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新年は温泉と共に~今年は自然の中の隠れ湯で~

#シルバーレイン #リビングデッド化オブリビオン #運命の糸症候群

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 神秘の力持つ詠唱銀の雨が降る、『シルバーレイン』と呼ばれる世界。
 その世界の極東の島国『日本国』。かつて『|銀の雨が降る時代《シルバーレイン》』の戦いの数々の舞台となったその国に、今年もその季節がやってきた。
 一年の内で最も陽が短く、大陸からの冷たい寒気に列島上空が覆われる極寒の季節。
 そう、『冬』の季節である。
 文字に起こすと寒いだけで良いことが何も無いようにも思えるが、然に非ず。
 皆が待ち望む聖なる夜に年末年始。冬だからこそ出来る遊びに、舌を唸らせる旬の食材の数々にと。冬という季節だからこそ楽しめるモノが、溢れている季節でもあるのだ。
 ……そしてそんな冬を楽しむ者は、こんなところにも。

 ──もっきゅきゅっきゅっきゅ~♪ きゅぴぴ~♪

 ここは、日本国内某所。人の手の入らぬ山野である。
 雪に覆われ人気の無いそんな地に響くのは、何やら楽しげな鳴き声。
 白くてもふもふな毛玉の妖獣。皆さんご存知、『モーラット』の鳴き声だ。

 ──きゅっきゅきゅもっきゅ~♪ もきゅぴ~♪

 日本という国は、その国土の成り立ちから『温泉』という存在が身近な国である。わざわざ深く掘らずとも、自然に湧き出た源泉を利用し、温泉として愉しむ事が出来る程である。
 この地に湧き出た源泉も、そんな自然に湧き出たものの一つであるらしく。モーラット達はそんな湯を使って、湯治と洒落込んでいるようである。

 ──もっきゅきゅもきゅっもきゅ~♪ もきゅきゅきゅっぴっぴ~♪

 どこかで聞いたようなリズムの鳴き声は、実に楽しげ。寒い日の温泉は格別なのは、モーラット達にとってもそうであるらしい。
 ……だが、彼らのお楽しみの時間は長くは続かない。

 ──ガササッ……!

「「「もっきゅっ?」」」

 源泉の傍に茂る草むらから響く音。
 はて、なんだろう? 好奇心の強いモーラット達の視線が、一斉にその草むらに注がれれば……。

『『『モッキュー!』』』

 飛び出してきたのは、こちらも白くてふわふわの妖獣。モーラットに良く似た、『モーラビット』の群れだ。

「「「もっ、もきゅーっ!?」」」

 そんなモーラビットの姿に、モーラット達はたちまち大混乱。
 モーラット達は、知っているのだ。自分たちにとって、モーラビットはまさに天敵であると。
 なにせ、モーラビットの主食は……モーラットなのだから!

『モッ、モッ、ギュゥゥゥ……』

 慌てふためくモーラット達、そんな彼らに襲い掛かるモーラビットの群れ。
 始まってしまった惨劇を、モーラビットの群れの統率者が不敵に見渡すのだった。



「お集まり頂いて、ありがとうございます」

 2022年、最後の日。年の暮れにも関わらず、グリモアベースは多くの猟兵達が集まっていた。
 そんな猟兵達を迎え入れるのは、艶やかな銀の髪のグリモア猟兵だ。
 常の微笑みを浮かべるヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)の表情は、穏やかそのもの。
 どうやら今回の案件は、それほど厳しいものでは無いらしい。

「今回皆さんに赴いて頂きますのは、シルバーレイン世界。日本国内にあります、とある野山です」

 柔らかなヴィクトリアのその声も、猟兵達が感じた直感を裏付ける。
 今回猟兵達が赴くのは、人の手の入っていない野山。その奥地に湧き出た源泉に集う、野良モーラットの群れの保護が目的だ。
 だが、その言葉を聞いて猟兵達の頭に疑問が過ぎる。銀誓館学園を識る者なら、尚更だ。
 元来、野良モーラットは人に対して敵対的な存在では無い。もし発見されれば、念の為にと銀誓館学園が諸々の片手間に捕獲(という名の保護)に動く程度の存在である。
 そんなモーラットの為に、猟兵という存在を動かすとは。一体どういう事だろうか……?

「そうですね。本来であれば、今回は現地組織の案件です。ですが……オブリビオンが絡むとなれば、どうでしょう?」

 そんな猟兵達の疑問は、ヴィクトリアの続く言葉で霧散する。
 ヴィクトリアが曰く。源泉に集うモーラットの群れを狙う存在がいるらしい。
 その正体は、『モーラビット』。モーラットを主食とする、兎型妖獣だ。
 本来であれば、モーラビットはそれほど強敵という訳では無い。現地の能力者でも、容易く対処が出来る程度の存在である。
 だが、相手がオブリビオン化した存在となるとそうはいかない。『生命の埒外』と呼ばれる存在を相手にしては、能力者と言えども不利は免れないのだ。
 故に今回、銀誓館学園からの依頼で猟兵が動く事となったのだ、と。ヴィクトリアは、そう語る。

「今から皆さんを転送しますと……丁度モーラットの群れが襲われるところに介入出来ます」

 猟兵達が現地に降り立つタイミングは、モーラット達が異変に気付いた瞬間。モーラビットの群れが、草むらから飛び出てきたその瞬間だ。
 お湯の中で混乱するモーラット達を守り、モーラビットの群れを上手いこと捌く。そんな立ち回りが重要となるだろう。

「モーラビットを掃討し、モーラット達を守り切れれば任務は達成です」

 そうなれば、後はモーラット達を銀誓館学園の能力者に引き渡すだけである。
 ……が、しかしだ。それだけでは、些か味気無いと思えないだろうか。
 季節は、真冬。寒さの厳しい、今年最後の夜である。
 そんな状況で、目の前には暖かな源泉があるのだから……身も心も温めたいと思うのは、当然では無かろうか。

「……ふふっ、そうですね。もし余裕があれば、その温泉を愉しむのも良いかもしれません」

 そんな煩悩を感じ取ったか、ヴィクトリアがくすりと笑む。
 野山同様、温泉にも人の手は殆ど入っていない。まさに自然のままの環境であるが……だが逆に、その自然のままの趣が猟兵達の心身に癒やしを与えてくれる事になるかもしれない。
 必要そうな物は手配するので、ご安心をと。ヴィクトリアのその一言も聞けば、猟兵達の心も俄に浮き立つ事だろう。

「ですが、まずはお仕事を。起こり得る惨劇を、防ぐ為にも」

 皆様の御力を、お貸し下さい。
 いつもの通りの、丁寧な礼をして。ヴィクトリアは、猟兵達を戦地へと送り出すのだった。


月城祐一
 お疲れ様、2022年。こんにちは、2023年。
 どうも、月城祐一です。新たな年はホント、穏やかな一年であって欲しいものです……(三年連続の発言)

 さて、今年もこの季節の到来です。
 5回目となりました、新年恒例温泉シナリオをお届け致します。
 今年も舞台を変えまして、シルバーレイン世界から。
 隠れ湯を愉しむモーラット達を保護しつつ、温泉をお楽しみ下さい。
 以下、簡単な補足を。

 第一章は。集団戦。
 敵はOPでも触れている通り、兎型妖獣『モーラビット』の群れとなります。
 成功条件は、『モーラット』の群れの生存となります。

 OP文中でもある通り、モーラットの天敵。耳や牙は剃刀より鋭く、(モーラットに対してのみ)獰猛で容赦のない妖獣です。
 とは言え、その戦闘力は高くはありません。
 お楽しみの前の前座として、普段出来ないアレコレを試してみるのも良いかもしれません。

 戦場はOPの通り、自然の中の隠れ湯。人の手が入っていない、野山の中での戦いとなります。
 視界は通りづらく、足元も若干悪い環境ではあります。
 またモーラット達も、突然の襲撃に温泉の中で混乱している状態です。
 その辺りをどう立ち回るか、機転が試される戦場であると言えるでしょう。

 二章はボス戦。モーラビットの群れの統率者が相手となります。
 詳細は、章の進行時に公開となります。ご了承ください。

 一章・二章を無事に乗り越えられれば、三章はお楽しみの時間となります。
 こちらも章の進行時に詳細を公開しますので、お楽しみに。

 なお、作中時間は12月31日。大晦日の出来事となります。
 年が変わる、最後の数時間。こんな事をしてたんだと言うロールプレイにお役立て下さい。

 激動の一年を締め括る、最後の数時間。
 惨劇に見舞われたか弱き命を、猟兵達は守れるか。
 皆さんの熱く楽しいプレイング、お待ちしております!
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第1章 集団戦 『モーラビット』

POW   :    兎の牙がモーラットを喰らう
戦闘中に食べた【捕縛したモーラットの肉】の量と質に応じて【全身の細胞が活性化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    兎の耳は剃刀よりも鋭い
【モーラットの毛を一瞬で刈り取る鋭さ】を籠めた【兎の耳】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【毛髪】のみを攻撃する。
WIZ   :    モーラットとなって誘き寄せる
全身を【丸めモーラットそっくりの姿】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。

イラスト:イツクシ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 人気の無い山野。大自然の中の隠れ湯に響く、賑やかな鳴き声。
 だがその鳴き声は、唐突に止まる。近くの茂みから、物音が立ったからだ。

「「「もっきゅ?」」」

 いったい、何だろう?
 湯に浮かびながら、首(?)を傾げる毛玉──モーラットたち。だが元来好奇心の強いその生態からか、その目に浮かぶのはキラキラとした光だ。
 しかし、その光は……。

『『『モッキュー!』』』

 飛び出してきたその存在、天敵でもあるモーラビットの姿に、瞬く間に絶望に変わる。

「「「もっ、もきゅーっ!?」」」

 慌てふためき、混乱するモーラットたち。そんな彼らに向けて、捕食者達の牙が迫る。

 ……猟兵達が現地に降り立ったのは、まさにその瞬間だった。
 果たして猟兵達はモーラットの群れを守り、平和なひと時を過ごせるだろうか?
 
メディア・フィール
WIZ選択
他PCとの絡みOK
アドリブ・プレイング改変OK

【動物と話す】で突然の出来事に混乱するモーラットに、もきゅもきゅ語で分かりやすく誘導して逃がそうとします。また、モーラットに擬態したモーラビットに挑発的な言葉を投げかけて、その反応で区別しようとします。場合によっては【水泳】で温泉の中に入って泳ぎながら戦います。

「もきゅ、もきゅもきゅもきゅ!(こっちだ、ボクの陰に隠れて! 向こうの出口が安全だよ!)」
「もきゅもっきゅ、もきゅきゅきゅきゅ!(こら! 自分がマウント取れる相手にしか強気に出られないなんて情けないぞ! しかも、そんな擬態なんてして!)」
「マナー違反だけど仕方ない! 泳ぐよ!」


アルトリウス・セレスタイト
セフィリカ(f00633)と

モーラビットがかわいいかどうかは、判断しかねるが
大騒ぎにならん程度に手早く済ませようか

見えづらく足場悪い。のなら来てもらおうか
絢爛を起動
起点は目の前の空気
創造の原理で戦域の空間を支配
中空に「何故かどこからでも見え、とても気になって近くでじっと見つめたくなってしまう猫の映像」を生み出す
猫でなくても良いが、猫は人気者と聞くので

寄ってきたらポコポコとパンチ
いい具合に倒せるように適度に加速
モーラットに近いやつから順次

さっさと終えれば手間もないのだろうが
人数もいるし、程々に任せれば良いと思ったのと
多少遊び心というものを交えてみようかと


セフィリカ・ランブレイ
アルトリウス君と

モーラビットもかわいくない?

ほら、ああやって丸まってる姿なんてモーラットそっくり
どーれどれ、あざといなーお前

ってうおっ危な!近づいたら耳で切り付けてきた!

『油断大敵よ?』

うるさいなーシェル姉、わかってるよ
モーラビットなんて知らない!
可愛げのあるモーラットを愛でればいいんだもんね!

してアルトリウス君は何をやってらっしゃる?
ここら一体がねこ動画上映会になんだけど

あ、今のねこかわいい!
じゃなくて!
これでモーラビットも寄ってくる?
そりゃねこは可愛いけど……えらいふわふわしたプランだね君にしては

でも……そんな平和的なのも悪くないか
良いと思うよ
幸い興味は引けてるし、ポコポコとやっちゃおっか





 飛び出してきた白き捕食者──モーラビットたちが、その鋭い牙を剥き出しとする。その絶望的な光景に、モーラットたちは慌てふためき混乱するばかりだ。
 このまま自然界の摂理のままに、惨劇が繰り広げられてしまうのか。モーラットたちの心に絶望に支配されかけた、その瞬間だった。

「もっきゅきゅぴっ!」
『『『モギュッ!?』』』

 そこまでだ! と、言わんばかりのモラ語(モーラット語)? が響いたのは。
 何奴! と周囲を見渡すモーラビットたち。その視線に飛び込んできたのは、一人のニンゲンだった。

「もっ! ももきゅきゅ! もきゅー!」

 彼女の名は、メディア・フィール(人間の|姫《おうじ》武闘勇者・f37585)。話を聞きつけまず真っ先に飛び込んだ、猟兵である。
 メディアの口から飛び出るのは、事前に覚えてきたモラ語だ。今口をついたその言葉を意訳するのならば、「コレ以上の乱暴は許さないぞ!」と言う感じである。

「もきゅ、もきゅもきゅもきゅ!(こっちだ! ボクの陰に隠れて!)」

 温泉に足を踏み入れながら腕をばっと広げ、自身を盾にしろとメディアが叫ぶ。
 勇ましいその姿に、モーラットたちはまるで九死に一生を得たというかのように。ぱちゃぱちゃと必死にお湯を掻き分け温泉を泳ぎ、メディアの陰へと飛び込み密集する。

『『『モッ! モギュギュー!』』』

 そんなモーラットたちの必死な動きを嘲笑するかのように、モーラビットたちが何やら声を上げるが……。

「もきゅもっきゅ、もきゅきゅきゅきゅ!(こら! 自分がマウント取れる相手にしか強気に出られないなんて情けないぞ!)」

 そんな嘲笑も、メディアの一喝で掻き消える。その音声の強さは、一部のモーラビットが怖気突いて体を震わせながら小さく丸まってしまう程であった。
 プルプル震えて毛玉と化したその姿は、まるで『ボクは悪いモーラビットじゃないよ』と訴えかけているかのようである。

「ぷきゅ! もきゅきゅきゅー!(そんな擬態なんてして! 騙されないぞ!)」

 まぁそんな言い訳に騙される程、メディアは甘くはないのだけれど。
 更なる一喝で、プルプル震える毛玉が更に増える。

「おー。モーラビットも案外、かわいいじゃん」
「モーラビットがかわいいかどうかは、俺には判断しかねるが」
「えー? ほら、ああやって丸まってる姿なんてモーラットそっくりじゃん?」

 そんな様子を一歩引いたところで眺めているのは、セフィリカ・ランブレイ(鉄エルフの蒼鋼姫・f00633)とアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)だ。
 セフィリカの言う通り、モーラビットという妖獣も中々に愛嬌のある存在ではある。ぷるぷると震えて丸まっているその姿など、まさにモーラットそのものだ。

「どーれどれ? あざといなぁーお前ぇー……」

 萎縮したままのモーラビットを愛でようと、近寄るセフィリカ。その白魚のような細指が、白い毛玉に触れようとした……その瞬間だった。

『──モギュ!』
「ってうおっ危なっ!?」

 震えるばかりであったモーラビットが一転、刃物のように鋭いその耳を逆立てセフィリカへと襲いかかったのだ。
 どこか愛嬌のある見た目のモーラビットであるが、その性質は肉食獣。それも獲物を騙したりする様に、中々に陰湿なところもある妖獣である。
 幸い、今の騙し討ちはセフィリカに傷をつける事は無かったが……やはり、何事も見た目だけで判断してはいけないという事だろう。

『油断大敵よ』
「うるさいなーシェル姉、わかってるよぅ!」

 セフィリカの油断を嗜める|意思持つ魔剣《魔剣シェルファ》の指摘に言い返しながら、セフィリカの目が据わる。
 可愛かったから、愛でようとした。なのにこんな事をしてくれようとは。
 これは、許してはならぬ裏切り行為である!

「あーっ、もう! モーラビットなんて知らない! 可愛げのあるモーラットを愛でればいいんだもんね!」

 ぷんすかとご立腹なセフィリカ。そんな彼女の様子を横目に眺めながら、アルトリウスはふむと小さく考えを巡らす。
 彼女のお怒りを鎮めるには、モーラビットには出来るだけ早いところ退場して頂くべきだろう。
 だが問題は、その為の手段だ。出来るだけ手早く片付けるのは大事だが、その為にいつものような戦い方をしては……それこそ無用な大騒ぎとなってしまう可能性もある。
 ならば、ここは──。

「──煌めけ」

 意を決し、アルトリウスが体に宿る原理の力を巡らせる。
 高まる魔力と、高まる創造の原理。その力で、周囲の空気に干渉すれば。呼応するかのように周囲の空気が蠢き、煌めき……無数の映像を作り出す。
 突然現れたその映像に、震えていたモーラットもモーラビットも一瞬呆けて……モキュもっきゅと、その目が釘付けとなる。一部の者など、出来るだけ近くに寄ってみようと身動ぐ程である。

「あっ、今のねこかわいい……って、じゃなくて! アルトリウス君、何をやってらっしゃる?」

 セフィリカもまた、アルトリウスが創り出した映像に一瞬魅入られ……直後、我に返って問いかける。
 そう、アルトリウスが創り出したのは『猫』の映像だった。原理の力を用いて創り出した、『何故かどこからでも見え、とても気になって近くでじっと見つめたくなってしまう猫の映像』の数々を創り出したのだ。
 大事なのは、その映像を見た存在の注意力が注がれてしまうという事象である。
 もしモーラビットたちがこの映像に魅入られたとしよう。そうなれば、モーラビットたちはモーラットの事など忘れて映像の猫の事しか目に入らなくなるはずだ。
 事実、モーラビットたちの多くは映像に意識を完全に奪われてしまっているらしく。その目にモーラットを見ている個体は、ほぼ居ないようである。アルトリウスの策は、百点満点の結果を出したと言って良いだろう。

「君にしては、えらいふわふわしたプランだね?」
「猫は、人気者と聞いたからな」
「そりゃ、ねこはかわいいけど。んー……」

 アルトリウスのそのプランと示した結果を前に、セフィリカの表情はやや困惑げだが……だがどこかで、それを良しと思いもしていた。
 アルトリウスという男は、基本的には常に淡々と目的を最短経路で攻略していく男である。
 そんな彼が、こんなどこか呑気で遊び心溢れる平和的なプランを自ずと選択したというのだ。
 彼の中で、何かが芽生えているのか。
 アルトリウスに生じたそんな変化を、セフィリカは察したのだ。

「……まっ、いいか! それじゃ興味は惹けてるし、ポコポコとやっちゃおっか?」
「あぁ」

 そんな心境は一端横に置いてセフィリカが構えれば、アルトリウスも静かに頷き動き出す。
 意識を映像に奪われているモーラビットたちに、抵抗の術などありはしない。
 二人は適度に、そして確実に。モーラビットたちを手際よく始末していくのだった。

 ………

 ……

 …

「きゅ!? もきゅきゅー!(あっ、待って! そっち行っちゃダメだってー!)」

 なお、モーラットたちの一部も映像に心を奪われて近づこうとしていたりしたのだが……そこはメディアが温泉を泳ぐように必死になって押し留めたので大事には至らなかった事も、ここに書き添えておくとしよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミフェット・マザーグース
モーラットたちを助けなきゃ!
ティエル(f01244)と協力してがんばるぞー!

モーラビットがモーラットになって誘き寄せるなら、ミフェットもモーラットになって誘き寄せるよ
誘き寄せられて、襲いかかったら、無敵じゃなくなっちゃうよね!

モフモフかくれる毛玉の中、さがしているのはこっちのモフモフ?
モフモフきこえる毛玉の中、みつかったのはあなたのモフモフ
モフモフモフモフいれかわり
どっちがどっちか、わかりません!

誘き寄せられた敵がとびかかてきたら、変身解除でぴょんと脱出
ティエルとライオンくんにお任せするね!

※アドリブ・連携も歓迎


ティエル・ティエリエル
ミフェット(f09867)と一緒だよ♪
温泉で温まってもふもふぱわーを上げてるモーラットを助けにきたよ!
わるいもふもふ退治だー!

やきにくていしょくな世の中だけど、オブリビオンが関わってるなら容赦しないぞ☆
ミフェットがモーラットに擬態しておびき寄せたモーラビットを攻撃だ!
【ライオンライド】で呼び出したライオンくんに乗って、モーラビットをかじかじ。
ふふーん、ライオンくんの方が強者!がぶっと噛んでやっつけてまわるぞ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です





 野山に突然現れた猫動画に気を取られたモーラビットたちが、一体、また一体と始末されていく。
 だが、ぷるぷると震えるモーラビットの数は、まだ多い。
 ……と言うか、なんだか増えているような?

「よーしっ! わるいもふもふ退治だー!」

 そんな中、響いたのは甲高い少女の声。|小柄な金獅子《ライオンくん》に跨るフェアリー、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)の声だ。

「やきにくていしょくな世の中だけど、オブリビオンが関わってるなら容赦しないぞ☆」

 多分、『弱肉強食』と言いたかったのだろうが、それはそれとして。
 ティエルは、やる気満々だった。新年に向けて温泉でぬくぬく温まって『もふもふぱわー』を上げてるモーラットの群れを助けようと、意気軒昂だった。
 だが……。

「……むむぅー?」

 ティエルの目の前に転がっているのは、ぷるぷる震える白い毛玉ばかりであった。
 恐らくは、突然の乱入者に対して『悪いモーラビットじゃないよ』と主張しつつ、あわよくばモーラットを誘き寄せられないかというモーラビットたちの悪知恵なのだろうが……。

「これじゃ、どれがわるいもふもふなのかわからないよぉ……★」

 その悪知恵は思いの外ティエルに刺さったらしく、ライオンくんの上でティエルが困惑を浮かべる。
 温泉にモーラットたちが集まってる事を考えると、このもふもふの大半はモーラビットのはず。
 けれど、そのもふもふっぷりはモーラットのそれと見紛う程。その擬態の素晴らしさは、まさにユーベルコードの域である。
 簡単に見極める事は、難しい。万が一この中にモーラットが混じっていたら?
 確証を得られるまでは、手が出しづらい……!

(ティエル、困ってる……!)

 ぐにゅにゅー、と唸る仲良しの友達の姿に、ミフェット・マザーグース(造り物の歌声・f09867)が思案を巡らす。
 ティエルと協力して、モーラットたちを助けたい。けれど、敵の姿が判らないと手を出しづらい。
 いったい、どうしたらいいのだろう。

(そういえば……?)

 瞬間、ミフェットの頭に過ぎるのは事前のグリモア猟兵の言葉。
 相手は、モーラビット。モーラットを主食とする、兎型妖獣だ。
 そんな相手の目の前に、大好物のモーラットが出てきたなら……きっと、我慢出来なくなるはずだ!

(……ティエルのためにも、がんばる!)

 その為の手段が、ミフェットにはある。
 意を決し、すぅっと息を吸い込んで──。

 ──モフモフかくれる毛玉の中、さがしているのはこっちのモフモフ?
 ──モフモフきこえる毛玉の中、みつかったのはあなたのモフモフ
 ──モフモフモフモフいれかわり
 ──どっちがどっちか、わかりません!

 声も高らかに、歌い出す。
 ミフェットの歌は、ユーベルコードの粋に達した異能だ。
 今口ずさむその歌の名は、【|一人ぼっちの影あそびの歌《ヒトリボッチノカゲアソビノウタ》】。相手のユーベルコードを模倣し、相殺する為の歌である。
 そう、相手のユーベルコードを模倣するという事は……。

(うにゅにゅー……っ!)

 ミフェットの体も、モーラットへと擬態するという事である。
 歌いながら、うにょーんっという具合に変形していくミフェットの体。ブラックタールの黒い粘性の体が形を変えて……黒くてまるまるもふもふとした姿へと変わっていくではないか!

『モキュー……?』

 突如として現れたその姿に、毛玉化していたモーラビットの一体が興味を惹かれたのか顔を覗かせる。
 じーっと|ミフェット《モーラットのすがた》を、赤い瞳が見つめる。
 黒いけど、ふわふわもふもふのまんまる毛玉。その姿は、まさにモーラット。
 ……色が違うのは気になるけど、きっと珍しいモーラットなだけだ!

『モッギュー!!』

 毛玉化を解いて、牙を剥き出しモーラビットが飛び上がる。
 その目は|ミフェット《モーラットのすがた》にのみ注がれて、他への注意を払っている様子は無い。
 ……この場には、自身以外の肉食獣もいるというのに!

「ライオンくんっ! ごー☆」

 瞬間、響いたのはティエルの甲高い声。
 そしてその声に従う様に、がおー! と響く勇猛な響き。
 黄金の鬣が靡き、きらっと牙が輝いて──!

『モッ──!』

 飛び上がったモーラビットが、その胴に牙を突き立てられる!
 上がるモーラビットの悲鳴。がじがじもぐもぐと、ライオンくんの咀嚼音が響く。
 その光景は、まさに焼肉定食──じゃなく、弱肉強食の理を示す光景であった。

「ふふーん♪ ライオンくんの方が強者だね☆」

 鼻高々のドヤッとした顔で小さな胸を張るティエルだったが、その目に油断は無い。周囲をキョロキョロ見渡して、|ミフェット《モーラットのすがた》に襲い掛かろうとする毛玉が居ないか厳重警戒だ。
 ……尤も、ミフェットは襲われてもぴょいんと即座にその場を離脱出来るだろうから危険は無いだろうけど。

「さぁ、次の相手は誰だー!」

 響くティエルの声に呼応するように、がおー! とライオンくんの遠吠え。
 ティエルとミフェット、仲良しコンビのもふもふ防衛戦は、こうして順調なスタートを切り……この後も、良い形で推移していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

プリズム・アストランティア
モーラット達も温泉を楽しんだりするのね
そういえばあまり見なかった光景かしら?
モーラットがぷかぷか浮かぶ光景は魅力的かもしれないわ
そして来年は卯年だけにモーラビット達も活発なのかしら?

と、そんな事を考えている場合ではないわね
モーラット達と温泉を楽しむ為にも
犠牲は出さずに守り抜くわ

温泉では静かにして欲しいわねと
銀の雨を広範囲に降らせるわね
モーラビット達には万色の稲妻を降らせて
大人しくしてもらうわ
襲われて傷ついたり毛を刈られてしまった
モーラットがいるなら優しい雨で回復するわ
モーラビットがモーラットに擬態されても
温泉のお湯をかけて白い毛を濡らしてしまえば
元は違う存在なのだから区別も付けやすいかしら





(モーラット達も、温泉を楽しんだりするのね)

 時は少し遡り、猟兵達が現地に降り立った直後の事である。
 突然の天敵の襲撃にお湯に浮かびながらパニックに陥るモーラットの群れの様子を、プリズム・アストランティア(万色の光・f35662)は興味深く見守っていた。
 プリズムは、『|銀の雨が降る時代《シルバーレイン》』の生き証人である。月に幽閉されたルナエンプレスであり、紆余曲折を経て地球に降り立った後に銀誓館学園に加わり激動の時代を生き抜いた能力者の一人である。
 そんなプリズムからしても、眼の前のモーラット達の様子は中々見られない光景であり……そして何より、お湯にぷかぷか浮かぶその様子は、実に可愛らしく魅力的に思えていた。

(そして、モーラビット)

 他方、視線を向ければ。そちらに群れているのは、兎型妖獣モーラビットの群れ。
 数の方は、中々に多い。その目も随分ギラついて、温泉に浮かぶモーラットの群れへと向けられているようだ。
 ……そういえば、来年は十二支で言うところの卯年。つまりは兎の年である。
 まさかそんな年だから、このモーラビット達は活発に動いているのだろうか?

「……と、そんな事を考えている場合ではないわね」

 頭に浮かびかけた益体もない考えを、頭を振って掻き消す。
 そうだ。今考えるべきは、眼の前で恐怖に震えるモーラット達の保護。そして危険なモーラビット達の駆除である。
 全てを終えて、モーラット達と温泉を愉しむ為にも。ここは犠牲を出さず、守りきらねばならないのだ。

「もきゅー……きゅっ!?」
『モッギュ!』

 ちょうど今、先んじて動いた猟兵が創り出した映像に魅入られてしまったモーラビットと、保護する猟兵の腕を潜り抜けて脱走してきたのであろうモーラットが、目の前で鉢合わせしてしまった場面がプリズムの目に飛び込んでくる。
 動くのであれば、まさに今!

「温泉では、静かにして欲しいわね」

 ボヤくように呟いて、その身に宿る魔力を解き放てば……世界がその力に感応し、奇跡を起こす。
 しとしとと降り始める細雨。月の輝きを受けて銀に輝くその雨が、戦場に降り注げば──。

 ──カッ!!

『モギュッ!?!?』

 その雨の中で迸る万色の稲妻が、今まさにモーラットに齧りついたモーラビットの身体を穿つ!
 悲鳴を上げ、飛び上がるモーラビット。そこに追撃と言わんばかりに二撃、三撃と稲妻が襲い掛かれば……モーラビットはたちまち全身をこんがり焼かれ、戦闘不能となるだろう。

「やれやれ……さて」

 そんな焼き兎には目もくれず。プリズムが抱き上げたのは齧りつかれたモーラットだ。
 めそめそぷきゅぷきゅと泣くモーラットは、流血していた。毛を毟られ、肌を大きく食い破られてしまっていた。
 ほんの一瞬、噛みつかれただけでこれだけの怪我を負うとは。モーラビットの牙の鋭さも、中々馬鹿には出来ないようだ。
 だが、しかしだ。そんな怪我を診るプリズムの目に、動揺は無い。

「……もう、大丈夫よ」

 優しくモーラットへ語りかけながら、空いている手を掲げる。
 降り注ぐ細雨をその掌に集めて、溜まった水でモーラットの傷口をそっと拭えば……じんわりとした暖かな光が生じ、その傷が塞がっていくではないか!

「はい。あまり仲間から離れてしまってはいけないわよ?」

 そうして傷が塞がったモーラットをそっと離せば、モーラットは礼を言うように「ぷきゅ!」と一声鳴いて仲間達のもとへと舞い戻る。
 ぷきゅもきゅと響くモーラットたちの鳴き声。これで恐らくは、モーラットたちが例の動画に気を引かれる事は無くなるだろう。
 どこか賑やかなモーラットたちのその様子に、プリズムは自然とその口の端を綻ばせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八坂・詩織
白夜さん(f37728)と。

まあ、半年前からどれだけ強くなったか確かめるにはちょうどいい相手じゃないですか?
|起動《イグニッション》!
髪を解き、瞳は青く変化し白い着物を纏う。

指定UC発動。今夜12月31日の月齢は7.7、月が沈むのは日付が変わった後ですから、この技を時間制限なしで使えるはずです。
月光の刃で【部位破壊】、モーラビットの耳を【切断】してしまいましょう。
月光の魔力での能力倍増による【気配感知】【暗視】で状況を確認、モーラット達を【護衛】するように立ち回ります。
大丈夫、私達が守ります。
相手を落ち着かせるにはまず自分がうんと落ち着くこと、【落ち着き】を見せてモーラット達を安心させます。


鳥羽・白夜
八坂(f37720)と。
学生時代から付き合いのある後輩で、猟兵の初仕事も一緒の腐れ縁。

思えば猟兵になって最初に戦ったのもモーラビットだったな、俺こいつらと戦うのもう何度目だっけ…
俺の猟兵の仕事納めの相手もこいつらなのか…
|起動《イグニッション》!
赤い刃の大鎌を手に。

指定UC発動、夜で視界は悪いけどその分UCの威力3倍を狙えるかもな。
八坂が耳を切断するのに合わせ傷口から【吸血】し、【生命力吸収】。
【目立たない】服装で【闇に紛れる】ことで攻撃を躱し自身の毛髪も守る。

足元の悪さは【足場習熟】でカバー、撃ち漏らしがあれば大鎌で【なぎ払い】、モーラビットを温泉に近づけさせないように立ち回り【拠点防御】。





「はー……」

 鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)の口から、疲れたような溜息が零れ出る。
 白夜は、かつて銀誓館学園に所属する能力者であった。
 だがある日を境にその能力を捨てた。次世代にその力を継承し、第一線を退き……かつての戦いの記憶も失い、ごく平凡な生活を送っていた男である。

「……はぁぁぁ」

 だというのに、何の因果か。こうして猟兵として覚醒し、再び戦いの日々にその身を置くことになるとは。
 世界を救うとか、柄じゃない。あくまで平凡に暮らしていたいという白夜としてみれば、年の暮れまで休み無く引っ張り出される現実には溜息が零れ出るのも致し方なしである。

「白夜さん、どうかされました?」

 そんな白夜の様子に、隣に立つ女が首を傾げる。
 名を、八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)。その肩書の通り、銀誓館学園で理科教師として務める教育者である。
 詩織もまた、学生時代は銀誓館学園に通う能力者であった。白夜とは先輩後輩の間柄で、猟兵として|覚醒し《めざめ》てからも度々共闘する腐れ縁と言った関係である。

「いや、思えば猟兵になって最初に戦ったのも、モーラビットだったな、って……」

 そんな旧知の間柄である為か、白夜の口からは堪える事無く愚痴が溢れる。
 白夜の言う通り、彼が初めて猟兵として相対したオブリビオンはモーラビットであった。そしてそこで因縁が生まれたのか。白夜はこの一年で以後幾度もモーラビットと巡り合い、交戦を重ねてきたのだ。
 そんな存在と同種の存在と、仕事納めとなる年の瀬の日にもこうして遣り合うことになろうとは。本当に、因縁が生まれてるんじゃ無かろうか。

「ふふ。まあ、半年前からどれだけ強くなったか確かめるには、ちょうどいい相手じゃ無いですか?」
「そんなもんかな……」

 そんな白夜のボヤキに答える詩織も、その因縁を感じたのかどこか苦笑気味。
 だが詩織のその言葉に一理は感じたのか、不承不承といった具合に白夜が頷けば……懐から取り出したのは、一枚のカードだ。
 それは、イグニッションカードと呼ばれるもの。銀誓館学園の能力者達が持つ、己の装備を収納する特殊なカードである。
 詩織もまた、カードを取り出したのを確かめる。
 それじゃあ、そろそろ始めるとしようか。

「「|起動!《イグニッション》」」

 響き重なる二人の声。瞬間、白夜と詩織の身体が光に包まれて、その装いを変える。
 即ち、それぞれの戦闘用の装いに、だ。

「先に動きます!」

 先んじて動いたのは、髪を下ろして白い着物を纏う詩織だ。
 狙うのは、他の猟兵が創り出した映像の効力が少しずつ抜け出した個体。モーラットたちへと意識を向け始めているモーラビットだ。
 着物の裾をはためかせ、モーラビットの視線へと入り込み──。

「やぁっ!」

 気合、一声。身体に巡る魔力を、刃と変えて放出する。
 詩織の身体に巡るその力は、月光の魔力だ。
 12月31日、大晦日。本日の月齢は、7.7日。月が沈むのは、日付が変わった後になる。
 つまり日が変わる前の今の時間ならば、月はまだ天にあり……その力を、時間制限無く振るう事が出来るはずだ。

『モッ──ギッ!?』

 そんな詩織の計算は、見事に嵌まる。
 放たれた月光の刃はその鋭さを鈍らせる事無く一直線に翔び、モーラビットの耳を切断してみせたのだ。
 モーラビットの耳は、生半可な刃など物ともしない程に鋭い武器である。そんな耳を、こうも容易く切断するとは……詩織の放つ刃の冴えの、何と見事な事か。

「悪いが、その血──」

 その刃の冴えの前に、耳を絶たれたモーラビットの悲鳴と鮮血が上がる……より早く、動いたのは白夜だ。
 薄暗い野山に紛れる様な目立たぬ服装に赤い刃の大鎌を構えるその姿は、|彼の力の本質《貴種ヴァンパイア》の力を示す出で立ちだ。

「──頂かせて貰おうか」

 白夜が構える大鎌を振るう。瞬間、虚空を切り裂き生まれ出るのは無数の吸血コウモリだ。
 吸血鬼とは、闇夜の貴族。その力は、昏き夜闇の中でこそ本領を発揮できるというもの。
 その事実を示すかのように、創り出された眷属達は一目散に吹き出た鮮血へと群がり、吸い上げ──モーラビットのその生命を、忽ちの内に貪り奪う。

「ざっと、こんなところか」

 崩れ落ちるモーラビット。その姿に、ほうっと息を吐いて白夜が次なる敵を睨めば。

「えぇ──大丈夫。貴方たちは、私達が守ります」

 その横に並び立つ詩織が囁く様に、モーラット達へと言葉を掛ける。
 決して力強い言葉では無い。だが静かさの中に宿る決意とその振る舞いに、モーラットたちはキラキラとした視線を向けてもきゅぷきゅと歓声をあげるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

飛・曉虎
●POW

ムハハハ!
弱肉強食とは自然の摂理なり!!
ウサギがネズミを喰らうなど奇妙奇天烈摩訶不思議な話であるが、絹の道を越えた先の国には騎士の首を撥ねるウサギが居ると聞くのである
とあれば、あれが噂に聞く|妄把屡羽似威《ぼうぱるばにい》なる妖獣の類いに相違ない!

それはともかく、自然界においての食物連鎖頂点に君臨する白虎の神将たる我輩が現れた事で毛玉らが萎縮したようなのであるが…どれもこれも毛玉ばかりで、どれがモーラットであるか?
鳴き声が同じで見分けが付かないのである

む、毛玉の一部が我輩の背後へと回って来ているな?
ムハハ!そうか、お主らがモーラットか
よろしい、我輩の裂鋼爪で天敵らを喰らってみせようぞ!





 飛・曉虎(大力無双の暴れん坊神将・f36077)は、強者である。
 封神武侠界で『神将』と呼ばれる戦闘生物であり、有り余る力を以て辺群を我が物顔で暴れまわった野生児である。
 そんな曉虎にとって、モーラビット程度など何するものぞと考えていた。
 確かに、ウサギがネズミを喰らうなどとは奇妙奇天烈摩訶不思議な話ではある。だが遙か西方、絹の道を超えた先の地には騎士の首すら刎ねるという|妄把屡羽似威《ぼうばるばにい》なる妖獣の類がいるとも聞く。きっとこの妖獣は、その手合なのであろう。
 それでも曉虎は、モーラビット程度など何するものぞと考えていた。
 それは、彼女が絶対的な強者であるからだ。神将であり、何より白虎……自然界の最上位の肉食動物の相を持つ自身が、ウサギ如きに負けるはずが無いという強烈な自負を持っていたからだ。
 だが、しかし。

「む、むむむぅ……?」

 今この瞬間、曉虎の表情からは普段の傲岸不遜ぶりは鳴りを潜め、困惑一色に染まっていた。
 それというのも……。

「どれもこれも毛玉ばかりで、どれがモーラットであるか……?」

 目の前に広がる光景が、その原因である。
 モーラビットの討伐戦は当然の事だが、猟兵の側に傾いていた。そんな状況を肌で感じたか、モーラビットたちの多くは萎縮してしまい、ぷるぷる震えて毛玉と化してしまっていた。
 そんなところに、野生の獣そのものな暴れん坊の空気を纏う曉虎のエントリーである。モーラビットたちがこうなるのも、宜なるかなと言ったところである。

「むむむむむぅぅぅ……!」

 唸る曉虎。
 目を皿にして縮こまる毛玉を眺めるが、違いの程は判らない。
 耳を傾け鳴き声を聞き分けようとしてみるが、「モッキュ……」「ぷきゅー」「もきゅ」「キュー」といった具合でどれも同じに思えてならない。
 鼻を聞かせて嗅ぎ分けてみるが、例の温泉のせいかそれもどうにも難しい。
 一体これは、どうしたものか──。

(む? 温泉?)

 瞬間、曉虎の頭に天啓が閃く。
 事前の説明で、グリモア猟兵は確かこう言っていた。今回の任務は、温泉を楽しむモーラットたちの救出だ、と。
 くるり、と。件の温泉に向けて視線を向ける。そこには猟兵達の活躍をきらきらとした目で見つめるモーラットたちの姿が。
 他方、視線を変えてみれば……ビクッと震えるなど、あからさまにこちらに怯える様子の毛玉の数々。
 その様子に、曉虎は確信を得る。

「──ムハハッ! そうか、お主らがモーラビットか!」

 そして確信を得れば、後は行動を起こすのみ。
 呵呵と哄笑を上げながら振るうは、その腕に備わる鉄をも引き裂く神将の鉤爪。毎日手入れを欠かさぬ、自慢の剛爪である。
 その一撃が、丸まる毛玉を捉えて容易く引き裂き、モーラビットが悲鳴を上げる暇すら与えず血霞へと変える!

「ムハハハ! 弱肉強食とは自然の摂理なりぃ!!」

 再び響く、呵々大笑。
 自然の摂理とは、即ち弱肉強食。強い者が弱い者を喰らう、ただそれだけが真理である。
 その食物連鎖の頂点に座す大型肉食動物──白虎の相を持つ神将のその表情は、その摂理を表すかのように獰猛さに満ちていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『モーラビット・スーパーキング』

POW   :    モーラット・チェンジ
【モーラット】に変身する。変身後の強さは自身の持つ【モーラット印の缶詰】に比例し、[モーラット印の缶詰]が損なわれると急速に弱体化する。
SPD   :    モーラット・エアリアル
レベル個の【モーラット】を召喚する。戦闘力は無いが極めて柔らかく、飛翔・クッション・ジャンプ台に使用できる。
WIZ   :    モーラビット・フィーバー
レベルm半径内を【集まってきたモーラビットの溜まり場】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【モーラットに与えるダメージ】が強化され、【モーラット以外に与えるダメージ】が弱体化される。

イラスト:イツクシ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠オヴィリア・リンフォースです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 大晦日に繰り広げられる、血の惨劇。
 その結末は、猟兵達の介入により見事に防がれた。犠牲となるはずだったモーラットたちは欠ける事無く、救われたのだ。

「「「ぷきゅー!」」」「「「もっきゅーっ!」」」

 猟兵達の雄姿に目を輝かせ、やんややんやと騒ぎ立てるモーラットたち。
 反面、襲撃者の側のモーラビットたちの側の士気は地を這いずるかの如くだ。
 だが──。

『モーッ、モッギュッギュ……!』

 次の瞬間、それぞれの反応は反転する。
 響いたのは、可愛らしくもどこか野太く聞こえる鳴き声だ。
 そしてその鳴き声と同時に……。

『モー、ギュ!』

 茂みから、一匹の獣が飛び出てきた。
 それは、豪奢な王冠とマントを身に付けた一匹のモーラビットであった。
 だがそのモーラビットが特別なのは、装飾品だけでは無い。身の丈は並のモーラビットより一回りは大きく、毛並みのふわふわさも実に見事であった。

『モーギュッ! ビッギューギュ……キュ!』

 沈み込む同族を叱咤するようにそのモーラビットが吠え立てれば、意気消沈していたモーラビット達も戦意を取り戻し、モーラットの側は逆に動揺を覚える事だろう。
 恐らくはこのモーラビットこそが、この群れの頂点。象徴であり纏め役である、『王様』なのであろう。
 ……つまりはこのモーラビットを討つことが出来れば、この群れは自然と瓦解するはずだ。

『モー、キューッ!!』

 武器を構える猟兵達に相対し、掛かってこいと言わんばかりに吠えるモーラビット。
 隠れ湯のモーラット達を巡る戦いは、新たな段階へと突入しようとしていた。

 ====================

●第ニ章、補足

 第ニ章はボス戦。
 敵は、『モーラビット・スーパーキング』。
 モーラビットの群れのリーダーが相手となります。

 基本的には、モーラビットに準拠した生態です。
 ですが群れの中では中々立派な体格で、またモーラットに関する能力で群れの信望は厚いようです。
 ……まぁそれが、猟兵との戦いでどう役立つかはまぁ、うん。

 というわけで、この章も難易度はゆるゆるです。
 難しい事はあまり考えず、お気軽にお挑み下さい。

 戦場は一章同様、野山の中の隠れ湯近辺。
 視界や足場に関しては特に変わりはありません。
 状況次第では、モーラット達からの応援が貰えるかも?

 遂に現れた、モーラビットの群れの主。
 モーラットたちが見守る中、戦いは新たな段階へ。
 皆様の熱いプレイング、お待ちしております!

 ====================
プリズム・アストランティア
連携、アドリブ可

あれがモーラビット達の王様ね
モーラット達も動揺しているようだし間違いないかしら
見た目も可愛いし一緒に温泉もいいかなって思ったけれど
モーラット達も怖がるし年が明けるまでには追い払うわ

勢いづかれてしまうと犠牲が出てしまいかねないわね
丁度、月も見えてきた頃だし月光星夜で王様だけでなく
モーラビット達の生命力と魔力を奪い取るわ
温泉から見える月も綺麗に輝いているわ
奪い取った力はモーラット達に分け与えて
彼等を勇気づけさせてあげたいわ
でもはしゃぎすぎて転ばないようにね
王様の動きには常に注意にしてモーラットに変身して
紛れ込むなんてことがないようにするわ

「見た目に惑わされてはいけないわね」


メディア・フィール
POW選択
他PCとの絡みOK
プレイング改変・アドリブOK

ついに姿を現したモーラビットの王との対決で、思わぬ苦戦をしてしまうかもしれません。傍目にはもふもふと戯れているようにしか見えませんが。

「あっ、こらっ! 逃げるな! けっこう素早いぞ、こいつ!」
「えい、やあ、とお! く、外見なんかに惑わされないはずなのに、躊躇しているのか、ボクは!」
「このこのこのこの! う、タフネスも相当ある! 意外に手ごわいっ!」
「うーん、油断したつもりはなかったけど、思わぬ苦戦だった…これもボクの未熟さゆえ、かな。もっともっと精進しないと」





「えいっ! やぁ、とう──ッ!!」

 闇夜を切り裂く少女の叫び。メディアが拳を振るう度に放たれる裂帛の気合だ。
 メディアは、己の拳を武器として戦う猟兵だ。弛まぬ鍛錬を積み上げ鍛え上げたその拳で、ここまでの戦いの日々を駆け抜けてきた経験を持つ。
 必然、振るう拳は実に鋭い。
 鋭い、のだが……。

『モッキュー!!』

 だがその拳も、当たらなければ意味が無い。
 戦いが始まってから数分。メディアは幾度もその拳を振るっていたが、未だにモーラビット・スーパーキングのその華麗な身の熟しを捉える事が出来ないでいた。

「あっ! こら、逃げるなぁっ!」

 今もまた振るった拳が躱されて、メディアが悔しげに地団駄を踏む。
 相手は、ウサギの特徴を色濃く持つ妖獣だ。その見た目はまんまるふわふわで、実に愛くるしい外見である。そんな相手であるから、力を振るう事に躊躇も覚える者もいるだろう。
 だが、メディアは違う。
 相手はオブリビオンで、自分は猟兵。蘇る過去を倒し、今と未来を護る者だ。
 その使命を果たす為にも、今は心を鬼とする。そんな覚悟は、とうの昔に出来ている。

(外見なんかに、惑わされないはずなのに!)

 だというのに、この体たらくは何だ。
 もしや、無意識の内に躊躇してしまっているというのだろうか。
 だとすれば、何と甘いことだろうか。まだまだ精進が、足りていない──!

「──ッ、このこのこのこのぉッ!!」

 胸に去来した虚無感を振り払う様に、我武者羅に拳を振るう。
 だが当然そんな拳では、敵を捉える事など出来るはずもない。

『モキュ、ピー!』

 鮮やかに拳を躱して見せて、自慢気に胸を張るモーラビット。
 その様子に疲労の色は毛筋も見えず、メディアに一層の焦燥感を植え付ける事となる……。

 ………

 ……

 …

(あれが、モーラビット達の王様ね?)

 そんなメディアとモーラビットが戯れる様子(そう。本人達は至って真面目なのだが、ユーベルコードを介在していないせいで外から見ると少女がもふもふと戯れている様にしか見えなかったのだ!)を眺めながら、口元に手をやりながらプリズムは思いを巡らせていた。
 アレが登場して以来、萎縮していたモーラビット達の戦意は復活し、逆にモーラット達に動揺が見られていた。その辺りの事を考えると、アレが群れのリーダー……『王様』であることに、間違いは無いだろう。

(他のモーラビット達以上にもふもふで、可愛らしいし……)

 そんな『王様』の姿に、プリズムの頭に浮かぶのはちょっとした煩悩。愛くるしいウサギ妖獣と一緒に温泉を楽しむという、実にファンシーな空想だ。
 モーラットとモーラビット。もふもふ妖獣達に囲まれて一緒に過ごす温泉のひと時。絶対に心身共に癒されること間違いなしの光景である。

(けれど、無理ね)

 だがそんな空想は、所詮は夢想。叶うことの無い事だとプリズムは切り捨てる。
 なにせ、モーラットとモーラビットは捕食関係にある間柄。共に並び立つ事など、出来はしないのだ。
 もし、モーラビット達をモーラット達の様に『使役ゴースト』とすることが出来れば、その夢想も叶うのかもしれないが……それが叶うのは、きっと今では無いだろう。
 だから、この妄想は今だけの事なのだ。

「……ふぅ」

 気を切り替える様に一つ息を吐き、精神を整える。
 視線の先の『死闘』(プリズム視点ではじゃれ合いだが……)は、どうやらモーラビットが優位。肩で息をし始めたメディアに対し、『王様』はまだまだ元気いっぱいな様子である。

『『『モーギュ! モーギュ!』』』
「「「きゅー……」」」

 そんな我らが『王様』の健闘に、意気上がるモーラビット達。対するモーラット陣営は、未来に影が差し始めた事を感じて意気消沈と言った空気。
 ……このまま相手を勢い付かせてしまうのは、よろしくない。
 モーラット達を安心させる為にも、ここらで手を打つべきだろう。

「──丁度、月も見えてきた頃ね」

 そっと掌を天へと翳せば、応えるのは月の輝き。
 自然の隠れ湯を照らす月。その月光が、静かにその場を輝かせれば──。

『『『モギュッ!? キュ~』』』

 戦意絶頂と言った様子だったモーラビット達の様子が、変わる。まるで騒ぎ疲れ果てた様に、その場にへたり込んだのだ。
 しかしこれは、一体……?

「月と星達は、私達の味方よ」

 その答えは、囁く様なプリズムの言葉が示すだろう。
 【|月光星夜《ルナライトスターライト》】、プリズムが振るう、|異能《ユーベルコード》の一つである。
 その効果は、『月や星の光に触れた対象の生命力や魔力を奪う』というもの。その能力を以て、プリズムはモーラビット達の勢いを一瞬で削いで見せたのだ。
 だがこの異能の効果は、それだけでは無い。

「「「きゅっ? ぷきゅーーー!!!」」」

 変化が生じたのは、モーラットの側も。先程までの沈み具合から打って変わって、一気に元気爆発と言った様子である。
 コレも、プリズムの異能の効果。月光星夜は、力を奪うだけでなく与える事も出来るのだ。
 元気を奪い与える事が出来れば、モーラット達への危険を遠ざける事が出来るはず。
 そう考えたプリズムのその行動は、モーラビット達がへたり込んだ事で目的を達成したと言って良いだろう。
 ……とは言え今度はモーラット達がちょっと調子づきそうだったので、一つ釘は刺しておかねばならないだろうが。

「あまりはしゃぎすぎて、転ばないようにね?」

 穏やかなその言葉を受ければ、はしゃいでいたモーラット達も僅かに落ち着きを取り戻す。だがその目は、先程以上に煌々と輝くことだろう。
 そんな彼らの視線を感じて苦笑を浮かべるプリズムの視線の先では……突然の事態に混乱したのか、モーラット化してやり過ごそうとした『王様』を遂にメディアの拳が捉えた瞬間が映るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キョウジ・コケーシ
モーラットの姿になってしまうなんて……でも何故その姿に?
そうですね。同じ姿なら狩りやすいというのでしょう。
でも本当にそれだけですか?
特定の物だけを食べる必要はない筈の貴方達がモーラットを食べるのも実は同じ理由があるのではないですか?
本当の心はモーラットに近づきたい、モーラットになりたい……そんな想いではないのですか?
大丈夫、貴方の想いを否定するものはいません。一緒に楽しく遊んで時を忘れることも出来るでしょう。
ほら、一緒に彼らの元に行きましょう。(慈愛に満ちた表情でキングに手を差し伸べ抱え上げて)ありがとう。貴方の新たな旅立ちに出会わせてくれあっ、それは押したらダメ(慈愛に満ちた表情のまま自爆)





『モッギュゥ──ッ!?』

 殴り飛ばされて、『王様』がぽいーんと弾き飛ばされる。
 やったー! と響く少女の喝采。ここまで散々手こずっていたのだから、喜びもひとしおと言ったところなのだろう。
 だが……。

『──ギッ! モキュウ!』

 モーラット化して全身もふもふと化していた為か、その拳の威力は大いに減じられていたらしい。『王様』に大きなダメージが残っているようには、見受けられなかった。

『モー、モッキュッキュ……!』

 その程度かと嘲笑いたいのか。胸を張る様に、『王様』が鳴く。
 とは言え、猟兵を相手に積極的に攻勢に出る勇気は無いのか。その全身は今もまだ、モーラット化したままである。
 柔らかな毛玉が、ふわふわと揺れる。

「おお。やはり、モーラットの姿に……!」

 そんな『王様』の様子に、キョウジ・コケーシ(コケーシの後継者・f30177)の口から溢れたのは嘆息に似た息だ。
 キョウジには、疑問があった。モーラビットは、何故モーラットの姿を模そうとしているのか、と。
 成る程、同じ姿をして見せればモーラット達の警戒を解いて懐に飛び込み易くなるだろう。そうなれば、狩りの成功は約束されたも同然だ。

 ──でも、本当にそれだけですか?

 しかし、キョウジは更に一歩深く踏み込んで考える。モーラビット達がモーラットの姿を真似るのは、狩りの利便性だけを考えてのものでは無いはずだ、と。
 モーラビットの主食は、モーラットだ。だがそれは、『モーラビットたちはモーラットのみを食らっている』という事象を示す事実では無い。種としての生存性を高める為に、他の食べ物にも適応して然るべきだ。
 つまり彼らは本来、特定の物だけを食べる必要など無いはずなのだ。

 ──で、あるならば。彼らがモーラットを求める理由は、ひとつ。

 瞬間、キョウジの頭に天啓が閃く。モーラビット達が、モーラットの肉を求めるその理由が。
 彼らは、モーラビット達は。きっとモーラットに、近づきたいのだ。モーラットに近づき、そうなりたい……そんな想いを、抱いているのだ。
 嗚呼、それならば彼らがモーラットを執拗に狙うその理由も頷ける。
 肉を喰らい、血を飲み、その遺伝子を全身に取り込む事で、モーラットへとその身を近づける。
 彼らがモーラットを狙う理由は、きっとそうなのだ。

 ──ならば、私が教えてやらねば。

 その真理に辿り着き、キョウジは想う。
 相手を喰らい、その身を近づける。それも一つの、同化である。それは間違いでは無い。
 だが、そんな事をしなくとも。彼らに近づく事は、出来るのだ。
 そう。愛を以て距離を詰め、時を忘れる程に一緒に遊ぶ事さえ出来れば……仲間となることは能うのだ、と。

「──大丈夫。貴方の想いを否定するものはいませんよ」

 全身の毛玉をふわふわと揺する『王様』へと、キョウジが無造作に歩み寄る。
 その表情に浮かぶのは、慈愛に満ちた|穏やかな笑み《アルカイックスマイル》。
 その優しい笑みを浮かべたまま、まんまるな毛玉を抱き上げる。

「ほら、一緒に彼らの元にいきましょう」

 そうしてそのまま、踵を返し──共に一路、モーラットたちの群れの下へ。
 キョウジの心は、満たされていた。一つの命の新たな旅立ちに出会う事が出来た感動に、打ち震えていた。
 故にその口から零れ出るのは、「ありがとう」の一言だ。

『モッギュ! ギュッ、ギュウ!』
「あっ。それは押したらダm──」

 そんな感動的な光景であったが、抱き抱えられた『王様』はと言えば、何故だか必死の抵抗を見せていた。
 だがモーラット状態(気魄値4)であるから、その抵抗は微々たるもの。精々が、そのお手々に握られたモラ印の缶詰を使ったぺちぺちかんかんとした殴打攻撃が関の山であった。
 しかし、そのぺちぺち攻撃がとんでもない結果を生み出した。
 『王様』の手が偶然叩いたのは、キョウジの身体に設置された【自爆装置】。その起動ボタンだったのだ。

 ──カッ!!!!!

 キョウジが嗜める言葉を言い終えるよりも早く。生じたのは閃く白光。
 そして轟く爆音と疾風が吹き抜けて──そこに残るのは、チリチリ毛玉と化した『王様』のみだ。
 一体何が起きたのかと、目を白黒させる『王様』。
 そんな彼を他所に、戦いは新たな段階へと進もうとしていた。

 なお、キョウジは色々と難しい事を考えてはいたが、その全てはあくまでもキョウジの妄想であり、モーラビットたちが本当にそんな事を考えているのかどうかは定かでは無いという事を、ここに記しておく物である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
セフィリカ(f00633)と共に

相変わらず緊張感のない見てくれだが
オブリビオンならば討つまでだな
セフィリカの言う通りかなり危険物だろう

絢爛を起動
起点は目の前の空気
秩序の原理を以て戦域の空間を支配
一つ法則を敷く

「オブリビオンは急にとても戦意が衰え、すぐに瞼が落ちそうなほど眠くなる」

寝ていれば脅威にはなり得まい
モーラットも安全
何かしらやることがあっても安心して実行できる

あとはぽこぽこ叩いていく
静かに終える方が問題がないだろう


セフィリカ・ランブレイ
アルトリウス君と

これがモーラビットの王…!
登場で士気が上がる辺りリーダーとしちゃなかなかやるんだろうね

可愛いし

…というかさ
擬態や騙し討ちをする知能に、
缶詰を作れるほどの文化……(中身はやっぱり…?)
種族特攻を成立させる特殊能力…

可愛らしく見えるけど敵対種族根絶やしにする危険性のあるヤバい存在では???

『弱い分小賢しい相手って面倒なのよね』
まあここにいるのは逃さないように倒しとかないとね

で、アルトリウス君は何したの?
ははあ、敵だけ眠らせたと

大分丸くなった気はするんだけどそこはかとなく残るガチ感!
可愛い子の寝込みを襲うのはちょっと罪悪感も…
いや、ヤバい奴だしいっか

ま、ここは静かに終わらせちゃおうか





『モッギュッ、モギュ……!』

 チリチリ毛玉と化した『王様』がけふけふと咳き込む。
 猛烈な勢いの爆発であったはずだが、目立つダメージはそのくらい。まだまだ動けるようである。
 今も咳き込みながら、顔をくしくしと撫でて毛づくろいをしているその様子は……見た目には、実に愛くるしい仕草である。

「うーん、可愛い。可愛い、けど──」

 そんな『王様』の仕草に、思わずと言った様子でセフィリカが呟く……が、その目は油断なく『王様』の様子を見極めんと睨み続けていた。
 そう、確かに可愛い。それに関しては、疑いようは無い。
 けれど、登場するだけで群れの士気を上げるカリスマ性だとか、擬態に騙し討ちを使いこなす知能に、中身が実に気になる缶詰(モラ印)を持ち歩く程の文化。そしてある特定の種族に対する特効を成立させる特殊能力などなどなどを目の当たりにさせられれば……。

「──けど、モーラビット。よくよく考えたら、敵対種族絶対根絶やしにする系な危険性のあるヤバい存在なのでは……???」

 ……セフィリカの頭にそんな疑念が浮かび上がって離れないのだ。
 とは言え、だ。

『まぁ倒さないといけないのは確定だけれど。弱い分小賢しい相手って、面倒なのよね』
「それはそう。ま、何にしてもここにいるのは逃さないようにしないとね」

 相手をしっかり掃討出来れば、その疑念を気にする必要も無い。
 姉代わりでもある|意思持つ魔剣《魔剣シェルファ》の声に頷き、セフィリカがその身体に宿る魔力を練り上げて、空気中に漂う精霊へと干渉を始める。

「ふむ……」

 そんなやり取りをする姉妹の様子を横目に、アルトリウスは再び考える。
 モーラビットという、ウサギ型妖獣。見れば見るほど、緊張感の無い見てくれである。
 これが可愛いのかどうかは、アルトリウスにはやはり判断が付かないが……だが、相手はオブリビオン。そしてセフィリカの言う通り、奴らが危険物である事も間違いは無いだろう。
 で、あるならば。やることは、一つ。

「──煌めけ」

 意を決し、再び巡らせる原理の力。
 その力で働きかけるのは、先程と同じく周囲の空気。その性質を歪ませ、組み替えて──一つの法則を、その場に敷く。

『モッ? モ、ギュゥ……』

 その法則とは、『オブリビオンは急にとても戦意が衰え、すぐに瞼が落ちそうな程に眠くなる』というもの。
 何を無茶なと、余人が見ればそう思うだろう。
 だが、アルトリウスが振るう原理の力は基本的には万能で、この世界の自然法則よりも上位の概念だ。
 で、あれば……この程度の事は、難しくはない。

『プキュ……Zzz……』

 突如押し寄せた眠気に抗いきれなかったのか、毛づくろいに精を出していたはずの『王様』があっという間に船を漕ぎ始めれば。一般モーラビット達も釣られる様に欠伸をかいて、一匹また一匹と夢へと落ちる。
 その様子は、なんとも長閑で気持ちの良さそうな光景である。

「ははあ。今度は敵だけ眠らせた、と……」
「ああ。寝ていれば、驚異にはなり得ないからな」

 そんな様子に、魔力を練り上げていたセフィリカが思わずと言った様子で声をあげれば、アルトリウスも常の通りの淡々ぶりで答えを返す。
 どんな危険な生物であっても、無防備となる瞬間が幾つかある。
 その内の一つが、睡眠時。どんな生物も、就寝中であればその危険度は大きく減じるのだ。その事実は、古来より多くの英雄が寝込みを襲われその生命を散らしたという現実が示しているだろう。

「こうなれば、モーラットも安全だ。他の者が何かしらやることがあっても、安心して実行出来るだろう」

 そう語るアルトリウスのその言葉を聞いて、セフィリカは思う。
 セフィリカとアルトリウスの付き合いは、長い。つまりそれだけ多くの戦いを共に乗り越えてきたという事である。
 それ故、セフィリカはアルトリウスの戦い方をよく見知っていた。そして同時に、その戦いぶりのガチっぷりもまた、である。
 そんなアルトリウスが、さっきは『猫動画大作戦(仮)』で、今回は『睡眠大作戦(仮)』と来た。なんともまぁ、穏当な戦い方を選べる様になったことだろうか。
 ……でもまぁ、寝込みを襲うとか言う部分に関しては、かなりガチ感が残ってる気はするけれど。こんな可愛いウサギさんの寝込みを襲うのは、流石にちょっと罪悪感も──。

「……いや、ヤバい奴だし別にいっか!」

 ──特に感じる事無く、セフィリカは練り上げた魔力の矢を撃ち放つ。
 放たれたその矢には、精霊の力が宿っている。一直線に飛んでいって、『王様』のその身を確実に削ってくれることだろう。

「ま、ここは静かに終わらせちゃおうか」
「ああ。その方が、問題が無いだろう」

 無音で飛んでいく魔力矢が『王様』を始めとした一般モーラビット達に刺さる光景を眺めながら、二人は粛々とやるべきことを熟していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

飛・曉虎
●POW
新たな毛玉妖獣が現れたかと思えば、誠に良き毛並みの毛玉が!!
さては此奴が妖獣の大将であるな?
だが我輩とて兄者のゲンコに調伏された身なれど、野鳥を捕らえ爪研ぎに至るまで野性に赴くまま生きる身
モーラットを喰らい得られた毛並みである事はまるっとお見通しなのであーる!

しかし、また紛れると我輩見分けが付かないのである
ここは得意の力技で解決するかの…唸れ、乾坤圏!
双拳の間に生じる|陰と陽《マイナスとプラス》の反発力はまさに道教神仙的暴風の|小宇宙《コスモ》!
この神風によりモーラットは宙を舞い、体躯に勝るモーラビットの王は吹き飛ばれずに済む!
ムハハ!我輩ながら頭が冴えおるわ!
妖獣の王よ、吹き飛べい!





『──キュッ! プキュゥッ!?』

 効果時間が切れたのか、ハッ! と覚醒する『王様』。同時に、刺さっていた無数の魔力矢が消滅する。
 痛みに悶える『王様』のその姿は、随分と見窄らしくなっていた。自慢のもふもふはチリチリとなり、各所には深い傷を負っていた。
 だがそれでも、その立派な体格は萎れてはいなかった。

「ムッハハハ! 流石は、この妖獣どもの大将よな!」

 そんな『王様』の姿に、呵々と笑うは曉虎だ。
 傷つき見窄らしい姿となっても、一つの群れの王としての威厳を湛えるその威風。実に見事な物である。

「だが! だが、しかしよ! 我輩、まるっとお見通しなのであーる!」

 だが、しかしだ。その威風は、今での罪の証明でもある。
 今でこそ兄と慕う龍の化身のゲンコに調伏された曉虎であるが、今でも曉虎は本能のままに生きている。野鳥を捕らえ樹木を板に爪研ぎに勤しむなど、野性の赴くままに過ごしているのだ。
 故に、曉虎には判る。この『王様』のその体も、本能のままに──数多のモーラット達の血肉を貪り喰らうことで得た物なのだ、と。
 この世は所詮、弱肉強食。とは言え、因果は巡る物でもある。
 本能のままにその体を作り上げた因果、この機会に応報させねばなるまい!

(とは言え、よ)

 同時に、曉虎は考える。
 先程の一般モーラビット達もそうだったが、紛れられると見極めが難しいのは問題であると。
 はてさて、どうしたものか。僅かな時間だけ思案を巡らせて……曉虎の口が、獰猛に歪む。

「ここは、得意の力技で解決するかの!」

 導き出した答えは、曉虎曰く力技。
 腰を落とし、身構え、闘気を腹の底から全身へと巡らせて。

「──唸れぇい! 乾坤圏!!!」

 その一撃を、放つ!
 放たれたのは、曉虎の両の腕を飾る巨大な腕輪。『乾坤圏』と呼ばれる、宝具の一つだ。
 両の腕から放たれた乾坤圏は、2つ。それぞれに|『陽』と『陰』《プラスとマイナス》の力が込められた、特別な逸品である。
 陽と陰、つまりは相反する力である。そこから生み出される反発力は凄まじく、空気を歪ませ、掻き乱して──。

 ──轟ッ!!!!!!

 地から根刮ぎ全てを巻き上げるかのような、神風を産むだろう。
 この力、まさに道教神仙的暴風の|小宇宙《コスモ》と呼ぶに相応しい!

「もっきゅ!?」「きゅぴー!」「もきゅきゅー♪」

 吹き上がる神風に巻き込まれ、モーラット達の一部が宙を舞う。
 モーラットという生き物は、体長30cm程の小さな生き物だ。その体重も、相応に軽い。風に飛ばされてしまうのも、当然のことと言えるだろう。
 ……なんだか妙に楽しそうに鳴いているのは、ご愛嬌だろうか?

『モッキュ!? ギュゥゥゥッ……!』

 他方、モーラビットの側である。
 モーラットの捕食者であるモーラビットは、その体つきも相応に大きい。その中でも『王様』となれば、中々に立派な体格となる。
 となれば、当然風に耐える者も多く出る。『王様』の様に、身体を低くして地に爪を立てて……必死の抵抗を示す個体も出てくるのだ。

「ムハハハ! 我輩ながら頭が冴えおるわ!」

 その抵抗こそが、曉虎の狙いであった。
 戦場に多数存在する、モーラットとモーラビット。その見極めこそが、曉虎にとっての最大の懸念であった。
 であれば、モーラットを戦場から除外することが出来れば。戦場に残るのがモーラビットだけという状況を作ることさえ出来れば、その懸念は払拭されるというものである。
 ……いや、だからと言ってモーラットを吹っ飛ばすなよという声も聞こえる気がするが。そんな細かいことは曉虎にとってはどうでもいい事だし、モーラット達もなんだかんだで楽しげなので曉虎的には無問題というやつなのだ。

「──さぁ妖獣の王よ、吹き飛べい!」

 ともかく、これで障害は全て消えた。
 必死に暴風に耐える『王様』に、曉虎はのっしのっしと近づいて……その拳を一発、お見舞いしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミフェット・マザーグース
でてきたおっきい白いモフモフ
かわいい見た目でも凶悪なオブリビオンに、えんりょはむよう!
ティエル(f01244)と協力してやっつけるよ!

わるいこを集めるのは禁止だよ!
ミフェットの言うこと聞けないなら、大きな音で聞かせてあげる!
楽器のオバケのみんなを呼んで、集まってきたモーラビットに大音量でコラ!

ぜんぶ追い払って、王さまをまるはだかにするよ!
すかさずティエルに合図を送るね! やっつけるなら今がチャンスだよ!
呼びかけたら……わわっ、楽器の音でテンションがあがったモーラットたちまでいっしょに応援してくれてる?
ティエル、がんばれー!

※アドリブ・連携も歓迎


ティエル・ティエリエル
ミフェット(f09867)と一緒だよ♪
ふふーん、わるわるもふもふのボスが出てきたなー!
こいつをやっつければモーラット達も安全だね♪
すぐにやっつけちゃうから待っててね♪

むー、でももふもふモーラビットがいっぱいで邪魔だなー?
でも、ミフェットがモーラビットを追い散らしてくれたから一気にトドメだ☆
もふもふの応援も受けてテンションが上がって【お姫様ビーム】でどっかーんだ♪

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です





『モッ、ギューーー!』

 再び殴り飛ばされた『王様』が、木立にぶつかりぽてりと地に落ちる。
 そんな彼の下へ、一般モーラビット達がもふもふと集う。
 その姿はまるで、『王様』を護る近衛兵のようであった。

「ふふーん、わるわるもふもふのボスが出てきたなーっ!」

 そんなモーラビット達に立ち向かうは、ティエルとミフェットの仲良しコンビだ。

「こいつをやっつければ、モーラット達も安全だね♪」
「うんっ! 悪いオブリビオンに、えんりょはむよう!」

 二人が言うように、モーラビット達は悪者だ。
 外見はとっても可愛いけれど、罪のないモーラット達を虐めて食べようとする、オブリビオンだ。
 だから、臆せず立ち向かわねば!

「わるいこを集めるのは、禁止だよ!」

 今も『王様』を守ろうと集まる一般モーラビット達。
 そんな『わるもの』を追い散らそうと。

「ミフェットの言うこと聞けないなら──演奏家のみんな、力を貸して!」

 ミフェットが喚び出したのは、壊れてしまった管楽器で構成された【楽器のオバケの演奏隊】。
 緩やかに奏でられる音の波、音階を駆け上がる鼓動、高く遠く空へ吸い込まれるラッパの雷鳴。
 かつての偉大な演奏家の亡霊たちが宿る演奏隊が奏でる音楽は、決して綺麗なものではない。壊れてしまっているのだから、当然だ。
 けれど、その音は不思議な程に聞く人々の胸に届き、染み渡り──その心を、打ち震わせる!

『『『モッキュッ!?!?!?』』』

 そして心を打ち震わされれた者が取る行動は、二つに一つ。即ち、意気を上げるか沈むかだ。
 『王様』を守ろうと集まってきたモーラビット達は──。

『──モキューーーー!?』

 轟く音に驚いたのか、一目散にその場を逃げ出す。
 その勢い、文字通りの脱兎の如しだ。

『モ、モギュ……!!』

 そんな不甲斐ない一般モーラット達に、『一体何のために集まってきたんだ!』と言わんばかりに憮然とした様子を見せる『王様』だが……仲良しコンビの行動は、ここからが本番だ。

「ティエルっ! 今がチャンスだよっ!」

 好機を告げる、ミフェットの呼び声。その声を聞いて、ティエルが『王様』の姿を睨む。
 護衛を失った、まるはだかとなった『王様』。情けないその姿は、まさに物語に出てくる『悪い王様』そのものだ。
 モーラット達を虐めようとした、悪い王様。そんな悪役を懲らしめるには……光り輝くこの力が、一番だ。

「うーーーーーーー……!」

 愛用の笛剣を抜き放ち、構える。身体の魔力を、その切っ先に巡らし集める。
 ティエルが放とうとしているのは、【|お姫様ビーム《プリンセス・ビーム》】。お姫様の気合が入った、謎のビーム攻撃だ。
 良いもふもふを護るための、悪いもふもふ退治。そんな大義名分で、ティエルの|気合《テンション》は、十分だ。
 さぁ、放て。いま必殺の、お姫様ビームを!

「……どっかーん!!」

 気合一声。放たれた謎の光が、一直線に『王様』へと迫り、突き刺さる。
 だが、しかし──!

『モッ、ギュウウウウウウ!!!』

 『王様』もガードを固めて、その光を真正面から受け止める! その口から轟く鳴き声は、まるで『舐めるな!』と言わんばかりだ。

「す、すごい。流石は、『王様』……えっ?」

 その光景を目の当たりして、ミフェットが我知らずツバを飲み込むが……直後聞こえた音に、思わずその視線を向ける。
 聞こえたその音の、正体は……。

「ぷきゅ!」「きゅきゅー!」「もっきゅー!」

 先程、白虎の猟兵の力で宙へと舞い上がったモーラット達だ。
 モーラット達は、キラキラと煌く目でティエルの姿を見つめていた。そしてその上で、ぷきゅもきゅと歓声を送っていた。
 どうやら、突然の空中散歩(?)に楽しい音楽が加わったことで、相当なハイテンションとなっているらしい。そしてそのハイテンションな状態のまま、ティエルの雄姿を、応援してくれているのだ!

「ティエル! がんばれー!!」
「「「ぷいっきゅー!!!」」」

 そんなモーラット達と合わせる様にミフェットが声を張り上げれば……その声は、ティエルの耳へと届く。
 仲良しの友達が、可愛いもふもふ達が、応援してくれている。
 その事実が──ティエルのテンションを、更に高める!

「もういっちょー! どっかーーーーん!!」

 最高潮のテンションを更にビームに注ぎ込めば、その勢いは更に増す。
 当然そうなれば、受け止める『王様』に加わる圧も増す訳で。

『モギュ、モギュギュ……ギューーーーっ!?』

 じりじりと、ガードを崩されて。やがてその全身が、ビームに呑まれる!
 光の渦の中で翻弄される『王様』の身体が、押し流される。そうして全身を焼かれながら、再び野山の木立にその身を叩きつけられる。
 ……見た感じ、かなりの大ダメージを負わせたことは間違いないはず。

「ボクの、勝利だね♪」
「やったね、ティエル!」

 その戦果に、ふふーんっ! とドヤ顔を浮かべるティエル。そんな小さな親友を、ミフェットが優しく迎え入れる。
 仲良し二人のその様子に、モーラットたちもぺちぺちと小さなお手々で拍手を送るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

八坂・詩織
白夜さん(f37728)と。

スーパーキングもすっかりお馴染みですね。
モーラットを召喚してくるのが厄介なんですよね…なるべくならモーラットを巻き込みたくないですし。

というわけで月光の刃の次は赤い月です。
極月煌光発動、これは「敵を」溶かす光なので敵ではないモーラットにダメージを与える心配はないですし、継続してダメージを与えられますから。
広範囲に月の光を当てて【範囲攻撃】。配下のモーラビット達も纏めて攻撃します。
来年はうさぎ年とはいえ、あなた達には年が明ける前に退場していただかないといけません。
今年は皆既月食もありましたし、ブラッドムーンとも呼ばれる皆既中の月のような赤い月の光で溶かしてあげますよ。


鳥羽・白夜
八坂(f37720)と。

あー…モーラビットの群れのリーダーってやっぱこいつだったか…予想はしてたけど。
こいつとも今年何度か戦ったんだよな。

黒影剣を発動し姿を隠して接近しUC効果で【生命力吸収】しつつ大鎌で斬りつけ攻撃。
モーラビットはいっつもモーラットの毛丸刈りにしやがるからな、たまには自分達が刈られてみろよ。
八坂のUCで溶かされる前に【素材採取】でスーパーキングや配下のモーラビットの毛を【切断】し刈り取る。
おっと、忘れずにこれも回収しないとな。
スーパーキングの持つモーラット印の缶詰を奪って【投擲】で遠くに放り投げ弱体化を狙う。

そっか来年うさぎ年か…モーラビット大量発生とかしなきゃいいけどな…





『ギュッ……モギュゥ……!』

 木立ちにその身を叩きつけられた『王様』が、ゆっくりとその身を起こす。
 その身は既に、満身創痍。放って置いてもその内倒れそうだと思える程に限界ギリギリ、と言ったところだ。

『モッギュウウウウウ!!』

 しかし。『王様』は諦めない。せめて一矢と言わんばかりに必死に吠えて丸々と、猟兵達に……否、猟兵達が護るモーラット達へ向けて、最後の突撃を敢行する。

「あー……モーラビットの群れのリーダーって、やっぱこいつだったか」
「スーパーキングもすっかりお馴染みですね」

 だが、そんな『王様』の突撃もこの二人からすれば柳に風か。のんびりと言葉を交わすのは、詩織と白夜だ。
 モーラビットと幾度も交戦を重ねた白夜と同じ様に、詩織もまたモーラビットとは何度もやりあっている。そしてその統率者であるスーパーキングともまた、だ。
 こうまで同種の敵と一年の間で遣り合う事になると、なんとなく『運命の糸』が繋がってしまっているのでは無いかと言う錯覚すら覚えるところである。
 ……まぁ、そんな感慨に耽るのは後にするとして。

「モーラット達を護る為にも、今は手早く片付けませんと」
「だな」

 詩織が囁けば、その言葉に白夜も頷く。
 過去に何度もやりあったということは、その手札も知れているということである。
 モーラビット達の厄介なところは、『モーラットをその場に召喚することがある』ということ。もし今、そんな事をされてしまえば……厄介以外の、何者でもない。
 故に、手早く『王様』を仕留めて、モーラットを巻き込む事態を回避せねばならぬのだ。

「それじゃあ、先手は任せたぜ」
「はい、任されました」

 手早く言葉を躱し、白夜の身体が闇夜に溶ける。全身を闇のオーラで覆う【黒影剣】を発動させたのだ。
 ユーベルコードと化した事で、|かつての力《アビリティ》からは変質したその力だが……それでもこの力は、白夜の|魔剣士《メインジョブ》としての力に紐づいた力である。
 その有効な使い方を、白夜は学ぶこと無く自らの魂で理解出来ていた。

「さて、今年は皆既月食もありましたし……」

 一方、一人その場に残った詩織は静かに空を見上げる。
 木立の間から見える冬の月は冷たく冴えて、その光で地を照らしている。
 そう。まだ、月は天に在る。
 ならば、先程見せた力とは違うこの力も、使えるはずだ。

「ブラッドムーンとも呼ばれる皆既中の赤い月の光で、溶かしてあげましょう」

 月を見つめる蒼く輝くその瞳が、一際強い輝きを放てば。その魔力に呼応するように月も瞬き──瞬く間に、その場を赤き光が蹂躙する。
 その光の名は、|【極月煌光】《ウルティメイトルナ》。熱を伴わぬ赤い月光で、敵を溶かし尽くす詩織のユーベルコードだ。
 ……そう。対象は、『敵』のみ。この場に立つ猟兵達にも、庇護対象であるモーラット達にも、影響は無い。
 唯一、影響があるのは……。

『モッ!? モギュ、ギュウッ!!』

 赤い光に全身を灼かれ、溶かされ始めた『王様』のみだ。
 苦悶の声を上げ、身悶える『王様』。その表面は次第にぐずぐずに爛れ、揮発するかのように煙が立ち昇る。
 満身創痍の『王様』に、最早抵抗する力は無い。後は赤い光の中で、悶え苦しみ消えゆくのみである。極論、このまま放っておいても問題は無いはずだ。
 だが、しかしだ。そのまま終わらせてやる程、白夜は甘くは無い。

「お前らは、いっつもモーラットの毛を丸刈りにしやがるからな」

 赤い光の中で闇が滲めば、そこから現れるのは白夜の姿。
 その手には、赤い刃の大鎌。地を染める赤い月光の輝きも相まって、その輝きはまるで|紅玉《ルビー》の如く。
 そんな輝石の光が宿る大鎌を──。

「たまには自分たちが、刈られてみろよ──!」

 無造作に、振るう。
 直後、響いたのは『ひゅん』という存外軽い風切り音。そして音もなく真っ二つに切り裂かれ、断末魔の悲鳴を上げる事すら出来ずに消えていく『王様』の姿だ。
 どうやら今の一撃が、トドメの一撃となったようである。

「──っと?」

 そうして『王様』の薄汚れた毛が散りゆく中、かつーんと軽い音を立てて地に落ちる物体。
 それは、缶詰。『王様』がその手に握っていた、モーラット印の缶詰だった。
 あぁ、そういえばそんな物もあったな、と。白夜が思い至ったその直後……缶詰もまた、幻の様に霞み、消えていく。どうやら『王様』と共に、躯の海へと叩き返されたようである。なんとも諸行無常な光景であった。

「お疲れ様です、白夜さん。何とか、年が変わる前に終えられましたね」
「ああ。八坂もお疲れさん」

 ともあれ、これで今年最後の務めも終わりだなと、息をつく白夜。
 そんな白夜を労う詩織の声に、白夜の頭に何かが過ぎる。
 年が変わる。それはつまり、干支も変わるという事だ。
 2022年。今年は、寅年。そして23年は、卯年。うさぎ年である。
 そして、うさぎと言えば……今しがた遣り合っていた、モーラビット達。

(まさかとは思うが、モーラビットが大量発生とかしなきゃいいけど、な……)

 その予兆にも似た直感が現実となるか。はたまた取り越し苦労となるかは、定かではないが。
 なんとなく、口にする事は憚られて。白夜は己の胸の内でだけ、呟いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『温泉に行こう!』

POW   :    のんびり湯に浸かろう

SPD   :    いろんな湯を楽しもう

WIZ   :    湯上りのひと時を楽しもう

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 隠れ湯を楽しむモーラット達を襲うはずだった惨劇。
 その元凶である天敵『モーラビット』達は、猟兵達の手により駆逐された。
 逃げ去り生き残った者も、少数ではあるがいるようだが……『王様』が斃された今、群れとしての機能を維持する事は出来ないはず。
 遠からず、(多種の妖獣なども含めた)自然の摂理の中に消えていく事だろう。

 さて、ここからはお楽しみの時間。自然が生んだ隠れ湯を楽しむ時間である。
 戦闘は激しかったが、幸い温泉自体は荒れてはいない。特に支障なく、湯を楽しむ事が出来るだろう。
 モーラット達もきっと、自分たちを守ってくれた猟兵達の事を大歓迎してくれるはずだ。

 戦闘の終わりを確認し、現地に渡ってきたグリモア猟兵が必要そうな物を運び込み、また現地組織と今後に関するやりとりを進める光景を眺めながら、猟兵達の心は浮き足立ち始めるのだった。

 ====================

●第三章、補足

 第三章は日常章。お楽しみの温泉の時間です。

 舞台は、ここまで戦場となっていた隠れ湯。
 大自然真っ只中の、秘湯と言った風情です。

 湯はやや微温め。泉質は単純温泉といった感じ。どちらもモーラット達には丁度よい塩梅のようです。
 基本的には混浴という扱いですので、水着の着用は義務となります。ご了承下さい。
 必要そうな物がありましたら、プレイングにてどうぞ。
 グリモア猟兵が各所から掻き集めて参りますので、大抵の物はご用意できるはずです。

 三章は、救助対象だったモーラットたちが登場します。
 自分たちを救ってくれた猟兵達に対しては好意的で、きらきらした目で見つめてくれるでしょう。
 何かアクションしたい事があれば、お気軽にどうぞ。
 特に何も無ければ、画面外でもきゅもきゅしております。

 また、グリモア猟兵であるヴィクトリアも待機しております。
 物資の手配や現地組織との折衝、モーラット達の移送の手配など、細々としたお仕事をしております。
 こちらも何か言っておきたい事がありましたら、お気軽にどうぞ。

 年内最後の務めを終えて、心休まるひと時を。
 皆様の楽しいプレイング、お待ちしております。

 ==================== 
メディア・フィール
POW選択
他PCとの絡みOK
プレイング改変・アドリブOK

普段の疲れを癒すためにゆっくりとお湯につかります。

「ああ…あったかくていい気持だなぁ…」
「こういうとき、なんていうんだっけ? 極楽極楽、生き返る? 生き返るってことは、今まで死んでたってことなの? なんか変だな…まあいいか」
「外は寒いのにお湯はあったかい…雪を見ながらだといつまでも入っていられるよ…」
「わあ、モーラットだ。君らも入るのか…もともと君らの隠れ湯だから当然か。もふもふしてるよ…」
「え? 頭に手ぬぐいをかぶるのが礼儀なの? 血行が良くなる? へえ、面白いなあ」
「温泉の中で伸びをすると、疲れが抜けていくみたいで最高だなぁ…」





「ふぁぁぁ~~~……」

 しん、と澄んだ夜の空気。立ち昇る湯煙の根本から響く、少女の声。

「ああ、あったかくていい気持ちだなぁ……」

 人跡未踏の隠れ湯に浸かり、メディアはその熱に意識を傾けていた。
 2022年。この年は、メディアにとっての転機ともなった。
 猟兵という力に|覚醒《めざ》めて、その使命を果たすべく戦い抜いた年であった。
 だが当然、戦いばかりの日々はその身に疲労を刻むものである。
 年若いメディアであるから、適度な休養を挟めばその疲労の大部分は解消されるだろう。
 だが、それでも。続く戦いと鍛錬の日々は、メディアの身体の奥底には蓄積疲労を澱み固まらせてしまっていたのだ。
 けれど、そんな疲労も。

「ふわあ、ぁぁぁぁ……」

 再び出た欠伸にも似たその声と共に、湯の中へと解けていく。
 温泉と一口に言っても、その泉質は多種多彩である。
 この温泉は、いわゆる単純泉。期待される効能は、筋肉痛や肩こりなど、肉体疲労の回復だ。
 メディアにその知識があるかは、定かではないが……実はこの湯は、メディアにとって最適な湯であると言えるのだ。

(こういう時、なんて言うんだっけ……?)

 解される、全身の緊張。そうして全身の隅から隅へと、巡る血液。
 その脈動に、次第次第にメディアの頭は陶然とした心地となっていく。

(えぇ、と。極楽極楽、生き返る……?)

 そんな心地となったヒトの頭に浮かぶのは、得てして益体もない事であり……メディアも、その例外では無かった。

(生き返るってことは、今まで死んでたってことなのかな? なんか変だなー……)

 頭の中で巡り巡る、どうでもよいこと。
 だがそんなどうでもよいことが、何故だか不思議と心地よい。
 その感覚を得ることが出来たのは、今夜メディアがその身を粉にし頑張れたからだ。
 そして、頑張れたからこそ……。

「「「もっきゅ!」」」
「わっ、モーラット……ああ、もともと君らの隠れ湯だもんな」

 モーラット達も、その生命を散らさずに済んだのだ。
 完全にリラックスするメディアを囲む様に、群れてくる白くてふわふわもこもこな毛玉達。
 湯に浸かってるはずなのに、ふわもこを維持しているのがなんとも不思議であるが……それをツッコむのは、野暮というものだろう。

「うわぁ、もふもふだぁ……」

 お湯の温かさともふもふのコラボレーションを受けて、更に緩まるメディアの表情。必然身体からも更に強張りが消えて、その身の疲労を更に溶かしてくれるだろう。

「外は寒いのに、お湯はあったかい。いつまでも入っていられるよ……」

 もっきゅぷきゅ! と賑やかなモーラット達。その賑やかさも、メディアの耳には心地よく響く。
 歳末に訪れた、ひと時の癒やしの時。その時間を、メディアは思う存分に甘受するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

プリズム・アストランティア
アドリブ可

モーラビット達も居なくなった事だし
ゆっくりと温泉を堪能できそうね
モーラット達と入れる機会はそうないし、一緒につかりたいわ
優しく手招きしてモーラット達を誘うわ
湯加減もモーラット達には丁度いいみたいだし安心ね
濡れたモーラット達も可愛らしくて
温泉から出たくなくなってしまいそうね

そんな中、草むらから音が響いたりして
モーラビット達がまた来たのかと警戒しながら
近づいてみたら野良モーラットを発見するわ

温泉に惹かれてやってきたみたいね
折角だしその野良モーラットも綺麗に
洗ってから温泉に入れてあげたいわ

そんな風に過ごしていたらもう年が
変わってしまったかしら?
共に参加した猟兵達とモーラット達に新年の挨拶ね





 モーラビットという脅威が消えた隠れ湯は、賑やかだった。
 モーラット達と猟兵達は、それぞれに湯に身体を浸し、癒やしの一時を堪能していた。

「ふふっ」

 そんな空気に、プリズムの口元が柔らかく綻ぶ。
 プリズムの周囲には、数匹のモーラットがいた。
 ある者はプカプカと湯に浮かび、またある者はパチャパチャと湯を掻き分け楽しげにはしゃぎ、実に楽しそうだ。
 モーラット達と一緒に温泉を楽しむ機会は、そうあるものではない。
 そんな中々得られない機会を今回得られたことや、モーラット達の楽しげで可愛らしい様子、そしてモーラットにも丁度よい湯加減など……様々な要素がプリズムの心を満たし、温めが故の、笑顔であった。

(ああ、このまま温泉から出たくなくなってしまいそう……)

 心身を満たし始める幸福感に、プリズムの笑みが一層深まる。
 その瞬間だった。

 ──ガササッ……!

「──ッ!」

 近くの草むらから、音が響いたのは。その音に、プリズムの周囲にいたモーラット達はビクッと身を震わせる。
 モーラット達は、覚えているのだ。あの草むらが鳴った直後、飛び出してきたその存在の事を。そして当然プリズムだって、その存在の事は覚えている。
 モーラビット達め、性懲りもなくまた、と。震えるモーラット達を庇うように背へやって、プリズムが身構える。
 が、しかし──。

「「「もーきゅ!」」」

 茂みから顔を覗かせたその存在に、プリズムは緊張を解く。モーラット達もまた、同様に。
 何故なら茂みから飛び出てきた存在はモーラビットなどではなく……モーラット達だったからだ。

「あら、知り合い?」
「「「きゅぴー?」」」

 プリズムが振り返り背に庇うモーラット達に尋ねるも、モーラット達も首(?)を傾げるばかり。この様子では、この群れの仲間では無いようだ。
 だが新たに現れたモーラット達に、特に悪意は無いようで。プリズムやその背のモーラット達、そして立ち昇る湯煙に、その目をキラキラと輝かせてぷきゅぷきゅと鳴き始める。
 その様子に、プリズムは思う。ああ、この子達はただ温泉に惹かれてやってきたのだな、と。

「ふふっ。せっかくだし、貴方達もどうかしら?」

 そんなモーラット達の心境を理解して、プリズムが優しく手招きして湯へと誘えば……野良モーラット達は、喜び勇んで湯へと飛び込もうとするだろう。

「ダメよ。まずは身体を洗って綺麗に、ね?」

 だが、そのまま風呂に入れてやるわけにはいかない。お風呂に浸かる前に、守らなければいけない作法があるからだ。
 野良モーラット達は、土や枯葉で全身を汚していた。
 このまま温泉へといれてしまえば、せっかくのお湯が汚れてしまう。そうなってしまうと、他の入浴者の迷惑になってしまうのだ。

「ほら、いらっしゃい。洗ってあげるわ」

 再びプリズムが手招きすれば。寄ってきたモーラットにお湯を浴びせ、毛に入り込んだ汚れを丹念に落としていく。そうして汚れを取り除かれたモーラットは、礼を言うように「ぷきゅ!」と一つ声を上げ、お湯の中へと飛び込んでいく。
 更に賑やかになる隠れ湯。ゆったりと流れていく時間。年をまたぐまで、あとどれくらいだろうか。
 新年となったなら、まず新年の挨拶をしなければ、と。賑やかな空気の中で、プリズムはまた穏やかに笑むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
セフィリカ(f00633)と
水着は去年のもの。それしかもっていない

適当に空いてそうな場所(モーラットは可)で羽根を伸ばす
政務の疲れもあるだろう……などと
いつも通りのつもりだが。何となくセフィリカとシェルファの方を見てしまう
特に用事というほどの物があるではないが
しばらく前に見た夢の影響か。どうにも気になって、目が行って

チラ見していたら声を掛けられてやや反応に窮す
ああ……ええと
実際、割とじっと二人を見ていたので何も言えない
モーラットが頭の上で座っていてもそれどころではない
対応が出てこないのは人生初の経験だ。人かどうかは疑わしいが

初日の出……拝む作法もあったな、そういえば
年一回の機会、体験してみるか


セフィリカ・ランブレイ
アルトリウス君と

シェル姉もお風呂入ろうよ!清潔感大事!

『言い方。私に問題があるみたいじゃない』

例え入浴不要でもたまにはいいじゃん?後でちゃんと手入れしたげるからさ

『……全く』
と、相棒も連れて温泉を楽しむ

「露天風呂って頭が冷えて独特の開放感があるよね
アルトリウス君、楽しんでる?」

近くのモーラットを抱っこしつつリラックス

「おや視線を感じますな?
ふふふこのぱーふぇくとなぼでぃに見惚れでもしたかね」

「え………いや、マジで? ああいやなんというか……ええ、そっか、
君がかあー……!」
『セリカ……モーラット潰さないように気をつけなさいね』

おっと。私としたことが取り乱した!
切り替えて初日の出とか楽しもうか!





「ほーら、シェル姉もお風呂入ろうよ! 清潔感、大事!」
『言い方。私に問題があるみたいじゃない』

 姦しい話し声。既に水着に着替えているセフィリカと、普段彼女が腰に佩く|意思持つ魔剣《魔剣シェルファ》の声だ。
 セフィリカが入浴を促す魔剣は、ヒトとしての身体を取る事も出来る。だが、彼女に基本的には入浴の必要は無い。彼女の本質は、あくまで魔剣であるからだ。

「えー? たまにはいいじゃん。後でちゃんと手入れしたげるからさ」

 だがそんな事は、セフィリカを止める理由には成り得ない。
 一年の節目という大事な日。そんな日に風呂で穢れを祓い、新たな年へ。気持ちの切り替え労うのに、最適な日であるのだ。
 ……それにまぁ、年に一度くらいは裸の付き合いだってしたいじゃないか。

『……全く』

 そんなセフィリカの気持ちを察したかは判らないが、溜息混じりでシェルファがボヤけば……魔剣が光に包まれて、青髪の女エルフの姿へ変わる。
 なんだかんだと言うが、水着を纏って落ち着いた佇まいを見せるシェルファのその様子を見れば、彼女がこの温泉の事をそう悪くは思っていないという事も伺えるだろう。

「やー、露天風呂って頭が冷えて独特の開放感があるよねー……」

 湯を味わう姉の様子を横目で見つつ、セフィリカは近くに浮いていたモーラットを抱き寄せる。
 仄かに上気した肌。張り詰めていた四肢の緊張も程よく抜けて、完全にリラックスしている様子である。

(日頃の政務の疲れも、あったのだろう)

 セフィリカの様子に、アルトリウスは息を吐く。
 今のセフィリカは、故国の姫として政務を行う傍らに猟兵としての活動に精を出す日々を送っている。
 常人であれば疲れに音を上げる二重生活。だがセフィリカはその苦しみをおくびにも出さず、日々を過ごしていた。
 今日も、そうだ。彼女は常にいつもの通りで、自分本位でノリ任せでありながら根本の善性を示す様に生きている。
 そんな彼女の様子が、そして顕現したシェルファの姿が。しばらく前に見た夢の影響もあってか、アルトリウスにはどうにも気になって仕方がなかった。

「アルトリウス君も、楽しんで……おやおやぁ? 視線を感じますなぁ?」

 そんなアルトリウスの視線を目敏く感じて、セフィリカが浮かべたのは悪戯な表情。

「ふふふっ。このぱーふぇくとなぼでぃに見惚れでもしたかねー?」
「っ、ぁあ……ええ、と」

 科を作りつつ誂う様なその言葉に、アルトリウスは思わず反応と言葉に窮する。
 実際、セフィリカとシェルファに視線を送っていた事はアルトリウスも自認するところである。
 頭の上にモーラットがよじ登っているが、それどころでは無い。
 どう答えを返せば良いのか。どう反応を示せば良いのか。
 対応が咄嗟に出て来ないというのは、アルトリウスの人生で初めての経験であった。
 ……尤も人生とは言うが、アルトリウス自身が自らの事をヒトであるかどうかを、今だ疑っている所なのだが。

「……ぇ。いや、マジで……?」

 そんなアルトリウスのなんとも言えない反応を受けて、今度はセフィリカが戸惑う。
 セフィリカは、自他ともに認める美少女である。その美しさは異性の目を否応なく惹きつける、暴力的なまでの魅力に満ちた女である。
 だが、そんな魅力をアルトリウスは今まで特に意に介する事は無かった。幾度も依頼を共にし、その肌を晒す事もあったりなかったりしたのだが……アルトリウスは、常に冷静であったのだ。

「ああ、いや、なんというか……ええ、そっか、君が、かぁー……!」

 そんなアルトリウスが、今こんな反応を示している。
 その事実に、セフィリカは戸惑い……胸元のモーラットを抱く力が、僅かに強まる。
 一瞬漂う、なんとも言えない空気。

「きゅっ!?」
「……セリカ。モーラット、潰さないように気をつけなさいね」

 瞬間、痛みを覚えた件のモーラットから抗議の声が。
 同時にシェルファの忠告も聞こえれば、「おっと私としたことが……!」とセフィリカが我へと帰る。
 そして我に帰る事が出来れば、話を変える事も、出来るだろう。

「そ、そういえば! 年が変わるって事は、初日の出とかもあるんだよね!」
「初日の出……拝む作法もあったな、そういえば」

 気持ちを切り替える様なセフィリカの方向転換を受ければ、アルトリウスも平静を取り戻し、常の淡々とした表情で受け応える。
 新年最初に、昇る太陽。その光を、清めた身体で迎え入れる。
 とある世界のとある地域に伝わる風習では無いが……この世界の初日だって、きっと心身を健やかに導いてくれるはずだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
ミフェット(f09867)と温泉だ!

ふふーん、お仕事が終わった後は熱いお風呂でリフレッシュ!
にっぽんのえらい人もいってたはずだよ♪

ミフェットとモーラット達と一緒に温泉にどぼーんだ☆
ごくらくごくらくーとモーラットに掴まりながら温泉を堪能してたら、わぷぷ。ミフェットの温泉鉄砲だ♪
流れ弾に当たったモーラットも仲間に加えて、それー、はんげきだーとボクも温泉鉄砲で反撃だ♪

……怒られちゃったからおとなしくしまーす!
でも、じっとしていられなくて、鼻歌を歌い出したミフェットと一緒にもっきゅもっきゅと合唱だよ♪

十分に温まったら、よし、温泉上がりにこーひー牛乳を買いにいこう!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ミフェット・マザーグース
ティエル(f01244)といっしょに温泉にはいろう!
お湯につかるのって変な感じだけど、あったかいのは好き……

はしゃぐティエルと、水鉄砲ならぬ、温泉でっぽうを当てっこしてたら
同じく温泉に浸かってたモーラットたちに当たっちゃった!
あわわ、ごめんね! えっ、もっと? わわ、みんなまねして大騒ぎになっちゃった

秘湯でも、お風呂では静かに!の言いつけを思い出して、大人しく湯船に肩まで浸かって、でも退屈だからついつい鼻歌を歌っちゃう
ティエルにモーラットたちまで加わって、もきゅもきゅラララと歌が響いて

はぅ、のぼせるまえに温泉出なきゃ!
モーラットたちにバイバイして、いっしょに温泉からでるね

※アドリブ・連携も歓迎





 にっぽんのえらいひとが言っていた。
 お仕事が終わった後は、熱いお風呂でリフレッシュだ、と。

「わぁーい♪」
「もっきゅきゅーー♪」

 愉しげな歓声を上げながら、どぼーん☆と言った具合に湯に飛び込む小さな影たち。ティエルとモーラットの一団だ。

「はー、ごくらくごくらくー♪」
「ぷきゅっきゅー……!」

 ぷかぷかと浮かぶモーラットにしがみつきながら、ティエルが湯を堪能する。
 お湯はやや微温めだが、モーラットやティエル達には丁度よい温度。年の暮れの寒さを考えると、まさに極楽と言った環境だろう。

(お湯につかるのって、変な感じ……)

 そんな賑やかなティエル達をにこにこと眺めながら、ミフェットも暖かなお湯を楽しんでいた。
 元来、ミフェットは内気で臆病な少女である。そしてそれが故、周囲の視線に人一倍敏感である。
 そんなミフェットであるから、かつては仲間と一緒のお風呂に浸かる事すら怖がっていた事がある。ブラックタールという種族の特徴も相まって、自分の体が変なのではないかと気にして小さく縮こまってしまっていた程である。
 そんなミフェットの性質は、今も大きくは変わっていない。お風呂に入るのはやっぱり違和感を覚えるし、周囲の視線だってやっぱり気になってしまう。
 けれど……。

(だけど、あったかいのは好き……)

 そんなミフェットも、少しだけ前向きになれるようになっていた。お風呂の温かさに身を委ねて、身も心も力を抜く事が出来る様になっていた。
 それもこれも、ミフェットが経験を積めたから。大事なお友達と、色んな事を体験してきたからである。
 そんな大事なお友達は、ミフェットの眼の前でモーラットと一緒にぷかぷかぴちゃぴちゃとお湯の上を漂っている。
 ……なんとも無防備な、その姿。ミフェットの胸の内に、いたずら心がむくむくと湧き上がる。

(……えーっと)

 ミフェットが作ろうとしているのは、自分の手で作り上げる水鉄砲……いや、温泉のお湯を使うから、温泉鉄砲とでも言うべきか。
 お湯の中で、自分の手と手を組み合わせる。この時、出来る限り隙間を作らないのが上手くやるコツだ。
 そうして組み上げた間に、温泉のお湯を溜め込んで……。

「……えいっ!」

 一息に、押し出す。
 ぴゅーっと伸びるお湯が、放物線を描く様に勢いよく伸びていき──。

「──もきゅっ!?」
「あっ!」

 勢い余って、ティエルでは無く一緒にいたモーラットの顔面を濡らす。
 一体何が起きたのかと、目を白黒させるモーラット。

「あわわ、ごめんね! 大丈夫!?」

 そんなモーラットに向けて、ミフェットは慌てて平謝りだ。
 だが、しかし。

「「「──もきゅー! もっきゅ! もっきゅ!」」」

 何故だかモーラット達は、目を輝かせて大喜びだ。
 そうしてそのまま、見様見真似で温泉鉄砲を作ると……もっきゅもきゅ! と遊びだす。

「わーい! それー、はんげきだー☆」

 その中には、ティエルもいた。小さなお手々で温泉鉄砲を作り、ぴゅーっと飛ばして大はしゃぎである。
 途端に騒々しくなる隠れ湯。モーラットもティエルも温泉鉄砲の当てっこに夢中で、もう収集が付きそうにない。

 ──もう、お風呂で騒がしくしてはいけませんよ?

 瞬間、響いたのは大人の声。この場に皆を送り込み、今も近くで細々とした事後処理をしているグリモア猟兵の声だ。
 ティエルとミフェットにとって、彼女は親代わり。当然、お風呂のマナーなんかも躾けられてはいた。
 そんな日々言われているだろうお小言を、ミフェットは今の一言で思い出し。

「う、うんっ! お風呂では、静かに!」

 慌てて手を解いて、肩までちゃぷんとその身を浸す。
 この場では年長であるミフェットがそうなれば、年少のミフェットやモーラット達は言わずもがな。皆揃って、肩までざぶんだ。

「……」
「……」
「「「……」」」

 しばし続く、無言の時間。
 だがお子様にはそんな時間は退屈で、窮屈で。
 ゆっくりとリズムを刻む様に、ミフェットが身体を揺らし始めれば……。

 ──ふふんふふんふんふーん♪

 その場には、ミフェットの鼻歌が響き始める。
 ……いいや、響いたのはミフェットのものだけでは無い。

 ──ふふんふふんふんふーん♪
 ──もきゅきゅー♪

 ミフェットのそれより僅かに高いティエルの鼻歌に、モーラット達の唱和も続く。
 先程の騒がしさとは打って変わって、和やかな鼻声の唱和。これくらいなら、きっと大人も目くじらを立てる様な事は無いだろう。
 幼い少女ともふもふ毛玉達の音楽会は、この後も暫し続いて……ティエルとミフェットの身体と心を、存分に温めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

飛・曉虎
●POW

ムッハーハハハ!
我輩の剛力を遺憾なく振るい、万事解決したらば湯に浸かる
これぞ、愉快適悦、痛快至極の極みであーる!
しかし、我輩としては煮え湯が好みであるが、ここはモーラットの隠れ湯
彼奴にとって適温なのであれば、大人しく行水と思ってのんびりさせて貰おう

…ムハハハ!我輩の肉球が触り心地が良いからと触るでない!
うーむ、此奴らも最初は我輩に食われるかと思って怯えておったが随分と懐かれたものだ
お主ら、我輩の子分にでもなるか?
我輩は兄者の拳骨にて|調伏《わから》されたが、お主らにもそれ相応の覚悟を見せて貰おうぞ
それ、渦輪粉碎鐵拳を応用した流れる温泉である
これに耐え抜いたら我輩の子分に取り立てようぞ!





 自慢の剛力を心行くままに振るい、万事解決したらば湯に浸かる。
 これぞまさに、愉快適悦。痛快至極と言わずして、何と言おうか。
 少なくとも、怪力無双の白虎の神将である曉虎は、そう思っている。

「ムッハーハハハ!!」

 湯に身を浸し、呵々大笑する曉虎。
 正直を言えば、曉虎にとってこの湯は微温すぎて極楽と呼べる物では断じて無い。曉虎からすれば、まさに煮え湯が如き湯こそが極楽の湯である。
 だがここは、モーラットたちの隠れ湯だ。このか弱き者どもにとってこのくらいが適温だというのなら、そこは行水だとでも思って譲るべきだろう。
 曉虎は強者でありそれが故に傲慢ではあるが、弱き者から財を奪う様な暴虐の徒では断じて無いのだ。

「もーきゅっ? もきゅ……きゅもっぴっ!」
「うん? ……ムハハ! あまり肉球に触るでない!」

 そんな強者らしい鷹揚さを示す曉虎に対し、モーラットたちは随分と懐いていた。周囲に集まり曉虎の真似をするように「もーっきゅっきゅぴー!」と笑っていたり、その手の肉球に興味津々に触れてみたりと、随分と楽しそうな様子である。
 元来、モーラットという妖獣は好奇心が強い生き物である。その性質の為か、|銀の雨降る時代《シルバーレイン》の頃には至る所に顔を出し、小さな騒動を引き起こしたりしてきたものである。
 今まさにこのモーラット達も、そんな好奇心に目をキラキラと輝かせ、曉虎へとじゃれついているのだ。

「ふぅむ。お主ら、我輩の子分にでもなるか?」
「「「もっきゅ???」」」

 そんな毛玉達に、興が乗ったか。曉虎がモーラット達に問いかける。
 その言葉を理解できず(多分、『弟子』とかそういう概念がわからないのかもしれない)、小首を傾げるモーラット達。だがそんな彼らの反応を、曉虎は気にしない。
 龍の瑞獣に|調伏《わから》されたとは言え、曉虎の本質は今も気侭な野性のネコ科のソレである。
 つまりそうと行動すると決めたなら、後先の事は考えないという事である。

「そぅれ! お主らにも相応の覚悟を見せて貰おうぞ!」

 湯の中で唸りを上げる、両の腕の乾坤圏。陰と陽の力が反発し渦を巻き……水の流れを作り出す。
 そうして生み出されたその水流に乗って、曉虎にじゃれついていたモーラット達がぐるんぐるんと流され回りだす。
 ……その光景は、そう。所謂『流れるプール』の其れである。この場の事を考えれば、『流れる温泉』とでも言うべきだろうか?

「もきゅっ!?」「きゅ~♪」「きゅぴぴー!」

 周りだしたモーラット達の反応は、それぞれだ。
 目をぐるぐると回す者、愉しげに流されて声を上げる者、流れに逆らおうとぱちゃぱちゃ泳ぐ者。まさに千差万別である。
 ただ、総じて言えるのは……そこに負の感情の色は見られない、という事だろう。
 モーラット達にとっては、丁度よいアトラクションになっているようである。

「ムッハッハー! これに耐え抜いたら、我輩の子分に取り立てようぞ!」

 そんなモーラット達の様子を眺めながら、再び呵呵と曉虎が笑う。
 これを狙ってやったのか、それとも本気でモーラット達に試練を課そうと考えたのか。その真の狙いは、曉虎の胸の内にのみある。
 だが何にせよ、曉虎の行いがモーラット達にとって楽しい時間となった事だけは、間違いないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八坂・詩織
白夜さん(f37728)と

イグニッションを解き普段の姿に。
着替えに必要なものはグリモア猟兵さんが用意してくれますよね。
白夜さん絶対覗かないでくださいよ!

温泉と聞いて密かに準備しておいた自前の水着、今年の夏にも着た黒いビキニと星空のような銀の刺繍が入ったパレオを纏い入浴。

(暗くてお互いの姿もよく見えませんし、水着も着てるわけですが…なんとなく緊張するなぁ…混浴なんて昔もしてたのに)
「…学生時代は戦争の後は温泉、って定番でしたよね」
内心のドキドキを隠して平然を装いつつ話しかけ。
でも…私は白夜さんとまた一緒に戦えるの嬉しいですよ(ぽつりと)

なんでもないですよ、来年…いえ今年もよろしくお願いしますね。


鳥羽・白夜
八坂(f37720)と。

イグニッションは解く。
…水着持ってねえけど、貸してくれんのかな…
覗かねーよ!!
(そんなんしたら俺社会的に殺されそうだし)

水着に着替え…うわっ寒っ!!
真冬の山だもんな、早く浸かろう。

…ふー…温まる…
そうだったな、重傷くらった後は傷に染みて痛いとかあったよな…(遠い目)
…まさか令和になってまで戦わされる羽目になるとは思わなかったよ。引退して平和に暮らしてたはずなんだけどなー…なんでこうなったんだか。

え?ごめんなんて?
お、もう年明けるか…まあ、こちらこそよろしくってことで。

…その後、第二次聖杯戦争勃発の報せを受けて新年早々二人して金沢に飛んだのはまた別の話である。





 ──白夜さん、絶対覗かないで下さいよ!
 ──覗かねーよ!!

 そんな賑やかなやり取りがあったりしたが。
 イグニッションを解いた詩織と白夜はそれぞれに着替えて、賑やかな場から少し離れて隠れ湯の熱を堪能していた。

「おぉ、寒ッ……! 真冬の山、だもんなぁ」

 湯に身を浸し立ち昇る湯煙を眺めながら、白夜が呟く。
 身体は湯の熱で温まるも、頭は冬の野山の寒気に冷える。
 この感覚の、なんとも不思議な事か。
 なんとも言い難い感覚に身を任せ、白夜がほっと息を吐く。

(暗くてお互いの姿も良く見えませんし、水着も着てるわけですが……)

 そんな彼の姿を見つめる詩織は、この時の為に密かに準備をしていた。今年の夏にも着た黒のビキニと、星空の様な銀の刺繍で飾られたパレオを事前に用意し、この場に臨んでいた。
 中々に気合が入り、艶やかな詩織のその姿であるが……その実、詩織は僅かな緊張を覚えていた。

(混浴なんて、昔もしてたのに)

 その緊張が、懐かしきかつての記憶を呼び起こす。
 詩織と白夜は、銀誓館学園に属する学生であり、世界の行く末を占う戦いの渦中に居た能力者であった。
 そんな、死と隣合わせの学生時代。大きな戦いの後には……。

「……そう言えば。学生時代は戦争の後は温泉、って定番でしたよね」

 そう。激しい戦いで心身ともに疲弊した能力者達が、温泉でその身を労り、生き延びた事を喜びあう。そんな風景が、お約束だった。
 胸の内の鼓動を隠す様に、努めて平静を装いながら。頭に浮かんだその記憶を口にすれば。

「あぁ、そうだったそうだった」

 その言葉に、白夜もまたその記憶を呼び起こすだろう。
 ……戦いで大きな傷を負い、その傷に湯が沁みて痛みを覚える。そんな苦い記憶も、思い出したりしつつ。

「まさか、令和になってまで戦わされる羽目になるとは思わなかったよ……」

 ほうっと息を零しながら、口から溢れるのは愚痴混じりの言葉。
 先にも触れたが、白夜は一度は戦いから身を退き市井にその身を置いていた存在だ。そうして変わらぬ平凡な日々を、つい最近まで過ごしていたはずなのだ。
 だというのに、またこうして戦いの日々に放り込まれる事になろうとは。

「……なんでこうなったんだろうなぁ……」

 その一言は、白夜の心の底からの本心であった。あくまでも、白夜は平穏な暮らしの中に居たいのだ。
 そんな白夜の言葉を聞いて、ちくりと詩織の胸が痛む。
 かつての戦いの日々でも、詩織にとっての白夜は気心の知れた大切な存在であった。
 だがそんな彼は、全てが終わるまで詩織と共に戦い続けてはくれなかった。後事にその力を託し、一足先に戦いの道からその身を退いてしまったのだ。
 その事を、別段恨んだりなんかはしてはいない。白夜が選んだ道なのだから、尊重しなくてはと詩織も頭では理解している。
 けれども、だ。

「……でも。私は白夜さんとまた一緒に戦えるの、嬉しいですよ」

 そう思うこの気持ちも、また事実。
 |銀の雨《シルバーレイン》が降るあの頃の様に、共に。
 ぽつりと零れ出たその言葉こそが、詩織の本心だ。
 ……とは言え、なんだか恥ずかしいし悔しいから。大きな声では言えないし、言わないけれど。

「え? ごめん、なんて?」
「なんでもないですよ、ふふっ」

 聞き返す白夜に対し、詩織は煙に巻くように微笑み空を見上げる。
 空の月は次第に傾き、その姿を西の空へと傾けつつある。
 今日の月没は日付が変わった少し後。
 大晦日から日付が変わる、ということは……新たな年がやってくる、ということだ。

「……来年。いえ、今年もよろしくお願いしますね」
「お、もう年明けるか? まぁ、こちらこそよろしくってことで」

 微笑みながら小さく頭を下げる詩織のその言葉に、白夜も笑みを浮かべて返事を返し……その場に穏やかな笑い声が響く。
 十年の時を超えて、再び共に並び立つ。二人の道行に、幸多からん事を。

 ……なお、その数分後。
 年が変わった瞬間に脳裏に過った予兆を見て、新年早々二人して金沢に飛ぶことなるのは、また別の話。

 2022年。激動の年が終わり、新たなる年が訪れる。
 新年、あけましておめでとう。今年も一年、猟兵達に多くの幸いが訪れますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月19日


挿絵イラスト