込む
この宇宙は自由であるべき、支配なんてさせるものか
その象徴たる笏もへし折ってやるさよ




 主天魔怪獣ドミニオンが、はじめて苦悶に身を捩った。
 クエーサービーストを喰らい小惑星級に巨大化したことで、多少程度の攻撃にはびくともしなかった怪獣が。今はじめて、明らかに痛みに苦しんでいる。
 ひとが抗うには巨大すぎる敵、象と蟻が戦うような体格差。だが、それでも猟兵は一人で挑んでいるわけではない。いつだって仲間と連携し、攻撃と防御を繋ぎ、か細い勝機の糸を少しずつ、確実に手繰り寄せる。だからこそ一筋縄ではいかぬ相手にも、猟兵たちは挑んでゆける。

『……、従いなさい。従いなさい』
『プリンセス・エメラルドの御威光のもと、従いなさい。継承軍に従うのです』

 それでも、ドミニオンから溢れ出す精神感応波は途切れない。きっとこれは、怪獣を倒しきるまでラジオのように垂れ流され続けるのだろう。あれはそういう生き物なのだ。面倒な怪物を連れてきたものだ、と思わなくもなかったが。

「やーだね」

 だからこそジャスパー・ドゥルジーは軽く笑ってやった。いっそ美しく、艶やかに彩った瞼を片方閉じて悪戯に。
「美人サンは大好きだけど安寧だと安息だのってには飽き飽きしてんの」
 感応波に揺さぶられそうになったって、たった一人を思い起こせばそんな揺れなどなんともない。
「善悪を知る前の命に支配と虐殺の舵を取らせた。それを平和だなんて、俺よりよーっぽど頭の螺子がブッ飛んでやがる!」
 瞳孔開いて愉し気に笑うその実は、きっと『愉しい』ではなかった。
 ああ、わかっている。伝わっている。思っている。感じている。隣でなくとも傍に居る。今この戦場の何処かで、怒りを背負って立ち向かっている隻眼の最愛。
 大丈夫、心配なんかしていない。心配なんかしなくていい。誰もここで独りではない。

「ドミニオン……主天使の名を騙るなんて、俺としては気に入らないさね。実家が教会だからもあるけど」
 静かな怒りを飛翔の為の力に変えるように、赤の翼を広げて早乙女・翼がジャスパーの隣に立つ。
 痛みに苦しみながらも大杖で衝撃波と感応波を放ち続ける怪獣に、召喚した魔剣を構え、きりとただひとつを見据え。
「デカブツ相手だ、派手に行くさよジャスパー!」
「あいよ」
 笑い合った瞳に負けぬと信じる信頼の色。対照的な翼二対が、宇宙の闇を強く叩いた。

 普段から天を舞う身。ジャスパーも翼も飛ぶことは得意だ。それが宇宙空間であれ、特殊な宇宙服を纏えば変わらない。
 迎え撃つは巨大漿船ソング・オブ・オーンブルの護衛、ドミニオン。今なお猟兵たちの攻撃を受けながら、ドミニオンはそれでも大杖を振り上げた。迫る赤二人を敵と認め、一層強い精神感応波を乗せた衝撃波を幾度も撃つ。まるで土星の環のようにドミニオン自体から放たれる波を見て、翼は「こんな音ゲーもあったな」なんて笑った。

『従いなさい。従いなさい。我らの支配を受け入れなさい。そうすれば、ただひとりの女王のもとに、宇宙は統一されましょう』
「神気取りもいい加減にしろっての!」

 否が応でも身の内に響く『支配』の声を振り払うように、翼は声を張り上げる。
 防御の為のオーラを纏い、自らドミニオンへと吶喊していく。衝撃波などこの際真正面から受けてやる。オーラで軽減し、魔剣で斬り裂き、宙を飛んでドミニオンに肉薄する。
「悪いけど俺が忠誠捧げるのは我が主のみ。授けて下さったこの背の羽にかけ、俺は世界を守り邪悪を滅すると誓った」
 翼にしてはひどく冷たい声音だった。そのくらいには、頭にきているということだ。
 文字通り首の皮一枚のところで翼の命を繋いだのは、唯一の主であった。少なくとも翼はそう信じているし、奇跡をこの身に受けたからこそ信仰は揺らがない。――こんな言葉ひとつで揺らいでたまるか。

「こーんなイケメン天使サンが隣にいるってェのに、『モドキ』に付き従う道理なんてねェよなァ?」
 翼に並ぶようにジャスパーも飛ぶ。飛びながら、躊躇いもなく己の左腕に嚙みついた。脳天を突き刺すような痛みに笑みを深めながら喰い千切る。よぉく咀嚼して飲み込めば、内に封印した魔竜が目を覚ますのがわかる。
 赤き竜。黒炎の主。イカれる竜ジャバウォック。その炎がジャスパーの全身を包み込んだ。
 受け止めた衝撃波すら二人を吹き飛ばすには至らない。ジャスパーの炎の火の粉一つすら消せない程に、|相棒《ジャバウォック》の怒りが滾っている。それは器たるジャスパー自身の怒りを感じ取ったものか。
 数度の衝撃波を受け流して、ふと翼が苦い笑いを隣に向けた。
「イケメンっておい……」
「イケメンじゃん?」
 ちょっぴり聞き流しきれなかったらしい。だがそれを言い放った当人ときたら、臆面もなくニカっと笑って血塗れの親指を立てるのだ。
 この笑みと余裕は友への信頼だ。ならば、応えなければ。
「はっ……まぁアレに負ける気はしねぇかな!」
 翼は口角を釣り上げて強く高く飛翔した。黒き炎がそれに続く。

 接敵した。あまりに巨大すぎる敵だ。そもそも小惑星級だというのがばかげている。目玉ひとつとってもひとの何倍あると言うのだ。
 
 ……だから、どうした?
 
「誰が緑のクソBBAに従うか!」
 神雷一閃。
 信仰と誓い、そして後悔を原動力にして翼はドミニオンの頭上、一つ目の小さな頭へと雷纏う魔剣を振り下ろした。
 突き刺した剣を強く握りしめ、全力の力を持って斬り下ろそうとする。
「そぉらもいっちょ!!」
 その刃の上に、更に高くから急降下したジャスパーの|踵《ヒール》が降ってきた。
 纏った黒炎を踵に集中させて、翼の魔剣を更に押し込む。
 ドミニオンが激痛に身悶えし、めちゃくちゃに杖を振り回して衝撃波を放つ。それが翼やジャスパーを斬り裂いたとて、二人は絶対に止まらない。
 
 この宇宙は自由であるべきだ。支配なんてさせるものか。
 もう支配の名のもとに誰も泣かぬように。つらい思いをさせぬように。犠牲になんてならぬように。

 振り回された大杖も巻き込んで、神雷が、黒炎が。
 ドミニオンの頭ひとつ、縦に斬り裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウィルヘルム・スマラクトヴァルト
笑止! 討つべき相手に従うわけがないでしょう!

キャバリア『グリューネブルク』に搭乗。
即UC発動し、時速12400km≒マッハ10で、脆そうな部位を狙って(【鎧無視攻撃】)、機体ごと体当たりです。さらに、【2回攻撃】で追撃!

敵UCに対しては、ダメージ自体は機体全体に漲らせたオーラで【オーラ防御】しつつ、ダメージを受けても【激痛耐性】と【継戦能力】で耐えます。
洗脳に関しては、【気合い】を入れて【覚悟】を決め、【覇気】と【勇気】で心を満たして、【狂気耐性】や【呪詛耐性】や【破魔】を頼みに、【根性】で耐えます。

洗脳など、それに耐える精神力と意志力があれば!
世界を護ると言う私の意志、甘く見ないことです!




 主天魔怪獣ドミニオンが絶叫した。
 精神感応波ではなくその巨大すぎる口で、苦痛と苦悶を露わにする。怪獣の頭上、もうひとつの小さな頭が縦に真っ二つに割れていた。
 クエーサービーストを餌として小惑星級にまで育った怪物が、圧し負けてきている。好機だった。速攻を主軸とする作戦を実行している猟兵にとっては、このまま押し切ってしまいたい。

『……した、がい、なさい。従い、なさい。継承軍へと、プリンセス・エメラルドへと。した、がいなさい』

 精神感応波すら苦悶に揺れる。それでも『支配』に特化し、それを己が使命としたドミニオンは窮地であるからこそ感応波を一層に強く放った。一人でも猟兵を支配へと墜とすことが出来れば、状況を逆転させる一手になりうると思ったのかもしれない。――だが。

「笑止! 討つべき相手に従うわけがないでしょう!」

 そんな浅ましい怪獣の魂胆を、精神感応波ごと吹き飛ばすような気合でウィルヘルム・スマラクトヴァルトは打ち払った。
 美しき翠玉色の重装甲キャバリア『グリューネブルク』に搭乗した騎士は、ユーべルコードの力を用いて更に全身を翠玉のオーラで覆った。守るという意思を全身に漲らせ、なお溢れるオーラはキャバリアが宙を舞う為の翼となる。
 仕掛けてくると気づいたのか。ドミニオンが破壊された杖の残骸を高く掲げた。より強く破壊と支配の力を込めた衝撃波が幾重にも放たれる。
『従いなさい。従うのです。それが出来なければここで果てなさい』
 乗せられた声は衝撃波よりも早くキャバリアへと到達し、期待をすり抜けてウィルヘルムの心へと響く。出来るならば鷲掴みしようと強く強く声を響かせる。それに遅れて、キャバリアに破壊光線が到達しようとしていた。

「洗脳など、それに耐える精神力と意志力があれば!」

 その全てを聞き、目にして。真っすぐにドミニオンを見つめた翠玉色がぎりと敵を見据え。言葉と同時に、ウィルヘルムはグリューネブルクに最大にまで溜めた推進力を一気に解放した。
 まるで消えたかと思える程の加速。音を置き去りにし、意思と経験の力を糧とした推力はマッハ10。当然搭乗者にもかかる大きな負担を張り巡らせたオーラで防ぎ、一直線にドミニオンへと肉薄する。

 ウィルヘルムは既に騎士としての誓いを捧げた身。特定の主も記憶も持たぬが、だからこその誓いは世界と人々の為に。覚悟も勇気も既にこの胸にある。
 この心を襲うものがたとえ狂気であろうと呪いであろうと、持てる力を出し尽くして護ると決めたのだ。その誓いも覚悟も意思も、詭弁と甘言で塗り固められた言葉などでは揺らがない――!!
「世界を護るという私の意思、甘く見ないことです!」
 狙うは他の猟兵が先んじて攻撃してくれていた箇所。いくつもの潰された目。
いくら頑丈な小惑星級であろうとも、眼窩は既に体内。怪獣であろうと生物ならば、|そこ《・・》は鍛えられるはずもない。
 ウィルヘルムは最大まで加速したグリューネブルクを、ドミニオンの眼窩の奥へ躊躇いなく体当たりさせた。衝撃も痛みも全て嚙み殺し、決して加速をやめずにそのままドミニオンの体内を貫き、――貫通する。
「まだまだぁ!」
 宇宙空間へと再び飛び出したウィルヘルムは、急旋回して同じ個所を今度は深く深く斬り裂き、貫く。

 最大の目標まであと少し。
 主天魔怪獣ドミニオンよ、そろそろ道を開けてもらおう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カーティス・コールリッジ
クラウ(f03642)と

……これは、ことば?

《任務、自己、軍ニ疑念ヲ抱イタ場合》
《余分ナ|感情《バグ》ガ超過シテイルト判断シタ場合》
《艦長ハ任意ニ被験体XXノ記憶ヲ改竄及ビ消去スル権限ヲ――》

わからない
これは、なに?

《コレハ命令デアル》
《コレハ総意デアル》
《コレハ――、》

『命令』と『支配』
ふたつが脳に反響して、めちゃくちゃなノイズに世界が揺れる

いやだ
いやだ
思い出したくない、忘れないで、忘れたくない、おれは、

不意に耳のほど近くから感じる声
それを理解するのに時間がかかったけれど
きゅうくつなコックピットから感じるきみの息遣い、温度に
急激に視界がひらいていくのを確かに感じた

クラウ、……大丈夫、いける!

操縦桿を思い切り押し込みStingrayを旋回させ
クラウが敵を拘束してくれた隙をついてSparklesによる制圧射撃
全砲門を開き最大出力を叩き込む

おれが背負ういのちは途方も無くて
この感情さえ無価値なものかもしれないけれど
おれは、おれだけのたからものを守りたい

……おれには、大切なともだちがいるから!


クラウン・メリー
かーくん(f00455)と

君の甘い言葉になんて騙されないよっ

俺はみんなの笑顔咲かせたい
その夢を叶えるために今を生きている

この想いを捨ててしまったら
俺じゃなくなってしまう

――その前に、隣りにいる友達を笑顔にさせたいんだ

もし、その支配に飲み込まれてしまったら
きっと君は悲しむと思うから
俺は絶対に揺るがないよ

これ以上の理由なんてあるのかな?

その為なら何度だって立ち上がるし
何度だって抗ってみせる

友達の笑顔すら守れないなんて
ピエロ――ううん、友達失格だよ

最後まで諦めたくない
俺は自分の信念を貫きたいんだ

ぐっと黒剣を持ち直して
かーくん、大丈夫?まだいける?

何処か遠くを見ているかーくんの手をぎゅっと握り
にっこりと笑みを向ける
ふふー、俺達なら絶対大丈夫っ!

あちちな火の輪を使って敵を拘束しつつ
その隙に黒剣で斬ってみせる

だって負けられない理由があるから!




『従いなさい。従いなさい』
『継承軍へと合流なさい。プリンセス・エメラルドの許、銀河は遍くひとつとなるのです』
『従いなさい。従いなさい――』

 猟兵たちの猛攻を受け、致命傷となりうるような攻撃を受け続けてなお、主天魔怪獣ドミニオンの精神感応波は止むことがなかった。
 それは自身を中心とした一定区域内に向けて強烈に放たれ続けており、もはやあの怪獣は存在するだけでこの感応波を放ち続けるのだろう。死に瀕した今とあっては、むしろ形勢逆転を狙う一手として殊更に強く強く響かせている。
 Stingrayを巧みに操りながら接近を図るカーティス・コールリッジと、後部座席に座るクラウン・メリーの心にも、声は容赦なく滑り込んでいる。
「……これは、ことば?」
 ひととは全く違う、まるで小惑星のような異形から発せられる『ことば』。それは妙に優しくて、穏やかで、滑るように脳内に入り込み――。
『従いなさい。従いなさい。継承軍に、プリンセス・エメラルドに従いなさい』
「……っ!!」
 掌握するように、強く強く心を掴もうとする魔性の声音だ。
 声が滑り込んだと同時にカーティスの脳内にもう一つ、警報のような音が鳴った気がして、小さな背がびくりと震えた。
 これは危険だ。危険な声だ。カーティスの意識を書き換えようとする声は――兵器の意識を変えることは、赦されない。

《任務、自己、軍ニ疑念ヲ抱イタ場合》
《余分ナ|感情《バグ》ガ超過シテイルト判断シタ場合》
《艦長ハ任意ニ被験体XXノ記憶ヲ改竄及ビ消去スル権限ヲ――》

「……わからない。これは、なに?」

 自身の中に|初めて《・・・》響く声に、カーティスはひどく混乱した。いや、|本当に初めてだったか《・・・・・・・・・・》?

《コレハ命令デアル》
『従いなさい。従いなさい』
《コレハ総意デアル》
『従いなさい。此方へおいでなさい』
《コレハ――、》
『従うのです――』

 『命令』と『支配』。ふたつの声が脳に反響して容赦なく揺さぶってくる。めちゃくちゃなノイズが世界に溢れて、カーティスは思わず両手で頭を押さえてうめいた。
 ――いやだ。いやだ。思い出したくない、忘れないで、忘れたくない、おれは、
 ――おれは、なにを、忘れて、どこに、どうして
 ノイズがかき乱す思考と視界が気持ち悪い。そして何よりも怖い。命令ってなんだ。バグってなんだ。記憶の改竄と消去って――いやだ、こわい……!

「かーくん」

 その時だった。
 ノイズだらけのカーティスの世界をそっと。優しい声音が包み込んだ。
「……クラウ?」
「うん。かーくん、大丈夫?」
 狭いコックピットの中、後部座席に居たクラウン・メリーがかけてくれる言葉が、混乱するカーティスの脳内をそっと凪へと誘う。コックピットにそっと降り注ぐ、ミモザの花。

 容赦のない『支配』の声は、クラウンを今も襲い続けている。けれども、クラウンはもう願いという名の覚悟を定めてしまっているのだ。
(俺はみんなの笑顔を咲かせたい。その夢を叶えるために今を生きている)
(この想いを捨ててしまったら、俺じゃなくなってしまう)
 それはもうずっとずっと前に定めた、自分というものの根幹だ。これが崩れた時に、きっとクラウンはクラウンでなくなるのだろう。
 もし、クラウンがその支配に飲み込まれてしまったら、きっとカーティスは悲しむのだろう。それではダメなのだ。
 みんなを笑顔にしたい。それは確かにクラウンの夢だけれど。

 ――その前に、隣りにいる友達を笑顔にさせたいんだ。これ以上の理由なんてあるのかな?

 だからクラウンは絶対に揺るがない。こんな言葉一つで揺らいでやるわけにはいかない。その為なら何度だって立ち上がるし、何度だって抗ってみせる。
 友達の笑顔すら守れないなんて、ピエロ――いいや、友達失格だ。どんなことがあろうと最後まで諦めたくはない。自分の信念を貫くために、クラウンはぐっと黒剣を持ち直した。
「まだいける?」
 頭を抱えながら何処か遠くを見ているカーティスの手を握って、クラウンはにこりと明るい笑みを向ける。震えるカーティスを安心させるように視界に入って、名前を呼んで。
 手のぬくみが、笑顔が、混乱するカーティスを呼び戻してくれる。こわい声を遠くへ拭い去って、クラウンの声を届けてくれる。窮屈なコックピットから感じるクラウンの息遣い、温度に、ミモザの香りに、カーティスは急激に視界がひらいてくのを確かに感じた。
「クラウ……、……大丈夫、いける!」
 呼び戻された意識が虚ろだった目の焦点を合わせる。ふるふると頭を振って二つの声の残滓を振り払ったなら、もう声も遠い。大丈夫。此処に居るのは『カーティス・コールリッジ』だ。記憶も連続している。誰にも支配なんかされていない、まだ自由な心だ。
「ふふー、俺達なら絶対大丈夫っ!」
 しっかりと頷いて見せたカーティスに、クラウンも笑みを深めた。
 目の前には『支配』に捉えることに失敗し、最早満身創痍と言える主天魔怪獣ドミニオン。どことなく、腹の顔が歪んでいる。悔しいのか痛みなのかは、わからぬが。
「いこう、クラウ!」
「うんっ!」
 どちらにせよ、もう二人は乗り越えた。二度と不快な声には捕まりはしないと、カーティスは操縦桿を思い切り押し込んだ。
 Stingrayを大きく旋回させてドミニオンの背後に回り込む。『支配』しようとする声と破壊光弾を置き去りにして、振り上げられた大杖の壊れた部分をすり抜ける。
「それっ! 火の輪潜りは得意かな?」
擦れ違いざまに放ったクラウンの火の輪が、杖ごとドミニオンを拘束する。その隙に、黒剣がもともと傷付いている箇所を更に深く抉るように滑る。
 巨大すぎる敵であっても、一つの傷を深めていけばそれは致命傷となりうる。猟兵たちは誰も一人で戦っているわけではない。皆で紡いできた力で、強大な敵にも打ち勝ってきたのだから。

 ドミニオンがクラウンの拘束を解けないでいる間に、カーティスは全ての砲門を開いた。照準はクラウンが、そして他の猟兵たちが傷つけてきた全ての傷跡。
「おれが背負ういのちは途方も無くて、この感情さえ無価値なのかもしれないけれど」
 モニター内の照準が次々と合わせられていく。最後のひとつの照準を合わせ終わって、モニターはオールグリーンを告げた。
「おれは、おれだけのたからものを守りたい。……おれには、大切なともだちがいるから!」
「そうさ、だって俺たちには負けられない理由があるから!」

 この願いよ。祈りよ。流れ星となれ。

 全砲門から発射された加粒子波動砲の輝きが、ドミニオンを飲み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
従え?おいおい、冗談だろ?
便利屋Black Jackは誰の支配も受けない。まして、化物の言いなりなんざゴメンだね。

破壊衝撃波を【見切り】、支配感応波は魔剣から放つ黒銀の炎で【焼却】。
ドミニオンを小馬鹿にするように肩を竦め。表情は『そんなモンかい?』と語り掛けるように笑みを浮かべ。
歪な口を開いて笑う化物。多少なり感情ってモンがあるのかね?それなら俺の態度は神経を逆撫でするような物に映るかもな。

──ああ、俺はこの化物を見下してる。経緯はどうか知らねぇが、餌貰って女王の庇護下に入って、やってる事は番犬代わりだ。
『支配』の権能とは笑わせるぜ。支配されてるのはお前の方じゃねぇか。

戦う理由は自分で決める。宇宙を支配しようとする女王から宇宙を救う──俺に正義の味方は配役ミスだ。
どっちかつーと悪役の方が似合うと自負してるんだがね。
ま、今日ぐらいは正義の味方役をやってやっても良い。
(UCで銃弾を一発ぶち込んで)

誰かさんの勝利を確信した優雅な笑みに敗北の二文字を突き付けてやるのも悪くないと思ってるんでね。




 加粒子波動砲の煌めきがドミニオンを焼いた後。
 残ったものは最早満身創痍、燃え尽きかけた隕石のような怪獣の姿であった。頭上のもう一つの頭は半分に斬り裂かれてだらりと垂れ下がり、自慢げに振り回していた大杖は半分に折れていた。そして腹の巨大な顔は半分以上の眼が潰され、貫通した穴からは絶えず体液が流れ出している。それでも――。
『した、がい、なさい……しがたい、なさい……』 
 支配の声はやまない。むしろ死に瀕しているからこそ、より強く、強く、ただ一つだけの権能を振りかざすように思念波を強くする。
 それを向けられた猟兵カイム・クローバーは、
「従え? おいおい、冗談だろ?」
 ――軽く鼻で笑い飛ばした。
「便利屋Black Jackは誰の支配も受けない。まして、化物の言いなりなんざゴメンだね」
 特に、そう。沈みかけた怪物の言いなりになるなんて馬鹿げている。
 強まる支配の声乗せた衝撃波など羽虫でも振り払うような気軽さで見切って、手にした魔剣から放つ黒銀の炎で燃やし尽くす。
 小馬鹿にするように肩を竦めて、ドミニオンを睥睨する。言葉にはせずとも、その表情が「そんなモンかい?」と語るように笑っていた。
 猟兵たちの活躍によって、ドミニオンの力は大きく削がれている。今更この程度の力に屈する程に弱くはない。
 歪な口を開いて笑う化け物には、感情というものはあるのだろうか。その笑みからは強がりなのか、悔しさなのか、そもそもにただそういうモノであるだけなのかの判別はつかない。何せこの怪物と来たら「従いなさい」と繰り返すばかりだ。もう聞き飽きてしまった。いっそカイムの態度に神経を逆撫でされて憤ってみてくれれば見応えもあったか。

 ――そう。カイムはこの化け物。主天魔怪獣ドミニオンを明確に見下していた。
 どんな経緯があったかは知らぬが、餌をもらって女王の庇護下に入って。やっていることと言えば番犬代わり。
「『支配』の権能とは笑わせるぜ。支配されてるのはお前の方じゃねぇか」
 いっそスカウトマンとでも名乗った方がまだ実態に合っているのではないだろうか。――否、どれひとつ為せていないのだからどう名乗ったところで三流以下。どちらにせよカイムの嘲笑からは逃れられない。
 ならこの哀れな怪物には、そろそろ退場してもらおう。舞台は次へと移りたがっている。
『従いなさい、従い、なさ、い……従いなさい従いなさい、従え従え従え!』
「はっ、キレるくらいには感情があんのか、お前」
 大口を開け壊れた杖を振りかざすドミニオンを、カイムは冷たい表情で見据える。その紫暗の瞳には、ドミニオンの死相が見えていた。
「戦う理由は自分で決める」
 ゆっくりと、銃を持ち上げた。バチリとカイムの腕から紫雷が迸る。それは銃を駆け巡り、銀の弾丸の内へと蓄積されていく。
「俺に正義の味方は配役ミスだ。どっちかっつーと悪役の方が似合うと自負してるんだがね」
 宇宙を支配しようとする女王から宇宙を救うだなんて役回りはガラではない。口元を歪めて嘲笑って、終わりの姿に背を向けるような。そんな配役の方が似合っている。だが、便利屋Black Jackとは気まぐれだ。
「ま、今日ぐらいは正義の味方役をやってやっても良い」
 引金を引いた。
 紫雷を十二分に纏った銃弾が、ドミニオンが放った衝撃波を斬り裂きその眉間に吸い込まれていく。

「――Jack pot!」

 着弾した瞬間、紫雷が弾けた。
 猟兵たちが今まで傷つけてきた全てに雷が走る。まるで全身にヒビが広がるように、ドミニオンが紫雷に包まれ。やがて、声なき絶叫の思念波と共に小惑星級の怪物は静かに崩れていった。

 その姿に一瞥だけくれて、カイムは次の舞台を見据えている。
 巨大漿船「ソング・オブ・オーンブル」。その中でこの戦いを見ていたであろう翠玉の姫を差すように銃口を向けて。
「誰かさんの勝利を確信した優雅な笑みに敗北の二文字を突き付けてやるのも悪くないと思ってるんでね」
 不敵に笑って、カイムは空を蹴った。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『猟書家『プリンセス・エメラルド』』

POW   :    プリンセス・エメラルド号
自身の【サイキックエナジー】を代償に、【宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【エメラルド色の破壊光線を放つ多数の砲】で戦う。
SPD   :    侵略蔵書「帝国継承規約」
自身の身長の2倍の【皇帝乗騎(インペリアル・ヴィークル)】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    クリスタライズ・オリジナル
自身と自身の装備、【敵に被害を与えうる、半径100m以内の】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。

イラスト:鶸

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 駆ける。駆ける。
 広く冷たい漿船の中を駆ける。内部へと転送されたおかげで、迷う必要はない。ただ真っすぐに進み、目指すはひとつの巨大な扉。
 叩きつけるように扉を開けば、そこは呆れる程に広い巨大ホールであった。宇宙船の内部であるはずなのに、戦艦数隻程度ならば問題なく航行できてしまう程に広い。まったく、宇宙というものはなんでも規模が大きい。球体のような巨大ホールの最奥、遥か高みの玉座に姫は居た。
「来るとは思っていました。ええ、貴方たちは絶対に私を見つけるだろうとわかっていましたから」
 王者の余裕か、それとも絶対的な戦力差による自信か。プリンセス・エメラルドはここまで肉薄されても全く動じない。むしろゆっくりと立ち上がり、優雅な仕草で礼さえしてみせる。
「改めてご挨拶致しましょう。私は猟書家プリンセス・エメラルド。侵略蔵書「帝国継承規約」の持ち主であり、帝国の正当な後継者。そして、これからはスペースシップワールドのみならず、スペースオペラワールドをも統べる女王となる者ですわ」
 翠玉の姫はうつくしく笑って自己紹介をした。まるで、姫の嗜みを披露するかのように。
「幾度となく私の邪魔をしてきた猟兵の皆さま。此度こそ私を追い詰めたと思っているかもしれませんが、それは少々早計というものではないかしら」
 くすくすと笑った姫の手には、帝国継承規約がある。ふわと広げた両手。背に――否、このホール全体に無数の何かがテレポートしようとしてきている。
「ここは帝国継承軍の中心地。そして私は|プリンセス・エメラルド《オウガ・フォーミュラ》。たったそれだけの人数で此処まで攻め入ったことだけは褒めて差し上げますが」
 帝国軍残党兵。ウォーマシン。キルマシーン。闇の騎士。大量の継承軍が次々とテレポートアウトしてくる。背の扉は轟音を上げて閉じられた。あっという間に、猟兵たちは大量の軍勢に囲まれ閉じ込められている。くすくすと耳朶をくすぐる笑い声は、相手がプリンセス・エメラルドでなければ美しくも聞こえたろうか。
「追い詰めたと思うのなら認識を改めることです。死地に飛び込んだのは貴方がた。帝国継承軍と私の歴史の1ページ目に、猟兵の死を刻むのも良いでしょう」

 猟兵たちが戦闘準備を整えるよりも早く、全方位から継承軍が襲い掛かる。同時に、プリンセス・エメラルドも攻撃の準備を既に終えている。機先を制されたのだ。
 姫の左右に控えるのは、宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号。そして、以前銀河帝国戦を戦い抜いた者ならば見覚えもあろうか。銀河皇帝が騎乗していた皇帝乗騎、その小型版。またプリンセス・エメラルドと彼女の闇の騎士の一体を透明化させる能力があることが、以前からの戦いで予知されている。
 まずは全方位からの大量の軍勢とプリンセス・エメラルドの同時攻撃という先制攻撃を対処しきらねばならない。ユーべルコードを使う暇もなかろう。持てる技能と経験、機転。そういったものを積み上げて、両者の攻撃を一気に対応せねば「次」が見えない。

 疲労もあろう。ダメージもあろう。だが、目の前にいるのは宇宙全てを脅かすオウガ・フォーミュラである。強大な彼女は決して一筋縄では倒せない。
 それでも、宇宙の平穏という未来を勝ち得る為。か細い勝機の糸を手繰り寄せ、戦い抜け。
テリブル・カトラリー
死地なら慣れている。

絶対物質盾で破壊光線を【盾受け】しながら、
敵ウーマシンへ【スライディング】ブースター【推力移動】
低姿勢で弾幕を掻い潜り、
【戦闘知識】敵ウォーマシンの機動を【見切り】
【早業】機械刀を装甲の内側へ突き立て【鎧無視攻撃】
【怪力】で敵ウォーマシンを掴みスラスターで回転【敵を盾にする】
手榴弾を敵ウォーマシンの内部に差し込んで発破
爆炎に紛れ『戦争機械・蒼い戦機』発動

蒼い装甲とシールドを纏い【残像】飛翔、敵砲撃の狙いを外し、
【制圧射撃】と|【誘導弾】《パルスミサイル》を放ち
プリンセス・エメラルド号【時間稼ぎ】

プリンセス・エメラルドへ高速飛翔、スタンロッドを【投擲】
ビーム刃で追撃、【切断】


空桐・清導
POW
アドリブや連携も大歓迎だ

「ようやく会えたな!プリンセス・エメラルド!
親玉が出てくりゃ、力も湧いてくるってもんだ!」
無数の戦艦、プリンセス・エメラルド号を前に雄々しく笑う
絶体絶命の危機などいつものこと
それを覆すがゆえに彼はヒーローと呼ばれるのだ

放たれる砲撃を[オーラ防御]で弾き飛ばしながら、
軍艦に光焔を纏った拳を叩き込んで粉砕していく
そして、エメラルド色の破壊光線は
他の軍艦を盾にして捌く

そして、隙を見つけ次第UC発動!
黄金の輝きを放ち、プリンセス号へと飛翔
「超必殺!ユニヴァース・クラッシャー!!」
エメラルド号を粉砕してプリンセス・エメラルドを宙空に出す
そして、[限界突破]した拳を叩き込む!




 小惑星級のモンスターですら軽く凌駕する、巨大漿船。ホールのような、戦艦のドッグともいえるような広大な空間で、空桐・清導とテリブル・カトラリーは全方位に出現した敵に周囲を囲まれていた。
 遥か上方では、プリンセス・エメラルドが召喚した宇宙戦艦の砲台が既にこちらへと照準を合わせ始めている。それでも。
「ようやく会えたな! プリンセス・エメラルド! 親玉が出てくりゃ、力も湧いてくるってもんだ!」
 無数の戦艦と敵、そしてプリンセス・エメラルド号を前にしても清導は一歩も引かずに雄々しく笑った。両手の拳を胸の前でガツンとぶつけ、気合を入れる。
「猛々しいこと。けれども、いささか残念と言わざるを得ません。この状況がきちんと理解できているのかしら」
「ピンチだって言いたいのか? そいつは違うな、全然違う!」
 あざけるようなプリンセスの言葉すら、清導は軽く笑い飛ばして身構える。プリンセス・エメラルド号の砲台が、襲い掛かる兵士たちが自分に照準を合わせていたって関係がない。
「死地なら慣れている」
「ああそうさ! 絶対絶命の危機なんていつものこった!」
 無機質に言い放って静かに戦闘準備を終えたテリブルが語るとおりだ。絶体絶命の危機などいつものこと。死地と呼ばれる戦域に飛び込み、死線と呼ばれる激闘を幾度も潜り、それを覆すがゆえに彼はヒーローと呼ばれ、彼女は歴戦兵と呼ばれるのだ。
 そしてそれが、猟兵というものだ。

 目を焼くような砲撃の嵐。放たれる無数の砲弾に、テリブルの対応は誰よりも迅速であった。
 絶対物質の盾で破壊光線を受けながら、圧し負けぬよう背のブースターを点火する。光線を受け流し、手近に迫るウォーマシンへと滑るように接近する。斉射されるマシンガンを低姿勢で掻い潜り、機械的な動きの敵ウォーマシンの機動を瞬時に見切る。擦れ違いざまに機械刀を深く突き立てた。
 火花を上げて動きを止めるウォーマシンから刀を引き抜き、テリブルは持ち前の怪力でその頭を掴んだ。スラスターを横方向に全開で噴射する。敵を前に掲げながら全力で回転することで後方から迫っていた砲撃を敵の体で防ぎ、とどめとばかりに大穴が開いた敵の内部に手榴弾を差し込んだ。敵集団に放り込んだあとで発破すれば、爆炎はいい隠れ蓑になる。
 混乱と炎に紛れながら、テリブルはユーべルコードを用いて蒼き装甲を纏った。
 その名は|戦争機械《ウォースケルトン》・|蒼い戦機《ブルーブリンガー》。
 髑髏面の窪んだ眼窩の奥で、青き光が灯りだす。

 テリブルが鬼神の如き戦いぶりを見せる中、清導もまたヒーローらしく真正面から全方位の敵を迎え撃っている。
 襲い来る砲撃を纏ったオーラによる防御で弾き飛ばし、迫る兵士や軍艦たちに次々と光焔を纏った拳を叩きつけていく。
 戦力差にも物怖じせず、体格差をものともせずに不屈の意思を叩きつければ戦艦に亀裂が走る。
 更にもう一撃叩きこもうとしたところで、視界の端にエメラルドの光が見えた。咄嗟に目の前の戦艦の裏へと回り込んで大きな盾とした。エメラルドの破壊光線が易々と戦艦を貫く様を横目に見ながら、清導は襲い掛かる次の敵を光焔の拳で粉砕した。
 同じように戦艦を盾にしていたテリブルもまた、前を見据えている。自分たちを見下ろすプリンセス・エメラルドは、自身の名を冠した巨大戦艦の砲塔の照準を更に自分たちに合わせようとしている。止むことがないと思われていた敵兵士たちの波も、ワープに多少のラグがあるのか途切れる一瞬があることを二人は戦いながら見抜いている。
 つまりたった今、この瞬間ならば。集団を出し抜いてプリンセスに肉薄出来るということだ。

 先に動いたのはテリブルだった。
 蒼き装甲とシールドを纏い、残像すら残るような飛翔で一気に集団を突破する。スピードと残像に惑わされた砲撃が狙いを絞り切れぬ相手に、テリブルは|誘導弾《パルスミサイル》を周囲にばらまいた。 
 あまりになめらかで素早いテリブルの動きには無駄がない。歴戦兵であるがゆえに蓄積した膨大な戦闘知識を活かし、爆発の中を駆け抜ける。誘導弾による制圧射撃でプリンセス・エメラルド号を足止めしながら、テリブルは一気にプリンセス・エメラルドへと迫る。

 それに遅れじと清導もまた全身に黄金のオーラを纏った。
 意思を力に変え、力を翼に変えて清導は翔ぶ。テリブルがプリンセスへと迫るのならば清導は同じ名の戦艦を迫ろう。
 眼前の巨大で、いっそ美しいとさえ言える戦艦へと拳を振り上げた。黄金のオーラが拳に集約していく。不屈にして勇猛。絶対に諦めずに、信じた正義を貫く心を力にして。

「超必殺!! ユニヴァース・クラッシャー!!」

 清導は、戦艦の艦橋へと拳を叩きこんだ。
 粉砕された艦橋から、プリンセス・エメラルドが飛び出す。それを見逃すテリブルではない。
 手にしたスタンロッドを思い切り投擲する。掠めただけでも十分だ。動きを鈍らせている隙に、青と金がプリンセス・エメラルドへと追いついた。
「……」
 テリブルがプリンセスにかける言葉はない。ただ冷徹にビーム刃を構え。
 清導は体中の光をただ一点、構えた拳に集約し。 

「ここでお前の野望は終わりだ、プリンセス・エメラルド!」
 
 二つの光が、エメラルドの姫を貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クラウン・メリー
かーくん(f00455)と

例え、俺の知らないかーくんがいたとしても
何かを隠していたとしても

俺は今の、ありのままのかーくんが好き
いっしょに遊んで、笑ってくれるかーくんが大好きなんだ!

なんて、今は目の前の敵に集中しなきゃだよね!

――うんうん、了解だよ!かーくん!
ふふー、まるでショーみたいでわくわくしちゃうな!

わあ、『大怪獣決戦』!
それじゃあ、頑張って勝たなきゃだね!
俺達、ヒーローなんだからっ!

ぱちんと指を鳴らせばぽぽんと火の輪の登場だ!
またまたみーんなを拘束しちゃうよ!

その隙に周りの敵を剣で斬りつつ
かーくんの後ろを守る
そっちには絶対行かせない!

いっしょに過ごしたサーカスを思い出す
音楽のリズムに合わせて
お互いに息を合わせて
えへへ、なんだか楽しい気持ちが溢れてきちゃうな!

かーくんの声に大きく頷き
高く高く跳ぶ

さあ、フィナーレのお披露目だ!
最高の笑顔を咲かせようっ!


カーティス・コールリッジ
クラウ(f03642)と
『被験体XX、目標地点に到達しました』

報告は端的に
生命維持装置の解除は事務的に
おれが『そういうもの』だって、クラウには思って欲しくなかったから
一方的に母艦との通信を無理やり切断してやった

おれはカーティス
カーティス・コールリッジ!
|おまえの敵《にんげん》だ!

クラウ、おれが合図をしたら思い切り高く跳んで
あいつが勝利を手にしたと確信した瞬間
おれたちはそれを、きっと見逃さない

はは!なんだかおかしいや
カートゥンで見た!これって、『大怪獣決戦』みたい!
それじゃあ……えへへ、ショウタイムだね!

リミッター解除、継戦能力の向上をはかると同時にクラウをかばう
敵の砲撃を撃ち落としながら180度をカバー、反対側を全部きみに預ける
きみのリズムを覚えてる
記憶がなくても、体が覚えてる

縛り止められた敵影がひとつの線で結ばれた、一瞬
きみを強く呼ぶと同時、最大出力の熱線を射出した

サーカスの幕引きはハッピーエンドでなくちゃあだめなんだ
玉座を降りなよ、プリンセス
――無窮の宙にわらうのは、おまえじゃない!




『被験体XX、目標地点に到達しました』
 巨大漿船ソング・オブ・オーンブル。遂にその内部へと突入を果たした猟兵たち。小型艇でも悠々と航行できる通路をStingrayで飛びながら、カーティス・コールリッジは端的に報告の通信を入れた。事前に伝えられた命令通り、生命維持装置の解除を事務的に行う。
 同乗する友クラウン・メリーには、カーティス自身が『|そういうもの《兵器》』だと思ってほしくなかった。だから一方的な報告の後、通信機がなにかを告げる前にカーティスは母艦との通信を無理矢理切断した。
 今までこうして、一方的に報告をして通信を切るなんて真似はしたことがあったろうか。けれども今は不思議と「してやった」と思えている。が、この気持ちの変化に名前や理由をつけるのは戦いが終わってからだ。
 ちらと不安げに後部座席を見てみれば、クラウンは変わらずに笑ってくれていた。それに安堵して、カーティスは再び前を見据える。
 クラウンもそんなカーティスの様子を見て、柔らかに微笑んでいた。たとえそこにクラウンの知らないカーティスが居たとしても、何かを隠していたとしても、そんなことは気にしない。クラウンは今の、ありのままのカーティスが好きだ。いっしょに遊んで、笑ってくれるカーティスが大好きなのだ。
 だから何も心配しなくていいと友を安心させるように、クラウンはカーティスの肩に手を置いた。
 互いにかけたい言葉はあれど、今はまだその時ではない。
「今は目の前の敵に集中しなきゃだよね!」
「ああ!」
 辿り着いた広大なホール。いや、もうホールなのかもドッグなのかもわからない、笑ってしまう程に巨大な空間で。カーティスとクラウンは遂にプリンセス・エメラルドの許に辿り着いたのだから。

「礼儀がなっておりませんね、猟兵というものは。挨拶もしなければ名乗りもしない」
 見下ろすプリンセス・エメラルドの目は冷たい。猟兵というものを心から毛嫌いしているのだろう。真正面からカーティスとクラウンを見据えるのは無数の銃口と、次々とワープアウトしてくる敵兵の敵意だけ。
 それでも、二人は怯まなかった。キャノピーを開いて、真っすぐにプリンセスを見上げ、カーティスは大きく息を吸う。
 
「おれはカーティス。カーティス・コールリッジ! |おまえの敵《にんげん》だ!」

 腹の底から絞り出した声、言葉。それは名乗りでありながら決意だった。決別であり、自我の証明であった。この声よどうか、プリンセスを貫き母艦を駆け抜けて宙へと広がれ。

 薄い笑みを浮かべたプリンセスのいらえは、無数の砲撃と侵略蔵書より呼び出した|皇帝乗騎《インペリアル・ヴィークル》のエンジン音。戦端は敵の先制攻撃によって開かれた。
「クラウ、おれが合図をしたら思い切り高く跳んで」
 宇宙戦闘用の透明な宇宙服を着こみ立ち上がるクラウンを振り仰ぐ。その顔には不安も心配もない。ただ、信頼があった。
「あいつが勝利を手にしたと確信した瞬間。おれたちはそれを、きっと見逃さない」
「うんうん、了解だよ!かーくん!ふふー、まるでショーみたいでわくわくしちゃうな!」
 そんな友の信頼が嬉しくて、クラウンは満面の笑みを返す。黒剣を構え、クラウンはぐっと身をかがめた。それで臨戦態勢は整った。
 既に迫りくる砲撃。ウォーマシン。戦闘員。そして、皇帝乗騎に乗ったプリンセス・エメラルド。全方位からの大軍の大攻勢。
 圧倒的ピンチのこの状況において、それでも覚悟を決めてしまった二人から零れたのは笑い声。
「はは! なんだかおかしいや。カートゥンで見た! これって『大怪獣決戦』みたい!」
「わあ、『大怪獣決戦』! それじゃあ、頑張って勝たなきゃだね! 俺達、ヒーローなんだからっ!」
「それじゃあ……えへへ、ショウタイムだね!」
 言葉と同時にカーティスはリミッターを切った。スラスターを思い切り横方向に噴射して、回転しながら機銃を掃射する。迫りくる敵の砲撃を撃ち落とし、まずは第一波を凌ぐ。
「前がおれが!」
「じゃあ俺はうしろだねっ」
 前方を受け持ったカーティスは、自身の180度をカバーするように機銃を操作する。敵の砲撃を撃ち落とし、襲い来るウォーマシンを叩き落とし、突っ込んでくるプリンセス・エメラルドの皇帝乗騎を牽制するように機銃を掃射し続ける。
 その間、カーティスは一切後ろを振り向かなかった。反対側は信頼して、全部を友に預けているのだから。
 クラウンもまた、無重力空間を翼で強く叩いて黒剣を振るっていた。敵の先制攻撃にはユーべルコードが間に合わなかった。それでもカーティスが最初に砲撃を撃ち落としてくれていたおかげで、多少の余裕がある。その隙をついて、クラウンは高らかに指を鳴らした。合図を待っていたかのように、クラウンの周囲には火の輪が無数に現れる。
「またまたみーんなを拘束しちゃうよ!」
 笑顔と共に合図もうひとつ。まるで意思を持ったように自ら飛んで行った火の輪は飛び込んでこようとする兵士たちを拘束して離さない。動けなくなった隙に、クラウンは軽々とした身のこなしで周囲の敵を黒剣で斬り払って飛ぶ。
 宇宙空間であろうと、クラウンの楽し気で軽い動きは変わらない。ただ、|カーティス《ともだち》の後ろを護ると決めた約束を果たす為、クラウンは幾度だって火の輪を作り出して敵を拘束する。絶対に向こう側へと行かせはしないという意思が、クラウンを強く動かしていた。けれども――そう、いつだってクラウンは笑っているのだ。
 二人の脳裏には一緒に過ごしたサーカスが思い起こされていた。音楽のリズムに合わせて、お互いに息を合わせて。その時は互いの存在を目だけでなく体全てで感じていた。
 互いのリズムを覚えている。たとえカーティスにその時の記憶がなくたって、体はきちんと覚えているのだ。
「えへへ、なんだか楽しい気持ちが溢れてきちゃうな!」
「うんっ」
 こんな激戦の中でさえ、二人は笑っている。笑えている。そんな友情が心から嬉しかった。
 ――だから。
 クラウンが縛り止めた敵影がひとつの線で結ばれた、たった一瞬。
「クラウ!!」
 カーティスの合図にクラウンは高く高く跳んだ。それと同時、カーティスはStingerから最大出力の熱線を射出した。

 光が一条、彗星となる。ウォーマシンを巻き込み、戦艦を貫き、尾を引いてプリンセス・エメラルドへと迫る。
「さあ、フィナーレのお披露目だ! 最高の笑顔を咲かせよう!」
 クラウンは絶対に拘束を外してなるものかと手に力を籠める。
 大丈夫。信じている。
「サーカスの幕引きはハッピーエンドでなくちゃあだめなんだ。玉座を降りなよ、プリンセス」
「無礼な子。サーカスと一緒にするだなんて。謹んでお断り致しますわ、ピエロくんたち」
 それでもプリンセスは笑った。これが姫の矜持なのか、オウガ・フォーミュラの自信なのか――ああ、そんなことはどうだっていい。

「――無窮の宙にわらうのは、おまえじゃない!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

早乙女・翼
【双翼】
出た、ドMの余裕
余りヒヤヒヤさせるんじゃねぇさよ?

俺は空中戦・機動頼りかね
宇宙だろうと空と変わらない
大軍勢は飛んで見切り避けて…混戦利用して敵同士の誤爆誘導も狙い
注視すべきは姫さんの戦艦
砲撃の瞬間は流石に解るだろって事で
そこらの敵を盾にする様に動き直撃回避試み
多分、敵味方選べる程繊細な攻撃手段じゃないだろ?

手首の包帯外しながらUC発動
生憎だけど姫さんが喚んだ此奴らトコトン利用させて貰うさよ
主にウォーマシンを鎖で絡め取り、姫さん目掛けてぶん投げ衝突ダメージ狙い
融点は知らないけど翠玉は衝撃に弱いって地学者先生に聞いてきた
鎖を直に撃ち込み俺からも炎を
BBAはさっさと骸の海に隠居して貰うさね


ジャスパー・ドゥルジー
【双翼】
ごーめんねェ?
死地って奴に飛び込みすぎて慣れちまってンの
んへへ、あんま褒めんなよ翼
…褒めてない?

皇帝乗騎での先制攻撃は【激痛耐性】で受けきるぜ
全身から血を流しながら笑む
――手間が省けたぜ、あんがとよ

流れた血を媒介に【ユーサネイジアの理】
カワイコちゃんから貰った力、一丁試してみっか
姫君の絶対的な自信の前に精神攻撃が通用するとも思えねえが
継承軍の攻撃の方は少しは緩ませられるだろ
近づいてくる奴は相棒の炎で黙らせてやる
ほら、さっさと来いよ
好きにしてくれてイイんだぜ?

エメラルドの融点ってどんなもんだったか
まァいいや、最大火力をぶつけるぜ
この世界の奴らがやっと手に入れた自由
そう易々とは渡さねえよ




 宇宙バイクを噴かす音。翻る白のドレス。そして、居並ぶ二人の紅翼。
 負けなど欠片も考慮していないプリンセス・エメラルドを見上げる瞳にはそれぞれの意思が強く宿っている。

「ごーめんねェ? 死地って奴に飛び込みすぎて慣れちまってンの」
「出た、ドMの余裕」
 死地。激戦区。修羅場。この場を表す全ての言葉をひらりと振った手で軽く払い除けて、ジャスパー・ドゥルジーは不敵に笑った。人差し指で目の下を引っ張って、真っ赤な舌を出してプリンセスに向ける。
 こんな状況であってもいつも通りのペースを崩さぬジャスパーに、早乙女・翼は思わず吹き出した。
「んへへ、あんま褒めんなよ翼」
「……」
「……褒めてない?」
「余りヒヤヒヤさせるんじゃねぇさよ?」
 褒めてない、と婉曲的に告げながら、翼は遥か高きに座したプリンセス・エメラルドを見上げた。神様気取りか、はたまた女王の矜持か。どちらにせよ随分と首の疲れる場所に居るものだ。
 既にプリンセス・エメラルド号の砲塔は此方を向き、プリンセスは侵略蔵書より召喚した皇帝乗騎へと騎乗を果たしている。そして無数の兵士やウォーマシンたち。
「俺らも名乗ってやっちゃう?」
「いつもの?」
「そ!」
 紅翼を広げてぐっと身を屈める翼。両手を広げて受け入れる姿勢のジャスパー。高いエンジン音。

「「「「どーも! エイリアンツアーズです!!」」」」

 口の端を吊り上げて不敵に笑って。猟兵向け宇宙旅行会社のメンバーは死地に飛び込んだ。

 真っ直ぐに直上に飛びあがったのは翼だ。
 動きを邪魔しない透明な宇宙服は便利なもので、羽ばたくことを妨げるどころか空と同じように飛ぶことを可能にするものだった。ならば宇宙だろうが翼にとっては空と変わらない。
 ワープアウトした瞬間からブースターを点火して高速で接近する大軍勢の隙間を縫って飛び、時に攻撃を見切って避けて更に強く羽ばたく。
 大軍勢との戦いは詰まるところ混戦である。敵兵が多ければ多いほど、そこに飛び込んでひっかきまわしてやれば敵同士で勝手に誤爆が生まれていくものだ。今、翼の狙いはそこにある。
 大軍を真正面から相手取る必要はない。もとよりそのつもりでこの戦地に飛び込んだのだから。だから周囲に気を配りながらも注視すべきはプリンセス・エメラルドが召喚した戦艦の方だ。その砲塔さえよく見ていれば、さすがに砲撃の瞬間くらいはわかるはずだ。
 砲塔にエメラルドの光が入る。その一瞬を見逃さずに翼は方向を変えた。手近なウォーマシンを盾代わりにするために陰に入った、その瞬間。エメラルドの閃光が迸った。
 図らずも翼を庇うこととなったウォーマシンの背が砲撃を受けて融解した。光が貫通する前に、翼はプリンセス・エメラルド号と自分の間に敵を置き続けるように飛ぶ。
「敵味方を選べる程繊細な攻撃手段じゃないだろとは思ったが……思った通りだったさね」
 ちらりと戦艦を見やりながら小さく呟いた。そもそもこの大混戦の中では砲撃など本来は出来るはずがないのだ。それでもプリンセス・エメラルドは猟兵を殲滅する為に戦艦を持ち出した。つまりそれは、自分の部下をいくら犠牲にしたとて問題はないという自信と、それほどまでに完膚なきまで猟兵を叩きのめしたいという敵意に他ならない。
 だが、そこでふと気づいた。プリンセス・エメラルド号に|姫本人が居ないことに《・・・・・・・・・・》。
「……っ、ジャスパー!!」
 咄嗟に振り返った先で、皇帝乗騎に乗ったプリンセス・エメラルドがジャスパーへと突っ込んでいく様が見えた。

「ぐっ、ふっ……!!」
 ――おそらくは、生意気な猟兵の一人を跳ね飛ばしてやろうという魂胆だったのだろう。
 姫らしからぬ乱暴な攻撃ではあったが、それは猟兵たちによく効くと思われたのだ。こんな場ですら仲良しこよしを気取るような連中に見せしめにしてやろうと思うところもあったのかもしれない。
 けれどもプリンセス・エメラルドにとって大きな誤算であったのは、狙いをつけた猟兵がこの皇帝乗騎の攻撃を受け切ったことだった。
「嗚呼……手間が省けたぜ、あんがとよ」
 叩きつけられるような衝撃は、ジャスパーの全身の皮膚を裂き血を流させるに足る。痛めつけられた体を、それでもひとの身には過剰ともいえる程の激痛への耐性によって意に介さず、ジャスパーは笑った。
「何を考えているのでしょうか。ただの無謀で無策か。それとも死にたがりなのでしょうか?」
「さあて、どっちだと思う?」
「死に損ないが、私に問うのですか」
 挑戦的な目を振り払うように、プリンセス・エメラルドは皇帝乗騎の重火器のトリガーに指をかける。だが、ジャスパーの方が一歩早かった。
「カワイコちゃんから貰った力、一丁試してみっか」
 流れた血を媒介として、黒き魔炎が噴き出した。
「……っ」
 一瞬にして魔炎に包まれた皇帝乗騎を咄嗟に反転させて、プリンセス・エメラルドが離脱する。あれほど全身を痛めつけられているはずの相手。機銃を操作した方がきっと早いのに、どうしてかこの炎を受け続けてはいけないと本能が叫んでいた。
 その様子を、ジャスパーは「ハッ」と笑い飛ばす。
 勘のいい姫だ。最低限のダメージで離脱した。その上、炎と同時に発した希死念慮の狂気は効いている風はない。が、想定の範囲内だ。姫君の絶対的な自信の前に精神攻撃が通用するとは思ってはいなかった。だがそれはプリンセス・エメラルドに限った話しだ。下がった姫を護るように飛び出した継承軍の兵士にならば、手を緩めさせる。ひいては混乱を招く一手になりうる。
「ほら、さっさと来いよ。好きにしてくれてイイんだぜ? 死にたがり」
 近づく者は相棒の黒き魔炎と、放たれる狂気で黙らせてやろう。血塗れの手で炎を手繰りながら、ジャスパーは凄絶に笑った。

 一方、翼はジャスパーの元へと飛びながらも手首に巻いた包帯を外していた。はらりと落ちた包帯から現れるのは傷痕。もう古い傷だ。だが決して消えはせず、それは良く見れば手首を切断寸前のところまで負った傷だ。ゆえにこそ、人前には晒してこなかったもの。
「――主よ、罪深き者に裁きと戒めの業火を」
 傷痕から具現化し、溢れ出した炎を纏った鎖が翼の手に握られた。高速で飛ぶ翼の行く手を阻む継承軍を見据え、その最前列に居たウォーマシンに狙いを定める。ジャスパーの精神攻撃が効いているのか、その動きはどこかぎこちない。好機だ。
「生憎だけど姫さんが喚んだ此奴らトコトン利用させてもらうさよ」
 言葉と同時、鎖を放つ。狙い外すこと能わずに絡めとられたウォーマシンが、浄化の炎に包まれた。宇宙空間であっても燃え続ける紅蓮の炎は瞬く間に火だるまを一つ作り上げる。
「……せーのっ!!」
 思い切り振り回した。回転による遠心力という弾みをつける。燃え上がるウォーマシンと皇帝乗騎、そして翼の視線が一直線に並んだ瞬間に、翼は鎖を手放した。
「きゃあ!!!」
 火だるまの衝突を受けて皇帝乗騎から悲鳴が上がる。間を置かずに次のウォーマシンを拘束する翼の隣に、羽根も翼も紅に濡れたジャスパーが並ぶ。
「エメラルドの融点ってどんなもんだったか。……まァいいや、最大火力をぶつけるだけだな」
「融点は知らないけど翠玉は衝撃に弱いって地学者先生に聞いてきた」
「へぇ。そんじゃ、いっちょ合わせ技でもやってみっか」
 伸ばした手に魔炎。翼が拘束したウォーマシンが二色の炎に包まれて火力を上げる。互いに最大火力を詰め込んで、詰め込んで。
 そうして出来上がったのは黒と紅蓮の巨大なともしび。再びの圧政を許さぬ反逆のトーチカ。
 
「BBAはさっさと骸の海に隠居して貰うさね」
「この世界の奴らがやっと手に入れた自由。そう易々とは渡さねえよ」

 力強く放たれる大熱が周囲の軍勢ごと皇帝乗騎を飲み込む。慟哭のような航空エンジン音が、二色の炎の背を追った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マシュマローネ・アラモード
【エイリアンツアーズ】

パウルさんと合流して参りましょう、宇宙の為に武器をとり、共に戦う者としてこれほど心強い事はありませんわ!

【先制対策】
モワ!プリンセスエフェクト!
斥力(吹き飛ばし)と推力移動、ひらめきからの斥力を艦隊に当てて盾にして、艦を足場に斥力で跳び、跳ねるように艦隊を渡って回避していきますわ!
パウルさんの援護を活かすように派手に立ち回りましょう!

【華麗なる飛翔】
UC発動!
旗艦へ斥力を放ちながら、振盪衝撃波で、内部を直接揺らし、突破口から一気にブリッジへ斥力を集中させて突貫し、乗機したプリンセス・エメラルドに仕掛けて崩していきます。

パウルさんの帰りたい場所へ、共に帰還しましょう。


パウル・ブラフマン
【エイリアンツアーズ】
マロちゃんと合流後、意を決して戦場へ。
オレ達の可愛いプリンセスの母星に、ひどいコトは絶対にさせないよ!
往こう、Glanz―ファイナルラップだ。

序盤は展開したKrakeでマロちゃんの【援護射撃】を。
帝国時代の【戦闘知識】を活かし
偽信号を照明弾で流布して敵艦隊を蹂躙するね。

皇帝乗騎の召還を確認したら―UC発動!
目眩ましに【弾幕】を張ったら
超加速で騎手を狙って跳躍し
前輪で【踏みつけ】ながら【零距離射撃】を試みる。

銀河帝国に携わった時点でオレ達は等しく悪だ。
自身のエゴを原動力に【リミッター解除】を。
マロちゃんの故郷を護って
帰ったら大切な友達と…お酒を酌み交わす約束を叶えるタメに。




 ――プリンセス・エメラルドの居場所の扉前。決戦のほんの少しだけ前。

「モワ! パウルさん!」
「マロちゃんっ」

 巨獣戦に於いて一旦離れていたマシュマローネ・アラモードとパウル・ブラフマンは、そこで合流を果たした。そっとパウルの表情を窺い見るけれど、そこにはいつも通りの人懐こい笑みを浮かべた彼が居るだけ。ならばきっと、大丈夫だったのだろう。
 思いを遂げるのも、幕を引くのもこれからだ。
「マロちゃん、行こう。オレ達の可愛いプリンセスの母星に、ひどいコトは絶対にさせないよ!」
「ええ、パウルさん! 宇宙の為に武器をとり、共に戦う者としてこれほど心強い事はありませんわ!」
 傍らには紅翼ふたり。憂いも全て吹き飛ばすように、パウルはGlanzのアクセルをわざと大きく握り込んで噴かした。宇宙空間では感じることのなかった風が、マシュマローネのふわりとした銀髪を流していく。
「往こう、Glanz――ファイナルラップだ」
 今ここに居るのは、パウル・ブラフマンというただ一人のタコ坊主。過去も罪も全て飲み込んで、内から溢れるものの衝動の声を聴き、そして歩んできた今。
 声をそろえ、目線を交わし合って高らかに叫んでやろう。今の己が居場所を。これが我らであると叩きつけてやろう。

「「「「どーも! エイリアンツアーズです!!」」」」

 口の端を吊り上げて不敵に笑って。猟兵向け宇宙旅行会社のメンバーは決戦に挑む。

 次々とワープアウトしてくる敵兵の軍団には、文字通り限りが無いように思えた。銀河帝国を凌駕する程の大軍勢というのは虚飾ではない。だが、それがどうした。
「モワ! プリンセスエフェクト!」
 宇宙プリンセスのみに許された権能を存分に発揮する時だ。マシュマローネは己に備わる斥力をキネティック・リパルサーに乗せる。推力をバーニィ・シルエットへと付加し、愛らしいティアラと耳飾りを煌めかせて兎のように高く跳躍する。
 プリンセス・エメラルド号は、猟兵たちの攻撃によって多大な損害を受けながらもまだ半分の砲塔が健在だ。巨大すぎる船の破壊には当然のように労力がかかる。だが半分も減っているならば十分である。
 仲間の攻撃によって、帝国軍兵士たちの動きには鈍さや不具合が見えた。その好機を、マシュマローネは見逃しはしない。
 放たれるエメラルドの熱線を避けるように、マシュマローネは艦隊に斥力を当てて吹き飛ばし盾にする。戦艦を足場に斥力で跳び、跳ねるように艦隊を渡って数多の砲塔を回避していく。
「……!」
 跳んだ先に兵士が居た。ウォーマシンだ。銃口はすでにマシュマローネを向いている。
 だがその引金が引かれるよりも早く、腕が爆発する。Glanzを自在に操って疾走するパウルだ。触手に展開したKrakeは常にマシュマローネを援護するように狙いを定めている。一瞬だけ交わし合った目線には、二人とも笑顔が浮かんでいた。
 そのままマシュマローネは次の戦艦へ吹き飛ばしながら跳ぶ。どこにも不安はなかった。頼もしき仲間が援護してくれているのだ。ならば自分は、その援護を最大限に活かして派手に立ち回ってやる。
 パウルは戦艦の合間を縫って飛ぶ。帝国時代に培った戦闘知識を惜しげもなく使い、偽の信号を照明弾で流布して敵艦隊や兵士たちを蹂躙する。
 この知識がどれほど唾棄すべきものでも、今はそれを使うことを躊躇いはしない。内から溢れ出そうとしている憎悪のまま、されどそれに決して飲み込まれることなく。写し取った想いをぶつけるように、パウルは駆ける。

「……くっ。どこまでも私を阻みますか、猟兵……っ」

 紅蓮と漆黒のトーチカから脱したプリンセス・エメラルドが憎悪を吐き捨てる。ここまでの猛攻をよく凌いできてはいたが、皇帝乗騎にもプリンセス・エメラルド自身にも少なくない損害が目に見えてきた。当初の余裕と自信が、少しずつ失われつつある。
 忌々し気に炎を振り返ったプリンセスは、まさかそれが仇になるとは思っていなかった。
 高く高く跳び続けていたマシュマローネは、既にプリンセス・エメラルド号への接近を果たしていたのだから。
 マシュマローネの姿が変わっていた。愛らしく元気な兎の姫は、長いドレスをたなびかせる輝かしき宇宙プリンセスへ。そうして、誰よりも高く跳ねてみせるという気概をバーニアにのせて。
「絢爛無双にきめましてよ! お覚悟あそばせ!」
 艦隊旗艦プリンセス・エメラルド号へと全力の斥力を放った。振盪衝撃波で内部が地震のように揺れる。戦闘によってもともと脆くなっていた部分は衝撃で崩壊を起こし、艦体のあちこちに穴が開いていく。その中でブリッジに最も近い突破口へと侵入したマシュマローネは、キネティック・リパルサーに最大限の斥力を乗せて突貫した。

 プリンセス・エメラルド号のブリッジが文字通り吹き飛ぶのを視界の端に認めながら、パウルはGlanzを変形させて騎乗した。
 目指す敵は皇帝乗騎に乗るプリンセス・エメラルド。猟書家。オウガ・フォーミュラ。帝国の継承者。咄嗟に振り返った翠玉の女、ただ一人。
 目眩ましに弾幕を張って、パウルは最大の加速でプリンセス・エメラルドへと跳躍した。
「この、無礼者め、私を誰だと……っ」
「誰だろうと関係ないんだ」
 ひどく冷めた温度で紡いで、パウルは前輪で思い切り皇帝乗騎とその騎手を踏みつけた。
「銀河帝国に携わった時点でオレ達はは等しく悪だ」
 もうわかっている。誰が何を教え込もうと、その善悪を知らなかったとしても、引き金を引いたのは確かに自分だった。それを無かったことにしない。
 自分のエゴを原動力に、パウルは己のリミッターを全て外した。
 Krakeを直接皇帝乗騎に押し当てて、零距離射撃を試みる。反動で飛び出した空間で、プリンセス・エメラルド号から脱したマシュマローネがパウルの肩に触れた。
「パウルさんの帰りたい場所へ、共に帰還しましょう」
 明るく告げて、マシュマローネは笑った。その手を引いて、パウルはGlanzの後部座席へと誘う。
「うん。マロちゃんの故郷を護って、それから」
 帰ったら大切な友達と、お酒を酌み交わす約束を叶えるタメに。

 友の為、この戦いに終止符を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
(口笛吹き)
へぇ、こいつは壮観だ。
翠玉の姫、御自ら大軍勢を率いて、不倶戴天の敵である|猟兵《俺達》を歓待してくれるとは。
豪華なディナーと美味い酒の替わりにあるのは。向けられた銃口、殺気立った気配、四方を囲まれた絶望的状況――(魔剣を顕現し、肩に担いで)良いね、最高だ。

エメラルド号に向かって駆ける。
周囲を囲まれて砲撃の嵐。ウォーマシンやらキルマシーンやらの頭を伝って、同士討ちを狙いながら、エメラルドの破壊光線を誘う。エメラルド号はあれだけデカイと盾になるだろう。強度の程は分からねぇが、壊れたらもう片方に手を出せば良い。
そう、狙いは――エメラルド号を【盗む】こと。
操作方法?適当に弄ってりゃ何とかなるだろ。あっちこっちに破壊光線、穴だらけになった戦場のホール、玉座なんか塵も残らねぇかもな。

十分楽しんだら、降りるか。
親切心で是非、姫さんに忠告してやりたい。
戦艦の警備に難ありだ。敵に奪われたら目も当てられない状況になる。次からは気を付けた方がいい。
――彼女の表情にはきっと一見の価値がある。…だろ?




「へぇ、こいつは壮観だ。翠玉の姫、御自ら大軍勢を率いて、不倶戴天の敵である|猟兵《俺達》を歓待してくれるとは」
 目の前で繰り広げられる大決戦に軽く口笛を吹いて、カイム・クローバーは笑った。次々とワープアウトしてくる大軍勢。姫の傍らには皇帝乗騎とプリンセス・エメラルド号と名付けられた大戦艦。ここはきっとプリンセスの御前で催されるパーティー会場で、さながら猟兵たちは主賓と言ったところか。
 けれども用意されているのは豪華なディナーと美味なる酒ではない。歓迎の挨拶替わりに向けられた銃口。殺気だった気配。四方を囲まれた絶望的状況。
「――良いね、最高だ」
 顕現した魔剣を肩に担ぎ、こんな死地を前にして。まるで何でもないことのように口の端を歪める。
 そう。こんな死地も熱烈な歓迎もいつものこと。ただし、ここまでの大軍勢のフルコースはそうそうなかったような気もする。招待状も持たぬ招かれざる客ではあるが。危機的状況こそを楽しむのがハードボイルドだろう。
 カイムは魔剣片手にパーティー会場へと飛び込んだ。

 無重力であることを活かし、高く跳んで駆ける。目指す先はプリンセス・エメラルド号ただひとつだ。
 ワープアウトしてくる敵は止むことを知らず、一つ破壊されればすぐに補充されるような状況だ。周囲を囲まれての砲撃の嵐を、カイムはウォーマシンやキルマシーンという大型機械兵の頭を伝って回避していく。
 多数対少数。しかも大軍勢などという規模の大きい戦いをしていれば、避けられないのが同士討ちだ。まして砲撃という破壊力の高い攻撃は、精密射撃には向かない。となれば、砲撃を敵勢力が集まっている箇所に向けてやれば勝手に同士討ちしてくれるはずだとカイムは考えていた。実際のところ、砲撃によって軍勢に大きな被害が出てもプリンセスはそれを咎めることはない。数で圧倒出来るがゆえに多少味方に損害が出ようが構わないというスタンスか。
 ならば結構だと、カイムは目を細める。勝手に同士討ちをしてくれるならば大歓迎だ。プリンセス・エメラルド号から放たれた破壊光線を誘い、攻撃力の高いウォーマシンたちを次々と犠牲にしながらカイムは艦隊旗艦たるエメラルド号へと駆けた。

 ひとつ、考えがあった。
 戦局が進むにつれて、天秤は徐々に傾きつつある。プリンセス・エメラルドも同名の戦艦も、皇帝乗騎も。全てが大きい損害を負っている。だがそれでもまだ、プリンセス本人と彼女の駆る戦機はまだ健在である。
 カイムの目線の先には、半壊状態のプリンセス・エメラルド号があった。船体に開いた無数の大穴。吹き飛んだブリッジ。半数が損壊した砲台。当初からはかなりパワーダウンした状態だ。それでも、戦艦という巨大な建造物は大きな盾になりうる。今となってはどの程度強度があるかはわからぬが、それでも今すぐに自壊する程に脆いわけではない。ならば、カイムの狙いはプリンセス・エメラルド号でいい。
 メインブリッジを失いながらも、プリンセス・エメラルド号の砲台はまだ執拗にカイムや猟兵たちをサーチしている。つまりはサブのブリッジがあるのだ。そう気づいたカイムは、適当に当たりをつけて飛び込んだ。
「おっと、ビンゴだ」
 軽い口笛。飛び込んで少し走った先にはサブブリッジがあった。自分の運の良さに笑いながら、カイムは瞬く間に中に居た帝国兵を制圧し、ブリッジを掌握する。

 ――そう。カイムの狙いはプリンセス・エメラルド号を盗むこと。

 操作パネルを見ても操作方法などさっぱりわからないが、それでもいい。適当に弄っていればどうにかなるだろうとばかり、カイムは出鱈目にスイッチを押し、開いた画面を適当にタップする。
 カイムによって操作された通り、戦場となるホールを破壊光線があちらこちらに舞う。敵兵を巻き込み、敵戦艦を穿ち、あっという間にホールは穴だらけだ。特に破壊光線の直撃を受け、はじめにプリンセスが座していた玉座は跡形も残らぬ程に破壊されつくされている。破壊光線の威力を物語るように、玉座は塵すらも残りはしなかった。

 しばし面白そうにコンソールを弄っていたカイムだったが、丁度もう十分に楽しんだ頃に起こった突然の大きな衝撃によろめいた。
 見ればサブブリッジを壁を突き破ったウォーマシンがこちらを睨んでいる。一度開けた大穴を更に広げ、ウォーマシン数機が楽に入れるようになるまで、カイムは魔剣を肩に担いでその様子を見守った。
 やがて大穴からぞろぞろとウォーマシンが入ってくる。その中心には、激しい怒りを浮かべたプリンセス・エメラルドがいる。
「よう、姫さん。遅いお着きで」
「私の船を、艦体を、兵士たちを、よくもここまで弄んでくれましたね……!」
 既にお怒りか。まあ当然だろう。ウォーマシンたちの銃口が此方を向いているが、すぐに撃たれる気配はない。きっと姫の合図を待っているのだ。愚かなことに。
「なあ姫さん。親切心で是非、姫さんに忠告してやりたい」
 担いでいた魔剣の切っ先を向けて、カイムは口の端を吊り上げる。

「戦艦の警備に難ありだ。敵に奪われたら目も当てられない状況になる。次からは気を付けた方がいい」

 次なんてきっとないけれどな、なんて。カイムがあまりに挑発的に笑う。親切心と言いつつ、煽っている自覚はあるのだ。嗚呼だって、あんなにも余裕たっぷりに優雅に笑っていたプリンセス・エメラルドが見る間に憎悪と悔しさに染まって余裕を無くしていく。

 ――その表情にはきっと一見の価値がある。戦う理由など、それだけで十分だろう?

大成功 🔵​🔵​🔵​

神咲・七十
アドリブ・連携お任せ

やっと目の前に出来たのにこの状況ですか
まぁ、直前に補給できたので大丈夫でしょう……えぇ、決してブーメランが刺さってるとかそんなことはありません

(キャバリアを呼び出し、今回も強力な攻撃に絞って回避して、避けれない攻撃はキャバリアに受け止めて貰う。ショットガンの迎撃もしながら、被害を抑える。不可視攻撃には最悪UCが使えるまで即死してなければいいと言う気持ちで避ける部位をさらに絞って対応)

げほっ!……結構ぎりぎりでしたね。
ですが……息があればなんとかなります

(UCを使用。失った部位と機能を植物達で代用。大量の隷属した存在と捕食植物を隷属化の力を与えた状態で呼び出して継承軍にぶつける)

更に増やしてきてください……食べるものが尽きるまで

(隷属化の力で追加で取り込んだものも戦列に加えて、エメラルドを取り囲み)

ふふ、そのまま欠片一つ残さず喰い尽くしてあげますよ

(濁流ともいえる自分の戦列にエメラルドを飲み込ませて、隷属化させよう宣言通り欠片一つ残さずに、喰い尽くそうとして)




「やっと目の前に出来たのにこの状況ですか」
 困ったように溜息を吐いて、神咲・七十は巨大なホールを素早く見渡した。ホール、と形容するのも馬鹿げているような広さだ。球状のホールは最早ドッグと言っても差し支えない。なにせ戦艦もウォーマシンもうようよいて、自由に動き回れる程度の広さがあるのだから。そして、一帯を埋め尽くすような継承軍の大軍。もう一度、七十は溜息をついた。
「まぁ、直前に補給できたので大丈夫でしょう……えぇ、決してブーメランが刺さってるとかそんなことはありません」
 ありませんったら。
 そんな言い訳を戦闘音に紛れさせながら、七十はキャバリアを呼び出した。

 既に戦場は激戦地と化していた。多くの猟兵の活躍もあったが、継承軍の兵士たちのワープアウトは止まらない。きっと、この戦いに決着がつくまでは無限と思える程に召喚され続けるのだろう。
 けれども、この場に於いて無限ではないものがあった。プリンセス・エメラルド本人と彼女が召喚したプリンセス・エメラルド号と皇帝乗騎だ。あれらは大きなダメージを負ったまま、回復も次の召喚もない。つまり、替えの効かない一点ものということだ。
 今はそれだけ認識すると、七十はブースターを点火した。
 戦法は先程の大怪獣戦と変わらない。強力な攻撃に絞って回避して、どうしても避け切れない攻撃はキャバリアに受けてもらう。これだけの大混戦だ。うじゃうじゃといる敵兵を盾にするように動けば、多少のダメージは減らせるだろう。向かってくる戦闘機をショットガンで迎撃し、戦艦の砲撃を躱す。ウォーマシンのビームサーベルが掠る程度なら許容範囲だ。
 うまく捌き切れるか――。
 多少の安堵を胸に抱いたのも束の間。キャバリアから警告音とほぼ同時に、背後から強烈な衝撃が襲った。
 思い切り吹き飛ばされたが、既の所で操縦が間に合った。ビームサーベルを構えたウォーマシンに串刺しにされる直前でスラスターとバーニアを噴射させて飛び退く。
「げほっ! ……結構ギリギリでしたね」
 口の中を切ったか。それでも警告音からの咄嗟の反応で攻撃を受ける場所を選べたのは幸いだった。もう身に着いた習慣のようなものなのだろう。即死さえ避けられれば、キャバリアが航行不能にさえならなければ。それだけを念頭に置いていたおかげで、ギリギリの反応が間に合ったのだ。
 鉄錆臭いそれを拭って、七十は自らを攻撃した『何か』を振り返る。予想通り、それはプリンセス・エメラルド本人だった。ただし、騎乗している皇帝乗騎も姫本人も満身創痍の有様だ。
 何があったかと把握す前に。離れていたプリンセス・エメラルド号が内部から大きく爆発した。
 連鎖的に起こる爆発は美しきエメラルドの船体を大きく崩し、やがて中央から真っ二つに割れていく。――そして。連鎖的な爆発はやがて最大の爆発となって、周囲一帯を巻き込んだ。
 衝撃波にキャバリアが揺れる。防御の間に合わなかったウォーマシンが吹き飛ばされて、まるでボーリングように他の兵士を巻き込んで壁に叩きつけられていった。あの様子ではプリンセス・エメラルド号は使い物になるまい。
 つまり、姫はあそこに居たのだ。もともと猟兵たちの猛攻を受けていた中で、戦艦の爆発が起こる程の攻撃を受けた。そこから脱したところで、七十を見つけたのだろう。自慢のドレスは破け、皇帝乗騎ももはや飛ぶのが精いっぱい。それでも、ギラギラと敵意と憎しみを向ける顔、取り分け目はまだ死んでいない。
「おのれ。おのれ……幾度となく私の邪魔をして、私を阻んで……!! 絶対に、絶対に殺してやるわ。絶対に……!!」
 敗北を察してなお、最期まできっと諦めないのだろう。これほどの大軍勢を集めて、何一つ出来ぬままでに終わるわけにはいかないのだろう。それは、わかるが。
「ですが……息があればなんとかなります」
 此方とて何一つ、させてやるわけにはいかないのだ。

 敗北を既に察しているのなら話は早かった。
 
 ――万花変生。

 七十の周囲に無数の召喚陣が展開された。
 そこから這い出してきたのは、大量の|自身が過去に隷属させた存在《・・・・・・・・・・・・・》と、多種多様な未知の植物たち。

「なっ……」
「更に増やしてきてください……食べるものが尽きるまで」

 冷酷で蠱惑的な笑みを浮かべる七十が指先で指し示す。食事は――帝国継承軍の兵士たち。
 隷属化の力を与えられた隷属存在と継承軍がぶつかり合う。
 はじめは互角だった。だが、段々と七十に隷属する兵士たちが増えていく。植物が入り込み、主が誰であるかを書き換えて、|主にとっての敵《・・・・・・・》を攻撃しはじめる。この戦いの雌雄は既に決したと言えた。
 七十がゆっくりと、プリンセス・エメラルドへと近づいた。傷付き取り囲まれて捕まえられた状態では、もはや姫に出来ることはなかった。
「ふふ、そのまま欠片一つ残さず喰い尽くしてあげますよ」
「……こ、の……っ」
「恨むのならば、さっき一撃で私を殺せなかった自分を恨むことです」
 そう。似た者同士とはこういうことだ。
 濁流とも言える七十の戦列が、プリンセス・エメラルドを飲み込んだ。隷属化をしようとも思ったが、それではこの帝国継承軍が解体されない。プリンセス・エメラルドの撃破は必須事項だ。
 ゆえに宣言通り。翠玉の欠片一つ残さずに、七十はすべてを喰らい尽くした。

 プリンセス・エメラルドの崩御は、すぐに周囲に伝わった。継承軍全体がざわつきだし、やがて大きな混乱の渦に飲み込まれていく。
 グリモア猟兵が開いたゲートを使い、全員がその場を脱した直後。巨大漿船「ソング・オブ・オーンブル」は大爆発を起こして消えていった。

 この後しばらくすれば、プリンセス・エメラルドは旗艦ごと再蘇生を果たすのだろう。それでも、あと幾度か。幾度かの撃破を繰り返せば、オウガ・フォーミュラとて蘇生も出来なくなる。その時が本当の勝利の時だ。

 無窮の宙に浮かび上がるは支配の軍勢ではない。
 ただひたすらに広がる自由なのだと、猟兵たちは幾度だって叫ぶのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年02月09日


挿絵イラスト