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銀河帝国攻略戦⑳~白紙の未来はその手の中に

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #白騎士ディアブロ

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●白くそびえる未来を越えろ
「来てくれて助かる。それじゃ、説明を始めるぜ。資料を見てくれれば分かると思うが、今回皆に倒してもらいたいのは白騎士ディアブロ。強敵中の強敵だ」
 納・正純(インサイト・f01867)は猟兵たちが集まるのを見ると、今回の作戦についての説明を行っていく。
 既に配布してある資料を猟兵たちが目を通していくと、そこには白騎士の今の状態について現時点で分かっている情報がまとめられていた。
「今の白騎士は戦力を悉く失っており、周囲に他の戦力は存在していない。これは皆の活躍によるものだ、本当にありがとうよ。胸を張って良いと思うぜ」
 しかし、周囲に白騎士しかいないという事は、逆に言えば白騎士が『一人の戦士』として、最大の力を発揮できる状況でもあるということだ、と正純は付け加えて説明する。
「きっと今回は皆のような猟兵の、それも精鋭であっても、勝敗は五分五分が良いところだろう。敗北する可能性も高い。その理由は、敵の能力にある」
 白騎士は同時に一体しか存在しない。だが、限定的ながら『未来を操作する』力を持つという事が現時点で予想されている。
 そのため、何らかの有効な対策が無い限り白騎士は『全ての攻撃を逃れ』、『絶対に命中する攻撃』を『最大の効果を発揮する』ように行い、確実な勝利を掴むだろうと正純は説明を重ねていく。
「敵の装備はフォースセイバーやレーザーキャノンといった兵装。これらは銀河帝国の技術の粋を尽くしたものであり、生半可な防御も通用しないとみて良いだろうな。その上、敵の能力を考えると、敵は間違いなく『猟兵の攻撃に先んじて先制攻撃を行ってくる』。だから、まずは敵の攻撃への対処を考えなきゃいけないんだ」
 つまり、装備面でも能力面でも今までにないレベルでの強敵と言える存在なのは間違いない。しかし、それでも。
「だが、猟兵の皆ならコイツを倒せるはずだ。お前たちのユーベルコードと、知恵と工夫。そいつを見せて欲しい。敵の攻撃を受け止め、その上でダメージを与えて倒してくれ。白騎士も、出来るならここで倒しておきたい敵であることは事実だからな。皆、頼む」
 そう言って、正純は説明を終えて猟兵の転送準備に入った。決戦の時が迫っている。


ボンジュール太郎
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 今回の難易度は「難しい」となっています。
 敵の攻撃への対抗策がなかったり、複数のユーベルコードを使用していた場合はその時点で判定に大きくマイナスを入れます。
 また、今回は技能よりもそのプレイング内容を重視したく思っておりますので、よろしくお願いします(技能を羅列するなどでプレイングボーナスは与えません)。
 そして今回は出来るだけ少人数でリプレイを返却していこうと思っています。多くても一気に挑戦できるのは三から四人までくらいで考えておりますので、どうかご理解くださいませ。
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第1章 ボス戦 『白騎士ディアブロ』

POW   :    収束する運命の白光
【対象の未来位置に向け放たれるレーザー】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    ホワイトライト・トゥルーライト
【10秒先を見たかの様に的確な攻撃を行い、】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    デストロイマシン零式
戦闘力のない【66機の動画撮影ドローン】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【正確無比な未来予想シミュレーション】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●未来を掴むのは
「……時を経て滅ぶものなど珍しくもない。私とて帝国に歯向かう者たちへ、滅びを幾度となくくれてやったのだ。生存戦争において意思が……心がぶつかり合った時、より強い方が勝ち、負けた方は滅びるだけ」
 そんなこと、繰り返し見続けて来たとも。そう白騎士ディアブロは自分以外に誰もいない広い空間で一人呟く。
 彼の未来を操作する力は、既にこの戦いの終焉すらも見据えているのかもしれなかった。
「だがな、猟兵よ。ここへ訪れる強敵、相まみえる好敵手よ。私は白騎士なのだ。宇宙の中にただ一人、銀河帝国の盾となり、剣となる、我が主から恩寵を受けた帝国の忠実なる白騎士なのだ」
 彼は猟兵の転送を既に『知って』いる。この場所へ猟兵たちが来ることなど、彼はもう『視て』いるのだ。
 だが、逃げもせず、怯えなどもせず。彼はゆっくりとフォースセイバーを鞘から抜き放つ。抜剣と同時に、彼の手元に白く、蒼い、エネルギーの刃が姿を現した。
「喜んでここへ来るが好い、帝国に仇成す敵よ。貴様等の腕前も、その強さも、その意志も、工夫も、力も、覚悟すらも。私は『視てきた』。貴様等が勝ちを欲するならば、未来を変えてみせるのだな」
 同時にディアブロはレーザーキャノンの動力炉にも火を入れる。高音を立てて起動するその兵装は、猟兵に死を届けるための帝国の技術の結集の一つ。彼が身に纏う武装だけで、戦艦何隻分の予算が掛けられているか分かったものではない。
 彼の纏うスラスターも、準備はすでに整っているようだ。高速移動、超速の剣技、確実な死を届ける兵装、そして『未来予知』。敵は紛れもなく強敵だ。
「己に流れる命と心にかけて……。白騎士ディアブロの未来予知、越えられるものならば越えてみよ」
 そして、猟兵たちが転移を開始する。もしかしたら、ディアブロは既に彼らの未来を視ているのかもしれない。しかし猟兵たちにとって、未来は未だ白紙であった。
宮落・ライア
さぁ精一杯思いっきり死ぬ気で無理をしようか!
その為にもこの先制を切り抜ける!
転送直後から攻撃が来る前提で【覚悟・武器受け・激痛耐性】で
切り抜ける。
切り抜けられたら【侵食加速】で限界まで体を強化する。

気分が高揚する。痛覚が鈍くなる。
そんなのは副次的な物。
目を、脳を、認識を、情報処理能力を極限まで強化する。
あなたが何秒刻みで未来を見るの?
10秒?5秒?1秒?
どうだとしても、10分の1秒くらいで刻んで認識すれば、未来予測なんて関係ないよね?【見切り】

【怪力・薙ぎ払い・鎧砕き・衝撃波】と強化した身体能力で攻め立てる。

異常に伸ばされた認識はすぐに限界を向かえ、
そう時間も掛からずに意識を落とす。



●嚆矢となる
「さぁ精一杯思いっきり死ぬ気で無理をしようか! その為にもこの先制を切り抜ける!」
「威勢の良いことだ。だが、私は既にそれを『視た』」
 転送直後から全速で駆けだし、ディアブロへの距離を詰めていくのは宮落・ライア(英雄こそが守り手!(志望)・f05053)。
 だが、ライアの転送されてくる位置は既にディアブロに筒抜けであった。【ホワイトライト・トゥルーライト】。
 白騎士の持つ能力の中でも相当に強力な、未来を読む力を最大限に活かしたユーベルコードが。彼女の転送位置を、駆けだす足が踏み込む場所を、突撃のラインを、武器が振るわれる位置を全て『視て』いた。
「……ッ、ああああッ! 痛いけど、痛くないッ! 止まる訳にはいかないんだ!」
 ディアブロの放つレーザーが、連続でライアの身体を、それも上半身を中心に無慈悲に焼き尽くしていく。だが、彼女も骨肉の剣でその熱線のいくつかは受け止めていく。
 既に彼女の腕や肩には、痛々しい傷跡が多くある。レーザーによる熱は、ライアが受け止めきれなかった数だけ彼女の肉を灼き、焦がし、腕に穴をあけていくのだ。
「だろうよ、貴様が私の攻撃を受けてもその足を止めないということは分かっていた。だからこそ、私はその剣を受けてやるとも」
 それでも、ライアはその足を止めない。ボロボロになりながらも進めるのは、彼女がユーベルコード【侵食加速:自己証明】を行っているからだ。祝福のようであり、呪いのようでもあるその力は、幾ら傷付こうとも彼女の足をどうあっても止めさせない。
 違えられぬ期待、彼女の内に響き続ける祈り、強く狂気に近い決意。その全てが、穴だらけになったライアの足を進めさせる。
「あなたは何秒刻みで未来を見るの? 10秒? 5秒? 1秒? どうだとしても、10分の1秒くらいで刻んで認識すれば、未来予測なんて関係ないよねッ!」
「……チィ。ああ、そうだな。私の攻撃を受けても進むその力は確かに強い。だが……その力は呪いだな。呪縛に囚われた貴様の剣を見切るなど、未来を読むまでもない」
 目を、脳を、認識を、情報処理能力を極限まで強化したライアの剣技は正に万夫不当のそれだ。どれだけ腕に傷を負っていようと、彼女はその怪力で獲物を薙ぎ払い、白騎士の鎧を砕かんとして衝撃波を放っていく。
 深刻な重傷を受けてもライアが強化した身体能力で攻め立てていられるのは、彼女が激痛に耐性を持っているが故。その狂気じみた剣技は白騎士の鎧に確かに傷を付けていく。未来が読めたとしても、避けきれない攻撃は受けるしかないのだ。
 しかし、白騎士も大したもの。彼はいくつかの手傷を確実に負いながらも、ライアの剣技の中から大きくダメージを受けそうなものだけはしっかりと捌いていく。そして、『その時』は訪れた。
「あ……あれ、なんで? ボクはもっと戦える、の、に……、負けられない……。死ぬことも止まることも、認められない……! 私は託された、選ばれたんだか、ら…………」
「貴様が激痛に強いのは知っていた。『視た』からな。しかし、いくら痛みに強いとは言っても、貴様が感じないだけでダメージは受けているということは確かな事実。呪縛に重傷、その二つを背負って私に剣を届かせた心意気は褒めてやろう。良い太刀筋、良い剣であった。次は互いに怪我の無い状態で、貴様が呪縛から解放された未来で剣を交えたいものだ」
 ライアの異常に伸ばされた認識はすぐに限界を迎えた。彼女が意識を落とすのに、さして時間も掛からない。序盤の失血が響いた形だ。いくら彼女の意志が固くとも、覚悟や激痛耐性は敵の攻撃を防ぐものではない。彼女の身体にどの代償が現れたとしても、結果は同じだっただろう。
 しかし、ライアは白騎士に最初の一撃を入れたのだ。未来が読める敵とて、無敵な訳ではない。それを彼女は証明して見せた。この結果は、大きい。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

カルティーチェ・ルイナ
キアさんと行きます。

敵は恐ろしく強い相手、生半可では勝てないのはわかりきっています。
だけれども、自分よりも強くて頼りになるキアさんと一緒ならきっと大丈夫だって信じます!

作戦は、まず私が【受難の代替者】を発動させてキアさんを担いで助走をつけてジャンプ。
次にキアさんが持っているフックショットでブランコのように高速移動。
このあたりで敵の攻撃が来ると思われるので私が防いでそのままキアさんが私を手放しあいつに大ダメージを与える…
私はあいつを倒すためならキアさんの踏み台で構いません、痛いのはそんなに苦じゃないですし、追撃さえなかったら自分で回復できますし。

…私は何があってもキアさんの指示に従います。


キア・レイス
カルティーチェと挑む。

さて、カルティーチェにはいろいろそれらしい事は言っておいたが…後半は嘘。
フックショットで飛ぶまでは打ち合わせの通りだが、敵の攻撃を受けるのは私だ。
そもそも、飛んでいる間に攻撃を受けたら勢いが反動で削がれてしまう。
攻撃が来る直前を見切りカルティーチェに【人の身に余る火砲】を託して投げ飛ばす。

ここから先はカルティーチェの予想だにしていない未来だ、もちろん私も、白騎士はどうだか知らないが…
「当たると思ったら撃て!」
これだけはカルティーチェに痛みを押してでも言わなきゃならないが…慌てて予想外の行動を起こすカルティーチェが目に浮かんで少し笑いそう。
…戦う前に彼女の薬を借りておくか。



●意表
「敵は恐ろしく強い相手、生半可では勝てないのはわかりきっています。だけれども、自分よりも強くて頼りになるキアさんと一緒ならきっと大丈夫だって信じます!」
「抜かるなよ、カルティーチェ。どんな状況でも、作戦は完遂するぞ」
「今度の相手は二人か。良いだろう、束になってかかって来るが良い。貴様達の息の根を止める手間も省けるというもの。お前たちの動きは既に『視た』。結果は既に私にとって分かり切っていることだ」
 次いで現れたのは、カルティーチェ・ルイナ(自己犠牲の悦楽を知る者・f10772)とキア・レイス(所有者から逃げだしたお人形・f02604)の二人組。彼女たちは既にディアブロに対しての方策を打ち合わせておいたらしい。
 二人の足取りには迷いはなく、ディアブロに向けてフェイントをかけながら走っていく。そしてカルティーチェは戦闘開始からすぐに【受難の代替者】を発動し、二人が避けきれない敵の攻撃だけ自分の身体を盾にして受け止めた。
 未来を予測している攻撃は回避すること自体困難だ。しかし、防ぐことに重点を置けばその被害を最小限に留めることができる。
「総ての負いを私の小さな身体で受け止めます。キアさん、こちらの準備はいつでも」
「助かったよ、カルティーチェ! では始めるぞ!」
 彼女たちの作戦は、【受難の代替者】を発動させたカルティーチェがキアを担ぎ、助走をつけて大きく飛び跳ねることから始まった。
 そして次に繰り出されるのは、キアの持つフックショットの鉤爪付きロープをその空間の天井に突き刺すことで行う、ブランコのような高速移動だ。助走を付けた二人は空中でさらに加速をつけ、ディアブロへと相対していく。
「悪くない動きだ。それならば一方が移動と防御に集中する間に片方が攻撃に集中できる。だが、その動きも既に読んでいる。猟兵よ、未来を視た私の攻撃をどう受けるか今一度見せてみよ」
「私はあいつを倒すためならキアさんの踏み台で構いません、痛いのはそんなに苦じゃないですし、追撃さえなかったら自分で回復できますし。……私は何があってもキアさんの指示に従います」
 彼女たちが取った作戦とは、超高速機動を行っている最中に行われるであろう敵の攻撃をカルティーチェが受けて防ぎ、そしてキアが大ダメージを与えるというもの。身体強化を行ったカルティーチェが守り、そして攻め手に優れるキアが攻撃を行う、攻守に分かれた妙案だ。
 ……そのように、カルティーチェは認識していた。
「さて、カルティーチェ。色々言ったが……実は、後半は嘘なんだ。敵の攻撃を受けるのは私なんだよ。そもそも、飛んでいる間に攻撃を受けたら勢いが反動で削がれてしまうだろう? 後は頼むぞ」
「えっ……キアさん?! そんな、私ならともかく身体を強化していないキアさんが受けるなんて無茶じゃ……!」
 敵の未来位置を読み、機動の場所を判明させるレーザーが、二人を無情にも襲う。だが、その時起こったのはカルティーチェにとって予想もしていないことであった。
 強力な熱を伴って襲い来るレーザー攻撃が来る直前、キアはそれを見切ってカルティーチェに【人の身に余る火砲】を託し、空中で投げ飛ばしたのだ。実際に敵の攻撃を受けるのも、強力な攻撃を放つのも、役割はすべて逆だったということ。
「さて、ここから先はカルティーチェの予想だにしていない未来だ、もちろん私も、白騎士はどうだか知らないが……。これでやれることはすべてやったさ。外すなよ、カルティーチェ!」
「残念だ。残念だよ、猟兵。貴様等の行った工夫は大したものだ。しかし、私は貴様等の意思を読むのではない。私が読むのは純然たる『未来』だけなのだ。だから、その動きもすでに『視た』。そして、貴様らに放つ宣告はこうだ。『右眼だけを閉じ続けよ』」
 カルティーチェは動揺の中でキアから託された12㎝砲を決して離さない。それはキアから託され、唯一残った攻撃手段であるが故だ。そして投げ飛ばされた彼女が照準の中で見据えるのは、今まさに身を挺してカルティーチェを庇うキアへと【収束する運命の白光】を放とうとする白騎士の姿であった。
「ぐあああアアアアア……ッッッ! カルティーチェ……ッ! 当たると思ったら撃て!」
「キアさん……!! うわああああああっ!!」
「後は、この砲撃を受けきってやるだけだ。どの未来でも私は貴様らの砲撃を避けることは叶わなかったからな。良い工夫、良い隙の付き方だ。だからこそ……来い。私は逃げも隠れもしない」
 白騎士の放つレーザーが、キアの身体を無情に焼き尽くしていく。そしてその上で、彼女は白騎士の課すルールを宿してしまった。それは『右眼だけを閉じ続ける』というもの。簡単な命令ではあるが、しかし、その命令は左目に傷を受けているキアにとっては致命的なものであった。
 二つの激痛が彼女の精神を苛み、意識は既に途切れる寸前だ。だけど、これだけはカルティーチェに痛みを押してでも言わなきゃならない。
 レーザーの攻撃を直接直に受け、そして目を閉じないことで及ぼされる激痛にも耐えて相当なダメージを受けながらも、キアはカルティーチェに指示を飛ばす。砲撃の指示を、だ。キアはこの作戦を立てた時点で激痛への覚悟をしていた。戦闘前に飲んだ痛みが収まる効果のある薬も、彼女が意識を繋げるのに一役買ったのだろう。
 そして、カルティーチェに託された砲が光り、白騎士へ榴弾が向かっていく。その弾は確かに白騎士の鎧へと過たず飛んでいった。猟兵たちはレーザーを放った直後の白騎士を確実に捉え、榴弾が白騎士を傷付けていく。
 しかし、それでも白騎士は未だ五体満足の状態で立っている。土埃と硝煙の中で佇む白騎士は、未だ無事なカルティーチェに迫りながら猟兵たちへ言葉を投げる。
「貴様等の敗因は、優れた壁に守らせず、優れた砲に攻めさせなかったことだ。こちらの意表を突こうとしたその工夫は良い。だが、それで貴様らの長所を捨ててしまっては本末転倒というもの。素晴らしい砲撃ではあったが、砲撃は慣れた人物が行うのが最も良いはず。そして防御も同じことだ。身体を強化していない身で私の攻撃を受けたのだ、そちらは最早この戦いで立ち上がることすらできないだろう。良い敵であったが故に……本当に残念だ」
「ッッ……クッ! カルティーチェ、一度引け!」
「く……! やはり、一人では……!」
 そして、白騎士は傷を負いながらもカルティーチェに攻め入っていく。スラスターによる高速機動の中から繰り出される斬撃の数々は彼女を捉えて、戦況はまた白騎士が優位になってしまった。
 だが、敵も無敵ではない。二人が与えたダメージは、確かに白騎士の中に残っているはずだ。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

エン・ジャッカル
未来を読んで行動してくるのはかなり厄介ですね。そして、必ず先制攻撃を繰り出してくるのであれば、必然的にカウンター戦法を取らざるを得ません。相手が繰り出してきた攻撃を対処し、その攻撃による僅かな硬直を狙って攻撃を繰り出してみようと思います。

防御面ではアヌビス号の装甲は光線や高熱に対する耐性はありますが、白騎士の力はどれぐらいあるのかは分からないが故に全ての攻撃を受け切るのはリスクが高いと考えれますので、Aマシンヘルムによる危険察知機能で攻撃を察知し、ブースターで瞬間移動して回避するか、無理であればシールドガンで受け流す方面で行ったほうがいいかもしれません。

それにしても、白騎士はかっこいいですね。


荒谷・つかさ
未来を読むなんて、インチキ臭いったらありゃしない。
でも、ここまで来たからにはやってみせるわ。
お前が読む未来の先を、私が斬り拓く……!

携えるは風迅刀一振り。
この刀、圧縮空気を纏うことで光を歪曲し、透明な不可視状態としているんだけれど、
光を歪曲できるなら、光の束であるレーザーも歪曲する力があるはず。
つまり「レーザーを【剣刃一閃】で切り払える」はずよ。

接近は真正面から真っ直ぐ。
敵の発射口から目を逸らさずに。
変に回避するより、どこに撃たれるかわかりやすい分切り払いもしやすいわ。
連射されても私の「早業」で全部斬ってみせるわよ。

斬って斬って斬り払って。
最後はその銃口に【剣刃一閃】を叩き込んでやるわ。



●勝ちの目を増やせ
 時は作戦開始前。転送の直前、ほぼ同時に居合わせたエン・ジャッカル(風来の旅人・f04461)と荒谷・つかさ(焼き肉担当・f02032)は白騎士の対策をどうするかについて、少しの間だけ作戦会議を行っていた。
「未来を読むなんて、インチキ臭いったらありゃしない。でも、ここまで来たからにはやってみせるわ。だけど、ヤツを相手取るには具体的な方策も必要、か……。エンの方で何か思いついていることはある?」
「そうですね……。未来を読んで行動してくるのはかなり厄介ですね。そして必ず先制攻撃を繰り出してくるのであれば、必然的にこちらはカウンター戦法を取らざるを得ません。なので、私は相手が繰り出してきた攻撃を対処し、敵の攻撃による僅かな硬直を狙ってこちらから攻撃を繰り出してみようと思います」
「成る程、カウンター……。後の先って訳ね。……そう言うことなら、この刀。圧縮空気を纏うことで光を歪曲し、透明な不可視状態としているんだけれど、光を歪曲できるなら、光の束であるレーザーも歪曲する力があるはずだと思うのよ、それで……」
「それは面白いですね。では、私が受けている間に荒谷さんは距離を……」
 二人は自身の考えを互いに正直に包み隠さず話し、会議はシンプルによどみなく進んでいく。
 そして、二人はその場所へ赴く。戦火浴びる鉄火場へ、一人の旅人とその愛機が。一人の剣豪とその愛刀が向かう。

「ここが戦場、そしてあれが白騎士ですか……。確かに凄まじいプレッシャーを感じます。それにしても、白騎士はかっこいいですね」
「お褒め頂き恐悦至極。だが、貴様らはここに私と言葉を交わしに来たわけではあるまい。これ以上の問答は刃と砲撃にて。ここまで来て否やはあるまいな」
「ええ、無論よ。私たちはここにお前を倒しに来た。お前が読む未来の先を、私が、私たちが斬り拓く……!」
 彼らが問答を繰り広げたのは束の間であった。なぜなら、白騎士が自身の言葉を言い終わらない内からレーザーを開始してきたからである。当たればルールを押し付けるその波動の狙いは、エンとつかさの胴体だ。
 猟兵に向かって飛来してくるその熱の波動を、しかしてエンは愛機である宇宙バイク、アヌビス号を即座に駆って直撃を避け、堅牢な装甲で受けていく。同様につかさも腰元の愛刀、風迅刀で敵の熱と光を立ちどころに斬り裂いていくではないか。
「ほう? どうやら私のレーザーを防ぐものが出てきたか。面白い、ならば……私の剣技で葬られることをこそ誉と思うが良い。では……いざ参る」
「荒谷さん、いよいよ来ます! 敵の剣は私が! モードチェンジ!」
 剣戟の音が、虚空に走る。白騎士ディアブロはスラスターを駆使して高速移動を行い、フォースセイバーの両側の刃を手首の返しと腕の押し引き、そしてサブアームも用いての高速乱撃をエンに仕掛けた。
 だが、エンも負けてはいない。ユーベルコード【モードチェンジ・アーマー】を発動した彼はアヌビス号と文字通り一つになると、3m強の大きさの巨大ロボとなって白騎士の攻撃を受けていく。
「先ほどのレーザーをいなすとはな。その装甲、大したものだ。高熱に対する耐性でも持っていると見えるが……では、私の剣技ではいかがかな?」
「っく! やはり、白騎士の全ての攻撃を受け切るのはリスクが高い……! そう、長くは持ちませんね……!」
 再度突き、そして手首の返しからの薙ぎ。更に逆側に手首を返しつつ腕を引きながらの逆袈裟。白騎士の剣技はまさに千変万化もかくやという所。しかし、エンは戦法をほぼ全て敵の防御に規定していた。その結果、彼もまた見事に敵の攻撃を捌いていく。
 Aマシンヘルムによる危険察知機能で攻撃を察知したエンは、繰り出される突きをブースター改による瞬間的な加速で横へ避け、範囲の広い薙ぎ払いはシールドガンで光波を噴射し、敵の刃の側面に衝撃を当てては受け止めるのではなく受け流していく。受けきれない逆袈裟は厚い装甲で無理やり受けに行き、自身への被害を減らす巧みさだ。
「ありがとう、やるわね、エン……! この距離ならば!」
「私が貴様の攻撃を見ていないとでも思っていたか? 甘いぞ、猟兵。私は貴様にレーザーを放つ。そして、それを貴様は避けきれない。その未来はもう『視た』。どう防ぐか見せてみよ」
「逃げられた……!? 白騎士の砲撃、来ます!」
 至近距離で白騎士と組み合うエンの巨体で射線を切り、勢い良く飛び出したつかさが携えるは風迅刀一振り。そんな彼女に向けて、白騎士ディアブロは未来を視てきたと言い放つと組み合っていたエンへ膂力をたっぷりと乗せた袈裟斬りを行って彼と距離を取る。
 そして、その上でスラスターを最大限に吹かしてわずかに後退。エンが守り、つかさが飛び出した奇襲を防ぐと同時に、自身のレーザーの射線を二人に通してみせた。そして、二人を光が連続して襲う。
「知っていたわ、未来を視られているだろうってこともね。なら、変に回避するより、良く見極めてやれば……! どこに撃たれるかわかりやすい分切り払いもしやすいわ!」
 だが、つかさはそのレーザーを避けようとはしなかった。彼女はエンの正面に立つと、敵の発射口から目を逸らさずに敵の熱線兵器を自身の刀でたちどころに切り捨てていくではないか。
 【剣刃一閃】。近接斬撃が命中したものを切り裂くその力は、レーザーすらも例外ではない。
「……良い太刀筋だ。なるほど。躱すのではなく防ぐか。良い発想だ。斬撃の力を守りに回すとはな」
「やりますね、さすが……! 私も負けてはいられないですね。アヌビス号!」
 そうして白騎士の攻撃を斬って、斬って、斬り払って。エンとつかさは彼との距離を徐々に徐々に詰めていく。彼らの間合いが最早砲撃ではなく刃の方が適正である頃に入った時、エンが動いた。
 彼は白騎士の砲撃の間隙を縫って前に出ると、マニュピレーターによる直接攻撃を選択したのだ。狙いは彼の頭部である。
「甘い……! が、……ッチ、手が足りぬか……!」
「この好機を無駄にするわけにはいかない……! まずは一手! 貰ったわ!」
 エンの攻撃を無視するわけにはいかず、白騎士はサブアームでフォースセイバーを操り、彼の攻撃を受け止める。だが、その隙につかさの風迅刀が圧縮空気を纏って唸った。
「頭部への攻撃と銃口への同時攻撃は読んでいた。……ダメージは貰ったが、まだレーザーを撃てなくなったわけではない! 貴様等の奮闘に敬意を払おう。仕切りなおすぞ、猟兵……!」
 二人の協力が、見事敵の銃口に【剣刃一閃】を叩き込んでみせたのだ。敵への直接的なダメージはほぼないが、これで敵はレーザーを連発することはできなくなったはず。猟兵たちの勝ちの目が徐々に出てきた形だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

聖護院・カプラ
デストロイマシン、白騎士ディアブロ。
同じウォーマシンと言えど直接戦闘力の彼我差は五十歩千歩といった所。

私に撮影ドローンによる疑似的な未来予想に勝る能力はありませんが、
デストロイマシン零式の発動中には徐々に強化されるレーザーやサ―ベル攻撃が行われるのみ。

苦戦を免れない事には変わりませんが、私達猟兵にはドローンではない宇宙の人々の自由を望む意志が付いている。
『宇宙の意志』の声を受ける事によって私、聖護院カプラもディアブロと同時に強くなっていくのです!

人々の声援と存在感は白騎士、貴方を飲み込みやがて銀河皇帝の行いをも改めさせましょう。
後光により闇を溶かし朝で世界が満ちる時、宇宙の黎明となりましょう。


リダン・ムグルエギ
未来を見据える騎士…実にいいデザインだわ
でもアタシは未来を超える過去…事前準備の力で対抗ね

回避不能な一撃なら
「相手に致命的でない部位を狙ってもらう」
それが今回のデザインよ

作るのは「錯視防具」
ワイヤーで偽の体の輪郭を作った、実際より一回り大きい体つきに見える二重服を準備
ポイントは一見の体の中心と着用者の本当の中心がズレてる事
心臓狙いでも即死は避けられるし体の無い部分に当たる事も?

加えて模様や服の色合いで錯視を作り
位置をドローンに誤認させたいわ
可能なら同行者へも配るわ

アタシの攻撃はドローンの無力化と精神攻撃
即死を避けて得た時間で
そのカメラと未来予測を全て平和な宇宙の蒼で塗りつぶし、次へつなげるわ!



●存在感と錯視
「デストロイマシン、白騎士ディアブロ。同じウォーマシンと言えど直接戦闘力の彼我差は五十歩千歩といった所。油断は大敵という所。リダンさん、今回はよろしくお願いいたします」
「未来を見据える騎士…実にいいデザインだわ。でもアタシは未来を超える過去……事前準備の力で対抗ね。カプラさんの邪魔はしないよう頑張るわ。よろしくね」
 次に現れたのは聖護院・カプラ(旧式のウォーマシン・f00436)とリダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)の二人。ほぼ同時にこの戦域へと到着した二人は、白騎士を見据えるとそれぞれの戦略を組み立て始める。
 二人の一挙手一投足に迷いはない。彼らの表情は、自身にやれることが限られていることを知っている。その上で、自身の強みを理解している。そんな自信に満ち溢れていた。
「次の相手は貴様らか。来るが良い。貴様等も先ほどまでの猟兵と同じく、確かな強敵であることを願うぞ。ドローン共、来い」
 新たな猟兵の登場に、白騎士も最後のユーベルコード【デストロイマシン零式】の発動を行っていく。彼の生み出した66機の動画撮影ドローンは戦闘力を持ち合わせていない。
 だが、白騎士が活躍や苦戦をする度、正確無比な未来予想シミュレーションを行っては敵の力を際限なく高めていくという、猟兵たちにとっては厄介に過ぎる代物だった。
「私の未来予想、崩せるものならば崩して見せよ。貴様等にとってはまだ未来は白紙なのだろう? 望む未来があるのなら、まずは私の攻撃を受けてもらおうか」
「ここは私が。リダンさんは自分の仕事に集中致しますよう。……苦戦を免れない事には変わりませんが、私達猟兵にはドローンではない宇宙の人々の自由を望む意志が付いている。ならば……!」
 白騎士はレーザーによる攻撃を散発的に行いながら、猟兵たちに向けて急激な加速を行う。先ほどの戦いで傷を付けられたレーザーキャノンはどこまで持つかというところ。そのため、敵の戦法から高速機動を活かして遠距離でひたすらに撃つという選択肢はなくなったのだ。
 必然的に彼が取る積極的攻勢は、猟兵たちへとけん制としてのレーザーを放ちながら距離を詰め、フォースセイバーによる接近戦を仕掛ける形が主となる。だが、それが分からない猟兵ではない。
「こうしてけん制としてでもレーザーを放てば、その分私の未来予想シミュレーションは完璧なものへと近付く……! 私のレーザーを全て避けきれると思うなよ、猟兵。貴様らは『私の攻撃を避けきれない』。それは現時点での未来予想でさえ明らかなことだ!」
「――ええ、そうだと思ったわ。未来を読む貴方が放つ攻撃は回避不能な一撃になるでしょう、ってね。でも、それならそれでやりようはあるのよ。カプラさん! アタシを信じて突っ込んで!」
「ええ、信頼しておりますとも。委細承知」
 しかし、強敵がその力を惜しげもなく披露して眼前に迫り来ようとも、リダンもカプラも臆することはない。それは自分たちのやり方に、ゆるぎない自信があるためだ。
 白騎士の砲撃に怯まず、カプラは後光を放ちながらそのけん制を見事に避け、避けきれないものは装甲法衣が傷付くことすら恐れずにただただ往く。後衛に位置するリダンも、砲撃の射線を見切ると回避行動もとらずに敵の攻撃を受けていくように『見えた』。
「……手応えがないな。余りにも。何か仕込んでいるという訳か、面白い。ならば、その工夫すらも越えてみせよう」
「作ったのは『錯視防具』……! それが今回のデザインよ。初撃は上手くいったみたいね」
 リダンが行った今回の工夫。彼女なりの剣、彼女なりのブレイドアーツは、『相手に致命的でない部位を狙ってもらう』というもの。彼女が戦闘前に作成した服は、ワイヤーで偽の体の輪郭を作った、実際より一回り大きい体つきに見える二重服。
 このポイントは、一見の体の中心と着用者の本当の中心がズレてるという点にある。既にその衣服はカプラにも渡っており、二人はそれによって『自分の攻撃が猟兵へ着弾した未来』を未来予想シミュレーションで視た白騎士の認識をすら騙して見せたのだ。未来の情景を視ていたとしても、錯視によって認識自体が狂わされていれば意味のないこと。リダンの工夫が、値千金の一瞬を生み出した。
 生み出された一瞬の隙をついて前へ出たカプラは、白騎士をその巨体全てを使って受け止める。旧式のウォーマシンと最新鋭の装備を纏った白騎士は砲撃の間合いの中、剣戟の間合いよりもさらに至近、正に徒手にて組み合っている状態だ。
「させません。私に撮影ドローンによる疑似的な未来予想に勝る能力はありませんが、デストロイマシン零式を発動している貴方は徐々に強化されるレーザーやサ―ベル攻撃を行うのみ。リダンさんが成し遂げるまで、私に付き合っていただきましょう。なに、ほんの少しの間ですとも」
「……貴様……面白い! 古臭い骨董品風情が私と互角にやり合えると思っているのか! 力比べを望むというならば、望み通りに力で粉砕してやろう!」
 カプラと白騎士の力の差は歴然としている。二つの腕で組み合った白騎士は、スラスターも用いて全力でカプラを押しつぶそうとしているのだ。その目はもはや彼しかとらえていない。
 まるで、『リダンの姿が見えないよう』。まるで、『カプラから目が離せないよう』だった。
「良し、上手くいったか。アタシの錯視とカプラさんの存在感……相性は抜群ね」
 リダンの纏うGOATiaの服に施されたのは、錯視の魔法。模様や色合いで自分の位置を誤認させる彼女は難なく敵のドローンに近付くと、服飾師の糸の先端についた縫い針でドローンを瞬く間に落としていく。
 彼女は即死を避けて得た時間で、最小限の動きで、敵の未来予想シミュレーションとそれによってもたらされる戦闘能力の強化を剥がしていく。
「カメラと未来予測……! 全て平和な宇宙の蒼で塗りつぶし、次へつなげるわ! カプラさん、そろそろ良いわよ!」
「お待ちしておりました。私を通して出る存在感は――既に、此処許に」
「な……ッ! 私が押されるだと……ッ! バカな! 旧式のガラクタに、私が負けてなるものかよ……ッ!」
 ここに響くは希う声。救いを求める無垢なる呼び声。カプラが発動していた【宇宙の意志】は、宇宙に生きる人々をここに召喚して彼らの声援を受けて自身を強化するユーベルコード。
 そして、白騎士は気付いていない。聞こえていないのだ。自身を強化するドローンがリダンによって須らく破壊されていることも、カプラの背後に現れた猟兵たちを信じる希望の声も。目の前の一機、ただ一機から目が離せない故に。
「私に目を取られて気付かなかったでしょう? 自由と平和を愛し、宇宙に生きる彼らの声を受ける事によって、私、聖護院カプラもディアブロと同時に強くなっていくのです!」
「ぐ……ッ! 左マニュピレーターが……チィ! そうか、いつの間にか私も術中にはまっていた、という訳か……! 認めよう、貴様らの強さを! 腕の一本、持っていけ!」
 そして、カプラは組み合った白騎士との力関係を覆していく。後光により宇宙の闇を溶かし、朝の光で世界が満ちる時だ。宇宙の黎明はすぐそこにある。
 白騎士の左腕はリダンとカプラの活躍によって破壊された。白紙の未来へ。勝利の未来へと、猟兵たちはまた一歩近づいたのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

玄崎・供露
未来操作、未来予知および未来予想……はん。最新鋭極まれりって感じだなァ、おい。銀河帝国の超技術ってか。ざけやがって。

けどな。その優秀さが命取りだ。命取りにしてやるってンだよ。ヤツのクソ厄介な未来予測レーザーをダメージ覚悟で受けて……ユーベルコード発動条件を満たす。レーザーの即時反射と同時に借用分も発動する。

俺が宣告するルールは『未来について予想、及び予測をしてはいけない』――今を一生懸命生きましょうねってことだ。

反射した分にゃたぶんアイツの命令が適応されるンだろうが……さて、どうなるかね。自業自得になりゃあそれで十分笑えるわ。……ま、両方当てるつもりではいるけどな。

※アドリブや連携など自由に


シャレム・アルカード
未来を読むか。
ふむ、動かなければ良いのではないか?
どうせ当たるモノを避ける算段など我はしたくないぞ。

対レーザー用に【武器改造】で武装にコーティング加工を施し、我の魔力による【オーラ防御】で重ねて対策はとる。
『タイタン』を備えた『ヘカトンケイル』を盾にし一撃は何とか防いで見せよう。

こちらへ撃っているということは、我を見ているということ、防ぎながら【輝ける宵の明星】を発動、後光を当てて奴へ命令を行う!
えーと、撃つな動くな未来を読むな!
ルールを破ったダメージをうけようと、命令により奴の動きが少しでも鈍ればこちらのもの、我は一人で戦っているわけではないのだからな。
だがそれはそれとしてマントで腕を狙う!



●制約を受けるのは
「未来操作、未来予知および未来予想……はん。最新鋭極まれりって感じだなァ、おい。銀河帝国の超技術ってか。ざけやがって」
「未来を読むか。ふむ、動かなければ良いのではないか? どうせ当たるモノを避ける算段など我はしたくないぞ」
「不満があるならば来い。想定があるなら試せ。私はその結果を貴様らに与えてやるだけ。立ち止まってむざむざ攻撃を喰らってやる気はないぞ。……ドローン、来いッ!」
 白騎士が持つ武装で充分に動くのは、右のマニュピレーターにサブアーム、そしてフォースセイバーのみ。彼の左腕は既にボロボロに握り潰され、レーザーキャノンはそう長くは使えない。
 しかし、それでも彼は猟兵に向かって攻撃を仕掛けていく。玄崎・供露(テクノマンサー・f05850)とシャレム・アルカード(小さな暴君・f09897)の二人に対して未来予想シミュレーションを行うドローンを再度召喚した彼は、スラスターで加速を行いつつ猟兵の隙を伺っていく。
「同感だぜシャレム。アイツの武装はクソ優秀だ。けどな、その優秀さが命取りだ。命取りにしてやるってンだよ。ヤツのクソ厄介な未来予測レーザーをダメージ覚悟で受けてやる。そしたら後は反撃だ。簡単な話だろうが。合わせろよ」
「うむ。反撃の手段であれば我にも考えがある。やるぞ、供露とやら。なに、後の先を取ることなど大公たる我にとって簡単なことよ! 伊達に70年生きとる訳ではないのでな!」
「話は終わったか? では、受けよ。ドローンの未来予想シミュレーションでは、貴様らは『自身に向けられたレーザーを防御しきれない』はず。どう反撃を行うか見ものだな……!」
 そして、白騎士は傷の入ったレーザーキャノンを無理やり起動しては二発の熱線を放った。
 敵の未来位置に向けて放たれる制約の光が、供露とシャレムに向かって過たず飛んでいく。その軌道は彼らの想定よりも深く、鋭く、元々用意しておいた防御策を越えてくるやもしれぬ、といったものだった。だが、それでも猟兵たちはひるまない。
「シャレム! 分かってンよな!?」
「応とも! 貴様こそ抜かるでないぞ!」
 敵の光に向けてシャレムが動く。彼はこの時のために予め対レーザー用に武装を改造していた。コーティング加工を施し、自身のオーラ防御すらも重ねてレーザーへの対策を取る。
 封縛鉄鎖『タイタン』に吸収型スチームシールド『アイギス』を備えた彼の武器、武装収容棺『ヘカトンケイル』を巨大な盾として前へ出し、受け止めていくのはシャレムではなく供露へと放たれている光。
 そしてシャレムの後ろで手を伸ばし、ヘカトンケイルでは防ぎ切れない角度からより来て彼を狙うレーザーを防ぐのは供露だ。呪刻印(ヘックスドライバー)で自分の恐怖を薄めた供露は、怯まずに見事シャレムへと注がれるレーザーをその身で防御しきって見せた。
「自分への攻撃ではなく、味方への攻撃をかばいあったか。……だが、甘い。防御したとて、貴様が私の宣告の光を受けたという事実に変わりはない! ルールを宣告する! 『ユーベルコードを用いるな』!」
「バカが、遅いンだよ! 返してやるよ、テメェのルールと一緒にもう一つ! 俺が宣告するルールは、『未来について予想、及び予測をしてはいけない』! ――今を一生懸命生きましょうねってことだ。……アア、クソ! いッてェなァ!」
 敵の攻撃をダメージ覚悟で受け、反射して見せた供露は、ユーベルコード禁止の制約も意に介さずに自身の超常の力を惜しげもなく使っていく。彼の身体を激痛が襲い、レーザー自体のダメージと制約を破った痛みが彼の身体の中で暴れまわる。
 だが、痛みに耐えて供露はユーベルコード【二度手間】を放つ。彼の指先から放たれるのは、『未来予想の禁止』の制約。そして彼が反射するのは、白騎士の放った『ユーベルコード禁止の制約』だ。
「良くやった、褒めて遣わす! では、我の攻撃も受けてもらおうか、白騎士! 我の溢れ出るカリスマにひれ伏すがいい! えーと、撃つな動くな未来を読むな!」
 そうしているうちに、シャレムも同様にユーベルコードを発動していく。彼の力は【輝ける宵の明星】。後光を当てた敵を強固な上下関係でつなぐその技は、供露の放った二種類の制約と同時に襲い掛かって白騎士の動きを拘束せんと迫る。
「三つの光……! この身体で防げるのは一つ、か……! ……それならばッ!」
 文字通り光速で襲い掛かる三つの制約に対し、白騎士が打ち払うことを選択したのは、自身の放った『ユーベルコード禁止の制約』。これからの未来予知を禁止されたとしても、ドローンがある限り彼の戦闘の能力は今までのシミュレーションの結果で向上している。
 であれば、ドローンを消し去ってしまうこの命令こそ避けるべきだったのだ。供露からの制約を弾いても、シャレムの制約に未来に関する禁止が組み込まれている以上それ自体にさしたる意味はない。そして、シャレムのユーベルコードの効果は白騎士にとって一時的なものだ。その間であれば、やれることはある。
「ああ、貴様たちの言う通りにしてやろう。私はしばしの間撃たぬ。ここより撃たぬ。未来も読まぬさ。だが、それでも私には……片腕と、サブアームと、そしてこの剣がある。さあ、来るが良い」
「言うが良いわ! 命令により奴の動きが少しでも鈍ればこちらのもの、我は一人で戦っているわけではないのだからな! 供露ッ! 一合だけでよい、付き合えッ!」
 シャレムの纏うマント、夜の帳に魔力を流し込まれていく。硬質化させたそれを刃のように操り、シャレムは単身白騎士の刃を受け止め、時にマントで斬りかかっていく。だが、敵にダメージを与えるには及ばない。
 敵の実力、そして剣技は一人の猟兵を凌駕する。シャレムも的確に白騎士の攻撃を防ぎ、また攻め込んではいるがどうしても一手足りない状態だ。だが、猟兵は独りではない。
「両方当てるつもりではいたけどな。さすがに強敵ッてことか。だけどよォ……ユーベルコードを封じられるッて未来は見えてたかよ、オイ! お笑いだな、テメェの自業自得だぜッ! シャレムッ!」
「分かっておるわ! 左を狙えッ!」
 そこに斬りこんできたのはボウイナイフを持った供露。彼の持つ黒刃が状況を動かすべく、敵の腹に向かって真っ直ぐ突き進んでいく。白騎士の左腕が動かない今、敵がその鋭い攻撃を受け止めるには一瞬遅れざるを得ない。
 右腕を戻し、手首を返して黒い刃を払ったことで生まれたわずかな隙を、シャレムは見逃さなかった。左側をカバーするために空いた白騎士の胴に向かって伸びるのは彼のマント。装甲の薄いサブアームの肘部分を見事に斬りつけると、二人の猟兵はそのまま白騎士から距離を取る。
「……フ。中々やる! 良いだろう、この状況を切り抜けられるのならばサブアーム如きは捨てよう。制約の多重攻撃……見事であった。面白いぞ、猟兵。貴様等は……私を楽しませてくれる!」
 白騎士の行動が制限されている間に自分たちに出来得る限りのダメージを与え、仕切りなおした彼らに向けて白騎士が言葉を紡ぐ。制約は長続きしないが、敵のサブアームは最早機能しないだろう。
 敵の行動の選択肢は、徐々に徐々にではあるが確実に切り取られていった。猟兵が敗北する未来への分岐が、また一つ、二つと減っていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神羅・アマミ
未来を操作じゃと?おもしれー!
どんなに上から目線で先を見通したつもりになっても、てめーの運命だけはわからなかったようにしてやんぜーッ!

奴のファイティングコンピュータを狂わせる方法とは即ち「死なないこと」、その一つに尽きる!
よくあるじゃろ、「馬鹿な…折れた方の脚で蹴ってきただと!?」とか「何故だ…奴の生命活動はとっくに限界を迎えているはず!」とか。

未来が視えるということは、奴にとってもあり得ない戦慄の光景が広がるということ。
そして妾が死なない限り、その悪夢のビジョンは永遠に続き、繰り返され、奴の意識を苛むこととなる!

畏怖や怯えの感情を僅かでも起こせれば、それが勝利の糸口になる気がするんじゃよー!


ゲンジロウ・ヨハンソン
○アドリブOK
○他猟兵と連携OK

○先制攻撃への対応
並みの防御じゃ防げねぇ、放てば必中…とみて相違ねぇじゃろ。
とくりゃ『当たっても動ける状態にする』が正解かね。
ちゅーてもわしゃ超人じゃねーんでね。一般的な解法で行くとするかのぅ。
純粋にコチラの人数を増やすとすっかね。
先制攻撃であろう●収束する運命の白光 の発射から着弾のつかの間に【選択したユーベルコード】を発動。
白騎士のルール宣告は素直に従おう、わしはな?
後は結果を御覧じろ、蒼衣の剣士の剣技が白騎士に通用するかじゃな。

○攻撃
蒼衣の剣士の攻撃で隙ができりゃ追撃じゃな。
この実力差じゃ、できて一発じゃろ。
蒼衣と一緒に【捨て身の一撃】を叩き込むとすっかね


セゲル・スヴェアボルグ
ドローンによる撮影で奴が強化されるなら、そのドローンを減らしてしまえばいい。
剛勇ナル手勢で召喚できるのは51人か。一人一機とまではいかんが、どいつも精鋭ぞろいだ。一人二機ぐらいなら何とかなるだろう。ドローン破壊の指示は指揮官に任せる。余った兵はひとまず俺の護衛だ。最低限、ドローンを破壊しつくすまではな。
そのあとは兵を猟兵のサポートに回らせつつ、指揮官は他の猟兵達と同様に攻撃をさせよう。俺ができることは大概こなせるから、何の問題もないな。
当然、俺がダメージを受けてそうな場合は自身で殴りに行く。
奴の攻撃を直接受ける前に、兵に俺を軽く傷をつけさせればロスも少ない。
ほぼ万全の状態で奴に挑むとしようか。


ウルフシャ・オーゲツ
ウチの身体はどこにそれだけ物が詰まっておるのかと言われておるブラックホール、白騎士とは対局、二大巨頭とはウチの事じゃ!
……黒騎士?知らんな。

お主は未来位置に攻撃をするんじゃったか?
さぁ未来を見るがよい、……見えたか? ウチが爆散するその様を。そして、その先が見えるか? 見えまい? そうしてお主は敗れるからじゃ!!

実際はウチの時空を歪める一撃で未来が不透明になるだけじゃがな!
しかしそうなれば他の仲間の助けにもなるじゃろう。

それに、すべてを砕く流星の一撃はかすったとしてもただでは済まぬぞ。
ウチが大食いでためにためた質量兵器、全部ぶつけてやろうではないか!

……あ、すまん、回収は任せた。手も足もでぬ。



●未来予想のその上を
「ギャハハハー! 未来を操作じゃと? おもしれー! どんなに上から目線で先を見通したつもりになっても、てめーの運命だけはわからなかったようにしてやんぜーッ!」
「わはははー! ウチの身体はどこにそれだけ物が詰まっておるのかと言われておるブラックホール、白騎士とは対局、二大巨頭とはウチの事じゃ! ……黒騎士? ……いや、その……知らんな」
 宇宙空間のそこ、白騎士と猟兵しかいないその空間に、響き渡る二つの笑い声がある。神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)とウルフシャ・オーゲツ(しょしんしゃ・f00046)のそれだ。
 彼女たちは正に意気軒昂、圧倒的な力を持つと目されている白騎士と相対するその時であっても余裕を崩さない。その目は確かな知性の光を湛えている。
「おいおいお前さんら、そろそろ真面目にやる時間じゃろうがよ。……ま、分かった上でわざとはしゃいでるなら止めはせんけどな。おう、お前が白騎士じゃな?」
「如何にも。私が白騎士。私の目の前に立つという事は、貴様等も何かしらの手立てを持ってここに立っているという事に違いあるまい。こんな装備ではあるが、今の私の感覚は研ぎ澄まされている。必ずや、全力と同じ……、いや、それ以上の『白騎士』の力をお見せ致す。では……行くぞッ! 出ろ、ドローン!」
 白騎士が猟兵たちと言葉を交わしたのはほんの数瞬のことだった。敵は、まずゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)に向けてそのレーザーキャノンを放っていく。既に彼はドローンも放ち、最初から全力の構えである。
 いつ暴発の危険があってもおかしくないその武装を用いながら、白騎士はゲンジロウの動きをまるで知っているかのように正確な射撃を行う。だが、その前に立ちふさがる影があった。
「全宇宙最強の矛たる妾が今こそ……アッおい! 最後まで言わせんかい、こンのォ……オラァァ! 何本もうざったいンじゃよォ!」
「……レーザーを弾いたのか。フッ、猟兵は化け物だな……! それでこそ、我が敵に相応しい! しかし、腕を『一本かすめた』な? 宣告を下そう。『私の攻撃を防御するな』」
 第肆歩"目録"を構えながら前へ出て、他の猟兵たちへとレーザーの被害を留めるべく特攻に近い戦闘移動を取るのはアマミだ。彼女はスラスターを駆使しながら戦闘空域を広く使ってあらゆる方向から飛来してくるレーザーを、構えた和傘で立ちどころに打ち払っていく。
 彼女のユーベルコード、【緞帳】による身体能力増強の効果が如実に表れているのだ。彼女の目、膂力、反射神経、脚力。その全てが敵の攻撃への防御のために回される。しかし、そんな彼女であっても数十の光の矢を浴びて無傷ではいられない。そして、わずかにでも当たってしまえば、それは即ち白騎士の術中にはまったという事。
「貴様ッ、卑怯な……! ガッ、ウアアアッ! 妾は、……チィィィィ!」
「好きに言え。私の未来予知では、『貴様は私の攻撃をもう避けられん』。そのまま死ぬが良い」
 アマミが矢面に立って敵の攻撃を受けているのは、それが彼女のユーベルコードの発動条件であるためだ。しかし、身体能力向上の成果を得たとしても敵の攻撃を防御も出来ずに受けていくのは、彼女にとって初めての経験だったことだろう。
 レーザーを防ごうとすれば体の内部から激痛が走り、防がなければレーザーの攻撃をそのまま喰らってしまう。さらに、敵は時間を置けば置くほどドローンによって自己強化を重ねていく。現状は八方塞がりと言っても良い状態であった。
「ドローンによる撮影で奴が強化されるなら、そのドローンを減らしてしまえばいい。こっちは任せよ。前衛はお前さんがたに任せる」
 白騎士の自己強化の方策であるドローンに対し、策を講じるのはセゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)。彼はユーベルコード【剛勇ナル手勢】を用いると、セゲルと同じ強さの指揮官と、50人からなる小隊を召喚して見せた。
「一人一機とまではいかんが、どいつも精鋭ぞろいだ。一人二機ぐらいなら何とかなるだろう。ドローン破壊の指示は指揮官に任せる。余った兵はお前さん方に任せる、上手く使え」
「なるほど、並みの防御じゃ防げねぇ。放てば必中……とみて相違なかったな。その上で制約で相手の動きを縛るとは中々面倒じゃなぁ。セゲルからの兵も上手く使って、まずは敵の攻撃を耐えるところからじゃの」
「動くか、猟兵。そうはさせん」
 白騎士有利な盤面に現れるのはゲンジロウ。彼が何かをすると察知した白騎士は、アマミの相手を途中で止めて彼に向かって奔る。スラスターを用いた全速疾走だ。
 加速を得た状態でゲンジロウに射線を通した白騎士は、そのままレーザーキャノンにエネルギーを迸らせていく。高音と高熱を伴った暴力が、ゲンジロウを襲おうとしていた。が、彼は全く怯まない。それどころか、回避行動すらとるつもりがない、といった風情だ。セゲルからの譲り受けた兵士も防御に回す気がないようである。
「何を企んでいるかは知らん。が、高速で移動をしていれば先ほどのようにカウンター狙いも通用せんぞ!」
「撃ってきな、白騎士。腕白青二才を良く狙え。ただ、その後は覚悟しとれよ」
 そして、白騎士の先制攻撃である【収束する運命の白光】はゲンジロウに向けて放たれた。しかし、彼も何もせず喰らうわけではない。敵の光線の発射から着弾のつかの間に、彼は自身のユーベルコードを発動させる。
 両者のユーベルコードはほぼ同時に発動していく。いや、ほんの僅かにゲンジロウが遅れた形ではあるが。
「覚悟など、とうの昔に済ませてきたわ。そして喰らったな、制約の光を。『貴様はこれから四肢を動かすな』! そして、畳みかける……ッ!」
「……ぐッ……ヘッ、ルール宣告は素直に従おう、わしはな? お前さんの未来予知、どうせ避けられねえなら『当たっても動ける状態にする』が正解と踏んだが、どうかね? 未来を読まれっちまうんなら、一部を守ったところで意味はないってなもんよ。せっかくの兵隊は攻めに回さんとな?」
 光と熱の熾烈な攻撃がゲンジロウの身体を灼いていく。ユーベルコードによるダメージではないものの、その発動条件であるレーザーも恐るべき火力であることは間違いない。
 ゲンジロウはルール通りに四肢を動かさず、痛みに眉を顰める。だが、それもほんの一瞬。彼がいつも通りに不敵な笑みを浮かべた時には、戦場に新たな影が現れていた。
『俺は†蒼刻の騎士†だ……刻み付けろ、我が刻剣の冴え。受けてもらうぞ、白騎士とやら』
「ちゅーてもわしゃ超人じゃねーんでね。一般的な解法じゃよ。『純粋にコチラの人数を増やさせてもらった』。後は結果を御覧じろ、蒼衣の剣士の剣技が白騎士に通用するかじゃな」
「ユーベルコードによる召喚術か。良いだろう、相手になってやる。たかが猟兵の、とはもはや言わぬ。全身全霊を持ってお相手しよう」
 動きを止めたゲンジロウに向かって飛び込む白騎士のフォースセイバーを受け止めたのは、彼が呼び出した蒼衣の剣士であった。
 ディアブロが操る二つの刃の煌めきを、蒼衣の剣士は見事に受けていく。ディアブロは手首を自在に回転させ、左払い切り、逆風、引きながらの右切り上げと流れるように蒼衣の剣士へと斬り込んでいく。
 しかし、ゲンジロウの呼び出した蒼衣の剣士はその攻撃を時に鎬で受けて鍔迫り合いに持ち込み、敵の右手の指をねじって無理やり敵の剣筋をずらしていく。仕切り直しと下がって繰り出される剣技は危ない所をかすめる刃を半身だけ移動させて避け、その隙にねじ込むように自分からも斬りかかっていく。セゲルから譲り受けた兵士たちも、蒼衣の剣士の隙を消すように時折白騎士に対して攻撃を放っていく。
 彼らの攻撃は決して重いものではない。しかし、見事な連携は一足す一を十にも百にも変えるものだ。
「やる……! 願わくば、私の両腕が自由になる時に改めて斬り合いたかったものだ。だが、やはり甘いぞ!」
 蒼衣の剣士が白騎士とここまで良い勝負ができるのは、偏にゲンジロウたちの力量の高さ、そして他の猟兵たちが今までに敵に与えてきたダメージの差にあるだろう。だが、敵もさるもの。
 ディアブロは一つ呼気を大きく吐きながらフォースセイバーを繰る。二つの刃を回しながら蒼衣の剣士の剣筋をずらすと、この状況を打破すべくドローンからの強化も全て乗せた必殺の一刀を放とうとした。だが、それを許さない人物がいる。
「……お主のファイティングコンピュータを狂わせる方法とは即ち「死なないこと」、その一つに尽きる! ……ゲホッッ……そのため、ならば……、妾は、何度だって……立ち上がってやるわ!」
「バ……ッ、馬鹿な!? 何故だ……貴様の生命活動はとっくに限界を迎えているはず! その出血量でなぜ立てる?! なぜ私の腕を掴めるのだ?! 未来予想は……ッ! 貴様ッ! なぜ死なんッッ!」
 白騎士の行動を阻害するのは、死にかけになりながらも強化された身体能力で『無理やり』立ち、右腕を掴んで離さないアマミであった。これは白騎士にとって『計算外』のことである。
 確かに彼女は白騎士の攻撃を受け続け、そして戦闘不能に陥ったはず。しかし、目の前のアマミは体がボロ雑巾のようになっても立ち上がっている。そして白騎士を震えさせたのは、アマミに対する『未来予想』のその全てにおいて、彼女は不可解なダメージの中にあっても立っている、というそこであった。
 白騎士にとって、あり得ないはずの未来が広がる。そして彼は、自分でも予期せぬ感情を抱くに至った。即ち、理解できぬものを見た怯えの感情である。
「ヘッ……お前さん、今ビビったな? 喧嘩じゃビビった奴は魔剣だって相場が決まってんじゃよ……往くぜッ!」
「……ック! なんの……! 本体である貴様を殺せば、蒼衣の剣士も消えるはず!」
 決死の覚悟でアマミが生み出した隙に、ゲンジロウが動く。敵の制約を破ったことに対するダメージなど気にせず、彼はただただ走るのだ。全ては、敵にトドメを刺してやるため。
 だが、白騎士もそう易々と猟兵たちの行動を許しはしない。彼はアマミを振りほどくと、走りこんでくるゲンジロウに向けてレーザーキャノンを構えた。だが、その前にまたしても立ちふさがる影。セゲルの兵士と指揮官、そしてウルフシャだ。
「指揮官は俺ができることは大概こなせる。悪いな、多勢に無勢という奴だったか?」
「小癪な……ッ! 邪魔だッ、どけェ! ……ク、剣が重い……!?」
 わずかに怖れを感じながらも、白騎士はその剣筋を緩めない。彼はレーザーキャノンを一度下ろすと、セゲルの兵たちをその刀の一振りでひとまとめに消していく。だが、すでにその兵士たちは捨て駒。役目を果たした駒なのだ。
「当然だ、お前のドローンは既に俺の兵士たちが壊して回ったからな。さあ、畳みかけさせてもらおうか」
「……黙れッ! ならば、レーザーで全て打ち払って見せるまで!」
 敵の剣が重いのは、セゲルが戦いの最中に見事白騎士の生み出したドローンを消去したからこそ。自己強化の手段を失った白騎士は、猟兵たちの軍勢に囲まれて少しずつ、少しずつ追い込まれていく。
 そうして焦れた白騎士は、レーザーキャノンに火を入れる。狙いはゲンジロウと、その射線上にいる兵士たちだ。発動までのわずかな隙を狙って兵士たちは白騎士にダメージを与えるが、この際と彼は無視して砲撃を続けていく。
「お主は未来位置に攻撃をするんじゃったか? さぁ未来を見るがよい、……見えたか? ウチが爆散するその様を。そして、その先が見えるか? 見えまい? そうしてお主は敗れるからじゃ!!」
「……私の動揺を誘っているのならば無駄なこと! 猟兵よ、私は純然たる未来を視るのだ。私の思い込みや勘違いで変化することのない、結果としての未来を! 庇おうとしたのだろうが、愚かなことを! ルールを宣告するまでもない。宣言しよう! 『貴様はこのレーザーを受け、木っ端微塵』になる!」
 そうして放たれる熱の暴力が、ゲンジロウをかばうように飛び出してきたウルフシャを完全に捉えた。その直後にレーザーの直撃を受け、彼女の身体は文字通り『木っ端微塵』となっていく。
 そこにウルフシャと呼べる彼女の姿はもはやなく、残っているのは僅かなカケラだけだった。しかし、その本質は違う。『白騎士がウルフシャにトドメを刺した』ということではないのだ。
「やったと思ったかの? 甘いわ! うちはレーザーで焼かれたわけではない! 実際に吹っ飛んだのじゃ! 全てを貫き砕き薙ぎ払う、流星の一撃をご覧あれ! たとえ我が五体碎け散ろうとも、先に広がる未来の為に!」
「~~ッ! 貴様ッ! 『わざ』と自分の身体を……ッ!? ぐああああッ!」
 ウルフシャが放つユーベルコードは、自身の仮初めの体を粉々に吹き飛ばす事で発動するもの。名を、【流星が如く】といった。白騎士が未来で見たのは、彼女が死ぬところではない。彼女が白騎士へ反撃を行う未来であったのだ。
 だが、彼はウルフシャのユーベルコードの本質を知らなかった。故に、彼女を殺しきったと思い込んでしまったのだ。ましてや、彼女が放つすべてを砕く流星の一撃の威力など、彼の予想できる範疇ではなかった。
「殺った! 合わせろ、セゲル! 蒼衣の剣士!」
『応! 蒼刻と碧刻の剣閃(ブルー・スライス・ブルー)!』
「ああ! こっちはほぼ万全なのでな、遠慮なく武器を振るわせてもらおう!」
 アマミが生み出し、ウルフシャが繋いだ隙に畳みかけるのはゲンジロウとセゲル。
 ゲンジロウは炎のルーンが刻まれた愛剣、焼き尽くし刺し貫く剣〝劫火〟を上段に構えると、蒼衣の剣士と同時に捨て身の一撃を白騎士へと斬り込んでいった。赤と蒼の剣が、白騎士の鎧に確かな手ごたえを残す。
 そこに更に追い打ちをかけるのは、セゲルの振るう将刃【マシャルク】だ。インパクト時のみ重量が激増するその鉄塊剣は、白騎士の鎧を見事砕いて見せる。
「……ッ、ク、ガ……! ガハァッ……。……御見事。私の未来予知を利用して、グ、見せた未来を利用するとはな……。ガ、ハア……ッ! ほ、他の猟兵の動きも優秀であった……。だ、だが……! まだ、負けぬとも! 私は白騎士! 帝国にただ一人の白騎士であるのだ!」
 ハッキリとしたダメージはスラスターの故障、そして白騎士の鎧の破損という形で目に見えた。白騎士の呼吸は今までになく荒い。
 四人の猟兵たちが、ここに来て決定的な流れを掻っ攫っていったのだ。未来予知から放たれる避けきれない攻撃を避けるのではなく、受けてみせる。もしかしたら、その選択が。そして、何よりも運が。彼らの明暗を分けたのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユーイ・コスモナッツ
転送していただく直前に、
「バトル・インテリジェンス」を使用
AI搭載型戦術ドローンを
速攻重視の設定にセットして、
抱きかかえるように構えます

転送が完了したら、即座に突撃開始!
これで白騎士の後の先を取る……ことは、
おそらくできないでしょう
ドローンは破壊されてしまうはずです

だけど、ドローンが破壊されたことで、
ドローンが組み上げた行動も失われました
つまり
白騎士が読んだであろう、
数秒先の私の位置座標も、
私が繰り出す攻撃も、
ドローンが導き出したものから、
私の考えるものへと書き替わりました

ドローンを犠牲にしつつ接近、
ホワイトライト・トゥルーライトの
予想結果をすべて覆す、
私の意志のままの一撃を叩き込みますっ


ヘスティア・イクテュス
「●」
未来を読む…ね。厄介ってレベルじゃないわね…
それでもここで、倒さなきゃ…この世界の未来のために!

ガーディアンズによる全力防御…
これで騎士ディアブロのレーザーをシャットアウト…!
バリアに当たるなら対象に命中にはならないわよね
ついでに後ろの猟兵への攻撃も防げたらいいのだけど

立ち止まってっていうのは慣れないけど…
他の猟兵とかに気が向いてるときに解除してミスティルテインで援護よ

敵が未来予知しても向こうから撃ってこちらに当たるまでの時間に一発撃って再展開の余裕はあるはず…

それに、複数の未来予知、対処は向こうの負担になるはず…腕は2本だし…
雀の涙の一射…でも、水滴岩も穿つって昔から言うでしょ!



●未来を読んだとしても
「さて、ヘスティアさん。そろそろ準備よろしいですか? こちらは、いつでも! 強敵ですが、何とか頑張ってみたいところですね」
「ハア……未来を読む……ね。本当、厄介ってレベルじゃないわね……。それでもここで、倒さなきゃ……。この世界の未来のために! ええ、行きましょうか、ユーイ!」
 ここは戦闘空域より遠く離れた場所。ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)とヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長(自称)・f04572)の二人は、転送前に軽く自分たちの動きについて話し合いを行っていたらしい。
 だがそれももう済んだ。戦闘前の工夫も十分である。彼女たち二人は戦闘準備を済ませると、白騎士の居る空間へと転送されていく。敵がどんなに強敵であろうと、彼女たちの歩みは止まらない。
「……来たか。…………さァ……来いッ! お喋りしに来たわけではないだろうッ!」
 白騎士ディアブロは既に満身創痍といった状態である。潤沢であった装備はフォースセイバーとレーザーキャノンを残してほぼ潰え、左腕も満足に動かず、レーザーキャノンには傷が入っている。
 それでも、彼は猟兵には屈しない。この戦いの先の未来がいかなる結果になっていようとも、彼はきっとここで一人戦い続けるのだろう。それが、帝国に使える白騎士の取る道である。
「貴様らの動きは『既に視た』……! 当てさせてもらうぞ、制約の光を!」
「させないわ! ガーディアンズ! 白騎士ディアブロのレーザーをシャットアウトしなさい……!」
 先んじて攻撃を仕掛ける白騎士が放つのは、直撃したものの行動を縛る制約の光。【収束する運命の白光】だ。限界を間近に控えた砲身は、しかしそれでも白騎士の思う場所へ、白騎士が未来を読んだ場所へと寸分たがわずにその光を放っていく。
 戦闘空間内を奔り、切り裂いて飛んでいくのは敵の暴力、敵の熱だ。しかし、ユーイの前へ出たヘスティアは、ユーベルコード【衛星ガーディアンズ】を用いて全身をバリアで身を包んだ状態に変えていく。ユーイの至近で発動することによって、自身と共に味方への攻撃も防ごうという考えだ。
「絶対防御のユーベルコード……! 厄介なものだ、ここからでは射線が通らん! スラスターが快調であったなら……! チィ! 『この状況では、分岐する全ての未来で攻撃を防がれる』!」
 そう、バリアを纏ったヘスティアはあらゆる攻撃に対しほぼ無敵の耐性を得ることができる。そして、バリアであれば敵のレーザーの直撃にはならない。今までの猟兵たちの奮闘が、そしてヘスティアの工夫が、白騎士と相対してハッキリと形になって現れたのだ。
 スラスターを失った今の白騎士は、高速移動もままならなくなっている。であれば、彼が強引に盤面を動かすことも不可能になった、ということ。そして、その隙をついて盾の後ろから今、矛が出る。
「既にバトル・インテリジェンスは発動済み! 私の速攻、受けていただきます! ユーイ・コスモナッツ、騎士の誇りのもとに……! 参ります!」
「……フン、良いだろう。近付いて来てくれるのであれば好都合。騎士として、貴殿の刃……全身全霊でお受けいたす」
 ユーイが転送前に行っていた工夫とは、自分自身へと予め【バトル・インテリジェンス】を用いることであった。
 ドローンの設定を速攻重視の設定にセットアップしておいた彼女は、AI搭載型戦術ドローンを身体の中心で抱きかかえるように構え、そのまま白騎士へと走りこんでいく。その目に迷いはなく、そして恐怖もない。
「立ち止まってっていうのは慣れないけど……! ユーイ、打ち合わせ通りにミスティルテインで援護するわ!」
「『それ』も『視た』! 盾に矛、ハッキリした役割分担は見事だ! 援護射撃を貰いながらの突貫も悪くはない! だが、これからどうするつもりか! 私の剣をどう受けるッ!」
 走りこんで白騎士へ向かうユーイを助けるように、ヘスティアも少し離れた後方から援護射撃を行っていく。敵の砲撃を止めさせるためだ。ヘスティアの放つ援護射撃の狙いを白騎士は看過していたが、しかし看過したからといって放置も出来ない。
「ヘスティアさん、ありがとう! ここに……ッ!」
「戦術ドローンによる剣戟などッ! 今まで幾度となく『視て』きたわ! こうして隙を作ってやりさえすれば、戦術ドローンは6割方突きを選択する! 最後に自分自身の剣技で挑んでこなかったことを恥じるが良い!」
 彼はフォースセイバーを片腕のみで巧みに操り、そのエネルギーでヘスティアの援護射撃を全て打ち落としていく。そして白騎士の恐ろしい点は、更にユーイの戦法すら読み切って迎撃して見せたことだ。
 戦術ドローンの指揮によって突きを放つユーイの胴に向けて、一足早くフォースセイバーの刃が近付いていく。狙いは彼女の心臓。敵は戦術ドローン諸共、彼女の命を散らすつもりだ。しかし、その時。
「――ええ、分かっていました。ここまでは、予想通りです!」
「なにィッ!?」
 ユーイは、戦術ドローンによる攻撃では白騎士の先の先も、後の先すらも取ることはできないだろうと読んでいたのだ。そして、攻撃の最中にドローンは破壊されてしまうだろうことも。
 だからこそ、彼女は胴へと迫る突きが戦術ドローンを破壊した時点で反応することができた。自分の胴をフォースセイバーが貫く、そのコンマ何秒間の間に、敵の攻撃を避けきることができたのだ。正に間一髪。敵の力量を正しく読み切った彼女の戦法が見事上手くいった形である。
「ドローンが破壊されたことで、ドローンが組み上げた行動も失われました! つまり、あなたが読んだであろう、数秒先の私の位置座標も、私が繰り出す攻撃も、ドローンが導き出したものから、私の考えるものへと書き替わりました! もはや未来は読ませない……! お覚悟を!」
「……先ほどよりも遅い! が、しかし……この重さは何だ……ッ!? 未来が、読み切れない……! いや、この至近距離では! 『未来を読めたとしても、意味がない』ッ!」
 ドローンを犠牲にしつつ至近距離にまで接近したユーイは、そのままホワイトライト・トゥルーライトを発動させること無く攻め込んでいく。いや、もはや発動したとしても意味のないことだ。
 この至近距離で未来を読むメリットはほとんどない。この距離で存在するのは、ただただ純粋な反射と純然たる術理のみである。更に、白騎士を追い込むべくヘスティアが攻撃を放つ。
「複数の未来予知、対処は向こうの負担になるはず……!腕はもう1本だし……! 雀の涙の一射……でも、水滴岩も穿つって昔から言うでしょ!」
「ヘスティアさんが放ってくれたこの一射! 止めさせるわけにはいきません!」
 そうしてミスティルテインから放たれた一射は、白騎士の胴、鎧のひびの入った部分へと吸い込まれるように飛んでいく。それに気付いた白騎士は体を逃がそうとするが、それはユーイが許さない。彼女はフォースセイバーの刃を白銀の剣、クレストソードで受け止めると、そのまま鍔迫り合いの形に持っていく。
 このまま組みついていては、いつ白騎士の圧倒的な膂力に盤上をひっくり返されるか分からない。だが、彼女の騎士としての矜持が、彼女の意志のままの一撃が。武器受けという形で白騎士の動きを止めてみせたのだ。
「……未来が……! 読めたッ! ……仕方、あるまい……! 離れてもらうぞ、宇宙騎士! まだ……負けるわけにはいかんのだッ!」
「これで、敵の攻撃の選択肢は刀だけ! お手柄ね、ユーイ!」
「ええ、ヘスティアさんも! ここは一度引きましょう!」
 そして、インパクト。結論から言えば、ヘスティアの放った一射は白騎士の鎧を貫けなかった。だが、彼女の攻撃はレーザーキャノンを破壊することに成功した。
 白騎士があの状態から攻撃を避けるには、身をよじってレーザーキャノンで攻撃を受け止めざるを得なかったのだ。彼女たち二人は敵の攻撃パターンの一つを完全につぶして見せた。
 トドメを刺すことは叶わなかった。しかし、それでも。見事な、見事な勝利といえるだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴァーリャ・スネシュコヴァ

アメリア(f01896)と連携

俺はアメリアのエアハートの後ろに乗って出撃
二人で役割分担
回避や移動の役割はアメリアが担当。俺は攻撃に専念させてもらうぞ!

アメリアの操縦はピカイチだ。絶対に俺を敵の方まで送り届けてくれる、そう強く信じてる!

アメリアが回避と接近に成功し、急加速でUCの射程内まで入ってくれた瞬間、【残像】と【ジャンプ】!残像が見えるくらいの速さでエアハートの座席から跳び、敵が第二撃を放つ前に【先制攻撃】で素早く『霜の翁の怒り』を敵に叩き込む!
氷の【属性攻撃】を重ね、更に威力もあげるぞ!

無事に攻撃が入り、床に着地した瞬間に【ダッシュ】で後退。追撃はせず、素早くアメリアに回収してもらう


アメリア・イアハッター

ヴァリちゃん(f01757)と連携

・方針
彼女を宇宙バイクの後ろに乗せ戦闘
回避と攻撃の役割を分担
私は回避専念
攻撃をかい潜り彼女を必ず射程内まで届けて見せる

・行動
宇宙バイクの機動力を活かしまずは攻撃の回避に専念
突撃時の布石として最高速は出さぬよう調整

敵の攻撃はUC【風の友】で回避を狙う
未来を予知したとしてもそれに対する行動は必ず取らねばならない筈
ならばその行動時発生する風の流れを読むことはできる筈
後の先を取り敵の武器が向く先をよく見て、発生する風を感じ
後は自分の腕と愛車と仲間を信じ緩急と小回りを効かせた操縦で回避

回避後は最高速で敵へ接近
予知できても反応しきれない速度なら!

ヴァリちゃん、おまたせ!


ヴィクティム・ウィンターミュート
避けられねえのなら、当たってやるしかない。
ユーベルコードの障壁を予め何重にも、一分の隙間も無く身に纏って、先制攻撃を凌ぐ。仲間がいるなら、保険としてそいつにもだ。できる限り最速で、【早業】で以て展開したい。

問題は反撃だ。奴がどんな攻撃でも予測できるのなら、動きを止めるしかない。俺がその起点を作る

銀河皇帝を侮辱するような挑発をしながら前線に立ち、ヘイトを集める。
奴が近接攻撃してきたら、軌道を【見切り】、体内に障壁展開。わざと受けて致命傷を免れる。
すかさず腕を掴み、【騙し討ち】で障壁を「食い込ませて」俺と敵を固定。
味方に攻撃を促し、そのまま【時間稼ぎ】だ

端役を踏み越えろ
絶対に勝て
未来を、塗り替えろ



●白紙の未来は、その手の中に
「……ドローンよ……。私に、未来を……! 白紙の未来を掴むのは、この私だ……!」
 この戦闘空間で、猟兵と白騎士は幾度となく剣を交えた。砲撃が鳴って、その度に血と悲鳴がこぼれたのも少ない数ではない。だが、強敵だった白騎士も、猟兵たちの活躍によって既に満身創痍。この戦いに、幕を落とす時間が来たのだ。
 最後に降り立つのは、愛機である宇宙バイク、エアハートに乗ったアメリア・イアハッター(想空流・f01896)。彼女のバイクに同乗し、スノードームを構えるのはヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)。そして、左腕改造型防御専門サイバーデッキ『トランシス・アヴァロン』を撫でるのはヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)。
「敵が未来を予知したとしても、それに対する行動は必ず取らねばならない筈。そして、その行動時に発生する風の流れを読むことはできる筈……!」
「ああ、やるなら敵が第二撃を放つ前に、だな! 問題は敵の攻撃を回避したとして、こちらの攻撃が当たるか、だが……」
「その通り、問題は反撃だ。奴がどんな攻撃でも予測できるのなら、動きを止めるしかない。ヘッ、しゃーねぇな! 良いぜ、俺がその起点を作る。その後は任せるさ。俺がどうなっても、お前らは足を止めるなよ。……行くぜッ!」
 三人の猟兵が、白騎士にトドメを刺さんと現れたのだ。白騎士が、ボロボロの兜の中から猟兵たちへと眼光を飛ばす。
「……来い。来い、来い、来い! 来い、猟兵! 私はまだ立ってここにいる! 私が見たことのない、敗北という未来……! 見せられるものなら見せてみろォッ!!」
 そして、戦闘が始まった。

「アメリア、ヴァーリャ! お前らに障壁を張る! この一瞬じゃ無いよかマシって程度だ、そこまで当てにはすんな!」
「ありがとう、ヴィクティムくん! よぉし! ヴァリちゃん、行くよ!」
 まず駆けだしたのはアメリアだ。ヴァーリャを宇宙バイクの後ろに乗せ戦闘起動を開始した彼女は、どうやら回避と移動にに専念する心積りらしい。敵の攻撃をそこまで警戒しているという事だ。
「高速機動か……。しかし、近付いてこなければ貴様らも決定打は放てんだろう! こちらから行くぞッ!」
 エアハートの速度を活かしたまま白騎士に接近していくアメリアたちへ、白騎士はドローンによって強化された未来予想シミュレーションと、身体能力を活かして無理やり距離を詰めていく。
 敵の選択肢から砲撃はなくなったが、そのことが彼の迷いを断ち切る結果となったのだろう。剣しかないならば突き進むだけだと言わんばかりに、白騎士は強化された脚力を活かしてエアハートの機動に追いついていく。
「うそッ?! 走ってエアハートに追いつくなんて……!」
「アメリア、大丈夫だ! ここは俺がッ!」
「甘いわ! バイクの上での戦闘は慣れていないと見たぞ、娘ッ!」
 そして繰り広げられるのは、戦闘空間の中で行われる剣戟の雨嵐。かたや宇宙バイクの後ろに乗って氷を纏った剣にて敵の攻撃を振り払い、かたや強化された脚力でバイクに追いついては二つの刃にて敵を追い詰めんとする。
 ハイペースで進行する馬上戦のようなその剣舞は、しかし白騎士の方がやや有利といったところか。ヴァーリャとアメリアを、白騎士は確かに剣技一つで追い詰めていく。未来予想シミュレーションによってエアハートの機動とスノードームの剣閃を知っているかのように動く白騎士は、やはり圧倒的だ。
「私の未来予想の前に沈めッ! 我が敵、猟兵よッ!」
 そして、フォースセイバーの大振りがエアハートのタイヤを遂に捉えたかに思えたその時である。
「ようやく大技出してきてくれたわね! 大ぶりのその剣筋はもう『知ってる』! 風が教えてくれたわ!」
 後の先を取り、敵の武器が向く先をよく見て、発生する風を感じる。後は信じるだけ。自分の腕と、愛車と、仲間をだ。
 アメリアは、敵が流れを変えるべく繰り出してきた大振りの攻撃を視た瞬間に、ユーベルコード【風の友】を発動していく。そして敵の動作から発生する僅かな風の流れを感じ、見事に読み切って見せた彼女は、緩急と小回りを効かせた操縦で敵の攻撃を見事に避けきってみせたのだ。
「逃げ切られたか……! しかし、このままでは千日手よ! 私が止めを刺すことも出来んが、貴様らも攻め込めないことに変わりはない! そして手詰まりならば、私は銀河帝国の勝利を待つだけで良いッ!」
「――だから俺の出番なのさ、ジューヴ。それから、どうやらテメェは銀河帝国の勝利を信じ切ってるみてェだが……テメェらの頭の皇帝サマは、もうすでに何度か俺達が倒してンだぜ? このまま待ってたら、ああ、哀れ。お前はご主人様の敗北に立ち会えず、それどころか主人を無くした犬になり下がるのさ」
 膠着するかのように思われた戦場を動かしたのはヴィクティムだった。彼は前線に立つと、白騎士からのヘイトを集めるべくわざと銀河皇帝を侮辱するような挑発を行っていく。不敵に笑うその表情は、本当に皇帝を侮蔑しているようで。
 この状況を良しとしていた白騎士すら、彼の挑発に乗らざるを得なかったのは仕方のないことと言えるだろう。
「――取り消せ。今すぐに、だ。猟兵よ。私は白騎士。私の主である、皇帝陛下を侮辱するような言葉を一度聞いてしまったなら、私は……何が何でも、貴様らを殺すだろう。惨たらしく、見せしめになるようにだ」
「そいつで俺がビビると思ってンのかい、マンデイン。口先だけの騎士を抱えてちゃァよ、皇帝陛下殿のお株も知れるってもんだぜ?」
「貴様…………。貴様……! 貴様ァァァァァ!」
 『かかった』。内心、ヴィクティムはそう思った事だろう。止めはアメリアたちが刺してくれるにせよ、白騎士の足を止める役割は必ず必要だ。
 そして、その白騎士はまんまと挑発に乗ってきた。もう彼の表情からわざとらしい笑みはない。後に残るのは、自分の力がどこまで目の前の強敵に通用するかという、ただその一点のみ。
「ドローン! 未来予想シミュレーションを全開にせよッ! 目の前のこの男は、何がなんでもここで殺さねば気が済まんッ!!」
「おお、怖いね。だが、それも織り込み済みなんだよ……ッ! 来やがれッ!」
 ヴィクティムは白騎士の振るう刃を避けない。未来を予想する攻撃を避けられないのなら、当たってやるしかない。そう考えているが故だ。
 彼は先ほどアメリアたちにも張ったユーベルコード、【DefenseProgram『Alcatraz』】の障壁を予め何重にも、一分の隙間も無く身に纏っている。その上で、本命の防御は別にある。
「貰ったッ! 『貴様は私の剣を避けきれん』ッ! 死ね、小僧ッ!」
 白騎士が振るったフォースセイバーの刃は、ヴィクティムの胴をまっすぐ貫いていく。いや、むしろヴィクティムが敵の攻撃の軌道に自分の身体を合わせにいったようにも見えた。
 そう、彼の狙いは、敵の攻撃をわざと受けた上で体内に再度障壁を展開し、致命傷を免れながら敵の動きを止めることだ。
「いいや、貰ったのはこっちさ……! アメリアッ!! 時間は稼いでやったぜ!」
「……! うんッ!」
 そしてヴィクティムはすかさず白騎士の左腕を掴み、騙し討ちを行ったことで生んだ隙を突いて自分と白騎士の腕部分へ障壁を生み、食い込ませていく。
 彼と白騎士の腕に激痛が走り、そしてヴィクティムと敵の身体はそこに『固定』された。
「貴様……ァ! まさか、挑発すらも私を釣るための……!?」
「今更気付いたのかい。シャグはハッカーの得意技なんでね……!」
 轟音が鳴る。宇宙バイクの音だ。エアハートの音だ。白騎士にトドメを刺す、猟兵の軍靴の音だ。
「ヴァリちゃん、最高速で行くよ!」
「ああ、気にせず全開で頼む! ヴィクティムが作ったこのチャンスを、無駄にするわけにはいかない!」
 アメリアが思うことは、ヴァーリャを必ず射程内まで届けて見せる。ただその一点のみ。
 突撃時の布石として出さぬよう調整していた最高速を惜しげもなく見せ、彼女ら二人は白騎士に向かって最高速でブッ飛んでいく。
「予想できても反撃もできない状況なら……! さあ、行け。二人とも。端役を踏み越えろ。絶対に勝て。――未来を、塗り替えろ」
「予知できても反応しきれない速度なら……! ヴァリちゃん、おまたせ!」
「ああ! アメリアの操縦はピカイチだからな。絶対に俺を敵の方まで送り届けてくれるって……信じてたぞ!」
 アメリアが接近に成功し、急加速でUCの射程内まで入ってくれた瞬間、ヴァーリャは残像を残すほどの速度で空へとジャンプを行った。
 そして、彼女は白騎士が未来を読んでもどうしようもないこの時を活かして至近に迫ると、素早く自身の魔力を練り上げていく。【霜の翁の怒り】。瞬時に霜が降り、生物が凍結するほどの冷気を放つ、ヴァーリャの超常の力だ。
「ドローン! 未来予想を……! もっと私に力を寄越せ! 負けるわけには……!」
「いい加減諦めなさい! ヴィクティムくん、手を伸ばして! もうヴァリちゃんは間合いに入ったわ! 貴方だって主役でしょう!? 踏み越えていくなんて、するわけないじゃない! 私たちは、仲間なんだから!」
「……ヘッ、物好きな奴もいたもんだぜ! 端役に手を伸ばすなんてよ!」
 超高速でヴァーリャが白騎士に飛び掛かるその横で、アメリアもヴィクティムを巧みなバイク操縦で拾い上げて救出していく。そして、ヴァーリャがその力を発動した。
「氷の属性を重ねた、威力は折り紙付きだ……! 全部凍ってしまえ……ッ!」
「ぐ、ああ、ぐああああああああ!! ……私の、ワタシの未来が、黒く……! どこまでも、クロく、スベテノ道が、ソ、マッテ……! こ、コレガ、マケ…………カ……。…………ミゴ……ト、ナリ……リョウ……ヘ……」
 戦闘空間に霜が降りて、辺りは真っ白になっていく。そして白い霧の中から姿を表したのは――猟兵であった。
 未来は移ろうもの。白紙の未来は彼らの行動によって変化するものだ。猟兵たちは、白紙の未来をその手に掴んで見せたのだ。それを可能にしたのは、紛れもない彼ら自身の行動によるものである。
 誇っていい、いや、誇るべきだ。強敵との戦闘を勝利に導いたのは、この戦場に訪れた全ての猟兵たちの、全ての行動の結果である。見事な戦闘であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月22日


挿絵イラスト