第二次聖杯戦争⑯〜最弱の最強
強い者が勝つのではなく、勝った者が強いのだ。
その言葉に準じれば確かに『震えるミント』は最強かもしれない。
「くぅ〜ん、きゃんきゃん! ぷるぷる……」
人の心があれば、怯えて震える者はむしろ守りたいと思うはず。
そして実際、ミントの周囲には彼の親衛隊ともいえるオブリビオン化した人狼騎士たちがいつでも庇いに入れるように多数待機しているのだから。
「いいか、ミントは俺たちが守るんだ」
「おー!」
「絶対に守り抜くぞー」
「おー!」
「おやおや」
仰木・弥鶴(人間の白燐蟲使い・f35356)は猟兵を出迎え、「すごい人気だね」と語り始めた。
「場所は石川県庁前。『震えるミント』は尾を巻いて震えながらぽつんと佇んでいる。見た目は弱そうだけど……いや、実際弱いんだけどね。数々の戦いを生き延びてきたゴーストウルフなんだ。そのおかげでオブリビオン化した後も他のオブリビオンたちに何だか妙に慕われているんだって」
しかも、そのカリスマ性(?)を見抜いたハビタント・フォーミュラはその力……といっていいのか分からないが、とにかくミントがもっと周りから慕われるように魅力を増幅するという行動に出たのだ。
「ハビタント・フォーミュラがやったのはそれだけじゃない。ミントに『魔狼フェンリル召喚術』のユーベルコードを植え付けた。そう、この戦いに現れた魔狼フェンリルは全て『震えるミント』が召喚していたんだ。その証拠に、彼の頭上には移植された膨大な魔力が『無限大マークの渦』となって顕現している」
弥鶴は指先でメビウスの輪を描いた。
八の字のようなあれだ。
「ミントを倒せば、この渦は消えて無くなるんだけど……さっきも言ったように彼の人気は凄まじいものがある。『背徳のラダガスト』の配下だった|人狼騎士《クルースニク》達はオブリビオンとなって蘇生したんだけど、こぞってミントに入れ込み、配下になってしまった。ミントが攻撃されそうになると凄いよ。親衛隊みたいにどこからか現れて、ミントを守ろうとするんだ。しかもわらわらと大勢でやってくる。これを倒しながらミントを狙おうとしてもきりがない」
さて、と弥鶴は話を切り替えた。
「ここでひとつ、うまくやれば人狼騎士団の方から自主的に退いてもらうことが可能らしいんだ。彼らは『震えるミント』に心酔しており、彼を守るためならば何でもしたい。これも愛なのかな? それはわからないけれど、もし人狼騎士団からミントの魅力を聞き出して意気投合できれば、彼ら自身の手で『無限大の渦』を破壊してミントと一緒に去ってくれる」
どうして? と思うかもしれない。
弥鶴はとぼけた顔で「さあ?」と首を傾げた。
「愛なんじゃない? 理由はまったくわからないけれど」
ツヅキ
プレイングを送れる間は常時受付中です。
執筆のタイミングによっては早めに締め切られる場合があります。
●第1章
ハビタント・フォーミュラに『魔狼フェンリル召喚術』のユーベルコードを移植された『震えるミント』が現れました。倒そうとするとお付きのオブリビオン化人狼騎士団が守ろうとして埒が明きません。
人狼騎士達に『何らかの』対処をするとプレイングボーナスです。
第1章 ボス戦
『フェンリルを統べる者『震えるミント』』
|
POW : なぜかフェンリルに慕われている
【魔狼フェンリル】を召喚する。騎乗すると【フェンリルの毛並みに隠れた】状態となり、【フェンリル頼みのパワー】属性とレベル×5km/hの移動力を得る。
SPD : けなげっぽい目で見つめて噛み付く
【かみつき】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【顔】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : くぅ〜ん、きゃんきゃん!
自身が【ぷるぷる不安な気持ち】を感じると、レベル×1体の【魔狼フェンリル】が召喚される。魔狼フェンリルはぷるぷる不安な気持ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:吉希
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ロラン・ヒュッテンブレナー
・アドリブ絡み歓迎
震えるミントさん、あんなに怯えて…
その恐怖から救ってあげたいの
そっと、刺激しないようにある程度距離を取って話し掛けるの
ぼくが人狼であることと、敵対したくないこと、ミントさんが怯えてる原因を壊したいことを正直に話すの
信用しなくて良いの
ぼくは、攻撃は防がせてもらうけど、反撃はしないの
ぼくは、あの渦を壊したいの
あれが、ミントさんを怯えさせてるものだから
結界を張って背を向けて、渦に向けて詠唱開始
UC発動、狼型の満月の魔力オーラを纏って魔力を溜めるの
渦に向けて遠吠えで音撃を撃ち込むの
何度でも!
あれが無くなれば、ミントさんは少し元気になるはずなの
ぼくが攻撃してる間に、撤退して
お願い
アステル・サダルスウド
※連携・アドリブ歓迎
どうぶつだいすき
[コミュ力][言いくるめ][動物使い][動物と話す]で挑むよ
初めまして人狼騎士君達、そしてミント君!可愛いね!
僕はビーストマスターのアステル
僕にとって、動物は友達なんだ
例えば…おいで!【小麦色の突撃隊】!
この場所に収まるかな…はい整列して、いい子だね
今日は戦わないよー
ほら、可愛い友達でしょ?
人狼騎士君、いわば僕等は同志だ!
犬とウルフは違う?そんなことはないよ、だってイヌ科じゃないか!
ほらご覧、このコーギー君達を
まさに可愛いの権化!!
君達の大切なミント君だってそうだろう?
さあ、ミント君の魅力を存分に語り給え!!
僕的には、格好いい外見に対しぷるぷるしてるギャップも魅力的だと思うな!
うっかり盛り上がっちゃったけど、ここからが本番
人狼騎士君達…同志だからこそ、僕は苦言を呈さなくては
何してんの!こんな危ない場所にミント君を連れて来て!
ここにいたらミント君は怖いままだよ!?
お家に帰って暖かい場所で程よく温めたミルク(犬用)をあげて労わってあげなきゃダメじゃないか!
「いた! あの子が『震えるミント』なの」
「うわぁ、かわいー! 噂には聞いていたけど、実際に見ると保護欲をかきたてられる素晴らしい逸材だね!!」
ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)とアステル・サダルスウド
(星影のオルゴール・f04598)は県庁前で震えるゴーストウルフを怯えさせないよう、できるだけそっと近づいて優しく声をかけた。
「きゃぅん?」
びくっと震え、後ずさるミントを刺激しないように彼とロランの間にはまだ少し距離があった。
耳を垂れ、尾を巻くミントが怯えているのは誰の目から見ても明らかで。安心させてやりたくて、ロランはにこっと微笑んだ。
「怖くないの」
「きゅぅ……」
ミントが鼻を鳴らす。
少し怯えてはいるものの、逃げ出すような気配はなかった。
「ぼくはね、人狼なの。君の敵じゃない」
ロランはあれ、と頭上の渦を指差す。
「ミントさんが怯えてるのはあれのせいだよね? だから、いまからあれを壊すの」
「くぅーん、くぅーん!」
意図を察したミントはまるで「駄目だ」と言うように忙しなく頭を動かした。戦いたくないみたいだ。けれど、直接ミントを攻撃するよりはあれを壊す方がずっといい。
「いくの!」
こちらに背を向けるロランの全身に満ちるのは満月に吼える狼の魔力。ハビタント・フォーミュラが与えた『無限大マークの渦』は我が物顔でそこにあった。なにしろ魔狼フェンリルを召喚できるほどの膨大な魔力を集める渦だ。そのプレッシャーは計り知れない。
「……負けないの!」
ロランの咆哮が渦を捉え、激しい音の衝撃波でそれを揺らがせた。
「何をしてる? やめないか!!」
事態を知った人狼騎士たちがどこからともなく現れ、ロランを取り囲み攻撃を止めさせるために武器を構え――動きを止めた。
「オン、オン!」
「な、なんだこの可愛らしい集団は!?」
そこにいたのは、可愛らしいウェルシュ・コーギーの群れ。中型短足で小麦色の突撃隊はあっという間に人狼騎士をめろめろにしてしまう。
「はい、整列!」
アステルが号令をかけるとコーギーは並んでお座りのポーズをとった。そのお利巧さがますます彼らを驚かせる。
「初めまして、僕はビーストマスターのアステル。見ての通り、動物たちとは友達なんだ。ほらほらいいこだねー、今日は戦わないからいっぱい遊べるよー。はーい、後ろの子たちまでちゃんと聞こえてるかなー?」
「「「「「「アオン!」」」」」」
なにしろ500匹を優に超える数なので、県庁前を埋め尽くす小麦色は圧巻そのもの。
「ね、可愛い友達でしょ?」
「ああ、可愛い」
「なら僕等は同志だ!!」
「ああ!!」
何人かの人狼騎士が拳を突き上げ、別の人狼騎士が慌てて仲間を止めた。
「待て待て、なんだか丸め込まれてやしないか」
「そうだ、犬よりゴーストウルフの方が可愛いに決まってる」
だが、アステルは「ちっちっち」と舌を鳴らしながら人差し指を左右に振る。
「果たしてそうかな?」
「なんだって?」
「ほら、コーギー君達をよく見てごらん」
「ん、んー……?」
つぶらな瞳、三角形のお耳にぷりちーなお尻……ああもう駄目だ。だって同じ犬科なのだ。違いなんてあってなきが如しも同然な気がしてきたってしょうがない。むしろそれ以外の正解がどこにあるんだ。
「認める! 可愛いと認める!!」
降参する人狼騎士の耳元で|悪魔《アステル》が囁いた。
「自分に素直になるっていいよね」
「はい」
「じゃあ、存分に語り合おうじゃないか! 可愛いの権化を愛する者同士、僕は君達の大切なミント君の魅力を是非とも聞きたい!!」
「み、ミントさんの魅力を?」
「そうだ! ちなみに僕的には格好いい外見に対しぷるぷるしてるギャップも魅力的だと思うな!」
「わかるぅ~!!」
「さ、今度は君達の番だよ」
人狼騎士たちは顔を見合わせ、力強く頷いた。
「ミントさんの魅力語りなら、俺たちに任せろー!!」
「今のうちに少しでも渦を攻撃しておくの!」
彼らがミント談義で夢中な間、ロランは遠吠えであの渦を狙い続けた。あれが無くなればミントだって元気になるはずだから。それに、自分から撤退してくれたら戦う必要もない……その気持ちが通じてくれることを祈い、渦に向けて吠える。
「くぅん……」
その気持ちがわかるのか、ミントも力なく尾を左右に振り分けた。遠慮がちに噛みつかれても、ロランはにっこりと笑うだけで自分から手を出さない。ミントを傷つけるつもりはまるでなかったのだ。
「なぁーるほどねー!」
ひとしきりミント君談義を終えたアステルはうんうんと何度も頷いた。
「ミント君の魅力についてはよっっっくわかった! 実に色々な意見があったね。かっこいい、かわいい、守ってあげたい……人狼騎士団の皆のミント君に対する愛情は存分に理解できたよ」
だが、とアステルは心を鬼にして彼らを𠮟りつけた。
「ならこんな危ない場所にミント君を連れて来ちゃ駄目でしょ! ミント君こんなに怖がってるじゃん!? 早くお家に帰って暖かい場所で程よく温めたミルクをあげて労わってあげなきゃダメじゃないか! あ、ちゃんと犬用のじゃなきゃダメだよ!」
一気にまくしたてられた人狼騎士団はしんと一瞬静まり返った後で、それぞれの手に武器を握り締めた。
「……その通りだ」
「ミントさんを家に帰してあげるんだ!!」
「すみませんミントさん、ずっと怖かったですよね!?」
「きゅぅ~ん、きゃんきゃん!」
ロランと一緒になって渦を攻撃し始める人狼騎士をミントも応援しているようだ。アステルはコーギーに埋もれ、満足そうに頷いた。
「どうやらうまく言いくるめ……いや、分かってくれたようで嬉しいよ!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黒城・魅夜
オブリビオンである以上、いつかは消えてもらわねばなりませんが
まあ、今は追い払うだけにしておきましょうか
UCを使用
それだけで人狼騎士たちと和解できるわけではないでしょうが
多少なりとも緊張を緩和したうえで
情熱と優しさと祈りを持って語り掛けましょう
あなた方は本当にミントさんのためを思っているのですか?
数多の戦場を生きのこってきたミントさんは確かにお強いのでしょう
ですが強いことと戦いを好むこととは別
ミントさんは間違いなく戦いを好まない方です
それなのにあなたたちはミントさんを戦場に強引に連れ込もうとしている
それが愛だと言えますか(ビシッ)
さあ、わかったら渦を破壊し、ミントさんと静かに穏やかに暮らすのです
「くぅん……?」
県庁前に佇む震えるミントが鼻先をくんくんと蠢かせたのは、黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)が行ったある行動に対する反応の表れだった。
「ふふ……」
魅夜。
まるでその名の持つイメージを具現化したかのような甘い微睡の吐息が夢幻のなかへあらゆる存在を誘ってゆく。非生命にすら夢を見せるその技は人狼騎士たちから敵意を剥ぎ取り、無条件の好意を引き出そうと香りたつ。
「ごきげんよう」
「あ、ああ」
魅夜を敵だと認識しながらも人狼騎士たちは歯切れが悪い。できれば戦いたくないのだと彼らの態度が物語る。
いまなら、と魅夜は話を切り出した。
「皆さんはミントさんの護衛を行っているのですよね?」
「その通りだ」
吐息の効果なのだろう、彼らは存外素直に認める。
「我々はミントさんの親衛隊も同然なんだ。彼を守るためならこの命、惜しくはない!!」
「それはご立派ですが、本当にミントさんのためを思っていると言えるのでしょうか?」
本題に一歩を踏み出す魅夜の狙いは、彼らの行いに疑問を持たせること。ミントへの愛があるのならば、怯える彼を戦場に引き摺り出してあのように放置することが果たして本当に正しいと言えるのだろうか。
「うッ……」
痛いところを突かれたのだろう。
人狼騎士は言葉を無くし、互いの顔を見合わせる。それから震えるミントに彼らの視線が注がれた。
「きゃうん……」
寒空の下、何をしてよいのかもわからずにたたずむミント。その頭上にあの渦さえなければ、そこらの野犬とそれほど違うようにも見えない最弱のゴーストウルフ。
「し、しかし! ミントさんは数々の戦場を生き残って来たんだ。ああ見えても最強なんだ!」
「では、それをミントさんが望んでいたと仰るのですね?」
「ミントさんが?」
「そうです。強いことと戦いを好むこととは別、そうでしょう」
静かに諭すような魅夜の言葉の後、彼らはしんと黙り込んでしまった。それで思う。彼らは本気で震えるミントのことが大切であるのだと。
たとえいつかは消えてもらわねばならぬとしても、相手を思いやる感情そのものが尊いことには変わらない。
「た、確かにそうだ……ミントさんが好きで戦ったことなんて一度もない」
「それなのに、あなたたちはミントさんを強引に戦場へ連れ出し、戦わせようとしている。それが愛だと言えますか」
人差し指を突き付け、一部の隙も無い理論で人狼騎士を責め立てる魅夜。その勢いに負け、彼らはついに自分たちの過ちを認めて武器を取った。
「すみません、ミントさん。俺たちはあなたの気持ちを全然わかっていなかった……後悔してもしきれません!」
「さあ、わかったら渦を破壊し、ミントさんと静かに穏やかに暮らすのです」
「はいっ!!」
それっと皆で渦を攻撃し始める彼らに嘆息しつつ、魅夜は腕を組みその様子を見守るのだった。
「まあ、今はこれでいいでしょう。少なくとも、私は……」
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
僕も一緒にミントさん護りたい…!
騎士さんばっかち一緒に居られるのずるいですー!
じゃなかった
こほん
皆さん、ミントさんの事好きなんですよね?
分かります僕もミントさんを助けたいと思ってここに来ました
皆さんはミントさんのどういうところに魅力を感じます?
僕はなによりもふもふな毛並み
弱々しくも何処か凛々しいかっこよさも垣間見えるギャップ
覚えて垂れたお耳も眉も可愛らしくて
でもね、思いませんか
この頭上の渦はなんだと
もしかしてこれを怖がってるんじゃないかと
大切なミントさんを怯えさせたままでいいんですか
これ、壊しません?
そして貴方達の手で、ミントさん守りませんか?
僕にもふらせて頂いても一向に構わないんですけどもね
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は喜びに頬を紅潮させ、ぎゅっと拳を握って彼ら――すなわち震えるミント談義にいそしむ人狼騎士たちの輪の中へ入った。
「僕も混ぜてくれませんか? いいえむしろ親衛隊へ入れてください! 皆さんばっかりミントさんと一緒に居られるなんて正直ずるいです……!」
思いがけない申し出に人狼騎士たちがどよめいた。
「さすがミントさんだ! あの猟兵までをも虜にしてしまうなんて!」
「だってあのミントさんですよ! 護りたくなる気持ちをわからいでか!」
――なんてひとしき盛り上がった後で、澪ははっと我に返った。
こほん、とひとつ咳払い。
「打ち解けられたところで本題です。皆さん、ミントさんが好きですよね? その気持ちに偽りないですよね?」
「「「もちろんです!!」」」
「結構」
澪は神妙な顔で頷いた。
彼らの気持ちは理解できる。だって敵の澪ですら、ミントをできれば倒したくないと――実際にどうするかは別にして、あくまで心情の問題であったとしても――思ってしまうくらいなのだから、友軍である人狼騎士の心情たるやいかほどのものだろうか。
「では、ミントさんのどういうところがそう感じさせる所以なのでしょう? つまり、チャーム・ポイントというやつです。ちなみに僕はなによりもふもふな毛並みです。触りたい」
「おお! 私もです!」
年若い人狼騎士が話に乗った。
「あとはあのか細い鳴き声ですとか! 潤む瞳も捨てがたいですね」
「なるほどわかります。弱々しくも何処か凛々しいかっこよさも垣間見えるギャップにやられちゃいますよね……!」
「全面同意!!」
騎士団らしく声の揃った返事であった。
澪は頬に指先を当て、小首を傾げてみせる。
「あと、怯えて垂れたお耳や眉も可愛らしいなあって思うんですけど、皆さんは……?」
「全面同意!!」
もはや澪と人狼騎士団は震えるミントという存在を通して深く分かり合った知己のような間柄といっても過言ではない信頼感によって結ばれていた。
ゆえに、本当の意味での本題を澪が切り出したところで彼らはその裏に隠された意図を全く疑うことなく受け入れることになってしまったのだといえるだろう。
「ならばどうでしょう、この頭上の渦はなんだと」
相変わらずそれはミントの頭上で不気味に渦巻いている。異次元のような歪みは魔力を啜る口となって魔狼フェンリル再召喚のための装置そのもの。あれがある限り、何度でもフェンリルは甦る。
澪は大真面目な顔で人狼騎士を見据えた。
「もしかして、ミントさんはこれを怖がってるんじゃないですか? だとしたら、本当にいいんですかこのままで」
「そ、それは……」
もうひと押し、と彼らの背を押してやる。
「いっそのこと、あれを壊してしまいません? そして貴方達の手で、ミントさん守りませんか?」
動揺と迷いは一瞬だけのことだった。
まんまと澪の提案に乗せられた人狼騎士団は手に武器を取って一斉に渦を攻撃し始めたのである。
「それか、僕にミントさんをもふらせて頂いても一向に構わないんですけどもね……って、もう聞いてないですね。まあいっか」
大成功
🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
確かに弱い者を守る、という行為に騎士道が刺激される、というのはわかる気がするけど。
人狼騎士達がかつてラダガストの配下だったということは、ミントを戦友と見ているのかな?
それとも幾多の戦場を生き抜いて、幸運の女神?扱いされていれば、守りたくなるのかな?
詳しくはやはり人狼騎士の当人たちに聞いてみるのが一番だね。
ここは同族で、若者であるアタシに説明してもらいたいな。
歴史というのは語り継がないと忘れられるよ。
で、ミントを生き残らせたいのなら、その頭の上の魔法陣を壊すのが一番簡単だと思うんだけどね?
今のままだと猟兵が全力で狩りに来るよ。
騎士達の相手はUC【神燕武槍】で対応。
「ふぅん……なるほどねえ。なかなか興味深い現象じゃないか」
自らも人狼騎士の一員であるシモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は顎に指を当て、震えるミントに忠誠を誓う彼らの胸中に想いを馳せてみる。
たとえばそれは騎士道精神の発露だと言えなくもないだろう。弱き者を守るという信念を満たすのにミントの存在は実に都合がよい。あるいは、彼らが『背徳のラダガスト』配下であったことが一因にあるのかもしれなかった。
「アタシだったら――」
荒事大好きで真剣勝負が好きなシモーヌは最弱よりも最強の方に興味があったりしないでもないのだが、そういう意味でも特殊な存在といえる。
「戦友と見ているのか、はたまた幸運の女神? 扱いされているのか……色々と内情が気になるね」
かくなる上は、直接聞いてみる他あるまい。
シモーヌは震えるミントの周囲に集まった人狼騎士団のリーダーらしき男に声をかけた。
「よぉ、盛り上がってるじゃないか」
気さくなシモーヌは相手に警戒心を抱かせるより先に笑顔で自分を指し、ミントという存在についての説明を彼らに求めた。
「ミントさんについてだと?」
この段階で目を輝かせているのだから世話ないねと思いつつ、シモーヌは「そうだよ」と笑った。
「聞かせておくれよ、アタシもアンタらと同族なんだ。いろいろ勉強になるかと思ってね」
「ほう、いい心がけだな」
「それに、歴史というのは語り継がないと忘れられちまうからね」
うむ、と頷いたリーダーは震えるミントが渡り歩いてきたこれまでの戦いを最初から順を追って語り始める。
「初めての戦いを生き抜いたミントさんはその後もその強運で生き残り、現在ではあの魔狼フェンリルを統率する者にまでなったのだ。すごいだろう?」
シモーヌは素直に頷いた。
「それは流石だね」
思っていた以上の武勇伝はシモーヌを楽しませてくれた。だが、さっきまでの声色をあらためて少し真面目な口ぶりになる。
「今回はまずいんじゃないかな。ほら、あの渦。あれがある限り、猟兵が全力でミントを狩りに来るよ」
「その時は我々がお守りいたす所存!」
「ははッ、頼もしいね。けど、もっと確実にミントを生き残らせる方法があるって言ったらどうする?」
「そんな方法があるのか」
「ああ、|頭上の魔法陣《あれ》を壊しちまえばいいのさ」
「しかし、そんなことをしたらフェンリルを再召喚できなくなってしまうぞ」
「フェンリルとミント、どっちが大事なんだい?」
シモーヌはちらっと槍を構え、いつでもやり合うことは出来るのだと言外に示してみせた。あくまで敵同士。かわいそうでも斬らねばならぬ事があるのだ。
「さあ、どっちを取る?」
「ふっ、我ら人狼騎士団の忠誠心をみくびってもらっては困るな!」
そして、彼らは決断する。
「ミントさんのためにあれを壊せーっ!!!」
一斉に渦に向かって攻撃する彼らをシモーヌは見守るだけでよかった。これが全て震えるミントの影響であるとすれば確かにその存在、侮れまい。
「アンタ、やるねェ」
「くぅ~ん」
大成功
🔵🔵🔵
パウル・ブラフマン
どもー!エイリアンツアーズでっす☆
愛機Glanzを【運転】しながら現着!
あのコが例の…ふぇ?なんかずっと震えてない?
体調悪いのかな、確かに今日ちょっと寒いし心配だよね。
Glanzのリアボックスからふわふわの毛布を取り出して
最寄りのファンボーイ…もとい人狼騎士さんのもとへ。
持前の【コミュ力】を活かして
毛布をミントくんにプレゼントしたい旨を伝えるよ!
もし毛布が心配なら肌触りを先に確かめてみてよ♪
毛布でぬくぬくするミントちゃん、見てみたくない?
ココにポラロイドカメラもあるから
ぬくぬくタイムを撮影して
現像した写真を皆で共有できちゃったりするんだよね!
協力してくれた騎士さん達にはちゃーんと写真を渡すよ♪
ヒューゥ――……。
漆黒の愛機で戦場の空を駆けるパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)の唇から思わず口笛が漏れた。
「なんかすっげェの渦巻いてンじゃん? |世界《シルバーレイン》の危機にエイリアンツアーズ参上――!!」
ぱたん、と閉めたリアボックスから持って来たふわふわの毛布を手にパウルはにっこりと笑いかけた。
まるで寒空の下に捨てられた子犬を保護する時のような優しい手つきでそれを見せ、震えるミントの保護者……もとい親衛隊である人狼騎士たちに申し出る。
「ねぇ、あのコ震えるじゃない。体調悪いのかもしれないし、これ差し入れだよ♪」
パウルは毛布を両手で広げて見せた。
種も仕掛けもない、ただのふわふわであったかい毛布。
「しかし、敵から施しを受けるわけには……」
「そーいわず! ほら、すごく肌触りがいいでしょ。震えるあの子のファンボーイくん?」
「ファ……」
恥ずかしい呼び名に真っ赤になった男の肩にパウルはふわりとそれをかけた。
「どう?」
気さくに尋ねると、彼は照れ隠しのように頷いてみえる。
「ま、まあ……悪くはないな。誰か、これをミントさんにかけてやってくれ」
それから、ちらっとパウルを横目で見た。
「お前、猟兵のようだが……その人当たりの良さはある意味で魔力的だな。ミントさんと似たものを感じる」
すっかりパウルのコミュニケーション能力に丸め込まれた人狼騎士は感心した様子で言うのだった。一方のパウルと言えば、いつの間にか自前のポラロイドカメラのシャッターを切っている。
「ど、どこに持っていた!?」
「は~、可愛い~。ほら見なよ、ぬくぬくタイムだよ」
毛布にくるまるミントをパウルが指差すと、人狼騎士たちは皆して心を奪われてしまったようで。
「め、目が離せん……」
「あの震えるミントさんがあんなに安らかな表情を……!」
「どこで売ってるんですか、あの毛布?」
「その写真、是非くれませんか!?」
怒涛の質問にパウルは人差し指を立て、|片目を閉じる《ウインク》。
「オレに協力してくれたら現像した写真、ちゃーんと渡すよ♪」
「協力?」
「そ。アレ、壊そ?」
示す先には渦巻く無限大の印。
「…………」
任務か、ミントの写真か。
「約束だぞ」
「はーい、毎度アリー☆」
大成功
🔵🔵🔵
新田・にこたま
【ワイハン】
流茶野さん(f35258)と。
流茶野さんは当時の情勢を知る能力者のおひとり。
なので人狼騎士とのトークは全て流茶野さんにお任せします。役割分担です!
一応、私もミントトークにIQ0のリアクションを繰り返す演技はしておきますが。
流茶野さんが連中と意気投合してくれれば私は敵の油断を誘うために見た目を『猟兵に敗走し負傷したフェンリル』に調整した分身を作り出しミントに近寄らせ、一瞬で暗殺を実行します。実行後は成功失敗に関わらず分身を消し流茶野さんに身を預け逃走しますよ。
誰もやりたがらない殺しこそ公務員の本懐…つまりは正義です。
生かして帰した敵がまた脅威となった時、誰が責任を取るというのですか。
流茶野・影郎
【ワイハン】
にこたま(f36679)さんと
選択肢はミント暗殺
人狼騎士団の前に立ち
一升瓶とワインを両手に掲げれば
「俺の名はルチャ影。此処に震えるミントが居ると聞いてやってきた。彼の者を愛し奉る同好の士の集まりは此処か!?」
堂々と名乗りトークに参加する
「あれは人口島でのことでした」
会った時期の古さをマウントして、相手から更なる会話を引き出す
「能力者達も彼を見に行くために何人も血祭りに上がったよ」
彼に憧れた勇者?の話
そして今にも倒れてしまいそうな震えという名の萌えを語り
チャンスを見つければ合図
決行後は
『メキシカン忍法・疾風怒涛の歩み』
を発動
にこたまを抱えて逃走する
全く、こういうのは大人がするんですよ
「では、よろしくお願いします。流茶野さん」
「いいんですね?」
「ええ、公務員の本懐を遂げてやりますよ」
新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)は片手に一升瓶とワインを持った流茶野・影郎(覆面忍者ルチャ影・f35258)が気さくに挨拶しながら人狼騎士に近づいてゆくのを見守る。
「俺の名はルチャ影。此処に震えるミントが居ると聞いてやってきた。彼の者を愛し奉る同好の士の集まりは此処か!?」
あまりにも影等が堂々としているので相手が猟兵だとわかっていても人狼騎士たちは戦闘行為を行うべきか迷ったようだ。
「彼の者を愛し奉る……? 貴様もミントさんの配下になりたいのか?」
「はは、さすがにそれは約束できないが。震えるミントを愛しむ心には敵も味方も関係あるまい?」
「う、うむ……!」
ミントのことになると彼らは覿面に弱くなってしまうらしかった。影郎の差しだす杯を受け取り、にこたまにも話を向ける。
「お前もミントさんのことが大好きでたまらんのか?」
「はい! もちろん!」
何も考えないで相槌を打つのが堂に入る演技のにこたまであった。
「ミントさんすごーい! かわいー!」
ぱちぱちと手を鳴らし、とにかく褒めちぎる。普通に考えたら怪しい展開にも関わらず、人狼騎士はすっかり影郎たちを信用して自分たちの輪に引き入れた。
(「これもミントにかけられた魅力増幅の副産物なのでしょうかね……」)
にこたまからすればミントが絡むと理性がなくなる人狼騎士団の様子は魅了のデバフがかかった皮肉な状態に見えなくもないのであった。
「……あれは人工島でのことでした」
酒が渡りきったところで影郎が語り出すのは一番最初に震えるミントと出会った際の思い出だ。
「もうかなり昔の話になるな。あなた達はその頃からミントの傍に?」
「いや、我々は元々ラダガスト様の配下なのだ。だからミントさんのことは最近のことしか知らぬ。貴様は随分と古い時期から見知っているようだ。聞かせてくれ、俺たちの知らないミントさんの話を!」
身を乗り出す彼らに影郎は頷き、かつての戦いを懐かしむように話を続けた。どうやら人狼騎士はすっかり話に聞き入る姿勢が整っている。
影郎から視線を送られたにこたまはこっそりと|その時《・・・》のための準備を始めた。いつでも分身を放ち、目的を達成できるように誰にも気づかれることなく身構える。
「どこまで話しただろうな。ああ、そうだ。能力者達も彼を見に行くために何人も血祭りに上がったよ。それくらい、誰の目にも他とは違って見えた」
「うん、うん」
「彼に憧れた勇者? もいたな。なぜかと俺も色々考えては見たさ。そして思った。あの今にも倒れてしまいそうな震えという名の……そう、これこそが萌えなのだと理解するに至ったのだ」
人狼騎士たちは既に酔いのまわった赤い目で影郎の話に聞き入っている。あとひと押し、と影郎は言った。
「あなた達もそうなんだろう?」
「そうだ」
感極まったのか、人狼騎士は体も声も震わせる。
「ミントさんはそんじょそこらのゴーストウルフとは全然違う。普通、可愛いって言ったらもっとこう見た目が愛らしかったり、愛想がよかったりするだろ? でもミントさんは違うんだ。見た目はちょっとみすぼらしいし、性格だって人見知りする。笑顔なんて見せちゃくれない。でもそこがいいんだ。ああ、そうだ……ミントさんの魅力はまさしくそこだ。可愛くないのに可愛い。どうだ、すごいだろ!!」
――ざぁ、と影が動いた。
それは傷ついたフェンリルを模した、にこたまの分身。
「きゃぃん!」
どうして震えるミントにその一撃を避けられただろうか。最弱のゴーストウルフはあっけなく倒れ、それきり動けなくなる。
「ミントさん!?」
「なんで、誰が、フェンリル……猟兵にやられて気でも狂ったってのか? あ、あいつらがいないぞ!!」
喧騒はすぐさま遠ざかる。
にこたまを肩に担ぎ上げた影郎が一目散に戦場を離脱したからだ。その姿はまるで疾風。視覚嗅覚では感知できないメキシカン忍法の秘技であった。
「全く、こういうのは大人がするんですよ」
「生かして帰した敵がまた脅威となった時、責任を取れる者がいるとは思えませんから」
「強いですね」
「それほどでもありませんよ」
「謙遜ですか?」
「さあ、どうでしょうね」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵