汚物を消毒したって汚いなら意味がねえ
●
テキーラのラベルが貼られた瓶を手に、同僚警官が笑っている。
「──それで、あの野郎はなんて言ったと思う? 『やるなら俺を先にやれ』だとよ。だから俺はそこでそいつのケツにギンッギンに立たせた警棒をぶち込んでやったのさ! ヒイヒイよがってから死んでったぜ!」
揺れる濁った酒はその内成分の多くを骸の海に汚染されたアルコールで占められている。
それを知ってか知らずか。煽る様に飲んでは血反吐を撒き散らしては笑い叫び、ただでさえ薄汚れた警察署のオフィスの壁に黒い塗料を浴びせていた。
当然、それだけ派手に撒き散らせば周囲にいた警官の衣服やヘルメットバイザー、自慢の改造アームにも飛び散るわけだ。そうするとどうだろう、頭に血が上った一人の同僚警官は一瞬で腰から抜いたピストルで同僚の頭部を撃ち抜いて壁や床に肉片を散らしてしまう。
「おいこの糞野郎。俺のピッツァに何をトッピングしてやがんだ、アァァ!?」
「タバスコでもかけりゃいい塩梅になる」
「その前にいい案があるぜ、テメェをぶっ殺してから奪った財布でサイバー居酒屋の『おおなめくじぶとん』に行くんだ。そこで俺は今日一最高の気分でトロをバーボンと一緒に喰らうってなぁ!」
勃発する銃撃戦。
血飛沫と笑い声が上がる警察署の二階から発砲の音が連続する一方、一階や二階では違法ドラッグやハッカーによる改造拡張で楽しむ風俗紛いの営みに耽る警官たちが騒ぎ果て。そうした恐ろしい喧騒の外では住民らしからぬ強面の輩がいつもの事の様にすました顔で死体を引きずり歩いていた。
そんな無法地帯と化した通称『シメナワ区』と呼ばれるスラム街を、一糸乱れぬ隊形のまま歩き進む清廉潔白を象徴する白亜に塗り纏う武装警察たちの姿が在った。
彼等の目的は普段と変わらない。犯罪者を取り締まり、正義の名の下に地獄に送る。
「ミナミ! あちらの状況は?」
「暴徒集団の確保に成功しましたが、ドラッグの横流しをしていた少女グループの主要メンバーがシメナワ区の所轄に匿われていると情報が」
「あの無能ども……子供を使ってなんてことを」
「外道めらが、畜生にも劣る下劣極まりない。連中を押さえる良い証拠だ、データを上層部に送った後で突入部隊を編成。連中に鉄槌を下してくれる!」
シメナワ区の警察はある時期から一気に腐敗が進んでしまっていた。
犯罪の幇助に限らぬ殺人や強盗、近頃は得体の知れないドラッグや出所不明なスシに手を出してスラム街に汚染の拡大を促しているらしい。最早、隣り合う地区の管轄としては見過ごせない邪悪と化したグループの彼等に正義の炎に燃える『アラナワ区』の警察は上層部に再三の報告を行いながら準備をして来ていたのだ。
ついに明確な尻尾を掴んだ悪党どもの眉間に鉛弾をぶち込むために。
「連中には仲間を殺されたこともある……今夜、奴らを根絶やしにする!」
●グリモアベースにて
白衣を着た少女、グリモア猟兵のレイン・アメジストがカルテのように持った指令書を読み上げた。
「先日、いわゆる『大いなる危機』を予知したの。
現場はサイバーザナドゥの荒廃したスラム街地区、そこは通称『シメナワ区』と呼ばれているようね。ここで数日以内に大規模な抗争が起きた後に住民を巻き込んだ暴徒の発生と虐殺が連続するわ」
ただごとではない雰囲気に猟兵の視線が集まるのを感じながら、レインは続きを話し始めた。
「予知の対象となったのは巨大企業群の傘下企業のひとつと癒着して腐敗しきった警察署のメンバーね。彼等は、汚染物質『骸の海』を大量に含んだ合成酒や電子ドラッグを服用してオブリビオン化したあと、敵対した他地区の警官と衝突して殺戮……血と死臭によって更に覚醒したオブリビオンとなって暴走するわ。
モラルの吹っ飛んだ相手に何を言っても無意味。これは──残念ながらオブリビオン化した彼等に限った事じゃないのがサイバーザナドゥでもある。
腐敗警官メンバーとぶつかる前、それを捜査していた他地区の警官たちがある程度のシチュエーションを作り上げてくれるわ。彼等はオブリビオン化していない、正義を志してはいるけれど……期待しない方が良いわよ。あくまでも今回の任務で敵との戦場を作り上げる舞台装置になってくれるくらいの感謝をするくらいが丁度いいでしょう」
どこか知った口ぶりで話すレインは、軽く頭を振って。
最後に猟兵たちを見た。
「腐りきった敵を一網打尽にする機会はそう有るわけじゃないわ。猟兵さんたちには彼等『アラナワ地区警官』と合流後、腐敗警官たちとの戦闘になるまで交流をしておいて欲しいの」
頼んだわね。そう告げる彼女はどこかもうしわけなさそうにも見えるのだった。
チクワブレード
はじめまして、チクワブレードと申します。
よろしくお願いします。
依頼概要はこちら。
第一章『日常─サイバーパンクの四季折々』
今回のロケーションはサイバーザナドゥの荒廃したスラム街地区、そこは通称『シメナワ区』と呼ばれています。
敵集団となる腐敗した警官たちは普段は自分達の警察署に籠っているのですが、メンバーが街にふらふらしてる事も多々あり、拠点への襲撃は確実な解決にはなりません。
そのため、事前に入念な準備をしながら腐敗警官たちを捜査していたとされる『アラナワ地区』の武装警察と合流し、彼等に協力関係を結べるようにコミュニケーションを図ってください。
アラナワ地区の警官。
彼等は基本的に古臭くも流儀に則った正義を重んじる組織で、自分達のいる地区も周辺地区に比べ(表面上は)犯罪率の少ない区画となっています。
しかしサイバーザナドゥのスラム街に長く身を置き修羅に満ちた思考に基づいた取り締まりを繰り返してきた彼等は「いかなる犯罪も万死に値する」と自分達を絶対の正義と信ずるに値する思想を持っており、皆様の知る『正義の味方』には程遠い集団だという認識が必要です。
第二章『集団戦─リアニメイト社の廃棄物【残骸】』
ついに腐敗警官たちとの抗争が開始、あるいは皆様が一章で交流して得た信頼から最善最短の好機などを譲られた事で突入から始まります。
敵は大量の骸の海を過剰摂取ないしは投与された事で変異しオブリビオン化した悪徳企業の廃棄物、戦闘フレーバーに頭ぱっぱらぱーの腐敗警官たちとの乱戦になります。
いずれも凶悪ですが周辺環境に配慮する必要はありません、生かしても邪悪なので全て滅しましょう。
第三章『ボス戦─マフィア・オブリタレーター』
腐敗の原因となった警官の一人が現れるようです。彼はどうやら背後にメガコーポの影があり、相応に強力な機械化義体を有して猟兵と戦います。
詳しくは章開始時に。
本シナリオに登場する企業はCEOの存在以外は好きに共有、使用されても構いません。
以上、よろしくお願いします。
第1章 日常
『サイバーパンクの四季折々』
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POW : 四季折々の食べ物を楽しむ
SPD : 四季折々の催し物を楽しむ
WIZ : 四季折々の風景を楽しむ
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
コーデリア・リンネル(サポート)
アリス適合者の国民的スタア×アームドヒーローの女の子です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、機嫌が悪いと「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
内気な性格のため、三点リーダーや読点多めの口調になります。
ですが人と話すのが嫌いでは無いため、
様々な登場人物とのアドリブ会話も歓迎です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
向・存(サポート)
もし手助けが必要でしたらお手伝いするのですよぉ~。
ユーベルコードの出し惜しみをするつもりはありませんけどぉ、だからと言って乱発すればいいってものでもないですよねぇ~。
使いどころに迷ったときはぁ、ご同輩に相談すればいいでしょうかぁ~?
けどぉ、非道なことをなされる方には手加減無用、全力で参らせていただきますねぇ~。
あとは最後まで油断大敵、【咄嗟の一撃】も放てるように【逃亡阻止】は意識しておきましょう~。
大丈夫ですよぉ~、手足の二・三本くらいもげてもなんとかなりますのでぇ~。
荒事以外の御用ならめいっぱい楽しんじゃいますよぉ~。
特に読み物なんかは好きですねぇ~。
※アドリブ・連携歓迎
琳谷・花咲音(サポート)
自身とよく似た姿の影(背格好は同じ、性別とロングヘアが違う)悪魔【影(エイ)】を召喚するガジェッティア。
柔らかな口調と行動で男女どちらともとれないジェンダーレスな雰囲気。
女の子になりたい訳じゃない、男女の垣根はなく自分は自分。
友人(感情を結んでいる人)以外には『僕』。
友人には『私』。
戦闘時にはガジェットを臨機応変に変化させて戦う。
火力はないので手数で押す…又は牽制などサポートの立ち位置にいる事が多い。
【影】は本人と鏡合わせのような行動をとる事が多い。
生贄として、魔法媒体として様々な因子を詰め込まれた存在。
その影響で召喚したものを身に宿して戦う降霊術も得意とするが、その戦い方は好きではない。
新田・にこたま
腐敗警官の根絶やし計画…なんて心躍る計画なんでしょうか!
これは是非とも私も参加させてもらわねば…!
アラナワ地区警官の下に向かい、顔を合わせてすぐに警官としての礼儀作法に則った挨拶をし、捜査に協力をさせて欲しい旨を伝えます。
まあ、急に管轄も何もかもをぶっちぎってやってきた助っ人を仲間に入れるかは迷うでしょうから、UCを使用して見せて私の力と思想を示します。
かつて捕らえた悪人たちを改造して作り上げた正義のサイボーグ軍団は腐敗警官の襲撃に対する力として有用であると同時に、私も悪に対しては苛烈な人間、つまりは同志であることの証明にもなると思います。(敵の能力によっては戦闘では別のUC使うかもですが。)
●
慣れ親しんだサイバーザナドゥの都市部を四輪装甲車が走り抜ける。
今宵メインストリートの治安は運転席に座る彼女のおかげで保障されているに等しく、同時に車両のデータを偶然にも拾い上げた治安維持部門の兵士は一般車両に偽装した車体の中でコーヒーを噴き出していた。
カチリ、と装甲車の内部に流す意図で再生テープがボタンひとつで回転を始める。古めかしい録音再生機は車載の物ではない、新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)が別件で取り締まった際に降ろし忘れた証拠品のアンティークである。
流れる音声はグリモア猟兵の声。
その内容、これから向かう先で待つ今回の任務についての詳細を同乗する猟兵たちにも聞かせながら。にこたまは片手間にハンドルを切って横合いからの追突を躱し、よそ見運転の車両へすれ違いざまに後部車輪を一撃して人気のない道路脇にクラッシュさせ都市の部隊にしょっぴかせて昂りの一声を上げる。
「腐敗警官の根絶やし計画……なんて心躍る計画なんでしょうか! これは是非とも私も参加させてもらわねば……!」
実に実に熱いものを感じる。そう呟く彼女を隣の助手席または後部座席から見ていた仲間が賞賛する。
「すごいね、綺麗に弾いてたよ今の追突車」
「追突はしてないのでセーフではないでしょうかぁ~? さすがサイバーザナドゥの警察官は慣れているのですねぇ~」
道路脇に弾かれた車に黒づくめの部隊が駆け寄り、そして逮捕されている様を窓から見遣る琳谷・花咲音(気ままな異邦人・f35905)に続いて向・存(葭萌の幽鬼・f34837)も小さく拍手を鳴らす。
そんな彼女たちに軽く手を振って笑顔を向けた後。にこたまは都市郊外へと続くブリッジに車を走らせる。
サイバーザナドゥの景色は分かり易い。無駄に広げるよりも『積み上げる』ことを好む傾向によって、メガコーポによって作り上げられた箱庭を抜ければ荒廃したスラム街や荒野ばかりが前方に広がるのみだ。
「わぁ……こちらに逸れるとあっという間ですね。前に来た時は都市部? の方だったから……アポカリプスヘルみたいで変な感じです」
「向こうは向こうで退廃してますが、サイバーザナドゥも似てるようで根本的に大破壊と発展による荒廃は別というのがよく見ればわかりますよ」
コーデリア・リンネル(月光の騎士・f22496)が流れ行く装甲車の外を見つめながら呟いたのをにこたまが頷き会話を少し繋げた。
車載ナビを傍目に移動する彼女は、現地の情報を手元で僅かばかりだが探っている。
『シメナワ区』と『アラナワ地区』は隣り合い、メガコーポ傘下の影響は少なからず受けていた筈だ。それも企業の所在少なき郊外のスラム街、それがどうして現場の人間たちの傾向ひとつで狂うものか。
(大物がいないなら、小物の違いでしょうね)
片目を閉じて軽く深呼吸する。
運転に支障をきたさない程度の情報を頭に入れたにこたまは、現地の状況を共に来た仲間や別所から合流に向かっている猟兵にデータを送りながら頭の中でシミュレートする。
(さて、|運の良い彼等《アラナワ地区》に会いに行きましょうか)
──薄汚れた警察署らしきビルの前に【ミニパト】を停めたにこたまは、すぐに署の前で警察手帳を掲げた。
コーデリアが上を見る。目を凝らせば黒塗りのカーテンが揺れる窓の上に窓のように偽装した狙撃口があった。
「もしかして……」
「狙ってるね。僕たちが車で近づいて来た時にはもう待機してたから、特別な意図はないと思いたいな」
にこたまの後ろで腰に手を伸ばす花咲音が静かに応える。
そんな猟兵たちに向かい、何拍か置いたあとで狙撃手とは別の気配が建物の下から出て来た。
機械化義体らしい剥き出しの両腕、そこに幾つもの手錠をぶら下げた警察官が一人で猟兵の前に出て来たかと思えば。にこたまと同時に短い敬礼を交わしてから互いの手帳と──義体を通じたローカルによる通信で所属管轄のデータを見せ合う。
見ようによっては相応のリスクがあるはずの行為だが、にこたまは相手が自分を『そういう相手』だと見てくれたのだと内心で確かめる。
あえて礼儀作法に則った彼女に、アラナワ地区の警官は敬意で以て応じていたのだ。
暫しの間を開け、白亜に塗り固めた警官制服の襟元を片手で直しながら男が笑った。
「用件を聞こうか。新田殿」
「善良な『協力者』から当該地区における腐敗を取り除こうとするあなた方の話を聞きました。こちらは私の同僚たち。既にこちらの上層部には許可を得ており、それぞれ私と共に捜査に協力する所存です!」
「相手が誰だか分かっているのかね」
「相手を気にする正義ではないつもりです」
カツン、と横から振られた素早い警官の拳ににこたまが右拳で軽く弾いて音を鳴らす。
猟兵たちに背を向け、警察署に向かい幾らか身振り手振りをした警官が振り向いて、ニカッと笑う。
「──捜査協力に感謝する。既にデータの掲示はしたが、私は署長のマーカスだ。企業バックIDは……」
猟兵たちを署内へ歓迎する署長マーカスは自己紹介をしながら、同僚の警官たちにも彼女達を紹介していくのだった。
●
花咲音は捜査資料を見ながらカップを手にしていた。
目を通しているのは勿論、これからすぐに起きる抗争の発端となる腐敗警官『シメナワ区』の者達についてだった。
「数か月前から犯罪件数が周辺域の数倍になってるのって、気付かないものなのかな」
口に含んだインスタントの紅茶が思っていたよりも甘い事に驚きを含みつつ、彼はページをめくってはサイバーザナドゥでも古いタイプの資料を指先でトントンして見せた。
傍らでは花咲音と同様。コーデリアと|存《そん》の二人もオフィス内の小綺麗なソファに並んで座り、積み上げられた紙束をひとつずつ目を通していた。
「うーん……滞在するマフィアやヤクザとか、ストリートギャングの数次第で上下するらしいから……」
「グリモア猟兵の方も言ってましたね~、ここの警察官もあまり期待しない方が良いとかなんとかぁ? 案外そういう所に目を向けないのかも知れないですねぇ~」
おっとりと紅茶に角砂糖をちゃぽちゃぽと追加する|存《そん》がコーデリアにカップを差し出して、首を振られたのでひとくち飲み干してから窓の外の景色に目を向けた。
どことなく荒んだ雰囲気はあるものの、市内の街並みや人の顔に陰りは少なく。アポカリプスヘルに比べれば明日がある分、わかりやすい。|存《そん》はその様にアラナワ地区を認識していた。
「ところで、新田さんは?」
「下で『お披露目』してたかな、今後の話をしたいってここの警官が言ってたから」
花咲音はそうコーデリアに伝えてから立ち上がり、窓際に寄って階下を覗いた。
──にこたまの背後に並んだサイボーグ軍団を見て、アラナワ地区の警官達は冷や汗を流していた。
彼女が見せたのは、調べれば分かる範囲で辛うじてデータベースに残っている犯罪歴のある者たち。過去に逮捕された者や手配履歴のある者、そうした見事な犯罪者をモラルの軽くぶっ飛んだ|再利用《リサイクル》の仕方で味方に、それも考えうる限りでは巨大企業の所有する技術を用いた保存法で率いている。
署長マーカスとその同僚にして部下の警官たちは混乱した眼差しでにこたまを見ている。敵味方以前の問題だ、どうしてこれほどの人物がここにいるのか。
「素晴らしい」
だが首を振ったのも署長だ。突然都合よく舞い込んだ強力な味方にして、誇るべき思想を持った同志の存在が発する怪しさなど些事である。そう言いたいのだろう。
不穏な空気は彼の言葉に消え、後に残ったのは頭ではなく感情の部分。まざまざと見せつけられた実力と徹底した正義の思いを前に警官たちは言いようの知れない感情に揺れていた。
「……本当に我々の捜査に協力していただけるのでしょうか」
ゆえに、漏れ出た声は波紋のようなものだ。拡がるそれを塗り替えるには──更に大きな波で押し流すしかない。
防護バイザーで頭部を隠した女性警官が呟いたその言葉に、にこたまが強く頷き一歩踏み出して言った。
「無論であります。共に、平和を脅かす輩に鉄槌を下しましょう!」
正義に必要なのは思想だけではない。
彼女はそう告げるように、返答一つに胸を張って答えたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第2章 集団戦
『リアニメイト社の廃棄物『残骸』』
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POW : 人間には、内臓が必要だ
【生物の口や腹を狙う、漏電するマシンアーム】が命中した部位に【コアから放たれる、高電圧の電流】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
SPD : 人間には、手足が必要だ
自身の【壊れかけたコアから漏れる電流】が輝く間、【生物の手足を捥ぎ取る、マシンアーム】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 人間には、頭脳が必要だ
【コアから繋がる人体の欠損に気がつくこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【首を狙って伸びるマシンアーム】で攻撃する。
イラスト:右ねじ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アンリ・アルドワン(サポート)
●口調
男性的(俺、お前、呼び捨て、か、だろ、かよ、~か?)
●方針
行動:基本的には私情<目的
私情を挟まないのは複雑なことを考えるのは得意でなく、さっさと目的を達成した方がいいだろうと思っているから。
素直になれない性格で取っつきにくいですが、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
そうしないと絶対に成功しないという場合の除き、依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません。
●戦闘方針
拷問具(大鎌)による接近戦を行います。
あまり難しいことは考えず手数で押すイメージです。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
●その他
アドリブ等可能です。
アイクル・エフジェイコペン(サポート)
猫っぽい舌足らず口調にゃ。こんにゃ感じで、末尾だけじゃにゃくて途中にも入れてほしいにゃ。めんどいならなくてもいいけど。
ちなみに機嫌悪い時は「に゛ゃ」って濁点入る感じにゃ。
正直状況とかよくわかってにゃいけどなんとなく気に入らない顔してるからぶっ殺すに゛ゃ。
パワーイズジャスティス。真正面から行っておもいっきり攻撃するのみにゃ。ユーベルコードは何使ってもいいにゃ。
基本はむちゃくちゃ猫かぶってかわいい子演じてるものだから、なるべくスマートに『せーとーはなれでぃー』的な感じで戦おうとするけど、むちゃくちゃ怒ったら地が出てむちゃくちゃ口が悪くなる。
「ぶっ殺おおおおおおす!●ぁぁぁぁぁぁっく!!」
勝守・利司郎(サポート)
神将の四天王×花蝶神術拳伝承者、勝守・利司郎だ。
花蝶神術が何かって?オレが言い張ってるだけだが、練った気を花や蝶のごとく扱うやつ。
しっかし、『トーシロー』が達人っていう設定なぁ。あ、オレ、神隠し先で神将になる前はバーチャルキャラクターな。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動する。そうだな、主に拳に練った気を集めてグローブ代わりにして、殴ることが多いか?
他の猟兵に迷惑をかける行為はしない。オレの美学(味方ならば邪魔をしない)に反するからな。作戦なら別だが。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしないからな。
あとはおまかせ。好きによろしく!
クルス・グリムリーパー(サポート)
【アドリブOK・バイオレンス可】
デッドマンのブレイズキャリバー×黒騎士。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、敵には「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
デッドマンにされたことで無限の命を獲得しており
敵に殺されることで力を発揮するユーベルコードを持つ。
物静かだが、言いたいことははっきり伝えるタイプ。
敵の数が多い時は、普通に戦った上で追い込まれる形になることが多いかもね。
だんだん追い込まれていって敵の攻撃で倒される、
そういうパターンが多くなるだろうけど
その際には復活してユーベルコードで逆転を行う
そういう戦いになるわね。
●
「──部隊配置完了。腐れ外道どもの位置のマッピングデータも各自受け取ったな? 行くぞ、奴等を根絶やしにしてやる!!」
隠匿化インジケーターデバイスを軸にしたローカル通信、『アラナワ地区』のマーカス署長が同僚警官達と猟兵たち数名を含めた小隊規模の包囲網の完成と同時に開戦の合図を出した。
非アクティブ状態を示していたそれぞれのネームバーが交戦状態に切り替わったのと同時、『シメナワ区』の中央部に位置する警察署に四方から銃撃が殺到する。
窓の傍で血飛沫が上がり、相手をもはや人間とも思っていないアラナワ地区の警官達は猛烈な勢いで擲弾や大口径のライフルを叩き込んでいく。弾幕と爆裂が警察署を半壊させた頃には、腐敗警官の姿も見えなくなっていた。
だが通信インジケーターに猟兵の一人からメッセージが追加される。
『半数生存。敵の隠し玉が来ます』
そのメッセージを見たアラナワ地区の警官、弾かれるように立ち上がった署長マーカスが声を上げた。
「潮時だ! アラナワ・ポリス第二分署は後退! 『彼等』に華を持たせろ!!」
──築き上げた信頼は無駄にはならなかったという事だ。
勝守・利司郎(元側近NPC・f36279)はそうした背景を内心敬いつつ、しかし敵方も味方も共に容赦ないやり方に眉を潜めざるを得ない。
「ま、そういう物だとは分かってるけどね」
バーチャルキャラクターだった利司郎は感覚的にだがサイバーザナドゥの浅層ネットワークから情報収集が出来る。アポカリプスヘルなどの終末とは違い、ディストピア的な在り方にそれほど疑問は抱かなかった。
巨大企業群とはよく言ったモノだ。つまるところ貴族社会、人の世『らしい』じゃないか。
「さて、さて……やりますかな。悪く思わないでくれよ、こちとら逃がすなと言われたばかりでね」
アラナワ地区警官の部隊が引き下がった頃を見計らい利司郎が前に出る。彼が踏み込んだ瞬間、ユーベルコードとして不可視のフィールドが拡がり戦域を不穏な空気が包み込む。
ところで利司郎が今いる場所はどこか。それは、シメナワ区の警察署裏口だった。
正面の荒れ果てた玄関口から駐車場は生きた監視カメラが多い。敵もそちらの動向を見てさぞや驚き、中には慌てふためいて逃走の気を起こす者も現れている事だろう。
利司郎の任はそれを阻止する事が目的でもあったのだ。
間もなく、オブリビオンの気配と共に地下からアスファルトを破って数人の警官が骸と成り果てながら飛び出して来る。
さては逃走しようとしてオブリビオンの暴走に巻き込まれたのだろう。
「どうしたって無駄さ。オレからは──逃げられやしないよ」
利司郎の『側近【|花蝶神術拳士・トーシロー《チュウボスカラハニゲラレナイ》】』によって続々と敵側で事故やオブリビオンの暴走が巻き起こるのを眺めていたクルス・グリムリーパー(永遠の死神・f24385)が武器を手に取る。
「……廃棄物ね」
駆けるその手に握るは漆黒の大鎌。
「醜悪な様だな、だが──骸の海に還す対象としては非常に絵面が合っている。狩るぞ」
並ぶも其処には奇しくも黒き大鎌がもう一刃。
「ええ。あれは脱獄者……刈り取り、殺し還す……!」
クルスに並走するアンリ・アルドワン(デッドマンの咎人殺し・f38956)が手を伸ばした直後、二人の姿がその場から消失して銃弾が通り過ぎる。
利司郎のユーベルコードに気付く腐敗警官はいないものの、オブリビオンは猟兵の気配を感じ取っているのか。その周囲には少しずつ警察署から這い出て来た怪物の姿が在った。
クルスたちを狙った腐敗警官達の銃撃を躱した後、継ぎ接ぎじみた形貌のオブリビオンが無数の手を伸ばした先で斬撃が撒き散らされていた。
「ぐ、ぐあぁぁッ!?」
「なんだこれは……がはッぉ」
違法インプラントを使い自己改造したサイボーグでもある腐敗警官たちが訳も分からず地面に転がる一方、警察署側に隠れ潜んでいた敵を屠ったクルスとアンリの二人が虚空から姿を見せると同時に血に濡れた一対の大鎌を交わして火花を散らし見せた。
「──俺は右だ」
「なら私は左ってところね」
這い寄るオブリビオンの集団を前に、どちらも胸元の臓腑を熱く律動奔らせ構える。
クルスの黒衣が翻り、次いで鋭くも捨て身の大振りがオブリビオンの義体を引き裂いて千切り飛ばす。
横合いから飛んできたオブリビオンの義体パーツを蹴り弾いて、黒鎧を打ち鳴らしアンリが大鎌を下から振り薙いでオブリビオンの頭部らしき部位を両断する。弾いた義体パーツを吸収しようとする動作、その刹那を狙いすました大鎌による剛撃がオブリビオンの心臓部を切り裂き、切り開いた向こう側から飛び込んで来たオブリビオンの巨体へ次の刃を叩き込みに身を奮わせる。
クルスとアンリ、一対の大鎌が黒刃の軌跡を幾重にも刻み描き出して。警察署後方で粉塵と鮮血が飛び交う。
「しゃオラァァァアッ!! ぶっ殺すに゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
クルス達が飛び掛かった敵と血飛沫舞う衝突が起きたのに次いで、警察署側面から後退するアラナワ地区警官への追撃に出ようとした腐敗警官たちが空を舞っていた。
地下駐車場をぶち抜いて来たと思しきオブリビオンの無数の異形が姿を見せた瞬間、アイクル・エフジェイコペン(クロスオーバー三代目・f36327)が小駆に見合わぬほどの巨大な斧錨を振り回して合成コンクリートを叩き割ってオブリビオンを地中に沈めて地盤沈下させる。
アイクルがキレているのは、純粋に腐敗警官たちが直前の銃撃戦時に彼女の存在に気付いて集中的に撃って来たからだ。敵側に少女の姿が在れば狙うのは外道の輩として有り得る話だが、この場合は少し違う。彼女はそれを『なめられた』と解釈した結果だった。
「こいつらをやったら、次はあいつらの番に゛ゃ……ッ!!」
怪力のままに斧錨を振り抜いたアイクルが遠心力と慣性で宙を舞う。
警察署側から幾らかの弾丸が飛来するのを錨の側面に身を隠して防いだ彼女は、地上に着地後。コンクリート面を踏み砕いて一直線に署内から這い出してきた廃棄物のオブリビオンを横殴りの一撃で肉塊にして撒き散らしてやった。
どこかで悲鳴が聞こえる。味方ではない、どこかで──アイクルを見ている奴らがいたのだ。
「そこかに゛ゃぁ?」
強化素材で改修されている筈の警察署を砂のお城を崩すような気軽さで破壊しながら、アイクルは自らを嘲笑った腐敗警官を目指して駆け始めるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
新田・にこたま
せっかく好機を譲っていただけたのですからね。礼儀正しく真の姿で突入しましょう。
敵拠点の前でUCを発動。真の正義が放つ威光をお見せしましょう!
私の超武装機動警察署から出動するサイボーグポリス武装機動隊は不屈の勇士たち!
内臓を爆破されようが警察署が変形(変身)する度に回復し、署からは更に大型のサイボーグの増援が駆けつけます。署からの自動射撃による火砲支援もありますし、順当にすり潰してやりましょう。
敵の断末魔も命乞いも悪態も、全ては正義の殺戮の前には無意味に掻き消えていく定めです。
これまで連中がやってきたことが自分たちに返っているだけ…スッキリ爽快ですね!
さて、黒幕の殺し方も考えておかなくては…。
●
アラナワ地区警官の後退が始まる際、署長マーカスが古くも正義と威信に満ちた礼儀作法に則った敬礼を交わして言った。
「後は頼む。この好機、逃すわけにはいかない」
「任せて下さい。我々の正義を冥土の土産としてやりましょう」
短くも確かな答えとして。
それまでとは異なり装いを旧型の面影を残しながらに一新した本気の礼装へ換え、新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)がオブリビオンの気配を膨らましている警察署へ向かい踏み出していく。
懐から指先で挟み取り出した警察手帳。
掲げたその自らが盾とも矛ともする威信の象徴たるそれで、彼女はワールドハッカーによるサイバー技術を大いに|取り入れた《魔改造した》真の力を発揮させる。
「Ωジャスティス・リアライズ! ──真の正義が放つ威光をお見せしましょう!」
シメナワ区警察署の前に立つ彼女を狙う腐敗警官達の銃弾が、警察手帳から突如奔った極光によって弾かれる。
現行技術では不可解極まりない形容し難い電子線、電脳空間を経由してにこたまの背後に超重量の質量が顕現。直後に周辺一帯に衝撃波を伴い出現したそれは、【超武装機動警察署Ωジャスティス】なる要塞めいた“警察署”だった。
そんな馬鹿なと叫び散らかす腐敗警官達が逃走しようとしては他の猟兵に阻まれしくじる最中、にこたまを指揮官として展開したΩジャスティスの搭載支援火器が管制塔システムに基づいて照準が成され。無謀にもアラナワ地区警官が後退したのを見て好機と勘違いした腐敗警官が正面から出て来た矢先から火砲による砲撃で血煙に消えた。
ゴウンゴウン、と展開を続ける超武装機動警察署は変貌を続けている。
「抵抗も、投降も無駄です!!」
むだなの!? という叫びがシメナワ警察署から轟くのをにこたまが無視する。空を切り裂く様に手を振り、合図を出す彼女の背後からは黒きシルエットが立ち並び。行軍を始めていた。
それらの形容は一様にして何処かで見たような記憶のある顔立ち、武装。ガチガチに着せられた警察コートを纏ってはいるものの、しかしよく見ればその白く染まった瞳は異様に光が灯っていて──染まり切っている。
サイボーグ軍団。にこたまが指揮するは正義の威光そのものであった。
「私の超武装機動警察署から出動するサイボーグポリス武装機動隊は不屈の勇士たち! 汚物が蔓延る道理など無いと、ここで順当にすり潰して刻みつけてやりましょう!」
巨大企業群傘下にして悪徳企業の廃棄物が『骸の海』による覚醒が遅延で発生した結果、暴走する事は間々ある。
それがオブリビオンと称されることも、そうでない怪物として語られることも。サイバーザナドゥにしろ何にしろ変わらない。
無数の義体パーツと生体パーツが組み合わさり完成したグロテスクなマシンアームが百足の如く並び、それらは『部品』さえ揃えば増殖する機能を有する。
シメナワ区の腐敗警官は追い詰められた末、それら化け物を解放して自らの同僚の死骸を喰わせる事で兵器に使おうとした。番犬感覚で成される外道。悪党どもはここに来てその暴走行為を正しい選択だったと確信を強める。
──だが。
「ぎゃぁぁぁぁッッ……あああああ!!」
悲鳴が、塗り潰す。
如何にもといった風体の女警官が現れたと思いきや大規模転送か何かの技術で現れた武装警察署。無数のサイボーグ軍団が殺到して来ては、それらを相手に腐敗警官達がどれだけ撃ち抜こうが爆殺しようが、まるでゾンビか何かのように別働隊がサイボーグをにこたまの背後に引っ張っては回復してルーティンの如く戻って来る。
入れ替わり、立ち替わり、為されるのはことごとく警官が行う様な生易しい正義の執行ではなく。無数のオブリビオンへ叩き込まれる数の暴力の余波は腐敗警官達へ『殺戮』の二文字で襲い掛かり、シメナワ区警察署の内外は全て血に染められていった。
「ひ、ひぃっ!? やめろやめろ、助けてくれ──ッ!!」
「畜生が! てめえら、俺達に手を出して国が黙ってるとでも……おいよせ、何処を掴んで……ぉぶォロ!?」
命乞いも悪態も、運よく逃げ出してきて駆けた先でにこたまに銃口を向けるも銃弾が届くより先にサイボーグたちに文字通りすり潰されてシミになる。ぶつぶつとサイボーグたちから聞こえて来る呟き、その声が紡ぐは変わらぬ絶対の正義を意味する様々な言語だった。
全ては正義の殺戮の前に掻き消える。
新田・にこたまはコートを翻し。サイボーグの内数体が運び込んで来た資料を手に彼女は内容に目を通して首を傾げた。
「やはりマフィアとの癒着。さて、黒幕は死体になってない様子──殺し方を考えておかなくては」
Ωジャスティスから火砲が奔り、半壊していたシメナワ警察署が徐々に瓦礫の山へと化していく。
猛烈にして苛烈極まりない強襲の波は途切れず。にこたまがそれら徹底した破壊と殺戮に終結を下したのは、数十分後のことだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『マフィア・オブリタレーター』
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POW : オブリタレーション
【周囲全てを破壊する重火器による一斉攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : インシネレート
着弾点からレベルm半径内を爆破する【超強力な焼夷弾を内蔵したミサイル】を放つ。着弾後、範囲内に【消火できない全てを焼き尽くす炎】が現れ継続ダメージを与える。
WIZ : シンプルプラン
単純で重い【重火器が内蔵された大型アタッシュケース】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
イラスト:遠井
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「岩社・サラ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
汚泥にも劣る馬鹿にも使い道はあった。
そこそこの企業が|巨大企業群《メガコーポ》の傘下に入った時、偶然にもその会社の代表がマフィアとウィンウィンの関係だった。裏と表、企業の力だけでなく企業間戦争に囚われない『裏方』の仕事を回す事の出来るマフィアの力も動員すれば、近いうちに巨大企業群でも名の通った会社にする事も出来た筈だ。
その手始めにまず、生産プラント管理企業を幾つか買収、あるいは裏からの支援と『合意』を持ち掛ける事で企業の成績を底上げする要を作った。
次に、都市内の大手企業が手を出しているようなビズを引き寄せる餌。この手の物は大抵は戦争を経てから地力と規模を上げてから望むべきものだが、段飛ばしが可能ならすべきだったのだ。足がつけば敵対企業にすくわれるような賭けを確たるものにするには、土台から都合の良いものにすれば良い。
「誰がこんなシケた所の馬鹿を骨抜きにしてやったと思ってるんだかな」
スラム街というのも案外馬鹿にはできない。無法地帯同然の腐敗の温床になっている陰の世界だが、下層企業にしてみればそうした場を中心に違法な製造や販売、取引の場へと変える事が出来れば大きな発展に繋がるのだから。
インプラント製造企業『AQ‐油辣膜粘』はマフィアや自社の違法インプラント製造工場を大きくするため、シメナワ区の警察署へとマフィア構成員を潜入させ内部から腐敗と癒着を拡げさせたのだ。
全ては発展と栄華のため。
そうとも知らずに腐っていた連中が腐りはてた末に、この末路である。
「救えん連中だ────だが俺もこの件をシメられなきゃ同じ末路を行く身、その為だ。その為に俺ァこうして人間様をやめてやったのさ」
そこまで語り、締め括ったかのように言葉を区切った男は突入して来たアラナワ地区警官と猟兵達を睨みつける。
「残念だったな。蜥蜴の尻尾切りってなぁ知ってるか? 俺の役目はてめえらをここで始末して『無かった事』にするために残っていた、これ以上にシンプルな回答はあるまいよ」
シメナワ区の腐敗警官達を根絶やしにして来た猟兵達は、警察署跡地から入手した誓約書や裏取引の証拠を携えて架空の企業取引事務所へと乗り込んでいた。
しかし、そこで待っていたのは数十名からなるヤクザ構成員とみられるサイボーグではなかった。
マフィアやヤクザの間で時折派遣されている『抹消屋』という、機械化義体を戦闘向きに改造したり骸の海を過剰投与して改造生物同然のスイーパーの真似事をしている傭兵だったのだ。
──がらんとしたオフィスの中、『オブリタレーター』が武器を抜いた。
アイクル・エフジェイコペン(サポート)
猫っぽい舌足らず口調にゃ。こんにゃ感じで、可能なら末尾だけじゃにゃくて途中にも入れてほしいにゃ。めんどいならいいけど。
ちなみに機嫌悪い時は「に゛ゃ」って濁点入る感じにゃ。
正直状況とかよくわかってにゃいけどなんとなく気に入らない顔してるからぶっ殺すに゛ゃ。
パワーイズジャスティス。真正面から行っておもいっきり攻撃するのみにゃ。ユーベルコードは何使ってもいいにゃ。
基本はむちゃくちゃ猫かぶってかわいい子演じてるものだから、なるべくスマートに『せーとーはなれでぃー』的な感じで戦おうとするけど、むちゃくちゃ怒ったら地が出てむちゃくちゃ口が悪くなる。
「ぶっ殺おおおおおおす!●ぁぁぁぁぁぁっく!!」
七星・桜華(サポート)
『天魔流免許皆伝、更なる高みへと!』
『これが闘うための意志と覚悟だよ!』
『一か八かの勝負?必要無いね!私達の勝ちだ!』
『後は派手に騒ぐんだ!誰も倒れないようにね!』
隠れ里に伝わる『天魔流』歴代最年少で派生流派も含めての免許皆伝。
腰に挿している六振りの刀と扇子を振るう。
物理的な技術を異能のUCにまで昇華させた。
闘う姿は艶やかな舞踏が如く空中戦もできる。
殺気や覇気を残像に残し分身と勘違いさせる事も。
防御無視の内部破壊を当たり前に行う。
柔剛の技を扱い両立させる。
第六感による閃きで様々な戦場で勝利に導く。
勝利に辿り着く道筋を最短最善で進む。
優れた第六感で賭け事も強い。
家事も万能。
両親と妹も猟兵である。
島津・有紗(サポート)
絡み・アドリブ歓迎
「じゃあ、始めましょうか」
戦闘前にイグニッションカードから装備を展開して装着します。
味方と連携しつつ索敵しながら行動し、相手との距離に合わせてなぎなた、強弓、ガンナイフを使い分けて戦います。
味方と連係する場合は、攻撃より味方の支援を優先します。
UCは状況に合わせた物を選択して使用します。
スピレイル・ナトゥア(サポート)
精霊を信仰する部族の巫女姫です
好奇心旺盛な性格で、世界をオブリビオンのいない平和な状態に戻して、楽しく旅をするために戦っています
自分の生命を危険に晒してでも、被害者の方々の生命を救おうとします
技能は【第六感】と【援護射撃】と【オーラ防御】を主に使用します
精霊印の突撃銃を武器に、弾幕を張ったり、味方を援護したりする専用スタイルです(前衛はみなさんに任せました!)
情報収集や交渉のときには、自前の猫耳をふりふり揺らして【誘惑】を
接近戦の場合は精霊の護身用ナイフで【捨て身の一撃】を繰り出します
マスター様ごとの描写の違いを楽しみにしている改造巫女服娘なので、ぜひサポート参加させてくださると嬉しいです!
数宮・多喜(サポート)
『アタシの力が入用かい?』
一人称:アタシ
三人称:通常は「○○さん」、素が出ると「○○(呼び捨て)」
基本は宇宙カブによる機動力を生かして行動します。
誰を同乗させても構いません。
なお、屋内などのカブが同行できない場所では機動力が落ちます。
探索ではテレパスを活用して周囲を探ります。
情報収集および戦闘ではたとえ敵が相手だとしても、
『コミュ力』を活用してコンタクトを取ろうとします。
そうして相手の行動原理を理解してから、
はじめて次の行動に入ります。
行動指針は、「事件を解決する」です。
戦闘では『グラップル』による接近戦も行いますが、
基本的には電撃の『マヒ攻撃』や『衝撃波』による
『援護射撃』を行います。
ソリン・クザ(サポート)
ダンピールの探索者×戦場傭兵、表の顔はルーマニアの警察官な25歳の男です。
普段の口調は「礼儀正しい(私、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)」、覚醒時は「尊大(我、貴様、~である、だ、~であろう、~であるか?)」です。
UCはあまり使わず、基本的に自力での解決を優先します。
基本的には、警察官としての職業倫理のもと動きます
直接戦闘よりも謎を解いたり、だれかを守ったり、対象を確保したりという方向で動きます
雛里・かすみ(サポート)
バーチャルキャラクターの戦巫女×UDCメカニックの女性です。
普段の口調は「明るく朗らか(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
寝起きは「元気ない時もある(私、あなた、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
明るく朗らかな性格の為、
男女分け隔てなくフレンドリーに会話を楽しみます。
どんな状況でも、真面目に取り組み
逆境にも屈しない前向きな性格です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
アルジェン・カーム(サポート)
トライブの城塞騎士×黄龍拳士の男です。
普段の口調は「丁寧(僕、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
基本的に真面目に依頼はこなします
主な技能は【戦闘知識・切断・狩猟】を使用
戦闘時は基本的に宝剣をメインで使います
カオスな状況では突っ込みも多少は行います
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
アス・ブリューゲルト(サポート)
「手が足りないなら、力を貸すぞ……」
いつもクールに、事件に参加する流れになります。
戦いや判定では、POWメインで、状況に応じてSPD等クリアしやすい能力を使用します。
「隙を見せるとは……そこだ!」
UCも状況によって、使いやすいものを使います。
主に銃撃UCやヴァリアブル~をメインに使います。剣術は相手が幽霊っぽい相手に使います。
相手が巨大な敵またはキャバリアの場合は、こちらもキャバリアに騎乗して戦います。
戦いにも慣れてきて、同じ猟兵には親しみを覚え始めました。
息を合わせて攻撃したり、庇うようなこともします。
特に女性は家族の事もあり、守ろうとする意欲が高いです。
※アドリブ・絡み大歓迎、18禁NG。
●
──スーツの下で瞬く無数のインプラント。違法改造のそれだと直ぐに分かるネオン光が奔った直後にオフィス内を駆け巡るミサイルの群れ。
オフィス内に点在していたデスクや印刷機、据置型端末を片っ端から蹴り上げては刹那の遮蔽物にする。影を縫うは蒼銀。アス・ブリューゲルト(蒼銀の騎士・f13168)がオブリタレーターに向かい距離を詰めて行く。
駆け抜ける特殊弾頭を身を捻って躱し、爆ぜる誘導フレアをフォースセイバーで切り裂き、閃く光剣を後ろに。アスがオブリビオンの片鱗見せる男を相手に跳躍した。
紅蓮に煌めく爆風を背にしたアスが二丁の熱線銃を乱れ撃ち、降り注ぐ蒼き矢が敵を場に縫い付ける。
一瞬を後にオブリタレーターが機械化義体の内部エンジンを駆動させ加速するのと同時、床や壁面で炸裂した衝撃波が殺到して来たタイミングに合わせて脚部ウェポンの一つを起動させたアスが肉薄して交差する。
「応ッッ!!」
巨大企業群傘下、組織の始末屋を名乗る男はアスとの刹那の打ち合いの後に次いで光剣に切り飛ばされた腕部を床に落としたのだった。
「だぁー、焦げ臭っ! よくも……やったに゛ゃぁ゛ぁ゛あ゛あ゛ッ!!!!」
爆裂の熱波が吹き荒ぶオフィス内を駆け巡る衝撃波が治まった瞬間、吹き飛んだ男の頭上へ一直線に天井を駆けて来たアイクル・エフジェイコペン(クロスオーバー三代目・f36327)が踵落としをぶちかました。
気合と殺意の上乗せでついでに『せーとーはれでぃ』らしく回転と腰も入れた渾身の一撃が|巨大企業群《メガコーポ》が従来より採用している特殊強化コンクリート製のビル内を激しく揺さぶり。伝う超振動に次ぐ轟音が威力を如実に語って見せる。
ギシ、と軋みを上げて食い込んだアイクルの足元でオブリタレーターが歯噛みしながら睨み上げた。
「……ッ、|高価だ《たかい》ってのにやってくれる」
「に゛ゃ ?」
アスの切り飛ばした筈の腕を切断面同士でくっつけ合わせ、そのまま緑色の光を帯びた後治癒させたオブリタレーターが少女の一撃を防いでいた。
パァン、という炸裂。
怪力のままにアイクルが振り払い。回転しながら打ち込んだ拳が音速を何倍も超えて男を殴り飛ばしたのだ。
──錐揉みする男から赤いラインが奔る。
直後に爆裂が狭いオフィス内を満たして焼き尽くし、猟兵達が防御姿勢を取る最中にオブリタレーターが口元の血筋を拭い体勢を立て直す。
舞う光剣と猛攻の拳撃。
相次ぐ至近での攻防に焦れたか、腕部から機関砲をカウンターに見舞う男が後退しながら焼け付く熱風の中でデスク裏に隠していたトランクケース型の武装を踵で蹴り上げて掴み取る。
「出し惜しみは無しってな」
猟兵達がただの正義を謳う警察の犬ではないと直ぐに理解した抹消屋。オブリタレーターたる彼は自身と繋いだ変形した重火器から眩い光線とミサイルを室内で散開するアイクル達に向け放つ。
だがそこへ突如転移して来て盾になる一台の車両。
瞬く間に爆散した車体の裏から滑り出して二丁の拳銃を連射するのはソリン・クザ(デイウォーカー・f15556)だ。
「これだけ暴れてもダメージが殆どない頑丈なビル……いっそ倒壊してくれた方がありがたいですが、閉所なら相応のやり口もある──!」
ソリンの銃撃にボディを打ち据えられて動きを阻害されたオブリタレーターが舌打ちをする。走る視線。爆散した車体が両断された向こうから奔って来た衝撃波を重火器の納められた換装兵器で受け止めた事でオフィスを滑り、強化ガラスに背を叩きつけられた衝撃であらぬ方向へミサイルを誤射して爆炎に飲まれた。
ユーベルコードの発動光。ソリンの手に使い慣れた小銃が握られたのと同時、彼の前に出て行く少女達を援護する様に牽制射撃を続ける。
「行くわよ──!」
「あっちもイイ加減に温まって来たトコだろう、畳み掛けて行こうじゃないかい!」
床を這うように姿勢を低く保ったまま高速で駆け抜けるは戦巫女、島津・有紗(人間の戦巫女・f04210)だ。
未だ爆炎渦巻くフロア奥部から薙ぎ払われた光線を薙刀で切り飛ばし、纏う衝撃波を穂先の刃に乗せ天上に振り被って投げ放つ。有紗の放った斬撃、衝撃波が重火器による一斉掃射によって相殺されて爆風が吹き荒れる。
「……ッ、チィィ────!」
手練れが数人攻めて来たというレベルではない。
どこの世界に全身軍事用インプラントと携行型兵装を埋め込んだサイボーグと生身でやり合える小娘がいるものか。オブリタレーターは知らないだけだ。有紗の薙刀による斬撃を捌いた直後、眼前に肉薄して来た赤髪の女もまた彼の『過去』をも退けて来た猟兵であると。
最早、無傷では済まない。その覚悟を済ませたオブリタレーターはスーツの下に着込んだ|電磁防護服《バリアジャケット》のエネルギー残量を全て費やすのも覚悟に、ソリンからの銃撃への防御を棄てる。
「いい眼をしてるよ腐ってなけりゃね! 散りな、星屑の様に──!!」
風に乗って舞い込んだかのような軽さと鋭さ。今宵に限り六刀は用いず、右に添える手が示すは一刀。
天魔御剣流が基本型にして桜華の抱く刹那の切先。零距離技でありながらその抜き身の動作、精細なる技巧を以てして繰り出されるユーベルコードへと昇華した刺突剣。一次元的にまで研ぎ澄まされた一点への因果集束は覚悟を極めたオブリビオン、マフィアが抹消屋と冠するにまで至った男オブリタレーターの至近での重火器の零距離爆破をも貫いてビルの特殊強化ガラスを一面粉砕しながら衝撃波に巻き込み吹き飛ばして見せた。
無音の刺突でありながら、その様は夜空を奔る一筋の星屑が残光の如く。
「ぐ、がぁッ……!?」
左肩から先を突き飛ばされたオブリタレーターがナノマシンの補給による激痛に叫ぶ。
数瞬遅れてやって来る爆炎、斬撃、弾丸と猟兵。それらを捌くのも精細さを欠いたサイボーグは荒々しくも冷静に状況を鑑みながら窓を失ったビルの側面から外へと飛び出す。
「逃がすか……!」
有紗が桜華、アイクル、アス達と共にオブリタレーターを追って外へと走る。
──あれは逃走で回復を図ろうとしている。
「腐敗の温床作るような輩を相手に、逃げ出すの想定してないわけないだろ」
そこは屋上。巨大企業群の統治によって配置された大型照明灯によってライトアップされたオフィスビル屋外はネオンの反射と共に、数名の猟兵達がそこで待ち構えていた。
繋がる。
目には見えない、電子電脳あらゆる空間において可視化の困難な技術。|念話能力《テレパシス》に近いそれら糸の電信は物質や電波に阻まれる事なく、双方の意思伝達を成していた。
「一射、残り5秒。二射と三射はお任せ──まぁ、あたしも出るし。援護はそっちのが得意だと思ったんだぜ?」
「その通りです。ええ、相手も近接戦を好まない様子……私もバックアップに余念はありません」
その会話は、ほんの瞬きの間に完了する。
彼等の意思は声に出す事無く、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が中継役となり思念波がリンクされている事で果たされているのだ。
何てことはない、データ通信入り乱れるサイバーザナドゥの都市部なら彼女のテレパスを補強する信号波は多い。
自前の巫女服をサイバー式に改造した袴ドレスを身に纏い、多喜との打ち合わせを終えたスピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)が裾から精霊突撃銃を取り回して構えた。
同時、ビルの屋上から多喜が指を軽快に鳴らし雷電の嘶きと共に虚空から飛び出して来た自らの愛車『宇宙カブJD-1725』に騎乗して行った。
そのタイミングは完璧と言える。
「行きましょう……!」
スピレイルも多喜に続いて縁から身を躍らせた直後、眼下では無数の斬撃や熱波に次ぐ衝撃波が立ち昇って来ていた。
精霊印の突撃銃の引き金を絞った彼女の周囲を渦巻く炎の化生。弾幕の隙間を埋めるかのように眼下へ殺到する炎の精霊たちはスピレイルを守護するべく集い、オブリビオンを滅却しようと降り注いでいった。
「馬鹿な……ッ」
挟撃。
否、オブリタレーターのサイバーアイはビルの対面側。側面を駆け上がっていた自らの頭上にも反応がある事を示していた。
「──蓋をしてほしいって頼まれたんだもの。しっかりと果たさないとね」
オブリタレーターがいた『AQ‐油辣膜粘出張所ビル』が隣接する他企業ビルの一棟には、雛里・かすみ(幻想の案内人・f24096)が多喜や仲間からの指示を受けながら待ち構えていた。
当然、ほぼ同時の三方向からのユーベルコードで敵を討つ為。
何より──かすみの任された役目は『蓋』の要。彼女のユーベルコードがオブリタレーターを追い詰める一手になるのだ。
多喜が降下する。騎乗したまま急降下突撃しながらの魔導SMGで弾幕を見舞いオブリタレーターの足を止めた瞬間。
そこへ殺到する炎の精霊たち。そして追走に当たっていたアイクルやアス達、有紗のユーベルコードが挟撃する。
ビルから半ば滑空する様に飛んだかすみはその爆心地へ向け、己が手から解き放った無数の蓮花の奔流を叩きつけた。七色に煌めく吹雪は彼女が咲かせた蓮、【|幻想の蓮花《ロータス・イリュージョン》】である。
逃れようのない破壊と美麗なる必殺の数々に、オブリタレーターが雄叫びを上げた。
「ぐッ……オオオオオオオオ!!!」
誘爆、誤爆。オブリタレーターが咄嗟に全身の義体インプラントを限界稼働させて放ったミサイル群や光線が周辺のビルに突き刺さっては爆炎と余波を拡げ。地上のストリートにも被害が拡がってしまう。
だがそれさえも最小。
かすみの撃った幻想の蓮花は無数の刃、それらが殆どの抹消屋が乱れ撃った弾頭や攻撃を刻み落としていたのだ。
爆散したかに思えたオブリタレーターの姿が爆発が起きて破砕したガラス窓からフロア内に叩き戻されていた。
──全身に損傷を負いながらも、深手に至らなかったのは彼がそれだけ組織からの期待を寄せられていた事に起因する。
だがそれでも出力は十数分の一以下。もはや猟兵達のいずれとも単騎で戦えば逃走は難しい状況だった。
真っ向からの戦闘、純粋な逃走は諦めた方が良いのだろう。オブリタレーターは胸部を射抜いていた花弁の刃を引き抜いて棄てながら、暗い眼差しをビル周辺の民間人に向けた。
(……あの連中は如何にもといった正義の味方を気取っている節があった。人質を使えば、或いはこの窮地を脱せるか?)
一時を凌げれば次は負けない。一人ずつ闇に紛れ、これまでと同じく葬ってやる。
そう考えた彼の背後で、軽快な足音が鳴り響く。
「なぜ、逃げるんです?」
靡く銀髪の下、碧眼が瞬いた。
オブリタレーターはもう振り向かず、躊躇いなく腰部から弾き出した圧縮ケースを後ろ手に掴み引き金を引いた。狭いオフィス内を蹂躙すべく駆けるは紅蓮を撒き散らす小型特殊弾頭ミサイルの群れ。一本の細身に見える長剣を垂らして歩いていた青年の周囲に一瞬で炸裂したそれらは、直撃せずとも無視できない威力の爆発をもって人体を灰燼に帰すだろう。
だが、青年は長剣をたちまち背丈を上回る大剣へと転じさせた。
「……僕の仲間はあなたを逃がさないと言っていましたよ。それ以外は、確実に潰すとだけ。オブリビオンを逃がす気がない点は僕も同様です」
宝剣『Durandal』を片手で薙ぎ払ってミサイル群を切り裂いたアルジェン・カーム(銀牙狼・f38896)は手を触れず念動力で周辺のデスクや強化ガラスの破片といった瓦礫をかき集め、直後に疾走するのを機に返す刃の如くオブリタレーターへ殺到させた。
機械化義体をフル稼働させ続けるリスクを無視したオブリタレーターはその動きについて行く。大剣が横薙ぎに振るわれたのを潜り抜けた男が抹消砲を撃つ一方、アルジェンは振り切った大刃を鋭角にV字を描き出し二撃の下に敵ユーベルコードを落としてから刺突で吹き飛ばす。
散り舞う粉塵。高速でミサイルと熱線が繰り出される対面で大剣が振り回され、いずれも互角に撃ち落して相殺し。互いの攻撃を躱し合う。
──オブリタレーターの表情が強張る。
「てめぇ……ッ、足止めのつもりかぁ!!」
「勘が良いですね。でも、もう多喜さんから指示が来たので僕はここまでです」
賞賛でもなく事実、オブリタレーターがアルジェンの意図に気付いたのと多喜からのテレパスが届いたのはまったくの同時である。
大剣が弾いたミサイルによって開いた大穴から彼が離脱した瞬間、オブリタレーターは入れ替わりに背後に立っていた人物の影に気付く。
サイバーアイ。索敵機。いずれも猟兵達の姿がビルから遠ざかって行くのが分かった。
そこに居たのは。
成功
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新田・にこたま
人間やめてるのなんて、この世界では万人が『そう』でしょうに。
イキり散らかすなら人型の規格から外れた化物義体になってからにしてください。
UCを防御力重視で使用。
敵の攻撃に対して事務所を壊しながら巨大盾を2枚展開。周囲全てを破壊する攻撃だとしても、合計266mの壁が現れたら突破は難しいでしょう。
そして攻撃を防いだら、そのまま盾を勢いよく敵に向かって倒します。単純な質量攻撃ですね。盾に意識を向けさせておいての電子の網による捕縛も合わさればまず躱せないでしょう。(原子砲は地区への配慮で不使用)
敵に広範囲破壊をさせないためとはいえ、逆に私が壊しすぎてしまいましたかね…AQに請求とかって…無理ですよね…。
●──汚辱に降す鉄槌
腐敗した警官達はあくまでも、正義を棄てて快楽に負けた敗北者に過ぎない。
だがそれでも、アラナワ地区警官のマーカス達は今回の事件で猟兵としての参入や予知が無ければそもそも死んでいた。
武装も連携も、正義の魂も、決して腐敗しきった輩の脳味噌になど負ける要素はないのに。
そうなのだ。
このサイバーザナドゥにおける『強さ』とは如何にして相手を降すだけの力を有しているかであり、それは当たり前。原始的ながらの正しさであり、それこそが正義なのだ。
正義に燃えて銃を手に取る警官より、薬物で痛みを忘れながら違法インプラントで義体強化してオブリビオンの怪物を飼っている馬鹿の方が強い事もある。
事実は事実──しかし、それが答えとは限らない。
「人間やめてるのなんて、この世界では万人が『そう』でしょうに。
──イキり散らかすなら人型の規格から外れた化物義体になってからにしてください」
濛々と黒煙が渦巻くオフィス内の惨状を一瞥して、静かに新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)は眼前のサイボーグに言い捨てた。
にこたまが徐に懐から警察手帳を取り出して翳す。
ご丁寧にもオフィシャル・シグナルが読み取れるようにされたその手帳バッジを睨みつけ、オブリタレーターが歯噛みする。
「てめぇか、ウチのシマを台無しにしやがったのは」
「逮捕状はアラナワ地区持ちで取ってありまして、これ以上の問答は無用なのですが。その通りですがなにか?」
「……ここで俺を見逃せばてめぇにボスから大金が出るぜ。与するってんなら話次第じゃもっと出る、あの連中は何だ? 仲間なら野郎どものデータを一人当たり高値で──」
口がよく回る。
オブリタレーターは内心、まるで無防備にも思えるにこたまが一人でこの場に立っている様を背筋が凍る思いで見ていた。状況は、藪蛇よりも恐ろしい展開を迎えているのだと本能的に察していたのだ。
索敵の一環として、ビル内外の監視カメラやナノマシンネットワークで周辺一帯を見回してオブリタレーターは気づいてしまった。ある程度の距離を置いた先、あちこちで警察機関が用いる電子帯での『KEEP OUT』や『DANGER』の文字が流れている規制線が張られていたのである。
その中心はここだ。
つまり間違いなくこの女警官がやったのだ、民間人の避難さえも完了している──そうして気づきから続く考察と推理がじわじわとオブリタレーターの中でにこたまを巨大化させていた。
時間稼ぎと同時にどうにか懐柔できないかと思案する男の前で、にこたまが金色の瞳を曇らせて目を細める。
「……」
にこたまから見た男。オブリタレーターなどと大仰な通称ではなく、本名『イルミナート・ムリーノ』というイタリアンマフィアの工作員の男は酷く矮小にして見えた。
マフィアとしての誇りや矜持も無ければ独自の美学も無く、かと思えば悪党にしては手を汚す事を嫌っている。腐敗警官達と異なり本人にそうした堕落に繋がるような強い欲も無い。
元より人型で在る事を捨てていない事からもイルミナート自身に因らない理由。つまりこの男が人でいる方が利益に繋がると、|飼い主《ボス》であるドン・マッシミリアーノは考えていたのだろう。
その程度でしかない。抹消屋などと呼ばれ、過去のデータに基づき通り名の使い回しをそれらしく取り繕った所で半端者の押し売り屋にしかなれなかった男だ。
たかが軍事用の義体を少しカスタマイズしただけの型落ち品を手にしただけでイキっている小物。
そんな、掃いて棄てるような廃棄物にアラナワ地区警官の懐いていた正義は失われようとしていたのだ。
オブリタレーター、イルミナートが何か言っているのを無視してにこたまが手帳を指先だけで投げ仕舞い込み。右腕を横殴りに虚空に叩きつけた。
微かに漂う威容と彼女の放つ殺気を気取ったつもりのイルミナートが全身全霊で飛び退いて、破損していた左腕部を使い棄てるつもりで重火器と超火力の武装を変形換装して向ける。既に眼前では女警官の右腕を起点に空間をひび割れのようなラインが走り拡がって、サイバースペースの展開が成されようとしていた。
「──ッ!?」
ユーベルコードの起動が未開にも関わらず、にこたまは飛び退いたイルミナートを明確に追うつもりで前に出て来ていた。
踏み込んで来る警官。
イルミナートは幾度となくそんな姿は目にして来た筈だった。そしていずれも消してやった。
(だがこいつは……ヤバい)
サイバーザナドゥ。サイバー・シティという各都市や企業の統治する世界には時折、いるのだ──とびっきりの|後先考えないヤバい《クレイジーな》奴が。
飛び込んで来る、その一瞬の間に巡った思考の果てにイルミナートはオフィスビルの周辺一帯ごと吹き飛ばすつもりで全武装を解放するトリガーを引いた。
眩い閃光はサイボーグの内蔵していた全身武装から放たれた火線によるものだ。反動でビルの外にまで滑り飛ぶイルミナートは自らの『オブリタレーション』によってにこたまの姿が見えなくなった事に僅かな安堵と焦燥を覚える。
ともすれば自身も吹き飛びかねない距離での超火力一斉射。喰らえば骨も残らなかっただろう。
──しかしイルミナートがその結果を認識するよりも早く、凄まじい衝撃波と足元が崩壊した余波に飲まれ視界が暗く閉ざされてしまう。
「うおおおおおおおおお……ッ!!?」
強烈な浮遊感が襲い、宙を滑って勢いよく落下して行く。
義体の何割かが爆風を浴びた事でダメージを負っているのをCAUTIONメッセージと共に視界端に飛び込んで来る最中、数十メートル以上も吹き飛んだイルミナートが舗装されたストリートの地面にめり込んで叩きつけられた。
そこで彼は何が起きたのかを脳震盪手前の頭で認識した。
己の抹消砲は随分『手前』で防がれてしまっていたという事を、ビルが崩壊したのは自身の火力による物ではなかったという事を。
「ば、馬鹿か……ッ!? ここは|巨大企業群《メガコーポ》の統治下にある都市部だぞ……何でそんな物を出せる!?」
バチバチと電流を漏らす損壊した腕部を引き千切ったイルミナートが咆え、同時に更なる抹消砲を眼前の『壁』に向かって放出した。
だが弱々しい。
一点集中ではなく、範囲を広げた散布型ミサイルを絨毯爆撃式に撃ったオブリタレーターの必殺は、総計266メートルに及ぶ超高超大範囲に及ぶ二枚の障壁によって阻まれ、紅蓮のドームを幾つも咲かせて地響き一つ鳴らした程度で終わってしまった。
立体映像の類ではない。質量を持った超巨大構造物である事がイルミナートには信じ難かった。
オフィスビル以外の周辺ビルやポータルも破壊して出現した超高層ビル並みの盾の向こう、未だその全容を露わにしていない強化義体はサイバースペースの順次展開を続ける一方で二門の巨大砲塔を腕の様に交差して佇んでいた。
間違って撃つ事は無くとも、取り回しには地区への配慮が必要だ。地上で尚もユーベルコードを撃ち続けているイルミナートを拡張画面越しに見下ろしながら、にこたまは【正義の超越重武装】の内で小さく息を吐いて集中する。
「────捕った」
右から勢いよく盾を突き出したにこたまに従い、眼下の景色を猛然と白煙粉塵が一直線に雪崩れ込んでイルミナートへ殺到して瓦礫の津波によって押し出した直後。巨大な二層の盾を有しているとは思えないほど軽快に浮遊、それが跳躍だと気づく者がいる筈も無く、左の盾を一気に前面へ振り下ろした。
初動で鞠の如く吹き飛ばされたイルミナートを絡め獲ったのは強力な電子の網だった。あまりに眼前の巨大な盾を前に気を取られていた男も、それら一連の流れが逮捕術に近いものだという事は嫌でもわかってしまった。
大質量。超広範囲。確実に手玉に取られていた。
「待っ」
暗転する視界と真っ赤な文字で『超圧力を感知』という警告文を傍目に、彼は最後の最後に人間らしい命乞いをしようとした。
抹消屋、オブリタレーター・イルミナートの意識はそこで途絶えるのだった。
●
仲間の協力もあり、アラナワ地区の逮捕権限や書状データによって下準備を敷きながら行使した武力制圧は腐敗の黒幕を挽き潰す形で完了した。
とはいえ────。
「敵に広範囲破壊をさせないためとはいえ、逆に私が壊しすぎてしまいましたかね……」
味方にも要請して敵の破壊能力が周辺地区や民間人に及ばないようにしていたのだが、にこたまは瓦礫と化したビルとその隣接する一帯の被害を交互に見つめて額に浮かんだ汗を拭う仕草をした。
被害額はまあまあ予想通りだったのだが。よりにもよってそこそこ高い料亭の店が余波で半壊していたらしい。そこで一点増してしまったのだ。
にこたまは上層部とか色々と頭をぐるぐる巡らせた後、最後に崩壊した事務所の瓦礫から引きずり出したメガコーポ傘下を示す証拠資料データと書類を手にした頃に思いついた。
「AQに請求とかって……無理ですよね……」
──後日、彼女の儚い願いは奇しくも叶った。
つまり破壊の痕跡を補償する事で有耶無耶にしたかったのだろう、とことん腐った連中だと彼女は後に安堵した胸を撫で下ろしながら眉を顰めるのだった。
大成功
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