アリス・イン・ふかふか森
オルト・クロフォード
こんにちは、オルトの中の人です。
今回はアリスラビリンスでの冒険ストーリーを書いていただきたく、リクを投げさせて頂きました。
どんな不思議の国を冒険するかはMS様にお任せします。
雰囲気は基本ほのぼのな感じでお願いします。
このオルト、アリスラビリンスにはまだ行ったことがなく未知の世界にはわくわくしてあちこち行ったりすることでしょう。好奇心旺盛なドールなので。
なおこのキャラ、特殊な話し方をします。最後の文字がカタカナになる感じです。
セリフの例を置いておきますね。このセリフは採用しなくてもOKです。
例:
「ワ! 花が喋ってるゾ! 一体どんな仕組みなんダ?」
「学園で習った魔法のどれとも違ウ、不思議な現象だナ……」
「なんだか面白い予感がするナ! ついて行ってみよウ!」
その他分かりにくいところ等ございましたらMS様にお任せします。
素敵なお話をお待ちしています!
あなたはだぁれ?
わたしはだぁれ?
ぼくはくま わたしはことり
あなたはお花 きみはりっぱな枝ぶりのおおきな木
ふかふか森で お好きにどうぞ!
「わ、ァ……!」
シーグリーンの双眸をまんまるにしたオルト・クロフォード(クロックワーク・オートマトン・f01477)が咄嗟に一歩踏み出した踵は、ふかりと沈んでバランスを崩しそうになる。
その面白い踏み心地の大地にも瞳が輝く。胸の歯車が目まぐるしく回っているみたいな感覚。道端で歌うまるい姿の花に彼は早速話し掛けた。ぬいぐるみのような見目の花だと彼は思う。
「ふかふか森……ここは、そう言う名前なのカ?」
「あらアリス、初めましてね! そうよ、あなたもふかふかしてく?」
「いや私の名ハ、……いいや、ここではそう呼ばれるのだったナ」
そう、ここはアリスラビリンス。
オルトが初めて降り立つ世界だ。
白紙の頁に見知らぬ物語が綴られていくような、“広がる”感覚は何度味わっても新鮮な驚きと楽しさがあって、好奇心旺盛なドールはその感覚をしばし享受すべく敢えて呼び名を訂正するのをやめた。
「それデ、ふかふかするとハ?」
「あなたはだぁれ?」
「え、私ハ」
「わたしはお花!」
言って喋るまるい花は──ぴょこんと立ち上がる。
思わずオルトは目を再びまんまるにした。
ぬいぐるみのような姿だ、とは思っていた。合っていた。否、違っていた。それは、着ぐるみだったのだ。
立ち上がると同時にまるい茎と葉っぱの下から飛び出したのはリスの手足。オルトがそれを確認すると、再び“お花”は手足を仕舞って道端に揺れた。
まさか、と振り返るふかふかの地面。“お花”はくすくすと笑った。
「その子はちからづよい地面よ。あっちは森いちばんのとんび」
ちょいと“お花”が指す先には太い枝に留まったまるい鳶。こちらの視線に気付くと軽く翼を広げて見せながらしましまの虎の尻尾をその“下”から覗かせた。
「……飛べるのカ?」
「あら、もちろんよ。森いちばんだって言ったじゃないの」
「一体どんな仕組みなんダ……! 学園で習った魔法のどれとも違ウ、不思議な現象だナ……」
「不思議なのはあなたよ、アリスったら」
これまでにもいろんな魔法や仕掛けには出会ってきたが、着ぐるみを纏って話す動物(きっと)や、着ぐるみを被るだけで生物的構造を無視した行動ができる(たぶん)なんて初めてだ。
たくさんの煌めく想像を与えてくれた図鑑にも勝るとも劣らない世界に、オルトのわくわくも|留《とど》まることを知らない。
「“地面”に挨拶はできるカ?」
「できるわよ、ついてきて」
ぴょんと器用に花の形のまま跳んでいく“お花”に、一も二もなくオルトは小走りでついていく。けれど道中、種々の自己紹介や他己紹介が歯車を震わせるのに、次第に胸に浮かぶ思いがあった。
──……私は、……だぁれ、ダ?
時折脳裏を掠める、時計の針の羽の姿。我知らず寄った眉。ちいさく振られたかぶり。
まるい花がオルトへ振り返って笑う。
「ふかふかするか決めたの、アリス?」
ぼくはもぐら わたしはりんご
あなたはおひさま きみはまんまるぶどうのいちばん下
そこここから聴こえる謳い文句にようやく理解した。着ぐるみを纏いなにかになりきることをこの森では『ふかふかする』と表現するらしい、と。
「だれだっていいのよ。ふかふか森で、お好きにどうぞ!」
「誰だっていい、のカ」
“お花”の言葉を繰り返して音にすると、歯車の軋む音が消えたような気がした。また自然と口角が緩む。柔らかな地面を数歩駆けて、振り返る。
「もう少し、悩ませてくレ!」
きっとそれは、とても贅沢なことだから。
成功
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