レクイエスカット・イン・パーチェ
●温かなものの源
光が温もりを齎すのならば、闇は冷たさを齎すものであったかもしれない。
闇は冷たく、静寂であり、また終わりを想起させるものであった。
ダークセイヴァーに生きる者たちであれば、それが常。
陽光を知らず、あるのは月光の僅かな明かりのみ。
確かに陽の光を知る者からすれば、月光は頼りない光であったし暖かさを感じさせるものではなかった。
それでも人は生きている。
ダークセイヴァーに生きた者が死んだ時、それは安らぎを齎されるものではない。
死は救済でもなければ終わりでもない。
ダークセイヴァー上層。
『魂人』として転生した彼等は終わるのことない苦しみに苛まれる。
「『永劫回帰』、この力があれば……死を否定することができるかもしれない。私にとって、私の生命以上に大切なものを守れるかもしれない」
ダークセイヴァー上層において、その『魂人』は囲われていた。
何に、とは『闇の種族』にである。
そんな中、彼女は慰みものにされる時間の中で、そう思っていたのだ。赫灼たる炎に包まれながら。
それが切欠であったのかはわからない。
だが、彼女はそう思ってしまったのだ。
「いや、聞こえる。聞こえる……! あの子の声が聞こえる!」
幻聴であったのならば、と思うことはなかった。
彼女にとって『永劫回帰』の源となる温かな記憶というのは、下層たる第四層にて生きている家族、息子のことだ。
自分が母親であるということ。
ただそれだけが彼女の温かな記憶であった。
月光が照らす日々の中で、己の息子だけが自分の心を暖かく照らしてくれている。あの子が生きていてくれるのならば、自分の生命など惜しくはない。
「望みたい。望んでしまう。この『永劫回帰』の力があれば……! あの子を救える。あの子を助けてあげられる。あの子の道行きに降りかかる火の粉を払ってあげることができる!」
だが、その言葉は届かない。
「無駄だ。生きるのならば苦しみを得なければならない。永劫に生きるのならば、永劫に苦しみを得よ」
そんな彼女の前に現れる『闇の種族』、『赫鷹』。
彼の周囲には炎が渦巻き、『魂人』たる彼女を包み込む。
炎が肌を焼き、望む心さえも焼き滅ぼすように彼女に絡みつく。
「何度でも廻り苦しめ」
その言葉は炎を持って彼女を攻め立てながら、ゾッとするほど冷たい声であった。
心底どうでもいいと思いながら、どうでもいい存在に執着する矛盾。
それが一層に『魂人』の心を抉る。
「救済など有りはしない」
苦しみこそが生。
『魂人』が『永劫回帰』によって死を否定するのならば、苦しみを与え続けることこそ己の存在理由であるというように『闇の種族』たる『赫鷹』は炎を持って『魂人』の女性を焼き続ける。
火による痛みが彼女の心をさいなんでいく。
苦しみ、哀しみ、懊悩し、絶望していく。
それこそが生の正しき在り方であるというように『赫鷹』は狂気に彩られた炎で『魂人』の女性を焼き続けるのだった――。
●願わくば
「……母さん?」
それは見上げる瞳であった。
月光が照らす闇夜。いや、ダークセイヴァー第四層において見上げる空が天井でしかないことを知っているのは猟兵だけであったことだろう。
『闇の救済者』と呼ばれる彼等は、ヴァンパイア支配に抗うべく、砦を築き戦ってきた。
今日もまた支配に対する抵抗によって少なくない者が死んだ。
それを少しばかり羨ましく月光を見上げる少年は思ったのだ。
もし、戦って死んだのならば。
「母さんにまた逢えるかもしれない」
そうであればいいと思う。
苦しみしかない人生であるから。せめて死んだ後は安らかなる日々を送りたい。
母は己を庇って死んだ。
ならば、己も誰かのために生命を投げ出そうと今日迄生きてきた。
「……それももう、すぐかもしれないな」
弱気ではない。ただの事実だ。
この砦に残された人員は残り少ない。
空より迫る『ハルピュイア』の勝利を確信したような笑い声が響き渡る。
「この戦いが誰かの救済になるのなら……!」
自分は最後まで戦おう。
己は、あの勇敢なる母の息子なのだ。せめて最期の時まで雄々しくあろうと、少年は意志宿る瞳で月光に舞う『ハルピュイア』をねめつけるのだった――。
●望むのならば
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はダークセイヴァー上層。ですが、今回の事件は少々趣きが異なります」
彼女の告げる言葉に猟兵たちは如何なることかと思っただろう。
ダークセイヴァー上層は強大なる『闇の種族』の支配する領域である。第四層で死した人々が『魂人』として転生し、あらたなる絶望に抗わなければならない。
「私達猟兵の存在を知った『魂人』の中に、死に別れた『第四層でまだ生きている家族』の声が聞こえるという人々が現れ始めたのです」
それは如何なる原理であるのかはわからない。
新たな地獄が見せる理であったのかもしれない。
現に一人の『魂人』の女性の元には『闇の救済者』として戦う息子の声が聞こえているのだという。
「彼女は『もう一度家族の元に帰り、家族を助けたい』と思っているのです」
しかし、それが容易いものではないことは理解できる。
第四層から第三層に至ることでさえ、猟兵たちにとっても過酷なる道のりだったのだ。それを逆走する。それも『魂人』を連れて。
「困難なことは承知の上です。ですが、皆さんの助けがあれば、或いは……!」
ナイアルテの瞳が爛々と輝いている。
絶望に濡れる瞳に浮かぶ涙を拭ってやれるのは希望の手だけだ。ならばこそ、彼女は猟兵たちに望む。それが例え、困難な道であったとしても。
「その『魂人』の彼女は『闇の種族』、『赫鷹』に囲われて日々炎に寄る責め苦によって慰みものにされています。彼女を救い出していただきたいのです」
同時に彼女は『赫鷹』の間近で長い間虐げられてきた。
どうしようもなく強大な存在である『赫鷹』に勝つ必要はない。彼女を逃がすことができればそれでいいのだ。
だが、それが困難であることもまた事実。
「もしかしたのならば……長い間『赫鷹』によって虐げられてきた彼女は、彼の弱点を理解しているかもしれません」
それが希望というのならばか細い糸のようなものであったかもしれない。
けれど、そのか細い糸を手繰り、より合わせることができれば。
「どうかお願いいたします。彼女を逃し、共に第四層へ向かいましょう」
きっとそれがより良い未来を掴むための最初の一歩であるとナイアルテは確信し、猟兵たちを送り出すのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
ダークセイヴァー上層にて『闇の種族』、『赫鷹』に虐げられる日々を送る『魂人』の女性。
彼女の耳に届く第四層にて死に別れた息子の声。
その声を頼りに家族のもとに戻り、助けたいと願う『魂人』の願いを叶えるシナリオになります。
●第一章
ボス戦です。
『闇の種族』、『赫鷹』との戦いです。
救出対象である『魂人』の女性は、長い間虐げられてきたため、『赫鷹』の弱点らしきもの理解を示しています。
それは『首元の包帯の部分だけが炎をまとわない』というものです。
恐らく、その首元の包帯の部分だけが他と違って脆いのかもしれません。
この弱点らしきものを突けば倒せるかもしれませんし、倒せずとも『魂人』の女性を逃す事ができれば成功です。
逃げ切ってしまえば『赫鷹』はそこまで彼女に執着しません。
●第二章
第三層と第四層を繋ぐ困難な道程をゆかねばなりません。
皆さんの頭上には在るはずのない星空が広がり、皆さんを眠りに誘ってきます。抗いがたい睡眠欲求をどうにかして躱し『魂人』の女性と共に第四層に向かわねばなりません。
また『魂人』をみなさんが連れているため、おそるべき『見えざる禁獣』にも目を付けられているようです。
●第三章
ついにたどり着いた第四層。
『魂人』の女性の生き別れた息子は『闇の救済者』として砦で戦っています。
ですが、今まさに敗北しようとしています。
『魂人』の女性と共にヴァンパイア配下である『ハルピュイア』を一層し、殲滅しましょう。
それでは美しき地獄、更に続く地獄、その中で尚生きることを諦めない『魂人』を救うために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『赫鷹』
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POW : 鬼哭炎
【地獄の炎を纏い、侵食する力を得た怨嗟】を込めた武器で対象を貫く。対象が何らかの強化を得ていた場合、追加で【制御困難な激情噴出による判断力低下】の状態異常を与える。
SPD : 赫炎地獄
戦場全体に【赫炎渦巻く地獄】を発生させる。敵にはダメージを、味方には【地獄の炎を纏うこと】による攻撃力と防御力の強化を与える。
WIZ : 無辜の民
対象の周りにレベル×1体の【救われないまま死んだ魂が実体化したもの】を召喚する。[救われないまま死んだ魂が実体化したもの]は対象の思念に従い忠実に戦うが、一撃で消滅する。
イラスト:いしはま
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「鬼桐・相馬」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『闇の種族』、『赫鷹』は思う。
死を思う。
生を思うのならばこそ、死を思う。
生きることは苦しみを得ること。ならば、苦しみ続けなければならない。
「生きているのならば。永劫にお前たちが死を否定し続け、生き続けることをやめないというのならば、苦しみ続けろ。お前たちの言うところの救済とは存在しないものと知れ」
己の中にあるものがそう告げる。
生まれたことがこそが罪であるという。
どんな幼子にも、それがあるからこそ罰する。
その有様を彼は幾度も見てきた。
苦しみ続けねばならないのならば、生きている意味などあるのか。
喜びを得るために苦しみもまた得なければならないなど合って良いのか。
故に彼は狂う。
己が間違っていたのかと。
故に炎で持って己の心をこそ慰めるのだ。痛みに喘ぐ声も。悲鳴も、恐怖に慄き、絶望に染まるものを見るからこそ、己の在り方は間違っていないのだと心を慰める。
「お前たちはそのために要るのだ」
「そんな、こと……あなたは生まれてきたことの、『存在』するということの、その喜びを知らないのですね」
「何を言っている。苦しみだけがお前たちの生の意味だ。それ以外に何を見出す。意味のない言葉を」
「いいえ。幸せ、とは……生まれてきたことの喜びを知ること。私は」
『魂人』の女性は炎に包まれながらも、その瞳でもって『赫鷹』を見つめる。
『永劫回帰』によって死を否定し続ける。
声が聞こえるのだ。
己の残してきた死に別れた息子の声が。
ならばこそ、彼女は絶望なんてできない。
きっとこれは彼女の戦いだ。
願いとは戦わなければならないこと。
「私は、あの子の元に戻りたい。私はそう『思う』――」
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
どんな形であれ
この世に生を受けたこと自体が幸せで喜びなのさ
…苦痛や絶望を慰めと思い込んでいる
貴様たち闇の種族には理解できないのだろうが
指定UC発動、分身を10体生成
俺と分身の黒剣全てに「属性攻撃(氷)」で氷属性を宿し
連携して一斉に赫鷹に斬りかかる
もちろん、狙いは炎纏わぬ首の「部位破壊」だ
苦痛を与えるなら、まず自分が苦痛を受ける意味を知るんだな!
反撃の赫炎地獄を「属性攻撃(氷)、オーラ防御」で纏った絶対零度の氷のオーラで防ぎつつ
分身のうち1体に魂人の女性をかっさらわせよう
かっさらったら即撤退だ
俺たち猟兵はあなたを助けに来た
…第四層まで戻りたいなら、僕らが護る
『闇の種族』、『赫鷹』の瞳は狂気に染まっている。
言葉は届かないだろう。
これまで何人の『魂人』たちが彼の持つ炎によって焼かれてきたかなど知る由もない。
一人二人ではないことは確かであろう。
それほどまでに苦しみと生きることを結びつけることしかできない妄執に囚われた『赫鷹』は、己の持つ炎でもって『魂人』たちを燃やし続け、己の心を慰める。
苦しむだけなのが生であればこそ、死した後も罰せられることを肯定できるからである。
「故に廻る。お前たちの苦しみは、そうして続く。救済など願うから、その愚かしさ故に人は苦しみ、生きるということを肯定できるのだ」
地獄の炎の如き赫炎が『赫鷹』の体を包み込み、『魂人』の女性の首を掴む。
「ああ……っ!」
彼女は痛みに、苦しみに喘ぐだろう。
だが、それすら『赫鷹』には関係ない。ただ苦しみ続けることをこそ共用し続けるのだ。
絶望にまだまみれていない瞳を『赫鷹』は見ただろう。
炎の最中に走るものがあった。
白く変化した体をはしらせ、漆黒の鎧を打ち鳴らしながら渾沌闇技・分身乱舞(コントンアンギ・ブンシンランブ)はユーベルコードの輝きでもって解き放たれる。
叩きつけられる黒い剣が『魂人』の女性の首を掴む『赫鷹』の腕を切りつける。
「……なんだ、お前たちは。罪人ではないな。『魂人』でもない」
『赫鷹』の瞳が捉えたのは、黒き鎧と黒き剣を持つ館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)の姿であった。
氷の属性を宿した剣の一閃が切りつけた腕は炎を噴出しながら繋がる。だが、その手が掴んでいた『魂人』の女性はもうひとりの敬輔が抱えていた。
「返せ!」
吹き荒れる炎をさらにもうひとりの敬輔が氷の力宿す刃でもって切り裂きながら突っ込む。
「どんな形であれ。この世に生を受けたこと自体が幸せで喜びなのさ」
その言葉に『赫鷹』は激高するだろう。
その幸せというものが在るからこそ、人は苦しみにまみれて生きなければならないのだ。幸せ立ち宇野ならば、何故罰せられなければならないのだと咆哮するように炎で襲いかかる。
「……苦痛や絶望を慰めと思い込んでいる、貴様たち『闇の種族』には理解できないだろうが」
振るう一撃が絶対零度となって氷のオーラと成す。
激突するユーベルコードの力は、周囲に凄まじい衝撃波を生み出すことだろう。
しかし、敬輔はユーベルコードによって白く変化した分身と共に走る。剣を持って炎を切り裂き、『赫鷹』に迫るのだ。
「理解! 理解! 理解だと! お前たちは理解しているというのか! 苦しみこそが生を彩るものであると! 何処まで行っても生命は苦しみに苛まれるしかないのだ!」
振るう炎が氷と激突する。
凄まじい力である。
『闇の種族』はこれまで猟兵達にとって強敵であり、難敵であった。
倒すことが難しい敵ばかりであったことだろう。
だからこそ、敬輔は抱えた女性を見る。
「俺たち猟兵はあなたを助けに来た」
「猟兵……! なら、あの首元の包帯を。あそこだけが、炎に包まれていないのです」
「ああ!」
分身たちが一斉に『赫鷹』へと斬りかかる。
吹き荒れる炎に吹き飛ばされる分身達。だが、それでも諦めない。
『魂人』の女性を逃すこと。
それがこの戦いの意味であり、また同時に苦しみだけが生を意味であると言う『赫鷹』を否定するための戦いだ。
『魂人』の女性が抱く強烈な『家族のもとに戻りたい』という願い。
それを敬輔は叶えるためにこそ剣を振るう。
「苦痛を与えるなら、まず自分が苦痛を受ける意味を知るんだな!」
炎が分身たちを吹き飛ばし、霧散させる。
その吹き荒れる炎の中から敬輔は飛び出し、黒剣を『赫鷹』の首へと叩きつけ、その首を刎ねるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
忍・シノビ
※味方にも姿を見せず、声だけが聞こえてくる。無駄に喋らず、必要な時は忍術で化けて変装して現れる。
(ーー私は影。夜に征き、空に舞い、闇に忍ぶ者……!)
(報酬分の働きはするでござる。今度の忍務の獲物は外道か……有り難い。その方が遠慮なくやりやすいでござる!)
忍装束に身を包み、目立たないようダークセイヴァーの闇に紛れるでござる。
ギリギリまで隙を窺いUC【手裏剣投げ】発動。忍者手裏剣を放ち、動きを封じるでござる。そして、UC【降魔化身法】を同時使用!化身忍者の職業能力により、怒りと共に融合変身するでござる。
忍刀・鬼哭と啾々の|二刀流《2回攻撃》で首を急所突きして暗殺するでござる。
(ーー天誅にござる!)
『闇の種族』、『赫鷹』の首が黒剣の一閃によって刎ねられる。
宙を舞う首。
鮮血がほとばしる代わりに吹き荒れるのは炎であった。
『赫鷹』の放つ地獄の炎。
それが刎ねられた首と胴を繋ぎ、人外なる証を示すように繋がる。
「苦しみ。哀しみ。あらゆるものが人の生命を試す。罪有りきというのならば、それこそが証明であるように。罪に対しては罰を与えなければならない」
地獄の炎がダークセイヴァーの闇夜を煌々と照らし、逃げる『魂人』の女性の背中を照らす。
猟兵たちの助けによって彼女は第三層から第四層へと戻ろうとしている。
逃げ出すことに変わりはないが、けれど、彼女は第四層で生きている死に別れた『家族』の元に帰りたいと願っているのだ。
猟兵であっても第三層と第四層を繋ぐ道のりは険しいものであった。
どれもが難しいものであったし、一つとして簡単なことはなかった。
けれど、忍・シノビ(超級忍者の化身忍者にして忍者【正体不明】・f39234)は機を伺っていた。
彼女は姿を見せない。
例え、救わなければならない『魂人』の女性が窮地にあったとしても、そのギリギリまで目立たぬようにダークセイヴァーのヤイに紛れる。
言葉を発することはない。
それをすれば彼女の存在が露見する。
ならばこそ、彼女は言葉ではなく思うに留めるのだ。
(ーー私は影。夜に征き、空に舞い、闇に忍ぶ者……!)
敵は外道。
ならば己は遠慮せずに倒すことができる。
だが、その敵の存在は『闇の種族』。尋常ならざる力を有し、これまで『闇の種族』を完全に倒せたことは多くない。
闇夜に紛れて見つめる『赫鷹』もまたそうである。
弱点である首を刎ねられてもなお、消え失せない。
首を炎でつなぎ、包帯でもってつなぎとめている。そこが急所でありながら、尚も彼は炎とともに猛っている。
炎が彼を守るようにゆらめき、またその炎でもって逃げ出した『魂人』の女性を追いすがる。
その瞬間、『赫鷹』の体が止まる。
まるで止め絵の中の住人のように不自然に体を止めたのだ。
「……なんだ? これは?」
シノビのはなったユーベルコード、手裏剣投げの一撃が『赫鷹』の影をその場に縫い止めている。
だが、恐るべき力である。
『赫鷹』は影ごと引き剥がすかのように動き始めているのだ。
(動きを止められない……! だが!)
シノビが影より走り出す。
今を置いては好機はない。ならばこそ、彼女は一気に駆け出し、忍刀の一閃を『赫鷹』の首元へと放つ。
(――天誅にござる!)
斬撃が『赫鷹』の包帯に包まれた首を切り裂く。
血潮の代わりに炎が噴出する。
だが、その炎は、一撃目よりも弱まっている。
確実に消耗させている。弱点であることは明白。
ならばこそ、シノビは再び闇に紛れる。
外道をこの手で仕留めるその時まで、シノビは声も姿も発することなく、静かに『赫鷹』の行く手を阻み続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
七那原・望
言いたいことはわからなくもないですけど、存在し続ける事、そして可能なら種を未来に残す事。生の意味なんてそれだけです。
その上で他者を必要以上に踏みにじらないなら、幸せになるも苦しむもその人の勝手です。
お前に決めつけられる筋合いはありません。
果実変性・ウィッシーズガーディアンに変身。
第六感と気配感知で敵の行動を見切り素早く接近。無辜の民は浄化属性の全力魔法で浄化します。これで救われるかは知りませんけど。
そう、それが弱点ですか。
敵の武器を弾きつつ早業で首元を斬り飛ばしましょう。
あなたの望みは叶えます。けれど永劫回帰を使うつもりなら覚悟してください。
あなたがあなたではなくなるかもしれないのですから。
生は苦しみの連鎖である。
生まれたことの罪。その罪に対する罰であるというのならば、そのとおりであったのかもしれない。
今も炎から逃れるようにして暗闇の中を走る『魂人』の女性の顔を見ればわかる。
苦しみにまみれている。
生きているから苦しみを得ている。
ならば、『闇の種族』、『赫鷹』の言葉もまた真理であったのかもしれない。
「苦しみを得続ける。それが永劫に生きるということ。お前たちの生の意味だ」
猟兵によって刎ねられた首が炎によって繋がっている。
強大な『闇の種族』を打倒しきれたことは多くはない。強敵である以上に難敵でもあるのだ。
「いいたいことはわからなくもないですけど、存在し続ける事、そして可能なら種を未来に残すこと。生の意味なんてそれだけです」
七那原・望(封印されし果実・f04836)は逃げる『魂人』の女性と『赫鷹』の放つ炎との間に割り込み、その顔を上げる。
目元を隠した黒布の奥にある瞳の色も、その感情の色もうかがい知ることはできなかっただろう。
だが、彼女の言葉が伝える。
「その上で他者を必要以上に踏みにじらないなら、幸せになるも苦しむもその人の勝手です」
「ならば」
「お前に決めつけられる筋合いはありません」
望む。
ユーベルコードの形が変わる。
それは望と『赫鷹』の両者の力であった。炎の向こう側から現れるのは無辜なる人々。きっとそれはこれまで『赫鷹』が虐げ殺してきた者たちの姿であったことだろう。
彼等が一斉に望に襲いかかる。
だが、そのいずれもを望は一瞬で躱す。
「わたしは望む……果実変性・ウィッシーズガーディアン(トランス・ウィッシーズガーディアン)」
その手にしたの剣は一瞬で紅き雷光とともに無辜なる人々を浄化し、その姿を炎へと変える。
救われるかはわからない。
殺されてしまった『魂人』たちが今度こそ本当に死という救済に出会うことができたのかさえ、望にはまだわからない。
だからこそ、彼女は戦うのだ。
「……望む。望んだところでなんになるというのだ。救済を望んだとて、新たな地獄が目の前に広がるだけだ。何故それが理解できない」
首元擦る『赫鷹』。
苛立たしげに、その評定を歪め、包帯に包まれた首元から炎がちらつく。
やはり、と望は理解しただろう。
手にした偃月刀の一撃が望に襲いかかる。
凄まじい技量であると言えるだろう。それほどまでに『赫鷹』の力は『闇の種族』としても高い水準に在る。
しかし、度重なる猟兵の首に対する攻撃は、確かに噴出する炎の量を減らしてきている。
倒しきれなくてもいい。
ただ『魂人』の女性を逃すことができればいいのだ。
ならばこそ、望は『赫鷹』を前にして立ち回る。
「あなたの望みを叶えます。けれど、永劫回帰を使うつもりなら覚悟してください」
劣勢、とも取れる望の状況に『魂人』の女性のユーベルコードの輝きが放たれようとするのを彼女は手で制する。
それは使わせない。
使わせてはならないと望は思うのだ。
彼女が今まで耐えてこられたのは、その永劫回帰のちからの源である温かな記憶あればこそ。
使いすぎれば当然トラウマにまみれて心が砕けてしまう。
だからこそ、望はそれを望まない。
「あなたがあなたでなくなるかもしれないのですから」
それは例え、第四層に至るのに必要なことだったのだとしても。
『魂人』の彼女を呼ぶ声、その温かな記憶の源たる子を思う母としての心が砕けてしまえば意味がない。
だからこそ、望はか振り降ろされる偃月刀の一撃を受け止め、振り払う。
「あなたが望み、わたしが叶える。そのためには」
偃月刀の一撃をいなし、望は飛ぶ。
決して温かな記憶を砕かせない。
永劫回帰を使わせない。
そして、目の前に迫る『赫鷹』の地獄の炎で希望を照らさせはしない。
振るう紅き雷光纏う剣の一閃が『赫鷹』の首元へと吸い込まれ、その首から鮮血の如き炎を噴出させる。
「俺を……! この俺を……! 止めるか!」
「ええ、わたしが、あなたを此処で止めます――」
大成功
🔵🔵🔵
沙・碧海
赫鷹だっけ
お前の思想はどうでもいいや
そうやって一生苦しんでいればいいんじゃない?
オレはそっちのおねーさんに用があるんだ
邪魔しないでくれよ
呼び出される魂は厄介だ
薙ぎ払ってもいいけど……必要ない殺しは趣味じゃない
だから動きを止めようか
ほら、頭を垂れろ
狙うは赫鷹
思念を少しでも止めることができれば魂達も止まらないかな?
隙ができれば一気に前進
スライディングで身を低くし敵の元へと向かう
えーっと、おねーさん
弱点教えて!
首?分かりやすくて助かる!
「たちきり」を構えて狙うは首元
首を狙っているという殺意が伝わればいい
切断狙いで刃を振るい攻撃できれば万々歳
駄目でも隙は出来るよね?
おねーさん、一緒にここから離れるよ!
猟兵たちの攻撃が『闇の種族』、『赫鷹』の身を押し止める。
逃げる『魂人』の女性は殺させてはならない。
彼女は戻りたいと願っている。第三層から第四層に。下層にいる死に別れた家族の元に戻りたいと願っている。
温かな記憶が標となるだろう。
だが『赫鷹』がそれをさせない。
吹き荒れる炎は、まるでそんな温かな記憶すらも焼き滅ぼすかのように満ちていく。
「生こそ苦しみの証左。苦しみこそが生きることの意味」
『赫鷹』の言葉と共に放たれる偃月刀の一撃を受け止める刃があった。
「お前の思想はどうでもいいや。そうやって一生苦しんでいればいいんじゃない?」
沙・碧海(ストレイウルフ・f39142)は凄まじい膂力で放たれた偃月刀の一撃を受け止める。
だが、その一撃は重たい。
腕が軋む。
『闇の種族』の強大さを知らしめられるかのような一撃。
「オレはそっちのおねーさんに用があるんだ。邪魔しないでくれよ」
「お前たちの理屈など俺には必要ない。お前たちが苦しみを否定するのならば、俺こそが生の苦しみを肯定しなければならない。そうでなければ、罰を与えられた罪ありし者たちが報われない」
弾き飛ばされる碧海。
周囲に満ちる無辜の民たち。
『赫鷹』によって殺された魂たちが炎のゆらめきの彼方から迫りくる。
それを碧海は見つめる。
薙ぎ払ってもいい。けれど、必要ない殺しをするのは趣味ではない。彼等は一度殺された存在だ。
二度も殺されることなんてないと碧海は、その瞳をユーベルコードに輝かせ、狼の気配(コウベヲタレロ)を発露する。
それは全身から発せられる殺気であった。
威圧する視線は無辜の民たちを止めるだろう。
「その程度の殺気で俺の動きを止められると思ったか」
だが、確実に隙が生まれている。
一瞬であったけれど、それでも『赫鷹』を躱すように身を低くして偃月刀の一撃をかいくぐる。
彼が見ていたのは『魂人』の女性であった。
彼女が『赫鷹』の弱点を知っているかもしれないとグリモア猟兵は言っていた。ならばこそ、助言を求めるのだ。
「えーっと、おねーさん。弱点教えて!」
「多分、あの包帯の蒔かれた首です。あそこだけが炎に包まれず、また皆さんの攻撃で血のように炎が噴出するのです」
その言葉に碧海は『魂人』の女性を背に庇うようにして立つ。
迫る『赫鷹』の気迫は凄まじいものであった。
だが、たじろぐ理由など無い。
たちきらねばならぬ場所は明確である。ならばこそ、碧海は走る。
背に守るべきものがあるのならば、彼は強敵にだって立ち向かうだろう。
「首? わかりやすくて助かる!」
振るう『たちきり』の一撃。
偃月刀に阻まれているが、炎の勢いは失せている。ならばこそ、彼は殺意を持って見つめる。
そう、じっと睨む。
ただそれだけいいのだ。それだけで碧海の瞳はユーベルコードとなって、狩る者と狩られる者を明確にする。
「狙いがわかるのならば、防ぐことなど容易い」
「でも、それでも隙はできるよね?」
振るう一撃は的確に『赫鷹』の首元を執拗に狙い続ける。
隙とは己が首を断ち切るための隙ではない。『魂人』の女性が逃げ切るための隙だ。
『赫鷹』は『闇の種族』だ。
強大な敵。だからこそ、『魂人』一人に執着しない。彼女が逃げおおせるための時間をこそ碧海は稼ぐのだ。
「邪魔しないでくれよ」
碧海の放つ斬撃と『赫鷹』の斬撃が激突して火花を散らす。
暗闇の中を駆けていく『魂人』の女性の背を照らし、そしてなおも碧海は『赫鷹』と打ち合うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
苦しみを押し付けるだけの悲しい存在だね
幸せなんて自分で見つけ、見出すもんだよ
支配者面してそれを否定するなんて、みっともないね
視野が狭いんじゃない?
もう少し色んな経験をして、広い視野を持ったらどう?
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
正面から斬り刻む!
【Code:C.S】起動
時間加速…高速戦闘開始
『オーラ防御』で全身を覆い、炎を阻みながら近接戦闘
2剣による『2回攻撃』で連続して攻撃し、手数で押していこう
速度で翻弄して攻撃を続け、首元の包帯を狙っていこう
零距離からの『斬撃波』で『吹き飛ばし』て体勢を崩してから首元への一撃を試みるよ
どうせ生かしておいても他の犠牲が出るだけだしね
人の苦しみが本当にそれだけであったとちうのならば、人は生きていくこと自体が困難であったことだろう。
けれど、苦しみを得ることができたのならば、喜びもまた得ることができるものである。
だからこそ、人は見出す。
その両の眼で見えるだけの世界が全てではないのだとしても、それでも光の如きものを見出すことができる。
『魂人』たちが温かな記憶をもって『永劫回帰』のちからを使う事ができることが証明であった。だからこそ、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は否定する。
『闇の種族』、『赫鷹』の言葉を否定する。
「苦しみを押し付けるだけの悲しい存在だね」
正面から斬り込む玲の斬撃。
蒼い残光を残す刀身が二振り。『赫鷹』の放つ偃月刀の一撃と交錯し、火花を散らす。
凄まじい衝撃が周囲に撒き散らされる。
「人は生きているだけで苦しみを得るものだ。罪には罰を。罪が生まれながらにして人の穢れだというのならば、苦しみという罰でもって灌がねばならぬ」
故に苦しみを与え続ける。
『赫鷹』の放つ炎は、その汚れを浄化するものであるとばかりに彼は偃月刀を叩きつける。
大地に玲の足が沈む。
亀裂走り、砕ける地面。
だが、それでも玲の瞳はユーベルコードに輝く。
「幸せなんて自分で見つけ、見出すもんだよ」
封印が解除される。
模造神器に施された時間加速の理。
解除された封印は玲の寿命を削る。だが、それ以上に彼女の動きが加速し始める。
「Code:C.S(コード・クロノシール)――支配者面してそれを否定するなんて、みっともないね。視野が狭いんじゃない?」
蒼い残光が暗闇の世界に刻まれる。
紅い炎すらもかき消さすほどに斬撃が『赫鷹』を囲う。
炎が吹き荒れる。
斬撃が叩き込まれるたびに血潮のように吹き荒れるもの、その炎はすぐさま『赫鷹』の傷を塞いでいく。
「手数で押す!」
「無駄だ。お前たちの言葉は俺には響かない。俺の伽藍堂の心には虚無のようにしか感じられない。お前たちがやろうとしていることは無意味だ」
「そういうところが、視野狭窄っていうんだよ。もう少し色んな経験をして、広い視野を持ったらどう?」
例えば、敗北であるとか。
玲の唇がそう呟いた瞬間、彼女の姿が『赫鷹』の視界から消える。
封印の解除はさらに進む。
時間加速。それは彼女を高速戦闘の領域、その先へといざなう。一瞬で『赫鷹』の背後に回り込み、ゼロ距離からの斬撃波の一撃で持って凄まじき体幹をもつ『赫鷹』の体勢を切り崩す。
さらに正面に飛び込む。
尋常ならざる速度。
背面に与えられた衝撃よりも早く彼女は『赫鷹』の眼前にあった。
狙うのはただ一点。
「どうせ生かしておいても他の犠牲が出るだけだしね」
そう、首元の包帯。
そこだけが炎に包まれていない。
それが弱点。ならばこそ、玲は斬撃を放つ。
撃ち込まれた二刀の斬撃が鋏のように『赫鷹』の首を断ち切る。刎ねられた首が舞い上がる。
くるり、くるりと、回転する首。
その『赫鷹』の首がねめつけるは玲。
だが、これで終わりではない。まだ炎が繋がっている。あの炎が在る限り、『闇の種族』である『赫鷹』は滅びない。
吹き荒れる炎。
その炎と唯一繋がる首が再び『赫鷹』の胴と繋がる。
「勢いが弱まってる……今のうちにね」
玲の背後には走る『魂人』の女性の背中がある。例え、倒しきれなくても此処で押し止める。
そうすれば猟兵たちの勝ちだ。
玲は加速していく時間の中、その勝利を確信するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
まあなんでも良い
退場しろ
状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを世界の外へ破棄
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給
魂人も守りの圏内に収めておく
眼の前の空気を起点に絢爛を起動
破壊の原理を斬撃に変換し、因果の原理にてオブリビオンのみを対象に
戦域全て隙間なく、終わりなく、遅滞なく斬滅する
万象一切に終わりを刻む破壊の原理に例外はない
強くとも弱くとも結構
等しく終わらせるまでの話
実体化してくる魂は魂人を連れて無限加速で無視して通過
通過点に時間など掛けぬ
速やかに向かおう
※アドリブ歓迎
くるりと舞う首。
その首は『闇の種族』、『赫鷹』のものであった。
首を刎ねてもつなぎとめる炎。
だが、その炎が弱まっている。弱点と呼ばれた首への斬撃は確かに『赫鷹』のちからを削いでいる。
しかし、その力の底が見えない。
ダークセイヴァー上層。
その世界にあっての絶対的な支配者。
それが『闇の種族』である。強靭なる力。それが猟兵達に向けられ、なおかつ弱点をついてなお、『魂人』の女性を逃さぬと迫っている。
「苦しみこそが永劫に続く。苦しみだけが生きている証。それを否定するのならば、その否定によって潰されなければならない」
『赫鷹』の言葉は逃げる『魂人』の女性の心をえぐるものであったことだろう。
だが、その言葉を長く紡がせることなどない。
故にアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は興味なさげにつぶやく。
「まあなんでも良い。退場しろ」
その言葉と共に輝くユーベルコードが絢爛(ケンラン)と光を放つ。
周囲の空間を完全支配し、原理で任意に変換する。
破壊の原理でもって斬撃へと変換し、因果の原理にて『赫鷹』に狙いを定める。
放たれる蒼い光。
それが斬撃となって『赫鷹』へと迫る。
一切の隙間なく戦域全てに終わり無く遅滞なく斬滅することを是とするような力の奔流がほとばしる。
「……!」
しかし、その斬撃の尽くが炎によって受け止められている。
いや、違う。
炎によって生み出された無辜の民。
それがすべて斬撃を受け止め霧散していくのだ。
「だからどうした。万象一切に終わりを刻む破壊の原理に例外はない」
「終わりなどない。永劫だけがあるのだ。苦しみは罰である。永劫を願う罪に対する罰だ。故に俺は与える。炎によって、それを与えようというのだ」
揮われる炎。
それをアルトリウスは受け止める。
原理によって阻まれる炎が彼の眼前で揺れる。
強力な力であることは当然のこと。
けれど、アルトリウスは揺らがない。
「強くとも弱くとも結構。等しく終わらせるまでの話」
アルトリウスは無辜の民たちが炎の中から飛び出してくるのを見やり、彼等を押し留める。
「通過点に時間など掛けぬ」
どれだけ炎と斬滅する力を無辜の民が押しのけてやってくるのだとしても、原理を前にしては無意味であるというようにアルトリウスは敵を押し留め続ける。
『魂人』の女性がこの領域から逃れられればそれでいいのだ。
ならばこそ、アルトリウスは速やかにこれを行うべく己の力を行使する。
廻る原理。
生み出されるのではなく、組み上げる魔力が圧倒的な『闇の種族』たる『赫鷹』の猛攻をしのぎ続ける。
「……煌めけ」
ユーベルコードの輝きを受けて満ちる蒼い燐光。
その輝きを前に『赫鷹』の紅蓮なる炎は霧散し、消えゆく定めであったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メリー・スペルティナ
ふふん、生は苦しみだけだ意味などないとか言う輩ほど、案外死に際に無念や未練を遺していったりするものですわよ?
第一、己の生の意味など自分で決めればいいんですわ
頼まれたのは彼女を此処より連れだす事、
そして相手が戦場を地獄に変えるというのなら……!
【冥想血界:果てなき永劫の戦】を発動、わたくしと彼女に不死性を付与し、
彼女に先に行かせ、わたくしが時間まで足止めを務めますわ
血晶石を撒き、呪詛の罠を仕掛け、
暗闇を利用しそれでも足りないなら第六感まで総動員して、可能であればシュバルツシュテルンを手に、首を狙って仕掛けていきますわよ!
多少の怪我など無視、「心さえ折れないのなら負けはしない」というやつですわね!
「ふふん、生は苦しみだけだ意味などないとか言う輩ほど、案外死に際に無念や未練を遺していったりするものですわよ?」
その言葉は真理であったことだろう。
また事実であった。
『闇の種族』、『赫鷹』にとって、それは耐え難い過去であったのかもしれない。
過去の化身たる彼にとって生とは苦しみである。
生まれたこと自体が罪であるというのならば、生とは苦しみという罰。
故に彼は狂ったのだろう。
その瞳に宿る狂気の炎が、彼の体を包み込む。
その様をメリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)は見やる。
「第一、己の生の意味など自分で決めればいいのですわ」
「人に己の生を決めることなどできはしない。愚かしくも、その裁定を他者に求めた時点で、その生命は与えられる罰に怯えることしかできなくなるのだから」
吹き荒れる『赫鷹』の炎。
それは地獄の炎であり、本来は煉獄の炎であったことだろう。
罪を浄化する罰の炎。
故に、その魂は清らかなるものとなり、穢れを注ぎ落とされる。
だが、『闇の種族』たる彼にとって、その炎は苦痛を与えるためだけのものであった。
『魂人』の女性をさいなんでいた炎。
そこから逃れることなど許さぬとばかりに迫る炎を前にメリーは頭を振る。
「ふふん、見せてやりますわよ、今を生きる者の強さ、その想いを。……さあ、死んでる暇なんかありませんわよ!」
メリーの瞳がユーベルコードに輝く。
世界を上書きする紅い雨。
それは一瞬で『赫鷹』を捉える紅き鎖となって彼をその場につなぎとめる。
さらに、そのユーベルコードの輝きは、『魂人』の体を不死化する。
漲る生命力は、彼女の足をさらに脱出へと向かせるだろう。
「……これは……!」
「わたくしの不死性のおすそ分けですわ。終わりなき戦いを征く者であるのなら!」
メリーは頷く。
彼女がこの領域を抜けることができれば、猟兵たちの勝ちなのだ。
ならばこそ、メリーは『赫鷹』を足止めする。
自身の身一つでそれが為すことができるのならば安いものだ。ばら撒く血晶石の罠。
呪詛が満ちて、『赫鷹』を押し止める。
しかし、鎖を引きちぎり、呪詛の罠すらも踏み抜いて『赫鷹』がメリーに迫る。
「苦しみから逃れるすべなど無い。救済など無い。何故それを理解しない。永劫に生きるということは、永劫に苦しみ続けるということなのだぞ」
揮われる偃月刀の一撃をメリーは己の手にした禍々しき波打つような刀身の黒き剣で受け止める。
受け止められる!
『闇の種族』とはいえ、これまで猟兵達によって弱点である首を断ち切られ、消耗しているのだ。
未だ倒しきれぬ敵。
されど、ギリギリのところで『魂人』の女性を救う活路は見いだされているのだ。
「なら、負ける理由なんてないですわね!」
振るう斬撃が包帯に包まれた首元へと迫る。
波打つ刃はまるで引き裂くようにして『赫鷹』の首を切り裂く。だが、半ばで刃が止まる。
ギロリとねめつける『赫鷹』の瞳。
それは狂気に彩られ、また己の首が切り裂かれようとも関係ないとばかりにメリーへと偃月刀の斬撃を見舞うのだ。
「ぐっ……ですが!」
そう『心さえ折れないのなら負けはしない』。
その言葉をメリーは胸に刻み、己の冥想血界:果てなき永劫の戦(ヴェルトート・ヴァルハラ)を持って対抗する。
力を込める。
波打つ刃は、彼女の心に応えるだろう。
紅の鎖が『赫鷹』を再度捕らえ、その偃月刀を絡め取りギリギリと軋ませる。
振り降ろされるよりも早く首を断ち切る。
メリーの渾身の一撃が『赫鷹』の首を切り裂き、その首を落とす。
「……はっ、ハァ! ハァ! ……これで……!」
メリーは見ただろう。
自分たちの後ろにはもう『魂人』の女性の背はない。
『赫鷹』の領域から彼女は抜け出したのだ。
だが、『赫鷹』の首が動く。炎でまだ繋がっている。
これだけの攻撃を叩き込んでなお、『闇の種族』たる『赫鷹』は狂気に濡れた瞳で此方を睨めつけている。
おぞけ走るほどの戦いだった。
けれど、メリーは、猟兵たちは成したのだ。『魂人』の女性を、故郷に戻りたいと、家族のもとに戻りたいと願う彼女を逃し得たのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『偽りの星が魅せる夢』
|
POW : 敢えて自身に痛みを与え続ける!
SPD : 眠ってしまう前に走り抜ける!
WIZ : 魔術的な防御で影響を減らす!
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『闇の種族』、『赫鷹』の猛追を振り切った猟兵と『魂人』の女性。
だが、まだ道のりは遠い。
「此処から何処に向かえば……」
彼女は『闇の種族』から逃れた安堵を感じる暇すら与えられていなかった。
第三層から第四層に至る道のりは険しいものである。
猟兵であっても、この第三層に至るまでの道のりは厳しく、長いものであった。だからこそ、油断できない。
例え、『赫鷹』の猛追を振り切ったとしても、まだ困難は続くのだ。
「……安心したから、でしょうか。私……その、なんだかとても、眠く……」
そこには在るはずのない星空。
だが、確かに存在している。
猟兵たちは気がつくだろう。
これは恐らく『見えざる禁獣』による妨害。
第三層から第四層に行かせまいとする視線。ただそれだけで、猟兵も『魂人』の女性も眠りに誘われている。
ここで瞳を閉じれば、再び彼女は『闇の種族』の慰み者にされてしまうだろう。
眠ってはならない。
この如何なる力によってか睡魔をもたらす力を振り切り、第四層へと進まねばならない――。
ドッジボール・プレイヤー
正義のドッジボール・アスリートととして、困っている人を見捨てられないぞ!
うおおおおお!!燃えろ!!ボクのドッジボール《アスリート》魂!!絶対にゴールへ辿り着いてみせるぞ!【限界の彼方まで】!!
今までの特訓を思い出すんだ!!(山に篭り巨大な鉄球を受け止め投げ返す特訓やドッジボールで巨大熊を撃ち倒す特訓などの数々が脳裏に蘇る)
できるできる!!絶対できる!!ボクは誰にも負けないぞ!!!
振りかぶってボールを投げて、お姉ちゃんをおんぶして飛び乗っていくぞ!!
これが超人ドッジボールの力だあああああああっ!!!!!
戦いはいつだって己の心の中にあるものとの戦いである。
例えば怠惰であったり、恐怖であったり、あらゆるものが戦いとなる。
生きるとは即ち戦いそのもの。
人は生来、悪性であるというのならば、それは致し方のないことであったのかもしれない。
けれど、その悪性を凌駕せしめる理性と善性があるのならば、このダークセイヴァー上層における睡魔誘う罠もまた踏破しきることができるだろう。
「正義のドッジボール・アスリートとして、困っている人を見捨てられないぞ!」
ドッジボール・プレイヤー(愛と正義の超熱血ドッジボールヒーロー・f39223)はヒーロー・マスクである。
今はドッジボールが大好きな女子小学生に憑依し、こうしてダークセイヴァー上層という暗闇の世界に正義の灯火を灯そうとやってきているのだ。
「確かに睡魔は怖い! 朝寝坊しそうなった時とか、本当にそれはもう困ったことに鳴るんだよ! けどね!」
彼女は胸を張る。
己の胸に宿るのはドッジボール魂である。
そう、アスリートである彼女にとって睡魔とは打破すべきもの。
確かに良質な睡眠はアスリートにとって必要不可欠。
十全なパフォーマンスを発揮するためには良質な睡眠は要求されるものである。しかし、このダークセイヴァー上層世界では良質な睡眠は得られそうにない。
眠れば悪夢に浸されるとわかっているのならば、彼女はその瞳をユーベルコードに輝かせる。
黄金の勝負服を纏い、彼女は叫ぶ。
「うおおおおお!! 燃えろ!! ボクの|ドッジボール《アスリート》魂!!」
彼女の瞳が見据えるのは第四層に至る道のり。
これがレースであるというのならば、ゴールが必ず存在する。
限界の彼方まで膨れ上がった彼女のドッジボール魂は、睡魔すらもはねのける。
そう、どれだけ睡魔が抗いがたいものであったとしても、彼女は思い出していた。
夕日が暮れなずむ河川敷。
山にこもり巨大な鉄球を受け止め投げ返す特訓。
ドッジボールで巨大熊を打ち倒す特訓。
滝行で落ちてくる流木を躱した特訓。
落ちる木の葉を瞬時に掴み取る特訓。
「できるできる!! 絶対できる!!」
その声に『魂人』の女性も勇気づけられるだろう。
できる。到達できる。家族のもとに帰ることができる。
信じる心はいつだって体を突き動かしてくれる。
「ボクは誰にも負けないぞ!!!」
振りかぶるボール。放たれるボールは暗闇を切り裂く光条のようになって突き進む。
その上に飛び乗って彼女と『魂人』の女性は第四層へと走るのだ。
すべてがデタラメ。
けれど、それでいいのだ。
ドッジボール・プレイヤーとしての彼女は何も疑わない。できると信じているからできるのだ。
「わっ、ああ、……っ!」
背負われた『魂人』の女性の困惑した声が聞こえる。
さもありなんとは思う。
けど、信じることをやめない彼女にとって、それはどうでもいいことだ。
迫りくる睡魔なんて吹っ飛ぶくらいの経験をすれば『魂人』の女性だって眠る暇なんてない。
彼女はそのまま光るドッジボールに乗り、第四層へと飛ぶように向かうのだ。
「これが超人ドッジボールの力だああああああああっ!!!!!」
「よ、よくわからないですけど、す、すごいです……!」
そんな感想しか多分出てこないだろう。
突き進む明日を見据えるのならば、ときに脇目を振らぬこともまた肝要。
ドッジボール・プレイヤーとしてできることをする。
そのために彼女は暗闇の中を邁進し続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
妖傀遣士・村正
「そうですか、家族に会いたくて……」
私は、妖刀に魅入られた|宿敵《あね》「村雨」に父を殺されました。でももしまた会うことが叶うならと……いまだ夢に見ることがあります。
息を切らしながら女性と必死に走りますが次第に眠くなってしまい……
「こうなったら……妖剣解放!村正――抜刀!!」
「村正!!私たちを抱き抱えて走りなさい!!」
腰に帯びた妖刀を引き抜くと共に、幽鬼染みた大鎧武者(からくり人形・傀儡「村正」)が現れます!妖刀を傀儡に装備させ、UCの高速移動能力で一気に駆け抜けます!
妖刀の呪詛は、|傀儡「村正」《からくり人形》が引き受けます!
駆け抜けるのよ!!希望の光が暁に輝くまで!!
『魂人』の女性は声が聞こえるのだと言った。
長い道のりが果てしなく続くかのような暗闇の中を照らすには、頼りない篝火のように思えたたことだろう。
たった一つのこと。
死に別れた息子の声。
その温かな記憶のみを頼りにダークセイヴァー上層である第三層に『魂人』たちは生きる。
それはあまりにも残酷なる地獄の日々であったことだろう。
「だから、私はもう一度あの子に会いたいのです」
『魂人』の女性の言葉に、妖傀遣士・村正(妖刀武芸帖・f39232)羅刹少女・無銘(村正抜刀・f39232は頷く。
「そうですか、家族に会いたくて……」
自身の目的と重なる部分を彼女は見出していた。
自身の出自と目的。
妖刀に魅入られた|宿敵《あね》『村正』に父を殺された。
もしも、と思う。
また会うことができたのならば、と夢に見ることがある。
しかし、それはいつの日にか起こり得る邂逅であって、今ではない。今はこの睡魔襲い来る星空の領域を抜けなければならない。
「……どれだけ走っても先が見えない……」
『魂人』の女性の弱音めいた言葉が聞こえる。
仕方のないことなのかもしれない。
第三層と第四層を繋ぐ道のりは、猟兵であっても厳しく険しいものであったからだ。
永劫回帰が使えるからと言って、『魂人』の女性自身は取り立てて戦いに慣れているわけではない。
しかし、猟兵である村正であっても睡魔には抗い難くあった。
次第に眠気が襲ってくる。瞼が重いと感じるだろう。息を切らしていても、それでもなお瞼が睡魔の帳をおろそうとしてくる。
「……こうなったら……妖剣解放! 村正――抜刀!!」
自身に妖刀の怨念を纏い、斬撃が暗闇を切り裂き照らす。
そこに現れるのは幽鬼じみた大鎧武者。
からくり人形たる鎧武者が村正と『魂人』の女性を抱える。
「村正!! 私達を抱きかかえて走りなさい!!」
その言葉と共にからくり人形が一気に走り出す。揺れる体。重たくのしかかる睡魔。そして、何よりも村正自身に迫るのはユーベルコードによる寿命の逼迫であった。
呪詛による力。
それが村正の生命を削っていく。
けれど、それでも走る。
「駆け抜けるのよ!!」
止まってはならない。
ここでの停滞とは即ち死を意味する。『魂人』を連れていることによって、この領域に存在するであろう『見えざる禁獣』にも猟兵たちは目を付けられている。
ならばこそ、駆け抜けなければならない。
少しでも早く。
襲い来る睡魔を振り切って、あの希望の如き輝きの見せる幻のような出口を。
「希望の光が暁に輝くまで!!」
ただそれだけを支えに村正も『魂人』の女性も重たい瞼に力を入れ、前を見据える。
立ち止まらぬ者。
振り返らぬ者。
そうした者だけがあの希望輝く暁へと至ることができるのだと信じるように――。
大成功
🔵🔵🔵
館野・敬輔
アドリブ連携大歓迎
ここまでの道程がいかに険しかったかは
俺自身も道を切り開いた以上、よく知っている
それに、この星空がヤバいのも…実は以前予知した案件のおかげで知っているんだよな
…それでも、突破しなければならないのが現状だけど
空を見上げた時点でおそらく完全に眠り込んでしまうから
魂人は「絶対上を見ずに地面だけを見ていてくれ」と助言した上で俺が背負って運ぶ
その上で「睡眠耐性、オーラ防御」+指定UC発動し
俺らの上空に巨大化したグリモア・スクトゥムを展開して視線と睡魔を遮る壁にしよう
後はひたすら走るだけだが
もし俺が眠りそうになったら黒剣で四肢を傷付け痛みで覚醒
ここで眠ってなるものか
彼女は必ず送り届ける…!
ダークセイヴァー世界は積層世界である。
月が浮かぶ空さえも天井であった。
死すら救済ではなかったのだ。死した第四層の人々は転生し、『魂人』として第三層の『闇の種族』によって弄ばれる。
その運命を覆すのが永劫回帰であるというのならば、それは皮肉でしかなかったのかもしれない。
この第三層に猟兵が至るまで多くの困難があった。
それを館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は良く理解していた。
彼自身も道を切り開いた以上、よく知っていることであった。
そして、眼前に広がる星空。
これが偽りの夜空であることを知っていてたとしても、この迫りくる睡魔だけは如何ともし難いものであった。
『魂人』の女性であれば尚更であろう。
「……それでも、突破しなければならないのが現状だけど」
敬輔は女性に言う。
決して空を見上げてはならないと。
あの空を見上げてしまっては、完全に睡魔に落ちてしまうことを彼は知っていたからだ。
「空を……ですか?」
だが、それでは前が見えない。
地面だけを見て歩くことは困難ではないが、道行きを定められないことはこの長い道のりにおいてはあまり良いとは言えない行為だろう。
「大丈夫。俺が背負って運ぶ」
『魂人』の女性を背負い、敬輔はその瞳をユーベルコードに輝かせる。
魂魄を宿した蒼い丸盾の耳飾りが巨大化し、敬輔と『女性』の上に傘のように広がっていく。
それは、魂魄奥義・蒼盾防御(コンパクオウギ・ソウジュンボウギョ)。
ダークセイヴァー世界には存在しない蒼穹。
それを模した防御結界によって睡魔の影響を抑えようとしているのだ。
更にオーラで自分たちを覆う。
『見えざる禁獣』の視線。
それは自分たちが『魂人』を連れている以上、躱しようのないものであったかもしれない。
常に視線を感じる。
目をつけられていると感じるだろう。
『闇の種族』よりも強大な存在。『禁獣』。
その存在の視線が見えずとも感じる不気味さに敬輔のみならず、『魂人』の女性も感じたことだろう。
「後はひたすら走るだけだが……あなたは大丈夫だ。必ず家族の元に送り届ける!」
敬輔はそう『女性』に告げる。
家族のもとに戻りたい。
それが彼女の願いであり、たった一つの寄す処でもあったのだ。
ならばこそ、それを絶やしてはならない。
『魂人』である彼女が第四層に戻れば、きっと『闇の救済者』たちの力になってくれる。彼女が守りたいと思った家族、息子のこともきっと守ってくれるだろう。
だからこそ、迫る睡魔の力を敬輔は振り払うように進む。
「……それでも、睡魔の力が……!」
敬輔は己の瞼が重たく鳴るのを感じただろう。
だが、人々を守る盾たれ、と己の心が言っている。必ず届ける。送り届ける。そのために彼は己が取りうるすべての手段を講じる。
黒剣で己の腕を、足を傷つけ、その痛みで覚醒するのだ。
血を流し、それでもなお進む。
「眠ってなるものか……必ず、必ず送り届ける……!」
寄す処とするものが家族であるという『魂人』の女性。
彼女の気持ちは痛いほどわかる。里を家族を、知人を、全てを吸血鬼にされ滅ぼされたのだ。
その痛みを他の誰かにあてがってはならぬと敬輔は痛みに揺り動かされる心と共に一歩また確実に第四層へと歩むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
早々に抜けるとしよう
状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを世界の外へ破棄
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給
引き続き魂人も守りの圏内に
眠りに誘ってくると聞くが
関わる気はないので永劫にて
自分も魂人も、一切の障害に捕らわれず抜ける
眠るなら辿り着いた後で十分
個人的に戻る場所もある
止まる理由は皆無というものだ
※アドリブ歓迎
「早々に抜けるとしよう」
猟兵たちはリレーのように『魂人』の女性を抱え、睡魔迫る星空から逃れるようにして第三層から第四層へと続く領域を歩む。
それは困難な道のりであった。
猟兵達出会っても、この領域を辿るのは厳しかったのだ。
『魂人』の女性を連れて戻るというのは、それ以上に長く険しい道のりに歩みを進めることと同義であった。
だが、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)も、他の猟兵たちも構わなかった。
第四層に残してきた死に別れた息子の元に戻りたいと願う母親の心は誰もが理解できるものであったことだろう。
それに『魂人』である彼女が第四層に戻れば『闇の救済者』たちの助けになるかも知れない。未だヴァンパイア支配の続く第四層には一つでも多くの助けが必要なのだ。
「……やはり見ているな」
アルトリウスは原理でもって周囲の状況を知る。
『見えざる禁獣』。
それが己達を見ている。
『魂人』を連れているからであろう。
だが、こちらに何かをするよりも先に睡魔が襲ってくる。
守りの原理によって害あるすべてを世界の外に破棄しても、迫りくる睡魔。
消去してもなお迫る。
これではゼロサムゲームもいいところである。これに打ち勝つには、こちらが上回ることよりも、あちらの損害を引き出す方が肝要となるだろう。
だからこそ、アルトリウスは世界の外から供給される魔力でもってこれを贖うのだ。
「変わろう。ここからは俺が運ぶ」
アルトリウスは『魂人』の女性を背負う。
彼女の体力は遺して置かなければならない。
それに迫る睡魔を振り払う為に回す魔力はいくら外から供給されるとは言え、押し切られてもおかしくはない。
永劫(エイゴウ)に続くゼロサムゲームはこちらが勝つ。
「眠るのは……」
「第四層にたどり着いた後で十分だ」
「でも……私は……」
何も返せないと女性は言うだろう。
自分の願いを叶える猟兵達。彼女の言葉は申し訳無さが滲んでいた。だからこそ、アルトリウスはなんでもないというように告げる。
「個人的に戻る場所もある。止まる理由は皆無というものだ」
だから気にすることはないというようにアルトリウスは歩を進める。
問答も、迫る視線も、襲い来る睡魔も。
何もかも歩みを止める理由にはなっていない。
障害があるのならば、踏み越える。
そうでなくても無視してしまえばいいのだ。律儀に付き合う必要など無いとアルトリウスは溢れる魔力でもって困難を排する。
「不躾な視線だな。何処の誰だか知らぬし興味など無い」
だが、とアルトリウスは力強く歩みを進める。
前に進もうともがく者達の足を取る者がいるのならば、それの掴む手を振り払うのが己であると示すように、迫りくる睡魔を満ちる原理でもって振り払い、『魂人』と共に第四層へと迫るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
沙・碧海
星空も偽物なんだ
なんだか悲しい世界だね
だからこそおねーさんは下を……家族の元を目指すんだろうけど
過酷な世界でも待ってる人がいるなら頑張りたいもんね
おねーさんを起こせる手段は持ってないな
お願いできることと言えば心を強く保ってもらうことくらい
家族に会えたら何がしたい?
思い出の歌なんか口ずさめたらいいかもしれないね
おねーさんの限界が来たらオレが背負うよ
「エアシューズ」を履いてるし、軽快に動くのは得意なんだ
それに自分なら躊躇なく起こせる
眠気の限界が来そうなら「たちきり」で自分の肌を軽く切って痛みで目を覚ます
止血はするけど痛みは保てるように
……おねーさんのほうが痛い思いしてたんだ
このくらいへっちゃらだよ
沙・碧海(ストレイウルフ・f39142)は目の前に広がる空が偽物であることを悲しいと思った。
上層にありてもダークセイヴァー世界は、積層であることを伺わせる。
空にあるのは夜空ではなく天井だ。
だからこそ、悲しい。
何もかもが偽りであるように思えたであろう。
けれど、碧海にとってたった一つだけこの世界において確かな事がある。
それは他の猟兵たちと協力して第三層から第四層に連れ立つ『魂人』の女性の死に別れた家族を思う心だ。
たった一つそれだけが確かなことであったし、偽りではない本当の願いであった。
だからこそ碧海は彼女を連れて行く。
どれだけ『見えざる禁獣』に目をつけられるのだとしても構いやしなかった。
「過酷な世界でも待ってる人がいるなら頑張りたいもんね」
「はい……私はどうしてもあの子に、息子にまた会いたいのです」
共に歩む姿は何処か美しく思えたことだろう。
だが、偽りの星空はそうして歩む道のりを否定するように猟兵を睡魔でもって襲う。
睡魔に負ければ恐らく『魂人』は連れさられるだろう。
何処か遠く、最早猟兵の手の及ばぬところに連れて行かれる。だからこそ碧海は『魂人』の女性に願うのだ。
「オレはおねーさんを起こせる手段を持ってない。だから、お願いだよ。心を強く保って。家族に会えたら何がしたい?」
願うことはできる。
ただ一つの願い。
それを補強することができるのは、いつだって願う本人だけだ。
「……抱きしめてあげたいです。いえ、私が抱きしめたいと思うのです。あの子が生まれたこと、授かったこと、それが私にとって唯一の温かな記憶。あの子のために生命を投げ出すことさえできたことを私は誇りに思っているのです」
その言葉は確かに真実であったことだろう。
死に別れるのだとしても、己が愛する者を守れたのだ。
救済たる死が二人を分かつことになろうとも、それでも彼女はそれを温かな記憶として持ち得たからこそ、『魂人』として永劫回帰の力を使って今まで死を否定することができたのだ。
「思い出の歌なんかはあるかい? 歌いながら行こうよ」
口ずさむ音は、知らない歌。
けれど、碧海はなんとなく死んでしまったじいさんのことを思い出す。
懐かしいという感情以外にも浮かび上がるものがあっただろうか。
共に歩み、時に背負い、女性とともに向かう第四層への道のり。それはどれもが簡単なものではなかった。
けれど、それでも碧海は進む。
眠気が限界に来たのだとしても、己の刃で己を傷つけ、痛みで保って前に進む。
流れる血を『魂人』の女性は痛ましいものを見るように見つめ、その流れる血潮を拭う。
「……おねーさんの方が痛い思いをしてたんだ。このくらいへっちゃらだよ」
「私が、そうしたいのです」
拭う彼女の手が赤く染まる。
拾われて育てられた己。
重なるものがあるのならば、碧海は何かを思い出したかも知れないけれど、それは霞のような向こう側に溶けて消えていく。
共に歩む道のりは険しくとも、それでも歩むことをやめない。
願いのままに歩みをすすめる。
ただそれだけでいいのだと言うように、碧海は『魂人』の女性と共に、第四層へと下っていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
七那原・望
第六感で星空を防ぐために有効な属性を見切り、その属性と浄化属性の結界術を多重展開し、結界内に癒竜の大聖炎を展開。
邪悪を祓う癒やしの炎です。怪我も治りますし纏ってください。
星空の影響は結界で防げるはず。邪悪な力による干渉でしょうし、眠気もこの炎で治療出来るでしょう。
眠気は覚めましたね?安心している暇はないのです。
あなたの望みはあなたの子供を救うこと。わたし達はまだそのスタートラインにすら立っていないのですから。
さぁ、急ぎましょう。
強化属性の全力魔法で運動能力や移動速度を強化して進みます。
いざとなればプレストで運んでもいいですけど、今は自分の足で歩いてもらいましょう。これは彼女の戦いなのですから。
目の前に広がる星空は魔性の空。
見上げれば、それだけで睡魔に襲われる。此処で眠りに落ちてしまえば、『魂人』の女性は遠く連れ去られる。
偽りの空より降り注ぐ視線は『見えざる禁獣』のものであろう。
『魂人』を連れ立って第三層から第四層にいたろうとするがゆえに猟兵たちはかの『禁獣』に目をつけられてしまっている。
だからこそ、この睡魔から逃れねばならない。
「癒しと為り邪悪を祓え」
癒竜の大聖炎(ユリュウノダイセイエン)が『魂人』の女性と七那原・望(封印されし果実・f04836)の身を覆う。
彼女たちに降り注ぐ睡魔。
それを焼き祓うユーベルコード。
「これは……?」
「邪悪を祓う癒やしの炎です。怪我も治りますし安心してください」
望は結界を張り巡らせる。
邪悪な力による干渉であることはわかる。だが、『見えざる禁獣』とは一体なんであるのかまではわからない。
如何なる力であったとしても、この聖炎があればと思う。
しかし、悠長にしていられる時間もない。
第四層への道程は長く険しいものである。
ならばこそ、彼女たちは立ち止まっている暇はないのだ。
これまで他の猟兵たちと代わる代わる彼女を守って第四層に続く道のりを歩んでいる。彼女の望みを叶えるため。願いのために猟兵たちは力を振り絞る。
時に血も流れただろう。
眠気と戦うために痛みを堪えることも必要であったかもしれない。
「あなたの望みはあなたの子供を救うこと」
「はい。あの子の声が聞こえるのです」
「なら、わたしたちはまだそのスタートラインにすら立っていないのです」
望の言葉は厳しいものであったかもしれない。
けれど、それは紛れもない事実であった。
此処は美しき地獄、第三層。
『魂人』は未だ第四層に至っていない。だからこそ、前に進まねばならないのだ。
「さぁ、急ぎましょう」
望は運動能力を強化する魔法でもって『魂人』の女性を強化していく。
いざとなれば、運んでもいい。
望むはしかし、それをしない。
いつだって自分の歩みを進めさせるのは自分の足である。
誰かに何かを為してもらったことと、自分で何かを成した時、その得たものは確実に違うものである。
人間である以上、楽に流れることは当然のことである。
水が上流から下流に流れるように。
当たり前のことだ。だからこそ、その当たり前を乗り越えてほしいと思う。それが望の願うことであったのならば、『魂人』の女性のひたむきさはそれに応えるものであったかもしれない。
「これはあなたの戦い」
望はそう思う。
自分たち猟兵ができることは、多くあるだろう。
けれど、それでも。
「あなたの子供のために」
思う。
母親というものがこういうことなのだろうかと。
我が子のことを思う気持ち。
それは明日を望むことと同じであろう。自分の後に続くものを守らんとする当然。当たり前。
なんでもないというように『魂人』の彼女は打ちひしがれても、『闇の種族』にもてあそばれても希望を捨てなかった。
それに報いるために自分ができることは、その道筋を照らすことだと望は眼帯に覆われた瞳で第四層を見据えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
眠れば死ぬぞというお約束を、今この状況でやられるとは…
ちょーっと洒落になってないかな…
此処で眠れば、全てが無意味になる
気をしっかり持って、駆け抜けよう
『魂人』の女性にも声を掛けながら前に進もう
眠くても寝ちゃダメだよ
せっかく此処まで来たんだ、スタートに戻るってなったら台無しでしょ
大事な人の事を思い出して気をしっかり持って
成したい事があるんでしょ、ゴールは見えてるんだ此処で負けるわけにはいかないっしょ
私自身は剣で傷を付けながら眠気に耐えて、女性には声を掛けながら駆けて行こう
此処まで来れた事を無駄にしないように、出来る限りの事をして先に進む
ほらもうすぐだ、求めていた場所が近くなるのを感じない?
眠るな。
眠ればすべてが終わる。
それはサブカルマニアである月夜・玲(頂の探究者・f01605)にとっては擦りすぎたシチュエーションであったかもしれない。
「今この状況でやられるとは……」
眼前にあるのは偽りの星空。
このダークセイヴァー世界において、空はすべて偽りであろう。
何故なら、そこにあるのは空ではなく天井であるからだ。
積層世界であることを知る猟兵たちは、目の前に広がる美しい星空が『見えざる禁獣』の力の一端であるように思えたかも知れない。
『魂人』を伴っての第三層から第四層への移動。
それがどれだけ危険であるかを示す材料にしかならない。
「ちょーっと洒落になってないかな……」
他の猟兵達と共に進んできた『魂人』の女性。
彼女は死に別れた家族のいる第四層に戻りたいと願った。その願いを叶えるために猟兵たちはこうして歩みを進めている。
彼女を守りながら、睡魔に耐えている。
軽口を叩くのは、此処で眠れえば全てが無意味になると知っているからである。気をしっかり保つ。
奥歯が鳴る。
睡魔は容赦なく襲いかかってくる。
猟兵である自分でさえ、これであるのだ。
ならば、『魂人』の女性はさらに辛いものであろう。けれど、多くの猟兵たちに助けられて此処まで来た女性はひたむきだった。
「眠くても寝ちゃダメだよ」
「はい……心得ています……私は、あの子のもとに戻りたい。それさえ忘れていなければ……」
ふらつく女性に肩を貸しながら玲は彼女を叱咤する。
「せっかく此処まで来たんだ、スタートに戻るってなったら台無しでしょ。大事な人のことを思い出して気をしっかり保って」
睡魔は恐るべき力で襲いかかる。
今、『魂人』の女性が耐えられているのはひとえに第四層の息子のことを思えばこそである。
それほどまでに抗いがたい睡魔。
瞼が重たく、そして足取りも重たくなる。
しかし、それでも玲は声を掛ける。女性は我が子のことを思えばこそ、気力を振り絞ることができる。
けれど、玲は違う。
彼女にとってこの眠気に抗うほどの強烈な目的はない。
だからこそ、玲は己の腕を切りつける。模造神器の蒼い刀身が赤く濡れる。血が流れる感触と痛みが彼女を覚醒に促す。
「成したいことがあるんでしょ、ゴールは見えてるんだ」
玲は女性に語りかける。
耐え難い睡魔。
いつだってそうだ。ギリギリの所で人は試される。
まるでそうあるべきであるというように試され、倒れていく。現実は理想のようにはいかない。いつだって非常な現実が人の心を切り裂いていく。
奇跡なんて起きない。
いつだって人の前に横たわるのは敗北という谷。
だがしかし。
「此処で負けるわけには……」
「そうだよ、いかないっしょ!」
共に並び立つ者がいるのならば。ただ一人ではないということが人間の、その生命の証明であるというのならば、敗北すらも乗り越えていくことができる。
人間はいつだって、そうやって繋いできたのだ。
過去から繋がるように。今に紡がれるように。
そして、今光明が見えるような気がしたのだ。
「ほら、もうすぐだ。求めていた場所が近くなるのを感じない?」
玲の言葉と共に女性は顔を上げる。
そこにあったのは、彼女のこがれたものであっただろうか――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『ハルピュイア』
|
POW : アエロー
【爪】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : オーキュペテー
自身に【仲間の怨念】をまとい、高速移動と【羽ばたきによる衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : ケライノー
レベル×5本の【毒】属性の【黒い羽】を放つ。
イラスト:えな
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
抗いがたい睡魔を乗り越え猟兵と『魂人』の女性が見たのは第四層の空であった。
いや、天井である。
月明かりが照らすだけの常闇の世界。
ダークセイヴァーが積層世界であることを知らしめるような光景。
そこにあったのは、炎盛る砦であった。
『闇の救済者』たちが築き上げた砦。
その空に舞うのはオブリビオン『ハルピュイア』の姿であった。
今まさに壊滅しようとしている砦。
そこに『魂人』の女性の子供がいるのだろう。未だ戦っているのだろう。未だ懸命に行きているのだろう。
「聞こえます……あの子の声が! あの子はあそこに……!」
女性の悲鳴のような、喜びに満ちるような声が響く。
未だ予断を許さない状況である。
今まさにあの砦は『ハルピュイア』によって滅ぼされようとしている。未だ声が聞こえるということは、まだ『魂人』の女性の死に別れた息子は生きているということだ。
「あの子を助けなければ……! 私の温もりを……! 私の大切なあの子を……!」
ならば、猟兵たちはためらうことも、逡巡している暇すらない。
炎燃える砦へと、未だ生きることを諦めぬ生命を救いに飛び込むのだ――。
アルトリウス・セレスタイト
では働くか
状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを世界の外へ破棄
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給
破界で掃討
対象は戦域のオブリビオン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
『刻真』『再帰』にて高速詠唱を無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、敵勢へ斉射
更に射出の瞬間を無限循環。戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす
創生し最古の理に例外はない
オブリビオンに遠慮する理由もない
尽く終わっておけ
※アドリブ歓迎
毒を持つ黒羽が『闇の救済者』たちの砦をぐるりと取り囲み襲っている。
オブリビオン『ハルピュイア』の放つ黒羽は、それだけで砦のバリケードを砕き、その内部にいた者たちを毒でもって蝕むように殺していく。
誰も彼もが懸命であった。
生きることに懸けていた。
だからこそ、この常闇の世界であっても生きることができたのだ。
彼等にとって死とは苦しみから開放されることである。また同時に己の死が誰かの生命を活かすことであるとも知っている。
しかし、死は救済ではない。
苦しみから開放されることはない。彼等が死した後に転生するのは天国の如き楽園ではないのだ。
ただ美しいだけの地獄。
それがこの積層世界の理。
「だから、誰も死なせたくはないのです。私の息子も、そして今生きている人たちも」
『魂人』の女性は世界の真実を知っている。
苦しみは終わらない。
永劫回帰は死を否定するも、その苦しみが永劫の如く続くことを知っている。
「ならば、働くか」
その言葉にアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)の瞳がユーベルコードに輝く。
纏う原理の輝き。
蒼き燐光を放つ力が、己に害在るもの全てを消去する。
それだけでどれほどの膨大な魔力が消費されるのかなど言うまでもない。
世界の外から組み上げる魔力は一瞬にして、煌めくユーベルコードでもって『ハルピュイア』の放つ毒持つ黒羽を飲み込み、消去するのだ。
「……! 猟兵! 彼等を救いに来たか」
『ハルピュイア』の言葉にアルトリウスは特段反応することはなかった。己がすべきことを知っているからこそ、言葉を交わす必要性を感じなかったのかも知れない。
高速詠唱によって無限に加速、循環していく力。
煌めくユーベルードは創世の権能が現す蒼光の魔弾そのもの。
「即ち、破界(ハカイ)。行き止まりだ」
放つ魔弾が雨のように砦の上空を舞う『ハルピュイア』たちを討滅していく。
埋め尽くす空。
否、天井の暗闇すらも光で晴らすような蒼光の魔弾の群れ。
「創世し最古の理に例外はない。オブリビオンに遠慮する理由もない」
放たれる魔弾は全てを埋め尽くしていく。
そして、その魔弾が切り裂くのは『魂人』の女性の死に別れた家族の元へと戻る道筋。
蒼い光は、青空のように。
けれど、それを知るものはこの世界にはいない。
誰もが焦がれ、知らぬが故に手をのばすもの。
それが青空であるというのならば、アルトリウスは、その道筋にこそ蒼き光の魔弾でもって照らす。
「お前たちは尽く終わっておけ」
それを邪魔する『ハルピュイア』を滅ぼす。
己の仕事はそれであると示すようにアルトリウスはユーベルコードに輝く瞳でもって『ハルピュイア』たちを見上げ、彼女たちを撃ち落とし続ける。
「行け。此処は俺が抑える」
いや、と頭を振る。
滅ぼし尽くすと廻る原理と共にアルトリウスは『ハルピュイア』の群れと対峙するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
七那原・望
そうですね。あなたはあなたの望みを叶えてください。ねこさん達、お願いしますね。
アマービレで大量に呼び出したねこさん達の内、幾らかを彼女に同行させましょう。
ねこさん達の浄化と水属性の多重詠唱結界術なら毒の矢や炎、衝撃波を防いでくれるし、仮に一枚割られても多層構造ですし、すぐに貼り直せば問題もありません。
これで彼女とその子供は大丈夫。あとは露払いだけなのです。
自身にも同じ結界を展開したら果実変性・ウィッシーズブレイカーに変身。
第六感と気配感知で敵の行動を見切り、動きを先読みしながら大量のプレストの乱れ打ちで頭を狙い打ち、蹂躙しましょう。
ついでに残りのねこさんの全力魔法やセプテットで追い打ちです。
『闇の救済者』たちの砦を囲むは、無数のオブリビオン。
『ハルピュイア』たちは、その毒性を持つ黒い羽でもって取り囲み、一斉にバリケードや壁を穿つ。
中に存在する人々を一気呵成に仕留めるのではなく、痛めつけるようにじわりじわりと追い込んでいく。
人の恐怖というものが彼女たちに取って味わうべきものであったのならば、それは失敗であったと言う他無い。
確かに猟兵たちが駆けつけなければ、そして『魂人』の女性が死に別れた家族である息子の声を聞かなかったのならば。
この結果はありえなかった。
あるはずもなかった。ただ徒に奪われる生命が増えただけだった。
けれど、そうはならなかったのだ。
「私は、あの子を……!」
「そうですね。あなたはあなたの望みを叶えてください」
ねこさん達、と七那原・望(封印されし果実・f04836)は白いタクトの鈴を鳴らして無数のねこたちを呼び出し、『魂人』の女性に護衛をつける。
これならば幾分助けとなるだろうと判断してのことだった。
「ありがとうございます……!」
「いいえ。早く行ってください」
望の言葉はそっけなく感じたかもしれない。
これは彼女の戦いであると彼女は言った。
ならば自分のできることは手助けだけだ。本質的に自身で立ち向かう気概がないのであれば、望も此処まで手助けすることはなかっただろう。
永劫回帰を使わせない。
それが望の願うことだった。
温かな記憶をトラウマに変えて死を否定するユーベルコード。
確かに強力である。しかし、それを使わせたくないと願う彼女の心がユーベルコードに輝く。
そう、彼女は望む。
――果実変性・ウィッシーズブレイカー(トランス・ウィッシーズブレイカー)。
「後は露払いだけなのです」
超高速で飛ぶ機械掌。
『プレスト』と呼ばれるガジェットが空を舞いながら、『ハルピュイア』を打ちのめす。「猟兵が何故此処にいる! ここは私達の狩場だ!」
「言ったはずです。狩場だろうがなんだろうが、露払いをすると」
望の手繰る『プレスト』が拳を握り締め『ハルピュイア』を打ち砕くように叩きのめす。
全ての『プレスト』が緻密に操作されているのだ。
走る『魂人』の背を狙う『ハルピュイア』たちの攻撃の尽くを打ちのめし、先読みしながらの空飛ぶガジェットの殴打は、何人たりとて『魂人』の女性を追うことを許さない。
「ねこさんたち、頼みます」
その言葉と共に鈴の音が鳴り響く。
瞬間、放たれる浄化と水の魔法。
それらが迫る黒い羽の毒性を浄化し叩き落とす。
さらに望の手にあるのは七つの分かたれたアサルトウェポン。その『セプテット』と名付けられた合体銃が分離し、その銃口でもって『ハルピュイア』たちを打ち抜き、落としていく。
「願いを叶えること。望みを託すこと。多くが人の性なのでしょう。世界は残酷で、変わらず、けれど美しいものなのです」
彼女が見たかった光景を見ることができただろうか。
親と子。
死に別れるのは運命であったのかもしれない。
けれど、死を否定するのは永劫回帰だけではないと望は知る。
親が子を思う気持ちは、例え死が分かつのだとしても、このダークセイヴァー世界にあってはこうして『魂人』として舞い戻ることもある。
「死は救済ではないけれど」
それでも、彼女の眼帯の向こう側にある世界は、きっと美しいものであると望は確信し、その美しきを否定させぬように空を舞うガジェットとアサルトウェポンでもって汚す『ハルピュイア』たちを撃ち落とし続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ドッジボール・プレイヤー
ユニフォームを着て、パワーフード&ドリンクで気力と体力を素早く回復!
さあ!ボクがこの世界にドッジボールを広めるんだ!
でも砦の人達は苦戦してて……これは正に|UC強化条件《敗北の危機》だ!!
急いでドッジコートを展開!
よし!かかってこい!ボクとドッジボールで勝負だ!(挑発
試合開始!!
敵の攻撃はグローブの武器受けジャストガードでキャッチ!怪力で投げ返して他の敵にぶつける!
くぅ!いい球だね!お返しだよ!
ドッジボール魂を込めたボールをUCでシュートッ!!
例え倒れても、その度に努力の証が……魂が肉体を凌駕して、何度でも立ち上がる!
この戦いが終わったら……皆で楽しくドッジボールするんだああああああっ!!!!
ダークセイヴァー第三層から第四層に至る道のりは険しく、精神的にも肉体的にも消耗激しいものであった。
ドッジボール・プレイヤー(愛と正義の超熱血ドッジボールヒーロー・f39223)の少女はパワーフードを頬張り、ドリンクを飲み干す。
体の中に燃え上がる闘志はエネルギーのように彼女に気力をみなぎらせるだろう。
それもこれも、全てはドッジボールのためである。
「さあ! ボクがこの世界にドッジボールを広めるんだ!」
常闇の世界。
この世界にあってスポーツという概念は恐らくないだろう。
あるのは死と生を掛けた戦いだけだ。
如何に超人スポーツが当然のように行われている世界とは違うのだとしても、いつか平和を勝ち取った時、きっと彼女の願うドッジボールをスポーツとして楽しむことのできるときがやってくるかも知れない。
そのために彼女は戦うことを決意する。
『闇の救済者』と呼ばれるオブリビオン支配に抵抗するレジスタンスのような彼等。
彼等は今、空より飛来するオブリビオン『ハルピュイア』たちによって敗北しようとしている。
「なら! 絶対に負けてはならない戦いだってことだよね!」
結界のように張り巡らされるドッジコート。
それは『ハルピュイア』たちを閉じ込め、強制的にドッジボール競技に引きずり込む。
「よし! かかってこい! ボクとドッジボール勝負だ!」
「馬鹿なことを!」
空を飛ぶ『ハルピュイア』にとって地上に降りる必要はない。
だからこそ、彼女に向かって飛び込むのは鋭い脚部の爪の一閃であった。
凄まじい握力と鋭さ。
その爪に掴まれてしまえば、如何に猟兵である彼女と言えどひとたまりもないだろう。
だが!
「試合開始!!」
迫る爪の一閃をグローブで掴み取る。
ドッジボールはボールを投げつけ、キャッチすればセーフである。つまり『ハルピュイア』の爪の一閃も受け止めればセーフ。
その爪を受け止め、一瞬で『ハルピュイア』の脚を掴んだ彼女は一気にボールとして『ハルピュイア』の一体を投げつける。
「お返しだよ!」
だが、それではドッジボールではない。
だから、彼女は己の手にしたドッジボールを構える。
どれだけ敵がこちらとドッジボールをしようとしないのだとしても、彼女の胸に燃えるドッジボール魂が言っているのだ。
コートにいる以上、敵もまたドッジボールプレイヤー。
敵がドッジボールをしようとしなくても、己がアスリートであるという誇りがあるのならば。
その鍛え上げられた体は、その魂をもって肉体を凌駕する。
漲り、輝くオーラが彼女の体を包み込んでいく。
「運命を撃ち破り未来を照らす希望の光となれ!!」
きらめくユーベルコード。
それは瞳に宿った闘志に反応するように放たれる必殺シュート。
「一撃逆転! 必殺魔球「シャイニング・シュート」(シャイニングドラゴン)!!!」
放つ一撃が『ハルピュイア』を一撃のもとに吹き飛ばす。
「……!?」
『ハルピュイア』たちにとっては、あまりにも驚愕なる光景であったことだろう。
ただのボールがオブリビオンである己たちを打ち倒すのだから。
吹き飛ばされた『ハルピュイア』がドッジボールコートの結界の壁にぶつかって消滅していく。
逃げられない。
そう、此処ではドッジボールこそがルール。
そして、目の前の少女は決して倒れない。例え、『ハルピュイア』の爪が彼女をいくら引き裂こうとも、彼女の心に宿るドッジボール魂があるかぎり、その魂が肉体を両界していく。
「この戦いが終わったら……」
少女の肉体がオーラに包まれる。
それに『ハルピュイア』たちは慄くしかなかっただろう。
そして何よりも、少女の思いが迸る。
「……皆で楽しくドッジボールをするんだあああああああっ!!!!」
咆哮とも、願いとも取れぬ見果てぬ夢。
その一撃が『ハルピュイア』たちを吹き飛ばし、いつか訪れるだろう、その夢の一歩を踏み出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メリー・スペルティナ
や、やっと追いつけましたわ……
殿で遅れ、転んで滑って挙句盛大に迷ったなんてないですわ、本当ですわよ
ってそんな事より、今はあの砦ですわね!
自身の手首を切り流血、痛みは激痛態勢で我慢して【偽・死の先を往く者よ】を使用
無念や未練を残しこの地で命果てた者達の想いを核に、この血を仮初の器とし今一度この地に「再生」させ、彼らを連れ前線に出て、クロスボウから血晶石を撃ちつつ敵を剣で切り伏せていきます
攻撃は致命傷なら見切って避けますが、多少の傷であれば無視、何ならその分の流血も代償に用いてやりますわ!
「再生」した彼らもまた、この血を依り代とするがゆえに同じ呪詛を纏う
同じように殺せると思ったら大間違いですわよ!
第三層における『闇の種族』との戦いは苛烈そのものであった。
誰も彼もが無事ではいられなかったし、またそれほどの攻勢であったとしても猟兵たちは『闇の種族』から『魂人』の女性を逃すことが手一杯であった。
その最後の殿を務めていたメリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)が、道中に遅れることはある意味で必然であったのかも知れない。
あの場に駆けつけた猟兵たちの誰もが欠けてはならぬ存在であった。
またメリーの齎した戦果は確かに『魂人』を第四層に送り出すために必要なのことだったのだ。
「や、やっと追いつきましたわ……」
殿で遅れ、転んで滑って挙げ句盛大に迷ったなどとは口が裂けても言えない。
もしも、彼女の問いかけることがあったのならば、きっと彼女は否定するだろう。
そんなことは絶対になかったのだと。
「ってそんなことより、今はあの砦ですわね!」
走る『魂人』の女性の背中を見やる。
今、あの砦の中には彼女の死に別れた子供が戦っているのだろう。
砦の周囲を取り囲むオブリビオン『ハルピュイア』にその道行きを邪魔させるわけにはいかない。
メリーは自身の手首を切り裂き、その血を持ってユーベルコードの代償とする。
痛みなどやせ我慢でもしていればいい。
彼女にとって痛みとはそういうものだ。
耐えることができるもの。
世界には耐えきれないものが多くある。その一つがメリーにとっての志半ばで死して行くものたちを見ることであった。
彼女の瞳はユーベルコードに輝いている。
「この血を糧に、その遺志を遂げるための刃を与えます。その想い、果たして見せなさい!!」
偽・死の先を往く者よ(リバース・エインフェリア・フェイク)。
それは血液を代償にして、この地で果てた者たちの思いを持って、仮初の器とするユーベルコード。
即ち死者の思いを持って戦わせる力である。
クロスボウを構え、血晶石の弾丸を撃ち放つ。
「小賢しい真似を。死者をどれだけたぐろうとも!」
『ハルピュイア』の脚部の爪が溢れる死者たちを切り裂き、握りつぶしていく。
だが、それは過ちであった。
メリーの血は呪詛にまみれている。
呪われているのだ。そして、彼女の血を代償に生まれた死者たちは、その呪詛の力を宿す。
「同じように殺せると思ったら大間違いですわよ!」
彼女の言葉に呼応するように『ハルピュイア』が握りつぶした死者たちが弾けるように呪詛を撒き散らし、彼女たちを失墜させる。
彼女たちには何が起こったのか理解できなかっただろう。
呪詛によって空より引きずり降ろされ、メリーの放つ血晶石の一撃に打ちのめされていく。
「な、何が……? これは呪詛……!?」
「これが人の想い。あなたたちが無為に殺してきた人々のもの。その呪詛が今まさにあなたたちを失墜させ、その身を大地に縫い付ける」
簡単に縊り殺してきた者達によって『ハルピュイア』たちは動けない。
そこにメリーの斬撃が走る。
「さあ、生きなさい。あなたは彼等と違ってまだ生きているのだから」
メリーは砦に走る『魂人』の女性の背を見送る。
死者たちとは違って、彼女は生きて子供に会うことができる。
それならば、生き続けなければならない。
どれだけ辛くとも。困難が待ち受けるのだとしても。
「人は負けるようにはできていない。それを証明して見せてくださいな」
彼女は死者の想いを受け止めて連れて行く。
『魂人』の想いは連れて行かない。
なぜならば、まだ生きている。
生きて、生きて、力の限り生きて、初めてメリーは彼女たちの思いを連れて行く。
そのためにこそ、彼女は今は『魂人』の背中を見送るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
沙・碧海
ここまで来たんだ
最後までやりきらないと勿体ないよね
それじゃ、行こうか
攻めこまれてる状況とはいえここは皆が築きあげてきた砦
使えるものはいくつかあるんじゃないかな
例えば武器とか家具とか
最悪瓦礫でもいいや
そういったものをUCで活用していくよ
敵は高速移動をしてくるか
それなら砦の入り組んだ部分に突っ込むのも有りかな
相手の動きを制限しつつ、こちらは手早く動けるはずだ
ほらほらこっち
砦の中に入り込んだ時点でお前の負けだ
時にここの武器を使わせてもらい、時に「たちきり」で暴れまわって
もし生き残りの人がいたら出来るだけ庇うよ
おねーさんの子供は勿論、これ以上は誰も死なせたくない
……戦いも人生もまだまだ続くんだからさ
『魂人』の女性が砦に走る。
我が子を腕に抱きたいと。助けたいと。もう一度生きて会いたいと。
その願いを叶えるために猟兵たちは戦いに馳せ参じた。
『闇の種族』を退け、『見えざる禁獣』すらも振り払った。
そして、今まさに『闇の救済者』の砦が落ちようとしている。オブリビオン『ハルピュイア』たちの猛攻の前には、仕方のないことであったのかも知れない。
「仕方のない、なんて言葉で片付けてたまるものか。ここまで来たんだ。最後までやりきらないともったいないよね」
沙・碧海(ストレイウルフ・f39142)は、『魂人』の女性の背に迫る『ハルピュイア』に飛びかかる。
その一撃が『ハルピュイア』を叩き落とし、地面に激突してひしゃげる。
「貴様……! 我らを!」
怨念が凄まじい暴風、衝撃波となって碧海を襲う。
しかし、それを碧海は砦のバリケードの一分を引っ剥がすようにして持ち上げ、防ぐ。
「こういう戦い方はよくやるんだ」
碧海は走る。
砦はすでに落ちかけている。
けれど、そこら中に戦いの痕跡が残っている。
『闇の救済者』たちは決して弱くはなかった。『ハルピュイア』たちの波状攻撃にもよく耐えていた。
だからこそ、碧海は戦いの残滓を活用する。
砦の狼(クーロングラシ)は、まさに此処にいる。
崩れた壁を利用して跳ね上がるようにして『ハルピュイア』へと碧海は襲いかかる。手にした『たちきり』を奮って『ハルピュイア』の羽をへし折るようにして切り裂く。
「がっ! くっ……おのれよくも!」
怨念が満ちていく。
戦いとはいつだってそうだ。
戦いには戦いが。憎しみには憎しみが。連鎖するように広がっていく。どこまでも広がって、際限なく。
故に引っ込みがつかなくなってしまう。
怨念は、怨念しか呼び込まない。
「ほらほらこっち」
碧海は挑発するように砦の崩れた壁を蹴って飛ぶようにして走る。
しかし、『ハルピュイア』たちは入り組んだ壁の崩れたところを縫うようにして追うことができない。
なまじ空を飛べるからこそ、碧海に追いつけないのだ。
「砦の中に入り込んだ時点でお前の負けだ」
碧海が振るう一撃で『ハルピュイア』はまた一体と失墜する。
「おねーさんの子供は勿論、これ以上は誰も死なせたくない」
それだけが彼の願いだった。
それ以上は望まない。だって、もうこんなにも『闇の救済者』たちは傷ついている。
これ以上は、獣だって望まない。
だからこそ、彼は『たちきり』を振るい、砦の内部を駆け巡って『ハルピュイア』たちを翻弄し、その一撃で持って『ハルピュイア』を叩き伏せるのだ。
「……戦いも人生もまだまだ続くんだからさ」
彼女は子供と出会えただろうか。
再び腕の中に子供を抱く事ができただろうか。
そればかりを碧海は考えてしまう。きっとそうであってほしいと見送った背中を守る。それが今の碧海のやらなければならないことだ。
彼の瞳がユーベルコードに輝き続けている。
この砦にある限り狼は決して負けることはない。
瓦礫を蹴り飛ばし、空を舞う『ハルピュイア』を撃ち落とし、さらに『たちきり』を振るう。
誰かために何かをすることは誇らしいことだ。
生きる術がそれしかないのだとしても。
それでも子供を助ける事ができたのならば、それは碧海にとって喜ばしいことだろう。きっと楽しいと思うのだ。
「これまでが苦しかったのだから、報われたっていいと思う。だから、そのためにお前たちは此処にいてはならないんだ」
振るう一撃は『魂人』とその子供に絡みつくオブリビオンの因縁を『たちきり』、その未来に希望を齎すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
さあて、それでは最後のお仕事!
闇の救済者たちの砦の防衛といこうか
とはいえ、今回の主役は魂人のあの人だ
こっちはまあ、程々に敵を倒すかな
●
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
召喚石を取り出して…ぽいっとな
そして【Code:D.L】起動
雷龍召喚、そして雷龍よハルピュイア達を囲んで結界形成!
雷龍達に弱体化結界を張らせ、結界内部に『ブレス攻撃』
私も遠距離からまずは『斬撃波』でハルピュイアを撃ち落としていこう
地表近くに落ちてきた奴が居たら、接近して『串刺し』
雷龍達と協力しながら確実に数を減らしていこう
黒い羽根は斬撃波で『吹き飛ばし』て数を減らし、『オーラ防御』で残りを弾こう
猟兵がやらねばならぬことがある。
それを仕事であるというのならば、これは最後の仕上げであったことだろう。
『魂人』の女性は死に別れた子供の元に走る。
その背中は何も振り返らない。
どれだけ艱難辛苦たる道のりが彼女を試したのだとしても、彼女の子供を思う心は擦り切れることはなかった。
永劫回帰によって暖かな記憶をすり潰されてもなお、消えることなく輝く。
故にその輝きを守り届けることこそが猟兵の仕事であると月夜・玲(頂の探究者・f01605)は声を上げる。
「さあて、それでは最後のお仕事!」
目の前に在るのは『闇の救済者』たちの砦。
今にもオブリビオンである『ハルピュイア』たちによって攻め落とされそうである。しかし、ここには猟兵がいる。
オブリビオンと猟兵が滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかないのであるのなら、此処にあるのはオブリビオンの滅びそのものである。
手にした召喚石を放り投げる。
玲の瞳はユーベルコードに輝いている。
「Code:D.L(コード・ドラゴンロック)!」
此度の戦いにおいて玲は自分たちが主役ではないと理解する。この戦いの本当の主人公がいるというのならば、それは『魂人』の女性だろう。
たった一つ。
死に別れた子供に会いたい。
その願いのためだけに、あれだけの困難を乗り越えてきたのだ。
「なら、それを遂げさせてあげようじゃない」
振り抜く二刀の模造神器が蒼く煌めく。
「プログラム起動。雷龍召喚」
彼女の放った召喚石から雷が迸る。天をつくように飛び出す姿は龍。
雷を纏うのではなく、雷そのものたる龍。
それが三体飛び、『ハルピュイア』たちを取り囲む。それは結界の生成。
三龍包囲陣。
「これは弱体化結界……!」
「そうだよ。その結界に囲まれたが最後ってやつだよね」
玲の放つ斬撃波が『ハルピュイア』たちを結界の外に出さない。『魂人』を追わせることなどしない。
それに、と玲は見る。
雷龍たちが放つブレスの一撃は極大。
その一撃に耐えきれる『ハルピュイア』などいないのだ。よしんば耐えきれるのだとしても、玲が見逃すはずがない。
戦場となった砦はあちこちが瓦礫となっている。
仮に『魂人』の女性が戦力として合流するのだとしても、この砦を立て直すのは骨が折れるだろう。
けれど、そんなことは些細なことだ。
玲は走る。手にした模造神器の刀身をきらめかせ、地に落ちた『ハルピュイア』が再び飛び立とうとするのをさせない。
振り抜いた一撃が『ハルピュイア』を両断する。
「これからの人生をどう歩むかはあの人次第。どんな道のりになるかなんて誰も知らないし、わからない」
けれど、と玲は思うのだ。
あの背中を。
脇目もふらずに、我が子に会いたいと願った思いは『禁獣』すら振り切った。
ならば、その道行きの先がどのようなものであれ。
暗闇に閉ざされるのだとしても、胸に抱いた熾火は途絶えることはないだろう。
雷龍の放つブレスが常闇の世界を照らす。
それはどんなに暗闇に満ちた未来であっても必ず照らして進む道を示す。
「一歩先が暗闇でも、それでも進んでいけるのが人ってもんだよ――」
大成功
🔵🔵🔵
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
…何とか間に合ったか!
魂人の女性に子供の下へ向かってもらうため
分身たちに道を切り開かせよう
指定UC発動、分身を10体生成
分身全員の黒剣を「属性攻撃(炎)」で炎剣に変え
「ダッシュ」で砦に先行させ片っ端からハルピュイアを斬り捨ててもらう
俺自身は魂人の女性と一緒に走りつつ、迫るハルピュイアを斬っていこう
怨念を纏った衝撃波だけは発射のタイミングを「見切り」、「属性攻撃(聖)、衝撃波」で迎撃し相殺だ
ハルピュイアよ、貴様らの居場所はここにはない!
消え去れ!!
親子が再会を果たしたら、頃合い見て帰るよ
…まあ、魂人と化した女性を見てお子さんが驚くようなら
一応フォローは入れるけど
間に合えと常に思っていた。
第三層から第四層に至る道のりは長く険しい。
その間に『魂人』の女性の子供が無事である保証は何処にもなかった。一種の賭けであった。けれど、信じないわけにはいかなかったのだ。
『魂人』の女性にとって、それだけが唯一であった。
たった一つのそれだけを抱えて、あの暗闇の荒野に足を踏み出した勇気に報いたいと猟兵の誰もが思ったであろうし、館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)もまた同様であった。
だからこそ、『闇の救済者』の砦がオブリビオン『ハルピュイア』によって今まさに陥落せんとしている光景を目の当たりにして、息を吐き出す。
「……なんとか間に合ったか!」
その言葉と共に走り出す背中があった。
『魂人』の女性。
彼女が子供の元へと駆けていく。
その背中を守る猟兵たちのユーベルコードの輝きがあった。
守らねばならない。此処まで来て、自分たちが望むもの、その未来の光景を守れないで何が猟兵かと敬輔の瞳がユーベルコードに輝く。
「彼の道人の力よ、今ここに! 強大なる敵全てを蹂躙し尽くす力を!!」
渾沌闇技・分身乱舞(コントンアンギ・ブンシンランブ)によって白化した分身たちが『魂人』の女性を守るように飛ぶ。
炎を纏う剣をもって彼女の両脇を固め、走る。
そのさまはまさに熾火が盛るように。希望を絶望に変えさせぬとするように、一直線に砦へと走る。
「今のうちだ。行ってくれ!」
その言葉に『魂人』の女性は息を切らしながら走っていく。
「何が目的か知らないが、猟兵がなすことは!」
その背中に荒ぶ『ハルピュイア』のユーベルコード。怨念満ちる風。その衝撃波が『魂人』の女性を襲う。
それを敬輔が振るう斬撃波が相殺する。
吹き荒れる怨念。
仲間を打倒されたことへの怨み。
それが希望満ちる瞳の『魂人』を襲う。それが許せないと敬輔は叫ぶ。
「『ハルピュイア』よ、貴様らの居場所はここにはない! 消え去れ!!」
裂帛の気合と共に炎が走る。
剣に宿る炎が弧を描く軌跡でもって『ハルピュイア』たちに叩き込まれる。
迫る敵は全て己が惹き付ける。
ただひたすらに『魂人』の彼女は子供の事を思えばいい。他の何も必要ない。ただ、それだけでいいのだ。
それだけが自分たちが今まで戦ってきた理由だ。
常闇の世界にあって死は救済ではなかった。
永劫の如き苦しみが続く世界が広がっているだけであった。
けれど、それでも暖かな記憶を持ち続けることによって得られるものがあった。それは親が子を思う心だ。
誰もが苦しみもがく世界にあって誰かを思いやれる心がある。
その輝きがともした篝火にこそ猟兵は辿り着くというのならば。
「俺の復讐の度は終わった。これからは、未来へ向けて戦う。そのためには!」
オブリビオンの存在は必要ない。
振るう斬撃が最後の『ハルピュイア』を叩き伏せた。
その背後で声が聞こえる。
「母さん!」
たた一言。
けれど、それだけでよかった。それだけで敬輔は報われたように思えたのだ。
多くはいらない。親が子を思うように。子が親を思うように。
温かな記憶はすり潰されようとも。
トラウマに変えられようとも。
それでもまた新たに灯るものがある。それを今まさに証明する光景を敬輔は、猟兵たちは見ている。
それだけでいい。
安らかに眠れと、過去の怨みも、憎悪も、何もかも墓標に刻むように。
常闇の世界に今、新しい希望が灯された――。
大成功
🔵🔵🔵