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黯然銷魂メソッド

#ダークセイヴァー #ダークセイヴァー上層 #第三層 #グリモアエフェクト

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 この城の大広間は『調理場』兼『食卓』だ。
 ――ギロチンや鎌、大剣を備えた大理石のまな板。
 刎ねた魂人の首はよく転がって。透き通った身体を叩き潰せば次の瞬間にはダレかの無効化の術がかかり回帰する。
 永劫回帰したその魂人の悲鳴はすっかり魂震え怯え引き攣った上擦りの声で、生きたまま喰ってあげれば潤んだ鹿のような目でこっちを見る。
 自身が喰らわれている様を見ている。その瞳に宿るのは絶望だ。
 ――魂人を美しい装飾の施された檻に入れるのはお皿のかわり。
 大きなフォークを差し込んで突き刺したり、鋭利なナイフで身体を切り離してあげたり。
 ちょっと遊びながら食べたいから、檻は広めの作りだ。逃げ惑う魂人をつつくのは面白い。程よく運動させれば血肉は温まっている。食べ頃だ。

 時は少し遡り、晩餐会の準備期間――。
 闇の種族の話し合い。
 遊戯な食卓は、ココロも満ちる。
「絶望を知らぬ無垢な魂人を喰らったら、面白い反応をみせてくれそう」
「自らの手で、奈落へと導く調理法か」
「狩りましょう」


「闇の種族とは食事の価値観が違い過ぎて、私たちとは合わなそうですね」
 そう言った冬原・イロハ(戦場のお掃除ねこ・f10327)が続ける説明は、ダークセイヴァー世界の上層で起ころうとしている事件のことだった。
 ケットシーの瞳はらんらんとしていて、出来ることならば自身の戦斧を持ち乗り込みたいという気概が宿っている。
「近々、闇の種族による悪辣な『永遠の晩餐会』が開かれようとしています。その晩餐会は捕らわれた魂人さんたちが、主催者である闇の種族とその賓客たちに生きたまま貪り喰われるというものなのです。……魂人さんたちには永劫回帰の力がありますから、強制的に力は施行され、闇の種族が飽きるまで延々と続く晩餐会となるみたいです」
 そんな絶望の晩餐会をぶっ潰すために。
「幸い、グリモアエフェクトによって予知も早まりました。この晩餐会が始まるまえに、現地に乗り込むチャンスがあるのです。皆さんには、魂人さんの集落から食材として、闇の種族に調達されてほしいのです」
 ……食材として。
 猟兵は思わず自身を見下ろした。
「狩る者はたぶん偵察にも来ているでしょうから、皆さんには新鮮な食材や上質な食材アピールが必要かと思います」
 集落の住民のなかに溶け込んだり、上質であることをアピールしたりするのだ。
「狩りの対象は絶望を忘れた無垢な者となっています。そうアピールするためにも、集落では魂人さんを励ましたりしていくと良いかもしれませんね」
 首尾よく上質な食材として見初められれば、無事狩られる=闇の種族の城に潜入成功となる。
「そのあとは食材置き場という名の牢から、既に他所で捕らわれてしまっていた魂人さんを救出して脱出です。ですが城の敷地は広く、罠も仕掛けられていますので逃げるのも一苦労かもしれません」
 通称・愚滅の花園という場所を抜けていくことになるとイロハは言った。
 毒を放ったり、蔦で拘束してくる植物たちがいる。
「……追手も当然放たれると思います。力は紋章持ちのオブリビオンと同等かと」
 闇の種族の配下もまた強力な敵となることであろう。
「永劫の死地からの脱出です。一緒に逃げる魂人さんもある程度は戦えますが、窮地に陥れば彼らは永劫回帰をためらうことなく使うでしょう」
 生きる未来のため、幸せな記憶を手放す。
「記憶は、すべてを失えば新しい旅路へと立つことにもなるかもしれませんが、つらく苦しい記憶が残るというのならば、そこは地獄という場所なのかも……」
 どうか『皆さん』をよろしくお願いします。
「そして『皆さん』も無事に帰ってきてくださいね」
 そう言ってイロハは猟兵たちを送り出すのだった。


ねこあじ
 ダークセイヴァー上層のシナリオとなります。
 ねこあじです。
 よろしくお願いします。

 断章は各章入ります。
 基本的にプレイングはいつでもどこからでもどうぞな感じで、進みは緩やか。タグやマスターページに締め切り日を記載していこうかなと思っています。

 第三章は『死合わせのクローバー』モルテ、集団戦です。
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第1章 日常 『魂人を励まそう!』

POW   :    体操や筋トレなど一緒に体を動かす

SPD   :    歌や踊りなど楽しいことする

WIZ   :    希望ある物語を聞かせたり言葉で励ます

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵たちが訪れた魂人の集落は穏やかな雰囲気だった。
 どこか長閑な、けれども明るくはなく。
 心身を癒していける程度の、穏やかに流れる時間の恩恵を受けたかのような地。
 集落と外との境界はないが、畑が作られ、共同の炊事場があり、隙間風吹く家屋がいくつか。
「こんにちはっ」
 子供が興味深げに駆けてきて猟兵の様子を観察する。遠巻きに見ている子たちもいて――ここは子供の数の方が多そうだ。
 そして長と思われる人物が手招きしていることに気付いた。
「旅人さんか? 何もないところだが、ゆっくり休んでいかれるといい」
 容易に受け入れる姿勢は他者には計り知れない過去があるからこそ。
ココ・エネコ
アドリブ・連携〇

正直、無垢な魂人さんを弄んで食べるっていうことにブチ切れ寸前…にゃけど今は抑えて魂人さんに励ましの言葉を掛けて純粋な気持ちにさせるにゃ!

お城の中に入ったら覚えとけにゃー!

WIZ判定

集落に転送された私は寄ってきた子供たちに私の家族の話をさせるにゃ

旦那と息子、それに兄さんとほかの仲間たちといつも暖かくてわいわいしてるお話を聞かせてあげるにゃ(ここの内容はお任せします)

あと私は毛並みには自信があるのにゃ!

もふもふしていくにゃ?
今ならもふり放題にゃー!



 ダークセイヴァー世界上層に君臨する闇の種族たち。
 その横暴さは、ココ・エネコ(夢と希望の執行猫・f32999)も聞けば怒りを胸に抱くものだった。
(「無垢な魂人さんを弄んで食べるっていうことにブチ切れ寸前……にゃけど、今は……」)
 到着前はびしびしとケットシーの尻尾を振っていたけれど、こんにちは! と声を掛けてきた子供の様子に、尻尾はぴんっとなる。
「こんにちはにゃ!」
「猫のおねえちゃんも旅人さん?」
「そうにゃ。ココっていうのにゃ。よろしくにゃ」
 子供は興味津々な目でココや、ココのピンク色の尻尾を追っている。
「みんな、お母さんやお父さんとはぐれちゃったのにゃ?」
 集落の大人が面倒を見ているのだろうが、それでもここは子供が多い。小さな子、大きな子と猟兵たちの元に集まる彼らの様子に、ココの胸は切なくなった。
 背伸びして、四歳児くらいの子の頭を撫でればその子はぺたんと地面に座る。
「あーここで座ると汚れるよ。……迷子の子もいるけど、僕は孤児院出身」
 一人の少年がその子を抱えてココの問いかけに答える。
「にゃ」
「ここはまだ飢え死にする子が出ないから、いいんだけど……」
 と、少年は肩をすくめた。透き通った身体はやせ細っている。
「頑張ってきたのにゃぁ……」
 ココが少年に向かって手を伸ばせば、少年は少し戸惑ったあと頭を下げた。よしよしすれば照れたような表情。
 ココは小さな子たちが集まる広場へと案内されて、ひとりひとりの頭を撫でていく。
 ダークセイヴァーの冷たい空気にぬくもりを忘れてしまったかのような魂人の身体。
 ココは泣きそうな表情になった幼子をあやして、
「寒かったり、寂しかったり、そう思ったら一緒にみんなでくっつくにゃ」
「……さみしい?」
「……胸がぎゅうぎゅうして泣きたくなった時にゃ」
 寂しいということがわからない子らと一緒に、ココもくっついて。
「おねえちゃん、ふかふか」
「ふふ、ありがとにゃ。もふって大丈夫にゃー」
 ふかふかと柔らかな毛並みを差し出せば、もみじのような小さな手がそろそろとココを撫ぜていく。
「あったかいにゃ?」
「うん」
「こうやって家族と一緒にくっつけば、さみしくなくなるにゃ」
「かぞく?」
「一緒に暮らすひと、くっつきたいひと、大事なひと、そうにゃあ……家族っていうのは……」
 おしくらまんじゅうみたいにちょっとだけ身体を揺らしながら、ココが話すのは旦那や息子のお話、兄さんや仲間のこと。
「一緒に遊び始めると、みんなボールみたいにころころ転がって、たまーに遠くから見ればおおきな毛玉みたいになってるにゃ。その時に「おやつの時間にゃ」って声をかければ、ぱっと一斉に転がりほどけるのがまた面白くてにゃ」
「かぞく、は、いっしょに遊ぶひと?」
「そうにゃ」
「じゃあわたしたちもかぞく?」
「そうにゃ!」
 君も。君も。君も。わたしたちの家族なんだねぇ。と幼子の表情が綻んで、ココも笑顔になった。
「家族と一緒だと、にこにこしちゃうにゃ」
 発見したものを知らせてあげたいひと、一緒に同じ景色を見たいひと、また会いたいひと、たくさんの家族の形をココは自身の家族の話を通して子供たちに教えていく。
「私は、私のお父さんにはもう会えないけれど、こうやって大切な思い出になっているのにゃ。みんなにね、私の思い出をおすそわけにゃぁ」
 と、ココがペンダントを開けばそれは曲を奏で始めた。オルゴールだ。
「みせてみせて」
「きれい」
 音色というものを初めて知った子もいるのだろう。
 ココもたくさんのことが見えてきた。覚えやすい子守唄を彼女が紡げば、たどたどしく音を追ってくる子供たち。
「お歌。家族のみんなに教えてあげるといいにゃ。私も大好きなひとたちにたくさん歌ってるにゃ」
 そうココが言うと、幼子たちの目が輝いた。知らないことを覚えていくのが楽しいのだろう。
 大人に、大きなお兄さんお姉さんに。今ここに来ていない小さな家族に。
 彼らの知らないことを教えて、そして教わって。
 ――そう成長していける、前向きな未来。今日、ココが作ったのはそんな明るい道だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
魂人を食材にして、晩餐会だと?ふざけた真似を…。上層でも、この世界のオブリビオンの悪質さは変わらずか。だが、相手の実力は下とは段違いだ。今回も苦しい戦いになりそうだな…。
まずは魂人の集落へ向かい、彼らと交流だったな。子供が多い、という事実に表情が曇る。それは彼らが幼くして逝ったということなのだから…。
旅人ということで、色々な話を求められそうだ。《世界知識》で、空の世界や、桜の花の世界のことを語って聞かせようか。他に、何か楽しいことはできないかな?…ローズタクトを手にして【PSY-extend】を発動。癒し効果のある花の香りと共に、天から花びらの雨が。音の属性も加えて、竪琴や笛の音色も奏でよう。


ディル・ウェッジウイッター
アドリブ・連携歓迎

ダークセイヴァー上層、一度は訪れたいと思っていた場所ですが…
狩られる側に立つというのは中々無い経験ですね
男なんて食べても美味しくないと思うんですが…彼らの考える事は分かりませんね

村に訪れたらば村の人たちをお茶会に誘います。子供たちを誘えば大人の人もいらっしゃりますかね

お茶請けは持ち込んだクッキーを
しかしお茶会とはいっても紅茶のお供はこのお菓子に限らず、持ち込みも何でもありです
好きなもので好きに楽しんでいたきたいですね


…こうして行く先々の皆さんとお言葉を交わして笑顔をみるのはとても楽しいですね
一時だけかもしれませんがいつもとは違う時の流れを感じて欲しいものです 



 こんにちは、旅人さん。
 そう言ってダークセイヴァー世界の魂人は猟兵たちに挨拶をする。
 つらく苦しい死や経験ののち、与えられるこの生はひとときの無であったり、思考する時間であったり。
 無論、そう穏やかな時間ばかりが与えられる魂人ばかりではない。けれどもこの集落にいる彼らは幸か不幸か、その時間を与えられている。
(「その魂人を食材にして、晩餐会だと?」)
 ふざけた真似を……と、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は心の中で憤慨した。闇の種族は他者の生命をなんだと思っているのか――否、どうとも思ってないに違いない。知っている。ガーネットはオブリビオンの悪質さを改めて再認識した。
「ここがダークセイヴァーの上層……」
 ディル・ウェッジウイッター(人間のティーソムリエ・f37834)は閑散とした、けれどもどこか長閑な集落を眺め呟いている。
 陽の差さぬ昏さは変わらず、一転すれば血なまぐさい雰囲気に満ちる場所。
「こんにちは!」
 一人の子供が挨拶をしてきた。
 恐らくは闇の種族の狩りの目的だと思われる子供たち。こんにちは、と挨拶を返したガーネットは隣のディルに聞こえる声量で呟く。
「恐らく、今は子供たちが狩りの対象となっているのだろうな」
「…………頑張ってこちらが狩られる対象になりましょうか」
 狩られる側に立つというのは中々無い経験ですが、とディルはにこりと微笑んだ。

 ディルのアンティークトランクケースから出されたピクニックシート。
 色とりどりのそれは、子供たちにとって初めて目にする色や柄だったりしたのだろう。シートの上では小さな子たちが楽しそうに転がり遊んでいる。まるで子犬のようだ。
「あ、おはな!」
 花柄の織物を差した女の子の言葉に「よく知っているね」とガーネット。
「これは桜の花だよ。木に咲く花なんだ」
「木にお花がさくの?」
 野花しか知らないのだろう。女の子は不思議そうな声。
「そう。おひさまの栄養をたくさん食べた木は、花を咲かせるんだ。私が知っている場所ではね、この桜の花がずっと咲いているところもあるんだよ」
「ああ、丁度よいですね。桜フレーバーの紅茶を飲んでみますか?」
 ささやかなお茶会の用意をしていたディルが、手際よく用意していく。
 村人を誘ったお茶会は大人たちに好印象を与えたようで、いそいそと屋外へと出したテーブルに彼らは着席している。
「大人の方々が今飲んでいらっしゃるものですよ。――大人の仲間入り、ですね」
 美しいカップに、良い香りのお茶。
 作法をよく知らない女の子はいつもと違った大人たちの雰囲気にそわそわしている。そしてくすぐるように言ったディルの言葉に、すっと背筋を伸ばした。
「甘いものを飲みたい子にはミルクティーを用意していますからね。ガーネットさんは何になさいますか?」
「ふむ……では私も桜の紅茶を頂こうかな」
 敷物の上で子供たちと一緒に座っていたガーネットは、彼らにお手本を見せるようにしてお茶を飲む。
 お茶請けはクッキーだ。軽く摘まめるようにと大きさは小さく、けれどもいろんな形のクッキーが用意されている。
「カップと同じ形だ」
「これはなぁに」
「その形は猫ですね。あちらのケットシーさんと似た動物なのです」
 と、ディルはケットシーの方を見て言った。ふわふわな毛並みを持つ仲間のケットシーたちはすっかり子供たちの人気者だ。
「そういえば、あるところにはケットシーの国があってね」
 ガーネットの語り口は入りやすく、そして軽妙だ。広がっていく物語は猟兵の冒険譚。青い空の世界。桜の世界。ダークセイヴァーのような、夜色しかない世界。
 ガーネットが紡ぐ物語に次々と子供たちが寄ってきて、いつの間にか敷物の上はいっぱいだ。ディルが動物の柄や星空の敷物を追加で出していけば、それがまた物語の導入部分になる。
「これはなぁに?」
「それは音符だね。――ああ、一部は五線譜なのか」
 そう呟いたガーネットがバラ色のタクトを手にした。自身のエーテルを動かして放ったものは音。
 子供の差す指と、音符を辿ってゆけば、それはバラバラに解体されたクラシックの楽譜だということに気付いた。
 ローズタクトを振ればふわりと舞う花の香。
 PSY-Extendはガーネットに呼応して、天からは花びらの雨。
 シルクやビロードのような手触りの花びらを、不思議そうに大事そうに手に取る子供たち。
「素敵なお茶会になりましたね」
 ディルはにこやかに言った。ちょっとしたお花見と、音楽と、美味しいお茶とクッキー。
 初めて見たり経験する子供たちは皆笑顔だ。
 彼らの様子を見て、次はどんなお茶にしようかと考える。
 はしゃいでいるからきっと喉が渇くことだろう。さっぱりとしたものを飲みやすい温度で。
 ――そう考えながら用意していると、普段幼子の面倒を見ていそうな少年少女が興味津々にこちらを見ていることに気付いた。
「教えますから、淹れてみますか?」
「いいの?!」
 ポットを温めて、蒸らして。それだけでもお茶の味は美味しく変わる。
 この新しい学びに、彼らはここの茶葉を相手に試行錯誤とすることだろう。
 けれどもそれはきっと楽しい時間になるはずだ。
 今日訪れたひとときの癒しを思い出して、彼らなりの癒し時間を作るための。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
魂人となった者がこうして穏やかに生きている姿は救いに思える
ダークセイヴァーが故郷の友も、先に逝った家族も、苦しむばかりではないのかもしれない

快く受け入れてくれた言葉に甘えて、集落を見てまわる
ここは子供が多いようだ、力仕事の出来る大人は少ないかもしれない
家屋の修理や畑仕事など、困っていたり手が足りていない所をそれとなく探し
休む場を提供してくれた礼として、手伝わせて欲しいと集落の住人へ申し出てみる
困っている者へ励まして手を貸し、協力を惜しまない前向きな行動を通して希望を示したい

少しでも住人への励ましになれば良い
その上で“食材”としてのアピールになれば尚良い
その分、彼らが狙われる危険を減らせるからな



 ダークセイヴァー世界で生きるということは過酷なことだ。
 『凄惨』はその場のみにならず、時には長きに渡って周辺にも轟いてゆく。
 そういった世界に生まれ育ってきたシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は、この造られた集落に流れる穏やかな時間にどこか安堵を覚えた。
 孤児院であるかのように子供が多い集落地。造られた家屋は質素なものだが、よく手入れされた畑。大人は訪れた旅人――猟兵たちに愛想よく応じている。
 提供されているかのように置かれた大木。薪割りや水汲みは子供の役目でもあるのだろう。手斧や桶は小さなものだ。
 限りなく動線を省略しようとしている道具の置き方だが、なるべく雨避けしようという意図が見えた。
 ふとしたものにここでの営みが見えてくる。
「……」
「どうかされましたか?」
 魂人がシキの様子に気付いて声を掛けてきた。ああ、とも、いや、とも茫とした一声でまずは応じるシキ。
「何か……手伝えることはあるだろうか? ここは子供が多い。大人の手は足りていないだろう?」
「お疲れでしょうに。休まれてくださってもいいのですよ」
 気遣う魂人ではあったがその手には取り込んだばかりの洗濯物を抱えている。
「俺たちを一時的に受け入れてくれた礼だと思ってくれればいい。何か修理したりするものはあるだろうか」
「では、お願いしましょうか」
 ふ、と魂人は微笑んで言った。
「少年組が頑張ってはいるのですが、何分、家屋の修理は私たちにも勝手がわからないところがありまして」
 どうともない会話だ。人と人が交わす会話。集落の時の流れが彼らの雰囲気を作っている。
 魂人となった者たちがこうして穏やかに生きている姿が、シキには一種の救いに思えた。
 案内された場所は物置。半分ほど機能しておらず、一部は先程見た物のように外に置きっぱなしらしい。
 古びた大工道具は誰かが使い込んでいたのだろう跡。
 ――誰かが持ってきたのだろうか?
(「ここもまた、闇の種族の箱庭なのかもしれない」)
 少なくとも火を扱うための資源は提供されている気配がした。
 そう思いながら物置の修理をしていると、少し遠くから子供のはしゃぐ声が聞こえ始めた。きっと仲間の猟兵が遊び相手になっているのだろう。
 トントンと釘打てば小気味よいリズムが奏でられ、音に導かれたらしき少年と少女の二人がやってきた。
「見てていい?」
「ああ」
 端的なやりとりであったが、彼らが学ぼうとしていることがシキには分かった。見て学ぶ。切迫した暮らしのなかで自然と身につく学び方だ。
 皆と遊ばなくてもいいのか? ともシキは尋ねなかった。きっと二人は年長者なのだろう。彼らの心理は手に取れるほどに――痛いほどに分かる。
「お兄さん、脚立使う?」
「? そうだな」
 少年の言葉を不思議に思いながらシキは頷く。
「俺が作ったんだ」
「成程。――しっかりとした作りだ」
 二段の小さなものだったが、ぐらつかない。シキの言葉に「へへ」と少年は照れくさそうに笑った。
「お兄さん、あのね、台所の屋根も見てくれる?」
 少女が差す方向には屋外の共用台所。行ってみれば補強が繰り返されていて、その跡が新しく補強した部分の邪魔をしている。
 長年愛用し、手も加えてきたのだろう。少年と少女は修理箇所の説明をしながら、同時に補強した部分の説明もしてくる。声はちょっと得意げだ。
「ここ、よく子供が連れられてくるんだ」
「そうそう。だから食べやすいように煮込み料理は時間をかけるの。竈も長く火を使えるようにしたくて……」
「なら、木か石壁で衝立を風除けがわりに置くといいかもしれない」
 引っかかる説明がありながらも、応じるシキの助言に二人はぱっと表情を輝かせる。
 そんな二人を見て思うのだ。
(「ダークセイヴァーが故郷の友も、先に逝った家族も、苦しむばかりではないのかもしれない」)
 死の先に与えられた時間。
 ここは凄惨の轟く地の続き。
 ここは刹那であるかもしれない。それでも時がゆるす限りの平穏を彼は願った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【一応POW】
他者絡みアドリブ大歓迎

…うーん
励ますと言っても僕自身が脳筋だからな…
子供達と一緒に遊んで身体を動かしてアピールするのが早いかな?

子供達と一緒に遊べそうで、なおかつ身体を動かせる遊びの定番と言えば、鬼ごっこか
おーい、よかったらお兄ちゃんと一緒に鬼ごっこして遊ばないかい?
あ、最初に遊び方は説明しておくよ

最初は僕が鬼になって追いかけるよ
…って意外と君たちすばしっこいね!?
必死になって追いかけてようやく捕まえて
じゃ、次は君が鬼ね
…と指名したら一目散に走って逃げるよ

我ながら大人げないと思うけど
ここまで童心に返って遊べば上質な食材とみなされるんじゃないかな?
さ、来るなら来いってんだ



 仲間の猟兵によって敷かれた複数のピクニックシート。
 最初は面白がってお茶会の真似をしていた子供たちであったが、より幼い子たちは暇をもてあそび始めたのだろう。
 シートの上で転がったり、誰かの邪魔をしたり。
「美味しいものを食べて元気が出てきたのかな? それとも元気があり余っているのかな?」
 元気な子犬みたいな子供たち様子に館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は微笑みながら声を掛けた。
「うーん……そうだなぁ、よかったらお兄ちゃんと一緒に鬼ごっこして遊ばないかい?」
「おにごっこ?」
 なぁにそれ、という表情の子供もいれば、あっと何かを思い出したかのような顔になる子供もいる。生前に遊んでいたのかもしれない。
「ぼく、かくれおにならしってるよぅ」
 ほめて! という風に幼子が敬輔へと倒れ込んできた。ぐんにゃりとしてきたから抱える。お茶会で心身が解れきったのだろう、甘えられていることを感じた。
「今日はかくれんぼはだめだめ。怖い鬼にさらわれちゃうからね」
 いつ『狩り』が行われるのかは分からない。できれば目の届くところにいてもらおう、と敬輔は思う。
(「…………この集落の様子からして、例えここが闇の種族の箱庭だったとしても、大事に育てているように感じる。……今は」)
 狩りを行うにしても、きっと密やかに行われる。
 与える恐怖心は最小限に。いつかの実りのために与えられる、限定的な平穏。
 そう考えていると、はやくはやくと背中を押された。
「じゃあ、最初は僕が鬼ね。十数える間に……」
「おにいちゃんが鬼!」
「にげろ!!」
「……速いね!?」
 特に元気なのは少年だ。裸足で駆け去っていく姿はまさに蜘蛛の子が散っていく感じ。思わずといったように敬輔から驚きの声。
 最初に乗っかてきたその数人の特徴を覚えながら十を数えて、追いかけ始める敬輔。
(「よーし、まずはあの子から」)
 と真っ直ぐに向かい走れば、気付いたその子は方向転換。
「……って意外と君たちすばしっこいね!?」
 フェイントなるものを掛けられて一瞬立ち止まりそうになる。
 きゃあ! あはは! と楽しそうな甲高い声が渡って、様子を見ていた他の子たちも興味津々に。
「わたしも入っていい?」
「まぜて~」
 ピクニックシートから飛び出して、駆けて、ジャンプして。しまいには鬼役の敬輔へとちょっかいを出し始めた。
「いやいやいやもう引っかからないよ! それっ!」
 両腕を広げて、歩幅も広く対応できるように。そしてやや前傾姿勢となった敬輔が横へ逃げようとした子供をキャッチ。
「捕まえた!」
「あー、つかまっちゃった! じゃあ、次僕が鬼ね、いちにいさんし」
 と次の鬼の子がいきなり数え始めたので、敬輔はぱっと後退する。
「はやいはやい。さすが鬼だね」
 苦笑して踵を返した敬輔は若干真顔になってダッシュした。一目散だ。のんびりしてたらすぐに鬼の子が飛び掛かってくる予感しかない。
(「我ながら大人げないと思うけど――」)
 すっかり必死になってしまっている。
(「ここまで童心に返って遊べば上質な食材とみなされるんじゃないかな?」)
 数がわからない子には皆と一緒に声を上げて数えていって。
 天にも響く子供たちの笑い声に、敬輔もまた応えていく。仲間の作ったおもちゃ遊びを教えながら。
 今日も明日も。
 平穏無事な、日が続きますようにと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリシャ・パルティエル
魂人が食材…
それも弄んで食べるなんて悪趣味すぎるわ
食事と言うのは命をいただくことなんだから
感謝と愛情があってこそ
絶対に悪辣な晩餐会を止めて見せるわ!

自分を食材としてアピールするっていうのも
なんだか不思議な感じだけど…
この村の人たちが連れていかれないようにしないとね

あら、子どもが多いのね
じゃあ一緒に遊びましょうか
UCで簡単なおもちゃを作るわね
わなげとか縄跳びとか
難しくなさそうな遊びを一緒にやりましょうか

いつもはお手伝いとかしてるの?
どんな生活をしてるか聞いて
せがまれれば冒険やおとぎ話なんかをするわ

子どもたちはどこの世界でも純粋で真っすぐで
この子たちの未来を守りたいの
必ずこの世界に光を取り戻すわ



「魂人が食材だなんて……」
 小さく呟いたエリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)は表情を曇らせた。悲しみにではない。恐らくは闇の種族に対する怒りだろう。
(「それも弄んで食べるなんて悪趣味すぎるわ」)
 看過できない出来事だ。その食事会がまだ開催されていないことが救いだろう。エリシャはきゅっと作った拳を胸にあてた。
 食事とは、命をいただくこと。
 食べる方も、作る方も、感謝と愛情があってこそ。
 美味しいと思う気持ちは、悪人であろうとも純粋で善良なものから芽生えるものだ。
 それらが悉く無い闇の種族の晩餐会。
(「絶対に悪辣な晩餐会を止めて見せるわ!」)

 ちょっとしたお茶会のあとには鬼ごっこをして体を動かす子供たち。
 年齢層は大きな子から小さな子と様々で、ここは孤児院のような集落なのかもしれない。
 鬼ごっこに参加していない子供は小さな子ばかりだ。一部の女の子たちが面倒を見ている場所へとエリシャは向かった。
 お茶会用に敷かれたピクニックシートは可愛らしいものばかり。
 エリシャが挨拶をすれば、「こんにちは!」と女の子たちから挨拶が返ってくる。
「あなたたちは遊ばなくてもいいの?」
「うーん……? 今いっぱいだし」
「この子たちも見とかなきゃだよね」
 男の子たちは一目散に駆けて行ってしまったらしい。
「そっか。それじゃああたしと一緒に遊ばない?」
 ぱちんとウインクしてエリシャが誘ってみれば、女の子たちの目が輝いた。
「何をして遊ぶの?」
「小さい子も一緒に遊べる?」
 彼女たちの言葉を聞きながら、そうねぇとエリシャは思考する。ユーベルコード『聖ヨシュアの具現』によって作ったのは輪投げ一式だ。
 ポールは動物などのキャラクター、人形だったり、クリスマスツリーを模していたり。
「わあ、かわいい!」
「まずは輪投げで遊びましょう。ほら、こうやって投げるの」
 輪っかも丸だったり三角だったり。小さな子にも教えてあげれば、投げて遊んだり、ポールに直接輪をくぐらせたり。
 簡単な遊びにニコニコ笑顔が広がっていく。
「これ作れるかなぁ?」
「薪と、輪っかは蔓を編んで作れるかも」
 小さな子たちが遊ぶ様子を見て、相談する年長者たち。
「遊び道具を作るの? みんな器用なのね」
 だったらこれはどう? とエリシャは縄跳びの紹介。
「一人でもいいし、長いものにすればみんなで遊べるわよ」
 説明をしたら実際に遊んでみる。簡単な道具で遊べるものに魂人の子供たちは興味津々だ。
 息が上がりながらもはしゃいで、疲れたらお茶を貰って。
「こんなに遊ぶの久しぶり!」
「旅人さんがいっぱい来てくれて、よかったぁ」
 ピクニックシートに寝転がってのんびりする子供たちを見て、エリシャは微笑む。
「ふふ。みんなもたまにはお休みしなくっちゃ。いつもはどんなお手伝いをしているの?」
「うーんとね、領主さまが大きな木をくれるからそれを薪にしたり」
「あたしは料理! ハーブとか使うの、得意なの」
 畑仕事はみんなでやる。大人が少ないからと子供たちは積極的にお手伝いをしているようだ。
「お姉さんは旅人さんでしょう? いままでどんなところを旅してきたの?」
「さっきお空の国や夜の国の話を聞いたわ」
 仲間の猟兵が紡いだ物語を子供たちが教えてくれる。
「そうねぇ。あたしは砂漠の街に住んでたんだけど、そこには不思議な妖精の物語が伝わっててね……」
 エリシャが紡ぐのはおとぎ話だ。いたずら妖精のお話、魔法のランプのお話。
 ピクニックシートで寝転がって――遊び疲れたのだろう。幼子はエリシャの歌うような声を聴きながら、緩やかに夢の世界へと旅立っていく。
 あどけない寝顔に笑み零れる。
(「……ここも、闇の種族の箱庭なのかもしれないのね」)
 大事に育てて、実りきったら壊す。晩餐会のこともだが何をするにも悪辣だ。
(「この子たちは……ううん、子どもたちはどこの世界でも純粋で、真っすぐで」)
 今の時間を守りたい。この子たちの未来を守りたいと、エリシャは、猟兵たちは思う。
 死してなお与えられた時間は、過酷な環境に囲まれている。
 昏き闇の世界。
 彼らの生命――蠟燭のような灯りが儚い世界。
 それでもいつしか煌々と光の渡る世界となるように。光を取り戻せるように。
 子供たちが笑顔で暮らしていけるように。
 猟兵として抗っていくことを誓うエリシャだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
闇の種族さんは
相変わらず悪趣味極まりないです
イロハさんが怒り心頭なのも無理はありません

囚われている魂人さんを助けたり
集落から新たな犠牲者を出さないための
よい機会です
見事食材に選ばれましょう

子供さんが多いのにもホロリとします
こんなに早く亡くなられたのですね…

心身を癒し希望を示すのならば
いつも通りで良さげです

旅の楽士を名乗って
ダークセイヴァー含めて様々な世界の歌曲を
歌い演奏します

お子さん始め
皆さんのリクエストにもお応えをします
思い出の曲はありますか?

皆さんが幸せな記憶を忘れないよう
そして埋もれたいたそれを思い出せるよう
願って演奏します

絶望の暗闇に覆われていても
希望を持ち続けていれば
その光は
望む未来へと歩みを続ける導となります
どんなことがあっても
それを覚えていてくださいね

今日のささやかなこのひと時が
皆さんの新たな幸せな記憶になることを願います

食材として狩られる時にも
子供達や皆さんににっこりと微笑んで
安心させるように頷きながら
悠々と演奏を続けます



 猟兵たち――もとい集落を訪れた旅人たちが紡ぐお話は、あたたかなものだったり、不思議な世界での冒険だったり。
 子供たちは瞳を輝かせて聞き入り、大人たちは振舞われるお茶に心をほぐしている。
 毎日の営みのなか、ゆっくりと過ごす時間はあまりないのだろう。皆、喜んでいるようだ。
 子供たちとともに仲間のお話を聞いていた箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は彼らの様子を間近で眺めながら、にっこりと微笑む。
 不思議な世界での冒険のお話は仄々も行ったことのある世界で、紡ぐ猟兵の声とともに様々な思い出が彼の脳裏に駆け巡った。
「お空の世界は明るい音楽が多い世界でしたねぇ」
「ねこさんも行ったことがあるの?」
「はい。勇敢な人が多くいらっしゃって、私も勇気のおすそ分けをいただきました♪」
 明るく、朗らかに。
 子供たちにそう言った仄々は、勇気の湧いてくる曲をカッツェンリートで奏で始めた。
 竪琴が奏でるメロディがビートを刻む。自身を、友を鼓舞する歌は子供たちにも覚えやすいものだったらしい。音楽を初めて聴く彼らが口ずさみ始めれば、覚えやすいようにと仄々は繰り返し爪弾く。
「皆さんお上手です~」
 仄々が褒めると、子供たちははにかんだり照れくさそうな表情だったり。
 こういったさりげない行動から、集団で過ごしなれていることが分かる。
 子供の多い集落……ここは孤児院のような場所だった。暮らしの動線は子供たちのために築かれていて、いわゆる年長組はしっかりものだ。少しでも何かを学ぼうとしているのか、修理を手伝う猟兵の回りをうろちょろとしている。
 ここはもしかしたら闇の種族の箱庭なのかもしれない。子供たちはわざわざ集められているのかもしれない。そう猟兵たちは考えていて……それでも……。
(「こんなにも早く、この子たち亡くなられたのですね……」)
 魂人の子供たち。ダークセイヴァー上層へと転生した子供たちは、どの子も早すぎる死を迎えたのだという必然。
 潤んだ猫の目をぱちぱちと瞬き、仄々は溢れそうな涙を払った。
 彼の瞳は枯れを知らぬ若葉の色。胸を突く感情はきっと彼の音楽の水源だ。
 誰かの慰めになればいいとダークセイヴァー世界の曲を奏でていると、「楽士さん、楽士さん」と一人の女性が話しかけてきた。
「この曲を知らないかい?」
 そう問うて続いたハミングに、仄々はさっと指先を走らせた。触れた弦からポロン♪ と次の音階が響く。ポロロロン♪ 流れる曲に「これだ、これだ」と女性は嬉しそうに言った。
「焚火を囲んで、火よ盛れ、と歌いダンスする曲ですよね」
 仄々の言葉に、あれかと大人が頷き呟いている。
 焚火が長く続くように、というダークセイヴァーのおまじないも兼ねた歌曲。
「一曲頼むよ、楽士さん」
「ふふ、一曲と言わず何回でも奏でますよ」
 そうして始まったのは焚火のないダンスパーティ。パーティと呼ぶにはささやかなものだったが、簡単なダンスに子供たちも一緒に覚えようとするしぐさ。
 大切な、思い出の曲なのだろう。女性を始め、知っている大人たちは楽しそうだ。
(「皆さんが幸せな記憶を忘れないように――」)
 そして埋もれていたものを思い出せるようにと。
 そう願いながら仄々はより心をこめる演奏を。
「ねこさん、おんがく、素敵だね。あのね、とっても楽しくなる」
 仄々のそばに一人の男の子がそっと寄ってきた。竪琴の弦上を踊る指先を不思議そうに見つめている。
「褒めてくださってありがとうございます」
 奏でながら仄々は声を返す。
「あなたの言葉も、素敵ですよ。私はとても嬉しく思いました。あなたの言葉を、これからも皆さんにたくさん届けてあげてください。それはきっとその人の勇気になります」
「あっ、ゆうきのおすそわけ!」
「そうです。そしてその勇気はね、希望につながるんですよ」
 仄々は言葉を続ける。優しく、優しく微笑んで。
「絶望の暗闇に覆われていても、希望を持ち続けていればそれは光となり、望む未来へと歩みを続ける導となります」
 魂人となってなお続く過酷な世界。凄惨の余波が全大地に轟くダークセイヴァー。
「……どんなことがあっても、それを覚えていてくださいね」
 アップテンポの曲に、皆の足踏みや手拍子、歌と、音頭が揃い始めてくる。
 忘れかけていた思い出の曲。
 今日初めて知った、思い出となる曲。
(「今日のささやかなこのひと時が、皆さんの新たな幸せな記憶になることを願います」)


 ガラガラガラと悪路を走る馬車の音が近づいてくる。
 音に気付いた者から、一人、二人と、ハッとした表情になった。
「旅人さん、隠れたほうがいい」
「使者さまが来た」
 口々にそう告げられたが、仄々は安心させるように頷き、にっこりと微笑んだ。
 ともに暮らす大人たちが怯えの表情となれば、子供たちにも不安は伝播していく。
 今はそれでいいのだ。
(「食材として狩られるのは私たち、猟兵でなければなりません」)

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『愚滅の花園』

POW   :    花を炎で燃やす、刈り取るなど、物理的に罠を排除して進む

SPD   :    空を飛ぶ、花の敵意を逸らすなど、知略を尽くして罠を回避し進む

WIZ   :    幻を打ち破る、毒を浄化するなど、魔法的な手段で罠を解除して進む

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 きっと忘れられない、幸せなひとときとなるように。
 猟兵たちが心を尽くして魂人と向き合ったひととき。
 けれども幸せな時間を裂く音が集落にたどり着いてしまう。悪路を走る馬車の音。
 ハッとした大人たちが「きっと使者さまだ……!」「旅人さんたちは隠れた方がいい」と猟兵たちへ言うのだが、猟兵は首を振ったり頷いたりして集落の皆を落ち着かせる。
 降りてきたのは闇の種族の使者。
 だがいつも訪れる者ではないようだ。長は怪訝そうな顔になる。
「あの、領主様のお使いの方でしょうか? 今日はどういった御用で……?」
 長が進み出て問えば『使者』は曖昧に頷き、周囲を見回した。
「本日は晩餐会へ招待する者を迎えに参った。こちらの者たちは他領へと連れていく。何、心配はいらぬ。丁重にもてなすと我が主は仰っていた」
「ですが――」
 彼らは客人だ、と告げそうになった長の袖を一人の猟兵がそっと引っ張った。
「今日はありがとうございました」
 微笑んで言って、仲間とともに馬車に乗る。
 絶望を知らぬまたは忘れた無垢な者を狙っているのだから、荒事を用いて集落を襲うことはないだろう。
 心配そうに見送る彼らを振り返り、事が終われば元気な顔を見せに戻って安心させてあげよう。そう思って猟兵は軽く手を振った。


 長いこと馬車に揺られ、城の裏口を抜けて案内されたのは粗末な大部屋。
「晩餐会が開かれるまではまだ少々時間があります。しばらくの間、ここでお待ちいただきますよう――あ、扉は開きますし、部屋の外にも出れます」
 …………出入り、自由なのか。
 若干ツッコミたい気持ちになりながらも、猟兵はこくりと頷いた。
「ですが今、城内は主の客人が滞在なされていますし、備えられている城罠も危険なものばかりです。命が惜しければここで大人しく過ごすことをお勧めいたします」
「ほかの客人とは――」
「ああ、貴き御方が何名か。あとは皆さまと同じ身分の招待客です。こちらは異なる趣の晩餐会へ招待された客人ですので、皆さまには直接の関係はございません」
 そう告げて、使者は大部屋から出ていく。

 さて、ここからだ。
 異なる趣となる、または同じ晩餐会の食材であろう魂人たちの救出。
 滞在する闇の種族に見つからないように脱出する。
 大きな城罠となるであろう馬車の中から見た愚滅の花園は、名の通り、対策もなく愚のままに突き進めば植物の害に侵されること間違いなしだろう。
 毒を放っては心身の底で相手を蠢かせ、太蔦で拘束し身を砕き、悪意ある言葉を囁いて精神を侵すなどなど。

 健闘を祈りあい、怪しくもすんなりと開く扉をくぐり、猟兵たちは部屋の外へと踏み出した。
ガーネット・グレイローズ
外套の中に武器を忍ばせて、いざ戦いの場へ。
魂人の血肉を味わう、闇の晩餐会か。
私の体に流れる闇の血が、「貴族」の興味を引くだろうか?

花園。見た目だけは美しく手入れされているようだが…
毒の香りに幻覚の花粉、蔦はさながら絞殺魔か。
悪趣味もここまで極まるとむしろ清々しい気がしてくるよ。
だが、だからこそ心置きなく破壊できる。

【パイロキネシス・α】を発動させて、中空に火球を生み出す。
まずは厄介な毒の花を、サイキックの炎で燃やしていこう。
私の行く手を遮るのなら、すべて焼き払うまでだ。
ブラッドエーテルの赤い光を指先から鋼糸に流し、
《念動力》で操って伸びてくる蔦を切り払うぞ。
くだらない遊びは終わりだ、本気で来い



「私が先行しよう」
 ガーネット・グレイローズは外套の袖を整えながら仲間の猟兵たちへと告げた。
 少しでも城内の敵の目を惹きつけることができるならば、囚われている魂人とそれを連れて逃げる猟兵の助力となれるだろう。そんな心算を続けて述べた。
 部屋を出て小気味よく足音を響かせた。姿勢はより凛と正し、柘榴石のような深みある髪をなびかせて。
 部屋の外――牢番ならむ食材管理人の姿は見えない。
 城の構造的に、現在進んでいる廊下は使用人が使うものだろう。上位の者と鉢合わせぬ造りを見て、ガーネットは大広間近くまで続く道を選ぶことにした。
 石造りのひんやりとした城。
 使用人通路を出れば煌々とした灯りが城内を照らし出している。
 塩析されていない蝋燭の独特な匂いに混じって、ガーネットが嗅ぎつけたのは血臭であった。床に敷かれた絨毯はどす黒い赤色で――端々に本来の色が見えて――ガーネットは察した。絨毯に染み込み、石床にもこびりついた誰かの血。
(「晩餐会の開催はまだのはずだが……これは……」)
 過去、処刑された人のものだろうか。
 ダークセイヴァーにヴァンパイアが蘇って100年程。死してこの上層に転生した魂人は多い。
 闇の種族は趣向を何度も変えて、彼らを弄んでいたのだろう。……そう今回の遊び方は、
(「魂人の血肉を味わう、闇の晩餐会か」)
 カツリ。
 敢えて踵のヒール部を鳴らし、踵を返したガーネットは大広間に沿う廊下を突き進んでいく。迷いない足取りだ。
(「私の体に流れる闇の血が、「貴族」の興味を引くことができていればいいが……」
 何処からかの視線を感じながら彼女は城庭へと歩を進めていった。

 観賞用の庭には濁った赤い薔薇の生垣。
 小さな薔薇の群生もある。
 負けじと育つ小花たち。遠く見える東屋には色とりどりの花が添えられていて、美しい色合いを枠にこの庭を一望できるような造りだ。
 とはいえ、この花園の目的を知るガーネットにはそれが悪趣味なものに見えるのだが。
 渡れるように並べられた煉瓦道も綺麗なものであったが、すぐ横では蔦が蠢き這っていて、無力な者を引き込むようなしぐさ。
(「この花園は見た目だけは美しく手入れされているようだが……」)
 晩餐会という悪辣な趣向披露する闇の種族なのだ。
 東屋を見るに、花園で捕らえた魂人を眺めながらのお茶会なども行っていた可能性もある。
 毒で苦しむ者、幻覚に惑わされ狂人となる者、絞殺してくる蔦を相手に何度も永劫回帰した者の末路。闇の種族たちはそれを楽しんでいたのかもしれない。
(「悪趣味もここまで極まるとむしろ清々しい気がしてくるな」)
 ――だが。
 ユーベルコード『パイロキネシス・α』を発動させ、中空に火球を生み出すガーネット。
「――だからこそ、心置きなく破壊できるというものだ」
 余裕で100を超える火球の光はガーネットを煌々と輝かせる。
 繁茂する毒の小花たちを焼き払い、炎熱で空気を浄化させていく。
 驚いたように、ざんっと一度引いた蔦たちが刹那に垣根を作り上げ、煉瓦道にも乗り上げてきた。
 ガーネットが腕を振るえばスラッシュストリングが伸びていく。彼女の全身を駆け巡る、サイキックエナジーのエーテル体は赤き輝き。指先から鋼糸まで彩る赤が一瞬たわみ、あらぬ方向へと駆けて行った。
 念動力によってあらゆる法則を無視し、自在に動くスラッシュストリングは太く豪胆な蔦をも真っ二つに。
 蠢く身体を失った蔦先がばらばらと地面に投げ出されていった。
「くだらない遊びは終わりだ、本気で来い」
 そう声を渡らせ、告げたガーネットを囲おうとする生きた花園。
 狩りは続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディル・ウェッジウイッター
アドリブ・連携歓迎

裏口から案内されるとは…歓迎されたいわけではありませんが騙すにしても随分雑ですね
とはいえ彼らがこちらにあまり気を向けてないのは僥倖。今のうちに脱出しましょう

闇の種族に見つからない様に気を付けつつ…魂人の方を見つけたらお声がけをしたらお茶を淹れます
こういう時こそですよ。お茶というものは心を癒すものです
お茶を楽しみましたらば脱出と参りましょう

花園は人気と植物が少ない経路を見繕い移動します
…そうそうお茶は心を癒すとは言いましたがその影響は人だけではありません
それは植物、生命体・自然現象も
お茶の良き香りだけでもつい、心を許してしまうものです
先のお茶の香りが無くなる前に行きましょうか



「裏口から案内されるとは……歓迎されたいわけではありませんが、騙すにしても随分と雑ですね」
 ディル・ウェッジウイッターの言葉には頷けるものがあったのだろう。彼の言葉を皮切りに、今後のことが話し合われる。
 食材ゆえに、闇の種族のように正式な招待客ではない――。城の構造を察した一人の猟兵が囮も兼ねて使用人通路から、上位の者が行き来する場所へ近づくこととなった。
 魂人の捜索もある。使用人通路から地下牢まで。猟兵たちは別々の場所を探索していくことにした。

(「ここは――」)
 ひと気のあった城の台所付近を避け、ディルが歩を進めた先には廃材が積み込まれた部屋があった。扉のないそこへ目を向ければ壊れた樽、行李、大きな鳥籠。そこに横たわるようにして一人の魂人の姿。少年だ。
「もし……大丈夫ですか?」
 跪き、そっと声を掛ければ、少年の目はゆっくりと開いた。焦点は合わず、ぼうっとしている。それでも緩やかに起き上がってディルを視界におさめたので認識はしているようだ。隙間もない場所を無理やり後ずさっていく。
「怖がらないでください」
 ディルは優しく話しかける。
 酷く虐げられていたのだろう。少年の身体には小さな怪我が無数に残っている。ぼうっとしていた瞳はゆるゆると涙の膜が張られていった。
「ああ、大丈夫ですよ。一緒に逃げましょう」
 そう励まし、宥めながらディルの手元は動く。彼はティーソムリエ。お茶でひとときの安らぎをもたらす能力者。この場末なところで立った香気はまさしく場違いなもの。だからこそ、この場には無かった安らぎの香りは活きてくる。
「さあ、これを飲んで。お茶というものは心を癒すものです」
 心温まるもの。
 戸惑っていた少年だったが、立った湯気が頬をくすぐったのか誘われるように恐る恐ると口をつけた。
「…………い、しい」
 掠れた声で一言。少年はおいしいと告げて、瞳からほろり涙が零れ落ちる。

 少年の手を引いて花園へと出たディルは、先行した猟兵の焼き跡を見つけて思わず微笑んだ。
 だが少年の足は不自然に立ち止まる。浮かぶ表情はまたもや虚ろなものになっていき――ディルは彼の手をぎゅっと握りしめた。
 あれから一言も喋っていない少年であったが、ディルの手に反応して彼を見上げてきた。
 大丈夫ですよ。
 何度もかけた安心させる言葉を再びディルは告げる。
「お茶は心を癒すとは言いましたが、その影響は人だけではありません」
「……?」
「植物、生命体、自然現象もお茶の良き香りだけでもつい、心を許してしまうものです」
 ユーベルコード『フレグランス・カパ』
 彼が言った通り、お茶を淹れてからすべての環境が彼らに対して友好的なものとなっている。
 焼き跡を覆うように這いだした蔦は彼らの近くまできた瞬間、従順なただの植物をなった。
 毒ある花は清楚な花であるかのようにふるまっている。
「先のお茶の香りが無くなる前に行きましょうか」
 少年を促すディル――踏み出す勇気は彼の元にある。
 ディルの声を噛みしめるように聞いていた少年は、何かを決意したかのように頷いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【一応POW】
アドリブ連携大歓迎

まあ、闇の種族にとっては
俺らがこの部屋から出ようが出まいが問題ないんだろうな
もっとも、最初から食材になる気はないから
さっさと魂人を助けにいくけど

指定UC発動し視聴嗅覚を遮断した上で
「闇に紛れる」ように部屋を脱出
俺らの脱出が露見するのは遅ければ遅いほどいいから

問題は花園を抜ける手段か
僕だけなら「毒耐性」で多少の毒は耐えられるけど
帰りの事を考えるとある程度は刈り取った方が安全か
黒剣に「属性攻撃(炎)」で炎を宿し
迫る太蔦や毒花を刈り取り道を開こう

魂人の下に辿り着いたらUC解除
助けに来た旨簡単に伝え一緒に逃げるよう促そう
もし拘束されていたら拘束を「部位破壊」で破壊だ



 招待と口では言いながら、裏口から通されて入れられた部屋。
 明らかに種の違う招待であることは猟兵たちも承知のことである。
「まあ、闇の種族にとっては僕たちがこの部屋から出ようが出まいが問題ないんだろうな」
 軽く肩を竦めて仲間へと言う館野・敬輔。
 敢えて単独で囮を兼ね別路から先行する猟兵、囚われの魂人を捜索する猟兵と手を分けていくことを話し合う。
「城内の魂人は任せる。僕は花園に捕らわれた人がいないか、見ていこう」
 そう言って、黒騎士は闇に覆われた世界にて闇を呼ぶ。
「憎悪抱きし魂よ」
(「漆黒のオーラとなりて我が身を隠蔽し、悪しき意を討つ力になれ――」)
 黒剣から闇色の魂魄が放出され、敬輔の身体に纏わりはじめる。
 部屋から使用人通路へと出れば点在する灯。闇に紛れる敬輔はその光に触れぬよう、歩を進めていった。

 使用人通路から外へと出れば、生い茂る緑地にダークセイヴァー世界ではあまり見ぬ花々が咲き誇っていた。
 本城をぐるりと囲うこの花園。敬輔は、自身が行く方角に不自然な小屋があることに気付いた。
(「庭を整えるための道具小屋だろうか……?」)
 だがここは毒の花や蠢く太蔦がある、いわゆる危険地帯だ。手入れを必要としているようにも思えない。何故ならばその庭師にも害を及ぼすからだ。
 敬輔は思考を変えて小屋に近付いてみることにした。
(「もし魂人がいるのなら、帰りのことを考えた方がいいな」)
 自身だけならば毒花や蔦へ難なく対処できるだろう。敬輔は冷静に先のことを見据え行動する。
 ユーべルコード『魂魄剣舞・闇黒遮断』により、植物に感知されることなく花園へと踏み入る敬輔。纏う漆黒のオーラは植物たちの生命力や気力を奪っていった。そこに加える決定打。
 抜刀した黒剣で周囲の植物を刈り取っていく。
 散る草花は黒剣が宿した炎に巻かれ、地面に残された側も火が走り直ぐに灰と化した。
 熱気が毒粉を虚空で焼き払っていく。

 たどり着いた小屋は扉がなく、花園の蔦が侵入し小屋内に蔓延っていた。
 そこには蔦に捕らわれた魂人の姿。生命力を奪われ続けているようで、ぐったりとしている。
「っ」
 蔦群へと剣を振り下ろし、引くように斬り払って拘束を解く。
 同時に漆黒のオーラをその身から剣におさめた敬輔は、「大丈夫か?」と駆け寄った。
 声を掛け、魂人の身体に触れれば、彼の身は僅かに身じろいだ。薄らと瞼が開く。
「……ここは……?」
「――、敵地だ。僕は救助に駆け付けたのだが……動けるか?」
 籠手に包まれた右手を差し出すと一瞬の躊躇を見せながら、魂人はそれに応じた。敬輔を信じることにしたのだろう。
 立ち上がるのに手を貸し、彼が動けることを確認した敬輔は力強く頷いた。
「行こう。ここから生きて出るんだ」
 そう告げて。
 花園を行くために、敬輔は再び剣を取った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ココ・エネコ
アドリブ・連携〇

さぁ、いよいよ憎きやつらのアジトに入ったにゃ〜覚悟は出来てるんだろうにゃ〜?

さて、この花たちは結構危なそうにゃね?

ここは「覚悟」を決めて全部もぎ取ってやるにゃー!

にゃにゃにゃにゃ!
「怪力」に「覚悟」をきめて幻やらなんだろうがドンと来いにゃー!

こんな危ない花を育ててるなんて悪趣味にゃ!

きっと魂人さんを食べてるやつはとんでもないやつにゃ!

会った瞬間ネコパンチをおみまいしてやるにゃよー!



 闇の種族の『食材』が、猟兵たちがいなければきっと子供たちであったことをココ・エネコは理解していた。
 敵が催そうとしている晩餐会のことを聞いて、ふつふつと少しずつ心に溜まっていった憤りをぶつけるには、今。部屋から花園目指して駆けていく。
 憎きやつらのアジト。音なくしなやかに走っていくココは、ケットシーの身のこなしを最大限に利用して素早く動いたり、怪しいところは一回身を潜めたり。
 警戒に尻尾をゆらゆらと動かしながら、ココは城の使用人通路を進んでいく。
 そうしてたどり着いた『花園』は緑豊かで色とりどりの花が咲く綺麗な場所。
 けれども凛と開かれたその猫の目に映る虚空の靄は――花粉だろうか?
(「怪しいにゃぁ」)
 覚悟を決めて、くん、と一瞬嗅いでみれば、
「――。……ふにゃっ……!」
 ココの頭はくらっとして、視界の端に黒い人影が映り込んだ。
「!?」
 花園を覆う太蔦は鞭のようにしなり、咲く花は自身がラッパであるかのように軽快な曲を紡ぎ始めた。それが大群となれば大合唱だ。 
「こ、これは幻覚・幻聴にゃ!」
 踊り狂う花園の植物たち。ココは自身が浸食されていくような何かを感じとり、ぶるぶると頭を振った。
「なんて悪質にゃ! 全部もぎ取ってやるにゃ!」
 手近の太蔦を掴み引っ張れば、ココの怪力によってあっけなく太蔦は寄せられてくる。蠢く蔦はまるでびちびちの大魚のようだ。しっかりと抱えて押さえ込んだココは走りながら、地面からべりべりっと蔦の根っこを引きはがし、ついでに振るった。
 太蔦の振り回しに毒花たちが轢き潰されていく。
「囚われた魂人さんが脱出しようとしても、この花園がある限り難しいにゃ!」
 城から出たところできっと花園に捕まってしまう。東屋があるあたり、花園でもがき苦しむ者を鑑賞する余興などもあるのかもしれない。
「にゃにゃにゃにゃ!」
 低木の群生に飛び込んで咲く花をもぎとっていくココ。
「こんな危ない花を育ててるなんて悪趣味にゃ! きっと魂人さんを食べるやつはとんでもないやつにゃ!」
 自身が毒花粉まみれになってくると端にいた黒い人影がいつの間にか、ココの側にいた。
「にゃ!」
 ネコパンチを繰り出せば硬い衝撃。
「にゃ!?」
 どぉん! と音を立てて崩壊する何か――ぱちぱちと目の瞬きを繰り返して、見えてくるもの――それは棘に覆われる花や蔓で飾り立てられたパーゴラだった。
 そして自身の足元の芝生は赤黒く変色している。
 ココの目にはこの場所自体が拷問場であるかのように見える。
「……ゆるせないにゃ」
 目を座らせ、冷え冷えとした声でココは呟く。
「まだまだもぎ取ってやるにゃー!」
 手を植物の汁に染めながら、ココの献身はより発揮されていくこととなる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
容易に外へ出られる状況も晩餐会の一環か
…行動は変わらない、魂人を探し脱出だ

花園に近付いたらカード型ドローン【対人随伴型自編律ビーム兵器「ムーンフェイス」】を放ち、狼の姿に変身
進路上の花の近くを飛び回るよう予めドローンに指示
ドローンが花の注意を引いている間に駆け抜けたい
拘束する蔓は搭載するレーザーで排除する

ユーベルコードの強化に加えて狼の姿では普段より鼻が利く、匂いを追跡して魂人の捜索を試みる
同様に四足で駆ける速さによって一気に突破したい
敵の発見を遅らせる為、体勢は低く保つ
好まぬ姿だが役に立つなら躊躇わず利用

魂人を発見したら脱出を促す
時間がない、ここを離れるぞ
…晩餐会の“食材”は俺達自身だからな



 同じ城内、花園と魂人を捜索しにいく猟兵たちの一人はシキ・ジルモントだ。
「……容易に外へ出られる状況も晩餐会の一環か」
 余興でもあるのか、それとも何か別の思惑も絡んでいるのか。先のことを考えれば少々緩すぎる状況ではあったが、猟兵たちの行動は変わらない、とシキは思う。やるべきことは見えているのだ。
 連行される馬車の中から様子を伺った闇の種族の城。
 本城であるこことは別に、囲壁といくつかの分塔があるようだ。分塔は蔓に覆われており、放置されている感じがした。
 そこらへとたどり着くための花園は薔薇の生垣と背高の植物群が繁茂する場所だ。
「花たちの注意を引け」
 銀色のカードをシキが放てば、それは勢いを落とすことなく空をゆく。カード型ドローンである対人随伴型自編律ビーム兵器「ムーンフェイス」は24枚。カードたちはシキの進行方向を軸にして四方へと低く飛翔した――草木をかき分け、虚空にある毒花粉を散らし、何枚かはそれぞれのチームを作っているのか大きな個体として動いている。ベイト・ボールだ。
 釣られた太蔦がカードを追いかけていった。
 そして狼の姿となったシキが草地を駆けていく。
 カードに誘導される太蔦によってなぎ倒された生垣の間を通り、カードがレーザーで焼いて無力化した毒花群を狼の足がとどめとばかりに踏み散らしていく。
 ――あまり、シキはこの姿を好んでいない。
 それでも今回躊躇わずに狼となった理由は、魂人のため。
 狼の鼻で魂人となってしまった彼らを見つけるため。魂人の体は、心は、上層といえども変わらぬダークセイヴァーの民の匂いがした。
 涙に染まった、けれども耐えている人々の匂い。
 その匂いが分塔から出ている――加えて花園に残された血の匂い――見れば豪奢な東屋が建っていて、茶会のための催しも開かれている。そんな気がした。
 分塔のうちのひとつへと飛び込んだシキは即座に部屋を嗅ぎ当てた。
 扉のない部屋へと入る姿は人のもの。
「! どなたですか」
 なかにいた一人の子供を守るようにして、魂人の男がシキへと問う。物音を立てずに入ってきたシキへの対応が遅れたのだろう。垣間見えるは子供を隠れ場所へと追いやるようなしぐさ。きっと常に誰かの訪問に対して隠れやり過ごしていたのだ。
「時間がない、ここを離れるぞ」
「どこへ――」
「城から脱出するんだ。………開かれる晩餐会の“食材”は俺達自身だからな」
 シキの言葉に息を呑む男。
「わ、わかりました」
 頷く男の手にひかれた子供。二人は遠くから連れてこられたらしいことを言う。荷物はなく身ひとつだ。
 今だカードが翻弄する花園へと三人は入っていく。
 今度はより開かれた、安全の確保された場所を選び進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリシャ・パルティエル
なんとか村の人は守れたみたいね
無事脱出して顔を見せて安心させてあげなきゃ
ここに連れてこられた他の魂人もいるみたいだし
みんなも一緒に連れ出すわ

まずは他の魂人を探すわ
同じようにどこかの部屋に案内されてるはず
そう遠くにはいないと思うんだけど

仲間とも協力や役割分担できるといいわね
魂人たちを見つけたら
このままでは晩餐会の食材にされてしまうこと
一緒に逃げることを伝えるわ
不安になるだろうけど
持ってる飴を配って甘い癒しのひとときを
それからUCで勇気づけて
魂人たちの意思を尊重して脱出したいわね

愚滅の花園の対処は他の仲間もしてくれるだろうし
あたしはUCで回復の補助を行うわ
心を落ち着かせるため
声をかけ続けて進むわね



 一時的に惑わしも兼ね敵の目を引きつけるために動く猟兵。
 花園への対処へと真っ直ぐに向かう猟兵。
 馬車内から確認できた城の分塔を見にいく猟兵。
 手分けしての対処と魂人の捜索に、
「それなら、あたしは近くの部屋から見て回ってみるわ」
 エリシャ・パルティエルは自らの役割を告げた。
 本城内の近くでは、罠の施されていそうな一角へ向かうケットシーの猟兵と手分けしての捜索となる。
(「案内人は異なる趣の晩餐会と言っていたから……近くにはいるはず」)
 静かに対策の会議と、脱出とを行っていく猟兵たちであったがその気配を感じ取った魂人はいないだろうか? 彼らのたてる微かな物音はないだろうかと耳を澄ませて使用人通路をいくエリシャ。
 奥まった場所まできた時、ひそひそとした声が耳に届いた。出所らしき扉のない部屋を除くと、小さな子と母親ほどの年齢の魂人がそれぞれ三人ずつ。計六人。
「見つけられた、良かったわ」
 ほっとしてエリシャが部屋へと入れば、女たちがぱっとエリシャの方を見た。
「新人さん? お嬢さんも、子供の面倒を見る様に言われたの?」
 彼女たちの言葉にエリシャは首をかしげる。
「どういうこと?」
「私たちは孤児がいるからと集められたのさ。皆、自分の子がいないかと思ってね……」
 下層で死別した子供たち――その存在はいつまでも彼女たちの心残りなのだろう。自身の子がいなくとも手を貸してやりたいと、そう思って収集に応じた様子。
 ……だが、闇の種族の本当の目的は晩餐会なのだ。
 ふるふるとエリシャは頭を振った。
「ここから一緒に逃げるのよ。このままでは皆、闇の種族の餌食になってしまうわ」
「餌食……」
「ええ、彼らの晩餐会のために用意された食材、それがあたしたちなのよ」
 ひっ、と引き攣った声が上がった。
 怖がらせてしまうが――彼女たちは不安になるだろうが――それでも必ず逃げきってほしいから。
「あたしには仲間がいるの。皆の脱出を無事に、安全に、助けてくれる強~い仲間がね」
 だから大丈夫、勇気を持ってとエリシャは魂人を励ます。
 その言葉とともに、希望と勇気を与える聖なる光が蛍のように優しくふわりと舞った。聖ヴェロニカの託宣を受けて女たちは頷く。その腕にしっかりと幼子を抱えて。
「そうだ、この飴もどうぞ。さらっとすぐに口の中で溶けちゃうから、小さな子も食べられるわ」
 甘いものを食べて、癒しのひと時を。
 エリシャの行動に母役をしていた三人の表情はほぐれ、幼子も甘味を口にして笑顔になった。

(「ガーネットが遠回りの道で。ココは真っ先に向かっていっただろうから……」)
 ココが選んだ経路を辿り花園へと出てみれば、もぎ取られた毒の花。焼かれた場所もある。
「ここの花園は危険だから、花には絶対に触れちゃだめよ。動く蔦には気を付けて」
 あたしの後をついてくれば大丈夫だから。
 そう言ったエリシャは後ろの六人を気遣いながら歩を進める。
「ね。皆は元いたところに帰れそう?」
「……どうだろう。結構な長旅だったから場所がわからないのよね」
「私は旅をしている途中で連れてこられたから……」
 そう、と優しく頷くエリシャ。
 彼女から放たれるふわふわと舞う光粒は後ろの六人だけではなく、花園への対処をしている仲間たちの元へも届く。「にゃにゃー!」と気合の入った声が聞こえてきて、エリシャはふふと微笑んだ。
「あのね、あたしたちがお世話になった村があるの。子供がたくさんいてね、孤児院みたいな場所だったわ。しばらくそこでお世話になるのはどう?」
 そのまま定住してもいいし。とエリシャ。大人手が増えるからきっと喜んでくれるだろう。
 エリシャ自身、ここでの『戦い』が終われば顔を出して村の人たちを安心させてあげたいと思っていた。
 行く先が決まって、魂人の表情にどこか安堵めいたものが浮かんだ。
「案内するわね」
 皆に向かってにこっと微笑んで。
 花園を抜ける間、エリシャは未来に向けた小さな約束を重ねていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


「囚われの魂人さん……どれほど不安でおられることか」
 大部屋から廊下、その先の気配を窺う猟兵たちの後方で箒星・仄々はそわそわと脱出の時を待っていた。
 上位の闇の種族の関心を引きつけるために一人の猟兵が。
 なるべく花園での安全を確保したい猟兵が。
 本城以外で囚われているかもしれない魂人の探索。
 猟兵たちそれぞれが向かう場所を決めていくなか、仄々は挙手をする。
「私は、罠がありそうな怪しい場所を探索していきます」
 罠の対処に案がある仄々がそう告げれば、わかったわ、と頷く猟兵が一人。
「それなら、あたしは近くの部屋から見て回ってみるわ」
「よろしくお願いします、エリシャさん」

 敵である闇の種族のための大玄関。
 それと使用人の出入り口――仄々たちが通されてきたこの道は比較的安全だろう。
(「私が向かうべき場所は……」)
 差し足、抜き足、忍び足。ケットシーの可憐な足先とそっと前へと出せば、それを受け止めるのは冷たき床ではなく厚みのある空気。渦巻く風が仄々の抜き足を誘い、音を立てることのない忍び足を招く。
 トリニティ・エンハンスによって強化された仄々は今、風の魔力に高められている状態だ。そんな彼が向かったのは大広間。開け放たれた扉をくぐる前に気配を探れば――殺気に猫のヒゲがびりびりと震えた。けれどもソレを向けられる対象は仄々でも、魂人でもなく、先行した猟兵に向けられたものだ。
 風の魔力を渡らせてゆけば、吸い込まれるような一角があった。
 小さく、本当に小さくカッツェンリートの弦を弾けば、渡っていく風に一音が乗せられた。ケットシーの耳は遠く行く音色、反響してくる音色を慎重に捉えていく。
 ひとつひとつの丁寧な確認。この工程は後々の安全を確保するためのものだ。
 行く先にこの道を仄々は選んだ。
 故にこの道は脱出のための道にもなる。
(「まだ晩餐会や……ショーの準備はされていないようですね」)
 詰めていた息をほうっと吐いて、仄々は大広間の壁沿いを伝っていく。炎と水の魔力を顕現させれば、城内の光は仄々を見失った。光を屈折させてのかくれんぼだ。
 敷かれた絨毯は赤黒い。血臭に満ちていて、この大広間でどんな惨状が繰り広げられてきたのか……察するのは容易だろう。
 この大広間は使用人通路、玄関へと続く通路、階上へと行く階段、それともう一つ……階段に隠されるようにほの暗い出入り口があった。
 その先に続く螺旋階段を下りていけばひそひそとした声が聞こえてくる。明かりはない。真っ暗闇で、微かに空気を震わせる声。それは会話ではなくって、ただの呟きだ。
 ――助けて、助けて。
 ――ここから出して。
 カッツェンナーゲルを取り出した仄々は、その剣に自身の魔力を渡らせた。蝋燭のようなほんのりとしたあたたかな光が灯る。
 途端に視線が集中する。
「皆さんを助けに来ました」
 ぺこりとお辞儀をして、魂人を見る。牢屋に囚われた魂人は少女が三人。
「たすけに……」
「ほんとに……?」
「はい。助けに来ました。大丈夫ですよ……どうか信じてください」
 キンッと細剣で牢の錠前を壊し、扉を開ける。
 少女たちは、この暗闇故にいつこの牢に入れられたのかは分からない様子であったが、歩けることからそんなに日数は経っていないことは分かった。
 大広間を抜けるときは、仄々は上空に位置取り、トリニティ・エンハンスを強めた。屈折させた光は刹那の迷彩となり、その間に三人は一番近くの使用人通路へと飛び込む。
「こちらです」
 仄々は罠がないことを確認した通路へと案内し、少女たちとともに駆けていく。

 仄々たちの脱出は一番最後だ。
 花園の対処へ動いていた猟兵たちが作り上げた道――だが、ダークセイヴァーの闇の種族に飼われる植物たちは一筋縄ではいかないらしい。
 花園全体に仕込まれた、植物の活性化という罠は焼けた地を再び蔓が覆っていく。焼け跡の灰を栄養に、咲かんとする毒の花々。
「ケットシーさん……!」
 刻一刻と変化していく花園の光景に戦く少女たち。
 すでに彼女たちの心を蝕んでいる恐怖を払うように、仄々はカッツェンリートの音色を響かせた。
 叩き込んだ魔力は一瞬の暴風、つむじ風を生み、方々へと毒花粉を散らしていく。
 細剣を繰り出せば、宿らせた炎の魔力が花や蔓を焼き切る。
「行きましょう!」
 仄々の凛とした声にハッとして走り始める少女たち。先頭に立つ仄々を先導するのは、仲間の猟兵たちが残した力の跡。
 しかし、
『戻る場所なんかないくせに――』
『行く先は廃人の園でしかないのに――』
 花園の悪意ある声は仄々の耳にも届く。
「いいえ!」
 カッツェンリートの拡声機能に仄々の声がのる。
「戻る場所はあります。見つけられます。私は皆さんと皆さんの思い出を守り抜く――そのためにここにいるのですから」
 そしてこれからも、幸せな思い出を作っていってほしい。
 誰かの力になりたい。仄々の願いは、どんな存在にも等しく開かれる未来を想うもの。
 今まで貰ってきた恩を、未来へと返していくのだ――。
箒星・仄々
どれ程不安でおられることか
一刻も早く助け出しましょう

風の魔力でふわふわと浮遊移動
猫ですから忍足は得意ですけれども
床の罠への用心です

更に風を操作して
弦を小さく鳴らした音の反射をソナーとして
館内の構造や罠を探知しながら進みます
お耳とお髭がぴく

魔法的な罠も魔力で中和したり
掻い潜ったりします

同様に風で音を運べば
遠くの物音も聞き取ることが出来ます

足音や話し声等が近づいて来たら
炎と水の魔力を操り
光を屈折させて迷彩として隠れんぼです

その内に
囚われの魂人さんたちの話し声が
聞こえてくるでしょう
そちらに向かいます

皆さんを助けに参りました
どうか信じて下さい

脱出の際は
風の魔力で疾く動いて
魂人さん方を庇います

毒の花粉や香りを風で吹き払い
万が一の時は水の魔力で浄化し
蔦を焼き切ったり風で斬り捨てたり
悪意ある言葉を音を操作して妨害したり
少しだけ竪琴を爪弾いて音色でかき消したりします

ここを抜ければもうすぐです
皆さんと皆さんの思い出を守り抜きますよ



「囚われの魂人さん……どれほど不安でおられることか」
 大部屋から廊下、その先の気配を窺う猟兵たちの後方で箒星・仄々はそわそわと脱出の時を待っていた。
 上位の闇の種族の関心を引きつけるために一人の猟兵が。
 なるべく花園での安全を確保したい猟兵が。
 本城以外で囚われているかもしれない魂人の探索。
 猟兵たちそれぞれが向かう場所を決めていくなか、仄々は挙手をする。
「私は、罠がありそうな怪しい場所を探索していきます」
 罠の対処に案がある仄々がそう告げれば、わかったわ、と頷く猟兵が一人。
「それなら、あたしは近くの部屋から見て回ってみるわ」
「よろしくお願いします、エリシャさん」

 敵である闇の種族のための大玄関。
 それと使用人の出入り口――仄々たちが通されてきたこの道は比較的安全だろう。
(「私が向かうべき場所は……」)
 差し足、抜き足、忍び足。ケットシーの可憐な足先とそっと前へと出せば、それを受け止めるのは冷たき床ではなく厚みのある空気。渦巻く風が仄々の抜き足を誘い、音を立てることのない忍び足を招く。
 トリニティ・エンハンスによって強化された仄々は今、風の魔力に高められている状態だ。そんな彼が向かったのは大広間。開け放たれた扉をくぐる前に気配を探れば――殺気に猫のヒゲがびりびりと震えた。けれどもソレを向けられる対象は仄々でも、魂人でもなく、先行した猟兵に向けられたものだ。
 風の魔力を渡らせてゆけば、吸い込まれるような一角があった。
 小さく、本当に小さくカッツェンリートの弦を弾けば、渡っていく風に一音が乗せられた。ケットシーの耳は遠く行く音色、反響してくる音色を慎重に捉えていく。
 ひとつひとつの丁寧な確認。この工程は後々の安全を確保するためのものだ。
 行く先にこの道を仄々は選んだ。
 故にこの道は脱出のための道にもなる。
(「まだ晩餐会や……ショーの準備はされていないようですね」)
 詰めていた息をほうっと吐いて、仄々は大広間の壁沿いを伝っていく。炎と水の魔力を顕現させれば、城内の光は仄々を見失った。光を屈折させてのかくれんぼだ。
 敷かれた絨毯は赤黒い。血臭に満ちていて、この大広間でどんな惨状が繰り広げられてきたのか……察するのは容易だろう。
 この大広間は使用人通路、玄関へと続く通路、階上へと行く階段、それともう一つ……階段に隠されるようにほの暗い出入り口があった。
 その先に続く螺旋階段を下りていけばひそひそとした声が聞こえてくる。明かりはない。真っ暗闇で、微かに空気を震わせる声。それは会話ではなくって、ただの呟きだ。
 ――助けて、助けて。
 ――ここから出して。
 カッツェンナーゲルを取り出した仄々は、その剣に自身の魔力を渡らせた。蝋燭のようなほんのりとしたあたたかな光が灯る。
 途端に視線が集中する。
「皆さんを助けに来ました」
 ぺこりとお辞儀をして、魂人を見る。牢屋に囚われた魂人は少女が三人。
「たすけに……」
「ほんとに……?」
「はい。助けに来ました。大丈夫ですよ……どうか信じてください」
 キンッと細剣で牢の錠前を壊し、扉を開ける。
 少女たちは、この暗闇故にいつこの牢に入れられたのかは分からない様子であったが、歩けることからそんなに日数は経っていないことは分かった。
 大広間を抜けるときは、仄々は上空に位置取り、トリニティ・エンハンスを強めた。屈折させた光は刹那の迷彩となり、その間に三人は一番近くの使用人通路へと飛び込む。
「こちらです」
 仄々は罠がないことを確認した通路へと案内し、少女たちとともに駆けていく。

 仄々たちの脱出は一番最後だ。
 花園の対処へ動いていた猟兵たちが作り上げた道――だが、ダークセイヴァーの闇の種族に飼われる植物たちは一筋縄ではいかないらしい。
 花園全体に仕込まれた、植物の活性化という罠は焼けた地を再び蔓が覆っていく。焼け跡の灰を栄養に、咲かんとする毒の花々。
「ケットシーさん……!」
 刻一刻と変化していく花園の光景に戦く少女たち。
 すでに彼女たちの心を蝕んでいる恐怖を払うように、仄々はカッツェンリートの音色を響かせた。
 叩き込んだ魔力は一瞬の暴風、つむじ風を生み、方々へと毒花粉を散らしていく。
 細剣を繰り出せば、宿らせた炎の魔力が花や蔓を焼き切る。
「行きましょう!」
 仄々の凛とした声にハッとして走り始める少女たち。先頭に立つ仄々を先導するのは、仲間の猟兵たちが残した力の跡。
 しかし、
『戻る場所なんかないくせに――』
『行く先は廃人の園でしかないのに――』
 花園の悪意ある声は仄々の耳にも届く。
「いいえ!」
 カッツェンリートの拡声機能に仄々の声がのる。
「戻る場所はあります。見つけられます。私は皆さんと皆さんの思い出を守り抜く――そのためにここにいるのですから」
 そしてこれからも、幸せな思い出を作っていってほしい。
 誰かの力になりたい。仄々の願いは、どんな存在にも等しく開かれる未来を想うもの。
 今まで貰ってきた恩を、未来へと返していくのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『『死合わせのクローバー』モルテ』

POW   :    死が導く紋章
【紋章形態】になる。肉体は脆弱だが透明になり、任意の対象に憑依して【死合わせの紋章】を生やし、操作あるいは強化できる。
SPD   :    死合わせの群生地
レベルm半径内に【クロツメグサの群生地】を放ち、命中した敵から【寿命】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ   :    死によって解放されるもの
【対象の記憶の中】から【闇色の四葉のクローバー】を召喚する。[闇色の四葉のクローバー]に触れた対象は、過去の【対象が交わした約束の重さ】をレベル倍に増幅される。

イラスト:灰色月夜

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 救出した魂人を連れ、闇の種族の城から脱出する――。
 だが脱出した直後に現れたのはクロツメグサの群生地。来るときにはなかった植物群が猟兵と魂人の行く手を阻もうとしていた。
「あれあれ? 食材が逃げようとしているよ?」
「主を失った隷属の種は、新しい主を宿してあげなくては」
 クロツメグサの群生地からふわり浮上し現れたのは『死合わせのクローバー』モルテたち。
『死合わせの紋章』を持つモルテたちは、その名の通り、『死が二人を分かつまで』……つまり死して下層での『契約』が切れた魂人を新たな主――闇の種族――へと導く存在だ。
「新鮮な種もいますね?」
「新しい主の元へと導いてあげましょう」
「絶望、恐怖、憤怒、果てに黯然銷魂」
「隷属する『幸せ』、それは感じて当然であるべきです」
「死んだ苦しみ、死ぬような苦しみ、昇華する負の感情、ぼろぼろの肉体が蘇る瞬間の痛みは永遠に、堕ちゆく魂が狂人となる瞬間」
「ヒトが誰もが持つ死に際、それを何度も繰り返し、主たちに刹那の愉しみを与えられることができる存在、魂人。主たちが得ようとするのも納得というわけです」
 にこり。
 微笑んで、言葉の毒を吐いて、モルテたちは猟兵や魂人へと近付いてくる。
 倒さなければ、一生ついて回る刺客ともいえるモルテたち。猟兵は攻撃態勢を整えていくのだった。
ガーネット・グレイローズ
死合わせのクローバーか、嫌な言葉遊びだな…
忠告する、もう魂人を追いかけるのはやめろ。
そしてお前たちの主に伝えるんだ。
闇の救済者は、必ずこの狂った世界を正して見せると。

【終末異界兵器「ⅩⅦ:星」】を発動、
光の短剣を《念動力》で操り、クローバーを迎撃だ。
同時に妖刀アカツキを抜き、爆ぜる光の中敵陣に飛び込んでいく。
目に映る敵は《なぎ払い》《連続コンボ》で次々に斬って捨てよう。
大丈夫だ、永劫回帰は使わせない。

私の記憶の中から、どんな死を視た?
私達は限りある命を懸命に生き、死んでいった者たちの
想いを胸に刻んで戦ってきた。
命を調味料や食材程度にしか考えないお前たちに、
負けるわけにはいかないんだ。
そして今度はお前たちが魂に刻め、灰色の薔薇の棘を。



 闇の種族とヒトとを繋げようとする、『死合わせのクローバー』モルテたちの言葉に身を震わせたのは魂人たちであった。記憶にある生前、そして今世、彼らを絶えず支配するのは闇よりも昏き、深淵の存在。
 ガーネット・グレイローズは広がるクロツメクサの群生を踏みしめた。黒色といえども花言葉は変わらず幸運を司どるのだろう。……誰にとっての幸運なのか。
「縁、繋いであげましょう」
「幸せでしょう?」
 モルテたちがくすくすと嗤いながら言った。
(「死合わせのクローバーか」)
 嫌な言葉遊びだな、とガーネットは思う。
「忠告する」
 魂人を庇うように前へと出ながらガーネットは凛とした声で告げた。
「もう魂人を追いかけるのはやめろ。そしてお前たちの主に伝えるんだ」
「?」
 それはモルテたちに向けたものであると同時に、
「闇の救済者は、必ずこの狂った世界を正して見せると」
 芯ある声はきっと言霊へと昇華するもの。
 渡らせた言葉は魂人へ、この絶望に満ちたダークセイヴァーへ、希望をもたらすもの。
「おかしなことを」
「過去も、未来も、この世界は正しき不変であるというのに……」
 モルテたちが応じるのを目にした瞬間、ガーネットの視界に光と闇の衝撃波が展開された。爆発する青い残光に闇が纏わりついてくる。
 刹那的なそれはガーネットとモルテのぶつかり合いであった。
 ガーネットの脳裏に闇色のクローバーが植生されゆく――モルテと通じた幻覚だ――その浸食を大人しく受け入れる彼女ではなかったのだ。数にして四手。
 実体となったクローバーに青き一閃。
 ほんの少し開いた界から放たれたのは青い光の短剣。
「『武器庫』よ、異界兵器の一つ<星>を解禁する権利を求める」
 ガーネットの言葉に応じて正式に門を開き渡ってくる短剣は、雨の如く、流星の如く。
 戦場を支配する黒き幸運を刈り取っては、蛇腹のように数多のクロツメクサ群を振るうモルテを巻き込み爆ぜていく。
 時に大胆に軌道を変える青き光の短剣、爆風と輝きにそして追随する闇に鋭き赤が咲いた。三日月に描かれた弧が抉るはモルテの胴。
 畳みかける攻撃の最中、ガーネットが念動力で繰る一部の短剣は魂人を守る動きをしている。
「一つ、問おうか」
 また一体のモルテを屠る妖刀アカツキ。
 研ぎ澄まされた一刀は、ガーネットの声そのものだった。
「私の記憶の中から、どんな死を視た?」
 瓦礫に埋もれた者。
 爆発に巻き込まれ跡形も無くなった者。
「無念にまみれた死」
 あざ笑うモルテ。ぶわりと新たな闇色のクローバーが放たれる。
 死船でミイラ化した人々。
 銃を手に取り、共に戦線を駆け、一弾に斃れていく者。
 ――誰もが、生きるために戦っている。
「私達は限りある命を懸命に生き、死んでいった者たちの想いを胸に刻んで戦ってきた」
 纏う感情、想いをすべて言葉にするなんて無理だとガーネットは思った。言語化なんて生易しすぎる。数々の記憶はガーネットの傷を甦らせる。
 ――誰もが生きたかったから戦った。
 生きるために敵を殺し、犠牲が最愛だった人なら生きるために悲しみの淵に沈む。
 人はたくさんの戦い方を持っている。
 そして死者の願いを汲んでいく。託される。与えられる。
 死線を潜り抜けていくたびに、ガーネットを構築していく約束たち。
 それはとてもとても重いものだろう。だがガーネットはひとつとして手放すことはしない。例え重さが増そうとも、彼らの願いは、すでにガーネットの願いでもあるのだ。
 未来を思い描く、約束。
「命を調味料や食材程度にしか考えないお前たちに、負けるわけにはいかないんだ」
 魂人と隷属の縁を持ちたい闇の種族へと言う。既に闇の種族側の契約は、モルテたちが握っているはずだ。だからこそ追ってきた。
 魂人が捕まった時点で、この場で契約は成るだろう。
 ガーネットが妖刀で敵をなぎ払えば、斬撃を受け見開かれた金色の瞳に赤が映り込む。
「……そして今度はお前たちが魂に刻め、灰色の薔薇の棘を」
 戦場を彩る青の輝き。照らされるガーネットの姿は刹那なる灰青を宿す。
 骸の海へ還るモルテに焼き付いた残光は抜けない棘のよう。
 過去と未来に向けた強き誓いが骸の海へと溶け込んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
敵の攻撃は自分一人なら走り回って躱せば良いが救出した魂人達にとっては困難だろう
特に今回は子供もいる、無理はさせられない
彼らに危険が迫った場合は最優先で対応、自身の安全を二の次としてでも守る
彼らは隷属する者でも食材でもない、主など不要だ

拳銃にエンチャント・アタッチメントを装着
連れ出した魂人に敵が近付かないように射撃で牽制しつつ、炎の魔力を纏う銃弾で攻撃
同時にクロツメグサを燃やして排除を試みる

燃やしても再度クロツメグサを放つ可能性は高い
再度クロツメグサを放つ場合、こちらも即座にユーベルコードを発動
敵の四肢や頭部をあからさまに狙う射撃で怯ませ余力を奪い、クロツメグサの放出と維持を阻害する

魂人の心身の状態も常に確認
敵の吐く言葉は毒のようなもの
耳を傾けて惑わされてしまえば奴らの思うつぼだろう

幸いと言うべきか、闇の種族が食材として攫うのは絶望を忘れた者らしい
敵がどれだけ毒となる言葉をかけても魂人は簡単には折れない可能性も高い
全員で必ず生きてここを出る、と
一歩も退かずに戦い、覚悟と意思を行動で示したい


エリシャ・パルティエル
みんなのおかげでたくさんの魂人たちを連れ出せたみたいね
なんとかこのまま無事に…そう上手くはいかないわよね

大丈夫よ
ここはあたしたちが何とかするから
安心させるように笑顔を浮かべ
安全な場所にいてもらうよう告げて
出来るだけ魂人たちに永劫回帰を使わせたくはないから
たとえ紋章持ちのオブリビオンであっても
負けるわけにはいかないの
モルテたちを引きつけるわ

魂人は食材でもおもちゃでもないわ
幸せも希望もみんなに与えられるもの
恐怖も絶望もいつか訪れる夜明けとともに消えていくの
ここを通してもらうわ
UCでモルテたちを攻撃
傷を負った仲間がいたら傷を癒すわね

あたしが重ねた未来への小さな約束
それを闇色に染めさせたりしないわ!



(「なんとかあのまま無事に脱出を、と行きたかったけれど……そう上手くはいかないわよね」)
 エリシャ・パルティエルは対峙する敵を見据えながら思う。
 不穏な言葉を羅列するモルテの数は多い。陰の気配を持つ声が重なり渡る様は何らかの呪いを掛けられているようにも感じる。
 こうして追ってきたということは、すぐに『新しい主』に引き渡せるよう、主側の契約を持っている可能性がある。
 魔の手が魂人に触れた瞬間、救い出した彼らの今世は奪われてしまうだろう。
 不意な敵の動きに対応できるように、胸元のロザリオを握りしめ、空いた片腕は背後を庇うようにわずかに胴を開かせるエリシャ。
 モルテたちは構うことなく促し始める。
「さあ、新しい主のもとへ行きましょう」
「――っ」
 闇の種族と縁結ぼうとする、『死合わせのクローバー』モルテの言葉に身を震わせるのは魂人たちだ。下層にて支配されていた生前はいまだ生々しい記憶として残っている者もいるだろう。
 前へ出る猟兵を目にし、エリシャは少し後ずさりながら魂人たちへと振り返った。
「大丈夫よ。ここはあたしたちが何とかするから」
 そう言って安心させるように笑顔を浮かべた。背に庇いながら、近くの魂人を誘導していく。かさりと踏みしめるのは黒き植物群。
 クロツメグサの群生がいつ牙を剥くかは分からない。
「シキ」
 近くの猟兵――シキ・ジルモントへと声を掛ければ、既にエリシャたちが取ろうとしている動きは心得ているのだろう。開いたエリシャの体勢とは違い、シキの姿勢はコンパクトだ。そのぶん――瞬発力が活きる。
 予備動作無しに大きく踏み出したシキの一歩とともに放たれる銃弾。
 空を裂く銃音はモルテたちの気を引き、それは間断無い。魂人を追いかけようとするモルテの動線を牽制する銃弾は着弾と同時に炎が広がり、クロツメグサを焼いていく。
 仲間の放った光の短剣が、閃光を伴って爆発し刹那に闇をかき消した。
「さあ、向こうまで行くのよ!」
 猟兵たちの立ち回りは魂人を庇うことを念頭に置いたもの。堅牢たる安全地帯を見出したエリシャが場所を指さした。
 クロツメグサを燃やしていくシキの銃弾は炎の魔力を纏っていた。銃口には炎冠石を加工したエンチャント・アタッチメント【Type:F】が装着されており、危険極まりない大地を浄化していくが如く炎で払っていく。
 灰と化した地はいわば猟兵たちの陣地だ。だが容易に広がればモルテたちはその隙間を突いてくるだろう。
 シキは警戒の目を走らせた。
 ――敵陣、敵の攻撃はシキ一人であったなら走り回って躱せば良い。仲間の猟兵も自力で何とかする。……だが、救出した魂人たちにとっては困難だろうということをシキは見定めている。
(「……特に今回は子供もいる、無理はさせられない」)
 生死の境に直面した時、いつだって割を喰うのは子供たちだ。基礎体力・精神力の減りは早く、故に苛烈な環境では狙われたり見捨てられることが多い。
 今もまた然り。
「逃げちゃだめ」
 モルテが蛇腹剣の如くクロツメグサを振るえば、灰塵となったはずの場所から禍々しき黒葉が生えてくる。
「さあ、主との契約を――……、っ!?」
 戦場拡大のため移動するモルテが次の瞬間、虚空に跳ねた。闇色の飛沫が散れば煌々とした焔が一瞬空を染めた。
 発射源はハンドガン・シロガネ。
「彼らは隷属する者でも食材でもない、主など不要だ」
 そう言うシキがモルテの魔の手を断ち切っていく。

「逃げたところで、どこにも救いはない」
「わかってるでしょう?」
「飼われたほうが楽」
「主はアナタガタのことを考えているのですよ」
 くすくす、くすくす。
 耳障りな嗤いとともに放たれる言葉は闇色の幸運へと導かんとするもの。
 対し、惑わすモルテへと放たれた銃弾は射線のクロツメグサを焔色へと変じさせる一弾指。一体、また一体と骸の海へと還っていく。
 クロツメグサの群生、そのひとつひとつが、結ばれてきた闇色の幸運であり悪縁なのかもしれない。この『紋章』はしつこい。
 仲間の猟兵やこちらへ避難してくる魂人へ聖なる癒しの光を与え続けているエリシャは、ロザリオの鎖を編み、また祈る。
 新たな光条が差し込んだ。聖なる破魔の光はエリシャの心を戦場へと渡らせていく。
(「魂人は食材でもおもちゃでもないわ」)
「幸せも、希望も、みんなに与えられるもの」
 喜びの笑顔。
 明日への願い。
 この世界に転生した人々は色を失くし透き通った身体を持ちながら、たくさん、豊かな色を魅せてくれる。その身に世界の闇色を映しながらも、魂が表現するのは生前の褪せない心。
「恐怖も絶望も、いつか訪れる夜明けとともに消えていくの」
 黎明を映した彼らはきっと美しい生の輝き。そんな未来を願う、そのために。
 交流した集落にまた顔を見せに行かなければと思った。
 救った魂人を安全な場所まで連れていこうと思った。
「あたしが重ねた未来への小さな約束。それを闇色に染めさせたりしないわ!」
 聖ヨハネの審判が『記憶』に繋がろうとするモルテを払っていく。咲きかけたクローバーは、光に守られた約束を浸食することができない。

 闇に染まり異様に閉ざされたこの世界において、エリシャの言葉と光は眩しいものだった。眩しく、優しい。永く、凝ったものを溶かしていくように。
 ダークセイヴァーで生まれ育ったシキは殊更そう感じた。
 モルテたちの言葉が毒を撒くものであるのなら、彼女が言う約束は種を蒔くものだろう。
 種を育むは世界の民――邪魔をしようとする脅威を排除し、助けるのは猟兵。
 モルテの存在に震えていた魂人たちであったが、今はエリシャとともに祈る様子を見せている。
 絶望を忘れた者、知らぬ者――闇の種族が捕えていた魂人たちは、シキの基準では純粋な者の範疇だ。これは幸いと言うべきだろう。彼はそう考えた。
 敵がどれだけ毒となる言葉をかけても、魂人は簡単には折れない。
 ある種、これは信頼関係だ。得た確信を魂人と仲間の猟兵に据え、シキの銃捌きが一段階ぶん加速した。
 前方へ向けた銃口は次の瞬間、明後日の方向にいるモルテへとノールックの射撃。
 銃弾の焔がさらに広がり、クロツメグサの群生は焼け野原から骸の海への帰還へと移りゆく。くゆる焔に包まれ、空に向かう灰舞はかつて誰かが結んだ闇色の幸運が解き放たれたのかもしれないと感じさせるもの。
 敵を倒しながら徐々に移動する猟兵と魂人たち。
 ――全員で必ず生きてここを出るのだ――。
 シキが示すそれは約束ではない。
 既に根付いた未来へ進める牢乎たる一手。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディル・ウェッジウイッター
アドリブ・連携歓迎

大丈夫ですよ。ここではない、あなたが心休まる場所までお送りいたします
ですのでまだ少し、私の後ろにいてください

魔法瓶よりあらかじめ淹れておいたお茶を出してゴーストの皆様をお招きします。この状況を打破すべく今しがたお力添えください。足りなければまた後で別のお茶をお淹れします
ゴーストの皆様なら黒いシロツメグサに触れても奪われる寿命もないはず
そして火の扱いが得意な方がいらっしゃれば燃やすこともできますでしょうか
場が整いましたらば皆様、お好きなクローバーをお選びください

人がどのように生き、誰と共に歩み、どんな思いを抱いて死ぬかを決めるのはあなた方ではないです。お引き取りを



 仲間の猟兵に庇われながら、魂人が安全な場所へと移動しようとしている。
「あの方々と一緒にいてください。その方が、今は安全でしょう」
 ディル・ウェッジウイッターは闇の住人の城で助けた少年へと声を掛けた。果たして、無事に逃げ切れるのか。あまり言葉を発さない少年は不安そうな表情。
「大丈夫ですよ。ここではない、あなたが心休まる場所までお送りいたします」
 安心させるようにディルは微笑んでみせた。
「ですのでまだ少し、私たちの後ろにいてください」

 尽きぬクロツメグサが大地をさらに闇深く彩り、都度、猟兵たちが払って少しずつ前進する戦場。
 攻撃を受け骸の海へと還っていくモルテ。だが、くすくすと嗤う声はまだ止まない。

 魔法瓶から注がれる紅茶の芳香はまだ生きている。
 湯気をくゆらせる豊潤なお茶に招かれたのは、お茶が好きなゴーストたち。
『まあとても素敵な香り』
『コクがあって、爽やかで』
「皆様、ようこそお出で下さいました」
 ディルの声に、『お招きくださりありがとうございます』と丁寧な礼を返すゴースト。
『こちらのセイロンティーは、どこの産地のものだろうか』
 口に含ませながら味わうゴーストたち。会話も弾んでいるようだ。
 ごちそうさまと声が上がった頃には、ディルの魔法瓶は空になっていた。
『良い紅茶を頂きましたわ。何かお礼をしなければ』
「であれば、この状況を打破すべく、今しがたお力添えください。皆さまにはお好きなクローバーを選び摘み取っていただきたいのです」
 あぁ……とゴーストたちが見遣る方向には闇色のクローバーを持つモルテたち。
 猟兵や魂人の寿命を奪おうとするクロツメグサたちは絶えず敷き詰められている状態。
「ゴーストの皆様なら黒いシロツメグサに触れても大丈夫でしょう」
 なにしろ奪われる寿命がないのだ。
『なんだか不吉なモノね。燃やしてしまっても?』
「はい。それは願ったり叶ったりです。――私はひと仕事終えた皆様へのお茶の準備をしておきましょうか」
『ああ、それは良い』
 よろしく頼むよ。そう言ってゴーストたちは思い思いにクロツメグサの群生へと飛び込んでいく。
 狐火で焼き払うゴースト。
 モルテを囲い、消滅へと追い込むゴースト。
「すでに死が分かたれた存在だなんて……!」
「契約履行できない」
 モルテたちは悔し気に言いながら、一体また一体と骸の海へと還っていく。
「どうして」
「主と契約した方が、楽しい人生を経験できるのに」
 楽しい。それは一方的な評価だ。そして一生相容れることはない。
「人がどのように生き、誰と共に歩み、どんな思いを抱いて死ぬかを決めるのはあなた方ではないのです」
 心思うがままに、自身の道を選びとり生きていってほしい。
 手を繋ぐ相手を思いやり、そして自身も思いやられる。そんな関係を築いていってほしい。
 過酷な闇の世界で生きるため、生み出される希望は連鎖されゆく――それを叶えるため、ディルたち猟兵はこの世界に手を差し伸べ続ける。
「お引き取りを」
 どこまでもたおやかな表情のディル。けれどもモルテへと向けたその声は、有無を言わさぬものであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

随分と勝手なことを言ってくれる
他人の主を貴様たちが勝手に決めるな!
魂人は守り抜くぞ!

クローバー召喚の鍵となる記憶は
故郷壊滅時に吸血鬼に殺された里の民の魂たちと交わした約束
魂人に転生することなく故郷に留まった魂たちと
俺はかつて会話し約束を交わした
…『人類を苦しめるオブリビオンを滅ぼす』という約束をな

約束の重みで俺を雁字搦めにするつもりだったのだろうが
その約束を重くしたら、貴様らに叩き込む刃はより重くなるよな?

今ここで、その約束の一端を果たしてやろう
指定UC発動後、「属性攻撃(炎)」で炎剣と化した黒剣で「2回攻撃、範囲攻撃、衝撃波」の炎の衝撃波でまとめて焼き払ってやる!



「主のもとへ行きましょう」
「逃げたところで、どこにも救いはない」
「飼われたほうが楽」
「主はアナタガタのことを考えているのですよ」
 くすくすと嗤う声はあちこちから。揺れるクロツメグサの群生からも沸いているような、そんな感覚。
「随分と勝手なことを言ってくれる」
 館野・敬輔の声は衝動を抑えた、ギリギリのもの。
「他人の主を貴様たちが勝手に決めるな!」
 主など――吸血鬼の領主などいなくとも、暮らしていける、安心できる平和な世界――闇に覆われたダークセイヴァーでは今、叶わぬ世界。焦がれた幻はまだ遠い。
「何を言っているの」
「搾取されて当然の種が」
 モルテは毒ある言葉とともに蛇腹剣の如く、繋げ鞭状にしたクロツメグサを振るった。散乱する葉が闇夜を舞い、敬輔へと触れる。

「あなたはどんな約束をしてきたの?」

 ずるりと何かが内部で引き出されるような、粟立つ感覚。
 魂に刻まれた傷が生々しく甦る。
 三人組の吸血鬼が、敬輔の生まれ育った隠れ里を滅ぼしたあの日のこと。
 敵が使役する吸血蝙蝠に群がれる隣のおじさん。
 女たちはひとところに集められ、火あぶりに。
 吸血鬼の目に留まった知人は、その首を喰われた。
 闇と炎と血と死にまみれた日。
 見舞われた災禍にて、敬輔が生き残れたのはその身に猟兵としての力を宿したから――。
 それを人は奇跡と呼ぶかもしれない。
 必然だと言うかもしれない。
 ……そのどれであってもいけないと敬輔は思うのだ。
 確かに。里の壊滅が要因となったが、それが猟兵へと覚醒した当然の理由となってはいけない。壊滅が必然であったなどと――。
 当たり前であった日常が、当たり前ではなくなった。
 焼き払われた建物。黒煙はいつまでも燻る。えずくような匂いがたちこめる、無人となった隠れ里。故郷が消滅したことを突きつけてくる現実。
『ねえ、連れて行ってよ』
『私も行く』
『ここにはいたくない。でもみんなといたい』
『苦しいよ……』
 黒剣が家であるかのように入っていく、故郷の魂たち。
 ダークセイヴァーの上層に踏み入ったからこそ気付く、彼らのその献身。
(「魂人に転生することなく、故郷に留まった人たち……」)
 恨みつらみで言葉を失った魂は、敬輔みずから黒剣に喰らわせた。それが力になると知っていたから。
 敬輔が戦い続ける、根源となる『約束』。

 闇色のクローバーは葉を開き『約束』に根付くように。
 幾多もの流血を含んだ約束はそこが鉛の海と化したかのように、敬輔の一歩に纏わりつく。
 だが。
「約束の重みで俺を雁字搦めにするつもりだったのだろうが」
 ひとたび黒剣を鞘から抜けば周囲の空気が震えた。びりびりとした殺意は何重にも膨れ上がり、約束を為さんと訴えてくる。
 灼け、滅せよ、と。
 約束しただろう。
 ――『人類を苦しめるオブリビオンを滅ぼす』と。
「俺たちの約束を重くしたら、……貴様らに叩き込む刃はより重くなるよな?」
 瞬発ある炎撃が、敬輔のユーベルコードが戦場に顕現したことを知らしめた。
「今ここで、その約束の一端を果たしてやろう」
 炎纏う黒剣が振るわれれば、赤き衝撃波。刹那に焔色へと染まったクローバーが瞬く間に灰塵となり、炎の魂魄剣舞はモルテをも切り裂き一掃していく。
 今この時、オブリビオンを滅ぼす炎が戦場を彩った。
 それは燃え続ける敬輔たちの約束の現れ。永く、果てぬ激情であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
それまでの経験や人生が
その方という存在を形作っているのですから
幸せな思い出が
心的外傷に改竄されてしまったら
本来のその方から
徐々に歪んでしまうのではないでしょうか

折角お城から脱出出来たんです
そんなことをさせやしません
魂人さん方を絶対に守り抜きますよ(お髭ぴーん

どうか私たちを信じて
下がって隠れていてくださいね
絶対に大丈夫ですから

竪琴を奏で魔力を紡ぎ
炎水風の矢と生し攻撃です

軽快な旋律と共に
モルテさん方や群生地、そして闇色クローバーを
炎が焼き払い
水が穿ち切り裂き
風が吹き飛ばし薙ぎ払います

過去の化身さん方へ何を申し上げても
意味がないことは承知の上ですが
隷属する幸せとは悍ましいです

あなた方も本来は
幸せを運ぶ・もたらす存在だったのではないでしょうか
骸の海から蘇り
反転した歪んだ存在として
闇の種族の傀儡にされているとは憐れです
海へと導きましょう

終幕
鎮魂の調べ
静かな眠りを願って

さあ行きましょう
未来へ
希望を持ち続けていれば
必ずそこへ辿り着けます
私たちが必ずお供します



 わたしは、この世界に来る前は兵士だったの。
 わたしは、薬草園で働いていたわ。
 道中、少女たちが教えてくれた生前の記憶。
 箒星・仄々は「薬草を育てていたのですか。それは良いですねぇ」と相槌を打ちながら、魂人の少女たちは、生前懸命に生きてきたのだろうと感じ入った。
 もちろん転生した今世でもだ。
 一緒に逃げてくれたということは、まだ心が元気である証拠。
(「皆さんの持ち続けてきた幸せな記憶、それを永劫回帰で心的外傷のものへと改竄されるのは……とても辛いことなのです」)
 幸せだった記憶がトラウマとなる。仄々は自身の、自身が幸せだと思う記憶を探ってみた。
 それは旅先で出会った、目を奪われる美しい風景。おひさまの下で日向ぼっこをしながら眺める自分のほかに、スケッチをする旅人などもいてちょっとした共感を抱いたり。
 夜の酒場での弾き語り、リクエストされた音楽に笑って応えて。ありがとうの言葉を貰う。
 頂いたお代で酒場のご飯を食べながら、誰かが話してくれる冒険譚を聞く。
 心温まる交流たち。
 その記憶たちが、心的外傷となる。
(「それまでの経験や人生が、その方という存在を形作っているのですから……幸せな思い出が心的外傷に改竄されてしまったら、本来のその方から徐々に歪んでしまうのではないでしょうか」)
 魂人たちには、永劫回帰をすることなく平穏に暮らし続けてほしい。
 仄々たち猟兵は、ダークセイヴァー上層に訪れるたびにそんな気持ちでいっぱいになる。
 幸せになってほしいから。
 だから闇果てぬこの世界へ、手を差し伸べ続けたいと願う。
「さあ、皆さんはエリシャさんたちと合流してください。どうか私たちを信じて、あの場所から出てきてはなりません」
 おひげをピンッと張ったあと、にこりと仄々は微笑んでみせた。少女たちは悩んでいるような、不安そうな表情。
「みんな、強いのです。絶対に大丈夫ですから。きっときっと、助かりますから」
 仲間の猟兵たちも頼りになる者ばかり。
(「折角、闇の種族さんのお城から脱出出来たんです。魂人さん方を絶対に守り抜きますよ!」)

 青き閃光がまるで爆発したかのように闇夜を刹那に照らし出す。
 一瞬だけその色に染まるはクロツメグサの地。後方の魂人たち、共に戦線を構築する猟兵たち。せいいっぱいの背伸びをして、仄々は戦場の把握に努めた。
 仄々が抱くはカッツェンリート。たくさんの死線を共に潜り抜け、喜びも悲しみも共有してきた仄々の相棒――友。
 ポロロ、ロン♪
 と、清らかな音色が奏でられる。選曲はダークセイヴァーの英雄譚。闇の救済者たちから教えてもらった、軽快な旋律。そしてユーベルコード『トリニティ・ブラスト』の発動。
「きゃあ!」
 水の魔力矢がモルテを貫き、咄嗟に敵が掲げたクロツメグサを風の魔力矢が切り裂き、そのまま虚空へと散らしていく。
「どうして邪魔をするの」
「あるじに幸せを与えられる存在になれるのに!」
 モルテたちの言う『幸せ』とは闇の種族側のものだ。一方的な視点。
 隷属する幸せ――「なんて悍ましい……」――そう、ぽつりと呟いた仄々の声は低い。
 今、炎の矢が薙ぎ、焼き払っていくクロツメグサ群は誰かの『幸運』であったかもしれない。黒であろうが、白であろうが、この植物の花言葉は『幸運』だ。それはモルテが結んだしあわせの契約の数なのかもしれない。
 だってこの世界もまた、星の数よりも多く、人々がずっとずっと暮らしてきたのだ。
「あなた方も本来は、幸せを運び、もたらす存在だったのではないでしょうか」
「何を言うか!」
「今も死合わせを運ぼうとしている」
「お前たちがその邪魔をしているのです」
「…………、それは『本当の』貴女がたの意志ではないでしょう」
 言葉を交わしているうちに、闇色の四葉のクローバーがそっと触れてきたことに仄々は気付く。ああ、と吐息が零れた。
「私の……守りたいと思う約束は、骸の海から蘇った皆さんを、骸の海へと還すこと」
 オブリビオンとなった者を悲しむ者。
 オブリビオンであることを厭うモノ。
 オブリビオンと対峙するたびに、仄々が祈り、願い、叶えたいと感じる自身との約束。
(「モルテさんたちが骸の海から蘇り、反転した歪んだ存在として闇の種族の傀儡にされていることは――とても憐れだと思うのです」)
 白でも、黒でも、この葉たちがもたらす言葉は『幸運』なのだから。
 過去も、過去から蘇ってしまった今も、本当は同じもの。黒から様々なモノが入り混じる闇色に歪み切ったモルテたちを海に還そう。
 仄々の旋律が繰る魔力の矢が、猟兵たちの攻撃が、『死合わせのクローバー』モルテを倒し、今あるべき場所へと還していく。
 しあわせであった場所へと。

 やがて。
 軽快なテンポの曲が切り替わる。流れるのは穏やかな、魂を癒す曲。
 鎮魂の調べは、静かな眠りを願うもの――灰塵も残さず還っていくこの光景――再び猟兵たちの前に広がり訪れたのはダークセイヴァー上層の荒野であった。



 ここがどこなのか、分からない。
 そう言った魂人たち。
 猟兵たちは訪れた集落にまた顔を出そうと思っていたのもあり、彼らとともに馬車で連れてこられた道を戻る。
 少し、長い旅の始まり。
 初めに訪れた闇の種族の使いへの対処も必要だろう。
 ちょっとばかりの工作を話し合いながら。

 再び訪れる集落で掛ける声は「ただいま」だろうか。
 集落の子供たち、大人たちを「大丈夫」と安心させて。
 一緒に脱出した仲間――魂人たちを紹介して。

 にこりと仄々は微笑む。
「さあ行きましょう、未来へ――希望を持ち続けていれば、必ずそこへ辿り着けます」
 薬草園の建設や、抗うための同志を募ったり。
 未来に向けてできる、いろいろなこと。
 いつか、この世界の――闇に覆われた世界の『闇』を祓うのだ。
「私たちが必ずお供しますから」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年01月11日


挿絵イラスト