第二次聖杯戦争⑦〜破軍、女子力に挑む
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「ここに件の魔導書があるのか。私自身その道に詳しいとは言えないが、書と芸術を愚弄するこのやり方は不快極まりない」
金沢は21世紀美術館、そこに現れた金衣の人物。口調と髪形、そして中性的な顔立ちから一見男性にも見えてしまうが彼女は女性だ。
そしてその頭につく尖った耳も偽物ではない。彼女は中国最大級の異能集団である『大陸妖狐』。その中でも第四位の実力を持つ最高幹部の一人だ。
「我らユーベルコードなる埒外の力はなし。なれど|能力《アビリティ》においては一日の長あり。我が20m以内に入った者は千の軍団であろうと必殺を免れぬ」
世界を超える埒外には目覚めずとも、世界の内にある力においては敵なしと豪語するそれは経験と実力に裏打ちされた確かな自信。
「我らが主金毛九尾が力を削がれし今、廉貞さま、貪狼どのも違う地で戦っておられらる……この破軍だけがそれに遅れるわけには断じていかない」
別の場所で戦う仲間と力失いし主を思い熱意を滾らせる女、破軍……あれ? 戦ってる妖狐もう一人いなかったっけ?
まあそれはそれとして、破軍が向かうのは書棚の一角。そこには明らかに後から詰まれたらしき芸術関連ではない本の山が。
「これで目くらましのつもりか。あえて分野違いの本をいくつも投げ込むとは……だがこのような下らぬ策私に通じるものか! この破軍、この書を読み解き廉貞さま……をはじめとする掛け替えなき同胞の力たらん!」
微妙に取ってつけたような言葉を足しつつ気合をいれて本を開く破軍。そこにあったのは。
『お堅い彼もこれでイチコロ! 必殺セクシーコーデ』
『男を落とすなら胃袋を掴め! 簡単女子力メシ特集』
『待ち合わせから夜のマナーまで……大事な一日を完全プロデュース!』
「な、なんだこれ……れ、廉貞さまああああああ!!」
本の中から、大量の『女子力』が溢れ出してきた。
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「あなたのメルでございます。第二次聖杯戦争の依頼です」
メル・メドレイサ(蕩けるウサメイド・f25476)が集まった猟兵に肉じゃがを配る。
「言ってもらいますのは金沢21世紀美術館。ここのアートライブラリーには様々な美術や芸術に関する本が大量にあるのですが、その中に敵の手で「オブリビオンの軍勢をハビタント・フォーミュラの元へ自動召喚し続ける魔道書」が隠されていることが分かりました」
魔術の目的は、美術館を訪れていた人々の命を奪い敵を強化すること。早々にこの魔術書を破棄しなければ、あらゆる意味で危険なのは疑いない。
「なので、この魔術書を探して破壊していただきたいのです。ですがこれは普通の方法で破壊することは出来ません。唯一の方法は『ユーベルコードを扱える者が、その魔道書を最初から最後まで読了すること』」
読めばいい、というならそれはある意味簡単な仕事。だがもちろんそうは問屋が卸さない。
「ですがこの本、開けばその場で本の内容を元にしたオブリビオンが襲ってきます。幸いにしてこれについてはユーベルコードを用いずとも撃破は可能であり、その為妖狐七星将の一人『破軍』さんが協力してくれます」
かつて銀誓館と長きにわたる因縁の果て、同盟という形で決着をつけた強力な集団。その幹部の一人であり、ユーベルコードこそ使えないものの単純な実力は猟兵すらも凌駕するという。
「なので、現れた敵の対処は彼女に任せて良いでしょう……ええ、女性ですよ。失礼なことを言わないように」
中性的な容姿と男性的な髪形のせいで性別を間違えられやすいらしく、かつて銀誓館でも同じことがあったらしい。
「で、件の魔術所なのですが……まあいわゆる『女子力』的な内容のもので」
え、ここ美術館だよね?
「どうやらカモフラージュのために普通のそういう本と共に、書棚の一角にぶちまけていったようです。それを開けばまあ何というか女子力高めのオブリビオンがいっぱい出てくるので、破軍さんにそれを相手取って貰いつつ皆さんは本を読了してください。『読了』ですのでページをただめくるだけではだめです。きちんと内容を見て、理解しながら最後まで読み進めてください」
どんな感想を抱くかは自由なので、興味があるならしっかり熟読してもいいし、機械的にただ読み進めるだけでもいい。ちなみに内容は思春期女子向けの一歩大人に踏み出すものから、R-18スレスレのアブないものまで幅広いようだ。
まあとにかく、破軍に護衛されながら女子向けの本を読むだけの依頼だ。そこまで気負う必要はないだろう。
「ああ、それと余談ですが」
出発しようとする猟兵だが、なぜかメルはまだグリモアを起動せず続ける。
「破軍さんはなんというかことあるごとに廉貞さんの名前をお出しになられるのですよねぇ。過去の記録を見るに10年前にはすでにそうだった模様です」
それは妖狐七星将筆頭にして知勇兼備の将。難解な独白とセルフ翻訳を使いこなすマルチリンガルであり、彼もまた別の場所にて戦っている。そしてその感情は優秀な上司に対する敬意……だけでないのは10年前彼女が表舞台に出た時からの周知の事実であった。
「ですが廉貞さんは真面目一徹の超ニブ男、残念ながらお世辞にも高いとは言い難い破軍さんの女子力ではその防壁を突破するのは10年の月日をもってしても難しく……」
わざとらしく首を横に振るメル。
「なので本を読んでいる最中それをしっかり読み上げたり、あるいは湧いてるオブリビオンを教材に色々教えてあげるのもいいんじゃないでしょうか。大丈夫、破軍さん強いのでその状態でも戦えます」
体がノーダメージな代わりに心がえらいことになるやつじゃないのそれ!?
「あ、それと余談中の余談ですが、逆に破軍さん巨門への扱いはクッソ雑です。口マスクとか呼んでます。ナチュラルに数に入れてません」
それはそれで別方向なフラグ立つ奴じゃ……と言う気もしないでもないがメルはやっぱり笑顔のまま。
「まあそういうわけで、それでは皆様、頑張ってきてください」
何をどう頑張れとは言わず、メルはグリモアを起動し猟兵を送り出した。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。がんばれ破軍さん。
今回のプレイングボーナスはこちら。
『プレイングボーナス……破軍と協力し、大量の書籍の中から魔道書を探して読了する』
大量にぶちまけられた女子、女性向け書籍の中から魔導書を見つけ出し読破してください。魔導書を開いた瞬間その内容に合わせたオブリビオンが大量に湧いてきますが、それは全て協力者の妖狐七星将『破軍』が相手してくれます。彼女は非常に強いので、手助けの必要は基本ありません。
本の内容はいわゆる『女子力磨き』的なもの。思春期女児向けの初めての下着選び的な奴や、なんかよく分からない横文字連発のコーデ集、セクシーでアダルトなやべーやつ、むしろ男性向けじゃないかというサブカルちっくなものなどなど。またコケティッシュなものだけでなく、実用的な料理、掃除術や自立した女、デキる女的なものもあります。
OPで示す通り、破軍さんは廉貞さんに並々ならぬ感情を向けています。独自設定じゃないです。マジです。そこが絡むとちょっとポンコツ思考になってしまうかもしれません。ついでに巨門への扱いの悪さも本当です。
分かると思いますが、今回もネタ依頼です。せっかく本を読むんだし、大切な協力者にその知識を分けてあげるのもいいんじゃないでしょうか。オブリビオンの相手を猟兵がしてはいけないわけではないので、そちらを教材にするのも可。基本数ばかりで強くはないです。
それでは、女子力高めのプレイングをお待ちしています。
第1章 日常
『隠された魔道書を探せ』
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POW : 休みなく片っ端から大量の本を読む
SPD : 何らかの手段で速読を行う
WIZ : 本に籠められた魔力を感知する
イラスト:乙川
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
詠雛・歩音
鳴声海矢マスターにおまかせします。かっこいい詠雛・歩音をお願いします!
変身ヒロインをやっている新米女神です
人々を守るため勇ましく立ち向かいます
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
・戦闘
シンフォニーソードによる近接戦闘
アンダンテを用いた演奏、音波攻撃
UCは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
又、例え依頼の成功の為でも、公序良俗に反する行動はしません
後はお任せ。宜しくお願いします!
金沢は21世紀博物館。そこのライブラリーに魔導書隠匿されていく魔導書を破壊すべく、妖狐七星将『破軍』はその地へと赴いていた。
だが彼女はシルバーレイン屈指の実力者でこそあるが、世界をまたぐ異能ユーベルコードを使える存在ではない。件の魔導書を破壊するためには、単純な実力とは関係なくユーベルコードを使える必要があるのだ。
故に、彼女はそれが出来る者……猟兵の手助けをすることを自らの役目とし、この任に当たっていた。
詠雛・歩音(光奏神姫・f21126)はそれに応えるべく、山積みにされた本の中から魔導書を探す。
「これは……どういうこと?」
その本は、およそ美術と縁なさそうなファッションや流行に関するものばかり。
「分からない。だがその中に魔導書があるのは間違いないことだ。現れるオブリビオンの相手は私が受け持とう。だから貴女は急いで魔導書を見つけ、それを読み終えてくれ」
こういうのを直視するのが気恥ずかしいのか、目を逸らしながら言う破軍。ともあれ開けばオブリビオンが出てくるというなら、表紙だけ開いて何も起こらなければ次へ行けばいい。そうやっていくつかの本をとっかえひっかえしていくと、やがて一つの本を開いた瞬間周囲にオブリビオンの群れが現れた。
「出たな! 猟兵には指一本ふれさせ……!?」
勇ましくそれを相手取ろうとするが、オブリビオンの姿を見た時その言葉は途切れる。そこに現れたのは、明らかにいかがわしい目的でデザインされた下着姿の女性たちばかりであった。
「ななななななな!?」
思わず赤面してを止める破軍。
「えーと? 『負けられない戦いがここにある。勝負下着百選』」
どうやら下着のカタログのようなものを当ててしまったようだ。取り巻いたオブリビオンたちは腰をくねらせながら破軍へと迫ってくる。
「女慣れしてなさそうな坊やね、初めてかしら?」
「私は……女だ!」
男扱いしながら間合いに入ってきたオブリビオンを、一蹴りで吹き飛ばす破軍。オブリビオンとしては弱いという情報通り、ユーベルコードやアビリティではない蹴りでも受けた相手は一撃で消滅していく。
その守りの中で、歩音は安全に本を読み進めていく。
「ふーん、なるほど……こういうのもあるのね……うわ! これすっご! こんなの着て人前出たくないわ……」
ページをめくるたびに出るわ出るわ。ただ派手なだけなど序の口であり、薄すぎて下が透けているものやあまりにも高露出過ぎ最早紐か糸とでも言った方がいいもの、本来最も隠すべき場所に穴が開いているものまである。
「まさか、こんなの着て戦えなんて言われないよ……ね?」
そう思ってみるが何しろかなり体の見えるコスチュームでヒロイン活動を命じてきた上司の事、こんなものの存在を知ったら本当に着用を命じてきかねない。人間ならばセクハラで訴えることもできるが、神の世界では神格による上下関係は絶対。逆らうことは出来ない古き悪しき縦社会なのだ。
「こういうのは好きな人の前で着てこそでしょ。この本にもそう書いてあるし。ねえ破軍さん、こういうの着せてくる上司ってどう思う?」
「ばばばばばばば馬鹿を言うな! 廉貞さまはそんなことはしない!」
突然の歩音からの振りに、三人いるはずの格上のうち一人だけピンポイントに名前を出しながら顔を赤くする破軍。
「だいたい廉貞さまの前でこのようなふしだらな格好など……」
そこまで言ってぴたりと動きと言葉がぴたりと止まる。
「……あああああああああああ!!」
そして突然絶叫し、周囲20メートルに炎を振りまいて一気にオブリビオンを殲滅する破軍。まるで何かを振り払うような攻撃だが、もしかしたらその手の下着をつけた自分でも想像したのかもしれない。
その姿を見て、歩音は軽く嘆息する。
「慕える上司がいるっていいなぁ……」
本来の権能を無視してヒロインに仕立て上げられた自身の境遇を思いつつ、そう言った格好な実に似合いそうな体を持つ歩音は下着カタログを読み進めていくのであった。
成功
🔵🔵🔴
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
木を隠す為に、森から作りましたかぁ。
『効果やや低め・効果時間長め・影響は胸集中』の『秘薬』を摂取し【霊結】を使用、読書に必要な『速読力』と『集中力』を強化し、興味のある『料理系』や『服飾系』を中心に読み始めましょう。
『料理』は得手とする分野、『服飾』は体型上よくサイズの調整が必要になりますから、自然と?(遠い目)
『男性の好む料理』等の記述が有りましたら、読み上げますねぇ。
この分野でしたら、丁度良い|オブリビオン《食材》が居たらこの場でお教えすることも、レシピをお渡しすることも出来ますので。
『服装』や[誘惑]等は、私とタイプが違い過ぎて、選んだ本は参考にし辛いでしょうし。
栗花落・澪
なるほどね
そうだな、【料理】とか【メイク】は得意だし
ファッションも姉がモデルしてるからそれなりにはね
とりあえず何か……あ、お菓子レシピだって
バレンタインに良いんじゃない?
破軍さん、お菓子作りのご経験は?
初めてならやっぱりクッキーとか…カップケーキも簡単な方かな
廉貞さんは甘いものどうなんだろう
甘味ダメならオランジュショコラとか
フルーツを生かしたお菓子は有りかもね
あとはビターチョコ使ったり
ココアやコーヒー、抹茶の味をベースにしたり
あ、これなんかは見た目もお洒落だよ
時々飛び出して来たお菓子を指で示して説明しながら
更にはおもてなし用にそれぞれに合う紅茶のフレーバーとかも伝えながら読了
あ、僕男ですよー
一冊読了し破壊しても、不穏な空気は消えない。どうやら魔導書は他にもあるようだ。
「木を隠す為に、森から作りましたかぁ」
同じジャンルの本をいくつもぶちまけることで本命の違和感を無理矢理消す、乱暴極まりないその隠し方を夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)はそう評した。
とはいえ開きさえすれば正解かどうかは相手の方から教えてくれるし、その際の危険についても頼もしい護衛がいる。依頼としては楽な部類に入るはず……なのだが、その護衛担当の様子がどうにもおかしい。
「ああ……全く度し難い! なぜわざわざこのような見当違いのものをわざわざ大量に! カバーだけかけ替えるとかもっとやり方はあったろうに!」
わざわざ自分で代案まで出して言う協力者、破軍。これでも大陸妖狐第四位の実力者なはずなのだが、その態度は色々とポンコツ化している。
その横で、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は手元にあった本をぺらぺらとめくり、ここにあるのがどういった内容かを確認していた。
「なるほどね。そうだな、【料理】とか【メイク】は得意だし、ファッションも姉がモデルしてるからそれなりにはね」
「『料理』は得手とする分野、『服飾』は体型上よくサイズの調整が必要になりますから、自然と?」
るこるも遠い目で言っているように、本の内容はいわゆる女子力アップ的なもの。こちらは割かし万人にお見せできる系女子力なようだが、それでも破軍には色々気恥ずかしいものがあるらしい。
そんな本の山を、澪とるこるは目当ての本を探して読み漁っていく。基本的には開いて敵が出なければそれは外れなので手放してしまっていいのだが、何故だか二人ともある程度中身を確認してから次へ移っていた。
「大いなる豊饒の女神、その鴻大なる知と力をお貸しくださいませ」
るこるに至っては【豊乳女神の加護・霊結】で内容を理解する速さまで増している。
「とりあえず何か……あ、お菓子レシピだって。バレンタインに良いんじゃない?」
やがて一冊の本を澪が開いた時、その本の中から菓子を模したオブリビオンが大量に湧きだしてきた。それらはただの菓子ではなく、ハート型クッキーや手作りチョコなどまさにバレンタインを先取りしたようなものばかり。
「ば、馬鹿を言うな! そんなさもしい真似できるか!」
その菓子を殴り倒しながらやっぱり顔を赤くする破軍。中国ではバレンタインは男から女へ贈り物をするのが一般的なため、そっちの意味で取ったらしい。
そんな彼女に日本では逆に女から贈り物をする日だと教え、丁度いいものがあったと読み上げる二人。
「破軍さん、お菓子作りのご経験は?」
「いや……あまり」
「初めてならやっぱりクッキーとか……カップケーキも簡単な方かな」
簡単そうな菓子を例に挙げるとそれに呼応するように巨大なそれが本から飛び出し、破軍が一撃でそれを叩き割っては消滅させていく。
「こちらは特に『男性が好む』と書かれていまして……実際には万人に当てはまるものではないでしょうが傾向としては参考程度にはなるかと」
「廉貞さんは甘いものどうなんだろう」
「ふむ……どうだろう。積極的に好んでいる様子はないが、嫌っているという話も聞かないな」
そこまで言ってはっとする破軍。
「ななななな何故そこで廉貞さまの名が出てくる!」
「甘味ダメならオランジュショコラとか、フルーツを生かしたお菓子は有りかもね」
破軍が赤い顔をさらに赤くして言うが、答えるまでもないと言わんばかりに澪は完全スルー。なおこんな女子トークの傍らでも、破軍の手足はちゃんと動いてオブリビオンを駆除している。
「あとはビターチョコ使ったりココアやコーヒー、抹茶の味をベースにしたり、あ、これなんかは見た目もお洒落だよ」
「あ、それでしたらぁ」
次々湧いてくるオブリビオンを指さし澪が説明していくと、るこるがその内の一体に目を止めた。
「こちらのダークチョコなどお使いになられてはどうでしょう。仕事の時間は仕事が優先。甘すぎないチョコがちょっとの休憩にちょうどいい。それぞれの責任を背負って戦う大人な二人に……だそうです」
内容を読み上げ、チョコオブリビオンをふん捕まえるるこる。さらに都合よく湧いてくるドライフルーツや調理器具まで捕獲し、澪と共に実際に調理まで始めていく。
「いやオブリビオンの相手は私がするから二人は魔導書を……」
そうは言いつつも、破軍もその様子はしっかり見学している。当然本は開きっぱなしなのでオブリビオンは次々湧いてくるが、流石はシルバーレイン全土でも上から数えた方が早い強者、目と手と足が完全に別に動き材料にならない分だけを選り分けて駆除している。
そんなこんなで出来上がったチョココーティングのドライフルーツ(オブリビオン製)。なんか合体して新オブリビオンになって動きだしそうな気もするが、その前に食べて駆除して出来栄えも確認。
「この味だとこういう紅茶が合うかな」
さらに読み進め、お茶のページをだして澪が解説する。本で書いてあることだけでなく自分の経験や知識も交えた説明に、破軍も感心したようにうなずいた。一方るこるも自分の知るところからさらなるアドバイスをしようと思うも、自分と相手を見比べて諦めたような表情になる。
「『服装』や[誘惑]等は、私とタイプが違い過ぎて、選んだ本は参考にし辛いでしょうし」
「分かっている……そういうのは貪狼どのや武曲にでも教えてやってくれ……!」
たとえ顔立ちや髪形が紛らわしかろうと、有無を言わせぬものがあれば性別を間違えられることなどない。つまりはそういうことなのである。破軍は縋るように澪へと顔を向ける。
「貴女なら分かるだろう……?」
「あ、僕男ですよー」
「なんとぉ!?」
今日一驚いた声を上げる破軍。それは自分と同じ、あるいは真逆の存在がこんな近くにいたことにか、あるいはまた色々別の事情か。
そんな和やかな女子トーク(withオブリビオン駆除)の中で、猟兵二人は魔導書を読了した。それと同時に魔導書は塵になって消え失せ、美術館を包んでいた不気味な空気も消えていく。
「どうやら終わったようだな……二人とも、ご苦労だった。力になれただろうか」
礼を言う破軍にこちらこそ、と色々な意味を込めつつ返す二人。
「どうやら廉貞さまと貪狼どのも戦いを終えられたようだ。猟兵の皆様の戦いはまだ続くだろうが、我らも可能な限りの力添えをさせていただこう」
あと一人まだ戦闘中の奴がいるのだが、やはりそれは彼女の中ではいないことになっているらしい。
「では、まずはそれぞれの拠点へ戻り報告を行おう。ただいま戻ります廉貞さま!」
最後まで隠す気と自覚があるんだかないんだかの発言を生暖かく見守りつつ、二人の猟兵もグリモアベースへ戻るのであった。
大成功
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