スノードロップ・キャンディレイン
ロニ・グィー
ぜんぶおまかせ!絡みも歓迎!
ボクの愉快な一日!(書き込み途中誤リクじゃないよ!)
アポカルプスヘルは文明の荒廃した世界である。
当然ながら、其処に住まう人々は文明の残滓を漁り、時には己達で荒野を切り開いて生きていく。
あまりにも見通しの立たぬ暗闇のような毎日。
しかし、アポカルプスヘルにはびこっていたレイダーオブリビオンたちは多くが猟兵の手によって打倒されてきた。
未だオブリビオンの跳梁跋扈が確認されているのだとしても、やはり目に見えて数が減ってきたといえるだろう。
奪われる、という心配がなくなったのならば、人々の心に宿るのは文明の光である。
嘗て文明を築き上げる前の人類もまたそうであったのかもしれない。
彼等は洞窟の壁面に己たちが見たものを描く。
狩った動物、己達の姿、時には何かを残したいと思ったのかもしれない。それは往々にして後の人々の聖地へと変貌していく。
「明日もどうか恵みを得られますように」
そんなふうに人々は文明が荒廃しても、手を合わせ天に祈る。
|『拠点』《ベース》と呼ばれる人々の集落にあっても、それは必然であったことだろう。
すでに収穫祭は終わりを告げている。
あの楽しかった夜通しの日を冬の季節には思い出さずにはいられないだろう。
だからこそ、人は天を見上げる。
また変わらぬ日々を、と……。
だが、そんな彼等の天を仰ぎ見る瞳が細められる。
どんよりとした冬空の曇天。
だがしかし、そこに切れ目のようなものが走り、太陽の光が天使の梯子と呼ばれるように、階段状に大地に降り注ぐ。
それはあまりにも幻想的な光景であり、また同時に人々の中に湧き上がる信仰心のようなものを芽生えさせただろう。
「イーヤッフゥゥゥゥ――!!!!」
だが、そんな光景とは裏腹に曇天を切り裂いて現れたのは、巨大な球体と"世界一速いボロ船"を自称する意志を持つ飛空挺『ミレニアムドラゴン号』の船体。
そして、それを駆るロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)の奇天烈な、それこそ、テンションが極まってしまったかのような叫びであった。
「な、なんだなんだ!?」
「球体……!? いや、船!?」
「え、えええー?! なにあれなにあれ!?」
大人も子供もみんなロニの登場に目をむいて驚いて見上げている。
そのようにロニは満足している様子であった。
彼が何故このような事をしたかと言えば答えは簡単である。
そう、たしかに収穫祭は楽しかった!
ハロウィンのお祭りは、とりっくおあとりーと! お菓子をくれないとイタズラしちゃうぞ~! と色んなことがまかり通っていた。
あれは日常の中にあるたった一日だけのお祭り騒ぎであったから楽しかったのだ。
けれど、ロニにはそんなこと関係ないのである!
「やっほー! みんな元気~?」
「え、ええ……」
『拠点』の人々はみんな引きつった顔をしていた。
突然現れて、そんなことを言われたら、それはそんな反応になるだろう。
けれど、ロニはまったく気にしていない。
何故ならば、彼は神である。
神は細かいことは気にしないのである。いや、それはそれで他の神性に語弊が在るので、控えた方がいいところであるが、しかしロニに限ってはそうではないのである。
お祭り騒ぎが年にたった一日だけだなんて、そんなこと天が許してもロニが許さんのである。
「うんうん、みんないい具合にやつれちゃっているね。確かに冬ってば大変な季節だと思うよ! けどね! そういうときにこそ愉快に生きなきゃいけないと思うんだ! つまり!」
ロニが『ミレニアムドラゴン号』の上で手を空に掲げる。
そこにあったのはいくつもの球体。
そして、その球体から溢れるようにして舞い落ちるのは、雪。
それも尋常じゃないほどの雪であった。
「ゆ、雪!? え、困る! 雪かきとかしないといけないし……」
「だいじょーぶ! この雪は明日にはすっかり消えてしまう不思議な雪! そう! 雪は確かに降りすぎると困っちゃうよね! けど、安心して! この球体くんたちから溢れ出す雪はね! 冷たくないんだよ! サラッサラで、ぎゅーって握り締めてもふわっふわ!」
ロニが飛空挺から飛び降りて降り積もる雪を手に取る。
一つボール状に握りしめれば、雪玉の完成だ。
そう、冬は冬なりの喜び方を見い出せばいいのである。そして、その喜びこそが、冬という季節を乗り切る活力を生み出すものとなる。
ロニは、一年を通して毎日が愉快な日になってほしいと願っている。
その気持に嘘はないだろう。
「ほ、ほんとうだ……なんだ、雪なの冷たくないとか、なんか変な感じだ……」
「ねーねー、これって遊んでいいやつ?」
子供らの言葉にロニはにっこり頷く。
「いいとも! この雪を使って今日一日君たちのアイデアを見せてほしいんだ! 雪でどんな遊びをするのかってことをね! みんなの創意工夫! ボクが気に入ったものは……そうだな、美味しい飴ちゃんを贈呈しようじゃないか!」
ロニは笑いながら告げる。
甘味は確かに大切なものだ。貴重で、もうおいそれ簡単に手に入らない。
その言葉に大人も子供も皆、目の色を変えて降り積もった雪をかき集め始める。
「いいよいいよ~! 遊ぼう、遊ぼう! 人生は楽しく愉快に! 一日だけがお祭りなんてもったいない! だから、みんなで遊ぼうよ!」
ロニは笑う。
盛大に笑う。雪玉をぶつけられても、かまくらを作ろうとして崩落して雪まみれになっても、ソリのジャンプ台を作って、大ジャンプをして思わず『ミレニアムドラゴン号』に激突して鼻血を出しても、それでも笑う。
世界にはこんなに楽しいことがあって、愉快なことに満ちているってことをロニは人々に知らしめる。
「ふふーん、みんな良いはじけっぷりだね! でもでも、ボクだって負けてはいないんだよ!」
ロニが周囲に合った雪を一気に操る球体たちで集め、空へと持ち上げていく。
一つの塊にして球体たちがバクバクと食い荒らすようにして走り抜ける。
「あれは……」
「わー、おっきい……」
人々が見上げる中、空中で出来上がるのは雪像であった。
それもロニ自身を象った雪像。
ライトアップされ、様々な光を受けて煌めく雪の結晶。
それを見上げ、人々は今日という一日の楽しさを知るだろう。そして、明日も思い出すだろう。
なんでもない日はいつだって自分たちで特別なものに変化させることができる。
文明が荒廃した世界にあっても、愉快なことを、楽しいことを見出すことはできる。
轟音響かせながらロニは自らの雪像を大地にそそり立たせ、その頂点で笑うのだ。
「みんな~楽しかったかい~? 雪の日だって、雨の日だって、嵐の日だって、みんなは笑って生きていけるんだよ! それを忘れないようにね!」
これはご褒美だよ、とロニは雪像の上から飴をばら撒く。
神様は約束を違えない。
見ているだけの神様なんてロニ自身はつまらないと言い切るだろう。
「崇めてもいいよ! ボクは神様だからね!」
「ありがとー、神様!」
「また来てね!」
そんなふうに飴の雨が降りしきる中、子供らの屈託のない笑顔を受けてロニもまた笑顔を返す。
怠け者の神。
空気読まない神。
そんなふうにロニは表現されるけれど、時には哀しみと苦しみを吹き飛ばす暴風の象徴たる顔を覗かせる。
そう、どんなになっても明日を望む者たちの前で、彼はいつだって屈託なく笑うのだ――!
成功
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