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銀河帝国攻略戦㉖～パスワードを示せ

作者：陵かなめ

　アマルテア情報艦隊で得た情報から、スペースシップから拉致された有能な科学者や技術者が、帝国旗艦インペリウムの科学技術センターで働かされている事がわかり、救出に向かう事になった。
　科学者や技術者は、生体コンピューターの部品として、科学技術センターの中央コンピューターの一部に組み込まれており、無理やり引きはがしてしまうと、意識が焼ききれて死亡してしまうということだ。
「もう聞いている人もいるかもしれないけど、捕らわれている科学者さんや技術者さんを助けてあげて欲しいの」
　ルビナ・ベイビーブルー（スペースノイドの電脳魔術士・f01646）はそう言って、詳しい説明を始めた。
　彼らは、元から優秀な技術者や研究者だったけれど、ドクター・オロチの研究に携わるコンピューターの一部とされていた事で、これまでのスペースシップワールドには存在しなかった、高度な技術や知識を得ているという。
　彼らを救出する事ができれば、今後のスペースシップワールドの発展に大きく役立つ事になるだろう。

●パスワードを示せ
　中央コンピューターは、グロテスクな機械の大樹に、果実のように『技術者や科学者が直結されたコンピューターユニット』が無数にぶら下がっているような、冒涜的な外見をしているという。
　コンピューターユニットから『提示される謎』の『正しい解答』を入力する事で、安全に『技術者や科学者』を救出する事が可能になるのだ。
「と、言うわけで、今回の『提示される謎』はこれだよ」
　ルビナはそう言って、謎を提示した。

「パスワードは8桁の数字『ABCDCABD』である。
　ABCD - CABD = DCB であり、
　A + B + C + D + C + A + B + D = AA である。
　パスワードを数字で示せ」

「みんな、分かった？　四種類の数字が二つずつ使われているんだよね？　答えは数字で入力するみたい。とにかく、答えを出してね。お願いします。捕らわれているのは、男性の技術者さんみたいなの。みんな、技術者さんのこと、お願いします」
　そう言って、説明を終えた。

第1章 冒険 『中央コンピューターの謎かけ』

POW   :    総当たりなど、力任せの方法で謎の答えを出して、救出します。 SPD   :    素早く謎の答えを導き出した後、救出した人のケアを行います。 WIZ   :    明晰な頭脳や、知性の閃きで、謎の答えを導き出して、救出します。 👑3 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●導き出した答え
「技術者さん、早く助け出さないと……！」
　花凪・陽（春告け狐・f11916）は、沈痛な面持ちで捕らわれている技術者のことを思う。
　そのためにも、この問題を解かなければならない。
　提示された謎を前にして、猟兵たちは一斉に答えを探し始めた。
「ふむ……。俺らしく力技混ぜつつ行くか！」
　亜儀流野・珠（狐の恩返し・f01686）は、むむと眉を寄せて謎をじっくりと読む。
「ABCD-CABDでDCBならBは0だな！」
　珠の言葉に、皆が頷いた。まずは、そこをスタート地点と考える者が多いようだ。
「でD+Aが10……A-Cは1……むむ……」
「こういうのってひたすら紙に書いていくしかないよね……」
　悩む珠の横で、陽がメモを取り出す。
　ミニステリアリス・グレイグース（夢に囚われし灰塵の徒・f06111）も、そのメモをのぞき込んだ。
「さて、頑張ってみましょうか。とにかく数字の代入が肝心です。総当たりで……あ」
　ミニステリアリスは陽のメモを指でなぞり、頷く。
「『A=2』でいいみたいですね」
「えっと、そうなのか？　ええーと、10+C+10+C=AA……Aが2でCが1ってところか？」
　確かにそうかもしれないと、珠が腕を組んだ。
「はい。C=1です。この状態で減算すると、D=8になりますね」
　と、ミニステリアリス。
　二人の話を聞きながら、陽はメモを書き留めていく。
　陽も自分なりにまとめてみる。導き出した答えは……。
「A=2、B=0、C=1、D=8になるかな」
　だ。
　陽は導き出した答えにアンダーラインを引いて二人に見せた。
「これで合っているといいんだけど……」
「確かめてみましょう。2018-1208=810……うん、これで良さそうです」
「2+0+1+8+1+2+0+8=22……よし、合ってるな！」
　ミニステリアリスと珠がそれぞれアルファベットに数字を当てはめて確かめてみる。提示された謎と見比べても、しっくりくる答えが出たと思う。
「それじゃあ、答えは『20181208』かな」
　陽が言うと、二人は確信をもって頷いた。

●楽しい問題
「ABCD - CABD = DCB　の、一の位の同じDが引かれているからBは0」
　グァーネッツォ・リトゥルスムィス（超極の肉弾戦竜・f05124）は提示された謎を見て、すらすらと答えまでの道を示した。
　問題文にある、『A + B + C + D + C + A + B + D = AA』と言う部分については、ABCDを2回使ってるからAAは偶数の88、66、44、22のどれかであると考えられる。
　Bは0だから（A+C+D）×2で候補の数字を作らないといけない。
　Aが8か6か4の場合だと、CとDが7か8、9を使っても88、66、44にはならない。
　つまり――。
「消去法でAは2」
　次々に、アルファベットに対応する数字を導き出していく。
「ABCD - CABD = DCB　で、千の位のCはAの2より小さいから1。2と0と1とDで22を作るには8しかないし、2018-1208=810になるぜ」
　これですべての数字が出揃った。
「パスワードは『20181208』だな」
　と、結論付ける。
「なるほどなるほど楽しいですねぇ！」
　パルミリーリル・アーティルノッド（くるくる少女・f14000）はグァーネッツォの答えを聞いて、にこやかに頷いた。
「お前は、どんな答えを出したんだ？」
　グァーネッツォに問われ、パルミリーリルが答える。
「『20181208』でございます！」
「お、一緒の結論だな！」
　嬉しそうにグァーネッツォが言った。
「ええ、ええ。それではわたくしの考えを聞いていただけますでしょうか？」
　パルミリーリルはそう言うと、どのように答えを導いたのか考えを述べ始める。
「取りあえず確定は……D-D=BでB=0でございましょうか！」
「出発点はそこだな」
　グァーネッツォが頷いた。
「とすると二桁目のC-B=CもC-0=Cで行けてそうでございますね！　三桁目が10-A=Dと、四桁目はA-C-1=0！」
　パルミリーリルの言葉は止まらない。グァーネッツォは興味深げに耳を傾けた。
「全てAに纏めるとA-1=Cと、10-A=Dでございますか！」
「なるほど、そう来たか」
「では次のAAは……順番を直せば2A+2B+2C+2D=10A+Aでございますね！」
　2A+0+2A-2+20-2A=11A！
　これを計算すると、2A+18=11Aとなり、さらに18=9Aと続けると……。
「A=2でございますゆえABCDは2018！」
「全部計算で出るんだな！」
「はい。AAは偶数の88、66、44、22のどれかであるという考え方も、とても楽しく思います」
　二人は頷き合った。

●饒舌な解説
　浅川・恭介（蕚開く・f01610）も答えを導き出した。
「『ABCDCABD』=『20181208』かな？」
　地道に計算して出た結果なので、おそらく大丈夫だろう。
「ええと、どうやって考えたかはこうです」
　AB-CA=Dということは10の位が無くなるから、A-C=1。
「1BC-AB=DCだからBは0か1……0っぽいな、とりあえずB=0とします」
　0っぽい、と言うところが、いかにも恭介らしい。
　1B-A=Dだから10-A=D、10=A+DになりA≠DだからAとDは5以外。
　A+B+C+D+C+A+B+D=AAということは最小で12、最大で70だから、Aは2～4、6のどれかで、Cは1～3、5。Dは4、6～8かな？　と、言うことで――。
「あとはテキトーに当てはめて計算したら答えが出ます」
「……テキトー、でも、答えは……あっているよ……。私と……違う、道筋」
　恭介の解説を聞いていた中村・裕美（捻じくれクラッカー・f01705）がぽつりとつぶやいた。
「だとしたら、地道に計算したかいがありました。僕はあんまり頭よくないから名推理は無理ですけど。そんなに違う道筋ですか？」
「……では、私の解説……するよ」
　そう言うと、裕美はすっと表情を引き締め語り始める。
「まずD-D=0だから『B=0』」
「うんうん」
「ABCDーCABDで、千の位が消えてかつAとCは違う数字だから『A=C+1』」
　さらに流暢な解説は続いた。
　ここで、今までの関係を「ABCDーCABD=DCB」にあてはめると『A0CD-CA0D=DC0』
　右２つの桁を外すと、「A0-CA=D」これに『C=A-1』と入れると「A×10 -（A-1）× 10 - A=D」だ。
　さらに、すっきりとさせると『D=10-A』となる。
「あとは『A + B + C + D + C + A + B + D = AA』に『B=0』『C=A-1』『D=10-A』を代入すると『A=2』と導き出され、『C=1』、『D=8』となる」
「なるほどです」
　感心したように恭介が拍手をすると、裕美はぱっとうつむいた。
「それじゃあ、やっぱり、答えは『20181208』でいいでしょうか？」
「……答えは『20181208』……」
　解説の時はずいぶん饒舌だったなと思いながら、恭介はうつむいてしまった裕美を見た。

●そして、中央コンピューター
　猟兵たちが導き出した共通の答えは、『20181208』だ。
「さあ救出だ！　考えるのに時間かかった分、一秒でも早く自由にしてやらないとな！」
　珠はそう言って、入力装置まで急いで駆けて行った。
　グロテスクな機械の大樹に、果実のようにぶら下げられた技術者を前にして、猟兵たちは急いでパスワードを入力する。
　結果は――。
　もちろん、正解。
　同時に、ユニットが男性技術者をパージした。
「これなるは組み、築き、織り成す群団。大体の物は真似られるすごい奴らです」
　それを見て、ミニステリアリスが文明に生い茂る灰塵の徒を発動させる。できる限りの大きなクッションを作り、落ちてくる技術者と床の間に滑り込ませた。
　クッションに倒れ込む男性技術者。
　陽が駆け寄り、技術者に手を伸ばした。
「もう大丈夫、安心してね」
「あ……僕は……」
　枯れた声で技術者が答える。
「お水は飲めそうかな？」
　水を差し出しながら、陽が男性の様子をざっと確認する。
　どうやら肉体的な疲弊と言う意味では、深刻な状態ではないようだ。脱水症状も起こしていない。
「ありがとう……？」
　水を受け取り、男性が周囲を見回す。
　そして、表情をこわばらせた。
　先ほどまでの自分と同じように、まだ捕まっている仲間が見えるのだから。
「他の科学者達も俺たちが助ける！　安心して休んでてくれ！」
　男性の心情を思い、珠が声をかけた。
「ええ、そうです。まずは無事生還できたことを喜びましょう」
　ミニステリアリスも男性の疲労具合を確認しながら、静かに伝える。
「他の人達も出来るだけ早く助けるからね」
　陽も、他の技術者や科学者が捕らえられている中央コンピューターをちらりと見た。
　捕らわれている様子を見るのは、本当に胸が痛い。
「ほら、解放軍の医療機関まで搬送するぞ」
　グァーネッツォが期間を促す。
　ともあれ、目の前の男性は救出することができたのだ。
　猟兵たちは急ぎ帰還した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年02月19日