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其れは世界を孕む少女達の|うた《スワン・ソング》

#カクリヨファンタズム #戦後 #滅詩のユリと幽銃のシズク

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#カクリヨファンタズム
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#戦後
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#滅詩のユリと幽銃のシズク


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 白の少女が身体を震わせる度、少女達の周囲に紅の華が咲く。それは内包させられた世界が少女の身体では収まりきらなくなっている証。

(……『偽物カクリヨファンタズム』がユリの中から漏れ始めている)

 黒の少女は縋る白の少女を抱き寄せながら、焦燥感を募らせる。しかし、黒の少女の裡でも、内包させられた世界が己を圧迫する。

(オレよりも、ユリの方がヤバいな……)

 黒の少女が内包させられた『偽物UDCアース』は、白の少女と同様に、己の裡を圧迫する程までに膨れ上がっている。オブリビオンになって猶、味合わされ、苦しめられる、悪魔の手慰み。それを断ち切る為に、此処まで暗躍をしてきた……筈なのに。講じた手段は寸での所ですり抜けて、糸口だけのまま、事態は幾度目かの|世界の爆散《散華》へと突き進んでいる。

「……シズクお姉様」
「ユリ……」

 寄り添う互いの身体の内側で、せかいが蠢いて、世界を紅の華で染め上げていく。



「皆様、緊急事態で御座います」

 ライリス・エルファンシア(天麟万華の欠片・f00325)が、猟兵達にそう言った。

「かねてから暗躍している猟書家達。
 その中でもカクリヨファンタズムを侵略していたオウガ・フォーミュラが危険な状況に陥ってしまっているようで御座います」

 |滅詩《ほろびうた》のユリと|幽銃《ユウガン》のシズクという二人で一組のオウガ・フォーミュラは、その身体の裡に偽物の世界を内包させられている。ユリには偽物のカクリヨファンタズムが、シズクには偽物のUDCアースが内包させられており、徐々に拡がる世界は当然少女の身体に収まるものではない。

「彼女達の身体に収まりきらなくなった世界は、彼女達の身体から溢れてしまいます」

 ただ、溢れるだけなら、まだ幾らでもこれから対処を講じることができたかもしれない。だが、これらの世界は少女達の身体を爆散させて、本来の世界をも壊してしまう。
 しかも、少なくとも本人達は悪魔達に植え付けられた病だと認識しているそれは、彼女たちがオウガ・フォーミュラ、ひいてはオブリビオンとなる以前からのものらしく、彼女達の爆散を許してしまえば、再び骸の海から彼女達は蘇ってしまう。

「どうやら、その循環を終わらせる為に二人は動いていたようなのですが、その手段に手が届く前に偽物の世界が彼女達の身体を埋め尽くすまでに拡がってしまったという次第で御座います」

 猟兵達が阻止し続けた結果、そうなってしまったのではある。しかし、猟兵ならば、猟書家に、オウガ・フォーミュラに、終わりを与える事が出来る。

「今なら、皆様であれば、彼女達を解放した上で全てを阻止することが可能で御座います」

 ユリもシズクも、共に予断を許さない状況ではあるが、より深刻なのは偽物のカクリヨファンタズムを宿すユリの方らしく、既にその身体の裡に収まりきらない世界が彼岸花の形となって世界に現れ始めている。そのため、乗り込む事は容易い。

「溢れた彼岸花畑の中に、黒い彼岸花が紛れております。
 それを探し出して、手折る事で偽りのカクリヨファンタズムの奥へと入り込むことが可能となります」

 ただ入り込めば良いわけではない。偽物の世界の奥には、その世界を維持するための「柱」としての、この世界の骸魂がいる。

「カクリヨファンタズムに存在する骸魂と同じモノではあるようなのですが……少々困った事に、この骸魂は、姿が見ることが出来ないので御座います……」

 偽りの世界の骸魂であるということは、誰にも知られていないという事。それ故、姿を見ることが出来ず、当然その攻撃も同様に視認できないというわけだ。この姿も攻撃も視認出来ない敵と戦い、倒すというのは当然ながら一筋縄ではいかない。策を講じる必要があるだろう。

「彼女達が限界を迎えれば、彼女達の身体は爆散し、溢れ出た偽物の世界により本物の世界も崩壊してしまいます。
 どうか、彼女達に安息と平穏を」

 ライリスはそう言うと、猟兵達を転送する準備を始めた。


白神 みや
 初めましてのかたは初めまして。そうでない方はお世話になっております、|白神《しらかみ》です。
 猟書家決戦ということで、ひょっこりとシナリオを。こう、限定イベントは、いっちょかみして成功のお手伝いをしたい気持ち。

 一章で偽物のカクリヨファンタズムの最奥へと向かい、二章で偽物のカクリヨファンタズムの柱を撃破して偽物の世界を壊し、三章で決着を……という流れです。
 二章のOPで触れた以上の詳細と三章の詳細は、断章に譲ります。

●お願い
 MSページはお手数ですが必ずご一読ください。
 受付期間については、都度タグにて告知いたしますので、参照ください。
 基本的には、期間中にいただいたプレイングで進行予定ですが、締切後🔵状況等によっては追加を受付る可能性があります。……が、特大繁忙期の波状攻撃を喰らっております。諸々変則進行だったりゆっくり進行になったりする可能性もあります。(できれば20本終わるまでにはとは……思っていますが)
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第1章 冒険 『異端の彼岸花』

POW   :    とにかく歩き回って探す。

SPD   :    周囲を見渡し、明らかに違う花を見つける。

WIZ   :    周囲の環境を調査し、ありそうな場所を特定する。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アリス・セカンドカラー
お任せプレ汝が為したいように為すがよい。

|奇病《偽世界》の切除及びオブリビオン因子の摘出|医術《手術》ね。
え、そんなことが可能なのかって?そりゃ、私達の知覚を離れた客観的真理はなく、故に、あらゆることは真実であり可能なのよ。なにより、人間が想像しうることは全て実現可能なわけだしね。
サクラミにオブリビオンの輪廻転生システムはあるし、システムとして存在するなら再現性はある、そうユーベルコードならね。
え、それより依頼はどうしたって?きちんと多重詠唱結界術で空間掌握して、第六感、|視力《千里眼》、|聞き耳《順風耳》で情報収集はしてるわよ。
発見したら空間の切断解体から切断部位の接続で空間ジャンプできるし



●諦観に揺れる灯籠花
(|奇病《偽世界》の切除及びオブリビオン因子の摘出|医術《手術》ね)

 アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔王少女・f05202)は視界を埋め尽くす紅の華を見渡しながら、為すべきことに思いを馳せる。
 出来るか出来ないかと問われたら、可能と言い切れる。|他の世界《サクラミラージュ》にはオブリビオンを転生させる|理《システム》が存在している。それを再現し、応用出来れば、二人の循環も止める事が可能ではないかと、アリスは目論んでいるのだ。

「そう、私の|混沌魔術《ユーベルコード》ならね」

 そう歌うように呟いたアリスの身体が揺らぎ、霞む。ユーベルコードにより|アリスでありながらアリスでない存在《人工未知霊体》へと変じたアリスは自身を拡張する。
 アリスが扱う混沌魔術は、人間が想像しうることは全て実現可能。この偽りの世界に寄り添うように、魔術結界を重ね、掌握を試みる。

(流石に、全部掌握とまではいかなかったけど……それでも、目的は探せたわね)

 重ねた結界の内に、目標を捉えたアリスは、掌握した結界内を渡り、その漆黒の彼岸花を手折った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
カクリヨでは日常的に世界の危機という話だが。今回のは特別に……か
放ってはおけないし、どうにか食い止めるとしよう

しかし、この大量の華の中から黒い彼岸花を探せと来た
いっそ纏めて斬り飛ばしてしまえば一本くらいは……って訳にもいかないか
下手に手を出せばどんな悪影響がでるかも分からないしな

とはいえ地道に探すのも制限時間が気になるところ
ならば出来るだけ可能性の高い場所を絞りたいが……
これは猟書家から溢れ出した華。恐らく無意識下で起きている事象だろうが、何にせよ俺達猟兵の介入は望んでいない筈
つまり単純に探しても見つからないような場所。通常であれば意識しないような場所だろうか
さて、条件に合致するのは……と




(カクリヨでは日常的に世界の危機という話だが。今回のは特別に……か)

 夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は、視界に溢れる紅の華に溜息をついた。
 纏めて斬り飛ばす事が出来れば、その中に一本くらい紛れてそうなものだが、流石にそれは後先を考えると得策ではない。さりとて、地道に探すには、この広さと、この世界を内包する少女の身体の限界を考えれば時間が足りない。

(下手に手を出せばどんな悪影響がでるかも分からないしな)

 と、なれば、可能性が高い場所を絞り込みたいところである。鏡介は考えを巡らす。

(恐らく無意識下で起きている事象だろうが、何にせよ俺達猟兵の介入は望んでいない筈)

 で、あれば恐らくは単純に探しても見つからないような場所。通常であれば意識しないような場所に、ひっそりと在るのではないか。そう判断した鏡介はその条件に合致する場所を見出そうと周囲を見渡し、幾つか辺りをつけてそちらへ歩を進めようとする。

「……おや」

 そうして踏み出した足元に、漆黒の花が揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御簾森・藍夜
【朱雨】

…身の裡で、世界が
どれ程苦しいのかなど、察するのさえ失礼か

…これが溢れた世界か
普通の風景なら美しかったが…いけない、黒い彼岸花を探さなければ
―心音、おいで。一緒に行こう?お前の目と、そうだな耳も頼りだとも

心音を抱いてジャンプで駆け上がり空中浮遊で鴉を差し広げゆっくりと降下

勘と心音頼りで赤い彼岸花の中から一点の黒を探す

赤い中に黒は目立つかと思ったが、存外目立たんな…
心音、見えるか?
ん?どこ―あ、あれか
心音、少し掴まれ
傘の開きを調整して降下し、花の近くへ心音を下ろす
花を傷つけないようにしながら、黒い彼岸花を確認し
あぁ、それだ

…暗いな
心音、気をつけて
はは、心配はいらん
俺がいてお前がいるからな


楊・暁
【朱雨】

身体の内に世界を内包…?
…ってどういう事かさっぱり分からねぇけど
世界の危機だってことは分かった
向かう理由なんざ、それだけで十分だ

うわ…すげぇ…これ全部、彼岸花か…!
この中のどこかに、黒い彼岸花がある―んだよな?
でも、どっから…

差し出された手を取って
行くってどこに…わっ…!
浮遊に吃驚して思わず抱きつき

集中力を探索にだけ集め
狐の視力と聞き耳で朱の中の黒を探す
んー…あ、あった!藍夜、あそこ!
頷きぎゅっと抱く力込め

降ろして貰ったら、ありがとう、と礼を
踏まねぇようにしながら近づき
これ…だよな?
藍夜と見合ってから、慎重に手折る

…あの先が、幽世か…?
ああ(頷き
隣に藍夜がいるんだから、怖くなんてねぇよ




「うわ……すげぇ……これ全部、彼岸花か……!」

 一面に広がる紅の華に、楊・暁(うたかたの花・f36185)が思わず感嘆の声をあげた。身体の内に世界を内包しているという事がどういう事かはよく分からないが、世界が脅かされているということは分かる。だからこそ、此処へ来たのだ。

(普通の景色なら美しかったが……)

 その傍らで御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)も景色に息を飲んだ。身の裡を世界に侵される苦しみ。それを察することすら自分には難しいのだろうと、そう思いを巡らせる。

「この中のどこかに、黒い彼岸花がある――んだよな? でも、どっから……」

 紅の中に漆黒を探すのであれば、容易く見つかるだろうと思っていた暁は、思っていた以上に広大な紅にやや戸惑う様に藍夜を見上げた。その様に藍夜は知らず笑みを浮かべて手を差し出し、本人以外は彼だけが識る名で、暁を呼ぶ。

「――心音、おいで。一緒に行こう」
「行くってどこに……」

 訝しむように首を傾げながら暁が差し出された手を取ると、藍夜は流れるように抱き寄せ、地を蹴り、宙へ舞う。思わぬ中空への浮遊に驚いた暁は、落ちぬようにと今の自身より遥かに成熟した藍夜の身体にしがみつく。

「お前の目と……そうだな、耳も頼りだ」

 愛用の黒傘を広げて降下速度を落としながら、藍夜がそう暁に声をかける。その声を耳にした暁は、藍夜の身体越しに見える景色をその明けの色の瞳に収め、朱色の中の漆黒を見つけ出そうと集中する。

「……あ、あった! 藍夜、あそこ!」
「ん? どこ――あ、あれか」

 暁が視線で示したそこへ向けて、藍夜は傘の開き具合を調節しながら、無用な華を踏み折らぬよう地へと降りる。藍夜のその意図は、暁も思った事。

「ありがとな」

 だから、その事と、ここまで連れてくれたこと、それらへ短くだが、はっきりと礼を口にし、先程空から見つけた漆黒の華のもとへと歩を進める。

「これ……だよな?」
「ああ、それだな」

 互いに顔を見合わせ、確認すると、どちらからともなくその華へ手を伸ばし、そっと手折った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葛城・時人
【花園】

惨いなと思う相手が多いね…
今回もだ
酷い目に合った上にオブリビオン化だなんて


けど惨さと世界の交換なんてさせてはならない
彼らの意思にも反するはず
「必ず阻止を」
意思を伝えあい即UC白燐同期翔詠唱

俺の手から大きな|白燐蟲《ククルカン》が舞い上がる
「急ぐより丹念にだよ!」
視界を同期させ空を舞う

赤の中の黒は見辛いね
けど空からなら…ほら
「キアラ!そこから右20mぐらい先!…一際濃い紅のとこに!」
「陸井、通り越した!戻って左奥だ!」

一人一本で三本
最後の一本は…ああ、一番遠くに
ククルカンを待機させ皆に伝えて移動を
二人につけた蟲に呼応して三人同時に折り取って
さぁ、これで道が開くはず

必ず彼らに一時でも安息を


凶月・陸井
【花園】

本当に、どの世界でも酷い話ばかりだ
此処はとにかく循環を阻止する手伝いを
仲間達も同じ思いだと思うから
「あぁ、ちゃんと止めてあげよう」

皆と一緒に行動開始
すぐに【水遁「霧影分身術」】を使用し
分身して倍の手数で黒い彼岸花を探そう
「よし、そっちは頼んだ」
もう一つの分身と違ってこの水遁なら実体もあるから
見つけた彼岸花の傍に待機させ手折る準備をして
タイミングを合わせる為にも俺自身は皆の探索を手伝おう
「こっちは一本見つかったよ。手伝いに来た」

自分で見つけられたらそれはそれで良し
見つけられなくとも時人やキアラさんが居てくれる
絶対に皆で見つけて一緒に進もう
「これで進めるな。二人とも、準備は良いか?」


キアラ・ドルチェ
【花園】

私あんまり物探し得意じゃないんですよね…探索特化ユーべルコードもありませんし

ただ赤の中に黒が混じっていれば分かるかな?
高高度から眺めてみたり?
と言う訳でスターライト・エアリアルでぴょんぴょん高い所に移動して、彼岸花畑を眺めます
一応持参した双眼鏡も活用して全体見渡せないかな?
「え。時人さんどっちですー!?」
「陸井さんありましたー?」
…むむむ、中々探すの難しい(ぴょんぴょんティンクルスター上で跳ねながら

3本見つかったら、皆で一斉に折って…偽りのカクリヨファンタズムの奥へ!
彼岸花の花言葉は「あきらめ」…その身に宿す偽世界を壊す事を諦めているのですか?
ならば…猟兵が破壊してしんぜましょうっ!




「惨いなと思う相手が多いね……」

 葛城・時人(光望護花・f35294)が零した呟きには、遣る瀬無さが満ちる。猟兵となって一年を超え、様々な事態と向き合ってきた。その多くがそう思わざるを得ない出来事だった。

「本当に、どの世界でも酷い話ばかりだ」

 凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)も厳しい表情で同意を示す。

「彼岸花の花言葉は「あきらめ」……」

 二人の傍らでしゃがんで紅の華を見つめながら、キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)は呟く。件の猟書家は、自分達の裡の世界を「殺す」為に暗躍してたとは言うが、その華の花言葉は、それとは裏腹んであることに小さな違和感を抱く。

「その身に宿す偽世界を壊す事を諦めているのならば……猟兵が破壊してしんぜましょうっ!」

 キアラは飛び跳ねるように立ち上がると、そう言いながら二人に同意を求めるように視線を向ける。
 彼女達が背負う苦難は、確かに惨いものだ。しかし、世界と引き換えて、更に多くの者達を苦難に堕として良いものではない。その哀しい循環を、苦難を、終わらせる事が、|猟兵《自分達》に出来る事なのだ。

「とはいえ、私あんまり物探し得意じゃないんですよね……探索特化ユーべルコードもありませんし」

 と、キアラは困ったように二人を見る。その視線を受けて、時人と陸井は、探索特化ではないが、と言いながらユーベルコードを発動させ、時人は|白羽の白燐蟲《ククルカン》を、陸井は自身の分身を召喚する。

「これで探すだけなら手も増えたし、手分けして探そう」
「そうだね。ククルカンを二人に連れて行ってもらえば、離れてても大丈夫だしね」
「探すの難しそうだけどがんばります!」

 そう言い交わすと三人は其々の手段で探し始める。
 時人は喚び出した|白羽の白燐蟲《ククルカン》の背に乗り、陸井は分身と手分けをし、漆黒の華を探し始める。そして、探索に向いたユーベルコードが無いと漏らしていたキアラは。

(高高度から眺めてみたら見つかったりするかな? 赤の中に黒が混じってたら目立ちそうだし)

 と、星を呼び出して足場にし、軽やかに跳ねるように登っていく。

「――キアラ! そこから右20mぐらい先!」

 星の足場から持ってきていた双眼鏡で紅の絨毯を見下ろしていたキアラの肩に乗っていた、小さな|白羽の白燐蟲《ククルカン》から時人の声がする。

「え。時人さんどっちですー!?」
「――一際濃い紅のとこに!」

 言われてその方向に双眼鏡を向けると確かに、紅が濃い一角だと思った所の中央に確かに漆黒が花開いていた。

「――キアラさんも見つけたようだね」

 そこに降り立ったキアラの耳に聞こえるのは陸井の声。|白羽の白燐蟲《ククルカン》が互いの声を中継してくれるお陰でこうして三人は離れていても共に行動している時と変わらぬように会話が出来ている。

「はいっ! 陸井さんもありましたー?」
「――ああ、ちょっと変則的な場所だったけどね」

 陸井が見つけた華は、透明な水を湛えるその中に沈んでいた。そして、時人は空の上の浮島に。三人其々が漆黒を見出した。

「二人とも、準備は良いか?」
「準備オーケーです!」
「じゃあ、皆で同時に、だよ」

 三人は|白羽の白燐蟲《ククルカン》を通じタイミングを揃え、漆黒を手折った。手折った華から立ち上る揺らめきが、彼等に道を示す。

「必ず彼女達に一時でも安息を迎えさせよう」
「あぁ、ちゃんと止めてあげよう」
「いざ、偽りのカクリヨファンタズムの奥へ!」

 開かれた偽りの世界への道を三人は踏み出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『大災亥』

POW   :    見えざる殺意
単純で重い【不可視状態になってからの踏みつけ】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    吹き荒れる針の嵐
全身を【超硬度の鉄塊に、天候を鋭い針の嵐】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ   :    街を呑む悪意の炎
レベル×1個の【生物を追尾し捕食する、猛獣の姿をした悪意】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。

イラスト:ぽにカス

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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は照崎・舞雪です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●華絨毯に座す不可視の御柱
 漆黒を手折り導かれたその先にも、紅の華絨毯が広がっていた。しかし、それまでと異なるのは、其処に確かに「なにか」が居るという感覚。にも関わらず、視界には何も映らない。
 
 ――この骸魂は、姿が見ることが出来ないので御座います……。

 送り出される前に語られた言葉が過る。合点がいったと周囲を観察すれば、華絨毯に不自然な箇所がある。踏み散らされたような箇所など、慎重に観察すれば数多にそれは見つかる。
 姿が見えないにも関わらず、身体を揺らすような感覚がする。おそらくそれは思い違いではなく、この偽りの|世界《カクリヨファンタズム》に認識されぬ骸魂が咆哮をあげたのだろう。
 華絨毯に散らばるそれらのの糸は、幾重にも縒り手繰られて、猟兵達が活路を見出す導となるだろう。

 猟兵達は各々に偽りの|世界《カクリヨファンタズム》の核となる、姿が見えぬ骸魂と対峙する。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ汝が為したいように為すがよい。

|聞き耳《エコーロケーション》に第六感、多重詠唱結界術による|情報収集《空間把握》に索敵魔術。後、読心術。見えない相手を捕捉する手段ならいくらでもあるわよ。
ふむ、なんか重いのが上から降ってくると、なら、|多重詠唱結界術カウンター《リフレクション》で反射いたしましょう。む、結構割れた?地形破壊攻撃だったか、だがここからは|高速詠唱早業先制攻撃《ずっとこちらのターン》、|重量攻撃、凍結攻撃、封印術、マヒ攻撃、気絶攻撃、息止め《タイムフォールダウン、時間質量の解放で時を凍結させ、何が起きたかわからぬ内に息の根を止めてあげましょう》



 見えない敵が「居る」であろう方向を見据えて、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔王少女・f05202)は自信のある表情で微笑む。

(見えない相手を捕捉する手段ならいくらでもあるわよ。)

 空間の把握と掌握を得手とするアリスだからこそ、視界に頼らない索敵と捕捉するのは容易い。故にアリスは踊るようにその場から移動する。その数瞬の後、アリスが立っていた箇所の華絨毯が土埃と共に華を撒き散らす。

(ふむ、なんか重いのが上から降ってくると)

 そう思いながらアリスはもう一度ステップを踏むようにくるりと場所を変えると、再び土埃と華の破片が舞うと共に、轟音が時間差でふたつ。一つは、見えぬ敵の攻撃が地を抉った音。そして、もう一つは、アリスが自身の周囲に展開した結界が反射した音。己の攻撃をそっくりそのまま反射された見えぬ敵が華絨毯を散らした。

「(結構割れた? 地形破壊攻撃ってことなら……)
 ――|望む未来を紡ぐ《ハッピーエンド》を齎す力の創造を」

 状況から攻撃の傾向を読んだアリスは己の|混沌魔術《ユーベルコード》を展開し、攻撃を矢継ぎ早に重ねていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
普段なら一面の華っていうのはちょっとした絶景と言えなくもないだろうが……来るか

敵本体が不可視といっても、奴が動く事によって起きた事象は見える
それに音や気配など、視覚以外んから得られる情報も多い
大切な事は心の目でみることだ

……とは言え不可視の敵から放たれる攻撃を刀で受けていくのは少々危うい。受け方を間違えれば結構なダメージを受けそうだしな
一旦は少し余裕を持って大振りな動きで回避しつつ動きを見極めてから、澪式・漆の型【居待】の構え

利剣を居合で構えて、敵の攻撃が放たれる前に抜刀攻撃。ダメージを与える事で勢いを削いでから、攻撃を食らう前に回避
落ち着いて同じ動きを繰り返して、確実に攻撃を加えていこう




(普段なら一面の華っていうのはちょっとした絶景と言えなくもないだろうが……)

 夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は、再びの視界を埋める華を眺めつつ、状況を把握しようとする。
 視界に収めることの出来ない敵とは言うが、生きて動くモノであれば、それによって起きる事象までは隠し通せない。

(――大切な事は心の目でみることだ)

 鏡介は、破魔の力を宿す利剣を音もなく抜き放つと、刀と己を一体化させるように、構える。刀まで一体となった身体で、周囲の気配を読み、身体を動かす。しばしの間を置いて、それまで立っていた地面が、土煙をあげて抉られた。

「なるほど。受け方を考えないなければ、刀で攻撃を受けるのは少々危ういか」

 そう呟くと、鏡介は刀を構えなおす。それは、彼の|研鑽してきた剣術の極致《ユーベルコード》の一つ。

「『寄らば斬る――澪式・漆の型【居待】』」

 二度目の攻撃が降ってくるよりも早く振るわれた横薙ぎの一閃が、見えぬ敵に確かな傷を与える。見えないながらも確かな手応えを感じた鏡介は、攻撃を喰らわぬよう回避をしつつも堅実な動きで剣閃を重ねていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

楊・暁
【朱雨】

呼ばれ振り向き腕の中へ

藍夜の雨をじっと眺め
見えねぇ…けど、確かにいるんだよな?
なら集中力高め聞き耳で索敵
狐の聴力舐めんな
華踏む微かな音でも捉えてやる…!
ああ…聞こえる…
…!藍夜、あっちだ!(音の方指さし

武器横に構えUC発動
極力隙間なく戦場全体を埋める様に絶陣展開
これならどこに居ようが
身体が鉄塊だろうが関係ねぇ
どれかの陣がお前を食らって
内から苦痛で浸食してやるよ…!

綺麗?(口端上げ
そりゃそうだ
取り零して藍夜に被害出ねぇように
精密に紡いでるからな

敵の攻撃は極力見切り
無理ならオーラ防御
庇われれば、無茶しやがって…!と更に戦意湧き

藍夜の傘の下なら何にも怖くねぇし勇気も湧く
全力で相手してやる…!


御簾森・藍夜
【朱雨】
見えない敵…厄介なことをしやがって
―心音、おいで。と隣の心音に呼びかけ抱き締め傘の下へ
もうすぐ雨が降る
UC
雷導かれる先にこそ、見えないはずのものがいる…と
抜かせ。心音に何かされてたまるかってんだ
見えない?どこにいるかだと?
花の荒らされた位置付近、にはおそらくいる確率が高いだろう
だが移動し続けるはず…
ある程度の目ぼしは付けて雷を落としたが、大当たりならば最良だが
…心音、聞こえるか?ずっと追っているだろう、音を

心音が示した方に指を鳴らして落雷を

見えぬ敵だろうが、心音には指一本触れさせない
生憎猟銃もここにある―さぁ、狩りの時間だ

心音の絶陣はいつでも美しい。よく知ってる

敵の攻撃から心音をかばう




(……厄介なことをしやがって)

 事前に伝えられていた不可視の敵。その言葉が偽りでも喩えでもなかった事に、御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)は口に出さずに悪態をついた。
 その傍らでは、楊・暁(うたかたの花・f36185)が厳しい表情で「敵」の気配がする方向を見据えている。

「心音、おいで」

 藍夜に名を呼ばれ振り向くのとほぼ同時に、暁は広げられた傘の下、その傘の主のより近くへと引き寄せられる。臨戦態勢の最中に何をと不思議そうに見上げれば。

「『心配するな、』もうすぐ雨が降る」

 その言葉と共に、ぽつりぽつりと、晴れているはずの空から雨が降る。雨の色は|担い手《藍夜》の名にもある藍の色。傘の元に居る二人の周囲には優しく降り落ちる雨が、一角だけ異なっている。その降りようは、華絨毯をも貫き散らすような弾丸さながら。

「……見えねぇ…けど、確かにあの辺にいるんだよな?」

 藍夜が喚び降らした雨を傘の下でじっと見ていた暁はそう呟くと耳に意識を集中させる。そんな暁の索敵に抗うように、空からふる雨が鋭い針へと塗り替えられていく。

(――狐の聴力舐めんな……!)

 華踏む微かな音でも、否、息遣いでも何でも捉えてやる。その毅き意思が、後押しをする。

「……! 藍夜、あっちだ!」

 その耳が捉えた音の方向を指し示すと同時に、暁はそのまま流れるように武器を構える。

「『来たれ、絶陣……!』」

 鋭い声と共に戦場を綾なしたのは、嘗て仙人が生み出したという陣に準えた十の|仮想世界《絶陣》。

「これならどこに居ようが、身体が鉄塊だろうが関係ねぇ。
 どれかの陣がお前を食らって内から苦痛で浸食してやるよ……!」

 そう宣言するように声を張る暁の傍らで、藍夜が笑みを浮かべる。

「心音の絶陣はいつでも美しいな」
「そりゃそうだ。取り零して藍夜に被害出ねぇように精密に紡いでるからな」

 賞賛に口端を上げて応える暁に藍夜は猟銃を掲げ、先程示された方へと向ける。

「――さぁ、狩りの時間だ」

 絶陣に飲み込まれ苦痛に心身を浸食される見えない敵に、銃弾が撃ち込まれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キアラ・ドルチェ
【花園】

不可視の敵は厄介です…って、陸井さんナイスアイディア!

「時人さん、はいっ、参りましょう!」と両手に一対のケルト十字型スティレットを構えて大災亥へ向け突撃!
悪意の炎は当たる直前まで軌道を見極め、引き付けた所を躱していきます。それでも避けられなさそうなのは【第六感】で回避!

陸井さんのフォローと敵の気配と呼吸、体重が掛かる事によって歪んでいる絨毯の皺の位置を確認し、接近できたと思ったら【暗殺】術でスティレットを突き立てます
「ドルチェ流暗殺術奥義…白天甘生剣!」
…まあ勝手に言ってるだけですけど>ドルチェ流~

これで魔法的追尾紋を付与された貴方に逃げる場所はない!
自然に還れ、オブリビオン
然様なら…


凶月・陸井
【花園】

成程、不可視は確かに脅威だ
対策がなければこっちは一方的に攻撃されるからな
だけど、今回は勿論秘策ありだ
さっきは二人が探す目になってくれたから
「今度は、俺が二人の目になるよ」

戦闘開始と同時に【水遁「水獄檻」】を使用
半径129m内に縦横無尽に水の苦無を放ち
索敵と敵の針の嵐への防御として仲間達の全周を覆う
「悪いが。此処は俺達の範囲だ」

敵へ直接攻撃が当たれば勿論手ごたえが
直撃せずとも戦場を覆う苦無の水が位置を教えてくれる
いくら無敵とはいえ動けないのならそれですぐに分かる
敵を見つけて、水滴の目印を付けたら水獄檻を解除して
俺は二人に任せればいい
「二人とも、止めは頼んだ…全力でやっちまえ」


葛城・時人
【花園】

見えないのは厄介だな…
戦場に飛び出す前に相談を

ククルカンで場を覆い尽くして形を際立たせるか?
グリモア猟兵は何と言ってた?

焦る俺に、陸井が伝えた作戦は見事の一言
「OK!それで行こう」

「よし、キアラ、用意はいい?」
言ってからUC光蟲の槍詠唱

陸井の水獄檻が場所を特定し、針を防ぐ間…
俺は唯ひたすら、全霊で集中を

相棒へのこの上のない信頼を以って
針の嵐が吹き荒れてもどれ程痛くても微動だにせず
渾身で集中を

「今は遠くても」
俺が信じて焦がれた光が俺の中から沸き上がる
「力の記憶は…俺の中に!」

陸井が水獄檻を解除した瞬間間髪入れず槍を放つ
追撃の追撃として蟲たちを追わせ
「もう邪魔はさせない!通らせて貰うぞ!」




「二人とも、ちょっといい?」

 葛城・時人(光望護花・f35294)が、共に立つ凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)とキアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)に声をかける。

「はい? 時人さん、どうされましたか?」

 首を傾げるキアラと、ごく自然に時人に先を促す陸井。二人の反応を見て、時人は口を開く。

「うん。見えないのは厄介だな……って思ってね。先に相談しておきたかったんだ」
「確かに……」

 やや厳しい顔切り出す時人に、キアラも頷いた。しかし、切り出した時人はそのまま黙してしまう。

(ククルカンで場を覆い尽くして形を際立たせるか? グリモア猟兵は何と言ってた?)

 話題を切り出そうとするも、言葉も策もまとまらない。自分とはすこぶる相性が悪い敵。ならばどうすればいい……? 悩めば悩むほど、焦りが募る。

「時人。確かに対策がなければこっちは一方的に攻撃されるけどな。
 今回は秘策あり、だ」

 そんな時人に、相棒の声が差し伸べられる。頼もしい相棒は、一人袋小路に堕ちそうになった時、いつも手を差し伸べてくれる。

「今度は、俺が二人の目になるよ」
「……目、ですか?」

 キアラが不思議そうに問うと、陸井は穏やかに頷いて返す。

「ああ。さっきは二人が探す目になってくれたしね」

 先程まで焦りに染まっていた時人も、いつもの調子を取り戻していた。提案された案は純粋に見事だと思えたし、当然自分一人では至らなかったもの。そう。此処に立つのは、自分一人ではない。信頼する仲間が、共にいる。

「OK! それで行こう」

 三人は頷きあうと、不可視の敵と対峙する。



 最初に動いたのは、陸井。

「行くぞ。
 『閉じろ、水獄檻。』」

 その言葉と共に、水苦無が何処からともなく現れ、三人の周囲を乱れ舞った。
 その傍らで、時人が静かに|埒外の力《ユーベルコード》を起動させ、その手に淡く光る光蟲の槍を携える。

「陸井さんナイスアイディアです!」

 キアラが陸井の作戦を目にし、感嘆の声をあげた。水苦無は例え不可視の敵であろうと、当たらぬということはなく、当たればその動きで場所を指し示してくれる。陸井の技に抗う様に、見えぬ何かで水苦無が貫かれていくが、それでもその居場所は水苦無が明確に指し示していた。

「二人とも、止めは頼んだ……全力でやっちまえ」

 その言葉に、それまで発動させ手にしていた光蟲の槍に力を籠めるために集中していた時人が、両手にケルト十字の|細身の短剣《スティレット》を手にしたキアラが、それぞれに動く。

「今は遠くても」

 力を重ねるようにことばを紡ぐと、時人の裡から力が沸きあがる。それは、かつてから、そしてこれからも、彼が信じ焦がる光。

「力の記憶は……俺の中に!」

 槍が一際光を放つと同時に時人は槍を放った。水苦無に示された先に槍が届くと、そこに光の柱が立ち上る。時人の指示で、|白羽の白燐蟲《ククルカン》の群れが、追撃のため共に舞う。
 それを追うように、滑るように地を駆けるキアラ。水苦無と光の柱、そして華絨毯の歪み等の地形の違和感。それら全てを以て見えざる敵の、カタチを見極める。

「ドルチェ流暗殺術奥義……白天甘生剣!」

 キアラの|暗殺術《ユーベルコード》による超高速の刺突連撃が、見えざる敵を斬り刻む。
 暫しの間を置いて、轟音が地に響く。それは、不可視の御柱が、倒された証左だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『滅詩のユリと幽銃のシズク』

POW   :    滅びの詩
【周囲を消滅させる効果を持つ、魔法の弾幕】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    幽銃(ユウガン)
レベル分の1秒で【指先から膨大な魔力で「幽銃(ユウガン)」】を発射できる。
WIZ   :    記憶の詩
【あなたの過去を写し出す「トラウマ」、】【あなたの記憶を回想させる「歌」、】【膨大な魔力で「過去と同じ背景」】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。

イラスト:あさぎあきら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はノラ・ヘルブラウです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 華絨毯の花弁が天に舞う。それは、偽りの世界が解けていく光景。
 逆巻く花が、猟兵達を偽りの|せかい《カクリヨファンタズム》から、正しき世界へと導き送り出す。

●弄ばれし少女達の|絶唱《スワン・ソング》
「ああっ……! お姉さま……ッ!」
「ユリ!!」

 白の少女の身体が、びくりと跳ねる。黒の少女がその身体を抑えつけるように抱きしめた。

(……ユリがマジでヤバそうだ)

 痙攣するように震える白の少女の身体を抱きしめながら、同じように己の裡に膨らむ世界に抗う黒の少女は焦燥感に苛まされる。抱きしめた身体が幾度も跳ね震えた後、すっと力が抜ける。

「ッ?! ユリ……!!」

 その時が、来てしまったのかと黒の少女が白の少女を掻き抱きながら叫んだその時。周囲に咲き乱れた紅の彼岸花が一斉に散り、花弁を空へと巻き上げた。

「なんだ、これは……」
「きれい……」

 今までに見たことのない光景に、黒の少女が声を漏らした腕の中で、白の少女が呟く。その様子は先程までのような憔悴した様子は無い。

「シズクお姉さま、不思議です……わたくしの中の『偽物カクリヨファンタズム』が……」
「何ッ?! ってことは……」

 白の少女のが告げた|「今までならあり得ない事態」《内包された世界の消滅》に、黒の少女は周囲を見回す。空に巻き上がる花弁、天地を繋ぐ柱のようになった箇所が、複数見受けられる。

「そうか、猟兵か……」

 猟兵。自分達へ|死《終わり》を与える、生命体の埒外であり、世界に選ばれたもの。彼等が、自分達の居場所を嗅ぎ付けたのだ。

「オレたちを、|終わらせ《ころし》に来たのか。
 終わらせねぇよ……まだ、オレたちは……ッ!」
「わたくしたちは、まだ……」

 少女達は、互いに手を取り合って、深紅の華柱の方を見つめる。

「オレは|幽銃《ユウガン》のシズク」
「わたくしは|滅詩《ほろびうた》のユリ」

 順に名乗るその目に宿るのは、目の前に迫る猟兵達へと抗わんとする意思。

「オレたちは、生きるために、お前たちを倒すッ!」
「わたくしたちは、生きるために、あなたがたをたおします!」

 そう猟兵達へと告げる声は、綺麗なユニゾンを奏でた。
夜刀神・鏡介
あんた達の事情に、思う所がない訳じゃない……が
俺達はどこまで行っても戦うしかない。せめて、二度と戻らないように終わらせよう

神刀の封印を解除して、黎の型【纏耀】を発動。神気を強く纏って真の姿に変身。戦闘能力、身体能力を大きく強化

この2人に遠距離戦をやるのはよろしくない。どうにか攻撃を掻い潜って接近戦に持ち込もう
弾幕の薄い所に移動しつつ、破魔の力を込めた斬撃波で弾幕を切り裂いて一気に接近
首尾よく距離を詰めたら、常にユリかシズクのどちらかのそばで立ち回る
通常であれば奴らが誤射するような事もあるまいが、そこは俺がかき回していく
万が一を考えれば下手に攻撃はしづらくなる筈。上手く連携を崩して攻めよう




 紅の華柱のうちの一つが解け、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)の姿が現れる。
 寄り添い立つ少女達へと歩を進めながら、鏡介は口を開く。

「あんた達の事情に、思う所がない訳じゃない……が、俺達はどこまで行っても戦うしかない」

 過去から現世を塗り替えんとする|猟書家《オブリビオン》と、現世を守る為に世界に選ばれし猟兵。相容れるわけはなく、戦うしかない存在同士なのだ。であれば。

「せめて、二度と戻らないように終わらせよう」

 鏡介は、腰に佩いた神刀を静かに抜く。刀が纏う神気が刀を握る腕を伝い鏡介を包み込むと、その姿が変わる。それは、彼の真の姿。

「近寄らせるな……ッ!」
「はい、お姉さま!」

 放たれる神気に危機を感じたシズクの鋭い声に、ユリが力を展開する。その二つ名でもある滅びの詩が、鏡介をその周囲諸共に消し去らんと、襲い掛かる。
 その|滅詩《うた》の弾丸は、破魔の力を宿す神刀で一刀のもとに切り伏せられた。その勢いのままに、鏡介は地を蹴る。

 常を遥かに上回る力を引き出す行いは、限界を超えたものではない為に、彼に代償を強いる。己の|寿命《いのち》という代償を。身体の裡を灼くような、何かが少しづつ失われていくような感覚を抱えながら、鏡介は二人へと攻撃を重ねていいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

ならば私は生きるためにあなた達の|運命《エンディング》を|覆《ブレイク》しましょう。
あらあら、人の過去に迂闊に触れるものではないわ。ねぇ、シズク、あなたなら銀髪妖狐の前世返りで分かるでしょう?
|リミッター解除、限界突破、オーバーロード《ほら『あの子』が目覚めたわ》。私がこの手で討った最愛の|吸血姫《恋人》にして|闇の種族《親友》の|『あの子』《アリス・ロックハーツ》が。あの日、精神寄生体となって私と一つになった『あの子』が。
ああ、私達はエナジーを糧にする者、周囲を消滅させる効果を持つ魔法の弾幕も膨大な魔力で放つ「|幽銃《ユウガン》」も|多重詠唱結界術、大食い、魔力吸収、魔力供給、エネルギー充填《おいしいごちそうでしかないわ》。
さて、二人の|廃棄された時間質量《オブリビオンの構成物質》を|元の種族《人間》のモノに改竄して戻しましょう。奇病もその構成物質を改竄することで|医術《治療》できる。
では、あなた達の世界に繋がり再会出来る時までごきげんよう。




「ならば私は生きるためにあなた達の|運命《エンディング》を|覆《ブレイク》しましょう」

 その言葉と共に、別の華柱が解けると、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202)がそこに居た。

「あん? お前一人で俺達を凌駕出来んのかよ……ッ!」

 シズクが、未だ周囲で逆巻く紅の花弁を纏うアリスへと向かって吼える。激昂する姉を抑えるように、ユリがそっと寄り添った。

「可愛らしいわね、あなた達は」

 対照的にアリスは笑みを浮かべる。その笑みの裏に、捕食者の愉悦めいたものが過ったように見えたのは、果たして幻覚か。

「――だから。ほら『あの子』が目覚めたわ」

 アリスの身体が陽炎のように揺らぎ、枷を解き、限界を超克する。
 その身体に重なるように、もう一人。アリス自身とよく似た面差しの少女の姿が現れる。此処に居るアリスの裡で一つになっている、もう一人の|『アリス』《アリス・ロックハーツ》。

「……何なのですか、それは」
「あらあら、人の過去に迂闊に触れるものではないわ。
 ねぇ、シズク、あなたなら銀髪妖狐の前世返りで分かるでしょう?」

 ユリが絞りだした声に返す声も二人分。こちらもまたユニゾンを奏でるのだが、何処か二人を揶揄するような響きが宿る。名指しされたシズクが、それを察してか舌打ちをした後、言葉を返した。

「ああ、言いてぇことは察してやるよ。だからってな。
 オレたちが」
「わたくしたちが」

 二人が手を取り、相対する|アリス《アリス達》を見据える。

「屈する理由にはならねぇんだよ!」
「屈する理由にはなりません!」

 叫ぶ声と共に、展開されるのは、記憶を抉る魔力と詩の多重奏。回想からトラウマを想起させ、その力を封印せんと襲い掛かる。しかし|アリス《アリス達》はそれすらも、余裕の笑みを浮かべて、喰らい尽くし。

「私達はエナジーを糧にする者。
 ……だから、あなた達のその抵抗も、おいしいごちそうでしかないわ」

 そうして浮かべた艶やかな笑みは、今度は幻覚などではなく捕食者の愉悦を宿していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

楊・暁
【朱雨】
戦場の隣でまた誰か倒れた
けど立ち止まってたら俺が死ぬ
必死で振るう剣、編む術
震える切っ先で誰かを殺す度に増える返り血
休みなく次の敵―似た年頃の子供兵を屠る
我武者羅に闘いどうにか生き残り
でも何も護れなくて成せなくて
両手は血に染まって―何も、残らねぇ

その手の内に、ぬくもり

荒れる心が忽ち凪いでいく
落ち着く温かさに縋る様にぎゅっと指搦め
気づけば藍夜の傘の内

…藍夜
…ごめん

藍夜の言葉が心に点る

うん
もう俺は独りじゃない
この手に掴めたものがある
傍らに寄り添うひとがいる

だから俺は、もう
絶対に、諦めねぇんだよ…!

覚悟決め高速詠唱でUC
いい夢見させてくれたお礼に、俺からもくれてやる
…せめて、最期には望む景色を


御簾森・藍夜
【朱雨】
生きていたいと願う“だけ”は、悪ではない
だが俺達は…お前達のその希望を、通してやることが出来ない

トラウマは幼い俺を引き取り育ててくれた祖父の死
目の前で上体食われて死んだ、救えなかった人

真っ赤で、
でも、俺は―

俺には、守りたい人が出来たんだ
哀しみよりも優先したい人が
心音
心音、赤い雨はお終い
―おいで、傘の裡に居なさいといつも言っているじゃないか
手袋を取った左手で白い心音の手と繋ごう
苦労も悲しみも、努力も苦悩も全部あってお前なんだ

生きてくれてありがとう
出逢ってくれてありがとう
何度でも言う…生きて、俺と出逢ってくれてありがとう
もう独りでなんて戦わせない

二人纏めて、スナイパーの一発で穿つUC




 次いで解けた華柱のもとに立つのは二人。

「生きていたいと願う“だけ”は、悪ではない」

 穏やかな声音でそう少女達に言うのは、御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)。だが、と、藍夜は言葉を続ける。

「俺達は……お前達のその希望を、通してやることが出来ない」

 それは、世界を守るから、だけではない。一時は無為に生きてた自分に生きる理由があるからだ。これは、生きようと足掻く者達の戦いなのだと、心の裡で思う。
 その傍らには、楊・暁(うたかたの花・f36185)が無言で少女達を見つめる。彼もまた、一時は生きようと足掻くことを後回しにしていた身だ。しかし、今は、それが愚策である事を知っている。無意識に手が己の左頬を撫でた。

「生きようとするが何が悪いと言うの?! わたくし達はただ……!」
「ユリッ! オレの力も使え!
 こいつ等は猟兵だ。ハナっから話になんかなりゃしねぇんだよッ!」

 泣きそうな顔で訴え叫んだユリに対し、シズクが鋭い声をあげる。シズクの魔力がユリの詩に更なる力を与え、二人を包み込む。



 ――あの日が、見える。

 ――あの人が、殺される。

 いのちが赤い雨となって己に降り注ぐ。

 自分を育ててくれた優しいひと。共に歩いていた時に不意に襲われて、救えなかった、あのひと。視界が、赤く、染まる。

 少し前なら、思い出す度に絶望に打ちひしがれた、あの日の記憶。けれど、今なら。今は。



 ――戦場が、見える。

 ――敵を、屠る。

 その身が赤い雨のように降る返り血に染まる。

 止まれば、死ぬのは、自分だ。ただ、己が死なない為。唯それだけの為に、剣を振るい術を編んで。それでもその手には何も残らない。

 ――その時、あかいあめが、止んだ。



「傘の裡に居なさいといつも言っているじゃないか」

 穏やかな声音が、暁に降る。

「……らん、や」

 きつく刃を握った手に、重なる手。思わず縋るようにその手にもう片方の手を重ねた。

「……ごめん」

 狐耳が萎れる程の申し訳なさで謝意を示す暁に、藍夜はいつもと変わらぬ穏やかさで応える。

「苦労も悲しみも、努力も苦悩も全部あってお前なんだ」

 その言葉に、暁の目に再び強い光が灯る。これまでにかけられた、共に生きようという優しい声が、生き抜けと叱咤した声が、その背を押す。

「いい夢見させてくれたお礼に、俺からもくれてやる」

 そうして場に広がるのは、雪花の吹雪。それは、少女達にはただの少女として、生を、陽のあたる時を謳歌する|幻《ゆめ》を魅せ。傍らの藍夜には、守りを与える。
 |幻《ゆめ》を魅せられ動きを止めた少女達を、無言で撃ち放たれた藍夜の不可視の狙撃弾が撃ち抜いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葛城・時人
【花園】

惨いね…解ってる
可能ならもし助けられるならとつい考えて
でもそれは無理だ
彼女たちはオブリビオン
だから

「悪いが…俺は君達に滅びの運命を紡ぐよ」
敢えて冷たく言い放つ
死を運ぶ俺を恨めるように

陸井とキアラに目配せ一つ
UC白燐同期翔詠唱
大きなククルカンが俺の手から飛び立つ
遠ざかる蟲と視界を同期しながら
高速・多重詠唱でもう一匹
普通のを乱舞させ二匹目は隠し
通常攻撃でも攪乱と時間稼ぎ

幽銃を撃たれても怯まない

一匹目はわざと鳴かせて敵から攻撃させ油断を誘い
二匹目は全く別方向から全力で急降下突撃
最後の瞬間まで少女たちを視て選び…後は!
「陸井!キアラ!頼む!」

「君達をこんな目に合わせた奴を俺も絶対に許さないよ」


凶月・陸井
【花園】

可哀想だとは思う。何とかできないかとも思う
でも、終わらせることが救いでもあるはずだ
それに二人はオブリビオンで俺達は猟兵だから
きっと時人とキアラさんも同じ気持ちだ
「あぁ…此処で、止める」

作戦を立ててなくても合図で伝わる
二人の動きに合わせ、攻撃の後ろに紛れるように
ククルカンの光に溶けるようにしながら
【水遁「爆水掌」】を両腕に準備
滅びの詩も幽銃も直撃を覚悟の上で前へ進み
時人の合図と同時にククルカン達から
一気に飛び出てUCを使用

ユリとシズク二人が同時に狙えるタイミングなら良し
そうでなければ近くにいない相手はキアラさんに任せて
俺の渾身の一撃を叩き込む
「悪いな。恨んでくれていい」


キアラ・ドルチェ
【花園】

「生きるために」…ですか
失われた「過去」の化身と云われるオブリビオンから、その言葉が出るのは意外なようで
「現在」に在る者である以上、生きる事に執着するのは当然なようで

でも…「私はしあわせに生きる為に、貴方達を倒す」
いつか、オブリビオンとも共存出来る日が来るかもしれない
もしその日が来たら、私は後悔を受容する覚悟をもって
「滅びなさい、オブリビオン!」

時人さんと陸井さんと目配せしタイミングあわせ【高速詠唱】しつつ【多重詠唱】、【全力魔法】
詠唱時間は時人さんが稼いでくれる、ギリギリ一杯まで溜めて…放つ!
可能なら二人同時、難しければ陸井さんとは違う方へ
「灰は灰に、過去は過去へ…お還りなさいっ!」




 最後に解けた華柱には、三人。花園の銘を掲げ立つ三人は一様に瞑目し、そこに立つ。

 キアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)は、「過去」に属するオブリビオンである彼女達の口から生きるという言葉が出た事が、少し意外に思った。だが、彼女たちとて、「現在」に在るのだから、それも当然なのかもしれないと、更に思いを巡らせた。
 葛城・時人(光望護花・f35294)もまた、生きたいと謳う少女達を巡る状況に、想いを馳せる。可能であれば助けたいとすら考えてしまうのだが、それは無理なのだ。過去から滲み出るオブリビオンという存在である以上、それは許されないこと。だから、敢えて常の彼とは違う冷たい声音で、言葉にする。

「悪いが……俺は君達に滅びの運命を紡ぐよ」

 その言葉を受けるように、その傍らの凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)が頷いた。共に立つキアラと時人が抱く思いが自分と同じであるのだと、信じ理解している。

「そう言われて、ハイそうですかってオレ達が言うと思うか!」

 そう吼えたシズクに対し、キアラが手にした杖を握る手に力を込めて返す。

「そう、でしょうね。生きるためにという貴方達は、受け入れられない事でしょう」

 でも、と、キアラは続ける。

「私は、私達は、しあわせに生きる為に、貴方達を倒す」

 宣言するようにそう言ったキアラの言葉を、陸井が後押しする。

「あぁ……此処で、止める」

 その身に纏う空気は泰然としながらも一分の隙が無く。此処に立つ者達が一様に、数多の戦いを潜り抜けて来たのだという事実を、少女達に突きつけた。

「わたくし達だって……ただ、ただのひととして、生きたかっただけなのに……」
 
 ユリが震える声でそう訴えるが、それで彼等の心を揺らす事などは、出来ない。既にその程度では揺らがぬ覚悟と信念を、彼等は抱えている。

「もういい、ユリ。
 コイツ等は、オレ達の事なんざ判っちゃいない。それに、オレ達を受け入れる気の無い世界なんざ、こっちから願い下げだッ!」

 泣きそうな顔で訴えたユリと対照的に、シズクがユリのみならず全てを叱責し、断罪するような声をあげ、三人に向けて指を差す。

「まずはお前から喰らいな、|幽銃《ユウガン》……ッ!」

 その指先から、膨大な魔力が放たれた。その魔力の揺らぎを察した三人は、互いに視線を交わす。

「『俺と共に往け!ククルカン!』」

 先ず動いたのは時人。その手から、常よりも大きな|白羽の白燐蟲《ククルカン》が花開くように舞い上がる。そのまま詠唱を重ね連ねて、もう一体普通の大きさのものを喚ぶと、最初の|白羽の白燐蟲《ククルカン》と己の視界を重ね、拡げる。魔力の奔流を搔い潜った二体目が、少女達にまとわりつく。

「邪魔をしないでッ!」

 ユリが纏わりつく|白羽の白燐蟲《ククルカン》を払い除けながら叫び、|滅びの詩《ちから》をぶつける。ここまでの戦いで少女達は疲弊を重ね、貫かんとする願いを悉く否定されてきたことで、その力の使い方に乱れが見受けられる。その綻びを、彼等が見逃す訳が無かった。

「陸井! キアラ! 頼む!」
「灰は灰に、過去は過去へ……お還りなさいっ!」
「悪いな。恨んでくれていい」

 |白羽の白燐蟲《ククルカン》と視界を重ねた時人の声を合図に、詠唱を重ね続けたキアラが編み上げた黄金の宿り木がユリを、時人の|白羽の白燐蟲《ククルカン》の陰に潜みながら接近した陸井の水纏う掌がシズクを、其々に撃ち抜いた。

「オレ達は……」
「わたくし達は……」

 地に伏してなお、少女達は互いに手を取り合う。その様は、まるで普通の死に瀕した少女達のそれにしか見えない。異なるのは、その身が骸の海へと消え逝こうとしている事。

(いつか、オブリビオンとも共存出来る日が来るかもしれない。もしその日が来たら、私は……)

 その様をただ見守ることしか出来ない中、キアラは、何時か訪れるかもしれないその日に、今日を思い出し後悔をするのだろうと思う。

「君達をこんな目に合わせた奴を俺も絶対に許さないよ」

 そう口にした時人の言葉は、少女達のみならず、そんなキアラの気持ちをも背負うのだと、そう言っているように聞こえた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月08日


挿絵イラスト