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No One Escapes Death

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●誰も死からは逃れられない
 彼はたった一人の生き残りだった。
 その瞳には生に対する執着はなく、ひたすら目の前の存在への嫌悪、そして未来への絶望と恐怖に染まっている。
「なんなんだよ!なんなんだよお前ら!お前らみたいなわけわかんねー力の連中にさぁ!俺等みたいなやつらの運命決められてさぁ、納得できるわけねーだろうが!嫁も死んだ!娘も死んだ!ダチも村長も、シスターも全員死んださ!何にも残ってねーんだよ!お前らが何もしなくても何かしても別のやつがまた来るんだろ!?もう、もうどうしようもねーんだよ!理不尽、理不尽、理不尽すぎんだよ!これ以上痛くて怖いのは嫌なんだよぉ!!!」
 泣き喚き叫んだ男は、錆びた鉈を掴み取り震える手で強引に自身の喉を裂いたのだった……。

●結末はひとつだけ
「――全員死ぬ」
 開口一番、異羽・冷(Σ係数・f08586)は言い放つ。逃れられない運命には従うべきだと。
「もう一度言うね。全員死ぬ。オブリビオンは一切君たちを狙わず、必ず村人を狙う。ある意味では、僕らには一切被害の出ない事件だね。狙いが尽きたらこっちに来るだろうけど」
 皮肉ったように言の葉を綴る。どこまで手を伸ばそうとも変わらない終焉がそこにはあるのだ。
「細かい話をしよう。今回行ってもらうのはダークセイヴァーの小さな村落。……と、そこ逃げ帰る村人たちの救援だ。君らが現地に着く時、そこは林の中。オブリビオンから逃げてくる村人たちを助けて村まで逃げ延びてほしい。だいたい十人前後かな。そして出来ればなんだけど……あまり目立つユーベルコードなどは使わないでもらえるとありがたい」
 当然、何故?といった疑問の目を向けられる。まぁ聞いてと話を続け始めた。
「ダークセイヴァーは長年オブリビオンの脅威に晒されてるのは知ってるね?その村人たちも例外じゃない。更に言えば、俺たち猟兵の人知を越えた力も"そういうもの"の類型と思われる可能性があるってわけ」
 もちろん、最終的にオブリビオンを倒す時は例外だ。それ以外は要らない恐怖と不信を与え、討伐にも影響が出る可能性もある。
「で、だね。ひとまず村人の仲間って感じで逃げ切ってほしい。オブリビオンからは少し獲物が増えたぐらいでどうって思われないさ」
「次に、村まで逃げたら防備を固めてほしい。もう廃村寸前の限界集落だ。ないよりはましだけど、畑を護る柵だとかー、罠とか、ね。あ、今どうせ死ぬから無駄だとか思ったんじゃない?」
 心のどこか、ほんの片隅にでも思っても間違いじゃない。だが当然だ、今回ばかりは救えないのだから。
「勿論それでもかまわないよ。そこら辺で好きなことしててくれればいい。オブリビオンの襲撃に急拵えの柵なんか意味ないしね。――でも、信頼は別だ」
 信頼、その言葉に猟兵たちは再度首を傾げる。
「猶予は三日、単純に作業スピードの話さ。いくら無駄でも使いよう、みんなのユーベルコードだったりで、準備に時間を掛ければ効果が増すやつもあるよね。武器を仕込んでおいたりより精巧な複製を用意したり……。やりようはある。戦意を高めておけば戦闘の補助だってありえるさ」
「人の命で言う事じゃないが、玉砕覚悟の壁にだってなるかもしれない――あくまでも、の話だけど。逆に信用が得られなければオブリビオンと相討ちさせようとするかもしれない」
 場の空気が凍てつくように冷えた。冷は気にすることもなくパン!と手を叩き仕切り直す。
「最後に、親玉の登場だ。そいつを倒せば仕事はお終い、それ以上は業務外。祈りを捧げてもビタ一文支払われない……気分の問題はあるかもしれないけどね」
 どこまでも淡々とした説明。それでも聞く、生き残らせる方法はないのかと。
「ない、一切ない。全員死ぬ。――ただ、もしかしたら死ぬのを遅らせることはできるかもしれない。全速力で村人を回収し、あの手この手で準備を進め、君らが庇えば……誰か、死ぬ間際に平穏を感じ取るぐらいには。まぁ君達次第って話さ、聖戦反抗の徒ジャンヌダルクにもなれるし、力の暴君董卓にもなれる」

 最後に、と冷は旅行く猟兵たちに多少の食料――水やパン、クッキー等――を手渡した。
「取り入るならこれを使いなね。医食同源、気力は飯から。彼等にはとんでもないごちそうだ。使うかどうかは任せるよ。……消えゆく命を少しでも、っていうなら、これぐらいはいいだろう?」


紫芋
 もう春ですね、紫芋です。よろしくお願いします。
 ※注意※再三の既述の通り、誰一人助けることが出来ないシナリオです。経過次第ではとても胸糞悪いシーンもあります。参加する場合はご了承ください。

 全体を通し、村人を見捨てる方が制約が少なくなる一方判定が難化し、助ける方が取り組みが難しい一方で判定が簡単になります。

●一章について
 オブリビオンの屋敷から逃げ出した村人一行を救出していただきます。その際、敵に猟兵であることがばれなければ三章で開幕の油断を誘うことが出来ます。派手なユーベルコードの使用はばれる可能性があります。露呈した場合、脅威として追撃が苛烈化し数人死にます。

●二章について
 徹底反抗の準備です。一章に続き村人の信頼、士気を高めればオブリビオン戦で判定ボーナスが入ります。罠や仕掛けだけではなく、村人への演説なども効果があるかもしれません。信頼を獲得できなかった場合、村からの逃亡や恐怖での自殺などで数人死にます。
 一章から続けて死者が出ていた場合、この時点で村人は一人か二人のみになります。

●三章について
 襲撃に来たオブリビオンへの反撃です。これまでの行動の成果によって難易度が変化します。オブリビオンは村人を狙い、殺戮し終えてから猟兵に攻撃してきます。かばうか、見捨てるか、盾にするかなどは自由です。行為に関わらず全員死にますが、生きている人の数だけ討伐は容易となります。

●意見の分離について
 プレイングの時点で見捨てる、助けるが別れた場合は二つのグループとして扱い、それぞれの主張ごとに固まって行動します。村人はより大きいグループの意向により主体的な行動を変えるでしょう。

 それでは、よろしくお願い致します。
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第1章 冒険 『戦禍からの撤退』

POW   :    身をもって村人を庇ったり、力づくで村人を避難させる

SPD   :    隠れ道をさがし出すなど、技能を活用して村人を非難させる

WIZ   :    頭脳や魔法を活用し、村人を避難させる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●追撃の神速行
 駆けろ、駆けろ、駆けろ。逃げ切ったと思った瞬間に聞こえる蹄の音、一息ついた直後の再疾走、微かな希望が打ちひしがれるあの表情――ああ、どれもたまらない。必死に逃げ仰せてくれ、それでこそ、狩りの愉悦は最高潮を迎える!
ヴェル・ラルフ
SPD
林の中にやってきた彼らに、まずは、安心してもらわないと。
「僕も、旅の途中で襲われて、逃げてる途中なんだ」

この世界は暗いから。
[暗視]を活用してなるべく走りやすい道を誘導する。
幼い子どもは[手を繋ぐ]
力のない母親より、僕の方が力もあるからね。

敵が襲ってきた場合はナイフで[咄嗟の一撃]
「旅の途中で身につけた芸が役に立つとはね」
言動には気を付けなきゃね。

…この世界の人が、吸血鬼に怯えていること、よく知ってる。
僕がいた貧しい町も、そうだったから。

例え、救われない命とわかっていても。
この人たちが生きていたことを、この命を、覚えておきたいから。
必ず、全員村まで送り届けよう。


ヴィリヤ・カヤラ
この世界ならあり得る事だけど、
ダメ元って分かってても頑張ってみるよ

『聞き耳』で周囲の音を確認しながら動くね。
逃げる間の位置取りは走ってる村人の外側。
横から狙われるのも考えて側面か、
誰もいなければ一番後ろ。

疲れてる人が多くて追跡が遠そうなら『地形の利用』で、
近くの出来るだけ身を隠せそうな所を見つけて休憩かな?
逃げるの優先なら頑張って走るよ。
生きたいなら逃げるしかないしね

ついて行けない村人がいたら、
村まで頑張ろう!って併走かな。
もし敵に追いつかれたら、
敵の攻撃を『第六感』と『見切り』で
防ぎながら
村人の逃げる時間は稼いでみるけど
ダメだったらゴメンね。
その時は【瞬刻】で一気に逃げるよ

アドリブ、絡み歓迎



●息をひそめて
 林の中にいくつもの音が入り混じっている。息も絶え絶えになりながら走る村人、喜々として獲物を追う狼、そして愉悦に口を歪める諸悪の根源。回り込むように逃げ道を塞ぎ、弄ぶ。甚振るような行為に村人の顔はだんだんと絶望に染まる……。
「こっちだよ」
 突如、先頭を走る村人が暗闇に引き込まれた。若々しい男の声に戸惑う村人たち――だが続く女性の声に引っ張られる。
「慌てないで、伏せて北西に進んで」
 何が何だかわからないといった表情をお互いに見合わせながら言われた通りに進む。数分の後、獲物が消えて困惑する狼たちの唸り声が響いた。
『一体何が……?』
『たす、助かったの?お母さん?』
「まだだよ、まだ。林から抜けるまで頑張って」
『その、あなたは……?』
 赤茶色の少年、ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)は答える。僕らも逃げているものだ、夜目が効くので村まで同行させてほしいと。
「数分しないうちに来るよ。追手は遠いけど、距離を詰めさせないほうがいいね」
 斥候から戻ってきた夜のような女性、ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)は逃走を提案する。彼らはなによりも心の安息を求めていたが、狼たちの鼻はこちらに向いてきているようだ。
「さ、僕の手を握って。いざという時は――わかってるよ」
 子供と手を繋ぎ、母親を見やる。頷いたその意味は痛いぐらいにわかっていた。
「私が殿を務めるよ。私が叫んだら、振り向かないで走って。それじゃ村まで頑張ろ!」
 彼らは再び林の中を進み始めた。大まかな村の方角を聞いたヴェルが進みやすい道を選び、聞き耳を立てたヴィリヤが逃げ道を示す。しばらく静寂をかぎ分けると暗がりの林に僅かな光が広がり、生存への兆しが見えた。まだ遠く、淡くとも希望がそこにあった。
『お家、お家に帰れる!お母さん!帰れるよ!』
 光に頬を綻ばせ、子供が林の外に向かって走り出した。喜びを浮かべた顔を見合わせて村人たちも歩を進ませ、ほっとした子供の母親は力が抜けた様に膝をついた。少年と手を繋いでいたヴェルも自然と引っ張られ、
「逃げてッッッ!!!!!!」
 瞬間、ヴィリヤの叫びが遠吠えにかき消される!多数の狼がばらけた集団をそれぞれに飛び掛かり、血と悲鳴が木霊した。
『お母さん……?』
「ダメだッ!」
 自分が、自分のせいで、自分が焦ったから――そんな気持ちに呑み込まれ子供は母の元へ走ろうとする。ヴェルは掴んだ手を離さず、抱き抱えるようにして林の外へ駆けた!その隙を狼たちが逃がすこともなく――
『ゥォオオオオオン』
 出足を遅らせたヴェルの喉を狙い一頭が跳ねる!身体を捻り躱し、滑らせたナイフで脚を切り付けた!続けざまにナイフを飛ばしその間に脱出を果たす。
『お母さん!ねぇ!離して!お母さん!おがあさん!!!』

「――動かないで、息も止めて。静かに、静かにね」
 泥沼と窪みに身を隠し、ヴィリヤと母親は狼の襲撃から逃れていた。林の外までまだ距離はある、ヴィリヤ一人ならともかく、母親を連れて狼を退けながらは厳しいものがあった。
「脚は動く?」
 震えながら首を横に振った、一度の安堵の後、恐怖に苛まれた彼女はもう足が動かなくなっていた。ヴィリヤは逡巡し、だがすぐに決意を固める。
「私にしがみついて絶対に離さないで。目と口も閉じて、苦しいだろうけど、呼吸も止めて。必ず、助けるから」
 ヴィリヤは武器にくくり付けられたタッセルの飾り物を指先で弾いた。林に響くその音に狼たちは喜んで飛びつく。窪みに香る、芳醇な恐怖の元へとその牙を、爪を、振りかぶった。
 ―ーだがそれらはすべて虚空を刻むに終わる。狼は互いに首を傾げた。どうやっても、そこから音がして、そこに人がいて、逃げれはしなかったはずなのに。
 林の外でヴィリヤは一息ついていた。限界まで己が命を凝縮し、泥の底を這い泳いで来たのだ。泥の中までは匂いは追えない、ましてや暗闇でどう探索するというのか。
『あ、あの……助けてもらってなんですが、林に、まだ村の人がいるんです……逃げ遅れた人が、まだ……』
「大丈夫、安心して。私たちは二人だけじゃないよ」

 第一陣、死亡者無し。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御伽・柳
行動:【WIZ】
使用UC:【痃癖】
使用アイテム:【閃光手榴弾】

……たとえ最後に救うことが出来ずとも、せめて、最後の晩餐の時間くらいはあげるべきでしょう
村人を発見したら保護しつつ逃げます
極力【ダッシュ】で、道無き道を迷子にならないように
この世界における方角の把握の仕方は【世界知識】で知っています

追手は【痃癖】で逸らします
ここには誰もいなかった、UDC、こいつらから俺たちを目撃したという記憶を食らえ
……あと村人たちにも不都合な場面を見られたら使います

対処しきれないようであれば【閃光手榴弾】を使い【範囲に攻撃】し、【目潰し】を狙います
攻撃されるようならば庇いましょう、【激痛耐性】はありますから



●ギリギリの綱渡り
「一人ですか?他の人は?」
『あ、あたしだけ逃げ遅れたの……。パパと、はぐれて……道も、わかんなくて……でも、唸り声だけが聞こえて……』
「わかりました。じゃあ、逃げましょう」
 林を探索する御伽・柳(灰色の渇望・f12986)は木陰で泣いていた少女と邂逅した。曰く、狼に追われるまま走り続けたら逃げるべき方向を見失ったと。
 柳は少女を抱きかかえ、唸り声と逆方向に走った。十数分ほど走り続けて不意に止まる。
『お、お兄さん…どうしたの?』
「あの吼え声は村に向かわせないものです。こっちには……あの化け物がいる」
 彼の頭には周辺の地理情報が入っている。どう走っても、必ず村がある方向から遠吠えが聞こえていた。内側から甚振り、抜け出せる直前に仕留める―ー醜悪な包囲。
 踵を返し遠吠えの方角へと一直線に走る。あまり時間はかけられない、遅くなればなるほど内側から追い立てる狼が外周の囲いを厚くしていく。どこか、どこか包囲の薄い場所を探さないと。
「外は見ないように。いざという時のため、すぐに走って逃げることだけを考えてください。いいですか?明るい方に、木が生えてない方に、です」
 少女は頷いて柳にしがみ付く力を強める。生存の願い、どうにかして、送り届けないと。
 しばらく走ると外周側に逃げてきた集団と遭遇した。しかし彼らは四方を囲まれ、今にも絶体絶命の状況にある。彼らを見捨てれば少女は逃げられ、逆は少女をも危機へと晒す。柳の判断は早かった。
「後ろを振り向かずに逃げてください。転んでもすぐに前に進んで。絶対ですよ」
 少女を外に向けて放り、手近な狼を強く蹴り飛ばす。殴打と狼の悲鳴に逃亡者集団と狼の注意は彼へと向けられる――たった一人の、覇気のない犠牲者に!
「――簡単にいくと思わないでください」
 柳は集団を睨みつける。その瞳は俄かに光り、言い表せないような悪寒が狼と村人を襲った。やがて村人も狼も呆けたような表情で歩き出す。外に向かい、中へ帰る様に。
 使命も、恐怖も、一時だけは忘れて――。覚えが、記憶がなければ帰巣本能に従うのだから。

 第二陣(遊撃)、死亡者無し。

成功 🔵​🔵​🔴​

零落・一六八
助ける方針でいきますよ
逃げるってことはまだ生きたいんでしょうし
だったら1秒でも寿命が延ばせればそれだけでも意味はあるでしょ?

足が遅いガキとか女とかなら
怪力で1人2人抱えて逃げられると思うので
他の猟兵も救助派居ると信じて後は任せます
目の前に妨害があった場合はUCですり抜け
第六感と地形の利用を頼りに身を潜められるルートを通ります
物隠しや迷彩で村人も自分も目立たないように
追ってそうなルートに罠使いで罠設置しつつ
忍び歩きと聞き耳で注意しつつ
いざ敵に回りこまれたらUCで避け
攻撃はせずに逃げることに徹します
万一どうしても避けられないならボクが攻撃受けて防ぎます
激痛耐性もありますしね!

他との絡みアドリブ歓迎


花邨・八千代
あーぁ、救われねーのな。
ほんと……クソッタレな世の中だよ。

それでも生きるしかねーなんて地獄以外のなんなんだか。

◆行動(POW)
出来るだけ逃げる奴等の後方に付きながら走るぞ
如何にも足手まといな女のような、それでも他の村人を見捨てられない風を装いながら後ろ側の奴等をサポート
後ろの敵から攻撃があるなら庇いつつ、こっちが致命傷にならん程度にあえて受けるぞ
「だまし討ち」だ、やり返しはしねーけど
なんなら悲鳴のひとつでも上げてやろうか?

偶然を装いつつ「第六感」で攻撃避けつつ、最低限の傷は覚悟すっかね
怪しまれん程度に「怪力」も使っていくぞ
小さい子供くれーなら背負ってくぜ
……兎に角、今は逃げるお時間だ


アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

死が最後にやってくる。
それでも失意のうちに終わるのではなく、せめて穏やかに。
そしてこの事態を招いたオブリビオンには報いを。

たまたま逃走中の村人達に出くわした旅人という体で合流しましょう。
『礼儀作法』や飲食物を駆使して、少しでも村人から信頼を得られるよう努めます。
合流した後はホワイトパスで追手の気配を確認しつつ、村人の先導を行います。
救えない事は分かっています。それでも見捨てる事はできません。
追手を避けるよう進行し、全員無事に村へ辿り着かせてみせます。
私一人では荷が重い状況です。他の猟兵と協力できそうであれば協力していきましょう。
もしもの場合は村人を『かばう』事も厭いません。



●今はまだ雌伏の時
 先遣隊の助けた母親の言葉通り、先に逃げた村人よりも多くの人々が逃げ惑っていた。零落・一六八(水槽の中の夢・f00429)、花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)、アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)の三人は逃げ惑う村人のふりをして集団の一部と同化していた。一六八は子供を抱えて集団の中核となり、八千代は集団の最後尾で逃げるのも精々の無力な女のふりを、アリウムは先頭を走って飛び掛かる狼の猛攻を耐え凌いでいる。
「こちらに!包囲が崩れましたよ!」
 アリウムの声に一六八が素早く反応する。子供たちを抱えながらぬかるむ地面を踏みしめ、進む方向を修正する。
「気張ってくださいよ!村に抜けるまでの辛抱です!」
「ひっ……いや、いや、嫌ァァァーーーー!」
 その後ろで、足を滑らせた男に体をぶつけ転んだ八千代が狼に襲われる。実際は男を助けるために体を割り込んだのだが、好機とばかりに大きな悲鳴を上げて自らを餌に釣ったのだ。
「手ェ出してください!」
 子供を先に進ませ戻ってきた一六八が逆立つ毛の中から八千代を引っ張り出す。そのまま手を取り集団へと駆け出し、林の中に逃げ込んだ。
「首尾は?ていうか怪我は大丈夫ですか?」
「骨にヒビ入れてやった。奴ら満足させるのに派手に血は流したけど全部浅手だ、問題無ェ。もう乾くし鉄臭さも足取りも追えねぇよ」

 二人が合流するまでの間、追撃と距離を取った村人たちとアリウムは小休止を取りながらゆっくりと進行していた。その際全員に僅かながらも水と食料を渡し、少しずつ回復を図りながら外を目指していた。
『よ、よろしいのですか、救世主様?こんな綺麗な食事を我々なんかに……』
「そう仰らず、それと我々はあなた方と同じ境遇の旅人ですよ。まずは逃げることを考えましょう。もう少しで村に辿り着くのですよね?」
『はい……、もうそろそろ、闇が薄くなってくると思います』
「ではそこまでは全力で、今食べたものをすべて逃げる力にする勢いで参りましょう」
 数分の後、アリウムの五感が何かを掴み取る。風の流れ、か細い話声、男女二人――八千代と一六八が戻ってきたのだ。彼らを迎え入れ集団は歩みを進める。
「話によると間もなく森を抜けるようですが、そちらはいかがですか?」
「八千代さんが奴等の足を削ってくれました。そんでボクが落とし穴とか、足跡偽装とか。人数分ってまではいかないですけど落ち葉のギリースーツ?ってやつにも手を出せそうです」
「そんなわけだ。こっから先は俺も連中担いでいくぜ。傷見て真っ先に俺狙うだろうから、そこら辺は上手く頼む」
「了解しました。探索と感知は私が請け負いましょう。いざという時は我が身を盾にしますが、数が多い場合はご助力願います」
「おっけー、ボクが巧く騙くらかします。逃がし先決で」
 やがて木も疎らになり、外も間近という雰囲気を感じ取る。歓喜の声を上げようとする村人を諫め、アリアムは先を指差した。
「――います。よく見てください、木陰に、木の上……合わせて十数匹でしょうか。……合図で飛び出しましょう」
 近くの者と顔を見合わせ覚悟を決める。ここが分水嶺、最後の難関である、ここを越えればと。
 一瞬のアイコンタクトの後、走り出す。子供を抱えた大人、怪我を負った人々を囲むように大人たちが編隊を組み、アリウムは前を、最後尾に人を抱えた八千代。そして離れたところから葉で身を包んだ子供たちが。
 予想通り、狼は囲まれた集団ではなく八千代を狙う。四方八方から襲い来る牙を紙一重で避けるも逃げ道が塞がれる!絶体絶命、もはや彼女はここまでかと村人たちも目を背けた。
「――全速力でお願いします」
「舌ァ噛むなよ!」
 全員の視界から八千代と、抱えられていた人――一六八――が消えた。より正確には、消えたように見えた。彼女にはそれで十分だった。弱々しい演技を解き、遠慮せずに走り抜ける。
 暗闇の林を抜け、彼らは安堵の笑みを溢した。ああ、生き延びたのだ。あの無慈悲から!

 第三陣、死亡者無し。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シン・バントライン
明日なんて来る予定の無い祖国。
相変わらずですね。
例え無駄だとしてもその意思は持って然るべきもの。
逆に言うとそのささやかな意思ぐらいしか持つのを許されない場所。
手を貸しましょう。

巻き込まれた旅の手品師を装い村人には警戒されないように注意。
逃亡の隙をみてUCの中に仕込んでおいたパンやクッキーをお出しします。
喜んでくれるでしょうか。信じてくれるでしょうか。
冷さんから預かったものぐらいしか私から差し上げられる物は何も無いのです。

「第六感」で敵のやって来る方向や速度を予測。
逃げ遅れそうな人が居たら物陰でUCの中に匿う。
攻撃は剣で。なるべく目立たないように普通に。

人の足を進めるのは希望ではなく意思ですよ。



●慈悲よ、慈悲よ
『ヒッ、な、ッんだよ、お前ッ!』
 突如目の前に現れた黒い影に、村人は驚いて後ずさる。
「落ち着いて、敵ではありません。私たちは旅の一座、故あったあなた方に援助するものです」
『援助……?あんた、いったい……』
 シン・バントライン(逆光の愛・f04752)は懐からミルクとクッキーを取り出し男に渡す。ゴクリ、と唾を飲み込む音を鳴らし、貪りたい欲求を抑え男は叫んだ。
『毒、毒だろ!?毒が入っているんだろう!?そうだ、きっとそうに違いない!』
「そんなものは……いえ、ではこれを半分に割ってください。そして片方を私に。もし毒ならあなたと共に沈みましょう」
 その言に疑いも晴れたようで、ホッと一息ついた後、一口に詰め込むように頬張った。
『ゲホッ、ゲホッゴホッ』
「落ち着いて食べてください。ほら、飲み物を」
『あ、ああ……すまない、助かったよ』
「……さて、あなたの御同輩はどちらでしょうか?集まって逃げている方々には置いていかれたのですか?」
 シンの問いに男はあり得ない方向に曲がった足を見せる。
『俺が怪我したから……俺をおいていけ、っていったんだ。もちろん死にたくはねぇよ。でも、でも、それでダチや娘まで死なせらんねぇだろ……?』
 男は悔しさと悲しさに涙を流す。その姿を見て彼はヴェールの下で歯軋りした。
 ――どうして、どうして我が故郷はこうも変わらず――
「私の背に乗ってください。村の方向はわかりますね?揺れますので痛みは我慢を」
 辺りの枝を拾い縛って添え木にし、男を背負ってシンは歩き出す。できるだけ起伏のない平坦な道を選び、影を縫うように気配を消して進む。
『すまない、黒子の兄さん。俺なんかのために……』
「シッ、静かに。遠吠えが聞こえます。……走りますが、耐えられますか?」
 男は首を横に振るう。折れた足は真紫に晴れ上がり既に男の体力は限界を迎えていた。
「――では、私を信じてください。匿いきってみせます」
 この人は無償で逃げ遅れた穀潰しに食事どころか助けるとまでいってくれた。信じない理由はない。
『すまん、頼む!』
 次の瞬間、男は満月に溶けるように消えた。辺りを見回酢と不思議な屋敷が広がっている……。シンの持つ香炉に収容されたのだ。
 すぐさま彼は駆け出す。狼たちは揺らめく風の違和感に歓喜の唸りと共に身を翻した。
 涎を垂らし、本能の狩りを実行する。この暗がりの中、黒子衣装といえども逃す狼ではなかった。
 飛び交う牙を剣の峰で流し、貫かんとする牙を鞘の腹で受け吹き飛ばされる!泥にまみれた体を起こしまた駆ける。無力を演じるがために――幾度転び、土をつけさせられただろうか。一転気づけばここは林の外、村人はまだ生を実感できないようだ。
「気絶して夢でも見ていたのですか?さぁ、村まで参りましょう」
『ッ……ああ、ああ……!ありがとう、黒子の兄さん……!』

 第四陣(回収者)、死亡者無し。
 計四部隊、撤退戦死亡者0。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『残されるもの』

POW   :    畑や村の周囲に防衛のための柵などを設置する。

SPD   :    畑や村の周辺に迎撃のための罠などを仕掛ける。

WIZ   :    畑や村を防衛するための作戦を考える。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●牛歩の刑、天啓の幻
 傷つきながらも再度家族、友人に出会えた喜びに村人たちは歓声の声を上げて活気づいた。彼らは「旅の一座」である猟兵たちの事を信頼し始めており、やがて村長らしきものが声を上げた。
『ワシら全員が生き延びれたのもあなた方のおかげですじゃ……。見ての通り、何もない廃村のような場所ですがどうか寛いでいただきたい』
 とはいえ、再度あの不条理が三日後に迫っていることを猟兵は認知していた。村人もまた同じように連れていかれるわけにはいかない。どうにかして、耐えるなり逃げるなりの手段を考えなければ――。
零落・一六八
さてと3日の間にやれることぐらいはしておきましょうか
気休め程度かも知れませんけれども
地形の利用のためにも散歩でもしてこの場所の地理を把握して
利用できそうなものを調べつつ
いざと言う時に村人を逃がせるような経路の確保
外敵が攻め込みそうな所を第六感とかで予測しつつ
罠使いで設置したりとかそんな感じでしょうか
誰かが柵作るとかするなら怪力で力仕事ぐらいは

村人から好意があればありがたく受け取るし
声を掛けられれば緊張感のない軽口を叩きつつ交流します

(人はいつか死ぬし感傷は無く後ろ向きな思考はない
前向きでもないがそもそも他人にそこまで興味はないし
どちらかといえば自分がどうしたいかで動いている)

他絡みアドリブ歓迎


鵠石・藤子
オレも敵から逃げてきたところ…って事で
遅れ馳せながらお仲間に入れて貰いてーな

猟兵や村人で、一緒にやるって奴がいりゃ協力だ
雑談でもしながらな
絶望的な中でこそ、準備くらい楽しくやりゃいーさ
【コミュ力】が使えりゃいーけど

道具は借りるとして
木を尖らせては組み上げ、柵を作る
こう言うのは馬防柵ってんだ
この辺にゃ竹とかねーのか?あれ使いやすいんだけどな

あとは周辺の元から段差や高低差のある所に土を積んだり削ったり
凸凹してっと歩き難いんだよ
堀を掘る程の時間はねーだろからな
【地形の利用】が一番って訳

オレの故郷も小さな村なんだ
だからかな、他人事に思えねえ

あ、食料も材料も全部は使うんじゃねーぞ
…未来の為に必要だからな



●一日目、基盤
『なーなー白髪のニーちゃん。次どこ行くの?』
「白髪じゃねーっすよ灰色ですよ。ちょっと逃げ道とか、そういうの見ておくのも大事じゃないですか」
『ふーん?あ、あっちにね、ぼうくうごー?ってのがあるって父ちゃん言ってた』
 子供たちに群がられながら零落・一六八(水槽の中の夢・f00429)は村落を歩き回る。防衛にしろ迎撃にしろまずは自分たちが地理を把握せねばならない。地図を片手に散策を続け、地の利を探っていた。
 そんな折、子供に指示されたように歩くと村の共有倉庫にたどり着く。
「この倉庫が防空壕ってわけじゃないですよね?」
『中に階段あるんだよ。前はここに逃げたんだけど、もう一つの出口から捕まって……』
 扉を開き、埃に塗れた内部を確認しようとすると「一座」の一人が出てきた。
「よう。アンタも道具借りに来たのか?」
 鉈や鋸といった道具を大量に担いで鵠石・藤子(三千世界の花と鳥・f08440)が出てきた。防柵を作る道具のために倉庫まで来ていたようだ。一六八は彼女に防空壕の話を伝える。
「……あれで、か。ちょこっと見てきたけどよ、狭い暗いついでに脆い。使わない方がいいんじゃねーか?狭い所はやりにくいし、持久戦は一番アブねーだろうよ」
「一応俺も確認してみますが、了解です。もし本当に危なかったら逆に罠にしてやりましょ」
「オッケー。後で地図貸してくれよな」
 倉庫の中に向かった一六八と子供たちを見送り、藤子は担いだ道具を持って畑に待つ村の男衆と一座の元へと向かう。
「さーて連中、まずは地面、次に柵か槍かだ!林の中もそうだがデコボコしたり柔らかかったりぬかるんでたり、歩き難いんだよな。そういう地形の中に槍とか仕込んで、ついでに防柵もあれば犬っころぐらいはなんとかなるぜ!こういうのには竹が……ねぇな。まぁ例の林から取ってくりゃいいか」
 明るい藤子の雰囲気に釣られ、それぞれも元気よく掛け声を上げ作業に取り掛かる。道具には限りがあるので自然に手分けして進める事になった。
 農具に慣れている村の男たちが畑の前の土を掘り返し、残った者で木を加工する。ひび割れたり、耐久性に問題がありそうなものはあえてそのまま槍にする。
「お疲れ様です。俺も手伝いますよ!」
 探索を終えて戻ってきた一六八が集団に加わる。試しに出来た柵を一六八が設置、全員で耐久性を確認する。最初こそ品質は悪かったものの、なんとか狼程度は凌げる柵を作れるようになった。
 猶予は後二日。基盤はできた、オブリビオンに対抗できるかどうかは当日にわかるのみだ。

 一日目、死亡者無し。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シン・バントライン
生きることを諦めないこと。
死ぬ時は必ず一人で逝くこと。
幸せな時は幸せだと気付くこと。
忘れないこと。

国にいた頃仲間とした約束を思い出す。
今思えば「明日」どうするかとか、そんな約束もすれば良かった。
明日またここで会おうとか。明日はワインを5本空けようとか。そういう未来のくだらない約束を。
自分の今はなんて恵まれているのだろうと少し怖くなる。
大切な人と幸せな約束だって出来るのだから。

村人に聞いてみようか。
「明日はなにがしたいですか?」
我ながら傲慢な質問だ。

UCで兵馬俑をなるべくたくさん作る。
村人と間違えて敵が攻撃するための時間稼ぎの罠だ。

国にいた時、自分が一番欲しかったのは「明日」だったから。


花邨・八千代
あー痛ぇ、あのわんころ思いっきり噛みやがって。
それにしたって陰気なとこだな…まぁ当然か。
……とりあえずやることやるか、考えたって仕方ねぇや。

◆行動(POW)
顔を隠して村に入り込むぞ、逃げ損ねたって思われてるだろうし。
一座の下働き風に振る舞いながら有り合わせでも良いから柵作りだ。違和感ない程度に「怪力」使いつつ兎に角数を作るぜ。
外側に向けて槍みてーに杭を立てたり、力仕事が必要そうなとこに回って補助だ。

そのまま周囲を見回ったり、あぶねーことしてる奴いねーか注意するぜ。
ガキでも近付いてきたら食料やって村の中の方に誘導だ。

ちびこいのはあぶねーから近付くなよ、こういうのは大人の仕事だ。


ヴィリヤ・カヤラ
防備を固めないとだけど、食事もいるよね。
もし逃げる先があるなら逃げるのもありだと思うけど、
一緒に敵も連れて行ったら大変だもんね。

人手が足りないなら柵作りとか手伝うよ。
『地形の利用』で見えにくい所に落とし穴を作るのも良いかな?
得意そうな人がいたら聞きながら頑張るよ。

あとは食事だね。
貰った食べ物に水とパンがあったから、
煮込んでスープが作れたら配りやすいかな。
もし何か食材があったら分けてもらって、
鍋も借りられるかな?
村の食材は残しておきたいなら使わずに、手持ちだけで作るね。
料理する所は火がおこせれば、どこでも出来るし。
味付けは食材の追加が無ければ、
クッキー砕いて入れてみようか?

アドリブ・絡み歓迎



●二日目、鼓舞
 出だしは好調だった。上等とは言えずとも、それなりの結果は出せるようになった。後はこれを、最大限に活かせるようにするだけ。
「明日、何がしたいですか?」
 シン・バントライン(逆光の愛・f04752)はふと顔を上げて村人の一人に尋ねた。もちろん手を止めることはなく、鉋で何かを作り続けている。
『な、なんだい黒子の兄さん突然。明日だなんて』
 急に話を振られ、先日彼に助けられた男は動揺した。足の骨を折り動けないにも関わらず、村のためにと手先で出来る仕事を買って出たのだ。
「ふと、国に置いてきた昔の仲間を思い出しまして。よく約束をしたものです。……辛い時、怖い時こそ明るくあるために。ですので、明日を楽しく迎える一歩として聞いてみたく」
『な、なんだか難しくてよくわかんねぇが……、そうか、そうだな。明日、明日また、女房とガキと、一緒に飯を食えたら……兄さん手が早いな!?』
 男が話している間にシンは大量の兵馬俑を作り出していた。実は最初の一つだけが木で、残りは藁や泥をそれっぽくつなぎ合わせた贋作なのだが。
「黒子ゆえ小道具は良く扱いますので。頑張りましょう。その明日を掴むために」
 ヴェールに隠された表情はいったいどのようなものなのか、男が思案に暮れようとしたその時明るい声が聞こえた。
「差し入れだよー!元気はお腹からだからね!」
 手作業をこなしている集団に男の妻とヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)が鍋を引っ提げて来た。食事の内容は味気ない、パンと野兎などの肉を野草で煮込んだだけのものだが、村の人々にとっては本当に久々のご馳走だった。それを作る間にヴィリヤはダークセイヴァーという世界の現状を噛み締めていた。
『女優さん本当によかったの?あなたたちだけの食料をこんなに……』
「ここにいる時点で運命共同体だもの、生き延びるの手伝ってもらってるんだからおあいこですよ!」
 美人の明るい笑顔に村人も活気づく。嫁に小突かれる男を尻目に、外で柵を設置している人たちへと配給に向かった。
「あ、飯っすよ皆サン。俺配りますね」
 ヴィリヤの姿を見て声を上げたのは顔を隠した花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)だった。逃げ遅れ傷だらけになった下働きといった感じの雰囲気を醸し、配給を手伝う。
「飯食って元気出して午後も頑張りましょ。あ、ヴィリヤサン後で落し穴の手伝いお願いいいすか?」
「同い年だし呼び捨てでいいよ。落し穴って畑の前の?」
「いんや、兵馬俑置きの。俺ちょっと柵の方に行ってくるから」
「わかったよ、差し入れ届けにもいかなきゃだしね!」
 残ったスープをかきこみ椀をヴィリヤに預けて柵の見回りに向かう。倒れてはいないか、支柱が腐ってはいないか。途中で不備を見つけては新しく柵を作り、怪力で杭を打つ。
『ねーちゃんすごいね!力持ち!』
 気付けば彼女の周りには最も幼い子供たちが集まっていた。見ず知らずの、顔を隠した怪力の女性。興味を持たないわけがない。そっと懐から砕いたクッキーを手渡し、
「あぶねーぞガキンチョ。こーいうのは大人の仕事だからちびこいのは戻りな」
『でもねーちゃんもちっこいじゃん!』
「ンだともっぺん言ってみろガキィ!!!」
 キャー!と笑いながら去っていく子供たちと八千代のやり取りに村人たちからは笑いが溢れた。久々に、平穏を感じる。
 また明日も、続けばいいのに。

 二日目、死亡者無し。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴェル・ラルフ
少しでも、恐怖を和らげるために。
もし敵の数を減らせるなら、その方がいいかな。そのためにも、[時間稼ぎ]の罠を仕掛けよう。

SPD
落とし穴とか定石だよね。
中に、尖らせた木を潜ませて。草木で[目立たない]ように[迷彩]、カモフラージュしておこう。
落とし穴手前には糸を張っておこう。糸の端には音が鳴るように鈴を。

それから…
おいで、【雄凰】。
目立たないように森の闇に紛れて索敵しててくれる?
木の上からでもいいかも。

ただし、少し離れていてくれよ。
お前自身も見つからないように、充分気を付けること。


…例え、必然があったとしても。諦めるのと、覚悟するのとは、別だよね。
僕は、僕にできることを。

★アドリブ、共闘歓迎


アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

残り3日間。
最期の時として短いか長いか決めるのは人それぞれでしょう。
いずれにしても、せめて穏やかな時が過ごせるよう尽力するだけです。

私は柵の前に堀を作ります。
防御陣地作成の3日間でどこまでできるか分かりませんが、時間いっぱいまで穴を掘り続けましょう。
他の猟兵や村人の疲弊次第によってはご助力を申し出ても良いかもしれませんね。
夢中で穴を掘っていると、これは墓穴なのかと自嘲にも似た笑みが出てしまいそうです。
汗を拭うふりをしながら誤魔化し、『鼓舞』し続けます。

村人の顔を見ていると、予知が間違っているのではと勘ぐってしまいますね。
そんなわけないのに。胸の痛みを無視して作業を続けましょう。



●三日目、仕上げ
 ザシュッ、ザシュッ。もう日も沈み日付が変わってもスコップを振るう一人の男がいた。名前はアリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)、三日三晩休みもほぼ取らずにずっと堀を作り続けていた。時には村人の助力を受け、ひたすらに防衛の準備を進める。深い堀には木槍を敷き、軽率には攻めれぬように。
 しかし彼の頭の中には一つの思いが渦巻いていた。――予知は間違っていないのか?こんなに、明るくある村人たちが明日には全員死ぬなんて――。
 間違うはずがない。今までも幾度となくこの世界を訪れ、別の世界も旅し、そのすべてが的中した。だが、もしや私は守るつもりといいながら、彼らを埋めるための穴を掘っているのでは?脳裏に浮かぶ苦悩と胸を貫く痛みに背き、ひたすらに穴を掘る。
 きっと、きっと意味があると信じて。心配そうに覗き込む村人に微笑で応え、己を鼓舞しシャベルを振るう。士気は十分、協力もしてくれている。連中がせめて来たら我々も戦うぞ、と言ってくれるほどに。
「――アリウム、大丈夫かい?そんな休憩も取らずに」
 ふと声がし、上を向くと赤髪の少年が彼を引っ張り上げる。ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)は拾ってきた石や加工した木槍を先程までアリウムがいた場所に設置した。
「これぐらい深いならもう大丈夫だよ。少し、休憩してきたら?」
「そう……です、ね。お言葉に甘えます。日が暮れる頃には」
「もう日付も変わったよ?ほら、そっちの君も一緒に休んでおいで」
「……わかりました。休む前に――ヴェルさん、林の様子は」
 アリウムの言葉に険しい顔になるヴェル。彼はつい先ほどまで林の中を偵察していたのだ。

 ――二時間前。
「おいで、雄凰。またお願い」
 罠作業を終えた後、彼は一人どこかへ歩き出した。数歩先も見えない暗闇の中、彼は相棒たる名前を呼ぶ。数分もしないうちにどこからか巨大なヘビクイワシが降り立ち、小さな声で返事をした。
「夜目が効くお前に索敵してほしいんだ、できれば目立たないように。見えにくいかもしれないけど木の上からでも構わないよ。それと確認、一定以上の距離で、誰にも見つからないように。いいね?」
 ヴェルの言葉に頷き、音を立てないようにそっと羽ばたいて空へ飛び立つ。慎重に、何がいても気付かれないように神経を尖らせて。左右を二手で確認し少しずつ、少しずつ林の中央へ。数日前とは違う、人気のない――というより、自分の鼓動と息だけが反響しているような――静寂の中、彼は確信した。
 襲撃は間もなくだと。逃走の三日前はあれほどの狼に領主らしきものがいた。仕込みの二日前は少なくとも狼の唸り声が林の側には聞こえた。士気高揚の昨日は林の中の狼は減っていた。仕上げの今日には動くものは自分たちだけ――。再開した雄凰も同じだと伝えている。
 村の入り口まで戻ったところで作業中のアリウムと出会ったという。襲撃はヘビクイワシが伝えてくれるらしい。悲しそうな表情のアリウムが口を開く。
「やはり……余地はないのですね」
「ああ。だから――最善を尽くそう。覚悟を胸に」
 彼らの尽力によりある程度の防衛設備は整った。林側から順に鈴をくくり付けた糸を。続けて木槍の落し穴、柵と一緒に兵馬俑。続いて凹凸やぬかるみを仕込んだ地面に大落し穴、最後の柵。
 果たしてオブリビオン相手にどこまで有効かは全く想像できない。もしかしたらすべてが無意味かもしれない。
 ――それでも、支えになった。明日の今頃には全員が死んでいたとしても、彼らが生きた証はこれからもここに残り続ける。

 三日目、死亡者無し。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『幻惑の演奏者』アストラル子爵』

POW   :    サイレントステップ・アーベント―緋靴の為の夜会―
【永遠に踊り続けたい狂気を宿した魔の緋き靴】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
SPD   :    ドリーム・ロンド―夢現の輪舞曲―
【最も幸福な時期の夢へ誘おうとする竪琴の音】が命中した対象に対し、高威力高命中の【猛烈な眠気と頭に響く目覚めへの否定の声】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    ヘル・マスカレイド―死霊の為の仮面舞踏会―
戦闘用の、自身と同じ強さの【演奏者を護る様舞う仮面を被る踊り手達の霊】と【踊り手を癒し鼓舞する曲を奏でる演奏者の霊】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はモリオン・ヴァレーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●決戦、村人残数十七名
 夜が明け飯を食い、警戒態勢を敷く一座と十八人の村人たち。だが待てど暮らせど敵は現れずもしやが頭を過った時、狼と鷲の遠吠えが聞こえた。
 鈴が鳴り、各々が武器を持って家を飛び出す。彼らの眼前には狼を従える一人の男がいた。
『お行きなさい、お行きなさい。悲しむ必要などないのです。痛む必要などないのです。すべて私が救いましょう。さぁ、私の音に耳を傾けて……』
 その一声を皮切りに狼が駆ける――!数々の罠に阻まるも数匹は辿り着き、村人を襲い始めた!だが、準備と覚悟はとっくに済んでいた。この程度、我等でも対処はできると!堂々と進むオブリビオンが苛立たし気に顔をゆがめた。
『何故、何故辛き世界に留まろうとするのです!暖かき過去に、明るき未来に心を委ねなさい!』
 指先でハープを奏でた直後に一人の首が飛んだ。鮮血が村を染める。希望は、ここから絶望に変わっていく……。
アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

全員死ぬ。分かっています
それでも一度知ってしまえば見捨てる事はできません
現実逃避だとしても自己満足であっても、彼らを守りたい

疲労で体が鈍い。それでもまだ走る走る。傷は『激痛耐性』で無視です。
手近な敵を『全力魔法』ホワイトマーチで斬り付け、手の届かない敵へは『属性攻撃』ホワイトファングを放つ。
村人を『かばう』ように動き、少しでも彼ら村人達を死から遠ざけたくて。
じわりと染みる無力感は無視し、ホワイトホープとホワイトパスを併用。
限界を無視して挑みます

剣を杖にし、肩で息をする。敵の言葉が鳴き声にしか聞こえない。
彼等の最期を見据え、正しく絶望に浸る
せめて穏やかに。それが叶わぬのなら恨んでくれ


花邨・八千代
死ぬのか、どいつもこいつも
俺に飯くれた女も、ちびっこいって馬鹿にしたガキも

何が救いだ、クソ野郎が
そのどっから生えてるかも分からん羽根引き千切ってやらァ

◆戦闘
「挑発」乗っけた「恫喝」だ
南天に血を吸わせて大鎌に変化、先頭きって敵の中に突っ込むぞ
他を見る暇なんぞなくしてやるさ、思う存分踊ってやるぜ
「第六感」で敵の行動を予測しつつ、村人の方に行きそうな攻撃があれば割り込むように先に攻撃ぶち込むぞ
雑魚相手は「怪力」乗せて「なぎ払い」、「2回攻撃」だ

子爵相手は「だまし討ち」と「カウンター」で「捨て身の一撃」
「鎧砕き」だ、そのスカした顔ぶちのめしてやんよ!
ぜってー逃がさねーぞ
俺を敵に回したこと、後悔しやがれ


シン・バントライン
代わり映えのしない明日が欲しいと言った。
代わり映えのしないこの国が悲しかった。

人は死んだら星になるという。
闇深く死者の多いこの国は、どこよりも星が多いはずなのに、美しく見えるはずなのに。
いつもどこに光を求めていいのか分からなくなる。
祖国にいた時、星なんて一度も見えた事は無かった。

UC
共闘が可能なら回復役に。
戦闘は剣を抜き、敵UCは無視し敵本体を狙っていく。
「悲しみも痛みも全部含めての自分自身。明日が欲しいから生きようとしてるんや。委ねるってなんや、黙っとけ!」

最後、村人の弔いにUCで星の光を作る。

無常なのに、生きる。無常だからこそ、生きる。
僅かばかりの前向きな切なさを持ち帰ろうと思う。


零落・一六八
救いですかー。そういう主張嫌いなんですよね!
村人と勘違いされてるならそれを利用して
【捨て身の一撃】きっついのかましてやりましょうか
せっかく準備したことですし【地形の利用】
と設置した罠でも作動させながら
使えるもん全部使いましょう
野太刀を抜きひとまずボクは前に出ましょうか
狼の群れを【見切り】【なぎ払い】進み
飛び交う血を飲み込みながら【生命吸収】
敵が霊を召還したならUCで食べてしまいましょう
村人のことは基本守ります
【激痛耐性】もありますし多少手足が千切れても
【生命吸収】で回復しましょう
やむ終えず目の前で村人が犠牲になったなら
できた隙を無駄にしないで躊躇いなく【捨て身の一撃】入れましょう

アドリブ歓迎


ヴィリヤ・カヤラ
出来る限り村人は守るよ。
真の姿は蝙蝠の翼に赤い瞳だから、
ヴァンパイアを連想させて怖がらせるかもしれないけどゴメンね。
誹りもあえて受けるよ。

狼が残っていたら『第六感』と『情報収集』で村人のいる方向から、
進行方向を予想して【氷晶】で進路を塞ぎつつ攻撃していくね

演奏者さん?
大道芸をしたいなら他の場所をお勧めするよ。
【氷晶】と【四精儀】の雷の突風で
行動阻害とダメージを狙って、
剣での攻撃時は【瞬刻】を使うね。

幸福な時期の夢は家族と暮らしていた時だけど、
夢は見なくても利用するなら絶対に許さない
「もう消えてくれる?」

戦闘後は時間があるなら
村人のお墓は作れるかな?
次は幸せに過ごせると良いね

アドリブ・連携歓迎


ヴェル・ラルフ
…やるべきことは、忘れない。僕は、このアミュレットに誓って、自分を見失わない。

SPD
邪魔な狼の攻撃は[見切り]ながら[早業]で[暗殺]
動物の動きは単純だね。首筋が、がらあき。
雄凰、まだいるなら狼は食べてもいいよ。筋ばって好きじゃないなら、とりあえず蹴って。

吸血鬼には真の姿で戦うしかないかな
似たような姿になるけど、お前とは同胞じゃないからね。
ご挨拶に、【残照回転脚】で楽器ごと燃やしてやるよ。
残念ながら、音楽の嗜みはないんだ。育ちが悪いからね。

…この悲しみも、痛みも、僕のものだ。オブリビオンに、救われる謂れはない。
この想いを乗せて足蹴にすれば、お前にもわかるかな。

★アドリブ・共闘歓迎



●悪逆無道極悪非道、決死の憤激
『申し遅れました。私、アストラルと申すものでございます。『幻惑の演奏者』などと呼ばれることも。旅立ちの土産にお覚えください』
 夜も更ける世界にポロン、ポロロン。竪琴を鳴らし踊る様に殺戮を始めるアストラル子爵。守りの踊り子と癒すの演奏家に囲まれてゆっくりと歩を歩めていた。
『さぁ、続いてあなたはいかがですか?』
 弦を弾き集団の一人へと音を飛ばす。盛大に血が噴き出し、また一人――
「嫌いなんですよね、そういうの。自分一人でやってもらえます!?」
 名も無き野太刀を投げ飛ばし、子爵の胸が貫かれるかという瞬間、踊り子に逸らされ頬を掠めるだけに終わる。しかし、その隙に後ろから飛び出た黒子姿の者が刀を掴み取り鋭い一閃!左腕を半分に断ち切った!素早く味方の元に戻りシン・バントライン(逆光の愛・f04752)は武器を持ち主である零落・一六八(水槽の中の夢・f00429)に渡した。
「片腕叩き落すつもりでしたが……」
「ナイスです!あれじゃもううまく弾けないでしょ」
 シンはパン!と両の手を叩き合わせる。開き掌から浮かび上がる爛々と輝いた光を一六八に浴びせると、みるみるうちに傷が癒える。一方、アストラルも演奏者に癒されて腕が元通りに……。
『――何故超常の力を手にするものがいるのです?不愉快、不愉快、不愉快です。貴方は我等を海に沈めるもの、救いを払い除け足を掬うもの。命への冒涜者です!』
「――そういうテメーが一番ふざけてんだろクソ野郎がァ!勝手な御託並べて気持ちいいのはお前だけだろーがよォ!!!」
 二人の後ろから飛び出す威勢のいい怒鳴り声。男二人の肩を足場に花邨・八千代(可惜夜エレクトロ・f00102)は跳ねる。上空から大鎌を振るう!【南天】と呼ばれる変形武器――それを抱えあの胸糞悪い貴族の首を!
『そんな見え見えの大技、当たるとでも?流石に』
「甘いですね。何を啼いているのかわかりませんが」
「甘すぎるよ。クッキーよりもずっとね」
 突如、背後からの襲撃!凍てつく氷の矢、超低温の冬の刃!振り向くころには演奏家と踊り子の手足は凍てつき、子爵の足も凍り付いている!兵馬俑に紛れ落し穴の中に潜んでいたヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)とアリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)の氷晶連携で動きを封じることに成功したのだ。瞬間、八千代の振り下ろす刃が子爵の身体を――!
『貴方たちの相手はお館様に仰せつかった命令ではありませんので』
 真っ赤な真っ赤な夜会靴。踊るためにあるそれは、とどまることなど許さない。拘束を砕き、蹴り上げるように氷の礫を飛ばして八千代の身体を吹き飛ばす。
 ――が、身体を捩じり、空いた手で赤髪の少年を掴んで子爵に向けて振り回す!赤熱した少年の脚は火花を上げ、子爵の眼前で爆発を撒き散らした!
 吹き飛ぶ二人をシンを一六八が受け止めて距離を取る。その間にヴィリヤとアリウムも合流を果たした。
「八千代さん大丈夫ですか!?身体、焦げて」
「いい、全部コイツが飲み干すから問題ねぇ。それよりも、だ」
 一座の者たちは睨みつけるように爆風の中心を見る。そこには顔の半分が焼け落ちてなお平静を保つアストラルが存在した。
「ピンピンしてるね、結構いいの入ったはずなんだけど」
「ご確認を、氷と炎で脚も爛れています」
「痛みは私が癒します。皆さんは全力で」
 突然アストラル子爵は大きく溜息をついて疲れたように肩を落とした。
『面倒です。先程も申しましたように私の標的は貴方ではない。邪魔しないでいただけますか?』
 竪琴を乱暴に鳴らすと村中の狼が彼の元に集まり始める。再度琴を弾けば狼たちは曲刀を持った踊り子へと変えられていく。より正確に、「救い」を与える形へと……。
「させるか!」
 散らばっていく踊り子とアストラルを追いかけるように一座は散開し、所々で剣戟の音が鳴り響く。それと同時に、村人の悲鳴も。
 四肢を犠牲にかばい、踊り子を超常で呑み込む一六八の隣でで無残にも幼い兄弟の上半身が入れ替わった。
 氷壁を駆使し、迫り来る刃を弾くヴィリヤの後ろで親子の理性が生存を破棄していた。
 大鎌を振るい剛力でなぎ倒し、全身で盾となる八千代も包囲する刃からは悪餓鬼を守り切れなかった。
 疲労困憊になりながら、霞む視界で人々を護るアリウムの手から共に罠を掘った男の命が滑り落ちた。
 影を縫い間隙を通し、爆発を駆使するヴェルの視界の端で一人の男児が後悔の表情のまま首が別たれた。
 次第に村から音が消え、アストラルと一座は向かい撃つ形となる。
『逃がしては……いただけないようですね』
 八千代が言う。
「また同じことするんだろ?ぜってー逃がすわけねーだろ。後悔して死ね」
 ヴェルが言う。
「悲しみも、痛みも、辛さも。僕のものだ。お前に、勝手な救いを与えられる謂われはない」
 シンが言う。
「全部含めての自分自身。ヴェルが言う通り全部自分のもの。明日が欲しいから俺たちは生きようとするんや。生きようとしてるんや。なんでお前なんかに、勝手に委ねるとか、何なんやお前。黙ってろや!」
 超常たる力の根源の呪詛、超低温の刃、血を啜る大鎌、凍てつく矢、爆炎の蹴撃、星々の煌きと黒き剣。対する欠けた竪琴。これ以上は語るまでもない。

 決着はついた。長く、本当に長く苦しい数日。得るものは無く、達成感は無く、後に支払われる報酬を彼らはどのような顔で受け取るのか。
 ふと、一座の面々は思い出す。シンが助けた足に傷を負った彼は――。
 衝動に駆られて走り出す一行。彼の隠れていた小屋の扉を開き
『くっ、来るなぁ!』
 叫ばれた声には怯えの色が溢れ出ていた。腰に忍ばせた鉈と即席の木槍を一座に突き付ける。
『わかってる、わかってるよあんたらがあの化け物とは違うってのは!本当は助けに来てくれたんだろ?!でも怖がるかもって隠してたんだろ!?でもよぉ!!!』
 その声に一座の動きは完全に止まる。そんな、そんなことが。
『なんなんだよ!なんなんだよお前ら!お前らみたいなわけわかんねー力の連中にさぁ!俺等みたいなやつらの運命決められてさぁ、納得できるわけねーだろうが!嫁も死んだ!娘も死んだ!ダチも村長も、シスターも全員死んださ!何にも残ってねーんだよ!お前らが何もしなくても何かしても「別のやつ」がまた来るんだろ!?もう、もうどうしようもねーんだよ!理不尽、理不尽、理不尽すぎんだよ!これ以上痛くて怖いのは嫌なんだよぉ!!!』
 泣き喚き叫んだ男は最後に一言だけ呟く。
『ごめんなぁ、兄さん。菓子、美味かったよ』
 彼らの嘆きを誰が止められようか。
 ありとあらゆる手段で、人を癒し救わんとしたシンの目の前で――錆びた鉈を掴み取り震える手で強引に自身の喉を裂いたのだった……。
 これで猟兵の仕事は終わったのだ。また、いつもの日々が出迎える。

 襲撃、死亡者在り。残村人0人。

●夜が明けて
 静寂の中で目が覚めると、ヴィリヤがスコップを振るう音が聞こえる。自然と手伝うものが増え、時間を掛けて大きな穴を作り上げた。
「次は、幸せに」
 各々が祈りを捧げる。ある者は自己満足かもしれないという葛藤を抱え、ある者は自らの誓いを確認し。最後に黒子の男が星を打ち上げる。人は死んだら星になるという。なのに、最も死者の多いこの世界は、何も見えやしない。それならせめてこれぐらいは。
 これぐらいは、許されるだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月10日


挿絵イラスト