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御薔薇たぶらかし~神よ、仔羊を憐れみたまえ

#エンドブレイカー! #小世界 #薔薇世界ロザガルド

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「|神《わたし》は見ています」

 半人半獣の女は穏やかに語る。

「力なき我々にも、パンを得る権利はあるのです」

 其処には“力なき人々”がいた。
 虐げられた者。
 世界から弾き出された者。
 不要だと言われた者。

 ――赤薔薇の世界では、“力”こそが意味を持つ。

 ゆえに、力なき者はこうして祈るしか出来ない。
 ラビシャンの女が配る小さなパンに涙する男がいた。
 僅かな水を幼子に分け与える女がいた。
 何も言わず受け取り震える、フードを被った者がいた。

 そうして人々の|生きたい《・・・・》という願いは、叶えられ続けていた。
 ――異形の槌を携えたラビシャンの女が姿を消し、モンスターがスラム街を蹂躙し始めるまでは。



「薔薇世界、ロザガルド」

 ヴィズ・フレアイデア(ニガヨモギ・f28146)の唇から、小世界の名前が出る。
 今度は赤薔薇領だ、と青い薔薇のような女は言う。

「エリクシルもあの手この手を使うものだ……今度は新興宗教じみたやり方だよ。赤薔薇領の信条は“強き者こそ富む”。まあ、褒められたものではない――弱いものを切り捨てるやり方だからね。赤薔薇領は大きく二つに分けられている。強いものが遊ぶように競い合う「闘技場」と力のない者が住まう「スラム街」だ。今回は既に「スラム街」に被害が出ている。迅速に向かって欲しい」

 まあ、面白い事に富裕街の強者が戦いを求めてスラム街に降りてるらしいんだけどね。
 訳の分からない世界だね、とヴィズは呆れたように呟く。

「スラム街ではそういう「強いもの」と「突如現れたモンスター」の戦いが繰り広げられている。……名前は明かせないが、“情報元”が言うにはそんなモンスターが存在した記録はないらしい。明らかに何か、外部からの力の所為だという話だ。つまり……」

 エリクシル、もしくはその影響を受けたモンスターだ。
 ヴィズは白磁の扉を生成しながら言う。

「兎に角、詳しい事は行って確かめてみて欲しい。――……情報源もなあ。あんまり信用できないというか、なんというか……兎に角お前達の目で確かめるのが一番だ! さあ、行っておいで!」



「オラァ!!!」

 屈強な男が、芋虫じみたモンスターを素手で殴り飛ばす。
 モンスターは翠色の粘液を吐き出しながら転がり……動かなくなった。

「……あ、ありがとう、ございます」
「あ?」

 襲われかけていた女は、幼子を大事に抱えて。
 庇おうとした男は、女と幼子を庇ったまま。屈強な男に震える声で感謝の言葉を投げる。振り返ってぎろりと視線を向けた男に、二人は震える。

 あ、あー!
 幼子が鳴き声を上げ始めた。
 いけない。機嫌を損ねてしまう。女は懸命に幼子をあやすけれど、ちいとも泣き止まない。其の間にも屈強な男は三人に歩み寄り、――貸せ、と言った。

「え」
「良いから、其の子どもを貸せよ」

 ――嗚呼。“かみさま”。
 制止する男はやせっぽちで、屈強な男を止められやしない。女から奪うように赤子を取った男の手は、……あれ? 想像以上に優しくて。

「おおよしよし、怖かったでちゅねえ~! もう大丈夫でちゅよ」

「あう、あう……あー! あーー!」
「よーしよし、もう大丈夫、怖いものはおじちゃんがみんなブッ倒してあげまちゅからね~!」
「あう……あう……きゃ、きゃっ」
「お~! 可愛いでちゅねえ~! いいこでちゅ~!」

「……」
「……」

 あれ、なんか思っていたのと違う。
 ぽかん、と屈強な男を見ていた二人に……はっと気が付くと、屈強な男はすんなりと女に幼子を返して。

「……勘違いすんなよ! 将来強くなるかもしれねえから、顔を覚えさせただけだぞ!」

 |屈強な《子ども好きの》男はそう言うと、息絶えたモンスターを其のままに、次の戦闘へと向かうのだった。

「……何か、違ったわね」

 ぽつん、と女が呟いた。
 そうだな、と男も呆然として答えた。

「“神様”は、強いものは俺達の事をゴミとしか思っていないって、言ったのにな」

 ――其れを見ているフードの人物が一人。
 一連のやりとりを見届けると、するり、と影へ姿を消した。


key
 こんにちは、keyです。
 三色の薔薇と少女たち。今回は「赤い」お話。
 血が流されています。
 血は、通っているのです。

●目的
「モンスターを排除し、“神”と対峙せよ」

●各章
 第一章ではモンスターとの集団戦です。
 二つに分かたれた赤薔薇領の「スラム街」。其処は既にモンスターがはびこる地獄のような巣窟と化しています。

 ――が!

 強者を求める「富裕街」の猛者たちがモンスターと戦いたいと押し寄せて、文字通り混沌の様相となっています。
 現状を正確に把握し、倒すべきは何かを考えながら、スラム街を襲うモンスターたちを撃退して下さい。

 第二章は日常(宴会)章。
 第三章はボス戦となります。

●プレイング受付
 受付、〆切はタグ・マスターページにて適宜お知らせ致します。

●注意事項(宜しければマスターページも併せてご覧下さい)
 迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。
 また、アドリブが多くなる傾向になります。
 知らない人と共闘する事なども在り得ますので、ソロ希望の方はプレイング冒頭に「🌼」を添えて頂けると助かります。


 此処まで読んで下さりありがとうございました。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『ギガンウォーム』

POW   :    踏み潰し
【踏み潰し】で近接攻撃する。低威力だが、対象が近接範囲から離脱するまで何度でも連続攻撃できる。
SPD   :    ウォームスウォーム
対象の周りにレベル×1体の【巨大イモムシ型モンスター】を召喚する。[巨大イモムシ型モンスター]は対象の思念に従い忠実に戦うが、一撃で消滅する。
WIZ   :    爆破鱗粉
着弾点からレベルm半径内を爆破する【鱗粉】を放つ。着弾後、範囲内に【大量の蟲】が現れ継続ダメージを与える。

イラスト:あなQ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「ッッラァ!!!」

 男が持っていた双斧でモンスターの胴体を両断する。
 鮮やかな切れ口は、そのままくっ付ければ蘇生できるのではないかという程。

「っしゃあ、これで10体目! おめーはどうだよ、ラゼフ!」
「生憎だな、私は――11体目だ!」

 炎がモンスターを焼き尽くしていく。
 其の足を焦がし落として、動けなくなった芋虫はうぞうぞと蠢きながら肉を焼かれて苦しむしかない。

「このままでは私が勝ちそうだな、ヴァイジャン?」
「うるせえな、1体差くらいすぐに追い付くだろうが。――しかしよ」
「……同じ事を考えているな?」
「ああ。なんでこんな“|オイシい騒動《・・・・・・》”|に赤薔薇サマが食いつかねえ《・・・・・・・・・・・・・》んだ? 真っ先に来てもおかしくないだろ」

 そう。
 この場には上層、「闘技場」と呼ばれる居住エリアからつわものたちが次々と降りてきているが――赤薔薇領で最も強いとのたまい、そしてそのように振る舞ってきた赤薔薇自身の姿を見たものは一人としていないのだ。

「何か……別のものの気配を感じているのかもしれないな。この前も黒薔薇領で妙な騒ぎがあったというだろう」
「……なんだ、アレか。四本目の薔薇だとかなんとか」
「正直眉唾物だがな……御薔薇の施政を快く思わない者たちが新たに旗を上げただけかも――ヴァイジャン!」

 美しい顔をした男が炎の矢を飛ばす。
 斧を携えた男を呑み込もうとしていたモンスターが炎に貫かれ、喉を焼かれて地面にもんどりうつ。

「……12体目だ」
「くっそ、……まあいいや、赤薔薇サマが来たらこンな奴ら一瞬で終わっちまうからな! どうせだ、ずっと大人しくしてくれてても良い!」

「待ってください!」

 炎に巻かれて死にかけたモンスターに斧を向けた男に縋りつく、力ない腕があった。
 一人の女が其処にいた。目に涙を浮かべて、やめてくれと懇願している。

「これは“神”による試練なのです!」
「……あ?」
「“神”が、我々が一人でも立てるかどうかを試す、試練なのです! どうかどうか、「闘技場」へお戻り下さい! 我々は、試練を乗り越えねばならないのです! この「スラム街」でも生きていくために、“神”に|再びお戻り頂く《・・・・・・・》ために!」

「……」
「……」

 何が起きている、と、二人の男は視線を交わし合った。
 神などいない。其れが赤薔薇の答え、赤薔薇領の答えである。故に信仰を持つ者はこの赤薔薇領にはいなかったはずなのに。
 見れば女は細い腕にナイフを持っていた。男は咄嗟に女を突き飛ばし――己らを囲む「弱き者」たちに気付いた。

「ヴァイジャン」
「ああ、ラゼフ」

「彼らは、私たちをも狩ろうとしているのか?」

---------------------------------
 モンスター、「闘技場」の強者たち、そして武器を携えた弱き者たちの三つ巴が出来上がろうとしています。
 この状況を打破できるのは、猟兵以外にはいないでしょう。
---------------------------------
白銀・龍兵
(まずは手近な大芋虫をパンチで【吹き飛ばし】)

おいおい、何だかとんでもない状況になってるじゃねぇか!
で、お前らは取り込み中か?それとも「情報源」とやらに乗せられて、潰し合いでもやってるのか?どいつもこいつも、「無様な最期を遂げる」って未来が見えてるぜ?
だが安心しな!俺たちはそんなくそったれな未来をぶっ潰すためにやって来た!(と、人々を【勇気】づけつつ)まずはとりあえず、この芋虫どもを片付けないとな!――ああ、弱い奴らは無理するなよ?(で、本人はパンチ中心の【連続コンボ】決めつつ蹴散らしてる)

※アドリブ・連携歓迎




 「闘技場」と「スラム街」。
 神をいないと断じる者と、神の試練だと言う者と。
 両者の睨み合いを文字通り|吹き飛ばした《・・・・・・》のは、白銀・龍兵(Wings of Silver Dragon・f39248)の放った拳だった。ギガンウォームの一体がまるで人形のように吹き飛ばされ、両者の間に壁になるように転がって来る。

「おいおい、何だかとんでもない状況になってるじゃねぇか……で? 取り込み中か?」
「いや、……礼を言う」

 尖った耳に整った顔の男が、頭を振って龍兵を見る。そうして君は、と問うた。

「もしかして――“猟兵”という存在かな?」
「そうだ。なあ、お前ら、俺が割り込まなかったらどうしてた? “情報源”とやらに乗せられて、潰し合いでも始める気だったか?」
「――其れは」
「そんなんじゃ、どいつもこいつも“無様な最期を遂げる”って未来になっちまうぜ? 俺には見える。だがよ、俺は……俺達はそんなくそったれな未来をぶっ潰すためにやってきた」

 龍兵の背後で、ギガンウォームが其の巨体を持ち上げる。

「ん」

 振り返ると同時に両腕を前に持ってきてガード。巨大虫の踏み潰しをいなし……

「だからよ!!!」

 唸れ、ドラゴンガントレット。
 思い切り右腕を振り翳し、腰で捻って、打つ! 其の拳撃は一撃では終わらず、魔力噴射によって爆裂を引き起こす。
 まるで拳が当たった先を爆発せしめたかのような其の一撃は、ギガンウォームの胴体に大きな大きな穴をあけ……さしもの巨大虫も胴の半分を削られてはどうにもならぬ。ずるり、と其の巨体を横たえるのだった。

「――……」
「へへっ。大体よ、こんな虫が“試練”な訳ねえじゃねえか。もっと乗り越えられそうな試練から用意するモンだぜ、普通。――っつーわけで! まずはお片付けだ! 弱いヤツは無理すんなよ!」
「……良いね良いねえ! カミサマがどうこうっつーより燃えて来たぜ! お前はどうだラゼフ!」
「ああ、私も……まるで心に火を灯されたかのようだ! 私たちも加勢しよう、名も知らぬ猟兵殿。私はラゼフ、此方の斧を持っている男はヴァイジャン。赤薔薇領の「闘技場」に住んでいる者だ――と言っても、君には判らないかもしれないが」
「判んねえ。判んねえな!」

 けど、戦えるなら一緒に行こうぜ!
 拳をガチン! と打ち鳴らし、龍兵は二人に――おいては後ろの「スラム街」の人間たちに、屈託ない笑みを向けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

インディゴ・クロワッサン
きゃっほーい!藍薔薇推参!ってね!
「今回の敵は、でっかい虫だー!」
今の僕は、テンション高いからずばずば斬っちゃうぞー!
気合いで一対二翼を生やしたら、ジャンプして空中軌道と空中戦を併用して、敵の上から怪力で愛用の黒剣をなぎ払って衝撃波をどーん!
呼び出された芋虫も範囲攻撃と力溜めを併用した斬撃波でどどーん!
「よし!静かになったし、お話聞かせて~?」
UC:馥郁たる藍薔薇の香 を使って、情報収集も欠かさないよ~
勿論、論破出来そうなら、傷口をえぐる/恐怖を与える/読心術/蹂躙/こじ開け/カウンター辺り併用で、スラムのヒト達の心、フルボッコにするけどね!(笑)
「僕は誰の味方でもないよ。僕自身の味方さ☆」




「今回の敵は、でっかい虫だー! きゃほーい、という訳で、藍薔薇推参ってね!」

 インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は今日も絶好調。ぶわっ、と其の背中から生えるのは1対の藍色をした翼。さあ、行くよ! でっかい虫がが呼び出したたくさんの大きな芋虫なんて、一撃でおさらばさ!
 「忘却」を意味する――Vergessen。其の黒い切っ先がずばり、ざくり。巨大な芋虫型モンスターを斬っては捨て、斬っては捨てていく。これは“空っぽ”だ。其れはインディゴの直感。中身のあるものを斬らなきゃ、終わらない。

「それじゃあまとめて……どーん!」

 大きく飛び上がり、黒剣を振り下ろせば……衝撃波が迸り、大地を揺らがす。「スラム街」の人々は互いに庇い合いながら、常識の埒外にある其の戦闘を見守るしかなかった。
 一気に広範囲を薙ぎ払った衝撃波。其の波は“一撃で消滅する”という特性を持った中身のないモンスターを一掃し……見えた! あれが本体!

「みんなのお話聞きたいからさ、それじゃあ……バイバイッ!」

 まるで燕のように一気に急降下して飛び去りぬ、インディゴの刃がギガンウォームを見事に両断した。

「……」
「……“神”の、試練が……」

 呆然と呟く人々に、インディゴは宙を飛びながら僅かに振り返る。
 其の瞳は藍色、とても静かで……いっそ不気味なほどだった。

「ねえ、其の“カミサマ”って何処にいるの?」

 まるで藍羽の天使じみた彼は、そっと降り立ちながら「スラム街」の人々へと問う。人々は各々、判らない、と頭を振った。

「消えてしまったのです、我々を置いて」
「きっと我々をお見捨てになったのではないかと思いました。しかし、そこでこのモンスターたちが現れたのです。だから我々は、“神”が試練をお与えになったのではないかと」
「ふーん? で? 君たちは其れを乗り越えて、どうなりたいの?」
「え……?」
「何かあるでしょ。例えば、ええと……ほら。“上”に住みたいとかさ、護りたいとかさ、あるんじゃないの? まさかそういうのもなく、ただなんとなくで“カミサマ”に縋ってたの?」

 其れはおかしいよねえ。と、三日月に唇を歪ませてインディゴは言う。

「こう言ってる間にも「闘技場」の人たちはモンスターを倒してるよ? 君たちは? このまま見てるだけなら、何処かに隠れてた方が良いんじゃないの?」
「い……嫌だ! 俺達は」
「強くなりたい、って?」
「っ……」
「……無理な事をしても無駄だよー。君たちだって薄々無理だって思ってるんでしょ? ナイフや小さな弓じゃ、あのモンスターには敵わない。君たちはあの時、「闘技場」の二人に襲い掛かる選択肢だってあったのに、其れもやらなかった。君たちは……結局、現状に満足してるようなものなんだよ」
「……あんたに」

 何がわかるってんだ。
 あんたは、誰の味方だって言うんだ。

 泣きわめきたいのを必死に抑えた男の言葉に、あは、とインディゴは笑った。

「僕は誰の味方でもないよ? 僕は、僕の味方。それだけさ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シモーヌ・イルネージュ
こんな芋虫を放っておいて、何揉めてるんだ?
ここはどう見ても、害虫駆除だろ??

神の試練と言われても、芋虫は嫌だな。
放っておくと、家は潰すし、通った後はぬめぬめだし、これが成虫になったら、いったい何が出てくるかわかったものじゃない。
何より、アタシが嫌だ!

黒槍『新月極光』で戦おう。
害虫駆除には【焼却】が一番。髪留め『竜封火布』を槍に巻き付けて、炎の魔力を付与しよう。
虫の攻撃は槍で防御しつつ、反撃で潰していこう。

闘技場から来たところ悪いけど、全部もらっていくよ。




「おいおい、こんな芋虫を放っておいてなに揉めてんだ」

 シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は、たたん、とスラム街の灰色の屋根を蹴りながら眼下を見下ろす。
 あちこちでいざこざが起きているのが、ぱっと見ただけでもわかった。様々な言葉が耳に入って来る。「スラム街」「弱者」「闘技場」「“神”の試練」。

 ――たとえ神の試練だとか言われても、アタシは芋虫は嫌だな。

 この辺りか、とシモーヌが飛び降りた箇所は、ギガンウォームが密集している場所。猟兵ではないものの、そこそこの技量を持っているのだろう者たちも戦っていた。

「芋虫はさ、放っておくと家を潰すし、通った後はぬめぬめになるし、――こんなのが成虫になったら、一体何が出て来るのか判ったモンじゃないからな。アタシが嫌なんだよ」

 するり、くるり、と槍を片手で回してみせて、シモーヌは構える。
 黒槍“新月極光”。
 其の先が素早くギガンウォームの身体を抉ると、捩った其の身体をしたたかにくるりと回した槍の柄で打つ。がつん、とおよそ肉を叩いたとは思えないような音がして、ふらりとギガンウォームの巨体が揺らめいた。

「こういうのは、焼いちまうに限る!」

 髪留めを外すと槍に巻き付けて、炎を灯す。そうして更に一撃、二撃、槍の穂先がギガンウォームの身体を次々と抉り、炎が軌跡を描いて傷口を炙り焼いて、切り刻む。

「闘技場もスラム街も関係ないね。――悪いけど、全部貰っていくよ!」

 狙った獲物は逃がさぬとシモーヌはにやり笑った。
 其れを見ていたフード姿の人間が、すうと路地の陰に消えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロウ・デイクロス
魔王…スカーレット(f38904)と共闘

こんな状況で住民同士が殺し合うなんざ、後味が悪いなんてもんじゃないな。見た限り、闘技場の連中は荒っぽいが悪人って訳じゃなさそうだ。
スカーレットの説得に加え、黒薔薇領での事件を解決したって付け加えれば、話くらいは聞いてくれるだろう。

寧ろ、厄介そうなのは一般人の方か…カミサマだなんだと少し胡散臭いが、個人的に戦う意志自体は否定したくはない。敵の漸減を狙いつつ、彼らが瀕死の個体へトドメを刺せる様に立ち回ってみるのも一手、か?

まぁ、一先ずは被害を出さない事が最優先だ。
ああ、援護は任せてくれ。今回はデカブツが相手だしな、威力重視で満月の斬撃をお見舞いしてやらぁッ!


スカーレット・マカレッド
小僧…クロウ(f38933)と共闘

ええい、やめいやめい!
(二勢力の間に割って入り)
そこの屈強そうなお主等、弱きものを手にかけるつもりか?
それよりももっと戦うべき存在が居るであろう!
吾輩はお主等の敵ではない
だが、弱きものを屈服してみせるのがお主等の強さなのか?
【威厳】を持ち、【演技】でそれらしい強さを持った(否、吾輩は強いが!)存在として相対するであるぞ
この説得でも通じぬなら仕方ない、峰打ちで昏倒させよう

さて、一番はこのギガンウォームである
吾輩のデイブレイクソードにて一掃してくれよう!
援護を頼むぞ、小僧!




 厄介事に巻き込まれたのはラゼフとヴァイジャン、二人の猛者だけではない。
 あちこちで「闘技場」の人間と「スラム街」の人間が争い合っていた。

 ――あれは神の試練なのだ。我々スラム街の人間が、斃さねばならないのだ。
 ――お前達に倒せる訳がない。素直に闘技場の人間に任せればいい。

「ええい! やめいやめい!」

 其処に割り込んだのは真紅の色。スカーレット・マカレッド(真赤な魔王・f38904)である。寄り添うように彼女の隣に立つのは、クロウ・デイクロス(悲劇を許せぬデモニスタ・f38933)だ。

「屈強そうなお主ら!」

 びしり、とスカーレットが「闘技場」の人間を示し。

「弱きものを手に掛けるつもりか? 其れよりももっと戦うべき存在が居るであろう!」
「其れはそうだが、こいつらが」
「“邪魔をするから”とでも? 弱きものらを屈服せしめるのがお主らの強さなのか? そうせねばお主らは、あの邪魔な芋虫を倒せぬとでも?」
「――聴いている者もいるかもしれないが、俺達は“黒薔薇領で異変を解決した”勢力だ。今回も第三者……|第四者《・・・》として、割り込みに来させてもらった」

 クロウがそう言うと、周囲がしん、と静まり返る。

「……黒薔薇の……」
「そうである」

 ぱさ、と扇を開いてスカーレットは如何にも、と口元を隠した。其れだけで実力は推し測れるだろう、と言いたげに。

「兎に角! 今はこのモンスターたちを対峙するのが一番の問題である! 援護を頼むぞ、小僧」
「判った」

 と言いながら、クロウはそっと「スラム街」の人々に目配せをする。ついてこい、と言いたげに。
 「スラム街」の弱き住民たちは、首を傾げながらもそっとクロウの後ろに続く。そうして其処にいろ、と更に目配せされて、間近でスカーレットとクロウの闘いを見守った。何故か其の後ろから、「闘技場」の猛者たちもついてきていた。

「勢力のいざこざというものは、どうにも面倒であるな。ええい、総てぶつけてぶった切ってくれるである! ――デイブレイク、ソード!!」

 其処に侵略しようとしていたギガンウォームに、怒り半分苛立ち半分にスカーレットは一撃をお見舞いする。其れは太陽の輝き。スラム街には眩しすぎる程の輝きが迸ると、瞬きの間にギガンウォームは両断され――そうして其の向こう側にいたギガンウォームの胴体でさえも、深々と切り裂いてみせた。

 ――今だ。

「一人来い」

 クロウが言う。
 どうしたであるか、とスカーレットが問う前に……クロウは「スラム街」の男の手を引くと、瀕死のギガンウォームの傍へと駆け寄っていた。

「こ、小僧!?」
「此処から先は出来るな?」

 スカーレットの驚いたような声音に構わず、クロウは有無を言わさぬ調子でスラム街の男に言う。後は一撃入れるだけだ、と。
 ああ、出来る。やってやるとも。
 そう頷いた勇敢な弱者にクロウは頷いて、立ち上がった。一度見ればあとは他の者もわかるだろう。この調子で敵勢力を漸減しながら、神の試練だというなら“出来るところまで試練を引き下ろす”。其れが己たちに出来る事だと、思っていた、ら。
 ぱこーん! と其の頭を叩かれた。

「ってぇ!」
「なぁーにをやっているであるか! 余裕ぶっこいてると吾輩たちとて無事ではすまぬである!」
「悪かったって、何も言わなかったのは……でも魔王、お前じゃ手加減なんて出来なかっただろ?」
「うぐぬっ。た、確かにそうかも知れぬであるが……であるが! ならばお主がやってみせよ! 吾輩は遠慮なく斬り込むゆえ、援護をするである!」
「判ったよ、任せてくれ。デカブツ相手だ、遠慮なしにいく!」

 提案自体は拒まない、其れがスカーレットの長所かも知れない。
 頷くと、クロウは手元のムーンブレイドに月の魔力を宿す。

 そうして太陽と月は躍る。太陽の輝きが敵を切り裂き、月の形をした衝撃波が敵を薙ぎ払う。
 其の中でひっそりと、「スラム街」の人間たちは試練だと思っているものを達成し……ギガンウォームの屍は、確実に積み上げられていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キャスパー・クロス
なんだいこの状況?
まぁ闘技者の方の言動は了解可能として
信仰者の方は…少なくとも説得して聞く感じじゃなさそうだね

ま、でも要するにさ
私ら猟兵が大々的にモンスターを狩れば、信仰者の注目が闘技者から此方に向くってことでしょ?

…言う程シンプルでもないだろうし、後先何も考えてない訳ではない、けど
このままじゃ信仰者と闘技者とで血を見る騒ぎになるかも
だったら一先ずは人命優先、迷うくらいなら動く!

そうと決めたら目立つUCで行くよ

「支子色ッ‪──‬っっぉおおおッッ!!!」

わざと【大声】を上げながら、《支子色は円か》を発動
上空から急降下し、ウォームに【切り込み】
敵の攻撃が踏み潰しなら、上からの攻撃には手出しできないだろう?
【空中機動】で滞空状態を維持し、烈風と共にド派手に【空中戦】を仕掛ける!

嗜虐無く、しかし容赦無く【傷口をえぐる】攻撃を加え
信仰者にわざと【恐怖を与える】ように見せつけて倒そう

結局、神の試練って何なんだろう
ヴィズさんが新興宗教じみたやり方が云々て言ってたけど、詳しい話全然してくんなかったしな…




「全く、厄介な状況だね」

 キャスパー・クロス(空色は雅やか・f38927)は空を舞いながら呟く。円を描くように空を舞い、宙を跳ぶ。

 「闘技場」の者は言う。弱いものは下がってろ。
 「スラム街」の者は言う。強い者には関係ない。

 これでは全くの平行線だ。話し合いとも呼べやしない。
 「闘技場」側の人間は、説得でどうにかなるかもしれないが――「スラム街」側の人間はどうにも、何かキナ臭い。後ろに何かがいるのだろう、とキャスパーは推測する。

「ま、でも、要するにさ」

 私ら猟兵が大々的にモンスターを狩れば、新校舎の注目がこっちに向くって事でしょ?

 きっと、そうシンプルでもないだろうし、後先何も考えてない、訳ではない、けど。
 でも、このままじゃ同じ赤薔薇領の人間同士で血を流し合う事になる。
 だったらまずは、人命優先! 迷うくらいなら動く、其れが私のやり方!

 そうしてキャスパーは降り立った。
 その背に翼はなくとも、飛び方くらいは知っている。生来の飛行者ってそういうもの。
 ギガンウォームたちが蠢く最中に音もなく飛び降りると、其の身体に暴風を纏う。其れは鎧である。其れは槍であり、剣であり、弓である。攻防兼ねた鎧をまとったキャスパーは舞う。とん、と空中に舞い上がると、円運動を基軸とした空中戦を仕掛ける!

「上から来られたら、弱いでしょ! だって――鳥はあなたたちの天敵だものね!」

 足先が綺麗なカーブを描き、ギガンウォームの喉笛を裂く。
 そうして誰かの視線を感じながら――其れが「スラム街」の者たちである事を重々承知で――更に其の傷に流れるような指先の一撃を重ねて、ギガンウォームを頸辺りで両断する。
 其の様に、ひ、と誰かが息をのむ。暴風を纏い、暴風のように荒れ狂うキャスパーの戦い方は、「スラム街」の弱者たちにとっては見知らぬもの、未知のもの。恐ろしいものだったからだ。

 ――にしても、ヴィズさんも説明不足なんだよね。

 キャスパーは円に円を連ねて舞いながら、少し不服そうな顔をする。
 新興宗教じみたやり方とは言ってたし、確かにそれっぽい人たちもいるんだけど、全然詳しい話してくれないんだもん。“情報源”についてもぼかしてたし……何かあるのかな?

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
こいつは一体どういう事だ?化物を殺そうとする男に縋りつく女。
お祭り騒ぎとは聞いて居たが、宗教の勧誘にも熱心とは。親切心で言ってやるが、次からはもう少し場所を選んだ方が良い。
あまり【悪目立ち】してると――寄って来るぜ?

喧騒に引かれたか、肉が焼ける臭いに引かれたか、血の臭いか。
周辺には有象無象の蟲、蟲、蟲。言葉を借りるなら彼らにとってこれは“神”による試練、だそうだ。
生憎こっちも仕事でね。観光だけで帰ったんじゃ雇い主のおっかない青い魔女様に怒られちまう。て、ワケで。答えは“NO”だ。(炎に包まれて死にかけの蟲に銃弾を一発ぶちこんで)

UCで蟲を始末する。当てて下さいと言ってる様なあの体躯に一発で消滅する耐久力。正直、弱過ぎて話にならない。欠伸を噛み殺すのに必死だ。銃弾費用の心配するぐらいさ。

さて。(女に近付いて)色々と話を聞きたい。
“神”に再びお戻り頂くってのはどういう事だ?言っとくが、妙な真似はしない事だ。こんなモンじゃ俺は殺せない。
【盗み】で気付かれず奪ったナイフを適当に地に落として。




 化け物を殺そうとする男、縋りつく女。
 これはまた、別の場所での出来事だが。カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は其の光景を見て、溜息を一つ。

「お祭り騒ぎとは聞いていたが、次からはもう少し場所を選んだ方が良いぜ、お二人さん」

 余り悪目立ちしてると寄って来る。俺みたいな観客なら良いが――招かれざる客ってのも、いるだろ?

 そう示す先には、うぞうぞと蠢くギガンウォームの姿。

「試練が……!」

 そう、試練、ね。
 “神”とやらの試練にしては、随分と趣味の悪い造形をしているが――まあ兎も角だ、こっちも仕事でね。

「観光だけで帰ったんじゃ、雇い主のおっかない青い魔女様に怒られちまう」

 ショータイムは一瞬だ。
 双銃の両を出すまでもない。片方のみを出して、BANG! 其の眉間に打ち込んでやる。其れで客は冥府へと帰って下さる。
 耐久力もないし、当てて下さいとばかりのあの体躯。欠伸が出る、噛み殺す方がよっぽど労力を使う。銃弾の費用の元が取れるかとそんな心配が脳裏をよぎる。

「さて」

 神の試練を一撃で葬った来訪者に、「スラム街」の人々は怯えていた。
 彼も「闘技場」の人間なのだろうか。己たちを弱者だと言うのか。カイムはそんな視線に目もくれず、ナイフを持っていた女に近付いた。

「さっき、“神にお戻り頂く”って言葉を聞いたンだ。なあ、詳しく説明してくれるか? 言っておくが、妙な真似はしないことだ」

 こんなモンじゃ俺は殺せない。
 そう言った男に女が向けようとした其の手の中に、ナイフは既になかった。どうして、と目を見開く女。するり、とマジックのようにカイムの手から滑り落ち、カラン、と音を立てるナイフ。
 ――女は、負けを悟った。勝てる訳がない戦いに対してではない。この男に、心でも勝てないと悟ってしまったのだ。

「……神、は。我々に、パンを下さいました」

 「闘技場」がどんな場所なのか、私は知らない。
 けれど、この「スラム街」には女子どもや力ない男がひっそりと集まって生きていた。赤薔薇領に紳士なんていない。「スラム街」では日々のパンを得るのにも必死だった。「闘技場」から盗んできたというパンを分け合って暮らす日々。きっと闘技場ではこのパンが、湯水のように使われているのだ。そう思うと怒りすら沸いた。己は幼い子を抱え、今日を生きるのに必死なのに。

 そんな時現れて、パンを与えてくれたのが、水をくれたのが――神、だったのだ。

 彼女は半人半獣の姿をしていた。
 だけれども、そんな事はどうでもよかったし、寧ろ其の不可思議さが信仰心に拍車をかけた。彼女は魔法のように食料を出し、与え、そして返礼を求めなかった。

「弱きものにも、パンを得る権利はあるのです」

 そうでしょう?

 と、槌を愛おし気に撫でながら言う“神”の美しさといったら!

 ――なのに。

 神は消えてしまった。
 パンもなく、水もない。、我らに欲深さだけを残して、神は消えてしまった。
 そうして、入れ替わるようにモンスターが現れたのだ。ならきっと、これは試練なのだろうと思った。

 そう語る女に、……なるほどね、とカイムは得心する。

「だがな、お嬢さん。本当の神ってのは、パンを与えるだけ与えるような、親鳥のような存在じゃないんだぜ」
「……」

 判っている、と言いたげな沈黙だった。
 其れでも彼らはきっと、縋るしかなかったのだろう。

「――……「スラム街」はそんな事になっていたのか」

 ふと、男の声がした。

「なあ、パーティをやらないか?」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『旅人の酒場で大宴会!』

POW   :    宴会のご馳走を大いに楽しむ

SPD   :    他の旅人と意気投合し、情報交換する

WIZ   :    歌や踊りや話芸で宴席を盛り上げる

イラスト:ハルヨリ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 無事に猟兵たちはギガンウォームを討ち果たした。
 其れをぼんやりと見ていた、「闘技場」の猛者たち。

「……俺達が苦戦していた相手を、あんな一瞬で……」

 彼らも無事ではなかった。
 プライドがぐずぐずのズタズタにされていた。「闘技場」で遊んでいた自分たちは、所詮“赤薔薇”に護られる雛でしかなかったのだと思い知る。
 真に強い者を目の当たりにして、剣を取り落とすものがいた。もう握れぬ。そう思っていた……其の剣を取って、握らせる者がいた。

「諦めてはなりません」

 フードを目深にかぶった、女がいた。

「貴方は弱きを知りました。ならば……強くなれる筈です。この二層化してしまった赤薔薇領で、強くなりなさい」
「貴方は。……あなたは、もしや……!」
「……弱きものと交流を持ちなさい。貴方が主催となり、パーティを開くのです。そうして貴方の口から言ってほしい」

 ――赤薔薇領は、常に食糧難に襲われている。

 其の事実を「闘技場」側からも明らかにせねば、この隔たりは終わらないのですから。

 そう言って離れていく女を、呆然と男は見ていた。
 だが、……彼は立ち上がる。

「皆! パーティをしよう!」
「……お前、今の奴は」
「……」

 何も言うな、と男は頭を振る。
 そうして、パーティをするんだ、ともう一度言った。
 俺達はもう一度、向き合わなきゃならない。
 お互いに誤解している事がある筈だ。

 ――「闘技場」は|恵まれて《・・・・》生きている。無条件にパンを得て、生きている。

 ――「スラム街」は|護られて《・・・・》生きている。無条件にパンを得て、生きている。

 きっと、すれ違いがある筈だ。
 其れを埋めよう。今こそ其の時なんだ!


---------------------------------
 とある「闘技場」の男によって、パーティが開かれました。
 場所は「闘技場」と「スラム街」の丁度中間にある噴水広場です。

 並んでいるのは質素なパンと、質素な紅茶。
 貧相なサラダ、痩せた干し肉、そして安価な酒。

 驚く「スラム街」の人々。
 豪華な飯だ、と芝居でなく本当に喜んでいる「闘技場」の人々。

 フードの人物が、其れを隅から見ています――
 しかし、猟兵たちは「闘技場」「スラム街」両陣営の人間に取り囲まれ、質問攻めになってなかなか抜け出せません。
 接触できるのは1名か2名でしょう。

【ダイスロールによって接触できる2名を判定します。他の方にフードの人物への接触を任せるのもアリです】
【グループ参加の場合、代表者を決めて下さい】
---------------------------------
シモーヌ・イルネージュ
パーティ! いいね!
害虫駆除でひと仕事した後だから、歓迎してくれるのはうれしいね。

……え? これだけ??

でも、周りの人はお世辞抜きですごくうれしそうだし。
もしかして、ここの世界はご飯が少ないのか。

ここは干し肉だけもらっておこうか。
少ない食料の中から出してくれたんだしね。
パーティーなんだし、楽しくやろう。

念のため今年は不作なのか?と確認しておこう。
都市世界だから、畑とか少ないのかな?

これは食べ物を制限することで、上が支配を固めるという構造な世界なのかね。
神の試練なら、趣味が悪いな。




「パーティか! いいね!」

 害虫駆除の一仕事の後だ、折角なのでご相伴に預かろう。
 そう思って意気揚々と参加したシモーヌは、けれども、出された品々を見て純粋に驚き目を瞠った。
 痩せた野菜のサラダに干し肉、――正直に言ってしまえば“これだけ?”と声を上げたくなるような品の数々。

「あー!! 酒がうめえ!!」
「酒にはやっぱ干し肉だ!! 最高だ!!」

 「闘技場」の男女は無遠慮にそれらを掴み、食していく。対して「スラム街」の人々はシモーヌと同じように驚きを隠せないようだった。

「……どうして」
「闘技場の人達だもの、もっと良いものを食べているんじゃないの……?」

 驚きのあまり、折角の食料に手を付ける余裕もないようだ。
 シモーヌは驚く「スラム街」の人々を横目に、良い感じに酔っている「闘技場」の男へと近付いた。途中で干し肉を一枚失敬して。

「よう、飲んでるかい?」
「おう! 姉さんは飲める年かい?」
「生憎“姉さん”って年齢じゃないんだ。遠慮するよ。――なあ、赤薔薇領っていうのは食べものが少ないのか?」
「ん? ……ああ。そうだな……そもそも赤薔薇領は“略奪の領”だったんだよ」
「略奪の領?」
「こっちこっち」

 大っぴらには言えないからな、と男が手招きをする。
 シモーヌは誘われるままに窓際へ寄り……男の話を聞いた。

「赤薔薇領の土はやせ細っててな。まともに野菜も育たないんだ。だから昔々は隣の黒薔薇だとか、白薔薇だとか、其の辺から強い奴らが力任せに食料を奪って来てた」
「……今は?」
「今はやってねえ。赤薔薇さまも判ってんだろうな、俺達の武力は先細りだ。食糧がなけりゃ鍛えても肉が出来ねえ。其の間にも黒薔薇や白薔薇は戦力を増強させている。赤薔薇は“力こそ正義”って言うけどな、今のままじゃ他の薔薇に攻め込まれたら終わりだ。……略奪を生業にしてた奴らがいつしか「闘技場」って呼ばれるようになって。そうして力のない奴らは「スラム街」で過ごすようになった。笑っちまうよな、どっちもお互いに“恵まれてる”って思ってたんだ……俺もそうだ。「スラム街」の奴らはきっと護られてるんだって……今日を生きるのにも困ってるだなんて、知らなかったんだ」

 「知らなかった」が免罪符になるとは思わないけどよ。
 男はそう言って、筋張った干し肉を食い千切った。シモーヌは其処に、赤薔薇の虚勢を見た気がして……己も干し肉を其の鋭い犬歯で引き裂いたのだった。

「……他の領に言えば、きっと助けてくれるんだよ」

 ぽつり、男が呟いた。

「けどよ、……散々奪ってきて、力だ! って言っておいて、実は食糧難なんです、助けて下さいなんて……言えねえだろ。そんなの都合が良すぎるぜ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

インディゴ・クロワッサン
いやー…食料難とはねぇ…
うーん、|UDCの食料やA&Wの竜肉とか《他世界のご馳走》は…寧ろ、憧れがマシマシになりそーな予感しかしないし、今回は自重しよー…
まぁ、世界知識/審美眼で大体同じぐらいじゃないかなーって予想したA&Wで樽買いした安物のエールとか、質のそんな良くない干し肉ぐらいは、宴会なんだし出しても良いよね!
UC:無限収納 になだれ込まれても問題だから、持てるだけ持ち込んで振る舞おーっと
「…ほんのすこーしなら、僕もお肉とお酒ぐら、い」
待って待って待ってー!集まらないでー!強者の慈悲とか何も関係ないからー!お肉とお酒の在庫まだあるからー!!!

あ、誰かフードさんへの質問とか宜しくねー!




「うーん、まさか食糧難とはねぇ」

 インディゴは折角ご相伴に預かるのだから、と便乗して、保管庫から色々と取り出そうとしていた手を止める。UDCの最新の食糧だとか、アックス&ウィザーズでの竜肉は――寧ろ彼らの憧ればかりを増長させて、後々後悔させてしまうだけかもしれない。何より、保管庫を寄越せと殺到されたら厄介だ。
 アックス&ウィザーズなら物質価値が近そうだ。余り質の良くない干し肉と、安物のエール。インディゴが取り出してそっと並べたのを、目ざとく「闘技場」の戦士たちが見付けた!

「なあアンタ、今なにか出さなかったか?」
「え? ああ、ちょっとしたお土産みたいなものかな? 良かったらどうぞ。ほんの少しなら、僕もお肉とお酒ぐら、い」

 男を見上げると――にやり、と悪戯っ子みたいな笑みを浮かべていた。
 これはまずい、とインディゴの脳内で警鐘が鳴るが、時すでに遅し。

「みんなー!! 此処に食べ物持ってる人がいまーす!!!」

 ――いや、なんで敬語……っていうかやめてぇぇ!?

「本当か!?」
「あっ! あの人、さっき芋虫を一杯倒してた人!」
「そうなのか!? 良い感じに酒が回って来たし一戦お願いしてみるか!?」
「待って待って待って! 集まらないでっていうか妙な事考えないで! 今はパーティでしょ、一戦とかやらないから! ほら、あんまり世界観の違うもの出すと君たちびっくりするでしょ!」
「「「でも、食べてみたい!!!」」」

 「闘技場」と「スラム街」。二つの心が一つになった瞬間だった。
 うう、とインディゴは肩を落とし……取り出したのはするめ。

「こういうので、よければ……」
「――…これ、何だ?」
「気味の悪い形だな……食べられるのか?」
「あれ? するめ知らないの? ああ……もしかしてこの世界、海がないのかな? えっとね、するめはこう千切って、噛みかみすればするほど味が……」

大成功 🔵​🔵​🔵​

白銀・龍兵
(1章で出会った「闘技場」の二人に改めて自己紹介する(【コミュ力】))

まあ、そっちの事情は大体わかった。で、話に出てきた「赤薔薇さま」って、どれ程の強さなんだ?――いや、機会があれば見ておこうかなって。
しかし今回、そいつは姿を見せなかったそうだが…、なんか思惑がありそうだな?

――しかしまあ、食糧難とは聞いたが、随分と貧相な食事だな。よし、俺が持ち込んだ「山盛りの料理」をふるまってやろうか(【お誘い】)。
(その間、UCで出したガジェット(殺傷能力はない)で子どもたちを遊ばせてる)

※アドリブ・連携歓迎




「あんたがラゼフで……あんたがヴァイジャンか。宜しくな!」
「ああ、龍兵。こちらこそ宜しく頼む」
「仕留めた数じゃ負けちまったな。流石猟兵――ってところか? アンタらはいつもああいうのと戦ってるのか」
「まあな。其れで、そっちの事情も大体判ったが――あんたらよりも“赤薔薇さま”ってのは強いのか?」

 自然現象と弓矢を巧みに操るラゼフ。
 其の剛力で大地さえ砕いてみせるヴァイジャン。
 一般人の域とはいえ、彼らも十分すぎる程の実力者に思えるが……

「俺は酒を取って来るから、自慢頼むぜラゼフ」
「ああ。――赤薔薇さまは強い。破格の強さを持っている。私たち「闘技場」のものは……「スラム街」の者たちには、闘技の褒美に食べ物を貰うと思われていたようだが、そうではないんだ。ただ純粋に、強くなりたい。……そうしていつかは赤薔薇さまを打ち倒したいと願う、ただのウォーモンガーなのさ」

 苦笑するラゼフ。
 平和を好みそうな彼もまた、血に飢えた獣だというのだろうか。へえ、と意外そうに竜兵は声を上げ。

「赤薔薇さまは月に一回、闘技場の猛者を一人選んで腕試しをするんだ」
「帰ってきたか、ヴァイジャン」

 男がジョッキに酒と龍兵用のジュースを持って戻って来る。

「赤薔薇さまの闘いは……なんていうかなあ。腹が減ってても、其れが吹っ飛んじまうような美しさがある。腕力で圧倒する事もあれば、……あれは…影か? ラゼフ」
「影かな。何か魔法のような力を用いてあっという間に闘士を戦闘不能に追い込む。正直埒外の強さだ、……フフ、私も闘士の端くれ。例えば君なんかが名乗りを上げるところを見てみたいと思ってしまうよ、龍兵」
「おいおい、買いかぶるなよ。俺も猟兵ではあるが、まだ猟兵としてはひよっこみたいなモンだし……しかし、今回は顔を見せなかった、と」
「ああ。……「スラム街」に現れた“神”とやらについて何かしているのかもしれないな」
「ああ見えてこの国を大事にしていらっしゃるからな、赤薔薇さまは」
「成る程な。“神”……か。確かに、放っておけねえな」

 ――しかし、と龍兵は唸る。
 食糧難とは聴いたが随分と貧相な食事だ。折角の出会いだ、少しくらい料理を振舞うくらい許されるだろう!

「しっかり食わなきゃ下地は出来ねえからな!」
「おお……!? 龍兵、君は魔術まで修めているのか!?」
「すげえ! おーい! みんなこっち来いよ、猟兵が料理を振舞ってくれてるぞ!」
「子どもには玩具もあるぜ。……そろそろ暦ではクリスマスだからな、俺からのちっぽけなプレゼントだと思ってくれよ」
「クリスマス……?」

 首を傾げるラゼフとヴァイジャン。
 まずは其処から説明しなきゃならないか。なはは、と龍兵は笑った。俺達が渡る世界の中には、色んな祝日があるンだが――

大成功 🔵​🔵​🔵​

キャスパー・クロス
正直、状況が掴めてない…
最初は信仰者側に話を聞こうと思ってたけれど、有用な情報を引き出せるかは怪しいし
それよりも、あのフードの人物!
あの謎の人物を捕まえて、何が目的なのか端的に問う方が早そうだ

あれが仮にエリクシルに願いを叶えられた人物だとしても、あまりにやり方が遠回り過ぎる
世界を変えたいなら、もっと直接的なやり方があるだろうに
何が目的でこんな、こそこそした真似を…

「潤色‪──‬」

UCで知覚感知を無効化してから【空中浮遊】すれば、現地民に追われることは無いでしょう
派手に戦っといて悪いけどさ、質問攻めに合ってる暇は無いんだよね!

フードの人物の前に来られたらUCを解除し
「何が目的?現地民を結託させて、どんな光景を見たいわけ?」

こいつが何者なのか(エリクシルに願いを叶えられた人物なのか?)(或いはエリクシルそのものなのか?)ってのも気になるし
どんな願いを叶えたらこんなことになるのかも気になるけれど
事態を紐解く疑問文は、まず『Why done it』だ
私は頭良くないから、ひとつひとつ確かめていこう


カイム・クローバー
フードを目深に被った女。
情報源ね。……ヴィズちゃんが名前は明かせないって言ってたのが妙に印象的だった。オマケに信用できない、と来たモンだ。
となれば、会うしかないだろ?

UCを使用してもう一人の俺をパーティに残して。
記憶、能力、性格、思考、同一人物。安酒で喉を潤して、質問に盛大に答えて【悪目立ち】して場を盛り上げよう。
例えば――(芝居がかった口調で)その瞳を見るなかれ、無残な最期を遂げたくなければ。願いを乞うなかれ、地獄の業火に苛まれたくなければ。
彼女は青薔薇。悠久に近い時を生き、青い瞳の鴉を使い魔に持つ魔女である――で、俺はそんな青薔薇の魔女様の遣い走りってワケさ。
四本目の薔薇。多少は話題になってるようだしよ?
場が盛り上がってUCの俺に注力してくれりゃ、俺がフードの女に接触する余力も稼げる。

上手く接触出来りゃ、話も聞ける。
赤薔薇の魔女様かとも考えたが…聞いてた話とは性格が違う。赤薔薇に紳士は居ないと聞いたが。今日は幸運だ。此処に今一人居る。(胸を指で叩いて)
まずは俺の自己紹介からしようか?


クロウ・デイクロス
魔王…スカーレット(f38904)と共闘

オイオイ、食糧難ってどういう事だよ?
黒薔薇領じゃ菓子を振る舞う余裕もあったってのに…。

闘技場側には強さの対価として。
スラム街の人達には施しとして。
ただ立場の違いこそあれ、渡される食糧自体に違いはない、と。
大方、そこら辺の認識をこのパーティーで擦り合わせよう、ってのが狙いか。

さてはて、御領主サマがその上でどうしたいのか。まぁ、そう悪い方向にはいかなさそうだが。
さて、そこら辺の切り込み役はスカーレットの方が適任そうだな。
という訳でお任せしても良いかい、魔王サマ?

・接触成功
ここは聞き役に徹しておこう。

・接触失敗
随分とご機嫌だが…二日酔いになっても知らないぞ?


スカーレット・マカレッド
小僧…クロウ(f38933)と共闘

全くその通りだ
黒薔薇領の宴とは大きく違っておる…
一体どうなっておるのか、あのフードを被った者が知っておるに違いないな

うむ、吾輩に任せるが良い!
場違いな【威厳】を以て質問攻めを躱しながら、フードを被った人物の方へとさりげなく近寄っていくぞ

・成功したなら…
お主!目的はなんであるか?
そもそもお主は何者であるか
…見た感じ、両者を見守っているように想う
お主はこの領をどうしたいのか、明確な答えが知りたいのである

・失敗したなら…
うっふふー…安酒でこんなに酔えるとはなぁ
(安酒を勧められてほろ酔い状態)
小僧ぉ~♪体がフワフワするのである~♪




 正直にいえば、状況が掴めていない。
 キャスパーは唇に指を当て、飲み食い騒ぐ人々を見ながら考えに耽っていた。
 信仰者たちに話を聞こうにも、どうにも情報が断片的だ。有用な情報を引き出せるかは怪しい。

「其れよりは――」

 ちら、と視線をくれたのは広場の隅でひっそりと佇んでいるフードの人物。あんなに怪しい見目をしているのに、人々は食べ物と飲み物に興味を奪われ、互いの知らぬ文化を交わす事に夢中で気付いていない。
 あれが仮にエリクシルに願いを叶えられた人物だとして。あまりにやり方が迂遠に過ぎるのでは? 世界を変えたいというなら、もっと直接的な手段がある筈だ。何が目的で、こんなこそこそした真似を――

 ――フードの人物を怪しんでいたのはキャスパーだけではない。
 カイムも酒を楽しみながら、グリモア猟兵の言を思い出していた。
 信用できない、けれども名前も明かせない情報源とは一体何なのだろう。彼女の事だ、買収の類に応じる気性ではないが――

 キャスパーが知覚感知を無効化して空中を舞うのと、カイムがもう一人の己と擦り替わり、違う方向からフードの人物へと詰め寄るのは簡単だった。

「……何でしょう」
「例えば――其の瞳を見れば無残な最期を遂げ。願いを乞えば地獄の業火に苛まれる」

 紛い物のカイムが、同じ事を謳うように民に述べている。潜めるようなカイムの言に反し、もう少し――大袈裟に、だが。

「悠久に近い時を生き、青い眸の烏を使う魔女――俺はそんな青薔薇の使い走りなんだが。なあ、あんたは“何色”なんだ?」

 敵か味方か。はたまた、他の薔薇からの密使か。
 カイムとキャスパーが見つめていると、やれやれ、とフードの人物は嘆息した。よくみれば其の吐息は女のもので、背丈からして然程年を経ているとは思えない。

「私は|赤色《・・》ですよ。紛れもなく」
「……! あ! お前ら、待て! 其の方は……!!」

 ふと、パーティを熾した男が振り返り、二人と――近付いていたスカーレットとクロウを止めようとする。けれど、構いません、とフードの女は言って、フードをぱさりと落とした。
 僅かに緑色を含んだ金髪に、穏やかな瞳。
 生白い膚の其の女は、――しかし、「闘技場」の人々に衝撃を与えるには十分な人物だった。

「こ、コルネリエ様!?」
「む? 知っておるのか、お主ら」
「知っているも何も! 其の方は――」

「|赤薔薇で2番目に強い《・・・・・・・・・・》、だ、だ、……第二席! 議席に座っておられるお方だぞ!!??」



 議席。
 其れは御薔薇3人だけで統治出来ない程にロザガルドが成長した際に制定された精度である。
 赤薔薇は「己の次に強い者を」。
 黒薔薇は「理知的な者を」。
 白薔薇は「いーらない」。
 各々が指名し、名代として各地に派遣する彼女らの目となり耳となるもの。其れが「議席」に座る少女たちだ。

 そうして猟兵たちの前に凛と立つ、一輪の花のような少女――彼女はつまり“赤薔薇の次に強い”第二席に座する者。

「……不要な警戒を招きましたね。お詫びをします」
「本当である! お主には聞きたい事がたーくさんあるのである、答えてもらうであるぞ」
「ええ、……私で良ければ」
「うむ。…ではまず、」

 スカーレットはクロウと、カイムとキャスパーと視線を交わし、先陣を切った。

「お主は何故此処にいるのであるか。お主はこの領をどうしたいのか聞きたいのである」
「……私は赤薔薇様の名代で此処におります。両者の認識にズレがあり、妙なものが潜んでいる状態で領主がわざわざ「スラム街」へ降りる事は危険だと判断したからです」
「「闘技場」側には強さの対価として。「スラム街」にはある種の施しとして。立場の違いこそあれ、渡される食糧自体に変わりはない。大方、其の辺りの認識をこのパーティーで擦り合わせようとした……ってとこだろ?」

 クロウが視線を向ける。
 女――彼女はコルネリエ=サヴァルと名乗った――はそうです、と頷く。

「赤薔薇領は慢性的な食糧難に見舞われています。赤薔薇様は其の上、自領の民が二分化していく事に心を痛めておられました。――其処に現れたのが、あの“神”と名乗る存在です」
「スラム街の奴らがすがりついた、カミサマか」
「ええ」

 カイムの言葉にコルネリエは頷く。

「赤薔薇は宗教こそ自由ですが、基本的に“神はいない”と教えております。そんな中に現れて、人々に施しを始めた“神”。私たちは真っ先に他の領を疑いました。そして次に、――黒薔薇で騒乱を起こした存在を疑ったのです」
「――コルネリエさんは、エリクシル、という存在は知ってる?」
「話だけには。なんでも、願いを叶えてくれるけれども、其の形は歪……だと。黒薔薇に現れたのは其の手先だと伺っておりますが、間違いありませんか」
「間違いないのである! あれは正確にはエリクシルではない。犠牲者を蘇らせたいという下地を作ろうとした、エリクシルの手先だったのである」
「成る程」

 この度の“神”も其れと同じような存在かと思います。
 キャスパーとスカーレットの言葉に、コルネリエは考えるように細い指を口元に当てる。黒薔薇で起こった事件同様、願いを叶えるというよりは……其の下地を作っているように思えるのです、と。

「成る程? 程よく飢えさせた所に現れて、“何を望むのか”お尋ねするってところか?」

 悪趣味な輩のやりそうな事だ、とカイムが肩を竦める。
 聞きに徹していたクロウが気を利かせて持ってきた飲み物を、各々が取る。コルネリエは其れを受け取り、一同を見回すと真っ先に口を付けた。其れは信頼の証だ。

「赤薔薇さまは、基本的にすべてを疑います。其れが領主として出来る護国だからです。故に、猟兵の存在も、エリクシルの存在も疑い――私を名代として遣わした」
「つまり、お主がこうして両者を見守っているのは、赤薔薇の意思でもあると」
「そうです。……流石に困惑しました。此処まで「闘技場」と「スラム街」の溝が深いとは思いもしなかった。誰か統治役を「スラム街」に置くべきかとも思いますが、……“力”を法と掲げる赤薔薇の在り方はそう簡単には変えられない。我々は御薔薇を護る盾であり矛だからこそ、常に刃を磨いている。赤薔薇様は言っておられました。“這い上がった者にしか見えない景色がある”。……だけれど、」

 「スラム街」の民は、“神”に縋るほど追い詰められていたのですね。
 憂うコルネリエの視線がドリンクに落ちる。そうして其の憂いごと飲み干すかのように、彼女は器の中身を煽った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『滾る鎚ベリオルズ』

POW   :    ジェノサイドハンマー
予め【ベリオルズが力を溜める】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    ファントムスタンプ
自身が触れた物体ひとつに【ハンマーの幻影】を憑依させ、物体の近接範囲に入った敵を【実体を持つ打撃】で攻撃させる。
WIZ   :    ランドブレイク
単純で重い【ハンマー(ベリオルズ自身)】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。

イラスト:志村コウジ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




「あらあら?」

 ピュアリィの女は、ロザガルド、おいては――エンドブレイカーが包括するこの小世界群の中では珍しくない。半身が獣のものもいれば、機械のものもいる。
 だから最初、「闘技場」の者たちに混じった女に誰も疑問を抱く者はいなかった。

「……あ……!?」

 「スラム街」の者を除いては。
 彼らは口々に言葉にならぬ声を上げ、ピュアリィの女に詰め寄る。其れは平服する様にも似ていたが、糾弾しに来たようにも見えた。

「“神”! 何処へ行ってらしたのですか!」
「貴方の教えは嘘だったのですか!? 『闘技場』の人間は、のうのうとパンを食べている、そう言った貴方の言葉は!」

「――“神”だと?」

 其の言葉に、「闘技場」の人間たちも――そしてコルネリエも、視線を向ける。豊かな金髪で胸元を頼りなく隠し、桃色の体毛を風に揺らす其の優美な女へ。

「あらあら。嘘ではありませんが、少し予想外でした」

 悪気の欠片もなく、女は小首を傾げるのだ。

「予想外……?」
「てっきり貴方がた、出会ったら殺し合うものだと思っていましたのに。其れだけの怨嗟を貴方がたには抱かせたと思ったのに。一体何が貴方がた「スラム街の人間」を変えたのですか? どうして強き者と弱き者が、同じ食事を共にしているのでしょう」
「……“神”?」

 何を言っているのだろう、この女は。
 そう言いたげに「スラム街」の人間は沈黙した。

「……ざっけんじゃねえ!」

 声を上げたのは――「闘技場」の闘士、ヴァイジャンだった。
 ずかずかとピュアリィの女……“神”と名乗り「スラム街」の人間を煽った女へと歩み寄る。

「何が目的かと思ったら、ンな遠回しな事だったのかよ! だったらオメェが殺しにくればいいじゃねェか! こんな……力もない女にナイフ持たせるような事しやがってよ!! ああ楽しませて貰った、あのイモムシはなかなかに手ごたえがあったぜ! ならお前はもっと手ごたえがあるんだろうなあ!?」

「うるさいです」









 ――誰も。

 誰も、其れを止められるものはいなかった。

 ヴァイジャン自身でさえも――|己の頸が宙高く舞った《・・・・・・・・・・》事に気付くまで、数秒かかったに違いない。

 女は全くの予備動作なく、片手に持っていた巨槌を振り、大男の頸を|ちょん《・・・》とハネてみせたのだ。






 ――と、誰もが思った。


「……私の母の領で」

 女の槌は、振り切られる事はなかった。
 ぎりり、と槌を抑える細腕が、ヴァイジャンの前に立っている。
 ヴァイジャンは思わず己の頸を確認した。……繋がっている。今のはまさか、|俺の終焉《・・・・》だったのか。

「私の母の腕の中で、――勝手はさせない」

 猟兵たちが見ていたコルネリエが“消えていて”、ピュアリィの女の前に“立っていた”。其れはまるで空間を跳躍するかのように。

「あら。折角ひとつ、土台を作ろうと思ったのに」
「――貴様、」
「でも、別の土台が出来そう。貴方なら、沢山、沢山の願いの苗床になりそうね?」

 女は今度はしっかりと腕を奮って、ぶうん、とコルネリエを投げ飛ばした。
 そうして宙に浮いた彼女の腕を振り払うと、其の身体目掛けて槌を――
インディゴ・クロワッサン
瞬間的に殺気ばらまいたら、闘技場のヒトもスラムのヒトも逃げないかな…皆にーげろー!(殺気/咄嗟の一撃/範囲攻撃
「僕って、守る為の戦いは得意じゃないんだけどなー!」

敵の攻撃は基本第六感も併用して見切って回避!大槌相手じゃ愛用の黒剣での武器受けは分が悪いのー!
当たりそうなものは、ダッシュ/ジャンプ併用の残像で逃げきったり、オーラ防御と激痛耐性で耐え………痛いものは痛いんだよー!
怒ったので、怪力使って身動き封じたら、早業で素早く噛みついて、吸血/生命力吸収しちゃうぞ!ごくごく!

締めは…UC:燃え盛る真紅の薔薇 を発動して焼却するのが筋ってものかなー?
「燃えろ燃えろー!燃えてしまえー!」
あー痛かった…


シモーヌ・イルネージュ
どうやら、スラム街の住人を騙して、闘技場の人間達と戦わせようとしてたらしいね。
確かに、この世界には問題が多いみたいだから、そこを悪い神に漬け込まれてしまったということか。
幸い、大事になる前に気づくことができてよかったよ。

あとは原因の元を潰して解決といこう。

黒槍『新月極光』で戦おう。
槍には【電撃】も仕込んだ上で、UC【神燕武槍】を発動。
相手が力を込める前に速攻で畳み掛けよう。

薔薇の地らしく、ぱぁーと散ってほしいね。


白銀・龍兵
おいおいおい、「神」が来たっていうからどんなのかと思ったら、ただのピュアリィの成れの果てじゃねぇか、えぇ?このエリクシルのパシリさんよぉ!(【挑発・存在感】)

――で、名代さん、あんたもエンドブレイカーだったのか?悪いがスラムの連中を守ってくれないか?「闘技場」の奴らとも連携してな!

――さて、物体に攻撃能力を与えるUCは厄介だが…近寄らなきゃ問題ない!さあ、食らってみろ、「神殺しの龍」を!!(【吹き飛ばし・武器から光線】)
――で、無事に片付いたら、あらためてパーティーを開かないか?名代さんの主催でな!

※アドリブ・連携歓迎




 ふつん、とコルネリエの姿が消え、ピュアリィの槌が空を切る。少し離れたところにコルネリエが現れて、どっ、どさっ! と落ちて転がった。

「……ッ、かはッ……!」

 転がった反動で起き上がったコルネリエだが、ダメージを殺し切ることは叶わなかったらしい。唾液とも血液とも取れぬものを石畳に吐き捨て、ピュアリィの女を睨み付ける。

「僕って護る為の戦いは得意じゃないんだけどなー! みーんなー、にげろー!!」

 インディゴが殺気を一気に解き放つ。
 其れは噴水広場全体に危機感を齎し、「スラム街」の人間たちが逃げるのを助ける。ぞわり、と「闘技場」の人間ですらも背筋に駆け上がるものを感じたが、「スラム街」の人間が逃げ切るまではと足を踏ん張って耐える。

「確かにこの世界には問題が多い……其処を|悪い神《アンタ》につけ込まれちまった。そういう事かね」
「まあ、つけ込むだなんて人聞きの悪い。私はただ、弱き者が求めるままに、求めるようにしていただけ。放っておいてもこの場所は、きっと願いの温床になっただろうけれど……」
「ハッ!! 何を言おうがてめぇは神じゃなくピュアリィで、エリクシルのパシリなんじゃねえか! 偉そうな事言っても其処は変わンねえよ! ――名代さん、大丈夫か!?」

 龍兵がコルネリエに声をかける。コルネリエは腹を抑えながら立ち上がり、こくりと頷いた。

「悪いがスラムの連中を護ってくれ! 「闘技場」の奴らとも連携してな!」
「判りました。貴方がたの邪魔にならないところまで民を誘導します。――どうか、御武運を」
「ああ! 無事に片付いたら改めてパーティを開こうぜ! 名代さんの主催でな!」
「まあ、まあ。片付いたあとのお話をするなんてつれない人。最後に立っているのは私だとはお考えにならない?」
「わー、すっごい自信だね。自分が勝つってどうやったら其処まで自信持てるんだろ、教えてほしいな」

 ピュアリィの女――滾る鎚“ベリオルズ”は笑みを崩さず、会話は終わりだとばかりにハンマーを振り翳した。
 標的になったのはインディゴだ。ぶおん、と振るわれる槌はユーベルコードですらないが、咄嗟に頭を後ろへ下げた彼の前髪をちりり、と持って行った。

「(うわぁ、凄い怪力! 大槌相手じゃ武器受けは分が悪いしなー!)」
「|神燕武槍《イロンデル》!」

 シモーヌが加勢する。シモーヌの槍が光もかくやたる速さで女の槌に突きを放ち、狙いを逸らす。かきゃん、と鋼同士がぶつかる音がした。

「すまねえ、ちっと力溜めるわ!」
「あいよ!」

 龍兵の言葉に、シモーヌが返答する。ベリオルズはシモーヌとインディゴを相手取りながら、そっとテーブルに其の繊手を触れさせた。すると、半透明のハンマーのような幻影がふわりと現れて――質量を持ち、追いすがる二人へと打撃を加える!

「ッ!」
「いっっ……たぁー!? ただの分身みたいなものなのにこの威力!?」

 もう怒った!
 インディゴはシモーヌの方を向いて、

「ねえ、少しだけ動き止められる?」
「全く、仕事の多い奴らだねぇ! ……やってやるよ! 一秒…二秒は止めてやる!」
「おっけー!」

 インディゴはそうして、シモーヌとは90度の角度差を付けてベリオルズへと接敵する。シモーヌは槍士ならではの身の捌きでベリオルズへと迫った。

「ああ、貴方。遅すぎるわ」

 既にべリオルズは構えている。十分に力を溜めたハンマーが横合いからシモーヌのこめかみ……どころか、頸を撃ち抜かんと迫る。
 だが、そんな事はシモーヌとて判っている!最も弱い箇所……其のハンマーの接敵面を下からかつん! と槍の柄で弾き上げた!

「あら?」
「力任せじゃあ、アタシは仕留められないよ!」
「そういうこと!」

 ――二秒。留まらせたよ。
 シモーヌの視線は、背後からベリオルズに迫るインディゴへと注がれていた。インディゴはベリオルズの首筋に――がぶり、と噛み付く。其れこそ食い千切りそうなダンピールの顎の力で。

「あッ!?」

 ごくん、……ごくん。
 生命力を、血液を、インディゴは失った分以上に奪ってゆく。
 そしてぱっと口を離すと、己の首筋を爪で引き裂き、真紅の花弁をほろり、と落とす。其れは火種だ。ベリオルズへと触れた瞬間、炎へと変わる其の花弁!
 そうして前後にいる猟兵は頷き合うと、一気にベリオルズから距離を取った。

「ッ……な……!?」
「待たせたなァ! とっておきのをくれてやるぜ、……エリクシルのパシリさんよォ!」

 其処には龍兵がいる!
 ドラゴンガントレットは黄金に輝き、力放たれる時を待っていた。ああ、良いぜ! 今解放してやるよ!

「受けてみやがれ、……神殺しの、一撃って奴をォ!!!」

 ガントレットから解き放った竜めいた魔力は、空をうねり、駆け、そしてベリオルズを包み込んだ。

「……ッ、あ、あああああッ!!!!」

 インディゴの炎と龍兵の魔力が混ざり合い、相乗反応を起こして渦を巻き、天へ昇って行く。
 ――だが。ベリオルズも其処までヤワではない。渦巻く黄金の髪を焦がしながら、桃色の毛並みを焦がしながら、しかし彼女は“滾る槌”であるがゆえに……槌を支えに立ち、猟兵三人を睨み付けていた。

「こ、の……!」

 だが、確実にダメージは与えている。
 赤い薔薇の花弁が一枚、焔となって宙に燃えて散った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
つまりアンタにとっちゃ闘技場の人間が死のうが、スラム街の人間が死のうが関係ないってワケだ。
ま、そうじゃないと困るがね。

(その場の全員に届くよう大声で両手を挙げて叫ぶ【悪目立ち】)
Ladies & Gentlemen!!
これより行うのは──誇り高き赤薔薇の民をたぶらかした神との決闘!
傷付けられた赤薔薇の誇り、今、返して頂きましょう!!この瞬間!この場は簡素な闘技場です!

パーティには余興が必要さ。“神”をブチのめすんだ。悪くない余興だろ?
【挑発】して笑む。
ハンマーの一撃を魔剣と迫り合わせて。不利な演出も【パフォーマンス】。闘技者とスラム街が同時に魅入ってくれれば連帯感も出るだろうと思うが…ま、それは正直どうでもいい。
俺はこういった自分勝手な“神”が気に食わないのさ。
UCの狙いは重厚なその槌。魔剣で付けた僅かな傷をUCで撃ち抜きたい。一瞬だけ真の姿を解放。“神”を打倒する悪魔のような男。
――なんて。皮肉が効いてるだろ?

傷付けられた誇りは貴方達の手に。
余興の終わりには胸に手を当てて客に一礼しよう




「つまり」

 カイムが両手を広げて言う。

「アンタにとっちゃ、『闘技場』の人間が死のうが、『スラム街』の人間が死のうが関係ないって訳だ」
「そうなりますね」

 あっさりとピュアリィの女は応えた。
 でも、と彼女は焼け焦げながらも笑って続ける。

「どちらかといえば『闘技場』側に減っていて欲しかったですけれど。だって其の方が、強者を求めるこの地らしく、“求める声”も多くなるでしょう?」

 ――勿論、「スラム街」の方が亡くなっても、其れは其れで祈りの声はあったのでしょうけれど。

 醜悪だ。腐臭がするかのような、利己にすぎる言葉だ。
 だがカイムは其れを糾弾する事はせず、両手を上げて声を張り上げた。

「Ladies & Gentlemen!!」

 何事か、と避難を続けていた人々が振り返る。
 ピュアリィの女もまた、其の瞳をぱちくりとさせた。
 カイムは彼らを意に介せず続ける。

「これより行うのは――誇り高き赤薔薇の民をたぶらかした“神”との決闘! 傷付けられた赤薔薇の誇り、矜持! いま返して頂きましょう! この瞬間、この場は簡素ですが神聖なる『闘技場』となるのです!」

「……何のつもりですか?」

 面白いですけれど、とピュアリィの女が槌を肩に担いで問う。

「何、パーティには余興が必要だってだけの話さ。“神”をブチのめす。悪くない余興だろ?」
「……飛び掛かってきた不敬な狼を“神”が叩き潰す。ええ、悪くない余興ですわね」

 きな、とカイムが指を振る。
 ピュアリィの女はハンマーを振りかぶり……一気にカイムに距離を詰めてぶうん、とハンマーを振った。
 カイムは魔剣で其れを受け流す。ぎりぎりがりがりと鉄の削れるような音がするが――まあ此れも演出の一つってやつだ。
 そして細かく攻撃を加えて防がせる事で、力を溜める隙を与えない。一撃で男の頸を飛ばしかけたような女だ。イケメンの頭が飛んだら女性の悲鳴が上がっちまう。――だろ?

 其の“決闘”に、「闘技場」の者も「スラム街」の者も見入っていた。
 あの一撃にはこう、この一撃にはこう。そう相談し合う人々もいる中で、コルネリエはぽつりと呟く。

「……成る程」
「何が成る程なんです? 議席様」
「いえ、……こちらの話です」

 敢えて“決闘”と称する事で、其の勝利にカタルシスを与える。
 其れが恐らくカイムの狙いなのだろう。そうして其れを「闘技場」「スラム街」双方に見せる事で、敵は斃されるのだと、国威は過ぎ去ると言いたいのかもしれない。
 ――いや、ただに目立ちたがりなのかも知れませんが。

 ――目立ちたがりかは兎も角として、カイムが皆の目を惹き付けたのは“ついで”に過ぎなかった。
 彼は神が嫌いだ。もっというなら、こんなに自分勝手な“神”などクソくらえだ。
 魔剣でハンマーを弾きながら、大きくベリオルズが振りかぶったところに――片手に剣を持ち換えて、銃を構える。狙いは魔剣でつけた僅かな瑕。重厚に見える其の槌も、魔弾の一撃で、

「あッ!?」

 ――ばぎん!!

 このザマだ。
 大きく欠けた槌を、ベリオルズは慌てふためいて抱える。

「だっ大丈夫ですか!? 痛みはありませんか!?」

 まるで其れは、愛する人を案ずるに似ていて。
 ふうん? とカイムは片眉を上げたけれども、そんなギミックは彼にとっては如何でも良かった。
 ―― 一瞬だけ、真の姿を解放する。
 黒い翼に黒い膚、金色に輝く瞳。其れはまるで悪魔のような異様さで。ひ、と「スラム街」の人々が息を呑んだのを聞いてから、カイムは直ぐに元の姿に戻った。
 “神”を圧倒する悪魔のような男……なんて、皮肉が聞いてるだろ?

「――傷付けられた誇りは、貴方がたの手に」

 片手を胸に当て、カイムはそっとお辞儀をするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロウ・デイクロス
魔王…スカーレット(f38904)と共闘

神様だ何だと大きく出たもんだな。流石に冗談が過ぎるぜ、ラビシャンの女王『アルゴラ』さんよ。ご丁寧にベリオルズまで一緒に蘇った所で悪いが、もう一遍倒させて貰うぜ?

UCを起動しつつ前へ。右手に月刃、左手には魔導銃を握り、遠近を問わず攻め立てる。もし周囲に攻撃が行きそうなら、魔導書の攻性防御を展開してカバー。攻撃の溜めを作らせない様に立ち回りつつ、魔王が攻撃できるように隙を生み出す事を心掛けたい。

兎由来の俊敏性に、威力特化の『喋る武器』か。真正面から当たるのはちとキツイな。だけど、踏んだ場数ならこっちの方が上だ。
さぁ、目に物見せてやろうぜ、『真っ赤な魔王』!


スカーレット・マカレッド
小僧…クロウ(f38933)と共闘

ふん、正体をあらわしおったな
吾輩も覚えがあるぞ!そのだらしないけしからん肉体を!
…いかんいかん、ベリオルズもおったのだったな
とにかく!スラム街の者達を唆した罪は重いのである!

クロウと連携し、カエンマルを携えてヘブンリィスラスト使用
【居合】の力と【武器に魔法を纏う】ことで光輝のエネルギーを溜め、クロウが切り拓いた隙を狙おう

フフン、威勢がいいな小僧!
しかしてその通りである!吾輩たちエンドブレイカーの力の前では、悲劇など有り得ぬ!
そうであろう、『悲劇を許せぬ者』よ!!




「神様だ何だと大きく出たもんだな。流石に冗談が過ぎるぜ」

 ――ラビシャンの女王『アルゴラ』さんよ?

 クロウがそう名を呼ぶと、嘗てはアルゴラだった女、そして今は“滾る槌”ベリオルズとなった女は、うっそりと笑った。

「ご丁寧にべリオルズまで一緒に蘇ったところで悪いが、もういっぺん斃させて貰うぜ」
「吾輩も覚えがあるぞ! 其のだらしないけしからん肉体を! ……いや、今はベリオルズが本体であったか? 兎に角! 『スラム街』の者たちをそそのかした罪は重いのである!」

 クロウはスカーレットの言葉に「若干嫉妬が混じっているのでは」と思ったが、敢えて何も言わなかった。何故なら彼は人のプロポーションには余り興味のない男だからである。そりゃそうでしょ、目の前に上半身丸出しの女がいるのに何もしないなんて!

 こほん。失礼。

 クロウはスカーレットに先んじて前に出ると、右手にムーンブレイド、左手に魔導銃を握った。更に周囲を浮遊する魔導書。

「まあ、まあ。私に近接を挑み続けるおばかさんたち」

 嘗てアルゴラであった女、今はベリオルズと名付けられたオブリビオンは、欠けたハンマーを手にクロウと相対する。
 ぶおん、と軽々ハンマーを振るえば、横に飛んだクロウがさっきまでいた場所の石畳を割り砕き、大地を凹ませる。
 クロウは其の横っ腹に向けて魔導銃を二発。だが、槌を軸にぴょんと飛んでかわされた。そう簡単に当てさせてはくれないらしい。

「まあ、其れくらいの方が燃えるってもんだよな……俊敏性に“喋る武器”。どうやら今回はダンマリみたいだが――……真正面から当たるのはちとキツい」
「なぁにを弱音吐いておるか、クロウ! 吾輩とおぬしならやれにやれてやれまくる相手である!」
「そうだな……! 目にもの見せてやろうぜ! 『真っ赤な魔王』!」

 クロウが飛び出す。彼はいつだってスカーレットの前を行き、道を切り拓いてくれる。スカーレットは其れに礼など言わない。何故なら其れが、魔王の矜持だからだ。
 ――だが。切り拓かれた道ならば堂々と行かねばならない。其れは魔王としての責務。

 銃弾が舞い、槌が叩き落とす。剣が槌をわずかながらに逸らし、攻勢結界さえばりんと割ってハンマーが大地に叩き付けられる。
 スカーレットは愛刀カエンマルを携えて、光輝を溜める。カエンマルは赤く、赤く、真っ赤に輝いて――

「フン、威勢のいい小僧である」

 しかして其の通り!
 吾輩たち|終焉を終焉させるもの《エンドブレイカー》の力の前では、悲劇など在り得ぬ!
 そうであろう! 『悲劇を許せぬ者』よ!

 僅かに。
 僅かにクロウが“与えた”隙でベリオルズが力を溜めた瞬間を狙って、スカーレットがカエンマルを抜き放つ! この吾輩に光あれ、と一足飛び、ベリオルズの横をすり抜けるように駆け抜けて……スカーレットは真っ赤な疾風となった。
 かちり、と|抜いていた《・・・・・》剣を鞘に仕舞えば……其の“見る事すら叶わぬ”一撃がベリオルズの――曰く「だらしなくけしからん」――肉体を袈裟懸けに裂き。

「あ」
「もう終わりだぜ、アルゴラ。……そしてベリオルズ。あんたらの目論見も、計画も、命も。全部終わりだ」

 クロウが魔導銃を構えて、一発、二発。
 其の弾丸は違えなくピュアリィの頭を一度、胸を一度貫いて――……

「……ああ。……誰か、私の復活を願ってくれないかしら」

 最早叶わぬ其の願いを呟きながら、“神”になろうとしたピュアリィは青黒い塵となって散って行った。
 ふう、と魔導銃を下ろすクロウ……だが。

「クローウ!!! 折角吾輩がかっこ良い所見せたのに、とどめはおぬしが持っていくとは何事である!!」
「いや、あんたが斬った時点ではまだ生きてたじゃねぇか。だからだな」
「言い訳は聞かぬ!! 反省せよ! 反省!!」

 こんこんこん!
 カエンマルの柄で頭を叩かれながら、やれやれ、と真っ赤な魔王の尊大ぶりにクロウは彼女と行動し出してから何度目かの溜息を吐いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月08日


挿絵イラスト