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銀河帝国攻略戦⑳~白銀と猟兵の未来

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #白騎士ディアブロ

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●未来見据えし純白の騎士
 『白魔』艦隊と『白城』艦隊の撃破。
 その情報は、帝国軍内にも動揺を呼び起こした。
 銀河帝国旗艦『インペリウム』を守れる戦力は、もう残り少ない。

「……我が動く時が来た。そうであろう」
 純白の戦艦内部にて、ただ一人、呟く物が居た。
 白の名を冠する部隊を統率する、銀河帝国の二大巨頭の一人。

 白騎士ディアブロだ。

 名前に恥じぬ純白の鎧が、隙間なく身体を覆う。
 無数の兵装を携えており、それを扱うための腕が幾つも生えている。
 何かあればいつでも武器を振るう事の出来る、油断ない立ち振る舞い。
 その姿は、屹然として美しくも、どこか悍ましく不気味だ。
 余人が見れば、墜ちた機械の天使とでも評そうか。

「解放軍はこちらの想像以上の戦力だった。それは認めよう。
 しかし……そこには何か、他の力も働いている」
 性別も年齢も分からぬ、くぐもった機械音声の呟きが零れる。
 全身を鎧で覆ったディアブロは、果たして何を考えているのか。
 何を想っているのか。

「……そう、確か、猟兵と言ったか」
 通信傍受記録を参照し、ディアブロは思案した。
「イェーガー。不可思議な響きだ。
 この宙間戦争が主流の時代において、そのような言葉を聞こうとはな……」
 ディアブロは戦艦のモニターを通じ、外を見つめた。
 宙に浮かぶのは、無数の戦艦の残骸。デブリ。
 そんな雑多なもので……そのほとんどが、帝国軍の船だった。

「我が戦力は失われた。既に我が部隊は我一人。
 しかしそれは、他に配慮する事無く戦えるという事でもある……」
 フォースセイバーを起動して、レーザーキャノンにエネルギーを込め。
 無数の兵装に命を吹き込み、ディアブロは歩いた。
 重い身体を受け止めて、床が鈍い音を立てる。

「来るなら来るが良い、猟兵たちよ。
 軛から解き放たれた白騎士の力を、その目に焼き付けてみせよう……」
 戦闘するに相応しい広間に出て、彼は呟いた。

 銀河帝国二大巨頭に相応しい、白き門番として……彼は武器を取った。

●グリモアべース
「銀河帝国との戦いも、終わりが近づいてきました」
 グリモアベースにてそう言うのは、ノルナイン・エストラーシャ。
 緑のタブレット状のグリモアを操作して、ホログラムを映し出す。
「皆さんは、銀河帝国二大巨頭をご存知でしょうか?
 黒騎士アンヘルと、白騎士ディアブロの二人ですね」
 ノルナインの言葉と共に、3Dホログラムが宙に現れる。
 そこに映るのは、件の二人の姿だった。
「この二人はそれぞれ特徴な能力を持つ、非常に強力な兵士です。
 黒騎士アンヘルは過去に干渉する力を。
 白騎士ディアブロは未来に干渉する力を持っています」
 ノルナインはそう言うと、ホログラムを操作した。
「今回の依頼は、白騎士ディアブロの討伐です」
 言葉と共に映し出されたのは、一つの戦艦だった。

「ご存知の方もいらっしゃるでしょう。『白魔』艦隊と『白城』艦隊が撃破されました。
 それにより、白部隊全体の隊長である、白騎士ディアブロが姿を現したのです」
 ノルナインが、ホログラムの戦艦を指差した。
 全てが白で構成された、帝国の宇宙戦艦。
 それが、白部隊の旗艦にして、白騎士ディアブロの居る場所だという。
「皆さんにはここに向かって、ディアブロを討伐してほしいのです。
 かの騎士が持つ能力は、余りにも強大です。見逃す事は出来ません」
 ノルナインはそう言うと言葉を切って、猟兵たちを見渡した。

「ディアブロは未来に干渉する力を持ちます。ですから、不意討ちは通らないと思って下さい。
 これが、今のところ分かっている能力です」
 そう言うと、ノルナインはホログラムにデータを表示した。
 ①限定的ながら未来操作が行える。
 ②故に対策が無い限り『全ての攻撃を逃れ』『絶対に命中する攻撃』を『最大の効果を発揮する』ように行う。
 ③装備は帝国の技術の粋を尽くしたもので、生半可な防御も通用しない。
 ④力が尽きるまで、骸の海から蘇る力を持つ。
「以上です。見ての通り、対策が無いとこちらは触れる事さえ叶いません」
 ノルナインはホログラムを切り、真剣な眼差しで猟兵たちを見た。
「ですから、必ず対策を練ってから向かって下さい。
 恐るべき敵ですから、ゆめゆめ油断などしないように……気をつけて下さいね。
 この世界がどうなるかは、皆さんの手にかかっています」
 そう言って、彼女は一礼した。


苅間 望
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 どうも、初めまして or こんにちは。苅間望です。
 ちょっとお話をする前に業務連絡を以下に。

 白騎士ディアブロは、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

 以上はトミーウォーカーからの連絡です。
 そして私からは、これに加えて以下のように付け加えます。
 以下は私のシナリオにおいてのみの話なので、プレイングを書く際の参考にしてください。

 『猟兵のユーベルコードは先出しする事が出来ません』。必ず相手が先に動きます。
 『ユーベルコードを複数展開する場合、その数だけ対応します』。

 以上で業務連絡は終わりです。

 さて、戦争も終わりに近づいてきましたね。
 今回の相手は白騎士ディアブロ。未来を操る恐るべき騎士です。
 難易度も高いので、油断せずに戦って下さいませ!
 皆様ならきっと勝てると信じております!
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第1章 ボス戦 『白騎士ディアブロ』

POW   :    収束する運命の白光
【対象の未来位置に向け放たれるレーザー】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    ホワイトライト・トゥルーライト
【10秒先を見たかの様に的確な攻撃を行い、】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    デストロイマシン零式
戦闘力のない【66機の動画撮影ドローン】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【正確無比な未来予想シミュレーション】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

トール・テスカコアトル
「……すっごく怖い」
当たり前だよ。聞けば聞くほどバカじゃないのってくらい強い
……でも
怖い敵に挑んでこそ「勇気の戦士」だよ
もう、体を丸めて、全身防御姿勢で送ってもらう
どうせ避けられないなら勇気を持って受けるよビーム
ビビりのトールが受けきれたら
「戦える……変身!」
トールの勇気は生命力……ビームのダメージも、ルール破りのそれも、すぐに回復する
「白騎士さん、怖い?」
トールの勇気は防御力
白騎士さん、強くて怖い……だからこそ!
宇宙の平和を思うトールの心は!勇気で熱く燃えてるよ!
「トールは、怖いよ……だから、負けない!」
トールの勇気は機動力
心は次元を越えて届く
「貴方が平和の前に塞がる限り!トール負けない!」



●純白の騎士は邂逅せり
「…………む」
 広間にて佇む白騎士ディアブロは、ふと何かを感知した。
 それは鍛え上げられた戦士にさえ、掴むのは難しい空気の動き。
 そして未来に干渉する彼だからこそ感知できた、未来から来る敵意。
 彼は瞬時に武装を展開し、構えた。

●然して道のりは遠く
 グリモア猟兵の力により、転移してきたのはトール・テスカコアトル。
 ドラゴニアンとして、龍の角、翼、そして大きな尾を持つ少女だ。
 それはいいのだが。
(――――何故丸まっている)
 白騎士はトールを見て、思わずそう考えざるを得なかった。

 トールは、身体を丸めた状態で転移してきたのだ。

 避けれないのであれば、攻撃を耐えるしかない。
 故に、トールは身体を丸めて全身防御姿勢でやってきたのだ。
 確かに丸まれば、致命傷を避けつつ被弾面積を小さくできる。

(……成程面白い。『反撃の一手』に賭けた訳か)
 トールが現れ0.3秒後。
 白騎士は演算を走らせながら思考した。
 被弾を前提とした防御姿勢。
 それは即ち、攻撃を全て凌ぎ切った上で反撃する戦法を取った事に他ならない。
(態々死に場所を探しにやってきた……訳でもあるまいからな)
 0.5秒後。トールの未来位置を予測し、レーザーキャノンの銃口が狙いを定める。
 然して彼には分からない。
 トールの力がどのようなものなのか……どのように『反撃』してくるか。
 ならば、と逆に彼は考えた。

(精々足掻いてみせろ。猟兵)

●勇気の力
(……すっごく怖い)
 丸まったトールは、ずっとそう思っていた。
 聞けば聞くほど意味が分からない、白騎士ディアブロという存在。
 限定的とはいえ、未来を操作する力がある敵は、紛れもなく強敵である。
 猟兵であっても、恐怖心を呼び起こすに十分である。

(……でも。怖い敵に挑んでこそ「勇気の戦士」だよ)

 故に。トールは白騎士に挑んだのだ。
 強敵を『強敵』であると認識した上で、引きもせず動きもせず、全てを防御に回して丸まって、戦場に転移する。
 それはとても、勇気の必要な事ではないだろうか?
 何も出来ずに撃ち抜かれるかもしれない。あっという間にやられるかもしれない。
 そんな恐怖が身体に沸き、然して動かずじっと待つ。
 時には動かぬことにも、勇気が必要なのだ。

 そして。

 転移から2秒後、トールに無慈悲にレーザーキャノンが撃ち込まれた。
 膨大な熱量が皮膚を焼き、痛みが全身を駆け巡る。
 悲鳴を押し殺し、トールはひたすら致命傷を避けて防御し続ける。

「耐えきったか」

 年齢も性別も分からぬ機械音声が響き、トールはようやく顔を上げた。
 腕は焼かれたが、然し致命傷には至っていない。
 そして顔を上げたトールは、白騎士を目の当たりにして、震えた。
 無数の武装を携えて、ただ一人佇む白騎士は。
 馬鹿みたいに強い白騎士は。やはり、彼女にとって恐怖すべき存在だった。
 しかし彼女は勇気をもって、震えを押し殺し、白騎士に対峙する。

「ならば告げよう――『これより攻撃すること罷り成らぬ』!」
 白騎士は凄まじき殺気と共に、ルールを宣告した。
 危険なのは『反撃の一手』である。
 加えて防御を選択した相手ならば、『攻撃しない』選択肢は十分にある。
 そう思っての事だった。

 しかし。

「それなら戦える……変身!」
 突如、トールは叫んだ。
 勇気の心に呼応して、『ニギ=アラ』が目を覚ます。
 勇気の力が全身に巡り、凄まじい覇気が放たれる。
 衣装が魔法学園服からブレイブ・スーツへと変じる。
 そして鎧が、腕輪が、足輪が、翼が、額冠が……変じ、或いは現れる。
 それこそは、勇気の戦士(ブレイブトール)。
 臆病なトールの秘める、大いなる力を解放した姿である。

(――――なんと)
 白騎士はブレイブトールを見つめ、内心驚愕した。
 先ほどトールに与えた傷が、凄まじい速度で回復しているのである。
(被弾前提の防御は、その回復力があっての事か)
 白騎士は判断を間違えた事に気付いた。
 この回復力であれば……ルール逸脱によるダメージも、即座に回復するだろう。

「白騎士さん、怖い?」
 トールは真っすぐ白騎士を見つめ、尋ねた。
 白騎士は強い。凄まじく強い。
 しかしそれ故に、彼と対峙するトールには、勇気が熱く滾っている。
「恐怖は『理解』している」
 白騎士は無機質に答え、レーザーキャノンを再び構えた。
 ZAP――トールは真正面からレーザーを受け止める。
 しかし、対して傷がつかない上に瞬時に回復する。
「トールは、怖いよ……だから、負けない!」
 一瞬力を溜め、トールはダッシュした。
 音よりも速く戦場を駆け、白騎士の懐へと潜り込む。
「貴方が平和の前に塞がる限り! トール負けない!」
 轟。
 ただの握り拳でありながら、凄まじき力の込められた攻撃が放たれる。
(――――見事)
 空気が弾け、白騎士は後ろに弾き飛ばされた。
 同時にトールはルールを破った事によるダメージが入り……即座に回復する。

「見事である、猟兵よ」
 済んでのところで大剣で受け止めた白騎士は、受け身を取り即座に起き上がった。
 大剣は攻撃を吸収しきり、粉々に砕け散った。

 ――まずは一手。猟兵の攻撃が通った。

成功 🔵​🔵​🔴​

神酒坂・恭二郎
「さぁて。帝国双璧の白騎士殿が相手とは腕が鳴るねぇ」
未来が見える相手とどう戦うか。
得難い問いである。

無造作に間合いをつめる。
未来を見る相手には、この動きも見えてるだろう。
真っ直ぐに相手を見やり、気を静めて力を溜めてただ歩く。
同時に【目線や筋肉の動き、気配により誘導】を行う。未来の俺も同じ動きをするはずだ。
致命傷にならない部位に、白騎士殿の攻撃をおびき寄せ。
溜めたフォースの封印を解き、カウンターの居合い/イックドローで、相討ちを覚悟した捨て身の一撃を叩き込む。
息があれば、そのまま居合いから突きの二回攻撃で串刺し、衝撃波で止めだ。

「神酒坂風桜子一刀流・雀刺……ってなもんか」

【アドリブ歓迎】



●スペース剣豪はかく考えたり
「帝国双璧の白騎士殿が相手とは腕が鳴るねえ」
 グリモア猟兵の言葉を思い出しながら、神酒坂・恭二郎は呟いた。
 此度の敵は白騎士ディアブロ。
 限定的ながら、未来を操る力を持つ。
 装備は帝国の技術の塊で、火力は申し分なし。
 対策が無ければ全ての攻撃を逃れ、絶対に命中する攻撃を最大の効果を発揮するように行う。
 帝国双璧の片側を担いし、恐るべき強敵だ。

 未来が見える相手とどう戦うか。
 通常ならば決して起こり得ぬ、実に得難き問いである。
 そして同時に、解き難き難問である。

「出来る事をやる。これが一番だな」
 刀一本を相棒に、スペース剣豪たる恭二郎は転移した。

●純白の騎士は観測せり
 再び空気の揺らめきを感知した白騎士は、即座に武器を構えた。
 元より油断はしていない。
 しかしながら、先ほどの一撃は、思った以上に響いていた。
(攻撃が直撃するとは……いつ以来の事であろうか)
 そう思考する彼は、今度は油断なく、未来を見つめた。
 そこに映るのは、ヘッドホンを身につけた黒髪の男。
 不思議な文様の描かれた着流しを着こなし、手に握るのは業物と思しき鋭い刀。
 黒い瞳が油断なく、白騎士を見つめている。
(……刀使い。そしてフォースナイトか)
 刀に纏われているフォースが、その男の力量を如実に物語っていた。

 その男は、無造作に間合いを詰めてくる。
 真っすぐに白騎士を見て、ただ歩く。
 白騎士もまた真っすぐに敵を見据え、フォースセイバーにて斬りかかる。
 同時に、男はカウンターの居合を打ち込んで――。

(――ふむ、10秒が限度だったな)
 白騎士は10秒先の未来視を終え、瞬時に演算を始めた。
(相打ち狙いか? 実に難しい)
 刹那の時の間にて、白騎士はひたすら思考する。
 未来視に従えば、彼は相打ちを受けるのが『確定』している。
 しかし従わなければ、どのような不測の事態が起こるかわからない。
 今より良くなるかもしれないが、同時に悪くなるかもしれないのだ。
 未来視以外の未来がどうなるかは、『今の白騎士』には分からなかった。

(ならば、我が一手はこうだ)
 刹那の思考を終え、白騎士は行動をはじき出した。

●交わすは視線、交わるは刀剣
 恭二郎は転移すると、白騎士を真っすぐに見つめた。
「始めようか。知ってるだろうけどな」
 恭二郎は呟くと、無造作に間合いを詰めた。
 目はじっと白騎士を見つめたままに。
 気を静め、自身の気配を掌握し。
 同時に、決定的瞬間のために、力を溜めて。
 彼はただ、無造作に歩いて間合いを詰める。

 恭二郎の様子を見ても、白騎士は微動だにしない。
 しかしその目がじっと自分を見つめている事を、恭二郎は知っていた。
(種を明かせば大蛤。蜃気楼とはこの事かね)
 だからこそ、恭二郎は静かに、然し全力で繊細に、策略を仕込み始めた。

 それは第一に、目線。
 近接戦闘において、目線とは口よりも遥かに雄弁である。
 そして第二に、筋肉の動き。
 これもまた、初動や行動準備を教えてくれる。
 最後に、気配そのもの。
 気配の変化は、行動の変化を語るのだ。

 この三つの物を意識的に制御し、相手の行動を誘導する。
 曲技・車螯(ワタリガイ)と名付けられた、恭二郎の技だ。
(未来の俺も同じことをしていたはずだ。
 だが問題は『誘導出来るか否か』だな)
 誘導だとバレてしまっては元も子もない。
 然しそもそも気付かれなければ意味がない。
 白騎士ほどの相手ならば、間違いなく恭二郎の仕込みに気付くはずだ。
 が、誘導だと気づくだろうか。
 そもそも白騎士は未来を見る事が出来る。
 そこで誘導だと気づいていやしないだろうか。
(思い悩んでも仕方がない)
 恭二郎は覚悟を決め、歩みを進めた。

 そして。
 白騎士の間合いに一歩、足を踏み入れた。

 斬。
 白騎士のフォースセイバーが振り下ろされる。
 フォースセイバーの軌道は、恭二郎の誘導通り。
 痛みはあれど、致命傷にならない場所を目指している。
(――ここだ!)
 その瞬間、恭二郎もまた、居合抜きで白騎士に斬りかかった。
 溜めたフォースの封印が解き放たれ、轟と凄まじき勢いで刃が走る。
 防御を捨てた、相打ち覚悟の捨て身の一撃だ。

「――見事だ。知らねば防げなかっただろう」
「……成程、な」
 恭二郎の居合の一撃は。
 白騎士の大剣によって阻まれた。
(俺の相打ちまでは見えてたって訳か……)
 全身を走る痛みに歯を食いしばりながら、恭二郎は理解した。
 恭二郎の誘導は、間違いなく成功していた。
 現にフォースセイバーで斬られた場所は、致命傷には至っていない。
 だが。
 未来を知る白騎士は、恭二郎の捨て身の一撃を受け止める事を選択した。
 無数の兵装に多腕を持つ白騎士は、防ぐだけの余力を持っていたのだ。

 恭二郎は傷の痛みをこらえ、相棒たる『銀河一文字』をもう一度振るう。
 だが今回の攻撃は容易にいなされる。
 そして袈裟懸けにフォースセイバーが振るわれ、鮮血の一文字が描かれた。

「……かはっ」
 吐き出した血が、広間を赤く汚す。
 未来が見える相手と戦うという事は、こうまでも難しい事か。
 得難き問いにして、解き難き問いである。
 相手の持つアドバンテージは凄まじい。恐ろしいまでに。
「さらば異邦の剣士よ。汝が一太刀は、見事我が大剣を打ち砕いた」
 白騎士は防御に用いた大剣を、無造作に投げ捨てた。
 帝国の技術の粋が詰まったその大剣は、しかし罅割れ、宙で砕け散った。
(一矢……いや、一太刀報いたか……)

 その光景を最後に、恭二郎の意識は途切れた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ラザロ・マリーノ
奴のレーザーは躱せねえ。なら、喰らう前提で行動するぜ。

【ジャンプ】で一気に近づいて、ハルバードで【串刺し】にする…が、もちろんこれはフェイクだ。
狙いは奴に俺の返り血を浴びさせて、UC「竜の血」を叩き込む事。
そのためには、どんなルールを課せられようが可能な限り近づかなきゃならねぇ。
仮に接近を禁止されても、翼の無い俺は着地するまでルールを守る方法がない。単に止まれない状態を作るためのジャンプだ。

着地後はルールに抵触しない範囲でこちらから近づくか、動作・表情・言葉で奴を【おびき寄せ】るぜ。

攻撃が禁止されている場合、俺もダメージを喰らうことになるが、相打ちなら上等だろ!

来いよ白騎士!俺を殺しに来い!!



●竜の戦士はかく考えたり
(成程なあ、未来を見る騎士か)
 白騎士のデータを見返しながら、ラザロ・マリーノは考えた。
 竜派ドラゴニアンである彼は、翼や角を持っていない。
 その見た目はさながら二足歩行の蜥蜴、と言ったところか。
 顔に傷跡があり、大きな体躯を持つ彼を見れば、誰もが戦士だと納得するだろう。

(これだと、殴って解決……とは行かねえな)
 荒事で生計を立てるラザロは、今回は考えねばならぬと思案していた。
 問題が起これば、殴れば解決。
 世の中の大抵の問題は、暴力で解決しうる。
 それに今回は、討伐戦だ。暴力を使わずしてなんになろう?

 しかし。
 『暴力で解決』するのは相手側も同じなのだ。

(奴のレーザーは躱せねえ)
 データを見返し、思案し……ラザロは結論をはじき出した。
 未来を操る騎士の攻撃は『回避できない』のだ。
 こればかりは如何ともしがたい。
 しかしだからこそ、行動の方針は決まったのだ。

(なら、喰らう前提で行動するぜ)
 ラザロは覚悟を決め、転移した。

●燃える身体と熱き血潮
「ウオオオオオオ!!」
 転移して早々、ラザロは雄叫びと共に飛びあがった。
 同時に彼の手に握られた小さなドラゴンが、姿かたちを変えていく。
 数瞬後には、竜騎士の槍斧へと変じた。

 飛びあがり、手に構えるは大きなハルバード。
 目標地点には、当然白騎士ディアブロ。
 このままいけば、ハルバードが白騎士を串刺しにするだろう。

(――――大振りな攻撃だ)
 ラザロが飛びあがった瞬間から、白騎士は演算を行っていた。
 刹那の間に無数の思考を走らせ、未来位置を予測する。
 0.1秒後、エネルギーが籠められたレーザーキャノンが、狙いを定め始める。
(巨大な体躯の蜥蜴の戦士。あの一撃は重いだろう。
 だがそれは我には届かぬ……いや)
 0.3秒後。白騎士はラザロの表情をまじまじと見つめた。
 傷跡のあるワイルドな顔に、不敵な表情が浮かんでいる。
 金の瞳が、油断なく白騎士を見つめている。
(成程、何か策があっての事か)
 0.5秒後。白騎士は思考を重ねた。
 何の策があるかは不明。
 飛びあがったラザロは、翼を持たぬ故にレーザーが命中しようと進み続ける。
 次なる一手は何だ。白騎士には掴み切れなかった。
(……ならばこうするか)

 そしておおよそ1.5秒後。
 レーザーキャノンからレーザーが発射された。
「グウッ!!」
 心臓がある位置に、レーザーが着弾する。
 ジュウ、とラザロの鱗が膨大な熱で焼かれ、内側まで響く。
 覚悟していたとはいえ相当の痛みだ。
 しかし彼は、目に見えないながら、ドラゴンオーラを操り防御を行っていた。
 痛みはすれど、致命傷では無い。

「我が告げる――『これより力を振るう事罷り成らぬ』!」
 白騎士の無機質な声が、広間に響き渡る。
 ルール宣告が行われた。

 ガンッ、とハルバードが地面に突き刺さる。
 白騎士が後ろに飛び、ラザロの攻撃を回避したのだ。
「……ヘヘッ。痛ぇがまだ俺は戦えるぜ。どうだ白騎士!」
 そう言ってラザロは、ハルバードをドラゴンに戻し、懐にしまった。
 白騎士の宣言したルールに抵触しないためだ。
 そして彼は力を溜めると……弾かれたようにダッシュした。
 その先に居るのは、白騎士。
「行くぜ白騎士……覚悟しやがれ!!」
 にやりと壮絶な笑みを浮かべ、ラザロは走る。

(武装解除した、か)
 白騎士は油断なくラザロを見つめ、思考した。
(その上で距離を詰めてくるならば、逆に行動は絞られる。
 一。武器を使う必要がない。
 二。距離を詰めなければ出来ない。
 三。以上の条件を満たした上で、攻撃にあたる行為)
 白騎士は瞬時に判断を下し、レーザーキャノンを再び構えた。
(ならば。距離を詰められる前に仕留めるのが上策)

●遠すぎた道
「オオオオオオオオ!!」
 雄叫びと共にラザロは走る。
 ドラゴンオーラを全身に巡らせながら。
 致命傷を押さえるため、防御を行いながら。
 地形を利用し、最高速度を保ちながら。

 ZAPZAPZAP!!

 レーザーがラザロを狙って放たれる。

 ZAPZAPZAP!!

「――――ッ!!」
 全てのレーザーが当たる訳では無かった。
 しかし光線は彼の四肢を撃ち、焼き尽くしていく。
 ……そして焼かれた傷からは、一滴も血が流れ出ない。
(クソッ……!! 近づきさえすれば……!!
 俺の血が届きさえすれば……!!)
 激痛を堪え、歯を食いしばり、ラザロは唸った。
 彼の血は、命中した対象を燃やす事が出来るのだ。
 そこに灯るは不滅の炎。当たりさえすれば、焼き尽くしてくれる。
 熱き竜の血を宿す、ラザロのユーベルコードだ。

 しかし。白騎士は遠距離武装を持っていた。
 それもかなり強力な、帝国の粋が詰め込まれたモノを。

「……ッは」
 息を吐き、ラザロは地面に倒れ伏した。
 レーザーの熱に耐えられず、四肢が動かなくなってしまったのだ。
(……だが終わっちゃいねえ。止めを刺しに来い……白騎士……)
 ラザロの瞳は未だ闘志を失ってはいなかった。
 血さえ当たれば、彼の技は発動するのだ。

「……異邦の竜の戦士よ。さらばだ」
 しかし、白騎士は最後まで近づくことは無かった。

 レーザーの光に呑まれる瞬間に強制離脱が起き、ラザロは意識を失った。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

村崎・ゆかり
ご機嫌よう、『白騎士』。よければあたしとも踊ってよ。

収束する運命の白光は、とにかく死角を探して駆け回り、位置を定めないことで対応する。もちろん直撃が来るだろうから、「オーラ防御」を「高速詠唱」した「全力魔法」で展開。そこに「破魔」を重ねて耐えきる。

反撃も基本的な考えは同じ。位置を定めず未来を読み切らせないことで、回避や防御を遅らせる。
巫覡載霊の舞を使った上で、火行の「属性攻撃」、「範囲攻撃」「全力魔法」の不動明王火界咒を「高速詠唱」して、逃げても炎に巻かれるようにするわ。
接近戦の間合いでは、「なぎ払い」「二回攻撃」で攻防を行う。
零距離射撃に注意。こちらが攻めている間も「オーラ防御」は欠かさず。



●純白の騎士は感知せり
「…………む」
 白騎士は、再び空気の揺らめきを感知した。
 既に慣れた、転移による空気の揺らめきである。
(まだ来るか。我は全力で相手するのみ)
 白騎士は武装を構え、しかしふと思いを馳せた。
(かほどの勢力が銀河帝国の味方であれば。
 恐らくは、あの結末は変わっておっただろうにな)
 苦い過去の記憶。だがそれは、瞬時に意識の奥へと追いやられた。
 今から始まるのは戦い。
 過去に目を向ける暇など元よりない。

●紫蘭の呪術師は踊る
「ご機嫌よう、『白騎士』。よければあたしとも踊ってよ」
 転移の光から現れたのは、村崎・ゆかり。
 赤いセーターに白い肌。黒の長髪を、三つ編みに纏めている。
 その姿は、UDCアースのお洒落な学生という感じか。
 だが勿論、彼女も猟兵である。
「舞踏なぞ、我には遠き物よ」
 ゆかりの言葉に、白騎士はどこか軽口を叩いた。
 そしてレーザーキャノンが構えられ、青白く発光する。

 ゆかりが動き、レーザーは飛ぶ。
 戦いの火ぶたが切られた。

 ZAPZAPZAP!!

 ゆかりは位置を定めないよう、死角を探して駆け回る。
 しかし未来を知る騎士には、余り意味はない。

「――――ッ!」
 じゅう。と、ゆかりにレーザーが着弾する。
 しかしレーザーは彼女に殆ど傷をつけなかった。
 全身をオーラで覆い、全力を込めて防御に回したのだ。
(ほう。人は見た目によらぬと言うのは鉄則だが。
 ここまで攻撃を耐えるとはな)
 白騎士は内心驚いた。
 だがそこで狼狽えるような彼ではない。
 刹那の瞬間にて、白騎士はざっと演算を開始する。
(今の守り方は術者か。だが他の可能性は否めん。
 掴み切れぬが……しかしならばこうするか)
 白騎士は考え、そして結論を弾き出した。

「告げる――――『我より離れる事罷り成らぬ』!!」
「っ……!」
 ルールが宣告され、ゆかりは一瞬足が止まった。
(離れるなって事はどうやっても接近戦になる……!)
 そのルールは、呪術を操るゆかりにとっては中々に深刻なものだった。
 薙刀という武器はあるが、接近戦を生業とする騎士に敵うかどうか。
(やるだけやるわよ。不可能な訳じゃないんだから)
 ゆかりは気を取り直し、位置を定めず足を止めぬように立ち回る。
 そして隙を見て、彼女は舞の動作を仕込み、ユーベルコードを展開する。
 轟。
 人の姿から、神霊体へと変身する。
 手に握られるのは紫の刃を持つ薙刀。
 【巫覡載霊の舞】である。
 同時に詠唱を始め、白紙のトランプを懐から取り出した。
「ノウマク サラバタタギャテイビャク――」
 ばっとトランプが宙を舞い、火が灯っていく。
 トランプ一つ一つから炎が噴き出し、周囲一帯を覆う。
 【不動明王火界咒】。これもまた、ゆかりのユーベルコードである。
 炎は宙を舞い、白騎士へと殺到する。
 周囲一帯を狙った攻撃。逃げることは能わず、炎に巻かれる。

 そのはずだった。

 斬。
「…………えっ」
 ゆかりは思わず声を零した。
 白騎士は回避を選択しなかった。
 手に持つ大剣で炎を受け、最適なタイミングで斬り払ったのだ。
 炎は大剣に絡みつき不浄を灼く。
 しかし、白騎士に届く前に、大剣はパージされ無造作に投げ捨てられた。
「確かに……範囲攻撃を避ける術はない」
 無機質な機械音声が広間に響く。
 いつのまにか、白騎士の周りにはドローンが幾つも展開していた。
 ザザザザザッ……と空気をかき乱す音が、周囲を覆う。
「だが受け止める術はあった。辛うじて、だがな」
 無数の兵装が同時に構えられ、ゆかりを向く。
「元よりこの距離はこちらの物。汝ら術者の距離では無い。
 故に……我が距離にて舞うがいい、猟兵」

 轟。

 その音は最早衝撃波そのものだった。
 ゆかりの視界は無数の剣戟とレーザーの光に覆われ……消えた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アマータ・プリムス
絵里香(f03667)と共闘

絵里香様が時間を稼いでいる間にUCを発動
トランクから今回有効な衣装【光学迷彩マント】を出し絵里香様の元へ
衣装を召喚したら絵里香様と【フェイント】をかけながらスイッチ
「今回のお召し物です。お受け取りください」

スイッチした瞬間にトランクを【武器改造】してチャフの煙幕を部屋中に拡散
白騎士の視界を妨害
「未来が予知出来ても見えていなければやりようがあります」
こちらからも相手は見えないがネロを呼び出し大鎌の【衝撃波】を伴った【斬:属性攻撃】で【範囲攻撃】
周囲諸共白騎士を攻撃

絵里香様が攻撃するまでの間当機が白騎士の足止め
打ち漏らしドローンはそれも巻き込むように範囲攻撃


神宮寺・絵里香
アマータ(f03768)と連携
≪心情≫
・強敵相手だ、互いを信用して全力で挑む
 未来を乗り越える!
≪先制攻撃対策≫
・アマータのUCが発動するまではオレが受け持つ
【世界知識】と【戦闘知識】を基に事前に分析した
 敵の攻撃を【見切り】、【武器受け】して受け流す
 受け流し切れない攻撃は【オーラ防御】で対処
 多少の負傷は【激痛耐性】で無視。兎に角10秒間凌ぐ
・ドローンについては、アマータの衣装を着てステルス
 した後【力溜め】【全力魔法】からの【範囲攻撃】
 【麻痺攻撃】UCで白騎士ごと全て墜とす
・薙刀には【雷属性】と【麻痺攻撃】を組み合わせた
 痺れる雷を付与し【薙ぎ払い】攻撃
 



●劇の幕が上がる前・メイドと巫女
「今回の敵は強敵ですね、絵里香様」
「だな。未来を操作する騎士か」
 グリモアベースにて、二人の猟兵が顔を見合わせていた。
 ヴィクトリアンメイド服を着こなし、トランクを担いでいるのはアマータ・プリムス。
 『人形遣いの人形』にして『誰か』の為に作られたミレナリィドール。
 そんな彼女は、普段は猟兵商業組合にて様々な面倒を見ている。
 一方、巫女服に身を包み、薙刀を携えているのは神宮寺・絵里香。
 『雨冠乃巫女』たる彼女は、水と雷を使いこなす戦巫女である。
 彼女もまた、猟兵商業組合に所属する猟兵だ。

「当機たちの行動を予知するのであれば、白騎士はドローン展開などを行うでしょう。
 それに対応できるお召し物を用意できますが、しかしそれまでは……」
「ああ、じゃあその間はオレが受け持とう」
 アマータの言葉に、絵里香が返す。
 絵里香は、予め伝えられた白騎士のデータを思い返していた。
 帝国の技術の粋が詰まった武装を操る、未来を操作する騎士。
 しかし何から何まで無敵、という訳ではないはずだ。
 既に幾つもの依頼を解決してきた、ベテランの戦士として、彼女は思考する。
 スペースシップワールドの騎士の動きを思い出し。
 今まで戦ってきた敵たちからの経験を元に、おおよその動きを推測する。
「……不可能ではないはずだ。兎に角10秒間凌ぐ」
「ありがとうございます、絵里香様」
 アマータは礼を述べ、自身の装備をざっと確認し直す。
 指先に格納された糸、トランクを模したガジェット、そして『弟』。
 そのどれにも問題は無かった。メンテナンスを欠かさぬアマータにとっては当然である。

「では参りましょう」
「ああ。未来を乗り越える!」

 そして、二人は転移を始めた。

●劇の幕が上がる前・純白の騎士
(………来るな)
 再び空気の揺れを感知した白騎士は、即座に未来予知を始めた。
 そこに映るは、ヴィクトリアンメイド服と、巫女服の二人の猟兵。
(今度は二人組か……しかし奇妙だな)
 白騎士は未来を見つめ続け、違和感を覚えた。
 未来の白騎士は、現れた猟兵と戦っている。
 だが、彼の目前に居るのは巫女服の猟兵だけである。
(……あのメイド服の猟兵は、何をしている?
 何かを準備をしているのだろうか)
 やがて、10秒間の未来視は終わりを告げた。
 その間も、メイド服の猟兵は動かなかった。

(となれば……未来予知の限界、即ち10秒より後に行動するのだろう。
 我の予知には限界がある。故に、これ以上は知る術がない)
 白騎士は思考する。無数の演算を走らせる。
(未来予知の更に先をとる『反撃の一手』か……面白い。
 ならば、全力で相手せねばなるまいな)
 白騎士は宙で拳を握った。
 すると、空気が弾ける音が響き、無数の撮影用ドローンが召喚される。
 その数66体。
 それがくまなく広間に散り、死角が生じぬように配置される。
(今の我には10秒。しかしシミュレーションを起動させれば更に先を見られる)
 白騎士は武器を構え、今から来る未来を待ち受けていた。

(来い、猟兵。汝らが未来を手中に収めてみせよう)

●序章・十秒間の死闘
「行くぞ。準備は頼んだぞ、アマータ!」
「分かりました。お気をつけて絵里香様」
 転移した途端、絵里香は武器を構えて駆け出した。
 目標は当然白騎士。
「参る、巫女の猟兵よ」
 白騎士もまた、フォースセイバーと大剣を構え、絵里香に向かっていた。

 そして、戦いの幕は上がった。
 袈裟懸け、突き、振り上げ、振り下ろし。
 白騎士は恐ろしいほど適確に、絵里香に攻撃を叩き込む。
 間断なく、流れるように連撃を加え、ただひたすらに攻め立てる。
(……ある程度は予想通りだな!)
 しかし絵里香は、その攻撃に死力を尽くして対応していた。
 彼女は予めデータを用いて、白騎士の行動を分析していた。
 白騎士の行動と戦法は、その分析から大きく乖離したものではなかった。
 たとえ未来が分かっていようとも、そもそもの動きが予測できているなら、どうにかなる。
 そして絵里香には、どうにかするだけの技量があった。

(――――反応しきるか)
 白騎士は内心、絵里香の反応に舌を巻いていた。
 敵の攻撃を見切り、最適な角度で薙刀を滑らせ受け流す。
 そこには雷が纏われており、白騎士に電撃を返してくる。
 受けきれない攻撃は、致命傷にならないよう細心の注意を払って身体で受ける。
 皮膚に傷がつくが、しかしオーラを纏う彼女には大きな傷にはならない。
(これほどの腕の戦士と戦えるとはな)
 白騎士が未来を知る戦士であるならば。
 絵里香は、刹那の現在(いま)を観る戦士であろう。
(こうなっては、シミュレーションも上手くは働かぬ)
 白騎士はドローンの映像を確認しながら演算した。
 元より彼のシミュレーションは、活躍もしくは苦戦しなければ働かない。
 何故ならば。
 活躍であれば『こちらに有効な手があった』ということ。
 苦戦であれば『相手に有効な手があった』ということに他ならない。
 しかし拮抗した戦場においては話が違う。
 勝利に導く未来予測シミュレーションを成立させるための、情報が足りないのだ。
(……ならば、共に未知なる未来へ参ろう)
 白騎士も覚悟を決め、絵里香を攻め立てた。

 無数の剣戟が交わされる。
 火花が散り、かすかに血が舞い、音が響き渡る。
 そして――長い長い10秒は、ようやく終わりを告げた。

●中章・煙の中の刃
「―――お色直しの時間です。舞台はこれよりクライマックス。瞬きも注意してください」
 剣戟の中でも通るアマータの声が、しんと響いた。
 それを聞いた絵里香は、内心胸を撫で下ろす。
 長き10秒間を凌ぎきったのだ。
 一方でアマータはユーベルコードを発動する。
 相手に応じて衣装を取り出す、【Alea jacta est(アーレア・ヤクタ・エスト)】だ。
 トランク型ガジェット『アルジェントム・エクス・アールカ』より取り出されたるは、光学迷彩マント。
 アマータはトランクとマントの両方を握り、絵里香の方へと駆けだした。
「させぬ」
 白騎士は冷徹にレーザーキャノンを構え、放つ。

 ZAPZAPZAP!

 しかしそのレーザーは当たらない。
 アマータがフェイントをかけ、白騎士はそれに引っかかったのだ。
 既に10秒は超えている。
 未来を知るとはいえ限度がある白騎士には、これ以上の予知は厳しかった。

「今回のお召し物です。お受け取りください」
「助かる!」
 光学迷彩マントを渡された絵里香は、一旦飛びのいた。
 お互いを信頼しきった二人組ゆえの、連携の取れた交代だ。
「むせないようにご注意を」
 そしてアマータの言葉と共に、トランクから煙が噴き出した。
 チャフの混ざった煙幕である。
 それはあっという間に部屋中に拡散し、隅から隅までを覆い尽くした。

(未来が予知できても、見えていなければやりようがあります)
 アマータは人形を召喚した。
 ネロ・フラーテル。アマータの直後に制作された人形であり、意思を持っている。
 彼女の大切な『弟』だ。
「お願い」
 アマータが言うと、ネロは頷いて大鎌を振るった。
 煙の中を、鎌の斬撃による衝撃波が飛び交う。
 見えていなければ、周囲ごと攻撃してしまえばいい、という訳だ。
 衝撃波が幾たびも放たれ、部屋の中を駆け巡り、騒々しい音を立てる。

「…………やるな」
 突如、無機質な機械音声が、煙の中に響き渡る。
 性別も年齢も、そして感情すらわからぬ、くぐもった音声が。
「電波欺瞞紙(チャフ)を混ぜた煙幕か。視界は奪われ、電波探知も出来ぬ。
 しかし……分からぬわけではない」
(――――!)
 レーザーのチャージ音を聞き取り、アマータは即座に飛びのいた。

 ZAPZAPZAP!!

 数瞬前までアマータが居た場所に、レーザーが着弾した。
(……銃口を移動させなかったという事は、見えていませんね。
 同時に予知ですらない。音か、それとも攻撃の軌道からの推測でしょうか)
 アマータは考え、推測を弾き出す。
(という事は、白騎士は絵里香様を捉えられていない。
 私に注目が集まっているのであれば、問題ありません)
 そう。彼女は白騎士の足止めを担っていたのだった。
 その間に、絵里香は身を潜めて力を溜めていたのだ……。

●終章・霹靂
 バチ……バチバチッ……と。
 不穏な放電音が、広間の中に響き渡る。
 光学迷彩マントを着て身を隠した絵里香が、溜めた力を解放していた。
「ナウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ!」
 ざざあと。
 広間の天井に、無数の霹靂が走る。
「神々の王の裁きよここに! 魔を滅ぼせ因達羅の矢よ!!」
 絵里香は指先を立て、部屋中を差した。

 轟ッ……!!

 爆発にも似た、雷撃の弾ける音が無数に鳴り響く。
 雷は絵里香の指先の対象に、どんどん落ちていく。
 宙に浮く無数のドローンも……そして白騎士にも。
 それは恐るべき因達羅乃矢(インドラノヤ)。
 天より裁きを下す、神々の稲妻である。

 無数の爆発が響き、ドローンが次々に爆散していく。
 ドローンから届く無数の『NO SIGNAL』が、白騎士の脳を覆う。
 シミュレーションは不可能。
 同時に、白騎士そのものにも雷が命中する。
「……ガハッ」
 雷は瞬時に全身を巡り、白騎士を内側から焼く。
 兵装の内部回路はいくつかショートし、爆散する。
(迅雷。避ける術は無し、か。先ほどの十秒間はこのためだったというのか)
 鎧の内側で、白騎士は血を吐いた。
 長き人生の中で、かほどのダメージを受けたのは数えるほどもない。
(……より遠き未来が見えたら、などと言うのは世迷言だな。
 だが今は、奴らにとっても隙のはず……今一度……!)
 白騎士は身体を動かそうとした。
 が……鉛が入ったかのように、四肢は言う事を聞かなかった。
(…………痺れッ……だと……!?)
 白騎士は鎧の中で目を見開いた。
 そして、ざあっ、と煙が晴れた。

「オレの麻痺が、ようやく効いたみたいだな」
「そのようですね」
 動きを止めた白騎士を、絵里香とアマータが見つめていた。
 絵里香の薙刀には、雷が纏われていた。
 先ほどの十秒間は、全てその薙刀で凌いでいた。
 攻撃を受け流すたび、雷を白騎士へと送り込んでいたのだ。
 それは極々わずかなものだったかもしれない。
 だが、着実に内部回路を損傷させ、白騎士自体にもダメージを蓄積させていたのだ。
「…………っふ」
 白騎士は諦めた様に、どこか人間味のある息を吐いた。
 性別も年齢も、感情すらも分からぬ機械音声だが……此度はどこか、人間味があった。
「未来は我が手中に在らず……汝らが物であったか」
「元より未来は誰の物でもありません。当機たちが掴んだのです」
「そういう事。お前の未来を乗り越えて、勝ち得たんだ」
 アマータはネロに再び頼み。
 絵里香は薙刀を構え直した。

 斬。

 二人にとって動きの止まった白騎士を仕留めるなど、造作もない事であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●アンコール
 猟兵たちの活躍により、白騎士は見事打ち倒された。
 しかし、此度の敵は骸の海から蘇る力を持つ、恐るべき敵である。

 であるならば。
 白騎士が再び現れる事もまた、有り得よう。

「我が属する銀河帝国は滅んでおらぬ。
 なればこそ。我は再び立ち上がり、汝らが前に立ち塞がる」

 白騎士は言う。白騎士は睨む。
 白騎士は語る。白騎士は構える。
 ならば、猟兵もまた立ち向かうのみである。

 過去より生じて未来を喰らう。
 オブリビオンの所業を許すべからず。
 故に彼らは再び対峙する。

 戦いの幕が、再び上がる。
月島・彩希
未来を見たような的確な攻撃と回避……その的確さを逆手にとる!
敵の先制攻撃に対して防御体勢を整えつつ、【フェイント】として1ヶ所だけ、それこそ未来予知をしなければ分からない程度の隙を作ることを敵を【釣り】、敵の攻撃手段と狙いを限定させる
培った【学習力】に基づく【戦闘知識】と持ち前の【野生の勘】で敵の攻撃を【見切り】、【オーラ防御】と槍で【武器受け】を行い10秒間耐え抜く
耐え抜いたらすぐ攻撃を行い【カウンター】
【残像】を交えた【ダッシュ】と雷迅槍(UC)を用いて高速移動
敵を【串刺し】にするべく加速による速さと【怪力】が込められた突きとなぎ払いで攻撃
槍に纏わせた【雷属性】で敵内部から焼き尽くす



●疾風迅雷の灰色狼
 月島・彩希は考えた。
(相手は未来を見た様に適確な攻撃と回避をする、と)
 彼女は予め与えられたデータを見返し、思考した。
 稲妻の如き青い瞳に、灰色の長髪。
 そして髪と背後からは、見事な毛並みの狼の耳と尾が覗いている。
 彼女は、人狼であった。
(白騎士を出し抜くのは、恐らく無理ですね)
 彩希は自身の装備をチェックし直した。
 動きやすく、魔力による防御力を上昇させる軽装の鎧を身に纏い。
 携えるは、凍気を纏いし灰狼の槍。
(でも、何も出来ない訳じゃない)
 高速戦闘に慣れている彩希は、一つの方針を弾き出した。
(未来を見たような適確な攻撃と回避……その的確さを逆手にとる!)
 覚悟を決め、先制攻撃に対しての防御を考えつつ。
 彩希はグリモア猟兵の力によって、転移した。

「また来たな……猟兵」
 戦場へと転移した彩希を出迎えたのは、白騎士の声だった。
 淡々とした機械音声と共に、彼は武装を起動して彩希と対峙する。
 彩希もまた、槍を構えて全身に魔力を纏わせていく。
 刹那の間、二人の視線が交差する。
 殺意と敵意が満ち、覇気だけで空気が揺らめくかのようだ。

 そして。
 静寂を打ち破ったのは、白騎士の方だった。

「……参る」
 だん。と、見た目からは想像もつかぬほどの速度にて、白騎士は間合いを詰めた。
 瞬時に距離が縮まる。
 が、彩希は狼狽えず怯まず、槍で防御の構えを取った。
 その瞬間。彩希は策を仕込んでいた。
 彩希は防御の構えをとるうえで、ほんの少しだけ隙を作った。
 それは余りにも小さく、熟練の戦士でさえも見逃すような隙。
 ――未来予知でもしていなければ、見破る事の出来ない隙。

 轟。と、無数の剣戟が交わされる。
 彩希の策は功を奏し、白騎士の攻撃は『隙』を突いてきた。
(これなら行ける……10秒間耐えられる!)
 限られた隙を突く以上、攻撃の手段は限定され、攻撃の軌道もまた絞り込める。
 そのパターンの中から、今までの戦闘経験を用いて。
 研ぎ澄まされた野生の勘を以て、彩希は対抗した。

 攻撃は時折通るものの、当然致命傷とはならない。
 白騎士の攻撃は、彩希の防御を破り切れなかった。

 そして。長き地獄の10秒間が、終わりを告げた。

「今だッ!」
 瞬間、白騎士の攻撃は緩み、同時に彩希は槍を振り上げカウンターを狙う。
 白騎士はカウンターを受け止め、攻撃を再び加えようとした。
 が。その次の瞬間には、彩希はそこにはいなかった。
 バチリと放電する音がしたと思うと、また別の場所から音がする。
 余りにも早い動き故に、残像が宙に残る。

 全身に雷を纏いし、疾風迅雷の灰色狼の残像が。

「狼の牙から逃げられると思わないで……ッ!」
 彩希の手に握られる槍に、雷の魔力が流し込まれる。
 そしてほぼ同時に。
 彼女は白騎士へと飛びかかり、槍の一撃を叩き込んだ。
 彩希の【雷迅槍(ライジンソウ)】である。

「――――ぐっ、速いな」
 槍の一撃は、白騎士の防御を貫き、鎧に穴を開けた。
 全身に雷撃が流れ込み、白騎士は呻く。
 続いて突きから薙ぎ払いが加わるが、その一撃はフォースセイバーが受け止めた。
「どうだ……私の一撃は!」
「……想像以上。恐るべき速さだ」
 斬。
 白騎士はフォースセイバーを振るい、距離を取った。
 内側を焼かれ、鎧に穴が開いた白騎士は……しかし、まだ健在だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリア・ティアラリード
回避不能攻撃と知っていれば幾らでも耐え切れます
いつUCが直撃しようと万全な【武器受け・オーラ防御】の構え
【激痛耐性】で耐え【覚悟と勇気】を持ってルールを絶対遵守!

「亞璃亜・ゼノシア・ティアラリード・御苑。参ります」

UC発動!紫光を放つ八本目の光剣『巨大分体』を呼び
まず白騎士の未来を視る目…
ドローン群を【範囲攻撃・衝撃波】で駆逐します

未来が見えていようといまいと【早業・残像】で極限加速し
繰り出す超速の【怪力・力溜め・捨て身の一撃・範囲攻撃・鎧砕き】!
更に彼女自身も加わり【二回攻撃】で追い詰め
【野生の本能・第六感】が未来を超え繰り出す多重全方位斬撃
…躱せる物では!

「まだ間に合います、光差す方へ…」



●星なる騎士の光刃
「回避不能攻撃と知っていれば、幾らでも耐え切れます」
 白騎士の力に思いを馳せ、アリア・ティアラリードは呟いた。
 青い瞳に長い金髪。身に纏うは魔法学園騎士科の制服。
 見目麗しき令嬢にして、フォースナイトの猟兵だ。
 完全自律型浮遊シールドユニットを引き連れて、手に携えられるは鋭く絞られたフォースセイバー。
 全身にフォースを巡らせ、覚悟を決め、アリアは戦場へと赴いた。

「今度はフォースナイトか」
 戦場に転移したアリアへ、白騎士は声をかけた。
 その視線の先に有るのは、鋭く輝くフォースセイバー。
「解放軍の英雄を思い出すな……全く」
 過去に縛られるのは我の役目ではない。
 そう言葉を続けながら、白騎士はレーザーキャノンを放った。

 ZAP!!

「ぐっ……!」
 しかしアリアは、武器にてレーザーを受け止めた。
 範囲が大きく、受け止められなかったものは、オーラで受ける。
 じゅう、と皮膚が少し焼けるが、歯を食いしばって激痛に耐える。

「告げる――――『自ら我に近付くこと罷り成らぬ』!」
 白騎士は、そしてルールを宣告した。
 フォースセイバーたるアリアならば、近づけなければ意味がない。
 そう考えての事だったのだろう……が。
「亞璃亜・ゼノシア・ティアラリード・御苑。参ります」
 アリアの瞳からは、絶望も竦みも感じられなかった。
 その瞳には、強い覚悟と勇気が満ち満ちていた。

 アリアは白騎士の攻撃が終わったのを見て、ユーベルコードを発動した。
「これが八本目のフォースセイバー……来なさいっ! 紫光の大剣持ちし我が分身《チリング・アイリス》!!」
 七本の剣を操りしフォースナイトであるアリアの、八本目の剣。
 それは、紫の光を放ち、大剣を持つアリアの分身体であった。
 【第八紫光剣(チリング・アイリス・モーヴ・スペクトラムセイバー)】と名付けられた、アリアのユーベルコードである。
 分身体の大きさは、3メートル強。武器の長さも含めるなら、広間の中の殆どに届く。

 斬。

 加えて放たれるは、衝撃波。
 剣から生じた衝撃波が、広間中を飛び交う。

「…………これではルールに意味はないな」
 辛うじて衝撃波を防いだ白騎士は、呟いた。
 なればこそ、全力を出せる位置で、立ち向かわねばならない。
 白騎士は自分から距離を詰めた。
 同時に、アリアもまた動き始めた。
「自分から近づかなければいいんですよね?
 それでも動けるんですから!」
 残像が残る程の速度で、アリアは加速する。
 白騎士は、構わず距離を詰めてくる。
 フォースセイバーを振り上げて、斬りかかってくる。
(今です……!)
 アリアは極限まで加速した自身の勢いを乗せ、超速の一撃を放った。
 分身体から、音を超えた斬撃が放たれる。
 ほぼ同時に、アリア自身もまた攻撃を行った。
 七本の剣を操る彼女の、多重全方位斬撃である。
(……躱せる物では!)

 轟ッ……!!
 無数の攻撃は、ただ一人、白騎士へと殺到する。
 いくら未来が読めようと、全方位からの攻撃は避けようがない。

「…………カハッ」
 血を吐き、白騎士の兜は赤く汚れた。
 兜は砕け、顔が露出する。鎧も所々破壊されている。
 だがしかし。未だ致命傷には至らない。
「……見事。これほどの攻撃が、来ようとはな」
 白騎士は呟き、アリアを睨みつけた。
 全方位攻撃は避けようがない。
 だから彼は、重要な部分を護り、致命傷だけは避けたのだ。
「感傷は似合わぬが……アンヘルを思い出すな」
 口に残る血を吐き出しながら、白騎士は呟いた。
 機械音声は消え、男の声がアリアに届く。
「……大事な事はただ一つ。我は未だ倒れてはおらん」
 白騎士は立ち上がる。
 未だ彼は倒れず。
 故にまだ、彼は戦うのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリア・ヴェルフォード
未来は自分たちの手でいくらでも変えられる!
そして相手が未来を見れるという前提で作戦をとってそれが未来として相手に見られて・・・うーんいたちごっこですね!

【POW】
●対処法
未来位置に向けて放たれるのでレーザーの経路を【見切り】
闇【属性(攻撃)】の魔力を付与した邪聖剣を【投擲】で障害物としてぶつけて防ぎます

●対処後
基本的に光【属性(攻撃)】を付与した聖剣で戦います
※途中で邪聖剣も拾えたらそこからは【2回攻撃】でいきましょう
回避方法は【見切り】ですが、基本的には【武器受け】します
【フェイント】を挟みつつ攻撃していき隙や装備で受けるようなら『剣刃一閃』
あの機械の体か最新装備を真っ二つにしてやりましょう



●聖光と黒き極光の騎士
「未来は自分たちの手でいくらでも変えられる!」
 グリモアベースにてそう言うのは、アリア・ヴェルフォード。
 青と白を基調とした、魔力が籠った衣服を身に纏い、白と黒の手袋をはめている。
 金色の髪が一房跳ねあがっており、トレードマークのアホ毛としてぴょんぴょん動いている。
「そして相手が未来を見れるという前提で作戦をとって。
 それが未来として相手に見られて……」
 アリアのアホ毛が?マークを形作り、直後に!マークに変わった。
「うーん、いたちごっこですね!」
 確かに彼女の言う通りである。
 しかし、未来を見る事が出来るのは相手のみ。
 アドバンテージは相手の方にあるのだ。
「けどまあ、対処方法がない訳じゃないですからね。
 頑張って行きましょう!」
 そう言うと、彼女は戦場へと転移していった。

「まだ来るか。猟兵は」
 戦場に転移したアリアに、白騎士の声が飛んできた。
 性別も年齢も感情も分からぬ機械音声……ではない。
 兜を失い、そこから男の顔が覗いていた。
「当然です! あなたを倒さなきゃいけないんですから!」
「……っふ。我にとっても同じよ。汝ら猟兵は、皇帝陛下の敵である。
 故に我は……命ある限り戦い続ける」
 白騎士は息を吐き、同時にレーザーを放った。

 ZAAAAAAAAAAAP!!

「見切ったっ!」
 だが、そのレーザーはアリアには当たらない。
 未来位置を予測しきった、回避不能の筈の一撃である。
 それが当たらないことなどあろうか?

 どじゅう。

 レーザーの経路を見切って放たれたるは、邪聖剣。
 アリアの黒手袋から現れた、黒き極光を宿した剣である。
 それが宙を飛び、レーザー光線を一身に受けていた。
「――――なんと」
 白騎士は思わず声を上げた。
 アリアは自らの武器を投擲し、レーザーを妨げる障害物として使ったのだ。
 黒き邪聖剣は、闇を宿してレーザーを受け止めきった。
 弾かれて部屋の隅にまで吹き飛んでいき、からからと音を立てる。
「さあ、始めましょう!」
「……良いだろう。敬意を表して全力で相手致す」
 アリアの言葉に、白騎士は壮絶な殺気を放った。
 既に鎧が所々砕け、傷を負っている彼は、それでも尚凄まじい闘気を持っていた。

 そして。二人は近付き、戦いの火蓋が切られた。

 交わされるは無数の剣戟。
 アリアは白騎士の大剣を、フォースセイバーを、見切って武器で受け止める。
 時にフェイントも混ぜて、まばゆき聖光を湛えた聖剣の一撃を繰り出していく。
 白騎士は中々隙も見せず、適確に受け止めていく。
 が、その流れにもほころびが生まれた。
 痛みか疲労か、白騎士の防御の流れが止まったのだ。
「そこだっ!」
 そして、その隙を見逃すアリアでは無かった。

 斬!!

 白騎士は、アリアの一閃を武器で受け止めきれなかった。
 聖剣は大剣を滑り、それを握る腕へと当たり、そのまま斬り飛ばした。
 大剣と、機械の腕が空を飛ぶ。

「…………っぐう!」
 白騎士は思わずうめき声を上げた。
 腕が飛んだ。然り。大剣も飛んだ。然り。
 これが未来を見る騎士だというのか。然り。
 能力的に重傷を負う事が無かった彼は、痛み故に呻いた。
「もう一閃!」
 アリアはその隙を見て取って、もう一度剣で薙ぎ払った。
「させるかッ!!」
 しかし白騎士は、今度は全力で剣をはじき返し、後退した。

 想像以上の傷。想像以上の苦戦。
 だが白騎士は、未だ白き門番たる役目があった。
 手足が動く限り、彼は立ち、猟兵に対峙し続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミリィ・ジゼル
相手が先制するならばいかにそれを耐え、
ドローンを一瞬で撃墜できるか
そこに掛かっています

UC発動可能になるまでは
第六感、見切り、盾受けなどをフル活用しつつ
オペラグローブのビームシールドで敵の攻撃を受け流してダメージを最小限に
最悪でも致命傷は抑えるよう立ち回ります

UCが発動可能になれば即座に巨大メイドロボに変身
一斉射撃、範囲攻撃、破壊工作、なぎ払いなどを駆使してマルチミサイルの一斉射
ドローンをまとめて薙ぎ払います

そしてそれによって発生する爆発や粉塵などを目くらましに
カウンター、だまし討ち、2回攻撃、捨て身の一撃などを載せ
渾身のダブルロケットパンチを白騎士にお見舞い

必ずや一矢報いてやりましょう



●家事は出来ぬが戦える
(ふむ、なるほどなるほど)
 貰ったデータを見返しながら、エミリィ・ジゼルは考えた。
 銀の長髪が腰まで届き、白と青を基調とした美麗なメイド服を身に纏う。
 髪の間からは、エルフのように長い耳が覗いている。
(相手が先制するならばいかにそれを耐えるか。
 ドローンを一瞬で撃墜できるか。
 そこに掛かっています)
 ざっと敵の行動を見積もって、エミリィは頷いた。
 オペラグローブの調子を確かめ、彼女は戦場へと転移した。

「嗚呼。猟兵とは実に多様、実に不可思議だな」
 エミリィを出迎えたのは、そんな白騎士の言葉だった。
 砕けた兜から覗く眼は、どこか遠くを見つめていた。
 彼が見つめていたのは、銀河帝国皇帝だろうか。
 或いは、遠き未来だろうか。
「御託は良いです。始めましょう」
「然り。交わす言葉など、あって無きような物か」
 白騎士は宙で手を握りしめた。
 空気が弾ける音と共に、無数の撮影用ドローンが出現した。
 その数66体。
 白騎士の未来予測シミュレーションを手助けする、特殊なドローンである。

 そして、轟、と。
 白騎士は無造作に、そして凄まじき速度で間合いを詰めた。

 エミリィは即座にオペラグローブを操作し、ビームシールドを展開した。
 無数に飛んでくる攻撃を見極めながら、シールドで受け流す。
 白騎士の膂力は凄まじく、故に受け流さなければ身体に響き渡るのだ。
 時には第六感に従いながら、エミリィはただ攻撃を受け流す。
 致命傷は絶対に負わないように、そしてダメージを最小に抑える様に。

「……これでは埒が明かんな」
 白騎士はそう言うと、一旦距離を取った。
 活躍も苦戦もせぬ、拮抗した戦いでは、得られる情報が少ないのだ。
 故に彼の未来予測シミュレーションは、上手く機能していなかった。
 なので一旦距離を取り、別の手段で攻撃を行おうとしたのだが。

「今です! かじできないロボ、出撃!」
 それは正に隙だった。
 瞬間、エミリィはユーベルコードを発動して巨大メイドロボへと変身した。
 然り。巨大メイドロボである。
 マルチミサイルを搭載し、拳は飛んでロケットパンチとなる。そんなロボである。

 エミリィは回転しながら、ミサイルをマルチターゲッティングしていく。
 対象は宙に浮くドローン、66体。
 そのままマルチミサイルを発射し、ドローンを一斉に破壊していく。

 BOOOOOOOOOOOOOM!!!

 宙で無数の爆発が起き、ドローンが爆破される。
 パラパラと破片が部屋に飛び交い、爆炎と煙がしゅうしゅう音を立てる。
「――全て破壊されたか」
 白騎士は、頭に響く『NO SIGNAL』を見てシミュレーションを強制終了した。
 未来予測シミュレーションが行えないと言う事は、今の白騎士はただの騎士。
 目の前に居る巨大メイドロボを見やり、白騎士は息を吐いた。
(――上手くいかぬ、と弱音を吐きたくもなるな)

「必ずや一矢報いてやりましょう!」
 その言葉と共に、巨大メイドロボはずんずん進み、白騎士へと対峙した。
「くらえ! ダブルロケットパンチ!」
 爆炎や粉塵、煙が目くらましとなり、白騎士は反応が遅れた。
 煙を突っ切って飛んでくるのは、巨大な拳。それが二つだ。
「……っがあ!」
 巨大な質量を持った、物凄い勢いの拳が、武器へ鎧へ、白騎士へとめり込む。
 やがて勢いに耐え切れず、白騎士は弾き飛ばされ、壁へと叩きつけられた。

 ぐしゃり。壁はへこむ。
 しかし。白騎士は起き上がり、エミリィを睨みつけた。

「……ここまで追い込められると……逆に冷静になるな」
 身体から沸き上がった血を吐き、白騎士は呟いた。
 鎧は半壊。武装も壊れ、白騎士自身も痛手を被った。
 血が広間の地面に落ち、鮮血の絵画を描く。
「……だが我はまだ……戦わねば……ならぬ」
 白騎士は未だ動く。白騎士は未だ語る。
 白騎士は未だ睨む。白騎士は、未だ立ち上がる。

 帝国双璧の一方を担いし恐るべき騎士は。
 こうまでやられても、未だ立ち塞がり続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
真の姿
三面六臂の阿修羅のような姿。各々の手に矛や戟、戦輪などを持つ

真の姿、解放。
やり直しを要求するわ、『白騎士』ディアブロ。
戦で距離は選べないものね。これでもう死角はないわ。

「オーラ防御」に「全力魔法」を重ねれば、レーザーを防げることは分かった。
次の手がいるわね。
不動明王火界咒を戦場全体に「範囲攻撃」でばらまいて、全ての存在の視覚を妨げる!
炎と煙に覆われるのは10秒後も変わりないわよ。

その間に気配を殺して黒鴉召喚。これでディアブロの位置をあたしだけは把握する。

呪者であることが枷となるなら、巫覡載霊の舞で「衝撃波」を伴う「なぎ払い」「2回攻撃」「串刺し」を披露するわ。
あなたの動力部をちょうだい。



●紫蘭よ再び
 血を吐きボロボロになりながらも、白騎士は未だ立っていた。
 そこに……ざっと、足音が響いた。
「やり直しを要求するわ、『白騎士』ディアブロ」
 そう言ったのは、戦場へと転移してきた村崎・ゆかりであった。
 だが、先ほどのUDCアースの学生風の姿ではない。
 今の彼女は三つの顔に六つの腕……即ち三面六臂である。
 各々の手には矛や戟、戦輪などが握られている。
 その姿は、ゆかりの真の姿であった。

 余人が見れば、正に阿修羅だと言うのではなかろうか。

「……声には聞き覚えがある……だがそのような姿だったかな」
「これがあたしの真の姿よ、白騎士。
 戦で距離は選べないものね。これでもう死角はないわ」
 ゆかりは武器を向け、白騎士もまた武器を構えた。

 爆炎と粉塵の残る戦場の中、阿修羅と、機械の天使が対峙する。
 それはどこか神話的で、幻想的だった。

「ならば我も全力でお相手しよう。何、必死という奴だ。
 ……もはや、死は決まった未来のような物だからな」
「なら始めましょう。絶対に仕留めてみせる」
 白騎士とゆかりは言葉を交わし……そしてぶつかり合った。

●第二終幕・死闘
「――――来いッ!!」
 白騎士の言葉と共に、撮影用ドローンが展開された。
 未来予測シミュレーションに必要な、66体のドローンである。
 同時に、白騎士はレーザーキャノンをゆかりめがけて発射した。

 ZAAAAAAAAAAAAAAAP!!

 しかしそれは、一度見た攻撃である。
 全力を込めて全身にオーラを巡らせ、ゆかりはレーザーを防御した。
 じゅうと音はすれど、さほど痛みはない。
 一度は防げた上、今は真の姿を解放しているのである。
 防げぬ道理はない。
「告げる――『我から離れる事罷り成らぬ』!!」
 そして白騎士もまた、前回と同じルールを宣告する。
 二人は同時に思考する。
(また『離れるな』……今のあたしに、そのルールは意味がない!)
(……行動を縛る。このルールであれば、接近戦へと持ち込める)
 二人は刹那の間、視線を交わした。
 そこに映るは殺意か敵意か。侮蔑か尊敬か。諦念か憤怒か。
 当人たちにしか分かるまい。

「ノウマク サラバタタギャテイビャク――」
 ゆかりは懐から、無数のトランプを取り出して放り投げる。
 トランプには、しかし柄は無い。何も描かれてはいない。
 だが手を離れて宙を舞うと……突然、炎が噴き出し始めた。
 轟、と放たれるは、不浄を灼く炎!
 【不動明王火界咒(フドウミョウオウカカイジュ)】である!
 噴き出た炎は煙を上げて、広間中を飛び交い始めた。
 やがて部屋は炎と煙に満たされる。
 紅き炎と黒き煙が視界を埋め尽くす。
「……見えんな」
 ドローンのシグナルを確認し、白騎士は諦めた様に呟いた。
 煙がドローンの視界を妨げる。
 炎がドローンに絡みつき、熱暴走させ爆破する。
 元より精密機械のドローンは、次第にその数を減らしていった。

 一方ゆかりは、熱と煙に紛れて気配を殺していた。
(急急如律令! 汝は我が目、我が耳なり!)
 小さな声で詠唱をすると、彼女の傍にカラスに似た烏形の式神が現れた。
 闇や影に溶け込み、対象を追跡し続ける、漆黒の烏である。
(いい、ディアブロを追って)
 ゆかりが言うと、黒烏は煙に紛れて飛び立った。
 黒烏とゆかりは五感を共有している。そのため、黒烏が見つければ、ゆかりにも位置は分かる。
 そして、やがて黒烏は、白騎士の姿を捉えた。

 炎と煙の中で炙られながら、集中して佇んでいた。
 その姿に油断も隙も無い。
(多分今、未来を見ているんだろうな)
 ゆかりは黒烏を通じて白騎士を見つめ、考えた。
(けど炎と煙に覆われているのは、10秒後も変わりないわよ)

 やがて熱に満ちた10秒が経過し。
 白騎士は、覚悟を決めて武器を構えた。

「十分に身体が温まった」
 今までの白騎士からは考えられぬ軽口を叩いた。
「さあ異邦の猟兵よ。始めようではないか……地獄のような死闘を」
 言うと、白騎士は全武装を最大展開し、周囲一帯を薙ぎ払い始めた。
 見えぬのであれば、見えるようにしてしまえば良い。
 敵が捉えられぬのであれば、全てを破壊してしまえば良い。
 そんな自暴自棄にも似た、捨て身の攻撃だ。
「ならお相手してあげるわ。もう一度、あたしと踊ってよ!」
 ゆかりは舞いながら、白騎士の前へと姿を現した。
 三面六臂の阿修羅の姿が、そのまま神霊体へと変じ。
 巨大な薙刀が宙より現れ、握られた。

 斬!!

 白騎士が剣を振るう。だがゆかりは薙刀でそれを軽々といなした。
 返す刀で、ゆかりは薙刀を一閃する。

 斬!!

 薙刀は衝撃波を伴い、白騎士の腕をもぎ取った。
 硬い金属音が響き、機械の腕がいくつか宙を舞う。
 大剣が飛び、フォースセイバーがくるくると回る。
 レーザーキャノンが飛び、花火のように爆発する。
 
「あなたの動力部をちょうだい」

 その言葉と同時に、どすっと。
 薙刀が深々と、白騎士の心臓に突き立てられた。

 炎が舞う戦場にて、阿修羅が機械の天使を討ち取ったのだ。

「……カハッ」
 白騎士は血を吐き、床を、純白の鎧を、自らの血で汚す。
 白き鎧が、炎に舐められ、血を浴びて、紅く色を変えていく。
「あたしの、勝ちよ!」
「……然り。我は、負けた」
 白騎士は呟き、刹那の瞬間に思いを馳せた。
 黒騎士アンヘル。銀河帝国皇帝。解放軍との戦い。
 そして長き長き、猟兵との戦い。
「嗚呼……猟兵とは……」
 なんと不可思議であろうか。
 その言葉は、音になりきらず……炎に呑まれた。

 再び現れし白騎士は、今ここに討ち取られた。
 未来を操る騎士に、勝利したのだ。
 未来を勝ち取ったのは、猟兵たちだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月22日


挿絵イラスト