第二次聖杯戦争⑪〜光輝のライスメキア
●『伯爵領域』
正月三が日が終わりを告げても人々の営みは滞ることはない。
休む者がいれば、働く者もいるだろう。
一時も人の流れは途絶えることなく金沢駅周辺は人々の姿で溢れていた。バスターミナルも多くの人々の足となるべく次々と流れていく。
そんな日常を覆い尽くすように『闇の領域』が広がっていく。
しかし、その光景を人々は認識できない。
次々と倒れていく人々。
彼らは何も理解できていない。
何故、自分たちが倒れたのか。
それさえも認識できずに、彼らは闇に捕らわれていく。
そんな彼らの頭上を悠々と飛ぶのは二匹の竜。
もしも、此処に|かつての戦い《シルバーレイン》を知る者がいたのならば、心に恐怖という名の感情が湧き上がったことだろう。
古の妖獣兵器。
かつて日本を脅かした超巨大ゴースト『オロチ』。
そのうちの二体が『闇の領域』を舞う。
古代のルナエンプレスが龍脈を利用して造り出したゴースト兵器。
そして、嘗ての戦いでは『異形』によって超強化され、さらにオブリビオン化したことにより変質している。
煌めくは光。
漆黒の闇すら光に変える凄まじいひかりは、あらゆる者の目を焼くだろう。
名を『光のオロチ』。
それはあらゆるものを照らす光輝――。
●第二次聖杯戦争
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。新年を迎える暇もなく、シルバーレイン世界において『第二次聖杯戦争』が勃発いたしました。すでに多くの方々が戦いに臨んでおられることと思われますが……」
彼女が示したのはシルバーレイン世界の金沢駅である。
そこは広大な『闇の領域』に覆われている。
しかし、その内部で明滅するように二匹の巨大な竜の如き存在がうごめいているのが見えるだろう。
それこそが古の妖獣兵器にして、嘗て『異形』によって超強化され、今はオブリビオンと化した『オロチ』の一体である。
「この『闇の領域』に現れたのは二匹の『オロチ』と呼ばれる超巨大ゴーストです。すでにオブリビオン化しており、変質しておりますが、嘗て能力者の皆さんたちを苦しめた強敵であることには変わりありません」
ナイアルテが告げる。
その言葉は端的な事実であった。
どれだけオブリビオン化したとは言え、一体の『オロチ』……『光のオロチ』は猟兵たちに対して先制攻撃ユーベルコードを放つ。
それだけではなく、漆黒の闇すら光に変える凄まじい『超発光状態』によって猟兵達の視界は塗りつぶされてしまうだろう。
まばゆき光は闇と同じだ。
目がくらみ見えないか、光無く見えないかの違いでしか無い。
「ですが、能力者の方々の言葉によりますと、かの『光のオロチ』は『乗り手』が居ない為完全に力を発揮できる状態ではないようなのです」
とは言え、それでも十分すぎるほどの巨体とパワーである。
前述した『超発光状態』と『先制攻撃ユーベルコード』に対処しなければ、これに打ち勝つことはできないだろう。
「ですが、皆さんのユーベルコードは能力者の皆さんと比べて柔軟なものであるのです。ならば、其処にこそ勝機があると言っても過言ではないでしょう」
ナイアルテは、猟兵たちを送り出す。
嘗ての能力者たちと違うのは、力の在り方だけだ。
その胸に抱いた志は何も変わっていないはずだ。それだけが自分たちの戦う理由であるというのならば、あの死と隣り合わせの青春は、一欠片とて奪われていないのだ。
故に征こう。
心はすでにもう決まっているはずだ――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『第二次聖杯戦争』の戦争シナリオとなります。
シルバーレイン世界の神沢駅周辺に現れた広大な『闇の領域』。
そこに人々は捕らえられ、二匹の巨大なゴースト兵器『オロチ』のうち、二体が蠢いています。
今回戦うのは『光のオロチ』。
恐るべき力と巨体を持っていますが、『乗り手』が存在していないため、完全な力を発揮できていません。
とは言え、その『超発光状態』と『先制攻撃ユーベルコード』は脅威そのものです。
これに対処しなければ、到底勝利には届かないでしょう。
プレイングボーナス………敵の先制攻撃ユーベルコードに、何らかの手段で「超発光状態」を克服する事で対処する。
それでは『第二次聖杯戦争』、嘗ての強敵『オロチ』に立ち向かう、皆さんの死と隣合わせの青春の続き、その物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『光のオロチ』
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POW : ピュアネスホワイト
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【偽りの浄化をもたらす白き光】で包囲攻撃する。
SPD : ライトエクセリオン
【頭部の巨大角】を構えて【目にした者の視覚を奪う眩い光】を纏い、発動前後が無防備となる代わりに、超威力・超高速・防護破壊の一撃を放つ。
WIZ : トリプルブライト
【太陽の如き熱き光サンライトレッド】【静かに輝く青き炎シャイニングブルー】【心を惑わす紫光バイオレットイリュージョン】のいずれかを召喚して装着し、攻撃力・機動力・めくらまし力のいずれかを超強化できる。
イラスト:青柳アキラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん?
武器:漆黒風
とにかく眩しい上に先制攻撃ですかー…。いつも目をつぶってますが、厳しい相手ですね?
まあやることは変わりませんが。
強化に合わせて突撃してくるでしょうし…。
早業でクモの巣型に探知結界を展開、それによる知覚によって初撃を見切ってかわしましょう。
その後にUCを発動。ここはオブリビオンの存在を否定する…。
たとえどれだけ光ろうが、ここは故郷を模しつつも、そんな場所。
探知結界はそのままですから、位置を把握し、漆黒風を投擲しましょう。
乗り手が現れる前に。とっととご退場願いますね。
『光のオロチ』の発する光は、暗闇すら光に変える。
まぶたを閉じていようとも、その皮膚すら透過するように貫いてくる。
それを馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱である『疾き者』は実感していた。
常に細くまぶたを閉じているのだとしても、それでも厳しい相手であると言わざるを得ない。
それにあの巨体。
古のルナエンプレスが龍脈を用いて造り出したと言われるゴースト兵器。
その威容は、光と共に彼に力の差を知らしめることだろう。
太陽の如き光を解き放つ『光のオロチ』。
その光事態が熱を持ち、相対する者たちを約尽くさんばかりに遍く降り注ぐ。
「やることは変わりませんが……」
あの巨体での突撃。
加えて、その熱を帯びた光が万遍なく戦場に満ちるというのであれば、これを躱すことは殆ど不可能であろう。
故に『疾き者』は己の結界を張り巡らせる。
「天網恢恢疎にして漏らさず、とはいいますがー……」
薄く、細く、多くに広がるように戦場に解き放つ蜘蛛の巣と見紛うほどの結界。
それは探知するための結界であり、『光のオロチ』の突進を受け止めるためのものではない。
どちらにせよ、その突撃能力であれば結界は砕かれることだろう。
「ならば、薄く伸ばし、己より遠ざけた場所で位置を感知することこそが肝要でしてー……そして」
『疾き者』の細められた目がまばゆい光が満ちる戦場にあって、結界に触れた『光のオロチ』を感知する。
巨体の突撃はそれだけで自分を吹き飛ばし、すりつぶすだろう。
だからこそ、初撃を早く感知することは敵の攻勢を凌ぐのに必要なことなのだ。
薄く伸ばした糸が一瞬、強く張ったのを感知し、『疾き者』は『光のオロチ』の進行方向を見定める。
「速い上に大きい……そして、炎熱の如き光は躱すことなどできない……ならば」
突撃の一撃を躱しながら、『疾き者』は己の結界を、呪詛を焼く光に眉根をしかめるだろう。
だが、それでもいい。
初撃を凌ぐことこそが、今の自分にできることだ。
そして、彼の瞳がユーベルコードに輝く。
どれだけ『光のオロチ』が放つ『超発光状態』にあろうとも、そのかがやきは光輝の中に消えるものではない。
「灰になる……灰になれ……なってしまえ」
周囲に満ちるのは鉄さびに似た匂い。
視覚が真白に染められている戦場にあって、その匂いは嗅覚に猛烈に訴えることだろう。
『光のオロチ』に嗅覚があったのならば、その鼻先をひくつかせたことだろう。
だが、それを『疾き者』は見ることはない。
見る必要など無い。
すでに彼のユーベルコードは『闇の領域』を己の世界に置換している。
広がるは田園世界。
「如何にゴースト兵器でろうとオブリビオン化しているというのならば。それはこの世界の法則に違反しているということでしてー……」
四悪霊・『灰』(シアクリョウ・ハイ)。
それは彼の中の世界。
いや、彼の故郷を模した記憶の中の世界。
光満ちる世界ではない。憧憬と過去。
その過去の中にオブリビオンの存在は許されていない。
ならば、『疾き者』は黒塗りの棒手裏剣を構える。
「『乗り手』が現れる前に」
放つ棒手裏剣が旋風のように解き放たれ『光のオロチ』の体に打ち込まれていく。
咆哮を上げるは、苦悶のためか。
いずれにせよ、『疾き者』は頭を振る。
「とっととご退場願いますね――」
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
これが所謂うおっまぶしっ!
光が強過ぎるのも問題って事だね
それだけの巨体、別に見なくても気配は感じられるさ
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
両剣に『オーラ防御』でオーラを纏わせて強化
更に周囲に薄いオーラの盾を配置し、デコイ代わりに
目を瞑って自ら視覚を絶つ
あれだけの巨体だ、動くだけでも大事
羽ばたきの音、周囲の風を感じ取り最後は『第六感』で細かい距離を推測する
敵が角による一撃を放ってきたらデコイの割れるのを頼りに位置を特定し、『カウンター』で『なぎ払い』敵の一撃のコースを変えて直撃を避けよう
そして無防備になったところで【雷鳴・解放】起動
稲妻の斬撃を飛ばして攻撃!
光輝放つ白き巨体が『闇の領域』の中を泳ぐように飛ぶ。
その威容は、嘗ての戦いを知る者であれば、恐怖という感情を禁じえないだろう。
それほどまでに圧倒的な存在。
それが古の妖獣兵器『オロチ』。その一つである『光のオロチ』が放つ光は暗闇であろうと光に変える。
だが、猟兵はそれに恐れを為すことはない。
彼らにとって巨大な敵というものは、これまで幾度となく対峙してきたからである。
どれだけ光を放つのだとしても、結局の所それまでである。
「これが所謂『うおっまぶしっ!』」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)はこんな状況にあってもサブカルチャーを忘れることはなかった。
暗闇すら光に変えてしまうほどの光量。
『光のオロチ』の巨大な角が光を湛え始める。
圧倒的な力の奔流。
それを見えずとも玲は感じ取っていた。
嘶くような咆哮。
猟兵の一撃によって傷を負わされながらも、その巨体は健在。
「光が強すぎるってのも問題ってことだね」
何も見えない。
光がないから見えないのではない。光が強すぎるからこそ視界が塗りつぶされてしまう。
如何なる視界も白に染まるのならば、それは暗闇であることと変わりはない。
そして、『光のオロチ』のユーベルコードが光の角より放たれる。
その姿はあまりにも無防備であった。『超発光状態』であるがゆえに、無防備になることは意味を為さない。
如何に攻撃の前後が、猟兵にとっての攻勢のチャンスだとしても。
まばゆき光に視界を奪われては攻撃できず。
そして、攻撃の後には、その巨体による轢き潰しによって何も残らない。
「でもね。それだけの巨体、別に見えなくても気配は感じられるさ。デコイ!」
玲は瞳を閉じ、その手にした二刀の模造神器を抜き払う。
薄くまとわせたオーラ。
そして、広がる盾の如き力。それはデコイ。囮だった。
己の視覚は奪われようとも、絶つのだとしても関係ない。
確かに古のゴースト兵器の巨体は脅威だ。
逃げようとしても逃げられるものではない。巨大であるということは、それだけで矮躯たる者に恐怖を抱かせるには十分だ。
「なんの因果かはわからないけど、その翼……羽撃きの音……動くのなら風は生まれるし、その距離だってわかるってものだよ」
だから、と玲の瞳は開かない。
第六感とも言うべき感覚。
視覚という感覚が絶たれているというのならば、その距離を推し量るのは触覚。
空気の流れを肌で感じ、玲は空気を割く『光のオロチ』の巨体と彼我の距離を知る。
「大きければ、それだけ生まれる風も大きいってこと……! なら!」
音が聞こえる。
オーラの盾が砕かれる音。
その音を頼りに玲は二刀の模造神器を振るう。衝撃が腕に伝わる。軋む骨身。それでも振り抜く。
一閃は、瞬時に『光のオロチ』の巨体を横殴りにし、その突撃の進路をそらすのだ。
「ぐっ、う……! 雷の疑似UDC解放。我が身よ、稲妻となれ!」
雷鳴・解放(ライトニング・リリース)。
ユーベルコードによって発露するは疑似UDCの力。
玲の体に稲妻がまとわれ、その一瞬に彼女は懸ける。
稲妻を纏った斬撃が『光のオロチ』の巨体に一直線に刻まれる。
『光のオロチ』は、理解しただろうか。
光そのものと言っていい己を凌駕する速度。
空気の壁を貫く玲の速度は、その一振りが雷鳴の如き轟音を轟かせる。
「どれだけでかくてもね! 振るえば当たるってことは!」
むすの斬撃が稲妻を伴って『光のオロチ』の巨体を切り刻む。
龍鱗の如き光がほとばしり、玲は稲妻と共に『闇の領域』を己のユーベルコードの輝きで持って照らすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シズホ・トヒソズマ
あのオロチと関係あるんでしょうが
事情は後で関係者に聞けばいいので人々の為にもさっさと倒させて貰いますよ
からくり人形は◆早業で◆操縦
敵が無防備な攻撃前の間にバルからナノマシンを散布
機械により周囲の地形と存在を探知
バルから糸を通じ位置情報を私の脳へ直接伝達
これで目を閉じても奴の位置はわかります
後は引き付けてクロスリベルで強化した移動力と反応速度で突進を回避します
回避の隙にUC発動
光には闇の世界の力で!
ダークセイヴァーの力を使ってきた一の王笏カルロスグリードの力を使用
再び突撃してきたら紋章の力で体を闇の霧に変化
ダメージ無効と同時に闇の霧で触れた敵の生命力を奪います
弱った所に三日月の刃を連続発射
『光のオロチ』の頭部に備えられた巨大な角が煌めく。
それはユーベルコードの輝きであり、また同時に『超発光状態』である『光のオロチ』の力の発露の証明でも合った。
閃光の如き速さ。
回避も、防御も間に合わないと知らしめるかのような圧倒的な力。
その力の本流を猟兵たちは見ることができない。
まばゆい光は暗闇と同義。
視界を確保できていない状態で、『光のオロチ』の苛烈なる突進を躱すことなどできはしないのである。
痛みに喘ぐような咆哮が轟き『光のオロチ』は猟兵を睨めつける。
オブリビオンと猟兵は滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかない。
ならばこそ、『光のオロチ』に油断はない。しかし、その油断なくとも僅かな綻びを衝くのが猟兵という存在である。
「あのオロチと関係があるんでしょうが……事情は後で関係者に聞けばいいので、人々の為にもさっさと倒させてもらいますよ」
シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)は戦闘人形を手繰り、突撃の間際にナノマシンを散布し、周囲の地形と存在を感知する。
ナノマシンは霧状に揺らめいている。
大気の影響を受けるということは、何かが動いていることを察知することができるということだ。
このまばゆい光が満ちる戦場に在りて、大気のゆらぎというのは何かが動いていることを知らしめる情報の一つ。
故にシズホは散布したナノマシンによって周囲の状況を知る。
「揺らめいているということは、何かが動いているということ。そして、あれだけの巨体であれば当然、大気のゆらぎも大きくなるということ!」
視界は塗りつぶされている。
しかし、生命の埒外たる猟兵は、視界以外のもので動きを感知する事を『光のオロチ』は理解していただろうか。
どちらにせ、轢き潰してしまえばいい。
猛烈なる巨体の突進がシズホに迫る。
見えぬ状況の中での戦い。
だが、それがなんだというのだ。
「目を閉じていてもあなたの位置はもう解っています」
強化人形が走る。
『光のオロチ』の恐ろしさは、その視界を奪う力と巨体に寄る質量攻撃だ。
けれど、ナノマシン散布によってすでに位置は解っている。己に突進してくる速さも、その威力も推し量ることができる。
「なら、もう引きつけることだってできるってことですよ!」
強化人形が『クロスリベル』が翻り、『光のオロチ』の一撃を躱す。宙に舞うようにしてシズホが眼下に存在するであろう『光のオロチ』に顔を向ける。
見えない。
けれど、その巨体の威容は、ナノマシンの揺らぎによって完治している。
「光には闇の世界の力で! 人形が吸いし過去の影、我が身に宿り力となれ。応報を持って因果を制す!」
幻影装身(アームドオブリビオン・ミラージュ)。
己の身に宿るのは海洋の世界の王笏の力。
振るう王笏の力は、紋章の力によってシズホの体を闇の霧へと変化させ、『光のオロチ』の巨体に触れる。
それは生命吸収の力。
触れたものから生命というものを尽く奪い去る力。
先行した猟兵の一撃からあふれる光。それが『光のオロチ』の力の源であるというのならば、そこから魔力を吸い上げ、動きを鈍らせるのだ。
「さっさと終わらせましょう。過去を越え、現在の力にし、未来を切り開く! それが私たち猟兵というものです!」
放つ三日月の刃が『光のオロチ』の巨体に叩き込まれ、さらなる傷を負わせていく。
過去より連なるのが今なのならば。
未来へと紡いでいくのが今だ。
故にシズホの斬撃は、過去の化身へと変わり果てた、嘗ての戦いにおいて猛威を奮った『光のオロチ』へと叩き込まれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
あや~。
こちらの視覚を奪いつつの超高速の突撃でっすかー。
かわすのは大変でしょうが……それ、そちらもロックオンできてますかー?
自身の光にやられないにしても超高速の角突撃ともなれば。
あっという間に終わる以上、途中で細やかに向き調整もできないはず。
その巨体での面征圧で大まかに狙ってきたのでしょうがー、巨体だからこそ射角が1℃でも狂えば明後日の方向にぶっ飛びますよねー?
というわけで、藍ちゃんくん、歌と演奏、更には浮遊しての残像付きの踊りも加えてオロチさんを幻惑しちゃうのでっす!
鬼さんこちら、手のなる方へ、なのでっすよー!
誘惑&おびき寄せなのでっす!
後は幸運を祈るまで!
上手く行けば後は幕を下ろすのです!
猟兵達の放った斬撃が『超発光状態』にある『光のオロチ』の体を切り裂く。
『闇の領域』すら照らす輝きは視界を塗りつぶすほどであった。
過ぎたる光は視界を奪う。
「あや~」
紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は、あまりの光にまぶたを閉じるしかなかった。
まぶたを閉じても貫くような光が視神経を焼くようであった。
だが、それで終わりではない。
『光のオロチ』の角が輝きを増す。
ユーベルコード、と藍は理解しただろう。こちらの視界を奪った上での拘束突撃。突撃の前後が無防備になるのだとしても『超発光状態』であり、猟兵たちに先制攻撃する能力があるのならば、意味はない。
後は突撃して巨体を活かしてすりつぶせばいい。
「かわすのは大変でしょうが……」
藍は咆哮を上げながら己に突撃する巨体を見ることは叶わなかった。
見る必要はない。
また己の姿を隠す必要もない。
躱す必要だって無い。藍にとって、それはいずれもする必要のないことであった。
己は藍ドルである。
ならば、幻惑して見せるのが華というものであろう。
「その歌が足跡になる、その足跡が路になる!」
透き通る歌声に込めたのは無尽の|藍《愛》。
あらゆる物質を、光さえも妨げにしない声は『光のオロチ』に届くだろう。かの怪物に歌を解する心があるのかは関係ない。
あってもなくても、藍は歌うだけだ。
ステップを踏む。
振り付けをリズムよく刻む。
喉を張り上げる。
ただそれだけだ。ただそれだけで、残像を持って藍は戦場を舞う。
「鬼さんこちら、手のなる方へ、なのでっすよー!」
おびき寄せる。引き寄せる。藍にとって、これ以上無い天職であったのかもしれない。
『光のオロチ』の突進が迸る。
まるで稲妻か、それ以上。巨体の突進は凄まじい勢いで藍へと飛び込み、その体をすりつぶす。
歌は途切れ――ない。
まだ響いている。
凄まじい轟音が鳴り響いてもなお、歌は途絶えていない。『光のオロチ』は己の攻撃に手応えがないことを訝しんだかもしれない。
だがそれも無理なからぬことであった。
藍の歌声は、己に敵対する歌を愛さぬ精神をこそ打ち据える。
「その巨体の面制圧は驚異でっすがー! その大まかさが仇となったでっすねー!」
そう、己の幻影を『光のオロチ』はすりつぶした。僅かな差でしかなかったのかもしれない。
けれど、その僅かな差は巨体であるがゆえに修正不可能な明後日の方向へと飛び込んでいく。
如何なる暴力も歌を殺すことはできない。
人を殺すことはできるかもしれない。歌うものを根絶やしにすることはできるかもしれない。
「その存在の意味も。今日、幕を下ろすのでっす!」
けれど、歌が生まれたということ。
歌声が世界に響いたという事実は消え去ることはない。
故に藍は歌うのだ。
歌って、歌って、歌い続けて。
生きた証を世界に刻むように歌い、『光のオロチ』を翻弄し続けるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ヤーガリ・セサル
光というのは、もう少しあたたかで誰かの道を照らすような灯や太陽のようなものでなければですねえ。
まあ、そんな優しい光も、この体じゃ、素直に楽しめないですが。
故に、光には影を、三日たった油汚れよりしつこい闇を。
UC:影の精兵使用。9体同時に召喚術を使わせて、更に多くの影を、闇を、夜の帳を呼び出しましょう。
妖魔よ、亡霊よ、闇に属するものよきたれ。あなた方の属する闇は侵され、蹂躙されている。
どのような色を纏おうとも、多すぎる影は多すぎる光を飲み込むでしょう。
生死が共にあるように、投げかけられた光には影が出来る。偏ってしまっては、それは歪。
やり過ぎはいけない、ということです。
さあ、一斉攻撃の時間ですよ。
ヤーガリ・セサル(鼠喰らい・f36474)は思う。
いや、自嘲しているといったほうが正解であっただろうか。
己の身は戯れに変えられた。僧侶であった体は、吸血鬼へと変わる。手にした電脳魔術、そして契約した悪魔。
光というものが僧侶であった己にとって温かで誰かの道を照らすものであったと思う自分はこころに捨てきれずあれど、肉体は変わり果てた怪物。
『闇の領域』の暗闇すら光に変える『超発光状態』となった巨体、『光のオロチ』にヤーガリは不快感を顕にする。
「そう、光というのは、もう少しあたたかで誰かの道を照らすような灯や太陽のようなものでなければですねえ」
そうでなければならない。そうでなくてはならない。
そんな優しい光を己の肉体は喜ぶことができない。手を伸ばすことは出来ない。
事実はどうあれ、彼は未だそれを心の中から完全に捨てきる事ができないからこそ自嘲するのだ。
故に、光には影を。
「三日経った汚れよりしつこい闇を」
『光のオロチ』の咆哮が、その言葉を塗りつぶす。
視界を埋め尽くす光は、ヤーガリの眉根をしかめさせるには十分であった。
そして、同時に迫りくる太陽の灼熱の如き光は彼の肉体を焼く。
ジリジリとした痛みどころではない。
剣山の上に寝転されているかのような痛みが走る。耐えるしかない。それが、僧侶としての嘗ての己に備わった性質であったのならば、それもまた導きであったことだろうか。
それを考えるより早く、ヤーガリの手にした魔導書が羽撃くように頁をひとりでにめくる。
ぴたり、と止まる頁。
その頁に刻まれた文字列が宙に浮かび、形を変えていく。
それはうかれ騒ぐ影の従者にして、影の精兵(サモン・フラリック・シャドウ)。
「妖魔よ、亡霊よ、闇に属するものよきたれ。あなた方の属する闇は侵され、蹂躙されている」
ヤーガリの言葉と共に影の従者たちの鬨の声如き咆哮が轟く。
光満ちる『闇の領域』に在りて、彼らは一気呵成に『光のオロチ』の巨体へと飛びかかる。
暗闇すらも光に変えうる強烈な輝き。
「どのような色を纏おうとも、多すぎる影は多すぎる光を飲み込むでしょう」
ヤーガリの言葉は静かなものだった。
手にした魔導書の頁がめくられる度に、影の従者たちが飛び出していく。それは強烈な光が濃密な影を生み出すのと同じであったことだろう。
「生者が共にあるように、投げかけられた光には影ができる。偏ってしまっては、それは歪」
ヤーガリは静かに立つ。
如何に強烈なる太陽の如き光が彼の体を焼くのだとしても、この場から離れることは出来ない。
此処には、この『闇の領域』には多くの人々が囚われている。
膨大な魔力の発露は、オブリビオンさえも支配下に引きずり込む。
ならばこそ、それはバランスを欠くことであるとヤーガリは思うのだ。
「やりすぎはいけない、ということです」
さあ、とヤーガリは手を上げる。
ユーベルコードによって呼び出した影の従者たちは、さらに多くの影を、闇を、夜の帳を呼び出し、埋め尽くしていく。
暗闇すら光に変えるのならば、それを覆うのが己のユーベルコードであるとヤーガリは掲げた指先を『光のオロチ』へと突きつける。
「さあ、一斉攻撃の時間ですよ」
示す先にある巨体に召喚された影の従者たちが一斉に襲いかかり、光を食いつぶさんばかりに埋め尽くしていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
空桐・清導
【POW】
アドリブや連携も大歓迎だ
「見ている人間の目を潰すなんて危険な光だな!
その光輝は此処で止めさせて貰う!」
全身に[オーラ防御]と光焔を纏い、
放たれる白き光を[気合い]で回避
受けてしまったものはオーラで防ぐ
「光はお前の専売特許じゃない!
ちょうどコッチも目が慣れてきたぜ!」
清導が光焔を纏っていたのはこのためだ
己が超発光状態すらも上回る光を纏えば、
目も慣れてオロチの姿も見えるようになる!
「お前に見せてやる!本当の光ってのはこういうものだ!」
UCを発動させて巨大な光の巨人となる
腕をクロスさせて周囲の光を吸収
超発光すら取り込んだエネルギーを右腕に集中
圧倒的な光線としてオロチの巨体へと叩き込む!
光輝たる光景は人間の視神経を焼き切るほどであった。
それほどまでに『光のオロチ』が解き放つ『超発光状態』は脅威であった。強すぎる光は、暗闇と同義である。
光無くば色を喪う。
しかし、強すぎる光は、あらゆるものを塗りつぶす。
「見ている人間の目を潰すなんて危険な光だな!」
空桐・清導(ブレイザイン・f28542)はしかし、それでもなお戦場に飛び込む。
己の機械鎧より噴出する光焔を纏い、放たれ続ける光を躱す。
いや、躱すことは難しかっただろう。
幾度かの攻勢を凌ぐことができたのだとしても、それでもなお迫る光の放出は清導の体をしたたかに打ち据え、大地に叩きつける。
痛みが走る。
肉体が焼けるような痛みが常に己を試すようであった。
「その光輝は此処で止めさせて貰う!」
幾度叩きのめされたとしても、清導は、ブレイザインは諦めない。
終わることなど許されない。
ここで己が膝を折ってしまっては、犠牲になる人々の数は知れない。それほどまでに古の妖獣兵器である『オロチ』は危険な存在なのだ。
立ち上がる清導の瞳は未だ光を払拭できていない。
だが、それでもなお、機械鎧から噴出する光炎は止まらない。
「光はお前の専売特許じゃない!」
満ちる光炎がオーラへと変わっていく。
その色は白銀から黄金へと移り変わり、清導の体を覆って巨大化していく。
「オレの魂からあふれ出る光をオーラに変えて!! いくぜ! 究極変身!(ウルティメイト・セイドー)」
咆哮は痛みを超える気合そのものであったことだろう。
その黄金は『超発光状態』に迫る勢いで放たれ、その光の後に現れるのは黄金のオーラで形作られた巨人としての力。
己の体を覆うオーラは、己の能力を超強化し、その光と共に『光のオロチ』の巨体へと飛びかかる。
「お前に見せてやる! 本当の光ってのはこういうものだ!」
迫る『光のオロチ』の頭部を拳で叩きのめし、蹴り飛ばす。
吹き飛ぶ巨体を見据える。
光は未だ清導の視界を塗りつぶしている。
だが、あの巨体での突撃のおかげで己は『光のオロチ』へと攻撃を叩き込むことができた。
「今だ!」
黄金のオーラで形作られた巨人の腕が交錯する。
ユーベルコードの輝き満ちる光が交差した腕の中心に集中されていく。
「くらえ!!」
放たれる光線。
それは『超発光状態』の『光のオロチ』すらも圧倒するかのような一撃となって、その巨体に叩き込まれる。
膨れ上がったエネルギーは『光のオロチ』の巨体を穿ち、苦悶の咆哮が『闇の領域』にて走り抜ける。
暗闇すら光に変える輝き。
その最中で清導は、己の渾身をもって、これを叩き込むのだ。
痛みは忘れる。
この一撃はきっと、誰かの戦いをつなぐためのものだ。
ならばこそ、この黄金のオーラを標に強大な敵を倒す楔となすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
光の勇者にに光で対抗とは……!
って、ステラさん?
なんでここで宇宙メイド面なんですか!?
まったくもー!
なら見ててください!
さ、ルクスちゃん、どうすればいいかな?
わたしが演奏すればいい?
なるほど光の波動でオロチを圧倒するんですね!
それでは!
と【ルジェッリ】をわたしの全身全霊を込めて演奏です!
って、あれ……?
なんでオロチの光が相殺されていってるんですか?
どこかから闇の波動がでてるみたいなんですけど、
わたしの光の波動も退けるなんて、すごい力です……!
これではわたしの演奏より、
ステラさんの闇を全開にした方がよさそうですね!
さぁステラさん、エイルさんへの愛を見せてください!
……ステラさん?
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
……(開幕宇宙メイド顔
いえ、この世にも正せないものがあるんだなと
っと
最近の戦争はスケールが大きすぎて|一《いち》メイドには荷が重すぎます
フォル!いらっしゃい!(鳥型キャバリアを呼び寄せる
ルクス様、フォルの高速機動でオロチをやり過ごします
その間に対策を
フォル、【テンペスタース・クリス】です!
風の盾で突撃しつつ、敵の攻撃を蹴散らしますよ!
後はルクス様が…アッハイ(無表情で『対ルクス・レゾナンスイヤープラグ』装備
ええ、結界に浄化とオーラ防御を追加したこの耳栓ならしのげるはず!
え?何か言いました?
しまった!耳栓をしていることがバレた!
ええい離して、私はエイル様に会うまで死ねないんです!!
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は思った。
色んなことがあったのだ。
猟兵になってからというもの、様々な経験をしてきた。
多くを知り、多くを見て、多くを得た。
けれど、やっぱり、とも思うのだ。
「光の勇者に光で対抗とは……!」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は意気揚々としていた。
光が満ちる『闇の領域』。
暗闇すら光に変えてしまう『光のオロチ』の『超発光状態』は脅威そのものであった。
けれど、勇者としてルクスは立ち向わずにはいられない。
ここで退いてしまっては金沢駅周辺で捕らわれた人々を救い出すことができないからだ。
「……」
しかしステラはずっと宇宙メイド顔のままであった。
なんというか、こう、どうしようもないことと戦わされている気がしないでもない。
「って、ステラさん? なんでここで宇宙メイド顔なんですか!?」
「いえ、この世にも正せないものがあるんだなと」
「何を!?」
「いえ、別に。それはそうと最近の戦争はスケールが大きすぎて|一《いち》メイドには荷が重すぎます」
「あ! ごまかした! なんですか! なんでですか!? その顔!?」
「フォル! いらっしゃい!」
ルクスの追求を躱すようにステラは鳥型キャバリアの『フォルティス・フォルトゥーナ』を呼び寄せる。
大翼を羽撃かせるキャバリアにステラは乗り込み、ルクスもと促す。
「いいですから。そういうのは。ルクス様、フォルの高速機動でオロチをやり過ごします。その間に対策を」
「ごまかした! ごまかしましたよね!?」
はよして、とステラがルクスを鳥型キャバリアの複座コクピットの中に引きずり込む。
「まったくもー! なら見ててください!」
勇者の特権(ユウシャノトッケン)とはこういう時に現れるものである。
ルクスは眼前に現れた『魔法使いの弟子』としてのルクスと『光の勇者』としてのルクスに相談するのだ。
この状況を如何にして乗り切るべきなのか。
どうすれば、あの『超発光状態』の『光のオロチ』に打撃を与えられるのか。
「どうすればいいかな?」
「常識的に考えてサングラスでは? 遮光機能使うとかですかね?」
至極まっとうな『魔法使いの弟子』ルクスちゃん。だが、常識的過ぎてなんか物足りない。
そんな『魔法使いの弟子』としてのルクスとは対極なのが『光の勇者』ルクスちゃんである。
「演奏です! こういう時こそ演奏してしまわなければ! 光の波動でオロチを圧倒しちゃいましょう!」
そんな会話が背後で行われていながら、ステラはユーベルコードによって己の機体を風の盾でもって覆いながら『光のオロチ』の攻勢を耐えしのぐ。
速度こそ、飛翔することにおいて『フォルティス・フォルトゥーナ』は圧倒的な機動力を有していた。
けれど、それでも先制してくる『光のオロチ』の攻勢は苛烈を極めたのだ。
ステラと『フォルティス・フォルトゥーナ』の操縦技術と機体性能がなければ『光のオロチ』の質量突撃によって今頃は大地に失墜していたことだろう。
「なんだか今聞き捨てならない言葉が聞こえたような気がするのですが!」
「はい! それではわたしの全身全霊を込めて演奏しますよ!」
あわわ、やばい。
ステラは慌てて『対ルクス・レゾナンスイヤープラグ』を装着する。
背後という至近距離で演奏されては溜まったものではないからだ。耳がまずいことになってしまう。
さらに結界と浄化とオーラを追加する。
どれだけ背後で演奏していても、これだけのバフを重ねれば、如何なルクスの演奏と言えど防げるはずであった。
「じゃあ、いきますよー!」
ルクスはノリノリである。
構えたヴァイオリンが奏でるは不協和音。
ものすごい音であった。旋律と呼ぶにはあまりにも荒々しいものであったし、音がささくれていると言われたのならば、多分そうなのだろうと頷いてしまうほどの不協和音。
ものすごい音が響き渡り、光の波動……なのか? それが『光のオロチ』より発せられる『超発光状態』の光を中和していく。
しかし、ルクスは首をかしげる。
なんか光の波動よりも闇の波動がこれを削っているように思えたのだ。
どこから?
「……? この闇の波動なんです? わたしの演奏が中和されているようなんですけど……」
すごい力である。
自らが発する光の波動よりも強い力。
これを『光のオロチ』にぶつけたほうが早いのではないかと思ったのだ。
「これ……ステラさん?」
ああ、とルクスは気がつく。これはきっとステラの『主人様』への想い故であろうと思っただ。
「さぁ、ステラさん、『エイル』さんへの愛を見せてください!」
「……」
だが、反応がない。
ステラは何も聞こえていないようであった。
「ステラさん?」
別の意味でルクスの瞳からハイライトが消える。闇の波動ってそこからじゃない?
「え?なにかいいました?」
あ、やべ、とステラは思った。
耳栓していることがバレる言葉であった。
「ステラさん?」
なんかズモモモって音がする顔が背後からステラの肩に乗せられている。そこに飛ぶこんでくる『光のオロチ』の突進を『フォルティス・フォルトゥーナ』が既のところで躱す。
そのコクピットの中では、ステラの叫びがほとばしっていた。
「ええい離して、私は『エイル』様に会うまで死ねないんです!!」
その叫びは痛烈にして悲痛。
響く旋律は不協和音。がなりたてるような音は、きっとルクスの怒りの叫び。
それは奇しくも『光のオロチ』を困惑させるには十分であった――。
大成功
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酒井森・興和
オロチか…もうあの巨大さは天災とやり合うようなものだな
しかも視界を奪われる
アレの先制をやり過ごし且つ一矢報いるには敵の動きを把握しなければ
アレの射程圏は広そうだが…
遮蔽物かつ身を隠せる建物や乗り物の陰に潜み【集中力】を高める為三砂を地に刺しソレを中心にユーベルコードを展開
【気配感知】も活用する
音、気配、風向き、敵の身構える所作から、敵位置と行動状態を掴む
今回、防御に意味はない
食らえば死ぬしかないしねえ
初擊を躱すことと直後の反撃に注力
ソレを躱せたらヤツの無防備な隙を逃さず即【カウンターで咄嗟の一撃】【怪力、重量攻撃、対空戦闘】で三砂を投げ付け一撃入れる、続いて逆鱗を【追撃、投擲、毒使い】撃ち込む
嘗て銀誓館学園の能力者たちは『オロチ』と戦いを繰り広げた。
その戦いの記憶があるのならば、それは恐怖を呼び覚ますものであったのかもしれない。
金沢駅周辺に満ちる暗闇すらも光に変えるほどの『超発光状態』に至る『光のオロチ』の姿は、直視に耐えるものではなかった。
「オロチか……もうあの巨大さは天災とやり合うようなものだな」
酒井森・興和(朱纏・f37018)の言葉は何処か諦観を思わせるものであったかもしれない。しかし、それは絶望による諦観ではなかった。
諦めることを諦めた諦観の色。
視界が奪われるほどの光放つ巨体を間近にしながら、それでも興和はためらうことなく
戦場に飛び込む。
この光満ちる戦場にあってなお猟兵のユーベルコードは煌めき続けている。
己と同じく諦めぬ者がいるのだ。
かつての戦いと同じように、誰かのために戦う者が隣りにいるのならば、興和は諦観に塗れることは決して無いだろう。
「先制攻撃をやり過ごし且つ一矢報いる……いや、討ち果たすためには」
手にしたツルハシ状の方天戟を地面に叩き込み、糸の伝え(イトノツタエ)によって周囲の状況を知る。
どれだけ『超発光状態』でもって視界を塗りつぶされるのだとしても、所詮は五感がうちの一つを奪われただけだ。
興和に残された感覚は触覚も、聴覚も、嗅覚も残されている。
ならば、何一つ諦めることはない。
『光のオロチ』の角がユーベルコードに輝きを満たし、消耗しながらもなお興和を葬り去らんと、その巨体を持ってすり潰さんと空を飛ぶ。
「音、気配、風向き、所作……なるほどな。食らえば死ぬしかない」
だが、諦めはすでに遠く。
興和の瞳はふせられたまま、伝わる震動を敏感に感じ取っていた。
五感がうちの一つを封ぜられたというのならば、五感を超えた感覚……即ち第六感でもって興和は『光のオロチ』の突撃を読み切る。
初撃はなんとしても躱さなければならない。
小さき身である己。
確かに『光のオロチ』からすれば、羽虫のようなものだろう。
だが、この身にあってもできることはあるのだ。
それを知っているからこそ、己は戦い続けてきたのだ。誰かを守るために。誰かのために。いつだって己の心の中にあるのはそうしたことだ。
だからこそ、興和は光満ちる戦場にあって、その瞳ではなく己の第六感をこそ信じ、ユーベルコードの煌めきの中、突撃してくる『光のオロチ』の一撃を躱す。
轟轟と音が耳朶を打つ。
興和は瞳を閉じたまま、己の頬を撫でる衝撃波を感じ取るだろう。
頭が揺れる。
一撃は躱せた。
けれど、それは致命の一撃を躱したということに過ぎない。突撃の衝撃波が体を打つ。痛みが走る。
「痛みがあるということは僕が生きているということ! ならば!」
衝撃波に煽られるようにして体が宙を舞う。
己の体が宙にあるということは、再び『光のオロチ』が己めがけて突進してくるということ。
ならば、と手にした方天戟の柄を握りしめる。
己を喰らわんとするか。
それとも吹き飛ばそうとするのか。
巨大なる角でもって貫くのか。
「どうだっていい、そんなことは」
かの『光のオロチ』のユーベルコードは前後が無防備になる。初撃を躱し、致命を退けたのならば。
「其処だな」
これまで他の猟兵達のユーベルコードによって消耗し、その光の鱗を引き剥がされ続けてきた『光のオロチ』。
紡いだ戦いの軌跡が此処にある。
ならばこそ、手にした方天戟の一撃を興和は投げ、放つ。
閃光のように投擲された一撃は、『光のオロチ』の巨体の一点を捉え、貫き穿つ。
咆哮が聞こえる。
大地に降り立った興和はゆっくりと瞳を開けるだろう。
そこにあったのは、暗闇の黒でもなく。光輝の白でもなく。
そして、銀の雨振る空でもなく。
「青空―――」
大成功
🔵🔵🔵