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サンタの多すぎる動物園

#コネクト・ハート

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#コネクト・ハート


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「サンタさんのコスプレをさせられちゃうんです!」
 ラクリマが開口一番、そう叫んだ。

(ラクリマのサンタコス? ありなんじゃ?)
 そう思って皆が首をかしげると、それを察したのか、
「違います、違うんです。動物園の動物たちが、サンタさんのコスプレをされちゃうんです!」
 わたわたと両手を振りながら、ラクリマが必死で訂正する。

 動物にサンタのコスプレをさせる、ということだろうか。だけどそれも可愛いし、ありじゃないか。

 そんなふうな疑問の声にラクリマは、
「クリスマスの時期だけならいいのですけど、このままだとオールシーズンサンタさんになっちゃうんです」
 サンタさんは季節外れだとちょっと残念ですし、なにより夏になると暑くて倒れてしまう子がでてしまう。と説明を加えた。
 実際『CONNECT』ではそんな未来が予知されていて、それで今回の任務となったようだ。

 任務としては、生命体に取り憑き、その見た目をサンタにしてしまう『サンタゴースト』(ラクリマ命名)という、思念獣的なものを浄化することになるのだが……。
「この任務の難しいところは、動物園が休めないということなんです」

 年末年始のお休みは、動物園もかき入れ時でなるべく休みたくない。
 しかも、動物園的にはクリスマスまではこのままにしておいてもらいたいらしく、クリスマス明けの夜中のタイミングで浄化したい、ということなのだ。

「夜の動物園で季節外れのお化け退治という感じになると思います。お化けは怖いですけど、相手は攻撃力などはありませんし、みなさまのユーベルコードで祓ってあげればすぐに成仏するみたいです。お化け怖いですけど」

 よろしければ、いっしょに行っていただけないでしょうか? と、ぺこりと頭をさげたラクリマは、それと、と付け加える。
「夜中ではありますが、動物に危害を加えない限り、園内は自由に使ってくれて構わないとのことです。浄化自体にはそんなに時間はかからないと思いますし、夜の動物園をみなさまといっしょに観て回るのもいいかな、なんて思ったのです。いかがでしょうか?」

 一気に言い切ったラクリマは、頭を下げたまま、伺うように上目遣いで見つめる。その瞳がちょっと泳ぎつつ濡れているのは……うん。推して知るべしというところだろうか。


すい

 コネクトハートの世界へようこそ。
 こちらはPBWアライアンスの一つ、コネクトハートの世界です。
 詳細は公式サイトをご参照ください。
 https://sites.google.com/view/connect-hearts/

 この世界では、猟兵のみなさまは『アイドル』のファンという立ち位置で、コネクトハートの世界で頑張る『アイドル』たちを助ける存在です。
 その卓越した身体能力やユーベルコードを使って、今回は『新人アイドル』ラクリマ・トランクィッルスを助けてあげてください。
 ラクリマに使って欲しいユーベルコードや、行動の指示などありましたらプレイングにいれてくださいませ。(リクエストのない場合は任意に行動します)


 戦闘っぽいオープニングですが、『サンタゴースト』に戦闘能力はなく、実は日常です。
 基本は夜の動物園でのイベントデート、といった感じになります。
『サンタゴースト』は『取り憑いた対象の見た目をサンタにする』という能力しかありませんので、ぱぱっと祓うなり、上手く使うなりしてもらっておっけーです。
 最終的に、朝までに動物の見た目が元に戻っていれば大丈夫ですので、自由に動物園で遊んでいただけたら、と思います。

●好感度について
 『アイドル』と一緒に戦っていただけた場合、『アイドル』からの好感度がアップします。
 好感度が上がると、今後、『アイドル』との関係性も変化していきます。
 さらに、できることが増える場合も……?
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第1章 日常 『プレイング』

POW   :    肉体や気合で挑戦できる行動

SPD   :    速さや技量で挑戦できる行動

WIZ   :    魔力や賢さで挑戦できる行動

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カーバンクル・スカルン
確かに熱中症で倒れられたら大変だな。……というわけでゴーストに考えうる限り最悪の状況を見せたいと思いまーす。

武器改造でリードにした鎖をゴーストに取り憑かれた動物さんに繋いで【心慌意乱】を発動。
夏の暑い日、服を脱げなくて苦しみ倒れ死んでいく動物と無力感に苛まれる飼育員の姿を幻視させる。これで分からないなら実力行使しかねぇな。
繋いでしまっている以上、動物さんも巻き込んじゃうけど……こちらはじゃれついたつもりが力加減を誤って大好きな飼育員さんを傷つけちゃう様子を見せとくか。

悪意のない悪行っていうのが1番タチが悪いんだから。ラクリマさんも今はまだ大丈夫かもしれないけど、厄介なファンには気をつけるのよ?



 深夜の動物園に、サンタの群れ。
 真っ赤な衣装に身を包んで、あるものはゆっくりと動き回り、あるものはのんびりと寝息をたてている。厚手の生地と襟元や袖口のファーが、冬の深夜でもとても暖かそうだ。

 でもだからこそ。
「確かに熱中症で倒れられたら大変だな」
 カーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)は、このまま夏を迎えてしまえば動物たちがたいへんなことになると確信した。
 カーバンクルの言葉にラクリマが頷きながら、側にいた一羽のペンギンを抱き上げ優しくその背を撫でると、ペンギンからゆらりとしたもやが立ち上り、空へと消えた。

 どうやら『サンタゴースト』が、少しの力で動物たちに害なく浄化ができるのは本当らしい。しかし、この動物園全部の動物となると数が多い。ここはいっきにできるだけたくさんの動物たちを浄化していくのがよさそうだ。
 そう考えたカーバンクルが真っ赤な瞳を輝かせると、その手には瞳と同じ色のたくさんのリードが握られていた。それをやさしくペンギンのほうへ投げると、リードはペンギンにくるりと巻きついた。

「カーバンクルさん、これは?」
 興味深そうにそれを見ていたラクリマが問うと、
「これで、このまま夏になったらどうなるかを『サンタゴースト』に見せようと思ってね」
 ユーベルコード【心慌意乱】
 どうやら心優しい系のゴーストだと判断したカーバンクルは、このまま夏になってしまうと、ペンギンさんたちも飼育員さんたちも、この動物園に来てくれる人たちも、みんなが悲しい結果になることをゴースト達に幻視で伝え、説得を試みるようだった。
「ただ、いっしょに繋がれているペンギンにも悲しい光景を見せてしまうことになっちゃうのが、ちょっと心苦しいんだけど」
 と、少し困ったように言うカーバンクルに、

「そ、それなら……そこはわたしにフォローさせていただけますか?」
 ラクリマがそう言って両の瞳を輝かせると、唇から紡がれた柔らかなスローバラードがあたりを包み、カーバンクル、そしておそらくはペンギンたちの心にも、薪の炎のような温かさが染み込んでいく。
 すると、もやが消え、元の姿に戻ったまま動きを止めていたペンギンたちが、ぱたぱたと羽を振りながら、カーバンクルとラクリマのほうへと近づいてきた。

 足下で楽しそうにじゃれ合うペンギンたちに囲まれ、小さくガッツポーズをしていたラクリマを見ながら、カーバンクルは、
「あの『サンタゴースト』たちも、クリスマスを楽しみたかっただけなのかもしれないけど……」
 と、前置きをすると、
「悪意がないからといって、それがすべてプラスになるとは限らないからね。ラクリマさんも厄介なファンには気をつけるのよ?」
 一羽のペンギンの頭を撫でながら、ちょっと心配そうにラクリマに笑いかけながら、次の動物たちを助けようと歩みを進めていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベルカ・スノードロップ
アドリブ歓迎

「夜中の|アイドル活動《ファン交流》にOKが出ることも、あるんですね」
そこが意外な所でした。
ひとまず、動物たちを救っていきます

【動物使い】と【動物と話す】を駆使しアンガラ
《選択UC》で、優しく撫でてあげて、サンタゴーストを浄化・成仏させていきます

とはいえ、ラクリマさんと会話をするのは、小動物のブース

保温ポットに入れてきた温かい紅茶と、手作りのクッキーを用意して
ラクリマさんとの時間を過ごしますね
「ところで、ラクリマさん。怖かったのは、何に対してでしょうか?」
ゴーストなのか、夜の動物園というロケーションなのか、動物たちなのか
ちょっと気になったので、聞いてみます
怖かったのが、どれだったにせよ
「私と一緒なら、安心ですよね?」
そんな言葉を、微笑と一緒にかけます

ちょっとしたハプニング(好感度に準拠)も、ありましたが
動物園からの依頼は上手くいきました

ラクリマさん自身と、事務所がOKなら、ですけど
このままラクリマさんの事を、家(事務所運営の女子寮?)まで送り届けますよ



「夜中の|アイドル活動《ファン交流》にOKが出ることも、あるんですね」
 ベルカ・スノードロップ(【中将】少女を愛に染め救済せし夜の王・f10622)が、ちょっと意外そうに、隣を歩くラクリマに話しかけると、
「え、えっとですね。今回は特別といいますか、わたしが頼み込みまして……」
 うつむきながら、少し申し訳なさそうに答えるラクリマに、ベルカは、そうだったんですね。といいながら、優しい微笑みを向けると、
「それでは、まずは動物たちを助けていきましょうか」
 と、明るく声をかけて動物園の中へと入っていった。

 園の中は、動物たちの睡眠のためもあり、必要最小限の灯りしか灯されていなかったが、ベルカは特に気にすることもなく――でも、ラクリマの歩幅にはあわせて――進んでいく。
 目指したのは『ふれあいパーク』と呼ばれている、ウサギやハムスターと触れあえる中庭のようになっている場所だが、ベルカは中庭までの道々に檻を見つけると、ラクリマには外で待つように伝え、自身は虎やライオン、クマなど、動物たちの檻に入っていき、頭を優しく撫でて『サンタゴースト』を浄化していった。

 そんな浄化を繰り返しながらたどり着いた『ふれあいパーク』は、サンタで溢れかえっていた。

 ウサギやハムスター、リスやプレーリードッグなど、パーク内のあらゆる小動物たちがサンタの衣装を着たまま、眠たそうにゆっくりと動いている。
「ここならゆっくり浄化しながらお話しできそうですね」
 そう言いながら柵の中に入っていくベルカに続いて、ラクリマも中庭に入ると、ハムスターを抱き上げそっとその背を撫でる。するとハムスターからふわりともやが立ち上り、その姿が茶色のふわもこへと変わった。
 もやに驚き、思わずベルカの腕に抱きついてしまったラクリマだったが、元に戻ったハムスターを見ると、嬉しそうに放し、そして慌てたようにベルカから跳ねるように離れる。そんな姿を愛らしく思いながら、ベルカはベンチを一拭きしてからラクリマを呼ぶとベンチに座らせた。
「ここは少しのんびりいきましょう」
 保温ポットから紅茶を注ぐと、クッキーといっしょに渡しながらベルカもベンチに腰掛ける。

「ところで、ラクリマさん。怖かったのは、何に対してでしょうか?」
 こくり、と紅茶を一口飲んで、ベルカがラクリマに問いかける。
「え、えっとその……」
 あわあわと口ごもるラクリマに、ベルカが、
「ゴーストですか、それとも、夜の動物園というロケーション?」
 と、促すように問いかけると、
「お、お化けが……怖くて……」
 ラクリマはぽつりと答えると、「猟兵なのにおかしいですよね!」と慌てたように手をぱたぱたと振った。

 照れ隠しなのか、ちょっと目を反らしているラクリマの姿を可愛らしく思いながら、ベルカは今日一番の微笑みで、
「でも、私と一緒なら、安心ですよね?」
 と、ラクリマの手に自分の手を重ねた。
 ベルカの優しさがそのまま温かさとなって、重ねた手から勇気を与えてくれる。

 すると受け取った温かさにラクリマの瞳が淡く輝き、全身から光の粒子が舞うように広がっていくと、周囲の動物たちに吸い込まれていった。
 きらきらと輝く光の粒は動物たちから『サンタゴースト』を浄化しながらもやにまぎれ、ゴーストを送っていくように、寄り添いながら消えていく。
 小さなオーロラのようなその光景を、ベルカとラクリマはしばし言葉もなく眺めていたが、いつしか2人で微笑み合っていた。

「今日はこのままラクリマさんの事、家まで送らせてもらっていいですか?」
 ベルカは微笑んだまま右手を差し出し、もちろんラクリマさん自身と事務所がOKなら、ですけど。と付け加える。
 ラクリマはその言葉を聞いてしばしきょとん、とした表情を浮かべていたが、意味を理解すると、すこし頬を染め、
「ぜ、ぜんぶ終わってから、マネージャーさんに確認してみないと、です」
 そう言って、頬を押さえながら次の動物のところへと小走りに向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神凪・迅
動物たちと心を通わせるのは、ボクらの力でもあるよ
動物使いも、大道芸の一つだからね
じゃあ、淡い光で眠りを妨げずにサンタゴーストを浄化しようか
『世界を革命する淡き光』

「これで、この辺りの子たちは元に戻ったよ」

ラクリマさん。少しそわそわしてるみたいだから
早く帰れるうに協力しようかな?



『大道芸』。今風にいうなら『ストリートパフォーマンス』というのがいいのだろうか、それはほんとうに多種多様、ジャグリングやパントマイム、スタチューを皮切りに、100人いれば100通りのものがあり、その中にはもちろん『動物芸』というものもあるのだ。

 神凪・迅(フリッカージョーカーの使者・f37557)は動物園を見回すと、
「ボクらの力には、そういう力もあるんだよ」
 たくさんのサンタを眺めながらラクリマにそう告げると、近くにあった檻の中に入り、中にいたレッサーパンダに手を伸ばし、そっと頭を撫でた。
 すると、レッサーパンダからふわりともやが立ち上り、それまで赤白のサンタ服を着ていた全身が、焦げ茶色の綺麗な毛並みへと変化していった。

 迅は、もやにびくっと身体を竦ませるラクリマを見ると、
(ああ、なるほど)
 と、納得するように頷くと檻からでて、頭をやさしくぽんぽん、と撫でるように叩いた。
『動物芸』に最も必要なもの、それはもちろん『動物たちと心を通わせること』だ。そして『動物たち』と言ったが、それにはもちろん人も含まれる。
 薄々思ってはいたが、ラクリマの雰囲気を見るにお化け的なものが苦手であろうことは間違いないだろう。迅はそれを確信すると、
「それじゃ、動物たちには眠ってもらったままで『サンタゴースト』を浄化しようか」
 と、瞳を輝かせた。

 赤く輝く光の渦が迅の全身から螺旋を描いて立ちのぼり、迅が両手を開くように広げると、渦は大きく広がり周囲を覆っていった。
 |世界を革命する淡き光《レジスタンス・テンダー・ライト》。『あるべきものを、あるべき状態に』戻す迅のユーベルコードの光に包まれた動物たちからもやがのぼり、一瞬たゆたった後、解けるように消えていく。

「これで、この辺りの子たちは元に戻ったよ。次へ行こうか」
 迅が微笑んで言う。
 一匹ずつ浄化していてもよかったのだが、ラクリマの様子を見ているとどうにも落ち着いていないようだし、早めに終わらせるのがだろうという、迅の判断だった。
 体力は使ってしまうが、そちらのほうがラクリマにとって負担にならないと考えたからだ。

 けれど……その微笑みを浮かべた頬を流れる汗に、ラクリマは気がついた。軍服の裏ポケットからチーフを出すと流れる汗をそっと拭き取る。
「少し休憩していきませんか」
 ちょっと申し訳なさそうに言うラクリマを見て、迅はやさしく微笑むと、ありがとう、と言葉を返し、側にあったベンチに2人で腰掛けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

十二・エマ
ラクリマちゃんの依頼なら!年末の書類の山なんぞすぐに処理して向かうしかないですねぇ。

メガコーポの仕事柄、動物さんへの麻酔薬ならよく頼まれてるのでストックがありますしぃ、準備しときましょうか。
まぁ、実験体の動物さんよりは大人しいと思うので必要ないと思いますが一応。

あとはサンタゴーストですが、幽霊系はあまり会わないので対処法があまり分かってないんですよねぇ。
一応使えそうなサイキックの準備はしておくんですけどぉ。ぶっつけ本番ですねぇ。

そういえばラクリマちゃんはどう対処するんでしょうか

(ラクリマちゃんにUC【オラトリオの繭】を使用して貰っても大丈夫でしょうか 幽霊の成仏≒治癒)

生歌 アッ(幸福の中で昇天)

※アレンジ・連携歓迎




「年末進行? 書類の山? そんなの|萌力《もえちから》の前には小石ほどの障害にもならないですねぇ」
 ラクリマの|依頼《イベント》があると知った十二・エマ(トニエマ・f36559)が、一般の人にも見えそうなくらいのオーラを噴き上げながら瞳を輝かせると、体はピクリとも動かず、しかし左手は霞むような速度でデスクの上を走り、うずたかく積まれていた書類の高さを次々と減らしていく。
 そんなユーベルコードは持ち合わせていないはずなのだが、どこかでアシッドボトルでも飲んでいたのだろうか、それとも気合いが上限突破して|なにかの《バーサーク》スキルが100レベルに達したのだろうか?

 数十分後――。
 エマは「2日はかかりますぅ」「残業ですぅ」と言っていた書類の最後の一枚にとどめをさすと、
「お疲れさまだよぅ」
 と、鞄を抱え、ダッシュでオフィスをあとにするのだった。

 ちなみにもちろん早退である。


 無事|動物園《イベント会場》へと到着したエマは、ラクリマの姿を見つけると、ぶんぶんと手を振った。
 ちょっと不安そうな表情を見て「そんなラクリマもイイ」と思わないでもなかったが、やはり推しには笑っていて欲しい。
 エマはラクリマの側に歩み寄ると、
「大丈夫ですぅ、まずは任せて欲しいんだよぅ」
 そう思いにっこりと笑いかけた。

 仕事柄、動物への対応は慣れていたし、動物園の動物は普段扱っている実験体よりは大人しいだろう。それに万が一を考えて鞄の中には麻酔薬も各種入れてきたし、準備は万端だ。
 問題は相手が幽霊系ということなのだが、ここはぶっつけ本番。サイキックでなんとかできるはずだ。
 「鼠・牛・虎・兎・龍・蛇・馬・羊・猿・鶏・犬・猪」
 エマがつぶやきながら、ぱん、と手を打つと、十二支の獣たちを模したオーラが浮かび、対応した動物たちに吸い込まれると、その体を内側から優しく包み込んだ。
 すると、暖かそうなオーラに包まれた動物たちから、もやのようなものが立ち上り、溶けるように宙に消えていくと、サンタ姿だった動物たちがもとの姿へと戻っている。
 よし、とVサインしたエマが、
「次はラクリマちゃんの番だね」
 と期待の眼差しを向けると、ラクリマはしばし考えた後、目を瞑り、胸に手を当て、深呼吸をしてから……静かな旋律を唇から紡いだ。
 柔らかなソプラノが静かに周囲に流れていくと、その歌声を聴いた動物たちは眠りにつくように体を丸め、その背から浮かび上がったもやが揺らめきながら姿を消した。

 元の姿に戻った動物たちを確認したラクリマが、ふぅ、と大きく息を吐き出し、エマの方へと振り向くと――そこにはエマが安らかに倒れていた。

 慌てて駆け寄り抱き起こしたラクリマの腕の中で、エマは満面の笑みのまま、胸の前で組んでいた両手を解き、ラクリマにサムズアップを返すと、かくりと首の力が抜けた。
「エマさん、帰ってきてくださーい!?」
 幸せそうにくったりとしたエマを抱えたままのラクリマの叫びが動物園に響く。その声を聞いたエマは、
「ラクリマさんの叫びツッコミ、レア……」
 と、思っていたとかいないとか。


 なにはともあれ。
 集まってくれた猟兵たちのおかげで、動物たちは元の姿を取り戻し、動物園も休むことなく営業をすることができた。
 ただ、サンタ姿の動物たちへの反響の多さに、イベントごとに衣装を着せる、という企画を動物園側が計画していたのがちょっと不安なラクリマであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月09日


挿絵イラスト