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銀河帝国攻略戦㉓~天の光は全て戦友(とも)

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦 #小夜鳴鳥(ナイチンゲール)号 #グレイテスト号の"色男"

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●阻止限界点Ω-999:超弩級宇宙空母『カレルレン』周辺宙域
 地獄とはこの状況、この様のことを指すのだろう。
 そびえるは、無数の宇宙戦闘機を擁する馬鹿げた大きさの空母。
 その威容は上帝の如く。群がる敵機は雲霞の如く。
 地獄がそこにあった。

 民間宇宙船〈グレイテスト号〉ブリッジ。
「オイオイオイ、マジかよ」
 派手派手しい色のスーツにシルクハットを被る"色男"ジャックは呟いた。
『計算完了。勝率ハ0.0000001%以下ト予測サレマス』
 AI・ドロレスが冷淡に云う。ジャックは――しかし、ニヤリと笑った。
「"あいつら"を計算に含めたら?」
『――未知数デス』
「なら十分だ。全速前進!!」

 改造型大型船〈ナイチンゲール号〉艦橋。
「ま、まだこれだけの戦力があるのか、帝国には」
 若き船長が言った。同じ歳の青年少女たちもみな言葉を失っていた。
 ……その時、誰かが歌った。
「"――誰が墓場鳥を殺したか?"」
 誰かが続けた。どこかで識った歌を。
「"……いいや、誰も殺していない"」
「"彼らの記憶、その生き様。今も皆の胸に遺っている"」
 誰もが歌っていた。若き船長は、震えを殺して続いた。
「"小夜鳴鳥は、今も宙を飛んでいる。"……ここが、僕たちの舞う空だ!」

 高速型強襲船〈レインフォース〉号・機関室。
「いやあ、まさかワシらのようなおいぼれどもがここまでこれるとはのお!」
「こりゃ孫も大喜びじゃな、いよいよ死ねんて! ワハハ!」
 呑気そうな老人たちは酒を片手に語り合っていた。
 気骨の有りそうな筋肉質の老人が一同の肩を叩く。
「おう、生き残ろうや。あいつらと一緒に、全員でな!」

●阻止限界点Ω-999:超弩級宇宙空母『カレルレン』制空権まで残り300秒
「手短に云うわ。ここが最後の防衛線よ」
 グリモア猟兵、白鐘・耀は一切の無駄口を叩かずに言った。
 解放軍はついに阻止限界点まで到達した。ここを超えれば、いよいよ。
 討つべき敵、巨悪・銀河皇帝の玉座への道が開く。
 ……だが。
「そのぶん防御は極悪。おまけに銀河皇帝の能力でしょうね……相手は損傷が回復するの」
 とんでもないことだ。物量戦を事実上無限にしたも同然。
 疲弊しない軍勢を相手にどう攻めればいい? 奇跡を起こせと云うのか?
「だから、また奇跡を起こしましょう」
 ユーベルコード。オロチウィルスを打ち破った、あらゆる法則を超える力。
 それを持つ猟兵ならば。いや、猟兵とともに絆を育んだ戦友たちもいるならば。
「勝てるわ。……いいえ、勝つのよ。本命はその先なんだから!」
 常の耀らしからぬ、激である。ここで止まってはいられないと誰もがわかっていた。
 ゆえに往こう。解放軍の戦友たちとともに向かおう。
 ――攻撃目標、弩級宇宙空母『カレルレン』。
 ここに集いし猟兵たちは、かの馬鹿げた宇宙の鉄扉を打ち崩さねばならぬ。
「みんなが私たちを支えてくれるわ。行って、ぶちのめす。やることはそれだけ。
 レーザーだの戦闘機だのめちゃくちゃ出てくるけど、関係ないわ!」
 援護がある。ともに戦う仲間たちが居る。ならば――勝てる。
 いや、勝たねばならぬ。巨悪を討つため、いかにしてでもカレルレンを堕とすのだ。
「あと240秒。それでこの宙域は地獄になるでしょう」
 火打ち石を取り出し、耀は言った。
「必ず無事に帰ってきてね。本番はこれからなのよ」
 にこりと笑い、石を叩いた。軽やかな音が響き渡る。

 天の光はすべて戦友(とも)。向かうべきは雲霞の軍勢。
 鉄壁の防御を貫き、宇宙空母を撃墜せよ!


唐揚げ
 寿司です。迷いましたがこちらで行きます!
 まずはいつものォ!

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 以上です。え? ああはい、唐揚げです。
 以下まとめです。

●目的
 阻止限界点の突破。
 帝国戦闘機母艦『カレルレン』の撃滅。

●敵戦力
 帝国戦闘機母艦『カレルレン』(単体。ただし周辺に無数の敵兵器あり。強力)
 敵戦力は銀河皇帝の影響で損傷を回復するため、猟兵の力なしでは突破不可能。

●備考
 OPで描写された3隻は、過去の当方シナリオに登場したNPCたちです。
 プレイングでご指定いただければ援護射撃などの演出が挟まります。
(なくても場合によっては盛るかもしれません)
 なお当方運営シナリオ以外でも、『こんな人たちがいたんです!』みたいなのをご記入いただければ、できる範囲で拾う……かも! しれません!
 基本的に味方への攻撃を考慮する必要はありません。
 いかにして格好良く敵の守りをぶち抜くか、それを存分にお考えください!

 では前置きはこのへんにして。
 皆さん、天を貫く螺旋となりましょう!
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第1章 ボス戦 『帝国戦闘機母艦』

POW   :    サイキックファイア
【ビーム砲撃】が命中した対象を爆破し、更に互いを【サイキックエナジーの鎖】で繋ぐ。
SPD   :    インペリアルレギオン
レベル×5体の、小型の戦闘用【帝国式兵器】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ   :    リペアアーム
【修復用アーム】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●阻止限界点Ω-999:超弩級宇宙空母『カレルレン』制空権まで残り20秒
 数を数えるのも馬鹿らしくなるほどの戦力差だった。
 はたしてかの空母、戦闘機母艦の全長やいかに?
 これが銀河皇帝へ続く道、そのひとつを守る要石のまたひとつ。
 オブリビオンの恐ろしさ、邪悪さを目の当たりにしているも同然だ。

 そしてさらに、敵機は横列をなして戦線を築く。
『敵、猛攻。来マス』
 グレイテスト号の女性人格AI・ドロレスが冷静な声音で言った。

 現実はそれを凌駕した。
●業務連絡
 OPに登場した各NPCの情報を参照したい場合、以下のシナリオを御覧ください。
 ・グレイテスト号
『あるいは借金で一杯の船』
『銀河帝国攻略戦④~直れよこのポンコツ、と色男は言った』
 ・ナイチンゲール号
『誰が墓場鳥を殺したか?』
『銀河帝国攻略戦⑤~リブート、ナイチンゲール』
 ・レインフォース号
『銀河帝国攻略戦⑧~獣、宙より来たる』

 マスターコメントの通り、当方運営シナリオ以外でも、ご希望があれば他MS様のNPC描写を拾う、かも、しれない……です。おそらく。
 該当MS様から許可が頂けなかった場合などはご容赦ください。頑張ります。
(言うまでもないですが、援護射撃の有無そのものがプレイングに有利不利を与えることはありません)

●業務連絡ここまで
ビードット・ワイワイ
見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり。
ここに集まるは歴戦の強者。老いも若いも関係なく。
巨悪を破り安寧を。故に我も助力しよう。過去より来たりしオブリビオン
過去は汝を忘れておらず。汝の破滅はここにあり。

【世界知識】【戦闘知識】より過去の戦史を参照。
これより来たるは過去の解放軍の空母艦隊。命を賭して汝らを破らんと
した者どもの【覚悟】の記録。過去は恨みを忘れておらず。
【捨て身の一撃】ここにあり。共に戦いし者ども見よ。
これが過去の英霊なり。汝らを【鼓舞】しよう。【勇気】を持たせよう。
過去の記録。過去の者。今に伝える言葉なく、無念に破れしこの破滅。
例えifであろうとも過去の記録を覆さん。


宮落・ライア
めっちゃ熱い展開じゃん!
守らねば!それがヒーローの努め!
期待されたならやる気が出るよ!

だから!頑張る!
【侵食加速・空蹴】の併用で音を置き去りに宙を弾丸の様に跳び【ダッシュ・ジャンプ】目に付く敵を蹂躙する。【怪力・薙ぎ払い・鎧砕き・衝撃波・二回攻撃】
敵を【グラップル】で掴んで別の敵に投げつけたりするかな!
パワー×質量は正義!
代償は【激痛耐性・毒耐性・覚悟】で抑える。

自分の存在で、自分の行いで誰かを【鼓舞】出来るのならそれはどれだけ嬉しいことか。
自分の活躍が誰かの記憶に残るのなら、どれだけでも頑張れる。


パル・オールドシェル
敵艦を視認。これよりヒューマンカウルはパル・オールドシェルで解放軍艦隊の突破支援を開始します。
作戦所要時間は360秒。解放軍各艦にはその間の援護を要請します。

進攻する適当な艦の甲板上に着地、砲撃姿勢に入ります。
[拠点防御]と[時間稼ぎ]に徹し、[目立たない]ことを意識しながら[力貯め]。
360秒間の電力チャージによって、レールキャノンの出力を120%まで蓄積。
[メカニック]知識で見抜いた敵のブリッジやコアマシンなどの重要区画を[スナイパー]技術で正確に照準し、[鎧無視攻撃]の砲撃で[串刺し]にします。

解放軍戦友諸君の支援に感謝を。キミ達の戦争に幸運を!
射撃後は敵艦載機を誘引しながら離脱します。


トルメンタ・アンゲルス
いくつも戦艦を沈めて来ましたが、今度は大型母艦ですか。
ゾクゾクしますねぇ。また墜としてやりますよ!

俺自身を、一条の彗星と化して撃ち抜く!
少々、ナイチンゲール号の艦体を足場に借りますよ。

行くぜNoChaser!
変身!
『MaximumEngine――Mode:Formula』
相棒を攻撃力重視の装甲として変身合体!

OverDrive始動。パワーチャージ、ブースターに収束。
『OverDrive――ShootingStar』

さぁ、飛ぶぜ!

発射!
極超音速を超えて超加速!
体に螺旋回転をかけつつ、グリッタービームを放出して身に纏い、
敵軍に風穴を空けて突破を狙う!

勢いを乗せ、直撃のブリッツシュネルで蹴り穿つ!!



●阻止限界点Ω-999:制空圏到達直後
 解放軍を、波濤が出迎えた。
 あまりにも過密な攻撃は、雨でも嵐でもなく波としか言いようがない。
 降り注ぐ弾丸、光線、ミサイルの中へ、猟兵たちが次々飛び込んでいく。

 そんな最前線に、鋭角的なフォルムが特徴的な一機のウォーマシンあり。
「解放軍各艦へ、こちらパル・オールドシェル。当機は貴艦隊に援護を要請します」
 対装甲戦闘用人型機動殻(ヒューマン・カウル)を纏う彼女の背には、超大型の砲身。
 要塞攻略E型装備・大型電磁投射砲『HOPE』。理論上は単独での空母撃沈すら可能な決戦武装だ。
 しかしこれを使うには、最大で360秒、つまり6分間ものチャージを要する。
 たった6分、されど戦場においては永劫にも等しい。ましてやこの地獄ではなおさら。
 だが。
「こちらナイチンゲール号、了解! 足場が必要なら甲板を使ってください!」
 若き船長が真っ先に応じ。小夜啼鳥のエンブレムを持つ船が前へ躍り出た!
 パルはすぐさま甲板に着陸し、砲身をマウントし砲撃姿勢に移行する。
「ターゲット、敵巨大空母カレルレン。ジェネレーター、出力30%で運転開始」
 ゴウウン……巨大な動力炉が音を立てて回転を始める。
 当然、敵はそれを見逃さない。戦闘機群がパルめがけ殺到!
 ヒューマンカウルから誘導弾が発射され敵を迎撃するも、多勢に無勢である。
 ナイチンゲール号の援護にも限界がある。一体どうすればいいのか!?

 ――その時、一条の流星が戦闘機の群れを駆け抜けた。
 一斉にビーム砲を放たんとしていた敵編隊は、爆炎に包まれて撃墜!
「レールガンで一撃突破ですか、いいですねぇ!」
 ノリノリなテンションで現れたのは、銀髪をなびかせた女鎧装騎兵だ。
 パルは彼女を……流星ライダー、トルメンタ・アンゲルスを知っている。
「何々? 時間ギリギリまで味方を守るとか、めっちゃ熱い展開じゃん!」
 さらにもう一人。新たな敵群を薙ぎ払い、駆けつけた少女あり。
 彼女の名は宮落・ライア。この決戦に血潮を燃やす若き英雄志望者だ。
「ええ、戦艦は何隻も沈めてきましたが、大型母艦というのはゾクゾクします。
 パルさんには白城艦隊との戦いで世話になりましたからね、恩を返しますよ!」
 トルメンタは返答を待たずに甲板に着陸、ベルトのシステムを起動する。
「行くぜNoChaser! 変身ッ!!」
《MaximumEngine――Mode:Formula》
 電子音声が宇宙に鳴り響き、以て彼女は相棒と一体化する。
 そしてこれを見てテンションが爆上がりする者がいる。そう、ライアだ。
「うおーっ!? すごーい、変身ヒーローだー!! ちょーかっこいい!
 ボクもやる気出てきた、こりゃー負けらんないね! 頑張るよ!!」
 鼻息荒く捲し立てる彼女の内側からは、目に見えぬ強大な力が湧き上がる。
 期待、祈り、そして決意。狂気と隣り合わせのそれは、だからこそ力強い。
「ライア、トルメンタ。申し訳ないですが、援護を頼みます」
「『任せて(ください)!!』」
 二人は力強く応え、腰を落とした。チャージ完了まで残り350秒。

『OverDrive始動。パワーチャージ、ブースター収束!』
《OverDrive――ShootingStar》
 ジェットエンジンじみた音とともに、トルメンタの両足に緑の光が灯る。
「うわっかっこいい! ボクもやるボクもやる! ヒーローパワーぜんかーい!」
 ライアの裡からさらなる力が漲る。それは彼女にとって毒でもある。
 だがヒーローに憧れる少女は、強い覚悟と意思で代償を抑え込んだ。
『ついてこれますか? 俺の速さに』
「そっちこそ! ボクだってやるときはやるんだからね!』
 敵編隊の砲口がナイチンゲール号を捉える。チャージ完了まで残り345秒。
『いいでしょう、なら――さぁ、飛ぶぜッ!』
「よーし、跳ぶぜ跳ぶぜ跳ぶぜー!!」
 テイクオフ! 二人はまったく同時に、まったく異なる原理で飛翔した!
 すなわち、トルメンタは内蔵動力炉による脅威的な加速によって。
 一方のライアは、漲るパワーと血潮でおもいっきりジャンプすることで。
 あまりにも明快、あまりにも対称的。されど速度はほぼ同じ!
『やりますね! けど――ここからが、天使の本領発揮だッ!』
 ライアの脚力に驚嘆しながらも、トルメンタは快哉を上げた。
 横軸の螺旋回転をかけた瞬間、ライフル弾じみて再度の超加速!
「はやーい!? だったらボクももっと加速だー!」
 軌道上の敵機を骨肉の剣で粉砕破壊、さらにその残骸を蹴り飛ばすライア!
 あまりにも強烈な連撃は衝撃波を産み、それが別の敵を撃墜させる。
『グリッタァァァ――ビィィィィムッ!!』
 トルメンタが胸部から放った光線は、回転に従い全周囲の敵を焼滅破壊。
 さらにその輝きが彼女自身をも包み込む。紛うことなき流星!
『俺の動きが、お前たちに見切れるかぁ!? 喰らえ銀河帝国ッ!
 直撃のォ――ブリッツシュネルッ!!』
 極限加速からの直線蹴撃! 敵陣を貫く緑光に沿って爆炎の華が咲き誇る!
「うわはー、すんごーいっ! けど、まだまだ! ボクだって!」
 敵を殴り、蹴り飛ばして追いながら、ライアは楽しげに笑う。
 まだだ、自分だってもっとやれる。だってヒーローなんだから!
「鋼も山も、海も空も、宇宙だって! まとめて断ち切ってやるーっ!!」
 トルメンタをまねるように体をねじり――敵陣中央で解き放つ。
 ライアがその気になれば、目に映る場所すべてが彼女の間合いなのだ。
 言葉通りに宇宙すらもぶった斬るほどの、強烈な森羅万象断である!

 二人は次々に敵を撃墜し、されど新たな敵機がカレルレンから発進する。
 チャージ完了まで残り300秒。はたして耐えきれるか……!?

●抜粋:インタビューログ-BoGE-N02より
 ――そりゃ怖かったですよ。僕らは所詮民間人ですから。
 けど船の皆の、そしてあの人達の前で無様は晒したくなかった。
 ……ええ、この船にまつわる事件を知ったのはそのあとです。
 本当に自分が船長に相応しいのか、正直なところ今でも不安があります。
 それでもこの仕事を続けているのは、そうですね……。
 あの人達の背中を、今でも忘れられないからでしょうか。

●阻止限界点Ω-999:チャージ完了まで残り150秒
 地獄の真っ只中、ライアとトルメンタは全力で戦い続けていた。
「ど……どんだけ出てくるのこいつら、キリがないよー!」
『まだまだいけますよ! とはいえ歯がゆいのはたしかですね……』
 もはや撃墜数は100を超えている。だがカレルレンの物量が衰える気配はない。
 空母本体を攻撃に行こうにも、それでは艦の守りが手薄になってしまう。
 トルメンタは隣のライアを見やる。少なからぬ被弾、いや消耗はそれだけではないか。
『あなたは一度戻ってください、ここは俺が請け負います』
 その言葉に、しかしライアはぶんぶんと頭を振って抗議した。
「やだよ! ボクはまだ頑張れる! まだまだ、止まるなんて認めないよ!」
『しかし……』
 長話の余裕はない。二人は敵を蹴り、斬り、焼き、砕きながら言い争う。
 ライアの行動は前のめりであった。ただの猪突猛進という度を超えている。
 ――この子も、背負うものがあるのか。
 悪夢を乗り越えた自分と同じように……トルメンタはマスクの下で思った。
 然様、ライアもまたあの悪夢装置に挑んだ猟兵である。
 一度死した記憶。それを想起してなお彼女は止まらない。止まれないのだ。
 託されたものに、命と期待に応えなければならない。
「もうこうなったら、ボクが全部やっつける! そうすれば問題解決だよ!」
 自己の価値を証明せんとする覚悟は、さらなる代償を呼び込む。
「負けられない……私は託された、選ばれたんだから……!」
『……』
 鬼気迫るライアの横顔に、トルメンタは何も言えない。
 そこに隙が生まれた。新たな敵影がビーム砲の照準を定めている!
「うえっ? わああ、やばいやばいー!!」
『! しまったッ!』
 トルメンタが身を挺してライアを守ろうとした、その時――。

『見たり見たり見たり。汝の破滅を見たり』
 謎めいた声が轟いた。直後、敵機は何者かの攻撃により爆砕した。
「い、いまのって」
 ライアは声のした方向、攻撃が飛んできた方向を見た。
 そして瞠目した。そこには、おお……無数の艦隊が並んでいるではないか!
『増援!? でもあの船体は、とても最新型とは……』
 トルメンタもまた驚愕し、訝しんだ。立ち並ぶ艦隊はどれも旧型の船なのだ。
 そもそもこの防衛線は、どの宙域も限界ギリギリの艦隊数で戦っている。
 増援を回す余裕など、ほかのエリアにはないはず。では一体あれは……?
『案ずるなかれ、これなるは過去より蘇れど我らの敵にあらず。
 これは我らの味方。オブリビオンよ、これは汝らの敵、汝らの破滅なり』
 読経めいた不気味な声の正体、それは異形のウォーマシンであった。
 彼の名はビードット・ワイワイ。破滅を願い、破滅のために大団円を求む者。
 ビードットのカメラアイがギュルギュルと蠢く。するとどうしたことか。
 虚空から滲み出るようにして、また新たな艦隊が複数出現したのだ!
『実行仮想破滅(アクセス・イマジナリールーイン)、再来成功。
 破滅想起(ロード・ルートイン)――これぞ星の、否、宇宙に遺されし記憶。
 すなわち銀河帝国に滅ぼされし、過去の解放軍の空母艦隊なり』
 ユーベルコードによって蘇った亡霊艦隊は、一斉に攻撃を開始する。
 トルメンタ、ライア、さらにナイチンゲール号に迫っていた敵編隊が壊滅!
『来たり来たり、過去を破滅させし過去来たり。ここに破滅は蘇り。
 オブリビオンよ、忘却者どもよ、知るがよい。過去は再び汝らを打ち砕かん』
 ぎょろり、とビードットのカメラアイが二人を捉えた。
 さらに、後方でチャージを続けるパルも。残り100秒。
『未来求むる猟兵たちよ、汝らは過去の者ども、英霊たちと共にあり。
 英霊示したり、破滅を破滅させしは我らが役目。汝ら破滅するべからずと』
「え、えっと……無駄死にするな、ってこと?」
 グインとカメラアイが一斉に下を向いた。同意を示しているのだろう。
『過去の記録、過去の者。これらに今へと伝える言葉なく、されど遺志はあり。
 この応報が証明なり。かの者ら、巨悪を破らんと命を賭した者どもなれば』
 蘇りし過去の破滅――英霊艦隊は、全速力で敵群へと突撃する。
 それは残影、この虚空に刻まれた過去の残滓に過ぎない。だがそれでも。
『我らは過去を砕き未来を守る猟兵なり。捨て身と蛮勇は異なるものと心得よ。
 勇気とは破滅を厭わぬことにあらず、過去を覆すことにあると見たり』
 異形のウォーマシン、破滅を求める予測機は、されど賢者めいてそう言った。
「よ、よくわからないけど、でも……ありがとう、助けてくれて!」
『ええ、助かりました!』
『礼に及ばず。我らはみなともに戦う者なれば。破滅を齎すが我らの使命なり』
 チャージ完了まで残り60秒。ビードットの眼が敵軍を睨む。
『来たり来たり、いよいよ真なる破滅近づきたり。我はその光を求む。
 ゆえに我は汝らを鼓舞しよう。破滅の光、これを生むために戦いたり』
 いまや解放軍艦隊も英霊たちに背中を押され、全軍が突撃を敢行している。
 敵がさらなる編隊を組む。されど恐れはなし、チャージ完了残り50秒。

『見たり見たり見たり、破滅を恐れし哀れな過去どもの悪あがきを見たり』
 残り40秒。

『まとめていくぜぇッ、砕けろォ!!』
 残り30秒!

「これで終われぇっ!!」
 残り20秒……!

『ジェネレーター、出力臨界突破。電磁パルス放出、耐衝撃シールド展開』
 ググ――ゴゴン。ただでさえ巨大な砲身がさらに一回り展開する。
 腰部および脚部からアンカーが射出され、甲板に突き刺さった。
 残り10秒。
『アンカーセット。照準補正開始、最終カウントダウンスタート』
 残り8秒。
『射線軸確保、電磁誘導システム、誤差-0.06』
 残り5秒。
『全シークエンス正常終了――発射、4秒前』
 バチバチバチバチ……! プラズマが砲身を、装甲を走る!
『3秒前』
 見据える先には雲霞の如き敵の群れ。それを裂くは緑の流星。
『2秒前』
 英霊たちが突き進む。向こう見ずな少女が鋼を砕く。
『1秒前』
 小夜啼鳥が羽ばたく。根源的破滅招来者は過去を嘲笑う。
『――対要塞レールキャノン"HOPE"、出力120%! 発射しますッ!!』
 トリガを引く。そして、光が敵を飲み込んだ!!
 あまりの衝撃に、パルはおろかナイチンゲール号が大きく揺れる!
 まっすぐと、恐ろしいほどにまっすぐと放たれたレールガンは……おお、おお!
 射線上、および周辺の敵機を無数に撃墜! そしてカレルレン船体を直撃!!

 KRA-TOOOOOOOOOOOOOOM!!

「おっしゃー!! やったー!!」
『こいつはすごい……俺たちも負けてられませんよ!』
『見たり見たり見たり。我は真なる破滅の光を見たり』
 艦隊も大きく湧き上がる。ここからが反撃のタイミングだ!

 一方、甲板上。バシュウ! と音を立ててレールキャノンがパージされる。
『……作戦、成功。戦友諸君、支援に感謝します。そして』
 パルは心強き仲間たちを、天を埋め尽くす無数の光を見た。そして笑った。
『そしてどうか、幸運を。キミ達の……いえ、僕達の勝利のために!』
 戦いは、新たな局面を迎える。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●抜粋:インタビューログ-BoGE-R03より
 ――うん? そもそもどうして戦場に駆けつけたか、じゃと?
 はぁっはっは、こりゃ面白い! んなもん"そうしたかったから"としか言えんわ!
 いやまあ、言いたいことはわかる。飲み仲間もほとんど怖気づいとったからの。
 ワシだって正直後悔しとったさ。……あの若造どもの戦いぶりを見るまではな。
 世界がどうにかなろうって鉄火場なんじゃ、年長者が踏ん張らんでどうする?
ネグル・ギュネス
此方猟兵、コードネーム、黒(ネグル )。

成る程、勝率は那由多の彼方か。
十分過ぎるとは思わないか?

勇気ある者達の魂と共に、私が切り開く。
だから、皆諦めずに生き残るぞ!


【SPD】
数は多い。
だが雑魚が如何に群れても、私の敵ではない!

ユーベルコード【幻影疾走・速型】で突っ切る!
ビーム砲は【騎乗】と【残像、見切り、操縦】を用いて回避しながら、レギオン共は、疾走と刀の【衝撃波】で弾き飛ばしてやる!

飛ばせ、飛ばせ飛ばせ!
1秒でも速く!流星のごとく!


戦艦に向けて、一矢となりて貫いてやる!

若き英雄達、老獪な猛者達。
皆の思いと共に、我はあり!

熱き叫びで、戦場を鼓舞し、勇気と希望を持たらさん!


鳴宮・匡
◆同行:リア(f04685)
◆他、協働歓迎

協働はいつぶりだっけ?
この世界はお前の庭みたいなもんだろうし
サポートは任せたぜ

宙域内の味方位置・数
周囲の敵状況、母艦武装の起動状況
状況変化を逐次共有

本命は母艦だ、構造解析は任せていいな?
――なら、こっちはその分戦闘に集中できる
敵機動兵器はコアかセンサーを一撃で抜いて
出来るだけ時間を掛けずに突破するぜ

母艦を射程圏内に捉えたら
リアからの情報と合わせて
自身の眼(見切り)・耳(聞き耳)・感覚(戦闘知識)を通じて
把握した敵母艦の状況から構造的弱点を割り出し【終幕の雨】で攻撃を
他の猟兵が狙った部分なんてのもいいかな

いい加減終わりにしようぜ、遠慮なく全部持っていきな


リア・ファル
鳴宮・匡(f01612)と参加
他、協働歓迎

【心情】
銀河皇帝まであと少し
こんな所で立ち止まっていられない
戦艦(の制御ユニット)のとしての戦闘経験を活かそう

【行動】
予め、匡さんへ通信機を渡しておく

「準備は良い?ボクが先行するから、バックアップ宜しく!」
と言いつつ、寧ろボクが囮で、匡さんが後ろから撃ち放題が正しいか

イルダーナに騎乗し彼方此方に飛び回りながら、
ハッキングや情報収集しつつカレルレンへ近づく
「流石だね匡さん、これだけいれば当てるのには困らない?」

オッケー、脆い部分を見つけた、同時攻撃で風穴を開けよう!
UC「召喚詠唱・楽園の守護者たち」で攻撃

「仲間がいる。しかも…こんなに頼もしい皆がね!」


ヴィクティム・ウィンターミュート
UCで演算能力拡張。奴らのシステムを【早業】による【ハッキング】
防御と武装をおしゃかにしてやらぁ。だが、今回の敵は強い。一人で奴らを手玉に取れねーなら、セカンドプランだ。

ハッキングの最中、挑発を交えて電算部隊を煽る。ヘイトをためて、俺を脅威と認識したら…"わざと"手を緩める。
そしたら【早業】でダミーコアを用意して、そこに【毒使い】【罠使い】で手持ちの無限増殖ワームを仕込む。
俺を無力化しようとして、ダミーコアに触れた瞬間…ウイルスはその手を伝って増殖開始って寸法よ。
どんな奴でも、憎らしい相手に勝った瞬間は…気が緩むのさ。
一度感染すれば、初期化しなきゃ増える一方だ。放置か初期化か、二択だぜ?



●阻止限界点Ω-999:戦闘開始より400秒経過
 パルが放ったレールガンの一撃は、敵の第一波を大きく損害させた。
 だがカレルレンはいまだ健在。第二波の前に突撃ラインを確保せねばならない。
「――ヴィクティム、聞いたか?」
「あん? 何がだ、星座占いの結果か? 牡牛座は最下位だってよ」
「違う、この戦いの……いや待て、最下位? それは……どうでもいいな」
「だよな。つーかお前、俺と星座同じかよ」
 などと軽口を叩きあう二人。
 そうじゃない、と咳払いしつつ、ネグル・ギュネスは言う。
「この戦いの勝率だ。0.0000001%、だそうだ」
「そいつはスワッグだな! 黒騎士サマ相手は何%だったんだろうな?」
 ヴィクティム・ウィンターミュートの言葉に、ネグルはニヤリと笑う。
「違いない。俺たちにとっては十分すぎる数字だ」
「ハ! チルなセリフだぜ。あいつなら"暑苦しいヤツ"とか言いそうだな」
「……よくわかったな」
「言われたことあんのかよ!」
 日常生活そのままのリラックスした会話を楽しむ二人。
 だが見よ。小洒落た掛け合いをする二人の男のいまを見よ。
 かたやネグルは愛機に跨り、颯爽と空を舞って刃を振るう。
 かたやヴィクティムは、カレルレンに絶え間ない電脳攻撃の真っ最中。
 ともに一流、黒騎士すら打倒した腕利きの猟兵である。
 ところで、二人が語るあいつというのは一体……?

「――っくし!」
「あとはこのボタンで、って。大丈夫かい匡さん?」
「ああ、悪い。……風邪なんて引いた覚えないんだけどな」
 鳴宮・匡は鼻をこすりつつ、皆目見当がつかんとばかりに首を傾げた。
 そんな彼に通信機を手渡した少女はリア・ファルという電脳生命体だ。
 彼女が乗る『イルダーナ』は、一見量産機だが極めて高い性能を持つ。
「まあ、大丈夫そうならいいけど。それじゃあ準備はよさそうだね」
「久々の協働だ、サポートは任せるぜ」
「そっちも、バックアップよろしくね」
 互いに声をかけあい、先行してリアが敵陣に突入した。
 やや遅れて匡も出撃する。彼らはバディとして作戦を立てたようだ。
 すなわちリアが高速機動で囮となり、敵を集める。
 匡はそこを狙撃し、敵機を撃墜。互いに情報を共有しながら母艦を目指す。
 カレルレンへの道のりは、遠く険しい。
 取引相手として猟兵として、それなりの付き合いの二人でも手間がかかる。
 ましてや混戦模様では、大人数で声をかけあい協力など後手も後手だ。
「……どうせ、あいつらもここに来てるだろうしな」
「ん? なにか言った?」
「いやなんでもない。後ろ、着かれてるぜ」
 BLAM。まるで調味料でも取るかのような気楽な面持ちでトリガを引く。
 高速飛行しリアを追尾していた敵機は、たった一発の弾丸で爆散した。
 匡は撃墜を確認すらしない。むしろ彼の視線は友軍艦隊の方に向いていた。
 ……どこかで見覚えのある船が妙に前に出ている気がする。
「ま、どうでもいいか」
 彼はとりあえず頭からそのことを取り去った。

 おかげでこのあとたいへん苦労を強いられることになるのだが。

●超弩級宇宙空母『カレルレン』内部:第二電算室
 この乱戦のなかにあって、カレルレンの電脳心臓部は静まり返っていた。
 さもありなん、彼らの主戦場は現実世界ではない。電脳世界だ。
 我らの城を搦め手で攻め落とさんとする不届き者を焼き切るのが仕事である。
 ならば電脳世界ではどうなのか? ……実際に見てみよう。

『第十四論理防壁、突破されました!』
『ワクチン生成急げ! 逆探知プログラムはどうなった!』
『だ、ダメです! 追跡エージェント63体すべて消滅……!』
 視覚化された第二演算室は、格子模様で形作られる砦を模していた。
 あちこちに火の手=破損データが広がり、電脳兵たちは慌てふためく!
『これがヴォールフズムンドを陥としたという、あの……Arseneなのか!』
 然り、この電脳攻撃はヴィクティムたったひとりの手によって行われている。
 強固で知られた白城艦隊の強襲戦艦すら手玉に取ったランナーである。
 いかなカレルレンの精鋭電子部隊とはいえ、苦戦は免れ得ない!
『くそっ、忌々しい! 猟兵が我々のフィールドに土足で入り込んでくるなど!』
 砦の壁=論理防壁が外側から破壊=クラックされ、逆再生じみて修復される。
 いまのところ、致命的なレベルまでは至っていない。ゆえに業腹だ。
 なんとしてでもこのハッカーを脳死させねば。電脳世界に憎悪が満ちる……!

●阻止限界点Ω-999:戦闘開始より450秒経過
《こちらイエロー37、敵を捕捉した。攻撃を開始する!》
 カレルレンを発進した精鋭宇宙戦闘機部隊15機が、ネグルに照準を定める。
 そして恐るべき対艦ミサイルを発射しようとした瞬間、ネグルは消えた。
《ど、どこだ! さっきまでそこにいたはずなのに!?》
「――ここだ」
《!?》
 戦闘機パイロットは背後を仰ごうとし、そして機体もろとも爆散した。
 疾い! 疾走形態となったSRファントムは流星めいて宇宙をひた走る。
 カレルレン本体からの支援ビーム砲とて、ネグルを捉えることはできぬ!
「雑魚が如何に群れても私たちの敵ではないッ! 行くぞ相棒!」
 GRRRRRRッ! 幻影の名を持つ愛機は凶暴な唸りを上げてさらに加速。
 友軍艦に接近していたレギオン編隊の頭上を疾走、衝撃波で吹き飛ばす!
「さあ皆、飛ばせ、飛ばせ! 道は我々が開く、1秒でも速く前へ進め!」
 ネグルの疾走は敵にとって激甚であり、味方にとって激励となった。
 解放軍艦隊は一斉に全速前進。その先陣を切るのは――ん?
「あれは……爺さんたちの船か?」
 然様、ネグルにとっても馴染みのある宇宙船レインフォース号。
 彼はかつて、敵巨大機獣に飲まれかけたあの船を無事に守り抜いたのだ。
「まったく、心強い老獪な猛者たちだことだッ!」
 歯車の奥、鋼鉄の心臓に火がついたサイボーグは不敵に笑う。
 あれからも多くの戦いを経てきた。俺も、彼らも。ならば此度は進もうと!
 彼を突き動かすのは、背負うと決めた多くの魂たちの重みである。

 一方、同エリア対角。
 ネグルのそれに速度は劣れど、曲芸的飛行で敵を幻惑する光あり。
 すなわちイルダーナ。太陽神の名を与えられし高性能ワンオフ艦載機だ!
「ほらほら、こっちこっち! ボクを捕まえてごらん!」
 執拗に追尾するレギオンどもに手を振り、嘲笑ってみせるリア。
 時折彼女の体をビーム砲がかすめるものの、一条たりとて命中しない。
 危なっかしいことこの上ないが、見るものが見れば分かるはずだ。
 高度な演算能力と優秀なテクニックにより、彼女の回避が完璧であることが!
《くそっ、どうして当たらないんだ! 落ちろ!》
《たかがガキ一人だぞ、撃ち落とせるはずだ!》
 パイロットたちは焦れきっており、もはや照準補正もままならない。
 ゆえに奴らは、リアが自分たちを一点に集めていることにも気付かない。
「匡さん、このぐらい集めれば――」
 BRATATATATAT! 言葉を遮り鳴り響く鋭い銃声。
 無論、撃ったのは匡である。1手遅れて敵編隊は連鎖爆発し全滅!
「……十分だったみたいだね。さすが」
『たいしたことじゃないさ。それより構造解析のほうはどうなってる?』
 匡の本命はカレルレン本体である。あれを落とせば仕事は終わるのだから。
 雑魚など所詮は片手間、いちいち狙いを定める必要すら彼にはない。
『いい調子だよ。どうも防壁が薄くってね、誰か腕のいいハッカーが味方にいるのかな?』
「ああ、多分な。あいつがいるなら俺たちの仕事も楽になりそうだ」
 匡の知る限り、巨大空母を相手に立ち回れるような電脳魔術士は一人だ。
 ならとっとと手早く片付けよう、そう思い先へ進む匡だが……。
「……なんだあれ」
 またしても目に入った。目に入ってしまった、年寄りの冷や水号が。
 いや違う、レインフォース号だ。しかもそれを先導しているあの黒影は!
『匡さん? どうしたの? あの船が気になる?』
「いや、どうでもいい。いまがチャンスだ、母艦を……」
『うわ、すごい前出てるよあの船。しかもまた戦闘機部隊出てきた!』
「…………」
 暑苦しそうな顔で頭をかく匡。戦場傭兵が、凪の海がこのざまか。
 やや思案したのち、おもむろに通信機に呼びかけた。
「聞こえてるんだろ、ヴィクティム」
『ハロー、いつ声かけてくれるか心配してたぜ。ところでお前何座だ?」
「……どうでもいいだろそんなの。どうするんだあれ」
 通信機のむこうで、おそらくリアはきょとんとしていることだろう。
『俺はこの通りハッキングで忙しいからなあ! あいつは任せた。
 そっちの仕事もラクにしてやったんだ、頼むぜチューマ!』
 ブツン。匡はまったく本当になんなんだ、という顔で肩をすくめる。
『ねえ匡さん』
「説明はあとでする。とにかくあの船の爺さんどもを――」
『匡さんって何座なの?』
「……牡羊座だよ」
 ため息混じりの声であったという。

●抜粋:インタビューログ-BoGE-R08より
 ああ、ありゃあ最高じゃった! 年甲斐もなく燃えてのう!
 ほうじゃろほうじゃろ、まだまだワシらだって現役ってことじゃ!
 孫にはこっぴどく怒られたんじゃけどな。なあに、ひがみじゃよひがみ。
 ワシらはあいつらと最前線で肩を並べたんじゃ、羨ましいのも無理なかろ。
 応とも、まったく大した若者連中じゃよ、あいつらは――。

●阻止限界点Ω-999:戦闘開始より500秒経過
 強襲船レインフォース号を先導するのは、金色に瞬く一筋の流星だ。
「邪魔だ、どけッ! さあ行くぞ、若きも老いも最後の決戦へ!
 皆の思い、勇気ある魂たちとともに我はあり! 我があとに続けッ!」
 迫りくる敵を轢殺し、桜花幻影でもって断ち切り、ネグルは走る。
 艦隊はその後に従い、カレルレンめがけ一気に進撃する!
 だがその時。待ち構えていたかのように敵第二波が総出撃!
「来たか。だが無駄だ! 我が一撃は、彗星の――」
「……ように突っ込まれて陥ちちまったら、元も子もないだろうが」
 BRATATATATATAT! BLAMBLAMBLAMBLAM! 矢継ぎ早の銃声!
 ネグルを捉えた戦闘機8機が次々に爆散し、爆炎が後続機を飲み込む。
 やれやれ、といった面持ちの匡によるものだ。二人の視線が交錯する。
「ったく、やる気になるのはいいけど気が逸りすぎだろ。
 爺さんどもまで突っ込んできてるじゃないか。まあどうでもいいんだけどさ」
 どうでもいい。そんないつもの彼の物言いに、ネグルはふっと笑った。
「だが今回は、目指す先も狙いも同じだろう?」
 つい先日、アゴニーフェイス艦隊でのひとときを反芻するような言葉。
 匡はほんの一瞬だけ揺らぎめいた何かを見せつつも、目線をカレルレンへ。
「そういうのは同類(スターライダー)同士でやってくれ。俺は裏方だ。
 爺さんどもは俺が見とく。先行してあいつを手伝ってやってくれ」
 それ以上の言葉は二人には不要だった。ネグルは走り、匡があとに続く。
「……本当、どうでもいいはずなんだけどな」
 凪の海はぽつりとひとりごちた。

 一方、ふたりの電脳魔術士!
『で、俺はあいつを身を挺してかばってやったのさ。チルだろ?』
『言葉の意味はよくわからないけど、Arseneはすごいね!
 あ、名前のほうがいいのかな?』
『なんでもいいさ、ヴィクティムでもヴィムでもな』
 すっかり意気投合していた。
 匡とリアが得た情報はヴィクティムにも共有され、それがネグルにも伝わる。
 ツーマンセルからフォーマンセルへ、淀みない移行とチームワーク。
 それぞれがそれぞれの分野のプロだからこそ出来る芸当だ。
『ところでほんとにいいの? ボクらならもっと苛烈に攻められると思うけど』
『いいんだよ。連中もだいぶヘイトが溜まった頃だ、だから一度引く。
 じきに向こうは俺を探知するだろ。そこで…………ってわけさ』
 なるほど、と感心した声を漏らすリア。
『じゃあボクはそこでプラン通りに、だね! 任せたよ、Arsene!』
『そっちもな、チューマ。さあそろそろ時間だ、スロット・アンド・ランだぜ!』
 リアは一気に速度を早める。そこはカレルレンの迎撃範囲内だ!
 まさかビーム砲に自ら突っ込むつもりか? カウボーイたちのプランとは!?

●超弩級宇宙空母『カレルレン』内部:第二電算室
 ここで視点は再び電脳世界へ移る。
 敵は嗤笑していた。ハック&クラックの嵐が突如として止んだからだ。
『敵アドレス探知成功! 防壁はがら空きです、いつでも仕留められます!』
 部下の報告に、電算室長はニヤリと電子の笑みを浮かべる。
『我々の手を焼かせた罰だ。脳味噌を焼き切ってやれ!』
 無慈悲なる電算部隊のニューロン攻撃がヴィクティムに迫る! 万事休すか!?

 ……いや、奴らは万が一にでもカウボーイを見くびるべきでなかった。
 ストリートでは、迂闊なやつから死ぬ。それがランナーの鉄則。
 あからさまな罠にひっかかり、まず一人がダミーコアに触れた。
 彼らからすれば、それはヴィクティムの自我であるはずだった。
 脳髄に過負荷を与え、焼き切ることが出来るはずだったのだ。なのに!
『う、うわああああああっ!?』
 論理球体に触れた電算兵の手を腕を伝い、おぞましい蟲=ワームが這い回る……。

「で、ここでボクの出番ってわけだ。おいで、ヌァザ!」
 高速疾走しながら、リアがおもむろに片手を横に広げる。
 すると肩を伝って、銀虎猫型の3Dアバターがたたっと腕を伝い手先へ。
 アバターはほどけるように変形、銀色の魔剣型デバイスに変化した!
「対象空間、アクセス成功。煌めき奔れ、銀の閃き!」
 そして速度を上乗せし、魔剣型多次元干渉システムの刃を振るう!
 するとどうだ。虚空を薙いだそれは、時間も距離も越えこの世ならぬ電脳世界に着弾!
 無限増殖するワームに気を取られた電算兵たち、その論理体を切り裂いたのだ!
 さらにその裂け目からカレルレンのシステムにハッキング、船体構造を奪取。
「作戦成功! 構造解析完了だよ、匡さん!」

 リアの送り出した情報は、ヴィクティムを経由して最速で仲間のもとへ。
「ロークだろ? これがArseneの本気さ」
 はるか後方、カウボーイは伽藍の空母を見据えてニヒルに笑った。

 そしてデータはネグルのもとへも届く。最高速の疾走形態に再変形!
「勇気ある者たちよ、我らの一撃を見よ! そして知るがいい、銀河帝国!
 お前たちを打ち砕く者がここにいることを、勇気と希望の輝きをッ!!」
 スピードの中、ちりんと鈴の音が響いた。金色の瞳が強く輝く。
 はるか後方、レインフォース号甲板に立つ匡は冷徹に銃を構えた。
 狙う先は一つ。星々の輝きすら、今の彼には届かない。邪魔さえできない。
「盛大にくれてやる。遠慮せずに全部持っていきな」
 BLAM。BLAMBLAMBLAM、BLAMBLAMBLAMBLAMBRATATATATATATAT!!
 対角! 魔剣を振るうリアの周囲に現れる機械仕掛けの幻獣たち!
「みんなおいで! ボクたちに力を貸して。大丈夫、怖くないよ。
 だってここには、こんなに頼もしい仲間がたくさんいるんだから!」
 楽園の守護者たちは、友たる少女の言葉に応じ、一気呵成に敵母艦へ飛び込む!

 KRAAAAAAAAAAAAAAASH!!

 疾走斬撃、精密射撃、そして一斉突撃。
 まったく同時の一点集中攻撃は、カレルレンの装甲に大きな風穴を開けた!
 無論それだけではない。無限増殖ワームはカレルレンの電子ネットワークを蹂躙。
 現実世界と折り重なった、されど異なるレイヤに視界を置いて冬寂は笑う。
「幼年期はいつか終わるのさ。たとえばこんな風にな」
 カウボーイはガラスの破片を放り投げた。そいつは光より速く飛んで突き刺さる。
 電子の世界、カレルレンを守る氷の壁は砕けて散った。今やもはや丸裸。
 突撃ライン、構築。反撃は終わり、猟兵たちの猛攻が始まる――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●抜粋:インタビューログ-BoGE-N07より
 え、レインフォース号で何が起きたのか? ですって?
 なんだそれ、まるで小夜啼鳥事件みたいな言い回しですね。
 あーいや、笑い事じゃないか。うーん、とはいえなあ。船が別ですし……。
 ああ、でもたしか終わってから話を聞いたっけ、えーと、なんでも……。

 時間は同時攻撃の成功から3分ほど遡る。
デイヴィー・ファイアダンプ
まずは〈レインフォース号〉にコンタクトを取って装備を借りるとしよう。
“おいぼれ”と自称するなら用意してあるだろう? 自爆特攻すら辞さない覚悟のものをね。

そういうわけで今から僕が行うのは、
「援護射撃で支援を受けながら、借りた装備の質量をユーベルコードの勢いと合わせて、敵空母に叩き込む」
というものだ。

もっとも別に死にに来たわけでもない。
グリモア猟兵は他の猟兵を回収する手段があることを伝えて、どうにか首を縦に振らせるとしよう。
特攻時にはその回収に期待して直前で脱出するか、もしくは器物を預けておくとするよ。

じいさんたちにこれを使わせるわけにはいかないからね。
少し出しゃばらせてもらうよ。


才堂・紅葉
「壮絶に頭悪い状況ねぇ」
だが、この壁の先に皇帝がいる。
ならばぶち抜く他は無い。

単騎では無理だ。
情報収集を行い礼儀作法を持って他の猟兵と協力する。
相互確認程度なのだが大事な事だ。

【蒸気王】と言う二対の蒸気ブースター付の無骨な巨人を操縦する。
最初は前線から少し離れた位置で待機。
野生の勘と見切りと戦場知識で戦機を見極め突貫。

ブースターの封印を解除して二倍の出力。
回避を拒否する保身無き特攻で二倍の勢い。
コード:ハイペリアの重力加重で二倍の質量。
そして両手の紋章を合わせることで二倍の重力。

カレルレン。
そのコアをぶち抜くに足る十六倍の質量攻撃だ。

ハイペリア重殺術・落星を叩き込む。

【連携、アドリブ歓迎】


神元・眞白
【SPD/絡みは自由に】
(レインフォース号に前の時の様に乗っておきます)
ここまで来てくれてるなら、おじいちゃん達にもお返ししないと。
一番いい場所から相手の空母を落とす所。今日を晴れの日、ヶの昨日。

おじいちゃん達だけで、駄目っていうなら猟兵の力を上乗せして、援護射撃。援護?援護じゃなくて、それはちゃんとした攻撃。
そのためには指示をして動いてもらわないと。

装備が足りない?足りないなら皆の勇気で補って。
(符雨は艦船装備を見ておいて。船内、船外の危なそうな所は飛威と魅医で対応して)

一度始まったら必要なのは情報と、駆け引き。それと決断力。
しゅほうはっしゃー


柊・明日真
【アドリブ歓迎】
あれは、レインフォース号か?懲りねえ爺さん達だな。
…ま、それなら後ろは気にしなくても良さそうだ。
任せたぜ、爺さん!

【POW】
雑魚は無視してカレルレンの射線上へ移動、サイキックファイアを【見切り、武器受け、激痛耐性】でわざと喰らい、繋がった鎖を引き寄せて一気に接近。

限界まで近づいたら【怪力、捨て身の一撃】【イグニションスマッシュ】で後の事は考えねえ、俺のありったけをぶち込む!
さあ、力比べと行こうぜ!



●阻止限界点Ω-999:対要塞レールキャノン"HOPE"発射直後

 ――KRAAAAAAAAAAASH!!

「うっわ、エグいのぶちこんだわねあれ」
 やや後方から戦況を俯瞰していた才堂・紅葉は、思わず素で呟いた。
 無理もあるまい。ナイチンゲール号甲板から放たれた超大型レールガン。
 ウォーマシン・パルによる超射撃は、敵戦線に文字通りの風穴を空けたのだから。
 この機を逃すまいと、猟兵たちと艦隊が早速行動を開始する。
「それでもまだ敵は健在、か。壮絶に頭悪い状況ねぇ、こりゃ単機では無理だわ」
 やはり連携が必要か。さてどうしたものかと思案していたところ。
「あら、ねえあなた? 猟兵ですよね、どうして艦に乗り込んでいるの?」
 強襲船レインフォース号に乗り込む神元・眞白の姿を見咎めたのだ。
 猟兵たちの仕事は、艦隊の進む道を拓くこと。当然殆どの者が最前線に出ている。
 いま大型ゴーレム『蒸気王』に乗る紅葉も、後方からの突撃を画策中だ。
「……おじいちゃんたちに、お返しをしてあげようと思って」
「は?」
「主砲、撃たなきゃだから。それじゃあ」
「え?」
 ぽかんとしてる紅葉をよそに、無表情のまま艦に乗り込む眞白。
 そしてそのままレインフォース号は、ぐんぐんと速度を上げて進んでいく。
「……どういうことなの、あれ」
 銭ゲバJKのシビア思考では、独特のルーチンで動く眞白の考えはわからなかったらしい。

●強襲船レインフォース号:艦橋
 一方、当のレインフォース号ブリッジ。
 老人ばかりが乗り込むこの船には、実はもう一人の猟兵が乗っていた。
「ダメだダメだ、なんと言おうとダメったらダメだ!」
 筋骨たくましい強面の老人――彼はメカニック担当だ――が首を横に振る。
「そこをなんとか。ていうか、"ない"じゃなくて"ダメ"ってことはさ。
 やっぱりあるんだよね? ……自爆前提の特攻兵器」
 デイヴィー・ファイアダンプの指摘に、老人たちはうぐ、と言葉を詰まらせる。
 眞白(と彼女が連れている戦術器という人形たち)がやってきたのは、まさにそんなタイミングであった。妙な静寂が流れている。
「……おじいちゃん達、どうしたの?」
「ようお嬢ちゃん! いやあ聞いてくれよ、この兄ちゃんがなあ」
「ていうかものすごくフレンドリーだな。顔見知りなのか」
 ディヴィーの反応も無理はない。が、眞白にとってここは馴染みのある船だ。
 さる宙域での超巨大機獣との戦闘の折、眞白は今のようにブリッジに乗り込んで老人たちの特攻を思いとどまらせていたのだから。
 そういう経緯もあり、話を聞いた眞白は無表情のまま押し黙った。
 ……ディヴィーは、特攻兵器を貸すよう彼らに頼み込んでいたのだから。
「そういうのはよくないと思う」
「うん、いや違うんだよ。キミも猟兵ならわかるだろう?
 グリモア猟兵に頼めば回収はしてもらえるし、そもそも特攻したいわけじゃ」
「よくないと思う」
「おっとこれは……」
 だいぶキャッチボールがうまくいってない気配があった。
 やれやれと頭を振りつつ、ディヴィーは改めて意図を説明する。
「僕のユーベルコードで、その兵器をおもいっきり空母に叩き込むんだ。
 どうしても不安なら、僕の本体を預けるよ。キミなら意味、わかるだろう?」
 彼はヤドリガミである。眞白はなるほど、と無表情のまま頷いた。
 老人たちからすれば、人形である彼女も、彼も、どちらも人間である。
「そういうことなら、いいと思う。それよりおじいちゃん達」
「んぉ? なんだいお嬢ちゃん」
「全速前進、れっつらごー」
「いやいや。いやいやいやいや」
 今後はディヴィーが止める番だ。なんだこれ。
「それほんとに特攻じゃないか。何しに来たんだキミ」
 眞白はきょとんとした顔のまま首をかしげる。戦術器たちは首を横に振った。
 言い出したら聞かないからこの子は、みたいな気配があった。
「……特等席で、見せてあげたいなと」
「おっとこれはまたしても……」
 なお、老いぼれ達はさっそくフルスロットルをかけていた。

●阻止限界点Ω-999:戦闘開始より450秒経過
「その一切を灼き斬るッ!!」
 ゴウッ! と、虚空を焼き焦がし振るわれた緋焔の剛剣が敵機を両断!
 爆砕による炎をものともせず、柊・明日真は次なる敵を睨む。
 先のレールガンによる混乱、そこを突いた強襲と残党敵の掃討。
 面制圧を得意とする彼にとってはうってつけの任務だ。
「とはいえ、さすがに数が多いな! まあ退屈しねえで済むけど、なッ!」
 迫りくる敵機を真正面から両断! なんとも荒々しいファイトスタイルだ。
 そこかしこで猟兵たちが奮戦しているものの、第二波の発艦は間近だろう。
「こう、バーッとやってガーッとやるような方法がありゃなあ。
 さすがに後ろの艦がここまで出てくるのもまだかかるだろうし……」
 そこへ、ゴーン、とものすごい速度で近づいてくる船あり。
「あれは、レインフォース号か? 懲りねえ爺さんたちだな。ま、それなら後ろは」
 ゴーン。そんな明日真の真横を通りすぎてさらに加速していった。
「…………ん!?」
 二度見した。後ろを任せるどころか通り過ぎていったぞあの老いぼれども。
「おいおい、あんときの経験忘れちまったのかよ! ボケたのか!?」
 然り、明日真も眞白同様、この艦にまつわる戦いに参加した猟兵だ。
 先の戦いでは、とてつもない大きさの機獣を自慢の腕力で叩きのめしたのだが……。
「いやさすがにヤバイだろ、おい!」
 慌てて船体に捕まり、ごんごんと適当な壁を叩く。まるでノックである。
 するとエアロックがバシュンと開き、メイド服姿のからくり人形が出てきた。
 目が合う。
「……あ、ども」
 そして向こうは引っ込んだ。
「いや戻るのかよっ!? 何がどうなってんだこりゃあ……」
 困惑する明日真。するとまたエアロックがバシュンと開いた。
 現れたのは、明らかに片道ぶんの燃料しかなさそうな有人式ミサイルだ。
 そして、それをよっこいせと担いで現れたデイヴィーである。
「……あ、ども」
「ああ、どうも」

 間。

「「んん!?!?」」
 二人して我に返った。
「ええっと、すまない。キミは? 僕はデイヴィーだよ」
「柊・明日真だ。あんた何持ってんだそれ、ていうかなんだこの速度!?」
「うん、まあ僕も聞きたい。なんでも特等席で主砲がどうとか」
「やべえ全然わかんねえ!」
 無理もなかった。なお船はごうごう全速前進している。
 よく見ると先陣を切って導いてくれているスターライダーもいた。
 どうすんだこれ、と二人が途方に暮れていたその時。ビーム砲の照準が船を捉える!
「っと、仕方ねえな! もともとそのつもりだったんだけどよ!」
 明日真はすばやく甲板を走り、レインフォース号を蹴立てる。
 そしてサイキックファイアの射線上に自ら飛び込んだのだ!
「待った、何やってるんだキミ」
「なあに見てろって……ぐおおっ!!」
 リフレクトアームで威力を減衰したものの、無傷ではいられない。
 が、激痛をこらえながらも、明日真は伸び来たった鎖を自ら掴み取る。
 唖然とするデイヴィー、しかしそこで我に返り膝を叩いた表情に。
「その手があったか。気をつけて!」
「理解が速くてありがたいぜ、あんたも大概だな!」
 赤髪のマジックナイトはにやりと笑い、鎖を伝って猛進を開始。
 然様、明日真は計算づくで攻撃を受けたのだ。狙いは接近にある!
「助かったな。僕も確実に当てないと」
 すさまじい腕力で特攻ミサイルを構えるデイヴィー。彼もだいぶ脳筋だった。

●同時刻:解放軍艦隊・後方
「大変なことになってるわねあれ」
 あれからなおも戦場の俯瞰を続けていた紅葉は、手でひさしを作って言った。
 多分あのお嬢様(眞白のことだ)がなんかやらかしたんだろう。
「でもまあ、おかげで連中は足並み乱れてるみたいじゃない」
 ぎしりと凶悪な笑み。手の甲に、ぼんやりと青い輝きが浮かび上がる。
 ゴシュー! とスチームを吹き出し、蒸気王が腰を落とす。
「これならいけるわね。ブースター封印解除!」
 巻きつけられていた鎖が音を立てて引きちぎれ、再びスチーム排出。
 ゴシュウ……! 背部の二対のブースターが不穏な音と熱を放つ。
 宇宙の真空をたわませる熱蒸気。それは高まり続けていく!
「出力上昇、オーケー計算通り。あのマッドどもはいつかシメるとして!
 今日ばっかりは遺憾無く性能を発揮してやろうじゃない、行くわよ蒸気王!」
 スチームジャイアントが咆哮を放つ。そして!
 すさまじい蒸気を吹き出しながら、無骨な巨人は流星となって敵陣へ吶喊した!
 打ち漏らしの敵機によるビーム砲、あるいは対艦ミサイルが巨影を襲う。
 デモンでゴッドな蒸気王の装甲には通用しない! 腕を振れば一撃破壊だ!
「こちとら保身なんざ考えちゃいないのよぉ、どきなさいッ!!」
 文字通り敵陣を蹂躙圧殺しながら、なおも加速を続け蒸気王は跳ぶ。
 おもむろに紅葉は拳を胸の前で突き合わせる。両手甲に浮かび上がる紋章!
「コード:ハイペリア承認! 高重力場限定展開――ランク・2!!」
 通常であればランク1、すなわち片手のみで発動するユーベルコード。
 これを両手の紋章で同時に発動することにより、物理法則を無視した局所荷重を得るのだ。
 すなわち速度はそのまま、質量および重力のみが二倍に増大!
「二倍の出力に二倍の勢い、さらに二倍の質量と二倍の重力!
 カレルレン! これであんたのコアをぶち抜く十六倍の質量攻撃よぉーっ!!」
 だいぶ卵を茹でた感じの理論だが、実際に破滅的威力がそこに生まれていた。
 猛進するレインフォース号と並走する蒸気王。するとそのとき、ミサイルが出てきた。
「ん?」
 しかも人がミサイルを持っていた。
「んん!?!?!」
 二度見した。向こうも紅葉を見返してコクピット越しに手を振っている。
 そしてレインフォース号の加速を載せた上でミサイル点火、飛んでいく!
「嘘ぉ!?」
 負けじとさらに加速する蒸気王。また向こうが手を振っている。
 唖然としていた紅葉だが、カレルレンの巨容が近づくにつれ鮫じみた笑みを浮かべた。
「一緒にぶち抜きましょうって? 望むところじゃない!」
 ぐんぐんと空母が近づく! 最大加速!
 そしてミサイルは飛んでいく。デイヴィーが思い切りブン投げたのだ。
 本人はそのまま、慣性の法則でミサイルから離脱した。手を振ってる。
「……離脱すんのかーーーーーい!?」
 ええいままよ! もとよりこの蒸気王の装甲に賭けているのだ!
 覚悟を決めた紅葉と、ミサイルが着弾しようとしていたまさにその時!

「おらおらおらぁ、力比べといこうぜェ!!」
 対艦用の超高チェーンを掴み、すさまじい笑みを浮かべる明日真。
 ぎらぎらと目が橙に燃える。片手で鎖を握り、もう片方で猛然たる拳を握る!
 ギャリギャリギャリギャリ! 一気に巻き上げられる鎖、上等だ!
「後先なんて考えやしねえ、俺のありったけをぶち込んでやる!!」
 なんたる向こう見ず! 馬鹿げた大きさの空母相手に素手ゴロ勝負とは!
 だがこれが明日真なのだ、これが刻印の剣なのだ!
 刻印魔術、起動。刻印励起、火炎元素収束、爆撃充填完了!
「一気にぶち抜く――タダで済むと、思うなよッ!!」
 獣じみた咆哮。赤髪が箒星のように宇宙をなびく。そして!
「おおおおおおォオオオオオラァアアアアアッ!!」
 裂帛の一撃が――艦体に、叩き込まれたッ!!
 さらに蒸気王も一気呵成に突撃、着弾!
 デイヴィーが擲ったミサイルも――ほぼ同時に撃着!

 KRAAAAAAAAAAAAAAAASHッッ!!

 そしてほぼ同時刻、レインフォース号艦橋!
「足りない分は勇気で補う。補った。おじいちゃん達、いってみよう」
 眞白の号令……号令? のもと、すっかりノリノリの老人たちが歓声を上げる。
「こんなこともあろうかと用意しといた主砲、行ってみるかのぅ! ポチッとな」

 ZAAAAAAAAAAAPッ!!

 ジェネレーターのエネルギーをフルに持っていく金食い虫の巨砲が火を吹いた。
 爆撃、超質量、そして特攻ミサイル。
 そこに艦砲射撃が加わり――同時に命中した別働隊の攻撃とともに、カレルレンの巨体を大きく揺らす。
 猟兵の猛攻、ここに成れり。ダメージは甚大だ……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●抜粋:インタビューログ-BoGE-G01より
 ――そう、そこで私は彼らに言ったわけだ。こう……え、その話はもういい?
(話者はきわめて不満げに襟元を正すが、すぐににこやかな笑みを作る)
 結構! ま、私と彼らの絆の深さをご理解いただけたというところかな。
 まあシリアスな話をすればだ、あいつらのおかげで私は多少真人間になれたのさ。
 どうしようもないクズから、多少愛嬌のあるクズにね。
ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)
終盤だな。
目標:敵戦闘機母艦。
ミッションを開始する。――手を借りるぞ、もう一人のジャック、ドロレス。

(ザザッ)
SPD選択。
グレイテスト号の手を借り宇宙を飛翔。
可能ならば本機がステルス機能を付与しよう。(目立たない+迷彩)

Craft: Bomb作動。
まず"誘導式弾頭"を複数作製、射出。
帝国式兵器を狙い撃ち破壊する。(誘導弾+スナイパー)

その後、母艦を狙う。
精製対象:バンカーバスター(地中貫通爆弾)。
23㎥、許容する限りを精製し投下。
――投下完了後は君の出番だ、ロク。

投げるぞ、準備はいいか?
――3、2、1、発射!
(力溜め+投擲)

接近戦は君の本分だ、健闘を祈る。オーヴァ。
(ザザッ)


ロク・ザイオン
ジャック(f02381)と
……かっこいいとこ、見せに来た。
(森番は張り切っている。
宇宙の冒険は、キミの船と共にあったが故に)

弱い方のジャック。
おれと、強い方のジャックを。
投げろ。

(全速前進するグレイテスト号の勢いに乗り、更に翔ぶ。グレイテスト号が更に自分を加速させる方法があるなら、やってほしい)

いける。
おーば。

(道はジャックに拓いてもらう。
山刀構えて、全速力、突っ込む。
修復用アームは「烙禍」で炭に。更に【2回攻撃】【傷口を抉り】【鎧砕き】。
硬い殻を、貫く)

燃え、
……落ちろ!!


シーザー・ゴールドマン
【POW】
見覚えのある船がチラホラ見えるね。
生き残っているようで何よりだ。
戦術
『シドンの栄華』発動。
[オーラ防御]を『維持の魔力』で強化。
[第六感][見切り][残像][空中戦]を駆使して雲霞の如き護衛群を突破して『帝国戦闘機母艦』にとりつきます。
ブリッジ(視認できない場合は[第六感]頼り)目掛けて『破壊の魔力』を極限まで込めた[鎧無視攻撃][串刺し][全力魔法]の[衝撃波]を放ちます。
「君達を討ち滅ぼすのは奇跡ではないよ。あくまで人の業さ」
(OPの3隻には縁がありますので描写があれば嬉しいです)




 レールガン掃射、および猟兵と艦隊による一斉攻撃。
 立て続けの猛攻は、いまやカレルレンの巨体を4割近く減じている。
 通常の戦争において、軍隊が『全滅した』とされるのはわずか兵力の3割に過ぎない。
 戦力が3割減れば、その時点でもう戦いは成り立たないのだ。

 だが彼らはオブリビオンである。ゆえに抗う。
 そして猟兵たちもまた、完膚なきなまでに叩き潰すのだ。

●阻止限界点Ω-999:戦闘開始より540秒経過
《――目標、敵戦闘機母艦への同時攻撃着弾を確認》
 最前線やや後方。鋼の豹が高感度カメラアイによって状況を把握していた。
 ジャガーノート・ジャック。鎧を纏う彼は冷徹にして無慈悲な兵士である。
『おう、そりゃいいこった。ところでだな、兄弟(ジャック)?』
《――どうした、色男(ジャック)》
『なんでお前さんたちはウチの甲板に乗り込んでんだぁ!?』
 ……然様、ジャガーノートはいまグレイテスト号の甲板上にいる。
 識別名『ジャック』。一方、この船のキャプテンも"色男"ジャック。
 性格も個性も、ついでに強さも対称的ながら、同じ名を持つ二人。
 彼らは色々と馴染みがある。一種の腐れ縁とでも言うべきか。
 そして、それは一人だけではない。
 ジャガーノートの腕の中、やや張り切った面持ちの少年だ。
 否、それは少年ではない。中性的ながら立派な少女。ロク・ザイオン。
『お嬢ちゃんも揃ってよ、なんだってんだ一体。アーハン? 聞こえてるか?』
 ロクはやや逡巡した様子でジャガーノートを見上げる。
 鋼のジャックは無言だ。やがてロクはおずおず口を開いた。
「……かっこいいとこ、見せに来た」
 ざりざりざりざり。彼女の声はきわめてひび割れ、そして不快だ。
 とはいえこれまでの冒険で色男はその声を耳にしている。
『なぁんだよ、何を言い出すかと思えば。ありがたいねぇ!』
 しかしこの男はこの通り。ふと、ロクは間をおいてから問いかけた。
「……声」
『あん? なんだって?』
「みにくく、ないのか」
 返答に間が空く。……ロクは、様々な事情から己の声を好いていない。
 事実それは喝火の音であり、獣の咆哮であり、呪われた声であった。
 なおも静寂。ロクの無表情が、わずかに沈んだように見えた――その時。
『ああ、そういや不思議な声してんなあ、お前さんは!
 あんな状況で出会ったもんだからよ、気がついたら慣れてたぜ!』
 あっけらかんとした声であった。
『みにくい? てのはよくわかんねえが、いいじゃねえか個性的で!
 俺はね、お前さん達のおかげで夢ができたのさ! 博物館よりも素敵な夢さ』
 色男は語る。
『個性的な連中を集めてな、サーカスをするんだ! 宇宙を行くサーカス船だ、いいだろ?』
 いかにも金儲けを考えていそうな声ではあった。だが、事件を経た彼なりの夢なのだろう。
 ……ロクの声は――もちろん彼女だけではないが――ろくでなしに、夢を与えたのだ。
 そんなたわけた答えを聞いた二人の表情は、鋼と赤髪に隠されていてわからないが。

「おや、奇遇だなふたりとも。君達が後方にいるとは」
 そこで船に寄ってきたのは、シーザー・ゴールドマン。
 彼もまた、このオンボロ船に縁のある猟兵であった。
 それどころか、艦隊に参加する船の多くと事件をともにしている。
 ジャックやロクとも知らぬ仲ではない。だがどこか不思議な紳士だった。
「ご老人がたや小夜啼鳥もそうだが、君も生き残っていたようでなによりだよ」
『そりゃどうも、シーザーの旦那。まあ俺は後ろでゆっくりしてるからよ』
《――ドロレス、全速前進を開始してくれ》
『了解シマシタ』
 ジャガーノートの声に、グレイテスト号の女性人格AIはあっさり従う。
 本来のキャプテンの抗議をよそに、三人を載せた船は一気に加速を始めた。
「なるほど、これはいいタイミングで相乗りできたようだ」
 悠々自適のシーザーである。足など組んでふんぞり返る有り様だ。
 だが、そんなのんびりとした宇宙旅行を敵は許してくれない。
 大破壊を逃れた敵機動兵器が、次々とグレイテスト号に狙いを定める。
 ジャガーノートの鋭いカメラアイが、赤く不気味に輝いた。
《――Copy that.誘導式弾頭生成開始――射出》
 砂嵐がグレイテスト号を包み、そこから放たれる生成弾頭。
 敵対艦ミサイルを撃墜、残る弾頭が機動兵器を撃滅する!
《――ドロレス、速度を上げてくれ。飛翔には不足だ》
『ちょおっと待てぇ! だから一体何するつもりなんだぁ!?』
 そこでロクが顔を上げ、きっぱりと言った。
「弱いほうのジャック。おれと強いほうのジャックを、投げろ」
 ……静寂。
 それを最初に打ち破ったのは、シーザーであった。
「ハッハハハハハ! なるほど、なるほど、そうきたか! それはいい!」
 嘲っているわけではない、純粋に感心した様子の笑みである。
「では私もご同道に与ろう。目的地は一緒のようだからね」
 金の瞳が森番を見返した。ややあって、ロクが頷く。
『投げろ、ったって……』
《――投擲は本機が行う。グレイテスト号は全力で速度を出してくれれば問題ない》
 とてつもなく乱暴な作戦だ。だが効果的な接近方法ではある!

 しかしなおも敵機動兵器は立ちふさがる。ジャガーノートの複製にも限界はあるのだ。
 そこでようやくシーザーが立ち上がった。赤いオーラが揺らめく。
「一足先に私が道を開けよう。向こうで会おうじゃないか、森番くん」
 にこりと食えない笑み。重圧じみてオーラ=魔力は重ねられていく。
 大気を歪めるほどの質量を得たそれが解き放たれると、男は弾丸じみて翔んでいく。
《――未だに底の知れない男だ。我々は我々の任務を遂行しよう》
 ロクはこくりと頷いた。
「いける。おーば」
 ざりざり。擦り切れるような声は、けれどどことなく明るく聞こえた。
 ……そしていまや、砂嵐が生成する爆発物はその趣を変えている。
 ユーベルコードによる複製物の限界は、ジャガーノートの力量に由来する。
 現状の彼が生成できるのは、大きさにして約23立方メートルに等しい。
 その有り余るサイズを用いて生み出されるのは……大型のミサイル。
 否、現実においてはバンカーバスターとも呼ばれる貫通爆弾だ。
 自由落下、ないしロケットブースターによる加速を以て障害物や地層を貫通、以て弾頭を内部炸裂し効果的な破壊を行うという危険な兵器だ。
 全長約6メートル、直径約50~60センチ。凶悪な大量破壊兵器が生み出され鎌首をもたげる。
 無論、狙う先はカレルレン。大きく損壊すれどいまだ装甲は健在である。
《――全弾投下後、君を投擲する。準備はいいな》
 こくんとロクは頷く。……彼女にとって、この戦いには大きな意味がある。
 スペースシップワールド。見知らぬ宇宙世界で、初めて乗った船。
 それがこのオンボロ船であり、このろくでなしであり、ともに戦う仲間たちがいた。
 ロク・ザイオンは森番である。未だそれ以外の世界を見聞きする最中の少女である。
 ――最初に語った言葉は、彼女なりの真摯な答えだったのだ。

●抜粋:インタビューログ-BoGE-G05より
 待った。その言葉は私も聞き捨てならないぞ。それは訂正してもらおう。
 ……結構。いくら私だって、恩人のことを悪く言われるのは我慢ならんさ。
 ああ、君に悪気がないのはわかっているよ。うむ、というかこの喋り疲れるな。
 そりゃ連中は変わってるさ、けど変人なんてこの世にいくらでもいるだろ?
 おい、なんで俺を見て頷く? あんたインタビューしたいのか喧嘩売りたいのかどっちだ?

●阻止限界点Ω-999:戦闘開始より570秒経過
 いや実に面白い。これだから猟兵と肩を並べるのは楽しいのだ。
「だが君達は実につまらんなあ!」
 シーザーは快哉めいて言った。彼が剣を振るうたび爆炎の華が裂いた。
 赤公爵の名を持つダンピールは人生を大いに楽しむ。
 酒を、食事を、旅行を、絵画を、読書を、風光明媚を。
 戦いを、殺しを、蹂躙を、苦闘を、共闘を、何もかも。
「どうした諸君、人生を楽しみたまえ。でなければ――死にたまえ」
 それはあまりにも傲岸不遜で、ぞっとするほど明るかった。
 彼は有人と相対するような気安い笑みのまま、敵陣を駆け抜ける。
 迫りくる敵機は、余さず破滅の魔力に飲まれて消えた。
「ほう。これはこれは」
 そして彼がカレルレンめがけ飛翔を加速したその時。
 シーザーの頭上を越え、翔んでいく物がある。
 バンカーバスター。破滅的威力を秘めた対鋼殻貫通弾頭!
 数にしておよそ10以上はあろうか。それらは同時にブースト!
 一目散にカレルレンめがけ翔んでいき――そして、破壊が生まれた。
「そうでなくてはな! いいかね銀河帝国諸君!」
 オーラの刃がじりじりと焦げ付くような音と熱を孕む。
 赤黒いオーラが剣身に収束――極めて危険な破壊力を生成。
「我らは奇跡の力を振るう。だが君達を滅ぼすのは奇跡ではない」
 男の背後、迫り来る艦隊が見えた。人々の輝きが。
 天の光は全て戦友。奴らから見れば総て敵!
「あくまで、人の業さ」
 魔王の爪が、衝撃波となり上帝気取りの空母を引き裂いた!

●同時刻:グレイテスト号艦上
 山刀を握りしめたロクは、ジャガーノートの両手に抱えられている。
 鋼の豹はぎちぎちと上体を捻り、全膂力を集中させていた。
『ああくそ、ドリー! ブースター全開だ! 壊れても構わねえ!』
《――感謝する、同胞(ジャック)。離陸までカウント開始》
 3秒。
『代わりに盛大にぶちかましてくれよ、お嬢ちゃん!』
 2秒。
「……わかった」
 1秒。
《――行くぞ、発射ッ!!》

 ゴウ――ッ!!

 その瞬間、烙獣は風となった。否、もはやその速度は星に等しい。
 大気なき真空を翔ぶ。そこには風も何もありはしない。
(――ふしぎだ)
 獣は思った。
(うたが聞こえないのに、気持ちいい)
 山刀を握る。
(だから、おれは)
 母艦……否、獲物がぐんぐんと近づく。シーザーの魔力が見えた。
「病葉を、殺すッ!!」
 決然たる言葉。風は擦り切れぬ、ひび割れもスピードに洗い流される!
「燃えて――落ちろォッ!!」
 そして獣は吠えた。されど爪でも牙でも、ましてや醜声でもなく。
 人として力を合わせ。
 人として刃を握り。
 人として、炎を解き放ったのだ。

 烙印の炎は、かくて上帝を焼き焦がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●抜粋:インタビューログ-BoGE-G16より
 イエス。当機ハ現在、18件ノ金融業者カラ督促ヲ受ケテイマス。
 イエス。デスガ、ノー。過去ト状況ハ同ジデスガ、異ナル点ガアリマス。
 ……イエス。当機ノ債務ハ、全テ連帯保証シタモノデス。
 イエス。極メテ不合理、カツ不可解ナ行動デス。シカシ……。
 元々、彼ハソウイウ性分デスノデ。団員ニハ慕ワレテイルヨウデス。

 時間はふたたび、70秒ほど遡る。
ジョン・ブラウン
リチャード・チェイス
詩蒲・リクロウと共に行動

ジョンはリチャードの運転するバイクの後ろに座る
「はっ、何処を見ても敵敵敵……嫌になるね」
「ウィスパー、勝率は?」
<グレイテスト号より計算結果を拝借、0.0000001%以下です>
「自分で計算しろよお前……」
<撤退しますか?>
「冗談、足りなきゃ足してやれば良いのさ」

ユーベルコード起動、助けを求める人々、今まで戦ってきた戦友の幻影が
敵艦を遥かに超える、宇宙を覆い尽くす星々のように煌めく

「さぁ、再計算だ。どうなった!?」
バイクを限界まで強化する
<勝てます>
「オーライ!僕と同じくらいハンサムな艦長さんに伝えてやりな!」

「天の光は全て戦友(とも)ってね!」


詩蒲・リクロウ
【ジョン・ブラウンとリチャード・チェイスと共に】
リチャードさんのバイクで、ジョンさんの計算した航路で敵の攻撃を掻い潜り接近、サイドカーに乗った僕がUCにて直接大穴を開ける作戦ですか…。
リスクは高そうですが、やる価値はありそうですね。
よし、僕も覚悟を決めます!
行きましょう!!皆の力を合わせてこの宇宙に平和を取り戻しましょ……

え、なにそのスイッーー


……
………

ウワァァァアァッ!!!!

こうなったらやけくそだぁらぁああ!!!!(涙目全力UC)



__とある民間船にて。

「わぁ、綺麗な流れ星だ!」
「あらホントねぇ」
「願い事、願い事。…皆が平和に暮らせますように……。」
「ふふ、そうなると良いわねぇ……本当に。」


リチャード・チェイス
【ジョン(f00430)、リクロウ(f02986)】

「進路クリアー。それゆけ!ペドロ・ロペス君、フルスロットルである」
ジョンとリクロウを乗せ、艦橋からハーレーで星の海へと発進。

「見たまえ、諸君。瞬く星空に劣らぬ砲撃を。
ところで……板、なんだかサーカスだかの軌道を一度してみたかったのである」
凄くくだらない理由で、ついでにジョンのUCで強化されるように
出来るだけ反撃の激しそうな中心部へブチ込む。

「これがたったひとつの冴えたやり方なのである。ポチッとな」
迫りくる敵の猛攻の前にサイドカー射出。当然リクロウごと。
信じられないと言いたげなリクロウと目と目が合う
その瞬間は全体的にスローモーションで。無問題。



●阻止限界点Ω-999:戦闘開始より500秒経過
「ワオ、ありゃすごいね! まるでニューイヤーのお祝いみたいだ」
 遥か彼方、カレルレンに突き刺さる何条もの輝き。
 甚大なダメージによる、母艦の連鎖爆発。それを見てギークは言った。
 ジョン・ブラウン。赤毛の少年、片田舎のバトルゲーマーだ。
「ちょ、ちょっと待ってください! あんなところに突っ込むんですか!?」
 などと慌てた様子で泣き言を喚くシャーマンズゴースト。
 その名は詩蒲・リクロウ。こう見えて田舎っぺである。
 見た目も中身も何もかもちぐはぐな二人だが、実は割と仲がいい。
 ところで二人はいま、ある乗り物に乗って高速飛行している。
 ジョンはタンデム、リクロウはサイドカーに。
 はたしてその乗り物とは? 驚くなかれ、ハーレーである!
 しかもチョッパーカスタム。ヒゲオヤジが乗り回すアレだ。
「突っ込むも何もとっくにフルスロットルである、いい加減覚悟決めよ」
 そしてそれを乗り回すのも、驚くべきことにシャーマンズゴースト。
 ジョンの悪友であり相棒、リチャード・チェイスという男だ。
「今日は絶好のトナカイ日和であるなあ、ペドロ・ロペス君もご機嫌である」
 宇宙バイクなのかハーレーなのかトナカイなのかだいぶゲシュタルト崩壊だ。
 何かを考えていそうで何も考えていなさそうな、声はハンサムな男である。
「しかしあれだけぶちこまれても、まだまだ出てくるとはね。
 はっ、敵、敵、敵。まったく嫌んなるよ」
「そういうのいいですから、計算! 計算してください!
 あとリチャードさん、前見て! なんでお菓子食べだすんですか!?」
「お腹が空いたからであるが?」
「だから前見てください前あああああ敵来てますからーーーーー!!」
 地獄絵図であった。

 ともあれそんな仲良し三人組。これでもれっきとした作戦あっての行動だ。
 まず、ジョンが敵を回避できる最適な進路を計測、これを共有。
 リチャードは華麗なバイクテクニックで敵を回避し、母艦に接近。
 そしてリクロウが敵装甲に風穴を開ける。一撃離脱の強襲戦法だ。
 ……と、リクロウは聞いている。納得もしている。
 リチャードたちも嘘はついていない。いや最初は多分そのつもりだったんだろう。
 さておき、彼らのテンションをよそに敵の猛攻は熾烈を極める。
 カレルレンへのダメージが甚大なためだろう、それだけ追い詰められているということだ。
「だ! か! ら!! リチャード!!! さん!!!!!
 前を!! 見て!!!!! 運転してくださいだからなんでコーヒー飲むんですかー!?」
「食後だからであるが……?」
「カフェインのとりすぎには注意しないとね、はいそこ右ー」
 泣き叫ぶリクロウ。奇行をしながら無駄に曲芸的運転をするリチャード。動じないジョン。
 割と地獄絵図である。そんな中、機体はグレイテスト号に追いついた。
 甲板上の鋼の豹に、ジョンは見覚えがある。彼に一瞥を送りつつ、船内へ通信。
「ハロー、ハンサムな船長さん! ずいぶん飛ばしてるね、弾丸旅行がお好きなの?」
『色々あるんだよ、それよかあんたらも突っ込むのか? 気をつけろよ!』
「思ったより素直なお言葉。ところでウィスパー、この戦闘の勝率ってどのぐらい?」
 彼の装備している音声デバイス、そこに宿るAIが答えた。
《グレイテスト号のAIより結果を拝借しました。0.0000001%以下です》
「そこ自分で計算しないんですねウィスパーさん……ってだからリチャードさん前ー!?」
「お菓子を食べたあとは歯磨きもしないと大変であろう!」
 阿鼻叫喚をよそにオーバーな仕草で肩をすくめるジョン。
《撤退しますか?》
「冗談でしょ。足りないなら足してやればいいのさ!」
 その時、時空が揺らいだ。宇宙の虚空に、水面めいてかすかな波紋が走った。
 ……するとどうだ。大気なき宇宙に、声なき声が響き渡る。
 痛い、苦しいと泣き叫ぶ声があった。それは死者のものだった。
 畜生、負けねえぞと叫ぶ声があった。それも死者のものだった。
 全軍突撃! と鬨の声を揚げる者がいた。
 銀河に平和を! 自由を! と応える者達がいた。
 それどころではない。世界線を越え、骸の海を越え、数多の世界の幻影がここに集う。
 それは真実か否か、はたまた夢見がちなギークが見出したありがちな幻想か?
 たしかなのはひとつ。その声は、みな救いを求める者たちのもの。
 声なき声、涙なき叫び、されど集う意思は、たしかに彼らに力を与える!
「おお、すごい! これならいける、いけますよ!」
「うむ! 私もだいぶやる気が出てきたのである!」
「さすがリチャードさん! ところでなんで敵の多い方突っ込んでるんですか!?」
 いい感じの雰囲気は一瞬でぶっ壊れた。運転手があまりにも自由すぎる。
 ジョンのナビゲートを完全無視し、わざわざ敵陣中央をかいくぐるハーレー(トナカイ)。
「あっはははは、こりゃいいや! ウィスパー、戦力結果を再計算!」
《勝てます。ですが撃墜確率は100%オーバー》
「それは聞きたくなかったな! けどハンサム船長、聴こえるかい!?」
 グレイテスト号から愉しげな声が応える。
『なんだこりゃあ! 坊主、すげえな!』
「だろう? ご覧よ、輝く星を。これが僕たちの味方、僕たちの力さ」
 轟く声、響く声、声なき声たちが星めいて虚空を埋め尽くす。
 かつて在りし艦隊と、救い求める数多の幻影。そして今を戦う人々。
 それらが生み出す砲声、銃光、爆炎、輝光。
 心の底から楽しげに、それを見上げた赤毛の少年は言い放つ。
「天の光はすべて戦友(とも)、ってね! どうだい、いいセリフだろ?」
「へえっ? あ、はいかっこいいと思います!」
「だよね。じゃあリクロウもきれいな星になろうか。友達だからね」
「もちろんです、任せてください!
 ………………………………………………ん?」
 だいぶ間があった。当人はまだ首を傾げている。
 かなりいい雰囲気に圧されている感がある。
 迫りくる敵艦隊に向け、ミサイルならぬ誘導鹿をぶっ放すリチャード。
 彼がポチポチ押してるボタンには『馬』の漢字。……どっちだ!?
 そしていまや、ハーレー(トナカイ)は妙にかっこいいカメラワークで敵攻撃をかいくぐっていた!
 それもすべてジョンのユーベルコードの力である。なぜ全力を出した。
「然様、これがたったひとつの冴えたやり方なのである。ポチッとな」
『馬』の下にある『インパラ』のボタンを押すリチャード。
「ん?」
 するとサイドカーがバシュッと分離して。
「んん??」
 シュゴウ! とロケットエンジンが点火して。
「んんんんんん!?!?!?!?!?」
 ゴオオオオオオオオ……! とカレルレンめがけて翔んでいく!
「飛び出せ!エド・ゲイン君 feat.リクロウ発射である!」
「さっきまでのいい雰囲気なんだったんですぁあああああああ……」

 静寂。

「天の光はすべて戦友(とも)ってね」
《言い直しても雰囲気は取り戻せないかと思われます》
「故人(とも)にならねばいいのであるがな! はっはっは」
 無慈悲だった。

●とある民間船
「ママー、怖いよぉ、死んじゃうよぉー」
 止むを得ず艦隊に参加した民間船、最後方に位置するその船内で泣きじゃくる少女あり。
 母親らしき人物は必死に慰めているが、遠くから響く衝撃が彼女すら不安にさせる。
 ……その時、彼女は窓の外を見て、ぱあっと笑顔を輝かせた。
「ねえ見て? ほら、お星様よ! きれいねえ!」
「うう、ひっく……え?」
 少女も窓の外から宇宙を見た。たしかにそこに流れ星が見えた。

「ウワァアアアアアッ!!」
 まあ飛んでるのシャーマンズゴーストなんだが。
「ちくしょううううう、こうなったらやーーけくそだぁあらぁあああ!!」
 ドクター・オロチにえらく効きそうなバス停標識を構える! 着弾3秒前!

「きれいねえ!」
「うん、じゃあ私、お願い事しなきゃ! えーと、えーと。
 皆が平和に暮らせますよーに! パパも帰ってきますよーに!」
「ふふ、そうなるといいわね。ええ、本当に……」
 平和を願う親子の、戦乱の中でのかすかな安息であった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●抜粋:インタビューログ-BoGE-N17より
 我々はあの人達の後に続いていたに過ぎないんですよ、実際。
 解放軍の組織もそうですし、あそこまで銀河帝国を追い詰めることもできなかった。
 けれどあの人達は……猟兵は、僕たちを戦友だと呼んでくれたんです。
 なら、その気持ちには応えたいじゃないですか。
 だからですよ、我々が最後まで戦い抜けたのは。
ユーノ・ディエール
ナイチンゲール、こちらクルセイダー
遠足に遅れて申し訳ない。これより貴艦を援護する
目標確認、コンバットオープン!

手近な友軍を援護します
出遅れた分、騎乗したクルセイダーで必要な火力を迅速に届けます
輝鉱戦態で最大戦速、出し惜しみは無しよ!

群がる雑魚は誘導レーザーとエネルギー波で破壊
対艦攻撃は先のレーザー、ミサイル、連装キャノンを一斉発射
対空砲火は念動力と武器受けで躱して
2回攻撃で間断なく手は緩めません

私のダメージは抑えられます
兎に角前進して攻撃目標はリペアアーム
船体に取付けたらインペリアルデトネイターで穴を穿ち
端末を探してハッキング、機能の無効化を図ります
止めは全エネルギーをクルセイダーの主砲から!


神酒坂・恭二郎
「敵が七分で黒が三分……いっそ痛快だねぇこれは」
冗談の一つも飛ばしてみる。
空元気も元気の内だ。

本来なら一介の剣士の出番は無いが、一つ試すことがある。
手にした口寄せ用のスペース絵馬ホルダー。
何処からともなく宇宙鮫を召喚する触媒だが、こいつは暗黒宇宙に通じている。

今いる宇宙と重なり合って存在する暗黒宇宙。
謎深き暗黒の深淵に棲まう巨大な存在。
その片鱗を垣間見る道具がこれだ。

腕を切りつけ、フォースを込めた血で絵馬を満たす。
血も力も根こそぎ底なしに沼に吸われる感覚。
命と意識が途切れそうになった瞬間。

“来た”

巨大な気配を感じた。
SSWの伝説に聞く星喰いの魔物。
その正体の一つとされる存在が来る……。


矢上・裕一郎
「超弩級とはまさにこのことか。流石に圧倒される…だが俺は負けん。この世界の希望の芽を潰させるわけにはいかんのでな!」

≪機械仕掛けの我が相棒≫を使用、対艦兵装及び対空兵装で固め宙戦仕様に換装された愛機「夜明号」を召喚

≪操縦≫と≪空中戦≫そして≪第六感≫を活かして敵の攻撃を回避、≪一斉発射≫と≪誘導弾≫で空母及び敵戦闘機や兵装の破壊を試みる
≪視力≫≪学習力≫≪第六感≫で空母の防衛が手薄な箇所若しくは回復の間に合っていない弱点を探り、攻撃可能なら接近し≪零距離射撃≫で攻撃
必要なら≪存在感≫を発揮し敵の攻撃を引きつけ、味方猟兵や味方戦艦の攻撃を通しやすくする
あと一歩が足りない場合は≪勇気≫で補う


ニア・スクニロトマ
暗い銀河を見上げたときは、いつもどこかに七光(スペクトル)。きみにも見えるプラズマ光! けっして消えない流れ星!
そう! あたいこそが! 宇宙怪獣! スペースゾゴンだーーー!!!
宇宙線を宿して無限の光を放つ(という設定)のスペースゾゴン(の着ぐるみ)を着たあたいのエネルギー源は、スペースシップの動力炉(という設定)。
超弩級なんてたいした名前を背負ってるんだ。最高のごちそうにしてやる!
……そして、この記録映像を怪獣映画として仕上げてやる!

前置きが長くなったけど、あたいの作戦は3ステップ!
援護射撃を背中に空母の孔に突っ込んで!
内部から全方位にビーム!
2ステップだった。



●阻止限界点Ω-999:戦闘開始から600秒経過
 いよいよ地獄の釜の蓋が開いてから10分が経過していた。
 たった10分。されど戦場においては1000年に等しい10分である。
「これだけの攻撃を受けてなお健在とはな……さすがは銀河帝国か、圧倒される」
 巨大人型兵器『夜明号』を駆る矢上・裕一郎は呻きを漏らした。
 しかし彼の瞳はいまだ……いや、むしろさらなる戦意に輝く。
「だが我々は諦めん。この世界の希望の芽を潰させるわけにはいかんのでな!」
 半壊……いや7割がた破壊され、炎に燃えながらもカレルレンは健在。
 猟兵たちのたゆまなき攻撃により、かろうじて損傷再生は拮抗している。
「新手か! 悪あがきをッ!」
 そして炎に包まれたカタパルトから現れる新手の編隊!
 夜明号は星の海を滑るように飛び、丁寧な射撃でこれを撃墜していく。
「やはり内部からの攻撃が必須か……猟兵たちが切り開いてくれた突入路はある。
 だが、奴らもそう簡単には近づけさせてくれないな!」
 敵は、そこかしこに開いた突入部というべき風穴を重点防衛している。
 損傷再生を防ぐために全体的な破壊を継続しなければならないため、ここに飛び込むべき人材に不足しているという状態だ。矢上は思案した。

 するとまさにその時、颯爽たる声がふたつ!
「よう矢上さん、手こずってるみたいだねぇ」
 派手派手しい着流しを翻すスペース剣豪、もとい神酒坂・恭二郎。
「ようやく追いついた! あたい、参上!」
 彼らと同じ旅団に属するドワーフの少女、ニア・スクニロトマだ。
「ふたりとも! いいところに駆けつけてくれたな」
 矢上はコクピットで瞳を輝かせた。二人もこくりと頷く。
「矢上さん、雑魚を引きつけちゃくれねぇか? 掃除は俺がやろう」
 どうやら恭二郎には、この状況にとっておきの秘策があるようだ。
 一方ニアは、なにやらマニアックな造形の怪獣きぐるみを纏っている。
「中にはあたいが飛び込むよ! この宇宙怪獣スペースゾゴンならね!」
 ただのきぐるみにしか見えないが、彼女もれっきとした傭兵である。
 そこまで言い切るからには、相応の自信があるのだろう。
 ……だが、ここで恭二郎が渋い顔で顎をさする。
「とはいえ、それでもまだ2手足りねえか……」
「ええっ、なんで? スペースゾゴンの設定が信用できないの!?」
「設定って言っちまってるじゃないか。いやまあ、そうじゃないんだなぁ」
 剣豪かつフォースナイトである恭二郎は、こうした物量戦に向かない。
 とはいえ彼も一端の戦士。戦況に関しては勘がいいのである。
「中からだけじゃなく、外からも同時に一撃を叩き込む必要があるだろう。
 艦砲射撃は当然として、そうさなあ……っと」
「なになに、どうしたの?」
「……ああ、なるほど」
 恭二郎の視線を追った矢上もまた、彼と同じようににやりと笑った。
「おあつらえ向きにやってきたんだよ。――希望の灯がな」

●抜粋:インタビューログ-BoGE-N14より
 死の恐怖? ああ、そりゃもちろんずっと感じてたさ。
 お互いに励ましあって、震える足に力入れながらの毎日だったからな。
 楽しかったなんて口が裂けても言えねえ、二度とごめんだね。
 ただまあ……そうだな。忘れたいかと言えば、ノーだ。
 伝説の戦士と肩並べて戦ったなんて、とんでもない宝物だろ?

●阻止限界点Ω-999:戦闘開始から580秒経過
 時間はほんの少しだけ巻き戻り、最前線からやや後方。
 艦隊と猟兵達に追いつこうと、全速前進するナイチンゲール号の姿がある。
 彼らはパルのレールキャノン砲撃を支援するため、足を止めていたからだ。
「少しでも多くの火力を叩き込まないと……もっと前に出るんだ!」
 焦れた若き船長はここで判断ミスを犯した。
 艦隊からはぐれかけたところを狙い、カレルレンの戦闘機編隊が襲ってきたのだ!
 いけない! ナイチンゲール号の面々が悲鳴を上げかけた、その時!
 横合いから無数の光条が飛行編隊を劈き、一瞬で撃滅せしめたのだ!
 光条が翔んできた方角から、小さな星が……否、一人の鎧装騎兵がやってくる。
『ナイチンゲール、こちらクルセイダー。遠足に遅れて申し訳ない。
 けど間に合ってなにより、これより貴艦隊を援護するわ!』
 麗しき金髪のスターライダー、ユーノ・ディエールだ。颯爽たる活躍!
 いまや彼女は珪素装甲ナノスキンジェルによる擬態を半ば解き放っている。
 スペースノイドのように見えるが、実は彼女はクリスタリアンなのだ。
「こ、こちらナイチンゲール。クルセイダー、支援に感謝します!」
『出遅れたぶんの仕事はしないとね。目標カレルレン、コンバットオープン!』
 目の醒めるような速度で最前線へ向かうユーノ。
 それを追いかけ、小夜啼鳥もまた全速力で宇宙を翔ぶ。

 そして時系列は先の矢上たちに合流する。彼らが見たのは彼女の姿なのだ。
『クルセイダー! こちら夜明号だ。手を貸してくれ!』
『ええ、喜んで。私は何をすればいい? 雑魚の相手かしら?』
 帰ってきた声に、夜明号の肩に座っていた恭二郎が立ち上がる。
「お前さんはニアと一緒にあのドでかい空母を陥としちまってくれよ」
 おもむろに彼が懐から取り出したのは……面妖な、絵馬であろうか?
「サメだ! かっこいい!!」
 さっそくニアがこれに反応するが、恭二郎の表情は固い。
「こりゃあただの鮫じゃあない、宇宙鮫を召喚する触媒なんだ。
 矢上さん、囮は任せるが全速力で逃げてくれよ。こいつは……獰猛だからねぇ」
『任せてくれ、戦友。夜明号、交戦に突入する!』
 掌の上にニアを載せ、夜明号がカレルレンへの接近を行う。
 やや遅れてクルセイダー=ユーノが突入。当然敵部隊はそこへ群がる。
「さあて、暗き宇宙の深淵より来たれ、星喰の鮫王……ってなもんかね」
 おもむろに腕を切りつける恭二郎。ありったけの風桜子を傷口に込める。
 彼の持つ活力そのものが、血となって宇宙へ流れ出た。そしてそこに絵馬を浸す。
 実に面妖、というか割とコミカルな光景である。だが……!
「……ッ、来たな……!」
 一瞬。わずか一瞬だけ、敵も味方もすべて砲撃をやめた。
 彼らも感じたのだ。この世ならざる暗黒宇宙、星を喰らう怪物の威容を!
 血まみれの絵馬で、思い切り虚空を薙ぐ恭二郎。するとどうだ。
 その軌跡に従い、ばっくりと空間が裂け……まず、ヒレが現れた。
 さながらB級パニック映画めいて、浮かび上がるヒレは宇宙を波立て泳ぐ。
 愚かにも、これに自動反応した機動兵器部隊が攻撃を加える。
 そのビーム砲が着弾した直後、恐ろしく巨大な怪物が虚空から『現れた』ではないか!
『な、なにあれ!? あんな生き物、この世界じゃ見たことないわよ!』
「怪獣だ怪獣だ! いやっはー!!」
 驚くユーノ、テンション上がりまくりのニア。暴れ狂う巨大宇宙鮫。
 たった3秒、その間に密集した敵編隊は瞬く間に食い荒らされていく。

『よし、いまがチャンスだな。あとは頼むぞふたりとも!』
 矢上は冷静にこの状況に対処。まずありったけの弾幕をカレルレン近傍へ。
 それによって生まれた突入ラインへ、掌上のニアを送り出す。
『了解、こっちはあの厄介なリペアアームを破壊するわ!』
 ブースター点火、最大加速。クルセイダーが昏き宇宙を舞う!
 エネルギー光波と誘導レーザー、さらにはミサイル、連装キャノン。
 クルセイダーに搭載されたありったけの兵装をカレルレンへ叩き込む。
 だがこれは陽動である。返す刀の対空砲火を躍るようにかわし急速接近!
『インペリアルデトネイター、歪曲フィールド展開。その腕、もらったわ!』
 巨大な対艦突撃盾槍の矛先が狙うのは、修復用のアームの接合部分。
 いままさに船体を修復しようとしていた機械腕は、轟音を立てて爆散する!

「暗い銀河を見上げたときは、いつもどこかに七光(スペクトル)!」
 お気に入りの(自作)フレーズを口ずさみつつ、修復の間に合わない風穴へ飛び込むニア。
「きみにも見えるプラズマ光! けっして消えない流れ星!
 そう、あたいこそが――宇宙怪獣、スペースゾゴン! だーっ!!」
 驚くなかれ! ニアの装備は、あくまで大仰な設定を付与したきぐるみである。
 にも関わらず、空母内部に飛び込んだ途端、ニアの全身から七色のビームが放たれた!
「ふっはっはっはっは~! ごちそうの臭いがするぞぉ~、動力炉はどこだぁ~!」
 スペースゾゴンはコアマシンや宇宙動力炉のエネルギーを好んで摂取する。
 ……そういう設定である。たぶんUDCアースなら原油プラントとか襲うのだろう。
 空母内部の防衛隊は、幼稚ながら強力なこの暴君に為す術もない!
「がおー!! 喰らえ、宇宙レーザービィイイイイイムッ!!」
 のっしのっしと練り歩きながら中心部へのあらゆる障害を踏破するニア。
 時折立ち止まって虚空をかきむしったりする。一応撮影してるので。

 同時に別方向からも、多くの猟兵達が内部攻撃を敢行していた。
 致命的クラックによりカレルレンの母体があちこちで火を噴く。
『そろそろ終わりね……! いい加減に沈みなさいッ!』
 頭上を取ったユーノがクルセイダー主砲の砲口をカレルレン中心部へ向ける。
 彼女の全身からあふれる生体結晶エネルギーが収束、七色の輝きを放つ。
 そして炸裂。迸る渦は、もはや煌めく柱というべき極光となり、中心点を貫いた!

 宇宙を貫く七色の光を。
 そして猟兵たちの活躍により、燃え落ちて沈みゆくカレルレンの残光を。
 その場に居たすべての艦隊、そこに乗り込む勇気ある人たちが目の当たりにした。
 阻止限界点Ω-999、陥落。これよりこの宙域は、到達点α-000と呼称される。
 それは未来を切り開くための最後の一手。残る敵はただひとつ。
 帝国旗艦インペリウム、そして始原にして最強のオブリビオン――銀河皇帝!

 だが戦いに参加した人々、猟兵達に恐れはない。彼らはみな識っているからだ。
 今やこの宇宙を彩る輝きは星々だけに留まらないことを。

 天の光は、すべて戦友(とも)なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月23日


挿絵イラスト