新田・にこたま
カレンさんとハイウェイでカーチェイスを繰り広げる様子を執筆していただきたいです。
猟兵としては仲間ですが、お互い表向きには敵対する立場ですしね。
カーチェイスが始まってしまった理由もカーチェイスの結末もおまかせします。勝敗は忖度なしでお願いします。
走るのが本業のカレンさんを捕まえられるとはあまり思っていませんが、仮に私が勝てた場合はカレンさん(お仲間がいればお仲間も)を一晩拘置所に叩き込んでみましょうか。(取り逃がしたり脱走を許してしまったりしても問題はないです)
私が負けた場合の私の処遇はおまかせします。
では、(受けて頂けるなら)いざ尋常に勝負です。
「待ちなさい!」
けたたましいサイレンを響かせ、新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)の乗る|四輪装甲車《ミニパト》のタイヤがハイウェイの路面を刻む。フロントガラスの向こうにはテールランプに尾を引かせたハイスピードバイクが減速と言う単語を置き忘れてカーブを進んでいた。
「……カレンさん」
そう、進む。曲がるでなく進むとしか言いようのない速さでカーブを攻略しているからこそにこたまはカレン・ソウゲツ(サイボーグのハイウェイスター・f36589)の後塵を拝していた。
「違法改造されているとは言っても、あのバイクのベースは何処にでもある既製品。車体性能は私のミニパトの方が上のハズ」
にもかかわらず、先を行かれてしまっている。
「確かにミニパトの割には小回り効かない気もしますが」
相変わらずごつい四輪装甲車を別の呼称で呼びつつ、にこたまは確信する。
「カレンさん、ユーベルコード使っておられますね」
猟兵として踏んだ場数と車体性能で自分が上回っている以上、いくら相手が走るのが本職のカレンと言えど他にこうなる理由がない。
「そこまで必死にならなくても」
と思う反面、あの状況なら仕方ないかもですねと思うところもにこたまにはある。
「……と、大体そんな感じですねぇ」
「なるほど、その|巨大企業群《メガコーポ》が」
人気のない場所で、密会する走り屋と警官、ではなく猟兵同士の情報交換。お互いの立場が立場だけあってこっそり行っていたところに招かれざる訪問者が現れたのだ。
「姉御?!」
「てめぇ、マッポか! 姉御に何を――」
カレンを姉御と慕う荒くれたち。事情を知らぬ男たちはにこたまからカレンを助けようと乱入してきたのだ。
「はっ、俺がンなのに捕まる訳ねぇだろ?」
きっとテンパっていたのだろう。取り巻きとにこたまの衝突を避けようとして出た言葉。
「見せてやるよ、サツなんざァすぐぶっちぎるってとこをなァ」
スピードバイクに跨るやその場を離脱するカレンを見て、にこたまもなるほどとは思った。この状況ならカレンを追いかけて自分もこの場を去っても不自然さはないからだ。
「とはいえ、『ンなの』呼ばわりは酷いと思うのですが……」
目撃者の居ない場所でそう言ったなら、カレンはきっと平謝りしたことだろう。にこたまとてそれが方便であることはわかっている。
「それはそれとして……猟兵としては仲間ですが、お互い表向きには敵対する立場ですし」
たまにはこうして本気でぶつかってみるのも悪くないとにこたまは思い。
「では、いざ尋常に勝負です」
と、落合場所の近くに駐車てあった|四輪装甲車《ミニパト》に乗り込み、カレンのバイクを追いかけて今に至るのだ。最初はにこたまが距離を縮め、カレンのバイクに追いつかんがばかりだったのだが、唐突に捕まえかけたスピードバイクが急加速、また差をつけられて、今前方に行かれている。
「支持者が見てるかもしれないところでは負けられないんでしょうね」
走りの勝負もあの荒くれものたちの前から去る口実であるなら、その荒くれものたちも追ってこられないほど遠くにたどり着けば、このカーチェイスも終わりかもしれない。
「そもそも情報交換の途中でしたものね。ですが」
勝負なしで終わりにしてしまうのももったいない気がして。
「走るのが本業のカレンさんを捕まえられるとはあまり思っていませんが、仮に私が勝てた場合はカレンさんには留置場で一晩お休みいただきましょうか」
前の当人が聞いたら涙目で首を横にブンブン振りそうなことをぽつりと漏らし、にこたまは切っていたハンドルを戻す。
「ここからは直線、ミニパトの馬力の活かしどころです!」
撃ち合いもきっと想定されたごつい車体を支えるエンジンが獰猛な獣のように唸り、常軌を逸した走りを見せるスピードバイクを追走する。
「こんな相手が早々いてもたまりませんが、逃走犯を……逃走犯なら威嚇射撃も出来るんですが、まぁ、今は走りの勝負ですし」
涙目で、なんでそんな本気で追いかけてくるんですかぁという泣き言が前方の背中から聞こえてきそうな気もしたとしても、アクセルペダルからにこたまが足を離す理由にはならない。
「あちらもユーベルコードを使ってるわけですし、神経接続機能を使ってもいいですよね?」
直後、四輪装甲車の走りが一段進化し。
「|ちィ《ふぇぇぇぇん》」
前方を走るバイクの音声をなんとなくにこたまは拾った気がした。反応速度が増せば、カーブを曲がるにも無駄は減り。
「あと一手足りませんか」
あちらがユーベルコードを使っている以上、にこたまもユーベルコードまで使うという手もあるが、単純に速度が増すというだけのものが存在しない。敵であるならミニパトに隠してあるロケット噴射でぶちかましをかけにゆくのだが。
「その手がありましたね!」
直後、四輪装甲車はロケット噴射の尾を引いて一気に加速した。
「ンなァ?!」
前を走っていたカレンが慌てて横に避け、ぶちかましを躱されたミニパトはカレンの真横に着地する。
「追いつきましたよ」
「『追いつきましたよ』じゃ|ねェよ《ないですぅ》!」
叫ぶカレンに涙目のカレン自身が重なって見えたのはにこたまの気のせいだろうか。
「あ」
一時は横に並んだにこたまのミニパトだったが、再びカレンのバイクに引き離され始め。
「二度同じ手は通用しないでしょうし、ここまでですね」
警察手帳を見せて行動速度を半減させることもにこたまには出来たが、二つ目のユーベルコードを使ったならカレンも対抗策を取るだろう。例えば行動速度低下をそのまま跳ね返してくる、とか。
「このまま取り巻きさんの来ない場所まで走ってもいいですけど……」
にこたまは法定速度の範囲内までミニパトのスピードを緩めるとカレンに向けてメッセージを送信する。勝負に付き合ってくれたお礼と合流場所をどこにするかを相談する内容のそれを。
「これで良し。後はカレンさんからのお返事待ちですね」
その後、数分経ってから返って来たメッセージで二人はハイウェイオアシス跡の廃墟で落ち合い、情報交換を再開することとなったのだとか。
成功
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