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第二次聖杯戦争⑥〜サンサーラ

作者：にゃあら

●ブレイン・シェイク
　この地を未だ汚染する生命共に、思い知らせてやろう。
　過去と死は、既に確定したものであるが故に、絶対の概念である。
　故に、我らオブリビオンこそが、この世界の真なる主であると。

　ブォォォン。
　ブオオオン。
　名状し難いノイズ、即ち『艱難』の科白をブチ破ったのは爆速で過ぎ去っていくジェットコースターであった。無理矢理乗せられた一般人は悲鳴を上げる事も出来ず、ただ、只管に滅茶苦茶とされている。諸君、あっちは爆速で回転しているコーヒーカップだ。拘束具をつけられた一般人が七色の輝きに揉まれている。そっちに聳えているのは観覧車だろうか。まったく面白さの欠片も無い速度ではないか。いや、徐々に徐々に増してはいないか。因みに、ゴンドラが止まる気配など――ここは｜悪夢遊園地《ナイトメアランド》、艱難辛苦が齎される一種の｜混沌《トンチキ》であった。

●グリモアベース
「コーヒーカップの時間だオラァ！！！」
　クソデカボイスかつハイテンションなグリモア猟兵、隣人の歓喜が場を支配する。初めて見た猟兵は驚くだろうが、諦めてほしい、これが正常だ。
「いやぁ隣人ちゃんとしては是非行ってみたい予知だったんですけどねぇ。これ『艱難』って謂う｜九大災厄だったもの《オブリビオン》の所業らしいんですよ。なんでも苦難と苦痛のビジョンが具現化したとかなんとか。で、この無限にアトラクションに乗らされる爆速極めた沙汰ってワケですねぇ。このままだと一般人発狂死してゆりゆりな生贄にされちまいます。まあ猟兵なら一般人助けつつ脱出出来るっしょ。因みに『ちゃんと一周は乗ってくださいね』。あと苦難って事なので確実に眩暈と嘔気にやられます。頑張って耐えてくださいね🌀　じゃああとはレッツゴー！！！」
　グリモアが輝いて。

第1章 冒険 『アミューズメントパーク　オブ　バグ』

POW   :    爆速ジェットコースターにしがみつけ！ SPD   :    爆速コーヒーカップで三半規管の限界に挑戦だ！ WIZ   :    おもんな観覧車行こう。スピード的には一番マシだ。 👑7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

　あれは鳥だろうか。気球だろうか。
　或いは未確認飛行物体か。
　最後のひとつには当て嵌まるかもしれない。
　迫力満点な轟音を吐き散らかしながら、爆速、ジェットコースターが奔る。
　永遠を思わせる上下運動、回転はギネス世界記録も真っ青な虹色の彼方への片道切符だろう。

　あれはミキサーだろうか。クネプフェだろうか。
　或いはぐるぐるバッターの起こした竜巻か。
　最後のひとつには当て嵌まるかもしれない。
　滅茶苦茶な速度で回転するサマは正しく三半規管崩壊ダイエットに向いている。
　無限とも考えるエネルギーを生みながら、コーヒーカップ、虹色の彼方への導と謂えよう。

　観覧車が一周した。だいたい数十秒で。

　此処は悪夢の遊園地、艱難辛苦の具現化、冒涜的なビジョン。
　一般人の｜🌈《ゲロ》がふってくる。
　どうしてこうなった。


　宙を往くのは果たして彗星だったのかキャバリアだったのか、地上の人々が観測出来ない話は置いておいて着地したオマエ、宝石めいた青々で遊園地のような悪夢を認める。ああ、これは凄い。人体の限界に挑戦するような過酷さ、いや、人体の限界を突破して尚、続く厄災とでも表現すべきだろうか。これも一つのアトラクションの形なのですね。真面目が過ぎるのではないか、と、オマエの横を走って往ったのはマスコット・キャラクターだろうか。艱難めいた存在をデフォルメしている。しかし――一般の方々には少々荷が重い様子です。少々ではない、オマエの足元には汚いものが散乱している。踏まないように気を付けないといけませんね。先ず向かったのはコーヒーカップ、これでは洗濯機だ。
　ところでオマエは如何して十体になったのか、と、艱難辛苦の思念が語り掛けてくる。勿論、一刻も早く助けてあげる為です。分身が救出に行き私がコーヒーになる、実に効率的な作戦でしょう。重ねて私は宇宙を旅するパイロットです。彗星だろうと何だろうとこのタールな三半規管は崩れない事でしょう。どんどんと積み上がっていくフラグ、山としか形容出来ない――ハンドルを回す必要はないでしょうか？　ガコン、通常のコーヒーカップでは在り得ない｜拘束具《安全装置》……。
　余裕で攻略してみせます、さあ、回しなさい。
　変身出来ない体質のオマエだが裏を返せば緻密に、巧妙に、人間の｜貌《からだ》を再現しているとも考えられた。そうで在れば、成程、ブラックタールが目を回すのも納得出来る。洗濯機に放り込まれたぬいぐるみよろしくレッツ・ゴー・サイクロンな状態だ。既に後悔している。あとの祭りだ。どうにか拘束具をほどき地面へととけだす。
　う……うぅ……気持ち悪い。
　艶やかな｜灰色《髪》は乱れに乱れ勝手気儘な振盪とお友達か。なんとも言えない頭の痛さと遡ってくる酸味――ぐるぐるな世界の中で一般人の姿を確認し――そのまま｜分身《倍加》、キラキラの海に沈む。

成功 🔵​🔵​🔴​

　ガムシロップが透明な所以はきっと自らが、ちゃんと、黒や茶に溶ける為だと考えられた。じんわりと伝わる珈琲、或いは紅茶のぬくもりに自我諸共と失せるような感覚か。滅裂な思考をようやく現実に引き戻したところでループしているコースター。成程、地面が汚れないようにする為の無意味な配慮、ナンセンスな布切れ一枚――正気よりまず三半規管が壊れてしまいそうな場所ですね……？　ぞくりと下腹部を擽られるような、如何にも焦がれる熱っぽさの沙汰。こ、こういうのも興味が――いえ、ありません。艱難辛苦が頭をもたげ胡乱に対して溜息を漏らす。ありませんったらありません！！！　いやらしい事なんかほんのこれっぽちも無いのだと猟兵、これだから埒外は、生命と謂うものは……。
　と、ともあれ。兎にも角にも先ずは一般人の救出が最優先だ。意識が飛んでいる人も在るらしく、しかし、遠目からは誰が危ういか判断し難い。集合場所をひとつにしてタイミング良く跳ねていけ。ジェットコースターの入口出口を反復だ。嗚呼、白っぽい銀なオマエはまるで兎、なんだか寂しそうに視えるのは気の所為だろうか――観覧車については蟲達に任せるのが賢明か。うぞうぞと輝く鱗が如何にも｜隠語《※※》と思えてならない――段々目が回ってきます。いえ、まだ休んではいられません。次です、次……。
　アリスラビリンスのトンチキな｜小世界《パーティ》に巻き込まれたのか、コーヒーカップ、あらゆる絵柄も最早知れない。一般人の輪郭すら判別出来ないとはどれほどの速度なのだろうか。ええい、ままよ――一般人を押し退けて座席にちょこん。
　……ちょこん？　がこんと無慈悲な｜拘束具《安全装置》が下りる。うっかり脱出し損ねました！？　それでは狂ったお茶会へご招待、途中退席は認められません――ぐるぐるぐるぐる――。
　あ、あぁ……脳味噌がシェイクされます。目が回って、もう、なにがなにやら三半規管が――こ、こみ上げて……。
　｜🌈《しばらくお待ちください》。

　何分経ったのか何時間経ったのか、いや、数週間ほど回されていた気もする。蛞蝓めいた格好でぐじゅぐじゅと痛む頭を抱え、まわる……ああ、謎の解放感……も、もういっかいぃ……？

成功 🔵​🔵​🔴​

　グロッキー状態な先の猟兵追い越して、到着したのはドリームランド。回転木馬が逃げ出して妙な翼を生やしたならば、嗚々、見給え。外宇宙へとサヨウナラだ。
　ここシルバーレインじゃなかったっけ？
　まあいいや。
　慣れてしまえば楽な事でも『猿も木から落ちる』だ、油断は大敵で在り軸を定めなければ成らない。ああ、キラキラの時間だ。虹色の彼方に鎮座している勝利の旗を、果たして、オマエは掴む事が出来るのだろうか。よっしゃ爆速コーヒーカップでぐるぐるきらきらするっぽい！　のほほんの極意此処に至れり、でも、ふつーに考えたらヤバいよね。でも欲々浅瀬に潜ってほしい。熟達の忍であればぎゅるぎゅるなティーパーティも経験済み。セルフでもセルフじゃなくても貪食した記憶がある――されど此処は悪夢ではないか。本当に今までの耐性が効果的なのかは判断し難い。いや、そもそも、僕らが求めているぐるぐるとはこういうものだったか？　この程度の所業で在ったのか。こたえは否、悉く、否。するりとカップに乗り込んでぎゅうとハンドルを握り締める――加速を！　回転を！　圧倒的で絶対的なぐるぐるを！！！　ひよってるやついる？　い　ね　ー　よ　な　っ　！
　つまり武士道とは死に往く事、渦の中心で悦びを見つける。
　ぐるぐるに身を委ね🌈へと飛び込むのです。
　えっ？　一般人の救助？　まあたぶん何とかなるっぽい！　へーきへーき。僕が全力で回転する事により世界が縮小しひとつに成るっぽい！
　そうなった。
　這い出る悪鬼羅刹のぐでんぐでんになった脳味噌がどっかのメイドの輪郭を映している。これでハッピー・エンドに近づけたはず。あとは任せるだけっぽい……。

成功 🔵​🔵​🔴​

　深海へと呑まれていった誰かの影を想起する。艱難辛苦としては其方を具現化すべきだったが、嗚呼、度し難い哉、この銀色の雨はトンチキだ……。
　やればできる。DIY！
　やればできる。なんとかなる。
　｜大渦巻き《メイルシュトローム》はある種、オマエにとっての大敵と呼べるものだ。天へと昇っていくレールの、堂々巡りな、めちゃくちゃひねりはトラウマ量産機としか言いようがない。でも、逆に考えてみたならば如何だ。別に🌈ってしまってもいいやって思うと如何だろう。まるで真っ白或いは真っ黒なリバーシブルだ。よし、ここはジェットコースターで逝こう！　なんだか漢字が違う気もするが正気になったら負けだ。C式ガジェット侍らせてそのまま眠れる力を呼び起こせ――頑張れ頑張れ耐えろ耐えろ私ここで諦めたらゆりゆりの生贄が増えてゲームセット――ついでに自慢のガジェットもオーラでギラギラだ。いや、キラキラじゃなくて良かった本当に……乗りながら誰かを助けるなんて無理だｙ……ぎゅるんぎゅるん。小さなループと共に言葉が失せる。物理法則おかしくないかい？
　行け！　Ｃ式！　今度こそ『行け』だ。吸盤を使い器用に一般人を救い、掬い取る貌はまさしく這い寄るメシア。それとフライング・シュリンプは彼等の援護！　海老が宙を飛ぶなんて妙な話ではないか？　それはコインです。なら問題ない。
　🌈塗れの一般人を地面に降ろしたところで、さあ、あとは攻略するだけだ。何か月かの空の旅を楽しみつつも――うっぷす――体内、つまりは胃の不快感を味わう。脳味噌その他あらゆる臓腑が嵐に巻き込まれたかの……オマエは十分に輝けている。
　――ああ、君、袋にうまく入れる事が出来そうにないよ。
　地に足がつかない。

成功 🔵​🔵​🔴​

　病み憑きになってしまった誰かさんの背中を追って、嗚呼、新米女神は回転地獄へ墜ちていく。堕ちてしまった誰かさんの汚物をなぞって、嗚呼、変身ヒロインはゲロインへの道を転がっていく。此処が何処で私が何なのか、そんな問答は置き去りにしてのコーヒーカップ。お茶はいかがですか？　ありがとう。今日からあなたがお茶になってください。わかったよ。催眠的な何か、或いは艱難齎すギャグ・センス――お菓子はきっとロールケーキだ。生地に巻かれる感覚も悪くはない――これだから生命は。これだから人間は……。
　末席とはいえ、これでも神なのよ、なんて決め台詞を叩き付けたところで｜拘束具《安全装置》が作動する。さっきまでぎゅうぎゅう詰めだったカップの中、今では結局誰かさんとの二人きりだ。何故かって……？　一般人は全員押し退けた。いとしいあなたとのめちゃくちゃな回転、想えば想うほどに素敵ではないか。なんだか楽しくなってきた。
　目の前の誰かさんは蒼白と薄赤混じった貌で、オマエを視ているのか視ていないのか、ブレている状況だった。欲しがりな様子を感じ取ったオマエは｜禁忌《ハンドル》に手を添える――じゃあ、回すわよ。準備はいいわね？
　くるくるは秒でぐるぐるになり、ぐるぐるは秒でギュルギュルになる。なめらかに、激しく、若干傾いてくるカップは酔いを加速させる原因だろう。お互いの顔は判別出来るが、脳味噌の撹拌が所以で思考と謂う術をなくしていく。ああ、目が回るわ。艱難辛苦は神の力の所為で僥倖へと陥った、ムカムカする臓腑、停滞したとして🌈が待っている。
　金色がぐっしゃりと乱れている、青色がぷるぷると震えている。
　も、もういっかい乗るの？　まだ？　仕方ないわね？
　――物好きな人よね。

成功 🔵​🔵​🔴​

　地獄への道は善意で均されているのだ、と、何処かのお偉いさんが微笑していた。その隣では襤褸布纏った奴隷が希望など存在しないと喚いている。足掻いても藻掻いても浮かび上がる、艱難辛苦、マイナスから落ちたビジョンはその絶対性を誇示していた。アトラクション、ジェットコースター、これがこの世界の文化ですか……びゅんと通り過ぎて行った機体を眺めつつ言の葉を漏らす。控えめに見て地獄ですね。ゴンドラレースを懐かしみつつ身構えて次の機体を待つ――今。タイミングを見極め如何にか座席に腰下ろした。
　宙ぶらりんだ。レールの先々を確認する事すら赦されない、逸脱とした速度と解せよう。いや、之でも僕とて相応に慣れてます。舌を噛まないように唾をごくり。如何にか一般人を救出しようとオーラを巡らせる。負けませんっ！　たとえ頭がぐるぐるしていようとも、上下左右がぐるぐるしていようとも、伸ばした手だけは何が有っても離しませんっ！　途中のループやきりもみ、ひねりの際は動けなかったがカーブや落下でなんとか保護。飛び出した先は中央の広場であった――。
　これで一般人全員を救出出来たようだ。ああ、これが普通のジェットコースターであれば、娯楽レベルなら、少なくともマシだったかもしれない。今度、平和になったら乗ってみるのも愉しいだろう。ただ、このバグが永久なので在れば。
　破壊したほうがいい気はしま……。
　めまいに続いてやってくる強烈な不快感。熱っぽさと酸っぱい臭い。倒れかけの身体。な、流し場……流し場をっ……！　オマエは運よくこらえる事が出来た。
　お花畑が視える。頭からつっこんだ。

　苦難と苦痛のビジョンは収まり、ついでに猟兵達も治まった。
　戦争は始まったばかりである。

成功 🔵​🔵​🔴​

最終結果：成功 完成日:2023年01月04日