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第二次聖杯戦争⑩〜頽廃なる無花果の園

#シルバーレイン #第二次聖杯戦争 #妖狐七星将『巨門』 #ファイヤーフレイムガール #夕狩こあら

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 猟兵に覚醒した妖狐七星将『巨門』は飄然と言ってみせる。
「僕らは戦争みたいな集団戦ではかなり役に立つでしょ!」
 力になろうと降り立った戦場は兼六園。
 大量のリリス化オブリビオンによって「悦楽の宴」が行われる、酒池肉林と変わり果てた園だ。
 一線級の猟兵達と較べては見劣りするが、手に入れたユーベルコードはこのような戦場でこそ精彩を増すと、金彩の瞳に鋭い光を湛えた巨門は、己が露払いを務めようと進み出る。
「宴の周縁部を守るリリス化オブリビオンは僕が薙ぎ払おう。皆は道が切り開かれた隙に宴に突入して欲しい」
 何のしがらみもなく「思いっきり殴っていい」状況は、多分、これが初めて。
 囚われた一般人を救出したり、「悦楽の宴」の中心部で頽廃的な儀式を行おうとしているオブリビオンをやっつけるのは任せたと言を置いた巨門は、闘争心全開で敵群へと向かっていく。
「さあ、がんばるぞ〜!!!」
 無論、闘争心全開なのは猟兵も同じ。
 彼等もまた強く蹴り出し、巨門に続いて颯然の風となるのだった。


 宏大と幽邃、人力と蒼古、そして、水泉と眺望。
 相兼ぬる能わざる六の景観を持した庭園「兼六園」は、石川県金沢市の代表的な景勝地なのだが、この素晴らしき庭園が大量の「リリス化オブリビオン」によって淫靡な景色に塗り替えられている。
 池は万象を酔わせる酒に、木には生血を滴らせる肉が成り。
 催淫の気によって人々は倮(裸)に、享楽の涯に魂を吸われるのだ。
「……この儘では一般人が犠牲になってしまうわ」
 何とかこの儀式を止めたいと、真剣な表情で呼び掛けるニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)。
 幸いにして戦場には妖狐七星将『巨門』が居り、彼が周縁部を守るリリス化オブリビオンを薙ぎ倒してくれるので、この隙に中央の「悦楽の宴」に突入して、儀式を行うオブリビオンを撃破しようと提案する。
「皆にお願いしたいのは、巨門が敵群を切り開いた隙をついて『宴』を阻む事と、囚われた一般人を救出する事……どちらもは大変だけど、分担すればきっと大丈夫!」
 宴の周縁を固めるリリス化オブリビオンは巨門に任せる。
 問題は、「悦楽の宴」で儀式を行おうとするオブリビオンだとは、花屋が声色を落として説明しよう。
「やっつけて欲しいのは、ファイヤーフレイムガール……最初は可愛らしい小悪魔の姿をしているけれど、敵は皆の姿を捉えるなり、其々が最も愛慾を注ぎたくなる姿になって誘惑してくるから気を付けて!」
 彼女達の最大の武器は、瞬時に心を読んで操る催眠術。
 己に攻めかかる猟兵すら儀式の生贄にしようと、夢魔は巧みに姿を変えて精気を吸おうとしてくるので、何とか頑張って欲しいとニコリネは応援する。
「皆が夢魔を前に陥落するとは思えないけど、大切に想う人が相手だったらどうか分からないわ。もしか目の前に現れる人物に自分すら驚くかもしれないけど、どうか落ち着いて。悪魔たちはその動揺すら蜜と悦ぶ」
 人の心につけこむ遣り口も、その心を「贄」と使う儀式も腹立たしいもの。
 巨門と共に全てをやっつけて欲しいとお願いしたニコリネは、ぱちんとウインクするやグリモアを喚び、
「貴方の前に誰が現れるか……誰にも知られない裡にやっつけちゃって!」
 と、精鋭を送り出すのだった。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 このシナリオは、『第二次聖杯戦争』第十の戦場、無数のオブリビオンによって穢されつつある兼六園に妖狐七星将『巨門』と共に突入し、奪還作戦を行う集団戦シナリオ(難易度:普通)です。

●戦場の情報
 石川県金沢市、日本三名園の一つにも数えられる「兼六園」。
 大量の「リリス化オブリビオン」によって危険な「悦楽の宴」の場に造り替えられており、多くの一般人が囚われ、宴の犠牲にされようとしています。

●敵の情報:『ファイヤーフレイムガール』(集団戦)
 欲望のままに、燃え盛る炎のように生者を飲み込もうとする「リリス化オブリビオン」。
 彼女達が漂わせる濃密な桃色のオーラが、思春期の悶々たる情動を呼び起こしたり、相対する者にとって望ましい姿(外見・衣装・仕草・科白等)で誘惑を仕掛けてきます。
 今回、猟兵が戦わなくてはならない「儀式を行う個体」は、本人が最も思慕する者に姿を変えて甘言を囁きます。プレイングで敵がどんな風に見えるか、本人との関係性や、最も好むシチュエーション(誘惑)を示して頂ければ幸いです。

●プレイングボーナス:『巨門が敵群を切り開いた隙を攻める/囚われた一般人を救出する』
 このシナリオフレームには、特別な「プレイングボーナス」があります。
 これに基づく行動をすると、戦闘が有利になります。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
 団体様は【グループ名】を冒頭に記載願います。
 また、このシナリオに導入の文章はありません。
 先着で5~7名程度の採用とし、サポートも採用しつつ早期の完結に努めます。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 集団戦 『ファイヤーフレイムガール』

POW   :    燃え盛る欲望
【悟らないと耐えられない桃色のオーラ】を放ち、命中した敵を【思春期のように悶々とした情動】に包み継続ダメージを与える。自身が【体表の80%以上を露出(ソックスは除く)】していると威力アップ。
SPD   :    夢魔の檻
レベルm半径内を【濃密な桃色の霧】で覆い、[濃密な桃色の霧]に触れた敵から【生物か非生物を問わずに精気】を吸収する。
WIZ   :    避けられぬお約束
【よーく絡まった桃色の運命の糸】を纏わせた対象1体に「攻撃力強化」「装甲強化」「敵対者に【社会的ダメージを負う事故】を誘発する効果」を付与する。

イラスト:赤霧天樹

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アオイ・ダブルナイン
相手はおそらく、私の怨敵である邪神の姿――悍ましい肉塊――を取ると思います
私が正義の心に目覚めるまで、身も心も魂も玩び、穢し、快楽と冒涜の奴隷に貶めていた、忌まわしく下劣な巨悪…
…残念ですが、その誘惑方法は私に通じません
私の体内には、邪神の種子が巣食っています
偽りの誘惑より、もっと激しく我が身を苛む忌まわしいモノが、はっきりと感じられるのです
あの邪神は、ひどく幼稚な独占欲の塊ですから…反旗を翻した私でさえ、他のものに盗られるのが、我慢ならないのでしょう

そして今なら、労せず非常起動が出来ます
一般人を対象にユーベルコード起動、意識のケアをしつつ逃げさせます
邪魔はさせません
正義の刃を受けなさい



 妖狐七星将『巨門』との連携は上々。
 先駆の彼が「悦楽の宴」の周縁部を切り崩した瞬間、全速力で追撃に掛かったアオイ・ダブルナイン(蒼攻超騎ダブルナイン・f34915)は、その月の如く冱ゆる銀瞳に、|頽廢《デカダン》の儀式に耽る夢魔を捉えた。
「あなた達が、この儀式の――」
 冷艶と輝ける騎士劍を向けた瞬間、桃色の香氣が縒り合わさって|縷絲《いと》を成す。
 劍に絡まる其を振り払う間もなく、アオイの艶姿に|翳影《かげ》を落としたのは、不定形ながら輪郭を持ち、歪に脈動する中で熱を滾らせる――何とも悍ましい肉塊だった。
(「――ッ、矢張り」)
 押し潰されそうな衝撃に瞳を眇めながら睨めるは、怨敵たる邪神――アオイが猟兵として覺醒するまで、彼女の身も心も弄び、魂を穢した忌わしき巨悪だ。
 この下劣な肉塊は、熱帯びた舌の樣な感触で玉膚を這いずり、快樂と冒瀆の奴隷に貶めていた記憶を呼び醒ますが、佳人は二度と狂熱には抱かれぬ。
「……残念ですが、その誘惑方法は私に通じません」
 嘗て嫋音嬌聲を零したか知れぬ花脣は怜悧な儘。
 邪神が悦ぶ甘美には堕ちぬと、押し掛かる熱い肉に冷たい流眄を注いだアオイは、過去に蹂躙の限りを尽された身を顧みながら、靜かに口を開いた。
「私の体内には、邪神の種子が巢食っています。偽りの誘惑より、もっと激しく我が身を苛む“忌まわしいモノ”が、はっきりと感じられるのです」
 自我に目覺めたからこそ、その忌わしさが理解る。
 魔術と科学の融合たる下僕の一体だった己は、嘗ての主の稟性も知り得ていると肉塊に一瞥を呉れると、その瞳の色に冷然と訣別を示した。
「あの邪神は、酷く幼稚な独占欲の塊ですから……反旗を翻した私でさえ、或いは離反したからこそ、他者に盗られるのが我慢ならないのでしょう」
 言って、【非常起動:邪精隷使役】(ダークスレイブ・ドミニオンコントロール)――悦樂に耽る人々にダークスレイブ・コードを放ち、催淫の術から意識を掬い上げる。
 これだけの人数なれば、其々の足で避難させるのが最適と、逃げゆく人々の背を見送ったアオイは、猶も蠢く肉塊に冷嚴の|星眸《まなざし》を注ぐと、桃色の絲をふつりと斷って鋩を袂へ――玉肌香膩に張り付く肉塊を突き刺した。
「邪魔はさせません。正義の刃を受けなさい」
 正義の心が創る騎士劍は、一縷と光を翳らせず。
 玲瓏と輝ける光刃を沈めれば、元の形姿を取り戻した夢魔が悲鳴を叫んで果てるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニーニアルーフ・メーベルナッハ
巨門さんは相変わらずですね…とはいえ、あの暴れぶりが今は頼もしいです。
彼が切り開いた道を突き進み、儀式の場へ突入しましょう。

とはいえ、此度の敵はかなりの難敵。
可愛らしくも生意気そうな男の子の姿に変化し、悶々としている私の情動を意地悪な物言いで煽ってきます。
この手の罠にはどうにも弱い身の上なので、だんだん欲望が高まってきてしまって…

…って、流されてはいけません!
戦わなければいけないという使命を思い出し、何とか自分を奮い立たせます。
この情動も欲望も、煽って来るオブリビオンも!
全部纏めて、消えて、なくなってくださーい!
(白燐拡散弾で周囲の敵を纏めて攻撃)



 |頽廢《デカダン》の園と化した兼六園を駆け、突撃槍の如く「悦楽の宴」へ切り込む――。
 妖狐七星将『巨門』は相變わらず、蓋し今は彼の雄姿が頗る頼もしいと眦を緩めたニーニアルーフ・メーベルナッハ(黒き楽園の月・f35280)、通称「ニーナ」は、宴の周縁部が切り崩された隙に突入する。
 敵は、被害者は、と白銀の麗瞳が周囲を巡る裡、桃色の香氣に包まれたニーナは、不躾にも銀誓館のセーラータイをグイと引っ張られ、無理矢理振り向かされた。
『ねェ、何か探してンの? 俺なら此處だけど』
「あなたは――っ」
 明らかに年下ながら、物言いも距離も馴れ馴れしい男子。
 一目見て“可愛らしい”と思ったのは、かの小悪魔がニーナの嗜好を的確に再現したからで、麗顏に乗る生意氣も、忽ち頬に差す|含羞《はじらい》を揶揄う意地悪な微咲も、全てがニーナを恋の情動へ誘うよう。
『え、何? もしかして、もう俺を|そういう目《・・・・・》で見てる?』
「! そんな、可愛い男の子とあんなコトこんなコトしたいだなんて……!」
 果して本人に自覺はあろうか、丹花の脣より欲望を零す彼女は、實は快樂主義者。
 青春らしい悶々たる情動に昂ぶったニーナは、彼の指にタイを巻き取られる儘――身を任せてしまう。
『……制服、似合ってるけど。皺苦茶になるまで可愛がってあげよっか』
「そ、それは……思春期の女子って、ほら、男子に言われる儘に流されてしまうものですから……っていけません!」
 彼の手がスカートのサイドスリットに掛かった瞬間、己の使命を思い出し、ドンッと突き放す。
『あれ、もう御仕舞い? おねーさんも儀式の贄になって欲しかったンだけど』
 兩手を広げて肩を竦める小悪魔男子を前に義氣凛然、訣別の色を瞳に示したニーナは、纎手をぎゅと握り込めると、身体の火照りを吹き払うように聲を張った。
「この情動も欲望も、煽って来るオブリビオンも! 全部纏めて、消えて、なくなってくださーい!」
『えっなん……う、わ――ッ!!』
 裂帛の気合と共に解き放たれるは、【|白燐拡散弾《シュツルム・フォスフォール》】。
 主の佳聲に喚ばれた白燐蟲の大群が忽ち標的を取り囲んで喰らいつき、脅威を感じた彼がファイヤーフレイムガールと戻っても、白燐蟲はその悲鳴すら屠っていく。
 夥多しい羽音が戰場に滿つ中、ニーナは深い溜息をひとつ、
「…………かなりの難敵でした」
 と、緊張の糸が切れた樣に座り込んでしまうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カーバンクル・スカルン
大切に思ってる人なぁ……正直いねぇのよな。逆にリリス達が私をどう見たのか気になっちゃうというか。

もし知ってる猟兵に化けたところで、がっつり悪事に加担しとるわけじゃん? だったらぶん殴ってでも止めなきゃさぁ、大事な人だったら。

家族? 同じ艦で過ごしてた、ってだけの相手にかける情なんてないね。大叔父さんには毎日飯を食わせてもらってた恩はあるけど、恋してたかっていうとまた別やし。

枯れすぎ? 余計なお世話じゃ。【五馬分屍】で死なない程度にリリスを5方向から引っ張りつつ、攻撃に参加しなかった車輪で捕えられていた一般人を外へ運搬して参りましょう。巨門さんが暴れてくれるおかげで道が空いてて助かるねぇ。



 先駈を預った妖狐七星将『巨門』が「悦楽の宴」の周縁部を切り崩した瞬間、巨大な車輪を連れて混亂に割り込んだカーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)は、猟兵の侵襲に反應した敵方が一斉に桃色の馨氣を膨らませた時、ある意味“期待”した。
「――噫、知ってる猟兵か」
 慥かに大事に思っていると、己の|心胸《こころ》を巧みに探った小悪魔に感心する。
 蓋し「思って」はいるものの「想って」はいないと、忠実に再現された虚像に纎指を差し向けた佳人は、数多の棘を生やした『カタリナの車輪』を擲げ放ち、忽ち磔にした。
『ッッ!! 貴女にとって大事な存在を!?』
「勿論。これだとガッツリ悪事に加担しとる訳じゃん? だったらブン撲ってでも止めなきゃさぁ」
『ブン――ッッキャァァ嗚呼!!』
「大事に思うなら餘計にね」
 言う間に車輪から鎖を伸ばし、大事な|猟兵《とも》の四肢を聢と拘束する。
 無数の棘に躯を押し當てられた小悪魔は、堪らずカーバンクルを見て胸裡を探るが、赫々と輝ける紅瞳の奧の奧――彼女が眞に思慕する者は居ない。
 ならばと此度は家族に化けようか。
 小悪魔はゆうらと輪郭を搖らすと、カーバンクルの記憶にある通りの|姿態《すがた》と|聲音《こえ》を再現して見せた。
『私に此の樣な仕打ちを? 本当はもっとしたい事があるだろう。ほら――』
「……大叔父さん、か」
 慥かに、彼には日々の飯を食わせて貰った恩がある。
 然し「同じ艦で過ごした」というだけの相手に掛ける|情愛《なさけ》は無し、催淫術によって煽られる悶々とした情動を注ぐ相手には非ずと|頭《かぶり》を振ったカーバンクルは、絡めた鎖を引っ張って持ち上げ、死なない程度に激痛を與え始めた。
「恋してたかっていうと、また別やしね」
『痛痛ッッ、いだだだだ!! アナタ枯れすぎじゃない!?』
「餘計なお世話じゃ」
『痛だだぁぁあいっ!!』
 小悪魔を引き裂かんばかり激痛は、中華式車裂刑【五馬分屍】。
 悪戯に心に踏み込んでは他者の像を借りる不届き者を締め上げたカーバンクルは、その一方で一般人に向けて車輪を疾らせ、甘美な馨氣が届かぬ安全圏まで運搬して遣る。
『お願い、やめてー!』
「巨門さんが暴れてくれるお陰で、道が空いてて助かるねぇ」
『イヤー!』
 凄まじい激痛にファイヤーフレイムガールは變身を解いていたが、緋髪の佳人が鎖を緩める気配は一縷と無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

日輪・黒玉
初めてお会いしますが、その闘争心に身を任せる狩りというのも私は嫌いではないですよ、巨門さん
私はそのこじ開けた隙を更に噛み裂いて広げるとしましょう

誘惑、ですか
そのような絡め手が誇り高き人狼に通じるとは思わないことですね
オーラに構わず、精気を吸収され切る前に高速で首を狙って蹴り抜こうとして……

!?!? パ、パにママ……!?
現れるのは故郷にいるはずの父と母の姿
二人から戦いでの雄姿を褒めちぎられ、甘やかされることで誘惑されてしまいます

………はっっっ
ち、違いますっ、誇り高き人狼はこの程度で惑わされたりしません!
黒玉はええ、ぱ、父上と母上に褒められてデレデレなどしないのですっっっ!!



 雪嶺の鼻梁を進路に結び、烱々と光る藍瞳に赫燿を映す。
 戰場に綺羅星と輝く彼こそ、妖狐七星将『巨門』――猟兵に先んじて「悦楽の宴」に切り込む勇猛を見た日輪・黒玉(日輪の子・f03556)は、怜悧に結ぶ佳脣に淡い微笑を湛えた。
「初めてお会いしますが、その鬪爭心に身を任せる|狩獵《かり》というのも、嫌いではないですよ」
 何の柵も無く、思い切り殴る。
 而して暴かれる力が頼もしいと彼に続いた佳人は、忽ち混亂する宴に狼氣を疾らせ、儀式に耽る悪魔達に嚙みつき、引き裂いて、更に騒擾を広げんとした。
「誘惑に長けると聽きましたが、その樣な絡め手が誇り高き人狼に通じるとは思わない事ですね」
 勿論、鋭い嗅覺は催淫の馨氣を捉えている。
 ならば精氣を吸い尽される前に仕留めるべしと、『藍晶疾走』を更に加速して駆けた黒玉は、桃色の霧に搖れる|翳影《かげ》に烱瞳を結び、首を狙って蹴り抜かんとした。
 その時である。
『噫、實に麗しく育ってくれた』
「!? パ、パ……!?」
『可愛らしいお顏はその儘に、美しさは玉のように磨かれて』
「!? ママ、まで……!?」
 刹那、首の骨を折らんとした蹴撃が止まる。
 莞爾と頬笑むは、故郷に居る筈の兩親――何故、と思う間も無く二人は黒玉をぎゅうと抱擁した。
『地と空を別つように駆ける姿は、まるで藍き狼。餘りの美麗しさに、時を忘れてしまう』
 ずっと見ていたと双眸を緩める父の言を、困惑しつつも聞く。
 父が黒玉の雄姿を褒めちぎれば、隣する母は愛情いっぱい強く抱きしめ、愛娘の奮闘を勞った。
『此處まで一人で來たなんて偉いわね。でも私達の前では、めいっぱい甘えて頂戴』
「パパ……ママ……」
 噫、胸に温かいものが広がっていくのが判然る。
 匂いまで同じだと警戒心を解いた黒玉は、この儘ずっと……と思った所で、胸がざわめいた。

「…………はっっっ」

 ――今。確実に誘惑されていた。
 不覺にも心の奧に侵入を許し、ほややんと甘えてしまったのだ。
「ち、違いますっ、誇り高き人狼はこの程度で惑わされたりしません!」
『我慢しなくていいのよ?』
「いいえ、いいえ! 黒玉は、ええ、ぱ、父上と母上に褒められてデレデレなどしないのですっっっ!」
『“ぱ”って言った』
 狼耳をふるふる、懷しい聲を振り払うように頭を振った黒玉は、人狼の矜持を覺び醒して【|黒玉狼の疾風《プリンシパル》】ッ!
 父母の視線から遁れるように死角へ回ると、神速の蹴りで兩者を狩り取り、元の姿となった小悪魔の骸を転がした。
「……誇り高き人狼は。黒玉は」
 日輪の子は斯くあるべし――と。
 まるで己に言い聞かせるように、佳人はきゅっと櫻脣を引き結ぶのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
巨門の犠牲(死んでない)は無駄にしないぜ
ダッシュで突撃

女の子は好きだが男は苦手です
女性は『夢匣』に放り込む
男性は気絶攻撃の稲荷符で昏睡させて茂みに隠すよ

フレイムガールは恋人の姿で魂まで混ざり合いたいと迫るのかな
綺麗だと認めるけれど、魂に触れ合う関係だからこそ魂の色や匂いの違いを見切る
帰ったら本人におねだりしよう
リリスの誘いを想いと狂気耐性で祓うぜ

誘惑された演技で近づいて柔術グラップルで捕縛して
八重歯を突き立て魂喰らいの接吻(吸血仕様)で奪われる以上に精気と魂を喰らう
本来の可愛い姿が見たいと逆誘惑して抵抗心を挫き、綺麗なまま逝かせるぜ

リリスも女の子だ
一人ずつ丁寧に相手するよ
ごちそうさま、おやすみ



 猟兵に先行して戰場を駆けた妖狐七星将『巨門』が、目下、「悦楽の宴」の周縁部を切り崩す。
 この混亂に乗じて敵陣に突撃した四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)は、見事先駈を務めた彼に小気味佳い流眄を注いだ。
「巨門の犠牲は無駄にしないぜ」
 死んではいないが、彼に頼るのは此處まで。
 この好機を大いに活かすべしと、颯の如く疾った燦は、美し金彩の瞳を烱々と巡らせるや、|頽廢《デカダン》の園に集った人々の救済に掛かった。
「男女差別って言うなよ。嗜好の問題だ」
 女性は、『夢匣』――パンプキンの箱庭世界に抛り込み、快適な世界で休んで貰う。
 而して男性は、四王稲荷符を以て気絶させ、催淫の馨氣が抜けるまで|茂草《しげみ》に隱れていて貰おうか。
「……で、民間人は儀式を止めた後にもケア出來るとして」
 問題は彼等を堕とした連中だと、再び周囲を見渡そうとした時――濃密な桃色の霧に包まれる。
 甘美な匂いに妖狐生來の情欲が煽られると警戒した燦は、霧が晴れる先、夢魔の檻から纎手を伸ばす佳人に「成程」と艶笑を注いだ。
『私と一緒に囚われて。貴女と魂まで混ざり合いたい』
 ゾクリと粟立ったのは、櫻脣を滑る聲色まで同じ故に。
 我が恋人の美しさに、己が願望をも重ねた姿は餘りに狂愛しく、そと伸びる指に指を絡めて温かさを確かめた燦は、品佳い鼻梁が触れ合う程の距離で囁いた。
「綺麗だよ。認めるぜ」
『じゃあ愛してくれる?』
「生憎だけど、帰ったら本人に|御誣頼《おねだり》するよ」
 魂に触れ合う関係だからこそ、魂の色や匂いの違いが判然る。
 快樂主義は認めるが、本命には誠実でありたいと苦笑した燦は、未だ愛らしい上目遣いで見る夢魔を抱き留めると、【|魂喰らいの接吻《ピュアリィソウルイーター》】――淸楚な頸に八重齒を突き立て、奪われる以上の精気と魂を吸った。
「なぁリリス。お前の本來の可愛い姿を見せなよ」
『本当の私を愛してくれるの』
「噫、アタシなら綺麗なまま逝かせてやれる」
 白い咽喉が恍惚に震えるのを紅脣で感じつつ、更に誘惑する。
 彼女も己が大事に思う女の子にて、一人ずつ丁寧に相手しようと魂まで取り込んだ燦は、小悪魔の血によって紅色を強くした佳脣に塊麗の微笑を湛える。
「――ごちそうさま、おやすみ」
 アタシの中で眠りな、と。
 宛ら|小夜啼鳥夜《ナイチンゲール》の囀聲が、安けき夜の|音訪《おとず》れを告ぐのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
蛇オブリビオン相手にしたら今度は炎だねぃ♪
今度も墨ねーと連携で倒しちゃうじぇ。

まずはパフォーマンスで身体を強化させるよ。
次に封印を解いてから限界突破で愛剣構える。
属性攻撃と貫通攻撃に鎧砕き込めた【雪の女王】を。
相手が炎を操るなら僕らの技は通用するはずだじょ♪
二刀で使うなら更に威力は上がると思うじぇ~♪

複数相手みたいだし墨ねーと連携技を出すのもいいね。
墨ねーの技に合わせて僕も【雪の女王】をきめるよ。
「連携…『冬の嵐』ッ♪」

お?一般人さんが囚われてるみたいだねぃ。
ならついでに救っちゃおう♪うぇーい。救出ー♪
一般人さん達に被害があったら猟兵としてダメだし。


浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
金沢になにか恨みでもあるんでしょうか?
それとも思い入れが強すぎてこの所業?
確かにとてもよい土地の一つではありますが。

え?久々に二人で連携技…ですか?
突然の宣言なので戸惑いましたが了解です。
【蒼閃『御神渡』】を使用します。
その前にリミッターを解除し限界突破で強化。
技を出す直前に属性攻撃と貫通攻撃に破魔を。
私に合わせてくださるそうで気軽にいきます。
時々ロベルタさんの技を先行し連携技を。
私からでは相手も慣れて回避されてしまうかも。

ロベルタさんの一般人救出のお手伝いもします。
彼らの安全を護るのも猟兵のお勤めですから♪



 金沢城公園から始まった戰いは、香林坊から片町、近江町市場、西茶屋街……そして、今は兼六園。
 こうする間にも、数多のオブリビオンが|銀色の雨《シルバーレイン》と共に降り注いでいると、遠い空を見上げた浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は、何故、という想いを佳聲に滲ませた。
「……金沢、に……何か……恨み、でも……ある……でしょ……か……」
 この街特有の、地形上の理由があると云うのか。
 それとも思い入れが強すぎる爲に、これ程の所業をするのか。
 慥かに名所の一つではあると首肯を置いた墨は、それ故に許し難い儀式が行われていると、痛む胸に手を宛てる。
 隣するロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)も、大量のリリス化オブリビオンが投入されたという|頽廢《デカダン》の園を見遣ると、然しケロリとした表情で言ってみせた。
「蛇のオブリビオンをやっつけたら、今度はファイヤーフレイムガール……? とにかく燃えてるねぃ♪」
 流石はデスゲームを強要される世界を生きる少女と云うべきか。
 酸鼻や理不尽を前にしても意氣揚々、墨と一緒なら頑張れると花顏に|微笑《えみ》を咲かせたロベルタは、何か閃いたように靑瞳を輝かせると、樂しげに提案した。
「墨ねー、相手が炎を操るなら、僕ら格好良く連携して倒しちゃう?」
「え? ……久々、に……二人で……連携……技……です、か……?」
 ふくふくと咲み掛けるロベルタに向き合い、玻璃の震えるような佳聲で問い返す墨。
 突然持ち掛けられた作戰だが、ならば尚の事、敵方を翻弄できようかと納得もした佳人は、小さくコクコク。
「……了解……で、す……」
「やたっ♪ きっと通用するじょ♪」
 二人はこれまで幾度と共鬪した間柄。
 綿密な打合せをせずとも、経験や呼吸力で合わせる事が出來ると首肯を揃えた芙蓉二花は、大量のリリス化オブリビオンと民間人が入り亂れる騒擾の中、機を同じくして能力の底上げに掛かった。

「相手は複数……それなら、広範囲に及ぶ技がいい筈だじょ♪」
「……本來、の……兼六園……に……相應しい……技、を……」

 少女らが揃って構えたのは、白銀と輝ける冱刃。
 花車に祕める埒外の異能、その封印を解いたロベルタは、左右の手に魔法劍『プリンチペッサ・ロッソ』と蒼炎の刃『ミスティルテイン』を構え、持ち得る全ての魔力を注いで劍身を煌々と輝かせていく。
 傍の墨は、白磁の纎手に馴染み切った『粟田口国綱』を抜くと、かの絢爛なる亂刃文に淸々とした冷氣を流し込み、刀身に破魔の力を漲らせていく。
「ふふっ、二刀で使うなら更に威力は上がると思うじぇ~♪」
「私の……一刀も……含め、ます……と……三刀流……に、なる……でしょうか……」
 小気味佳く一瞥を交した二人が、幾許の諧謔を添えたのも一瞬の事。
 絶対零度の凍氣を纏った少女らは、片や二振りの刃で旋風を成し、片や一振りでジグザグの衝撃を走らせ、戰場一帯を|氷の地獄《コキュトス》へ突き堕とした――!
「連携……『冬の嵐』ッ♪」
 麗らかな金絲雀の佳聲が召喚したのは、La regina delle nevi――【雪の女王】。
 嫋やかに閃いた二条の劍筋が颶風の如く渦を成した、正に須臾、墨もまた白光一揮して凍氣を吼え哮る。
「……響け……」
 冱々と美しい靜粛を齎すは、蒼閃【御神渡】。
 湖水を渡る龍の如き氷の隆起は、淫靡な儀式を行おうとする邪のみに咬み附き、その魂までも凍てつかせた。
『ッッ、人間を贄とする筈が、何故私達が宴の犠牲に……ッ!?』
『ああっ……芳しき悦楽の宴が……氷に鎖されてしまう……っ』
 欲望を燃え盛るファイヤーフレイムガールも、愛欲なくしては只々、熱を奪われるのみ。
 小悪魔達が次々と魂を氷結させれば、嫋音嬌聲に滿ちていた一帯に、漸くぱたぱたと可憐な跫音が響いた。
「お? 一般人さんが囚われてるみたいだねぃ」
「……儀式を、止めら……た……ので……正気、を……取り……戻して……くれる……で……うか」
 催淫の馨氣に中てられていた人々に駆け寄り、外傷の無い事を確かめるロベルタと墨。
 昏睡状態にあるだけだと安堵の息を吐いた二人は、それから人々の救護に當たる事にした。
「ついでに救っちゃおう♪ 一般人さん達に被害があったら、猟兵としてダメだし」
「……そう、ですね……彼ら、の……安全を……護る……のも……猟兵、の……お勤め……です……から♪」
「うぇーい。救出ー♪」
 悦楽の宴を蹴散らした後は、民間人のケアも行い、全て綺麗にして仕舞おう。
 兼六園は勿論の事、彼等の心に傷を残してはならないと動き出す二人の姿こそ、妖狐七星将『巨門』が覺醒を喜んだ「猟兵」の理想に違いないのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月06日


挿絵イラスト