【サポート優先】踊るくちなは狩り
これはサポート参加者を優先的に採用するシナリオです(通常参加者を採用する場合もあります)。
サムライエンパイア・肥後は、温暖な気候の土地である。人にとっては過ごしやすいこの地域は、動植物にとってもそうであるようだ。日を追う毎に木々が葉を落とし、風がどれだけ冷たくなっても、川の水が氷るまでには至らないその地域では多くの生き物が日々の営みを紡いでいた。
猟兵達の手によって信長軍が退けられて暫く経つ。かつてはこの土地にも戦禍が及ぶこともあったが、ようやく大きな戦いが終息したことで人々は以前のような生活を取り戻しつつあった。
だが、脅威が完全に去った……とは、まだ言い難い。
「サムライエンパイアにて、信長軍の残党たる物の怪が未だ猛威を振るっているようですね」
グリモア猟兵、神白・みつき(幽寂・f34870)によって予知されたのは、それらによって齎される大災害だ。遠くない未来で集結する物の怪……即ちオブリビオンの群れが、肥後の地に災厄を呼ぶ。それを未然に防ぐのが、今回の猟兵達の役目となる。
「幸い、物の怪よりもこちらが先に動けそうです。皆様には急ぎ、サムライエンパイアの肥後へ向かっていただきます」
みつきが指定したのは、肥後の中でも人が集まりやすい土地だ。地域柄、清酒や焼酎を作っている酒蔵も多く、それらを取り扱った食事処も数多く存在する。
まずは、そこで物の怪の棲家について情報を集める必要がある。みつきはそのように説明した。
「予兆では物の怪の潜伏先までは特定できず……申し訳ありません。せめて、転移した先で食事を摂って英気を養ってくださいませ」
何せ大きな食事処もある。そこには自ずと、物の怪の噂話も集まってくる筈だ。
「棲家さえ突き止めたのなら、後は討伐あるのみです。恐らく、そう苦戦する相手ではない筈ですので」
けれど、どうぞお気をつけて。みつきはそう付け加えた。相手は物の怪の群れ。どれほどの規模で群れているのかは、対峙しないことには分からなかった。
猟兵達の支度が整ったところで、一陣の風が吹き抜ける。青々とした草を撫でるそれは、命の気配と植物のにおいをすぐそばまで運んできた。
瞼を開ければ、そこは既に大きな宿場町。サムライエンパイア、肥後の地の只中に、猟兵達はその足で立っていた。
マシロウ
閲覧ありがとうございます、マシロウと申します。
今回はサムライエンパイアでの事件をお届けいたします。「信長軍残党の物の怪を倒し、大災害を防ぐ」のが目的となります。
当シナリオはサポート優先になりますが、もしも通常参加があれば採用予定です。ゆっくり運営になる予定なので、ピンと来た方は是非。参加をご検討いただく場合、MSページもご一読ください。
●第一章
近く襲来する物の怪の群れについて事前調査です。人と噂話が多く集まる、有名な食事処で一服しながら物の怪の棲家の場所を突き止めます。
●第二章
物の怪の棲家へ赴いての集団戦になります。
ご縁がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
第1章 日常
『竹林にある食事処』
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POW : 不思議な懐石料理を食べる
SPD : 珍しい郷土料理を食べる
WIZ : 見たことのない和菓子を食べる
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ソフィア・エーデルシュタイン(サポート)
わたくしは愛され望まれたからこそ生まれてきましたのよ
だからこそ、わたくしはこの世の全てが愛しいのですわ
狂気的な博愛精神の持ち主
命あるものは救われるべき
蘇った過去はあるべき場所に還るべき
果たすためならば手を下すことに躊躇う必要などないと胸を張る
主に【煌矢】を使用し、牽制や攻撃を行います
勿論、他のユーベルコードも必要があれば使いますわ
わたくしの愛するきょうだいである水晶髑髏は、盾にも刃にもなってくれますのよ
怪我など恐れる必要はありませんわ
わたくしが役に立てるのであればこの身が砕かれようとも構いませぬ
他の方の迷惑や公序良俗に反する事は致しません
それは、わたくしを愛してくれる人達への裏切りですもの
雲ひとつ無い空に君臨する陽は、殊のほか優しい光で地上を照らしている。それを受けて輝く水晶もまた、活気溢れる宿場町のあちらこちらを賑やかす。ソフィア・エーデルシュタイン(煌珠・f14358)は、誰もが幸福を享受しているその光景を前にして愛おしそうに目を細めた。
「とても賑やかな町! 誰もが幸せだと、見ただけで分かりますわ」
彼女の博愛精神は、初めて立つこの土地でも変わることはない。ソフィアの視界に入る全てが愛すべき対象。大きな戦が終わったことで彼らが平和と幸福を全うできているのなら、ソフィアにとってもそれ以上に喜ばしいことはない。
問題は、これらの幸福を脅かす存在がじきにやって来る……という点だった。物の怪とて命ある存在。だが、それがオブリビオンの残党とあらば見過ごすことはできない。ソフィアにとって愛すべきものとは、過去ではなく現在に生きるものだった。
「やあ、こりゃあ別嬪さんが来たもんだ! うちのお菓子食ってかないかい!」
大きな通りを往くソフィアに声を掛けてきたのは、客の呼び込みに勤しむ和菓子屋の店主のようだ。通りに面して設置された長椅子には緋毛氈が敷かれ、そこに座って一服する客も多い。
「まあ、よろしいのですか?」
「良いとも、遠慮はいらないよ!」
店主の厚意で、和傘で程よく影ができた席へ案内される。ソフィアは礼こそ言うが恐縮することはなく、緋毛氈の上にそっと腰掛けた。彼女にとって人の厚意とは遠慮なく受け取るもの。愛され、望まれたのだから当然だ。
少しの待機時間を経て、店主は厚めの器に淹れた抹茶と、光沢を湛えてぷるぷると揺れる不思議な和菓子をソフィアのもとへ運んできた。
「綺麗……まるで宝石みたいですわ」
「水まんじゅうって言ってな、くず粉とわらび粉の生地で餡を包んだもんだよ。お嬢さんを見た瞬間ピンときちまってねえ!」
本来は夏場に楽しむことが多いものだが、幸いこのあたりの気候は年中通して温暖だ。今日のように陽気が心地いい日に味わうにはもってこいだろう、と店主は話す。
串を通せば、もっちりとした弾力が返ってくる。その感触をも楽しみながら水まんじゅうを口に運ぶが、さすがにひと口で食べるのは難しい。適度なところで一度噛み切り、口内で食感と小豆の甘みを堪能した。
「さすがに一度に食べるのは難しいですわね」
「ははは、さすがにこの大きさをひと口じゃあな。蛇みたいに丸呑みなんてしちゃあ、御山のうわばみって笑われちまうよ」
「うわばみ?」
聞き慣れない言葉に、ソフィアは首を傾げる。店主はソフィアのその様子を見て、ある方角を指で示した。その先には、山の稜線がくっきりと見えている。この町から少し距離はあるが、充分に行き来が可能な場所に大きな山があるらしい。
「あそこの山には昔から大蛇が住んでるって言われててな。それがまた大酒呑みだって言い伝えがあるんだよ。だから〝うわばみ〟ってな」
店主からすれば、それはあくまでも昔からある御伽噺。けれど、猟兵として災害の予兆を聞いたソフィアにとっては、無視できない情報だった。
「その昔話、とても興味がありますわ。もっと詳しく教えていただけます?」
「ん? いいとも、こんな田舎の話に興味あるなんて変わってるねえ」
水まんじゅうを美味しそうに食べてもらえて気を良くしたのか、店主は御山のうわばみについて詳細に語る。昔は年に一度、御山に酒を奉納していたこと。山で悪事を働いてうわばみに丸吞みにされた盗賊のこと。話のネタに困らないほど、うわばみについての伝説が残っているようだ。逆に言えば、うわばみ以外の物の怪の話は殆ど無い。
今回の災害に関わる物の怪は、十中八九そのうわばみとやらだろう。ソフィアはそう確信した頃、ようやく湯呑みの中の抹茶を飲み干した。
成功
🔵🔵🔴
北条・優希斗(サポート)
『敵か』
『アンタの言う事は理解できる。だから俺は、殺してでも、アンタを止めるよ』
『遅いな』
左手に『蒼月』、右手に『月下美人』と言う二刀流を好んで戦う剣士です。
自らの過去を夢に見ることがあり、それを自身の罪の証と考えているため、過去に拘りと敬意を持っております。その為オブリビオンに思想や理想があればそれを聞き、自分なりの回答をしてから斬ります。
又、『夕顔』と呼ばれる糸で敵の同士討ちを誘ったり『月桂樹』による騙し討ちを行なったりと絡め手も使います。
一人称は『俺』、口調は年上には『敬語』、それ以外は『男性口調』です。
見切り、残像、ダッシュ等の機動性重視の回避型の戦い方をします。
町の空気に触れているだけで、この世界での戦は終わったのだと実感できる。北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は転移先の宿場町が大いに賑わっている様子を眺め、まずは安堵した。近く物の怪による襲撃が予知されてこそいるが、こうして人々が平和に暮らしているのなら自分達が戦った甲斐があるというものだ。
優希斗の脚が向いたのは人が多い通り。特に今は昼餉時ということもあり、飲食店には人だかりが出来ている。情報収集をするのなら、これより向いている場所は無いだろう。どの店に入っても構わなかったが、少し考えた後に小さく庶民的な店の暖簾をくぐる。観光客や上流階級の人間が好みそうな店よりも、こういった町人の生活に根付いた店の方が噂話というものは飛び交っているものだ。
「いらっしゃい! ご注文、お決まりで?」
「この店は初めてなもので。おすすめがあったら、それでお願いします」
店の大将である中年男性は、優希斗の注文に「あいよ」と一言返すと厨房へ引っ込んでゆく。席は厨房に面したカウンター、そして二人掛けのテーブル席が三つ。本当に小さな店のようだ。やはり優希斗が予想していた通り、旅の者よりも地元の人間が多いように見えた。
空いていたカウンター席に腰掛けると、その隣に座って焼き魚定食を食べていた若い男性が声を掛けてきた。優希斗と同年代ほどだろうか。その風体から、大工仕事を生業にしていることが予想できた。
「見掛けない顔だな。旅の人かい?」
「そんなところだ。アンタはこの町の人?」
「おう、生まれも育ちもな」
青年は箸を進めながら優希斗と言葉を交わす。宿場町で生まれ育っただけあって、旅人相手でも物怖じしない性格らしい。年齢が近いこともあって、彼と優希斗はすぐに距離を縮めることができた。
青年との雑談をさなか、カウンター越しから大将が大きな盆に乗せた食事を差し出してくる。
「はいよ。うちのおすすめ、馬肉うどんだ」
大きめの器から湯気を上げるうどんは、澄んだ汁の中で多めに盛られている。だが、それよりも特徴的なのはトッピングの内容だ。器を飾るのはささがきごぼうを揚げた天ぷらや、大盛りのネギ。そして、煮込んで味付けされた馬肉だった。
「へえ、このあたりって馬肉を食べるのか」
「ああ、そうさ。酒だけじゃなく馬の生産量も多いんだぜ」
青年の話を聞きながら割り箸を手に取る。食前に手を合わせてからうどんを口に運べば、かつお節と昆布のだしを醤油で整えた汁に、柔らかな麺がよく合った。馬肉は醤油だけでなく、砂糖や生姜も使って甘辛く煮てあるようだ。青年曰く、この肉だけでも酒によく合うのだとかなんとか。
人と打ち解けるには食事を共にするのが一番だ。うどんを食べ進めながら青年と話してゆく内に、この町のことを随分と知ることができた。
この町は比較的平地ではあるが、少し先に大きな山がある。人が住んではいないが、そのあたりに畑を持っている者も少なくはないらしい。その畑の主の一人が最近、山の方から妙な音を聴いたと話していた……と、青年は語る。
「そいつが言うにはな、シューって空気が抜けるような音と一緒に、何かが這うような音がして……気味が悪いから農作業も中断して帰ったらしいんだよ。そうしたら次の日、畑が荒らされてたんだと」
「イノシシとか、そういうものじゃなさそうなのか?」
「俺も実際に見たわけじゃないが、違うみたいだな。大きなものが這い回った跡があったとか言ってたし」
移動の際に這い回るような生物はそう多くはない。蛇──またはそれに類する何か。だとしても、そんなに大きな体を持つものは本来ならば存在しない筈だ。となると、考えられる結論はひとつしかない。
(大蛇のような物の怪か。話を聞けるような相手ではないかもしれないな)
そうであれば、優希斗が取れる行動は斬ることのみ。その地で生きているだけならばまだしも、人々の生活を脅かすのならば放置することはできない。腰に提げた蒼月と月下美人が、優希斗の信条に応えるように鞘の内で震えた気がした。
成功
🔵🔵🔴
サエ・キルフィバオム(サポート)
アドリブ歓迎
基本的には情報収集が得意かな
相手が何かの組織だったら、その組織の一員になり切って潜入して、内側から根こそぎ情報を頂いちゃうよ
そうじゃなければ、無害で魅力的な少女を演じて、上手く油断させて情報を引き出したいね
効きそうな相手なら煽てて誘惑するのも手段かな♪
戦いになったら、直接力比べの類は苦手だから、口先で丸め込んだりして相手を妨害したり、糸を利用した罠を張ったり、誘惑してだまし討ちしちゃうかな
上手く相手の技を逆に利用して、手痛いしっぺ返しが出来ると最高♪
敢えて相手の術中に陥ったふりをして、大逆転とかも良く狙うよ
賑わう宿場町には多くの宿や飲食店が並んでいる。店にはそれぞれ、相応のグレードというものがある。訪れた人々は、自らの社会的身分や財布事情に見合った店を利用するのが当然と言えば当然だ。普段の生活水準と近い環境でなければ、休めるものも休めない。金銭云々以前に、その空間自体に人間が馴染めないのだ。
ただ、如何なる環境にも馴染める者というのは少数だが確かに存在する。サエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)もその内の一人だと言えるだろう。
「ええ~!? おじさま、こんなにたくさんお菓子いただいて良いの~!?」
「ああ、いいとも! たんと食べておくれ」
「嬉しい! あたし、甘いもの大好きなの!」
宿場町の一角に店を構える高級料亭の一室。八畳ほどの部屋の中央には、自然木を丁寧に加工した大きな食卓が設けられ、その上は色とりどりの甘味で埋められている。食卓にはサエと、それと向かい合う位置に座る老年の男性がついていた。男性は年老いてこそいるが同年代と比べれば恰幅が良く、身につけているものも高価なものが多い。所謂、富裕層と呼べる人物だということは一目見れば分かった。
「ああ……見れば見るほど、遠くに嫁いだ娘に瓜二つじゃ……うっ、涙が」
「泣かないで、おじさま。はい、手ぬぐい!」
物の怪の動きについて調べるにあたって、サエは真っ先にこの男性に近づいた。一般人への聞き込みは、他の猟兵が既に当たっている。それならば、この町でも特に力を持っている人物の視点でも話を聞いてみる必要があった。権力者しか知り得ない情報というのも、世の中には存在する。
「特に目が二つあって鼻が一つで口があるところがそっくりなんじゃ……懐かしいのう」
スムーズな会話のために誘惑を強めにかけた結果、彼はサエを娘とよく似た姿だと認識しているらしい。認識しているのだろうか。誰にも、サエにすら分からない。
「娘さん、そんなに遠くにお嫁に行っちゃったの?」
「そうじゃよ。加賀という土地に嫁いで、もう三十年は経つかのう」
男性が昔を懐かしむ話を聞きながら、サエは運ばれてきた甘味を遠慮なく口にする。丸く整えられた上生菓子はどれも色が異なっていた。運んできた店の者曰く、有名な御伽噺に登場する〝蓬莱の玉の枝〟とやらがモチーフになっているらしい。和菓子用の串で割り、ひと口食べたら抹茶をいただく。生菓子のささやかな甘さと、深みのある抹茶の苦さが齎す調和はまさに贅沢とも言えた。
男性曰く、嫁いだ娘も加賀から時折手紙で近況を報告してくれていたらしいが、今はそれが困難になっているという。信長軍との戦いによって荒れてしまった街道の復旧に追われ、物の流通が滞っている土地も多いことから、頻繁な手紙のやり取りが難しくなっているようだ。
「ついこの前まで戦争があってたもんね……また物の怪が出ないか、あたし怖いなぁ」
「ははは、大丈夫じゃよ。このあたりはすっかり安全じゃて」
「でもでも、まだ物の怪が出るところもあるって聞いたよ?」
サエは上目遣いで不安そうな空気を演出する。これでも彼がこの地域は安全だと言い張るのならば物の怪と手を組んでいることも視野に入れるが、幸いにもその線は潰れた。サエの言葉に男性は肩を落とし、大きな窓から臨む景色──その先に見える山へ視線を移す。
「確かにのう……このあたりにも大蛇が出ておったし、一匹もおらんとは言い切れんなあ」
大蛇伝説自体は大昔からあったものの、戦争中は頻繁に大蛇と思しき物の怪達が山から下りてきては酒蔵を荒らし、女子供を生贄と称して連れ去っていた、と男性は語る。戦争が終結してからは一度も現れていないが、それでも不安は払拭できていないのが現実だった。
「よく山に入る猟師に知人がいてのう……近頃、山が静かすぎるとも言っておった。何事も無く、平和な日が続くと良いんだが……」
窓から見える山を見つめたまま、男性はそう呟く。今のままでは、彼の願いは空しく潰えるばかりだろう。だが、そのような未来が選択されないようにするため、自分達はこの地へやって来た。
サエは口内に残る甘味の味を抹茶と共に飲み下す。他者から施されることに特化した存在とはいえ、ここまでもてなしてもらったのだ。その分の働きぐらいは見せよう。そう思えるぐらいには、サエもこの町の居心地は良く感じられていた。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『うわばみ』
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POW : 噛みつく
【鋭い牙】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 巻きつく
【素早い行動】から【巻きつき攻撃】を放ち、【締めつけ】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 炎を吐く
【体内のアルコールを燃焼した炎】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
イラスト:塚原脱兎
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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宿場町で得た情報を元に山へ入った猟兵達は、すぐにその異様な空気に気付く。禍々しく渦巻くそれは山全体を覆い、やがては外へ及ぼうと蠢いていた。
周囲の茂みが揺れる。空気が抜けるような音と共に、何やら大きなものが地を這い土を削る気配が、肌を粟立たせた。いつの間に囲まれていたのだろう。否、もしかしたらこの山に足を踏み入れた瞬間からそうだったのかもしれない。
猟兵達が武器を構えるのと同時に、それらは姿を現す。人ひとりは呑み込めそうな大蛇が一匹、二匹と金の瞳を輝かせ、先の割れた長い舌を震わせている。薄暗い森の中で、その身を覆う朱い鱗は不気味なまでに艶めいていた。
大蛇の群れは猟兵達の姿を認めると、我先にと滑り出してくる。対話の余地は無い。彼らにとっては猟兵達ですら、己の領域へ迷い込んだ哀れな獲物でしかないのだから。
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日下・彼方(サポート)
人間のUDCエージェント × 月のエアライダーの女です
戦闘での役割はレガリアスシューズを使っての空中戦、
影の狼を使役して斥候・偵察ができます
武器は通常大型ナイフを使用しますが
強敵には太刀・槍を持ち出す事もあります
普段は(私、君、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?)
機嫌が悪いと (私、~様、です、ます、でしょう、ですか?)
性格は受けた仕事はキッチリこなす仕事人のような感じです
仕事から抜けると一転惚けた風になります
ユーベルコードは必要に応じて、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
如何な妖怪、如何な|大蛇《おろち》と言えども、日下・彼方(舞う灰の追跡者・f14654)にとっては地を這う|的《まと》でしかない。一匹の大蛇が彼方目掛けて迫ってくるのも待たず、レガリアシューズが起動する。深い山中、それも森の中とあってあまり高度は取れないが、大蛇が突き立てようとした牙を回避するには充分すぎた。
「サイズは大きいが、形が単純だな。輪切りだけで済みそうだ」
向かってきた大蛇を見下ろしながら、試製蝕刀『Hati』を引き抜く。高度はそのままに空中戦に持ち込めばこちらが優位を取れると踏み、彼方は地に降りることなく宙を滑りだした。大蛇達が茂みを遮蔽物として利用するならば、こちらは生い茂る木々の葉に姿を隠して攪乱したら良い。
とても人ひとりの質量では実現し得ない速度で木々の隙間を縫う彼方の姿を見逃すまいと、大蛇は大きな目で追い続ける。ゆっくりとその口が開かれ、鋭い牙が再び露わになった。
「近接戦がお望みか」
彼方がその短い一言を言い終えるよりも前に、レガリアシューズが生み出す推進力が強くなる。森から飛び出し、一瞬で大蛇との間合いを詰めた。影より狼を呼び出すまでもない。どれだけ体が大きくとも、どれだけ強い牙を持っていようとも、彼方にとって対象の動きは〝遅すぎる〟のだから。
大蛇の瞳に、眼前を横切る彼方の姿が映ると同時に、蝕刀を横一閃に薙ぐ。レガリアシューズの速度に乗った斬撃は、いとも簡単に大蛇の首を斬り落としてしまった。落ちた首から流れた体液は一瞬、山の土を汚したが、やがて切り離された胴体と共に塵と化して消滅する。
「まずは一匹」
倒した大蛇の亡骸の方へ彼方が振り返ることは無い。彼女にとって、これはアルバイトの一環。一匹にかける時間は、短ければ短いほど良いのだから。
成功
🔵🔵🔴
風祭・悠華(サポート)
クロムキャバリア世界出身、キャバリアを持たず銃器等で戦場を生き延びてきた傭兵少女。
普段の口調は「私、あなた、~さん、だ、だね、だろう、だよね?)」
性格は明るいが、戦場になれば敵には容赦しない仕事人
主な使用武器はアサルトライフル
UCは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
又、例え依頼の成功の為でも、公序良俗に反する行動はしません
後はお任せ
宜しくお願いします!
戦場において、敵の形状はさしたる問題ではない。風祭・悠華(人間のサバイバルガンナー・f32278)は愛用のアサルトライフルを構え、その照準を覗き込んだ。集団で押し寄せた大蛇は一体一体が大型な上に、木々が生い茂る森の中では塊になりやすい。悠華の仕事はそこに上手く弾を当てて、敵を一網打尽にすること。それだけだ。
近接戦を担当する他猟兵に気を取られているのか、どの大蛇も悠華には気づかない。極限まで抑えた気配と呼吸は悠華の感覚を研ぎ澄ませ、そしてその時を告げる。
「そこ、壊すね」
一秒も空けぬ間の発砲。如何な物の怪とはいえ、野生動物に近い感覚を持つ大蛇は突然の物音に一瞬だけ体を強張らせる。それが決め手のひとつとなったのか、着弾の瞬間に大蛇の血と肉片が爆ぜるのを、悠華は遠目に確認した。
「キャバリアの装甲すら貫く弾だからね。悪いけど、生き物なら一発当たれば致命傷だよ」
一匹の大蛇が地に伏したことで、他の個体の意識と視線が悠華へと向けられる。剥き出しの敵意は戦場で見るそれよりももっと純粋で、そして単純だ。そこには何の因果も思惑も無い。ただ、生きるか死ぬかだけを賭けた戦いだった。
すぐに盾役の猟兵が両者の間に割って入る。遠距離武器を扱う以上、どうしても敵との距離を空ける必要はあるが味方が無事である内はそれも杞憂だ。
息を継ぐ間も与えない。そう宣言する代わりに、悠華はその照準に次の敵を捉えた。
成功
🔵🔵🔴
マロン・ビネガー(サポート)
◎連携・アドリブ歓迎
知的好奇心旺盛で少し不思議+ひんやり系な性質の僕っ子。思考は理系寄り
戦場ルールと他者の意志は尊重する方
現地住民や先輩には「礼儀作法」で丁寧な対応を心掛ける
◆戦闘傾向
エキセントリック+トリックスター
属性魔法や精神攻撃/誘惑、地形の利用等で撹乱するタイプ
主な得物は蓬莱の玉枝orレイピア、弩
技能は主に「天候操作」、
特に雨・雪系を好む
攻撃系UCに合わせて「電撃」+「貫通攻撃」、
回復系UCに「浄化」を載せる等
勝利の為なら代償・取引系UCも躊躇いませんが
保護対象や共闘する方々を攻撃に巻き込む事は極力避けます
必要なら「結界術」等で防御、場所感知等
臨機応変に支援行動も可
後は基本お任せです
温暖な空気が流れる肥後の山に冷気が吹き込む。木々の隙間から見える空はいつの間にか色を失くし、厚い雲の内から綿雪が零れ始めた。真冬に逆戻りしたような天候に、言語を持たない大蛇達がひどく戸惑う様子が見て取れた。マロン・ビネガー(夢幻の恋人・f37213)が掲げる白く歪な杖、その枝分かれした柄に輝くいくつもの宝玉に集束した魔力は雪雲を呼び、蛇という生物が最も厭う環境を作り出す。
「良かった、体は大きくても爬虫類と変わりないみたい。動きが鈍ってる今のうちに!」
マロンの呼び掛けに応じるように、他猟兵達が大蛇の群れへ攻撃を開始する。殆どの大蛇が体温の低下と共に移動速度が落ち、攻撃はおろか回避もままならない状態となっていた。
だが、群れているということはそれだけ個体差も生まれやすいということ。この中に他個体よりも知能が高く、状況判断に長けた者がいても何ら可笑しなことは無い。事実、猟兵の猛攻に惑う群れの中に一匹、その金の瞳にマロンの姿を捉えたものがいた。
おそらく、渾身の力だったのだろう。踊り出るようにして群れを抜け出したその大蛇は、雪でうっすらと白くなった地を高速で這いマロンの方へ向かってくる。時間にして数秒、その間の一瞬の動き。大蛇がどのように動こうとしているのか、マロンは瞬時に見抜いた。
「棉花糖・雷撃!」
マロンが振るった枝の軌跡を追うように現れたのは、白く小さな雲。否、それが雲ではなく綿飴だということは、アジア圏やそれに近しい世界に縁のある者であればすぐに分かった。マロンがそれを器用に枝の先で巻き取ると、それに刺激されるように電流が迸る。
「綿飴とはいえ、言うほど甘くはないからねっ!」
轟音と共に繰り出されたその一撃は殴打に近い。|雷《いかづち》の一端を借りた枝による直接攻撃は、目の前まで接近してきていた大蛇の喉元に直撃した。打撃による外部ダメージと、電撃による内部ダメージ。大蛇は断末魔すら上げる余裕は無い。華奢な少女が殴ったとは思えない力で吹き飛ばされた大蛇の体は地に落ち、その後は起き上がってくることも無かった。
成功
🔵🔵🔴
櫟・陽里(サポート)
『操縦が上手いは最高の誉め言葉!』
乗り物が活躍できる場と
レースとサーキットが得意分野
どんな乗り物も乗りこなしてみせる
走りこそが俺の武器!
乗り物と操縦者の総合力で戦う
サイバーアイで路面、相手の動きなど幅広い情報収集
集中力・傭兵の経験・判断速度で攻め所を見極める
シールド展開バイクで体当たり吹き飛ばし
走り回って撹乱・誘導
仲間を運ぶ足になるのも好き
バイクは機動力のある盾にもなる
壊れたらほら、直すついでに新パーツ試せるし!
明るく話しやすい先輩タイプ
補助仕事もドンと来い
乗り物が無い戦場では手数が少ない
普通の拳銃射撃や誘導、挑発など小技を利かせるしかなくテヘペロしてる
過去は過去に還すべき、その辺割と無慈悲
「蛇かぁ……速さを競う相手としてはちょっと役不足だな」
目の前で繰り広げられる乱戦模様を眺めながら、櫟・陽里(スターライダー ヒカリ・f05640)は苦笑した。この日のために愛車を整備してきた身としては、やがて光に至れるほどの速さを相手に期待していたのだが、そう上手く事は運ばないものらしい。残念な気持ちを完全には拭えないが、それをいつまでも引き摺るほど陽里も幼くはなかった。
「っし、行くか!」
相棒のライに跨り、アクセルを躊躇いなく掛ける。山道で障害物も多く、並みのライダーであればすぐに事故を起こしてしまいかねないロケーションだ。だが、陽里はこれまでに走り抜けてきたあらゆるコースを記憶している。次々と視界から抜けてゆく景色、風が鳴らす音の微かな変化。コンマの間に道の状態を判断し、最も最適なコースを駆け抜ける。
互いに絡み合いそうになりながら暴れる大蛇の中に、特に混乱している個体がいるのを陽里は見逃さなかった。瞬時にビームシールドを展開すると、風の抵抗の度合いが僅かに高まる。だが、それにも構わず陽里は更に加速した。
「よそ見してると事故に遭うぜ!」
今ここで出せる最大速度に乗せた体当たりが大蛇に直撃する。すっかり周りが見えなくなってしまっていた大蛇はまともに体当たりを受け、その巨体を大きく傾げた。ダメージを与えた代わりに大蛇の狙いが完全に陽里の方へと定められる。先割れした舌を震わせ、鎌首をもたげて威嚇をしながらこちらとの距離を測っているようだった。
だが、陽里からすれば何もかもが遅すぎる。予測も、判断も、初動も。
風では生温い。迸る雷電を纏うその様はまさに光。誰にも捉えることのできないその走りは、瞬きひとつの間に陽里を大蛇のすぐ背後へと運んだ。
辺りに閃光が走る。物理衝撃を受けたビームシールドが火花を放つ。再度、至近距離からの体当たりを仕掛けた陽里は大蛇に肉薄しながらアクセルのグリップを更に回した。加速による力に押し負け、踏み留まっていられなくなった大蛇の体は近くの大岩へと叩き付けられる。陽里は大蛇の巨体を踏み台代わりにライを駆り、高く、高く跳躍した。
成功
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御梅乃・藍斗(サポート)
一人称:僕
二人称:君、あなた
他人にはさん付け
基本的に敬語(ですます調)、動揺した時など男子っぽい口調になるのも可
まじめで負けず嫌い
積極的に他人と親しくする方ではないが任務に必要であれば協力は惜しまない
必要時サバイバル、捕縛、居合、受け流しなど活用
敵からの攻撃には激痛耐性や狂気耐性で耐える
名家の出であり、力あるものはそうでないものを守る義務があると考えている
サキュバスだが種族ゆえに性的な要素を警戒あるいは期待されることを厭っており、下世話な話題には嫌悪感を示す潔癖な性格
UCは活性化した物をどれでも使用
迷惑行為や公序良俗に反する行動はしない
情報収集の末、大蛇狩りと聞いて御梅乃・藍斗(虚ノ扉・f39274)は安堵していた。動物は良い。彼らの中に在るのは生きるか死ぬかの二択だけであり、知能ある者のように好奇の目を向けてくることも無い。惜しむらくはそれが敵対する存在であるということだが、それは致し方ないだろう。
対峙した大蛇の群れは猟兵へ……そして藍斗へ向けて牙を剥き出しにしながら威嚇する。一歩でも踏み出せば襲い掛からんばかりの気迫を、普通ならば感じているべき場面である。
周囲には既に他の猟兵達が片付けた大蛇の骸がいくつも転がっている。骸の海へ還り始めているものもあり、生き残りにもすぐその後を追わせてやるのが藍斗達の役目だった。
「埒が明かないですね。僕がやります」
互いに間合いを測る時間に痺れを切らし、藍斗は一歩前へ進み出る。三翼刀を鞘から抜くこともせず、無防備とも言える状態で大蛇の群れへ近づいた。
大蛇達は更に強い威嚇を始める。空気が抜けるような威嚇音は尾から出ているものだと、どこかで聞いたことがあった。彼らは声を持たない。音による意思疎通を前提としていない生き物だ。
「けれど、聞く耳ぐらいは持っているでしょう?」
退く様子の無い藍斗に、緊張に耐えられなくなった一匹の大蛇が躍り掛かる。動きを封じる意図があったのか、噛みつくのではなく巨大な蛇体を以て巻きつこうとしたが、それも叶わない。
大蛇がその行動を成すよりも前に藍斗は大きく息を吸い込み、そして吐き出す。そこに音など無かった。あるのは、周囲の木々すら薙ぎ倒すほどの衝撃。風とは異なる空気の大波に、大蛇は勿論のこと他の猟兵達も思わずたたらを踏んだ。藍斗の後方にいた味方はその程度で済んだのでまだ良いだろう。彼と相対する位置にいた大蛇は吹き飛ばされ、中には衝撃そのものに肉体が耐えきれずに消滅する者もいる始末。彼らは果たして藍斗の〝声〟を聴いたのだろうか。人間の耳では聴き取ることのできない、その声を。
「……ああ、静かになりました。あとは掃討戦です。そう手間は掛からないでしょう」
何事も無かったかのように藍斗は告げる。音亡き聲の衝撃で消滅した者の肉体が完全に消え失せれば、既に大蛇の残党は残り少なくなっていた。ともすれば災害とも呼べる声で辺りを蹂躙したとは思えない洗練された物腰で、ようやく藍斗は三翼刀の刀身を敵の前に晒した。
成功
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徳川・家光(サポート)
『将軍なんだから、戦わなきゃね』
『この家光、悪は決して許せぬ!』
『一か八か……嫌いな言葉じゃありません!』
サムライエンパイアの将軍ですが、普通の猟兵として描写戴けると嬉しいです。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使いますが、全般的に「悪事を許せない」直情的な傾向と、「負傷を厭わない」捨て身の戦法を得意とします。
嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。
よく使う武器は「大天狗正宗・千子村正権現・鎚曇斬剣」です。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせです!
所狭しと暴れ回った大蛇の群れも、猟兵達の手で次々と骸の海へと駆逐される。徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)も愛刀を手に、一猟兵として掃討戦へ参加していた。
いよいよ追い詰められたのを理解したのだろう大蛇は逃げ惑う者、牙を以て抗う者はおれど、降伏する者は一匹たりとも現れない。物の怪とてオブリビオン、過去より追い縋る腕。今を生きる自分達とはそもそも相容れない存在だと理解しているつもりでも、交渉の余地すら無いというのは物寂しい心地がした。だからといって、敵を斬り伏せる手を緩めることはしない。家光は、自らに課せられた役目を全うすることが民の安寧に繋がることを、誰よりも理解していた。
ふいに、ひときわ大きな体を持つ大蛇が躍り出る。裂けるほど大きなその口を開くことはなく、口先の小さな隙間から思い切り噴き出されたのは赤々とした炎。異世界の兵器のように放射されるそれは、豊かな森を焼き払わん勢いで燃え広がっていった。
「物の怪よ。汝が棲家すら捨てて我らに勝つと言うのなら、こちらも打てる手は全て打たせてもらう!」
家光は納刀と同時に神剣・鎚曇斬剣を構える。焼かれてゆく森の中、家光が纏う空気の流れが明らかに変わった。耳を劈くような静寂。何処からか、炎の熱を奪う冷たい風が吹き抜ける。
「天の水甕よ、土蜘蛛より奪いし剣を伝い、我が敵を飲み込め!」
静寂が破られ、どうと流れ込んだのは大水の如き濁流だ。炭と化した木々を薙ぎ倒し押し流すそれは、未だ抵抗を続けていた大蛇達をも呑み込んでしまう。多くの人や酒をその身に呑み込んだ物の怪は、皮肉にも彼らより更に大きな存在に流され成す術も無い。水中で呼吸もままならず、共に流されてくる木や岩が大蛇の体を削ってゆく。出力も物量も自然のそれを上回る攻撃は、残り少ない大蛇をその場から消し去るのに充分すぎるものだった。
濁流はやがて治まる。その点は災害と同様だ。異なる点といえば、そこに跋扈していた敵影全ての消滅が確認できることだろう。家光は鎚曇斬剣を納め、静まり返った山の風景を見渡した。
「これも戦無き世に必要……とはいえ、少しやりすぎましたね」
大蛇に焼かれてしまった上に、濁流が木々を押し流したことで一帯が開けている。自然豊かな山の一角に生まれてしまった広場は後々、宿場町の者達により塚が建てられた。そこでどんな戦いがあったのか、町の人間には一切伝えられていない。いずれ誰からともなく|大蛇塚《おろちづか》と呼ぶようになるのだが、それは役目を終えた猟兵達はあずかり知らぬことだった。
成功
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