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水玉模様のアンソニーくん

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●あるところで
 魔法研究所に居るアンソニーくんは、水玉模様のちっちゃな子ゾウ。
 この研究所で生まれた魔法生物達は、可愛い水玉模様のいろんな動物の姿をしていて、美しい子、逞しい子、大きい子、小さい子、毎日みんな元気にすくすく育っている。
 そして、みんな優しい。
 ところが最近、一番子どものアンソニーくんだけ元気がない。
 冬の夜空は、とても澄んでいて、瞬く月もオリオン座も優しい光を降り注いでくれるのに、なんでもアンソニーくんは、ちっとも眠れないらしい。
「どうしたんだい? このままだと病気になってしまうよ」
 生みの親のドット博士も研究員の人達もアンソニーくんが心配で仕方が無い。

 あんなに、やんちゃで元気な子だったのに。
 いっぱい野原でお散歩する事が好きな子だったのに。
 小鳥もうっとりする素敵な歌を歌ってくれたのに。

 ドット博士は泣いてばかりいるアンソニーくんに魔法でお話を聞いてみた。
「ふむふむ。なになに? 怖いオオカミが地下迷宮からやって来て、学園の皆をぱっくり食べちゃう夢を見るからだって?」
 それは半分獣で半分人間の姿。狼より速くて、人より賢く強い。
 けれど怖いのは、そのオオカミが学園の皆を憎んで殺したいと思っているという事。
「なるほど」
 ドット博士は困り顔で思案した。
「どうすればいいのだろう」
 どうかアンソニーくんが、もう怖い夢を見ずに、安心して眠れますように。

 何かいい方法はないものかな?

●グリモアベース
「こんちゃ! 早速なんだけど、アルダワ魔法学園の、ある魔法研究所で困り事が起きてるんで、これから皆で解決に行って貰えないかな?」
 叡智のカラスを連れた破魔・案山子(カカシ)が元気に猟兵達に手を振って出迎え、アンソニーくんに関わる依頼の話を始めた。
 その後、ドット博士は考えた。思いついた。
 『眠りネズミ』の素材から、アンソニーくんが安眠出来る水玉模様のお布団と枕を作ってあげよう。よく眠れる蜜もあれば完璧だ――って。
「地下迷宮に居る『眠りネズミ』は、大きくてふわふわの身体に『良い眠り』を齎してくれる素材を沢山持つ大鼠なんだ。普段は迷宮で眠っているだけの無害な鼠なんだけど、大量発生し易んで、たびたび学園に、く……駆除されてる、かなっ。か可愛い! んだけどっ!」
 今、きょとんとしている猟兵達も見れば判る。可愛いんだ。
 それで博士達の代わりに採って来て欲しいと、少年は袋を配る。
「皆に集めて欲しいのは、『眠りネズミの毛を12袋』『眠りネズミの夜糖蜜を12ポット』『眠りネズミの吐息を12袋』の三種類デス」
 多くね?!
「あー、うん。保険として、もっと多くてもいいくらい。だって、眠りネズミの素材は、毛はブラッシングすれば生え変わりの毛がぽこぽこ採れるし、蜜はポットごと譲って貰えばいいし、吐息は袋に、ふーって息吹いて貰えばいいし、そんな風に、すぐにでも集められるんだけど……。その後が大変だと思う」
 無事に素材を集めた猟兵達を襲う、封印解かれし1体の災魔の姿が視えた。
 それは偶然にもアンソニーくんの怖い夢に出て来るオオカミそっくりの姿。
 迷宮に長く封じられた為に、学園と生徒に強い憎悪を持ち、復讐の機会を伺っていた戦闘狂・獣の侵略者『デュラン』である。戦う事は避けられない。必ず猟兵達の前に立ち塞がる。
「倒して欲しい。そして素材を届けて欲しい。そこまでが今回の依頼っ」
 勿論、皆の力を合わせれば、絶対倒せる敵だから大丈夫。と少年は云う。

「無事に素材を届けられたらさ、アンソニーくん達と、ちょっとお昼寝も兼ねて、皆で美味しいお弁当を持って、ピクニックをしたらどうかな?」
 魔法生物達がお気に入りの野原で、お天気のいいあたたかな日差しの下で。

 そうだ。アンソニーくんは少しだけ眠らせてあげて。
 眼が覚めた時には、きっと皆に素敵な歌を聞かせてくれるから――と。


イコロ
●第1章【プレイング受付:2/21(木)AM8:30以降にお願いします】
 眠りネズミから三種類の素材を集めてください。
 迷宮いっぱいに(所々、詰まった通路も……)寝ていますので、探す手間は必要ありませんが、反抗的な子も混ざっているでしょう。(そういう子ほど素晴らしい素材が沢山採れるようです。アンソニーくんの眠りの質も、ぐっと上がります)

 【A】噛み付いてくる子→毛艶が素晴らしく沢山取れるようです。
 【B】隠れる子→夜糖蜜のポットが2ポット分くらい大きいです。
 【C】鳴き声が大きな子→吐息の量が10倍です。

 通常の眠りネズミ達から、ゆっくり相手をして集めるのもいいですね。
 皆で合わせて、12以上ずつ集まったらクリアです。

 ※眠りネズミは放置すると、後々増えすぎて、迷宮が困った事になってしまいます。
 ※最後には、必ず退治しましょう。
(プレイングに「ぽこ」のひと言でも書いてあれば、倒されて消えます)

●第2章(プレイング受付開始:空リプレイ後にお願いします)
(戦闘あり。ユーベルコード必須)
 この敵を倒さない限り、素材を届ける事は叶いません。
 踏ん張りどころです。
 ※戦況によっては、入手した三種の素材が減ってしまうかもしれませんので、1章で沢山集めるだけ集めておくと安心でしょう。

●第3章(プレイング受付開始:空リプレイ後にお願いします)
(日常。昼)
 無事に素材が届いたら、さっそく魔法研究所がアンソニーくんの為の安眠グッズを作ってくれます。お礼に、皆さんのお弁当も作ってくれますよ。
 ついでに魔法研究所の魔法生物達とピクニックやお昼寝をしませんか。
 水玉模様の魔法生物達は、いろんな動物がいるようです。
 皆さんのお友達(動物)を連れて来るのもいいですね。

 案山子→男爵と裏方に居ます。……が、どうでもいいです。
 呼ばれた時のみ飛んで来ます。
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第1章 集団戦 『眠りネズミ』

POW   :    おやすみなさい、よいゆめを
全身を【ねむねむふわふわおやすみモード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    みんないっしょに、ねむりましょ
【ふわふわのしっぽ】から【ふんわりとつつみこむもふもふのいちげき】を放ち、【今すぐこの場で眠りたい気持ち】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    きらきらひかる、こうもりさん
対象のユーベルコードに対し【吐息からキラキラ光る小さなコウモリたち】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

御伽・柳
んっんん、ダメだ、抑えろ俺
可愛いしモフっとしてるけどこれは最後に討伐するんだ

……でも最後にちゃんと倒せば、ちょっとくらい可愛がっても怒られないですよね?ね?

隠れている子(【B】)がいますね、臆病なのかな
【優しさ】の篭もった声で呼びます
こんばんは、ネズミさん
怖いことはしませんよ、でもお願いがあるんです
最近眠れなくなってしまった子がいて、その子のためにきみの夜糖蜜を譲って欲しいんです
俺があなたにできるお礼は遊んであげることしかできないけれど……どうか、譲ってくれませんか?

遊んで、モフって、最後はせめて痛みを感じないように
【記憶消去銃】を脳天に3発撃ちます

回収できた素材は【収集癖】でしまっておきます


テン・オクトー
【B】UC発動ヤモリさん達で隠れてる眠りネズミさんを探すよ。ヤモリさん達は数いるし、狭い所や壁も登れるから何体かは見つけれるかな?

ヤモリさん達が眠りネズミを見つけたら、追いかけて蜜ポッドを譲ってもらうよ。可能なら【動物と話す】でお話ししてみたいな。難しいかな?夜糖蜜とは?どうやって作ってるのかなあ?
え、え、最後はやるしかないの?こんなに愛らしいのに…ごめんね(涙目)ぺしっ。

もし隠れている眠りネズミさんを見つけられなかったら、普通に寝てる子をナデナデしながらブラッシングして毛を拝借してみよう。

連携アドリブ歓迎です


雨識・ライラ
アンソニーくんのために頑張ろうっ!
怖い夢を見ちゃうのはよくわかる。正夢になっちゃうかとはらはらするよね

鳴き声が大きな子から吐息をもらおう!
アンソニーくんにはすやすやタイムの質を上げてほしいし
(噛み付く子はちょっと怖い…)
耳栓していこうかな
どれだけ大きい声かわからないけど、耳がキーン!ってなっちゃうから、対策は必要だよねっ

吐息をもらったら、ほかのところをお手伝いするね
噛み付く子は一人じゃすごく大変そうだし!
大丈夫だよ、ちょっと毛をもらうだけだから
ごめんねーありがとう

えい!
ぽこ!

アドリブ、絡み歓迎


鵜飼・章
水玉模様の魔法生物は僕の図鑑にもまだ載っていないんだ
ぜひお話したいね

眠気対策の珈琲を水筒に入れて
鴉達と一緒に【B】隠れる子を探す
怖がりな子かな
隠れんぼが好きな子かな
静かに探してあげてね
UC【三千世界】で呼んだ鴉も活用して
怪しい穴や隙間、物陰や蒸気機関の中など
僕が入れない所を見てみる

いたら【コミュ力/動物と話す】で声かけ
見つけた
こっちにおいで?
予め服に安眠できるアロマの香りをつけて誘い
膝の上に乗せて撫でながら
【優しさ】を忘れずブラッシング
仲良くなれたら夜糖蜜と吐息も分けてもらい
その後はお休みしてくれれば
ふかふかだ
この素材余ったら僕もほしい…

寝ているうちに
痛くない毒を注射してお別れ
ごめんね、有難う


糸縒・ふうた
アドリブ・絡み・改変等歓迎

狼だって、皆が悪いわけじゃないんだけど…!
怖くない狼もいるんだよ、って教えてあげたいな

【喚び聲】で喚んだかぞくに眠りネズミを捕まえてきて貰っている間に
膝の上の子を優しく櫛でブラッシング

最後におでこを小突いておやすみ

噛みついてくる子には【動物と話す】で協力してくれないか聞いてみよう

君のそのふかふかの毛があれば、ぐっすり眠れる子がいるんだ
だから、君のその自慢の毛をオレにわけてくれない?

わけてくれた子にはありがとうって言いながらほっぺたを摘まんで
やんちゃな子はかぞくにお仕置きして貰おう

これって多めに貰った毛は持って帰れるのかな?
これでふかふかのクッションを作ってあげたいな


栗花落・澪
アンソニー君はいい子だね
それならしっかり手伝わなきゃ

★Candy popからいくつかの飴を出し
笑顔でそっと差し出す

さ、おいで。
美味しいよ?

隠れちゃう子も噛み付く子も
警戒を解くには忍耐強くいかなきゃね
飴は無くなれば補充するよ(蓋を叩き)

敵の攻撃は飛行で避けながら
【優しい歌唱】と魔法の飴で穏やかで幸せな気分に
最初は少しでも
どんどん幸せの輪を広げて
声に自信があるならいっしょに歌お♪

楽しんでもらえたら
必要な素材を全て伝え
櫛と袋を持ってお願いしてみるね
優しい眠りを届けるために
皆のを少しずつ分けてほしいんだ

分けてもらえたら
お礼に改めて優しい眠りを
歌唱に【催眠】を混ぜて眠らせた後
UCで優しく浄化します


サビエラ・ナヴァツカ
眠りねずみ、倒さなきゃいけないんだね…。
どうせ倒さなきゃいけないなら、幸せな気持ちで送ってあげたい。

まず獣奏器を使いなが歌を歌う、獣の好きなリラックス出来る音楽をゆっくり。
ねずみ達が寄ってきたら、歌いながら優しくブラッシングしてやる。
そうやって少しずつ毛皮をいただいて、蜜や吐息も、いいよって言えば協力してもらう。

歌やブラッシングで満足してもらえたら、あとは『ぽこ』
眠りねずみたちにも、良い夢を。


アンバー・ホワイト
ユハナ/f00855と

ふわふわ、もこもこ
倒してしまうのは可愛そうだけれど
お仕事だから、材料あつめをやらなきゃな
なぁユハナ、もこもこ達をたくさん捕まえような!
ん?…どうした、怖いのか!おまえ、おもしろいな!

噛み付いてくる子を中心に、手袋をしてきたから少しくらい噛まれても大丈夫なはずだ
噛まれながらモフモフさせてもらう
モフモフ…え、もっとモフモフしていいのか?
きみたちはきれいな毛並みをしているんだなぁ
これはすてきなお布団になりそうだ、わたしも欲しいくらいだよ

沢山遊んで、モフモフの毛を分けてもらって
残念だけど退治しなくては
雪の焔で静かに包むように眠りについてもらおう
おやすみなさい、ネズミさん。いい夢を


ユハナ・ハルヴァリ
アンバー(f08886)と

ああ、おしごと…
もこもこ…やわこい…つぶしそう…
そうですね、がんば…ります
(手ふるふる)(腰が引けてる)(さわれない)
…面白い、ですか、そうですか
せめて眠っていてくれたら、まだ、触れるのですが

じゃあ僕は、声のおおきなこを
一緒に歌でも、歌いますか?
うまく袋の口を向けて、鳴いてもらって
そうそう、上手
上手ですが、それ以上は、…ちょっと離れて
…あ、う、…アンバー。この子背中から、取ってください。
取っ…ああ、別の子を、もふもふしている。楽しいですか。よかったです
吐息でいっぱいの袋をきゅっと縛って
次々詰めて
多めに、というと…このくらいでしょうか
さいごは、氷に鎖して、さよなら。




 まだ見ぬ あの子の為に――。
 ふわふわもこもこの 可愛い子達から、安らかな眠りの素材を頂きに参りました。


 蒸気機関の狭間に、蓄光魔石(ちっこうませき)が光る迷宮の通路に広がる世界は、
 青の世界。
 それは眠りから覚める夜明けの眩しさのような、反転して穏やかな微睡の端のような、訪れた者達を神秘へと誘う光の色。迷宮探索に集った内の1人、アロマを服に纏わせた青年、鵜飼・章は、歩く度に空気は芳香を含み揺れるまま、青は迷宮の影に沈むと濃く染まり、そっと瞼を閉じると夜色に変りゆくと識(し)る。
 安らかな眠りに相応しき色だ。

 ――今はこの眠り色を知らぬ あの子の為に。

 あの子の名は……。
「アンソニーくんの為に頑張ろうっ!」
周囲の通路を見回しながら、雨識・ライラが明るい声を出すと、隣を歩いていた栗花落・澪の脳裏に、まだ見ぬ水玉模様の子ゾウの姿が浮かびあがる。アルダワ魔法学園の隅にあるという魔法研究所の博士達や仲間の動物達に愛されている子どものゾウ。
「きっとアンソニー君はいい子だね。しっかり手伝わなきゃ」
 澪は懐に入れたキャンディの小瓶を大事に抱え、微笑む。
いい子。それは博士達や仲間の動物達を愛しているっていう事だから。
「水玉模様の魔法生物は、僕の図鑑にもまだ載っていないんだ」
「アンソニーくんの事?」
「そう。ぜひお話したいね」
 静かに瞼を開けた鵜飼・章は、傍らのライラと澪達へ視線を移し、その後ろにも続く仲間達へ柔和な視線を送る。迷宮は奥へ深¬く広がり、一度に集まった皆は、それぞれが目的に沿って進み、何処かで合流する事もあるだろう。

 水玉模様の子ゾウのアンソニーくんが夜な夜な眠れない日々
 怖いオオカミの夢を見るのだと。
「怖い夢を見ちゃうのはよくわかる。正夢になっちゃうかと、はらはらするよね」
 それは、とてもともて恐ろしいオオカミ。
「狼だって、皆が悪いわけじゃないんだけど…! 怖くない狼もいるんだよ、って教えてあげたいな」
「うんっ」
 人狼の糸縒・ふうたは寝癖を掌で撫でつけ、帽子を被り直して、ライラに笑いかける。

  会えた時、まずは、おやすみと云う。
  もう安心して、眠っていいんだよと云えたらいいな。

「んっんん、ダメだ、抑えろ俺」
 2人の会話に、徐々に口元が緩んで来る御伽・柳が咳払いをして呟いた。
 柳の頭の中は、この先に居る眠りネズミでいっぱい。
 ちゃんと、頭では理解している。
 可愛いし、モフっとしてるけど、これは最後に討伐するんだって。
「……でも最後にちゃんと倒せば、ちょっとくらい可愛がっても怒られないですよね? ね?」
「「…………」」
 同意と確認を投げると、皆が一様に口を歪めて、全身を震わせていた。
 あ。まさしく今の自分の顔をそのまま鏡に映したかのような『抑えちゃっている』顔だ。
 互いに、すっと親指を立て合う。
「眠りネズミ、倒さなきゃいけないんだね…。どうせ倒さなきゃいけないなら、幸せな気持ちで送ってあげたい」
 サビエラ・ナヴァツカが肩を落として、寂しそうに云うけれど、それもきっと皆、同じ気持ちだ。


 ポットの中で冬の星座を溶かした夜色が、眠りネズミの鼓動と寝息に合わせて、くるりと波打ち続ける。迷宮に侵入して来た影ヤモリ達も、ご主人様であるテン・オクトーの眼の代わりとなり壁や蒸気機関のパイプの隙間を縫いながら、可愛らしい寝息に聞き惚れ、しゅっと四足を疾らせて迷宮の奥へ奥へと進んでいく。
「出来れば、眠ってくれているといいかな」
 遠くから聞こえるサビエラの獣奏器を使いながら歌う声、他の通路へ向かっただろうユハナ・ハルヴァリの歌が、ゆったりと響く。
「いい歌だね」
 ライラは頷く。
 大樹に伸びる枝のように、複雑に入り組んだ通路の先々に大鼠の眠りネズミが集団で眠っていた。温かな毛に包まれた身体から生えた小さな羽と尻尾は柔らかそうに上下動き、微かな寝息を立てていた。
 ――おやすみ。
 ――おやすみ。良い夢を。

 だが、深く眠っていた眠りネズミも、通路の手前に居た子達から侵入者の気配を敏感に感じとり、まるで落ちた一滴の囁きが小さな波紋を作り、やがて水面を大きく揺らしていくように、次々と、その愛らしい双眸を開いていく。
 一が十に、十が百に。
 広がっていくよ。
 静けさから覚醒へ。

 さあ、こんな夢はいかがかな。
 めまぐるしく変わる迷宮の中で、舞台が開かれていた。

 微睡む獣の瞳が瞬きを止め、アンバー・ホワイトの星の瞳に引き寄せられたか見つめた。
 息もせず、暫しの静寂。
 止まっていた時間を破ったのは、手をふるわせながら、別の子に懸命に勇気を出して触れていたユハナの動きが、友の纏う空気を揺らし、髪がはらりと一筋落ちた拍子に瞬きをしたアンバーの方。 
「アン……バ……え、え?」
 弾けたように眠りネズミが完全に覚醒し、走りだした!
 次、次と。
 抱えていたポットを頭や背に乗せ、床をてしてし移動するモノ、小さな羽根を動かし、宙を舞いだすモノ。
「完全に起きたーっ! ふわふわ、もこもこ!」
 静寂を破り、アンバーは吼えた。
 ふわっもっこーーー!!!
「ああ……おしごと……んー……う」
 アンバーが眼を輝かせ、ユハナの服の端を握り締め、群れの後尾を追う為に駆け出すと、服だけが引っ張られ、ユハナの身体の動きが鈍いまま残る。
「ん? ……どうした、怖いのか! おまえ、おもしろいなっ!」
 振り返ったアンバーの手が、戸惑うユハナの手を固く握りしめる。
 来いっ! と強く望む声。
 必要だから呼んでいるんだと、君の声が響いた。
 ぴょんと跳んだ足が、ユハナを迷宮の奥へと連れて行く。
 行くしかない。


 眠りネズミ達は多くの子達が起きてしまったけれど、皆は落ち着いて接していた。
 侵入したからには、予測された事だしね。
リラックスする歌で寄って来ると、サビエラは歌を続けながら優しくブラッシングしてやる。
蜜も吐息も、『いいよ』と、云ってくれる子達から、そっと優しく袋へ詰める協力をして貰った。
 ぽこ。のお別れは淋しいけれど。
 でも、大切なひとときの時間を有難うと思っている。

「こんばんは、ネズミさん。怖いことはしませんよ」
 じりじりと後退する眠りネズミもいたりして、柳とゆうたとサビエラ達から離れて行きたい様子。
「あ、待って」
 ポットを背に乗せて、てしてし走っていく眠りネズミから、そっとポットを持ち上げると、返してと云わんばかりに、瞳を潤ませ、柳の足にすがりついて来た。
「ごめんね。お願いがあるんです」
 より一層、優しさを重ねて、ゆっくりと話しかける。
「最近眠れなくなってしまった子がいて、その子の為に、きみの夜糖蜜を譲って欲しいんです。俺があなたにできるお礼は遊んであげることしかできないけれど……どうか譲ってくれませんか?」
 潤んでいた瞳が、柳をじっと見つめる。
 耳を伏せ、小さな羽根を閉じ、柳の足から離れた。「え?」近くに居た眠りネズミ達もポットを床に下ろすと、小さな頭や前脚で、柳達の方へ押して来る。
「『それなら、どうぞ』『しかたない』って、云ってるよ」
 他の眠りネズミを探しに行っている『かぞく』を待つ ふうたが一匹のムズがる眠りネズミを膝に乗せながら教えてくれた。
「ありがとう」
 譲ってくれた子達と、ふうたにお礼を云うと、ふうたは二カッと笑って、自分の膝の子に向き直る。
「なっ。君もその自慢の毛をオレにわけてくれない? 君のそのふかふかの毛があれば、ぐっすり眠れる子がいるんだ。……ん? やったっ。ありがとうっ!」
 こっちは渋々、承諾してくれたらしいやんちゃ眠りネズミの頬を、ふうたは、むにむにと摘まんで笑顔を向けた後、櫛でブラッシングを始めた。
途端に、ぐずっていた眠りネズミの表情が、とろーんと変わる。
「気持ちいいのかな」
 サビエラが見守る中、大鼠から櫛で梳く度に、ぽこっぽこっと、毛玉が採れ、それは空気を孕むと、ますますふっくらと膨らみ、ふうたの膝の上から床へと零れ落ちていく。もしも風が吹きぬけていたら、そのまま浚われてしまうのかもしれない程、軽く暖かそうだ。
とととっと、近くをやって来たテンがネズミを膝に乗せて動けないふうたの代わりに、袋へ詰めてあげる。
「これって多めに貰った毛は持って帰れるのかな? これでふかふかのクッションを作ってあげたいな」
 ふうたの親しい人の為に、かな。
 出来れば、持たせてあげたいけれど、柳とテンは顔を見合わせる。
「いや、うーん……。その前に……」
 ねっ。
 その理由は……。だから、ね?

「ボクもね、聞いてみたい事があって、さっきネズミさん達に聞いて来たよ」
「ん?」
 噛まれながらも他のネズミさんのブラッシングをしていたふうたは、テンに振り返る。因みに噛まれる度に、『かぞく』は、そっと消えてしまっていたのだけれども、 ポットも吐息集めも、柳とサビエラと共に続行中していた。集めて、口を縛る。
 サビエラが指差しで数えてみれば、袋は、きっと他の皆と合わせると、とうに12袋以上集まったと思う。

 それで先ほど、1人で少し回って来たテンは、探索用のヤモリさん達の視覚と共有し、隠れている子達の眠りネズミを見つけた後、追いかけて、ポットを譲って貰って、幾つかのお話をした。
 ――夜糖蜜って不思議だよね。どうやって作ってるのかなあ?
 両手で掲げたポットの中で、くるりと揺れる夜色の液体を見るテンの膝上で、『むずかしいこと、なぁんにも、わからない』と、ふわりと眠りネズミは首を傾げただけだった。
 もしかしたら、とあるオレンジ髪の子が知っているかもだけれど、それは別のお話。
「結局、ふわもこは可愛くて」
 わーっと、手足を床に投げ出す。少しあちこち回って来て、心地よい疲労感。
「不思議は不思議のままだったっ」

 はははは。

 暫し、四人の明るい笑い声が迷宮に響き渡った。


「章さんの云う通り、こちらに居ました」
 判り易い通路だけでなく、高い天井も、蒸気機関の部品の隙間も、隠し穴まで、隈なく召喚した鴉でポットの大きな子を探して発見した澪と章とライラの3人は、そーっと、壁際に追い詰められて怯えている眠りネズミ達と距離を縮めていた。
 隠れている子は、とても恥ずかしがり屋。臆病でもあったりして、ちょっと怖がっている。
 ふふっと澪は笑いながら、身をかがめると、持って来た小瓶を取り出した。ライラと章が不思議そうに見守る中、きゅきゅっと澪は鼻歌を口ずさみながら蓋を開ける。
「澪さん、それは?」
「Candey pop。キャンディが沢山入っているよ」
「成る程。とてもおいしそうな……」 
 眠り避けの珈琲は猟兵達のもの。甘いキャンディは眠りネズミ達のもの。
 さ、おいで。美味しいよ?
 掌に乗せた飴は、きらきらと青い光の下で星のように綺麗に光り、ネズミ達は、そろーりそろーりと3人の下へ集まってきた。
 1匹だけじゃないよ。
 もっと沢山。
 幸せな気持ちになってくれるといいな。
 歌う。

「あ、この子から吐息貰うっ。鳴き声が大きそうっ。この子」
 両前脚を、きゅっと握手するように、ライラが握った子は羽根をふんっと広げ、
 きゅーーーーーーーー!! と鳴いた。
「やっぱり! あ、袋、袋っ! もう1回、ここに向かって鳴いて! 息を吐いて!」
 きゅっはぁあああああああっ!!

「ライラさん、上手だね。袋が次々と増えて行くようだ」
 澪の歌は、ゆったりと、眠りネズミ達が楽しそうに小さな羽根を一斉にパタパタ開いて、低空飛行並みに地を跳ねた。
 章の衣服から香るアロマの香りにも、リラックスしてしまった今では、警戒心もなく、ふわもこもこな毛並みを章にブラッシングされ放題になり、夜糖蜜のポットも吐息も、譲ってくれる。
 袋ぱんぱん。

 優しい眠りを届ける為に。
 皆から少しずつ分けて欲しいんだ。

 ゆるやかに、やがて訪れる眠りに、綺麗に梳いて貰った毛艶を見せながら、次々と丸まり、そして、頷き合う3人の優しい手の元、そっと、そっと浄化されていった。

 おやすみ。



 吐息でいっぱいの袋を、きゅっと縛って、次々と詰めるユハナは、大分ネズミ達に接したのに、まだまだ腰が引けてしまっているけれど、最初の眠ってくれないと触れなかった時よりは成長した。
 大きな声の子と一緒に歌った歌。
 迷宮に反響して、慎ましく小さかった歌は、少しずつ大きくなった。
 吐息は、その分だけ袋が増えた。
「多めに、というと……もう、このくらいでしょうか」
「まだまだだぞー! おまえ、すごい、おくゆかしいなっ!」
「がんば……ります」
 相棒のアンバーは、両手で眠りネズミを抱き上げて、後ろにコロンとひっくり返ると、高く掲げ、満面の笑顔で、眼を回しているネズミと遊んでいる。勿論、素材集めも忘れない。
 もう全然、アンバーは満喫してしまっている姿を見て、少し口元が緩む。
「楽しいですか。よかったです」
 楽しいなら良かったと、本当に思える。

最後に、きゅっきゅと、吐息を入れた袋の口を縛る頃には、別れの時が近づいていた。


「え、え、最後はやるしかないの? こんなに愛らしいのに…ごめんね」
 皆が集まった頃、袋を山積みにした前で、全員が最後の仕事を行う。
 涙目で、おでこをぺしっと叩くテンの手元から、きゅうと一声鳴いたネズミさんは消えた。
「えい!」
 ぽこ!としたライラの目の前からも。
 最後はせめて痛みを感じないように【記憶消去銃】を小さな頭に撃つ柳、痛くない注射を打つ章達の前からも。

おやすみ。
眠りネズミたちにも、良い夢を。
おやすみなさい、眠りネズミさん。いい夢を。

 歌が聞こえて来るよ。
 澪とサビエラとユハナの3人の歌は、それぞれがそれぞれを想い、小さな小さな眠りネズミ達を想い、緩やかで綺麗な息遣いのハーモニーと共に、アンバーが放つ冷たい花が青い世界に散りながら溶けていった。

 さようなら、だね。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『獣の侵略者『デュラン』』

POW   :    内に潜む獣
【理性と記憶】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【一時的に自身を巨大な狼】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    達人の連撃
【腕を狙った飛ぶ斬撃】【足を狙った素早い銃撃】【胴を狙った重い蹴撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    鷹嵐
【相棒の鷹の鉤爪】が命中した対象に対し、高威力高命中の【暴風の魔術】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイツ・ディンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「これで全部かな」
 手持ち分の袋を運び、特殊なユーベルコードの倉庫《収集癖》に仕舞われていた分も取り出して、全て集めたよ。
『眠りネズミの毛を12袋』
『眠りネズミの夜糖蜜を12ポット』
『眠りネズミの吐息を12袋』
 という条件は、余裕でクリアを果たした。

 簡単に、ひと言で云えば、 た く さ ん 集めました。

 各々に山積みされた袋を眺め、眠りネズミの素材を余った分だけ持ち帰りたいと望んだ猟兵達に、他の猟兵達が大切な事を、そっと告げる。
 研究所へ運ぶも、家に持ち帰るも、
 これから出遭うと予知された災魔を退治してこそ叶うのだと。
 
■■
 安寧を略奪する獣人が迷宮を彷徨う。
『ネズミ共が居なくなった……あちらもこちらも』
 長きに渡る封印の終わりに、湧き上がった憎悪。
 安らかな眠りとは何であるのか。孤独の迷宮の石床を剣の切っ先で引っかきながら歩き彷徨う。
 肌がじりじりと焦れる感覚は、蟲が身体を這い回るように。
 蒸気機関の音、光の色。疎ましい。
 ああ、この苦痛。
 己が眼にしたい物は、これではない。
 
 地上に出るのだ。
 我が身を封印した学園の者共を、1人残らず屠るまで躍動してみせる。
 全ての世界が赤に濡れるまで。
 
 ふと、足を止めた。
『何者かが居る。ネズミか』
 開けた迷宮の間で、山に積まれた袋を囲み、獣人と人型共が談笑している場に遭遇した。
 ちりっと首裏に熱が滾り始め、それは刹那に本能である憤怒の憎悪として燃え上がる。
『猟兵』
 憎憎しい群れが己に凍りついた視線を向け、「袋を守れ!」と鋭い叫びをこの場に突き刺した。無機物にさほど興味はないが、荒らし、壊す事に戸惑う事もない。
 縦横無尽に場を翔り、己の肉体全てを奮うだけの事。

 何処から血に染めよう。
 右手に剣、左手に銃器。前に突き出す両腕に沸騰した血が行き渡り、最初の標的へと意識を向けた。

 彼の名は迷宮を彷徨う獣人の探索者――『獣の侵略者『デュラン』。

 猟兵達は、魔法研究所へ素材を無事に届ける義務を担っている。
 どうかデュランを倒し、依頼を果たして欲しい。
糸縒・ふうた
アドリブ・絡み・改変等歓迎

折角みんなで集めたんだ
無事に持って帰らなくちゃここに来た意味がない

アンソニーくんに怖い狼さんはオレたちがやっつけて来たぜ
って、言ってあげたいから
がんばろう


【疾風】と一緒に戦うぜ

攻撃を食らうと厄介だから
【野生の勘】と疾風のスピードで回避

駆け抜ける以外にも迷宮の壁を使ってジャンプしたり
死角から飛び上がって噛みついたり

敵の懐に飛び込むのなんて、怖くない!

仲間の動向にも気を配りつつ、連携も意識して

場合によっては傷ついた人を疾風の背に乗せて
安全なところへ運ぶ役割もしようかな

オレに傷を癒すことは出来ないけど
代わりにオレに出来ることは、精一杯がんばろう


アンバー・ホワイト
ユハナ/f00855と

優しい眠りを妨げるのは、おまえか…
倒してみせよう!さあユハナ、共に行くぞ!

【星屑の鎖】で敵を攻撃、鎖巻き付けて
ユハナの攻撃が通りやすいように足止めを試みる

相手が怯んだならタイミングをみて、鎖を短くしながら踏み出して
氷の魔法で遅くなっているなら、わたしの【怪力】任せの槍も通用するだろう!【串刺し】にしてやる

敵の攻撃には【オーラ防御】で耐えるか、【見切り】で避けてみせよう
どうだ?ちょこまかと子ネズミよりも素早いぞ
それに、とっても強い牙を持ってるんだ
ふふ、ユハナ、なかなかやるな?
さて、わたしもかっこいいところ見せてやろう!

守るべきもの、しっかり守って
家に帰ったら褒めてもらうんだ


ユハナ・ハルヴァリ
アンバー(f08886)と

では、いきましょう、アンバー

長杖を解いて花弁と化し、アンバーを守るように纏わせながら機を伺う
君の鎖が動きを止めたならそれを放って
銃、剣、脚、どれかを。またはどれをも。狙い澄まして撃ち落とす
避けられても氷の魔術を編んで
凍りつかせたら、少しは動きも、鈍るでしょう
僕らは素材を、守らなくちゃいけないし
君は、何もかもを壊したい
それなら、ぶつかる以外にないから
退かないよ。
抜き放つ短剣は月の名冠して獣を眇め
【2回攻撃、フェイント、おびき寄せ】で翻弄
武器盗みも少し、試してみようか
知ってるよ、君がかっこいい事くらい
宥める様に

アンバーには、帰るおうちがあるから
小さな君を、ちゃんと守るよ


栗花落・澪
あら思ってたよりかっこいい
もっとこう、獣獣してるのかと…
なんて、そんなことも言ってらんないね

とりあえず僕は極力荷物から離れず
遠距離援護するよ

敵に少しでも隙を作るため
【催眠】を乗せた【歌唱】を響かせ
敵の銃弾などこちらへの流れ弾があるなら
保険として【オーラ防御】しながらUCで相殺狙うね

敵の動作を常に【見切り】
鉤爪の動きが見えたら、荷物に突っ込まれると厄介なので
囮として笑顔で【誘惑】しながら翼で素早く荷物から離れ
こちらにヘイトを向けるように立ち回り

そう簡単に受けてなんてやらないんだから
敵のUCはUCで視界妨害しつつ【空中戦】回避
銃を狙っての氷の【全力魔法】で
一時的にでも使い物にならなくする作戦


サビエラ・ナヴァツカ
せっかく眠りねずみ達が分けてくれた素材、ダメにしてしまうわけにはいかない。必ずアンソニーくんに届けるよ。

翼を広げて拠点防御、相手の攻撃がとんでくるなら袋をかばう。
【狼たちの包囲網】を使って足止めして味方の攻撃につなぐ。あとは二回攻撃、援護射撃でサポートするよ。

お前も狼の血族なのかもしれないけど、森で生きる狼たちの力を俺は知ってる。
彼らは群れで生きているから…ひよっとしたらお前にも孤独はあったのかな。
安らかに。


鵜飼・章
おはよう
可哀想、とても苦しそうだね
いいだろう
きみもすぐに眠らせてあげる

素材の防衛は
有効な対策を取れる人がいれば任せる
或いは僕の鴉達に頼んで
先に研究所へ運ばせるとか
戦闘に支障はないから一応提案

強敵だけどまずは飛び道具を狙おう
【投擲/早業/2回攻撃/スナイパー】で
左手を速く正確に集中狙い
鷹に対しては僕も魔導書から鷹を召喚
鷹同士で戦わせ味方への攻撃を逸らすね

隙あらばUC【現在完了】
【早業/2回攻撃】で一度に多数出す
どの子も刺されば痛い毒だ
放てば対応を迫る事になるから
不発でも味方が攻撃する隙を作る事を狙っていく
自分への攻撃は【見切り】

誰かを憎み続けるのは疲れるでしょう
おやすみなさい
きみもどうか安らかに


テン・オクトー
お仕事は討伐と荷物の守り。両方頑張りたいけれど、相手は素早さそうだし、従えている鳥もいるようだから、今回は荷物の守りに徹してみるよ。
WIZ
荷物の前に陣取り、さらに少し前方にUCで召喚。ボクは動けないけど二体に頑張ってもらおう。流れ弾的なものは全部塞ぐよ。もしデュランが荷物めがけて攻撃しにくるような事があれば、自分の唇を切ってUC解除。武器で応戦だ!

連携アドリブ歓迎です。


御伽・柳
行動:【SPD】
使用UC:【窃盗癖】
使用アイテム:【閃光手榴弾】

来たか
待ってましたよ、嘘ですが
素材の無事が優先だ、俺自身の傷は気にはしない
いつもの事です、活路を開くためなら腕の1本くらいくれてやりますよ

初手に時間稼ぎがいるならば、警告をしてから【閃光手榴弾】を使います

猶予があるならば【収集癖】で素材を回収したいのですが……どうだろう、無理かな

必要な事は脱力すること
落ち着いて、大丈夫、痛みはいくらでも【激痛耐性】で受け止められる
と、念には念を押して自己【催眠術】もかけておきます
上手いこと受け止められたならば、【だまし討ち】の形になるように返してあげましょう

来いよ、その憎しみを受け止めてやる


雨識・ライラ
よしっアンソニーくんのためにもうひと頑張り!
行くよ、花太!

中衛で戦うよっ
メイン武器は花太だから、ボクが少し傷を負っても大丈夫!
痛くても平気だよ

花太の大行進で攻撃!
チェンジ花太!ゴーゴー!
今日の変形は鳥さん!
飛ぶ鳥で縦横無尽に、敵さんの死角から突撃っ

重い一撃は花太の代わりにボクが受けるようにするよ
石とかで気を引いて、キミの相手はボクだよ!

花太が倒れてしまわないように気をつける
体当たりが危険そうなら、命じてボクのそばに寄せる
敵さんの動きをよくみて、隙をついて攻撃っ

アドリブ、共闘歓迎


銀座・みよし
うわっ、はわわわ!
牧歌的な雰囲気から急にオブリビオンが飛び出してきたのでございますー!
こういう時は…落ち着いて慌てず静かに素早くのおあしす運動の如く対処するのでございます

他の方の援護となるべく、まずは相手の武器をどうにかいたしましょう
持ってきたメジェドさんぬいぐるみでフェイントをいれつつ、
ぬいぐるみの目力の圧で恐怖を与えられないか試してみましょう
怯んでくれたら相手の武器落としを狙ってみるのでございますー

また相手がぬいぐるみを見慣れた頃合にUC…即ち本当のメジェドさん召喚にございます!
不可視の存在でございますが、そこはそれ
本物の目からビームをお召しになりませ!

(行動や発言アドリブ・絡み歓迎!




 あれは、眠り人が覚醒した時に見る眩しさに似た青い世界を侵す『赤』だ。
 異質で暗い。
 凶悪を真水に落とした墨の如く流れ、青い世界を掻き混ぜる。
 ふらりと姿を見せた侵入者。鷹を連れし、緋衣を纏う狼頭の男。
 獣の侵略者『デュラン』

「うわっ、はわわわ! 牧歌的な雰囲気から、急にオブリビオンが飛び出してきたのでございますー!」
「あら。思ってたより、かっこいい。もっとこう、獣獣してるのかと……。なんて、そんなことも云ってらんないね」
 突然の遭遇に慌てる銀座・みよしの傍で、栗花落・澪が高らかに一声を発した時には、猟兵達は各々、迷宮の間を巡る一陣の風の如く、袋の山へ、仲間を護る為にデュランへと駆け出した。
「ボクは荷物の守りに徹してみるよ!」
 真剣にピンッと耳を立てて、テン・オクトーが袋の山を目掛けて走ると、その小さな背を護る壁として、雨識・ライラが召喚術式を展開しながら立ち、一方で影から生み出した疾風に乗った糸縒・ふうたは敵たるデュランと鷹に強い眼差しを向けて叫んだ。

 折角みんなで集めたんだ。
 無事に持って帰らなくちゃ、ここに来た意味がない!

「そうだよ。眠りネズミ達が分けてくれた素材、ダメにしてしまうわけにはいかない。必ずアンソニーくんに届けるよ」
 テンが袋の山に到達すると、傍で翼を広げたサビエラ・ナバツカがアルテミスの祈りの名を冠した弓を番え、言の葉をふうたと重ねる。
 想いは似ている。
「よしっ、アンソニーくんのために、もうひと頑張り! 行くよ、花太!」
 機械式のガジェットが鳥へ変形し、ライラの元から迷宮に放たれると、三千世界の鴉達を召喚する鵜飼・章も居た。
 影より生み出されていく黒濡れた羽根達。
 意志を持つように、章の伏せた瞼の奥の瞳と感応してゆく。

 テンが頭上を振り仰ぐと、その鴉が袋を嘴に挟み、飛んで行き始めた。
 この開けた場より先の通路へと、次々と羽ばたいては消え、デュランより放たれ、追尾する鷹にライラの花太が後を追わせまいと、旋回から急加速で体当たりをし、阻止した。
「あの鴉は?」
「僕の鴉だよ。このまま研究所まで運べるといいなあ……なんて」
 章がライラへ感謝を手を挙げて合図して、テンへ説明する。
「魔法研究所の場所って知ってる?」
 くりっと、小首を傾げるテンを見下ろす章は、ふむ……と考えた。
「辿り着く、かもしれないよ。世の中、案外容易い。そういう風に出来ているのだから」

 魔法も奇跡も起こる日常。
 迷宮を抜け、道を探すまで出来るかは判らないが、それならばせめて、この場を脱し、デュランの手の届かぬ所まで行けたならば上々――。


 比翼の鳥のようなアンバー・ホワイトとユハナ・ハルヴァリ、疾風の背に乗ったふうた達の天翔るが如くの速さとデュランの重圧が場を制す。
 触発。
『猟兵――――――――――――ッッ!』
 獣は胸を逸らし、天に吼えた。
 混沌の地を這う咆哮から溢れた憎悪は、悪しく凄まじく、猟兵全ての身体を一斉に震わせた。
 その震えは、『恐怖』とは異なるかもしれない。
 双方が相反し、互いを駆逐せんとする者。この世界の天敵同士が出逢うとしたら、細胞の隅々まで刻まれた本能が、こう叫ぶだろう。

 ――来たか。 

 俯き加減で口元を隠した御伽・柳が目元に前髪の影を落とし、己を標的に定めたデュランを眇める。
「待ってましたよ、嘘ですが」
 歓迎していない口調を隠しもせず、「皆さんは眼を閉じて」と、迷宮の壁を翔け、デュランに飛び込まんとするふうた達に素早く警告を告げた後に、手に握りしめた閃光手榴弾を炸裂させた。

『           』

 迷宮の蒸気機関の蓄光による青い光も、生きとし生ける者達の影も瞬時に吹き飛ばし、全てを真っ白へ変えた。
 閉じた瞼の裏にすら刺さる眩(まばゆ)さ。開眼していた獣には、ひとたまりもない。
『ぐ……っ』
 柳へ辿り着く筈だった武器は握り締められたまま、両腕が垂れ下がり、デュランの上体が揺らいだ。
「乱用はしません」
 ……(コストが)高いので。
 やがて刻は、すぐさまに元の優しい影と青い光を取り戻す。
「はっはー。これクラクラするな! チカチカおもしろい!」
「眼が……眼がぁ……」
「え、2人とも、すみません」
 後退する柳の背後から、ひゅっと、比翼の片翼ユハナの守護花弁を纏った、もう一つの片翼の小さな少女アンバーが踊り出、一瞬、殺気が解けたデュランの体躯を爆破させたかと思うと、『がぁっ!』 煌く硝子の鎖で螺旋に縛る。
「優しい眠りを妨げるのは、おまえか……。倒してみせよう! さあユハナ、共に行くぞ!」 
 琥珀に浮かぶ星は嬉々と昂ぶる無邪気さで、よりいっそう輝き、その輝きの素敵さを知るユハナは、当然こう答えるのだ。
「では、いきましょう、アンバー」
『ぐぉぉ……』
 予想外な視界を奪われ、更に収束する螺旋の縛めに苦悶のうめきを絞り出す獣を、ユハナは温情を与える訳もなく、無数の煌く貴石の花弁でデュランの両手武器、脚へと狙い撃つ。
 このまま距離を詰め、武器を奪えたなら……。
 だが、次の瞬間、デュランの踏みしめた足が石床を砕き、広がる亀裂がアンバー達の足元を揺らがせた。
「そうか。まだ戦い始めたばかり。元気な敵からは難しいかな……まだ」
 まだ。それだけ。

『おおおおおおおおお』

 デュランを中心に、アンバーとユハナを巻き込み、瓦解範囲が広がった。
「危ねっ! 行け。疾風!」
「ん? だいじょうぶだぞ。このくらい……」
 そう云うアンバー達を、ふうたの信頼厚い狼『疾風』が大きな身体で背に拾い上げ、石の瓦礫を疾駆して行き、これから起こる予測不明な場から離脱した。

 両手に固く固く握り締めた剣と銃は、爪が手を突き刺そうが、血が噴くまま、より強固に掌握され、封印が解ける。
『……リョ……ヘ……ニクイ。コロス、コロス……!!』
 星屑の鎖を弾き、迷宮の天井へも届かんばかりの巨大な狼へと姿を変えた。


 ……コロスコロスコロスッッ!

 たかたかたんっと、石床の上をみよしが両足交互に踏み鳴らす。
「こういう時は……『おあしす』運動の如く対処するのでございます」
 すーはー、すーはー。息吸って、吐いて。
 即ち、
 【お】ちついて(落ち着いて)
 【あ】わてず(慌てず)
 【し】ずかに(静かに)
 【す】ばやく(素早く)

「間違いないよね」
 しかし頷くも、澪とライラ達が両手で押さえる耳朶を弄る巨大な怨嗟の言葉。
くりかえし、くりかえし……。
 開いた顎(あぎと)から滴る涎、濁った双眸。
 憎悪に、その身体は理性を奪われるのか。

「改めて、おはよう。可哀想、理性もとんでしまって……とても苦しそうだね」
 鴉を操っていた章が、慈愛と虚無の混在した眼を巨大な狼と化したデュランへ向ける。
 誰かを憎み続けるのは疲れるでしょう。
 その憎しみが滅ぶ事でしか消えぬというのなら……。
 混濁したデュランの双眸が、袋を僅かながら運び出し続ける鴉達と、防衛するサビエラ達へ向いた。

 来る。

「花太、ゴーゴー!」
 迷宮の間の狭さを厭わぬまま、その巨躯の馬鹿力を思うがまま揮い、暴れ始めるデュランを押し留めようと、天井から、長い四肢の隙間を縫って飛来するライラの花太と交錯するように床を蹴り、巨躯の尾から背へ駆けるふうたの疾風が挟むように体当たりをする。衝撃がデュランの上体を揺らし、ユハナの氷魔法で暴徒を徐々に鈍らせながら、アンバーの鎖が1本の後ろ脚を捕らえる。
「そっち、いくなー!」

 ガァァアアアアア!!!

 袋の山から、鴉で運び出せたのは、まだ十もない。
 集めただけ、たくさんの数がここにある。
 なにせ、「山」が築けている。実は。
 だが、巨大な力で、前のめりに乗り出したデュランの巨躯は、じりじりと袋の山へ近づいていく。
 サビエラの放つ複数の禊矢が獣の足元に陣を刻み、一時、動きを封じるも、長く続かない。
「くっ……」
 理性を失った巨大な獣に、たおやかに流れる美しい澪の歌声も心に届かないのかもしれない。
「袋には興味なかったのではっ?」
 大切なメジェドさんのぬいぐるみを突き出し、目力のよる理性を呼び戻しを試みても、やはり反応ない事に肩を落すみよしに、柳が「はいっ。次これ」と、テンが差し出す袋を小さな巾着に一部収めながら、嘆息する。
「ここに俺達が居るからか」
「それは随分、無茶を云う。でもあの狼は何も考えてない」
 恐らく。
 真摯な眼差しでデュランを見上げるサビエラは陣が解ける度に、アルテミスの祈りの加護を禊の矢に乗せ、放ち続けた。
 陣が発生する度に、デュランの足は暫し地に縫い付けられたように止まる。

「花太っ、止めてー!」
 更に、体当たりする花太と疾風。アンバーの引っ張る鎖に捕らえられた後ろ脚の1本が、ぎりぎりの抑止だ。
 鎖に繋がれた犬が届かぬ餌に食いつこうとするみたいに、凄まじい飢餓を見せられているような気にさせられる。

 ……コロスーーーーーーーーーーーーー!!

 解けた。
 反動が巨大な狼を前へ前へ前へと突進させた。

 パンッ。壊れた。
「夜糖蜜のポットがっ」
 ライラが悲鳴に近い大声で叫んだ。
 幾つかの袋から、じんわりと染み出した夜色の液体が石床へ流れ、破れた袋からは吐息が空気の中に霧散した。
 魔法だもの。床に落としたくらいでは、不思議と壊れにくい。でも災魔の力で破壊されたのならば、話は別なのだろう。

 巨大な牙が、袋の山を護るテンやみよし達へ襲撃するかと思われた瞬間、ふうたと疾風に渾身の体当たりで顎下から突き上げられると、ぐるっと頭部を振った後、次に、一線の軌道を高速で飛んで横面を狙って来た花太を、牙で捕らえようと顎を開く。
「花太っ。退いて!」
 ここに。と、己の傍らに腕で合図すると、間一髪、花太が襲って来る牙の合間をすり抜け飛来して、横にピタリと着いて来た。

「こんンンのーーーーーーーーっ!」
 崩れた袋の山の一角を踏み潰したデュランの所業も、仲間の誰も狙わせない。
「疾風! 駆けようぜ!」
 何処までも一緒に。
 最初から、デュランの懐へ飛び込む事を恐ろしいとは思わない。
 異質な狼を見た瞬間、そんな気持ちは吹き飛んだ。
 何故か。
 ふうたは、疾風の首にしっかりと抱き、上体を伏して空気摩擦を極限に減らす。疾風も影から生まれし狼の姿だ。
 だが、狼は狼でも、デュランとは違う。
 疾風は決して仲間を傷つけない。
 人狼もそう。いい狼だって、たくさん居るんだぜって教えたい。
「それにアンソニーくんに、迷宮の怖い狼さんは、オレたちがやっつけて来たぜって云ってあげたいから、一緒に頑張って戦おうぜ」
 影の狼は優しく吼える。
「ふうたさんっ。効いてますよ!」
「だなっ!」
 相棒の後ろ脚は地を、壁を、蒸気機関の足場を正確に蹴り、風を切る。躍動からの跳躍の終着点はデュランの身体への体当たり。遠距離援護をしてくれる澪の花嵐も纏いながら、顎から脳天へ響く攻撃に翻弄されている所を一撃一撃繰り返して行く。
 何処までも狙うは、顎(あぎと)。
 下肢から腹下を通り、前脚の間を長く疾駆して、顎を渾身の速さと跳躍の反動で上へ上へ突き上げる。数度繰り返す内に、後ろ脚に鎖を絡ませていたアンバーが意図を汲んだか、ゆうたに頷き、振り返ってユハナの名を呼んだ。
 ユハナは、ふぅ……と、ひと息。
 取り出した鞣革から短剣を抜き、手首裏に唇を当てた後、狂うデュランを見上げる。
「僕らは素材を、守らなくちゃいけないし、君は、何もかもを壊したい。それなら、ぶつかる以外にないから退かないよ」
「わたしも、もっとかっこいいところ見せてやろう!」
 ふうたと疾風が駆け始める背を見送り、瞬きもせず、彼らがデュランの下を通過する動作を見る。「知ってるよ、君がかっこいい事くらい」
 ふふ。
 星空を集めた夜色のオーラを、アンバーが渾身のパワーで後ろ両脚へぶつけるその 背後で、ユハナが巨躯を凍てつかせる氷魔法を発動する。
 爆ぜる。
 デュランが躍動を失った上に、体勢が大きく傾いだタイミングと、長距離疾駆からの大砲に見合うふうたと疾風のペアの身が射出された砲丸となり、デュランの顎を突き上げながら頭部もろとも巨躯を天高く飛ばしたのだ。

「「やった!!!!!!」」

 巨躯の狼が獣人へと戻り、天井から石床へ落下した。


『がっ!! はぁぁ!!』
 石床の上で大量の吐血をしたデュランに疲弊が伺えた。
「でも、まだ終わっていないね」
「最後の仕上げが残っていると云えるよね」
『おのれ。猟兵共……』
 血走った眼球が、ぎょろりと、いつでも臨戦状態の隙が無い澪や章、猟兵達を1人、1人、憎悪という殺す感情で捕らえて行く。手から止め処なく流れる血は、未だ武器を携える。
 武器。
 何人も考えた。
 あの執念の武器を奪わねば。
 剣を振る毎に赤の飛沫が飛び、血塗れた弾丸が銃から飛ぶ。

 狼が狂う度、点々と赤が、迷宮の間を赤く染めていく。
 その面積は、じわじわと増して行くのだ。

 血走った眼球に、メジェド神の目力の圧が反射した。みよしが最近貰ったらしいぬいぐるみだが、ただのぬいぐるみではない。猟兵一人一人へ行き渡る視線が、メジェド神にだんだんと集まってくるようになった。
 ただの偶然。いや、必然。多分。
 みよしの喉が高らかに奮えた。朝靄に囀る小鳥のように。
「目からビームで不審者を撃退、加えて夜道も安心でございます」
『何?!』
「本物の目からビームをお召しになりませ!」
 ちゃっちゃと腕に掲げたメジェドさんぬいぐるみを振る。
 反射的に不穏なみよしの様子に飛びのくも、不可視の存在メジェドのビームが、身体を穿ち、身体的、力を僅かに奪う。
『これは……いや、だが』
 目に存在しない物との格闘。振る剣、舞う蹴り、神速の銃撃。気配を辿り、一撃二撃と打撃を繰り返す。その不可視を掻き殴る蟲の音、章の蜂の群れがデュランの手足を襲う。大振りに弧を描く剣先が蜂を落とし、乱舞に似た武が、デュランにとって幸か不幸か、空間を余分に切り裂いた。
「あーっ」
『気配がなくなった……』
「ごめんね……」
 無音、この場に不可視の存在、何もなし。
 不可視が、下手な鉄砲数撃ちゃ当る的な攻撃で消された、か。
 地を蹴り、無防備になったみよしへ長き刀身を振るう。一撃、二撃、三、連続で振るう、……筈だった。襲う蠍を踏み潰す間に、蜘蛛の攻撃を受けた。
 不意に朦朧と意識が跳ぶデュランが闇雲に乱舞した果ては……。

 眼前で血を流すは、だらりと脱力した姿の柳だった。
 ふー……。
 身体の傷を慮る章とみよしを手で制し、静かに、デュランにも気取られぬよう息を吐く。
 落ち着いて、大丈夫。激痛は幾らでも受け止められる。自身の肉が骨が裂けようとも、この痛みはある方向へと蓄積されていくのだ。
「来いよ、その憎しみを受け止めてやる」
『猟兵がーーーーーーーーーーーーー!!!』
 裂帛の叫びが柳を切り刻む。

 ゆるく全身の神経を閉ざす。
 何者にも動かされない。
 何者にも揺るがされない。
 無に。ただ無に。
「「柳さん!!」」
 神経を開けば、きっと凄まじく「赤い」のだろうなと柳は思う。澪の花嵐が舞う。テンが跳んで来て、フレイムを振るう。ふうたの疾風とライラの花太が援護に回り、サビエラがデュランの動きを止めよと矢を放ち陣を描けば、ユハナの氷が、アンバーの鎖が。
 章が魔導書を紐解き、デュランの鷹と相対する鷹を召喚し、デュランの腕ふ振るいを阻害した。
 それでも。

 時間が流れた。長いと思われた。

 今、臨界点を越えた。

「――覚えたか。なら、やれ」
 柳の影に潜ませたモノが排出される。蓄積された「痛み」が姿が確定しないモノによって、デュランを飲みこまんとする。
 力。血の赤。
 柳が耐えた痛みの代償を、今デュランに贖わせる。
 狼の咆哮が迸った。

  ……戦いが終わった。


 身を大量に裂かれ、襤褸と成り果てた狼は倒れていた。
 安らかに。
「誰かを憎み続けるのは疲れるでしょう」
 章が倒れた狼に優しく、冷たく、反する感情が混在されたような眼差しで見下ろす。
 周りを囲む猟兵達の中で、サビエラが呟く。
「お前も狼の血族なのかもしれないけど、森で生きる狼達の力を俺は知ってる。彼らは群れで生きているから……ひょっとしたらお前にも孤独はあったのかな」
『群れなど知らない……』
 微かな声が聞こえた。
「知らないのか……そう、か」
 彼の背景は判らない。
 だが、永きに渡る封印の末の孤独を想像する事は難くないかもしれない。
 ――安らかに。
『安らかとは…………何……なのか』
「!」
 サビエラが憐憫の思いを胸に、猟兵達に看取られていく獣人へと向け、手を握り締めた。
 短い沈黙が流れた。
 息を引き取る前に、
「おやすみなさい。きみもどうか安らかに」
「「安らかに」」
 デュランに送る言葉を、天をふと仰いだ章は呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『もふもふなお手伝い』

POW   :    動物をたくさん運ぶ等、力仕事でできるお世話

SPD   :    ブラッシング等、自分の器用さ・技量を活かしたお世話

WIZ   :    動物に関する知識等を活かしたお世話やアドバイス

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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 獣の侵略者『デュラン』の身体が静かに消えた後、改めて猟兵達は、被害に遭った袋の山と負傷者に向き合う。
 守った甲斐があった。山は一角を壊されても、『たくさん』は揺ぎ無い。
「幾つか収納や運び出せた袋もあるし、残りをそれぞれ手分けして持ち運べばいいよね」
 1人ずつ持ち易いように袋を抱え、または召喚したモノ達に手助けを乞い、それぞれが作業分担しつつ、負傷者の救助活動も行う。
 負傷者の意識はある。幸い致命傷ではない。大きな回復の手立ては今ないけれど、傷を消毒して包帯で縛ったら、後は本人の体力にお任せしよう。
 主に気合で。

「血を失った分、必要なのは鉄分補給ですかね。ごはん、いただきましょー」
「疲れた皆も、たっぷりお昼寝すればいいし」
「アンソニーくんの為の素材は、研究所に渡しても、あり余るくらい『たくさん』残ったから、その気があれば、一緒に安眠グッズも作れるかな」

 魔法研究所へ行こう。
 優しい子達が、きっと待ってくれている。


 今朝は、遠い森の木立に陽の光がゆっくりと射し込み、小鳥達のさえずりが聞こえた。
 朝露に濡れた草花が早い春の訪れを告げるような優しい歌声で。

 ♪おはよう、おはよう。あさだよ。
 ♪ずっと ねむれなかった かわいそうな子のために、
 ♪きょうは、うれしいたのしいプレゼントがとどくよ。

 アルダワ魔法学園の片隅に、可愛らしい水玉模様の外壁と屋根の洋風館の建物があった。
 ――ドット魔法研究所。
 朝ごはんを終えた動物達がくつろぐ中庭に、息を切らせた研究員の1人が駆けて来る。
「ドット博士―!」
 水玉模様のももいろきりん・リリンちゃんの足の筋肉を診ていた博士は、「マリオくん、何だね」と、助手1号へ振り向く。
 無造作なおかっぱ頭に丸い眼鏡。水玉のネクタイに水玉のシャツに水玉の白衣……とにかく水玉づくしの姿は、マリオくんも同じ。
「カラスがっ。こっちへカラスが数羽飛んで来ましてっ!」
「ん? カラスって、さっきの白頭巾被ったカカシの子が連れて来たカラス?」
「っじゃない方の」
「じゃない方の。……んん?」
 上、上っ! とマリオくんが中庭の空を指差すと、見る間に袋を咥えたカラスが数羽現れ、地上へ吸い込まれるように音も無く、舞い降りて来た。
 突然の訪問者に、中庭に居た動物達は、びっくり。一時、大さわぎになりかけた。
「どーどー。落ち着いて、皆。こんな時こそ『おあしす運動』。いいね?」

 【お】-っと。(おーっと)
 【あ】わてない。(慌てない)
 【し】ずかに。(静かに)
 【す】こしまてまて。(少し、待て待て)

「ちょーっと違うんじゃないですかぁ?!」
 うるさいね、君……。ピタッと静かに落ち着いた賢い動物達の中で、1人きゃんきゃん騒ぐ助手1号を、じろっと睨んだ後、ドット博士はカラスが地面にそっと下ろした袋の口を少し開けて、眼を見開く。頭に浮かぶは、今朝も元気がなく、今もお部屋で横たわっているアンソニーくんの姿。
「マリオくん、これはアンソニーくんにとって朗報だよ。早速、準備を始めなきゃ!」

 そこから慌しくなった。
 何でも、『転校生』が眠りネズミの素材を持って来てくれるのだそう。(嬉しい!)
 お礼のお弁当を作らなきゃ。(頑張れ!)
 アンソニーくんのお布団の準備を進めなきゃ。(もっと頑張れ!)
 助手1号、2号……10号くんまで総出で、お出迎え準備が始まった。
 アンソニーくんは、絶対元気になってくれる!


 厨房から美味しそうな香りが、研究所いっぱいに広がる。
 湯葉のクリームコロッケのベシャメルソース掛け、肉汁たっぷりハンバーグ、ふんわり卵で柔らかい野菜を包んだオムレツ、バンズに挟んだ十段重ねのハンバーガー、彩り野菜とお肉のクラブハウスサンド、その他、異世界物語の絵本にもある和風おにぎり、お寿司って云うものまで、あらゆる物がいっぱい。
 コトコト煮込む鍋の、たまねぎ、香草、椎茸のスープを掻き混ぜながら、
「好き嫌いがあったら申し訳ないね。食べられない物があったら、教えてくれるといいんだけど」
 ドット博士が味見をする。
「うん、美味しっ」

 お布団の裁縫に、ちくちくちく、根気よく針を動かす助手達。
 急げ急げ。中に詰める眠りネズミの毛は、後からもっと届くらしい。詰めた後に、吐息をかければ、夢見心地うっとりな膨らみになるし、夜糖蜜は深い眠りに誘ってくれる。

 研究所の皆が大忙しになったので、遊んでくれる人がいなくなってしまって、そわそわしている動物達は、野原へお出掛けを始めた。中でもハムスターズは、ふわもこ毛を靡かせ、やんちゃに、かくれんぼを始めるくらいだ。
 大きな動物、小さな動物。好き好きに野原で遊び始めた。
 研究所の皆は、気づいていない様子。
 丘の上に、見事な枝を四方水平に広げ、『天の傘』と云わんばかりに、広い野原を覆う1本の大樹の下で、せっせと大きな木のテーブルを磨くカカシの子。
 ここでお弁当を広げて、野原を見渡せたら……。

 何か笑っていた。
 今日は天気がいいなあって。

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【受付中です】(大体、3/5(火)夜以降から執筆予定です)

 3章からのご参加も歓迎ですし、どうぞ気の合うお友達を(動物も)お誘いの上、お越し頂けましたら、幸いです。
 研究所の水玉模様の動物達は、皆様の好きな動物が何処かしらに居ると思われます。

 ※POW/SPD/WIZは参照程度で、基本自由にのびのびと楽しんで下さいね。
 (なるべく行動は1つに絞った方が良いかなと思いますが、強制ではありません)
 ※アイテム発行はシステム上、行えませんが、旅団や個人で楽しむには自由かなと思います。

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栗花落・澪
ちょっと犠牲にした分もあるけど…
目標分は護りきれて本当によかった

僕はどちらかと言えば小食な方だし
食べるよりも動物達との戯れメインに

簡単につまめる程度の料理を手に地べたに腰掛け
水玉うさぎや猫、ハムスター等
小さな動物達を膝上や足の周りで遊ばせながら
時折優しく撫でてあげる

この子達も一緒に食べれそうなものってあるかな?
人間の食べ物はあんまり良くないだろうしね
用意があるなら指示に従うし、特に問題無さそうなら
自前の飴を器に入れて、火の魔法で溶かした後
適度に冷ましてからあげてみるよ
食べすぎには注意だぞ

アンソニー君以外にも眠い子はいる?
お昼寝しても大丈夫だよ
僕が子守唄歌ってあげる
仲間への癒しも兼ねてね(UC)


雨識・ライラ
アンソニーくんが無事に眠れますように…

よぉーし、ボクはブラッシングするね!
みんなブラッシング好きなのかな?それとも初めて?

勢い良すぎて逃げられちゃうと悲しいから、そろっと近づいて優しく力強くブラッシングしてあげる

どうかな〜気持ちいい?
痒いところがあったら言ってね
と言いながら、全身をくまなくブラッシングしていく

一匹終わったら、次の子へ
丁寧にやるからそんなにたくさんの子はできないかもだけど
一匹でも多くの子を気持ちよくできたら、いいな

アドリブ、絡み歓迎


銀座・みよし
うふふ…楽しみにしてたピクニックです!
美味しくご飯をいただくためにお世話を頑張るのでございますー!
…あっ。すみません、案山子様
サンドイッチや紅茶を入れたバスケットのお留守番を頼んでもよろしいでしょうか?

わたくしはホルスさんと一緒に犬さんたちのお世話をいたしましょう
まずはいっぱい遊ぶ!
でも追い掛け回すと怯えるでしょうから…ここはおやつを持ってわたくしが走り回るしか…!
さぁ、ついてきてくださいましー!(おやつを手に掲げ

ひたすら走った後は疲れているでしょうからブラッシングやマッサージをしましょう
ブラッシングは【優しく】触って、身体にかるーく当てる程度に!
マッサージはお耳や足を優しく揉み解す程度で!


鵜飼・章
じゃない方の鴉の主人です
皆お疲れさま
頑張った鴉達にご褒美をあげないとね
おいしそうなお弁当を貰ってピクニックへ

わあすごい
あっという間に僕の分まで奪い取られてしまった
仕方ないよね、鴉だもの
辛うじて無事だったサンドを食べる
野菜も食べないと駄目だよ皆…

破魔さんもピクニックの準備有難う
男爵さんは賢そうでいいなあ
この子たちはちょっと元気すぎて…
ほら言ってるそばから食べ散らかして
めっだよ

…あれ?
あはは
見慣れない子が混ざってると思ったら
見て、水玉の鴉だ
全ての鴉は黒いって証明しようとした人も
この子を見たら腰を抜かすね

聴こえた歌に耳を傾け
心地よさそうな鴉たちや皆
水玉の動物達をスケッチして過ごす
うん、いい絵ができた


糸縒・ふうた
アドリブ・絡み・改変等歓迎

アンソニーくんは早速安心して眠れたのかな?
もし起きているようなら、ご挨拶に行こう

最初はオレひとりで
怖い狼さんはオレたちがやっつけてきたから安心してって伝えて

次は怖がらせないように気をつけながら
【喚び聲】でかぞくを喚んで

だいじょうぶ
なにもこわいことなんてしないよ

目の間を掻いてやれば喜ぶかぞくに
良かったらアンソニーくんも撫でてみて?
って、お願いしてみよう

怖くない狼もいる
こいつらとも仲良くしてくれたら嬉しいな


あと、出来れば、なんだけど
余った眠りネズミの毛でくっしょん、
を作ってもらえないかなって助手さんにお願いしたいな

友達がぐっすり眠れるように、渡してあげたいんだ


御伽・柳
こんなボロボロの状態で動物と触れ合ったらビックリされちゃうかもしれませんし……破魔さんの磨いてくれたテーブルでゆっくりお弁当でも頂きながら、皆さんの様子でも見ていようと思います

大丈夫、今日のモフモフは眠りネズミさんで堪能しましたから
クラブハウスサンドでも食べて、スープもいただいて
幸せモフモフ空間……違う、水玉空間をのんびり見学してますね
……でも、なんかちょっと水玉模様の動物ってUDCアースじゃ見れないから不思議だな……流石アルダワ学園……

ああそうだ、【収集癖】で持ち帰った夜糖蜜、小瓶で少しだけ貰ってもいいですか?
俺じゃなくて姉の土産に、たまには姉孝行もしないといけませんからね


テン・オクトー
素材はいっぱいお届け出来たみたいだから
水玉魔法生物さん達みんなの分の
お布団や枕が出来るといいね

ん?大樹の下が賑やかそう?
うわあ、色々な魔法生物さんがいるねえ
お食事もあって天気も良くて素敵なピクニックだね

わあ!こんな子もいるの?
足元に寄ってきた大きなトカゲさんと
一緒に過ごしてみるよ
大きなドット柄のボクより大きく長いトカゲさん
肉球でモミモミ揉んでみるね
気持ちいいかな?どう?

ポカポカで気持ちがいいしなんだか眠く…
え、トカゲさん、尻尾使っていいの?
ありがとう
トカゲさんの尻尾を枕に一緒にお昼寝

今回も不思議なお仕事だったなあ
あ、お昼寝から覚めたら
研究員の方達も呼んでこないとね
…むにゃむにゃ

絡みアドリブ歓迎


サビエラ・ナヴァツカ
美味しそうなお弁当をいただいたら、野原の動物たちと話をしに行こうかな。

俺は野生の生き物たちのことしか知らないから、色々話を聞いてみたい。ここは良いところかな、皆は幸せかな…デュランの孤独を思い出してしまうけど、研究所の様子を見るに、きっとみんな大事にしてもらってるね。

せっかくの良い天気だ、沢山遊んだ後は、アンソニーくんも他の動物たちもみんなでゆっくりお昼寝出来るように、子守唄でも歌おうか。

アドリブ、交流もオッケーだよ。


アンバー・ホワイト
ユハナ/f00855と
ふわふわでもこもこ、可愛い敵を倒したら、こんなご褒美が待っていたなんて!
今度は敵じゃないんだろう!存分にもふもふ遊ぼう!
水玉模様のお友達、動物と話す力で近づいて
うさぎさんはいるかな?ぴょこぴょこはね回るあの姿、たまらなく好きなんだ!
ユハナ、は?
え!写真だって!?
見たことはあるけれど、撮ってもらうのは初めてだ!
可愛く撮っておくれよ、この子も、ほら!
はね回るうさぎを抱き上げて、スマホの方へ向いてみたり
一緒に踊る真似してみたり
動いちゃいけないなんて、知らなかったから!
ほら、ユハナ!ユハナも!
共にスマホに向いてぴーす
可愛い思い出、たくさんつくれたな!
あとで写真、楽しみにしてるぞ!


ユハナ・ハルヴァリ
アンバー(f08886)と

動物が、たくさん
みんな水玉、なんですね
楽しそう。
……アンバーは、うさぎさんが好きですか?
僕。僕は、
眺めるのは、好きですよ。可愛いし。
柔らかないきものは、触るのは怖いけど
んー、と。そうだ。
じゃあ僕は、今日は、かめらまんというものを、します
取り出すのは真新しいスマートフォン
覚えたて。だけど写真は少しなら、撮れます
みずたまの動物たちと遊ぶアンバーの姿をぱしゃぱしゃと写して
あまり素早いとうまくいかないけれど、
大人しくしてくれてる間はなんとか見れる程度の写り具合
ほら、こんな感じです
え?僕も?
うまく撮れるかな。がんばります
写真……という紙に、できるのでしたか
あとで、あげますね。




 りんごーん、りんごーん。
 水玉模様の魔法研究所の見上げるほど大きな玄関の扉の前に一同が並び、章が呼び鈴を鳴らすと、屋内の隅々に行き渡る心地よい反響音と慌しい足音が扉越しに聞こえた。
 空は明るく、お日様が正午を告げるには、まだ早い時間。
「どうもー。じゃない方の鴉の主人です」
 お待たせしました。
『転校生』達が、残りの素材をお届けに参りました――。

 出迎えてくれたドット博士と助手1、2、3……10号が、わぁっ! ありがとー! ありがとー! と、エントランスに次々と置かれる皆の袋の山と、柳の【収集癖】から出て来る袋に驚いて歓声をあげた。
「ちょっと犠牲にした分もあるけど……。目標分は護りきれて本当によかった」
「いっぱいあるから、水玉魔法生物さん達、みんなの分のお布団や枕も出来るといいね」
 澪とテンが最後の袋を置くと、ぶんぶんぶんと2人の手を握って喜ぶ博士と助手達。
「十分過ぎるくらいだよ。いやぁ、助かったー! 有難うっ皆さん」
 全員に握手握手。
 アルダワ魔法学園の者は、地下迷宮がどんなに困難な場所か知っている。
 時々、果敢と云うか……無謀な冒険に挑戦する生徒もいるけれども、いつでも危険と隣り合わせの迷宮なのだって事を。

「ああそうだ。後で夜糖蜜を小瓶で少しだけ分けて貰ってもいいですか」
 俺じゃなくて、姉の土産に。たまには姉孝行もしないといけませんからね。と、柳は頼む。元より、この素敵な「たくさん」を採って来てくれたのは転校生の皆なのだから断る筈もない。
 いいよー!
 と、気さくに承諾してくれた。

 章が、「で、研究所の皆さん」 軽く前置きを述べ、咳払いをした。
「早速なのですが、今動物達が全員、外に出ているって、気づいてました?」

 あーーーーーーーーーーーーーっ!!!

「「どうしよう! メリー! トムーっ! エドーっ! ぽn……(つづく)」」
 全ての動物達の名前を唱和しながら、どたばた、うろうろ。
 皆、賢いので、そんなに遠くは行かないし、危険な事はしないと思うけれど、さすがに面倒を見る者が1人も居ないのは心配。うろたえる研究所の人達を、館内に、ぴょこぴょこ留まっていた鴉を呼び寄せた章が、にこっと余裕のある笑みを浮かべて制し、口を開いた。
「僕達が代わりに、彼らの様子を見ておきましょう」
 ついでに一緒に遊んで、もふってもふって、もふりまくってもいいですよね。
 いいよー!
「えーっ。いいのか?! 可愛い敵を倒したら、こんなご褒美が待っていたなんて! 今度は敵じゃないんだろう! 存分に、もふもふ遊ぼう!」
 今にも外の動物達をもふりたい衝動を抑えていたアンバーが顔を輝かせ、ユハナと一緒に外へ飛び出した。
「じゃあ……俺も」
「わたくしも!」
 続くサビエラやみよし達が外へ出て行く中、1人、ふうたが残る姿を、ライラは肩越しに見た。目が合うと、ふうたは、二カッと笑う。
「ちょっとオレはアンソニーくんに会いたくて」
「アンソニーくんが無事に眠れますように……?」
「うん。先に様子を見て来るよ」
 こくりと頷くライラに手を振って見送った、ふうたは、ドット博士にアンソニーくんのお部屋を案内して貰えるようお願いした。


 魔法生物達のお部屋は、可愛い子ども部屋のよう。
 外で遊ぶ皆の笑い声が、ほんの少しだけカーテン越しに柔らかい光と共に滲む室内。
 その子が大好きなお花や海や空の壁紙、天井から吊り下げられた星と鳥。アンソニーくんは、ゆりかごみたいな大きな木箱のベッドに横たわっていた。明るい光が部屋を満たしても、くったりと元気のない子ゾウは、「初めまして」と入って来た ふうたを、「だぁれ?」と大きな耳を揺らして、不安そうに見つめた。
 優しい声と、言葉が伝わる。大きな耳を掻く手も優しい。
「怖い夢を見るんだって?」
 狼が、狼が、やって来る。手に怖い爪、大きな牙。真っ赤に染まったソレは怖いもの。
「その怖い狼さんはね。オレ達がやっつけて来たから安心して」
 もう学園にもアンソニーくんの所にも来ないからね。
「それに狼って云っても、いろんな狼が居て、ね……」
 ふうたが、すっと差し伸べた腕の先に『おいで』と喚び聲を寄り添わせると、開けた空間に大きな耳と尻尾を持つ『かぞく』が姿を見せ、木箱のベッドの淵に、ぽふっと顎を乗せた。ぴくっと一瞬震えた子ゾウが見ている前で、ふうたに眉間を掻かれると気持ち良さそうに眼を細めるかぞくに、「良かったらアンソニー撫でてみて?」とお願いをする。
「怖くない狼も居る。こいつらとも仲良くしてくれたら嬉しいな」
 ほんと? ほんと? こわくない? と、不思議そうに見つめるアンソニーくんの身体を支えながら、ふうたは頷いて、前脚にかぞくの耳を触れさせてやる。
 おぼつかない仕草だけれど、震えは伝わって来なくなった。
 こわくない。
 そう云われて、ふうたは嬉しくなった。

「出来たよー! ドット特製『眠りネズミのお布団、アンソニーくん★ぷちっとサイズ』!」
 暫くして、足音が通路に響き、扉が開いた。
 両手に余るボリューム感満載のふんわりお布団が入口を塞ぐも、ぼふっと強引にドット博士と一緒に、ライラも雪崩れこんで来て、お終い。
「アンソニーくん、元気になってくれたかな?」
 ライラもアンソニーくんの様子が気になったけれど、ふうたがアンソニーくんに伝えたい事があるみたいだったから、少しタイミングをずらしたのだ。頷くふうたと、ちょっとお鼻をゆるゆる動かしているアンソニーくんを見て、ホッとしたライラは、早速、木箱のお布団と交換しようとする博士を留め、一つ提案をする。
「アンソニーくんを外でお昼寝させてあげられないかな」
 耳を澄ませば、外から聞こえるアンバー達の明るい声。
 楽しそう。
 皆が外で遊んでいるのに、1人で部屋に閉じこもっているのは可哀想かも。
穏やかな日差しの下で、芽吹きの風に、そよそよ吹かれ、淋しくないように皆の傍で眠らせてあげたいね。ちょっと賑やか過ぎるかな。でも大丈夫だよね。
「ふむふむ。では、そっちの狼の子達も手伝ってー」
 ドット博士と助手達は手押し車を用意し、アンソニーくんを乗せて外へ連れ出した。
 その間、預けられたお布団と枕を両腕に抱きしめて、そのふわふわの柔らかさを実感した、ふうたとライラは、ふぉーっと溜息が漏れる。眠りネズミの毛は何て、うっとりする柔らかさだろう。
 これで友達にもくっしょんを作ってあげたら、きっと最高な眠りを贈ってあげられるに違いないって、ふうたは改めて思う。
「あ、あっ。オレっ、もうひとつお願いがっ!」
 いいよー!


「うふふ……楽しみにしてたピクニックです!美味しくご飯をいただくために、お世話を頑張るのでございますー!」
 ああ、この解放感。みよしの目の前で、ぐるりと反転する青色の風、見渡す野原を駆ける水玉模様の動物達、全てに乾杯したくなる。大きい子、小さい子。動物達は、のびのびとくつろぎ、はしゃぎ、皆優しい。
「……あっ。すみません、案山子様。サンドイッチや紅茶を入れたバスケットのお留守番を頼んでよろしいでしょうか?」
 自ら作ったお手製お弁当を入れたバスケットを通りかかった子に預けた。翼を持つホルスさんと一緒に、わんこ達の元へ駆けて行くみよしを見送ったカカシの子は、一緒に連れて行って欲しかった……と、しょぼんと、バスケットを抱え、大樹の下へ歩いて行った。
 でも。ま、いっか。皆が楽しい事が一番だよなって思う。

 つやつやに磨かれた大きな木のテーブルは12人掛け。
 草花の絨毯にも敷物を敷いて、各々腰掛ければ、もっと多くの人が集える。
 大樹の根元では、お布団を並べて、その上に寝かされたアンソニーくんが居て、時々そっと見守りに、覗きに行く皆は、幸せそうな寝顔に安心を覚えた。眠れなかったアンソニーくんは今、夜糖蜜と柔らかいお布団で心地よい眠りへと誘われ中。
 少しの間、起さないようにね。
了解。

「今日は本当に皆さん、有難う。良かったら、どうぞ」
 彩り豊かでヘルシーなお弁当とスープが次々と運びこまれ、瞬く間にテーブルいっぱいに料理がひしめき合うように並んだ。
魔法研究所のドット博士、その他、皆からのお礼のお弁当。
「ドット博士。魔法生物のこの子達にも、飴やごはんをあげても?」
 いいよー!
「野菜も、よく食べるよ。あとは基本のバランス栄養フードをあげてるね」
 澪と抱えたハムスターや小動物達に、「良かったら、どうぞ」と栄養フードの袋を見せる。
「うわぁ。色々な魔法生物さんがいるねぇ」
 大樹の下で、トカゲを見つけたテンは、大きなドット柄の大きなトカゲさんを見つけ、肉球でモミモミ揉みながら、「この子も、フードを食べるのかな」と博士に了承を得た。
 モミモミ。
「気持ちいいかな。どう?」
 ばぉ。とってもいい。
 ごろっと喉を鳴らす仕草に、ほっこり。
 そんな和やかなテンと大トカゲとは別に、テンションが低い人が。

「こんなボロボロの状態で動物と触れ合ったら、ビックリされちゃうかもしれませんし……」
 クラブハウスサンドを咀嚼しながら柳は、『まずはいっぱい遊ぶ! ついて来てくださいましー!』
と、叫びながら、おやつを手に掲げて、水玉わんこの群れと駆け回るみよし達の楽しげな様子を、少々羨ましげに見守り、今日堪能した眠りネズミのモフモフ感を思い出して、自分を慰める。
「傷なら、僕が治しましたよね」
 そんな柳の目の前に、とんとんとんと、三匹のハリネズミを乗せた澪が微笑む。
 確かに傷は研究所に来て、澪に治癒して貰えたのだが、血が染み付いた包帯と身なりは、動物達が怖がるかもしれない。でも、澪の云う通り、そんな事は杞憂で、テーブルの上を、ころころ丸まって、柳に、ばあっとお腹を見せるハリネズミ達は、人懐っこくて、怯えていない。
 目線が合うと、ぱたぱた短い脚を三匹揃って動かす様は、あそんでーとも、ごはんーとでも受け取れる。
 どっちだ。可愛い。
「僕は小食な方なので、あまり食べないんですけど、この子達は食欲旺盛ですよ」
 澪がテーブルの傍らの草花の上に座ると、たちまち膝に乗っかって来るハムスターやうさぎ、猫は、我先にと、彼の手のひらに乗る綺麗な色の飴をねだって来る。
「だーめ。食べ過ぎには注意だぞ」
 あまいの、おいしい。

「皆お疲れさま。頑張った子達に、ご褒美をあげないとね」
 テーブル席に着いた章の目の前に、数羽の鴉がお利口に並んでいる。今か今かと、眼をランランと光らせて(いる気がする)主人の合図を待っているかのよう。
「いいよ」
 バサバサバサっ! ガガガガガガガっ!!
「「掘削機のような……」」
 慄くサビエラや澪の目線も何のその。群れて、主人の皿をも穴を開ける勢いで、「野菜も食べないと駄目だよ皆……」と、あやす章のハンバーグも唐揚げもローストビーフも瞬く間に平らげてしまう。
 みよしから預かったバスケットも襲われそうで、思わず必死に抱え直す案山子に章が声を掛けてくれる。
「破魔さん、ピクニックの準備有難う。そちらの男爵さんは賢そうでいいなあ。この子達は、ちょっと元気過ぎて……あ、ほら云ってるそばから食べ散らかして、めっだよ」
 それでも鴉達が可愛くて仕方がないって顔をしている。話かけられて、嬉しかった案山子は、椅子の背にゆったりと止まっている男爵を見遣り、
「うちの男爵は、その内、足が三本になりそうなくらいの年だから」
 と、笑って云った。


 お弁当を食べたサビエラは、野原の動物達と話をしに、歩き回る。
 野生の動物達の事しか知らないサビエラは、この研究所の動物達が気になってしまう。柳もアルダワ魔法学園の魔法生物には驚いていた様子だったが、本当に不思議だ。

 そしてサビエラは、いつしか腕の中で眠るキツネ達に子守唄を歌ってあげながら、ふかふかの耳を撫で上げる。水玉模様の優しい子達。
 孤独な狼も居た。
 地上を知らず、地下迷宮で封印されていた狼。
「でも、この研究所はいいね。様子を見るに、どの子も大切にして貰っているね」
 子守唄に篭る願い。
どうか、このまま優しい心を持ち続けていて。

 閉じていた瞼を開けると、賑やかな女の子達が追いかけっこをしていた。
 思った以上に、鳥を引き連れて、いつまでも元気な子が居るものだ。
野原の端から端まで、疲れ知らずで、わんこを引き連れて走るみよしの姿を感心したように、見つめ続けた。ちょっと微笑ましい。

 その内、かけっこはお終い。
「よぉーし、ボクはブラッシングするね! みんなブラッシング好きかな?!」
「わたくしも、やりますでございます。さあ、みなさーん、並んで並んで」
 みよしが連れて来たわんこ達を、待ち構えていたライラが、はりきってブラッシングを始めると、みよしもすっかり仲良くなったわんこに、ごろんーの指示を出したりする。
 かなり元気に走り回って、皆ちょっと気持ちが落ち着いた。
 疲れたかな?
 だいじょうぶー。
 何の警戒心もなく、ごろんと寝転がってお腹を見せ、ライラとみよしのブラッシングを気持ちよく受け始めるわんこ達。
「どうかな~気持ちいい?」
 わんっ。
「痒いところがあったら云ってね♪」
 ここ、わん!
 一匹二匹、次々と。でも全身くまなく丁寧にっ。
 気持ちいい、気持ちいいって、皆喜んで、最後は「わっ、ちょっと。あはは」ライラとみよし達の頬をぺろぺろ舐めて嬉しいって気持ちを尻尾の先まで表していた。

「……アンバーは、うさぎさんが好きですか?」
 ふわふわのうさぎ達を両手に抱え、頬をすりすりしているアンバーの姿をユハナは何枚目かのスマホ写真に収め、ほうっと息をつく。今度もいい表情が撮れた。
「うさぎさんは、ぴょこぴょこはね回る姿が、たまらなく好きなんだ! ユハナもそう思うだろ?」
「僕。僕は、眺めるのは、好きですよ。可愛いし」
柔らかないきものは、触るのは怖いけど……と云い添えて、くるりと周りを見渡せば、再び野原いっぱい駆け回る元気なライラとみよしの女の子達の姿が見えた。
「楽しそう」
 ここの動物達は、皆水玉模様。
 それぞれの個体に合った、優しい色合い。

「僕は、帰るまで、かめらまんというものを、します」
「ユハナ、は? え! まだ撮るのか!?」
 真新しいスマートフォンを取り出して、覚えたての写真を、ユハナは沢山撮った。跳ね回る大好きなうさぎと、一緒に踊るアンバー、水玉模様の動物と触れ合うアンバー。でも、やっぱり一番はうさぎを抱きしめるアンバーかな。動いてても、大丈夫。 それが君らしいんじゃないかな。
「見たことはあるけれど、撮ってもらうのは、今日が初めてだった! それじゃ可愛く撮っておくれよ、この子も、ほら!」
 うさぎの耳が、アンバーの揺れる髪と重なると、うさぎが増えたみたいだ。
「ほら、ユハナ! ユハナも! 共にスマホに向いてぴーす」
「え?僕も? うまく撮れるかな。がんばります」
 最後に……ううん。まだ撮るけれど、一緒に画面に向かって、ぴーす。

「可愛い思い出、たくさんつくれたな! あとで写真、楽しみにしてるぞ!」
「はい。写真……という紙に、できるのでしたか。あとで、あげますね」
 2人で微笑み合い、もう一枚、思い出を増やした。


「今回も不思議なお仕事だったなあ。うん。ボク達、不思議なお仕事して来たんだよ」
 傍にいる大トカゲさんに話し掛けた。
 眠りネズミを追いかけた。とっても可愛い子達。たくさん、もふもふして、お別れをした。
 集めた袋を怖い狼デュランから護った。
 デュランの話をすると、サビエラが少し憂いの表情を見せるけれど、遠くを見つめながら動物達に子守唄を歌う彼の横顔が、慈しむように生きるモノ達へ向けられている。
 それを見ると、あと数年、成長して大きくなったその時に自分が見つめるモノは何だろうと、少し心の片隅に浮かびかけては消えた。
 トカゲさんの宝石みたいな目に、自分の顔を映しこむ。
「一緒にねよっ」
 ころんと草花の上に、ひっくり返ったテンは、むにゃむにゃと夢の国へ。
 頭の下のトカゲさんの尻尾と髭に、こしょこしょ触る草葉も、春の香りがして、くすぐったくて心地いい。

 ふと、アンソニーくんが、ゆっくりと眼を覚まし始めた。


「アンソニーくんが起きたね」
 澪が、まだ覚醒しきらないアンソニーくんを覗き込む。
 でも、目が合うと、とても幸せそうなつぶらな瞳をしていた。
 少しいい夢を見たのかな。
「まだ眠っても大丈夫だよ。もう少し眠る?」
 うん。たくさん、ねむりたい。
 大きな耳が、ぱさっと動き、小さな尻尾もぴこっと動いた。

 澪はにっこり笑って、大樹の下で立ち上がった。
 わんこと一緒に遅まきながら、お弁当を食べる子。出来たてのクッションを抱えて研究所から帰って来たばかりの子。ハリネズミやトカゲと戯れている子。うさぎと一緒に写真を撮る子。黒い鴉と水玉模様の鴉と青い嘴の鴉をスケッチしている子。研究所の人達と何か雑用しているカカシの子。
 ぐるっと見渡し、声高らかに。
「皆、アンソニーくん以外にも眠い子はいる?」
  澪の足元に擦り寄るように、白い子ゾウ、アンソニーくんも立っていた。

 眠ろう。

 澪とアンソニーくんの歌声が始まった。

 芽吹く草花達に覆い被さる大樹が柔らかな風を緑葉ごと抱きしめ、木漏れ日を揺らす。
 木漏れ日は大樹の下に立った澪が喉を押さえる仕草も、鼻を高らかに上げるアンソニーくんにも落ちて踊る。
 その歌は、春を運ぶ風の色。
 遠い世界を巡り、ここへ辿り着いた青い風と出逢えた喜びの歌。
 開く翼が丘を吹き上げる風と共に震わせた。

 わぁっ! と、音を立てず歓声の吐息が上がる。


 そして、ライラは夢を見た――。
 風が頬を撫でる午睡。
 猟兵も動物も研究所の人達も、皆皆、手を繋いで輪になって、広い草花の絨毯の上に寝転がって眠っていた。互いに指を絡め、握り締めた手の温もりが、2人の歌で眠り始めたライラを起点に隣へ、その隣から次の隣へと順に伝わり、春の温もりを感じ、やがて皆の寝顔に微笑が浮かぶのだ。

 安らかな……とは、温もりだと思う。

 そんな、ゆるやかな睡(ね)むの夢を見た。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月08日
宿敵 『獣の侵略者『デュラン』』 を撃破!


挿絵イラスト