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一人でもダブルス!~その秘訣は分身~

#アスリートアース #テニス #Under-Free #Golden-Age

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●今日からあなたもテニスの猟兵様!
「テニスプレイヤーとは一人でもダブルスが出来てしかるものだ」

 ――なんて?
 集まった複数の猟兵からあがった疑問の声の意味が分からないとでも言いたげに、天庭・長光(テニスのヤドリガミ様・f38574)は首を傾げた。

「……? テニスプレイヤーとは一人でもダブルスが出来てしかるものだ」

 ――いや聞こえなかったわけじゃないし。
 むしろあんなトンチキワードは聞かなかったことにしたいが、おそらくアスリートアースの危機であろう事件を見逃すわけにはいかない。聞かなかったことにしたいけど。
 なお、長光は周囲の動揺など気にもせず淡々と話を続けていく。
 テニスのことになるとどうにも周りが見えなくなる男なのだ。

「今回アスリートアースで起きているのは、とあるテニストーナメントに乗り込んできたダークリーガーが相手チームを次々とダーク化させているという事件なのだが……このダークリーガーは『分身能力』を使って複数の試合に同時進行で参加している」

 長光曰く、元々は普通にテニスを愛する『草津・アサヒ』と言う名の少女が勝利を渇望するあまり暗黒面に堕ちてしまった姿だという。
 彼女は残像や錯覚などではない、本当の『分身』を作り出して数多の試合に参加し、数多の勝利を得ている。
 つまりその数だけダーク化されてしまう選手もいるということだ。
 このまま彼女が優勝という最上級の勝利を手にしてしまえば、後に残るのは膨大な数のダーク化選手たちであろうことは想像に難くない。

「そこで、ここに集まってもらった皆にはダーク化を免れているチーム『Under-Free』に選手として加わり、トーナメントを勝ち進んでもらいたい」

 『Under-Free』というチームはその名の通り年齢制限なく、老若男女分け隔てなくテニスを楽しもう! というのがモットーのテニスチームだ。
 猟兵の飛び入り参加も快く受け入れてくれることだろう。

「対する草津・アサヒが現在所属しているのは『Golden-Age』と言う名の精鋭チームだ。おそらくここまでくればアサヒ自身が分身を駆使して一人でダブルスを仕掛けてくることだろう」

 ――ああ、それで最初のあの発言に繋がるのか。
 ようやく猟兵たちは納得した。あの発言はただのトンチキ発言ではなかったのだ。
 ……。
 …………。
 ………………。
 ――いや、おかしいな!? あれはどう考えても『テニスプレイヤー』と名のつくものは全員分身出来るみたいな言い方だったぞ!?
 一瞬で無に帰す納得感。
 ざわつく猟兵たちを相手に、長光はグリモアキューブを展開しながら再び首を傾げた。

「……? テニスプレイヤーとはそういうものだろう? それはさておき、よろしく頼む」

 ――お前が知ってるのって本当に『テニス』?
 誰かが呈した疑問の言葉は、グリモアの光と共にこの場から消えていった。


春告鳥咲良
 OPをご覧いただきましてありがとうございます。
 MSの春告鳥咲良と申します。
 こういうトンチキテニスシナリオが書きたくてマスターになったところがあります。

 さて、今回はOPで説明した通り、分身テニスを駆使するダークリーガーと戦っていただきます。
 ユーベルコードの使用も可能です。テニスですので。
 コート外にふっ飛ばしてKO勝ちとかも可能です。テニスですので。
 アスリートアースのテニスですので、なんでもありです。自由にプレイングをお書きください。

●第1章・集団戦『燃焼系アスリート』
 ボスの手によってダーク化された選手とのダブルス戦です。
 ラリー中に頻繁に交代を行うので、試合に勝てば全員をダーク化から救い出せます。
 もちろんこちらもダブルス戦ですが、プレイングはソロで送っていただいても大丈夫です。誰かとペアを組んでいることにして描写いたします。

●第2章・集団戦『洗脳テニスプレイヤー』
 上記とは別のチームとのダブルス戦ですが、やることは変わりません。
 きっちり倒しておきましょう。

●第3章・ボス戦『草津・アカネ』
 決勝戦。すなわちボス戦です。
 OPで語った通り、草津・アカネは記載ユーベルコードの他に分身能力を有しており、それを使用して一人でダブルスを仕掛けてきます。
 分身出来るユーベルコードをお持ちの方でしたら、同じようなことをしてもかまいません。
 それ以外のルールは先程までの試合と同じです。

 どれか1章だけの参加、途中参加は大歓迎です!
 皆さまのご参加お待ちしております。
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第1章 集団戦 『燃焼系アスリート』

POW   :    できますできます、あなたならできますッ!
【熱い視線】が命中した敵に、「【ユーベルコードを封印して競技に熱中したい】」という激しい衝動を付与する。
SPD   :    もっと熱くなりましょうよッ!
【見せれば見せるほど熱く激るアスリート魂】を見せた対象全員に「【もっと熱くなりましょうよッ!】」と命令する。見せている間、命令を破った対象は【耐久力】が半減する。
WIZ   :    どうしてそこで諦めるんですかそこでッ?!
対象への質問と共に、【拳や口、または競技に使用している道具】から【レベル×1体の火の玉マスコット】を召喚する。満足な答えを得るまで、レベル×1体の火の玉マスコットは対象を【殴打、および熱疲労の状態異常の付与】で攻撃する。

イラスト:kae

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シン・クレスケンス(サポート)
◆人物像
落ち着いた雰囲気を持つ穏やかな青年。窮地でも動じず冷静な状況判断で切り抜ける

◆スタンス
エージェントとして、猟兵として、人々の平穏を護る為戦うのが使命
悪しき相手→容赦無し
善良だが、戦いが避けられない相手→心を痛めるが、非情に徹する
回避可能→回避に注力

◆戦闘
詠唱銃での銃撃(【破魔】の魔力を込めた銀の銃弾)や魔術による攻撃を得意としている

◆UDC『ツキ』
シンに取り憑いているUDC。闇色の狼の姿をしている
追跡が得意(魔力を嗅ぎ分けている)で、戦闘は鋭い牙や爪を用いて行う

◆口調
・シン→使役の名は呼び捨て。丁寧で穏やかな話し方
・ツキ
俺/お前、呼び捨て。
~だぜ、~だろ、~じゃないか?等男性的な話し方


轟木・黒夢(サポート)
『私の出番?それじゃ全力で行くわよ。』
 強化人間のヴィジランテ×バトルゲーマー、19歳の女です。
 普段の口調は「素っ気ない(私、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、偉い人には「それなりに丁寧(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格はクールで、あまり感情の起伏は無いです。
戦闘では、格闘技メインで戦い、籠手状の武器を使う事が多いです。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●猟兵流テニス、開幕!

(「負けんなよ、テニスってのは勝ったら肉が喰えるらしいからな」)
「……ううん……随分偏った情報ですね」

 自身に取り憑いているUDC『ツキ』の言葉に苦笑を浮かべつつ、シン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)はテニスラケットを握ってその感触を確かめていた。
 今回の戦場はテニスコート。『ツキ』にはコート脇のベンチの上で観戦してもらうしかなかった。もちろん、梟姿の精霊である『ノクス』も同様である。
 しかしこの世界のテニスはダブルスが基本。
 となればパートナーが必要である。

「確か焼肉が食べられるんだったかしら? 良いわね、勝利の後の焼肉」

 そのパートナーたる轟木・黒夢(モノクローム・f18038)もまた自らのテニスラケットを手にしてその感触を確かめていた。
 このフィールドにおいてラケットは武器といっても差し支えない。それを自身が扱いやすいように確認することはとても大事だと二人共猟兵としての経験から悟っている。
 確認を終え、コート内へ歩を進めながらシンは改めて挨拶を始めた。

「今日はよろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ」

 ちなみに、男女混合のダブルスのことはミクスドとも呼ぶ。
 本来UDCアースなどでは別のトーナメントが組まれるものだが、ここはアスリートアース。そんなルールはなく、『Golden-Age』チームは男同士のペアだった。

「一応僕はルールブックを読んできましたが、黒夢さんはテニスの御経験は?」
「さすがにないわ。でも相手をKOしても勝ちみたいだし、普段通りにやるつもりよ」
「出来れば穏便にいきたいところですが……そうも言ってられないようですね」

 避けられる戦いは避けたいタイプのシンだったが、相手側のコートから突き刺さる殺気に覚悟を決める。
 元は単なる善良なテニスプレイヤーだったであろう男が力強いサーブを打ってきた。
 打球は空気を切り裂きながらこちら側のコートに突き刺さり、ベースラインより後ろに居たシンを目掛けてバウンドする。

「――くっ!」

 明らかに|シンの身体《・・・・・》を狙った打球だ。どこかに当たれば負傷は必須だろう。
 しかしこちらもただで喰らうわけにはいかない。
 シンは第六感でボールの跳ねる角度を察知し、身体を捻るようにしてボールを打ち返した。
 真芯を捕らえたボールは真っ直ぐ相手側のコートへ戻っていく。

「へえ、あのサーブを返すとはな」
「舐めてると痛い目みるわよ」
「だが所詮は素人。どこまでもつかな!」

 ボールが打ち返され、今度はそれを前衛の黒夢が返す。
 そしてそれをまた向こうの前衛が逆サイドに打ち返し、シンがそれを拾う。
 傍目には上手くラリーが続いているが、試合の主導権は『Golden-Age』側が握っているのように見受けられた。
 そもそもテニスはサーブ側が主導権を握りやすいものだが、この場合のそれは単純にテニスに費やしてきた月日の差だろう。
 シンと黒夢が素人なのは確かだ。
 確か、だが――。

「黒夢さん! お願いします!」

 後衛のシンがボールを山なりに――いわゆるロブで打ち返す。
 打球は悠々と黒夢の頭上を越え、重力に従って相手コートへ落ちる。

「甘々の絶好球だな!! おらぁ!!」

 いや、正確には落ちる前にスマッシュで叩き落とされた。
 力強いインパクト音が響くと共に、剛速球が黒夢の顔面へと迫る。

「いいえ、それは私の絶好球よ」

 黒夢の姿が一瞬消えた――ように相手の男には見えた。
 実は男が見ていたのは黒夢の残像。
 本物の黒夢はとっくに打球の軌道を見切っており、しっかりとリターンの態勢に入っている。
 そして。

「はぁっ!」

 負けず劣らない剛速球が前衛の男のラケットのガットを突き破り、そのままボディへと突き刺さった。

「ぐふぇー!?」

 情けない声と共にコートに転がった男はしばらくの間ピクピクと痙攣していたかと思うと、そのうちにぐったりと動かなくなった。
 強化人間たる黒夢の全力の一撃だ。それを喰らってしまえば気絶してしまうのもやむない。むしろ気絶で済んだだけ幸せ者だ。

「ありがとう、良いロブだったわ」
「いえいえ。こちらこそ決めてくださってありがとうございます」

 あの瞬間――シンがロブをあげた瞬間からこの流れは決まっていた。
 相手がスマッシュで黒夢自身を狙ってくることも。残像に気がつかないことも。そしてこの結末も。
 なぜならシンも黒夢もテニス自体は素人だが、戦いにおいては超一流なのだ。
 テニスコートは戦場。そのことを理解していた二人の作戦勝ちである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アニカ・エドフェルト
なるほど、テニスプレイヤーは、全員、分身ができるもの、なのですね。
これは、わたしも、習得しないと、ですね。

とはいえ、わたしはまだ、分身できないので、目の前の相手から、地道に、進んで、行きますね。
まず一戦…よろしく、お願いしますっ
(挨拶大事。握手出来るかはともかく)

(何度かラリーをやりとりし)
…すごい、熱血な方、ですね。わたしも、どんどん、熱くなって、いっちゃいます。
あなたも、もっともっと、熱くなれるん、ですよね?
どっちが、先に限界に達するかの、勝負、です。〈根性〉なら、負けませんっ
(《模倣天使》を使って相手を更に熱くさせ、どんどんとラリーの速度が上がっていく。決着方法お任せ、アドリブ歓迎)



●More than Limit

「なるほど、テニスプレイヤーは、全員、分身ができるもの、なのですね。これは、わたしも、習得しないと、ですね」

 アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)はそう小さく呟くと、よし、と気合を入れてラケットのグリップをぎゅっと握った。
 実際のところ分身なんか出来なくてもテニスは出来る。アニカとペアを組むことになった『Under-Free』の選手だってそんなことはできないし、今回の対戦相手たるダーク化選手もそんな能力は持っていないだろう。
 だが、幼い彼女はあの妄言を信じてしまったらしい。責任を取れ|グリモア猟兵《天庭長光》。

「とはいえ、わたしはまだ、分身できないので、目の前の相手から、地道に、進んで、行きますね」

 誰もその勘違いを正すことが出来ないまま、とことことアニカはコートの中心へと歩み出た。
 対戦相手……元は善良なテニスプレイヤーであったであろう選手の身体が燃えている。
 そう、燃えている。
 元々が男だったのか女だったのかは分からないが、とにかくその肉体は熱く熱く燃え盛っていた。

「まず一戦…よろしく、お願いしますっ」
「よろしくッ!! でも勝つのは私ですがッ!!」

 声よりも先に熱気が届いたのではないか、と錯覚してしまうほど燃え盛りながら、対戦相手『燃焼系アスリート』は言った。
 一瞬ダーク化とは? と思ってしまいそうなほどの熱血さだったが、その瞳はこちらのことをまるで見ていない。ただ単に勝利への道にある石ころとでも思っているかのようだ。
 勝利への熱に呑まれてしまったのだろう。
 早く元に戻してあげなくては、とアニカは心の中で覚悟を決めた。

「フィッチ?」
「えっと、スムースで、お願いします」

 サーブ権を決めるゲーム――ラケットのヘッドを回して倒れた時、グリップの底にあるマークが|スムース《表》と|ラフ《裏》のどちらかを当てるというもの――をする。
 カラカラと音を鳴らして倒れたラケットは表側。アニカがサーブ権を貰うこととなった。

「では、いきます、ねっ!」

 小さな身体でボールをあげ、パコンとサーブを相手コートへ打ち込む。
 音のわりに鋭いサーブはさすがテニスプレイヤーと言うべきか。
 燃焼系アスリートも愉快そうに笑って打ち返す。

「ハハハッ! 良いですね! 【もっと熱くなりましょうよッ!】」

 途端、コート上の空間が熱をもったように感じられた。
 最初は勘違いかとアニカも思ったが、何度もラリーを続けていくうちにそうではないと悟る。

(…すごい、熱血な方、ですね。わたしも、どんどん、熱くなって、いっちゃいます)

 これが向こうのユーベルコードの能力なのだろう。
 自然とアニカの中のアスリート魂が燃え上がり、打球を返す腕に力が入ってしまう。
 このままではこちらだけが余計に体力を消費していってしまうだろう。
 ならば――。

「あなたも、もっともっと、熱くなれるん、ですよね?」

 ユーベルコード【|模倣天使《イミテーションエンジェル》】。
 相手のユーベルコードをそっくりそのまま返すカウンター。
 本来は相手の技を自分の体で受け止める必要がある技だが、今回はラケットが自分の腕のようなものだと言っていいだろう。
 現に、相手はアニカの挑発じみた言葉に乗せられていた。

「当然でしょうッ! まだまだいけますよッッ!!」
「そうですよね。だから、どっちが、先に限界に達するかの、勝負、です。〈根性〉なら、負けませんっ!」
「上等ッ!!」

 互いに熱くなる二人。速度を増す打球。
 永遠とも思えるラリーの決着は――。

「も、燃え尽きましたぁ……!」

 燃焼系アスリートの鎮火により幕を閉じた。
 合えて真っ向勝負に挑んだアニカの根性が掴んだ勝利である。

 ちなみにこれは余談だが、二人が打ち合っていたボールはなんか焦げていたらしい。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロス・フレイミー
【似た者同士】アドリブ歓迎
スポーツですか。生憎剣道しか嗜んだことはありませんが、まぁなんとかなるでしょう。
それより、ダブルスですか…おや?またお会いしましたね。折角ですしペアを組んでトーナメント出ますか?

俺が前衛となりましょう。
ラリーを返すのは【ダッシュ】と【受け流し】を活かして続けられますかね。スマッシュは【なぎ払い】の力を駆使して攻めていきます。
(敵のUC使用後)
……へぇ?案外やんじゃねぇか。え?
そっちがその気なら本気出してやるよ。
(【リミッター解除】して【指定UC】発動してギアを上げていく)

(敵に対し)勝負仕掛けたのはそっちだからな?泣き言今更言うのはナシだぜ?


終夜・日明
【似た者同士】アドリブ歓迎
(説明を聞いて)……まあ、テニスですもんね(考えるのをやめた顔)
おや、貴方は……そうですね、せっかくですから組みましょう。
僕もあまり経験はないですが何とかします。

後衛で。
【なぎ払い】【盾受け】の要領でサーブを返しつつ【情報収集】、状況を冷静に分……クロスさん?
完全に熱くなってますね……
ここは彼の勢いに合わせますか。
開幕のサーブにて【指定UC】を発動。
『幻影装置』も起動して無数のテニスボールが【レーザー射撃】と共に相手のコードに飛び込ませ【制圧射撃】することで点を頂きますよ。

え?真のテニスプレイヤーはこれらも見極めて打ち返すとお伺いしましたが……(すっとぼけ)



●やっぱ男はダブルスでしょう!

「……まあ、テニスですもんね……」

 終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)はすっかり考えるのを止めていた。
 テニス。テニスとは一体何なのか。それを考え始めるとキリがない。
 そんな彼の後ろから歩いてくるもう一人の男性の影が伸びる。

「スポーツですか。生憎剣道しか嗜んだことはありませんが、まぁなんとかなるでしょう」

 その正体はクロス・フレイミー(狭間の剣士・f31508)であった。
 ラケットをくるくると回転させて弄びながら、自身に満ち溢れたことを口にしている。
 しかし今回に限っては一人ではどうにもならないのだ。

「それより、ダブルスですか……おや?」
「おや、貴方は……」

 二人の位置が直線上に並んだ時、互いが互いの存在に気がついた。
 過去の戦いにおいて連携したこともある二人であったがまさかこんなところで再会するとは微塵も思っておらず、思わず顔を見合わせて止まってしまう。
 だが、これはチャンスではないか?
 先にその考えに至ったクロスはすっと片手を差し出した。

「またお会いしましたね。折角ですしペアを組んでトーナメントに出ますか?」
「……そうですね、せっかくですから組みましょう。僕もあまり経験はないですが何とかします」

 その手を握り返し、日明もそれを了承する。
 今ここに新たな一つのペアが生まれた瞬間だった。

「俺が前衛となりましょう」
「では僕は後衛で」

 お互いにポジションを確認しつつコートに入る。
 対戦相手はやはり燃え盛るダーク化した選手が二名。
 ゲームの結果サーブ権を向こうに渡し、二人はそれぞれ配置についた。

「はあぁっ!!」

 雄叫びと共に鋭いサーブが日明に迫りくる。

(ここはまず情報収集といきますか)

 フォアハンドで返しながら相手方の動きを探るため、視線をボールから対戦相手へと移す。
 どうやら彼のリターンは前衛の相手が返すらしい。

「そこ、ガラ空きですよっ!」

 コートの空いたスペースにスマッシュが放たれる。
 それと同時にクロスがダッシュで踏み込み、勢いを殺すようにまたそれをリターンした。
 二人共テニスは未経験だが、それ以上に猟兵としての経験が長い。
 自分たちの持つスキルをどう活かせば試合が続けられるかはすでに把握済みだった。
 そんな二人のプレイを見た燃焼系アスリートの口元がにいっと吊り上がる。

「良いですねっ! お互い【もっと熱くなりましょうよッ!】」

 途端、コート内の熱気が勢いを増す。
 それに比例するかのように向こうが返すボールの速度が上がり、センターコートに突き刺さった。
 0-15。相手方のリードである。
 しかし日明は動揺することもなく、静かに額に滲む汗を拭った。

「向こうも本気を出してきましたね。ここは状況を冷静に分……クロスさん?」
「……へぇ?」

 クロスの様子が先程までとはまるで違う。
 先程までの冷静さはどこへやら、ぐつぐつと煮えたぎる闘争心がそのまま顔に浮かび上がっている。
 ギラついた視線が相手のコートを睨んでいた。

「案外やんじゃねぇか。え?そっちがその気なら本気出してやるよ!」

 ダーク化された選手のユーベルコードにあてられたのか、それとも闘争本能が刺激されたのか、彼の纏う雰囲気が完全に切り替わる。

「どっからでもかかって来いよ!こっちはいつだって準備できてんだ!」

【精神解放】|混ざり者の狂騒曲《エレティック・カプリース》】
 ユーベルコードを発動した彼のプレイスタイルは荒々しいものへと変化し、こちらに飛んでくるボールを全て拾いまくっていた。
 そんな様子を見て、日明は小さく息を吐く。

「完全に熱くなってますね……ここは彼の勢いに合わせますか」

 いつの間にか逆転し、ゲーム1-0。
 次のゲームはクロス・日明ペアのサービスゲームとなる。
 とん、とん、と何度かボールをコートで弾ませてから、日明は自分が狙うべき相手コートを睨みつけた。

「……ターゲット補足、ビットパージ。オールレンジ攻撃開始」

 詠唱と共にユーベルコード【|星幽の雷驟雨《シュトゥルム・アストラルブリッツ》】が発動され、数多の小型戦闘用脳波制御による無線式遠隔操作端末が召喚される。
 突然の光景に、相手ペアは口をあんぐりと開けて固まってしまった。

「「へ? え?」」
「サービスエース、取らせていただきます」

 困惑する相手を差し置き、日明の鋭いサーブが飛ぶ。
 それと同時に腕輪型の『幻影装置』が作動。無限とも呼べる打球の幻影が、レーザー射撃と共に相手のコートへと発射された。

「「きゃーっ!?!?」」

 テニスにおいてまさかの展開。相手は怯え惑い、その場から逃げ出したりしゃがみ込んだりしてしまった。
 その間にも当然本物のボールはコートに突き刺さり、ゲームカウント15-0。

「な、な、なんですか今のはーっ!!」
「え?真のテニスプレイヤーはこれらも見極めて打ち返すとお伺いしましたが……」

 抗議を受けてもなお涼しい顔をしてみせる日明。
 彼の言う『真のテニスプレイヤー』が誰も彼もが平気で分身するような人種であれば、まあ、もしかしたらもしかするかもしれない。
 しかしそちら側ではない燃焼系アスリートペアはただただ怯えるだけだ。

「勝負仕掛けたのはそっちだからな?泣き言今更言うのはナシだぜ?」
「「ひ、ひええ……」」

 さらに、楽しそうに口端を吊り上げたクロスの追い打ち。
 相手はもう戦意喪失。満身創痍と言っても良い。

 当然この後の試合の結果は、クロス・日明ペアの勝利に終わった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ラップトップ・アイヴァー
懐かしいですわ!
美希と一緒のテニスごっこ…!

《平穏で子供らしくいっぱい遊び回って。
身体の弱いみきは追いつけなかったけど。
お姉ちゃん、みきを労わりながら遊んでくれた。
蘇ってくるよ》

ええ!
これらは思い出の品ですわ!

今着ているユニフォームも…
二振りのラケットも…

《うん…》

虹色の光の珠も!

《センセーこのバカ姉記憶改竄してまーす》

えー!?
テニスの規格は満たしてますのに!

《寧ろなんで満たしてんの…??
ほら、向こうもなんか言ってるよ。
ただでさえテニス用のUC無いのに》

え〜ん…!

《嘘泣き、意味無いよ。
どうせお姉ちゃんは頭で考えるの苦手だからテニスするとか抜かしながら、黒のアンダーウェアに赤と紫のドレスっていう蒼の電子の線走る勝負服ムーンレールとティアラのシャインスターで着飾った蒼の瞳のスポーツ選手に変身してもおかしくないの》

……力を振り絞って……

《本当にやんなくていいのに……
テニスの服は?》

Set.
あなた方を吹き飛ばす程の変身、見せてあげますわ。

さあ、テニスをしましょう!

《…うん、勝手にやっててね》



●記憶の底のテニス(と思われるもの)

「懐かしいですわ! 美希と一緒のテニスごっこ……!」

 姉であるシエル・ラヴァロの体に妹の三上・美希の心を宿したラップトップ・アイヴァー(動く姫君・f37972)はオレンジ色の瞳をキラキラと輝かせながらそう言った。
 内側に居る美希もその言葉に同意を返す。

『平穏で子供らしくいっぱい遊び回って。身体の弱いみきは追いつけなかったけど。お姉ちゃん、みきを労わりながら遊んでくれた。蘇ってくるよ』
「ええ! これらは思い出の品ですわ!」

 今身に着けている白地に赤のラインのユニフォーム、『アップライター』。
 使い古された紅と紫の二振りのラケット、『シスターズ』。
 昔を振り返りながら語るシエルに、『うん、うん』と美希も相槌を打つ。
 姉妹の平和な思い出語り。
 ……の、ハズだったのだが。

「虹色の光の珠も!」
『センセーこのバカ姉記憶改竄してまーす』

 スコートのポケットから取り出された幻惑的な光を放つボールにはさすがのツッコミが入った。
 ただ当の本人であるシエルだけは予想外だったらしく、口元に手を当てて思いきり驚いている。

「えー!? テニスの規格は満たしてますのに!」
『寧ろなんで満たしてんの…??』

 美希の疑問ももっともだが、ここはアスリートアース。
 虹色に輝く光のテニスボールを使ってはならない、というルールは載っていないのである。一応。
 とはいえ規格的にはギリギリなのもまた事実。
 現に相手コートからはなにやらブーブーと文句が聞こえてきている。

『ほら、向こうもなんか言ってるよ。ただでさえテニス用のUC無いのに』
「え〜ん……!」
『嘘泣き、意味無いよ』

 元々は双子の姉妹ということもあり、そのくらいのことはお見通しだった。
 しかし指摘されてもシエルは「えーん、えーん」と泣き真似を繰り返している。
 そんな姉の様子に美希は溜息を吐きたくなった。

『どうせお姉ちゃんは頭で考えるの苦手だからテニスするとか抜かしながら、黒のアンダーウェアに赤と紫のドレスっていう蒼の電子の線走る勝負服ムーンレールとティアラのシャインスターで着飾った蒼の瞳のスポーツ選手に変身してもおかしくないの』

 それは美希にとっては姉を諫めるための発言だったのかもしれない。
 しかしシエルはむしろ泣き真似を止めて、その手があったか!と言わんばかりに両手をパンと打ち鳴らしてみせた。
 その目は再度キラキラと輝いている。

「では……力を振り絞って……」
『本当にやんなくていいのに……テニスの服は?』
「On our marks……Set!! あなた方を吹き飛ばす程の変身、見せてあげますわ!!」

 美希の疑問が届く前に、シエルはユーベルコード【|Undead +Moonlit《アンデッド・ムーンリット》】を発動させていた。
 カッ! と辺りが眩いまでの閃光に包まれる。
 そして次の瞬間、シエルは先程の言の通り、黒のアンダーウェアに赤と紫のドレス。蒼の電子の線が月光のように走る真の姿の勝負服『ムーンレール』を纏った美しい姫君へと変身していた。
  キラキラと閃光の名残を残しながら、パサッと赤髪を搔き上げてみせる。

「さあ、テニスをしましょう!」
『……うん、勝手にやっててね』

 若干ズレた方向にノリノリの姉に対し、妹はもう何も言う気力が起きなかった。

 そこからというもの。
 シエルのプレイングは美しく、それでいて苛烈で、次から次へとポイントを決めていた。
 サーブを打てばサービスエース。
 リターンを返せばリターンエース。
 燃焼系アスリートたちは手も足も出ず、華麗なる姫君のプレイによって陣形も作戦も崩されていく。

「ああ、やっぱりテニスって楽しいですわ!」
『……うん、それには同意』

 会場中が呆気に取られる中、|ラップトップ・アイヴァー《シエルと美希》だけがとても楽しそうに、とても満足そうに蒼穹を舞っていた。

●一方その頃

「ガハハ! なんだ、なっさけないの!! 素人なんかに負けちゃってさ!!」

 テニスに挑む猟兵たちを。
 あるいは、彼らによって次々倒されていくダーク化選手たちを。
 “彼女”は観戦席の一番上から笑い飛ばしていた。

「やっぱアタシが出ないとダメかなぁ~? まあいいや、もうしばらく様子を見ようっと」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『洗脳テニスプレイヤー』

POW   :    死神の瞳
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【死神の幻影】が出現してそれを180秒封じる。
SPD   :    一人ダブルス
【もうひとりの自分】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    デッドエンドデスティニー
攻撃が命中した対象に【ターゲットマーク】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【どこからか高速で飛来する硬式テニスボール】による追加攻撃を与え続ける。

イラスト:鴇田ケイ

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

終夜・日明
【似た者同士】アドリブ歓迎
下手に手を抜く方が相手に取って失礼ですし、
多少熱くなるぐらい良いんじゃないですか?個人的にはですが。

とはいえ、生半可なゴリ押しで通用する程甘くはないでしょう。
次の試合までの時間に敵の【情報収集】を行い分析しておきますか。
【指定UC】を使用。
アスリートアースではスポーツ即ち戦闘そのもの、
今までの試合記録を振り返れば対処は容易なハズです。
あくまでテニスのルールからは離れてないでしょうし。

クロスさんが動くなら僕は静を意識しましょう。
動きの特徴を【見切り】、【カウンター】で相手の苦手な位置へ緩くサーブを返す。
緩急を極端にすることで相手の体力切れを狙います。(【継続ダメージ】)


クロス・フレイミー
【似た者同士】アドリブ歓迎
先程の試合は挑発されたとはいえ大人気ないことをしてしまいました。
とはいえなんでもありとの事ですし、誘ったからには相応の覚悟があったんでしょう。
さて次の御相手は……俗に言う“闇堕ち”ですか。

ではまた前衛で行きましょう。
先程と同じく【ダッシュ】と【受け流し】を活かしてラリーを行います。
いい感じのショットが打てそうなタイミングで、ラケットに【魔力溜め】をおこなって【指定UC】でショットを打ちつつ、分身に雷の【属性攻撃】を解き放ちましょう。

え?魔法使うのは卑怯ですって?よく分からない技術で分身するあなたも大概だとは思いますが?(煽り)



●データは嘘をつかない

「先程の試合は挑発されたとはいえ大人げないことをしてしまいました」
「下手に手を抜く方が相手に取って失礼ですし、多少熱くなるぐらい良いんじゃないですか? 個人的にはですが」
「そうですね。なんでもありとの事ですし、誘ったからには相応の覚悟があったんでしょう」

 次の試合までの合間、クロス・フレイミー(狭間の剣士・f31508)と終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)の両名はベンチに腰掛けながらスポーツドリンクを飲みつつクールダウンをしていた。
 だがただ休憩をしている訳ではない。
 二人の視線の先では、おそらく次の対戦相手になるであろうダーク化選手たちが凄惨な試合を繰り広げていた。
 赤く染まるコート。血に倒れ伏す選手。
 ダーク化した選手――洗脳テニスプレイヤーのプレイスタイルはあまりにも暴力的であった。
 そのまま相手の棄権により勝利を収める姿を見ながらクロスが呟く。

「さて次の御相手は……俗に言う“闇堕ち”ですか。先程とは違った意味で力押しなテニスですね」
「とはいえ、生半可なゴリ押しで通用する程甘くはないでしょう」

 日明はそう答えると、自身のヘッドガジェットを操作して先程の試合の記録をデータベースに保存した。
 戦いにおいて大事なのは相手の情報を集めること。そしてそれを元に対策を練ること。
 スポーツでもそれは変わらないと日明は思う。
 なによりアスリートアースにおいて、スポーツとは戦いそのものなのだから。

(基礎あってこその応用、完全なオリジナルの戦術もまた存在しない――故に突破口は必ずある)

 ユーベルコード・|叡智の記憶-戦-《スフィリア・ソフィア・アテナ》
 巨大なデータベースに保存された対戦相手のプレイを振り返りながら、彼らの得意とする戦術や苦手とするコースなどを抜き出して分析していく。
 その間クロスは何も言わずにペットボトルを揺らしながら待っていた。これは彼の仕事だと言外に示しているように。
 その時間は目の前のコートで別の試合が始まる頃まで続いた。
 ふう、と息を吐いた日明に反応してクロスが視線を向ける。

「終わりましたか?」
「はい。まずは次の試合があるコートに向かいましょう。傾向と対策は道すがらお教えしますので」
「それは楽しみですね。では、行きましょうか」

 クロスはそう言って、残っていたスポーツドリンクを飲み干した。

●テニスとはそういうもの

 クロス・日明ペアの対戦相手は四人だった。
 何を言っているか分からないかもしれないが、ようするに対戦相手が分身して四人になったのだ。いや、やっぱり何を言っているのか分からないかもしれないが。
 あながち『テニスプレイヤーは分身してしかるもの』というのも間違いではなかったのかもしれない。

(とはいえ、あくまでテニスのルールからは離れてないでしょう)

 先程の試合と同じく後衛に立つ日明は攻撃をクロスに任せ、広い視点で相手の動きを分析結果と照らし合わせていた。

「吹き飛びなぁ!」

 相手の鋭いサーブがバウンドと同時に日明の顔面目掛けて跳ねる。
 しかしそれはもう映像の中で何度も見た動きだ。
 日明は冷静にバックステップで軌道を躱し、分析通りに相手の苦手とするコートギリギリを狙ってボールを打つ。

「くっ!」
「随分甘い球ですね」

 緩く浮いて返ってくるボールは前衛のクロスがボレーで打ち返す。もちろんこれもコート端を狙った一撃だ。
 しかし相手は四人である以上カバー範囲も広く、ラリーは途切れる様子を見せない。

(キリがありませんね……おそらく次が攻め時でしょう)

 内心でそう呟いたクロスは、手にしていたラケットへ魔力を送り始めた。

「これならどうだ! くらえっ!」

 その間に相手の打ったボールがクロスの顔面目掛けて跳んでくる。
 だが、しかし――。

「……覚悟はできていますよね?」

 クロスが動く方が早かった。
 否、速かった。
 まるで瞬間移動のように攻撃を躱したクロスの持つラケットがバチバチと火花を放つ。

「ハッ!」

 ラケットを振り抜くと同時に黒い雷がコートを走った。
 ユーベルコード・【妖刀術】黒光雷轟。
 雷のような速さと攻撃を両立したその技は相手のコートを蹂躙する。

「な、なにぃぃぃ!?」
「ぐわぁぁぁ!?」

 一瞬の出来事。
 黒い龍に飲み込まれるように分身は消え、残ったプレイヤーもその勢いに気圧されるように吹き飛んだ。
 しばらくの間呆然としていた洗脳テニスプレイヤーたちであったが、審判の「15-0」の声で正気に返り、こめかみをピクピクさせながらこちらへとズカズカ歩いてくる。

「て、てめぇ! なにすんだ!」
「魔法は卑怯だろうが!!」
「え? 魔法使うのは卑怯ですって? よく分からない技術で分身するあなたも大概だとは思いますが?」
「そうですよ。それにルールブックには『魔法を使ってはいけない』なんて書いてありませんでしたしね」

 煽るクロスに乗っかって日明も挑発する。
 この世界のテニスルールには分身してはいけないというルールが存在しないのと同じように、魔法を使ってはいけないというルールも存在しないのだ。
 どっかの誰かさんに言わせればおそらく『テニスプレイヤーなら雷を操ったり炎を操ったりしてしかるものだ』とかなんとか言うかもしれない。
 それが本当にテニスなのかはやっぱり怪しいが――。

「仕方ないですよね、テニスですから」
「仕方ないですよね、テニスですから」

 似た者同士は示し合わせたわけでもなく、ごく自然に声を揃えてそう言った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラップトップ・アイヴァー
《…なんだかんだ、楽しいな。
お姉ちゃんのテニス、やっぱりすごくいい感じ。
こっちが本業じゃないけれど…

このままずっと、お月様みたいなお姉ちゃんとこうしてテニス、》

あー楽しかった!(UC解除)

《ひっぱたいていい?》

理不尽ですわ!?
私はただテニスのついでにちょっとそこら辺走りたくなっただけですのに!

《テニス中にトライアスロンしようとするのやめてもらえます??
…ほんとにこのバカ姉は話聞かないんだから。

ちょっと貸して》

そんな、私は真面目にテニs

《Revolution.
お姉ちゃんがサイト4を取り出そうとするので、黒い髪に紫の瞳のお姫様…三上・美希に変身してそれを阻止します。

…スフィア。
使ってみる価値はあるか。

Twinkle!
UCを発動、星々と共にスフィアをうまく使ってテニスするの!
どんな形でもいい、封じる暇すら与えないほどの星の欠片と、敵のラケットに届く直前の異常な減速、そしてそこからの加速で翻弄出来ればいい。

でも封じられたら、流石にリヴリーでだまし討ちするしかないか。
あくまでそれは最後の手段なの》


アニカ・エドフェルト
コートが、血まみれになるん、ですか。
なら、遠慮する必要は、ないです、ね。
さっきは、わたしも、燃え尽きる寸前、でしたし、今度は、少し落ち着いて…。

何度かのラリーの後、《庭球天使》で、《舞踏天使》、ですっ
…まぁ、いい感じに、ボールが、蹴ってくれるん、でしょう。たぶん。
っとと、打ち返して、きましたね。
じゃあ、おまけで、《翻弄天使》も、乗せちゃいましょう。これで、とどめ、ですっ
…「体に当たらないように躱している(でも打ち返す)」ってことで、ここは、ひとつ。

うーん、なかなか、ユーベルコードを乗せるって、難しい、ですね。
新技が、必要かも、しれません、ね…。
(アドリブ歓迎、成功判定なら多少酷い目も歓迎)



●美少女ダブルス、爆誕

『……なんだかんだ、楽しいな。お姉ちゃんのテニス、やっぱりすごくいい感じ。こっちが本業じゃないけれど……このままずっと、お月様みたいなお姉ちゃんとこうしてテニス、』
「あー楽しかった!」
『ひっぱたいていい?』
「理不尽ですわ!?」

 先程の試合を終え、会場外でユーベルコードを解除したラップトップ・アイヴァー(動く姫君・f37972)の姉の方であるシエル・ラヴァロは、いきなり妹の方である三上・美希にそんなことを言われて驚愕に目を丸くさせた。
 もちろん美希とて正当な理由なく力技を訴えたわけではない。
 それは今の現状……試合が終わってからのシエルの行動にあった。

「私はただテニスのついでにちょっとそこら辺走りたくなっただけですのに!」
『テニス中にトライアスロンしようとするのやめてもらえます??』

 そう、シエルはよりにもよって試合直後に足で走って自転車に乗った上に近くのプールで泳ごうとしていたのである。無茶苦茶である。
 ちなみに言えば、試合中から結構無茶苦茶はしていた。
 ただここがアスリートアースであったために「そんなもん」と流されたところはあるが。
 やれやれ、と美希が呆れたように口にする。

『……ほんとにこのバカ姉は話聞かないんだから。ちょっと貸して』
「そんな、私は真面目にテニs」
『Revolution』

 真面目にと言いつつ、愛用のバトロワ用モデルガン『サイト4』を取り出そうとしたシエルを抑え、美希が動く。
 詠唱と共にその身体は黒い髪に紫の瞳をしたお姫様……三上・美希その人へと変身した。
 感覚を取り戻すように手を何度かぐーぱーと動かしたり、その場で何度かジャンプしてみたりする。

「……うん、大丈夫そう。あとは……」

 身体の動きを確認した美希はぐるりと辺りを見渡した。
 目的は自分たちと同じ依頼を受けている猟兵を見つけること。
 先程は一般のテニスプレイヤーと組んで試合をしたが、次の対戦相手はラフプレイも辞さない洗脳テニスプレイヤー。出来れば危険な目には合わせたくない。
 会場の中に入ってからもきょろきょろと視線を動かしていると、ピンク色の髪をした可愛らしい女の子の姿が目に入った。

「……コートが、血まみれになるん、ですか」

 それはまさに美希が探していた『同じ依頼を受けた猟兵』――アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)であった。
 ハートの描かれたラケットを握りしめ、しっかりとした眼差しで次の試合場所となるコートを見つめている。

「なら、遠慮する必要は、ないです、ね。さっきは、わたしも、燃え尽きる寸前、でしたし、今度は、少し落ち着いて……」
「ちょっといい?」
「え? は、はい」
「次の試合なんだけど――」

 大まかに事情を説明すると、アニカも一般プレイヤーに被害を出したくはないと了承してくれた。
 ここに美少女ダブルス爆誕である。

●それいけ、美少女ダブルス

 やはり対戦相手は四人だった。
 ……もう何も言うまい。そういうものなのだ。
 美希とアニカもそういうものだと飲み込んで試合に臨む。

「……スフィア。使ってみる価値はあるか」

 後衛、サーブ位置についた美希は自分の手の中にあるボールを見やる。
 それは先程の試合では使わなかった虹色の光の珠――『スフィア』。
 それをとん、とん、と何度かバウンドさせてから宙に放り投げる。

「Twinkle!」

 掛け声と共にラケットを振り下ろす。
 そして同時にユーベルコード・SphereRaidが発動し、テニスコート一面にキラキラと光る星の欠片が舞い散った。

「な、なんだぁ!?」

 開幕と同時にたくさんの星々に囲まれた対戦相手は目を細めて戸惑う。
 しかしそこは向こうも歴戦の猛者。それでもなおボールを見定めてラケットを振るう。
 だが――。

「――ッ!?!?」

 剛速球で飛んできたはずのサーブは、バウンドするなりラケットを振る手前で突如減速した。
 タイミングを狂わされたスイングは無情にもボールの手前を通過する。
 そしてその後ボールは急加速して背後のフェンスにぶつかった。

(どんな形でもいい、封じる暇すら与えないほどの星の欠片と、敵のラケットに届く直前の異常な減速、そしてそこからの加速で翻弄出来ればいい)

 ユーベルコードを用いた緩急で攻めに出る。
 そのことを改めて意識しながら二球目のサーブを打った。
 再びキラキラと輝く星々と共に打球が向こうのコートに突き刺さる。
 その打球は再びラケットの手前で減速しタイミングを狂わす――が。

「同じ手はくわねぇんだよ!」

 対戦相手は背後に分身を配置してサーブを打ち返してきた。
 その動きに美希はクッと顔をしかめる。

(こんなに早く対応してくるなんて……こうなったら、)

 咄嗟に脳裏に自身が持つ刀であるリヴリーのことが過る。
 最後の手段にしておきたかったところだが、こんなに早く対応してくるならと美希が決意しかけた、そのとき――。

「取ってみて、くださいっ」

 先に動いたのはアニカの方だった。
 彼女はその小さな体躯でネット際に躍り出ると、ユーベルコード|舞踏天使《ダンシングエンジェル》をテニスボールへと乗せて打ち返した。
 返球した打球は宙を蹴るように加速して相手コートに突き刺さる。

「ナメんなよ小娘ェ!!」

 先程の緩急でスピードに目が慣れたのか、相手はなんなく打ち返してきた。
 それどころか勢いのある剛球がアニカ自身を狙いつつある。
 しかしアニカも伊達に戦いを経てきたわけではない。

「っとと、打ち返して、きましたね」

 自分を狙って飛んでくる打球にも恐れることなく、咄嗟に対応してみせた。
 そして真横に避けながらくるりと回転し、背面からボールを目指してラケットを伸ばす。

「その手は……甘い、ですよっ」

 スイートスポットにボールが当たると同時にユーベルコード・|翻弄天使《プレイングエンジェル》を発動させた。
 攻撃を躱してのカウンターアタック。それはテニスでも通用する技だ。通用するったら通用するのだ。
 そのボールは星々の間をすり抜け、対戦相手四人の間をすり抜け、コートに突き刺さる。
 だが少々無理をしたからか、アニカはそのまま尻もちをついて着地してしまった。

「はわっ」
「大丈夫!?」
「はい、大丈夫、です。なかなか、ユーベルコードを乗せるって、難しい、ですね」

 慌てて近寄る美希が伸ばした手を掴んで立ち上がるアニカ。
 確かに彼女の言う通り、怪我はしておらず無事のようだ。美希はほっと胸を撫で下ろす。

「じゃあ、まだまだテニスやっていこう!」
「はい!」

 笑顔で応え合う二人。
 その笑顔に会場の空気が完全にホームになったのはここだけの話である。


●またまた一方その頃

「ふーん……素人って思ってたけど、前言撤回した方がよさそうかな」

 分身テニスにすら対処していく猟兵たちの姿を見て“彼女”はそう言った。
 そしてくるくると手首を軸にラケットを回しながら、不敵に笑う。

「でも勝つのはアタシ! だって勝ってこそのアタシだもん! ガハハ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『草津・アサヒ』

POW   :    テニスは爆炎だ
【爆炎テニス】に覚醒して【テンション】に比例した【火力を宿す選手】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    テニスは爆弾だ
自身に【任意に大爆発を起こす火の玉】をまとい、高速移動と【火の玉ストレート】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    テニスは爆殺だ
対象の攻撃を軽減する【全身炎熱エネルギー・プレイヤー】に変身しつつ、【何かに接触する度に大爆発するテニスボール】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:ソファ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠別府・トモエです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

終夜・日明
【似た者同士】アドリブ歓迎
勝利への渇望は大きな力になるが、正しく扱えねば意味がない。
残念ですが、貴女のヴィクトリーロードもここまでです。
僕たち、100%負けませんので。

引き続き後衛で。
確かに熱いですが猟兵の戦場では日常茶飯事、【継戦能力】で凌ぐ。
体力が削られてもクロスさんのおかげで戦線は維持できます。
散々爆発が起きててもはやテニスの範疇なのかいよいよ怪しくなってきましたがまあそれはそれ。
すっかり【地形破壊】されたコートを逆に利用し、死角から攻め入るようにスマッシュ(【地形の利用】)。
こちらの一手が確実に決まる瞬間を【指定UC】で計算していますから、簡単に通ると思わないでくださいね。


クロス・フレイミー
【似た者同士】アドリブ歓迎
とうとうここまで来ましたね。終夜さん。
お互い未経験でしたが案外何とかなるものですね。
で、ようやくご本人様登場ですか。まぁ勝ちたいという気持ちは分からなくはないですよ。
その心が闘争を刺激するとも言いますし。
まぁあなたの場合は勝つための手段がやりすぎですけどね。

前衛で行きます。【ダッシュ】と【受け流し】の応用でラリーを続け、【なぎ払い】の応用でスマッシュ。
…ってこの会場熱すぎません?
第一セットは羽根に【魔力溜め】しながら【火炎耐性】で耐えます。第二セットで【指定UC】で風を起こして換気しつつ回復。
爆発テニスボールは俺と終夜さんに当たる前に【指定UC】の雷で始末しましょう。



●始まる最終決戦

 ついに舞台は決勝戦へ。
 ワーワーと沸く歓声の中、クロス・フレイミー(狭間の剣士・f31508)と終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)は揃ってコート入りしていた。

「とうとうここまで来ましたね。終夜さん。お互い未経験でしたが案外何とかなるものですね」
「そうですね。そして残すはこの一戦のみ、というわけですか」

 日明はそう言うと同時に相手側のコートへ視線を移した。
 そこに立っているのは一人の少女――草津・アサヒ。
 彼女を倒せば長かったこの戦いも幕を閉じる。

「……で、ようやくご本人様登場ですか」
「ガハハ! 正直ここまで来るとは思ってなかったよ! でも快進撃もここまで!」
「と、言いますと?」
「だってアタシには勝てないもの。勝つのはアタシ、負けるのオマエら、ってね!」

 見た目の割に豪快に笑う少女はそう言って、ニタリと口端を吊り上げてみせた。
 自分が勝つのだと微塵も疑っていない。そんな笑い方。
 そんな自信に満ち溢れたアサヒに対し、クロスは「はあ」と気の抜けた返事をしてみせた。

「まぁ勝ちたいという気持ちは分からなくはないですよ。その心が闘争を刺激するとも言いますし」
「話聞いてたぁ? 『勝ちたい』んじゃなくて『絶対勝つ』んだって」

 半ば鼻で笑うように言いながらアサヒがラケットをくるりと回すとその姿が一瞬ブレて見え、そしてそのまま二人になった。
 とはいえもはや分身程度で驚くクロスでも日明でもなく、彼女と同じように「ハッ」と軽く笑い飛ばしてみせた。

「まぁあなたの場合は勝つための手段がやりすぎですけどね」
「勝利への渇望は大きな力になるが、正しく扱えねば意味がない……残念ですが、貴女のヴィクトリーロードもここまでです」
「は?」
「――僕たち、100%負けませんので」

 自信に満ち溢れた二人の表情は、もうテニスの素人などと呼べるようなものではなかった。
 面白くなさそうに顔を歪ませるアサヒのうちの一人がラケットを地面に立ててくるくると回し始める。

「フィッチ?」
「では、ラフで」

 結果はスムース。サーブ権はアサヒチームへと委ねられた。
 クロス・日明チームもポジションに着く。
 前衛がクロス。後衛が日明。すっかりおなじみになったフォーメーションだ。

「ずいぶん大口叩いてくれちゃったみたいだけど、私が勝つって結果は変わらないんだよ!」

 後衛のアサヒがそう叫んでトスをあげると同時に会場が熱気に包まれた。
 いや、熱気に包まれたのは|アサヒたち自身の体《・・・・・・・・・》だった。
 どうやら全身が炎熱に包まれた彼女たちから溢れ出る熱気が会場中に伝播しているらしい。
 先程まで涼しい顔をしていたクロスと日明からもさすがに汗が噴き出し、ぽたりとコートに落下した。

「……この会場熱すぎません?」
「確かに熱いですが猟兵の戦場では日常茶飯事なレベルですよ」
「そうですね。このくらいならなんとかなりそうです」

 猟兵としての経験からか継戦能力には自信がある日明。
 魔力を羽根に溜めることで火炎耐性を得るクロス。
 お互い熱気には対処出来ているものの、まだ問題は残っていた。

「そぉーれ、ドーン!」

 それはアサヒの打球が打ち返そうとするたびにいちいち大爆発を起こすことだった。
 轟音が会場に鳴り響き、コートの芝が飛び散る。
 しばらくラリーをしているだけにも関わらず、すっかりコートはぼこぼこのクレーターだらけになってしまっていた。
 しかもこんな状態でも審判から止められることはないのだから、本当にこの世界の常識とやらが分からなくなる。

「ヒャッハー! テニスは爆殺だぁー!」
「……これは長くなるとこちらが不利になる一方ですね」
「ですがもちろん対策はしているんですよねこれが――|混ざり者の鎮魂歌《ハイレティクス・レクィエム》を発動させます」

 ユーベルコード・【限定解放】|混ざり者の鎮魂歌《ハイレティクス・レクィエム》。
 それが発動した瞬間、クロスの羽根に溜められた魔力によって癒しの風がコートの半分に優しく吹き始めた。
 その優しくも力強い風は向こうから吹き付ける熱気を上手いこと攪拌してコート外へ追い出していく。

「ふう。少しは涼しくなりましたか」
「~~~さっきから思ってたけど、そーゆー澄ました顔嫌いなんだよね! 吹き飛ばしてやる!!」

 苛立った様子の前衛のアサヒが力強くラケットを振り下ろし、剛速球のスマッシュが同じ前衛のクロスの顔面目掛けて飛んでくる。
 しかしクロスは焦った様子もなく、避ける素振りもみせない。
 そのうちに打球は――黒い雷に撃たれて黒焦げになった。

「……え?」
「ふっ、と」

 呆然とするアサヒの目の前に黒焦げボールをドロップショットで落とす。
 アスリートアースルールではボールが黒焦げになってもポイントは有効らしい。だからどうなってるんだこの世界は。

「ちょ、アンタ! 何したのよ!」
「爆発する危険なボールを適切に処理させてもらっただけですけど」
「テニスに雷必要!?」
「え、あなたが言いますかそれ」

 当然だがテニスに爆発はいらない。もう一つ当然だが、必要なくても反則ではない。
 そんな意味の分からない状況を、日明は後衛からじっと油断せずに眺めていた。

(散々爆発が起きててもはやテニスの範疇なのかいよいよ怪しくなってきましたがまあそれはそれ。そろそろ僕も動く頃合いですね)
「フン! 技を一つ破ったくらいで調子に乗るんじゃないわよ!!」

 穴だらけになったコートはそれだけでイレギュラーなバウンドを生む。
 ひとまずボールは爆発しなくなったものの、どこへ跳んでいくのか分からない打球というのはそれだけでも充分脅威だ。
 そしてそれを分かっているからこそ、アサヒたちはあえてその穴目掛けて打球を打ち込んでいく。

「そらそらぁ! 踊れ踊れぇ!」

 穴の傾斜や不揃いな地面に当たったボールは、本来なら予想もつかない方向へ飛んでいく。
 そう、本来、ならば。

「分かってましたよ、その動きは」

 イレギュラーなはずのバウンド先にはすでに日明が構えて待っていた。

「はぁ!?」

 その動きは予想していなかったのか、死角から現れた日明の存在にアサヒが驚きの声を漏らす。
 そして彼女が態勢を整える前に、浮いたボールの隙を逃さずにスマッシュを決めた。
 自分の背後で跳ねたボールを信じられない顔でアサヒたちは見やる。

「は? ……は? 何よ、これ……」
「何って、言ったじゃないですか。『分かってました』と」

 ラケットを持ってない方の手でこめかみを示してみせる日明。
 彼は試合前に|もう既にこの結果を予想していた。《・・・・・・・・・・・・・・・》
 ユーベルコード・|知性という名の魔物《シモン・ラプラス・フォンノイマン》。
 自身の脳の演算速度を限界まで加速させた予測演算から自身の行動が100%確定する行動結果を放出し、戦場内全ての予知・予測演算能力及び装備・装置等を無力化する能力。
 使いすぎれば命を落とす危険な技ではあるが、コート上という盤面を支配するにはうってつけの能力といえるだろう。

「自分の未来は自分で決める……簡単に通ると思わないでくださいね」
「クッ……う゛、まだだ……! 私はまだ負けてない!!」

 アサヒが怒りを爆発させると、再びコート内が熱気に包まれる。
 まだ試合の結果が確定したわけではない。
 ――試合は、まだまだこれからだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アニカ・エドフェルト
さて、決勝戦…通用するか、どうかは、わかりませんが、頑張りますっ

まずは、さっきと、同じで、《庭球天使》で《舞踏天使》や《翻弄天使》を…きゃあっ!?
(さらに返されたボールを打ち返し損ねて)
…やっぱり、さっきの試合、見られてましたから、対処、されちゃいますね。

だったら、これなら、どう、でしょう。
今度は《転投天使》を、飛ばしますっ
なんやかんやで、相手が倒れて、動きを止めたら、
飛び上がっての、スマッシュ、相手の、目の前に、叩き込んじゃい、ますっ
(ついでに《舞踏天使》も乗せる)

ふー…思い切り、打てると、気持ちいい、ですね。
あとは、対処、される前に、どれだけ、点を稼げるか、ですっ

(アドリブ台詞行動歓迎)



●触れれば転倒!

 第1セットを終え、ボコボコになったコートの整備も入りつつ次のセットへ。
 猟兵側は選手を変え、アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)が一般プレイヤーを相棒にコートに立っていた。
 彼女は小さく深呼吸をする。

(さて、決勝戦…通用するか、どうかは、わかりませんが、頑張りますっ)

 相手は変わらず草津・アサヒとその分身。
 どのようなテニスをしてくるのかは先程までの試合でいくらか把握しているものの、その実力は未だ脅威だと言っても良い。
 アニカはぎゅっと自身のラケットグリップを握りしめ、ポジションについた。

(まずは、さっきと、同じように、しかけます!)

 ユーベルコード・|庭球天使《テニスエンジェル》に|舞踏天使《ダンシングエンジェル》もしくは|翻弄天使《プレイングエンジェル》を使用する、以前の試合でも見せたコンビネーション。
 その成果は証明済み。アニカはしっかりと相手のコートを見据えてラケットを振るう。

「取ってみて、くださいっ」

 パコォン! と良いインパクト音を鳴らしてユーベルコードを宿したテニスボールが飛んでいく。

「舐めんな! この程度素で返せるんだよ!」

 しかしアサヒも一筋縄ではいかない。
 鋭く返球された火の玉ボールはアニカの足元を狙って突き刺さる。
 無論アニカも返球するために再度ラケットを振るうが、残念ながら空を切ってしまった。

「きゃあっ!?」

 空振った勢いでくるりと回転して尻もちをついてしまう。
 そんなアニカの姿を見て、アサヒはハッと鼻で一笑に付した。

「同じ手がアタシに通用すると思わないでよね!」
「……やっぱり、さっきの試合、見られてましたから、対処、されちゃいますね」

 同じ手が通じない。
 そうなればどうするか――アニカの中でその結論はすでに出ていた。
 立ち上がって構え直し、相手のショットに備える。

「だったら、これなら、どう、でしょう」

 発動したのはユーベルコード・|庭球天使《テニスエンジェル》。

「だから、同じ手は――!」
「――それは、どうでしょう」
「なっ!?」

 同じようにボールを返そうとしたアサヒであったが、その瞬間ボールに宿ったユーベルコードが発動し、その瞬間――何故かアサヒが|転んだ《・・・》。
 それもそのはず。ボールに宿っていたのは|転投天使《スロゥイングエンジェル》という相手を転倒させることに特化したユーベルコード。
 転倒しながらもボールを返したアサヒであったが、碌にコントロールもついていないボールは浮いた絶好球にしかならなかった。
 緩いロブに向かってアニカが飛び上がる。

「決めますっ!」

 身軽な体は楽々宙を舞い、そして転倒したままのアサヒの目の前にスマッシュを叩きつけてやる。
 オマケとばかりに|舞踏天使《ダンシングエンジェル》が乗せられたボールは凄まじい速さでコートをバウンドしていった。
 その軌道を見送ったアニカはとん……っと軽い音をたてて着地をする。

「ふー…思い切り、打てると、気持ちいい、ですね」

 あとはここからどれだけ点を稼いでいけるかだ。
 勝負はまだここからだとばかりにアニカは気合を入れ直した。

「この……このぉ……っ!!」

 そして、アサヒもまた何かを覚悟したかのようにぎゅっと自分の拳を握りしめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラップトップ・アイヴァー
…絶対、ね。
ええ、強い願いは勝利を呼ぶ。

でも、そうしたって最後に勝つのは私たち。
何故だか分かる?

私が護りたいのはね、
みんなが楽しくスポーツしていられるその平穏なのですわ。

…あなたは目の前の勝利だけを見過ぎなのです。
だから幾ら法則を狂わせようと徒労に終わるのですわ。

って美希が言ってましたわ!

《……流れるように人の台詞捏造したねこの人?
同意はするけど。

…ねえ。アサヒセンセ。
思いっきり、普通の、楽しいテニスしよ?》

……ふふっ。

Trigger――Dual on.
真の姿に変身。…といっても、交通事故に遭った当時の、傷だらけの死体ですけれど。
それから、黒髪に紫の瞳、黒いドレスを着た美希もUCで呼び出して。

…人々は、私を非難するかしら。

《…ないでしょ。
バトロワバカがテニスしてるって、普通にみんな祝ってくれるんじゃない?

まあそうじゃなくても、
普通にテニス出来ればいいし》

…ええ。
これは、分身ではなくてよ。
ふたりのテニスですもの。

火の玉ストレートも、ふたりでひとりの姉妹なら、ね!

《……ソウダネー》



●すべては『楽しむ』ための
 試合はいよいよ大詰めの第3セット。
 猟兵側は再度プレイヤーをチェンジし、全ては彼女達に託された。

「……絶対、ね」

 ここまでの試合の流れを観察していたラップトップ・アイヴァー(動く姫君・f37972)……のシエル・ラヴァロはぽつりと呟く。
 憐れむような、悲しむような、しかしどこか優しいような声色で。

「ええ、強い願いは勝利を呼ぶ。でも、そうしたって最後に勝つのは私たち……何故だか分かる?」
「……何、お説教でも始める気?」

 苛ついたように爪先でコートを叩きながらアサヒは質問を質問で返す
 その顔にはもう今までの余裕や驕りは感じられなかった。
 そんな彼女に対し、シエルは「いいえ」と首を振ってみせる。

「私が護りたいのはね、みんなが楽しくスポーツしていられるその平穏なのですわ」
「ふうん、そう、甘いね。甘々すぎる」
「甘々?」
「だって勝たなきゃ楽しくないじゃん」

 それは、ようやくアサヒから引き出した『本音』であるような気がした。
 勝てないと楽しくないから、勝ちにこだわる。
 勝ち上れるのはたった一人だから、勝ちにこだわる。
 確かにテニスがスポーツである以上、そこに勝ち負けが生まれてしまうのは当たり前のことだし、誰もがみな勝ちたいと思って試合に臨んでいるはずだ。
 けれど――、とシエルは言葉を紡ぐ。

「……あなたは目の前の勝利だけを見過ぎなのです。だから幾ら法則を狂わせようと徒労に終わるのですわ」
「ッ! 言わせておけば――」
「って美希が言ってましたわ!」
「……はぁ?」

 アサヒから沸き上がった殺気が一瞬で消えた。呆気に取られたとも言える。
 そんな彼女の目の前でドヤ顔決めポーズを続けるシエルの内側で何度目か分からない溜息がこだました。
 無論、三上・美希のものである。

『……流れるように人の台詞捏造したねこの人?』
「でも美希も同じ気持ちでしょう?」
『まあ、同意はするけど』

 “彼女”の瞳がアサヒを見据える。

『……ねえ。アサヒセンセ。思いっきり、普通の、楽しいテニスしよ?』
「…………?」

 本来なら聞こえるはずのない美希の声だが、目の前の“彼女”の持つ雰囲気の変化を悟ったのか、アサヒはぴくりと片眉を跳ねさせた。
 一方シエルは内側から聞こえる妹の声に「ふふっ」と小さな笑みを漏らす。
 そして――。

「Trigger――|ふたり並んで《Dual on》」

 微笑みを浮かべたままユーベルコード・|Sis /+《シスタープラス》を発動させると、途端にその体が光に包まれた。
 その光はゆっくりと二つに分かれていく。
 片方はオレンジの瞳に赤い髪のシエル・ラヴァロ。
 もう片方は紫の瞳に黒い髪の三上・美希。
 元が双子なだけに瞳や髪の色が違えども二人の姿はよく似ていた。
 ――シエルの身体だけが傷だらけでボロボロなこと以外は。

「ひっ! な、なによアンタ……!」

 先程まで話していた健康的なシエルとはかけ離れた姿に思わずアサヒがうろたえる。
 アサヒだけではない。会場に集まっていた観客たちもざわざわとどよめきを隠せないでいる。
 そんな様子をぐるりと見渡し、シエルは片割れにしか聞こえないくらいの声で呟いた。

「……人々は、私を非難するかしら」
「……ないでしょ」

 美希がすぐに言葉を返す。
 そして黒いドレスを翻すようにシエルの目の前に立つと、とんっと拳で彼女の胸を軽く叩いた。

「バトロワバカがテニスしてるって、普通にみんな祝ってくれるんじゃない?まあそうじゃなくても、普通にテニス出来ればいいし」
「……ええ、そうですわね。これは分身ではなく、ふたりのテニスですもの」

 シエル・ラヴァロと三上・美希。
 ふたり合わせてラップトップ・アイヴァ―。
 そんなふたりのやるべきことと言えば一つ――スポーツと魔法で人々に希望を与えることだ。

「火の玉ストレートも、ふたりでひとりの姉妹なら、ね!」
「……ソウダネー」

 姉妹揃っていつもの調子が出てきたところで最後のセットが幕を開けた。
 相変わらず分身でダブルスを組んでかかってくるアサヒは、打ち返すボールに火の玉をまとわせてくる。
 そしてその軌道は前衛のシエルの顔面を狙っていた。

「吹き飛びなぁ!」
「あいにく、その攻撃は見切りましたわ!」

 しかし、前の試合をしっかり見ていたシエルは悠々とその球を避けてみせた。
 バウンドと同時にほんの僅かに火の玉の勢いが弱まる。

「そこ、外さないよ」

 その隙を狙って美希がボールを打ち返す。
 そのままボールは相手のコート端へ。

「くそっ、これならどうよ!」

 それに追いついてアサヒが打ち返したボールは向こうのコートに着弾するなり大爆発をみせた。
 第1セットでも見せたようにコートに大穴が開く。
 立ち込める土煙の中、飛び上がる影が揺らめいて見えた。

「決めますわ!」

 傷だらけとは思えない高さに飛びあがったシエルが放ったスマッシュは鋭い角度で相手のコートへ突き刺さり、そのまま背後のフェンスに当たった。

「やったね、お姉ちゃん」
「ええ。やっぱりテニスって楽しいですわね」
「うん。ふたりならなおさら」

 紅と紫のラケットをコツンとぶつけてポイントを喜ぶ。
 その姿は幼い頃とまるで変わらず、テニスを楽しむ姉妹そのもので。
 そんな様子を見ていたアサヒの脳裏にも思わず昔のことが蘇る。

 ……あんな風に笑ってた時期がアタシにもあったかな。

 ――勝たなければ意味がない。

 いつからだろう、そんなことばかり考えるようになったのは。

 ――勝たなければ。

 昔はちゃんとダブルスをして、点を決めるだけで喜んでいたのに。

 ――勝たなけ……。

 いや、それよりもっと前。ただラケットにボールが当たるだけで嬉しかったのに。

 ――勝…………。

 「なんでテニス、始めたんだっけ」

 アサヒは呟く。
 それを聞いたラップトップ……シエルと美希の姉妹はにっこりと笑って答える。

「きっと楽しかったからですわ」
「きっと楽しかったからじゃない?」
「……楽しい、か。そうだったかも」

 アサヒの瞳にはもう昏いものは見当たらない。
 姉妹のダブルスは確かに希望を与え、取り戻したようだ。

「でもやるからには勝つ! |ここ《アスリートアース》はそういう場所だからね!」
「受けて立ちますわ!」
「あ、なんかスイッチ入っちゃった」

 試合は続く。
 しかしそれは今までのようなものとは違う。
 勝つためだけではない、楽しむためのテニスへと変わっていっている。

「これなら、どう!」
「やるね。でもまだ返せる!」
「それはこっちのセリフ、だよ!」
「まだまだですわ!」

 爽やかなラリーの応酬の後、シエルの打ったボールがコート隅に決まってゲームセット。
 猟兵側の勝利が決まった瞬間、アサヒの分身が消え、そして彼女はコートに倒れてしまった。
 おそらくは今までダーク化していた反動だろう。
 幸いケガなどはないようなので、目が覚めれば普通のテニスプレイヤーに戻っているはずだ。

「やったね」
「ええ」

 再び紅と紫のラケットをコツンとぶつかり合わせてお互いの健闘をたたえ合う。
 そんな姉妹を取り巻いていたのは、会場中から沸き上がる歓声であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年12月16日
宿敵 『草津・アサヒ』 を撃破!


挿絵イラスト