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さよならクリスマス・キャロル

#シルバーレイン #犯罪能力者 #グリモアエフェクト #プレイング受付中

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「突然ですが、私の故郷に来ませんか」
 自らをドイツ育ちと認識する陸・慧(今はまだ燃え上がらぬ陸家の炎・f37779)は、集まった猟兵たちに向かってそう尋ねた。
「予め申し上げておきますが、残念ながら観光旅行ではございません。事件です。既に経験した方もいらっしゃるかと存じますが、現地の処刑人との共同作戦になります」
 即ち、能力者で構成される犯罪組織がまたひとつ、見つかったということか。そして、そのリーダーはオブリビオンである、と。
「組織……と言ってよろしいのかは少々疑問が残りますがね。それと申しますのも、今回対応していただくこの集団、リーダーは作家であり、構成員とされる能力者たちは彼女の狂信的なファンであるとのこと」
 予知によるとリーダーは『悲哀綴りのルクレルク』。
 喜怒哀楽の『哀』を除く感情が欠落しており、その哀しみを文学として昇華する傍ら、他者の感情を欲して人々を襲う存在だった。
 ある日、彼女はいつものように、彼女が密やかに公開している作品の虜になった少年少女たちをおびき寄せ、殺害する計画を立てた。死の瀬戸際に見せる感情が、それでも敬愛する作家に会えた喜びか、理不尽への怒りか悲しみか、或いは――そんなことを考えながら。
 そしていざ実行に移そうとした、その時だった。
 彼らは作者であるルクレルク本人すら圧倒するほどの熱量で、彼女の作品への愛を語った。そしてその作品の糧になれるなら、望むままに死んでも構わないとすら言い切ったのだそうだ。
 けれどその内の一人がぽつり、心残りがあるとすれば、二度と先生の作品が読めなくなることだけだと呟いた。其処でルクレルクは彼らを生かし、代わりに彼らに集めて貰うことにしたのだ。次の犠牲者を。
「心打たれたのか、或いは気紛れか。私には理解しかねます。しかし、問題は彼らが皆、能力者であったこと。シルフィードが多いそうでございます。彼らはルクレルクの作品を『布教』し……心動かされた者を夜な夜な誘拐し、ルクレルクの作品の糧として、彼女に献上している様子」
 彼らの末路は……語るまでもないだろう。
 その死を以て、ルクレルクの作品は磨き上げられていく。そうしてまた、その魅力に取り憑かれる者がいる。そして彼らもまた作品の糧へ……その繰り返し。
 月並みではあるが、ここで悪夢の連鎖を断ち切らなければならない。
「作戦の流れとしては、まずは処刑人が構成員たちを陽動。皆様にはその隙に、拠点の内部へと侵入していただくことになりますが。時期柄でしょうか、ルクレルクは現在、クリスマスをモチーフにしたイギリスのとある文学作品をオマージュした作品を執筆しているようです」
 それが何か、作戦と関係あるのだろうか。
「正面は処刑人が陽動に回っておりますから、皆様には裏口から拠点に侵入していただくこととなります。が、敵もさる者、裏口に侵入者用の罠ならぬ特殊空間を展開しているようなのです」
 どうやら少女、女性、老婆の三人の幽霊が出て、ポルターガイスト現象を起こして行く手を阻もうとするのだと言う。
「心霊現象そのものに関しては、埒外の存在を日々相手にしている皆様ですから、恐れることは何もないでしょう」
 あっ、決めつけはよくないぞ。
「とは言え、あくまで『創作物としての幽霊』であり、ゴーストやましてやオブリビオンではございませんので、物理的な妨害にだけ気をつけて、突破をお願いいたします」
 物品は壊しても避けても逆に利用してもよい。兎に角、特殊空間の切れ目――ルクレルクのいる二階に続く階段がそうらしい――まで辿り着ければ、特殊空間からは逃れられる。
「なお、拠点は外観こそ資産家の屋敷といった風情ですが、既に住む者もおらず、文字通りの幽霊屋敷と化しておりますので、器物損壊を懸念する必要はございません」
 紫刻館みたいな感じかな。
 あ、知らない人のために説明すると、|この世界《シルバーレイン》の兵庫県に存在している廃洋館、もといゴーストタウンのことだよ。
「その後、二階の廊下で警備のために残っている能力者たちを突破して、ルクレルクの元へ向かうことになります。彼らはシルフィードですが、あくまで能力者ですので、皆様の目には問題なく視認出来るでしょう。通過するも拘束するも自由ではございますが、極力殺さずにお願いいたします。彼らのことは、処刑人に任せて差し支えございませんので」
 彼らも誘拐に手を染めている。立派な犯罪だ。しかし、まだ命を奪うまでには至っていないのだ。更生の余地はある筈だ。
「ルクレルクの元に辿り着けれさえすれば、遠慮は一切必要ございません。彼女を討ち果たし、組織を壊滅させてください。どうぞよろしくお願いいたします」
 最後に慧は猟兵たちへと会釈すると、掌に|炎《グリモア》を燃え上がらせた。


絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあと申します。
 今回はスピード解決を目指します。

 !あてんしょん!
 今回は前述の通り、場合によってはサポートの方々にもご協力を仰いでの早期解決を目指します。
 そのため、参加人数とタイミングによっては通常プレイングでも不採用となってしまう可能性がございます。
 予めご了承いただけますと幸いです。次章での再挑戦という形も歓迎させていただきます。

 断章なし、意図的な秘匿情報なし。
 第1章の受付開始日のみタグにて告知、以降は章公開次第受付開始となります。
 それでは、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『ポルターガイスト』

POW   :    飛来する物品を叩き落とす

SPD   :    物品を俊敏にかわして進む

WIZ   :    魔力干渉で物品の飛来を妨げる

イラスト:乙川

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ミーヤ・ロロルド(サポート)
『ご飯をくれる人には、悪い人はいないのにゃ!』
楽しいお祭りやイベント、面白そうな所に野生の勘発動させてくるのにゃ!
UCは、ショータイムの方が使うのが多いのにゃ。でもおやつのUCも使ってみたいのにゃ。
戦いの時は得意のSPDで、ジャンプや早業で、相手を翻弄させる戦い方が好きなのにゃよ。

口調だけど、基本は文末に「にゃ」が多いのにゃ。たまににゃよとか、にゃんねとかを使うのにゃ。

食べるの大好きにゃ! 食べるシナリオなら、大食い使って、沢山食べたいのにゃ♪ でも、極端に辛すぎたり、見るからに虫とかゲテモノは……泣いちゃうのにゃ。
皆と楽しく参加できると嬉しいのにゃ☆

※アドリブ、絡み大歓迎♪ エッチはNGで。




「にゃー!? ほんとに飛んでるのにゃー!!」
 生来の好奇心で真っ先に屋敷に乗り込んだミーヤ・ロロルド(にゃんにゃん元気っ娘・f13185)。今、彼女は必死で飛来する椅子やら燭台やらから逃げていた。
 いや、別に幽霊が怖いとかそういうことではない。単純に結構物騒なものを投げつけてくるので、絶対に当たりたくないだけだ。猟兵だって痛いものは痛いのである。
 軽い身のこなしや野生の勘で今のところ事なきを得ているが、無駄に広いエントランスホールのせいで階段までまだ少し遠い。
 こうなったら。オブリビオンでもない幽霊に果たしてコレが効くのかは解らないが。ミーヤは一か八かの賭けに出た。
「ほらっここにお菓子があるのにゃ!」
 じゃじゃん! と出現させたのは言葉の通り大量のお菓子。
 手近なコンソールにケーキやスイーツを並べ、宙には袋菓子をばら撒く。
「特別に大盤振る舞いなのにゃ! どれでも食べていいのにゃ〜♪」
 そう言ってミーヤ自身も一口サイズのシュークリームを頬張りつつ、再び階段へダッシュ!
 すると――明らかに女性の幽霊と老婆の動きが鈍っている!
 変わらず物を投げつけたりしてきてはいるのだが、そのスピードが格段に落ちている。これなら問題なく振り切れるだろう。
 唯一、少女の幽霊だけは素直にお菓子を食べていたが、夢中になっていて攻撃に参加してこない。手数が減っただけでもかなり回避は楽になった。
 これによってミーヤは無事、階段まで辿り着いたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

星川・杏梨(サポート)
『この剣に、私の誓いを込めて』
 人間のスーパーヒーロー×剣豪、女の子です。
 普段の口調は「聖なる剣士(私、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
 時々「落ち着いた感じ(私、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格はクールで凛とした雰囲気です。
常に冷静さを念頭に置く様に努めており、
取り乱さない様に気を付けています。
戦闘は、剣・銃・魔法と一通りこなせます。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


四十物・寧々(サポート)
※サポートプレイング

多少の怪我や失敗は厭わず積極的に行動し、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。

その上で現在の状況に対応できる人格で行動します。
シナリオ進行に必要な言動など青丸稼ぎに役立てて下さい。

使用ユーベルコードの指定はありません。
「成功」の結果で書けそうなものを一つステータス画面からお選び下さい。フラグメント次第で不使用も可です。

アイテムもご自由にお使い下さい。
服装系は提案の一例として装備せず公開設定としております。

あとはお任せ致します。
宜しくお願い致します。




「確かに、攻撃が通らないとなると厄介ね」
「これはこわいですねぇ」
 虚空を舞う花瓶や額縁などから身を躱すのは星川・杏梨(聖炎の剣士・f17737)と四十物・寧々(あいもの・ねね・f28377)の二人だ。今日の寧々はどうやら標準語に近い人格らしい。
 ともあれ、今も物を投げつけてくる三人の幽霊たち。しかし彼女たちを倒すことは出来ない様子。
 だが、やられっ放しと言うのも猟兵の名が廃るというもの。
 大手を振って、悠々と振り切ってやろう!
「これならどうかしら。機械人形たちよ、敵の目論見を阻んでやりなさい!」
「私も行きます! ユーベルコード『スリー寧々アタック』!」
 杏梨の後方から、二体の機械人形が進み出る。同時に、寧々の両隣からも二人の寧々が躍り出た。
 幽霊たちに攻撃は通らない。しかし、幽霊たちの『投げてくる物品』は破壊可能だ。ならばそれを壊してしまえば、攻撃手段は失われる!
 機械人形の一体が女性の持つ額縁を剣で押し留め、もう一体が今まさに老婆が投擲しようとしていた花瓶を狙撃して、破壊した。少女が手当たり次第に目につく物を投げつけようとするが、二人の寧々がそれらを押さえ込む。
 本体の杏梨と寧々を除いても四対三だ。数の上では猟兵側に分がある!
 思わぬ反撃に幽霊たちがたじろいでいる間に、一気に抜けてしまおう。
 杏梨と寧々は駆け出した。念の為、時折後方を顧みて追撃がないか確認するが、上手く機械人形と分身が抑えてくれているようだ。
 これなら、問題なく突破出来るだろう。
 果たして、幽霊たちの妨害を妨害し返してからは難なく階段まで到達することが出来、それと同時にエントランスホールも静まり返る。幽霊たちの気配も消えた。無事に特殊空間から逃れられたようだ。
 二人揃って、ユーベルコードを解除する。それでも追ってくる気配はなかった。もう大丈夫だろう。
 共にこの場を突破した寧々へと、杏梨が涼しげに微笑んで見せる。寧々もまた、柔らかく微笑みを返した。
「協力ありがとう」
「なんもですよぉ」
 ――あ、この子多分道産子寧々ちゃんだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ウルスラ・ロザーノ(サポート)
いつもテンション高いとは言われるなー、確かに誰に対してもフレンドリーな対応しようと心掛けとる
といっても銀誓館の学生時代から能力者をしてきたんでな
救えるもんはできるだけ救う、でも倒すべき敵は必ず討伐すべしっちゅー方針や

戦法はヒット&アウェイ型、戦場全体を広く利用して戦うで
基本は中距離
レーザービット射撃やナイフの蹴り込みで牽制しつつ、
エアシューズで、地上は高速で駆け回り、空中も地形とか足掛かりに利用して軽業のように跳ね回るよ
敵からの攻撃は、すべて見切って受け流したりの回避で凌ぐよ

攻め込む機会を見つけたら奇襲を仕掛けるで
一気に接近して、蹴撃やその斬撃波を叩き込む!
サッカーボールのシュートは必殺技や!




 ひゅんひゅんと飛び交うアンティーク調の品々に、ウルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・f35438)は思わずうわぁ、と目を丸くした。
「こらまたコテコテやなぁ……せやけど、こちとら猟兵である以前に能力者や。今更こないなことでビビったりせぇへんし……」
 霊的現象も、特殊空間も見慣れたものだ。
 経験が活きる。確かに面倒な手合いだが、対処法は幾らだって思いつく。
「それに空中戦なら負けへんよ♪」
 物品を壊しても問題ないのなら、こちらから仕掛けても問題ないということ。
 幽霊に直接攻撃は効かずとも、投げる物品がなくなれば、敵は何も出来なくなる筈だ!
「ってなワケで、能力者時代に取った杵柄! 基本にして王道、月のエアライダーの真髄見せたるで!」
 今でこそサッカー選手だが、能力者時代は月のエアライダーとして活躍していたウルスラ。
 そのフットワークとアクロバット、そこから繰り出される脚技は健在、寧ろ今もなお磨きがかかっている!
 地を蹴って跳躍、月を描くようにして、極超音速の連続蹴りが、まずは飛来した彫刻を蹴散らして。
 描かれた三日月は足場となり、そこを起点に更に跳ぶ。高く高く。敵よりも遥か。
 投げつけられる物品が届かない高度まで翔け上がり、それでも何とか届かせればと女性が投げた花瓶すらも踏み台にして、更に高く!
「着地!」
 軽やかに、階段前に降り立った。
 振り返れば既に音もなく、静寂が訪れている。
「Estupendo♪」
 無事に、特殊空間を突破した。
 勝利の喜びもそこそこに、次の舞台へ。そう、戦いはまだまだ、これからなのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『犯罪能力者組織潜入』

POW   :    仲間の盾になれるよう、先頭を堂々と進む

SPD   :    物陰に身を隠しながら素早く移動する

WIZ   :    魔法やアイテムで自分の姿をごまかしながら進む

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夜鳥・藍(サポート)
生まれも育ちもサクラミラージュ。誰かの願いで転生した元影朧。そのため影朧には同情しがち。
それなりの良家の出で言葉遣いは丁寧。だが両親とは違う種族で生まれたのを悩み高等部(高校短大相当)卒業を機に家を出ている。現在は帝都で占い師。

もふもふ大好き。
実家ではいろいろ我慢してたのもあって、飼えなくとも一人暮らし&猟兵となったことで爆発しがち。
猟兵になっていろいろ経験し悩みを乗り越えた。

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭いません。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動は絶対にしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




(「……いますね」)
 目立たないよう、気配を極力消して、階段の中程から夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は二階廊下の様子を探る。
 廊下の全体が見えるわけではないから、総数は今のところ不明だ。だが、巡回の能力者たちが、階段の傍にもいるという事実が解った、今はそれだけで充分。
(「では、多少疲労してしまいますが……ここから始めましょうか」)
 藍の容貌は、彼女を知らない者から一見すれば、寒色の彩を纏った人間の女性に見えるだろう。
 しかしその実、白銀の星河の如き髪と、宇宙の藍色を宿した瞳は間違いなく、藍晶石の因子そのもの。
 その身体も藍に溶かして、やがて無色透明となり、空気の中に紛れてゆく。
 宝石の身体を世界に透かしたクリスタライズ。
 これで視覚で藍を捉えることは不可能になった。だが、相手はシルフィードの集団。彼らもまた、世界から身を隠す術を持つ能力者たち。油断は出来ない。
 侮ることなく気配を消して、自ら立てる物音も抑えて、疲労感にも焦らずに、ゆっくりと確実に進んでいく。
 そして、大きな扉の前に、二人の能力者が守るように立ちはだかっているのを見つける。そこから、能力者が退出し、扉が開く一瞬を見逃さず、藍は入れ替わる形で部屋の中へと滑り込み。
 そして、今はまだ世界に隠したままの藍晶の双眸が映したものは。
(「……どうやら、当たりのようですね」)
 悲哀綴りのルクレルク。
 その背中が、そこにあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ティエル・ティエリエル(サポート)
◆キャラ特徴
ボクっ娘で天真爛漫、お転婆なフェアリーのお姫様です。
王家に伝わる細身のレイピアを使った空中からのヒット&アウェイで戦うのが得意な女の子です。
・冒険大好きお姫様
・珍しいものにも興味津々
・ノブレス・オブリージュの精神で弱者を放っておけないよ
・ドヤ顔がよく似合う
・困ったら動物さんに協力を!

◆戦闘方法
・背中の翅で羽ばたいて「空中戦」や「空中浮遊」で空から攻撃するよ
・レイピアに風を纏わせて「属性攻撃」でチクチクするよ
・対空攻撃が激しそうなら【ライオンライド】
・レイピアでの攻撃が効かない敵には【お姫様ビーム】でどかーんと攻撃




「お屋敷探検だー♪」
 ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)はお姫様である。
 これがただの『お屋敷』でしかなければそこまで興味を惹かれなかったかも知れないが、『廃屋敷』となれば話は別だ。しかも幽霊が出るだなんて、冒険の気配にワクワクが止まらない。
 とは言え、幽霊地帯ならぬ特殊空間は先程突破してきた。後は探索がてら……いやいや、困ったちゃんたちを無力化がてら探索していこう。好奇心も満たされ事件も解決出来る、一石二鳥だ。
(「っと、早速見つけたんだよ」)
 こそっと手摺の隙間に隠れるティエル。階段を上がってすぐの廊下に、確かに少年少女たちの姿があった。
 彼らがグリモア猟兵の言っていた、ルクレルクを信奉するファンの能力者たちだろう。
(「人攫いはダメなことなんだよ。お仕置きしちゃえ☆」)
 ティエルは種族柄、その身長は人間よりも遥かに小さい。その特徴を活かせば、工夫次第で気づかれることなく突破することすら可能だっただろう。
 だが、もう一度言おう。ティエルはお姫様だ。
 好奇心旺盛ではあるが、ノブレス・オブリージュの精神をしっかりと持ち合わせている。この能力者たちを放置して、更なる悲劇を見過ごすこと、そして彼らに更正のきっかけも与えずにいるなんて選択肢は、ティエルの中にはなかったのだ!
 と、いうわけで。
「みんなずっこけちゃえー♪」
「ぐえっ」
 突如現れる金タライ。
 何処に? 能力者たちの頭上に。
 当然の如く落下するタライ。脳天に直撃。KO☆
「後のことは仲間や処刑人の人たちに任せるんだよー♪」
 予想外の攻撃に対処しきれず、伸びた能力者たち。後で目を覚ますかも知れないが、その時は後続に任せてよいだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

ウルスラ・ロザーノ
手加減した攻撃で制圧してくのも気が引けるし、できるだけ怪我させずに抜けたいな

奇襲で廊下に躍り出たら、ハチドリのダンスを鳴らしながらダンスダンス♪
狭い廊下でもエアトリックはできるんやで?
世界も宇宙も越えたその先の、猟兵になったボクの力で拡がれ、レイヴ波動!
昔みたいにダメージなし、さあみんな一緒に踊り続けよー!

残念やけど、運良く回避なんてさせへんよ
仮に逃れて浄化の風とか使おうとしても、そういう子はさすがに気絶させておこか
で、拘束が必要ならそうするし、通過するだけでええならそのまま通過するよ

誰も殺してへんなら良かったわ
まあ先生の作品の続編を読む機会は絶対にあらへんけど、しっかり更生してな?




 思わぬ襲撃から目を覚まし、再び警戒態勢に入る能力者たち。
 彼らを前に、ウルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・f35438)は思案する。
(「手加減した攻撃で制圧してくのも気が引けるし、できるだけ怪我させずに抜けたいな」)
 オブリビオンが起こす悲劇の片棒を担いでしまったものの、彼ら自身はまだ、何とか戻れるところにいる筈だ。
 そう考えて、ウルスラは動いた。能力者たちの意表を突く形で突如、たんと階段を音立てて蹴り、廊下へと躍り出る。
「先生の仰ってた侵入者か!」
 能力者たちは身構える。
 だが、ウルスラは彼らと戦いに来たわけではない。すかさずハチドリのダンスをしゃらんと鳴らして、賑やかに。
 そのリズムに合わせて――、
「さぁ、ダンスダンスや♪」
「おおぉっ!?」
 圧倒的かつ情熱的なパフォーマンスで踊り出すウルスラに合わせて、その場にいた能力者たち全員が踊り出す!
「狭い廊下でもエアトリックはできるんやで?」
「くっ……!」
 アクロバティックな動きも交えれば、能力者たちは翻弄されるばかり。
「世界も宇宙も越えたその先の、猟兵になったボクの力で拡がれ、レイヴ波動!」
 心も身体も解き放って、感じるままに踊ればいい!
 猟兵となったことで、ダメージを与えることも出来るようになったダンシング・36だけれど、今はかつてのダンシングワールドのように、ただ純粋に踊り出す情熱だけを与え続けて。
「さあみんな一緒に踊り続けよー!」


「これは……」
「お疲れさん! 後のこと任せてもええ?」
「あっ、ええ。お任せください」
 倒れるまで踊りそうな能力者たちの姿に、合流した処刑人たちがぽかんと口を開く。ウルスラは彼らに目配せし、悠々と廊下を抜けてゆく。
(「運良く回避なんてさせへんつもりで臨んだけど、実際抜け出せた子はおらんかったな」)
 上手く逃れて浄化の風で持ち直すことを考える者がいるかも知れないという懸念はあったが、幸いにしてそのようなこともなく、気絶もさせずに済んだ。
 拘束は処刑人たちに任せてよいだろう。
(「何にせよ、誰も殺してへんなら良かったわ」)
 味方も上手くやったようで、敵味方共に被害はゼロだ。
「まあ先生の作品の続編を読む機会は絶対にあらへんけど、しっかり更生してな?」
 |先生《ルクレルク》はここで倒す。
 だが、まだ若い能力者たちには、その情熱を他に向けられるようになる未来が、きっとある筈だから。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『悲哀綴りのルクレルク』

POW   :    積み上げた言葉の屍
自身の【悲哀の涙】を代償に、【書き連ねた悲劇の登場人物】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【相手と差し違える物語に沿った展開】で戦う。
SPD   :    逃れえぬ悲劇の鎖
自身の【涙を灯した羽ペン】が輝く間、【悲しみを具現化した呪詛の鎖】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    飲み干せぬ涙の海
【悲哀の涙を材料にした青白いインク】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を涙の海に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:夜神紗衣

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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は小烏・安芸です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

春夏秋冬・ちよ(サポート)
風景画が趣味のお節介な旅老猫

優しいお婆ちゃん猫で猟兵としての経験は浅いですが、アルダワの学生としてとても長い間戦い続けた歴戦の戦士です

口調はステシをベースに優しいお婆ちゃんをイメージ

動物と会話して道や情報等を得ます

UCは竜を疑似再現、その力を借りる物
何の竜の力かは状況、やりたい事によって指定を
(例:火竜・刃竜・筋肉竜等々 真面目からネタまで可)

戦闘は素早い身のこなしで回避重視、杖か閉じた傘(又はUC)による鋭い攻撃
所謂蝶のように舞い、蜂のように刺す
得意技はUCで騎乗か飛行してのランスチャージ

一人称追加・おばあちゃん

禁止事項
真の姿の解放(覚醒)
UC『凶夢の魔竜騎士』二種の併用
公序良俗に反する行動




(「若い子が、こんな形で道を踏み外してしまうなんてねぇ……でも、まだ罪を償って、やり直せるところにいるわ」)
 ならば、そのために力を貸すのが、長く生きた者の努めだ。
 春夏秋冬・ちよ(旅する老猫・f19400)は、そう考える。まずは、彼らを間違った方向に導いている、この『|先生《ルクレルク》』をどうにかしなければ。
「……邪魔をしないで」
 招かれざる客の到来にも、ルクレルクは顔色ひとつ変えなかった。その両の眼から伝う涙もそのままにして。
 サックス・ブルーが哀しみを紡ぐ。涙のインクで世界を塗り潰す。
 密かに術式展開の準備を行いつつ、ちよはケットシーの俊敏性を遺憾なく発揮し、回避する。その身体能力も、決して衰えてはいない。
(「あら? ……そう、そういうことなのね」)
 ルクレルクが、自ら染めた青の世界の上にひらりと降りるのを見た。そこから、更に世界を塗り潰す。範囲が、今度は広がっているように見えた。
 恐らく、あの|涙《インク》の海にルクレルクが立つ限り、彼女の能力は強化されるのだろう。そう看破した。ならば。
「悪いけれど、もう書き物をさせてあげることは出来ないの。ごめんなさいねぇ」
 彼女も、彼女なりに追い求めるものがあって、創作を、その題材厚めを行っていたのだということは、ちよにも理解出来る。
 だが、如何なる理由があれど、命を奪っていい理由にはならない!
「術式展開、再現するは竜の像――後は、よろしくね?」
 現れたのは、白き氷竜、その再現。
 術式によって顕現したその背にちよがひらりと飛び乗ると、氷竜はルクレルク目掛けて絶対零度のブレスを放つ!
「くっ……」
 回避を試みるルクレルク。しかしブレスは涙の海を凍らせて、離れかけたルクレルクの片足も巻き込んだ。
 爪が鋭く、その身体を裂いた。華奢な身体が傾ぐ姿は憐憫を誘ったが――犯した過ちは、償わなければならないから。

成功 🔵​🔵​🔴​

リカルド・マスケラス(サポート)
『正義のヒーローの登場っすよ~』
装着者の外見 オレンジの瞳 藍色の髪
基本は宇宙バイクに乗ったお面だが、現地のNPCから身体を借りることもある
NPCに憑依(ダメージはリカルドが請け負う)して戦わせたりも可能

接近戦で戦う場合は鎖鎌や鎖分銅の【ロープワーク】による攻撃がメインだが、プロレスっぽい格闘技や忍者っぽい技もいける
遠距離戦では宇宙バイク内臓の武装による射撃攻撃やキャバリアによる【結界術】
その他状況によって魔術による【属性攻撃】や【破魔】等使用。

猟兵や戦闘力のあるNPCには【跳梁白狐】で無敵状態を付与できる。

基本的にチャラい上辺ですが、人々の笑顔のため、依頼自体には真面目に取り組みます


ニノン・トラゲット(サポート)
『容赦なんてしませんから!』
『アレ、試してみちゃいますね!』
未知とロマンとお祭りごとを愛してやまない、アルダワ魔法学園のいち学生です。
学生かつ魔法使いではありますが、どちらかと言えば猪突猛進でちょっと脳筋っぽいタイプ、「まとめてぶっ飛ばせばなんとかなります!」の心で広範囲への攻撃魔法を好んでぶっ放します。
一人称はひらがな表記の「わたし」、口調は誰に対しても「です、ます、ですよね?」といった感じのあまり堅苦しくない丁寧語です。
基本的にはいつも前向きで、ネガティブなことやセンチメンタルっぽいことはあまり口にしません。
その他の部分はマスターさんにお任せします!




「そこまでです!」
 ニノン・トラゲット(ケットシーの精霊術士・f02473)がルクレルクの部屋へと突入し、白く可憐な花をあしらった愛用のマジカルロッドを掲げた。
「どんな理由があっても、人の命を奪うなんて許されません。容赦はしませ――ってあれっ!?」
 隣に並び立つ人物の気配を感じて、そちらを見たニノンが驚きの声を上げたのも、無理はない。
 そこにいたのは組織の構成員、もといルクレルクのファンの能力者たちの対応を請け負ってくれていた筈の、処刑人の一人だったからだ。
 ただ、よく見ると頭の上の方に、白い狐の面がついていた。彼こそがリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)である。
「屋内でバイク走らせるのもアレっすし、ちょっと身体を拝借したんすよ。……あっ本人の了承済みっすよ!」
「な、なるほど……」
 ダメージはリカルドが肩代わりするようだし、本人が了承しているならいいかと、気を取り直して。
「あなたたちも、私の邪魔をするの……?」
 なら、死んで貰うわと。
 サックス・ブルーの海を綴り、ニノンを悲哀に溺れさせ、刃を握り締め泣く女を差し向け、リカルドと刺し違えさせんとする。
 勿論、ルクレルクのシナリオ通りに身を滅ぼしてやる義理などない!
「よーし、これならどうですか!?」
 青を振り切るニノンだが、あの海の上にルクレルクが舞い降りれば彼女が更なる力を得てしまうと、既に判明している。
 ならばと、乗られる前に海を荒げ、大津波を起こし、リカルドに向かう女ごとルクレルクを呑み込んだ!
「うっ……」
 身動き取れなくなっている内に、リカルドはその視線をルクレルクへと向けて。
「因果応報。自分のしたことは、いつか自分に返ってくるんすよ」
 それは今かも知れないっすね――なんて。
 呟くように彼が告げた。その矢先。
「……あ……」
 女の刃が、ゆらり揺らめきルクレルクへと向けられた。
 それが意味することを、ルクレルクは瞬時に理解する。だって彼女は、自分が生み出した存在なのだから。
「待って……やめて!」
 心中を求める女は、静止も聞かず。
 逃れようと藻掻いたルクレルクの、心臓こそ外したものの、その脇腹に深々と、刃を突き立てたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

城田・紗希(サポート)
基本的には考えるより行動するタイプ。
でもウィザードミサイルや斬撃の軌跡ぐらいは考える。…脳筋じゃナイデスヨ?
暗器は隠しすぎたので、UC発動時にどこから何が出てくるか、術者も把握していない。
逆恨みで怒ってる?…気のせいデスヨ。UCの逆恨みじゃアルマイシ。

戦闘は、範囲系ユーベルコードなら集中砲火、単体攻撃なら可能な限りの連続使用。
必要に応じて、カウンターでタイミングをずらしたり、鎧破壊で次の人を有利にしておく。

……防御?なんかこう、勘で!(第六感)
耐性……は、なんか色々!(覚えてない)




「私は『創作』を通して『感情』を知りたいだけなの、邪魔をしないで……!」
「んー……? ごめん、ちょっとよく解んないや」
 追い詰められ、焦りの滲むルクレルクは、ヒステリック気味に拒絶する。
 だが、城田・紗希(人間の探索者・f01927)は意にも介さず、と言うより本当に理解を放棄している様子できょとんと首を傾げるばかり。
 紗希は元々、考えるよりも行動派である。いや、攻撃の軌跡だとか軌道だとか、そういった戦術的な考察はする。が、戦いの場において敵にも事情があるだとか、そういったことを少なくとも意識して考えたことは殆どない。
 だから、目の前の女性が少年少女の心震わす作品を書き上げる『先生』だと言われてもピンと来ないのが正直なところだ。オブリビオンはオブリビオン、紗希にとっては、それだけだ。
「ごめんだけど、さくっと倒させて貰うね」
 この世界の人が困ってることくらいは、解るから。
 と、白兵戦は苦手そうと見て、猛ダッシュ!
「こ、来ないで!」
 本格的に身の危険を感じたらしいルクレルクは、手元の羽ペンを仄白く輝かせ、哀しみで形作った鎖を鞭のようにしならせ紗希を打ち据えようとする。
「なんの! 出てこい、必殺武器!」
 紗希の言葉に応えてその手の中に現れたのは、無骨な棍棒だった。
 一見、強そうには見えない。肩透かしかとルクレルクが今度こそ一撃を加えようとすると。
「……こうだ!」
「えっ」
 棍棒でそれを受けた紗希は、そのまま柄を持つ手首を捻り、棍棒で鎖をぐるぐると巻き取っていく。慌ててルクレルクが回収しようとするが、後の祭りだ。
 ぐっと引き寄せてから鎖ごと棍棒を投げ捨て、至近距離から紅時雨の一閃!
「月夜ばかりと思うなよ、ってね!」
 紅時雨は月光を受けて紅く輝く。しかし月夜でなくてもその刃は敵を裂くのだ――まさに、このように!
 ……え、意味が違う? 気にしない!

成功 🔵​🔵​🔴​

ウルスラ・ロザーノ
凄い作家だとか、そんなんは割とどうでもええ
オブリビオンだとかゴーストだとかがこの世界の人間に手ぇ出すのは、問答模様で許さへんだけや

エアシューズを全力で駆動、全速で壁も天井も自在に駆け回るで!
伸びて襲い掛かかってくる鎖を見切って、ボールで迎撃したり外套で払いながら回避してくよ
要の脚部にさえ怪我せえへんかったら問題ないわ

で、ボクの姿を捉えきれんくなる隙を見つけたら、一気にダッシュで切り込む!
懐に入ったら…こんだけ足技を見せたんや、蹴りが出ると思うやろ?
残念! 攻撃に手だって使うし、このタンバリンは拳で握って理想の形!
全力で吹っ飛ばして、天井とキスさせたる!

自分が消滅することを、精々哀しむことやな!




 『先生』と呼ばれた者。
 それが、目の前にいるオブリビオン。だが。
(「凄い作家だとか、そんなんは割とどうでもええ」)
 ウルスラ・ロザーノ(鈴振り燕・f35438)は確かに今、憤っていた。
(「オブリビオンだとかゴーストだとかがこの世界の人間に手ぇ出すのは、問答模様で許さへんだけや」)
 ウルスラは、『先生』に会いに来たのではない。
 『オブリビオン』を、倒しに来たのだ。
「帰って! 出て行って頂戴!」
「それは聞けへん相談や、なっ!」
 ルクレルクの羽ペンが、仄白く輝くと同時。
 ウルスラはエアシューズを全力で駆動、閉鎖空間であることを忘れさせるほどの、変幻自在の翔けを見せる!
 壁も天井も、ウルスラにとっては足場のひとつだ。幾重にも攻撃重ねる鎖だって、その姿を捉えることすら許さない!
「くっ……」
「おっと!」
 間近に迫った一手すらも、喰らってやる義理などなく。
 自慢のサッカーボールは洗練された脚捌きとの共演で金属すらも弾き返し、蠍の名を冠した外套は風の壁が如くウルスラを護る。
 敵の手数も尽き果てて、ルクレルクはウルスラを捉え切れず。
(「今や!」)
 生まれた好機を、ウルスラは見逃さない!
 地上に降り立ちダッシュで切り込む、その間に一分の隙もなく。
 懐に潜り込めば、左脚から繰り出される渾身の蹴撃がルクレルクに刺さる――、
「と、思うやろ?」
「!?」
 ダッシュ、跳躍、そして蹴り。
 脚で魅せてきたウルスラ。ならば攻撃もまた脚で――その思い込みを利用する。
「残念! 攻撃に手だって使うし、このタンバリンは拳で握って理想の形!」
 ぐっと握り締め。
 驚愕に慄く女の顔を仰ぐ。
 人の心を揺るがす作家?
 笑わせるな。その感動とやらは、屍の上に綴られたものだ。
 この世界を生きていた、その生命を踏み躙り、搾り取られたものだ。
 ――情状酌量の余地などない!
「天井とキスさせたるわ!」
 冷たい|口づけ《ベーゼ》で悲劇の幕引き。
 作家気取りの殺人者には、哀れな末路が相応しい!
「が……ッ」
 全身全霊のアッパーカットで、空への旅を。
 けれど遮る天井に、ルクレルクはその顔を強かに打ちつけた。
「自分が消滅することを、精々哀しむことやな!」
 その瞬間、ルクレルクの身体が天井から離れ。
 地に堕ち、やがて掻き消えた。
 知りたがりの作家はこうしていずれ、人々の記憶からも消えゆくだろう。
 踵を返したウルスラもまた、振り返らなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年12月21日


挿絵イラスト