虚構ナラトロジー
鵜飼・章
僕は鵜飼章…王族だ
今はただの旅人だけど
祖国はオブリビオンに焼かれたよ
父と母は燃え盛る城から僕を逃して行方不明
幼馴染達は目の前で殺害され
もはや昔の僕を知る者はいない
あの日以来復讐だけ考え生きてきた
心は擦り減り感情も表情も失った
虫や木の根を貪って生き延び
漸く仇を討てたと思えば
あの日死んだ両親はオブリビオンになり
他国を侵略していた
こんな僕に救いはあるのか…
●リクエスト内容
上記の過去はアルカディア争奪戦の時に書いた大嘘プレイングですが、この設定が本当だった場合のIFノベルを執筆してほしいです。
すべて書くと大変そうなので、どこか一場面の切り取りを希望します。
章の本来の設定、性格、口調は基本スルーし、偽物感を出してください。
アドリブ・アレンジ歓迎、ギャグ扱いでもシリアスにしても大丈夫です。
何一つ事実ではないのでお気軽にどうぞ、お暇でしたらご検討お願いいたします。
真実と虚構を別つものがあるのだとすれば、それはなんであろうか。
己が見る夢を現でないと何故いい切れるだろうか。
揺れる視界の中で燃える城を見た。
己の中にある恩讐の炎と同じく揺れる炎。
満ちていくのは悔恨ばかりであったのかも知れない。ざりざりと音を立てるように心が擦り切れていく。
いつかの誰かの物語であったのかもしれないし、もしかしたのならば、最初から夢であったのかもしれないと思ったけれど。
それでもこれは現実であるのだ。
疑いようのない。
「――……ああ、どうしてだ。どうしてこんな夢を俺は見てしまうんだ。いいかげんにしろよ」
揺れる頭、その灰色の髪をかきむしりながら、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は道を歩む。
眠ることは許されない。
己は生きた死体のようなものだ。
あの日、祖国はオブリビオンによって燃やされた。
燃え盛る炎の色を今でも思い出せる。思い出す度に、己の頭髪は黒から灰色に変わっていった。
嘗ての黒髪も、紫の瞳も、何もかも無い。嘗ての己を知る者はいない。
精神をすり減らす歩みは、感情は愚か己の顔を象る表情すら奪っていった。
艷やかだった肌は傷だらけで、益々持って青白く。
虫や木の根、あらゆる人間の底辺とも言える泥水の如き人生を歩んできた。
頭が痛む。
「逃げて、にげ――……」
幻視。
あの日の光景が目の前に映し出される。瞳を閉じてもなお、脳裏に浮かぶのは幼馴染のあの子が異形の機械に接続されたオブリビオンによって声が嗄れる音を立てながら崩れて消えた、あの光景が瞼の裏にすら映し出されている。
「なんで、こんな事をするんだよ! おかしいだろ! なんでも燃やす! 滅ぼす! 俺たちがなにかしたのか! してないだろ!!」
叫ぶ声は虚空に吸い込まれていくようだった。
父も母も行方は知れず。生きているのか、死んでいるのかもわからない。
オブリビオンは自身の言葉に短く返答した。
「理由になってない」
何が?
己達の国が滅ぼされない理由などあるわけもなく。オブリビオンにとっては滅びを回避する理由になどなっていないとでも言うのか。
擦り切れた心が叫ぶ。
嗄れた喉を切り裂くように、血反吐を履きながら章は己の手にした刃を異形の機械に突き立てる。
「――知るかよ、そんなもの」
仇たるオブリビオンを氷の如き刃が貫いたとしても、復讐のためだけに生きてきた自分には漸く終わる事のできるという実感意外何もなかった。
擦り切れた心は摩耗しきっている。
もう嫌だと叫ぶ心があるからこそ、恩讐の彼方にあるのは復讐を遂げたという事実だけが救いとなり得る。
しかし、終わりを迎えようとしていた青い瞳が見たのは――。
「章」
「おいで」
涙が出るほど懐かしい声。
あの日燃え落ちた城が上げる炎と同じ色をした炎をもって、己とは縁無き国を焼くのは……。
「なんでだよ! どうしてそんな事をするんだよ! 父さん! 母さん!」
解かる。
あれはオブリビオンだ。猟兵である己の体が言っている。滅ぼさなければならない。でなければ、滅ぼされてしまうから。
軋む心は散り散りに。
砕けた心は踏み潰される。
どんなに願っても時が逆巻くことがないように。
目の前の現実もまた夢であるとは言い切れない。
故に己は境目に立っている。揺れる体。揺れる視界。揺れる脳。
天秤のように揺れる己の現と夢。
その中心になって叫ぶ声だけが、支点であり視点持つ己を切り裂くように広がっていく。
「何もかもが嘘だらけだと言ってくれよ。こんなのフィクションだって!」
救いなんて無い。
あるのは虚構と真実。
成功
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