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銀河帝国攻略戦⑳~不撓の在処

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #白騎士ディアブロ

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●グリモアベース
「……まずは状況をお話しするわね」
 集まった猟兵たちを見回して、ホーラ・フギト(ミレナリィドールの精霊術士・f02096)は話を始める。
「解放軍の艦隊が、白騎士ディアブロとの決戦を始めたわ」
 これまでに『白魔』と『白城』の艦隊を解放軍は突破し、漸く白騎士ディアブロとの対決が叶った。
 だが、『解放軍』では白騎士そのものを打ち破ることが叶わなかったのだ。
「白騎士を捕捉できなかったみたい。スペースシップの砲撃も、戦闘機による攻撃も」
 それでも、お手上げ状態とまではいかない。
 だが、白騎士を捉えるために時間と戦力を割き続ける道を、解放軍は選ばなかった。
「解放軍は矛先を変えたの。白騎士じゃなく、皇帝を守る艦隊にね」
 主目的はそもそも銀河皇帝の撃破だ。
 つまり戦力の殆どを失った『白騎士ディアブロ』の撃破は、解放軍にとって然して重要にならない。
 だが猟兵にとっては、そう断言できる存在でもなかった。
「皇帝を倒しても、白騎士とかが逃走しちゃったら、たいへんよね」
 白と黒の騎士は、銀河帝国にとって大きな二柱でもある。
 その彼らが逃げ延びた場合、二つの懸念が生まれてしまう。
 ひとつは、新たなオブリビオン・フォーミュラとなりうる可能性が出てくること。
 もうひとつは、皇帝が倒れた後に帝国の残党や、スペースシップワールドの不平分子を集めて、何事か仕出かす可能性。
「だから倒しましょ。白騎士ディアブロを。私たちで」
 先述の通り、白騎士は戦力を悉く失っているため、かの者の周りに他戦力は無い。
「これって反対に、白騎士の強さを示してるとも言えるのよね」
 単体であろうと恐れなどない証拠だろう。
 白騎士が『一人の戦士』として、最大の力を発揮できる状況にある。
 平たく言えば、猟兵の精鋭が挑んだとしても敗北する危険性が高い。
「厄介なのは、『未来を操作する力』を持つ点かしら」
 白騎士は限定的ながら、『未来を操作する』力を持つとされる強敵だ。
 有効な対策を講じない限り、彼は『全ての攻撃を逃れる』だけでなく、『絶対に命中する攻撃』を『最大の効果を発揮する』ように行う。つまり猟兵が無策で挑めば、白騎士は確実な勝利を掴める。
 能力も然ることながら、装備品も彼の強さのひとつだ。
 フォースセイバーやレーザーキャノンは、銀河帝国の技術の粋を尽くした兵装――生半可な防御では、あっという間に崩されてしまう。
 難敵、と一言で述べるにはあまりに強い。
 だが、それでも。
「私たちは……皆さんは、どんな困難も乗り越えられる。でしょ?」
 猟兵には、知恵と経験、そして何よりもユーベルコードがある。
 それらを駆使すれば、白騎士に勝利することも決して夢ではない。
「ただ、白騎士を骸の海に放逐できても、すぐ蘇ってきちゃうの」
 白騎士は、骸の海から蘇る力を有している。
 一度倒し、そして蘇った白騎士は、別の場所から再度出撃してくるだろう。
 撃破できず猟兵が敗れた場合も、白騎士は骸の海を避難区域として利用してしまう。
 一旦そこへ撤退し、完治したうえで別のところから再出撃してくるのだ。
 そして白騎士の出現地点は、白騎士配下の艦艇のいずれかとなる。
「出現する艦は予測できてるわ。その点については任せてね」
 だからこそ出現地点で待ち伏せし、白騎士を倒す作戦に出たのだ。
 説明を終えると、ホーラは穏やかに目を細めた。
「さ、転送準備にとりかかるわ! 用意ができたら、声をかけてちょうだいね」


棟方ろか
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です!
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 当シナリオでは『銀河帝国攻略戦⑳』を攻略します。

 お世話になります、棟方ろかと申します。
 情報はオープニングと以下をご参照くださいませ。

 白騎士ディアブロは、先制攻撃を行います!
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

 それでは、皆様のプレイングお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『白騎士ディアブロ』

POW   :    収束する運命の白光
【対象の未来位置に向け放たれるレーザー】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    ホワイトライト・トゥルーライト
【10秒先を見たかの様に的確な攻撃を行い、】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    デストロイマシン零式
戦闘力のない【66機の動画撮影ドローン】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【正確無比な未来予想シミュレーション】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

バルディート・ラーガ
ヘーエ、今度は未来を読む能力ですかい。こりゃアまた厄介な。あっしのような騙し討ちが主ですと、なおさら辛いですねエ。参った参った。

「第六感、見切り」でもってやっこさんの狙いを察知、ハナっから手足を犠牲にする守りの構えでもって何が何でも体幹と尾を守り通しやす。手足がブッ千切れるだけ速くなる【神速の一噛み】の一撃で、白騎士の喉元を狙ってやりやしょう

……っつー筋書きを描きつつ。コッソリと手を残しておきやしょうねエ。わざと四肢を残して攻撃スピードを遅めに調整。
テメエの見切った未来よりも向こう側で本命打、「だまし討ち、フェイント」の一撃を食らわせてやりやしょう。


春日・釉乃
【POW】
白騎士ディアブロ…未来を決めるのはあなたじゃない、あたしたちの手でっ!

ルールを宣告するレーザー?
なら、あたしは【破壊と創造の理】を発動
剣の悪鬼となり、超攻撃力と超耐久力を得る副作用で理性を失うの

けれど、この状況ならその副作用こそが勝機の鍵になるよ
だって…理性を失えば『宣告されたルール』の理解すらできなくなる狂戦士となるのだから!

機械鎧『鶴姫』の装甲と得られた超耐久力で白騎士の攻撃を敢えて受けきりながら、『白雲去来』による[早業][鎧無視攻撃][カウンター]と超攻撃力の斬撃で白騎士を迎え撃つよ

肉を切らせて骨を断つ――ってね!


アララギ・イチイ
苦手分野だから火力不足が心配だけどぉ
やるしかないわねぇ、苦戦もまた楽しみだわぁ♪

待ち伏せ可能なら【小型EMP~】を【罠使い】で隠して設置、戦闘開始一定時間経過で起爆する時限設定しておくわぁ

不可なら、敵の先制攻撃に合わせて【早業】でシールドビットを展開、敵の攻撃を【見切り】って【盾受け】、防御に専念しての時間稼ぎしつつ【小型EMP~】を起爆させるわぁ

上記が起爆後、範囲内のドローンを含めた電子機器類が一時的にダウンする予定(相手のEMP対策次第だが)だから、その瞬間に攻勢よぉ
速射砲に装填していた【鎧砕き・鎧無視攻撃】の徹甲弾で、【ダッシュ】で接近して左右砲による【零距離射撃】の【2回攻撃】だわぁ



●初動
 朽ちた艦艇。
 その呼び方に違わず、崩れた壁材や一部の天井により艦内は荒れていた。
 物陰に身を寄せたアララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)は、騎士を待ち伏せるほんの僅かな時間に、小型の機器を設置する。彼女が機器を繋いだ先は、剥がれ落ちた天井の破片だ。
 ――表からは見えないでしょお、大丈夫ねぇ。
 巧みとまでは言えなくても、罠を仕掛ける術をアララギは持つ。
 やれることを、きちんとこなす。あらゆる戦場に於いて、大事なことだ。
 一方、目深にかぶったフードの黒が、景色との境界線を明確に分ける。
 彼らがいるのは一隻の朽ちた艦艇だ。しかし朽ちていると言えど、くすんだ床や壁面の白には帝国の威光が今も残る。
 そして薄汚れた白銀に、真白の騎士は立つ。
 フードを整えて、バルディート・ラーガ(影を這いずる蛇・f06338)は唸った。
「へーエ」
 言葉にしてみると、彼自身が思っていたより声は鮮明だ。騎士の他に敵のいない静かな空間だからこそ、己の耳にはっきり届いたのかもしれない。
 猟兵を見て驚く素振りもなく、騎士はゆるりと顔をバルディートへ向けた。
 騎士からは心の機微も伝わらず、バルディートは口の端に笑みを浮かべる。
「いやはや、参った参った」
 繰り返す言葉に、情は籠めない。
 彼は、動かず佇む白騎士の狙いを探る。先手を取られるのが常であれば受けるのみと、心身を研ぎ澄ました。
 その傍で、淡い光で撫でつけたかのような灰色の髪を靡かせて、ひとりの女性が息を吸い込む。
 仲間の前で白騎士を見据えている春日・釉乃(”CHIPIE”・f00006)だ。彼女は胸を張り、かの者へ告げる。
「未来を決めるのは、あなたじゃない」
 すらりと抜刀した太刀の切っ先で、白騎士ディアブロを示した。
「あたしたちの手で決めるものっ!」
 声は澄み切って響き、確かに騎士の元にも届く。けれど騎士は、狼狽えるどころか揺れもしない。堂々たる姿のままだ。まるで、猟兵たちの行動は頓挫するとでも言わんばかりに。
 煽られることなく佇む白騎士の輪郭を、釉乃は睨んだ。
 構えた太刀の身を光の粒が滑る。艦艇の天井から漏れる灯りか、もしくは騎士が持つ武器の光か。
 いずれにしても、釉乃が光を連れて断ち切る標的に変わりはない。

●死闘
 白光が駆ける。
 騎士の一撃は的確だ。かの者が狙ったのは、守勢に徹するバルディート。
 けれど敵の狙いを察知するには力足らず、遅れたのは一瞬。闇も黒も塗り替えるほど眩い一閃が、日陰ゆく者の炎の腕を斬り落とし、胴を抉った。尾を引いた炎がパチッと弾けて転がる。
「今度は未来を読むンですかい」
 黒騎士アンヘルとも対峙したバルディートにとって、白騎士の能力には溜息を交えずにいられない。何よりも、双璧を成す白と黒の煩わしさが、身に沁みる。
 騎士の白刃が焼いた脇腹は、じくじくと痛む。
 ――思ったより深いでやす。
 腕か足のみ捨てる算段であった。横腹まで削られた今、動きに変化が起こる可能性を彼は思う。
 それでも片腕を模る炎を失ったバルディートは、今このときより身軽さを増す。
「……こりゃアまた、厄介な」
 奔る痛みを呑み込みながらも、彼の表情は平時と変わらぬままだ。
 不意に、白騎士の指先が何かを呼ぶ。
 突如として現れたのは、夥しい数の動画撮影ドローン。機械音と影は戦場を満たすほどで。
 戦う力を持たなくとも、主である白騎士へ未来予想シミュレーションで援護するマシンは、厄介だ。
 そして66機もの動画撮影ドローンは、戦場も隈なく映す。
 直後、数機のドローンが飛行していた一部分で、前触れもなく爆発が起こった――アララギの設置した小型爆弾が、一定時間の経過によって起動したのだ。
 艦が吹き飛ぶ威力ではなく、だが生じた電磁波は、機器を損傷させるのに充分な威力だ。ドローンが次々故障して墜落し、あるいは動きが狂い始める。
 白騎士の動きにだけ変化はない。爆発による影響を予期していたのか、かの者は守りを重ね固めていた。
「んもぉっ」
 アララギが唇を尖らせる。眼差しは、白騎士の行動をしかと捉えて離さぬまま。
 ――苦手分野だから、火力不足は心配してたけどぉ。
 対抗した相手が、大量の撮影向けドローンということも、関係しているのかもしれない。仕掛けた機器が発見されずに済むのは、少々難しかったようだ。
 だが、多少なりとも白騎士の気を逸らすのは叶った。感情も滾る熱も無い雰囲気のまま、白騎士が呟く。
「……おもしろいことをする」
 直後、爆発により発生した電磁波がドローンをおかしくさせた。辺り一帯、パチパチと弾けるような音が鏤められる。
 状況を見回す白騎士へと、抜かりなく仲間が挑む。しかし隙を突くには足らず、白騎士がすぐさまレーザーキャノンを向けてきた。
 釉乃は砲口が自身を狙うのを知り、目を細める。
 ――あれが、ルールを宣告するレーザー。
 考える間もなく撃ちだされた光線を、拒まず受けた。機械鎧は頑丈で、耐久力にも自信があるからこそ釉乃は真っ向から立ち向かう。
 けれど敵は銀河帝国の二大巨頭のひとり――白騎士ディアブロ。
 光が走った箇所は砕け、またはひび割れた。そして鎧が護っていた主の身をも、伸びた白光が焼く。
 熱い、と釉乃は眉根を寄せる。
 体内を流れる液という液が沸騰したかのように、苦しい。それでも彼女は耐え、リミッターを解除する。
 逃げも隠れも避ける素振りも見せなかった釉乃の姿に、ほう、と白騎士が唸る。
 そしてすかさず白騎士が宣告したのはひとつの掟。
「……駆けるな」
 刻み付けられた掟をよそに、釉乃が鎧の底から呼び起こしたのは、剣の悪鬼だ。
 封じられた力が覚めたことで、釉乃を呑み込んだのは破壊を常とする悪鬼の本分。
 そして得た力の代償に身を委ねた彼女は、理性を失う。本能の赴くがままだ。そんな彼女は、動体視力を高めた視界で捕捉したのは、速く動く存在――間合いも近い白騎士だ。
 彼女が振るう白刃もがむしゃらだが、未来を知る騎士にはまほぼ当たらない。
 足場の歪も気にせず走って近づく釉乃の身は、掟を破ったことで人知れず傷つく。
 それでも、飛ばした理性の所為か、彼女の痛覚は鈍っていた。

●終局
「こうなったら、やるしかないわねぇ」
 金色の瞳を煌めかせて、アララギは浮遊する速射砲を撃ちだした。
 強固たる鎧をも粉砕しようと弾を放ち、続けて攻め立てるべく駆け寄る――だが、先手をとったのは白騎士だ。
 射出した弾は光で焼き切り、接近を試みたアララギの所作ひとつひとつを撥ねた。展開していたシールドビットを盾に、辛うじて騎士の一撃を受け止め、膝をつく。倒れ込むにはまだ早いと、アララギの両手は身を支えた。
「……無駄だ」
 ぽつりと、騎士が言葉を落とす。
 人々に苦痛をもたらす光芒が、白騎士の元から放射される。駆けるな、と先刻と同じ規則を騎士は強いた。
 未来を射したレーザーに身を焼かれ、再び剣の鬼と化した釉乃が舞うは、白雲。腕の振りに従って、太刀も力の限り踊る――だが。
「手緩い」
 端的な言葉を発したのは、他ならぬ白騎士だ。
 道理を考える力を損ねた釉乃は、ルールを打ち破り更に己を死地へ追い込む。華麗な足取りで騎士と対峙するも、すでに満身創痍。
 それでも釉乃は、膝を折らない。不撓不屈の念は、理性の有無を問わず彼女を奮い立たせていた。
 漸く、瞳に日頃と同じ色を宿した釉乃が、騎士へ眼差しで挑む。
「ッ、肉を切らせて……骨を断つ……って、ね!」
 言い終えるよりも少しばかり早く、彼女の意識が朦朧とし始める。
 猟兵たちの飽くなき精神に、白騎士はどことなく忌々しげに、メットのシールドを翳らせた。
 うねらせた尾が熱い。溜めた力と共にバルディートが飛ぶ。
 噴き出す炎で編んだ片腕を失いはしたが、彼はそれ以外の手足とからだ、そして尾も守り切った。均衡も崩さずバルディートは駆ける。人間業とは思えぬ速さが、騎士の視界に映る彼の姿を歪ませた。
 構わず白騎士のいかつい腕部が揮われる。未来を見抜いた光が明滅し、バルディートの肩口へ鋭利で深い傷を生む。
 衝撃のあまり後退った彼は、そこで踏みとどまり、伸び駆けていた騎士の腕を払う。白騎士も想定していたのだろう。払われても平然としていた。
 その態度を崩そうと、バルディートは神速のまま飛び掛かる。彼の強靭な顎は騎士の装甲を――ひと噛みし損ねる。
 咄嗟に白騎士と距離を置いた。そしてバルディートは即、守りの構えをとる。
 ――速さも相手が断然上でやすね。
 事実を強く感じつつ、露わにはしない。
 代わりにバルディートは肩から黒炎の欠片を撒き散らし、ほんの僅か、口端を吊り上げた。
 結ばぬ実を哀れむかのように立つ白騎士だったが、未だ衰えぬ彼の顔つきを目の当たりにして押し黙る。
「あっし、この手のことが十八番でしてねエ」
 へっ、とバルディートが笑みを象った大きな口から、短い息を吐く。
 不敵さも飄々とした態度も失せない彼から、白騎士は視線を外さなかった。
「……愚かな」
 閉ざしていた白騎士の口から、言葉が零れる。そして硝子めいたメットのシールドは、猟兵を映した。
 そして猟兵たちを襲うのは、仄暗い面の内側から鋭くねめつけられたような感覚。
 渦巻くのは荒々しい殺気ではない。白騎士から滲み出る気は、殺意とは異なる情を帯びていた。
 それは静かな苛立ち。
 確実に、かの者を蝕む足がかりとなるはずだ。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

ステラ・ハーシェル
未来位置がどの程度の先の事を言っているのかは不明だが、まずは【ヘール・ボップ】の速度と【騎乗】で回避を試みるが、まぁ不可能だろう。ならば即座に放射されたレーザーを【見切り】と【早業】による【剣刃一閃】で断ち切り、そのまま肉薄する。例えレーザーによって両腕が無くなろうが、刀を咥えてでも突貫する。五体満足で済むとは端から思ってない。ならば死兵となりて決死の【覚悟】で相手の喉元に喰らいつくまでだ。

「私の名はステラ・ハーシェル……例えこの身朽ち様が我が刃は貴様の喉元から離れる事は無い……!」

【殺気】を乗せた言葉を放ち、未来が操れる相手には気休め程度にしかならんだろうが【フェイント】を交ぜた攻撃を放つ。


上野・修介
【POW】
・敵UCは敢えて受ける《覚悟》を決める
己が得物は素手喧嘩。
故に「近づくな」とルールで縛られるのが最も効果的だ。

先ず直ぐには攻撃せず、他の猟兵との戦闘を観察し、敵UCの間合いを《見切る》
間合いの際まで接近し、糞度胸《勇気+激痛耐性》を以て踏み込みさらに前へ。
ルールと力量差で大ダメージを受けるだろうが、ただでは倒れない、一歩でも、半歩でも前へ。同じ倒れるでも前のめりに。
ダメージにより瀕死になることで自UCを使用。だが直ぐには発動させず、とどめを刺すために近づいてくる、或いは次の相手へと意識がいった隙を狙い、《ダッシュ》で懐に飛び込み、スカした白騎士様の顔面に《捨て身の一撃》を叩き込む。



●準備
 伏せた瞼の裏にまで騎士の白が浸みていくようで、上野・修介(元フリーター、今は猟兵・f13887)は静かに息を整えた。他の猟兵が挑む戦いを眺める彼は、白騎士が繰り出すユーベルコードの間合いを確かめていた。
 いかなるときも距離は大切だ。
 たった一歩、されど一歩。勝敗を分ける原因にもなると、修介は知っている。
 楽観を顔に塗りながら、彼が日頃から用いる丁寧な口調も、すっかり鳴りを潜めていた――彼の人となりが滲むのは、戦いに於いて意味を持たないと知っていた。
 修介は速やかに両の拳を構えた。
 素手での喧嘩を得物とする彼だ。殴打に出る前の体勢を、白騎士へ見せつける。つられたわけではなくとも、白騎士は彼の拳を視界に入れざるを得ない。
 ――そう、ステゴロをする。覚えろ。
 修介は表情を変えぬまま、ただ『機を窺う若者』を保ち続けた。
 ステラ・ハーシェル(星屑のサンダーボルト・f00960)が引き結んだ唇は、言葉を紡がない。
 ――未来位置、か。
 思うのは、悠然と佇む白騎士が繰り出す攻撃についてだ。
 白騎士を一瞥すると、猟兵に挑まれても、かの者は動揺を露わにしていない。しかし戦いを楽しんでいるわけでも、猟兵たちを弄んでいる様子もなさそうだった。
 着実に役目をこなすだけが、騎士に与えられたプログラムなのだろうかと、ステラは一瞬だけ考える。
 ――どの程度、先のことを言っているのか気にかかるが。
 確かめるため動くか、構わず白騎士に一矢報いるか。
 そんな二択が脳裏を過ぎろうとも、ステラの中では疾うに決していた。
 言葉の代わりに、薄い唇で愛馬『ヘール・ボップ』の名を紡ぐ。マットな質感、重厚さを生むブラックが現れる――ステラの愛馬だ。艦艇にあろうと宇宙にあろうと艶を抑えた黒の美しさは、騎乗したステラの装いと馴染む。
 白騎士と対照的なカラーリングでもあった。疾駆するバイクの余韻に、白騎士の意識も向く。
 ――何処を駆けようと、私は揺らがない。
 ステラは愛馬と共に、白騎士の周りを旋回しはじめた。

●果敢
 ちかりと、白騎士が持つキャノン砲の口が光った。
 間を置かずして発射されたのは、眩く艦内を照らす光線。力溢れる白騎士のレーザーは、拳を構えたままの修介の身を一瞬で焼く。
 焦げる音と匂いが、激痛と同時に襲いくる。それでも失せないものを修介は持つ――ありったけの覚悟は、彼が常に胸に秘めるもの。
 短い時間ながら、彼は態と構えた拳を見せつけてきた。ゆえに、白騎士が下すルールも数通りに絞られる。
「……距離を保て」
 騎士は一音一音をはっきりと耳にし、近づくなという意味の掟を修介へ刻み込む。修介は上がりそうになる口角を、意識して抑えた。
 一方で、戦場を疾駆する宇宙バイクは、白騎士と修介をよそに走り続ける。
 直後、白騎士の元から熱線が発射された。ステラとバイクの通過点――未来位置へと。
 いかに速く駆けようとも、運命を知るレーザーからは逃れられない。だがそれもステラの想定内だった。
 そして奔るのは一閃。
 ステラの手より放たれた斬撃が、光線を裂く。断ち切ることでの回避は叶わず、皓々とした光線の片割れが彼女の身や愛馬を焼く。ジュウッ、と焼け付く音の直後、腕に激痛が走った。それでも彼女は止まらない。
 さすがに割かれた熱戦が向く角度までは白騎士も操れず、ほう、と唸る。
 そして間髪入れず告げた。
「……降りろ」
 白騎士が忌々しげに宣告したルールは、単純なものだ。
 しかしステラは薄汚れた船床を摩耗する勢いで、バイクを走らせる。
 彼女の意志と覚悟は、はじめから固まっていた。
 ルールを破ったことで身体の内側が軋む。煮えたぎる油を流しこまれたような熱と痛みが、全身を駆け巡る。
 けれど彼女は構わず、愛馬ごと白騎士へ突撃した。
 そしてバイクから飛び上がり、そのまま滑らせたバイクで白騎士の手間をひとつ取らせる。
 予見していた白騎士が、特攻してきたバイクを避けると同時、愛馬とのタイミングをずらした傷だらけのステラが突っ込む。
 彼女の勇猛な一撃を、白騎士は得物で受け止めた。
 ふむ、と唸りながらも白騎士は躊躇うことなく、ステラを弾き飛ばす。

●傷痍
 間合いは観察した。闇をも射貫く黒の双眸で、修介はしかと見届けてきた。
 だからこそ、受けた掟も顧みず彼は踏み込む。
 すると、徐々に縮めていった白騎士との距離が、修介を苛める。動きを縛る掟が、間合いに変化を生むたび容赦なく彼を襲う。
 白騎士ディアブロは強敵だと、修介も充分理解している。掟を破れば、自らへ返る苦痛も尋常ではないはずと想定した――想定だけではない。
 きつい、苦しい、痛い。
 そうした感覚ばかりが脳裏を過ぎろうと、修介の芯を震わす言葉がある。
 ――けど、目の前に、敵がいる。
 白騎士が未来を見るならば、修介が向き合う相手は『現在』だ。
 何処にでもいるような青年は、激痛に耐えながら、いま此処にいる意味を拳へ籠める。
 ――タダでは倒れない。
 一歩でも、半歩でも前へ。同じ倒れるでも、前のめりに。
 疼痛が重い。
 目が虚ろであっても、彼は沈みそうになる意識を引きあげ、重くなっていく身体を踏ん張りで支える。
 そこへ、ステラが攻め入った。
 ――五体満足で済むとは、端から思ってない。
 剣刃で白騎士が放ったレーザーを裂き、照射の角度や位置を変化させて、受ける。身を焼かれながら肉薄するステラを、白騎士も無視できず、腕のひとつを盾とした。
 美しい刀で斬り込めたものの負傷が酷く、月下に佇むような凛とした普段の容貌も、今のステラにはない。
 けれど、彼女の内で決して消えぬ炎は今もある。力無き者の剣となることを夢見る少女の、絶えぬ炎が。
「私の名は……ステラ・ハーシェル……っ!」
 はだけた皮膚の下さえ厭わず、彼女は声を振り絞る。
 白騎士は、己の腕に突き刺さった刀身を握り、耳を傾けた。
「喩えこの身が朽ち様とも……我が刃は……貴様を逃しはしないッ……!」
 殺意の気で咆哮したステラを眼前にして、メットのシールド越しに、騎士の眼が一瞬だけ光る。
 しかし白騎士は刺さっていた刃を抜き、身命を賭した彼女もろとも撥ね返す。
 腕部の装甲に穴が空いたのを、騎士は横目で視認する。
 不意に、ゆらりと陽炎のように空間が揺らいだ――ルールを破り修介が瀕死になったことで、高い戦闘力を誇る戦場の亡霊が現れた。
 輪郭さえあやふやな亡霊は、修介のポーズを真似して佇む。
 そして白騎士がステラを迎え撃つべく気を向けた隙に、修介は亡霊を連れて白騎士の懐へ飛び込んでいく。
 突き出した拳は正しく、捨て身の一撃。鍛え上げた肉体と精神をも凌駕する、瞬発的な行動。
「未来が決まろうと、なるようになる……ッ」
 修介の痛打は白騎士ディアブロの顔面――透けたシールドへと叩きこまれた。
 硬質なものから、パキッ、と鋭利な音が弾ける。そうしてメットのシールドに入ったヒビは、白騎士の表情を隠した。
「生きてりゃ、なんだってな」
 敵へ向けた想いが、修介の喉から振り絞って出される。
 そして拳を連ねた戦場の亡霊が消えると共に、呼び出した主である修介の身も沈んだ。
「無謀を体現したか。だが……」
 知を巡らせながらも、己の身を犠牲とする覚悟で対抗し、そして倒れた二人の猟兵を騎士の視線が射貫いた。
「その意気や壮!」
 おもしろい、と言わんばかりの声音で白騎士は叫んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リグレース・ロディット
あの白い奴かっこいい……!あ、けど敵か。なら倒さないと。この戦争もうちょっとで終わりそうだから今まで以上に頑張ってみるね
【WIZ】えっとえっと……あの飛んでるの邪魔だからUCの『赤く煌く影が散る』で壊してくね。なるべくドローンが僕の攻撃内に入るようにして。そしたらそれなりにいっきに壊せれると思うんだぁ。
ドローンを全部壊したら白いのに攻撃しに行くね。だってあのドローンでシミュレーションっていうのしてるんでしょ?だから時間かかっちゃうけどドローン先。
白いのには『2回攻撃』『カウンター』を使って『クライウタ』か『暴食紫炎』で攻撃するよ。敵からの攻撃は『激痛耐性』で我慢するね。

(絡み・アドリブ大歓迎)


ノノ・スメラギ
世界知識と情報収集を駆使してディアブロの戦闘記録を集めるよ。未来位置を読んで光速で届くレーザーでも、それを狙って撃つのはキミ自身だ!
どの状況で何を好み何処を狙うのか、戦闘知識で徹底的に洗い出す!
その上で防具改造で耐レーザーコートを施したシールドデバイスを予測とトリガーの狭間に野生の勘も駆使して差し込んで盾受けしながらリフターのパワー全開で突撃する!(空中戦)
レーザーが当たってルールが宣言されるまでに突貫を続けて攻撃、さらにあくまでも浮遊盾であって、ボク自身にはルールは課されない!
そして、2枚の盾を使い切る前にUCを使ったVMAXランチャーの最大限の一撃を叩き込んでやる!(捨て身の一撃)


ラザロ・マリーノ
攻撃を禁じられると仮定すると、ユーベルコードを発動してから当てるんじゃ遅すぎるか。
なら、当ててから発動させりゃいいだけだ。

本命から意識をそらすためにハルバードを構えて、白騎士に向かって真っすぐ【ダッシュ】するぜ。
「収束する運命の白光」以外の攻撃には回避行動をとるが、何より奴に接近することを最優先する。

移動を禁じられた場合、ルールに抵触しない範囲での動作・表情・言葉で奴を【おびき寄せ】るぜ。

至近まで近づいたら、あとは俺を斬らせるだけだ。
とっくに【覚悟】は決まってる。
俺の返り血で紅く染まった白騎士に、UC「竜の血」を叩き込んでやるぜ!!


ルカ・ウェンズ
私はPOW で攻めるわ。
まずは収束する運命の白光に少しでも当たらないように宇宙昆虫に【騎乗】して【残像】を使い攻撃を受けたらルールを宣言し終えるまでに【暗殺】の知識や【戦闘知識】でどうすれば敵に素早く近づけるか先に考えてから敵に攻め込むわよ。(宇宙昆虫にレーザーが当たれば、一度は防げるかもしれないし…宇宙昆虫には攻撃に当たったらルールを守りながら逃げてもらうわ)

敵に近づけたなら、できれば【怪力】で利き腕を掴み【縁切り】で攻撃、誰の言葉か知らないけど死ななきゃあ安いと言うし、死なないように気をつけて限界まで攻撃するわ。(こんなに強い幹部や強力な軍隊があって、なぜ滅んだのか不思議に思うくらいだわ)


ゼット・ドラグ
「未来を操作する力か。どこまでやれるのか試させてもらおう」
まずは先制レーザー攻撃をどうするか、だな。
【怪力】で【ドラゴンチェイサー】を持ち上げ、ドラゴンチェイサーが使い物にならなくなる前に接近。
ある程度接近出来たら、ドラゴンチェイサーを白騎士に投げつけ、【竜を殺す百の刃】を黒剣型から槍型に変えて突きを出して銃口を逸らすように攻撃を仕掛ける。
その後も、斧形態や鎌形態に変形させて攻撃をするが、狙いはズバリ、怪力を活かした【ギガンティックハンド】による右ストレート。
当然、それも読まれてるだろうが関係ねえ。装甲板を剥がして強烈な一撃を叩き込んでやるぜ。


フォルク・リア
極力仲間と連携しアシスト。
敵の様子(武装の状態や構え砲口の向き等)から
攻撃や来る方角を予測。
静止せずに敵と距離を取りつつ
【残像】を発生させ、攪乱を狙う。
攻撃の様子が感じられなくとも
既に攻撃は始まっていると思っておく。

敵のユーベルコードは
全力魔法で強化した暴虐の黒竜王で相殺を狙う。
(自分が仲間と行動していて)
敵が複数のユーベルコードを使用している場合
可能なら攻撃手に向けられているものを相殺。
自分が攻撃をもらうなら、
【オーラ防御】で受けたり【覚悟】で耐え
何とか急所を外すか。
攻撃を受けて仲間の攻撃の為
隙を作れる様に受ける。

攻撃のチャンスが一瞬でもあれば
相討ち覚悟でデモニックロッドの魔弾を撃ち込む。


黒城・魅夜
第六感4・見切り4・残像4・早業3で高速移動、同時に範囲攻撃2・ロープワーク2で装備する鎖を全射出。
鎖のみならず53枚の死神札をも全て投擲。
回避であると共に貴方の攻撃に対する機動防御、そして無論私からの攻撃をも兼ね備えた三重行動です。
貴方が「視えて」いても回避しきれない面制圧を行えばいいだけのことです。

……ええ、それでも貴方の射撃は私を貫くはず。
ですが「視えているからこそ」、最も撃ちやすい箇所を狙うのでしょう。

そう、射撃位置を誘導させてもらいました。

貴方が狙うこの胸に潜ませた呪いの短剣は一瞬の盾。
激痛耐性と覚悟を伴って、私の最後の武器――時を喰らう牙が、貴方の自慢の「眼」を貫きます。


幻武・極
ボクはディアブロ目掛けてジグザグ走行で【時間稼ぎ】をしながら接敵するよ。
その間にディアブロのユーベルコードの弱点
1、攻撃が当たらなかったら意味がない
2、ルールを宣告しかったら意味がないを宣言し
攻撃を受ける瞬間に鏡を取出し
3、レーザーをキミも受ければキミも対象となる。を宣言しレーザーを僅かでも反射してディアブロに当てるよ。
レーザーでボクが倒れたとしてもルール宣告したら3、しなかったら2が実証され、ボクのユーベルコードが発動し、モフィンクスが出現するはずさ。

そして、
4、そのユーベルコードで判るのは位置だけでどう動くかが分からない。



●勇壮
 はじめの猟兵が現れてから経た時間は、短くも長い。
 猟兵たちによる戦闘は止まない。止めるわけには、いかなかった。
 そうした中でノノ・スメラギ(銃斧の騎士・f07170)が挑むのは、白騎士の戦闘に関わる記録の収集だ。いざ、猟兵と白騎士の戦いを目の当たりにすれば、嫌でも見得てくるものがあるだろうと踏んで、ノノは赤い瞳をきらきらと煌めかせて堂々と立つ。
 未来位置を読むレーザーは確かに脅威だった。だが。
 ――それを狙って撃つのは、他でもない。白騎士本人だ!
 いかなる状況下で、標的に好むのは何か、そして何処を狙うのか。
 仔細を徹底的に洗い出すべく、ノノは仲間たちの戦いを見守ろうと、後方に立った。
 今回は人数も多い。なら仲間をアシストするのが最善だろうと、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は周りを見つつ、白騎士の様子を窺う。
 少なくとも、姿勢や砲口から察するのが叶うものはある――彼は術士であると同時に、研究者でもあった。
 思惑を察したのか否か、白騎士が無数のドローンを召喚する。白騎士との距離は保ったまま、フォルクがドローンの合間を駆けていく。見方から少しでも意識が逸れるなら上々だ。
 ――攻撃の様子は感じられない。だが。
 既に攻撃は始まっている。
 念頭におくべきものを、フォルクは改めて自らへ言い聞かせた。
「あの白い奴、かっこいい……」
 小声で呟き、瞳の奥に輝きを宿すのはリグレース・ロディット(夢みる虚・f03337)だった。
「……あ、けど敵か」
 なら、倒さないと。
 咥内で呟いた音を呑み込む。
 そして、数えきれないほどのドローンを飛ばした白騎士を見て、リグレースは自らの得物を夕顔の花弁へ換える。
 花弁は空間そのものを埋め尽くす勢いで乱舞し、ドローンを次から次へと呑み込んでいく。しかし白騎士は驚きもせず、花の嵐の真っ只中にいた。
 喩え未来が見えていようとも、広範囲に散る花弁を逃れるすべは持たないのだろう。かの者は静かに現状を受け入れている。
 ――とりあえずあの飛んでるの、邪魔だからね。
 着地し損ねたドローンの残骸たちを見下ろして、リグレースはひと息吐く。
 ラザロ・マリーノ(竜派ドラゴニアンのバーバリアン・f10809)は金色の双眸で敵を睨み付け、ハルバードを掲げた。巨躯を揺らし、一心不乱に白騎士めがけ走り込む――様相を示す。
 ちらりとラザロを見遣った白騎士は、彼の見目と武器から弾き出したデータを基に、運命の白光を発砲する。眩く戦場を駆けた一筋の光は、誤ることなくラザロを射貫く。
 そして間もなく宣告されるのは、忌々しいルール。
「近寄るな」
 完結な掟を敷いた白騎士に、ラザロはハルバードを構えたまま間合いを保つ。
 ――やはり、攻撃する術を禁じられるか。なら、答えは決まってるな。
 機を窺うラザロの眼差しは、敵から逸れない。
 時を同じくして、戦場を疾駆するルカ・ウェンズ(風変わりな仕事人・f03582)は、宇宙昆虫の上にいた。
 跨り駆けるルカの残す軌跡に、残像が落ちる。白騎士はしかし彼女の動きにあまり顔を向けない。
 得物を構え、ルカは昆虫と共に突撃を仕掛ければ、白騎士の砲口が彼女の行く先――未来位置へと放たれる。防ぐ手段など持たず一身に受けたルカは、焼ける音と込み上げる熱を感じながら、脳を回転させた。
 ルールを宣言し終えるまでの、たった数秒で。どうすれば、いち早く敵に近づけるかを。
「虫から降りよ」
 しかし白騎士が植え付けるルールは至極短い。単語をひとつふたつ、繋げただけとも言えよう。つまり考える時間すら取らせない。
 ルカは歯を噛みしめて昆虫から降り、両足でくすんだ床に立ち、脇から接近する。
 ――いいわ、望むところよ。
 被弾を避けることに気を傾けていたルカだ。余分に体力を削られるのも、もちろん避けたい。
 騎士の腕を掴もうとするが叶わず、そのまま得物を振るう。刀身が宙を斬り、白騎士は腕の装甲で、柄を握る彼女の手を弾いた。
 すかさず飛び退き騎士を睨みつけたルカを、白騎士は悠然と佇んだまま見下ろす。
 その近くでは。
「未来を操作する力か……」
 ぽそりと呟きながらも、鋭い眼力でゼット・ドラグ(竜殺し・f03370)が白騎士を見続ける。
「どこまでやれるのか、試させてもらおう」
 誰も到達し得ない未来を知るのなら、相手にとって不足はない。
 白騎士が持つ大袈裟なレーザーキャノンを一瞥し、ゼットは唸った。
 ――先ずは先制レーザーをどうするか、だな。
 考えは定めてきた。騎士に余所見もさせず、ゼットは自慢の膂力で宇宙バイクのドラゴンチェイサーを持ち上げる。
 大ぶりの仕草は当然騎士の目を引き、ゆえに掲げた愛機と共に白騎士へ急接近を試みた。
「っ、そらっ!!」
 身構えたらしき白騎士を狙い澄まし、ドラゴンチェイサーを投げつける。宙を舞う宇宙バイクは戦場で何よりも目立った。
 そうして白騎士のヒビの入ったシールドと射出したレーザーが、バイクに気を取られた一瞬の隙。そこでゼットはパズルのような武器――竜を殺す百の刃を槍の形態へ一変させ、矛先で銃を突く。
 すでに撃たれた光線を逸らすことは叶わず、ほんの一歩、間に合わなかった。そのため愛機が熱線を浴び、痛ましい姿と化す。
 刹那、青が跳ねる。
 七曲がりの走行で接敵したのは、小柄ながら存在感を示す幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)だ。
 彼女が稼いだ時間は、状況を見定めるためでも、情報を得るためでもない。
「キミの技の弱点はこれだねっ」
 声音さえ溌剌と弾ませる。
 弱点、という聞き逃せない響きにか、白騎士が彼女をねめつけた。
「ひとつめ! 攻撃が当たらなかったら意味がない」
 ほう、と白騎士が唸った。攻撃するつもりがまだ無い極に対して、興味を示す。
「ふたつめ! ルールを宣告しないと意味がないっ」
 脚を止めず走る極の顔が、活き活きと明るさを帯びる。
 武器を構えた極を、飽きたとでも言わんばかりに白騎士が砲口で差す。そして前兆もなく放出するのは、眩い光。
 光るが早いか、極が取り出したのは――鏡だ。
「みっつめ。レーザーをキミも受ければ、キミも対象となる!」
 宣言ののち鏡でレーザーを受けるが、鏡は木っ端みじんに砕け、突き抜けてきた熱線に焼かれる。
 激痛に耐えながら、あちゃあ、と息を吐く極に、白騎士はいかつい肩を揺らす。
「……実におもしろい考えだ。だが足りぬ」
 ひと息の間を置き、白騎士は極へルールを贈る。
 駆けるな、と。たった一言だけ。
 だから極はぴたりと足を止めた。
 息吐く暇もなく、すぐに白騎士の熱線が別へ飛ぶ。
 黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)の高速移動は残像を生んだ。持ち得る限りの技能を駆使するも、白騎士は動きに惑わされない。やはり未来が見えているのだろう。可視光は的確に魅夜を捕捉する。
 ――ええ、それでも。
 魅夜は構わず鎖を射出した。悪夢の中で自身を拘束していた、切っても切り離せない存在である鎖を。
 そして射出先は戦場――広範囲を補うべく張りたいのが本心だが、自由に動く仲間をも阻害しかねないため、なるべく仲間の手が薄い場所に巡らせる。
 巡る鎖の動きも予見していたのか、白騎士の放つ光線は鎖の合間を疾走した。自らを阻む鎖が伸びようと、かの者は動じない。
 ――そう、そして貴方の射撃は……私を貫くはず。
 矢継ぎ早に魅夜は、ジョーカーのみで構成されたトランプを展開する。肌を焼き肉を焦がす熱線と引き換えに、鎖と共に投げたのは、53枚にもなる死神札。その内の数枚が、白騎士の腕を叩く。
 それも、白騎士にとって予想可能な光景だったのだろうか。
 白騎士は焦りも動揺もせず、貼り付く札を払い落とす。瞬く間に繰り出された攻撃だが、白騎士は狼狽えず、魅夜へ掟をつくる。
 投擲を禁ず、と。

●苦闘
 ここを先途と、猟兵たちは奮いたつ。
 戦場を埋め尽くさんばかりに溢れだしたのは、無数のドローンだ。
 白騎士が召喚した動画撮影ドローンの群れは、耳障りな音を重ね、所かまわず響かせている。
 ――正確無比な未来予想シミュレーション、か。
 ドローンにより白騎士へ齎される恵みは、フォルクもよく知っている。
 ずれたフードを目深に整え、フォルクは騎士の周りに死霊を縋らせ、精神を集わす。死霊は観察のため、じっと影に潜んだ。
 ――纏う風は黒、羽撃く翼は烈風。
 指先で風をなぞり、黒き竜の加護を呼ぶ。フォルクが視野に入れているのは、相殺だ。
 ――その身に宿すは狂乱、上げる咆哮は冥府の陣鐘。
 風と、そして周囲に隠れていた死霊の影が、凍てついた機械の鎧を這う。
「抗う全てを喰らい……宿せし力の無慈悲なる真価を、示せ」
 艦艇のしなびた床や壁からドローンめがけ縋った死霊を、黒竜が喰らう。すかさず黒竜は、怒涛のごとくドローンの群れへ襲い掛かる。
「力に力を重ねるか」
 連ねたフォルクに顔を向け、白騎士がつまらなさそうに独りごちる。
 かの声をフォルクが聞くよりも一瞬早く、竜の威厳はドローン数体のみ闇に融かす。けれど、白騎士を支援する力は遮れなかった。
 他の猟兵が戦う様子を眺め、今回の戦闘記録を集め続けていたノノは、ここでシールドデバイス――二枚の浮遊装甲を解き放つ。
「とりあえず回収完了!」
 込めた気合いは、ノノの瞳を爛々と輝かせる。
 間もなく飛び上がったノノと装甲は、得意とする空中から白騎士を急襲する。リフターも全力全開だ。
 ――挟ませるよ! それでバッチリなはず!
 挑むノノに動揺も見せず、白騎士は無言のまま未来位置にレーザーを放つ。光線の一部はノノのシールドで受け流せたが、すべては防ぎきれない。脚を焼いた一閃は、感じる痛みを遅らせた。
 しかしノノは止まらない。
 ――ルールを宣言されるまで、僅かな時間があるッ!
 ノノの目的はそこにあった。
 白騎士が口開くまでの短時間のうちに、突き通ろうとする。
 盾により、レーザーの直撃こそ免れたため、ノノ自身の体力にはまだ余裕があった。
 そこで捨て身の一撃と決して、激痛を堪えながらランチャーを構える。
 カチャリとはめ込むような音が、頭のどこかで響く。準備は万端、憂いは無い。
「時の果てまで消し飛ぶがいいさっ!!」
 時そのものも燃やし尽くす火勢で、射出した弾が飛翔する。すべてを虚へと帰す炎の魔弾は、いっけえ、というノノの叫びを連れていった。
 黒炎が白い鉄じみた騎士を撃ち、震わせる。
 白騎士には未だに頽れる素振りがない。燃え盛る黒の中、まだ威勢に満ちていた。そして。
「地に足をつけ」
 ノノに与えられた掟は、宙に舞うのを禁じるものだった。
 無数のドローンが、なおも白騎士の周りを飛び交う。
「えっとえっと……よし」
 リグレースは、ひとり肯い窄めた口で短く息を吸う。
 そして吐き出したのは手招く代わりの音。まじないにも、歌にも思える軽やかな声。
「その目に、その夢に、この花を……」
 唱えながら視界めいっぱいに映す、数えきれないほどのドローン。異端なる機械たちは、歌を楽しむ感情も、奏でる声に委ねる耳ももたず、ただ飛行を続けている。
 なんとも悲しいことだと、リグレースは感じた。そして宇宙を絶望へ導く白騎士を見つめ、負けない、と胸に刻む。
 想い馳せた途端、リグレースの言の葉が武器を夕顔の花弁へと変化させる。
 ――これなら、それなりに、しかもいっきに壊せれると思うんだぁ。
 冷たく温もりを拒む帝国の朽ちた艦艇内に、咲き誇るのは絢爛な花の乱。
「妖異な」
 短き命の尊さや儚さを知ろうともしない白騎士には、異様な光景に映った。
 それでも血と影で模られた花弁たちは、じわじわとドローンを、そして白騎士の身を蝕んでいく。やがて、けたたましく悲鳴をあげながら、ドローンが次々機能を失い、墜落していった。
「この戦争、もうちょっとで終わりそうだから」
 リグレースは告げる。花嵐の中心で。
「頑張ってみるね。だから……」
 僕に期待して。
 祈りの続きは声に出さず、風花にも見紛う花弁たちへと紛れ込ませた。
 その頃。
 一度、宣告に基づき昆虫から降りた身だ。乗り直せばルールには反しないだろうと、ルカは直感的に行動に移す。案の定、宇宙昆虫に再び騎乗しても総身に痛みは無い。
 だからルカは、虫が鳴らす音を連れて、突進した。
 ――やっぱり、被弾直後に考えてる余裕は無いわ。なら……。
 身の赴くまま、本能の為すまま、ルカはゆく。
 問答無用で近づくルカを、白騎士も制止しない。だが、遮るものもなく腕へ飛び掛かろうとしたルカへレーザーキャノンを向ける。
 まもなく、白騎士は無言のまま熱線で彼女を焼く。
「降りよ、というまでもなかったか」
 新たな掟とほぼ同時、撃たれた衝撃に耐えきれず、ルカは昆虫から転がり落ちた。
 突然、ブウン、と豪快な音を立てて風が起こる。ゼットが愛機ドラゴンチェイサーを言葉通りぶん投げたのだ。
 そして彼は、まるで生き物のように形態を一変させていく百の刃を扱い、愛機のシルエットに寸秒だけ釘付けとなった白騎士へ、強襲をかける。
 放たれた光線も、愛機にぶつかり軌道が逸れた――好機をゼットは逃さない。
 狙うべき相手は決まっている。握り緊めた拳を彩るのは、竜骨で組まれた大型の義手。
「大物食いの一撃、受けてみやがれ!」
 大音声を轟かせて意気込んだゼットが、砕けた愛機の陰から、凄まじい威力の右ストレートを入れる。
 ――読まれてるだろうが、関係ねえ!
 怪力に任せた渾身の拳は、白騎士の装甲を打ち破った。
 一方、魅夜はじっと、白騎士を瞳に映した。
 ――視えているからこそ、というのはあるはずです。
 予測できているのなら、最も撃ちやすい地点を狙うはず。そう魅夜は考えていた。
 嘘か真か、白騎士の砲撃は、魅夜が張り巡らす勢いで撃ちだした鎖の間を縫う。戦場に伸びた鎖で仲間たちが脚を止める代わり、光は淀みなく魅夜を狙った。
 しかし魅夜も立ち尽くすばかりではない。投擲した札を射撃の光に当てて、被弾する位置をずらす。
 それでも、先刻に定められた掟を破った処罰の分と、此度の一撃が胸部を打ったことで、全身を駆ける痛みは激しい。
 投げた死神札の何枚かが、白騎士の腕部に貼り付き、痛みを齎す。しかし白騎士は、取るに足りないことのように音声を零した。
「近寄るな」
 白騎士の敷いた掟は意外なものだった。
 殆ど動かずに立つ魅夜への妙な宣告に、しかし当人は戸惑わない。応じもしない。
 そろりと、魅夜は胸元から呪いの短剣を取り出した。レーザーを受けた跡が、生々しく残っている。
 ――この胸に潜ませた呪いの短剣は、一瞬の盾でもあります。
 盾の役目を終えた剣を、今度は本分を果たそうと握る。
 そして次なる攻めに転じようと迫った魅夜に、白騎士の砲口と、宣告を無視したことによる苦痛が向く。
「……先の札に続き、もう一手、試みるならば」
 此れにて相手になろう、と白騎士のレーザーキャノンが作動した。胸守っていた短剣を握る魅夜を、その未来位置を、熱線が射貫く。
 けれど魅夜は激痛に耐え、覚悟のままに時を喰らうため、飛び込んだ。それでも加速足らぬ一撃は、いかに素早くとも白騎士を斬ること能わず。
 視界に映るすべてが杳然とし、意識が薄れゆくのに魅夜は気付く。そのまま力無く膝をついた彼女へ、白騎士は視線を降らせ、至って淡泊に告げる。
「妙案だった。が、手緩い」
 白騎士は一言、そう口にするだけだった。
 呑み込んだ息が喉の奥で詰まるのを覚え、魅夜は倒れ込む。
 ぐったりとした魅夜を、オーラの守りを纏いながらフォルクが退避させる。
 生死に関わる呪術などにも造詣が深いフォルクは、仲間の命を脅かすものが施されていないかを、念のため確認した。特に問題はなく、フォルクは安堵の息を吐く。
 同じタイミングで、掻き寄せた宇宙昆虫にしがみつき、ルカは今一度、攻撃を仕掛けにゆく。
 ――誰の言葉か知らないけど、死ななきゃあ安い、とも言うし。
 仲間が連接している攻勢の波。
 これを途絶えさせてはならないと、彼女の本能が告げていた。
 今、ルカの脳裏を過ぎるのはいつかに見聞きした格言だ。
 そのため死なないように気を付けながら、昆虫に跨り駆け抜ける。けれどレーザーは、襲い来る存在を違わず貫く。
 昆虫から転落し、肌を深々と焼かれ抉られた痛みに抗う。そんな彼女へ向かう白騎士の声は、ひどく冷たい。
「未来は尽きる。それを受け入れろ」
 ここへきて、白騎士の宣言は、きわめて簡単なようで困難なものと化した。
「冗談のつもりかしら?」
 ルカが息もろとも吐き捨てるように返す。自分たちは猟兵だ。大人しく首肯するつもりも、諦めて項垂れるつもりもない。
 そんなルカの皮膚の下を、受け入れなかった報いだと知らしめるかのごとく、激痛が走った。
 ――こんなに強力な幹部や軍隊があって、なぜ滅んだの……。
 薄れゆく意識の中、ふとルカは思った。
 崩れ落ちたルカから危難を避けさせようと、ノノがルカを引き寄せる。
「ふう、危なかった!」
 息を整えるノノをよそに、徐に、白騎士が視線を投げた。
 投げた先は、今しがた倒れた仲間を端へ寄せる者にではなく、先刻、謎かけに似た発言をした少女、極で。
「……指摘するに尽きたか?」
 問い掛ける白騎士の威圧にも、極の眼差しは揺らがない。
「残念ながらね、もうひとつあるんだよ」
 次に何を放言するのかと、白騎士は気にかけているらしい。
 だから極は突きつける。
「そのユーベルコードで判るのは位置だけ。どう動くかなんて、分からない」
 考えた弱点を言葉に換え、極はそれを実証しようと武器を手に跳んだ。
 跳躍した彼女の着地点へ、レーザーが深々と傷を描く。
 そして極は、握っていた武器をくるりと手の平で遊ばせ、口の端をあげてみせる。
「攻撃するつもりなんて、なかったんだよね、ボク」
 そのユーベルコードでわかるのは、未来位置のみ。対象がどう動くかまでは、わからない。
 指摘したこの弱点を、実証して見せるのは困難だった。ううん、と極が唸る。
 極の言葉は、ユーベルコードを展開する詠唱には至らなかった。
「実におもしろくはあった。……それだけだ」
 何を思ったのか白騎士はゆるくかぶりを振り、ひび入ったメットのシールド越しに極を捉える。
 極の燃えるような色の双眸が、まじまじと白騎士を見据えた。
 直後、別方向へと熱線が踊る。
 武器を構えたまま動くラザロへ、白騎士が放ったものだ。
 そして創り出された掟により、移動を禁じられたラザロは、鼻を鳴らす。どうにかして白騎士との距離を縮めようと、睨み付け、吼え、得物を振りかぶる。
 決してルールに抵触することなく煽るラザロに、白騎士は何事か思案する間を置き、近寄った。
 恐らく予想はされているだろう。だが、それでも。
 光線に焼き切られたラザロの鱗から、血が噴出する。撥ねた紅は衝突しかねない位置に立った白騎士にも、少しばかりかかる。
 ――とっくに覚悟は決まってる! 叩き込んでやるぜッ!!
 顔に刻まれた傷跡がちりちりと疼く。
 その感覚を失わぬ裡に、ラザロの返り血で紅を塗った白騎士へと、放たれたのは不滅の炎。
 表面を熱された白騎士はしかし呻きもせず、炎の色を総身に映すばかりで。
「愚かな、この程度」
 白騎士の掠れた音声が、そう吐き捨てた。
 そして赤々と照らす炎を逸れた先。
 満身創痍の愛機ドラゴンチェイサーを、白騎士へ向け滑らせたゼットが、超高速の打撃で白騎士の胸元を叩く。
 すんでのところでレーザーに焼かれようとも、既に動き出したゼットの拳は止まらない。
 愛機を蹴飛ばす白騎士へ、気概を秘めたゼットの拳が入り、装甲板を打ち破る強烈な一撃となった。

 傷痍を満載し、白騎士ディアブロはついに――ついに膝を折る。
「示唆に富む。そう、言わせてもらおう」
 白騎士はしかし暗澹を微塵も顔に刷かず、ただ体力の残量が薄れたことを悔いた。
「……此の戦闘の記録もまた、私の礎となる」
 掠れた音声は艦内に反響し、やがて途切れる。
 これで白騎士の身は一度、骸の海へと還ったはずだ。
 猟兵たちの積み重ねてきたものは、たしかに『一人の戦士』を崩した。
「やっと、やっと、なんだね」
 リグレースはそう呟いてから、自らの言葉を理解して長く細い息を吐く。
 朽ちた艦艇に静寂が蘇る。仲間の手を借りてでも立てる者が、少ない。
 それは正しく、辛勝だった。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月23日


挿絵イラスト