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フサアカシアの追想

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虹目・カイ
いつもお世話になっております
難しい内容かとは思いますが、検討いただければ幸いです
どうぞよろしくお願いいたします

主題:アイテム『ミモザの記憶』について

はらり、落ちる写真
血塗れで、もう何が写っているのかも解らないけれど
大切にそっと拾い上げて

「……ああ、もっと早く捨てられていればよかったのに」

溜息ひとつ
望んで捨てたいわけじゃない
けれどそれでも後悔するのは

(「こうしてずるずると手元に残していたから、想い出さえも汚れてしまった」)

遠い五月のことを思い出す
空は晴れて高く、柳は青くそよぎ、花が綻ぶ
正直、未だに人と接するのは苦手な自分だけれど
あの時は独りじゃなかった

「ミモザの花の色は――今の私は、どうなんだろうな。……いや髪の色は寧ろそれっぽくなったかも知れないけど」

最後冗談めかしつつもぽつり零して

目を瞑る
想起する
他愛ない言葉も
零した弱音も、示してくれた未来も

(「……今更気づいても、遅いけれど」)
(「未来に変わらず、自分がいるって信じてくれる人がいるって、凄く幸せなことなんだな……」)

少しだけ、写真に涙のシミが落ちる
それでも、懐かしめば微かに笑みが零れた

(「……結局捨てられないや」)
自分自身に呆れながらも
そっとまた、落とさないようにしまい込んだ

きっと、あの時に貰った言葉が
今も彼女の足取りを、未来へと進ませている

(「元気かな。元気でいるといい」)

※一人なので敬語なし(素の口調)
※アドリブOK、字数は★分一杯使っていただかなくても差し支えございません



 はらりと、ふいにひとひら、地へと零れ落ちたもの。
 虹目・カイ(虹に歪む自己・f36455)は思わずぴこりと、キラキラ輝く山吹色の髪と同じいろをした狐耳を揺らして。
 今日は碧と翠のお気に入りの彩りを選んだその双眸で、いつもは懐に密かに忍ばせているそれを見つめる。
 そして、やはり溜息とともに紡いでしまうのだ。
「……ああ、もっと早く捨てられていればよかったのに」
 伸ばしたその手で、大切にそっと落ちたそれを拾い上げながら。
 もう今となっては何が写っているのかも解らない――1枚の写真を。
 いや、紡ぎ落とした言の葉も決して嘘ではない本心ではあるし。
 でも、望んで捨てたいわけでもないのも本当のこと。
 けれどそれでも後悔するのは、手にした写真を染めるそのいろであった。
(「こうしてずるずると手元に残していたから、想い出さえも汚れてしまった」)
 改めて落とす視線の先にある写真はやはり、血に塗れて汚れてしまっているから。
 でも、何が写ってるかは、写真の中ではたとえ見えなくなっていようとも。
 今でもカイはそっと思い出すのだ……遠いあの五月の日のことを。
 空は晴れて高く、柔い陽光が降り注いでいて。
 柳は青くそよぎ、様々な季節の花たちが綻び咲いていた。
 そんな見渡す限りの風景はそう、穏やかな春の花の宴。
 そして、何よりも。
(「正直、未だに人と接するのは苦手な自分だけれど」)
 あの時は――独りじゃなかった。
 もう何度あれから季節が巡ったのか、数えることは敢えてすることはないけれど。
 でもぐるりとまた、一緒に見て回った、あの時と同じ花たちが咲く季節は訪れて。
 そして、この花が咲くのを見る度に、思い出してしまうのだった。
「ミモザの花の色は――今の私は、どうなんだろうな。……いや髪の色は寧ろそれっぽくなったかも知れないけど」
 ポンポンのような小さな花をつけているフサアカシア――ミモザの花を。
 最後冗談めかしつつもぽつり零すそんなカイの記憶に、いまだ密かに咲き誇るこころの華を。
 この花の色はどこか雰囲気が似ていると……そう綴られた、あの時の声を。
 そしてカイはふと目を瞑り、想起する。
 他愛ない言葉も、零した弱音も、示してくれた未来も。
(「……今更気づいても、遅いけれど」)
 けれどそれでもやはり、いつだって思い返せば、じわりと心に染みるのだ。
(「未来に変わらず、自分がいるって信じてくれる人がいるって、凄く幸せなことなんだな……」)
 そう改めて感じれば、刹那、ぽつりと写真に零れ落ちる雫。
 落ちた涙のしみが、まるで花のように広がって。
 それでも、懐かしめば、カイは咲かせてしまう。微か零れる笑みを。
 だからやはり、ぐるぐると巡り巡って、いつも通り。
(「……結局捨てられないや」)
 自分自身に呆れながらも、カイは手にした写真をしまい込むのだった。
 そっとまた懐へと……落とさぬように、大切に。
 懐かしい気持ちや、今だからわかる幸せな気持ち、そして沢山の後悔の気持ち。
 そんな様々な内なる想いは、いつまでたっても消えることはなくて。
 まるで季節が巡りくるかのように、花開いてはそっと散り、また咲いては蕾になって……それを幾度も、自分で呆れるほど繰り返しているのだけれど。
 でも、その度にカイはこう思うから。
 今もその足取りを未来へと進ませているのは――きっと、あの時に貰った言葉があったからだ、と。
 そして……その顔をようやく上げれば。
 ふと目に飛び込んできた彩りに、思わず小さく微笑んでしまう。
(「元気かな。元気でいるといい」)
 淑やかで優しくてどこか上品な印象を受ける、洗練された色合いを咲かせた、白い花を見つけて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2022年12月23日


挿絵イラスト