海の世界で冬の星見を
●冬の夜空と魚の群れ
グリードオーシャン、フラワーズ島。
荒れ模様のグリードオーシャンの海にも拘わらず、不思議と凪いだ海域があった。
見渡す限り遮るもののない水平線と満天の星空――そして、海の中から星の光を受けた魚の群れが渦巻くように飛び出していく。
星に届く事はないけれど、高く、高く。銀の光を周囲に反射させる魚の竜巻は静かな海上に、何度も何度も立ち上がり、そして海へと落下して静かになる。
その光景を見ているのは空の月、空の星。そして、この日の海に偶然船を出した幸運な船乗りだけである。
「星見にグリードオーシャン、行ってみない?」
クリスマス、シャチのキマイラ、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)が例年通りにそんな事を言い出した。
「グリードオーシャンの冬は星空が特に綺麗でね、特に海の上から眺める事ができれば全周遮るもののない絶景で、船乗り達もその景色を見る為に海に出る事もあるらしいよ。まあその眺めを許されるのは冬の海に漕ぎだす勇気とか危険を見極める眼力があって、ユーベルコードを使える人位だね」
つまり猟兵ならいけるって事、そうヴィクトルは説明する。
「今回俺が案内するのはフラワーズ島っていう島の近くで、ほぼ丸一日丁度よく晴れて荒れていない海域があるみたいなんだ。島の方で小舟も借りられるし、そこで星見を楽しんでみるのはどうかなって。ああ、あと海の方もちょっとした変わったもの……現象? があるみたいだからそっちもオススメかな」
そう言った彼は魔法で水鏡を作り出し、何やら海上にキラキラと光る竜巻のようなものが発生している光景を投影する。
「これ、魚の群れなんだ。小型の魚で凪いだ海の星の綺麗な夜に空に向かって渦を巻くように回転しながらジャンプする習性があるみたいだよ。星の光を受けて魔力を蓄えてるとかそんな説もあるけどそれは置いておいて、中々珍しいから近くに寄る事が出来たら来年いい事がある、とか最近島で噂になっているみたい。夜の間に何度か出てくるみたいだし、普通に綺麗だからそれを楽しんでみるのもいいと思うよ」
説明はそれくらいになるかな、とヴィクトルは首にかけた鍵型のグリモアを手に取って。
「今年も終わりが近いけれど、綺麗な景色を楽しんでみるのもいいんじゃないかな」
メリークリスマス、そう締め括ったヴィクトルは鍵のグリモアを手にし、転送の準備を始めたのであった。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
今回のクリスマスはグリードオーシャンでの海上星見のお誘いとなります。
●フラワーズ島
キマイラフューチャー由来の小さなアスレチック系元無人島。
入植してきた海賊や商人の中から定住する人も増えてきているようで、海に小舟で漕ぎだす前に色々準備できそうです。
星を見るのに丁度いい海域へは特にプレイングをかけなくても問題なく辿り着けます。
当日は晴天、希望があれば早めに目的の海域で待機しておくことも可能です。
・小舟
島で借りる形になります。
サイズは色々あるのでお一人様でも団体様でも問題ありません。希望があれば二隻借りる事も可能です。
・魚の群れ
日が沈み星が輝く時間帯になってから、群れで空に向かって高く飛び跳ねる小魚の群れです。
日が昇るまでの間にインターバルを挟みながら何度も発生するようで、この海域にしばらくいれば見る事は出来るものと思われます。
・その他
誰かと参加される場合は、お手数ですが【お相手のID】、または【グループ名】を明記して下さい。記載がない場合、一緒に行動できなくなる可能性があります。
また、お声かけがありましたらヴィクトルをはじめとした当方のグリモア猟兵もご一緒させて頂きます。
初対面でも気にせずお気軽に。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 日常
『星の海まで漕ぎ出して』
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POW : 小舟を自ら操り、進路を取る
SPD : 海の様子を見極め、安全な穴場に陣取る
WIZ : 満天の星空を眺めて楽しむ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
箒星・仄々
素敵なお誘いに感謝です
魚の群れを見てみたいです
一艘お借りしましょう
指笛吹いて
影からメカジキのランさんを呼び出して
吻で船を押してもらいます
楽ちんです
場所につきましたら
錨を下ろして
ゴロリと横になって
ゆらゆらと揺れながら
満点の星空を眺めましょう
空気が澄んでいてとっても綺麗です
そして波を切る音と共に
銀光の渦巻が空へと昇っていく姿を目にします
神秘的で美しいです
何度か眺めましたら
起きて
この光景に相応しい即興曲も奏でます
最後にランさんに跨って
渦巻の更に外側を回るようにして
一緒に夜空に螺旋を描きます
近くで見るのもいいですね!
おっきなランさんの姿で
驚かせてしまったでしょうか
ごめんなさい
メリークリスマス!
●星の海、魚に乗って黒猫は空へ
ゆらゆら小さな小舟に乗って、箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)という真っ黒な毛並みのケットシーは凪の海へと向かっていく。
海に出るには少々頼りなくも見えるけれど、この特別な凪の日ならば猟兵の仄々には何も問題はない。
小舟をゆっくりと押してくれるのは一匹の目旗魚――仄々が指笛と影から呼び出したランさんは、その尖った吻で小舟をつついて目的の海域へと導いていく。仄々は実に楽である。
魚の群れを見てみたい――そんな願いとやってきた海域に、仄々は体より大きな錨を下ろしてゴロンと仰向けに寝っ転がる。
広がる満天の星空――冬の湿度の少なく澄んだ空気は星の光を散らすことなく海へと降り注がせ、大きな緑の瞳にありのままの美しい星空を映し出している。
夜空を見上げる黒猫の耳がぴくりと揺れて、その顔を横の方へと傾けた。
直後、並を切り裂く音と共に小魚の群れぐるぐると螺旋を描きながら海を飛び出した。
水面ジャンプの勢いが頂点に達し、そして落下。着水もほぼ垂直に水面に突入し、飛沫も殆ど上げずに帰っていく。そして海に帰った小魚が再び竜巻に合流し――そんな銀光の竜巻の作り出す幻想的な光景。
何度も生み出される小魚たちの月光受けて輝く銀の竜巻に、つい見惚れてしまっていた仄々はそれだけでは楽士として不満足に思ってしまう。だから愛用の竪琴を取り出し、軽やかな即興曲を奏で彩る。
そして一曲奏でた最後に、海面から竜巻を見上げていたランさんへと指笛で合図してその背に飛び乗り跨った。ランさんは舟から離れ、空へ立ち上る竜巻の外周をぐるりと回りながら共に空へと昇っていく。
そんな仄々たちの側には気にせぬ小魚たち、大きな体のランさんで驚かせては申し訳なかったが、敵意がない事を察したのか小魚たちに慌てる様子はなくこれまで通りに螺旋を描きながら空へと向かい、そして落ちていく。
螺旋を描き夜空へと向かい、星には手が届かぬけれど少し空は近くなったようにも感じられて、とても綺麗だ。
「メリークリスマス!」
目旗魚に乗った黒猫の楽し気な声が、凪の夜の海に響いた。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
同行
フィア(f37659
二人用の小舟を借りて
お誘いに応じてくれて感謝します
ホワイトクリスマスという訳ではありませんが
雪に負けない星の輝きとも言えますかね
(男子としての意地か自分で漕ぎ
(魚の群れが跳ねるのを見れば
成程…余裕をもって見れば確かに綺麗と感じる事もできるものなんですね
(昔は食用として必死に取ってたのを思いながら
うん…きっと今この瞬間の僕は満たされているのでしょう
(視線に気づいて紅玉の如き美しき瞳を見つめ返し
美しい物を美しいと感じる事が出来るのは生きる事に充足できてるから
きっとフィアのお蔭でもあるんです
うん、感謝しますフィア
一緒にいてくれて(緩やかに身を寄せ
ええ、喜んで…(影は重なり…
フィア・フルミネ
カシム(f12217) と参加
うん。誘ってくれてありがとう。気張りすぎないで、ゆっくりいこう。この時間を長く楽しみたいから
魚が跳ねている。ただ、私が見るのはそれを複雑な心持ちで見るカシムの瞳。どんな星よりも美しく瞬く、琥珀の眼
キミは独りじゃない。あれほどの家族はいないけど、少なくとも私はいる。私は……死なない。何があっても、心臓も手足もなくたって、キミが視線を向けてくれるなら
もう一度言う。うん。ありがとう。これからもそばにいてほしい
●竜眼と稲妻の星月海
島より出立した二人乗りの小舟、オールを漕いで目的の海域へと進んでいく。
「お誘いに応じてくれて感謝します」
「うん。誘ってくれてありがとう」
ここまで舟を漕いできた少年はカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)と言う名の盗賊で、共にやってきたのは魂人のフィア・フルミネ(|麻痿悲鳴《まいひめ》・f37659)。
小舟のオールを一人漕ぐカシムの腕には少々疲労が溜まってきてはいるが、男子の意地でそれを表に出さない。
「気張りすぎないで、ゆっくりいこう」
この時間を長く楽しみたいから、と少しばかり意地を見せているカシムをなだめるようにフィアが言う。
小舟は少し速度を落としながら二人の猟兵を乗せた小舟は辿り着いた。
途中で竪琴の音色が聞こえたが、その音も聞こえず夜の暗さに他の小舟も見えない丁度いい塩梅の位置のようだ。
周囲は見渡す限り黒と深い青、雲一つない空だからホワイトクリスマスというような風情にはなっていないが、冬の大気は海と空の彩を鮮やかに二人に晒している。
「雪に負けない星の輝きとも言えますかね」
見上げれば遮るものない漆黒の夜空に散らばる宝石箱のような輝きの数々、視線を落とせばそれを映し出した水鏡のような夜の水面。
水平線の彼方まで静まり返った海面――ふと、小魚が一匹跳ねた。
一匹、二匹、最初の一匹を呼び水にしたかのように沢山の小魚が跳ね始め、螺旋を描いて空へと飛び上がっていく。
「家族、みたいね」
フィアのそう印象をもつ位に群れる小魚たちは互いを信頼しているかのように寄り集まっている。二人は落ち着いた様子でその月光を受けてキラキラ光る竜巻を見遣り、
「成程……余裕をもって見れば確かに綺麗と感じる事もできるものなんですね」
カシムが感慨深げに呟いた。昔の彼にとっては小魚は食べるためのものであり、必死に捕まえる事で精一杯で美しいと感じ楽しむような余裕はなかったから。
一方のフィアは小魚の竜巻よりもそのカシムの表情の方に目を惹かれていた。小魚たちを見る彼の瞳、空に輝くあらゆる星よりも美しく瞬くその琥珀色の瞳。
「うん……きっと今この瞬間の僕は満たされているのでしょう」
フィアから向けられた視線にカシムが見つめ返す。
白の印象の彼女の瞳は紅玉のような赤、鮮やかな色彩は盗賊としての彼が見てきた宝石にも劣らず、吸い込まれてしまいそうになってしまう。
「――キミは独りじゃない。あれほどの家族はいないけど、少なくとも私はいる」
向けられた琥珀を紅玉は見つめ返し、想いを告げる。
「私は……死なない。何があっても、心臓も手足もなくたって、キミが視線を向けてくれるなら」
抑制の利いたフィアの声、しかしその瞳の色は胸の裡の感情を表すように鮮やかだ。
――美しい物を美しいと感じる事が出来るのは、生きる事に充足できてるからだ、そうカシムは思う。
ならばその充足を得られているのは、
「きっとフィアのお蔭でもあるんです」
自分をまっすぐ見てくれる人が一緒にいてくれているからだ、だからカシムは感謝の言葉を口にした。
そしてそれが自然であるように、カシムはその身をゆっくりとフィアの方に寄せる。
「……もう一度言う。うん。ありがとう。これからもそばにいてほしい」
「ええ、喜んで……」
寄りかかられたフィアの言葉にカシムは目をそらさずそう言い、そしてお互いに感謝の想いを伝え合った小舟の上の二つの影が一つに重なり合う。
星々輝く夜の海、聖夜の二人を見届けたのは夜空の星々と空を望むように跳ねる小魚たちだけであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
服装:南瓜SD2021参照
折角だし、ヴィクトルさん
ご一緒お願いしてもいいですか?
時々戦場でお会いしますよね
一度お話したいなって思ってたんだけど…あの……すみません
舟、漕げます…?
(非力過ぎてオールを動かすのが苦手な子)
星も勿論見たいけど
魚の群れ、気になるんだ
現象が起きるまで少し海で遊ぼうかな
見て見て!
足の裏に風魔法を集め
ふわふわと海面を歩く
万一濡れても良いように、足元だけは素足で
ヴィクトルさんに見せるようにくるり一回転
えへへ、僕の得意技ー
泳ぐのも好きだけど、水面は歩くのも好き
星に包まれてるみたいで
自然が好きなんです
花も海も、空も
現象が始まったらすごぉい…と瞳を輝かせ
まるで空を泳いでるみたい
●オラトリオの少年と海の仲間たちと
そしてもう一隻、小柄なオラトリオと大柄なシャチのキマイラを乗せた小舟が日が沈む直前に出発していた。
「折角だし、ヴィクトルさんご一緒お願いしてもいいですか?」
「うん、いいよ」
ふわふわした白のケープで寒さ対策はばっちりな栗花落・澪(泡沫の花・f03165)がそんな風に声をかけ、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)はいつものようにのんびりした調子であっさり応じた。
以前から時々戦場で顔を合わせることもあった二人、一度お話してみたいと思っていた澪と同じようにヴィクトルの方も考えていたのかもしれない。
「それでですけど……あの……すみません。舟、漕げます……?」
見るからに細身で非力な澪は荒波――ではない凪の海にせよ、オールを漕いで舟を動かすのは少々苦手なのだ。
「そりゃ当然!」
むっと力こぶを作って見せるヴィクトルの腕は水を掻くにもオールを漕ぐにも説得力のある太さ、それだけの推力は生み出せることだろう。
オールじゃなくて後ろから舟を押して行くのでも大丈夫だよ、と冗談めかした口調で付け加えたけれど、やるとなれば実際にやりそうにも感じられる。
海に漕ぎ出した小舟は意外と速く、時折跳ねる波飛沫が顔に当たって少しばかり冷たく感じられる。
「星も勿論見たいけど、魚の群れ、気になるんだ」
小魚が空に登って渦巻くように飛び上がる現象、それがどれほどのものなのか澪は興味津々な様子で、ヴィクトルの方も実際に見るのは楽しみだと言っている。
そして目的の海域に小舟は到着、けれどここではまだ小魚の時間ではない模様。
ただ待っているのもいいけれど――と澪は靴を脱いですっと立ち上がり、海へと一歩足を踏み出して、
「見て見て!」
はしゃいだ声で澪が星の光に照らされる海面を歩いていく。
その仕掛けは風の魔法、集めた風を足の裏に集め、クッションのようにして沈まないようにしているのだ。
万一濡れてもいいように素足になっている澪、ゆらゆら揺れる水上を風のクッションで越しに歩いているから足取りはどことなくふわふわしている。
「よっ……っと」
その不安定にも見える足場でくるりと一回、綺麗にターンを決めてヴィクトルに振り返る。
「えへへ、僕の得意技ー」
「上手いねー。俺だと沈んじゃうかな」
ぱちぱちと拍手するシャチに、澪も照れたように笑う。
――泳ぐのも好きだ。けれど水面を歩くのもそれはそれで好きだ。
今のこの時間のような夜の海をふわふわと歩く――暗い海は星々をゆらゆら映し、星に包まれているようにも感じられる。
花も海も、空も。自然が好きだから、今という時間に浸り体に触れるそれらの感触をたっぷり味わうように楽しんで。
「ん、そろそろかな」
ちょいちょいとヴィクトルが澪に手招きして、澪が小舟に乗って少しして。
ぱしゃっと、一匹。ぱしゃぱしゃと二、五、十――数えるのも難しい位の小魚たちが、渦を巻くように小舟の近くの水面から次々に飛び出し始めた。
螺旋を描くように飛び跳ねるその様は本能に刻まれたものなのだろうか。少なくともパニックでぐちゃぐちゃに飛んでいるわけではなく、整然と飛び跳ね鱗や水飛沫に星の光を反射しながら見事な景色を作り出していく。
「すごぉい……」
ほう、と澪が瞳を輝かせて感嘆の声を漏らす。ヴィクトルの方もその景色に目を奪われているようだ。
彼方には水平線、上にも下にも星の海でありその中を跳ねる小魚たちの渦はさながら星雲のようで、この空間自体が空の中のようにも思える。
「まるで空を泳いでるみたい……」
ゆらゆら揺れる小舟は漆黒の空に散らばる星々の空の間を渡っているかのよう。
欲望の大海――その自然の神秘が稀に作り出す光景を、澪とヴィクトルはじっくりと堪能する。
そして聖夜の奇跡は夜明けと共に終わり、また新しい日々が始まっていく。
幸運が訪れるかは定かではないが、この一日の思い出はきっと猟兵達の糧になるのだろう。
大成功
🔵🔵🔵