|龍を継ぐ者《Heirs to Stargazer》
●銀河の波濤
『報告! 右翼艦隊壊滅! 残存艦艇は当艦と……』
『これ以上の前進は不可能だ! ペンギンの大将は?』
『何故か無事です! |電脳魔方陣第三層《デジタル・マギカ・タレット》開放、防空火器に全リソースを回します!』
無数の光条が漆黒の宇宙を彩り、鮮やかな光球が爆ぜる度に数多の生命が消えていく。
エリア47004――恐るべき|過去《オブリビオン》の艦隊は|現在《いま》を塗り潰さんと、圧倒的な戦力をもって宇宙の戦士達と対峙していた。戦闘開始からおよそ72時間、戦艦42号『イエーガー』乗組員の疲労はピークに達し、僅かな判断の差が辛うじて彼等の命脈を保っていた。
『まぁたワープアウト……30、40、いっぱい』
『ちゃんと数えて。しかし大したモノです、これ程の戦力をよくもまあ』
一方、42号後方にひっそりと佇む|違法航宙漁《アングラサルベージ》船『氷山丸三世号』に座する改造強化宇宙ペンギン『ゴールド』と『シルバー』は、持ち前の念動力で危険を紙一重で回避しつつ、来たるべき時に備えて鋭く嘴を尖らせていた。
『あいつら|星獣《クエーサービースト》と|帝国残党《ゴロツキ》の混成軍ですよ。ありえない』
『|帝国継承軍《サクセション・フォース》の名は伊達では無い、か。おいペンギンの大将』
『――何か用か|人間《ヒューマン》』
レーザー回線を開き互いの状況を伝え合う42号艦長と氷山丸のゴールド。かつての敵同士、今は利害の一致した関係故の共同戦線――訝し気に言葉を交わす彼等の目的はただ一つ。この圧倒的な劣勢を唯一覆す事が出来る、最後の希望を敵中枢へ届ける事。
『本当に……あの奥へ猟兵達を送れるんだろうな?』
『|銀河帝国《われわれ》の技術を舐めるなよ。思った通りの所に……大体送れる』
『あの数ですからね。|転移後の衝突調整《コリジョン・コントロール》を考えればまあ、前衛旗艦の手前くらいには』
モニタの望遠映像には歪な装甲を纏ったウォーマシンを艦橋に据えた大型高速戦艦が一隻。怒涛の攻めを誇る敵前衛艦隊の旗艦たるこれさえ倒せば、必ずや中枢への道が開ける。やるべき事はただ一つ、この目の前の難敵を確実に叩く戦術を実行する。その為に――。
『こっちの戦力じゃ精々道を開くので手一杯。いや、それすらも難しい……』
『だからこそだろう。今更|奴ら以外にここを突破出来る戦力があるとでも?《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》』
『……無え、な』
偉そうにふんぞり返ったペンギンが鼻息を鳴らし、髭面の男がそれを見て苦笑する。
ああ、そうだ。こういう地獄を乗り越えたからこその今だ。その今を、絶対に終わらせたりするものか。
『それじゃ見せてやろうぜ。追い詰められた俺達がこれまで通り、銀河を取り戻してやる為によ!』
『一緒にするな! だが……』
目を細めたゴールドがおもむろに虚空を見上げる。
だが、今度こそ……ワシは役目を果たして見せよう。
その為に、戦場へ帰って来たのだから。
「お集まり頂きありがとうございます。見ての通り、|帝国継承軍《サクセション・フォース》との決戦です」
グリモアベース会議室――ぺこりと頭を下げたユーノ・ディエール(|アレキサンドライト《虚無の申し子》・f06261)は言葉少なく、テキパキとスクリーンに膨大な情報を表示した。
「詳細は手元の作戦指示書をご確認下さい。余りにも相手の数が多すぎる為、敵中枢へは同志の力を借りて送り出してもらう事になりますが……」
電子化された情報を集った仲間達へ送り終えたユーノは端的に作戦目標を説明する。
一つ、敵前衛艦隊旗艦を叩き中枢へ突入する事。
二つ、敵中枢直掩のクエーサービースト級兵器を|惑星ロボ無しで叩き潰す事《・・・・・・・・・・・・》。
三つ、敵中枢の総旗艦『ソング・オブ・オーンブル』内へ侵入し、首魁『プリンセス・エメラルド』を滅する事。
「友軍は……彼らはこれ以上戦えません。戦力は我々猟兵のみである事をお忘れなく……それでは」
そのどれもが、これまでの戦いと比較して決して容易では無い事を伺わせた。だが。
「よろしくお願いします。全ての因縁と怨念に、決着をつける為に」
再び頭を下げるユーノ。彼女は信じている。
幾度となくあらゆる困難と危機を乗り越えてきた、仲間達の――猟兵の力を。
『聞いての通りだ|猟兵《イエーガー》。今より貴君らを|最前線《じごく》へ送る』
グリモアが繋いだゲートの先、死と無が支配する漆黒の宇宙に降り立った猟兵達に声が届く。壮年の男性――42号艦長は努めて冷静に状況を伝えた。友軍は壊滅状態。残った二隻の船も鋒鋩の体のまま、己の身を守る事で精一杯だ。それでも――。
『多くは言わん。だから……』
ジィ、とノイズが混ざり声が割り込む。かつて銀河帝国の氷山部隊として刃を交えた宇宙ペンギンが、最後の希望を猟兵達へと託す。この宇宙に生きる全ての物の為に、彼等が唯一してやれる事。
『|超物質転送《スーパーカニ》装置最大稼働、空間転送レンズ形成――照射!』
シルバーの言葉と共に、猟兵達を光が包む。かつての銀河帝国が誇る超兵器――短距離物質瞬間連続転送レンズ照射装置ことカニ装置は、最後の希望を彼方へ届けるべく力を放つ。
『……これで終わりにしよう。|幸運を《グッドラック》』
ぼそりと呟くゴールド。虚空へ掻き消えた言葉と共に、光は再び漆黒に呑まれた。
目的は敵の猛攻をショートカットし、中枢への道を最短で繋げる事。
カニ装置が発した光は時間と空間を飛び越えて、猟兵達を激戦の只中へと放り込む。
瞬きより早く、闇を裂く光が猟兵の瞳を揺らした時、そこに映し出されたモノは想像を遥かに超える悍ましき悪意。
ディグタトル級、ピルグリム級、傍らには余りにも巨大で醜悪な|星獣《クエーサービースト》。
乱舞する暴力的な光と無色の分解波動が牙を剥き、漂う瓦礫が一瞬で藻屑と化す。
立ち塞がる恐るべき脅威達。その背後には、荒ぶる業火と共に強大な戦艦が禍々しく聳えていた。
ブラツ
ブラツです。
猟書家『プリンセス・エメラルド』との最終決戦です。
『やや難』につき以下の通り厳しめの判定となります。
第1章は、継承軍が誇る最強戦力「|闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》」のひとり、「|斑《まだら》」の名を持つデストロイウォーマシン率いる前衛艦隊を殲滅し、血路を開かねばなりません。
敵は「大量のオブリビオン艦隊」と「クエーサービーストの群れ」を従えており、戦略上の圧倒的優位を利用して「先制ユーベルコード」を放ち、そのうえ「大量の配下による攻撃」をかぶせてきます。
途轍もない強敵ですが、闇の騎士を倒せば、プリンセス・エメラルドの乗る旗艦漿船「ソング・オブ・オーンブル」が存在する座標を割り出すことが出来ます。適切な対処が取れなければ苦戦は免れ得ない程の強大な軍勢です。注意して下さい。
第2章は、プリンセス・エメラルドの搭乗する巨大な|漿船《クリスタルシップ》――数多くの漿船の亡骸を集めて新造された旗艦「ソング・オブ・オーンブル」に肉薄し、奇襲を仕掛けますが、最後の直掩たる超超巨大兵器がその道を塞ぎます。奇襲作戦の為、猟兵それぞれの手持ちの戦力のみで対抗する他ありません。
第3章は奇襲した「ソング・オブ・オーンブル」の内部で、プリンセス・エメラルドとの決戦です。プリンセスは「召喚した大量の軍勢による全方位からの攻撃」と「プリンセス自身の先制ユーベルコード」の両方を駆使してきます。これの両方に対処をしなければ、勝利は遠いでしょう。
プリンセスを倒せば軍勢は大混乱に陥り、旗艦は大爆発します。その後暫くすればプリンセスは旗艦ごと再蘇生しますが、何度も撃破を繰り返せば、蘇生もできなくなるでしょう。その時が、本当の決戦の勝利です!
アドリブや連携希望の方は文頭に●とご記載下さい。
単独描写を希望の方は文頭に△とご記載下さい。
同時描写希望時は何がしかの識別子の記載をお願いします。
プレイングは断章投下後に募集します。募集期間はタグをご確認下さい。
また、再送依頼が発生する場合があります。その旨ご理解頂ければ幸いです。
概ね6~8名様ほどの採用を予定しており、募集停止などの追記はタグにて行います。
何卒、ご了承いただければ幸いです。
それでは、よろしくお願い致します。
第1章 ボス戦
『デストロイウォーマシン』
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POW : デストロイトリガー
【一切殺戮モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : クリムゾンバースト
【全武装から全力砲撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ユーベルアナライザー
対象のユーベルコードを防御すると、それを【自身の戦闘プログラムで高速解析し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●己に流れる命と心にかけて
それはかつて、炎であった。
炎であり、闇であり、海であった。
『新たな敵の出現を感知。種別――』
その海は悪意に掬われ、再び形を作り、炎と化して戦場へ降り立った。
『種別――|猟兵《イエーガー》』
炎は数多の悪意を引き連れ、自らを示す様に闇を炎で染めていく。
『|猟兵《イエーガー》……JaaaaeGeeeerrrrraaaaa!!!!!!』
赤と白と黒の装甲で彩られた炎を、姫は『|斑《まだら》』と名付けた。
『aaaaaaアアアアアアッ――――――!!!!!!!!』
斑は炎であり、虚無であった。
その内に滾る本能が、目覚めるまでは。
エドゥアルト・ルーデル
●
またこの型か!やっかいな奴でござるよ君は!
艦隊と【殺戮モード】で突っこんでくるボス…ここはお手軽にさっと一品【架空兵器】を思い浮かべて突破するしかあるまい!でるでるでる|想像《創造》出る…ウッ!
するとどうだろう拙者の前に敵の攻撃を防ぐようにシールドを張ったロボットが!
具体名はちょっとネ…もしかしたら流行りのトリコロールカラーのロボかもしれん…
拙者はこれに乗りま…せん!という訳で自律で好きに暴れて来な!
ビットで艦艇を撃ちつつサーベルで切り結ぶロボ!理性なくしてるからな!高速で動き回るロボを狙うがいいさ!
そこを飛べる!踊れる!エドゥアルトォ!とばかりにミサイルポッドなんかの爆発物を狙撃でござる!
神咲・七十
●
ウォーマシン……あまり相手したことがないのでどうなるか分からないですね
まぁ、頑張るしかないですか
(キャバリアを呼び出して、攻撃を回避しながら、ウォーマシンのUC攻撃などの強力な攻撃含め、回避出来そうにない攻撃はキャバリアに受け止めて貰い致命傷だけは避ける)
……対処は……何とかしました
後は…もう少し頑張るだけです。
(UCを使用。高速で艦隊の内側に潜り込み、内側から艦隊を攻撃して数を減らしていく。敵UCも利用して、あえて高速で動いて自分を狙わせて、その流れ弾を敵に当てさせて)
……機械ですが理性を失ってますね
もう数を減らして、動きやすくなったら相手しますので……もう少し利用させてくださいね。
ベルト・ラムバルド
●
あっちは戦争でこっちは決戦…忙しいなぁクソ!
だがこの宇宙暗黒騎士の私はやってのけるのだ!行くぞ!
キャバリア乗って宇宙空間飛び回りながら突撃!
索敵と情報収集で敵艦隊の位置を把握したら
クエーサービーストの群れを存在感と悪目立ちで惹きつけながら敵艦隊に突撃して艦隊とビーストを衝突させて同士討ちを狙う
大量の配下には二刀の剣をぶん回し切り込みねじ伏せる!
敵将の攻撃にはカリスマオーラと盾を構えて飛び回りながら防御と回避
だいたいなぁ…闇の騎士って!宇宙暗黒騎士に被ってるじゃあないかよ!ふざけるなよ!消えろーッ!
加速しながらサークランサーを構えて荷電粒子ビーム砲ぶっ放しながら突進!
敵将を串刺しだぁー!!!
●鉄騎兵乱舞
開かれた戦端――無数の光条が絶え間なく放たれて、旗艦正面に現れた猟兵を四方八方から狙い撃つ。それだけでは無い。誘導弾、分解波動、凄まじき対空砲火、ありとあらゆる暴力が嵐となって、戦場を極彩色の地獄へと作り変えた。
「あっちは戦争でこっちは決戦……忙しいなぁクソ!」
不意に一筋の光が尾を引いて舞い上がる。ベルト・ラムバルド(自称、光明の宇宙暗黒騎士・f36452)が駆る漆黒の騎士が如きキャバリア『パロメデス』だ。内蔵された『|メタトロン《天使核動力》』より無尽蔵のエネルギーを推力に転化して、砲火の濁流を神業めいた操縦で潜り抜ける。
「拙者もアレですな、正直年明けに全部まとめて掛かってくるとは思わなかった」
「ウォーマシン……あまり相手したことがないのでどうなるか分からないですね」
パロメデスに火線が集中した間隙を突いて、旗艦へと足を進めるエドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)と神咲・七十(まだ迷子中の狂食者・f21248)は眼前に迫るウォーマシンに狙いを付けて、それぞれが銃と剣を携えて対峙。旧型とはいえ性能は折り紙付き。ましてや|今の今まで生き延びている《・・・・・・・・・・・・》デストロイ級が只者である訳が無い。
「まぁ、頑張るしかないですか」
「そういう事だ! この宇宙暗黒騎士の私はやってのけるのだ! 行くぞ!」
「待ってなんか色々被ってネ……ってキタァァァァッ!!!!」
通信越しに悲鳴と怒号が入り乱れた最中、旗艦――斑を要した敵戦艦が一気に加速。エーテルを震わせる爆音と共に、斑模様の|機械の復讐鬼《デストロイウォーマシン》は眼前の男目掛けて猛突進を開始した。
「またこの型か! やっかいな奴でござるよ君は!」
『イェェェェェガァァァァァァッ!!』
宇宙で一回、海で一回……だったかな? どっちもしぶとく厄介で同じ様な奇声で追い回したり追い回されたりしたもんだ。かつての戦いを思い返すエドゥアルト――だから、こいつの動きにゃあ十分に覚えがある。いや、それよりも。
「しつこくないか君! ってか――」
同じ様な声――成程。赤と白と黒の装甲。奴がオブリビオンならこうなる事だって、何もおかしな事では無い。
「あん時沈んだ野郎か? まあ覚えちゃいないだろうけどネッ!」
溶けて海底に固まっていた所を叩き起こされたのは不幸だが、それはそれ! これはこれ! エドゥアルトは更に加速して斑の猛攻を躱し続けた。
「それにしても……数が多すぎる」
一方、旗艦を追って現れた敵の増援は七十へと牙を剥く。すかさず虚空より召喚した魔導ロボ改式『神咲』が寸での所で攻撃を受け止めるが、爆光を突き破る分解波動が周囲を虚空へと作り変え、その穴目掛けて豪雨の様な破壊の光条が再び迫る。
「もう少しだけ、頑張って……!」
致命傷さえ避けられれば、必ずや一撃を届けてみせる……刹那の思考が白光に掻き消され、七十の代わりに猛攻を受け止めた神咲が煙を噴いて背を見せる。こうなれば、少し早いけど――!
「!」
「暗黒騎士だからな! 仲間の窮地は捨て置けん!」
途端、漆黒が雄々しく槍を振り回し光条を掻き消した。ベルトのパロメデスだ。外套の様に棚引かせた大型推進器『アンゲロス』が翼の様に光を放ち、間一髪の所で間に割って入ったのだ。
「さあこっちへ来い! 不肖ベルト・ラムバルドが全力を以て相手しよう!」
迸る|闘気《カリスマ》に敵の軍勢は狙いをベルトへと定める。それこそが暗黒騎士たるベルトの役目。ギラついた悪意を一身に受けて、騎士は再び虚空を駆けた。
「だから全力でこっち来んなって!」
『イェェェェェガァァァァァァッ!!』
そして全力でエドゥアルトを追い回す斑も、下半身ごと合体した戦艦の全火力を以て追撃の手を緩めない。ミサイル、ビーム、実体弾……ありとあらゆる火砲が渦を巻いて只一人を追い続け、鮮やかに死出の道は彩られていく。巻き込まれれば最後、如何に頑強な猟兵とて無事では済まないだろう。
「仕方ない。ここはお手軽にさっと一品……でるでるでる|想像《創造》出る……ウッ!」
だからこそ、この状況を打開する『|架空兵器《トリコロールの悪魔》』を呼び出す! 鳴らしだ指が虚空を震わせ、真紅に包まれた卵の様な何かから……それは現れた。
『やめなさい!』
バチンッ! 艦橋に叩きつけられた張り手が斑を無残に潰した――否。
「ヒッ……斑が真っ赤っかだぁ……って?」
|赤黒い稲妻《防御フィールド》を纏い、間一髪で架空兵器の奇襲を避けた斑。それを見下ろし、架空兵器は少女の様な青年の様な暑苦しい声音で宣戦を布告する。
『逃げれば一つ! 進めば二つ! 奪えば全部! 堕ちれば|深淵《アビス》!』
これ以上いけない……如何に|超常《ユーベルコード》でも越えちゃいけない壁がある。しかし常識という眼鏡で僕達の世界は覗けない。埒外の力でなければ、時を忘れた|古い骸《オブリビオン》を乗り越える事など、出来はしない! だから!
「うわぁ拙者はこれに乗りま……せん!」
『イェェェェェガァァァァァァッ!!』
「友軍か! 心強い!」
「でも何か……様子が変じゃ……」
鋒鋩の体の神咲に守られながら、再び斑との対峙を果たした七十。ベルトに攪乱された敵軍は今や同士討ちの真っ最中――ここからがハイライトだ。三体のマシンに取り囲まれた斑の咆哮と共に、決戦の火蓋が落とされる。
「だいたいなぁ……闇の騎士って!」
スラスターの放つ光と共に真っ直ぐに伸びたパロメデスの槍の穂先が斑の船体を深く抉る。飛び散った装甲の破片を物ともせず、反撃の光の礫がパロメデスを襲って――。
「宇宙暗黒騎士に被ってるじゃあないかよ! ふざけるなよ!」
槍を突き立てたまま二振りの剣が迎撃の光弾を振り落とす。全力の『オーバーブースト・マキシマイザー』は限界を超えた機動で光の渦を振り切って、再び斑へと肉薄。突き立てた槍に|己《マシン》の全身全霊を流し込み、必殺の光がその牙を剥いた。
「消えろーッ! このまま串刺しだぁー!!!」
『イェェェェェガァァァァァァッ!!』
どてっ腹に突き立てられた巨大な槍『サークランサー』はそのものが巨大な荷電粒子砲。零距離で放たれれば如何に頑強な戦艦といえど無事では済まない。雷光が戦場を白で塗り潰し、余りにも強烈なその威力は斑の船体の半分を削り取った。
「……対処は……何とかしました」
七十の前で広がる爆光が再び闇に戻った時、光が瞬く。さながら流星の様に太く眩しい尾を引いて――否、船体の半分を失った斑の必死の潰走だ。
「……機械ですが理性を失ってますね」
しかしその身体は徐々に修復され、紫電を帯びたひび割れの船体から未だ彼奴の戦意が衰えていない事が分かる。次は私か……ならば。
『イェェェェェガァァァァァァッ!!』
十分に場は整った。ゆらりと、七十の全身を闇色の|気《オーラ》が包む――『制約:独裁者』の|超常《ユーベルコード》。これで奴は、私を捉える事は出来ない。ぞわりと、喰らった魂の脈動が七十の背を這って、女は闇と一つに成った。
『!?!?!?……!!!!』
反応が消失した七十の気配を追って、最初に斑が目にした物は架空兵器だった。黒髭の仕込んだ|それ《・・》は、何も攻撃に特化した兵器では無い。
『イェェェェェガァァァァァァッ!!』
縦横無尽に虚空を舞う架空兵器はさながら|妖精《エアリアル》の様――素早い相手を無差別に追い続ける斑は為す術も無く、架空兵器へ必至の弾幕を浴びせ続ける。ベルトの攻撃でボロボロになった船体から種々の武装を溢しながら、それでも尚、斑の猛威が止まる事は無い。
「……もう少し利用させてくださいね」
「ああ、構わんよ」
だからこそ勝機――がらくたに隠れたエドゥアルトが|自慢の愛銃《マークスマンライフル》にそっと手を添え、照星に狙いを定める。放り出されたミサイルポッド、次に奴の正面に回り込むのは――今!
「飛べる! 踊れる! エドゥアルトォ!」
『イェェェェェガァァァァァァッ!!』
互いの叫びが交錯し、爆炎が船体を包む。架空兵器ばかりに気を取られては気付く間もない。首から下の装甲が焼け爛れた斑はそれでも、敵意を探しモノアイを激しく揺らす。
「見つかりましたか、探し物は?」
ゆらりと、闇が姿を変えて――刹那の奇襲。動き回るモノを狙うのならば、一瞬だけ最大速度となればいい。呪いと共に自らの力を高めた七十は『漆黒の大剣』を大きく振り被り、斑の正面に音も無く現れたのだ。
「言ったでしょう。何とかしましたって」
大事な仲間を盾にして、あらゆる猛攻を凌ぎ切り、最大の一撃を当てるこの瞬間を――待っていた。
「――|Vine Quetschen des Blut《さあ、その血を吸わせて》」
ざくり。かち割られた鋼鉄から粘ついた|血《オイル》が滴る。
斑は再び赤に染まり、憎悪と共にその身を焦がした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
天道・あや
●
この光景、銀河帝国との戦争を思い出すなぁ(当時、駆け出しのルーキーだった自分を思い出す…今と大して変わらなくない??)
いやいや、あの頃よりも大きくなった筈!(夢とか実力とか、あと色々)
うん、懐かしむのは後!
エメラルド、今度こそ倒しきる…!
右よし!左よし!あたしよし!それじゃ、突撃!
おっと、あの見覚えのあるシルエットは…戦争の時に戦った奴!
甦ってたかー、でもある意味好都合!youの攻撃は覚えてるぜっ!
軍勢の攻撃は辺りのデブリとか盾や踏み台にして攻撃を避ける!【見切り、ジャンプ】
オブリビオンのは【激痛耐性、ジャストガード】で防ぐ…!
そして敵の攻撃の間が空いたタイミングでUCを発動して突っ込む!
菫宮・理緒
艦隊戦なら【ネルトリンゲン】でいくね。
相手の先制に対しては、ユーベルコード【Internal Rush】を選択。
艦の動きを止めて、移動力をなくした分を全て攻撃と防御に回し、
相手からのターゲッティングを大幅に削いで【見切り】と【オーラ防御】で凌ぐよ。
初撃を凌いだら、こちらの反撃の時間だね。
「『希』ちゃん、いくよー!」
『了解。次元断層シールド発動。目標全周囲、無差別』
【ネルトリンゲン】は足を止めたまま、
【M.P.M.S】や【D.U.S.S】を含めた全火力を解放。
360度、全周囲への砲撃で『デストロイウォーマシン』を墜としていくよ。
直撃をもらうのが早いか、周囲の敵を殲滅するのが早いか、勝負だよ!
●星の歌声
飛び交う無数の光条を躱しながら、転移した猟兵達は虚空を駆ける。光はどれもが致命の一撃となり得る強大な威力。その暴力的なスポットライトを舞う様に避けながら、天道・あや(|スタァーライト《夢と未来照らす一番星!》・f12190)は正面の赤黒い炎を見据えた。正面の炎――憎悪と共に自らを作り替える、恐るべきウォーマシンの姿を。
「この光景、銀河帝国との戦争を思い出すなぁ」
「規模は近いものがあるかな。ルートがほぼ開かれているだけマシ、だろうけど」
傍らの菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は『|Oracle Link《電脳ゴーグル》』に映される危険予測に従いながら、あやと共にかつての戦いに思いを馳せた。
銀河帝国攻略戦――猟兵達が初めて遭遇した、世界規模の大規模戦闘。一か月に及ぶ死闘は目覚めたばかりの猟兵達全てに、オブリビオンが齎す絶望というものを重く知らしめた。|致死の猛毒《オロチウイルス》が充満した大要塞、己が姿を変貌させる狂気の兵器、心を侵す洗脳音楽――一筋縄ではいかない強敵達との死闘を、持ち前のバイタリティで果敢に切り抜けたあや。
(……今と大して変わらなくない??)
やってる事はうん、まあ。一方の理緒は戦後の戦いに重きを置いた。未踏宙域、帝国残党、そして|帝国継承軍《サクセション・フォース》――数多の世界の中でどこよりも早くオブリビオン・フォーミュラを退治した世界。にも拘らず、戦乱の世は今も一向に納まらない。
「いやいや、あの頃よりも大きくなった筈!」
大きくなった。夢とか実力とか、あと色々……拳を握り力を溜めて、あやは彼方の炎を睨む。
「そうだね。じゃあ艦隊戦なら『ネルトリンゲン』で出るよ」
同時に理緒は懐からボトルシップ――ミネルヴァ級戦闘空母『ネルトリンゲン』の巨体を召喚する。万能型戦闘空母の名に恥じぬ滑らかな船体をちらりと見上げ、感嘆の声を上げるあや。
「……いやー、便利になったねえ、猟兵も」
船一つ準備するのも手間だったというのに、全く世界は広い。だから面白い! 頷くあやに微笑を見せて、理緒は更新された戦闘情報を滔々と読み上げる。
「斑が再び動き始めたね。防空は任せて」
「うん……懐かしむのは後!」
そうだ。倒すべき敵はすぐそこに――迎撃の砲火も勢いを増してきた。ここからが本番、あたしは猟兵、ならばやる事はただ一つ!
「エメラルド、今度こそ倒しきる……!」
不思議の世界に現れたエメラルド、その凶星を今度こそ打倒する為に。
「右よし! 左よし! あたしよし! それじゃ、突撃!」
「シールド展開。じゃあ『|希《まれ》』ちゃん、いくよー!」
『了解。次元断層シールド発動。目標全周囲、無差別』
殺到する砲火の嵐が二人の正面で爆ぜる。既にネルトリンゲンに座乗した理緒が、相棒の『|M.A.R.E《サポートAI》』と共に展開した|超常《ユーベルコード》――|Internal Rush《インターナルラッシュ》/機動性を引き換えに絶対的な攻撃と防御たる『次元断層シールド』を展開する埒外の御業によって、程無く無数の暴力が音と共に別次元の彼方へと飛ばされる。その間隙を縫う様に流星が――全速力のあやが光と共に前へ出た。
「|M.P.M.S《多目的誘導弾》、近接信管で迎撃の弾幕を。|D.U.S.S《音響攻撃装置》周波数セット、分解波動を相殺――!」
その進路を守る様に、ネルトリンゲンが全武装を展開。誘導弾による牽制の弾幕と、音響兵器による直接支援。これで守りを気にする事なく、あやは全力で敵の懐へと飛び込める!
「目立つ方を狙うよね。それじゃあ!」
ステージは整った。互いの距離が離れた所、今度はあやの番だ。目立つ巨体のネルトリンゲンからこちらへ狙いを向けさせる為、アイドルは『|レインボーハート《魂込めた自慢のギター》』をかき鳴らし、無重力にふわりと髪をなびかせた。
「セットアップ|『SR-3-15』《銀河の果てまで歌うぜ》! |Are you Ready《ブチ上げてくよ》!!」
ゴゥン! 重々しいベース音に乗って、あやの全身が七色に輝く。アイドルの|超常《ユーベルコード》――『天を越え、星をも越えたその先まで、|歌声を響かせまショータイム《夢と未来は無限大》!!』綺羅星の様な歌声が虚空に響けば、無数の火線が今度は煌びやかなアイドル目掛け殺到する!
「! D.U.S.S、対象の音域増大! 合わせてシールド、希ちゃん!」
『ええ、上げていきましょう』
この音をもっと響かせる為に――戦の音なんかつまらない。爆発、怒号、悲鳴、そんなのはもういらない! ひたすらに夢と未来は最高と、希望を望む晴れやかな|歌《祈り》が、ネルトリンゲンの音響兵器で増幅されて敵の思考を狂わせる。それらはやがて精緻な狙いの尽くを外させて、ステージ演出じみた爆光があやの周りを彩った。
「この星天超あや、こんな所で止まらないッ!」
『イェェェェェガァァァァァァッ!!』
「っと……来たね。シールド最大展張。本命だよ!」
その|音《こえ》に、未来を望まぬ悪鬼が牙を剥く。デストロイウォーマシン・斑は炎を破り、再びその姿を戦場に曝け出した。
「おっと、あの見覚えのあるシルエットは……戦争の時に戦った奴……かな!」
赤と黒と白の斑模様の装甲――でも形までは変わっちゃいない。エンペラーズマインドで刃を交えた|赤きウォーマシン《スティールエッジ》、その同型。ならば!
「甦ってたかー、でもある意味好都合! youの攻撃は覚えてるぜっ!」
「先制火力は必ず凌ぎ切るよ。今は前へ!」
早く動くモノを無差別に狙う超常の猛攻。多少の被弾は想定内と、AIの演算が導き出した|対抗手段《次元断層シールド》を即座に展開する理緒。途端、爆光が虚空へと飲み込まれる。ここから先を凌ぎ切れば、奴の手はもう届かない筈!
「さあ、あたしの歌を聴けェェェェェッ!!!!」
『イェェェェェ……ガァァァ……ァァァ!?』
そしてあやの攻撃は――ユーベルコードは|未来を望まぬ者には通じない《・・・・・・・・・・・・・》。ありえない彼方を、忘却の底に沈めた願いを、封じ込めた過去を炙り出された斑は未知の反応に恐怖した。|先制解析《ユーベルアナライザー》が仇となる――|機械の権能《デストロイマシン》が取り除いていた脅威は、マシンの五体に深刻なエラーという形で発現したのだ。
「あんたに未来があったなら、きっと辿り着けただろうさ」
「でも、そうはならなかった」
星の海を渡って辿り着けた場所にはもう、戻れない。
それがオブリビオン、世界を過去に耽溺させる虚妄の地獄。
それに囚われた斑は、あやの言葉に返す術を持っていない。だから。
「全砲門一斉射、さあ勝負だよ――デストロイウォーマシン!」
動きを止めた歪な巨艦を光と炎が飲み込んで、爆ぜる。
爆光と爆音を背に、アイドルは弦をかき鳴らす。
だから、せめてあたし達は先へ進もう。
消えていった過去の思いも、この心に乗せたまま。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ユエイン・リュンコイス
●
迷宮災厄戦から此処まで、随分と掛かってしまったね。
さぁ、征こうか。
数、質ともに隙は無し。そして先陣を切る尖兵もかつてと変わりなく、と。だが『大物』を切るのはまだだ。まずは手数で対抗しよう。
ボクは『穿月』で配下を、機人は『月墜』で艦隊と星獣を、それぞれ『制圧射撃、砲撃』で牽制。互いに死角をカバーし合いつつ、敵中を突き進み戦機への肉薄を目指す。
接近戦が可能な距離まで近づき次第、機人に速射砲を投棄させて白兵戦へ移行。ボクも二挺拳銃による射撃格闘戦を仕掛けようか。
狙うはただ一つ、絶対昇華の一撃のみ。
圧倒的な数と質を兼ね備えた軍勢は確かに脅威だ。
けれど、此方もそれに劣らぬ『個』であると自負しているよ?
ヘル・ハーヴェスター
内側宙域のオブリビオン!
外側宙域へと攻め入るならば、オレは阻もう!
【低重力適応】推進靴で疾駆し、
粒子機械盾とアーマーで攻撃を【オーラ防御】
高出力粒子砲の【レーザー射撃】で応戦!
先制攻撃も【怪力】で盾をしっかりと保持し、近接攻撃を【受け流し】!
【カウンター】を狙う!
そして、此処に送り込んでくれた者達の希望に応える為!
オレは戦う!!
粘り強く受け流し続け、攻撃を【見切り】
『デモグレルハンター』発動!
斧、剣、槍を状況に合せて使い、【部位破壊】攻撃!
連撃を見舞い、【怪力】最後に必殺のデーモン・|ブラッドサンダー《紅雷纏う拳》・パンチを叩き込む!
帝国のウォーマシンよ!我がデモスタル戦闘術を見よ!!
●それは焱より熱く
「迷宮災厄戦から此処まで、随分と掛かってしまったね」
遠くに見える憎しみの光は終わりなき過去の怨嗟。幾度と無く立ち上がり、姿を変え、猟兵の前に立ちはだかるそれは、此度の戦場でも禍々しい気配を辺り一面に充満させている。デストロイウォーマシン――かつて刃を交えた事がある|それ《・・》とは違えど、倒れても倒れても終わる事無く、恐るべき暴威を振り撒くしぶとさをユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)はよく識っていた。
「さぁ、征こうか」
傍らの黒き鋼『黒鉄機人』を片手の懸糸で手繰り寄せ、鈍く光る装甲をそっと撫でる。
「――我ら、邪を討つ双機人。機人の咆哮、聴いて慄け!」
ユエインが咆哮と共に、殺到する暴力の渦を軽やかに躱していく。光弾、波動、実体弾――属性も威力も速度も違う種々の牙を往なし、逸らして、人形達は虚空を舞う。
「流石、圧倒的な数と質を兼ね備えた軍勢は確かに脅威だ」
絶対的な先制攻撃。互いに死角をカバーしつつ獲物を見据える。小型(とは言え只人と比べれば十分に巨大だが)のウォーマシンはユエインが、大型の艦隊や|星獣《クエーサービースト》は機人がそれぞれ手にした銃砲の制圧射撃で引きつけて。
「脅威だが……ボク達もこれだけじゃあない」
「内側宙域のオブリビオン! 外側宙域へと攻め入るならば、オレは阻もう!」
僅かに開いた突破口、勇ましき掛け声と共に双角の|戦闘民族《エトランゼ》が果敢に突進した。手にした『|機械斧杖《デーモンアックス》』で並居る敵を引き千切り、抱えた『|高放出粒子砲《レーザーキャノン》』が爆光と共に道を切り開く。その姿はこれまで|小宇宙《スペースシップワールド》には存在しなかった者。
「オレはスペースデーモン星人、ヘル・ハーヴェスターだ」
「――ユエイン・リュンコイス。こっちは黒鉄機人」
遂に拓かれた未踏の地よりも先――|大宇宙《スペースオペラワールド》より馳せ参じた新たなる猟兵。厳めしくもどこか陽気な声音と共に、ヘルは心も新たに参戦の意を表明した。
「うむ。此処に送り込んでくれた者達の希望に応える為!」
かの者らが我等の宇宙を脅かすというならば、新たな隣人の希望に応え力を振るうのみ。
「オレは戦う!!」
火を噴く『|推進靴《プラズマシューズ》』の爆音と共に『|粒子機械盾《デーモンシールド》』を掲げ、ヘルは更に加速して戦いの渦中へと身を投じる。
「承知した。まずはここを突破しよう」
愛銃『穿月』の弾倉を交換し、圧縮蒸気の高鳴りを掌で受け止めるユエイン。じわりと伝わる熱量は冷たい宇宙で生を実感させる。まだ止まってない――自分も、敵も。
「――丁度来たみたいだしね」
敵旗艦接近――瞳に映される『水月の識眼』が齎した情報にユエインは口元を歪める。この時を待っていた。
「アレが帝国のウォーマシンか! 成る程、相手に不足無し!」
「そうだ。アレを叩いた先に本当の敵がいる」
戦車砲並みの長大な『月墜』で猛然と弾幕を張る機人を横目に、ユエインは懸糸を通して膨大な魔力を注ぎ込む。|切り札たる超常《ユーベルコード》――『|双擊昇華術式・絶対銃華《サブリメーション・バレットクライ》』を放つなら、今!
「絶対昇華機構、起動――」
「いざ往かん! スペースデーモン星人の誇りに掛けて!」
「どうしたどうした! |この宇宙はそんなものか《・・・・・・・・・・・》!」
会敵と同時に怒涛の砲撃を敢行するデストロイウォーマシン・斑――触れれば消し飛びかねない猛烈な|超常《ユーベルコード》の先制はされど、宇宙を股に掛けるヘルを前に一進一退の攻防を繰り広げていた。
「ハッハ! この程度デモグレル星人の戦略絨毯爆撃に比べれば……ぬおおおおッ!!」
『イェェェェェガァァァァァァッ!!』
速く動く物を無差別攻撃し続ける斑は、更に加速したヘルの軌道を追い続ける。粒子砲の精密射撃を相殺し、互いの|白兵武装《エネルギー刃》で激しく切り結ぶ。ヘルの|エネルギー装甲服《スペースデーモンアーマー》が紫電を散らし、怒涛の攻めを続ける斑の背後に、ゆっくりと小柄な影が忍び寄った。
(この速度差ならば……!)
奴はこちらに気付いてない。即座に放った|穿月《ハンドガン》の斉射が僅かに斑の気を逸らし、その隙にヘルが虚空より『|念|動五叉《ピッチフォーク》槍』を投げ放つ。
「恐るべき相手だ。けれど」
刹那の一投――光を放つ念動槍が斑の装甲に食い込んで、ヘルの|超常《ユーベルコード》が威力を放つ時が来た。
「此方もそれに劣らぬ『個』であると自負しているよ?」
二挺拳銃の斉射を続けてじろりと斑を見上げるユエイン。今、奴はボクに気を取られている――これで条件は整った。その瞬間だけ最大速度の攻撃を見せつけたユエイン、見下ろす斑の左右にはヘルと機人――モノアイを荒々しく点滅させる斑の視線に、二人の姿は映っていない……!
「その邪悪を、昇華と銃火を以て討ち滅ぼすッ!」
斑の右側方、赤熱化した機人の拳が唸りを上げる。
「我がデモスタル戦闘術を見よ!!」
斑の左側方、紅雷を纏うヘルの拳が虚空を揺らす。
『イェェェェェガァァァァァァッ!!』
咆哮と共に全周へミサイルを放つ斑――その威力ごと機人の拳がマシンの五体を吹き飛ばす!
「これが必殺のデーモン・|ブラッドサンダー《紅雷纏う拳》・パァァァンチ!!」
吹き飛ばされた先、斑に|スペースデーモン星人《デモグレルハンター》の奥義が紅雷と共に炸裂する!
「チェックメイトだ、古き鋼」
赤熱と紅雷、そして焔閃が――ユエインの『煉獄・赫』が斑を真っ二つに両断する。
地獄よりも熱く赤い三つの火は、冷たい宇宙を希望と共に煌々と照らしていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ルナ・シュテル
任務、了解致しました。
LNA-1120、死地を斬り開きます。
先ずは周辺の敵勢力分布及び挙動を【情報収集】、攻撃行動予測を策定。
「斑」の先制UCが無差別範囲攻撃であることから、彼の攻撃に続き配下が攻撃を仕掛けてくるものと予測されます。
【ハッキング】を以て周辺空間情報書き換え、自身への光学【迷彩】を併せ自らの位置情報を欺瞞することで狙いをずらすことで、直接私を狙う攻撃を減らした上で、無差別に放たれる攻撃を回避。
先制UCを凌ぎ次第、偽の位置情報を再設定、以て配下の攻撃も逸らしにかかります。
同時に「斑」へと接近を。配下の攻撃を受ける可能性が一番低いのは彼の周辺と判断されます故。
「斑」に対してはUC発動が可能となり次第空想幻想衰色世界を発動、現実と異なる方向にいる私を攻撃し仕留める光景を見せて手を止めさせ、その隙に接近。
Letheborgを展開、狙える限りでの致命部位を狙っての【暗殺】を試みます。
秋月・信子
●SPD
銀河帝国残党『闇の騎士』と猟書家『プリンセス・エメラルド』が従える銀河帝国ですら手を焼かせていたクエーサービーストの連合軍…最初の戦争でこの状況となっていればどうなっていたか分かりませんね
ですが、こちらも3年に渡る戦いの末に相応の力を有するに至っています
敵艦隊旗艦のクリスタルシップへ接敵する為にも、挟撃の憂いを断つためにMk-IIで殲滅させて頂きます
敵艦隊に熱源反応感知、先制砲撃をした後にクエーサービーストによる蹂躙となれば…まずは砲撃からやり過ごすしかありません
バインダービット、シールドモード!
8基のバインダービットを機体のみならず仲間も取り囲むように展開し、互いに連結し合う【オーラ防御】と同等のエネルギーフィールドで砲撃を防御
後続のクエーサービーストにはハンディブラスターで脳や心臓に相当する箇所を【狙撃】し、無力化を図っていきます
砲撃が止んだら次弾が放たれる前に敵艦隊へ接敵する中で、バインダービットのシールドモードを解除して『オーバーブースト・マキシマイザー』で反撃に転じます
●浸透突破
「銀河帝国残党『|闇の騎士《オブリビオン・フォースナイト》』と『|星獣《クエーサービースト》』の連合軍……最初の戦争でこの状況となっていればどうなっていたか分かりませんね」
四方を爆光で埋め尽くされたモニタを見やり、秋月・信子(|魔弾の射手《フリーシューター》・f00732)は静かに息を吐く。脳裏を過るかつての死闘――精鋭たる重騎兵、恐るべき銃士、超巨大戦艦、どれもが一筋縄ではいかない強敵達だった。
「四年前の時点では我々の力も今ほどではありませんでした。ある意味リスアット・スターゲイザーが戦力を整える前に、決着を付けられたのは不幸中の幸いだったのでしょう」
味方からの通信――同宙域に転移したルナ・シュテル(Resonate1120・f18044)の声。彼女もまた|小宇宙世界《スペースシップワールド》に生を受けた|強化人間《バイオロイド》の一人。銀河帝国攻略戦のデータベースに残る最大の敵『銀河皇帝』がこの戦力を有していれば……|大破壊《カタストロフ》が起こっていてもおかしくは無い。そう断言出来る程の強大な、圧倒的な破壊が眼前で繰り広げられていた。
「ですが、こちらもこれまでの戦いの末に相応の力を有するに至っています。行きましょう」
|帝国継承軍《サクセション・フォース》――皇帝すら手を焼いた恐るべき軍勢を従える猟書家『プリンセス・エメラルド』を倒さない限り、この世界に明日は無い。今は敵旗艦『ソング・オブ・オーンブル』へ僅かでも近付く為に。
「――任務、了解致しました。LNA-1120、死地を斬り開きます」
牙無き者の祈りを胸に、二人の猟兵は地獄の渦中へと歩を進めた。
「熱源反応感知、矢張り早い……ですが」
殺到する数多の殺意は光と爆発に姿を変えて二人の行く手を阻む。航宙戦闘に|最適化《チューンナップ》したクロムキャバリア『ピースメーカー Mk-II』を駆り宙を舞う信子と、|脚部の『Polaris』《圧縮プラズマ噴出機構》で推し進むルナが二条の光の帯を描き、それを追う様に無数の機械と星獣が押し寄せる。
「……攻撃行動予測策定、空間情報欺瞞開始」
だが、それは織り込み済みだ。予め測っていた戦域と敵群の挙動を策定し、宙を満たすエーテルごと物理的に空間情報を|書き換え《ハッキング》るルナ。途端、数多の火線は見当違いの方角に色取り取りの爆光を咲かせる。
「火力はデコイに集中させました。今ならば」
「了解。バインダービット、シールドモード!」
それでも尚、敵の攻撃は激しい。すかさずMk-IIに備えられたバインダーが宙へ展開し、規則的な挙動で二人を守る盾となる。これで流れ弾の心配は無い……問題はここから。
「……斑、再起動を確認。来ます」
『雑魚は放っといて、ここの突破に集中して!』
「言われなくても!」
MK-IIのコクピットに響く『|イマジナリーシャドウ《姉なる影》』の声と共に、ルナの『|BloodyTears《眼球型電脳観測機》』が捉えた新たな敵――デストロイウォーマシン・斑が炎を纏い、ボロボロの船体を再生しながら二人の元へ迫る。
「ドローン展開、ドール各員は陽動を。欺瞞情報再設定」
「時間はこちらで稼ぎます。さあ!」
バインダーはまだ持つ。幸い初動の欺瞞行動で敵の先制部隊の矛先はこちらには向いてない。電磁障壁が放つ紫電を払い除けて、信子はペダルを強く踏み抜いた。
『鬱陶しい化け物め……!』
「姉さん!」
同時にMk-IIの|熱線銃《ブラスター》が彼方の星獣を狙い撃つ。イマジナリーによる自動制御――分解波動の射線を僅かにずらし、背後で鉄屑が音も無く掻き消える。あと少し遅れたら自分がそうなっていたかもしれない。ぞわりと背後を伝う冷たいモノが、スティックを握る手に否応なく力を加えた。
『イェェェェェガァァァァァァッ!!』
『今は計器に集中なさい。大きいのが来るわよ!』
「!」
レーダーを埋め尽くす強大なエネルギー反応――斑の『|クリムゾンバースト《全武装全力砲撃》』が渦を巻いてMk-IIの行く手を遮る。だが出所さえ分かれば/マニューバ切替、|追従回避《オートセーフティ》/渦の隙間を縫う様にMk-IIは宙を裂く稲妻と化す。
『振り切った……!』
「シールド解除! Mk-II、オーバーブースト!」
既に速度は最大、そのままマシンのリミッターを解除/翼の様に背中で展開したバインダーが七色の光を放ち、Mk-IIは一気に斑の船体へと肉薄する!
「ターゲットロック、フルバースト!」
刹那、煌々と燃える船体を舐める様に光が舞う。遅れて広がる爆炎は信子の超常――『オーバーブースト・マキシマイザー』で放たれた最大出力の熱線銃の乱射。ひび割れた船体に沿って、斑は再び炎の中へと沈んでいく。
「やっ……たの……?」
『まだだ!』
しかしその戦意は、怒りは未だ衰えず。生き残った砲塔がMk-IIを真正面に捉え、反撃の光条が漆黒を切り裂いた。
「…………攻撃が逸れた?」
光条は真っ直ぐにMk-IIの背後を――何も無い空間を貫いて。
「――配下の攻撃を受ける可能性が一番低いのは彼の周辺と判断されます故」
氷の様な冷たい声が、響く。
「そして配下は未だ、|私の人形《LucyDoll》に夢中の様で」
両手に『|Lethebolg《光の刃》』を展開し、声の主――ルナはいつの間にか斑の背後へ潜り込んでいた。
『……イェェェェェ……ガァァァァァァッ!!』
片や戦闘用ウォーマシン。片や高機能型バイオロイド。体躯の差は歴然――されど、密やかに事を成すにはこの位が丁度良い。
「では、貴方様の願望を叶える世界にご案内致しましょう」
吼える斑の両手が虚しく宙を斬る――ルナの『|空想幻想衰色世界《ラ・セニョリータ・ヴィルチュアル》』は対象の願望を叶える|魔性《ユーベルコード》。解析し反撃に転じる暇にそこにいない|ルナの幻影を真っ二つに断ち切った《・・・・・・・・・・・・・・・・》斑は、宙に虚しく咆哮する。
「死んで貰います」
一閃、装甲の裂け目を丁寧に捌いて。光が斑の両腕を虚空へ還した。
「では、ごきげんよう」
一礼しプラズマが炎から急速に離れていく。彼の|願い《欲望》が叶えられた今、反撃へ転じられる前に最速でここを離脱する。これでいい。
たとえ偽りの本望だとしても、その一瞬に彼は救われたのだから。
想いは骸の海に沈んで、戦いは終焉へと加速する。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
カイム・クローバー
●
|最前線《地獄》なら今まで何度も潜って来たぜ。
コレも想定の内さ。ま、ちょいとばかり…アチラさんの数が多いようだがね。
大軍勢を前に口笛でも吹きつつ。こりゃ壮観だな。帝国継承軍。【悪目立ち】せずともしっかり俺を捉えてくれてる。これがイケメンを映すカメラなら、ウインクの一つでもくれてやりたいトコだが。
理性を排した暴走モードに入ったウォーマシンの攻撃を【見切り】、大量の配下の攻撃の前に誘導。
デカイ殺戮機械なら、配下の攻撃の盾にするには申し分ないだろ?
UCで猟犬を生み出し、紫雷の鎖で互いに繋ぐ。その間に囮としてもう一匹の猟犬を走らせる。
レーザービーム?ビームサーベル?それとも大量のミサイル?自爆攻撃でも構わねぇさ。
【怪力】で鎖を振り回し、暴走状態の斑を大量の配下の集団に叩き込む。
上手く行けば戦艦の爆発と言う綺麗な花火が見られるだろう。
――42号艦だっけ?通信は送れるのかい?
別に送れなくても良い。見えるかい?これが反撃の狼煙だ。あっちの軍勢の規模に比べりゃ、シケた花火だが…希望を灯すには十分だろ?
●Dead Field
『敵前線部隊、損耗率55%! これなら……!?』
『敵艦接近……斑だ! シールド最大展張、何としてもここを凌げ!』
炸裂する無数の爆発が装甲越しのモニタを揺らす。防戦一方の42号に迫る悪しき炎――デストロイウォーマシン『斑』は満身創痍ながら、怨嗟を込めたプラズマを撒き散らして古びた巨艦を目指し、その速度を緩めない。
「|最前線《地獄》なら今まで何度も潜って来たぜ。コレも想定の内さ」
ふと、宇宙に零れる軽薄ながら芯のある言葉。何故ならば|事実だから《・・・・・》。数多の戦禍を潜り抜けたその男――カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)はふらりと42号の前に躍り出た。身に纏うは|小宇宙謹製の宇宙服《スペースシップワールドの至宝》、それに『神殺しの魔剣』と『|オルトロス《二丁の魔銃》』を携えて、カイムは口笛を吹きつつ周囲を流し見る。
「ま、ちょいとばかり……アチラさんの数が多いようだがね」
斑が放つ炎を囲む様に大小雑多な航宙艦艇、|星獣《クエーサービースト》、|戦狂い《ウォーマシン》、苛烈にして荘厳にして醜悪な歓待を前に、カイムはわざとらしく頭を振った。
「これがイケメンを映すカメラなら、ウインクの一つでもくれてやりたいトコだが」
ぎょろりと瞬く望遠レンズの反射光をカイムは見逃さない。代わりにくれてやるのは|開幕の合図《クイックドロウ》。彼方のレンズを抜き射ちで砕き、反動でひらりと影が舞う。
「遅い遅い。そんなんじゃ幾ら経っても|向こう《大宇宙》にゃ届かないぜ? っと」
その影を掻き消す様に殺到したのは数多の暴力。ミサイルの雨、分解波動の絶叫、色取り取りの光条はされど、掻き消した影の向こうに悠然と揺蕩う男を捉える事は出来ない。
「肖像権って知ってるか? 撮るってなら……」
『イェェェェェガァァァァァァッ!!』
覚悟無き視線は|深淵《カイム》を理解出来ない。落とされるのは俺じゃない――返す刃の魔銃と魔剣が殺到する殺意の尽くを打ち砕き、遂に斑は男と対峙した。
「こっから先は|有料《おしごと》だ。お代はお前らの|チップ《生命》で払ってもらおうか!」
瞬間、迸る紫電が暗黒を飲み込む『|迅雷の猟犬《ライトニング・チェイサー》』と化す。カイムの|超常《ユーベルコード》――猟犬は肥大したエネルギーの巨体を存分に見せつけて、纏う雷を四方に放って斑の船体に果敢に噛み付いた。
「申し分ない図体だな。だから、お熱い合いの手はそっちで受けてくれ」
『イェェェェェ……ガァァァァァァッ!!』
稲妻の牙が大穴を穿ち、漏れ出るプラズマを盛大な花火に変える。悪目立ちし過ぎる鮮やかな巨体に向けて、無数の暴力がその軌道をカイムと42号から猟犬へと変えた時、獣に喰らいつかれた狂機が荒れ狂う嵐の様に全身の武装を花開く。
「レーザービーム? ビームサーベル? それとも大量のミサイル? 自爆攻撃でも構わねぇさ。お代わりは幾らでもある」
正に狙い通り――一つは同士討ち、もう一つは|斑そのものを報復兵器に仕立てる事《・・・・・・・・・・・・・・・・》。猟犬の首輪、そこから伸びる斑に絡みついた紫雷の鎖を手にするカイムは、さながら猛獣使いの如き華麗な仕草でその巨体を鉄球の様に振り回した。
「――42号艦だっけ? 通信は送れるのかい?」
サーカスの様に暴力を手懐けて振り回すカイム。放たれた怒りの炎が飲み込むのは猟兵では無い。紫電を纏った斑の巨体は友軍の群れに飛び込んで、互いを喰らう様に暴力は続々と連鎖する。赤、黄色、白――光が瞬く度に弱きモノは骸の海へと還される。敵も味方も無い。生存の為に全力を尽くさねば、滅び去るのは己だから。
『ああ……ど……した……こっちは援護を送れる状況じゃあ無いぞ!』
「焦んなって、イイ男が台無しだ……見えるかい?」
乱れた通信に涼しい声で言葉を返すカイム。パーティーは盛況――乱れ散る鉄と肉に爆光を添えて、それを見せつける様に座標を送信……相変わらず便利だねぇ、この|宇宙服《ドレス》は。
「これが反撃の狼煙だ。あっちの軍勢の規模に比べりゃ、シケた花火だが……」
途端、42号のメインモニタに極彩色の綺麗な花火が映される。不規則に爆ぜ散るのは敵艦艇とウォーマシン、その中心で吼える真紅の巨艦は斑――雷の猟犬から逃れる様に乱れ狂うマシンは楕円軌道で振り回されて、前衛艦隊の尽くを自らの暴力で屠っていた。否、屠らざるを得なかった。
「希望を灯すには十分だろ?」
『間違い……無え。こんなの見せられちゃあな』
怪力を込めたカイムの手が生み出すのは破壊では無い。その力は味方の心を奮わせる勇気と希望を伝播する。それこそが猟兵の齎した、世界を変える力の源。
『ああ。何としても持ち堪えてみせるさ!』
「イエス。その言葉を待っていた」
これまでも、これからも。その火を人々の心へ灯し続ける為に。
成功
🔵🔵🔴
ヘスティア・イクテュス
●
長かったわねプリンセス・エメラルド…迷宮災厄戦からもう2年半?
スペースオペラワールドにたどり着いた今、残り少ないこの世界の憂いを今ここで断つわ!
デストロイウォーマシン!銀河帝国攻略戦ぶりに見たわね!!
じゃあ、まずは数の有利を崩させてもらおうかしら!
(指を鳴らし)フェアリーサークル!対象は斑を除いた『ハッキング』可能な艦隊と配下達!
UCを防御し解析するなら対象から外してしまえば良い!
数が不利なら海賊らしく奪ってしまえばいいってね!
同士討ちを発生させて、その混乱に乗じてステルス『迷彩』状態で接近
ミスティルテイン改め、レーヴァティとマイクロミサイルの『一斉発射』でトドメ!!
そっちが戦力を整えるのと同じく、こっちも色々|強化《アップデート》してるのよ!
リア・ファル
この世界で|創《う》まれたボクにも、因縁と言える戦いだ
それでも
ボクは戦う。今を生きる誰かの明日の為に!
「次元開孔プログラム正常、パーツ射出!」
『イルダーナ』呼び出したパーツと合体し、『ガーネレイ』へ
『ライブラリデッキ』製のナノマシン封入弾をセット、
交戦相手に射撃し、電脳魔術で介入
同士討ちも構わず撃ってくるのなら、
ハッキングした相手の電子制御や火器管制を奪って、操作
ボクが凌げる死角を作る
【真の姿:フルスペックAI】へ|スリープモード解除《ウェイクアップ》
さあ、道を空けてもらおうか
【すべての魔術は三界に通ず】!
全ての魔導書よ、ボクの手に集え
失われし技術を、此処に
プロトコル解析、新規構築完了
本宙域の敵性ウォーマシンに接続
admin権限、上書き
システムオールダウン
もう燃えさかることなかれ
滾ることなかれ
虚ろであることなかれ
安寧のまま、大海に抱かれ静かに眠れ
●波濤を越えて
「ったく、鬱陶しいったらありゃしない!」
『左翼に展開した敵艦隊は壊滅、残存艦艇群に集結の兆候あり』
「流石、運用も柔軟だ。次回会敵予測を共有するよ、ヘスティアさん」
戦艦42号を狙った悍ましき軍団、その数々と一対の光が対峙していた。左翼側に展開していた部隊の尽くは流星の様に駆け抜ける光――瞬く『|ティターニア《高速推進器》』を背負うヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)と、『|イルダーナ《航宙戦闘機》』に跨るリア・ファル(|三界の魔術師《トライオーシャン・ナビゲーター》・f04685)――二人の頑強な抵抗を受け、遂にその力を失いつつあった。
「サンキューリア。それにしても長かったわね、プリンセス・エメラルド……迷宮災厄戦からもう2年半?」
「あの時は道を拓いて塞ぐのが精一杯だった。でも今回は違う――」
余りにも圧倒的な猟兵に対し、前衛艦隊は残る全ての力を結集し立ち向かわんと陣を組む。リアから受け取った情報を精査しヘスティアは思案して――|あの頃の戦い《銀河帝国攻略戦》、そして|全ての始まりの戦い《迷宮災厄戦》――かつてと同じ様に広範な戦場は猟兵の働きで制圧され、今ここも同じく終わりを迎えようとしている。
「この世界で|創《う》まれたボクにも、因縁と言える戦いだ」
『はい。これは我々の|ケジメ《・・・》でしょう』
「こんな喧嘩、正直買取り拒否したい所よ!」
骸の海より出でし怨嗟の化身らは再び宇宙の海を侵さんと、機械も獣もなく寄り集まる。それこそが彼女らの狙いであるとも知らず。
「それでも――ボクは戦う。今を生きる誰かの明日の為に!」
「ええ。|大宇宙《スペースオペラワールド》にたどり着いた今、残り少ないこの世界の憂いを今ここで断つわ!」
瞬間、津波の様な閃光が、漆黒を白く染める。
それが再開の合図となった。
『イェェェェェガァァァァァァッ!!』
「デストロイウォーマシン! 銀河帝国攻略戦ぶりに見たわね!!」
『相変わらずしぶとい|機械《マシン》ですが……』
呆れた口調で|アベル《サポートAI》が宣う。機能を発揮する道具として『斑』のしつこさはある種の敬意すら覚える。が、全身から炎を噴いて、今にも崩れ落ちそうな継接ぎのボディはまるで|幽霊《ゴースト》――|本能《プログラム》に縛られし哀れな奴隷。
「予測通り、残りが全部『斑』の前に出てきたね!」
「逃げ場は無いもの。じゃあ、まずは数の有利を崩させてもらおうかしら!」
その炎を守る様に、無数の敵意が一斉に牙を剥く。それすらも織り込み済み――分かたれた二人は即座にそれぞれの端末を起動し、途端に苛烈な弾幕は四方を彩る無為な花火と化した。
「フェアリーサークル! 対象は斑を除いた『ハッキング』可能な艦隊と配下達!」
「助かるよ。五秒もあればこっちも十分……次元開孔プログラム正常、パーツ射出!」
ヘスティアの卓越した|ハッキング《ユーベルコード》が骸の機動兵器を尽く無力化――その間隙にリアの声と共に、虚空を割って白銀の装甲が壮麗な姿を現す。
「ドッキングセンサー! ガーネレイ、|起動《Stand up》!」
リアが跨る『|イルダーナ《航宙戦闘機》』を貫く様に薄緑の一条の光が装甲より伸びて、まるで包み込む様に広がった装甲がリアを取り込み、|X式専用兵装《クロスキャバリア》『ガーネレイ』へと転じた。
『稀代の電脳魔術の共演に、どこまで耐えられるでしょう』
「あなたもやるのよ! アベル!」
軽口混じりにヘスティアは猛烈な電脳戦の手を止めない。これで先制打を加えて来た機械は無力化出来た。しかし|星獣《クエーサービースト》は残っている。その力も奪われるとは露知らず、無色の波動が空を揺らしてガーネレイを屠らんと巨大な獣が立ち塞がった。
「数が不利なら海賊らしく奪ってしまえばいいってね!」
「ナノマシン封入弾セット、さあ、道を空けてもらおうか!」
電脳魔術なのだ。如何に獣だろうとその術を防ぐ手立てはない。撃ち込まれた|魔法の弾《ナノマシン封入弾》が星獣の神経を狂わせ、最早この宙域にいる者は猟兵を敵として認識する事は出来なくなった。ただ一人を除いて。
『イェェェェェガァァァァァァッ!!』
「呼ばれなくても逃げないわよ! あなたは狙わないけど!」
さながら|魔獣《ビースト》を諫める妖精の如く、ヘスティアは斑の巨大な船体をなぞる様に宙を舞う。相手の|超常《ユーベルコード》はカウンター型。そんな事は十分承知――ならば|当てなければどうという事は無い《・・・・・・・・・・・・・・・》。
「そうさ、こっちを見るんだ」
そして斑を煽る様に虹色の光を噴いて、ガーネレイが真正面に立ちはだかる。ボクが凌げる死角は十分。残敵は既に同士討ちを始めて、赤いマシンを守る仲間はもういない。
「アカシックレコード、|接続《access》――|電脳魔術化、完了《compile complete》。|スリープモード解除《Wake up》!」
虹色の光が長髪の様になびいて、ガーネレイはさながら戦場の女神の如き威容を示す。|真の姿《フルスペックAI》――|三界の魔術師《リア・ファル》は|妖精の女王《ヘスティア・イクテュス》と共に、決着をつけるべく全てを開放した。
「|すべての魔術は三界に通ず《Singularity Magic Theory》! 全ての魔導書よ、ボクの手に集え――」
「アベル、アクティブステルス! |全武装同期、照準合わせ《オールウェポンフリー》!」
『イエス、マム。|レーヴァティ《ビームライフル》、フルドライブ。マイクロミサイル、ターゲットロック』
妖精はその身を隠し、ひたすらに威力を貯える。斑は女神にご執心――討つべきは今。魔導書めいた|戦闘端末《ドローン》を侍らせたガーネレイに、赤い狂機が唸りを上げて。
『イェェェェェ……ガァァァァァァッ!!』
背後で凄まじく爆ぜ散る|骸の同志《オブリビオン》達。生命を飲み込む光を浴びて、対峙した力と力が漆黒の宇宙を鮮やかに染め上げる。
「失われし技術を、此処に」
「さあ、派手に行くわよ!」
そして互いの運命を賭けて、魂が激しくぶつかった。
「大した攻撃だけど、こっちだってね」
最早視界を占めるのは暴力のみ。活火山の様に怒涛の連撃がヘスティアを襲う。掠れば絶命、そんな必滅の束をすり抜けて、妖精は軽やかに光を撒き散らす。
「そっちが戦力を整えるのと同じく、色々|強化《アップデート》してるのよ!」
『お嬢様、十秒後に敵の斉射がコンマ三秒止みます』
リンクした戦術情報が導き出した突破口――こちらの威力も十分だ。これまで数多の修羅場を潜り抜けて来たのは伊達では無い。
「了解……用意はいい、アベル!」
ヘスティアの眼前を覆うホログラフィックサイトに無数の照準が示される。特大の一撃を当てるのは――今!
「大盤振る舞いよ、全部持って行きなさい!」
『ガァァァァァァ……!?!?!?』
僅かに止んだ波濤を破り、光条と爆光の束が斑の巨体を覆い、貫いた。船体の機動から予測されるコアマシンの一を寸分違わず穿った妖精の刃が虚空に溶け消えたと同時に、白銀の|超常機《クロスキャバリア》が諸手を上げて、侍らせた端末で斑の全身を豪雨の様に包み込む。
(プロトコル解析、新規構築完了。本宙域の敵性ウォーマシンに接続)
沈黙したコアマシンの再起動前に終わらせる。攻性防壁も物理的な反撃も無い今ならば――斑の深くに潜り込んだリアの意識が、澱んだ骸の記憶を掬い上げて。
(admin権限、上書き。システムオールダウン)
網の目の様に張り巡らされた彼の者の魂を読み解き、新たなる使命を書き上げる。
(そうか……キミは)
その最中、リアは見知った『|記録《ログ》』を覗き見た。
(|あの船に、いたんだね《・・・・・・・・・・》)
それは深く、静かな海の底――揺蕩う鉄の墓場の守り人だった、マシンの記憶。
頁をそっと閉じ、今度こそ、とリアはその情報を厳重に封印した。
「もう、燃えさかることなかれ。滾ることなかれ」
消しても良かった。でも、それは出来なかった。
そうしてしまえば直ぐに終わる。でも、それはリアの在り方も否定する事になる。
「虚ろであることなかれ。君が遺したモノは、今も世界で輝いているのだから」
敵であれ、骸であれ、それは確かに彼の者の|かつての明日《・・・・・・》だったから。
「安寧のまま、大海に抱かれ静かに眠れ」
もう二度と交わらぬ事を願って。
漆黒に静寂が戻る――骸の先に見えるもの、それは。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『征竜前線バスタード』
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POW : 『葬竜極光』グローリア・レイ
【エネルギー充填完了のサイレン】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【島を薙ぎ払う島底の砲門を開放。粒子加速器】で囲まれた内部に【エネルギーを収束、戦場に加速した荷電粒子】を落とし、極大ダメージを与える。
SPD : 『無命天使』マキナ・エンゼルズ
【島内部の倉庫】から、戦場全体に「敵味方を識別する【複数の機械天使兵】」を放ち、ダメージと【物量により萎縮と束縛】の状態異常を与える。
WIZ : 『撃竜嵐纏』ドラグバスター・テンペスト
【周囲を巨大低気圧の渦で覆う。外側を暴風、】【内部を稲妻で守り近づく物を粉砕する。】【粉砕した物を回収する事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ビードット・ワイワイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●震える星
『報告! 正面に不明なエネルギー体が出現! 恒星級の磁気嵐……いや、星嵐というか』
『はっきりしろ。あれは何だ?』
斑を退けた猟兵達の前に現れたモノ――それはクエーサービーストに匹敵する何者かであった。その様を遠くより見ていた42号艦長は想定外の脅威の出現に強く拳を握り締める。
『……恒星級の敵性存在の出現を感知。詳細は不明』
全体を真っ白いエネルギー体で覆ったそれは、敵旗艦『ソング・オブ・オーンブル』を守る様に、さながら宇宙の壁じみた威容で猟兵達の前に立ちはだかる。アレを倒さなければ先には進めない。だが猟兵達に惑星ロボを用意する事は出来ない――どう足搔いても間に合わないのだ。
ならば、と艦長はメインスクリーンを見上げすっと立ち上がる。
『だったら引っぺがしてやりゃあいいだろ。42号、要塞崩し発射形態へ移行! 一分で済ませろ!』
『しかし! 当艦も決して万全の状態では』
要塞崩し――かつて猟兵がこの艦の再建時に齎した規格外兵装。確かにそれならば正面の巨大な敵に一泡吹かせることは可能だろう。しかし艦内の全エネルギーを引き換えにするこの超兵器を使えば、42号は今度こそ二度と動く事は出来なくなる。
『分かるよ。だがここで引いたらおしまいだ。だったら進むしか無えだろ!』
それでも、引いた所で脅威は無くならない。むしろ事態は確実に悪化するならば、これは命を懸けるに値する戦いだ。艦長の決意は揺るがない――最早後は無い。
『……了解。システム移行、防護シャッター下ろします』
『コアマシン出力120%、エネルギー変換炉全力稼働、コンデンサ全段直結』
『フライホイールに定格の出力が溜まってません。このままでは動けなくなります!』
『…………』
機関長の悲鳴が艦橋にこだまする。矢張り時間が足りない――この一射を外さなかったとしても、反撃で自分たちは確実に葬られる。沈黙する艦長の元に慇懃無礼な声が届いた。
『そこは任せてもらおう。シルバー、カニ装置の状態は』
『ピンピンのビンビンです。やれます』
サブモニタにペンギン二匹がひょっこりと顔を出す。先の戦いで猟兵達を転移させた装置を使えば、この局面を脱する事が出来るという事だ。既にゴールド座する氷山丸三世号は42号の側方で待機中。後は決断するだけだ。
『ありがてえ……どっちみち俺らはここで最後だ』
『あの雲の奥に敵がいる。猟兵、分かっているな?』
そこまで届けるのが俺たちの使命だと言わんばかりに、ゴールドが戦場の猟兵に語り掛ける。あの壁を越えた先にこそ敵の首魁――プリンセス・エメラルドが待ち受けているのだ。
『射線クリア、照準誤差修正完了。行けます』
もう止められない。42号の戦術長が声を上げて、両艦の乗組員一同は決死の覚悟を決めた。
『よっし! ペンギンの大将、タイミング合わせろよ?』
瞼を閉じて深く頷くゴールド。大分疲労も溜まっている……だが夜明けを迎える為にも、今は絶対に引かない。
『3、2、1――発射!』
『|超物質転送《スーパーカニ》装置最大稼働、空間転送レンズ形成――照射!』
声と共に光が広がる。渦を巻いて放たれた特大のエネルギー波は真っ白い壁を突き破り、それを形成していたエネルギー体を巻き込んで消し飛ばす。これで後は進むだけ――そう思った刹那。
『なんだこれは!』
艦長の目に映ったものは|無傷の巨大な要塞《・・・・・・・・》。恒星級エネルギーの発生源たる最後の砦。
露払いの向こう、現れた強烈な敵意。
|永遠の空の世界《ブルーアルカディア》を超えて、|恐るべき星獣《クエーサービースト》を食らい、奴は現れた。
征竜前線バスタード――小惑星級の禁断の要塞が今、目覚める。
アトシュ・スカーレット(サポート)
性格
悪ガキから少し成長したが、やっぱり戦うのは好き
大人に見られるように見た目的にも精神的にも背伸びしている
目の前で助けられる人がいるなら積極的に救おうとする
口調は「〜だな。」など男性的
戦闘
【呪詛(腐敗)】と「棘」を組み合わせ、万物を強引に腐敗させる方法をついに編み出した
前衛も後衛もやれる万能型だが、前衛の方が好き
複数の武器を同時に操ることも可能
高速戦闘も力任せの戦闘も状況に応じて使い分ける
(装備していれば)キャバリアにも対応可
光や聖属性は使えません
非戦闘
聞き耳などを駆使した情報収集を中心とする
化術で動物に化けて偵察することも
エン・ジャッカル(サポート)
自分自身の戦闘力は邪神の眷属に対して辛勝する程度でしかないので、アヌビス号と変形合体して戦うのが基本となります。
アヌビス号と変形合体した後は、両腕にあるシールドガンで射撃したり、ブースターで肉薄して格闘戦を仕掛けたりするのがメインとなります。
敵からの攻撃にはAマシンヘルムに内蔵されている危機察知機能が敵の攻撃を察してビー!と警告音を鳴らし、それを聞いた私が直ぐ様にシールドガンで防御態勢に構えるか、ブースターで緊急回避行動を試みます。
他に仲間がいる場合は、敵のヘイトを稼いで仲間から意識を逸らせたりして盾役を務めます。ただし盾役を務める仲間がいる場合は攻撃役に切り替えます。
連携アドリブ大歓迎です。
ヘスティア・イクテュス
●
んー要塞崩しで無傷…か
こうなりゃ直接内部に仕掛けたほうが良さそうね…
んじゃ、ヘスティア・イクテュス吶喊するわよ!
ティターニアで|『空中戦』《【空中機動&推力移動】》、プチヘス達と共に爆薬仕掛ける工作に出るわ!
アベルは『ハッキング』と|情報分析《【情報収集】》あれの構造の弱いとこから仕掛け位置をよろしく!
機械天使兵ね、物量ならこっちも負けるつもり無いわよ!【集団戦術】
接近される前にマイクロミサイルとレーヴァティのビームの『弾幕&一斉発射』【範囲攻撃】でまずは数を減らす!
後は数の有利を取れるよう指示しつつ減らしていくわ!
内部に潜入して爆薬の設置、離脱!
あるなら他の人のUCで、なさそうなら自身でそのまま起爆を
●Take me higher
「んー要塞崩しで無傷……か」
ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)の視界を占める|超巨大要塞《バスタード》――先の痛烈な一撃すら歯牙にもかけず、唸り声の様な機関の音を響かせながら、それは悠然と空間を塞いでいた。
「こうなりゃ直接内部に仕掛けたほうが良さそうね……」
『しかし現有戦力のまま先駆けて敵の懐に入るのも危険です。ここは焦らず――』
音が届かない宇宙においていつもの|便利な宇宙服《・・・・・・》越しに伝わった音は、ヘスティアの脳裏にかつての激戦を想起させた。エンペラーズマインドの様に、この手の要塞には大体そういう無茶苦茶な大砲が付いている(偏見)――つまり、時間を掛ければ奴に最悪な先手を打たれかねない。
「待っててどうにかなるモンでもないでしょ。ヘスティア・イクテュス吶喊するわよ!」
叫ぶと同時に背負った|ティターニア《スラスター》が青白い炎を吐く。上下二対の炎はさながら鬼火を灯した|髑髏《クロスボーン》の様――加速するヘスティアへ、不意に警告がけたたましくティアラから鳴り響いた。
「って早速何よ……キャバリアの大群?」
『天使核反応を多数検知。ブルーアルカディアの機動兵器の類でしょう』
敵はブルーアルカディアから転移した要塞の動力にクエーサービーストを組み込んだ|特注品《ゲテモノ》だ。本来ならば人間サイズであろう無人機動兵器の尽くは、要塞の巨大化に合わせて全てがキャバリア並みの巨体と化していた。|AI端末《アベル》が映したレーダーモニタは既に、その殆どが真っ赤に染まっている。
「成程ね。じゃあ一気に抜けるわよ! アベルは『ハッキング』と情報分析。|要塞《あれ》の構造の弱いとこから仕掛け位置をよろしく!」
『ですがお嬢様……我々は既に囲まれております』
その赤はヘスティアの加速よりも早く、大波の様にヘスティアの全周を球の様に包み込んでいた。赤い色は徐々に距離を詰めて――このままでは進む事も引く事も適わない。
『突破は間に合いません。敵の展開が速過ぎます』
「いつの間に……もっと早く言いなさいよ!」
歯噛みするヘスティア――視界に入った天使の如き機械兵は雲霞の如く押し寄せる。速度も距離も一定、徹底して統率の取れたマシン軍団の包囲網は余りにも迅速過ぎた。これでは要塞どころでは無い。
「こっちの加速に合わせて包囲してるっての? 冗談じゃないわ!」
ヘスティアに向けた無数の銃口に火が点る。キャバリアサイズの大口径砲だ――迂闊に進めばその物量でたちまち圧殺されてしまう。進退窮まった、その時。
「そう焦るなって」
瞬間、聞き慣れた男の声がヘスティアに届くと同時に、眼前の機械天使が続々と爆発していく。キャバリア? 友軍か? だがそんな反応は先程まで存在しなかった。
「いつも囲んできた罰です、多分」
もう一つ、背後からも声が――無数の火線を遮る巨大な盾を携えたキャバリアが、圧倒的な火力からヘスティアの背中を守る。そうか……|部隊の展開速度《・・・・・・・》なら猟兵だって負けてはいない。
「まあ相変わらずな様で安心したぜ。大丈夫か?」
「戦場では久しぶりですね、ヘスティアさん。これより援護に入ります」
「アトシュ……エン……!」
グリモアの奇跡『|緊急転移《サポート》』という偶然が手繰り寄せた頼もしい戦友――アトシュ・スカーレット(神擬の人擬・f00811)とエン・ジャッカル(風来の旅人・f04461)の姿。ユーベルコード『|証明消失術・反転式《ベヴァイス・ドゥム》』の存在消失によるアトシュの奇襲が、ヘスティアを先の窮地から救い出したのだ。
「相手は天使様か。面白い……行こうぜエン!」
魔導の機関が唸りを上げて、アトシュのキャバリア『Aurora』が虹色の光を放つ。|調律《チューニング》は万全。禍々しい剣を携えた光跡が敵群へ飛び込めば、爆光が再び戦場を彩って。
「勿論です。G-MODE起動――飛ばしますよ!」
エンの声と共に愛機『フルアーマーアヌビス号』の全身に光が奔る。|超常《ユーベルコード》による覚醒した|冥王《アヌビス》の力――両腕に備えた盾を構え、密集する無数の機械天使を押し退ける。
『こちらもキャバリアを用意しますか、お嬢様?』
「逆よ。このままプチヘス達と共に爆薬仕掛ける工作に出るわ!」
おかげで道が開けた――敵は突然現れたキャバリアの相手で手一杯だ。その隙を突いてサイズの小さい自分達は今の内に要塞へ殴り込む!
「プチヘス部隊、コンバットオープン! ブッ叩くわよ!」
『『『『Yes Ma'am!!!!』』』』
顕現した姦しい声が重なる。ヘスティアの号令一下、現れた『プチヘス部隊』がヘスティアの全周を護る様に取り囲んだ。自らをデフォルメしたような|超常《ユーベルコード》のロボ軍団は|妖精女王《ティターニア》に付き従い、二人の仲間が開いた血路をひた走った。今度こそあの要塞を止める為に。
「中々の速さだけどな……ここは宇宙だぜ?」
突出したアトシュのAuroraは|呪われた剣《Tyrfing》を拡大化した様な長剣で機械天使を屠り続ける。如何に三次元機動が出来ようと、重力も大気も無い宇宙空間では勝手が全く違う。抵抗が無い分加速は止まらず――故に展開が迅速過ぎたのだ――無理矢理機体を制御すれば動きに無駄も出てしまう。
「動きが雑だ! 腐り果てろ!」
その点、幾度も宙間戦闘を体験したアトシュの動きに無駄は無い。火線を抜けてすれ違い様に一閃/密集陣形の誘爆を背に、召喚した『呪いの棘』が機械天使の顔面を容赦無く潰し、崩していく。
「フルアーマーアヌビス号の装甲は伊達ではありません!」
そしてアヌビス号の光波が新たに包囲を形成しようと動く機械天使を的確に落としていく。包囲を抜けたヘスティアの後を追わせる訳にはいかない――天秤と十字架の紋章が描かれた巨大な盾を掲げながら機械天使の猛攻を押え込むエン。正面で撃ち合う不利を悟った機械天使が外側に突出するも、覚醒したアヌビス号の速さならば追いつく事は容易かった。
「盾役の仕事、きっちり果たさせてもらいましょう!」
機械天使の銃剣の斬り込みを受け流し、返す光波が瞬く間に鉄屑を拵える。縦横無尽に動き回る二体のキャバリアに翻弄されて、機械天使のヘスティアへの追撃は最早ままならない状態だ。
「これで懐に――!?」
『まだいけません、お嬢様。敵要塞に高エネルギー反応を確認』
包囲網を突破して取りついた敵要塞の主砲に雷光が走る。余りにも巨大な砲口から漏れる真っ白い光は蛇の様にのたうって、荒ぶるエネルギーの奔流がヘスティアの髪をちらりと熱くした。
「でもチャージ中でしょう? アレが撃たれる前に……」
次は髪だけでは済まない。あの42号が放った『要塞崩し』よりも強大な一撃が放たれるとも限らない――ここで止めなければ、折角辿り着いた皆も、生き延びる事が出来た42号もペンギン達も、まとめて葬られてしまうだろう。
『露出した粒子加速器より敵要塞主機の位置を特定。並びに敵主砲発射まで残り77秒』
アベルが告げる現実にヘスティアは顔を叩き気を入れる。わたし達だけじゃ無い。折角取り戻した宇宙の平和をこれ以上乱されてなるものか――!
「人形の相手は俺達に任せな!」
「大丈夫です。囲まれるのは慣れてますから」
その心は皆同じ。端末でサムズアップする仲間達に背を託し、ヘスティアは今一度速度を上げる。
「了解よ。ティターニア、フルドライブ!」
『構造体の脆弱部位は特定済みです。ハッキングで進路は開放しましょう』
アベルが解放した最短経路、同時に破壊すべき構造体の位置、それら全てをプチヘス部隊と共有しヘスティアは突き進む。魚の群れの様に一塊となったヘスティア達は要塞外壁を嘗める様に低く飛び、示された経路通りに一体、また一体とプチヘス部隊が破断ポイントへ飛び込んでいった。
『プチヘス部隊、全機エントリー完了』
「後はわたし達だけね。行くわよアベル」
そして最後、目の前を塞ぐ外壁を|全武装一斉発射《マイクロミサイルとレーヴァティ》でぶち壊し、速やかに爆薬を設置してヘスティアは退く。
『残り十秒、九、八――』
「総員脱出! アベル!」
一斉起爆――要塞主砲は光を放つ事無く、盛大な爆発に巻き込まれた。爆薬はアベルの制御で全て同時に起動して、主機周りの脆弱なブロックが炎に飲み込まれていく。
その炎が反撃の狼煙――今、世界を超えた狂暴な悪意を倒す戦いが始まった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
天道・あや
●
わーお、こりゃまたデカい物隠してたなー……切り札、奥の手かなー?(だとしたら、これをどうにかすれば……こっちがかなり優勢になるのでは??)
よし!いっちょ行きますか!
右よし!左よし!巨大な壁よし!
それじゃ、ぶち破りまショータイム!
と、意気込んだはいいものの、あれをどうにかするとなると生半可な曲じゃ無理!
…となるとあれしかねえな!!?
【ダッシュ】で敵の正面?に向けて移動!正面から突破さ…うん?何やら光ってて、エネルギー溜めてる?
……
!
放たれるであろうビームの正面に立って、UC発動!!
あたしの思いとyouの思い、どっちが強いか……勝負!
あたしのテンション、全部持ってけ!【情熱、覚悟、歌唱、元気】
エドゥアルト・ルーデル
●
なんてこった…やったか!?と叫んだばっかりに…
宇宙で暴風とはこれ如何に?そういうアホみたいな行為をするとだな、バチクソ狂うんでござるよ物理が!世界が!
ほら見ろ物理演算の神がお怒りだ!【お戯れのバグ】が来るぞォ!
うむ、嵐と雷がバグって要塞にもぶち当たってるネ!
荒れてる時はチャンスですぞ、次元の狭間に潜り込むんでござるよ!何事にも隙間はあるんでござる
こういい感じのポイントにいい感じに体当たりすると潜れるんだよ、モチロンバグを利用するのはやべー行為なので良い子はマネしちゃだめでござるよ
道中の荒れたポイントは全部無視して中心部に直行だァ!動力炉とかそういうのに一撃かましたらバグ利用して離脱でござる
●Burn out star
「なんてこった……」
やったか!? と叫んだばっかりに……いや、何度読み返しても誰も叫んで……ません……などと何処からか聞こえた声を拾ったエドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)は、眼前の巨大な脅威に心中穏やかではなくなった。先の戦いで|主砲動力伝達経路《メインサーキット》が破壊されたとはいえ、人外未知の|星獣反応《クエーサービースト》炉は健在。その威を示すかの様に、|巨大要塞《バスタード》の周囲には強烈な磁気嵐が渦巻いていた。
「わーお、こりゃまたデカい物隠してたなー」
同じく、両腕を組んで威容を眺める天道・あや(|スタァーライト《夢と未来照らす一番星!》・f12190)も尋常ならざる巨大な相手を前に苦い顔を隠さない。これほどのサイズの相手は小惑星級クエーサービースト戦以来。だがあの時だって惑星ロボは無かった――ならば、今回だってそれが理由で下がる道理はどこにも無い!
「言ってるそばから何か出ましたぞ! うわぁ……宇宙で暴風とはこれ如何に?」
「……これが切り札、奥の手かなー?」
敵旗艦への進路を塞ぐだけならばそこまでの脅威では無いだろう。問題はこの要塞が想像を絶する攻撃能力を秘めている可能性が非常に高いという事。あやの懸念は現実に、エドゥアルトが観測したのは更に広がった磁気嵐と絶対零度の|宇宙《コスモ》吹雪――|超常《ユーベルコード》らしい埒外の物理現象が、瞬く間に宙域へ広がっていく。
「そういうアホみたいな行為をするとだな、バチクソ狂うんでござるよ物理が! 世界が!」
怒れるエドゥアルト。現に他世界存在との融合という禁じ手が使われているのだ。世界の法則が乱れる――このままではカタストロフに匹敵する崩壊現象が、この世界そのものを蝕むだろう。
(だとしたら、これをどうにかすれば……こっちがかなり優勢になるのでは??)
それ程の影響力を持つ敵なのだ。ならばそれを落としてしまえば……プリンセス・エメラルドは今度こそ後が無くなる。決意と覚悟を胸に、あやは颯爽と混沌に包まれた戦場へ躍り出た。
「よし! いっちょ行きますか!」
「何処へぇ!? ほら見ろ物理演算の神がお怒りだ!【お戯れのバグ】が来るぞォ!」
|おっさん《エドゥアルト》がまだ何か言ってるが気にしない。|レガリアス《ガラスの靴》でカツンと破片を踏み鳴らし、広がる波紋は|希望の音色《アタシの思い》。|七色のギター《レインボーハート》を颯爽と振りかざし、|アイドル《天道あや》は|宇宙《そら》に奇跡をかき鳴らす!
「右よし! 左よし! 巨大な壁よし!」
「うむ、嵐と雷がバグって要塞にもぶち当たってるネ! 綺麗!」
胡乱な合いの手に口元を綻ばせて、ざあざあと津波の様な|磁気嵐《ノイズ》と対峙するあや。セトリは完璧、全力全開! 無造作に見えて精緻なタッピングが雑音を撥ね退けて、弾けるリズムが戦場を煌びやかなステージへと変貌させる。さあ行こうか、|宇宙《そら》の果てまで!
「それじゃ、ぶち破りまショータイム!」
「そうそう。こういう荒れてる時はチャンスですぞ――」
|流星デバイス《ヘッドマイク》がチカチカと瞬けば、それは星の海を彩るタクト。あやの歌声と楽器の音色を何倍にも増幅する元気の|五線譜《ノート》。荒れ狂う波濤を鎮め、未知へ挑む人々の願いが十重二十重に広がっていく。
「ハッ! やっぱり超ゴキゲンなステージだね!」
姦しい要塞の爆音も今や白熱するオーディエンス。じわりと浸透した希望の音色はやがて、|巨大要塞《バスタード》の構造体そのものを緩やかに崩していった。それこそがあやが誇る『スパーク!ミュージック!!』の真骨頂。最大級のテンションは最大級の怪物すらも揺るがしたのだ。
「いい感じですぞ。そうやって乱数調整してもらえればほら、この通り」
故にエドゥアルトの奇策も万全に機能した。荒れてる時はチャンス――この世の理の隙間を抜ける『神の怒り』が、定められた運命をも凌駕する|奇跡《バグ》をこの世に顕現して――。
「げぇ、おじさんが溶けた……!?」
音色に乗って肉体そのものが分解……では無い。三次元から二次元。二次元から一次元そして……次元超越。
「いいや、次元の狭間に潜り込んだのでござるよ! 何事にも隙間はあるんでござる」
「ハハッ、スゴイエフェクトダネー」
埒外の|圧倒的物理《フィジカル》が相手なら|物理的衝突《コリジョン》を回避すれば良い。如何に巨大な質量だろうとデータ上は数キロバイト程度のナニカに過ぎない。そうなればエドゥアルトを構成する|圧倒的情報量《デタラメ》が、アプローチ次第で十分に対抗出来る!
「スゴイスゴーイ……うん? 何やら光ってて、エネルギー溜めてる?」
そして、この戦いは物理力を超える想像力の戦いへと移行した。だからこそ、要塞は己が持つ最大最強の牙をここに来て解き放たんと暴威を剥き出しにしたのだ。
「だったら……よーし! テンションフルMAX!!」
あれをどうにかするとなると生半可な曲じゃ無理! ならば!
「雷鳴のように世界へ掻き鳴らすぜ! あたしの思い! あたしの気持ち!」
拳の五芒星が輝いて、弦を捌くあやの指先が熱く燃える。全身全霊を懸けて、宇宙すら飲み込む音楽を聴かせてやろうじゃないの!
「あたしの思いとyouの思い、どっちが強いか……勝負!」
あやが吼える。虹色が極彩色の輝きと共に放たれる。その音圧が磁気嵐を霧散させ、宇宙吹雪が跡形も無く溶け消えれば――その歌は星すらも震わせて、造られた憎悪すら焼き焦がす光となろう。
「ふおお……この歌は……ご存じないのですか」
ご存じある訳が無い。心無き骸のマシンに温かく熱い人の思いは届かない――それでも、あやの魂のパッションはエドゥアルトの魂を昂らせた。これで勝つる。
「いい感じに気力最大でござるよ。このまま道中の荒れたポイントは全部無視して中心部に直行だァ!」
異次元の存在へと変貌したエドゥアルトの荒ぶる挙動は、主砲発射に全集中する要塞のセキュリティを難なくすり抜けて、遂に目的の星獣動力炉までたどり着く。何だか四肢欠損した巨人みたいな紫色の物体が睨んできた様な気もするけどキニシナイキニシナイ。
「このパイプをカットすればもう二度と立ち上がれまい!」
ブチィ! 動力パイプの構造物をバグらせて捩じ切ったエドゥアルトは、そのまま乱数崩壊に巻き込まれて消え失せる。これで主砲の動力はこれ以上使えない!
「さあ! あたしのテンション、全部持ってけ!!」
まるで恒星じみた輝きを誇る主砲口の真正面、チャージ完了前に相対したあやの心に迷いは無い。覚悟を込めた情熱の歌――これがあたしの奥の手だッ!! 少女の想いを世界へ響かせる七色の楽器が唸る。弾ける弦の震動が、星々を動かす歌声が、破滅の虚妄を孕んだ光を圧し返し――繋がりを断たれた光が滝の様に溢れ出て、巨大要塞は一転、太陽の如き灼熱に包まれた。
「……やったか!?」
煌々と燃える要塞を眺めあやが独り言ちる。凄まじい光景――放出前に圧し返された主砲のエネルギーが断たれたパイプラインから漏出し、その熱量が巨大要塞を内側から火の海へと変えたのだ。
「あーそれ言っちゃ……」
不意に、次元の裂け目からニュッと出てきたエドゥアルトが言葉を濁す。
まあ……大丈夫だろう。
星すら焦がす歌声なのだから、こんなフラグごと燃やしてくれるに違いない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユエイン・リュンコイス
●
さて、予想通り随分と大物が出て来たものだね。あれと比べれば、ボクの呼び出すモノも随分と小さく見えるだろう。だけど、そんなのは躊躇う理由になりはしない。さぁ、今が切り札の切り時だ。
前段階として、キャバリアに搭乗して可能な限り敵陣に接近。暴風と稲妻による機体の損傷は度外視し、取り付く事だけを優先するよ。距離さえ詰めればこっちのものだ。相手が粉砕した無機物を出来る限り射程内に入れて…。
――機神召喚。
たかが50m、小惑星サイズと比べれば余りにもちっぽけだろうさ。だけど、良くも悪くも差が有り過ぎると言うのも考え物だね?
要塞中枢部を目指し吶喊。動力炉なり制御系統へ絶対昇華の鉄拳を叩き込んでやるとしよう。
神咲・七十
アドリブ・連携お任せ
もの凄い巨大な……要塞でしょうか?
大きすぎて全容が全く分からないですね
その上でこの物量ですか……まぁ、いきなり攻撃されたさっきよりマシですかね?
(キャバリアを呼び出しUCを使用。状態異常を負わない様に距離を取りながら現れた大量の敵を結界で喰らっていく)
無機物なのでしょうかね?あの要塞は……
だとしても……朽ちる、或は滅びる可能性があるならそれを寿命として喰らうことも出来ますよ
(物量を結界に収めながら、要塞も結界内に入れて、キャバリアの機動力と攻撃で自分に追いつきそうな敵を撥ね退けつつ、戦場全体にダメージを与えていって)
……これってもとからこのサイズだったんですかね?
●Stampede
「さて、予想通り随分と大物が出て来たものだね」
「もの凄い巨大な……要塞でしょうか?」
煌々と燃え盛る|巨大要塞《バスタード》をじろりと眺め、ユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)と神咲・七十(まだ迷子中の狂食者・f21248)はその桁外れな大きさに嘆息する。
「大きすぎて全容が全く分からないですね」
「全くだね……あれと比べれば、ボクの呼び出すモノも随分と小さく見えるだろう」
先の戦いで内と外の両面から攻撃を受けた要塞は、再び磁気嵐と|宇宙《コスモ》吹雪を纏う事で消火を行いつつ機能回復に努めている。切り札の主砲は二系統の|動力伝達経路《エネルギーサーキット》が破壊されたままで、それが唯一の救いだと言えるだろうが、敵は未だ強大な戦闘力を失ってはいなかった。
「それに、番兵どもが出て来た様だ」
「あれが機械天使群……」
行き所を失った主砲のエネルギーは無数の機械天使を生産し、邪悪な機械の群れは雲霞の如く――否、遠目には巨大な雲が広がっていく様に、漆黒の宇宙を薄灰色の悪意で続々と侵食していった。
「この物量ですか……まぁ、いきなり攻撃されたさっきよりマシですかね?」
「確かに。そして要塞は炎に包まれてはいるものの機能は健在、といった所だね。だけど――」
広がる灰色を睨み、ユエインは搭乗している『|Deus Machina【Türmer】《キャバリア》』のコクピットで静かに言葉を紡ぐ。静かなれど心は熱く――要塞が最大の攻撃手段を失った今、この機を逃す訳にはいかない。
「そんなのは躊躇う理由になりはしない。これまでも、これからも」
「ですね。私達のやるべき事は変わりません。こんな事で」
その言葉に七十が続く。修理した魔導ロボ改式『神咲』のモニタに映る刻々と増殖する灰色――機械天使へ狙いをつけて、いつでも叩けると|赤い警告灯《セーフティランプ》が脈打つ様に瞬いていた。最初から、やるべき事は決まっているのだ。
「私達は引く訳にはいかない」
「さぁ、今が切り札の切り時だ」
黙示録じみたこの地獄は必ず葬り去る。強い決意を胸に秘め、互いのマシンが虚空に鮮やかな線を描いた。
「本当に無機物なのでしょうかね? あの要塞は……」
会敵から三分、春先に沸いた小虫の様に猟兵へ纏わりつく機械天使を幾つ壊しただろうか。七十の神咲は漆黒の大剣と散弾銃を手に、舞う様な動作で群がる機械天使を破壊する。戦術も戦法も無い物量作戦――狙わずとも剣を振れば切先が胴を薙ぎ、撃てば群がる天使の翼が秒で粉々に砕かれていく。
「まるで巨大な生物みたいだね。|アレ《機械天使》が抗体で、要塞を包む磁気嵐やガラクタが|瘡蓋《かさぶた》みたい」
ユエインのTürmer――黒鉄機人を模した漆黒の巨人は容赦の無い銃撃で機械天使の首を狩る。大量生産故に単純な構造だ。センサが集中する頭部を破壊さえすればまともに動く事は無い。慣性で漂った残骸を蹴り飛ばし、巨人は殺到する暴威を往なす様に最小限の動きでガラクタをこさえていく。
「あるいはクエーサービーストの特性が付加されているかもしれない。思念から構造体を創造する奴らだからね」
「だとしても……」
もしマインドと同じ組成ならば厄介だが、今の所再起動の兆候は無い――とすれば、要塞内部の生産設備をマインドで増強し時間を稼いでいるのだろうか。どちらにせよ圧倒的な物量で戦場に溢れるそれらを見やり、二人は淡々と進むべき道を切り拓いていた。これ以上時間を掛ける事は得策では無い。ならば――敵の特性を鑑みた七十がぼそりと呟く。
「朽ちる、或いは滅びる可能性があるならそれを寿命として喰らうことも出来ますよ」
「怖い事を言うね。星すらその腑に納めようとでも?」
要塞が|超常《ユーベルコード》で行く手を阻むならこちらも同じ事をすればいい――埒外の物量には埒外の消費をぶつける。しかし向こうの限界や本質が分からぬまま、迂闊な選択は道を誤る危険がある。
「それにしても……鬱陶しい」
魔導ロボの思念操縦が乱れればいつ圧倒されてもおかしくない。努めて冷静に、敵と戦力を分析する七十の頬を冷汗が伝う。恐れるな、アレは元々ブルーアルカディアの兵器、その動力は天使核だろう――。
(もし天使核が、物質化した魂ならば――)
天使核は|魔獣《オブリビオン》の心臓部だった物。であれば、骸の海に由来する何かを物質化した存在。それは恐らく過去――今は無き魂を形にして、現在に影響を与える異端の動力源である筈。
「ならば……喰らいます」
「!?」
その仮説が(多少なりとも)正しければ|喰らう事が出来る《・・・・・・・・》――|Die Wurzel, die dem Leben beraubt《それは魂を喰らう根系》――放たれた七十の|超常《ユーベルコード》が戦場に恐るべき意図を巡らせた。まるで植物の根の様にうねり、増え続けるそれは怪物の触手の如く機械天使をざらりと巻き込み、装甲の隙間から侵食してその魂を喰らい尽くす。
「恐るべきは猟兵だね……全く」
張り巡らされた超常の根は七十を中心としたフラクタルな球状を形成する。発動した超常『制約:征服者』は天使核を貪る様に喰い漁り、空間を制圧された機械天使は迂闊に近寄る事もままならない。喰われれば七十の力は増し、更に獲物を探して根が伸びる――残るは魂を抜かれた残骸だけ。
「だけど、これで近付ける――」
これならば、とユエインの巨人が雄々しく火を吐いて速度を上げた。同時に紡がれた力の奔流がTürmerの全身を真っ赤に染め上げて――。
「叛逆の祈りよ、昇華の鉄拳よ、塔の頂より眺むる者よ。破神の剣は我が手に在り――機神召喚」
今度はユエインの超常が無数の残骸を引き寄せる。巨人の全身が放つ不可視の繰り糸がそれを手繰り寄せ、さながら鋼鉄の繭玉と化したユエインの|機械神《Deus Machina》――産声の様な機関の咆哮と共に高々と拳を突き上げて、『黒鐡の機械神』が鋼の中より新生した。
「フフ――たかが50m、小惑星サイズと比べれば余りにもちっぽけだろうさ」
最早キャバリアとは呼べない大型機動兵器と化したTürmer。惑星ロボ程の大きさは無い。それでも自らの姿を十倍ほど拡大化した様な漆黒の大巨人は、全身から真っ赤な炎を吐き出して要塞へ向けて突進する。
「だけど、良くも悪くも差が有り過ぎると言うのも考え物だね?」
その炎は漆黒の装甲を灼熱で染め上げて、拳が磁気嵐と宇宙吹雪を掻き消しながら、行く手を阻む尽くを灰と屑に変えて突き進む。圧倒的に巨大過ぎる要塞にしてみれば機械神の巨体すら誤差に等しいサイズ差だった――だからこそこうやって、十倍のサイズと力で難なく懐に潜り込む事が出来たのだ。
「この要塞……もとからこのサイズだったんですかね?」
「少なくとも星では無く島ぐらいだったと思うよ……どちらにせよ大きいけど」
不意に七十が呟く。遠い背後では機械天使を貪る魔導ロボの姿が――最早遮るモノは何も無い。先の戦いでがらんどうになった要塞内部を吶喊、一気呵成に炎が渦巻き構造物をバラバラに溶断して。
「そして、ここが島の中心だ」
辿り着いた場所はブルーアルカディア産の巨大な天使核が蠢く一角。要塞の本来の主機そのものに直接攻撃を加えるべく、ユエインは必滅の意志を込めて言葉を紡いだ。
「振るわれるのは昇華の鉄拳……再び彼の地を赤灼に染め上げん!」
途端、拳が放つ光が視界を白く染め上げた。その輝きは、熱量は、存在するだけで周囲を焼き溶かす超常の一撃。どろりと、主機を支える骨格が歪んで中心の天使核が剥き出しになる。
「その邪悪を討ち滅ぼす――欠片も残さず、無に還れ!」
一撃必滅――天を裂く火柱が要塞を貫いて、爆ぜる。
三度、要塞が歪む悲鳴の様な怪音が、爆音と共に戦場に鳴り響いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ルナ・シュテル
これは正しく小惑星、というべき規模の敵ですね。
或いは人類の入植も不可能では――いえ、其を為すには些か悪意に塗れ過ぎている。
やはり、破壊するより他に無いようです。
DoubleOrbitとBloodyTearsをリンクさせ、敵の構造及び周辺の空間情報を【情報収集】。巨大低気圧の渦の規模と、其が齎す影響の範囲を計測。
並行してLucyDoll達を出撃させ、敵を包囲する形に展開させていきましょう。
低気圧の影響範囲からは外れる形を保たせるつもりですが、引き込まれ破壊されるならば止むを得ないと考えます。最悪、内蔵の誘導装置さえ無事ならば目的は果たせましょう。
私自身は、引き込まれぬようPolarisの【推力移動】で抵抗を。また何らかの攻撃が来た場合は同様の手段で回避したり、Anti-Aresの【レーザー射撃】で迎撃したりして凌ぎます。
全てのDoll達が配置につくか敵に破壊され回収されるかした処で、UCを発動します。
情報収集の結果と回収されたDoll達の座標を基に、致命と思われる部位へ砲撃を誘導します。
秋月・信子
●SPD
『無い物ねだりはしたくないけど、惑星ロボが欲しくなる面倒な相手ね』
「ですけど、小惑星級なのがせめてもの救いかもしれませんよ?」
コックピットの中で独り言のような私の影と雑談で気を紛らわせながら|征竜前線《バスタード》崩壊へと導くべくガス状の雲海へと突入します
『予想はしてたけど、蜂の巣を突いたみたいにわんさかお出でなすったわね』
|巣《島内部の倉庫》と思わしき穴から蜂のように統一した意思で要撃する複数の機械天使兵をバインダービットで牽制しつつ、ハンディブラスターで確実に撃ち抜いて行きます
『全体が人工物でなく自然物だから突破口の索敵も一苦労ね。それまで【時間稼ぎ】して頂戴』
ハンディブラスターは【レーザー射撃】なので物理的な弾切れの心配はありませんが、出力をギリギリまで絞ってバッテリー消費を抑えませんと…
狙撃すべきポイントが判明しましたら、銃身を形成するかのようにバインダービットでハンディブラスターの質量を補ったUCによる『星崩し』の概念を宿した魔銃を撃ち放ち、征竜前線から離脱します
●Star Breakers
『まだ動くのアレ……無い物ねだりはしたくないけど、惑星ロボが欲しくなる面倒な相手ね』
「ですけど、小惑星級なのがせめてもの救いかもしれませんよ?」
漆黒の宇宙を煌々と照らす|巨大要塞《バスタード》――三度の猛攻を受けてさながら恒星の如く燃え盛る姿を見やり、|ピースメーカー Mk-II《キャバリア》のコクピットの中で秋月・信子(|魔弾の射手《フリーシューター》・f00732)は|内なる影《姉なるもの》と言葉を交わす。
「ええ。これは正しく小惑星、というべき規模の敵ですね」
傍らにはルナ・シュテル(Resonate1120・f18044)――共に|斑《ウォーマシン》と刃を交えた猟兵が静かに佇み、さながら従者の如く不動の姿勢で敵を見据えていた。
「或いは人類の入植も不可能では――いえ、其を為すには些か悪意に塗れ過ぎている」
『元はブルーアルカディアの島でしょうけど、そもそも対竜決戦兵器だったっぽいし』
|新天地《スペースオペラワールド》への航路が拓けた今、あの様な危険な場所に身を寄せる必要は無い。事前に見聞した情報には緑に覆われた大地もあった。それも度重なる戦いの末、まるで地獄の業火の様に赤黒く燃えている。|異世界《ブルーアルカディア》では決戦兵器だった巨大要塞――かつては本当に人の営みがあったのだろうが、その残滓は憎しみの炎が燃え滾る|戦の骸《オブリビオン》に過ぎない。僅かな憐憫を捨て去って、ルナは得物を握る手に力を込める。
「やはり、破壊するより他に無いようです」
「はい。ここで確実に終わらせましょう」
改めて打倒を誓う二人。同時に要塞から凄まじい量の悪意が――無数の機械天使が溢れ出した。
『予想はしてたけど、蜂の巣を突いたみたいにわんさかお出でなすったわね』
「では参りましょう。これ以上宇宙を汚される道理はありません」
宇宙を覆い視界を灰色に埋めていく敵意を睨んで、信子とルナは青白いスラスターの尾を伸ばし、その渦中へと飛び込んだ。全ては時空を超えた因縁に決着を付ける為に。
『全体が人工物でなく自然物だから突破口の索敵も一苦労ね。それまで時間稼ぎして頂戴』
対象の要塞は信子の姉が言う通り、元は自然物で構成されていた天然の要塞だ。故に遠景では巧妙に隠された出入り口を探す事も難しい。先の戦いで本来の主機を含む要塞の中枢付近には多大なダメージを与えてはいたが、後付けの|星獣《クエーサービースト》そのものを動力にした心臓部分は未だ手付かず。その上で会敵間近の機械天使群は勢いを殺す事無く、続々とどこからか姿を溢れさせていた。
「私からも出しましょう。数には数です」
Mk-IIのセンサをフル稼働させても尚、溢れる機械天使の妨害で目的の情報を捉えられてはいない。まずはあの天使の勢いを止めなければ――ルナの|瞳が紅く輝いて《Start BloodyTears》/周辺走査、|端末開放《Go Double Orbit》/情報共有、戦闘端末起動――数ミリ秒で状況を把握。突破口を開くべく自らの|姉妹《バイオロイド》を侍らせて挑む。
「Launch to LucyDoll――包囲陣形形成、展開開始」
「バインダービット、アサルトモード!」
ルナに合わせて信子が叫び、その気迫が乗り移ったかの様な鋼の群れが乱舞する。互いに展開させたバイオロイドとバインダービットが機械天使と衝突し、爆光と共に戦いの火蓋が切って落とされた。
渦を巻いて殺到する機械天使――さながら巨大な魚の群れの様に鋼鉄の竜巻が戦場を蹂躙する。それは同時に|どこを狙おうが当てられる《・・・・・・・・・・・・》という事。乱舞するビットが敵機を一つ落とせば、連鎖爆発で群れごと花火の様に消し飛んでいく。
『これだけ落とせば十分エースね』
「目眩撃ちでエースになっても嬉しくないです!」
射撃よりも確実に敵を落とす――|電磁障壁《バリア》で構成物を覆い、加速させた質量で敵を貫く。単純ながら確実に機械天使を破壊していくビットの猛攻はされど、未だ勢いの劣らぬ機械天使を引き剥がすには物足りない状況だった。
『戦場じゃ結果が全てよ……十時方向、一斉射!』
「! バインダービット、シールドモード!」
瞬間、渦を巻いた機械天使の群れが嵐の様に火線を振り撒く。狙いをつけた一撃では無くとも、圧倒的な物量はそのものが驚異的な暴力装置だ。殺到する殺意の束に向けて、信子は即座にビットを防御形態へ移行/重なり合って増幅されたエネルギー障壁が火力の束を四方に散らす。
「武装はビットだけではありません――そこ!」
直撃を避け宇宙に再び静寂が戻る刹那、遮る物が無くなった正面の敵目掛けてハンディブラスターを乱射するMk-II。バッテリー消費を抑える為に出力をギリギリまで絞り、群れたままの機械天使を続々と火達磨に変えていけば、連鎖爆発を避けるべく散開した陣形の穴を突いて、加速したMk-IIが一気に戦域を突破した。
「――狙撃ポイント到達、何とかバッテリーは持ちましたか」
『射線クリア……じゃ無いわね。ホントしつこい連中!』
それでも尚、巨大要塞からは続々と機械天使が――更には燃え盛る小惑星を包む様に、磁気嵐が雷光を散らしてMK-IIの行く手と探査を阻み続ける。放っておけば再び進路も射線も埋め尽くされるだろう。だが、こちらも戦力はMk-IIだけでは無い。
「問題ありません。仕掛けは整いましてございます」
共に戦場を抜けて来たルナがバイオロイドの一団を周辺に展開する。サイズは人間大、キャバリア並みの体躯を誇る機械天使が相手では些か荷が勝ち過ぎる――だが、それは相手が只の人間ならば。
「――然らばどうぞ、御覧じられませ」
ゆらり、と頭を垂れるルナの合図と共に、十一体のバイオロイドが万華鏡の様に広がった。それは光を放つ足底の|Polaris《プラズマ推進器》――鮮やかな軌跡は弧を描き、広がった光は螺旋の束となる。螺旋の内には機械天使の大群――そして巨大要塞の姿が捉われて。それこそがルナの|超常《ユーベルコード》。各員の配置を見やり、ルナは厳かに言葉を続けた。
「それでは、タイプ:ルナ各機、|誠心誠意ご奉仕致します」
途端、灰色掛かった空間がぐにゃりと歪む。
『何……まさか』
「重力震検知、続けて高エネルギー反応!」
埒外の事象に焦りの声を上げる信子。歪んだ空間を突き破り漏れ出た極彩色の光がジワリと広がって――爆ぜる。『|終末を紡ぐ焔の環《ヴァルキリー・ディメンジョン》』なるルナの切り札。要塞崩しを凌駕する小惑星破壊重粒子砲の砲撃は機械天使を須らく飲み込んで、要塞を覆う磁気嵐を丸ごと平らげた。燃え盛る表面すら吹き飛ばし、機械と岩石が混じった歪な姿が猟兵達の目の前に映る。
『道が開けた。信子!』
「――|形象、開始《Form up》」
内なる姉が叫ぶ。千載一遇のチャンス、ここを逃せば恐らく次は無い。
その声に応え信子が力ある言葉を紡ぐ。同時にMk-IIのコンソールに魔方陣めいた紋様が浮かび上がった。
「――|構造、解析《Struct survey》。|骨子、形成《Frame in》」
言葉を重ねると共に紋様がフラクタル状に増殖する。その動きに合わせてMk-IIの周囲を舞うバインダービットが虚空に力ある文字を描き、力ある文字が巨大な光の砲身を徐々に形作れば、Mk-IIは砲身の位置に合わせてゆっくりとハンディブラスターの銃身を持ち上げる。これで――。
「|形象、完了《Form done》――|星崩し、解凍《StarBreaker to Rollout》!」
準備は整った。ビットと光の銃身が一体となって、まるでキャバリアサイズの対物兵器――|超常の魔銃《ユーベルコード》と化したブラスターの照準を、先の砲撃で剥き出しになった|星獣反応《クエーサービースト》炉に合わせた。
『さあ、撃っちゃいなよ!』
「言われなくても……これで!」
魔獣が吼える。ここまで繋いだ猟兵全ての思いを乗せて、その声は勇ましく、恐ろしく、再び虚空を震わせた星を砕く一撃が、遠い先の要塞へ吸い込まれるように消えていく。それを止めんと、残る悪意が急旋回で殺到してきた。先に散開していた機械天使群だ。
「仕上げの邪魔はさせません」
信子は魔銃から未だ途切れぬ光の制御で手一杯。その背後を狙い特攻を掛けてきた機械天使の残存兵を、ルナ率いるバイオロイドの一群が|Anti-Ares《フィンガービーム》で薙ぎ払い、その光が信子の背後で幾つもの爆光を形作った。
「ありがとう。あと、少し、だから……!」
反応炉をクエーサービーストごと破壊出来れば巨大要塞は沈められる。今も連鎖する小爆発が要塞を徐々に解体し、岩盤が裂けると共に溶断された鉄骨が火花を散らしている。だがMk-IIに残された時間も少ない。
『信子、これ以上は銃身が持たないわよ!』
オーバーヒートの警告音が鳴り響くコクピットで信子は歯を食いしばる。電光石火の一撃を呼んだ魔獣の雄叫びが絶えるまで、何としても……!
「ならば、せめて焼き付くまで――!」
その時、宇宙から音が消えた。
「任務完了、対象は完全に消滅しました」
音が消えた刹那、光が何重にも広がって信子とルナの視界を殺した。厳密に言えば魔獣の攻撃で崩壊した星獣反応炉の残エネルギーが多次元的に空間を浸食・崩壊し、それを相殺する様に魔獣のエネルギーがぶつかって、周辺の時空間エントロピーに一時的なバグが発生した様なもの……ミリ秒以下の事象変異が、征竜前線バスタードを完全に消滅させたのだった。
「前方に敵旗艦『ソング・オブ・オーンブル』を確認。このまま前進しますか?」
だが戦いは終わってなどいない。むしろここからが始まりだ。索敵を続行していたルナが信子に問う。ボロボロのMk-IIで果たして、正面から乗り込むのかと――いや、答えは既に決まっている。
「……当然です」
全てはこの時――『プリンセス・エメラルド』を倒す為にあったのだから。
最後の戦いが、始まる。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 ボス戦
『猟書家『プリンセス・エメラルド』』
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POW : プリンセス・エメラルド号
自身の【サイキックエナジー】を代償に、【宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【エメラルド色の破壊光線を放つ多数の砲】で戦う。
SPD : 侵略蔵書「帝国継承規約」
自身の身長の2倍の【皇帝乗騎(インペリアル・ヴィークル)】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : クリスタライズ・オリジナル
自身と自身の装備、【敵に被害を与えうる、半径100m以内の】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●龍を継ぐ者
それは船と呼ぶには、余りにも大き過ぎた。
遠目に見ればさながら虚空に浮かぶ翠玉の城。絢爛豪華な結晶の尖塔をそこかしこに張り出して、淡く輝く佇まいは幽玄な趣を感じさせる。|正面の門《メインカタパルト》は広々と解放されて迎撃の気配は無い。先の戦いの|巨大要塞《バスタード》が最後だったのか――総旗艦『ソング・オブ・オーンブル』は一切の抵抗なく、猟兵達はその内へと足を進めた。
門の奥のひたすら広い空間は格納庫だろうか。|漿船《クリスタルシップ》じみた結晶体のパイプラインがちかちかと明滅し、無機質な装飾が張り巡らされた壁面はまるで深夜の無人工業地帯だ。艦隊一つをそのまま収容出来そうな巨大空間――1G前後の人工重力がある事から、どうやらここは前線基地の機能すら有しているらしい。
「――これだけの時間を戴ければ、戦力の再編は充分でした」
ふと、妙齢の女の声が響く。声の方に煌々と照る赤い炎――真紅の皇帝騎に足を駆ける翠玉の女帝の姿。
「ですが、あなた達はここまで辿り着いた。してやられたと言うべきでしょう」
したり顔で女は言葉を続けた。翠玉の肌が皇帝騎の噴射炎でちらちらと輝いて、腰に当てた厳めしい手甲が鈍い光を放っている。
「ですが、私こそ正当なる宇宙の支配者……善龍スターゲイザーの血族……」
スターゲイザー……ミディアはここにはおらず、まして彼女は宇宙の支配者などという大それた野望を抱く事も無い。だが女は言葉を続ける。自らがそうであると強く言い聞かせるように。
「私が『|帝国継承軍《サクセション・フォース》』総代にして銀河皇帝の継承者。彼らの「帝国継承規約」を引き継いだ、永遠不変たるクリスタリアンの最長老『プリンセス・エメラルド』――新たなる宇宙の支配者です」
深々とお辞儀をして、エメラルドはニヤリと口端を釣り上げる。
「ごきげんよう。そして、さようなら」
瞬間、無数の戦闘機や航宙艦艇、兵士に宇宙騎士に機動兵器が空間を埋め尽くす。そして。
「言ったでしょう? 戦力の再編は充分でしたと」
翠玉の|超常《ユーベルコード》が、戦場に迸った。
※プレイングについてはマスターコメントをもう一度ご確認ください。
中村・裕美(サポート)
副人格のシルヴァーナで行動します
『すぐに終わってしまってはもったいないですわね』
多重人格者の殺人鬼× 竜騎士
外見 赤の瞳 白の髪
口調 (わたくし、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)
裕美のもう一つの人格で近接戦闘特化。性格は享楽的な戦闘狂
戦闘では【残像】が残るような優雅ステップで敵に近づき、惨殺ナイフによる【切断】を【早業】で繰り出す
ドラゴンランスを使うことがあれば、相手を【串刺し】にするか、竜に変えて【ブレス攻撃】
【瞬きの殺人鬼】使用後の昏睡状態はもう一つの人格に切り替えカバー
電脳魔術が使えないので裕美の能力が必要な場合は【オルタナティブ・ダブル】で呼び出します
あと、虫が苦手
納花・ピンチン(サポート)
ブギーモンスターの勇者×殺人鬼
布を被ってから9年が経ちましたわ
普段はお嬢様口調で、時々関西弁がちょこっと
……って、勉強中なんですわ!
あくまでお仕置きをしに来ているから
あまり殺伐とした戦い方はしませんわ
武器も直前で刃を返して叩いたり
その光景はギャグになることが多いですわ
商人街出身、お話しや交渉なんかも好きです
小さなスイーツや飴ちゃんを渡して一緒に食べると
色々話してくれるんですわ
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し
多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また例え依頼の成功の為でも
公序良俗に反する行動はしません
あとはおまかせ
ほないっちょ、よろしくおねがいします
天道・あや
●
観客の人混み抜けてやってきたぜ最・前・列!
…と思ったんだけど、最前列まではまだあと少しあるみたいなようで
…けど、せっかく此処まで来たんだからーー通り抜けさせて貰うぜ?
右よし左よし ーーお姫様よし!
それじゃ派手に突撃して行きまショータイム!
【覚悟】を決めて【ダッシュ】でエメラルドと軍勢に向けて、突撃!
此処まで真っ直ぐ来たんだし、最後まで真っ直ぐに行くぜ!
敵の攻撃は見切れるのは【見切り】防げないのは【ジャストガード、激痛耐性】で耐える
姿形が見えなくても音が分かるなら、攻撃の来る方向は分かる!
そして敵の攻撃を凌いだらUC発動!
機動兵器とエメラルドを【歌唱】で乱す!
さあ、こっからはあたし達のターン!
●星の子
「観客の人混み抜けてやってきたぜ最・前・列! と思ったんだけど……」
前方に展開するは無数の|帝国継承軍《サクセション・フォース》艦隊、および直掩の軍団か。その数は無駄に広い艦内を埋め尽くす様に、スラスターと砲撃の極彩色を奏でている。
「フム、最前列まではまだあと少しあるみたいなようで」
その更に奥、皇帝気取りの|翠玉《クリスタリアン》が不遜な態度で控えている、と。上等だ。
「せっかく此処まで来たんだから――通り抜けさせて貰うぜ?」
天道・あや(|スタァーライト《夢と未来照らす一番星!》・f12190)は気合を入れて、|七色に光るギター《レインボーハート》をジャンと掻き鳴らす。足元の|ガラスの靴《レガリアス》はキラキラと瞬いて、バトルフォームは星々に負けない煌めきを放っている。主役はあんたじゃない、この私――。
「右よし左よし ――お姫様よし!」
|宇宙《そら》にその名を轟かすまで、あたしの夢は燃え尽きない! ビシっと彼方へ指さして、向かう先は遥かなる|極大戦場《ステージ》。
「それじゃ派手に突撃して行きまショータイム!」
光が渦を巻き、あやは超高速の流星になる――その渦は火砲、追撃、種々の敵意を剥き出しにした骸の海の|住人達《オーディエンス》。声と共に加速した流星が渦を抜けて、光が爆光と爆炎のエフェクトをそこかしこに響かせる!
「此処まで真っ直ぐ来たんだし、最後まで真っ直ぐに行くぜ!」
引くなどという選択肢は無い。ギリギリまで引き付けて更に速度を上げるあや。幾ら数を揃えようと所詮は有象無象、これまでの死地と比べればたんまりとお釣りが出るくらい、温い。
「今回はソロだけど何をしてくるかはマルっとお見通し!」
さあ、もっとステージを熱くして――掠った光波が肌を焼いても、飛び散った破片が行く手を邪魔しても、そんな事でこの覚悟は止まらない! ドラゴンも妖怪も海賊も――もっと凄い奴らと戦ってきた! 何より相対するプリンセス・エメラルドすら、あやの中では既に過去の一つに過ぎないのだから。
『……どうして、そこまでやれるのですか?』
不意に虚空から音が漏れる。そうでしょうよ、あんたのやり口は|大道具を振り回すか隠れてやり過ごすか《・・・・・・・・・・・・・・・・・・》この二択なんだから。何たってあたしは、迷宮災厄戦でオウガ・オリジンが化けたあんたと既に戦っている!
「とーぜん、あたしが本物のアイドルだからよ!」
ミサイルを蹴り飛ばし、爆発を背に胸を張るあや。棚ぼたで継承規約を拾った紛い物の皇帝陛下と一緒にしてもらっては困る――現在進行形で進化中のアイドルに、過去の残滓が勝てるはずが無い!
『ホホ……威勢だけは結構。ですが偶像如きに、宇宙を統べるこの私にどこまで逆らえるでしょう?』
不敵な声音と共に虚空から光条が放たれる。奴の|超常《ユーベルコード》か……だが。
「宇宙を統べる割にはかくれんぼの能すら無いって訳ね。情けない!」
『何ッ……!?』
エメラルドの失策は二つ、囲んで袋叩きにすればよいと敵を侮った事。確かに圧倒的な飽和攻撃はあやを追い詰めたかに見えた――これが生半な猟兵であれば命を落としていたかもしれない。だが、かつての戦争――銀河帝国攻略戦でその苦境を身をもって知っているあやに、二度と同じ真似は通用しない。
「今度は間違えない。怒りじゃなくて、純粋な思いをぶつける」
心を乱さず痛みを耐え抜く覚悟、星よりも輝いて怨嗟の炎を塗り潰す信念、猟兵として、アイドルとして、あの頃の自分とは違う事を証明する為に!
「それにお喋りな|観客《オーディエンス》はマナー違反で即退場なのよッ!」
もう一つ、あやは|エメラルドのやり口を知っている《・・・・・・・・・・・・・・・》――如何に姿を消そうとも、音や温度は隠せない。アイドルの姿に心を動かされれば、誰もが黙ってなどいられない――だから。
「カモン! DJ・D! その悪魔じみた腕前のスクラッチで場を盛り上げてくれーー!!」
『Yes Ma'am! Yo! 待ちくたびれたぜ、マジ暗過ぎだぜ、舵振り切って飛ばすぜShow time!』
さあ、こっからはあたし達のターン! ぶち上げてくぜ星の海のステージ!
荒れ狂う嵐の様な暴威を包む漆黒の帳――あやが呼び出した|超常《ユーベルコード》の悪魔が空間を闇に染めていく。
『な、何だというのです、これは!?』
その悪魔は場の流れを支配する『DJ・D』という闇。闇に包まれた光条はさながらミラーボールの様に弾けて広がる。ミサイルの重低音エフェクトがDのスクラッチを増幅し、スラスターの爆音が歓声へと早変わり。最早あやを傷つけるモノは存在出来ない……ただ一つを除いて。
『ですが、そこからどうやって攻撃するつもりでしょう?』
「言ったじゃん、こっからはあたし達のターン! だって!」
染み渡る闇は姿を隠したエメラルドを避ける様に広がる――すなわち、透明になった彼女らは既にその姿を暴かれた。それが如何に暴威を振るおうとも、もう遅い。
「さあDJ・D! とびっきりのステージを用意したんだ。まだまだまだまだ上げてって!」
『Yo! 乗っちゃって! 一人じゃ足りねえ! ここで登場スペシャルゲスト!』
空間が歪む――猟兵が持つ埒外の一つ、転移の音が雷の様に鳴り響いた。
「――ごきげんよう、プリンセス」
「ごきげんよう――って、プリンセス!?」
闇を裂いて現れた二人の猟兵――中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)と納花・ピンチン(ブギーモンスターの勇者・f31878)が優雅に首を垂れる。
「プリンセス・エメラルド! んなごっついのが相手なんて聞いてませんわ!」
「|緊急出動《サポート》で大物が当たるなんて、幸運なんだか不幸なんだか」
シーツを振り振り慌てるピンチンを横目に、裕美――ではない、副人格のシルヴァーナが呆れた顔で溜息を漏らす。あやの超常で場の流れは完全に猟兵向きだ。ここで一気に畳みかければ、かのプリンセス・エメラルドと言えどもただでは済まない。
「まあ、呼ばれたからには仕事は果たさせてもらいますが……!」
『ならばこちらも、手加減は致しません!』
二人の猟兵の急襲にエメラルドは虚空より自らの宇宙戦艦と皇帝乗騎を呼び出した。だが、あやの超常が場を支配している以上、その機能を十全に果たす事は難しい。
「先制で制圧しようとの事でしょうが、遅すぎますね」
涼やかに答えるシルヴィーナが声と共に姿を消した瞬間、その影は二重三重の残像となって空間を埋め尽くす。
「その赤いヒコーキ、アタシの箒ちゃんとどっちが速いかしらねぇ?」
真紅の皇帝乗騎で逃げるエメラルドを追って、箒にまたがったピンチンが加速する。
『こんな、馬鹿な……!?』
直掩に回った宇宙戦艦の砲撃がシルヴィーナの残像を消していく。だが消されれば残像は更に増え、攪乱の包囲網はより強固になる。如何に強烈な破壊光線だろうと当たらなければどうにもならない――まるで竜巻の様に優雅で豪快なステップを踏む徒党はあっという間に距離を詰め、苛烈な対空砲火もむなしくシルヴィーナは艦橋正面に悠然と立ちはだかった。
「結構な代物ですし、すぐに終わってしまってはもったいないですけど……」
その手には漆黒の|ドラゴンランス《竜槍》。禍々しい穂先を鈍く光らせて、シルヴィーナは黒槍を思い切り振り被った。狙うは真正面、艦橋のグラスエリア――!
「滅びて貰いますわ。お仕事なので」
投げられた黒槍が虚空を裂いて飛ぶ。無人のブリッジエリアに深々と突き刺さったそれは瞬く間に漆黒の|覇空竜《スカイフォール》へと転じた。竜は雄々しく声を上げ、炎を吐いて飛び回る。
「……では、ごきげんよう」
|終焉の炎《ドラゴニック・エンド》は内側から宇宙戦艦を包み派手に燃え上がる。如何に強固な艦船であろうと内側からの攻撃は止められない――Dの闇の中を巨大な火球が一つ、黒い帳を煌々と染め上げた。
「――んで、追いついたッ!」
一方、皇帝乗騎で逃げ惑うエメラルドにピンチンが追い付く。ピンチンも|魔界《デビキン》の住人、|悪魔《D》の闇で|強化された《盛り上がった》ステージで後れを取る事は無い。
『この……小賢しいですよ!』
「危なッ!? でもここまで近寄ればバリアも機銃も出せませんわね! 知らんけど!」
キラリと星屑を撒いて加速する箒に跨ったピンチンは、その上でガシガシと巨大な鋏の様に双剣を打ち鳴らす。
「ほぅーら、もう少しで届きまっせ……じゃなくて届きますわ!」
『この……どうして加速が……!?』
ドゥンドゥンと重低音がエメラルドの頭を揺らす。それだけでは無い――Dのスクラッチがあたかも巻き戻しの様に皇帝乗騎を引き戻し、遂にピンチンの位置と交錯する。ギラリと輝く|怪物《ブギ―モンスター》の瞳――これで、|超常《ユーベルコード》の準備は整った。
「ほなごきげんよう、ですわ!」
一閃――|九死殺戮刃《九つの斬撃》が皇帝乗騎をバラバラに切り刻み、爆発。為す術も無くエメラルドは虚空へ消えゆく。
|流星デバイス《ヘッドマイク》がチカチカと輝いて、Dの漆黒が徐々に薄れていく。エメラルドを見失った残存艦艇が慌てて陣形を組み直す中、あやは人差し指を掲げ声を張り上げた。
「サンキューみんな! 熱いステージだった、ネ!!」
まずは一つ、あたしの――猟兵の勝ちだ。
そしてこの先も必ず勝ってみせよう。この宇宙に本当の自由を取り戻す為に。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
秋月・信子
●WIZ
『これは大層な歓迎じゃない』
…MK-2のバッテリーは既にレッドゾーンに入っていますから、どこまで戦いきれるか分かりませんね
『泣けるわね。でも、手はあるんでしょ?』
はい、私も常に用意周到ですから…でも、ギリギリまでこの子には頑張って貰います
プリンセス・エメラルドにより透過した帝国継承軍をMK-2のセンサーで【索敵】し感知しながら迎撃
言わば墜落寸前の状態ですから、態勢を立て直すのを優先でメインカタパルトの奥へと侵入していきます
『そうしたら、総旗艦の奥から出てきた部隊に挟み撃ちとなるわよね?』
それも織り込み済みです
敵の集中攻撃を見計らって『影の倉庫』に機体ごと退避、改装して間もない"あの子"に乗り換え再出撃します
『あの子…ああ、改造に改造した"ドンガメ"ね。陸上用で調整も完璧じゃないけど、わざわざ人工重力を作っていることだし…実戦で仕上げるのも悪くないわね』
では…|撃鉄を起こします《シュラークヴォルゼン、起動》
機動性に優れたMk-2と正反対な子ですが…火力と装甲は申し分ありません!
●鋼は闘争を求める
『これは大層な歓迎じゃない』
軽口を叩く|影《姉》の言う通り、先の戦いで退避したプリンセス・エメラルドを護る様に、暴力的な無数の火線が秋月・信子(|魔弾の射手《フリーシューター》・f00732)のキャバリアを待ち受けていた。バインダービットを展開し直撃を逸らしながら、信子は姿を消したエメラルドを走査する。手負いはこちらも同じ――余り時間をかける事は出来ない。
「……Mk-IIのバッテリーは既にレッドゾーンに入っていますから、どこまで戦いきれるか分かりませんね」
『泣けるわね。でも、手はあるんでしょ?』
定格出力を保つことも難しい現状の『ピースメーカーMk-II』では、どの道エメラルドを追い詰める事は厳しい。今やらなければならない事は奴に|先制のユーベルコードを使い切らす事《・・・・・・・・・・・・・・・・・》。正面に迫る光条を|熱線銃《ブラスター》で相殺し、そのまま爆発間近の銃身を投げつける。
「……はい、私も常に用意周到ですから」
これで残る武装は稼働時間があと僅かのビットのみ。それでもエメラルドらしき兆候は捉えた。明らかに他とは違う音紋と熱反応を、この奥に――。
「……だから、ギリギリまでこの子には頑張って貰います」
最早動いているのが奇跡と言っていいMk-II。お願い、あと少しだけ力を貸して頂戴。
『ちょっと、このままだと総旗艦の奥から出てきた部隊に挟み撃ちとなるわよね?』
バインダービットは三基が健在、他はしつこいデルタ型を巻き添えに散ったが、Mk-IIも含めエネルギー不足のビットは動きに精彩を欠いている。
「それも織り込み済みです」
あと少し、エメラルドは必ずこの近くにいる。後方に展開している敵は距離が遠い事から、わざとこちらを奥へと追い込ませるつもりだろう。遮蔽物も敵影も無い。パイプラインから漏れ出る熱がいい具合に攪乱してくれている――それで、上手く隠れているつもりだろうが、そこが狙い目だ。
「こちらの手札は、これで終わりじゃありません」
瞬間、真下に膨大な熱量が発生――隠匿していた|対空砲座《ビーム》か! 確かに臆病なあなたならそう来るでしょうね。きっと避けられない――ごめんMk-II。でも、ここまでありがとう。
『駄目よ信子! 間に合わない』
「ええ、ですから――!」
眼下で爆ぜた熱量が信子の身体を熱くする。|超常《ユーベルコード》で姿を隠したエメラルドの方が、今度は奇襲を成功させたのだ。焼け焦げた残骸ががらんと床に転がって、もう一度盛大に爆発した。
『フフ……やったわ』
そうだ、この私がそうそう後れを取るなどありえない。先の戦いはたまたま先手を取られたが、ただの機動兵器如きにやられる訳が無いのだ。床に仕込んだ対空砲座を自らの超常で隠し、必殺の位置で確実に対処する。ここからだ――ここから猟兵への反撃が始まる。
『とか、碌でもない事考えてるわよ、多分ね』
「では現実を教えてあげましょう」
『!?』
刹那、エメラルドのいる足元が轟音と共に爆ぜた。何度も、何度も――その重爆は虚空より、鈍色の砲を光らせてゆっくりと近づいて来る。
「機動性に優れたMk-IIと正反対な子ですが……火力と装甲は申し分ありません!」
爆光に照らされた深い青の装甲が煌めいて、新たな|鉄騎《キャバリア》が雄々しく立っていた。
『ああ……|あの子《ドンガメ》ね。改造に改造を重ね陸上用で調整も完璧じゃないけど――』
一寸前、焼けた装甲に触れぬようにコクピットからそっと降りた信子は倉庫――撃墜間際に退避した|超常《ユーベルコード》の空間で、|もう一つのキャバリア《・・・・・・・・・・》によじ登りハッチを解放していた。
滑らかな高機動型キャバリアであるピースメーカーMk-IIと違い、その機体は余りにも重々しかった。ミサイルとキャノンを背負い、両手には炸裂ボルトを内蔵した近接格闘兵装。右腕には対空陣地じみた巨大な回転式機関砲、腰と両膝にも重々しい装甲の奥にミサイルを内蔵している。さながら実弾兵装のデパートじみたこの機体は、かつて|異世界《クロムキャバリア》で信子が回収した|ある機体《・・・・》を徹底的に改修した代物だった。
『わざわざ人工重力を作っていることだし、実戦で仕上げるのも悪くないわね』
「ええ。前もそうでしたから……」
コクピットに滑り込み起動シーケンスを実行――魔改造した機体故に、立ち上がりが若干遅いが支障が出るレベルでは無い。
> ......SYSTEM CHECK
> Control system OK
> Residual fuel OK
『ユーベルコード解除、実空間と同期開始――』
> Firearm selection OK
> ......SYSTEM ALLGREEN
> HSk-29C <Schlag Wolsen> Ready to launch
「では……|撃鉄を起こします《シュラークヴォルゼン、起動》」
信子の声でマシンの|鶏冠《センサ》が光る。精密射撃用の特注品だ――これで捉えられぬ敵は無い。
『やっぱり、ステージで寛いでるみたいね、お姫様』
「ターゲット確認――それじゃあ」
やっちゃいましょう。口端を歪める信子――同時に、肩に背負ったキャノンが轟音と共に火を噴いた。
『な、新手がこんなに早く……!?』
『新手じゃないわ、続きよ』
「収音マイクの調子もいいですね。っと――敵影接近」
突如現れたキャバリアに面食らったエメラルドは、念動障壁を張りながら更に奥へと逃げていく。同時に追撃の大部隊が信子を追い詰めんと背後より迫りつつあった。
『|追跡《トレース》は出来てるわ。他のも?』
「ええ。まとめて燃やします」
丁度いい――コンソールに浮かぶ無数のターゲットマーカーを滑らかな手付きでなぞり、信子は|全武装の安全装置を解除《オールセーフティ、リリース》――自動制御された全ての火砲が一斉に牙を剥く。
戦闘艦すら沈める大型キャノンとミサイルの乱舞、狙った獲物は逃がさない回転式機関砲――迂闊に近寄る機動兵器は踏み込みと共に鉄拳が容赦無く沈め、戦場は瞬く間に炎に包まれる。
「敵兵力の七割を殲滅、本命は――いました」
『じゃあ派手に行くわよ!』
エメラルドが幾ら姿を隠そうと、音と熱は隠せないのだ。その猛威はさながら、一匹たりとも得物を逃がさぬ鋼鉄の狼の如し。全身のハッチを開き、必殺の牙がギラリと輝く。
「相対速度補正、発射管全門開放――ファイア!」
如何に逃げ上手の姫君でも、本気の貪狼には敵わない。
|翠《エメラルド》の野望を飲み込む様に、|赤《炎》が鈍色の艦内を染めていった。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
●
思うんだが…銀河皇帝の一族は皆エゲツネェ格好をする掟でもあるんでござるかね?
だってエグイ格好じゃん!まてよ…実は皇帝もあの格好の下は覚悟キマった…いや、この話は辞めよう
無数の兵器に【宇宙戦艦】が出てきても随分余裕そうだなって?安心しな、対応策は既に完成しているッ!
全身を【ドット絵】に変換!更にドットの設定を透過率100%に!するとどうなる!全身ドットピクチャーな拙者は完全な透明になるって寸法よ!
拙者が見つかるかプリンセス・エメラルドにタッチダウンキメるか…|デスゲーム《命を懸けたかくれんぼ》の始まりだ!
という訳で敵軍をまるっと無視して浸透していこうぜ!攻撃の隙間に潜り込むのは得意だからヨ!
強大な戦力だろうが見つけられなければどうという事はないでござる、ついでに熱探も大丈夫でござるよ!電子データに熱なんかある訳ないだろ!
音だけ気を付けて静かに接近しような…迂闊にジャンプなどすると鳴るからな…軽快なSEが…!
ハァイ拙者エドゥアルト、今貴様の後ろに居るの
この手榴弾はサービスだから受け取ってね
火土金水・明
「遅くなりました。私も攻撃に参加します。」「これ以上、頑張ってもあなたの野望は決して成就しません。帝国継承軍共々、躯の海へ帰りなさい。」「数多くの敵を相手にするのでのであれば、戦場全体を纏めて攻撃することにします。」「私は攻撃をしつつ、他の猟兵の方達の回復も受け持ちましょう。」
相手の先制攻撃には【第六感】【野性の勘】【オーラ防御】で、できる限り回避をを試みます。
【SPD】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【巷に金色の雨の降るごとく】を【限界突破】で【範囲攻撃】にして、『猟書家『プリンセス・エメラルド』』と帝国継承軍達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【勇気】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「ここは勇気が砕けない限り、倒れる訳にはいきません。」「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の猟兵の方に繋げる事です。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。
●次元超越戦闘
「思うんだが……銀河皇帝の一族は皆エゲツネェ格好をする掟でもあるんでござるかね?」
「遅くなりました。私も攻撃に参加しま……はい?」
したり顔で彼方を見やるエドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)の言葉に火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は困惑した。確かに遅れて来たけれど、いや、これはどんな状況なのよ。
「だってエグイ格好じゃん!」
「そう、ですね……」
既にプリンセス・エメラルドと幾度かの刃を交えた明は察した。確かにあの角度はエグイ。しかもそのエグイ格好で最長老なのに自称プリンセスなどと目眩のしそうな放言をかましている事も承知している。それでも――自分がやるべき事に変わりはない。気を取り直し、迫り来る敵の大軍勢を見据え『七色の杖』を握る手に力を込める明。
「数多くの敵を相手にするのであれば、戦場全体を纏めて攻撃することにします」
「まてよ……実は皇帝もあの格好の下は覚悟キマった……」
あなたも大概覚悟が決まってますよね……とは言わずに明は敵の先制攻撃に神経を尖らせる。恐らく敵は『皇帝乗騎』で仕掛けて来る。そして飽和攻撃による戦場の蹂躙にも対応しなければならない。ここから先は僅かな油断が生死を分けるだろう――だから。
「いや、この話は止めよう」
「随分と余裕がおありですが、そうして頂けると助かります。回復もお任せを」
止めて本当に。今は亡き銀河皇帝のエグイ格好を想像しそうになった明は余裕綽々なエドゥアルトに目を向けて訝しんだ。確かにこの男が歴戦の猟兵である事は分かる。だがこの難関を突破しなければプリンセス・エメラルドに一矢報いる事はおろか、自身の生命も危ないのだ――何故、こうまで落ち着いていられるのだ、と。
「随分余裕そうだなって? まあ安心しな、対応策は既に完成しているッ!」
髭をさすってニヤリと笑むエドゥアルト。闇の彼方から放たれる無数の光芒が目に焼き付いて――必殺の光条と苛烈な火薬の|一斉射《パレード》が二人の元へと殺到した。気を張り巡らせ回避姿勢をとる明が即座に離脱/ところがエドゥアルトは爆発に巻き込まれ、見るも無残な平たい姿に変わってしまった――否。
「言わんこっちゃない……って!?」
「全身を【ドット絵】に変換! 更にドットの設定を透過率100%に! するとどうなる!」
匠の技は物質を三次元から二次元へ変える事もお手の物。限り無く平面に近づいた|超常《ユーベルコード》存在は無重力であろう事かひらひらと宙を舞い、まさしく触れえざる者と化したのだ。更に。
「何という……事でしょう……!」
ドット絵の持つ特性、拡張子を適合する形に合わせればご覧の通り、平べったいエドゥアルトの色味が徐々に宇宙の闇色に溶け込んで――。
「全身ドットピクチャーな拙者は完全な透明になるって寸法よ!」
多少の当たり判定はあれど存在をドット絵という電子データと化した今、エドゥアルトの外形は消えた。跡形も無く消えたのだ。それこそがエドゥアルトの言う|既に完成した対応策《ドット職人の朝は早い》!
『勝手に盛り上がらないで頂けますか、猟兵!』
見えてるモノが全てではない。だが見えてるモノしか分からないのが人の常……激高する声が|宇宙《そら》を裂き、真紅のマシンが戦場で吼える。遂に奴が――プリンセス・エメラルドが現れた。
「さて、こうなると狙いは私ですか」
実際この状況は一人芝居に見えなくも無い。前衛艦隊の攻撃を躱しつつ、追撃の速度を速めるエメラルドを見やり明は|超常《ユーベルコード》の発動準備に入る。先制の超常を受けざるを得ない今、頼りになるのは己の戦闘経験のみ――張り巡らせた気を貫いて、肌を掠めるレーザー機銃の痛みを堪えて明は宙を駆ける。
「……ですが勇気が砕けない限り、倒れる訳にはいきません」
続いてミサイル/ビーム砲/大勢の直掩による圧倒的な砲火! さながら大花火に飛び込む羽虫の様に、傍から見れば絶望的な戦力差だろう。既に被弾もしている――|超常《ユーベルコード》を|喰らっているのだ《・・・・・・・・》。だからこそ、ようやく己の役目を果たす事が出来る!
「――私の心にも雨が降る、この熱りを鎮める様に」
刹那、漆黒の宇宙に虹が迸る。その七色の輝きは荒れ狂う稲光と化して、明に迫る苛烈な砲火を遮った。
『宇宙空間で気象兵器? いや、これは!』
全てを察したエメラルドが『皇帝乗騎』を反転させるのに時間は掛からなかった。代わりに『宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号』を前に、自らを護る様にエメラルド色の破壊光線が空を裂く。その光に七色の稲妻がぶつかって、連鎖爆発した光跡が壊れたブラウン管の様に宇宙を歪ませる。圧倒的な破壊の嵐――その中でしとしとと降り注ぐ淡い光が徐々に明の傷を癒す。
「これ以上、頑張ってもあなたの野望は決して成就しません。帝国継承軍共々、躯の海へ帰りなさい」
『お断りいたします。悲願成就の為、ここで引く訳には参りません』
一種類の超常は原則一つの効果を齎す。だが明の『|巷に金色の雨の降るごとく《ゴールドレイン》』は破壊と癒しの二極を司る権能――弾けて混ざった破壊の渦が続々と|帝国継承軍《サクセション・フォース》を飲み込みながら、猟兵は虎視眈々と反撃の機会を伺っていた。
「流石、継承者の名は伊達ではありませんね……!」
しかし現状の彼我戦力差は圧倒的。このままでは超常の時間切れと共に押し返されるのは明白だ……だからこそ、伏せた切札を取り出す勝機を見誤ってはいけない。
『……おかしいですね。もう一つ気配があった気がしますが』
「何を言っているのです? 耄碌しましたか、お婆さん?」
挑発とブラフを混ぜてエメラルドを誘う明。全てのカギは|あの男が握っている《・・・・・・・・・》。
(そう――拙者が見つかるかプリンセス・エメラルドにタッチダウンキメるか……|デスゲーム《命を懸けたかくれんぼ》の始まりだ!)
強大な戦力だろうが見つけられなければどうという事はない。あえて言おう、カスであると。熱と電波と衝撃に溢れたこの戦場で、透明化したドット絵がフラフラと隙間を縫って『皇帝乗騎』の元へと迫る。敵軍をまるっと無視して浸透突破! 攻撃の隙間に潜り込むのは得意だからヨ!
『ずいぶんな口を利く――確かに反応はありません』
「そういう事。それに――」
まだ折れる訳にはいかない。まずはあの艦を叩く! 爆光を背に加速した明が最後の力を振り絞り、やがて漆黒に溶け込んだ。
『フフ、加速して目を欺いたつもりでしょうが……甘い!』
エメラルドの声と共に虚空が爆ぜる。放たれた破壊光線が捉えたのは明――加速した明の残像だ。その像が続々と増えながらエメラルドの元へと迫る。だが|宇宙戦艦《プリンセス・エメラルド号》の精緻なセンサは、その姿を一つたりとも逃さない。亜空間戦闘すら考慮されたこの艦に、生半なごまかしは通用しない。
「それでも、私の役目は少しでもダメージを与えて、次の猟兵の方に繋げる事です」
『フフ、何がダメージです。そんな電撃程度で怯むと思って?』
「思ってないよ」
明の残像が次々に掻き消える中、派手な爆音に混ざって聞こえた軽快な電子音――黒髭襲来、お道化た声音がエメラルドの背筋にぞわりと悪寒を走らせる。遂に奴が辿り着いたのだ。
『!?』
「ハァイ拙者エドゥアルト、今貴様の後ろに居るの」
耳の届くは中年男性の声のみ……迂闊にジャンプなどすると色々鳴るからな……音だけ気を付けて静かに接近した結果がこれだよ! 透明化したドット絵は通常の探知機で見破れる存在では無い故、電脳空間ですらないこの戦場だからサービスサービス♪ 『皇帝乗騎』のサブモニタに髭面の強面が道化の様ににょろりと姿を現した。
『私の艦の探知をすり抜けた!?』
「電子データに熱なんかある訳ないだろ! |ねぇ今どんな気持ち《NDK》?」
くねくねと煽る様に腰を振りながら腰元から何かを取り出すエドゥアルト。台パンしかねない勢いで青筋を立てたエメラルドから驚愕と怒りの表情を見取ったエドゥアルトは、手にしたそれをモニタ越しにエメラルドへひょいと投げつける。
「この手榴弾は|サービス《芋煮》だから受け取ってね♪」
いきなり|手榴弾《ハンドグレネード》である。ドット絵から実体化した手榴弾は何とも言えない匂いを放ちながら、エメラルドの胸元へすっぽりと収まった。この間僅かコンマ三秒――猟書家もビックリの早業で騙し討ちを仕掛けたエドゥアルトは同時に|姿を消して《SOUND ONLY》、捨て台詞を残し転移した。
「そんなエグイ格好してるからでござるよ。さらば!」
『熱ッ! この馬鹿ナニコレ信じられない!!!!』
それが断末魔、匂いの篭ったキャノピーを開いても時既に遅し。
猟兵の覚悟は真紅のマシンを爆発と芋煮で包み込む。最早エメラルドは逃げる他に道が無かった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユエイン・リュンコイス
●真の姿解放
眼前には翠緑を戴く漿船、周りを固めるは女帝に付き従う近衛軍。ならば此方は絶対の一を以て臨むまで。
機械神に搭乗したまま、砲火を防ぎつつ敵旗艦内部へ巨躯をねじ込む様に吶喊。敵が迎撃に現れた所で召喚を解くと同時に、躯体を構成していた無機物を周囲へと吹き飛ばし迎撃の弾幕とする。
その後、操縦席から飛び出しながら黒鉄機人と煉獄を取り込み真の姿を開放。
最長老と自負しながら姫君を名乗るとは、少しばかり夢見がちに過ぎるんじゃないかい?
まぁ良いさ。ならばこちらは煉獄乙女でお相手しよう!
後は小細工なしの真っ向勝負。ただ前へ、標的目掛けてただひたすらに距離を詰める。破壊光線については同じだけの熱量をぶつけて相殺を狙うよ。天を焦がすと謡われた煉獄の焔、次は宙の輝きを墜として見せようか。
女帝を攻撃圏内に捉える寸前、一度煉獄を鞘へと納める。狙うはただ一つの好機、エメラルドの急所と『帝国継承規約』が同一直線上に並ぶ刹那。
渾身の抜き打ちにて諸共の両断を狙う。
受けよ、焔閃。
昇華の一太刀にて遍く野望を焼き払わん!
●輝刃緋昇
漆黒に揺蕩う翠が燃えている。度重なる猟兵の追撃により|帝国継承軍《サクセション・フォース》総旗艦『ソング・オブ・オーンブル』号は紅蓮の地獄と化していた。それでも尚、周辺に展開していた直掩が続々と集結し、さながら強敵に備え団結する蜂の如き様相を示している。
「眼前には翠緑を戴く漿船、周りを固めるは女帝に付き従う近衛軍」
わずかに離れてそれを見やるユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)は、全身から炎を噴く機械神にその身を預けたまま必殺の機会を伺う。敵の数は多いが、狙うべきはたった一つ――。
「――ならば、此方は絶対の一を以て臨むまで」
自らの炎の瞬きに気付いた敵が一斉に火砲を集中させる。流石|宇宙世界《スペースシップワールド》、戦の密度が違うのは|これまで《銀河帝国攻略戦》と同じか。弾丸を融解し光条を相殺し、赤熱化した鋼の巨神はその身を砲弾と化して総旗艦へ迫る。ここが正念場、全身全霊をもって突破するのみ!
「死にたくなければ道を開けろ。さもなくば……」
我は邪を討つ焔なり。悪しき過去は須らく、この炎の糧となろう。
炎は渦を巻き、あらゆる悪意を飲み込んだ。さながら彗星――立ち塞がる尽くを骸と化して、ひたすらに悪意の根源へとひた走る。機械神は有象無象如きに落とされる程柔では無い。ディグタトル級だった瓦礫を払い、ピルグリム級の腹を破り、|星獣《クエーサービースト》の頭を貫いて、灼熱の彗星は更に速度を上げる。
(総旗艦接触まで3、2……1――!!)
ドン、と重苦しい破裂音と共に加速した機械神は総旗艦の隔壁を突き破った。埒外の熱量を帯びた物理的破壊力はそのまま直進――刹那、夥しい火線が全周より機械神を寸刻みに貫く。予め迫っていることが分かれば艦内の防衛システムを集中させる事は造作も無い。座乗した|宇宙戦艦《プリンセス・エメラルド号》で足を組み、翠玉の姫君はクスリと笑みを漏らす――。
『フフ、所詮は造り物の機械人形。絶対王者たる銀河皇帝の系譜に刃向かう事自体、愚か』
先の戦いで手痛い一撃を喰らった故に、自らの力を解放出来る機会はもう少ない。しかし凌ぎ切れば|新世界《スペースオペラワールド》に手が届く――そして、全てを|龍《スターゲイザー》の名の元に平らげる。私はその継承者なのだから、負ける筈が無いのだ、と嘯いて。
「どうやら未だ寝惚けたままの様だね、あなた」
女帝の声を瓦礫が嘲笑う――否、煌々と燃えている機械神だった瓦礫の中から、埒外の反逆者がゆらりと立ち上がった。
『! どこから……』
「最長老と自負しながら姫君を名乗るとは、少しばかり夢見がちに過ぎるんじゃないかい?」
最初から|こうなる予定《・・・・・・》だった。最早形振り構わないだろうエメラルドの直掩を突破するには敗れたと思わせる方が容易い。それにこの状態そのものが|超常《ユーベルコード》の布石――瞬間、破裂した機械神の装甲が周囲に散らばる敵に突き刺さる。灼熱の装甲はそのものが強烈な徹甲弾にして溶断する刃。深くに食い込んだそれらが諸共に散華の爆光を開かせて――これで艦内には自身とエメラルドのみ。
『人形如きが、口が過ぎますよ』
しかしエメラルドが座乗した戦艦は動じず、返礼の破壊光線が毒蛇の様に波打ってユエインへ襲い掛かる。
「まぁ良いさ。ならばこちらは――」
波打つ翠色の光を浴びて赤が爆ぜ、絶対零度の真空に灼熱が広がっていく。|全砲門一斉射《エメラルドのユーベルコード》はユエインの居た空間を須らく破壊せしめた……否、爆ぜた赤は翠と拮抗し、稲妻を散らして空を揺るがす。戦いは終わってない――灼熱の|装甲《ドレス》を纏った赫奕たる乙女がふうわりと頭を上げる。白き十字に炎の紋章、煌々と燃え盛る炎と成ったそれこそはユエインの真の姿。
「――煉獄乙女でお相手しよう!」
途端、加速した灼熱が艦橋を突き破りエメラルドの元へ参上する。後は小細工なしの真っ向勝負、熱を帯びた刃がちりりと鳴いた。
「天を焦がすと謡われた煉獄の焔、次は宙の輝きを墜として見せようか」
『下郎めが、私も随分と見くびられた……ものです!』
裂帛の気合と共に宙を薙ぐエメラルド――同時に不可視の念動の刃がユエインの側を豆腐の様にぐしゃりと潰す。成程、代償のサイキックエナジーは宇宙戦艦並みの出力という訳か――面白い。
『艦を傷つける訳には参りません。同じ土俵にて、フフ……相まみえるとしましょう』
「電撃でも飛ばしてくると思ったけれど、殊勝な心掛けだね」
それが命取りだよ――ユエインは手にした『煉獄・赫』の切先を膝下の高さへ。如何に強力な|念動《サイキック》だろうと、まともに訓練を受けてない剣術など恐るるに足らん。暴力的に振り回される不可視の刃なれど、その圧で太刀筋までは隠せない。
『!?』
念動の一太刀が浴びせられた刹那、跳ね上げた切先が頭上でそれを払い飛ばす。そのまま返す煉獄の刃が横一文字、エメラルドの頑強な鋼の籠手を切り落として――体勢は一転、痛みで思考を飛ばされたエメラルドは退路を確保すべく『帝国継承規約』に手を伸ばす……この時を待っていた。
「受けよ、焔閃」
チン、と鯉口の鳴る音が響く。納刀――視線の先には侵略蔵書を手にしたエメラルド。奴が『皇帝乗騎』を呼び出す刹那、渾身の抜き打ちにて諸共の両断を狙う!
『此度はこれまで、ごきげんよう……』
「逃がすものか。昇華の一太刀にて遍く野望を焼き払わん!」
極限まで高められた埒外の超常――『|絶焔昇華領域・煉獄乙女《スブリマツィオーン・フェーゲフォイア》』の居合い抜き――傷だらけの己を代償に自身の全てを強化した一刀は|超新星《ビッグバン》の速度をもって振るわれる。閃光と共に飛び散った血しぶきが焼き焦げて、堅牢な翠玉の肌に亀裂が走った。最早音も聞こえない絶空の高みより、ユエインの渾身は艦諸共エメラルドと『帝国継承規約』を断ち切ったのだ。
「これが正真正銘最後の切り札――絶焔の一刀だ」
遅れて届いた爆音が視界を赤と白に染め上げる。ばらりとめくれた侵略蔵書の頁が焼け落ちて、同時にエメラルドの姿が消えた。ぐつぐつと音を立てて沈みゆく宇宙戦艦を後に、ユエインは淑やかな足取りで戦場を離れる。
奴の力の根源は大半を削り取れた。これで偽りの女帝に残された時間は、あと僅か。
大成功
🔵🔵🔵
ヘスティア・イクテュス
●
『ハッキング+ジャミング』により機械系武装の攻撃タイミングと自身位置照準を微ズラす
過去に戦闘したことある相手の|戦闘データ《【情報検索+情報収集】》から攻撃を判断し、『見切り』
ティターニアで|上手くズラシた全方位攻撃へ飛び込み《【空中戦+空中機動+推力移動】》一部致命的ダメージをトムテクロークで|『受け流しつつ』《【オーラ防御】》回避するわ
そのままパックプーカのダミーバルーンとスモークミサイルを|利用《【目潰し+フェイント】》撃破されたように見せつつ光学『迷彩』で隠れつつ離脱
そのまま近寄って|背後からレーヴァティを突きつけ《【騙し討ち+不意打ち】》
こっちからも言ったでしょ?
そっちが戦力を整えるのと同じく、こっちも色々|強化《アップデート》してるのよって
ごきげんよう。そして、さようなら
周りをいくら集めても、自身を|高めることが《アップデート》できない時点で貴方の負けよ永遠不変の女王様
リア・ファル
●
皇帝乗騎…か。厄介な相手だね
けど、これまでの対戦経験はあるんだ、やるよイルダーナ!
敢えてプリンセス・エメラルドを巻き込んで高速戦闘を仕掛ける
同士討ちの危険もあるし周囲の軍勢は的が絞りにくいハズだし、
周囲の敵が多かろうと、対応してくる敵に絞って牽制を加えていくさ
皇帝乗騎とのドッグファイトには、マシン制御に介入して、思い通りに制御させたりしないよ
以前相見えた経験も使って、凌いでみせる
(ハッキング、情報収集、データ攻撃、操縦、空中戦)
『ヌァザ』を構え、告げる
どんな大群だろうと、どんな暴威だろうと、ボクは征く
この星海を
今を生きる誰かの明日の為に!
機動戦艦ティル・ナ・ノーグ……現実空間へ、マテリアライズ!(真の姿)
こんな至近距離で顕現したら、懐に飛び込んだも同然だよね
それこそボクの狙い
まとめて多元干渉波動砲で撃ち貫く!
【今を生きる誰かの明日のために】、発射!
●|星を望んだ者達《Stargazers》
「アベル、状況」
『敵総旗艦ソング・オブ・オーンブルは損耗率60%を超過。放っておいても沈みますね』
「でも、奴はまだ生きている……」
燃え滾る『ソング・オブ・オーンブル』を前に、ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)とリア・ファル(|三界の魔術師《トライオーシャン・ナビゲーター》・f04685)は気を張り詰める。刻々と変化する状況をヘスティアのサポートAI『アベル』が告げて、二人は自身の装備に戦いの火を灯す。宇宙に生きる二人にとってプリンセス・エメラルドは再び現れた厄災――ここで終わらせなければならない存在故に。
「|悪あがき《ユーベルコード》の一隻、|宇宙戦艦《プリンセス・エメラルド号》がお出ましみたいだ」
『お嬢様、リア様、多数の重力震を検知。恐らく最後の敵直掩……総数は』
「数えなくていいわ。邪魔する奴は全部叩く」
レーダーモニターが続々と真っ赤に染まる。その中でエメラルドの|超常《ユーベルコード》が最後の宇宙戦艦を呼び起こし、前衛旗艦として陣を張る。大した数を揃えたものだ――これが普通の艦隊決戦なら仕切り直しもいい所だろう。だが。
「うん。瞬間的でも敵戦力が立て続けに増えるなら――数えても数えなくても同じだね。それに」
敵が規格外ならこちらも埒外、純粋な力を捻じ伏せる圧倒的な力がここにある。戦術方針は決まった、
「皇帝乗騎と宇宙戦艦が健在っても、これで最後でしょう。いえ」
リアの『|イルダーナ《制宙高速戦闘機》』が、ヘスティアの『|ティターニア《高速推進器》』が互いに激しく火を放つ。加速した両者に殺到するはエメラルド率いる大艦隊の一斉射――。
「これで終わりにする。行くわよ!」
『イエス、マム』
極彩色の地獄が花開き、爆光と火球が辺り一面を激しく彩る。その渦中を舞う妖精二つ――音と光の嵐を超えて、目指す場所はただ一つ。
「この宇宙に明日を取り戻す為に、いざ!」
遥かなる思いを乗せて、最後の戦いが始まった。
『フフ、如何に猟兵と言えどたかが二人でどうにかできると』
戦場を圧倒する威力がエメラルドの前で煌びやかに輝いて、蟻の這い出る隙間も無い高密度の飽和攻撃が漆黒を白く染め上げる。過剰にして最高、前衛に配した直掩の総火力は先の大戦の精鋭一個艦隊にも匹敵する。その様を満足げに見やり、エメラルドは声を張り上げ檄を飛ばした。
『集結せよ我が艦隊。アレを倒せば新世界は目の前――』
刹那、不規則な爆発が戦場の調和を乱した。よもや沈められた一隻の爆発が連鎖して、鉄壁の布陣が内側から破られようとはエメラルドは知る由もなかった。そんなものは、単なる偶然だと――。
『コース設定、3-1-5、以降ランダム』
「上等よ。ジェットコースター気分だわ」
否、偶然ではない。ヘスティアの|電脳魔術《ハッキング》で火器管制を狂わされた艦艇が僚艦を一隻沈めてしまった事を皮切りに、密集した陣形でその爆発が続々と連なっていたのだ。
『一体何が起こっているのです!?』
威力は戦法が十分に備えている。ならばそれを使わぬ道理は無い。あえて直撃弾に身を曝し、|トムテクローク《反重力外套》でその攻撃を受け流す。|能動照準《アクティブ》でなければこちらの攻撃による警告は出ない。故に過剰な火力を投じた事で、火球の間隙を縫う様に舞うヘスティアを捉える事も出来ずに、誘爆が徐々に拡がっていったのだ。
「まるでカカシだね。流石のハッキングだ」
誘爆の隙間を駆け抜けたリアが苦笑する。ヘスティアの陽動と攪乱で戦場は僅かに破綻した――つまりリアの最高速ならば突破する事は容易。眼前に迫る|宇宙戦艦《プリンセス・エメラルド号》に狙いを定め『|ディープアイズ《ARディスプレイ》』で突破口を解析した……瞬間。
『全艦主砲展開! 目標正面、一斉射!』
エメラルドの号令一下、放たれた主砲に続いてヘスティアがいる戦場に続々と砲火が叩き込まれる。そこに味方がいる事もお構いなしに爆発は広がって、宙域そのものを消し飛ばしかねない威力が瞬く間に広がった。
「銀河帝国のやり口は、相変わらず――……」
『まさか|味方ごと攻撃する《・・・・・・・・》とは思わなかったでしょう』
ノイズ交じりの爆音が沈んでいく――苛烈な火球に飲み込まれヘスティアは姿を消した。前衛艦隊を巻き込んだ凄惨な爆発は広がって、圧倒する威力がエメラルドの艦に昏い影を落とした。
『フフ、これでチェックメイトです』
「いいや、一手遅かったね」
そうだ、終わりではない。猟兵はもう一人――加速したリアの『イルダーナ』は夥しい量の弾幕をすり抜けて、遂にエメラルドが座乗する宇宙戦艦の片舷に機体を寄せていた。無論その場所は対空砲火の死角にして安全地帯――死中に活を見出したリアはにこやかに|営業対応《スマイル》で言葉を続ける。
「お届け物だよ、プリンセス」
『もう一人……!!』
言葉を交わしながら軽やかな手付きで端末を操作/『イルダーナ』に装着した『|アンヴァル《小型支援機》』が音も無く外れ、その機首をぐるりと戦艦の機関部へと向ける/歯噛みするエメラルドはその異変に気付かない――これでチェックメイトだ。
「アンヴァル、|メビウス《次元障壁》展開――|直接攻撃《ダイレクトアタック》!」
途端、爆音と共に飛び出した『アンヴァル』が装甲と隔壁を突き破り吶喊する。その姿はさながら竜の腹の中で暴れまわる騎士の様――エメラルドは想定外の闖入者に手を出す事も叶わない。となれば、次の一手は。
「まあ、これで終わるとは思ってないけど……」
轟沈する宇宙戦艦から一筋の光が飛び出す。それはリアにとって見覚えのある真紅の航宙戦闘騎。
「出たね、皇帝乗騎!」
最後の切り札、生命を共有した超常の戦騎に跨りエメラルドは戦場から遠ざかる――逃がしはしない。『アンヴァル』を再び装着し加速する『イルダーナ』が赤に追い縋る。かつての『迷宮災厄戦』から自身もマシンも鍛えたのだ。
「厄介な相手だ。けど、これまでの対戦経験はあるんだ――」
捉えた『皇帝乗騎』の背に光弾を叩き込むリア。その攻撃を僅かな機体の傾けで躱すエメラルド――最長老の名は伊達では無いらしい。ならば。
「やるよイルダーナ!」
光弾が当たる範囲、つまり奴はイルダーナの――|リアの射程にいる《・・・・・・・・》/神速の演算が導くは必勝の方程式/悟られぬ様に物理攻撃を続け、回避機動に集中させて注意を削ぐ。
『登録の無い戦闘機、しかし』
未確認機故に細心の注意を――背後を狙う光弾は鬱陶しいが避けられぬ程では無い。確かに速い機体だが、今の速度で進めば――口端を歪めるエメラルド。策はまだ|もう一つある《・・・・・・》。
『この皇帝乗騎、甘く見ないで貰いたい!』
「その機能が十全ならね――でも」
流星のドッグファイトは一進一退を繰り返し、やがて真紅の皇帝乗騎は緩やかに速度を落としていく。エメラルドに悟られぬ様、主機関の燃焼効率を徐々に下げてセンサの有効半径を僅かに狭める――それだけで十分。
『どうして追い付ける……まさか!』
「三界の魔術師は伊達じゃないよ」
コンマ秒以下の逡巡が生死を分ける戦場でリアの行った|改竄《クラック》は致命の所業。しっかり背中を押さえたエメラルドを照準に捉え、トリガーを引いた……瞬間。
『だとしても、ここまで来れば――』
空が割れる。その衝撃が『イルダーナ』を傾けて必中の狙いは僅かに逸れる。衝撃の正体――ヘスティアと共に沈んだ艦隊の生き残りが、死力を尽くしてエメラルドの元へと参じたのだ。
「重力震……成程ね。でも」
先の大艦隊とは比べ物にならない規模。それでも威力は一級品、幾度も死線を潜り抜けて来た実力だって本物だろう。だからこそ、|ここから先は容赦しない《・・・・・・・・・・・》。
「どんな大群だろうと、どんな暴威だろうと、ボクは征く」
マシンの上に立ち上がったリアが白銀の剣をそろりと抜く。切先はエメラルドに向けて、その剣――多元干渉デバイス『ヌァザ』はリアの意志を示すかの様に煌々と輝いた。
「この星海を――今を生きる誰かの明日の為に!」
魂の帆を上げて、銀色の輝きは空を断つ。目の前のエメラルドを護る様に布陣した艦隊もろとも飲み込んで――希望の艦が姿を現した。
『何ですかあの艦は――!?』
三界を渡り、遍く邪悪を屠ったリアの剣。解放されたアカシックドライブの嘶きが宙を震わせ、猛る光子波動エンジンが原初の輝きで漆黒を塗り潰す。恐れよ、我は希望の運び手なり。
「機動戦艦ティル・ナ・ノーグ……現実空間へ、マテリアライズ!」
「こんな至近距離で顕現したら、懐に飛び込んだも同然だよね」
『こ、の――』
それこそがリアの狙い。顕現と同時の一斉射が眼前に爆光を散らす。追い詰められたエメラルドは残された艦を盾にして反転、ならばこそ、是が非でもこの宙域を離脱しなければならない――刹那、涼やかな声が響いた。
「逃がさないわよ、おばさん」
故に宇宙海賊は潜んでいたのだ。|奴《エメラルド》が勝利を確信し全てを注ぎ込むタイミングを確実に潰す。『|パックプーカ《偽装用風船端末》と『|スモークミサイル《攪乱用煙幕》』で|死んだ振り《光学迷彩》などという生き恥を曝したのは、エメラルドの命脈を確実に断つ一瞬を手に入れる為――奪うならば海賊らしく、最初から手段を選ぶつもりなど無い。いつの間にか青髪の妖精は翠玉の女帝の背中を捉え、鈍色の銃口を突き付けていた。
「こっちからも言ったでしょ? そっちが戦力を整えるのと同じく、こっちも色々|強化《アップデート》してるのよって」
静かな声音でヘスティアが宣う。冷徹な視線は獲物を決して逃がさない。奪われた平和、海賊として奪い返す事が宇宙に生を受けた私の使命だから。
「如何に高性能だろうとね……当たれば壊れるのよ。お分かり?」
『海賊のッ! 小娘如きがッ!』
スロットルに手を掛けるも『皇帝乗騎』は微動だにせず。しんと静まり返った機械は既にヘスティアが|掌握《ハッキング》していた。如何に超常の戦騎と言えど、二人の電脳魔術を立て続けに喰らえば無事では済まぬ。苛烈な|過負荷情報攻撃《クラッキング》はその制御系を完全に破壊していたのだ。
「ね? 壊れるの。こんな骨董品で勝とうなんて、甘いのよ」
『報告。『帝国継承規約』の無力化を確認――まあ半分程度の情報量では我々を止められませんよ』
ヘスティアの宣言にアベルの声が続く。先の戦いで半分に破られた侵略蔵書の情報は|制圧《ハッキング》され、これ以上超常の戦闘兵器を呼ぶ事は叶わない。
その残滓――猟書家と呼ばれた邪悪の骸、残存艦艇に侵略蔵書、全て欠片でも残れば再び宇宙を揺るがしかねない脅威だ。だから、まとめて|多元干渉波動砲《クラウ・ソラス》で撃ち貫く。二度と|現在《いま》を脅かさない様に。
「――この一撃よ、明日に届け!」
全ての過去に哀悼の意を込めて、骸を葬る鎮魂の光が宇宙を覆った。
リアの切り札が戦場を制圧し、残された傷だらけの女帝は俯いたままぼそりと言葉を漏らす。
『……ああ、私も』
自身の念動力も失ったエメラルド――力の源が制圧されて、存在する事が精一杯の彼女が潰える時が来た。
「周りをいくら集めても、自身を|高めることが《アップデート》できない時点で貴方の負けよ――永遠不変の女王様」
過去に何があったかは知らない。でも互いに流された血を贖う事は出来ないのだ。その決着は未来のみぞ知る。もし、この先も過去が今を力づくで否定し蹂躙しようというならば、わたし達は何度でも抗ってみせる。
『私も、あの星の海を……越えたかった』
「……それは出来ないわ。だから、ごきげんよう」
そして、さようなら。
別れの言葉と共に女帝はその場に倒れ伏せ、砕けた翠玉の身体は闇に呑まれて消える。
星を望んだ魂のぶつかり合いは終わり、残された者は再び舟を漕ぎだした。
今、星の海を越えて、新たな世界と出逢う為に。
大成功
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