第二次聖杯戦争⑪〜人よ前を見て歩け
●金沢駅周辺
――そこには闇があった。
その中には光があった。
灯火だと人は思うかもしれない。
だが違う、それこそが元凶。
偽りの灯火の名はオロチ。
――光のオロチなり。
●グリモアベース
「何かバスに恨みがあるんでしょうかねえ?」
グリモア猟兵、流茶野・影郎(覆面忍者ルチャ影・f35258)は首を傾げた。
「それは置いときまして。今、現在、金沢駅周辺は古の妖獣兵器『オロチ』の魔力により闇の領域という物に支配されました。元凶である光と闇のオロチは周囲のオブリビオンを支配し。金沢駅と駅バスターミナルに居る人々を捕えています……一般人の意識が無いのが幸いですね」
まず状況を説明し。
「皆さんにはそのうちの一体、『光のオロチ』の撃退をお願いします」
用件を切り出す。
「ああ、勿論簡単には行きません。今回の敵は超発光状態――眩しさで視覚を奪って先制攻撃を行ってきます。暗いからと言って赤外線暗視装置とか持って行ったらダメですからね、赤外線も厳密には光ですから壊れますし、かと言ってサングラスをかけたら行く途中で躓きます。流行りの調光サングラスも間に合いませんからそのつもりで」
どこから持ってきたのかグリモア猟兵がサングラスやら暗視装置やらを捨てるような演技をしつつ、次に考え込むと。
「要はいかにしてこの超発光状態を防ぎ、相手の先制攻撃を防ぐのが鍵ってところですねえ……」
本人は答えを見いだせないまま風車を投げるとグリモアの門が開かれた。
だが、その向こうは闇――何一つ見えない状態だ。
「そんなわけで、皆さんは闇の中を潜り抜け、眩い光を放っている光のオロチを倒してきてください――何、オブリビオンとなっていますがオロチ自体は乗り手が居ないと本来の力を発揮できません。問題点さえクリアできれば、後はボスを倒すようなものです」
グリモア猟兵は努めて気軽そうに言っているのが分かった。
――それだけに強敵なのだろうと。
みなさわ
漆黒の闇に差し込むは光の妖獣兵器オロチ。
こんにちはみなさわです。
今回は眩いばかりの妖獣兵器『光のオロチ』退治をお願いします。
●戦場
金沢駅周辺の闇の領域。
オロチ自身は空を飛んでいますし、オロチ自身が光ってるので明るさに関しては問題なく、周辺の土地にも影響は有りません。
むしろ眩しいくらいです。
●敵
『光のオロチ』となります。
光を操り、遠距離戦から接近戦までこなす超巨大ゴーストです。
●プレイングボーナス
『敵の先制攻撃ユーベルコードに、何らかの手段で「超発光状態」を克服する事で対処する』
となります。
敢えてユーベルコードを受けるなどのプレイングは流してしまうか苦戦判定になると思いますのでお気を付け下さい。
●その他
マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。
それでは皆様、戦争のお付き合いお願いします。
第1章 ボス戦
『光のオロチ』
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POW : ピュアネスホワイト
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【偽りの浄化をもたらす白き光】で包囲攻撃する。
SPD : ライトエクセリオン
【頭部の巨大角】を構えて【目にした者の視覚を奪う眩い光】を纏い、発動前後が無防備となる代わりに、超威力・超高速・防護破壊の一撃を放つ。
WIZ : トリプルブライト
【太陽の如き熱き光サンライトレッド】【静かに輝く青き炎シャイニングブルー】【心を惑わす紫光バイオレットイリュージョン】のいずれかを召喚して装着し、攻撃力・機動力・めくらまし力のいずれかを超強化できる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
壽春・杜環子
やぁよねぇ、大変な時ばっかり明るく優しい言い方なさるでしょ?酷い人
あら、素敵なランプ
…けど眩しすぎませんこと?UC
太陽か月か…星の真似っこ?ふふ、見たことも無ければ成れもしないくせに。ふふふ
でも暗いよりはましかしら?真暗はやぁよ。だって、蔵に入れられたみたいでつまらないもの!わたくし嫌
ハイカラな遮光眼鏡があれば良かったけれど、無いなんて!あの人わたくしのこと言えないんじゃなくって?ひどいわ!
しかたがないから、わたくしがお前にお前の光へ返してあげましょう
それに色は間に合ってます
全てちゃんと|わたくし《万華鏡》の裡にありますもの
光なんて直接見るものではなくってよ
視界は袖で遮りながら、光を鏡で返して
●魔鏡が照らすは――
闇の中を女が歩く。
うら若い少女のように見えるが時に見せる瞳は妖艶でかつ無機質な美術品の様。
遠くより差し込む光に照らされれば白磁のような肌に玉虫の紅を差したかのような命の色。
壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)の姿だった。
「やぁよねぇ、大変な時ばっかり明るく優しい言い方なさるでしょ?」
口にするのは誰かへの悪態。
「酷い人」
言葉と裏腹に脳裏に浮かぶのは素直に笑わない、何かをどこかへ置いてきた誰かの姿。
闇が薄れ、思索の|映写幕《スクリーン》も消えていく。
「あら、素敵なランプ」
視野に入るのは光のオロチ。
「……けど眩しすぎませんこと?」
冗談か、それともそのままの言葉なのか。
真実を鏡の奥へとしまい込み、杜環子が光を袖で遮ると古巻貝の変じた魔杖を振るう。
水の魔力は変じて鏡となり眩いだけの超発光と太陽の如きユーベルコードを反射する。
つまり――
|オロチのトリプルブライト《太陽の如き熱き光サンライトレッド》は|万華千篇魔鏡に《カレヰドスコヲプフタマワシでカガミノナカへ》囚われたのだ。
「太陽か月か……星の真似っこ? ふふ、見たことも無ければ成れもしないくせに。ふふふ」
鏡の向こう側で杜環子が笑う。
千年以上前に作られた妖獣兵器と言えど、一世紀の人の生き様を見て来た万華鏡の化身には哀れな愛玩動物に見えるのだろう。
「でも暗いよりはましかしら? 真暗はやぁよ。だって、蔵に入れられたみたいでつまらないもの! わたくし嫌」
薄く漏れる光が差す杜環子の瞳に少しだけ陰が差す。
オブリビオン故に同情などしないし、倒すべき相手ではある。
だが物として生きていたからこそ、誰かの道具である『オロチ』には感じるものがあるのだろう。
「ハイカラな遮光眼鏡があれば良かったけれど、無いなんて! あの人わたくしのこと言えないんじゃなくって? ひどいわ!」
だから人のせいにした。
そうすれば余計なものを見ることも無いのだから。
「しかたがないから、わたくしがお前にお前の光へ返してあげましょう」
そうすればお前の光だけを見ていられるから。
万華鏡が移す太陽のような光、それがそのまま炎熱となって光のオロチを焼く。
「それに……色は間に合ってます」
光の牢獄の中、オロチが身をよじり、鏡を叩き割らん。
「全てちゃんと|わたくし《万華鏡》の裡にありますもの」
全ての鏡が割れた時、杜環子は自らの手を胸に当て、去り行くオロチへ告げた。
万華鏡は全ての彩りを見せる。
ただ光りゆくだけの竜が覗き込めばどのような光ですらお前に還ってくると。
そう言わんばかりに。
「本当……酷い人」
杜環子が呟き、そして闇に消えた。
成功
🔵🔵🔴
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
ものすごく眩しいから気をつけて、ってことだよね……?
うーん、それなら光を「捕まえる」のはどうかな。
マリアの思いっきりのサイコキネシスなら、見えないものも、触れないくらい小さいものだって、触れて掴めるはずだから。
光は「波」で「粒」だって、シップで教わったことあるよ。
マリアも生まれたときからずっと光を持ってるから、きっと感じ取れるはず。
「波」なら大きな念動の「手」で受け止めて。
「粒」なら小さな念動の「指」で摘みとって。
優しく、手を繋ぐみたいにオロチの光を受け止めて……そのままぎゅーっと、潰しちゃおう。
銀河帝国のオロチとの関係はよくわからないけど、悪いことしてるのは同じ、許さないんだから……!
マシュマローネ・アラモード
◎
モワ!超発光!
街を壊すのは忍びないですが、『権能』斥力(吹き飛ばし)、地面を抉り遮る盾としなすわ!それでも飛来する剣は斥力を屈折させ、流れる流体のように斥力を周囲に展開して受け流しますわ!
さぁ、次は私の番ですわね!
UC|巨躯屠る栄誉《ジャイアントキリング・アーナー》!グレイス・フルムーンに騎乗して、空中で姿を捉えたなら射程内ですわ!
巨獣を屠るのも王族の嗜みでしてよ!それだけの巨躯巨体であるなら、威力も射程も十分ですわ!
斥力を込めて打ち出す強力なリパルサー、拒絶を込めた一撃で光のオロチを撃ち抜きますわ!
狩猟の時間はここからですわ!
●現象に至れば、届かないものはない
闇の中、光のオロチは獲物を探す。
先ほどの攻撃から自らを排斥すべき者が居て、そいつらを『狩らねば』こちらが死に至る事を本能的に理解していた。
――気配がした。
小さくも強い二つの光。
狩らねばならぬ、たとえ小さくても自らを死に至らせる力を持っているのなら。
小さな二つの光。
だが決してか弱くはなく、その力の呑み込まれれば次は呑まれた者が巡礼の列に並ぶことになるだろう。
何故なら二人は|嵐の軍団《ワイルドハント》の一員なのだから。
「モワ! 超発光!」
マシュマローネ・アラモード(第十二皇女『兎の皇女』・f38748)は遠くより見える光を目に留めて感嘆の言葉を述べた。
もうじき届き、自らの目を焼くと分かっていながら。
「ものすごく眩しいから気をつけて、ってことだよね……?」
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ(涯てに輝く・f13378)はグリモア猟兵に告げられた言葉を簡潔にまとめた。
「そうですわね。何かいい方法はありますの?」
マシュマローネ=マシュの言葉にアヴァロマリア=マリアは小首を傾げてから応えた。
「うーん、それなら光を『捕まえる』のはどうかな?」
「モワ!」
マシュはその言葉に感嘆を漏らすしかなかった。
二人とも星の海に生きる者ゆえ、光が何で出来ているのか知っていたのだから。
もうすぐ届くであろう超発光。
この闇の空間が無ければ、その暇はおそらく与えられはしなかったであろう。
そして暇があったからこそ、光は――遠くで輝くに収まる。
光と言うのは電磁波の一種であり、星によっては大気層に吸収され、海に至れば全てを吸収される存在――実は物体であり、現象なのだ。
勿論、光のオロチ自体は妖獣兵器。
人知を超える霊力、魔力を持って光を発しているが一度光として形を成せば、それは物理現象として定義される。
だから――マリアは念動力で光を抑え込むことが出来た。
光は『波』であり『粒』。そうシップで教わった小さき聖者にとって光は自らも持つ身近なものなのだから。
故に眩いほどの超発光をつかみ取り、抑え込むことができた。
だが本気を出さねばここから先、押し込まれることは必至。
光のオロチは超発光状態からユーベルコードに繋げることで先制攻撃を獲得しているのだから。
そのためにはマリアには時間が必要で。
そのためにマシュが権能を用いる。
――キネティック・リパルサー。
加速と斥力の権能。
それが今――地面を削り取る!
「街を壊すのは忍びないですが」
抉られた地面は盾となり、塵となり、届いたはずの光を減衰させる。
「モワ! 今ですわ!」
「――うん!」
マシュの言葉にマリアが頷き。
|全力を以って偽りの光をつかみ取った!《サイコキネシス》
猟兵の襲うはずの偽りの浄化をもたらす白き光。
それは今、反転してオロチへ襲い掛かる。
「さぁ、次は私の番ですわね!」
兎の皇女が飛び上がれば新たな光が一つ。
いや、それは光ではなく月。
権能を最大限に発揮する栄誉が与えられし時、輝く月。
|巨躯屠る栄誉《ジャイアントキリング・アーナー》
それは王女の嗜み。
それは勇者たる証。
それは古来より伝わる――|巨獣討ち取るものの詩《ジャイアントキリング》
「今こそ|狩猟の時間《ワイルドハント》ですわ!」
斥力――相手を吹き飛ばす力を込めたリパルサーを今、解き放った!
危機を感じたオロチがその身を羽ばたかせようとした時。
「銀河帝国のオロチとの関係はよくわからないけど」
マリアのサイコキネシスが光の妖獣兵器を抑え込む。
「悪いことしてるのは同じ、許さないんだから……!」
オロチ――その言葉にアヴァロマリアが思い出すのは人の苦しみと不幸だけだ。
だからこそ、此処から逃がすわけには行かない。
少女の思いに応えるかのようにキネティック・リパルサーが光のオロチを貫いた!
拒絶を込めた一撃は強大な相手であるほど破壊力と射程距離を増していく。
故にマシュのリパルサー自身に込められた斥力はマリアの念動力の網すらも吹き飛ばす程。
強烈な閃光が辺りを覆い、視界が閃光に支配され。
……そして闇が訪れる。
「……あと一歩だったね」
マリアには分かっていた、あの一撃はほぼ致命傷。
このまま戦えばオロチはいずれ死に至るだろうと。
「モワ……もう一息でしたわ」
マシュも心底残念そうに呟いた。
大きすぎるが故に相手はこの戦場からの排除されてしまった。
ここからの追撃は難しいだろう……だが。
「でも狩猟の時間はまだ終わっていませんわ」
猟兵達の追撃はまだ続くのだ。
戻ってくるリパルサーをつかみ取り、兎の皇女はこの場での勝利を小さな少女とねぎらいあった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
暗都・魎夜
【心情】
こいつのことは忘れもしねえ
決死隊位の気持ちでポジション結社クラッシャーのメンツと哨戒に当たってたとき見つけたんだからな
今度もてめえに、暴れる時間なんざ与えねえよ
【戦闘】
「てめえが出てきたならこっちも本番だぜ、イグニッション!」
「天候操作」で雨を降らせることによって、光を弱める
オロチの光を「心眼」での「見切り」で対応
「天候操作」で水鏡を召喚
ライトエクセリオンが発動する瞬間にUCの効果で距離を詰め、「斬撃波」を叩き込む
「この瞬間が勝負だ!」
てめえが暴れるなら、何度だって俺は立ちふさがってやるよ
そう言えば、頭に女の形のパーツがあったっけ
あれが「乗り手」
古代のルナエンプレスとかなのか?
御鏡・幸四郎
オロチウィークはいまだに語り草です。
また相まみえることになろうとは……
いえ、相手がオブリビオンである以上、
こういったことはこれからも続くのでしょう。
先制攻撃は全力で躱します。
オロチを視認したらサングラスを装着し減光。
風水盤を構え、自身の周囲に結界を張ります。
この結界は防御ではなく侵入を報せるセンサー。
ライトエクセリオンを発動する様子を見せたら目を閉じ集中。
物音、気配、結界、第六感をフル活用し、突撃の瞬間全力回避。
躱した瞬間詠唱銃を取り出しルークの駒を装填。
「共に駆けよ、ナイト!」
雑霊馬に跨りオロチを追撃。無防備な隙に角に連射を浴びせます。
かつてはあそこに乗り手がいた。角は重要な器官のはずです。
●決着は雨の中で
闇の領域の中で何かが自らを打つ。
光のオロチは頭を一度天に向けた後、その雨粒を他愛無しと見なし闇を飛んだ。
例え豪雨だろうが自らの光を遮ることなどできないのだから。
「オロチウィークはいまだに語り草です」
風水盤片手に御鏡・幸四郎(菓子職人は推理する・f35892)は過去を思い出す。
「また相まみえることになろうとは……」
その表情は一瞬だけ曇り。
「いえ、相手がオブリビオンである以上、こういったことはこれからも続くのでしょう」
そして決意がそれを吹き飛ばす。
猟兵になった以上、過去と戦うのは当然の事なのだから。
「ああ、そうだ。こいつのことは忘れもしねえ」
暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)が闇の向こうの見えるに輝きを睨み口を開く。
「決死隊位の気持ちでポジション結社クラッシャーのメンツと哨戒に当たってたとき見つけたんだからな」
過去にオロチを追う者は今もまたオロチを追う。
「今度もてめえに、暴れる時間なんざ与えねえよ」
そのために魎夜は戻ってきたのだ、猟兵となって。
二人は歩く、闇の中を。
二人は目指す、光の向こうを。
二人は手に取る、戦いにおいて自らを起動する一枚のカードを!
「てめえが出てきたならこっちも本番だぜ」
「そうですね、行きましょう」
――|起動《イグニッション》!――
封印を解除し、二人の能力者――いや、猟兵が闇を走った。
雨が……強くなった。
「くるぞ!」
「ええ」
雨の正体は魎夜の天候操作。
勿論、これだけでは光を減衰するには弱い。
嵐の王の言葉に応えた霊媒師もそれが分かっているからこそ、サングラスをかける。
グリモア猟兵は転ぶからお勧めしないと言っていたが、その場を動かなければ問題ない。
勿論、念には念を重ねるのが幸四郎のやり方。
風水盤を構え結界を張る。
守りの結界ではなく――侵入を報せる警報としての結界を。
二人が目を閉じる。
雨もサングラスも、全ては供え。
真の狙いは――視覚を捨て、別の感覚を鋭敏にさせる事。
幸四郎は結界のフィードバックを通じて物音を聞き取り、気配を感じ、五感の上をゆく感を以って回避し。
魎夜は結界の変調と妖獣兵器の殺意を心眼によって見切り、水鏡を作り上げ飛び込む。
猟兵が居た個所に闇が生まれ、そして――|一条の光が通り過ぎた《ライトエクセリオン》!
幸四郎が詠唱銃を抜き、中折れ式のシンプルな銃のラッチを解除すると機関部が折れ、薬室が露わになる。
そこへ装填する|チェスの駒《ゴーストピース》は|騎士《ナイト》。
「共に駆けよ、ナイト!」
現れるは雑霊馬。
跨りし駆けるはユーベルコード。
|雑霊乗騎《ゴースト・ライド》
宙を駆ける雑霊の馬により、超高速移動を行っているオロチに近づきガンナイフによる連射を叩き込むべく霊媒師は馬を急かす。
超威力にして超高速、そして防護破壊の一撃である以上、回避しても速度が弱まることは無い。
時間が開けば距離を開けられ、一撃ゆえの無防備な隙を狙えない。
だから――嵐の王は水鏡を使ったのだ。
鏡が道を作り、光のオロチの真正面に暗都・魎夜が現れた。
|鏡雨転身《ミラーロード》
「この瞬間が勝負だ!」
叩き込まれるは斬撃波。
オロチの動きが止まり、機が訪れる。
「――角を!」
幸四郎の言葉に魎夜が妖獣兵器の頭部へ視線を落とした。
――そう言えば、頭に女の形のパーツがあったっけ。
だが、今は角が一つあるのみ。
もし、そこに誰かが居たのなら、乗り手――古代のルナエンプレスなのかと嵐の王は思考し、だからこそ霊媒師は急所と睨む。
二人の視線が交錯し。
斬撃波と魔弾の連射が角へと一気に叩き込まれた。
空気の割れる音が響き、そして金属が折れて転がるような高い音が鳴った。
角を失った光のオロチは力を失ったかのように頭部から地面に墜落し、その身をアスファルトへ叩きつける。
大地が激しく揺れた。
それが妖獣兵器の最後の鼓動が如く小刻みにそして小さく、やがて消えていった……。
「てめえが暴れるなら、何度だって俺は立ちふさがってやるよ」
過去に光のオロチと相対した魎夜が消えゆく亡骸へと告げる。
それは能力者としての猟兵としての意志。
|過去の残滓《オブリビオン》となっても倒しつづける戦士の道。
幸四郎はその意志を心の中にしまい込み、銃を納めた。
ここに光のオロチは討たれた。
もう雨は止み、暗黒の領域は青空に塗りつぶされていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵