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紫と鏡

#UDCアース

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#UDCアース


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 少女は、この場所に来たことを後悔し始めていた。もともとは、キャッチセールスの口車につい乗ってしまったことによる。品物の購入についてははっきり断ったのだが、その後の話に興味がわいてしまったのだ。
「日頃の煩わしさから解放される、ミラーセラピーっていうものがあるんです」
 キャッチの女はそう言った。少女には初めて聞く単語であった。鏡の前で自分自身と対面することにより、深層意識を引き出すとか何とか……難しい話だった。
 キャッチに付いて行くことが災いの元だとは、当然少女も分かっていた。しかし、キャッチの女と視線を交わした瞬間、そういった警戒心にもやがかかったように、従順に頷くことしかできなくなっていた。
 その鏡は、雑居ビルの地下にあった。打ち放しコンクリート壁の素っ気ない部屋に案内されると、部屋の中央に据えられた大きな鏡の前には、パイプ椅子が並んでい、すでに先客の女が座っていた。ここで、役目を終えたキャッチの女は、神秘的なローブを羽織った、一見占い師ふうのインストラクターへと少女を引き渡した。
「ここでは、あなたの心に正直になれるセラピーを行っています」
 ローブの女はそう言い、少女を鏡の正面、先客の隣へ座らせた。確かに、正面の鏡には、自分ともうひとりが映っている。どんなセラピーを行うのだろう、少女の疑問を制するように、ローブの女が説明した。
「鏡があなたに問いかけます……正直に答えましょう……ではまず奥の女性から」
 先に座っていた女を手本にすればいいか。少女は霊感のたぐいは持ち合わせていなかったので、どういう反応を返せばよいのか分からなかったのだ。しかし、その彼女の杞憂は、悪い意味で外れた。
(答えなさい……お前は快楽と一体になりたいか)
「はい」
 少女の隣で、茶番とも思えるやりとりが始まった。鏡が質問を発したのだ。スピーカーかとも思ったが、そのような小細工はすぐにばれるはずだ。しかし、少女には本当に鏡から声が出ているようにしか思えなかった。こんなことが、どうして……。
 鏡はさらに質問を続けた。そして、鏡に促されて、女は服を脱ぎだした。少女は隣で、ぎょっとしてその様子を見守った。
(私の中にお前を投じ……快楽の奔流に身を委ねるのだ……)
 とうとう全裸となってしまった女は、立ち上がり、鏡に手を差し伸べた。すると、信じられないことが起こった。鏡から紫の輝きが生じ、女の手に触れる。すると、女の身体は、鏡の表面を突き抜けてどんどん中に入っていくのだ。後ろにすり抜けているのではないということは、少女にもはっきりと分かった。
 はたして、その女は鏡の中に消えていった。おかしい。ようやく少女は身の危険を察したが、それは、逃げるのには遅すぎた。
「さあ、あなたも」
 少女は一か八かで駆け出すと、廊下へ続くドアを開けた。逃げてしまえば大丈夫――しかし、その少女の最後の望みは打ち砕かれた。
 廊下には、この世のものとは思えない、紫色ののたくる塊があった。タコかイカか、もしくはミミズか、そのどれかであれば少女も助かったのだろうが、その塊は天井付近まで埋め尽くし、道を塞いでいた。
「ソレとひとつになるか、こちらとひとつになるか……どうします?」
 ローブの女は言った。

 グリモアベースで、集まった猟兵達に壇之浦・叢雲は伝えた。
「UDCアースで、邪神教団の拠点の場所を掴んだぞ」
 任務の内容は至極簡単だった。拠点に赴き、オブリビオン――今回は、崇拝の対象である大きな鏡を撃破すること。ディスプレイに場所を詳しく表示させ、叢雲は説明を続けた。
「拠点はビルの地下だ。いかなる障害も排除して、オブリビオンを葬らなければならないが、今回の目標は、見る者の魔性を映す、といわれている。くれぐれも油断はするな」
 とくにUDCアースのオブリビオンが、精神を蝕み狂気を引き起こすことは、猟兵達にも知れ渡っている。その影響を最低限に抑えるため、叢雲は、任務終了後、猟兵達の自由行動を認めた。
「では、そろそろ転移を始めるぞ。……武運を」


ややばねねねや
 いいかげん紫の鏡が忘れられないややばねねねやです。よろしくお願いします。
 被害者の救出や教団関係者の確保は、裏でひっそりとUDC職員が行いますので、あえてプレイングに記載する必要はありません。
 2章👿では、【トラウマ】や【質問】を扱うオブリビオンが出現します。プレイングに書いていただければ盛り込んでみたいと思いますので、どうぞご利用下さい。
 3章🏠は行動の自由度が高いと思いますので、UDCアースで思い思いに過ごしたい方はぜひどうぞ。
 真面目にもお色気にも、どちらにも振れるシナリオです。プレイングお待ちしています。
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第1章 集団戦 『パープルテンタクルズ』

POW   :    押し寄せる狂気の触手
【触手群】が命中した対象に対し、高威力高命中の【太い触手による刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    束縛する恍惚の触手
【身体部位に絡みつく触手】【脱力をもたらす触手】【恍惚を与える触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    増殖する触手の嬰児
レベル×5体の、小型の戦闘用【触手塊】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

有澤・頼
「気持ち悪い敵だな…」
敵に捕まると厄介だなどう戦おうか…?

敵の攻撃には「残像」で避けるよ。「剣刃一閃」で敵を斬っていくよ。もし、万が一敵に捕まってしまった場合は武器で敵をぶっすりと刺して「傷口をえぐる」で敵の拘束から逃れるよ。

「本当に気持ち悪い…」
早く終わらせてお風呂に入りたい…



 階段を降り目指す地階の扉を開けると、味気ない雑居ビルの廊下が奥に続いていた。その何の変哲もない風景は、しかし、人智も及びつかぬ存在によって、遮られていた。
「気持ち悪いな……」
 開口一番、有澤・頼はその見た目に嫌悪した。タコが何百匹も集まっているように、紫色をした、様々な太さの肉の縄――いわゆる触手が、何本も絡み合って塊となっていた。
 対峙した頼は、刀を抜き、彼我の距離を目測した。できれば、相手の間合いの外で戦いたかったのだ。紫の触手の見た目は、それほどまでによろしくなかった。太く長く、うねっているそれに捕まってしまったら、どうしよう……それを考えると、頼はまったくいい気がしなかった。
 どう戦おうか……? 頼が攻めあぐねていたところに、先を取って塊が動いた。床を這い、頼の脚を掴もうと触手を伸ばしてきたのだ。あっさり脚に絡んだかと思われたが、それは彼女の残像であった。おって放たれた太い触手は、何もない空間に、尖った先端を伸びきらせるだけであった。たとえ気分が悪くても、単純な攻撃に後れを取るほど、やわではない。
「気持ち悪い奴!」
 ふたたび嫌悪の言葉を口にし、頼は触手に斬りかかった。じゅうぶんな間合いを取ってからの突撃。刀を振るったあとは、すぐに距離を置く。ユーベルコードの力が乗った刀身は、あっさりと触手をぶつ切りに斬り落としていった。切り離された触手は、すぐに干からび、消滅する。このまま繰り返せば、いずれこの塊を倒すことができる。
 しかし、そうは問屋が卸さなかった。もう何度目か分からなくなってしまった頼の突撃に、触手はタイミングを合わせ、刀を持つ手に絡みついた。そして、ものすごい力で引き寄せ、触手の塊に頼を押し付ける。このまま呑み込むつもりだ。
「嫌!」
 咄嗟の判断で、刀を逆手に握り替えた頼は、勢いを付けて振りかぶり、触手に切っ先を突き立てた。深々と刺さったこの一撃で、触手の塊はおおいに怯んだ。
「うわ……何これ……、本当に気持ち悪い……」
 至近距離から、噴き出す体液の飛沫を浴びてしまった頼は、正直な感想をつい述べてしまった。早く終わらせて風呂に入りたい頼だったが、この奥に進みオブリビオンを倒すまでには、まだまだ労力がかかりそうだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ビビ・クロンプトン
なんだろ、私、今すごく…そう、怒ってるよ。

こんなの、一刻も早く、倒す…!

SPD

特注ブラスターを用いて中距離戦…!
【クイックドロウ】と【2回攻撃】を駆使して攻める…!
…怒ってはいるけれど、そんな時こそ、冷静に…
UC【ミライヲミルメ】と【第六感】を駆使して、相手の攻撃を【見切り】、避けるよ…
とにかく動き回って、触手に捕まらないように立ち回ろう
捕まったら厄介だし、何より、あれは受け入れられない…

…万が一捕まっても、快楽?に身を委ねるつもりなんて…
…。…全力で、抵抗して抜け出す、よ!
…息が荒い?…戦闘で疲れてる、だけだから…
…ウソなんて、ついてない…
…みないで

※アドリブ、絡み歓迎です



 廊下を埋め尽くさんばかりの紫の触手を前にして、ビビ・クロンプトンはいつになく感情が昂ぶっていた。ただ、その正体はかろうじて把握できている。そう、これは、たぶん怒り。一刻も早く、屠らなければ。彼女の感性には、あれはまったく受け入れられないしろものだった。
「全て、見通す……!」
 ビビは触手の塊から離れ、特注ブラスターによる熱線射撃を行った。触手による反撃は、ユーベルコードの、未来を見てきたかのような予測によってことごとく躱した。放った熱線は、次々に触手を焼き切っていく。彼女は引き金を握り込み、ブラスターのキャパシティが許す限り、熱線を連射した。
 しかし、触手の塊は趣向を凝らした。一旦動きを止めた塊に、ビビは、直感的に危険を感じた。それは遅すぎる報せであった。塊から、大量の細い触手が廊下一杯に放出されたのである。
 避ける余地がなければ、あとは運を天に任せるしかない。少女らしい小さな身体をさらに屈め、できるだけ被害を少なくする体勢で、ビビは触手の波をその身に受けた。
「これは……!」
 塊がぶちまけた束縛する恍惚の触手は、ビビの身体全体にへばりつき、そして這い出した。紐のように縛り上げ、身体の自由を奪うためだ。そしてその触手は、彼女に脱力をもたらし、さらに耐えがたい恍惚を、与えはじめた。
 ビビは、絡みつく触手をほどこうともがいた。しかし、いまの彼女の力では、触手の拘束に抗うことができない。いつもの彼女の力ならばこうはならなかったのだが、これが、相手のユーベルコードの力であった。
 ビビはこれを否定した。これは、度重なるオブリビオンとの戦闘のせいにちがいない。だから、息が上がっていても、疲労しているだけ。だから、快楽に身を委ねるつもりなんて――。
 戦う前に感じていたあの激情は、断じて、触手に翻弄される期待じゃない。次々に湧き上がる性的な興奮を、ビビはかたくなに否定した。私はウソなんて、ついてない……。
「あっ」
 ビビの白い柔肌を蹂躙した触手が、とうとう、彼女の衣装の中に侵入した。うねる触手の群れが、胸の先端に集まっていくのを、彼女ははっきりと感じていた。
 耐えきれずに、ビビは艶めいた悲鳴を上げた。動けない彼女には、いまは救出を待つことしかできなかった。その未来をありありと見てとった彼女は、か弱い声で仲間に懇願するのだった。
「お願い、見ないで……」

成功 🔵​🔵​🔴​

一一・一一
「紫鏡には白い水晶っすかね、いや、地方によって変わるそうっすけど」

噂話から産まれし物語で都市伝説「エクスカリバー」(岩に突き刺さった無数のナイフの都市伝説)を大量に作り出して「投擲」で投げながら近くに来るものに関しては「戦闘知識」を生かしてナイフで「二回攻撃」して斬り落とすっす
他の方が触手に襲われそうになってるなら「専用ワイヤー『スパイダー』」で巻き取って「救助活動」するっすよ
自身が触手に襲われても慌てず斬り落とすっすよ
女顔だけども男っすから、僕



 鏡と言えば。一一・一一はとある都市伝説を思い出した。『紫鏡』である。これは紫色の鏡そのものの話でなく、その言葉を覚えているかどうかで呪いが成立するという、少々特殊な言い伝えであった。その呪いを打ち消す言葉は、彼の記憶によると『白い水晶』。地方によって、この組み合わせには色々なバリエーションがあるが、しかし、期限である20歳を超えてしまった彼には、もはや都市伝説の真贋を確かめるすべもない。
 それよりも、目前の紫の触手であった。猟兵達の攻撃により、だいぶ量は減らしているものの、相変わらず廊下を埋め尽くさんばかりに、何本もの触手がのたくっている。
 一一は、これに対抗する策をひらめいた。触手の数に押し負けないよう、こちらも大量の武器を用意するのだ。それにちょうどよいユーベルコードを、彼は使うことができた。
「友達の友達から聞いた話っすが、狭い場所には、たくさんのナイフが刺さっていることがあるらしいっすよ――それらが今、ここで現実となるっす」
 意識を集中させた一一が念じると、廊下の壁が、ゴツゴツとした岩肌に変化した。そこには、彼の言ったとおり、大量のナイフが突き刺さっていた。噂話から産まれし物語を参考に彼が模したものであったが、それらは極めて精巧にできていた。
 そのナイフを、一一は手当たり次第に引き抜いては、触手に投げつけた。たとえ都市伝説そのものではない偽物でも、刺さってしまえばそれはナイフであり、出自は関係なかった。ナイフの切れ味は抜群で、1投につき少なくとも1本、触手が切断されてぼとぼとと床に落ちていった。少しずつ触手の密度が落ち、廊下の向こう側の景色が透けて見え始めた。
 しかし、触手はそれでも怯まなかった。間合いを詰め、一一に触手を叩きつけようとする。それを彼は壁から抜いたナイフを使い、器用に捌く。
「勘弁するっすよ……。女顔だけども男っすから、僕」
 一一がぼやいたが、触手が聞いてくれるはずもない。見た目に騙されたかどうかははっきりしないが、女性を快楽の渦で呑み込もうとするのと変わりなく、触手は彼を執拗に狙っていた。捕らえて抱き寄せようとするだけではなく、大量の触手を投げつけることまでした。
 身の危険を感じた一一は、咄嗟に専用ワイヤー『スパイダー』を後方の壁に撃ち出した。ワイヤーがしっかり壁に張り付いたのを、小さな手の動きだけで確認し、すかさず巻き取ることによって、彼はその場から素早く避難した。先ほどまでいた場所一帯は、細い触手の波にまみれてしまっていた。
「ナイフ、まだ投げ足りないようっすね」
 後退した距離を取り戻すため、一一は再び壁にナイフを作り出し、1本ずつ引っこ抜いていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ザインクライネ・メーベルナッハ
話には聞いていたが、邪神の眷属たる触手群…なんと猥雑で醜悪なことか。
このような愚劣な存在に、誇り高き騎士として負けるわけにはいかない!

バスタードソードで襲い来る触手を切り払いつつ、地道に敵数を減らしていく。
時々肌を触手が掠め、段々と体が疼いてくる気がするが、気のせいと割り切り戦闘続行…

…だが、徐々に気になって仕方なくなってくる。
あれだけの触手、この身の内に受け入れたら、どんな快楽を味わえるかと…

色欲孕みの騎士の道を発動の上で、触手に身を委ねる。
肉体が傷つきそうな行為は回避か防御するが、それ以外は受け入れて…暫し快感を貪る。
満足したら、強化された武装で戦闘再開だ。
「あぁ…なかなか良かったぞ…♪」



 次第に厚みを失いだした触手の群れを、ザインクライネ・メーベルナッハは複雑な面持ちで、目前に見据えていた。このオブリビオンの姿形の、なんと猥褻で醜悪なことか。このような存在に、誇り高き騎士として、けして負けるわけにはいかない。バスタードソードを構え、彼女は果敢にも触手に斬りかかった。
 触手の抵抗は、ザインクライネには、たいしたものとは思えなかった。襲いかかる肉の縄を、バスタードソードを翻し片っ端から斬ってゆく。この単純な動作を繰り返し行うだけであったが、彼女の足元には、斬り落とされた触手の残骸が廃棄された魚の内臓のように、無造作に転がっていた。
「造作もないな」
 戦闘は順調だった。彼女の心の片隅には、しかし、疑問が生じた。――このまま倒してしまって、いいのだろうか?
 ザインクライネは気にしていなかったのだが、かすめるように避けた触手や、切り離した触手から体液が飛び散り、彼女の肌に触れていたのだ。戦闘を続けていたが、その影響は如実に現れはじめていた。それに対抗すべき高貴なる騎士の精神は、いとも簡単に、触手の魔力に屈してしまった。
 ――触手が欲しい。あれだけの量だ。この身を投じたら、いったいどれくらいの快楽を味わうことができるのか。……いや、違う。これは任務のため、オブリビオンを倒す使命のため、仕方なくすることなんだ、だから――。
 気休めじみた言い訳を口にし、ザインクライネは剣を振るうのを止めた。そして、迫る触手を迎え入れる。肉体の強化と代償に、ここより進むは、色欲孕みの騎士の道。辿り着くは肉の戴き。触手は彼女を優しく包み込んだ。
 胸鎧の隙間に、何の前触れもなく触手が入り込んだ。こうあっては、堅牢なつくりもまったく役に立たなくなってしまう。それどころか、触手に刺激され立ち上がる乳房の突起が硬い鎧に押さえつけられ、身悶えするような甘い刺激を、ザインクライネに与えた。
 愛撫では物足りないザインクライネは、触手をみずから掴み、蜜のあふれる下腹部のさらに底へと、それを案内した。昂欲呪印「ベギールデ・べヴァイス」の作用によって、触手と目合を交わす準備は、すでにできていた。
 自分から動いて、ザインクライネは触手にその身を貫かせた。中から埋め尽くす触手の感触に、彼女はその身を委ねた。痺れるように上下する動きが、彼女を支配した。
 ザインクライネはしばらくの間、うねる肉をしゃぶり、体液を浴び、そして触手の蹂躙を許した。その行為がユーベルコードの力を帯び、あらためて彼女に注がれてゆく。自分から求めておいて身勝手ながら、ザインクライネは触手の戒めを解いた。あふれる膂力に頼んで、彼女は再びバスタードソードを握った。
「……だから、私は淫乱などでは、ないのだ」
 満足した彼女には、もう、触手の助けは必要なかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミーナ・アングリフ
【SPD】
対象、確認…。
これから殲滅に向かうよ…。


姿からは想像できない程の【怪力』で鉄塊剣を振り回して触手の群れを機械的になぎ払いながら進む…。
【絶望の福音】と【第六感】で敵の行動を予測しながら淡々と殲滅していたが、いつしか触手に周囲を囲まれていて、捕えられたり…。
最初は【怪力】や鉄塊剣から炎(【属性攻撃】)を放って抵抗していたが、力を奪われ、身体を触手に絡みつかれて完全にされるがままといった状態に…。

幼いながらも奴隷だった頃の経験でそういう経験も数多くさせられ、刺激や快楽に敏感な為、触手からの快楽に耐えられず流されそうに…。


この、離して…ひゃぁ…!…また、堕ちる…蕩けちゃう…

アドリブ歓迎



 ミーナ・アングリフが地下に着いたときには、戦闘は佳境を迎えていた。床には、猟兵達によって今まで斬り落とされた触手が、足の踏み場がなくなりそうなくらい、ばらばらと積み重なっている。その先には、体積を大きく減じた、触手の塊の姿があった。
「対象、確認……」
 ミーナが構えたのは鉄塊剣。彼女の体躯とは比べものにならないほどの大きさだが、同様に彼女の姿からでは想像できない膂力で、通路の狭さもお構いなく、触手に斬りかかっていった。
 みずからを戦いの道具と定義するミーナは、無感情、無表情で、触手をひたすらに斬り続けた。相手はオブリビオン、しかもとびきり醜悪な姿の物体である。かける慈悲は、当初より彼女は持ち合わせていなかったし、それを省みることも、彼女はなかった。
 もちろん、触手は反撃を試みた。また大量の小さな触手を吐き出したが、それはミーナが予知するには朝飯前だった。ただ投げつけるだけなので、そもそも命中させにくい攻撃ではあったのだが、彼女にあっさり予測されてしまったことも不利に働いていた。
 ミーナは、淡々と、ただ目の前の触手を薙ぐことと、自分に向けられる触手を躱すことだけに集中して攻撃を続けていた。しかし、そこに落とし穴があった。彼女は、床、天井にびっしりと、別の触手が這い出していることに気付かなかった。彼女が辺りを見たときには、すでに周囲は触手の壁、床、そして天井と化していた。
「しまった……!」
 優先順位を攻撃から退避に切り替え、ミーナは振り返って逃げようとした。その動きは、しかし、逆に触手の想定の範疇だった。後方に駈けだした瞬間、上から大量の触手が垂れ下がり、彼女の視界を覆った。急に立ち止まれなかった彼女は、そのまま、しだれた触手に飛び込み――拘束された。
「この! 離して……!」
 ミーナの力をもってしても、触手はどうすることもできなかった。触手は彼女を捕らえたと分かると、頭上から大量の粘液を分泌し、垂らした。これは触手の滑りをよくして獲物の脱出を阻止するだけでなく、彼女に決定的な効果を与えた。粘液でぬめる触手が彼女の肌を這い、締め付けるたびに、彼女に抗いがたい快楽を与えたのだ。
 ミーナは耐えきれず、嬌声を上げてしまった。瞬時に幼い頃の記憶が、彼女の頭をよぎる。奴隷として扱われ、欲望を満たすための道具として扱われた記憶だ。そしてそれは、彼女の鋭敏な感覚を、性的な方向に振るきっかけともなった。
「嫌、とろけちゃう……」
 触手がミーナの少女らしい柔肌をこすった。粘液まみれの触手は、擦過することなく彼女をオルガスムスに至らせしめる。彼女は許しを乞うた。しかし、その許しを与えうる主人はもういなかった。いるのは、猟兵を憎み、犯し、辱めようとするオブリビオンだけだった。
「また、堕ちる……」
 触手の壁は、もう少しで撃破できる見込みだった。しかし、その前にミーナは、絶望のひとときを、過ごすことになる。

成功 🔵​🔵​🔴​

向坂・要
こいつぁまた悪趣味というか…

さて、お仕事と参りましょうかぃ
触手塊に対し呼び出すは吹雪を纏うシマフクロウ達
可能なら本体ごと纏めて凍りつかせたいとこですねぃ
その方が砕きやすってなもんで

自身もtoguz tailsにフェオとユルのルーンを宿し【なぎ払い】【衝撃波】【毒使い】などで攻撃

アドリブ、絡み
歓迎しますぜ



 雑居ビルの地下で向坂・要が見たものは、猟兵達とオブリビオンが激しく戦った形跡であった。もっとも、戦いはまだ続いてはいたが。
「なるほどな。こいつぁまた、悪趣味というか……」
 要の視線の先に、触手の塊はまだいた。それらは、かつてはまだ廊下を塞ぐほどの威容であったが、もはや大きさを失い、動きは鈍かった。もごもごと小さな触手が、太い触手の間から現れ、地面に落ちた。それらはまるで、大きな触手に操られる手下のように、いくつかの塊となって要と対峙した。
 さて、どうするか。小さな触手の塊は、要が身構えているあいだも次々に生み出されていた。ひとつひとつ潰していては、きりがない。少々の思案ののち、要は、この状況にうってつけのキーワードに思い至った。氷だった。
「それじゃあ、お仕事と参りましょうかぃ――さぁ、おいでませ、吹雪を纏うシマフクロウ達」
 要は、エレメンタル・ファンタジアを発動させた。このユーベルコードで彼が合成した要素は、氷と吹雪。梟を模した氷像が、猛吹雪とともに舞い上がり、粉々に砕けてきらめく氷のつぶてとなる。それらが勢いよく、極低温の風とともに吹き付けることによって、小さなものは貫き、また大きなものにはまとわりつく氷となり、自由を奪うのだった。たとえ廊下のような狭い空間でも、それは変わらなかった。
 これで、産み落とされた触手の塊は一掃された。残るは、低温と氷で動きの鈍くなった触手の本体である。愛用のtoguz tailsを構えると、要はルーンを刻み、力を与えた。
「これなら、俺にも砕きやすいってなもんでね」
 ”九尾”の名を持つそれは、ᚠ(フェオ)とᛇ(ユル)のルーンを宿し、幾重にも重なって見えだした。残像のようにも見えるが、これはひとつひとつが実体を持ち、相手に幾多の傷を負わせるのだ。今回要が付与したルーンの力は『成就』と『死』の要素。ひと振りごとに、激しい打撃と死毒が、オブリビオンを蝕んでいった。
 要は、toguz tailsの名にふさわしく、幾度となく繰り返し打擲し、オブリビオンを打ちすえた。苦しみのたうち回る触手が、動きを完全に止めたのは、それから間もなくのことである。
「もうひと仕事、いきましょうかぃ。ここからが本番、というワケでして」
 廊下は猟兵達が制圧し、奥にある邪神教団の拠点へと続く通路が確保された。要は後続の猟兵に告げると、奥の拠点を目指した。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『『貴方の魔性を映す鏡の女神・スペクルム』』

POW   :    『アナタは、私(アナタ)の過去に囚われ続ける』
【対象自身の過去のトラウマを抱えた姿】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    『欲望に素直になりなさい、"私(アナタ)"』
質問と共に【対象の理性を蕩けさせる甘い香りと囁き】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
WIZ   :    『アナタが"私"を認めるまで、躾てあげる』
【従属の首輪】【躾の快楽触手】【欲に堕落する媚薬の香】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠風雅・ユウリです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

向坂・要
なるほど、欲を写す鏡、ですかぃ。
それはそれで興味深いもんがありますが…

とはいえ躾に喜ぶような性癖は持ち合わせがないもんでね
お断りさせて貰いますぜ

放たれる触手、首輪、香に対し
【第六感】を活かし【見切り】。
【残像】の相手でもして貰いましょうか

さぁて、頼みますぜお前さん達
招くは真空の竜巻を宿す猛禽類

toguz tailsに宿すフェオ(風)にシゲル(太陽)による【属性攻撃】【なぎ払い】【衝撃波】
味方の援護もできりゃしたいところ

アドリブ
絡み歓迎


ミーナ・アングリフ
奴隷としての過去に囚われ、与えられる快楽にも非常に弱いミーナにとって恐らく相性最悪の相手…。

触手に弄ばれた影響で未だに視線定まらない状態で相対。
炎【属性攻撃】を纏った鉄塊剣を【怪力】で振り回して叩き割ろうとするが、力が入らず簡単に回避されたり防がれたり。
咄嗟に自分の腕を切って【ブレイズフレイム】で応戦するが、反撃にそのままトラウマと甘い香りで心を崩されて戦えなくされ、虚ろなまま敵の躾を受け入れてしまうように…。
そのまま敵を主人として屈してしまいそうに…。

「もう…たたかいたく、ない…気持ち良いことだけ、してたい…」
「ごしゅじん…さまぁ…」

アドリブ他の人との絡み歓迎



 このビルに入ってから、すでにどれくらいの時間が経ったのか、ミーナ・アングリフにはとんと見当もつかなかった。さきの戦闘ですでに消耗しつつあった彼女は、おぼつかない足取りで邪神教団の拠点へと続く扉を開けた。そこは、がらんとした部屋だった。
 ちょっとした集会場くらいの味気ない部屋に、その鏡はあった。部屋に入ったミーナから見ると、鏡は部屋の奥、おそらく教徒や連れられた犠牲者に向けられて、その背面を見せていた。
「これが、魔性を映す鏡……?」
 ミーナはふたたび鉄塊剣を構えた。視線の焦点がぶれる。疲労のため重さに耐えかねた四肢が震え出す。彼女はお構いなく、剣に炎の魔力を宿らせた。
 突然、鏡がミーナの方を向いた。鏡は床に固定されてはいないようだったが、ひとりでに動いたのだ。それはからくりではない、オブリビオンだった。
 おって部屋に入った向坂・要も、その鏡を見た。鏡は何の変哲もなく、縁のつくりもシンプルなものだったが、彼は、鏡面からはただならぬ雰囲気を感じとった。
「魔性とは――なるほど、欲を写す鏡、ですかぃ。それはそれで、興味深いもんがありますが……」
 しかし、要が身構える前に、ミーナが鏡に斬りかかった。鏡はその静かな佇まいとは裏腹に、素早く動いて剣戟をかわした。動くはずのない鏡の滑らかな動きに、身体に力の入らないミーナは、追随できなかった。彼女は疲れた様子で、剣の切っ先を床に乗せなければならなかった。
 後方に退いた鏡から、煙のようなものが噴き出した。それは部屋の中に、あっという間に充満した。煙はまるで火事のように濃く立ちこめ、ふたりの視界を奪った。要はとっさに服の袖で口と鼻を覆い、できるだけ吸わないようにした。甘ったるいような、強烈な匂いだ。一方で、ミーナはその煙に対処できず、煙をまともに吸ってしまった。
 その煙は、香であった。ただ匂いを振りまくだけではない。嗅ぐ者を欲に堕落する、媚薬の香だ。ミーナの身体にすぐに変化が現れ、彼女は剣を取り落とした。そしてそのまま、床に膝をつき、彼女はぺたんと座り込んだ。
 ついで鏡から現れ、二人に放たれたのは、動きを拘束しようとする首輪と触手。次の手を警戒していた要は、そのいずれにも捕らわれることはなかった。鏡から何かが来るという勘が働けば、かわすのはそれほど困難なことではない。
「おっと、それはお断りさせて貰いますぜ……そういうのに喜ぶような性癖は、持ち合わせがないもんでね」
 しかし、ミーナはその両方の攻撃を食らった、というよりは、受け入れた。彼女は自身のその様子を、鏡越しに見た。がっしりとした黒い首輪が巻き付き、触手に覆われつつあるその姿は、かつて奴隷として過ごしていた自分の姿と、重なって見えた。
「おいおい、お前さん、しっかりしなさいな」
 要がミーナに駆け寄り声をかける。しかしミーナは、焦点の定まらない目つきで、要の言葉など耳に入っていないようであった。
「もう……たたかいたく、ない……」
 ミーナの意識は、すでに雑居ビルの地下ではなく、奴隷として過ごしたかつての場所に移っていた。そのときに受けた調教、被虐、羞恥が、いまミーナの身体を這いずる触手の刺激とオーバーラップして、彼女の劣情を刺激する。
 ミーナは、鏡に話しかけられた気がした。
 欲望に素直になりなさい――はい。
 私の言うことを聞きなさい――はい。
 淫らな本性を晒しなさい――はい。
「はい……ごしゅじん、さまぁ」
 恍惚とした表情で、身体に巻き付く触手と戯れだしたミーナに、要は思わず視線を逸らした。いかなる声も響くことはなく、このままでは、彼女が鏡の餌食になってしまうことを、要は防げそうになかった。
「こりゃ、鏡をやった方が手っ取り早いか……ほら、頼みますぜお前さん達!」
 要はtoguz tailsを構え、再びルーンを刻んだ。彼が用いたᚠ(フェオ)とᛋ(シゲル)のふたつが表す要素は、『風』と『太陽』。力が付与されたtoguz tailsを振るうと、その勢いで部屋中に漂っていた怪しい香が吹き飛ばされ、視界が晴れた。
 ついで呼び出したのは、真空の竜巻。その竜巻は鷹に姿を変え、煙を消し去った風が止む暇もなく、部屋中を飛び回った。鏡の縁、表面に、真空が生じる刃による細かい傷、しかし消えない傷が刻まれ、少しずつ白く”汚れ”ていった。
 不意に、ミーナにはめられていた首輪と触手が、消えた。鏡によるユーベルコードの影響から逃れたことを、それは示していた。要はそれに気付くと、彼女に再び駆け寄った。
「だいぶ苦しんでいたようですが、無事ですかぃ」
「あ……わたし……」
 部屋の周囲を見、ミーナは我に返った。剣を杖代わりに立ち上がったが、身体はまだ快楽に打ち震え、まともに力が入らない。
「さぁ、ここは一旦外へ」
 要に支えられ、ミーナはともに廊下へ退避した。戦闘には仕切り直しが必要だった。要はミーナをなだめた。
「休むことも重要ですな。時間はあるんで、ゆっくり作戦を考えましょうや」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

有澤・頼
「ついに本命だね。」

うーん、さっきの触手とまた違った意味でやりにくい相手だな。どうしようかな…?ここはやっぱり正攻法でいくしかないかな…?「フェイント」をかけてスパッと「剣刃一閃」で攻撃しよう。
トラウマは…私子供の頃に実験体だったの。ある日、2人の親友と一緒に3人で実験施設を脱走した際に親友のうちの1人が私たちを庇って死んでしまった。それが私のトラウマ。本当なら死ぬのは私だった筈なのに…

「お前…!」
見たくない、もう大切な人が死ぬのは見たくない!邪神は斬る!絶対に!



 有澤・頼はドアを開けた。中は教団の拠点で、鏡がひとつ鎮座しているだけ――少なくとも、彼女がドアを開けるまではそうだった。
 しかし、部屋に入った頼は、薄暗い空間の真ん中にいた。おかしい。まるで夢を見ているような感覚だった。しかし、目の前の光景は、彼女には現実のように思えた。
 頼の眼前には、3人の子供がいた。ひとりが地面に横たわり、残りの二人が、その子にすがりついて泣いていた。
 これは――頼は思い出していた。嫌な記憶だ。かつて、彼女は実験体である運命から逃れるため、ふたりの親友といっしょに施設を脱走したのだ。しかし、途中で追っ手の襲撃を受け、頼を庇った親友のひとりが、落命してしまった。3人の子供というのは、頼自身と、親友だ。
 ふたりは、もう動かなくなった子の名前を呼び続けていた。その名前を聞くたびに、頼の心はちくちくと痛む。それは今に至っても変わらない。
 ……それにしても、これがそのときの光景なのだろうか。頼は記憶の奥底から、そのことを思い出そうとした。実際、こんなふうに二人で泣いていただろうか――?
『この子は、あなたの代わりに死んだの』
 残された親友が、過去の頼に言った。かつての自分は、答えた。
『うん、私が死ねばよかったのに……』
 頼は訝しんだ。自分はこう言ったのか。しかし、答えはすぐに分かった。
『今からでも、やり直せるよ。私が死ねば』
 驚いたことに、過去の頼が、そこにいないはずの現在の頼に振り向き、言ったのだ。その表情は、子供の頃の自分の者に間違いなかったが、ひどく邪悪に見えた。この記憶は、どうやら本物ではないらしい。彼女の背筋に悪寒が走った。これは、オブリビオンのユーベルコード――。
『そう、あなたが、死ねばよかったのに』
 その親友の顔も、果ては倒れている親友の顔も、頼のものに変わっていた。3人の過去の頼は、口を揃えて、言った。
『私が死ねばよかったのに』
 次の瞬間、頼は友斬を抜き、いちどに斬った――3人を、忌々しい記憶を。
 頼は心に決めていた。思い出に甘えることも、思い出に囚われることも、あってはならない、と。これは、墓場まで持っていくと覚悟した忘れてはならない記憶だが、その記憶は、何人たりとも触れさせない。それがオブリビオンであれば、なおさらだった。
「お前……!」
 頼の口元は、怒りでゆがみかけていた。彼女の周囲は、雑居ビルの部屋に戻っていた。鏡に大きくひびが入り、散らばった細かな破片が照明を反射して細かく輝いていた。
「見たくない……! もう大切な人が死ぬところは見たくない!」
 ふたたび、頼の友斬が弧を描いた。鏡はかわそうとしたが、かなわなかった。ガラスを切ったときのように、鏡の端が大きく斬られ、力なく床に落ちた。その鏡は、大きな音を立てて、粉々に割れた。
 頼の双眸から、涙の粒が落ちた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ザインクライネ・メーベルナッハ
これが邪神か…なんたる淫靡な雰囲気。
これはこの世に存在してはならないモノだ、早急に仕留めねば。

…何だ?鏡の中に私が…いや「これ」は…
…私だ。かつて淫女の娘と蔑まれ、私もそうなのだと決め付けられ、苦悩していた私。苦悩しつつも、己の肉欲に逆らえなかった私の過去。
それが私に対しても、欲望に屈すれば楽になれると誘いながら攻め立ててくる。
周囲の雰囲気に中てられたせいで十分に抵抗できず追い詰められる。

苦痛呑む肉欲城塞を発動、攻め立てられる快感に身を委ねつつも反撃の機を窺い、隙を見てスペクルムへ攻撃を仕掛ける。
欲望を呑み込み、それでも誇りは捨てない。それが私の騎士としての道だ…!



 ドアを開けるやいなや、ザインクライネ・メーベルナッハは、部屋に満たされた禍々しい気を感じ取っていた。気を惑わす香自体はすでに晴れ、鏡も無傷では済まないが、なお、その不気味な佇まいは健在であった。彼女はバスタードソードを構え、攻撃の糸口を探そうとした。
 ほんのわずかな隙も、ザインクライネにはなかったが、しかし、鏡は悠々と先手を打つことができた。相手の姿をその身に映す――つまり、相手に見られる――だけで、ユーベルコードを発動することも可能なのだ。今回も、その条件を満たしていた。
「何だ? 鏡の中に、私が……いや、『これ』は……」
 ザインクライネの視線の先に、鏡に映し出された自分の姿があった。それがおかしなことは、彼女にはすぐに分かった。
 ――私だ。母親の放蕩ぶりから、淫女の娘と蔑まれただけでなく、自身も母親と同じ存在であると偏見で決めつけられた、ザインクライネ自身の過去の姿だった。鏡の中の自分は、理不尽な境遇に苦悩していたはずだった。それだけではないことは、しかし、彼女自身、よく分かっていた。
 ――己の肉欲に逆らえなかった私だ。嫌で嫌でしかたなかったのに、そこから抜け出せなかった。自分から、母親と同じ道を進むことを選び、肉欲に塗れてしまったのだ。ザインクライネは思った。いま猟兵となっていなければ、はたしてどうなっていたか。
 その答えが、目の前にあったような気がした。鏡に映るかつての自分は、現在のザインクライネと同じくらいの年齢を重ね、姿を変えた。猟兵と、娼婦。ふたりのザインクライネが対峙した。
『欲望には勝てなかったよ……ザイネも気持ちよくなろ?』
 目の前の自分が言った。言葉とは裏腹に、同じバスタードソードを持ち、斬りかかる。甘い誘いで油断させ、罠にはめるつもりか――。ザインクライネは、とっさにユーベルコードを発動させた。
 鏡像の剣が、ザインクライネの腹を破った、はずだった。しかし傷ひとつつくことはなく、彼女に力が満ちあふれる。同時に沸きあふれる快楽を、ザインクライネは必死に耐えていた。
「そうだ、それでいい……。お前のありったけの快楽を、私にぶつけろ……」
 かつての自分から、目を背けることはザインクライネにはできなかった。たとえオブリビオンのユーベルコードといえど、それが自分自身であるならば、その欲望を受け入れ、呑み込まなければならない。彼女はそう考えていた。
 ――だからこそ、私は今こうやって、猟兵として立っていられるのだ。
 ――だからこそ、私は今も、騎士の誇りを持っていられるのだ。
 攻撃を続けていた鏡像の姿が、ぼやけ、揺らめき、そして霧消した。好機だ。
 ザインクライネは、ふたたび剣を構え、鏡に斬りつけた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ビビ・クロンプトン
さっきは、触手のせいで、酷い目に、あった…
服もちょっと、破れてる…最悪…もう、本当に、許さない…
あの鏡が元凶だね…絶対、割るから…

SPD

引き続き特注ブラスターで中距離戦
まずは【先制攻撃】で先手必勝…
UC【クイックドロウ】で連射、今回はとにかく攻撃重視…
相手の攻撃は【第六感】で予測して【カウンター】で反撃するよ…

…っ、何、この香り…
…私が、求めている、もの…?
…それは…
…私を一番に、大事に想ってくれる、人…
…身勝手で、我儘な願い…そんな自分が、嫌になる…
私は一人でよかった、はず、なのに…

あなたは…もう、消えて
あなたがいると…私の心がぐちゃぐちゃに、なる…

※アドリブ歓迎です



 まだ粘液が乾ききらない服のままで、ビビ・クロンプトンは扉を開けた。肌を擦る服の感触が、彼女のしゃくに障っていた。それだけでなく、触手が暴れたために、ほんの少しではあるが服が破けてしまったのだ。
 部屋の中央に、傷つけられた鏡が座していた。元凶のオブリビオンは、まだ動きを止めていないようだった。
「絶対、割ってやるから……」
 ビビは特注ブラスターを抜き、間髪入れずに撃った。鏡面でいくらかのエネルギーは反射されたが、それにもかかわらず、熱線は鏡の表面を赤熱させ、ゆがませた。たとえ冷えても、鏡としての機能は大きく損なわれるはずだ。
 触手の時のような事態になることを警戒し、ビビは打ち続ける作戦を選択した。回避の動きは最低限に、そしてそのあともすぐ反撃に転じるつもりだった。
 鏡は、しかし、反撃らしい反撃を見せなかった。その代わりに、別の形態のユーベルコードを発動させた。
「……っ、何、この香り……」
 突然、ビビの鼻腔に甘い香りが広がった。彼女が部屋を見渡しても、ガスや煙が充満した様子は見られなかった。次の瞬間、強烈な眠気が来たかのように、思考能力が低下するのを、彼女は感じた。
 囁き声が聞こえたことで、かろうじてビビは何が起きたのか理解した。香りも声も、鏡のものだろう。こうして、思考能力を喪わせて、命令に従わせるつもりなのだろう――しかし、それを理解していても、香りの官能には抗いがたかった。
 ビビの身体が、ふたたび反応しだした。さきほど触手に舐られたばかりの胸の先端がまた疼き、きゅん、とその身をしこらせるのが服の上からでもはっきりと見て取れた。
『欲望に素直になりなさい……あなたの求めるものは何ですか……』
 鏡がビビに尋ねた。こんな質問を受けるなど予想すらしていなかったが、いまの彼女には正常な判断は難しかった。彼女は、ひとりの人物を思い浮かべた。どこか懐かしい感じのする、後ろ姿だった。
 ――それは……、私をいちばんに、大事に想ってくれる、ひと。
 ビビの想像の中で、その人物は振り返った。しかし、肝心の顔がぼやけて見えない。その人物は彼女に手を差し伸べる。そこで、彼女の想像は途切れた。
 いや、やめよう。これは、勝手で、我儘な願い。こんな浅はかな願いを持ち、頼ることしかできない自分が、嫌になる。私はひとりで生きてきた。そしてこれからもひとりで生きていく。それでいいのだ。
 しかし、鏡はそれを許さなかった。鏡は言った。
『無理はしナクていいんダ。ビビ。安心しテ』
 ビビの想像する人物の顔が、記憶としてはっきり蘇り、映った。それがかえって、彼女の目を覚まさせることとなった。
 ビビは、ブラスターのトリガーを引いた。熱線はその人物をすり抜け、鏡に命中した。鏡のゆがみは広がり、大きくひしゃげた形になった。
「あなたは、もう、消えて」
 記憶の人物に引導を渡し、ビビは言った。
 ――あなたがいると、私の心がめちゃくちゃになってしまうから。

成功 🔵​🔵​🔴​

一一・一一
さてさて、鏡相手には物理攻撃のほうが良いっすかね
というわけで『噂話から産まれし物語』で「ドライバー」のマイナスドライバーを作りづづけてひたすら「投擲」で投げるっすよ
気分はダーツ投げっすね
相手の質問は…そうっすね
「都市伝説としか恋ができない」みたいな質問が来るのなら普通に「いや、僕、都市伝説はそういう対象じゃないんで」って答えるっす
憧れであってもそういう対象じゃないんすよ、たまに友人の都市伝説(UC)のこっちを見る目怖いっすけど
「本当は女の子になりたいんでしょ?」みたいな質問がきたらクイックドロウでスナイパーライフル撃つっす
僕男っすから、男っすから



 大きくひびの入った鏡に対し、一一・一一は最後のひと仕上げにとりかかった。彼が鏡を壊すために用意した、噂話から産まれし物語は、マイナスドライバーだった。
「のぞき穴からむやみに覗くと、危ないっすよ……今からそれを現実にして、見せてあげるっす」
 友達の友達曰く、といういつもの口上を述べ、一一が都市伝説を呼び出す。顔くらいの高さで、小さな横穴に深々と差し込まれたネジ回しのグリップが、近くの壁に現れる。それを手早く掴むと、ダーツの要領で、彼は鏡に向かってマイナスドライバーを投げた。
 ドライバーは軽いひねりを加えられると、ほぼ一直線に鏡へ向かい、貫いた。といっても、貫いたのはネジ回しのスチールシャフト部分だけで、太いグリップが穴の縁に引っかかり、鏡に刺さったままとなっている。
「まだ必要っすかね……?」
 鏡が激しく割れ、ばらばらに飛び散らないのを不満げに見遣りながら、一一はふたたびドライバーを呼び出し、それに手を伸ばした。鏡がくたばるまで、何本でも投げるつもりだった。
 しかし、それは鏡によって阻止された。突然、周囲にむせるような甘い香りが漂うと、一一の呼び出した都市伝説は、一瞬にして消え失せた。すると、耳元で誰かが囁くような、かすかな声が彼の耳に入った。
『本当に好きなこと、すればいいよ……』
 好きなこと? 揺さぶりにはじゅうぶん警戒していたのだがが、唐突に言われ、一一は真意をはかりかねていた。何のつもりで、それを言うっすかね。
 次の瞬間、ボロボロの鏡の奥にかろうじて映った一一の姿が、変化した。それを見た彼は、ようやく鏡の囁きの意図を理解した。おそらく彼が好きになるであろうものごとを、見せてくれるのだ。
 鏡の中の一一は、少女を模した古い人形を愛でていた。夜中に動くか、もしくは髪が伸びるか……おそらくはそんなところだろう。彼は”彼女”に、過剰なほどの愛着を示し、ただの人形に対するものではないような行為を、致していた。
『――現実の人間に、恋ができないんじゃないっすか?』
 鏡の中の自分が、一一に問うた。都市伝説にしか恋できないのか、と。彼は即座に否定した。オカルトは好きだけど、憧れであってそういう意味ではない。たとえ、自分を冷ややかに見る友人の視線が痛かったとしても、そうではないのだ。
 それなら――と、鏡の中の自分が質問を変えた。
『――こんなふうになっちゃえば、いいんじゃないっすかね』
 突然、鏡の中に、きらびやかな衣装に身をまとった一一が現れた。レースをあしらったスカートとブラウス。これは。彼はうろたえた。
 鏡の中の一一が、さらに衣装を変えた。ナース、キャビンアテンダント、はてはバニーガール。見た目はともかくとして、どれもこれも、鏡の中の自分は堂々と着こなしている。違う。
『本当は、女の子になりたいんでしょ?』
 鏡が訊いた。ありえない。怒りか羞恥か分からなかったが、突然の衝動がはたらき、一一は背負っていたスナイパーライフルをとっさに構えた。そして、次の瞬間には、彼は引き金を引いていた。高初速のライフル弾が至近距離で命中し、偽りの彼の姿を、そして鏡を、粉々に砕いた。割れた鏡は、その輝きを、光を、失っていた。
「――僕、男っすから」
 硝煙の匂いが、一一の鼻をくすぐった。彼は辺りを見、すべてが終わったことを認識すると、息苦しい地下室の扉をふたたび開け、外へと歩き出した。
 猟兵達は鏡の誘惑に打ち勝ったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ストレス発散で狂気を拭い去る』

POW   :    スポーツや大食いなどで、ストレス発散

SPD   :    ショッピングやゲームなどで、ストレス発散

WIZ   :    読書や映画鑑賞などで、ストレス発散

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ビビ・クロンプトン
POW

…触手には酷い目に合わされて、鏡には不愉快な目に合わされて…
…自分の機嫌がよくないって、はっきりわかる

シャワーは浴びたし、服も着替えた…
少し気分転換…しよう…

…うん、スポーツジム、行こう…
時々、身体がちょっとむずむずするし…身体を動かせば、治まる、かも…
ストレス発散には、運動が、一番…

…サンドバッグだ
うん、これをボコボコ叩いて、ストレス発散…
…すごく、ギシギシ音がする…つくりが、弱いのかな…

…?気のせい、かな。周囲の人から、見られてるような…
それも、みんな、驚いているような、引いている、ような…
…居心地、悪い…注目されるのは、好きじゃない…

…やっぱり、帰ろう…
今日は、散々だった、な…



 戦いの汚れをシャワーで流すとようやく、これで終わったんだとビビ・クロンプトンは実感を持てるようになった。しかし、触手は気持ち悪かったし、鏡には不愉快なものを見せられ、オブリビオンを撃破して溜飲を下げる、という段階には、まだ彼女は至っていないようであった。
 それが、ビビがいまスポーツジムにいる理由である。ウェアに着替えると、彼女には自然と動きたくなってくるような気がした。現に彼女は、戦闘の影響でむずむずして、まだ治まらないところが残っているだけでなく、自分でも分かるくらい、むしゃくしゃしていたのだ。
 何か、気分転換、ストレス発散になるもの――あれだ。
 ビビが目を付けたのは、サンドバッグだった。ちょっと軽くポンポンと殴ってやれば、機嫌の悪さも直るだろう。そう思ってはいたのだが。
 グローブをはめ、小気味よくリズムを取って、左右の拳を入れる。1・2・3、1・2・3・3、2・2・3。相手からの反撃を予想してスウェーバック。グローブがサンドバッグに当たる音が、軽快にジムに響き渡った。これなら、いい……。ビビは気をよくして、ひと汗かいていこうと決めた。
 しかし、結果的にこれがよくなかった。ビビはつい熱中してしまい、知らないうちに、猟兵としてそれなりの力を使おうとしてしまった。サンドバッグが、ちょうど鏡と同じ高さに見えたのも作用したのかもしれなかった。
 いずれにせよ、ビビが異変を感知するまでには少し時間がかかった。はじめは、サンドバッグを繋ぐ金具のきしむ音が、やたらうるさく聞こえたことだった。つくりが弱いのかな? しかし、もちろんのことだが、そんなことはなかった。彼女が叩きすぎているのだ。
 しばらくすると、ビビは周囲から視線が集まるのを感じた。ジムに通う人々は、当然のことながら、猟兵の存在を知らない。そのなかで、年端もいかぬ少女(UDCアースの基準では小学生である)が、一心不乱に、強烈なパンチをサンドバッグへ、しかも連続で叩き込む。目立たないはずがなかった。
 居合わせた一般客、はてはインストラクターまでもが、唖然とした表情でビビを眺めている。それにようやく気がついたビビは、とたんに手加減したが、それが遅すぎたのは、言うまでもない。
 こうなると、ばつが悪いのはビビ本人であった。自身がサイボーグだとは誰も知らないし、たまたま運悪くこうなっただけであって、本来、彼女は注目されるのは好きではないのだ。彼女はしかたなしに、通り一遍のクールダウンをこなすと、そそくさとジムをあとにした。
 ――早く明日になればいいのに。ビビにとって、今日は散々な一日であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ザインクライネ・メーベルナッハ
このまま帰るにも、心身に燻るものがどうにも収まらん。
それは邪神の狂気の残滓なのか、それとも…

そうして悶々としながら、歓楽街へと足を向け。
暫し彷徨い歩いているうち、何やら軽薄そうな男達から声をかけられる。
共に遊ばぬか等と誘われるが、私の身体が目当てなのは視線で分かる。
普段ならば一顧だにせぬ相手だが…正直、あのような戦の後だ。人と交わうことで、あの狂気を遠ざけてしまいたい。

故に承諾する。法に触れぬ範囲ならば、どのような遊びにも付き合おう。
私の身体を所望ならば、今夜だけは許そう…私にとっても、…己への褒美は欲しいから、な。



 これは邪神の狂気の残滓なのだろうか。
 ザインクライネ・メーベルナッハは、鬱屈たるものを己の奥に感じていた。たとえて言うならば、火が消えず、燻っているままになっている、といったところだ。そのため、グリモアベースに帰還するのを、彼女は少し待つことにしたのだった。
 UDCアースではどこにでもある都会の繁華街を、ザインクライネは行くあてもなく歩く。少し身体を動かせば、悶々とした気持ちが晴れるだろう、そう思っていたのだが、どうやらその予想は外れた。
 いつしか、ザインクライネは街路を奥へ入り、歓楽街へと歩を進めていた。あたりには夜の帳が降り、昼間とは別の顔を見せ始めていた。このさんざめきを、彼女は自然と求めていたのかもしれなかった。
 夜の街で年頃の女がひとり歩けば、狼に出くわすのは世の常である。ザインクライネが、いわゆるナンパのターゲットとなるのも、彼女の容貌を考れば致し方のないことであった。彼女に話しかけたのは、ふたりの男である。彼女をねめるような視線からして軽薄そうには見えるが、こんな場所で紳士を求めるほど、彼女はおぼこではない。
 もちろん、ザインクライネの名誉のために申せば、彼らが、普段ならば一顧だにせぬ相手のたぐいであろうことは論を俟たない。しかし、オブリビオンとの戦いが、彼女に人肌を求めしめたのだ。あの狂気――淫らな触手の手管から、過去の自分からの責めから、彼女は一刻も早く逃れたかった。
 だからザインクライネは求めに応じた。法に触れぬ範囲であれば、どのような遊びでも付き合おう、と。
 はたして、男達はザインクライネの身体を望んだ。彼女は拒まなかった。これはゆきずり、今夜だけの相手。そしてこれは、自分へのご褒美。
 3人はひとときの情熱に興じた。大の男ふたりをもってしても、ザインクライネを征服するのには容易ではなかった。しかし、彼女はみずから、すすんで男達のものを受け入れた。甘い痺れが、彼女を支配した。
 ほどなく、炎は激しく燃え上がった。さあ、いいぞ。ザインクライネに、男達は果てるまで何度も精を遣った。彼女は、白いそれらをすべて吸いとり、そして果てた。
 心地よい疲労、芯まで響く熱さが、ベッドに取り残されたザイネクライネを満たしていた。彼女はじゅうぶん満足していた。シャワーで身体を清めれば、またいつもの自分を取り戻せるだろう。そうしてグリモアベースへ戻れば、次のオブリビオンを屠る使命が待っている。残る気怠さを楽しみながら、彼女は立ち上がり、シャワールームへと向かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

有澤・頼
「いろんな意味で疲れた…ゆっくりとしようかな…?」

ネットカフェっていうのがあるって聞いたけどあれってシャワーもあったり、漫画とかも読めたりするんだよね。そこに行ってみようかな?
(汗などでベタついた体をシャワーで流してすっきり)
「すっきりしたー。それに個室だから他の人の目を気にしないで漫画読めるから良いね。」
大量の漫画を読んで思いっきり1人の時間を堪能し、ストレス発散できたね。たまには、こういうことも良いかもね。



 今日は、色々な意味で疲れた1日であった。有澤・頼は、ふと、ある店舗の前で足を止めた。
 インターネットカフェ。インターネットが自由に利用できる、複合カフェと呼ばれる施設の一種であるが、できることはそれだけにとどまらない。その店はUDCアースにはありふれた店舗のひとつではあったが、同等のものをグリモアベースや旅団で再現しようとするには、少々手間のかかるしろものであった。
「ゆっくりできるかな……?」
 店頭の看板を読むと、ネット&マンガ&シャワーとある。それで先ほどまでの汗を流そうと思い立ち、ふらふらと招かれるように、頼は入口の自動ドアをくぐった。
 内部は思いのほか清潔感があり、長居にもってこいであった。頼はさっそく個室プランを選択すると、シャワーを浴びて汗を流した。そうしてすっきりしたあとは、ひとり黙々と漫画を読みふけることにした。
 驚くべきことに、その店は、古本屋や図書館にも引けを取らないくらいの蔵書があった。最近話題の作品から、往年の名作シリーズまで、あらゆるジャンルを取りそろえ隅々まで行き届いたコレクションは、頼の興味を多いに惹いた。また一冊、また一冊と、彼女の読破数は増えていった。
 サービスは漫画本だけではなかった。カフェではあたりまえのドリンクバーだけでなく、この店ではちょっとした軽食もつまむことができた。そして漫画を読みすぎたときには、マッサージシートに足湯。近年、UDCアースではネットカフェに住んでしまう人々も現れると聞き、頼は、それもむべなるかな、と思った。入り浸りたくなる気持ちは、彼女にはよく理解できた。
 頼に関して言えば、ひとり用の個室であることが、彼女の忘憂に拍車をかけた。時には椅子にリクライニングしながら、また畳間に寝転びながら、彼女はひたすら漫画を読みに読んだ。お世辞にも行儀がいいと言えないときもたまにあったが、幸いに、それは誰にも見られることはなかった。
 ついつい熱中した頼は、閉店時間まで、ぶっ続けで漫画を読み続けた。店員に看板であることを告げられると、彼女ははっとして時計を見た。あらかじめ伝えておいた、グリモアベースに帰る時刻を大幅に過ぎていたのだ。彼女は飛び跳ねるように店をあとにすると、帰り支度をしに、慌ただしく組織の施設へと向かった。
 今日はオブリビオンを倒した。そのあと遅刻はしたが、ひとりの時間を堪能し、ストレスを発散できた。終わりよければすべてよし、頼は道すがら総括し、そう思った。
 ――たまには、こういうこともいいかもね。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年03月01日


挿絵イラスト