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リラクゼイション・フロム・ダイシゼン

#サイバーザナドゥ #宿敵撃破 #トリニティ・デザイア

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#サイバーザナドゥ
#宿敵撃破
#トリニティ・デザイア


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●かかってこい、大自然
「オウ! イッツアビッグウェンズディ!」
 ハイテンションで大波を乗りこなす日焼けした男。
「ゲットダウン……これがシェイキングローリングタッチング・セツナイエモーション……!」
 ゲレンデでイケメンと出会う若い女。
「これが木で、これが鳥、これが兎! みんな友達になってくれるのね!」
 山深い森の奥で動物に囲まれ戯れる幼い少女。
 それぞれが大自然を満喫している姿が、モニターに映し出されている。その前にあるのは、様々な機械を接続されたヘッドギアを被り機械仕掛けのベッドに横たわった人々。目こそゴーグルに覆われ見えないが、その口はみな一様にだらしない笑顔を浮かべ涎を垂らしていた。
「これはこれは。やはり自然のリラクゼイション効果は素晴らしい」
 その画面を見ながら、にこやかに呟く男が一人。首から下げた社員証が示す通り、彼はメガコーポ関係者だ。
「自然ったって偽物じゃねーのよ。大体ナマモノ見たことあるやつがこの世に一人でもいんのか?」
 それにけだるげに毒づくもう一人の男。社員証は下げていない所を見るに先の男の直接の知り合い、あるいは私兵だろうか。その手にはこの世界では最早骨董品とも言えるもの……紙の束が。
「知らないからこそ憧れるのです。その中で果てられるのですからこれは幸福というものでしょう。さ、お仕事の時間ですよ」
 笑顔のまま社員の男が言うと、言われた方は小さく舌打ちしながら寝ている人々に手に持った札を張り付けはじめた。その途端、笑顔で寝ていた者たちが機械を跳ね飛ばさんばかりに痙攣し、動かなくなる。それと同時にモニターが一斉に暗転し、『NO SIGNAL』という表示に切り替わった。
「はい、ご苦労様です。後は適性のある者からオブリビオンとして蘇ってくれることでしょう。不適合品は……格安でお譲りしましょうか?」
「いらねーよ、これ以上子分増えても面倒見切れねぇっての。俺は帰ってもう寝るぜ。あんたも寝たら?」
「まさか。なんのために私が体を死体に変えたと? そんな無駄な時間があったら仕事しています」
 そう言って左胸に開いた大穴を指さし社員の男は機械を弄り続け、符の男は大あくびしてその場を去るのであった。

●40インチの大自然
「お疲れ様です。今日は、サイバーザナドゥでの依頼です……」
 アレクサンドラ・ヒュンディン(狗孤鈍狼・f25572)が集まった猟兵たちに頭を下げる。
「サイバーザナドゥで、メガコーポはとても様々な事業を手掛けています。その中の一つに、『カルト教団経営』というものもあります。もちろんメガコーポの宗教なので、その目的は悪質な金儲けです……」
 科学技術が進み現実とバーチャルの境があいまいになったこの世界では、まさに一周回って荒唐無稽な胡散臭い宗教が簡単に人心を掌握できてしまうのかもしれない。
「そして、その金儲けの方法ですが……寄付金集めなどではなくもっと手っ取り早く、信者を改造してオブリビオンにし、商品として売り捌いてしまうことです」
 下層民の金を搾り取った所でたかが知れている。だが人間ならば命と体という生まれ持った財産を必ず持っているのだ。磨けば光る原石も中にはあろうし、それを掘り当てられれば口八丁で少ない蓄えを差し出させるよりよほど楽で効率がいい。
「皆さんには、そう言った宗教の一つを潰していただきます。名前は『自然と触れ合う会』……高度なVRを使って失われた自然と疑似的にふれあおうという、宗教というより緩い同好会みたいな印象を前面に押し出している集団の様です」
 緩めの雰囲気で安全そうに見せかけ、信者を餌にする危険な宗教。UDCアースなどでは数え切れないほど相手した者もいるだろう。
「一応この題目自体に嘘はなく、参加した人はVRの大自然を満喫することができます。VRなだけあり環境も自由自在、友好的で危険のない野生動物や、何時間でも素潜りしていられる海、凍えない雪山など自然の都合のいい所だけを抜き出して満喫できます」
 それを訝ることなど参加者はもちろんしない。何しろ比較すべき本物を一切知らないのだ。VRだからと多少のご都合は納得してしまうし、これ以上はやりすぎという基準もない。
「皆さんは参加者に扮し、まずはこのVR大自然を体験してください。何を見ているかは現実のモニターに移されてしまいますので、思いっきり楽しんだ方が怪しまれないでしょう」
 どうせVR内の世界、何かを仕込むのは難しい。戦い前に英気を養うと思い、都合のいい大自然で遊んでしまうのがいいだろう。
「そうすると頃合いを見計らい、敵の配下が皆さんの肉体を破壊しに来ます。幸いタイミングは予知できましたので、その瞬間に皆さんがVRから脱出できるよう時間をお教えしておきます。そうすれば、札を張ろうとしていたオブリビオン……『面倒臭がりで仕事嫌いな不良符術師』を逃がさず戦闘に持ち込むことができます」
 この世界では珍しい魔法に類する能力の使い手だが、ものぐさ過ぎて破門されたはぐれ物の集まりでメガコーポやヤクザに雇われ違法な仕事をこなすうちオブリビオンとなった者たちだという。
「彼らはボスが自分の裁量で雇ったアルバイトみたいなもので、リーダー筆頭に皆やる気はありませんが、何もせず生きて帰れると思ってはいないので抵抗はしてきます」
 古来より伝わる符術に合わせ、特殊なルールを持つ電脳空間をその場に結界の様に展開もできる、ある意味時代に合わせた変化を遂げた者たちだという。
「そして彼らを退ければ、続けて教祖というか会主催者……実態はメガコーポ社員の『藤堂ヨナタン兵助』との戦いです。彼はメガコーポに文字通りに『心臓を捧げて』おり、食事も睡眠もいらなくなった体で働き続けるまさに社畜です。彼は格闘術や自分の体を焼くほどの電流、さらには仲間が到着するまでの時間稼ぎのため自ら攻めず耐え続ける構えをとることもあります」
 彼は所属する会社のためならいかなる行為をも厭わない。例えそれで自らが滅びようと、社に尽くせればそれで幸せなのだ。
「知っての通り、本当の自然はサイバーザナドゥには一切存在しません……それを見せるこの商品、悪用しなければ凄くいいものになりそうですが……」
 それを悪用せずにはいられない。それがメガコーポというものなのだろう。
「あ、ちなみに……集団のリーダーもボスも手入れしてなかったり血色悪かったりしますが、わりと地顔はいいです……これは天然です……」
 最近イケメン好きをあまり隠さなくなってきたか余計な情報を最後に入れつつ、アレクサンドラはグリモアを起動し猟兵を自然なき世界へ送り出した。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。どちらかと言えば海派です。
 今回はサイバーザナドゥで大自然(バーチャル)を餌に人を集めるメガコーポ運営の宗教を潰していただきます。

 第一章ではVRで再現された大自然を満喫してください。実物ではないので本来ありえないようなご都合主義もいくらでも起きます。この状況はモニターに移され次章以降戦う敵に見られていますが、サイバーザナドゥに本物の大自然はなく見ている敵も本物を知らないので、どんな状況でも怪しまれませんし思い切り楽しんだ方がそれこそ『自然』でしょう。満喫するほどに敵は油断し切っていると思い釣りだされてきます。

 第二章では『面倒臭がりで仕事嫌いな不良符術師』との集団戦。彼らはこの世界では珍しい術士系能力者です。OPに出ているリーダーはじめ配下も皆やる気はありませんが、ここでバックレたところで口封じされるのは分かっているので真面目に戦ってきます。彼らはVRに繋がれた人を殺害するのが仕事ですが、猟兵は寸前で目覚めることができるので戦闘時に先手を取られることはありません。

 第三章では『藤堂ヨナタン兵助』とのボス戦。彼は自らを動く死体に変えることで不眠不休で働く体を得た生粋の社畜です。格闘での直接戦闘や片腕を犠牲にしての電流爆破の他、POW技では社からの増援が車で来るまでひたすら耐えても来ます。彼は『自然と触れ合う会』というものを主催しており、こんな世界だから自然を忘れないようにしようとかそれっぽい売り文句で売り文句で人を集めています。ただ実際は本人は癒しや休みに一切興味がなく、引っかかる人を内心馬鹿にしています。

 休暇からの戦闘という普段と逆の流れですが、やることはある意味変わりませんのでお気軽にご参加ください。
 それでは、ナチュラルにプレイングをお待ちしています。
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第1章 日常 『人工の手付かずの大自然』

POW   :    山・アウトドアスポーツ/アクティビティ

SPD   :    海・マリンスポーツ/アクティビティ

WIZ   :    雪・ウィンタースポーツ/アクティビティ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「皆様、本日は当『自然と触れ合う会』にご参加いただきまして誠にありがとうございます」
 サイバーザナドゥ某所にあるビルに入ると、首から社員証を下げた男がにこやかに来訪者を出迎えた。
「海、山、雪……それはかつてこの世界には当たり前にあったものだと言います。我々は残された資料から可能な限りそれを再現し、VR体験で皆様に触れあっていただきたいと考えております」
 淀みなく言う男が案内する先には、いくつもの機械が接続されたベッド型VR施設と巨大モニター。
「皆様ご希望の自然環境を入力すれば、こちらの機械がそれを可能な限り忠実に再現いたします。木漏れ日注ぐ静かな森、どこまでも青く深い海、かつては恋人たちと冒険者の聖地であったとされる雪山……どうか皆様、この世界から失われたそれを心の中だけにでも永遠にお留めください。皆様の見たものはこちらのモニターで記録し、お帰りの際いつでもお楽しみいただけるようお土産としてデータをお渡しします」
 そう言って事前に提出されたデータごとに振り分けを設定した機械に来訪者を寝かせ、ヘッドギアを付けていく。
「それでは、素敵なリラクゼイションを」
 男の声と共に一瞬視界が真っ暗になった後、それぞれの目の前に事前に希望した大自然が広がっていた。
 男の言った通り、ある者の前には木漏れ日の降り注ぐ、土汚れ一つつかない森が広がり、別の者にはどこまでも青く広がる、呼吸も水圧も問題のない海があった。
 そして来訪者たちは、あるいは心の中でこう叫ぶかもしれない。これのどこが大自然だ、と。
 本当の自然が優しいばかりではないこと、この偽りの自然が世界の頽廃の象徴たるメガコーポの罠だということを知る来訪者……猟兵よ。
 今頃獲物がかかったとほくそ笑んでいるであろう者たちの手の上、この偽りの自然の中で、今は存分に踊り楽しんでやれ。本当に踊らされていた者が誰なのか理解させる、その一瞬前までは。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
確かに、使い方次第では素晴らしい設備ですねぇ。
この様な使用法は論外ですが。

目覚めた際に対応し易い様【豊艶界】に『装備各種』を収めて向かいますぅ。
季節的にも近いですし、『雪山』を希望して『スキー』を中心に楽しみましょうかぁ。
……ええ、私の場合ですと、体型の関係で『サイズの合うスキーウェア』の用意が難しい上、重心が上に寄り過ぎていることから転ぶ率が高く、普通の雪山では【UC】等で補佐しないと中々楽しめませんので(遠い目)。
ですので、あまり寒さの心配をせずにウィンタースポーツが出来るこの環境は有難いですねぇ。
折角の機会ですし、『スキー』以外にも色々と試してみたいところですぅ。


岩倉・鈴音
いや〜何ヶ月も動かしてなかったからすっかり義体の動きが鈍ってるや。ここでリフレッシュしないとな!VRだから脳みそかな!?
冬はスキーだ!
UDCのマジなスキー場とどう違うか試させてもらうぜ〜
まずは雪質の違いだなっ
さっそく雪合戦とか雪だるまつくりながら様子見だ。
スキーはリフトで登って練習あるのみっ
リフトって落ちそうで怖いよな。でもVRだから大丈夫や!ジャ~ンプ♪
本物の自然ではできない滑りを堪能させてもらうっ
頂上から一気に滑り落ちる。
色恋沙汰……なんのことかな?
そういうオプションとかあれば考えさせてもらう。
ワタシをスキーに連れてって(本物の)



 一度暗転した視界が開けると、そこには見渡す限りの大自然が広がっていた。その内容は人それぞれだが、ここに広がっていたのは一面の銀世界。
 もちろんこれは本物ではなく、残された情報を元にVRで再現したもの。その証拠に足元の雪は冷感こそあれど凍傷を起こすような程ではなく、また肌に感じる気温も涼しくはあっても震える寒さではない。
 元々遊ぶために自然環境をVR再現した施設はサイバーザナドゥにいくらでもあれど、その出来はどうあれ可能な限り忠実であることを目指したこの機械、活用法次第では本当に様々な用途が考えられるだろう。
(確かに、使い方次第では素晴らしい設備ですねぇ。この様な使用法は論外ですが)
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は目の前に広がる雪原を見て、声にはださずそう思った。
 もちろん黙っているのには理由がある。この状況はメガコーポ運営のカルト集団が信者を集めるための餌として見せているもの。もちろんここで起きていることはそちらに筒抜けになっているため、怪しまれるような行動は厳に慎まねばならないのだ。
「大いなる豊饒の女神、その産み落とせし小世界の一つを御与え下さい」
 そうしてるこるが【豊乳女神の加護・豊艶界】で取り出すのは、スキー板。この世界でユーベルコードを使えるものは珍しくないため、この程度なら怪しまれることもない。
 そのスキー板を足に嵌め、るこるは目の前の斜面を滑り降り始めた。
 そう、スキー板だけ。ウェアもゴーグルも一切なしで、である。
「……ええ、私の場合ですと、体型の関係で『サイズの合うスキーウェア』の用意が難しい上、重心が上に寄り過ぎていることから転ぶ率が高く、普通の雪山では【UC】等で補佐しないと中々楽しめませんので」
 滑りながらもどこか遠い目をして言うように、るこるの体では一般的なスキーウェアはまず着れない。いくら猟兵でも本物の雪山を普段着で滑り降りるのは自殺行為だし、さらには自覚している通りるこるは普通の人間とはかなり重心の位置が違う。気を抜けばあっさり二連の陥没をゲレンデに量産してしまいかねないのだ。
 だが、ここではそんなものはない。溶けることも固まりすぎることも一切ない永遠のパウダースノーに、心地いい涼しさの気温、定規で引いたようなきれいな斜面と、半端に再現された大自然がそこを全てカバーしてくれるのだ。
 ある種初めてとも言える快感に浸りながら滑り降りてくると、リフト乗り場には別の人物の姿が。
「いや〜何ヶ月も動かしてなかったからすっかり義体の動きが鈍ってるや。ここでリフレッシュしないとな! VRだから脳みそかな!?」
 こちらは包み隠さずハイテンションで目的を声に出す岩倉・鈴音(【機械天使十二】Like Toy Soldiers・f09514)。どうやら希望した環境が似ていたため同じ空間に入れられたらしい。もちろん彼女も猟兵でありこの先何があるかは十分承知しているが、一方でここでリラックスするのも本当の目的の一つであるのでその辺りは隠す必要もない。そして彼女がここで何をするつもりかと言えばやはり。
「冬はスキーだ!」
 そう、やはりウィンタースポーツの花形スキー。
 まずは雪質チェックを兼ねて、リフト近辺で雪だるまや一人雪合戦に興じていた。確かに触った感じは冷たい雪だが、溶けても体は濡れないし素手で触り続けて霜焼けするようなこともない。
 確かに本物に忠実かと言われれば首をひねらざるを得ないが、これなら多少の無茶もきく。
「スキーはリフトで登って練習あるのみっ」
 スキー板とこちらはゴーグルもつけ、リフトで登っていく鈴音。無茶してもいいということで頂上直行の上級者向けリフトだ。
「リフトって落ちそうで怖いよな。でもVRだから大丈夫や!ジャ~ンプ♪」
 それがゴールにつきそうになった瞬間、隣に座ったるこるが止める間もなく鈴音はリフトから飛び降りた。もちろん実際のゲレンデでこんなことすれば大怪我、あるいはルール違反で出入り禁止だがここではそんなこともない。
 何しろ『自然』の山なのだから決められた滑走コースなどない。例えそれがどんなに整っていようとも、そこはすべて自由の大自然なのだ。
 木々の間を抜け、凍った川を飛び越え、時には野生動物と並走する。自然どころかゲームでもあり得ないようなな滑りを堪能し、ふもとまで風の如く滑り降りる鈴音。
 最後は華麗にターンを決めてリフトの先のロッジの前に止まり、これ見よがしにゴーグルを取って素顔を見せつける。
「色恋沙汰……なんのことかな? そういうオプションとかあれば考えさせてもらう」
 まさに90'th恋愛ドラマの登場シーンの如き顔出し。パウダースノーが待ってキラキラ輝いている。急斜面を巧みに滑り降りクールに顔を出す美女。そしてそこにやってくるのは……同性のるこる。
 残念ながら忘れたか格好つけて書かなかったか、恋愛パートについては事前に提出したデータに入れていなかったため再現されていないようだ。これがVRの限界か、あるいはそう何でも都合よくはいかないという自然の厳しさが奇跡的に垣間見えてしまったか。
「あまり寒さの心配をせずにウィンタースポーツが出来るこの環境は有難いですねぇ。折角の機会ですし、『スキー』以外にも色々と試してみたいところですぅ」
「ワタシをスキーに連れてって」
 仕事前に珍しいウィンタースポーツを満喫するるこると、所詮は仕事で来たVRよと思いつつがっくりくる鈴音。VR世界の雪原はどちらかと言えばコメディドラマ風の空気に染まっていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ペルセポネ・エレウシス
「カルト教団を経営するメガコーポですか。
我がブラックカンパニーと敵対する企業なら情報収集が必要ですね。
特殊渉外課、出動です」

まずはVRを満喫するふりをするのでしたね。
なるほど、これが資料で見た天然の露天風呂というものですか。
早速、ゆっくり浸かって……

「あら?
温泉に入るときはバスタオル禁止?」

確かに読んだ資料にもそのようなことが書かれていましたね。
ここは身体に巻いたバスタオルを脱ぎ捨て、全裸で温泉に浸かりましょう。

「ん~、極楽極楽、ですね~」

透明なお湯の中で両手両足を大きく伸ばし――。

VR空間の様子が録画されているということをすっかり忘れ、無防備な全裸姿をくまなく撮影・配信されてしまうのでした。



 参加者として『自然と触れ合う会』のVR体験に参加すること。それはグリモア猟兵から依頼として出された猟兵としての任務であった。
 だが、それ以外の目的をもって参加する者もいる。
「カルト教団を経営するメガコーポですか。我がブラックカンパニーと敵対する企業なら情報収集が必要ですね。
特殊渉外課、出動です」
 ペルセポネ・エレウシス(『ブラック・カンパニー』特殊渉外課所属・f36683)はまさにその一人。彼女は猟兵であると同時にメガコーポ『ブラック・カンパニー』の一員であり、渉外としてこの団体を調査することも目的としてこの依頼に参加していた。
 一口にメガコーポと言ってもその数は無数にあり、そしてそれらは基本的には商売敵であり友好的とは言えない間柄である。相手がどのような活動を行いどれほどの成果を上げているか、それが自らを脅かすものではないかという情報は常に仕入れておくべきもの。そしてその技術力如何によっては、何らかの形での『接収』も考えられる。
(まずはVRを満喫するふりをするのでしたね)
 その調査も兼ね、ペルセポネは資料を基に希望の条件を出した上でVRにかかっていた。
 彼女の眼前に広がるのは、木々の広がる山の中。足元は斜面だが勾配は一定で、足元はまるで舗装されたかのように歩きやすい。
 そこから少し歩けば、突然場所が開けて丸く岩に囲まれた湯気立つ泉……温泉が現れた。
 確かに山に天然の温泉は湧くが、温度や湯量、広さが全て丁度良く揃っているということはそうそうない。だが、サイバーザナドゥ出身のこの会主催者、そしてペルセポネにとってはこれだけあれば十分自然らしく見えるもの。
「なるほど、これが資料で見た天然の露天風呂というものですか。早速、ゆっくり浸かって……」
 彼女自身資料でしか知らないそれに入ろうとした所、その岩の前に一つの立て札が。
「あら? 温泉に入るときはバスタオル禁止?」
 それは公衆浴場ではよく見かける注意書き。実際サイバーザナドゥどころかUDCアースなどですら、文化によっては裸で長時間湯に浸かるという習慣自体がないことも珍しくない。これが完全な自然かはともかくとして、露天風呂の再現度としては悪くない所だろう。
「確かに読んだ資料にもそのようなことが書かれていましたね」
 調査目的ということで、事前に調べても来ている。ペルセポネは言われた通りバスタオルを脱ぎ、全裸で温泉に入った。
 適温の暖かい湯が全身を包み、生体部分はもちろん義体にすら成分が付着浸透していく。それらが細胞を培養、代謝し義体の劣化まで落としていく感覚……もちろん実際の温泉成分にそんな即効性などないが、気持ちいい事は間違いない。
「ん~、極楽極楽、ですね~」
 まさに本当の温泉に浸かったかの如く、ペルセポネは透明な湯の中で両手両足を大きく伸ばす。そうなれば当然隠すものもなく裸体が完全に曝け出されるが、温泉に入ってそれをいちいち隠す者などいない。
 まさに自然体で温泉を満喫するペルセポネ。だが、余りに満喫しすぎて彼女はすっかり忘れてしまっていた。
 この状況、現実の方ではモニターに映し出され録画されているのだ。
 幸いというかなんというか主催者自身はその手の欲を全て切り捨てているので、直接何かされることはないだろう。だがそれ故冷静冷徹に、この映像を会社の為に役立てる方法を考えるはずだ。あるいは後に彼を倒すことに成功しても、既にこの映像がどこかに流されてしまっていることすら考えられる。
 そのような事態になっていることなど想像もせぬままに、ペルセポネは他社製品の実地調査をいかんなく続けていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

堂島・アキラ
自然とやらを散々自分たちでぶっ壊しておいてVRで体験しましょうって?笑えるぜ。
ま、体っつー自然を捨てたオレにとやかく言う権利はねえか。

これが大自然!これが本当の海!臭いしぬめってるし変な色した現実の海とは大違いだな。
さすがにテンション上がってきたぜ。いっちょ泳いでみるか!

海の中を優雅に泳ぐ。まるで魚になったみたいだ。本物の魚も見た事ねえけど。
するとどこからともなく人魚姫(美少女)が登場!オレと遊びたいって?もちろんだぜ!
そこに待ったをかけたのが乙姫(美少女)!二人はオレを取り合って喧嘩している。両手に花だ!

明らかに|現実《リアル》じゃないな。ま、オレは楽しけりゃなんでもいいけどよ。



 メガコーポ運営の『自然と触れ合う会』。この会の名目はその名の通り失われた自然と触れ合い、それを忘れないようにするということ。一見すればまともそうなそのお題目だが、そもそも自然が失われた理由は過剰な技術発展による環境破壊や世界そのものの改造。そしてそれを先陣切って行いその結果の繁栄を誰よりも享受しているのは、他ならぬメガコーポ自身なのだ。
「自然とやらを散々自分たちでぶっ壊しておいてVRで体験しましょうって? 笑えるぜ」
 堂島・アキラ(|Cyber《サイ》×|Kawaii《かわ》・f36538)はその大仰なマッチポンプに嘲笑する。
「ま、体っつー自然を捨てたオレにとやかく言う権利はねえか」
 そしてそれが自虐であることも、その技術で自らの変身願望の赴くままに体を美少女のものに変えた『彼』には分かり切っていた。
 それ故、アキラはこの技術の恩恵を享受すべく躊躇うことなくヴァーチャル空間へダイブしていく。その眼前に広がっていたのは、どこまでも青く深い水中世界であった。
「これが大自然! これが本当の海! 臭いしぬめってるし変な色した現実の海とは大違いだな」
 サイバーザナドゥにも海と呼ばれるものは一応ある。だがそれは溢れる汚水や汚物を長年捨て続けられた、巨大なドブのようなもの。生物が住む余地など一切ないし、近づくだけでその汚物がどのような危険を齎して来るか予想もつかない。飛び込むなどはもってのほかだ。
 まさに見たこともない景色に、アキラも思わずテンションが上がる。
「さすがにテンション上がってきたぜ。いっちょ泳いでみるか!」
 そのまま体をくねらせ、水の中を進み始めるアキラ。それはまるで空を飛ぶように……抵抗も息継ぎもなく、水の中を勢いよくどこまでも突き進んで行ける。
「まるで魚になったみたいだ。本物の魚も見た事ねえけど」
 切り身が泳いでいる……どころか本物の切り身すら存在しないこの世界だ。あるいはこの快感を宣伝すれば、この機械、この集まりの集客力はなかなか侮れないものだったのかもしれない。
 そうして海中遊泳を楽しむアキラの前に飛び出す者が現れた。
「ねえ、私と遊ばない?」
 澄んだ声で言うその姿は、上半身は裸の美少女。だがその下半身はそのまま魚の、人魚であった。
 失われたどころかそもそも存在したこともないはずのおとぎ話の存在。それがまさにおとぎ話にあるような美しい声で、水中で平然としゃべって誘いをかけてくる。
「オレと遊びたいって? もちろんだぜ!」
 それに対しアキラは二つ返事でOKを出す。このVRが結局不完全なのは事前に聞いているし、楽しんだ方が作戦行動としてもいい。何よりこれも自分が希望したから出てきたシチュエーションなのだ。
 そのまま手を取り合って泳ぎ出そうとすると、なんと昭の方が突然掴まれ海底へと引っ張り込まれた。
「やっとみつけましたわ。さあ、わたくしと共に竜宮城へ参りましょう」
 そう告げるのはひらひらした羽衣を水中で平然とたなびかせる、ニンジャめいた服装の女。大分年齢が若いが、竜宮城の言葉通り、彼女は乙姫。恐らくヤクザやニンジャに伝わるマッポーめいた伝説の中にある話が、収集したデータの中に紛れ込んでいたのだろう。
「貴方に永遠の幸せをお約束いたします。さあ、タマテバコ・ジツでわたくしと……」
 そう言って開いている方のアキラの腕に自分の腕を絡める乙姫。玉手箱は一気に加齢するものじゃないのかというツッコミより早く、人魚が自分が持っている方の手を引っ張る。
「はぁ? 何勝手なこと言ってんの? この人は私と遊ぶんだから!」
「さがりなさいこの下魚。わたくしは海のプリンセスでしてよ」
 睨み合い、言い争う人魚と乙姫。もう大自然も何もあったものではないが、体の半分を改造し美しい人外になったり、外見上は不老になる薬で若いまま享楽に耽るのはサイバーザナドゥではむしろありふれた娯楽。
「両手に花だ! 明らかに|現実《リアル》じゃないな。ま、オレは楽しけりゃなんでもいいけどよ」
 だから、アキラもこの状況を否定しないし、目の前で美少女二人が自分を取り合う状況を眺め満喫する。どこかで割って入ろうか、二人一緒にお楽しみしてやろうか。自分を含めた美少女三人が海の中で絡み合う、想像するだけでときめいてくる。VRなんだから何をしても後腐れはない。
 アキラは再現された自然の中、自然な要素など一かけらもない悦楽に耽るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

新田・にこたま
ふむ…どの格好で潜入しましょうか…。
武装警官は論外、ジェノサイドボーラーと学生はもっと過激なVR体験を求めそう…決めました。

今日の私は『15歳にして人生に疲れ切った仕事帰りのキャバ嬢(不法就労)』です。貧困故に違法キャバクラに身売りして生計を立て始めたが、まだ仕事に慣れず今が精神的に一番辛い時期…みたいな記憶をUCで自分に植え付け。迫真の演技力を獲得。UCを使った私にとっては演技ではなく真実ですが。

ああ…昔の世界って、こんなに綺麗だったんですね…。
私も、こんな世界で、生きたかったなあ…。

大自然の中で何をするでもなく美しい自然に涙を流しながらその場を動きません。

宗教に全力で引っ掛かりに行きます。



 メガコーポ経営カルト教団への潜入捜査、それは猟兵だけの任務ではない。敵対するメガコーポ組織からの調査や、身内をそこに引き込まれた個人。内部からの妨害や監査もあるだろう。そしてもちろん、不正を取り締まる警察も。
「ふむ……どの格好で潜入しましょうか……」
 警察は腐敗しきっていて当然というこの世界で正義の警官であり続ける新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)は、警察官として培った知識を元にどのような『設定』で潜入すべきかを考える。
「武装警官は論外、ジェノサイドボーラーと学生はもっと過激なVR体験を求めそう……」
 流石にいきなり踏み込んで『警察だ』なんて言うわけにはいかない。また供されているVRの性質からして、過度な刺激を求めるような人種も有り得ない。この会はあくまで癒し、それも失われた過去の静かなものを売りにしているのだ。この世界でそう言ったものを求めそうな、自分が変装できる存在は。
「決めました。この世界では潜入捜査に掛けられる時間はないんです……!」
 一つの姿を思い浮かべると、にこたまは早速それに相応しい衣装に着替え会場へと向かった。

 そしてしばし後、にこたまは静かな森の中で呆然としていた。
 木々の群れの中の清浄な空気に、どこからか聞こえてくる小鳥の声。上を見上げれば木漏れ日が降り注ぎ、横を見れば動物たちがこちらの様子を窺っていた。一方でたかってくる虫や足を汚す泥、強すぎる腐葉土の匂いなどはなく、立っているだけでどこまでも快適な森林浴が楽しめる。
 まさに絵にかいたような、いい部分だけを切り出した大自然。その中で、にこたまはその全てを体に受ける。
「ああ……昔の世界って、こんなに綺麗だったんですね……」
 誰に聞かせるでもなく、自然に出てくるかのように呟くにこたま。その服装は普段の警官服ではなく、白いナイトドレス姿。胸元を見せつけるため切り裂いたように開け、片足を過剰なまでに露出したそれは明らかに誘惑目的のもので、どちらかと言えば童顔なにこたまの顔立ちとのギャップが不道徳な淫靡さを醸し出している。
 もちろんこの格好には意味がある。今のにこたまは『15歳にして人生に疲れ切った仕事帰りのキャバ嬢(不法就労)』なのだ。
 それもただ潜入捜査のため衣装を変えたのではない。ユーベルコード【正義の潜入捜査(即席)】を持って自身の記憶さえ改竄し、本当にその人物になり切ってしまっているのだ。
 貧困故に違法キャバクラに身売りして生計を立て始めたが、まだ仕事に慣れず今が精神的に一番辛い時期……そんな今の彼女にとっての真実を吐き出せば、主催の男は『あなたのような方の為にこの会はあるのです』などと言って丁寧に案内してくれた。実際この様に心をすり減らされた者こそカルト教団にとってはまたとないカモだろうし、オブリビオンの材料とみても不法就労のキャバ嬢などいなくなってもまず誰も探さない使いやすい素材だろう。
「私も、こんな世界で、生きたかったなあ……」
 そんな女を全力で演じる……最も今の彼女にとっては全てが真実であり心の底からの感動なのだが、それ故にただ何をするでもなく美しい自然に涙を流しながらその場を動かないにこたま。そんな彼女に、近寄って来た動物たちが優しく顔を摺り寄せてくる。もちろん不快な獣臭さなどなく、その毛皮は皆一流トリマーの手にでもかかったかのように滑らかだ。
 この迫真の、心からの映像は見ている者に上手く引っかかったと確信させるには十分だろう。その証拠として、モニターの前の現実世界では次なる動きが起き始めていた――

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『面倒臭がりで仕事嫌いな不良符術師』

POW   :    たまには符術師らしいとこ見せとくかあ
【戦場内の全敵の眼前に出現し続ける式神】を見せた対象全員に「【攻撃禁止】」と命令する。見せている間、命令を破った対象は【生命力と身体能力】が半減する。
SPD   :    それじゃ不等価交換といこうか…攻撃するな
対象にひとつ要求する。対象が要求を否定しなければ【防御力】、否定したら【攻撃力】、理解不能なら【ユーベルコードを使用する機会】を奪う。
WIZ   :    電脳召喚・平安時代で競争だぁ
戦場内を【式神が引き込んだ電脳空間の平安時代】世界に交換する。この世界は「【全員で牛車競争して勝った者の言う事を聞く】の法則」を持ち、違反者は行動成功率が低下する。

イラスト:あさぎあきら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 並んだ機械仕掛けのベッドの上、そこにあるモニターにはその機械にかかった者が見せられている映像がリアルタイムに映し出されていた。
 様々な自然環境をそれぞれ満喫しているようなその映像を見て、一人の男が舌打ちする。
「どいつもこいつも気持ちよさそーにしやがって……本当クソだわ」
 まるで手入れされていないぼさぼさの髪に皺だらけの気崩した服。いかにも怠惰そうなその男は、手に紙の束を持って寝ている者たちの前に立つ。
 だらけた態度でその紙を一枚とり寝ている者の体に張り付けようとしたその瞬間。一斉にモニターの映像が途切れ、つけられたVR機器を跳ね飛ばしてその世界に浸り切っていたはずの者たちが起き上がった。
「な、なんだぁ!?」
 驚いて後退る男。その男に頭上からの声がかかる。
「どうやらよろしくない方々が入り込んだようですね。最近当社に限らず、この手の輩からの被害が増えていると聞きます。あなたを雇ったもう一つの理由はお分かりですね? ご心配なく、増援はお送りしますよ」
 その声は最初に猟兵たちを出迎えた主催の男のもの。その声と同時に奥からやはりだらしない恰好をした男たちがわらわらとやってくる。
「増援ったって元々俺の子分じゃねーかよ……人質代わりに取ってたくせによく言うぜ」
 悪態をつきながらも、男は手の紙……符の束を振って整える。
「ま、正直あんたらとやり合う理由なんてこれっぽっちもないしめんどくさいだけなんだけど、逃げたら上司サマに追い込みかけられて殺されちゃうのよね。それにあんたらみたいなのさえこなけりゃ、寝てる奴に札はるだけの楽な仕事だし。だからさっさと帰るか……死んでくんない?」
 リーダーである男に合わせ、周囲の者たちもめいめいに札の束を取り出す。ただ楽をしたいからという理由でメガコーポの非道に手を貸していたこの『面倒臭がりで仕事嫌いな不良符術師』の集団。働きたくないというならいいだろう。お望み通り、彼らを二度と働く必要のない場所に送ってやれ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
それでは、早急に仕事を済ませましょうかぁ。

『FMS』のバリアと『FES』『FXS』『FGS』『FPS』の各結界を多重展開、『FAS』『FIS』の障壁も併せ動かずとも十分な守りを固めますねぇ。
そして【餮囹】を発動、『波動』による[範囲攻撃]で『吸収』を行いますぅ。
『式神』による『攻撃禁止』も『召喚自体の阻害』『式神の吸収』で抑え、影響を受けるタイミングが有っても『吸収』したエネルギーと『FXS』の治癒結界で癒せば問題有りません。
『身体能力半減』も、動かずに攻守が可能なこの状態ならほぼ影響は有りませんので、後は一般の方々を巻込まない様、『FBS』の斬撃で[追撃]しますねぇ。



 寝ている者を殺害するだけという楽な仕事を妨害され、嫌々ながら侵入した敵性存在の排除というもう一つの仕事に就く『面倒臭がりで仕事嫌いな不良符術師』の集団。リーダーがそうであるように、従う者たちも皆一様に一刻も早く役目を終わらせ、怠惰を貪ろうとしていた。
「それでは、早急に仕事を済ませましょうかぁ」
 そしてその侵入者……猟兵の一人夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)も、急ぎ仕事を終わらせようとする姿勢は同じであった。だがそれはどのような形であれ終わればいいというわけではなく、彼らを通り越し急ぎ真の黒幕を引きずりだすという結果を出すため。そのために、るこるはまず自らの持つ防御に向いた兵装をありったけ並べ堅守の構えを取った。
「あー、そう。じゃお前ら、あっちやっといて」
 リーダーの投げやりな指示の下、何人かの符術士が自らの持つ符をばらまいた。それは空中でひとりでに折れて形を変え、折り鶴のような形になってるこるの眼前まで飛んでいった。
「符の呪を持って命ずる……攻撃しないでね……っと」
 かしこまった口上とだらけた命令。だがそこに込められた呪は本物であり、視界を通して発生する攻撃禁止の呪いが辺りを包みその命令で場を縛っていく。
「大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、咎人を留め置く扉の鍵を此処に」
 それに対し、るこるはこちらも神に属する力、【豊乳女神の加護・餮囹】を発動した。周囲にまき散らされた敵の存在と行動を喰らう乳白色の波動が式神を包み、その中へ吸収していく。
「紙もタダじゃないんだけどね……リーダー、これ経費で落ちる?」
「上司サマに聞いといてやるよ。あるだけ出しな」
 指示を仰ぐというよりほとんど無駄口の様なやり取りだが、符術士たちはそれに従って次々と札をばらまいてくる。それは式神となる端からるこるに喰らわれていくが、一方でただ普通の紙を投げているわけでもないらしくどこから出てくるのかと言いたくなるほどに絶え間なく、際限なくその場に出現し続ける。
「じゃ、俺らここで休んでるから」
 そうして式神の出現が止まらない状況になったことを確認したか、符術士たちはその場に座りこんでしまった。その間も式神は次々と出現してはるこるに食われていくが、符術士たちはもうそれを見てもいない。
 彼らは基本的に業務に対する意欲は低い。相手が攻めてこないと見て、式神を餌にすることでの千日手に持ち込んで引き分けを狙ったのだろう。
 湧き続ける式神を食わせて自分を守り、行動阻害はそもそも行動する気がないのだから関係ない。彼らの無気力な姿勢が奇しくもユーベルコード対策となってしまったか。
 見た目には完全な膠着状態。侵入者が先に進めないなら大局的には符術士たちの勝利か。それを確信し、符術士の一人が両手を伸ばし大あくびをする。
 その大きく開けた口が裂け、そこからずれて頭の上半分が床へと落ちた。
 突然のことに一斉にそちらを見た他の符術士たちも、首や胴が切断さればらばらになり崩れていく。
「な、んだ……?」
 突然のことに理解が追いつかない符術士たち。だが、符術士が減るだけ式神の湧きだす勢いは弱まっていく。その結果よく見えるようになったそこにあるのは、符術士たちを切り裂き飛び回る戦輪『FBS』であった。
 式神たちの攻撃禁止の命令、それは破った者にペナルティを科すことはあれど、攻撃そのものを封じ込めるわけではない。るこるは式神を喰らったエネルギーを自らの治療に充ててペナルティの一つ『生命力半減』を相殺し、強引に攻撃に打って出たのだ。
 場は動いていなかったわけではない。着々と、反撃のための布石がるこるの中には蓄えられていたのだ。そして自動で動く兵装に攻撃を任せることで、身体能力半減も関係ないものとする。行動を合わせ相手のユーベルコードの制約を無意味にする、それは決して符術士だけが行っていたことではなかったのだ。
 もちろん攻撃しているということは生命力の喪失そのものは起こっている。回復しているとはいえ一度はダメージ自体は受けているのだ。それに伴う苦痛は相応にある。
 なれど、受けることが勝利につながるのならるこるはそれを躊躇わなかった。ただ安楽な道を選び続けた符術士たちと違い、猟兵でない参加者の安全まで見越して攻め続ける覚悟がそこにある。
 どことなく似たような、しかし本質はまるで違う手を持って、るこるは符術士たちをまさに薄紙の如く切り裂いていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天堂・美亜
「貴方達の相手は私です!」
他の客に被害が出ないようUCで不良たちと自分を隔離

「っ、力が……」
勇んで挑むものの多勢に無勢、攻撃禁止や能力低下に翻弄され苦戦
四方八方から攻撃と下卑た視線や言葉を浴びせられ嬲り者に

衣服はボロボロ、武器も奪われ、結界を解くよう命令されますが……
他の客のために従わず、しかし抵抗する力もなく、ただ男たちに叩きつけられる情欲に耐え続けます

結界内で他にすることもない男たちに延々と辱められても、結界維持のために意識を必死に保ち、ただ喘ぎ、泣き叫び続けます
地獄のような長時間の恥辱の果てに力尽きるころには、主催者が倒され、残された男たちは難なく私を連れ去ることができるとも知らずに……


ペルセポネ・エレウシス
「符術……珍しい技術ですね。
おとなしく降伏し、我が社の研究材料になりませんか?」

交渉決裂ですか。
ならば符術とやらを解析させていただきます。

「攻撃するな……ですか。いいでしょう、その要求を飲みます。
特殊渉外課の私と交渉で勝負したこと、後悔させてあげましょう」

私は脳内のサイバーブレインチップをネットワークに接続し、ブラックカンパニー公式チャンネルから動画を配信します。
真実を人々に伝えることで、悪徳教団を潰してあげましょう。

「この配信を見てくださっている皆さん、私は今、とある悪徳カルト教団に突撃取材をおこなっています。
見てください、このVR装置を!」

配信映像に映したVR装置――その装置に付いている大型モニタには、全裸で大事なところを隠しもせずに温泉に浸かっている私の姿が表示されていて!?

「って、だめーっ、みないでくださーいっ!」

ですが、そこで敵の符術が発動し、私の防御力……すなわち衣類を奪われて裸にされて!?

「いやぁっ!」

全裸のまま符術師たちに犯される姿を、自身で生配信してしまうのでした。



「おいおい何してくれてんの、ロクデナシのゴクツブシだけど一応俺の手下なんだけど?」
 部下の何人かが倒されたことを受け、リーダーの声が一段低くなる。彼らなりに仲間意識があるのか、あるいは自分にも命の危機が迫っていることを実感しての事か。
 だがそんな彼に、ペルセポネ・エレウシス(『ブラック・カンパニー』特殊渉外課所属・f36683)が笑顔で迫る。
「符術……珍しい技術ですね。おとなしく降伏し、我が社の研究材料になりませんか?」
 メガコーポ『ブラック・カンパニー』所属である彼女は、常に自社の利益を考え行動する。彼らの忠誠心が低いのは見て分かることだし、その能力がこの世界では異質かつ稀有なものであることも疑いない。とりあえずでも回収しておいて損はないと声をかけるが、リーダーはそれにうんざりしたような表情で答えた。
「あのさ、嘘でもいいから好待遇とか週休六日とか言ってくんない? どこの会社か知らないけど、バラされてフラスコ入れられるよりは今の会社に首詰めさせられた方がナンボかマシだわ」
 この世界での研究材料とは、脳だけ水槽に入れて生き続けさせられるようなそれを想像してだいたい間違いない。その扱いを隠そうともしなければ、首を縦に振るものなどいないだろう。
「交渉決裂ですか。ならば符術とやらを解析させていただきます」
 元より強引にでも接収していくつもりだったと、戦闘に切り替えるペルセポネ。その前で、符術士たちが札を撒いて式神を周囲に出現させる。
「ここから先へは行かせません!!」
 その式神を、天堂・美亜(人間の翔剣士・f33199)が【挺身の結界】を展開して自分と共に隔離した。その術に巻き込まれた数名の符術士と美亜、ペルセポネがリーダーから隔離され結界内へと送られる。
「これで俺らを拉致ったつもりか? 別に俺らはここにずっといたっていいんだ、お前らが攻撃さえしなけりゃな」
 札を口に当てながら男の一人が言う。それは札を通してくぐもった声になるが、同時に言霊とでもいうべき力ある言葉となって聞いた者に選択を迫った。
「攻撃するな……ですか。いいでしょう、その要求を飲みます。特殊渉外課の私と交渉で勝負したこと、後悔させてあげましょう」
 ペルセポネはあっさりとその交渉を飲んだ。そうして実際に堂々と彼らから目を離し、周囲にある各種機械類を弄り悠々と自分をそれに接続しはじめた。そこから脳内のチップを介してネットワークに接続、敵地にいながら堂々と自社の公式チャンネルにまでアクセスした。
「この配信を見てくださっている皆さん、私は今、とある悪徳カルト教団に突撃取材をおこなっています。見てください、このVR装置を!」
 そこから配信するのは、ついさっきまで自分が繋がれていたVR機器。大型でいかにも性能は高そうなそれが何に使われているのか示すため、そこに記録されたデータを呼び出す。が。
「って、だめーっ、みないでくださーいっ!」
 そこに映し出されたもの。それは全裸で大事なところを隠しもせずに温泉に浸かっているペルセポネの姿。
 この機械で具体的に何が行われていたのかを示すには実際の映像を流すのが手っ取り早い……と思いきや、その『実際』が起こる前に猟兵たちは機械から跳ね起きてしまったのだ。そうなれば残されているのは、相手を釣りだすためにVR世界を満喫している映像のみ。
「だ、だめです!」
 それを遮ろうと、美亜が果敢に飛び出す。が、自分諸共隔離した式神によってその生命力と身体能力は半減しており、まともに攻撃など出来る状態ではなかった。
「ほらよ、もう動くな」
 ほとんど無防備に飛び出ただけのその体に、一枚の札が貼られる。恐らく信者の殺害用に用いていただろうその札は美亜の体を痺れさせ、そのまま動けなくさせた。
 そのままなす術なく武装解除され、結界を解くよう迫られる美亜。
「お断りします……!」
 それでも周りの一般参加者や外にいる仲間を巻き込むことを防ぐため、相手の要求を撥ねつける。
 その隙を伺いペルセポネが攻撃にかかろうとするが、その動きもまた察知され簡単に札を張られてしまった。その札の効果は防御力の減少……つまりは衣服の破壊。
「きゃあっ!?」
 流石に恥ずかしくなったか屈んで体を隠すペルセポネ。大人しくなればもう用はないとそちらは捨て置き、男たちは主に抵抗を続けている美亜の方に攻撃を多めに加えていく。
 その様子をリーダーの男はつまらなさそうに結界外から見ていたが、突如として彼のポケットに入れていた携帯電話が鳴った。恐らく趣味でそう言う外観にしているのだろう古くさく武骨な黒い電話を取り出し、向こうの相手と何事か喋る。
 その通話を切った後、リーダーは舌打ちしてから自分の札を一枚取り出し、それこそ携帯電話のように口に当て喋り始めた。
「あー、上司サマから伝言。そいつが機械で見た画像別部門に回すから、追加データ取るためヤっとけって。おまけで隣のも」
「うーす」
 結界を超え声だけを届かせた連絡にやる気なく返事し、結界内の男たちは指示通りにに二人に『暴行』を加え始める。
「いやぁっ!」
 そのまま泣き叫び嬲られる姿を、ペルセポネは自身のチャンネルで生配信し続けることに。
「う、ぐぅぅ、う……」
 美亜もまた、機を見てペルセポネだけを結界外に出し、後は自分で引き受ければ彼女はまだ戦えると、結界を維持し嬲り者にされていく。その後は力尽きるまで結界を維持し続ければ、主催者にこの男たちが加勢することだけは万一にもなくなる。そう考えながらも悲鳴を上げ続ける美亜。だがもし主催者が倒れたとしてその後自分がどうなるか、喘ぎ泣き叫ぶその意識の中にそれを気にする余裕など残されていないのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

新田・にこたま
あ、あー…そうでした、私、警察でした。では、さっさと楽な仕事を終わらせるとしましょうか。

敵の要求にとりあえず否定しておきます。この世界ではあまり見ない装備を持っていますが、どうせやってくることは武装警官かカンパニーマンの能力の派生技でしょうし。それにより状態異常か行動制限が発生すればUCで反射します。

結果として攻撃力を失い私を害することができなくなった敵を狩っていきます。
回収されていなければ護身用設定で持ち込んでいた特殊警棒をフォトンセイバー化させて切り倒していきましょう。回収されていれば殴り潰していきます。義腕も武器です。

白いドレスを着てきたのは間違いでしたかね。汚れが目立ちます。



 眼前で繰り広げられる激しい戦いと悲惨な光景。それを虚ろな目で眺めていた新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)の目に、徐々に光が戻ってくる。
「あ、あー……そうでした、私、警察でした」
 にこたまは潜入捜査のため、自分の記憶を改竄してまで精神をすり減らしたキャバ嬢へとなり切っていた。それ故に敵にも彼女は周りに連動して目覚めた一般人と思われており、記憶が戻らない間は相手の標的からも外れていたのだ。
「では、さっさと楽な仕事を終わらせるとしましょうか」
 相手のお株を奪うような言葉でにこたまは警官の顔に戻り、符術士たちに正面から向き合った。
「あ、何、あんたもそっち系だったわけ? つか警察って言わなかった? 何でお巡りさんがセイギノミカタしちゃってんのよ」
 警察は腐っていて当然という、この世界ではある意味常識的な思考の元数を揃えながらにこたまを取り囲む符術士たち。
「悪いけど、俺らワイロ渡せるほど給料もらってなくてさぁ……だから我呪において命ずる、攻撃するな」
 符術士たちが一斉に札を見せつつにこたまに『要求』を下す。それはこの世界では測りがたい力を持ってにこたまの心身を縛り、不当な二択を迫った。
「拒否します」
 そしてにこたまは、それを躊躇なく拒絶した。当然のように符による呪が発動し、バグや故障とは違う形でその義体から攻撃能力が抜け落ちていくのがわかる。
 しかしそれに、にこたまは動じない。
「この世界ではあまり見ない装備を持っていますが、どうせやってくることは武装警官かカンパニーマンの能力の派生技でしょうし」
 力の原理や理屈は理解できなくとも、効果と結果に着目すればそれはよく知ったもの。理解できない者にまで及ぶ不当な二択を迫るのはメガコーポ社員の基本スキルだし、天下御免の紋所を翳して相手を平伏させるのは公権力の特権だ。
 そしてこの世界で全てを敵に回す『正義の警官』であるにこたまにとって、それは数えきれないほどに向けられたものでしかない。奪われるのが攻撃力程度なら安いものと義腕で殴り掛かり、符術士の一人の腹に拳をめり込ませた。
「ぐえっ!? ……ってーなおい!」
 殴った感触からしておおよそ鍛錬とは無縁ななまった肉体。符術の力との兼ね合いかあるいは単に金がないのか、義体化は最低限にとどめているらしきその肉体だが、猟兵の武装警官たるにこたまが全力で殴ってもそのダメージは『痛い』で済むレベルにとどまっていた。
 敵の行動制限はやはり並ならぬもの。これを受けてはいかに相手が無気力であろうといずれは削り殺される。
(お兄様……ありがとうございます……)
 故に、心の中で深く兄へと感謝をささげた。その心に応えるかの如く、符術士たちの持つ攻撃用の符がぼろぼろと崩れ落ち始めた。
「な……なんだと!?」
 魔法的な力への対抗手段などないはずの世界でそれを成したは、にこたまに与えられた【家族の置き土産】。身内にだけは優しかった兄が邪悪なる金とコネを総動員し彼女に埋め込んだ、メガコーポ最深部級のカウンタープログラムだ。
 いかに珍しかろうとサイバーザナドゥに存在する技術である以上、それを知る者が世界の深部にいてもおかしくはない。それ故にこのプログラムは符術も問題なく反射し、攻撃力を削ぎ返し五分の状態まで持ち込んだのだ。
 そして、そうなれば結局は地力勝負。サイバーザナドゥならば貧乏なキャバ嬢でも機械兵器の一つくらい持っていて当然と、護身用設定で持ち込んでいた特殊警棒をフォトンセイバー化させ符術士たちに切りかかる。
「く、くるな……ぐぎゃっ!」
 封じることに長けた彼らは、ただでさえも低い攻撃力で無駄な抵抗を試みるか、相手の下がった攻撃力でも切り刻めるほど貧弱な防御力で自分を守るか、その二択に追い込まれた時なす術はなかった。
 やがてにこたまの側から最初にかけられた分が反射で消えれば、あとは一方的な『正義』の時間。
「白いドレスを着てきたのは間違いでしたかね。汚れが目立ちます」
 彼らの体に多く残された天然部位から出た『汚れ』が、彼女の服を赤く染めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

堂島・アキラ
チッ、せっかくいいとこだったのによ。もうちょっとで美少女二人とアレやコレを……空気読めよクソ共が。

イライラしてるっつーのにさらに「攻撃するな」と命令してきやがった。
このオレにだぜ?空前絶後の超絶最強美少女であるこのアキラ様に命令だと!?
完全にプッツンきちまったよ。このオレに偉そうな態度取るヤツは誰であろうとぶん殴る!!

敵の一人をとっ捕まえて顔面に一発お見舞いしてやる。
命令なんざ知った事かよ。モヤシ野郎ボコすのに武器もユーベルコードも必要ねえ。圧倒的暴力でねじ伏せるだけだ!
次に殴られたいヤツはどいつだ?ああん!?

二度とオレに指図するんじゃねえぞ、わかったか!
お前らに拒否権なんざねえんだよオラァ!



 このカルト教団『自然と触れ合う会』に怪しまれず潜入するために、猟兵たちは彼らの用意したVRに自らかかった。その際敵襲のタイミングは教えられておりその時に合わせ機械から脱出できるよう計らわれていたが、それはつまりどれだけVR世界を楽しんでいてもその時間になれば中断せねばならないということ。
「チッ、せっかくいいとこだったのによ。もうちょっとで美少女二人とアレやコレを……空気読めよクソ共が」
 美少女二人が自分を取り合うさまを堪能し、いざこれからというタイミングで現実に引き戻された堂島・アキラ(|Cyber《サイ》×|Kawaii《かわ》・f36538)はこの上なく不機嫌であった。
「いやだって所詮バーチャルよ? 虚しくないの? 興味ないからわかんないけど」
 その怒りに一部の理解も示さない符術士たち。睡眠欲以外の欲求をどこかに置き忘れてきたようなリーダーとそれに従う者たちには、願望に従って自らの体を改造しつくしたアキラのような存在はどう見えるものか。
「ま、いーや。とりあえず、呪によりて汝に命じる。攻撃すんな」
 どうあれ興味のないものには関わる気もないと、眼前に翳した札を通して命令を発した符術士たち。それは力ある言葉、場を支配する呪いとなってアキラをその命令に縛る。
 その命令に、アキラはあろうことか拳を持って答えた。
 呪いを放った一人の顔面に拳がめり込み、振り切って床に転がらせる。
「え、いや……何してんの!? 俺の話聞いてた!?」
 一切の躊躇なく攻撃に出られたことにうろたえるも、命令を無視したなら防御は下がっているはず。ならばと攻撃用の符を構えるが、アキラはその術士を無視し倒れた者を躊躇なく殴りに行く。
「イライラしてるっつーのにさらに「攻撃するな」と命令してきやがった。このオレにだぜ? 空前絶後の超絶最強美少女であるこのアキラ様に命令だと!?」
 美少女を名乗る者が吐いていいものではない暴言を吐きながら、えげつない角度で顔面にもう一発。怒りで隙だらけのその身に符が投げつけられ殺傷用の力がその身を駆け抜けるが、アキラの体はびくんと跳ねこそすれど倒れるようなことはない。
「完全にプッツンきちまったよ。このオレに偉そうな態度取るヤツは誰であろうとぶん殴る!!」
 そのまま捕まえていた符術士を殴り倒し、消滅させた。
「次に殴られたいヤツはどいつだ? ああん!?」
 凄みながら、手近にいた符術士を捕まえまた殴り始めるアキラ。その姿に、見ていたリーダーは一つの事に思い当たる。
「こいつ……そもそも何されてるか分かってねぇな!?」
 お楽しみを邪魔されて怒っているというのは最初から分かっていたが、その怒りの度合いが符術士たちの予想を遥かに超えていたのだ。何しろアキラは見た目こそ美少女だがそれは欲望に従って自分の体を弄りつくした結果であり、その中身は粗暴で短気で自己中でヤク中でナルシストのド変態おじさんなのだ。それが美少女とのお楽しみの時間を邪魔されたのだから、その怒りは計り知れない。
 恐らく先から喚き散らしている暴言も、相手を恫喝しているのではなく昂った感情が口から駄々洩れになっているだけ。相手の言葉など聞いても理解してもいないのだから、攻撃力も防御力も下がることはない。
 だがその一方で、この呪には命令が理解されなければユーベルコードの使用機会を奪うという効果がある。それは間違いなく発揮されているはずだが、アキラの猛攻は止まらない。
「命令なんざ知った事かよ。モヤシ野郎ボコすのに武器もユーベルコードも必要ねえ。圧倒的暴力でねじ伏せるだけだ!」
 当然である。何しろ彼はまさにキレたゴロツキの如く、ただ感情に任せた暴力で相手を痛めつけているだけなのだ。当然その破壊力はユーベルコードには劣るが、悲しいかな符術士たちは怠惰と不摂生の結果肉体的には虚弱極まりない。ひきこもりの怠け者と暴力上等の危険人物が喧嘩すれば、その結果は火を見るよりも明らかだ。
 さらに不幸が重なることに、符術士たちは直接攻撃できるユーベルコードをほとんど持っていない。攻撃用の札を張るということはその距離までアキラに近づかなければならないし、一応相手は隙だらけではあるから張ること自体は容易くとも次の瞬間にはその腕を掴まれ次の八つ当たり対象にされるのは決まり切っているのだ。
 一枚札を張られるごとに一人の符術士がボコボコにされて倒されていく。不等価交換の命令を出そうとした符術士たちは、札一枚と一人の命の不等価交換を強要されるに至ってしまったのだ。
 そこからも、受けるダメージも意に介さずキレたアキラの暴走は続く。
「二度とオレに指図するんじゃねえぞ、わかったか! お前らに拒否権なんざねえんだよオラァ!」
 聞かせるよりも叫ぶこと自体を目的とした咆哮と共に、理不尽な暴力の嵐が符術士たちを理不尽に叩き潰していくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

岩倉・鈴音
オイコラ御札ヤロウ!乙女の柔肌(←サイボーグのメカボディです)に万札でもない紙つけんじゃねーセクハラがアッ

ワタシも面倒くさいルールのバトルは嫌なんだよね。平安時代はなんか雅なロマンあるし正々堂々牛車で勝負だぁ〜
牛だって鼻の差で勝てばいいンでな。
御札ヤロウにドツボ・フィナーレをしかけるよ。なんか電脳ルールとか説明してる間にね。な〜んか手がすべったゾ!?
ようは不慮の事故でもワタシが勝てばいいんだ。

牛さん……こいつ動くの?
平安時代ノンキすぎだ〜
なだめたりすかしたりしてゴールめざすよ。ホントなら牛担いで歩いたほうが速いね!

勝っても御札ヤロウに退去を命じるだけよ。
声で気づいた。宿敵が上で待ってることに。



 符術士たちの主な仕事は、VRにかかっている者を殺害することである。そのやり方は自らの符を張り付け何かしらの術を流すもの。わざわざ彼らを雇ってやらせているということは、そうすればオブリビオンになりやすいなど何がしか雇い主側にとってメリットがあるやり方なのだろう。
「オイコラ御札ヤロウ! |乙女の柔肌《サイボーグのメカボディ》に万札でもない紙つけんじゃねーセクハラがアッ」
 そのやり方に、岩倉・鈴音(【機械天使十二】Like Toy Soldiers・f09514)が文句をつけた。他人のプライベート空間(VR)を覗いた挙句その見物料が金銭的価値のない紙切れ一枚というのは、いくらなんでも非道が過ぎるというものだ。
「しゃーないじゃん、そんなにお金貰ってないんだし。でもあんた、義体持ちだよね? そんなこと言ってたし」
 VRを見ていたということは、その中での鈴音の言動は把握されているということ。それを元に、符術士は彼女を相手取る方法を決めたらしく今までとは別の札を取り出した。
「あんたさ、平安時代って知ってる? うちの流派が生まれた時代。その平安時代で、ちょっと競争だぁ」
 あたりに札をばらまくとそれは機械のように周囲に電磁波の結界を形成、そのまま辺りのの空間を隔絶し丸ごと電脳空間に引き込んでしまった。
 そうして鈴音の前に現れたのは、寝殿造の建物並ぶまさに平安の世界。そしてそこには、牛に繋がれた雅な車がセットアップされていた。
「これ、ギッシャってんだけど、これで競争しよっか?」
「ワタシも面倒くさいルールのバトルは嫌なんだよね。平安時代はなんか雅なロマンあるし正々堂々牛車で勝負だぁ〜」
 符術士の提案にノリノリに答える鈴音。まるでVRの続きのような状況だが、これは機械ではなくサイバーザナドゥ技術に適応した符術が作り出したユーベルコードの世界。
「それじゃ説明すっけど、最初は床か前板についてスタート。物見開けたり屋形から出るのはいいけど、地面に足着いたら失格。牛が軛から離れても駄目。お金ないから網代か八葉しかないよ。それから……」
 わざと専門用語を並べ理解させる気のない説明をする符術士。彼らは平和主義で牛車レースを申し出たのではない。現代の義体つきサイボーグなら、この世界ではもはや失伝レベルな古典には疎いだろうという計算に基づいてのものであった。
「な〜んか手がすべったゾ!?」
「あいでっ!?」
 その説明をぶん殴って中断させる鈴音。
「ごちゃごちゃ意味わからん! 牛だって鼻の差で勝てばいいンでな。そうだろ?」
「いや、まあ、そうだけどね……じゃ、やろっか。はいスタート」
 そのまま牛車に乗り、適当な声でスタートする二人。
「牛さん……こいつ動くの? 平安時代ノンキすぎだ〜」
 そののんびりした牛の歩みに驚く鈴音。その横で、符術士は自分の札を取り出す。
「じゃ、頑張ってね」
 その札を牛に張り付けると何かの力がそこから巻き起こり牛の体を駆け巡った。
「ドーピングか!? ずるいぞ!」
「いや、説明中断したのあんただし。邪魔されなきゃ言うつもりだったんだけどさぁ」
 果たしてそれが本心かは分からぬが、牛を強化し一気に走らせようとする符術士。だが、札を張られたうしの様子がおかしい。
「……は?」
 突然痙攣し、激しく飛び跳ねた後その場に倒れ動かなくなってしまった。その様子は、まるで予知で見られた彼に殺害されたVR体験者のようだ。
「え、嘘、だろ……え?」
 信じられないと言った様子で牛を見る符術士。まさか、自分が絶対勝つため仕込んだはずなのに、符を張り間違えるなんてそんな間抜けなことが。
「ようは不慮の事故でもワタシが勝てばいいんだ」
 そんな彼を悠々追い越し進んでいく鈴音。これはもちろんただの事故や冗談ではない。説明を止めるため符術士を殴った時に発動した【ドツボ・フィナーレ】による不慮の事故。いい加減な態度の裏に相手を嵌める意図を持った空間を展開した術士に対し、彼女もまたふざけた態度に隠して相手の手を台無しにする一撃を仕込んでいたのだ。
「ホントなら牛担いで歩いたほうが速いね!」
 そのまま牛をなだめすかし、悠々ゴールする鈴音。
「……さて、たしかこの空間、敗者は勝者の言うことを何でも聞くのだろう? だったら……」
 死ね、か。あるいはもっと悲惨な何かか。この空間のルールには作成者さえ逆らえない。符術士は自棄気味に鈴音を睨みつける。それに対し鈴音が命じたのは。
「お前帰れ。止めないからこっから出てどこへでも行け」
 この場からの退去、それだけであった。平安空間を消しながら、あっけにとられたような表情になる符術士。
 そんな彼に構わず、鈴音はスピーカーのついている天井を見つめている。この符術士たちに指示を出していた声。その声で彼女は気づいていた。宿敵が上で待ってることに。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『藤堂ヨナタン兵助』

POW   :    専用地なので戦闘お断りします
レベルm半径内を【社員用の駐車場 】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【ダメージを伴わない全ての行動】が強化され、【ダメージを与える全ての行動】が弱体化される。
SPD   :    心臓を捧げたCEOの手はわずらわせぬ。
自身の【片腕 】を代償に、【膨大な電流】を籠めた一撃を放つ。自分にとって片腕 を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
WIZ   :    超人気功ウルトラデッドエンド
【腕をクロスする独特な構えと呼吸法 】の継続時間に比例して、自身の移動力・攻撃力・身体硬度・勝負勘が上昇する。

イラスト:果島ライチ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は岩倉・鈴音です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 寝ている者を狩るつもりだった『面倒臭がりで仕事嫌いな不良符術師』の集団は、一人を残し全てが倒された。最後に残ったリーダーもまた同じ運命をたどると思われたが、彼は自らの呪に課せられたルールによりただ退去を命じられるに留まっていた。
「おっと、それは困ります。あなたは当社の大事な労働力ですので」
 スピーカー越しではなく、直接聞こえた声。VRにかかる前一度だけ顔を見せ、趣旨を説明した『自然と触れ合う会』主催の男。モニタリング用の別室から出てきたその男にリーダーは相変わらず無気力な、だが何かを諦めたような表情を向けた。
「何、これからまだ働けっての? 子分どもみんなやられちまったんだ……もう従う理由はねぇよ」
「いえ、もうそれは結構。だがあなたの能力はとても珍しい。他社に奪われるわけにはまいりません。ですので」
 笑顔のまま、男はリーダーに歩み寄り。
「あなたの業績は当社だけのものとします」
 その腕でリーダーの胸を貫いた。それが分かっていたかのようにリーダーはゆっくりと崩れ落ち、そのまま消えていく。
 最早それを見ることもなく、男は猟兵たちの方へ顔を向けた。
「正しく自己紹介するのはまだでしたか。私、『自然と触れ合う会』主催にしてトリニティ・デザイア睡眠欲部門団体運営部第二課主任、『藤堂ヨナタン兵助』と申します。ご遺体に渡しても仕方ありませんので名刺はいらないでしょう」
 恭しく挨拶する男、藤堂ヨナタン兵助。会の後に続けた名が、恐らく彼が属するメガコーポの名前だろう。
「私には到底理解しかねることでございますが、皆様過去の大自然を十分楽しんでいらっしゃった模様。そのような方々にくだらない夢を見せながら永遠に当社に尽くす体になっていただくのが、私が社より与えられた使命でございます」
 自らが開催していた会の活動をあからさまに馬鹿にして見せる兵助。社への忠誠は高くとも、彼もまた符術士たちとは違った意味で仕事が嫌いと言えるのかもしれない。
「皆様がどのような目的かは存じませんし知る気もありません。ただ当社に不都合を働いた。それだけで皆様は死に値する大罪人でございます」
 彼が手を当てる胸には大穴が。そこにあったものを捧げた社への反逆は許さぬと、変わらぬ表情と口調でその身から殺意を湧き立たせる。
「ご心配なく。皆様も当社のため、その身が塵になるまで使って差し上げましょう。少々予定は狂いましたが、結果は変わりません。それでは、お休みなさいませ」
 両腕を交差させ戦いの構えを取る兵助。猟兵よ、己が心身全てを悪しきメガコーポに捧げたこの社畜に、永遠の休暇をくれてやれ!
新田・にこたま
このカルトに引っ掛かった人たちを馬鹿にしてるようですが…あなたは馬鹿相手の仕事が妥当だと社に評価されているんですね。実は万年主任さんだったりします?

と、煽りながら敵に接近していきます。
敵のUCがどこまでの行為を『ダメージを与える全ての行動』と捉えるのかは分かりませんが、敵も私を迎撃するなら弱体化するでしょうし、接近までは私の見切り技能で十分可能であると信じて突貫です。
接近したらUCによる攻撃で義体にダメージを与えます。攻撃が弱体化していたとしても、心臓まで義体化してる相手にこれは致命的なはずです。何発でもぶち込みましょう。

あなたのスクラップは永遠に正義の為に尽くすように改造してあげますからね。



 改めて姿を現した『自然と触れ合う会』主催者『藤堂ヨナタン兵助』。他社をここに呼び込み機械にかけるための方便を捨てた彼は、職務そのものには熱心だがその手段、そしてそれにかかる者をくだらないと平然と切り捨てていた。
 そして生かして帰さぬという宣言代わりか、兵助は猟兵に向け本当の所属と役職を名乗った。
「このカルトに引っ掛かった人たちを馬鹿にしてるようですが……あなたは馬鹿相手の仕事が妥当だと社に評価されているんですね。実は万年主任さんだったりします?」
 こちらも潜入のための変装と偽の記憶を完全に捨てた新田・にこたま(普通の武装警官・f36679)が、相手の名乗った役職に対しそう答える。大仰に名乗った肩書ではあるが、確かにそれは役職としては高いとは言えないし彼自身この仕事が実りあるものと思ってやっているわけではないようだ。
「お褒めにあずかり光栄です。当社に限らずこの業界では現場どころか管理職や経営陣ですらいつの間にか入れ替わり、前任者の行方は杳として知れない。そんな世界で万年も主任に居座れたらそれは相当に有能な証でしょう」
 にこたまの煽りに対し、笑顔を崩さないまま答える兵助。それが本心かどうかは定かではないが、彼は現状自ら攻めてくる姿勢は見せていない。
「さて、この建物は当社の所有物件です。こちらが許可しない戦闘行為は控えていただきたい」
 そこから出される戦闘行為を拒絶する言葉。それは先の符術士たちがそうしたのと同じようにただの言葉ではなく、周囲に仕組まれた機械に反応して空間自体を電脳的に書き換えていく。
 恐らくは彼の何がしかの行動に応じて発動するセキュリティだろう、それは宣言通りその場にある銃器や義体、さらに筋肉などまであらゆる武器となり得るものを鈍化させていくが、にこたまはそれに構わずどんどん兵助に向かって歩み寄っていく。
「どうやらお聞き入れいただけないようですね。まあ構いません。そのご立派な右腕で、どうぞ心行くまでお殴り下さい」
 それを体を広げ堂々と受け入れる兵助。彼自身戦闘能力はあるはずだが、迎え撃つような様子も見られない。この空間自体が攻撃を禁止している以上、彼自身も反撃する力はなくなっているからだ。
 符術士も行った膠着状態への持ち込みだが、ただ面倒だから仕事を先送りした彼らと違い兵助には明確な勝算があった。これは攻撃を禁じると同時に、敷地全体に社員の受け入れ態勢を整える増援待ちの姿勢。相手が抗しえないほどの増援が来たところで攻撃を解禁し数で鎮圧すれば良いという、見た目にも自身の手柄にもこだわらない敵制圧だけを目指した戦法だ。
「ああ、それとも抵抗した方がいいですか? それではどうぞ」
 気のない様子で手を突き出し、形だけの押し返しを図る兵助。あるいはもしかしたら力を込めてやっているのかもしれないが、ダメージを与える意図がそこにあればそれは弱体化の影響を受け、やりすぎなほどに機敏なにこたまの動きにかわされる。
 そしてにこたまはろくに動こうともしない兵助に向かって腕を突き出した。
 その手は義体化された右腕ではなく、生身のままの左腕。その手は大きく開いた兵助の胸の穴に嵌り、その奥の心臓代わりの駆動装置にあてられた。
「さようなら」
 その言葉と共に、兵助の全身が痙攣した。
「……な……ぜ……?」
 肉体にダメージはない。触られた義体も傷はついていない。ただ、その機能だけが低下させられた。
 それを成したはにこたまの【新田流ガンマ掌】。義体化していない左手を使う必要がありそれを相手の動力源まで届かせなければならず、それ以外の部分に一切攻撃はできない故そもそも義体に頼らず生命を維持している相手には何の効果もない技。だがその厳しい条件をすべてクリアした時、それはあらゆる守りを抜く必殺の一撃となる。
 体を死体にし寝食が不要になったとて、動力機関は何かしら存在する。もちろん外部からそれを守ることはしているが、壊れない機械はない。
「攻撃が弱体化していたとしても、心臓まで義体化してる相手にこれは致命的なはずです。何発でもぶち込みましょう」
 もしこれもダメージ軽減の効果を受けていたとて、動力機関をピンポイントに攻める特攻技を受けて平気でいられは住まい。あらゆる世界を飛び回る猟兵が、あえてサイバーザナドゥでの戦いに特化させたその技はその世界で守りに入った相手の急所を軽く貫く。
「あなたのスクラップは永遠に正義の為に尽くすように改造してあげますからね」
 彼が人を集め行っていた非道。それを『正義』のために返してやると、にこたまは兵助の体を傷つけずその命のみを破壊していくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペルセポネ・エレウシス
「私のことを頭脳労働担当と侮らないでくださいね。
特殊渉外課のカンパニーマンたるもの、相手を篭絡する術も持っています」

服が破れたため、両手で隠していた下着を、あえて相手に見せつけます。
……うう、は、恥ずかしいですが我慢です。
これこそ、恥ずかしい格好を見せることを代償としたハニートラップなのです。

「さあ、その構えを解いて、あなたの会社の機密情報を話していただきましょうか」

戦いとは力だけではないのです。
交渉によって相手から重要な情報を得るのも、立派な戦いなのですよ。

ですが、相手の忠誠心を上回ることはできなくて。

「きゃっ、きゃあああっ!」

敵の攻撃により、残されていたブラとショーツも破壊されるのでした。



「これは危険ですね……私がどうなろうと構いませんが、社の利益だけは守らなければ」
 乱れた動力を整え、自身の体を点検する藤堂ヨナタン兵助。符術士たちが全滅した以上容易い相手ではないと思っていたが、これは差し違えることも視野に入れなければ、そう考える兵助の前にペルセポネ・エレウシス(『ブラック・カンパニー』特殊渉外課所属・f36683)が現れた。
「私のことを頭脳労働担当と侮らないでくださいね。特殊渉外課のカンパニーマンたるもの、相手を篭絡する術も持っています」
 堂々と相手に見せつけるようなその姿。それは今まで隠していた下着姿であった。
 その姿を、兵助は全く動かない冷笑のままで見る。
「ああ、そうですか。お帰りはあちらです。どうぞのそのまま」
 全く相手の話など聞いていないという態度で出口の方を指し示す兵助。彼は侵入者を殲滅させるために出てきたはずだが、あるいはここまでの経緯でそもそも彼女は戦うに値しない、放っておいても害はないとでも思っているのだろうか。
 実際、ペルセポネは直接相手とやり合うつもりはもうなかった。
(……うう、は、恥ずかしいですが我慢です。これこそ、恥ずかしい格好を見せることを代償としたハニートラップなのです)
 その代わり、相手の油断を誘いこの後の展開を少しでも有利にしたい、そのために恥ずかしさを我慢して体を曝け出していた。
「さあ、その構えを解いて、あなたの会社の機密情報を話していただきましょうか」
「そう言われて何か喋るカンパニーマンがいるとお思いで?」
 むしろそれによって別の警戒を引き起こしてしまったか、彼は独特な構えと呼吸をやめない。そのまま体を見せ続けるペルセポネと、構えを取ったまま呼吸法を繰り返す兵助の奇妙な硬直。
(い、一応考えられることとして……相手は死体なのに呼吸をしていることから、あれは多分格闘の動力に空気循環を使っている、とかでしょうか……)
 その間も一応観察して相手の特徴を推察するが、欲しいのは彼個人よりもその所属する会社の情報だ。
(戦いとは力だけではないのです。交渉によって相手から重要な情報を得るのも、立派な戦いなのですよ)
 そのつもりで下着姿を見せ続けるが、やはり兵助には効果が薄いらしい。
「もしかしてそれは、いわゆる色仕掛けという奴のおつもりで? でしたら尚の事、私は何も喋れませんよ。来る部門を間違えましたね」
 彼の体は既に死体であり、あらゆる生理的欲求と縁がない。だが最後に言った言葉は少しだけ気に留めておく価値があるとペルセポネは見た。
「部門……」
「当社の名前は既に申し上げましたので、後はご自身で検索でも何でもしてください。私は管轄外ですが、ダークウェブのそう言った方面を担当する者がいますので」
 それだけ言って兵助は鋭く踏み込み、交差させていた両手を一閃した。
「きゃっ、きゃあああっ!」
 それによって破壊されるペルセポネに残されていた最後の着衣。裸体になった彼女を見下ろし、兵助は再度手を交差させる。
「もし今の会社から追放でもされたら、性欲部門でもお尋ねください。あそこは稼ぎ頭な代わりにどの部署も万年人手不足ですので喜んで迎えてくれるでしょう。あなたなら既に……顔も知れているでしょうしね?」
 恐らくここまでに撮影された彼女の映像の事だろう。最早勝負にならない状況だが、ユーベルコード【甘い罠】の友好効果もあり、いきなりとどめを刺されることは避けられた。相手の会社の構造と自分の痴態が既に拡散されたこと、その二つの情報を持ってペルセポネは戦列を離れるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
さて、参りましょうかぁ。

『FES』の結界を防御に使用し【膺劃】を発動、周囲の空間から多数の『鎖』を形成しますねぇ。
『鎖』の性質を『捕縛専門』とすれば『ダメージを与える行動』で無い以上『駐車場』の補正は有利に働きますし、双方の条件が同じなら『手数』の差は優位に繋がりますぅ。
更に『FMS』のバリアを回避の障害物に配置、『FGS』で回避し辛くする程度の重力波を放てば捕えるのは問題無く、拘束で回避を試みられなくなれば『攻撃成功率低下』は然程意味が有りません。
後は『FBS』による[追撃]を行いますねぇ。

『縁』のある方も居りますし、或る程度叩いた後は一般の方の保護を優先しましょう。



 メガコーポ社員、藤堂ヨナタン兵助は基本的には敵の殲滅を目的にこの場に顔を出している。
 もちろん自分の手でそれを成せるのならばそれが最上であるが、もし必要なら他者の手を借りることも厭わなかった。
「連絡は既に届いているはずです。駐車スペースは開いていますよ。何しろ私はそもそも『通勤』しませんので」
 まさに不眠不休、業務上の必要がない限りこの場に留まり続ける彼にとっては社用車すらほぼ必要ない。不要なスペースを全て有事の際には増援の集合場所に使えるし、仮にそれで自身の手柄が減ったとしても彼は何も構いはしなかった。
 それ故に、彼は有事と判断した時点で社に連絡、手勢の配備を要請しその為のスペースを確保するユーベルコードで場を支配していた。
「さて、参りましょうかぁ」
 その空間の中、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は兵助と向かい合う。
「ええ、どうぞ。どのようにでもなさってください。彼らと違いお飲み物などは差し上げられませんが」
 鷹揚とした兵助の言葉。既に増援が駆けつけるための駐車場として建物全体は解放してある。何なら直接室内に車で乗り付けたって良い。己の役目はそれが成るまでただ待つだけだと、己の栄光も勝利も捨てた男はただ社の為にこの場を保持することだけを考えていた。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『懲戒の加護』をお与え下さいませ」
 ならばとるこるは【豊乳女神の加護・膺劃】を発動、兵助が支配する空間の中に自分の支配域を133枚の面として広げた。
 さらにその領域内に、何本もの鎖を生やし通行困難な状態になるよう絡み合わせていく。
「聞いていませんでしたか? ここは当社の専用地です。不法占拠はご遠慮願いたい」
 その鎖を、あからさまに不快そうにみる兵助。これで何をするつもりかは分からないが、部外者が社の土地を穢した、そのこと自体が彼にとっては我慢ならないことなのだろう。
「さて、この鎖……壊すのは難しそうですね。撤去させていただきます」
 周囲に張られた鎖を掴み、そのまま持ち上げてどかそうとする兵助。破壊する力こそ自ら封じているが、どうせ相手も条件は同じ、攻撃での邪魔は出来まいと判断しての行動だ。
 だがそこにるこるは、兵装『FGS』での重力波をかけて行動を阻害する。体にダメージが行くほどの強い力ではなく、ただ重く動きづらくなるだけの微弱な重力。それが兵助を捕らえ、動きをさらに困難にした。
 それだけではない。『FMS』のバリアを障壁のように兵助の周りに張ってその動く範囲を制限し、さらには彼に手をかけられた鎖を操作、その体に絡みつかせて捕縛にかかる。どれもただ邪魔なだけでダメージは一切ないが、お陰で兵助は鎖を撤去することもままならない状態となっていた。
「……何のつもりです? このまま私が動けずとも、いずれは増援がやってきます。せいぜいが多少の遅延にしかならない」
 冷笑を消し、少しいらだったように兵助は言う。だがるこるの後ろ、開いた出口から逃げ出していく猟兵でない参加者たちの姿を見て彼は得心したようにうなずいた。
「あぁ、なるほど。殊勝な心掛けですね。まあ、こちらとしてもあなた方のような人たちを素材として回収できれば、あのような粗悪品には用はありません。質と量のどちらを優先すべきかは時によって異なりますが……今回は後者を選ぶ時でしょう」
 恐らく力ない一般人を逃がすために時間稼ぎをしているのだろう。そう考えた兵助は表情を戻しあえて戒めを受けた。そこにさらに、符術士たちを切り刻んだ戦輪『FBS』が飛来する。
「黙れ、と? 仕方ありません。それでは静かにしましょう」
 その攻撃を平然と体で受け止め、小さな切創を刻まれていく兵助。どうせここまで囲まれていては避けようもないし、痛覚などもないのだから微細な傷がいくら増えようと不都合はない。符術士たちの戦いでもそうであったが、元々それをやる気がなければ封印系の技は意味をなさないのだ。
 そして、それは彼らと戦ったるこるが誰よりよく分かっていた。
 相手がダメージを封じてくるならダメージを与えない行動に特化すればよい。相手はそうして時間を稼ぐことを目的としているが、なら自分も相手を倒すことではなく、その為の下地作りに専念すればよい。『鎖』の性質を『捕縛専門』とすれば『ダメージを与える行動』で無い以上『駐車場』の補正は有利に働き、双方の条件が同じなら『手数』の差は優位に繋がる。その内に、ただ相手に余計なことをさせないようにすればよい。
(『縁』のある方も居りますし)
 VRの世界で、ともに雪山を楽しんだ猟兵。符術士を追い払うとき一瞬見せたリフトで隣り合った時とは違う表情が、この場に彼女がいる理由を教えてくれた。
 向かい合いながらも己一人の勝利を求めなかったオブリビオンと猟兵。ただ一つ違うのは、その真意を相手に見せたか否か。
 後顧の憂い、乱れ入る邪魔者は全て断った。いざ本懐遂げるべしと、るこるは喜んでこの膠着の中に敵を釘づけるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

岩倉・鈴音
宿敵との邂逅は人生のクロス、だな藤堂平助。おまえは会社の繁栄のため多くの生命を奪ってきた心無い天使だ。みんなの恨みを抱えて消えてゆけ!

アイツの能力向上に合わせて真っ向勝負をする(←またやるのか)当然のことながら白隣奏甲を使用する。アイツが社畜ならワタシは第六のメカ蓄。なりふりかまってはいられない。どうしても勝つ!最後にワタシがたっていられるように勤勉な社畜クンに不幸になってもらおうさ。
いくら速くなろうが動きを見切り、攻撃を耐えながらも鎧無視や切込みで攻撃を仕掛けていく。
ブラック企業に心臓をささげてもメガコーポがなにを報いてくれたというのか!?人生はダブルクロス(裏切り)と思い知るべきだったな。



 藤堂ヨナタン兵助は、恐らくこの集団は対処しきれまいと早い段階で自身のユーベルコードを使い周辺を駐車場化。社から来る増援を待つ体勢に入っていた。だがその試みは、時に守りを抜かれ、あるいは相手側からも遅延をかけられ思うようにはいかないでいた。
 なぜそうなったか。その理由は、彼の前に一人の猟兵が現れた時明らかとなった。
「宿敵との邂逅は人生のクロス、だな藤堂平助」
 岩倉・鈴音(【機械天使十二】Like Toy Soldiers・f09514)。その姿を見た時、最早血も通わぬその顔が一瞬だけ上気したようにも見えた。
「失礼ながら、私の名は『藤堂ヨナタン兵助』。どうかお間違えなきよう」
 ゆっくりと、まるで真実を偽りで強引に上書きするように自分の名を言う兵助。だが、その態度こそがここに彼が為した所業の因果が結実したことを示す何よりの証左だ。
「おまえは会社の繁栄のため多くの生命を奪ってきた心無い天使だ。みんなの恨みを抱えて消えてゆけ!」
 全ては社の繁栄のため。疲れ果てた人々を失われた自然を餌に釣り出して殺害し、オブリビオンにして商品にするという非道を繰り返してきたこの男。その悪が滅ぶべき時が来たのだと機械天使が告げる。それに対し兵助はそれ以上何かを語ろうとはせず、両手を体の前で交差させ大きく息を吸い込んだ。
 何がしかの動力機関と化した肺が外気を循環させ、戦闘のためのエネルギーへと変えていく。その力は血の代わりに心臓なき体に巡り死した細胞さえ活性化させて、全身に戦う力をみなぎらせた。
「やはりそれで来るか。ならばよし!」
 その兵助を、鈴音は真っ向から迎え撃った。またやるのか、などという茶化しは聞こえない。その身に白い光が纏われ、刃を鋭く、装甲を厚く補い力とし、二つの剣を構えて鈴音は兵助と向き合った。
「その身、我が社の為に接収させていただきます」
 地を蹴り、兵助が一気に距離を詰めた。十字に構えた腕を左右に払い、斬撃の如き二連の手刀を繰り出す。鈴音はその軌道を刹那に見切り、滅尽と略奪の二刀を持ってそれぞれに受けた。金属音が響き、腕と剣で二つの十字が二人の間に作られる。すぐにそれを離し二刀を揃えて突き込むが、今度は兵助の方がそれに合わせて両手を振り下ろし軌道を変えた。
「素晴らしい……他を全て諦めても、あなただけは社の為に回収せねばならない!」
 兵助の声に一際力がこもる。上がる体温、滾る血などないはずなのに、その声には確かに熱のような何かが感じられた。それは心臓さえ捧げた社への尽きぬ忠誠か。あるいはその果てにここにある己の運命にか。
 どちらにせよ、今それに従い己の全てをかける兵助。だがその姿勢は、鈴音もまた同じところであった。
「アイツが社畜ならワタシは第六のメカ蓄。なりふりかまってはいられない。どうしても勝つ!」
 再び放たれた手刀による水平切りを、今度は一本の剣で抑えながら己の身に当てて耐える。服が破れ義体さえきしむが、そのダメージと引き換えに得た隙を狙って踏み込み残る剣を兵助の胸に突き立てた。胸の丸穴に吸い込まれた刃が硬質な音を立て、その奥にある動力系義体に傷を刻む。
 至近距離で繰り返される攻防。その速さは徐々に増していき、剣と腕が撃ち合わされる頻度も増えていく。そして同時に相手の体に届く斬撃も増え、互いの体にはいくつもの切創が刻まれていた。
「私は社の為に全てを捧げました。CEOの為に働くことに勝る喜びはなく、それこそが私の存在意義!」
 大声で宣言して一度引き、腕を再び交差させる兵助。そして声と共にはいた息を再び吸い込み、肺に搭載されたジェネレーターを通してエネルギーに変えて全身に巡らせる。
 その動作を、鈴音は剣を構えて待った。白燐の装甲も最早剥がれかけ、あと一撃持つかどうかだろう。それ故に余計なダメージを負うことを恐れ、無理攻めをしないのか。
 そしてたっぷりとエネルギーを蓄えた十字の腕を、兵助は全ての力を込めて振り抜いた。その腕は今までのどの攻撃よりも早く、鋭く、目の前の空間さえ切り裂かんばかりの勢いで兵助の前に十字を描いた。
 そしてそれと同時に、兵助の両腕があらぬ方向へと飛んでいった。
 振り抜かれたのは、兵助の二の腕から後ろのみ。度重なる剣戟の末に、そこから先の腕には深い切創がいくつも刻まれ最早渾身の一撃に耐えられるだけの耐久を残してはいなかったのだ。
 なぜここで。なぜ最も大切な一撃に。そのありえない偶然に兵助の目が見開かれる。
「最後にワタシがたっていられるように勤勉な社畜クンに不幸になってもらおうさ」
 鈴音は確かに全力で兵助と斬り合った。だがそれは相手に斬撃を届かせると同時に、【白燐奏甲】の第三の効果、『不幸な事故』が起こるまでの時間稼ぎでもあったのだ。
 互いが負う宿命故、相手が全力で攻めてくるのは分かっている。ただ座して待っていてはその時が来る前に相手の力の前に切り伏せられよう。それ故に、全身全霊を込めて斬り合った。
 心臓を捧げ義体で動く肉と化したその体に痛覚はない。故に全力で刃を何度も打ち付けられその腕に致命の亀裂が入っても、彼は気づくことができなかった。痛みも、疲労も、全ては肉体の限界を知らせ休ませるための防御機能。皮肉にも、彼がメガコーポに尽くすために死人と変えたその体が彼を裏切ったのだ。
「ブラック企業に心臓をささげてもメガコーポがなにを報いてくれたというのか!? 人生は|ダブルクロス《裏切り》と思い知るべきだったな」
 切り合いの中、両の腕と二つの剣で両者の間に何度となく形作られた|二つの十字《ダブルクロス》。それは一度作られるごとに僅かな傷を腕に刻み、痛みなき肉体を削りながら兵助の運命を暗示していた。如何な不幸が起こるかなどは鈴音自身さえ予測も制御もできない故、この結果はもちろん偶然でしかない。だが捨てたもの全てに足元を掬われ、そして尽くしたものから一切の救いもないなどは余りにも皮肉が効きすぎた結果ではないだろうか。
 兵助の秘技である【超人気功ウルトラデッドエンド】は両手を交差させる構えあってこそ。それを失った以上最早文字通りに打つ手はない。
 既になす術のなくなったその懐に、鈴音が素早く踏み込む。
「これからは永遠の休暇だ。スキーでもロマンスでもあの世で好きに楽しんで来い!」
 最後の言葉を手向けながら、鈴音は一刀を正中線から縦に、もう一刀を胸の穴を真ん中から両断するよう横に、二刀を持って兵助の体を十字に切り裂いた。
 四つに分かれた体が散らばり、別々の方向に転がっていく。
「私、は……社の、為……!」
 最期まで何か尽くせることはないかと四つそれぞれが僅かに藻掻きながら、その全てが埋め込まれた義体と共に爆発し消えていった。
「ンッフッフ♪」
 その姿に鈴音はただいつものように笑い、仕切る者のいなくなった場から立ち去るのであった。

 こうしてメガコーポ運営『自然と触れ合う会』は解散となり、そこで行われていた非道も終わりを見た。主催が呼んだ増援は恐らく掃除屋と変わり、失敗した事業の痕跡を跡形もなく片付けるだろう。
 だが、この世界にメガコーポは無数にあり、そのほとんど全てがこのような悪辣なカルトを運営している。
 休みたい、癒されたい、縋りたい。人が誰しも持つそんな弱みをどこかに預けるには、この世界は余りにも不自然が過ぎるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年12月05日
宿敵 『藤堂ヨナタン兵助』 を撃破!


挿絵イラスト