第二次聖杯戦争③~野苺の庭は死の香り
●新年惨劇
新たな年となり、商店街に人々が集まり始める。
家族と、恋人と、あるいは一人で。冷たい風を肌で感じながら、店に並ぶ品々を眺める。
いつもより少し華やかな街並み。だけど風景は何も変わらない。あぁ、こんな風に今年も穏やかな年となりますように、と。誰もがそう願いながら人混みを進んでいた。
何処からか漂う甘い香りが人々の足を止める。何故だか小腹が空くような、そんな気を引く『苺』の香り。
ふと商店街の入り口へ視線を向ければ、可愛らしい少女たちが静かにこちらへ向かっている姿が見える。
きっとあの少女たちから香るのだろう。苺の杖や苺模様の衣装を着ているのだから間違いない。今年の干支の耳も生やした微笑ましい姿に人々の口元も自然と緩む。
しかしその和やかな空気も一瞬にして消え去ることとなる。少女たちの顔は冷たく、瞳は殺意に満ちていたのだから。
「さよなら、さよなら」
「すべては、いけにえのために」
彼女たちは商店街の苺を摘む。例えすべてがぐちゃぐちゃになっても、永遠に摘み続けるのだろう。
●魔狼フェンリル~妖獣蹂躙
「明けましてめでたい所だが戦争だ!」
グリモアベースにてゴッさんことゴ・ディーヴァ(甘色の案内人・f16476)が猟兵たちを集める。
「君たちも『聖杯剣揺籠の君』の姿は見たかな? 今回はシルバーレインの世界が危機に陥っているみたいだねぇ。新年早々で悪いが今すぐ向かってくれ!」
そう言いながら指をパチンと鳴らし、今回の現場を背景に映し出す。
「さて、向かって貰う場所は石川県金沢市の『香林坊商店街』という場所だ。今頃新年最初の買い物に賑わっている頃だろう。そこにオブリビオンの群れがやって来るんだ」
オブリビオンは可愛らしい少女の姿をしており、まるで苺の香りがしそうな容姿をしている。というより実際に苺の香りを漂わせている。
「苺雪兎、という苺好きなゴーストなんだが、今回は様子がおかしくてね。というのも、『妖獣化オブリビオン』となって暴力衝動に支配されているからなんだ」
彼女たちの目的は、聖杯剣揺籠の君のために商店街の人々を殺戮及び誘拐すること。ただそれだけ。それ以外に思考は働いていない。
「聖杯剣揺籠の君が絡んでいるとはいえ、シンプルに殺戮はアウトだ。だから君たちは人々を守りながら奴らを倒すんだ」
それが今回のミッションであると猟兵たちに伝える。
「妖獣化オブリビオンは一人一人が強いんだけど、暴力衝動に支配されてる、ってさっき伝えたよね。つまり単純な思考しか行えないってことさ。覚えておくと動きやすいかもしれないね?」
ま、君たちなら大丈夫だろうけど! なんてゴッさんは笑みを見せつけた。
「しかしまぁ正月早々、猟兵もオブリビオンも忙しいなぁ。神だって休みたいのに! 俺も頑張るからさ、今年もパッと世界救ってみせようぜ!」
説明を終えたゴッさんは早速グリモアを照らし、猟兵たちを戦場へと送り出すのだった。
ふわりと感じる甘い甘い苺の香り。その正体は、冷たい冷たい死の香り。
ののん
明けましておめでとうございます。
今年もお世話になります、ののんです。
●状況
シルバーレイン『第二次聖杯戦争』の戦争シナリオとなります。
1章で完結します。
●戦場について
商店街に妖獣化オブリビオンの群れがやって来ます。
襲われる人々を守りながら彼女らを駆逐してください。
プレイングボーナスは以下の通りです。
====================
プレイングボーナス……妖獣化オブリビオンの性質を突いて戦う/商店街の一般人を守って戦う。
====================
●プレイングについて
受付はいつでも。『#プレイング受付中』のタグがある間だと採用率は高めです。
キャラ口調ですとリプレイに反映しやすいです。
お友達とご一緒する方はIDを含めた名前の記載、または【(グループ名)】をお願い致します。
同時に投稿して頂けると大変助かります。
以上、皆様のご参加お待ちしております。
第1章 集団戦
『寂しがり屋の苺雪兎』
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POW : ヘヴンリィ・ストロベリー・ストーム
戦場全体に【苺果汁の雪(ストロベリースノウ)】を発生させる。レベル分後まで、敵は【苺色のベタつく雨】の攻撃を、味方は【優しい雪】の回復を受け続ける。
SPD : 小苺奏甲
【小さな苺】を纏わせた対象1体に「攻撃力強化」「装甲強化」「敵対者に【苺の香りによる腹ペコ状態】を誘発する効果」を付与する。
WIZ : 苺影杖
自身と武装を【苺のオーラ】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[苺のオーラ]に触れた敵からは【生命力と満腹感】を奪う。
イラスト:nico2
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
紫・藍
ややー、大好きな苺にすら目もくれないのは、なんだか悲しいことでっすがー。
悲しみに悲しみを重ねさせはしないのでっすよー!
藍ちゃんくんでっすよー!
歌うのでっす!
オブリビオンの襲撃に人々はパニクってるでしょうから!
心落ち着ける歌を歌うのでっす!
冷静に逃げてもらうのでっすよー!
藍ちゃんくんは苺雪兎のお嬢さんたちにライブ会場を展開するのでっす!
暴力衝動しかないお嬢さん達でっすと弱体化から逃れるすべはないかと!
一般人の皆様も範囲内にいらっしゃるかもでっすがー。
藍ちゃんくんの歌を素敵だと感じてくださってるなら大丈夫なのでっす!
それだけでライブは素晴らしくなるのでっしてー!
ささ、お出口はあちらでっすよー!
巨大な苺の杖を鈍器の如く振り回す少女たち。ただ事ではない状況をすぐさま察知した人々は悲鳴を上げ、慌てふためきながら逃げていく。
少女、苺雪兎はただただ力任せに杖を振り回し、店や壁、飾りなどを破壊していく。
「ややー、せっかくの苺が……苺好きだと聞いたはずなのでっすがー……」
売店で並んでいたであろう苺のパックが地面にぶち撒かれている様子に、紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)が少し悲しそうに笑う。大好きな苺を求める感情は何処へ消えたのだろうかと。
「一般人の皆様も、お嬢さんたちも、これ以上悲しい思いをさせる訳にはいかないのでっすよー! 藍ちゃんくんが許さないのでっす!」
しかし彼が叫ぶだけではパニックは治まらない。誰の耳にもその声は届かない。
であれば、彼が行うことはただひとつ。
「うんうん、これじゃあ聞こえないのは当然ですよね! ではでは! みなさーん! 藍ちゃんくんのゲリラライブ開幕でっすよー!」
マイクを握り締め再度叫び、空飛ぶステージを展開させる。そこまで目立てば誰もが思わず目を向ける。
「ささ、一度クールダウンしましょうね! 藍ちゃんくんからのお願いでっす!」
元気な呼び掛けを街中に響かせた後、ステージライトは青一色となり静かな歌声が鳴り響く。その声の切り替わりが人々の心を虜にした。オブリビオンである苺雪兎たちも思わず耳を傾け動きを止める。
藍の歌声と照明効果により人々は徐々に落ち着きを取り戻し、苺雪兎への恐怖を抱えながらも店内や広場へと非難していく。
「おおっと! お嬢さんたちにはまだ一曲残ってますので! もう少し聴いて欲しいのでっす!」
苺雪兎からの殺意の視線も気にせず、藍はステージ転換を行い次の一曲を歌い始める。穏やかで牧歌的な曲調が観客の心を奪う。
「いけにえ……」
苺雪兎が本来の目的を口にするも、その意欲はどんどん失われていく。苺のオーラに身を包んでいた苺雪兎もその姿を露わにし、上空に浮かぶステージを見つめる。
『藍のままに輪が侭に』。ライブに関係のない行為が弱体化するユーベルコードが商店街中に蔓延していく。苺の杖を握った腕を降ろし、しかめっ面を見せる苺雪兎。歌が耳障りだ、という様子には見えない。頭に引っ掛かった『何か』を思い出せそうな様子、といった所だろうか。
俯いた視線の先には、踏まれてぐちゃぐちゃとなった赤い果実。だけどそれが自分にとって何であったのか、何であったのか……。
「……いちご」
……何であったのか、ようやく思い出せたような気がする。
「――ささ、お出口はあちらでっすよー!」
歌が終わり、商店街の出口へと誘導する藍。歌を聴いていた一般人は拍手を喝采し、苺雪兎は憑き物が落ちたかのような、最初とは明らかに異なる顔付きを見せ、すぅ、と消えていった。
成功
🔵🔵🔴
レモン・セノサキ
連携・アドリブ◎
年明けから騒々しいな
缶入りの甘酒くらいゆっくり楽しませて欲しいもんだ
イチゴ味の甘酒って案外美味しいかもね
ほら、半分やるよ
敵に向けて放った缶ごと「Forte.50」で頭部狙撃(▲スナイパー)
ふふ、空っぽだったって? そりゃ悪かったね
▲挑発織り交ぜ、「ジェットブーツ」で高速後退
単純な思考ならこれだけで釣られる筈だ
足元に撒いた「トラップダイス」にも気付かずね
敵が「トラップダイス」地帯に入ったと同時に起爆
麻痺ガス(▲マヒ攻撃)で動きを止めて▲時間稼ぎ
缶より先に頭カラッポにしちゃ駄目さ
急所を確り狙って撃ち抜こう
GoodNight、ウサギちゃん
今年は卯年だけど、キミ等はお呼びじゃないよ★
――嗚呼、全く。年明けから騒々しいな。
逃げ惑う人々の荒波を商店街の壁際から眺める少女、レモン・セノサキ(|Gun's Magus《魔砲使い》・f29870)。缶を片手に波に逆らい進んでいくと、兎の耳を生やした少女たちがこちらへ歩く姿が見えた。
「騒ぐのは勝手だけど、そういう騒ぎはいらないかな」
ぐい、と缶を一口。レモンは口から白い息を吐きながら少女、苺雪兎の前へと立ちはだかる。
「ほら、甘酒。半分やるよ」
相手に向かって缶を放り投げる。空中を回転する甘酒の缶。苺雪兎はそれを取ろうとする素振りは見せない。
――そう、いらないか。それなら。
乾いた空気に響く一発の発砲音。風穴の開いた缶と少女の額。コンクリートとアルミがぶつかった音と同時に、苺雪兎も地面に倒れる。
「ふふ、空っぽだったって? そりゃ悪かったね」
構えた銃の口から煙が漂う。だから受け取らなかったのかな、などと笑ってみせれば、他の苺雪兎たちは彼女へ殺気の視線を向ける。
「あなたは、しんでいいひと」
「あっという間に注目の的だね。いいよ、ついて来られるかな?」
バックステップを大きく踏み、レモンは跳ぶように後退した。逃げる彼女を苺雪兎たちが追い掛ける。勿論、苺雪兎たちをただからかった訳ではない。そのせいかレモンは余裕の笑みを浮かべたままだ。
(「あーあ、気付かないんだな。本来の標的から離れているのと、私のトラップに」)
人々が逃げた先とは違う道を選んでいるとは知らずに(或いは人々のことなど忘れて)レモンだけを狙う苺雪兎たち。その道中、きらきらと光るダイスが転がり落ちていることなど目にもせず。
からり、と足にダイスが当たる。苺雪兎にとって道端の小石を蹴った事と同じ感覚だった。しかし衝撃を受けたダイスは転がりながら連鎖的に起爆を起こす。
「!」
しゅうしゅうと発生する白い煙。視界を覆われたかと思った瞬間、自身の身体にも異変が起こる。……足が、腕が、痺れて動かない。
「ほら、缶より先に頭カラッポにしちゃ駄目さ」
麻痺ガスで動けない彼女たちへ敗因を伝えれば、レモンは愛銃であるForte.50を構える。
「|全魔法回路《サーキットライン》|最大励起《オーバーライズ》!」
三層の巨大な魔法陣を描けば、苺雪兎に銃口を合わせ、引き金を引く。魔法陣を経由した弾丸はその姿を消す。いや、威力と速度が増加し『見えない』のだ。弾丸は苺雪兎たちを次々と貫き、彼女たちは知らず知らずに倒れていくのだった。
「GoodNight、ウサギちゃん。今年は卯年だけど、キミ等はお呼びじゃないよ★」
彼女たちが最後に遺した香りがレモンの鼻に届くと、あぁ、と小さく言葉を漏らす。
「……イチゴ味の甘酒って、案外美味しいかもね」
大成功
🔵🔵🔵
チェルシー・キャタモール
おめでたい感じの紅白うさぎなのに、この有り様じゃ勿体無いわね
さっさと骸の海にお帰り頂こうかしら?
相手の能力は厄介ね
でも妖獣化してるから対策は思い付いたわ
商店街に人が溢れてるってことはどこかしらお店は開いているでしょう?
一般人にはお店の建物に逃げるよう誘導しようかしら
そして私はお店の前に陣取るわ
これで背中から刺される可能性は減るはずよ
そのままUCを展開し迎撃の準備を
敵の思考はシンプルでしょう?
私や一般人をひたすら狙ってくると予想したわ
だから……敵が来そうな方向にとにかく攻撃!
多少のダメージはぐっと我慢
空腹感は『ポッピンドロップ』を噛んで誤魔化すわ
狩るのは本物のイチゴだけにして欲しいわ、まったく
苺雪兎の姿を目撃するなり、チェルシー・キャタモール(うつつ夢・f36420)は小さくうなる。
「うぅん……おめでたい感じの紅白うさぎなのに、この有り様じゃ勿体無いわね」
新年のお祝いに来た訳でもなさそうだし、と残念に思うのもここまで。すぐさま逃げ惑う人々に声を掛ける。
「もしもし。ここのお店、避難所にしていいかしら? 大丈夫、私が守るわ」
「え? えぇ、どうぞ……?」
扉を開け、店内のカウンターに隠れていた店員に話し掛けると、パニックになりながらも頷いた。了承も得たところでチェルシーは逃げる人々を店内へ誘導する。ある程度の人数を店へ入れると、扉を閉め背中を向ける。
「さぁ、私が相手をするわ。いらっしゃい!」
尻尾の蛇も牙を向け苺雪兎たちを威嚇する。チェルシーの声に反応した苺雪兎たちは迷う事もなくこちらへ向かってきた。
「あなたも、いけにえ」
苺の杖を振りかざす苺雪兎。その動きに慌てる事なくチェルシーもユーベルコードを放つ。
「近付けさせないわ。逆に逃れられるかしら!」
合図と共に召喚された、無数にも等しい魔法剣が苺雪兎を包囲し斬り刻む。どさりと倒れる仲間に目を向ける事などなく、他の苺雪兎たちはただただ標的を求めて襲い掛かる。しかし魔法剣がそれを許さない。
ああ、単純。実に単純明快。しかしこれでいいのだろうか?
(「自分でやっておいて何だけど――哀れだわ」)
元は苺が好きなだけのゴーストだったと聞く。恐らく本来はこのような性格ではないだろう。暴力の衝動に侵されて『何が好きだったのか』も忘れてしまったのだろうか。
「……苺よりも暴力の方がお好きなの?」
ふとそんな問いを投げ掛けてみる。苺雪兎の顔は変わらなかったが答えは返ってきた。
「……いちご?」
一言、そう呟いてから。
「……そこにある」
まっすぐ視線を向けた先にあるのは、質問の主。それを最後に彼女は魔法剣に貫かれた。
「――」
そう。そうなのね。確かにあなたたちにとっては、苺がたくさんある野原なのでしょうね。
「――狩るのは本物のイチゴだけにして欲しいわ、まったく」
かり、と口に放り込んでいたポッピンドロップが少しだけ砕けた。
成功
🔵🔵🔴
結城・有栖
苺のいい香りがしますね…。
でも、新年の買い物を邪魔する輩にはご退場願うのです。
「商店街の人達を守るのも忘れないようにネ」
了解です、オオカミさん。
思考が単純と聞きましたし、惑わしてあげます。
まずはUCで幻影の森を展開です。
幻影に【催眠術】を仕込んで敵を惑わせ、同士討ちを狙います。
その間に影の狼を呼び出し、市民の人たちの避難の先導と護衛をしてもらいましょう。
最大で630体まで増えるので、一部には同士討ちしてる敵に【集団戦術】を利用して攻撃してもらいます。
私は市民の人が巻き込まれないように【野生の勘】で注意しつつ、雷の【属性攻撃】を付与した想像暗器(クナイ)を【念動力】で飛ばして迎撃です。
苺の香りに罪はない。しかし今はそれが恐怖の象徴と化している。商店街にやって来た人々の楽しみを奪い去った罪は非常に重い。
「人の邪魔を、しかも襲い掛かるような輩が来る場所ではありません。ご退場願うのです」
「商店街の人達を守るのも忘れないようにネ」
「了解です、オオカミさん」
オオカミさんと会話をする結城・有栖(狼の旅人・f34711)は、逃げる人々と苺雪兎たちの間に割り込むように登場した。すぐさま苺雪兎たちの標的となるが、それに動ずることなく有栖はユーベルコードを展開させる。
「悪夢をお見せしましょう。脱出できますか?」
コンクリートだったはずの足元から草木が生えたかと思えば、それは瞬時に広がり成長していき、あっという間に商店街が森と化してしまった。
驚きの表情はないものの、流石の苺雪兎も突然の状況に周囲を見渡す。
「ひゃあっ!?」
森に迷い込んだのは彼女たちだけではない。一般人である人々も森に閉じ込められ、突然の出来事に驚き戸惑う。
「大丈夫です、私たちが守ります。オオカミさん、よろしくお願いしますね」
「あいよー」
有栖が声を掛けて落ち着かせ、現れた影の狼の群れが人々を安全な場所へと導く。あぁ、どうやら味方のようだと、人々は徐々に落ち着きを取り戻していく。
一方、別の場所で標的を見失ってしまった苺雪兎は森の中を歩く。『何かの気配』があることだけは察知し、苺の杖を握り締めながら進んでいく。
がさ、と草を踏む音を聞き逃さなかった苺雪兎。耳を動かし、兎のように飛び跳ね、杖を力強く振り下ろす。鈍い音と何者かを殴り倒した感触は感じられた。
その姿を確認してみれば――それは、どこか可愛らしい恰好をした少女の姿。ほのかに苺の香りがして、見覚えがあるような、ないような。思い出せそうで思い出せないが、殺れただけ良しとしよう。
……そう思った矢先。ごす、と自らも誰かから後頭部を殴られた。頭の中と視界が大きく揺れ、どさりと倒れる。もう動くことはできないと確信したと同時に、先程殺した少女が自身と同じ姿をしていたことをやっと思い出したのだった。
「いかがですか、怪物の森。もう逃げられませんよ」
影の狼を連れた有栖が苺雪兎のいる方向へ腕を上げる。狼の群れは喰らい尽くすかの如く、幻想に陥る苺雪兎を覆い尽くした。
その姿は、人々を守っていた狼と比べて非常に恐ろしい姿をしていたという。
成功
🔵🔵🔴
バロン・ゴウト
商店街の人々に危害を加えるのは許さないのにゃ!ボクが相手になってやるのにゃ!
まずは【大声】で人々を誘導し、一か所に集めるのにゃ。
「商店街の皆さん!皆さんを守るため、こちらの方に集まってくださいなのにゃ!」
集まったら【黄金獅子の盾】を構え、【黄金獅子の鬣】を発動させて防衛結界で人々を守るのにゃ。
べたつく雨は【オーラ防御】で防ぎつつ【フェイント】で敵を撹乱し、隙をついて敵を【串刺し】にするのにゃ!
絡み、アドリブ大歓迎にゃ。
「商店街の皆さん! 皆さんを守るため、こちらの方に集まってくださいなのにゃ!」
広場の方からそんな声が響いてきた。その声に導かれるように、聞きつけた人々は広場へと駆け込む。しかし乱れた呼吸を整える暇もなく、追い付いた苺雪兎が彼らに襲い掛かる。
しまった、これは罠だったのかもしれない。そう人々が絶望しかけたその時。
「にゃっ!」
何処からか飛び出した黒い影が苺雪兎を弾き飛ばす。何が起こったのかも分からないまま人々はざわつき、その正体を確かめる。
そこにいたのは立派な服を着た小さな黒猫ケットシー、バロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)の姿であった。
「安心するのにゃ、ボクが必ず守るのにゃ!」
レイピアの先をぐるりと回し、相手に向かって構えるバロン。一見すればその背中は少々頼りなく見えるかもしれない。しかしケットシーの存在を知る|この世界《シルバーレイン》の人々は、彼らが勇敢な種族であることを知っている。そうと分かれば自然と応援する声が徐々に増えていった。
「いけにえにするの、じゃましないで」
苺雪兎は苺色の雲を呼び寄せる。空を覆い、ふわりと苺の香りが漂い始める。その様子に危機を察知したのか、バロンの髭がピンと伸びる。
「させないのにゃ! 黄金獅子よ! 人々を守る盾となれ!」
バロンが盾を掲げると、優しい黄金の輝きが人々を包み込む。獅子の鬣にも似たその結界は、空から降り注ぐ苺色の雨から人々を守る。結界を通じてべたりと垂れるそれはまるで雨というよりクリームのよう。
「これ以上の悪行は許さないのにゃ! お祝いの日に商店街の人々を怖がらせた罪、ボクが裁いてやるのにゃ!」
黄金のオーラを纏ったバロンがレイピアを構え、苺雪兎に向かって突撃する。苺雪兎は苺の杖を振り上げ、バロンを叩き潰そうと勢いよく振り下ろす。
ずしん、と重たい音が響く。しかし何かを潰したような感触は感じられない。そこにいたはずの黒猫は消えたのに。
「これで終わりにゃ!」
その声は頭上から聞こえた。しかし振り向くことはできなかった。黄金のレイピアは、既に自身の頭部を貫いていたのだから。
「い、けにえ……」
すぐそこにたくさんいるのに。どうして届かない。
「い、ちご……」
苺雪兎は最後にそう呟き、雪のように姿を消していった。
商店街から破壊の音はもう聞こえない。戦いが終わったのだろう。急に全身から力が抜けてしまったが、人々は無事であることを喜び称え合った。
猟兵たちに礼を伝える者、お礼の品を渡す者、写真を撮る者と商店街は元の賑わいを取り戻しつつある中、猟兵たちは次の戦場へと駆けるのだった。そう、この世界の戦争はまだ始まったばかりなのだから。
「ママ、ぼく、白いおひげの黒ネコのぬいぐるみ、欲しい」
その日、おもちゃ屋には家族連れの客が例年より多かったという。
成功
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