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第二次聖杯戦争②〜清廉去って

#シルバーレイン #第二次聖杯戦争 #背徳のラダガスト

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#背徳のラダガスト


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●記憶を無くした第5席
 かつてシルバーレインの世界の欧州で一大勢力を築いていた人狼騎士団、メガリスの効果により異形の抗体ゴーストに組織の中枢を洗脳され乗っ取られていた中で、洗脳されぬままに異形に手を貸した人狼騎士も存在していた。
 人狼十騎士第5席『背徳のラダガスト』という名のそのクルースニクは、強き異形に最初から抵抗する事をせずに従い、同胞が洗脳されていくのを見届けながら三度目のヨーロッパ人狼戦線で銀誓館の能力者達に討たれその命を散らした。
 ――その存在が、日本の金沢市竪町商店街に布陣し猟兵たちを待ち構えていた。
 その表情には諦念も恐怖もない自信に溢れた表情、そして隠せぬ凶暴性がにじみ出ていた。
「……クハハハ、オブリビオンは素晴らしい!」
 喪ったものは過去の記憶、それをどうでもいい事だとオブリビオンは高笑いする。
「猟兵とやらが如何なる奴かは知らんが、まさか当時の銀誓館より強いということは無かろう。――ならば勝てる! 俺は勝てる戦いが好きだ!」
 かつて無力さへの諦めに流されることを選択した生前の精神性の面影は、どこにもなかった。

 新たな年を迎えたグリモアベース。
「明けましておめでとうございます! 今年もよろしくね!」
 明るく年始の挨拶をするのは鈴鹿・小春(万彩の剣・f36941)という少々ぽっちゃりとしたクルースニクのグリモア猟兵。
「それで早速なんだけどシルバーレインの世界で『聖杯剣揺籠の君』ってオブリビオン・フォーミュラが行動を開始したんだ。今回僕が見た予知は金沢市の竪町商店街に布陣している元人狼十騎士『背徳のラダガスト』についてのもの、どうにか倒すために皆の力を貸してほしい」
 そして小春は彼の見た予知についての説明を始める。
「元々このラダガストは人狼十騎士に槍術で名を連ねていてその技量は健在だよ。ただ、当時の記憶はほぼ消えててなんというか……性格がまるで別物になってるみたいなんだ。具体的には好戦的で残虐で自信過剰、生前の顛末から考えるとちょっと考えられない変貌だねー。自ら猟兵を討ち取ろうと戦場に飛び出してくるぐらいに慢心してるから、そこを突くことができれば有利に戦えると思う」
 とはいっても地力は相当なもので、ゴーストウルフを召喚して合体したり狼男に変身したりといった能力も持っていると小春は説明する。
 そして一通り説明を終えたクルースニクの青年は彼のグリモアを取り出して。
「戦場は商店街になるけど避難とかは考えなくて大丈夫だよ。とにかく自信過剰な元第5席を猟兵のみんなの力で完膚なきまでにぶっ飛ばしちゃおう!」
 それじゃ、頑張っていこー! と明るく小春が締め括るのと同時、彼が手にした懐中時計のグリモアからキラキラ煌めく光があふれ出す。
 その光が猟兵達を包み込み、銀の雨降る世界の戦場へと導くのであった。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 銀の雨の世界での大戦、開幕です。

 このシナリオはシルバーレインの『金沢市竪町商店街』で『背徳のラダガスト』と戦うシナリオとなります。
 かつての人狼十騎士第5席であったラダガストは生前の記憶をほぼ失っており、性格が好戦的で自信過剰なものになっていますが槍術は健在です。
 また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。

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 プレイングボーナス……敵の慢心を突いて戦う。
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 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『背徳のラダガスト』

POW   :    背徳の十騎士
常識的な行動を囁く【生前の自分の幻影】と、非常識な行動を囁く【『ドクター・オロチ』の幻影】が現れる。[『ドクター・オロチ』の幻影]に従うと行動成功率が8倍になる。
SPD   :    旋律のヴァンパイアハンター
【召喚したゴーストウルフ】と合体し、攻撃力を増加する【人狼騎士の咆哮】と、レベルm以内の敵を自動追尾する【十字架型の紋様】が使用可能になる。
WIZ   :    呪装ライカンスロープ
【無敵の狼獣人】に変身する。変身後の強さは自身の持つ【勝利への確信度合い】に比例し、[勝利への確信度合い]が損なわれると急速に弱体化する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

杜崎・紅祢
ふむ……過去とは別人、という事でしょうか
記憶の中と見た目が一緒なので一寸混乱しますね
確かにあそこまでは愚かでは無かったように思いますが

さて、どうしましょうか
まあ俺の見た目からして、全線で戦うようには見えないので舐めてきそうではありますが
ゴーストウルフを剣でいなしつつ移動して、発動体の緑水晶を撒いてきます
傍目からは上手く戦えず逃げるように見せながら…演技力が試されますけど、油断してそうなので大丈夫でしょう

場が整ったところで逃げ回るのを止めて、剣を持ち替えゴーストウルフを結界の中へと押し返し
さて、俺は確かに前衛向きではないですが
戦う手段がないと言った覚えは、無いんですよね
消えて下さい



●無敵の人狼と翠の癒し手
 商店街へと転移してきた猟兵達の一人、杜崎・紅祢(翠光纏いし癒し手・f36019)が周囲の状況を把握する中、耳に高笑いが響いてきた。
『クハハハ! この圧倒的な力で猟兵とやらを始末してやろう!』
 その声の主は長槍を携えた一人のオブリビオン、元人狼十騎士第5席『背徳のラダガスト』、端正な顔を狂気と傲慢に歪め高笑いしながら接近してきていた。
「ふむ……過去とは別人、という事でしょうか」
 元銀誓館学園の能力者であった紅祢は記憶の中にある見た目と同じでありながらまるで異なる言動に少々混乱する。
 異形に戦わず屈し全生命を裏切るようなことはやっていたものの、あそこまでの愚かさを感じる言動はなかったように思うのだが。
『まずはそこの細い女みたいなお前だ!』
 叫ぶと共にラダガストの姿が彼の髪色のような金色の毛並みの狼獣人へと変身していき、一気に紅祢へと距離を詰めてくる。
 細身で前線で戦う戦士のようには見えない自分を最初の獲物と定めたのは当然かと、紅祢は思いながら『舞芙蓉』と言う名の細身の刀身の長剣を構える。
 勝利を確信しているメンタルを反映したかのように狼獣人の姿となったラダガストはその力を増強させていた。圧倒的な力を前に、紅祢はどうにか舞芙蓉で刺突を逸らしつつ距離を取ろうと後退する。
 それは周囲から見れば逃げているようにも見えて、
『これだ! この力だ! 逃げ回るだけの猟兵など恐るるに足らず!』
 狼の口で高笑いしながら槍を振るうラダガスト。しかし、その慢心故に紅祢が剣を振るいつつ緑水晶を撒きながら移動している事に気付く様子はない。
(「どうやら大丈夫そうですね」)
 気づかれてしまえば対策されたかもしれないが、この様子なら十分だろう。緑水晶を十分撒いてそれが囲う結界を作り出した紅祢は舞芙蓉を持ち替え、急にラダガストの懐へと飛び込み長剣を一閃。
 逃げ続けると侮っていた猟兵の急な切り返しに油断していたラダガストは反応しきれず、長槍でガードこそするがそのまま結界の中へと押し込まれてしまう。
「さて、俺は確かに前衛向きではないですが……戦う手段がないと言った覚えは、無いんですよね」
 そう言いつつ紅祢がシルバーのピルケースから緑の貴石を取り出し、
「――消えて下さい」
 冷徹な言葉と共に結界に投げ込んだ貴石が合図、ユーベルコードが起動して上空に無数の光の刃が出現し、無敵の狼獣人に向けて一斉に降り注ぐ。
『グアッ!?』
 光の刃に刻まれながらもラダガストは強引に結界をダッシュで抜け出して、息も荒く元の人型へと変身を解除する。
 その攻撃は勝利を完全に確信していた無敵の狼獣人を倒し切るには至らない。されどその強烈な破壊力は無敵である存在に有効打を刻むことには成功しているようだ――その勝利への確信を陰らせる程に。
 怒りに燃えるラダガストが紅祢を睨みつける。まだまだこのオブリビオンを撃破するには時間がかかりそうだと、かつての能力者の青年は一旦ラダガストから距離を取った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ローズ・ベルシュタイン
アドリブや連携歓迎

■心情
自身の実力に驕る者は、いずれは足をすくわれる事になりますわ。
その事を、身をもって知りなさい。

■行動
敵の慢心を逆手に取って、挑発しながら戦いますわ。
「どうやら私達を舐めて掛かっている様ですわね。
ですが、逆を言えば勝てる勝負しかしないと言うのは、臆病とも言えなくないですか?」

敵の注意を此方に向けたら、薔薇の刻印(UC)を使用しますわ。
『プリンセス・ローズ』を使い【スナイパー】で狙いを定めて敵を攻撃し
命中したらUCの効果で【継続ダメージ】を与えて行きますわ。
敵との距離は約130m以内を維持しますわね。
「さぁ、徐々に体力を削られては、勝利への確信も削られるのではないですかね?」



●赤薔薇のナイトは堅実に
『まだまだ……この程度事故のようなもの、二度目はない!』
「ポジティブシンキング……ですわね?」
 再びその身を狼獣人へと変えたラダガストの前にやってきた赤きマジックナイトはローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)。
 痛打を受けたにも拘らず反省する気配は微塵もない元人狼十騎士に対し、赤き精霊銃を構える。
「自身の実力に驕る者は、いずれは足をすくわれる事になりますわ。その事を、身をもって知りなさい」
『ほざけ!』
 狼の唸り声と共に高まった戦闘能力から繰り出される連続突き、感じ採れた危険な気配は未だ十分にラダガストが勝利への確信を抱いていることを示している。
 波濤のような連続攻撃をローズは冷静に見切り、最適な回避行動を思考してその危険領域から脱して。
「どうやら私達を舐めて掛かっている様ですわね」
 平然と、軽く躱したように落ち着いた調子でラダガストに挑発の言葉を向ける。
 つまりは先のラダガストの猛攻が本気など出していない、手を抜いた攻撃だと煽っているのだ。
「――ですが、逆を言えば勝てる勝負しかしないと言うのは、臆病とも言えなくないですか?」
 舐めている、つまり全力を出す程の相手でもない弱い相手とローズを見なし、そんな相手とでなければ戦えない臆病者だと。
 圧倒的な力の万能感に支配されているラダガストにその煽りは覿面に効いた。麗しい金の毛並みの狼男の殺気は爆発的に増大し、ローズへと必殺の一撃を喰らわせんと飛び込んでくる。
 その怒りに任せ攻撃に移った瞬間こそがローズの狙い、
「薔薇の抱擁……差し上げますわ」
 ユーベルコードを起動したローズ、愛用の精霊銃『プリンセス・ローズ』から放たれた銃弾はラダガストの肩を撃ち抜き傷を負わせる。
 その傷は癒えない傷、そして――、
『なんだこの傷は……痛み、いや刻印が広がって……?』
 金の毛並みに紅き茨の刻印が広がっていく。ユーベルコードによるその傷はローズが離れぬ限り茨の刻印による傷を与え続ける。
 その解除条件に思い至らぬラダガストはじわじわと体力を削っていく茨の刻印に焦りを見せ、攻めの勢いを増すが一定の距離を保ち続けようとするローズを捉える事が出来ない。
「さぁ、徐々に体力を削られては、勝利への確信も削られるのではないですかね?」
 貴婦人のように笑い槍の脅威から逃れ続ける少女に、徐々に体力を削られていくラダガストの勝利への確信は揺らいでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
自信は持ってた方がいいけど
あり過ぎはちょっとね

背中の翼を消して
鎌の【なぎ払い】で接近戦タイプのフリ
最低限の【オーラ防御】だけ纏っておくね

背は伸びないし見た目もアレだし
癪だけど非力な子供とでも思ってくれればいいかな
世界を守りたくて戦いに来たけどまだ未熟な子供
隙があれば攻撃しかけるけど
やがて防戦一方になり、終いには武器ごと弾き飛ばされて慌てる【演技】

う…僕だって、頑張ったのに…
やっぱり近接じゃ敵わないのか……

で、誰が僕は近接タイプだと言いましたか

調子に乗って突っ込んできたところにカウンター狙いの彩流星発動
【高速詠唱】で水と雷の【属性攻撃】

まりょくほーはデメリットあるぶんきょーりょくだよ
しびれちゃえ



●慢心を誘い
『猟兵とやらも中々やるな……』
 自身の勝利への確信が揺らいだ事を認識したのか、ラダガストは無敵の狼獣人に変身するユーベルコードを解除して周囲に二人の幻影を出現させる。
『クハハハハ! この助言があれば俺は負けぬぞ!』
 無敵の狼獣人に変身するユーベルコードが破られたにも拘わらず、ラダガストの慢心は相変わらずのようだ。
「自信は持ってた方がいいけどあり過ぎはちょっとね」
 そんな彼の様子を見て翼を隠したオラトリオの栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は虚空から赤い花弁を舞い吹雪かせて手元に薄紅の鎌『清鎌曼珠沙華』を形成しつつ呟き、ラダガストへと斬りかかる。
『クハハハ! そんな細腕で接近戦を仕掛けてくるか!』
 異様なテンションのラダガストは振るわれた透き通った薄紅の刃をその長槍の柄で受け流す。慢心あるとはいえ人狼十騎士の技量は伊達ではなく、直後カウンターの刺突が繰り出される。
「くっ……」
 肩を掠め――最低限のオーラを纏い直撃を逸らすが、肌を裂く痛みに苦痛の声が漏れる。
『世界を護るために能力者でもない小さく非力な女々しい子供が己の力量も弁えず来たようだが……この俺と戦うなど百年早いッ!』
 容赦ないラダガストの突きは澪にはどうにか致命傷を避け凌ぐのが精一杯、攻め気に合わせ反撃を狙おうとするがラダガストは巧みに反撃を潰し、遂には、
「あっ!」
 澪の大鎌の持ち手にラダガストの長槍が跳ねあげられ、弾き飛ばされて離れた地面に突き刺さってしまう。
「どうしよう……」
 焦りを見せる澪に、ラダガストは嗜虐的な笑みを浮かべ近づいてきて――、周囲に現れた幻影が耳元に何かを囁きかけ足を止めた。
『……待て? 都合がよすぎるから慎重に仕留めるべき? 逆にたっぷり嬲って仕留めるべきムシュ……ふむ』
 どうやらここで幻影たちが何やらアドバイスを囁いているようだ。思案するラダガスト、どちらかの助言に従うのは澪にとってはよろしくない。だから、
「う……僕だって、頑張ったのに……やっぱり近接じゃ敵わないのか……」
 わざと澪は弱音を吐いて、もう一段階ラダガストの油断を誘う。いかにもか弱い澪の様子に、ラダガストは邪悪な笑みを浮かべ、
「……こんな弱い相手に時間をかけるのも面倒だ。今、ここで始末してやろう」
 そう言って無警戒で澪へと悠然と近づき、その手の槍で貫かんとする。
 ――しかしこの間合い、この油断こそ澪が狙っていたもの。
「――で、誰が僕は近接タイプだと言いましたか」
 底冷えするような澪の声、非力で少女のようだと馬鹿にされた事への仄かな苛立ちも、そこには籠っていた。
「属性と属性の合わせ技、見せてあげる!」
 自然な所作で向かってくるラダガストに指先を向け、ユーベルコード【|彩流星《クロレメテオール》】を起動する。
 発動短縮のための高速詠唱、ラダガストの槍が澪に届く前にその指先から水雷の魔力砲が放たれ、ラダガストを呑み込んだ。
『グワァーーッ!?』
 至近距離からの魔力砲、それも追尾性能のある一撃を回避する事は人狼十騎士といえど叶わず、どうにか長槍で直撃を防ぐ事で精一杯。
「……まりょくほーはデメリットあるぶんきょーりょくだよ。――しびれちゃえ」
 ユーベルコードの代償で一時的に5歳前後に幼児化した澪、この状態では行動できなくなっているが、しかし雷の直撃を受けたような全身ずぶ濡れのラダガストはそれ以上にフラフラ。すぐに身動きが取れない位の状態で。
 そこに次なる猟兵がラダガストに迫る――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イグニス・ランフォード
かっての貴様も決して褒められた手合いではなかったが
今の貴様もたいがいだな…性格改変して駒にするとは
オブリビオンの首魁も中々悪辣な手を使う

慢心を誘うため銀誓館所属という事は伏せて相対
初手は武器受けオーラ防御で防御重視の上で受けるのがやっとと焦りを演出
オロチの幻影に対して
猟兵に倒された雑魚の意見を聞くのか…勝機は見えたなと挑発
物は良いようだが自分も以前オロチとタッグを組んだオブリビオンを倒している事実で補足し
勝ちたい敵がオロチの意見を聞かなくなるようにする

後は隙をみて槍を掴むなりしてUC発動
槍を伝って気を流し込み武器も本体も内部から破壊する
…この異形から預かったという槍も破壊したかったからな



●近接武術師、砕く
 よろめくラダガストに迫るはかつて能力者であった猟兵。
(「かつての貴様も決して褒められた手合いではなかったが今の貴様も大概だな……」)
 性格を改変して駒にする、中々に悪辣な手だ。そんな手段を使うオブリビオンの首魁の事を想像し、イグニス・ランフォード(近接武術師ストライクフォーサー・f35304)という青年は闘志を燃やす。
『こんな状況で……だが猟兵如きに俺は負けん!』
 体勢を立て直したラダガストが槍を構え、行動不可能になっている少年よりも迫りくるイグニスが危険と判断し向き直る。
 イグニス自身は元々銀誓館学園に所属していた能力者であったが、生前面識もなくそれを気取らせないようにしているからラダガストはその事実に気付いていないようだ。
 銀誓館学園の強さを記憶を失ってなお抱いているらしきラダガスト、その慢心を誘うには妨げとなってしまうだろう。
 竜殺しの聖人の名を肖ったガントレットの連打がラダガストを狙い、それを最小限の動きで捌いてくる。元人狼十騎士第5席の名を背負っていたラダガストの槍の鋭さは記憶を失い慢心した今であっても健在で、
「ぐっ……!」
 イグニスの連打が途切れた瞬間反転攻勢にかかってくるラダガスト、防御重視にオーラを巡らせたガントレットで受けて捌くので精一杯だ。
 ラダガストの槍が徐々にイグニスを捉えようとし、焦り滲ませるイグニス。しかしここで、ラダガストはユーベルコードを発動させて彼の周囲に二人の幻影を召喚する。
『このまま削り切る事もできるが……出来るだけ早く削り切りたい。どうしたらいい?』
 未だ茨の刻印による継続ダメージは続いている。時間をかければそれだけより多くのダメージを受けてしまうから助言を受ける事にしたようだ。
『何か都合がよすぎないか……? このまま慎重に攻めるべきではな』
『ム~シュシュシュ! ここはダメ押しで人質取って反撃できないようにしてやるのはどうかな! そこの動けない猟兵とかね!』
 ラダガストに何やら助言をする幻影たち。相対するラダガストと同じ顔で常識的な助言をするのは生前の彼の幻影であり、そして非常識、非倫理的な事を囁いているのはドクター・オロチの幻影だ。
『そうだな……最初の猟兵も罠に誘い込んできたから動けないように封じてしまうのが……』
「――猟兵に倒された雑魚の意見を聞くのか……勝機は見えたな」
 幻影のオロチの言葉に耳を傾けようとしたラダガストに、イグニスが挑発の言葉を差し込む。
『何だと……?』
「俺は以前オロチとタッグを組んだオブリビオンを倒している。その幻影は少々細く小さくなっているようだが……思考パターンは大して変わらないだろう」
 事実、昨年アポカリプスヘルで暗躍していたドクター・オロチとの決戦でもイグニスはプレジデントを憑装したかの敵を撃破している。
 そんな敗北者からの助言がこの戦闘でどれだけ意味があるものかとイグニスは指摘して、ラダガストの判断に揺さぶりをかけているのだ。
『……そうだな。俺のこの力があれば人質など取らずとも倒すことはできる……!』
『あっ待つムシュ!』
 そしてその揺さぶりは見事的中。止めようとするドクター・オロチの言葉を無視し、ラダガストは槍を手に真っ向からイグニスへと挑みかかる。
 その最速の槍が彼を貫こうとしたその瞬間、イグニスは体捌きで見切った槍の穂先を避け槍の持ち手を掴み力を込める。
「使い慣れた技だ……威力は劣ってはいないぞ!」
 【白虎絶命拳・改】――白虎拳士の必殺の一撃に似たイグニス必殺のユーベルコードが発動、瞬間的に練り上げられた『気』が彼の腕から槍へ、そしてラダガストの腕を通しその肉体へと流し込まれる。
 練り上げられた気はラダガストの胴体内部で暴れ狂い、その衝撃でラダガストの端正な顔が歪み鮮血が口から溢れ出る。
 それだけではない、彼の愛用の槍も気の導線となった事で罅が入り、弾けるように崩壊する。
(「……この異形から預かったという槍も破壊したかったからな」)
 生前のラダガストの撃破と同時に消滅したこの槍、この手で直に破壊したいとのイグニスの狙いは叶った形となる。
 だが、ラダガスト自身はまだ倒れていない。
『おのれおのれおのれ……!』
 怒気も露に反撃のユーベルコードを発動させようとしている気配を察し、イグニスは反射的に距離を取った。
 そしてそのまま仕切り直す為に、一旦この戦場から離脱するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
骸の海から蘇り
心根が歪み
世界とそこに生きる命を憎み
かつてのその人ではなくなってしまう…
正にオブリビオンさんです

ラダガストさんを海へと導きましょう

ゴーストウルフさんと合体しても
ここは敢えてメカジキのランさんは呼ばず
単身で立ち向かいます
間違いなく油断して下さるでしょう

咆哮の周波数を打ち消すように
竪琴を奏でながら
ラダガストさんが突撃してくるのを待ちます

自動追尾の槍がくるでしょうが…
つるっと受け流します
そう事前に自分をペロしておいたのです

そして更にウルフさんの足元の地面も

こけた狼さんから飛び降りた隙を狙って
ペロっとすれば
すっぽ抜けた槍が明後日の方向へ

魔力の旋律で海へ還します

終幕
鎮魂の調べ
どうぞ安らかに


ゲニウス・サガレン
かつての精神性を失い、力はあれど慢心した武人か。まぁ、まともにやり合えば勝てない。搦め手搦め手。

アイテム「C式ガジェット」
UC「ガジェットショータイム」

ガジェットよ、変身する対象はラダガストだ。自分のコピーは倒したくなるだろう。
ゴーストウルフが面倒なので、これは「フライング・シュリンプ」の群れに牽制させる。

さて、ガジェットの力ではしばらく相手をするのがせいぜい。隙を見て脱兎のごとく逃げ出せ!

我々はガジェットが逃げた先で待ち構える。追うことに夢中のラダガストを、商店街の開けた場所で奇襲!
フライング・シュリンプから「海蛍閃光弾」と私からの「星屑ロケットランチャー」だ。釣り野伏せ、といくかな?



●黒猫楽士と博物学者と人狼騎士と
『よく分からんがここで俺が負けていい筈がない! あのゴーストウルフ以下などと!』
 それはラダガストからフェンリル達の指揮権を奪った何者かへの対抗心だったのだろうか、槍を砕かれてなおラダガストの瞳には闘志と猟兵達への強烈な殺意が宿っていた。
「かつての精神性を失い、力はあれど慢心した武人か。まぁ、まともにやり合えば勝てないね」
 呟くゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)は博物学者である。実際切った張ったの戦いでは本業の騎士に叶わないとやや弱気である。
 ただ、直接的な戦いで勝てないといってもやり様は幾らでもある。
「骸の海から蘇り、心根が歪み……世界とそこに生きる命を憎み。かつてのその人ではなくなってしまう……」
 それは正に典型的なオブリビオンだと、黒い毛並みの箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は悲し気に呟き、手にした懐中時計のボタンを押して愛用の蒸気機関式竪琴へと展開させる。
 普段ならメカジキのランさんを召喚してそれに騎乗して戦うが、今回仄々は小柄な彼を侮り油断し、致命的な隙を晒してくれるだろうとの予測で単身ラダガストに挑むことに決めていた。
「ラダガストさんを海へと導きましょう」
「そうだね、ここで倒そうか」
 仄々の言葉にゲニウスが首肯し、愛用の『C式ガジェット』を取り出してユーベルコード【ガジェットショータイム】を起動、するとガジェットはガシャガシャ音を立てて奇妙な形に変形を開始する。
 その形は相対するラダガストに対し有効な形状――なのだが、
『おい……それは喧嘩を売っているのか?』
 その形を見たラダガストの表情は怒りに歪んでいる。それもその筈、そのガジェットの形はラダガストに似せたような、けれど絶妙に似ていない変な形状である。
 慢心している人狼騎士のプライドをいたく傷つけるらしいそれはゲニウスの狙いから言えば成功ではあるのだが、どうやら狼の尾を踏んだような状態らしい。
『壊ス……!』
 ラダガストがユーベルコードを起動しゴーストウルフを召喚、その一体がラダガストに溶け込むようにして合体する。
『ぐぅるるるるる……』
 最初に変身していた無敵の狼男とは異なり姿は人間のまま、されどその力はクルースニクとしての力を最大限に発揮しているもの。
 咆哮と同時、十字架の紋様を放つ。咄嗟に仄々はそれを回避するが、ガジェットには命中してしまう。
 そしてその十字架の紋様目掛けラダガストはどこからか取り出した銃で発砲、正確に十字架の中心へと弾丸を撃ち込んでくる。
 ガジェットは銃弾を防ごうとするが、全てを防ぎきる事は出来ず数か所に風穴が穿たれてしまう。
『こんな小さなケットシーなんぞに避けられるとは……!』
 ――人狼騎士団と協力していたヤドリギ使いの組織では、ゴーストウルフの代わりにケットシーという使役ゴーストが存在している。
 それはアルダワ世界のケットシーとは異なる存在で、仄々とは別ではあるが外見はそっくりで、それもまたラダガストの侮りを加速させているのだが、それとは関係なしに仄々はラダガストの攻撃を的確に回避していく。
 そしてC式ガジェットが槍のように変形した奇妙な武器を振るいラダガストに襲い掛かる。
『ガラクタが!』
 愛槍を砕かれ無手に近い状態のラダガストだが、銃身で防ぎカウンターの銃弾を叩き込んでくる。
 その間に合体しなかったゴーストウルフがゲニウスに食らいつこうと飛びかからんとするが、上空から急降下してきたエビの大群に気勢を削がれてしまう。
 ゲニウスを主と認めているフライング・シュリンプの群れは彼の指示通り牽制に徹してくれて、その間に準備はできる。
 先の攻撃でラダガスト自身の意識はガジェットの方に向かっている。それを利用し、ゲニウスは仄々に考えていた作戦を伝え、準備の為に移動を開始した。

 ――半自律行動を得意とするC式ガジェットとは言え、人狼騎士の中でも上位に位置するラダガストの猛攻をしのぎ切る事は困難だ。
 だが、それでいい。既に次の指示は出しているのだから。
 ラダガストの猛攻が一瞬止まった瞬間、ガジェットは彼に背を向け脱兎のごとく駆けだした。
 一瞬虚を突かれラダガストの動きが止まったが、すぐに怒りと共に追撃を開始する。
 高速で駆けるラダガストは、逃げるガジェットへとぐんぐん距離を詰めてくる。そして、商店街の開けた場所でその十字架型の紋様の射程に再び捉える距離まで追い詰めて。
 紋様を命中させ銃弾を叩き込もうとした次の瞬間、空からエビの群れが急降下してきて閃光弾をガジェットとラダガストの間に投下した。
 南洋産ウミホタルの発光成分を濃縮して作ったそれが炸裂すると、ラダガストの視界が光に包まれその視力を一時奪う事に成功する。
 咄嗟にラダガストが人狼騎士の咆哮で己の力を高めようとするが、そこに仄々の竪琴の音色が響く。
 咆哮の音を無効化する周波数に合わせた猫の楽士の演奏は、ラダガストの狙いを妨げ苛立たせるには十分。
 音を頼りにラダガストは突進、加えて十字架型のの紋様を仄々に飛ばしてくる。命中すれば目を潰されていても自動追尾の銃弾の嵐が仄々に殺到する事だろう。
 その紋様は命中、銃弾の嵐をラダガストが放ってくる。
 しかし、その銃弾の嵐は全てが仄々の毛並みを滑り明後日の方向に逸らされてしまう。
 ユーベルコードにより自身の毛並みの摩擦を極限まで減らしている仄々、そんな彼に直線的な弾丸は受け流してくれというようなもの。
 そして同時に彼の足元の摩擦も極限まで減らされている。突撃を誘ったのはこの罠にかける為であった。
『ッ!?』
 その罠に気付かず足を滑らせたラダガストにさっと飛び込んだ仄々は銃のグリップをペロッと舐めて摩擦を極限まで減らす。それによりラダガストの手から銃が滑り飛んで、明後日の方向へ離れた。
 回復し始めた視力でシルエットを見、手を伸ばそうとするラダガストだったが、
「釣り野伏せ、といくかな?」
 その銃の向こうでゲニウスが構えているのは星屑を推進機構に利用した特製のロケットランチャー、それから放たれた砲弾は転んだラダガストを正確に狙い着弾、盛大に爆発した。
 同時に仄々の魔力の旋律が響き渡りラダガスト。
 星屑のランチャーの強烈な火力と海へと返す魔のメロディをまともに受けたラダガストが断末魔の咆哮を放つ。
 しかしそれで終わり、召喚したゴーストウルフと共に、かつての人狼十騎士第5席はその身を消失させていった。

 戦い終わり静けさを取り戻した商店街に、黒猫の竪琴の鎮魂の調べが響く。
(「どうぞ安らかに……」)
 歪められた一人の人狼騎士を悼むようなその音色は、次なる猟兵の戦いまでの間、静かに奏でられていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月10日


挿絵イラスト