潔斎航路は|終焉《エンディング》に歪む
●エリクシル
亜麻色の髪が風に揺れて、幼子の姿をした仙人『熾天大聖』は星写す黒い瞳を開く。
彼の瞳が幻視するのは戦場であった。
あらゆる戦場が彼の瞳を炎で彩っていく。
溢れ出すは、人の業。
非業の死は人の逃れ得ぬ連鎖であったことだろう。
殺す者が居て、殺される者がいる。
終わることのない輪廻のごとく続いていく争いは、如何なる世界にあっても変わらぬ断りであった。
だから人は祈る。
託された願いがある。
「生まれたことを知っていますか」
穏やかな声であった。
『熾天大聖』の視界をぐるりと取り囲む炎の戦場の外から聞こえる声。
その穏やかな声は己の答を待っているようであった。
「知っているよ。生まれたこと。それがどんなに嬉しいことなのかって。だから、僕は『存在』しているんだ」
喜びも、怒りも、哀しみも、楽しさも。
全てが人の営みに必要なものであり、また同時に人はそれ故に苦しまなければならない。
それが生きることだというのならば、苦しみを得ることも、喜びを得ることもまた等しいことであると彼は理解する。
「ならば、あなたという器の中にある『願いの力』を解き放ちましょう。どうして争いが世界ん絶えないのか。憎しみは終わらないのか。哀しみは続くのか。それをあなたは解決することができる。全ての人が『心に平和を』持つ事ができる術をあなたは持っている」
声に幼き仙人『熾天大聖』は頷く。
「僕の中にあるのは多くの人の願いであり祈りだ。あの日みたキラキラしたものの全てに僕は報いたい」
「ならば願ってください。あなたは、その術を持っている。願いましょう。叶えましょう。あなたの心のままに」
『願いの力』を秘めた器たる仙人『熾天大聖』は何も疑わない。純粋なままに。変わらぬ『心に平和を』持ちながら、その『願い』を口にする。
「――叶えましょう。『争いを止めるために生まれる』『存在』を数多の世界に齎しましょう。あらゆる世界の人々が『心に平和を』持つように」
穏やかに。
願いは祈りに昇華、しない――。
●ブレイクスルー
終わることのない破壊が世界に満ちていく。
届くことのない願いが世界に霧散していく。
歪められた願いは正しき姿を忘れる。
全てが同じ願いを端に発するものであったとしても、分かたれたものは異なる道を歩んでいく。
万能の魔神『エリクシル』が歪めるのはいつだって、歪めて叶える。
平和を願ったとしても、平和を齎すために逆接の争いが必要不可欠であるように。
平和という名の結果を得るために戦争という道程を齎す。
「叶えました。あなたの願いを叶えました。平和への祈りを。平和への願いを。全て等しく叶えました。平和を望むのならば、争いがなければなりません。争いましょう。平和を望みましょう」
万能の魔神『エリクシル』は微笑むような声色を響かせる。
「『戦いに際しては心に平和を』ええ、そのとおりです。争いがあるから平和がある。平和があるから争いがある。『逆接の花』が咲くように。そうして私が叶えました――」
●エンドブレイカー!
グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件は、新たに見つかった世界『エンドブレイカー!』から『封神武侠界』へと侵攻しようとしている万能の魔神『エリクシル』の暗躍を打倒しなければなりません」
ナイアルテの言葉に猟兵たちは頷く。
万能の魔神『エリクシル』――それはオブリビオンではない。
|『悪しき未来』《エンディング》を破壊する超人『エンドブレイカー』達が『世界の瞳』から繋がる無数の小世界で戦っていた存在である。
「恐るべきことに『エリクシル』は全てが『生命体の願いを叶える力』を持っています。ですが、その力は必ず歪めて叶え、強い『願いの力』を得ようと他世界にまで手を伸ばし始めたのです」
『封神武侠界』にも『エリクシル』が現れたのは、強き願いを持つ幼き仙人『熾天大聖』が修行する仙界である。
『エリクシル』は巧妙に姿を偽装し、幼き仙人『熾天大聖』をそそのかし歪めようとしている。
自らの糧にしようとしているのだ。
だが、仙界は人の立ち入りを拒む。
猟兵たちが直接『熾天大聖』の元に向かうことができない。
「幼き仙人『熾天大聖』の元に至るためには二つの領域を抜けねばなりません」
一つは炎の戦場を生み出す幻影。
死者の恨みや、それを餌にする妖魔が溢れ猟兵たちの道行きを阻むだろう。
謂れのない恨み言は心に刃を突き立てるだろう。
もう一つは、鏡の秘境。
澄んだ水と水晶の結晶、樹に囲まれた領域であり、その水鏡や水晶に映るのは、猟兵たちの過去と心。
反響する過去が幻影となって猟兵達の足をその場に止めようとする。
「これら二つの領域を抜けながら、『熾天大聖』を歪め、籠絡しようとする『エリクシル』の存在を打破しなければなりません。巧妙に姿を偽装した『エリクシル』を探し出すのは困難でしょう。けれど、それを為さねばなりません」
『熾天大聖』の持つ『願いの力』は、恐らく強大すぎる。
その願いがもしも『エリクシル』によって歪めて叶えられたのならば……。
「どうなるかなど言うまでもないかもしれません。世界の破滅……純粋な『平和』への願い故に滅びる|運命《エンディング》から、救っていただきたいのです」
ナイアルテは頭を下げ、猟兵たちを送り出す。
願うものは純粋。
されど、叶える者がいびつであったのならば。
平和と争いは逆接で相互。
ならば、『エリクシル』は叶えるだろう。恐らく『熾天大聖』にとって最悪の形で、『それ』を――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
封神武侠界において若き英傑『熾天大聖』を狙う万能の魔神『エリクシル』を打倒するシナリオになります。
舞台は封神武侠界ですが、シナリオはエンドブレイカー! のものです。
●第一章
冒険です。
『エリクシル』が出現すると予知されたのは、仙界です。
ですが、此処は不心得者の立ち入りを拒む仕掛けが施されています。
皆さんの目の前に広がるのは炎の戦場。
周囲には死者の恨みが満ち溢れ、言葉が刃となって皆さんの心を引き裂かんとしています。
またその死者の恨みを食い物にする妖魔が溢れ、皆さんの足を止めようとします。
これをかいくぐり、次なる領域に向かいましょう。
●第二章
日常です。
『エリクシル』は、この仙界の何処かに潜み、幼き仙人『熾天大聖』を歪めようとしています。
ですが、一見してそれと解る姿がありません。
何処を見ても、この二つ目の領域にはそれらしき姿がないのです。
この領域は、鏡の秘境。
足元までの浅い澄んだ水と水晶の結晶、樹が何処までも広がる領域です。
恐らく、『熾天大聖』の目を欺くために巧妙に偽装しているのでしょう。これを見破るために、領域を往かねばなりません。
ですが、皆さんの前に立ちふさがるのは皆さん自身の過去と心。
反響するように過去と心が幻影となって皆さんの足を止めようとしてきます。
●第三章
ボス戦です。
みなさんが暴いた『エリクシル』がついに姿を現します。
戦いを挑み、仙界を|堕落と破滅の運命《エンディング》から救いましょう。
それでは、封神武侠界において幼き仙人『熾天大聖』の持つ願いを歪めよとうする万能の魔神『エリクシル』の目論見を打破する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『魑魅魍魎』
|
POW : 炎のような気力で跳ね返せ!
SPD : 水のようなしなやかさで受け流せ!
WIZ : 急急如意令! 風のように祓ってしまえ!
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
炎が吹き荒れている。
何処を見ても争いしかなかった。
戦場であると理解できたのは、そこがあまりにも多くの死者の恨み言や憎しみの言葉に溢れていたからだ。
「殺してやる殺してやる殺されたのだから殺してやる殺された者に贖うことができるのは生命だ」
「死にたくはなかったはずだ殺したくなどなかったなど偽りだ」
「殺されないために殺したのならばその行いは正当化されるのか殺したことに変わりはないというのに」
「本当に殺すしかなかったのか殺されるしかなかったのかそれ以外の道はなかったのか」
「どうして」
言葉が満ちている。
どれもが怨嗟と憎悪に塗れていた。
苦しみと哀しみばかりが広がっていく。
その言葉は刃となって迫るだろう。
そして、その死者の言葉を、恨みを、憎しみを糧として妖魔たちが笑いながら炎の戦場を駆け抜け、襲いかかってくる。
幻影であるのかもしれない。
これが己の心を律するための修行であったというのならば、あまりにも心は脆く儚いものであったはずだ。
心を鎧わななければならない。
飲まれてはならない。
例え、あなたの心を蝕む言葉が、あなたを苦しめるのだとしても――。
メサイア・エルネイジェ
熾天?はて?聞き覚えが…
思い出せませんわ〜!
噂のエリクシルですわね
要は悪徳商法ですわ
そんなお業者はお処刑ですのよ〜!
おほほ!わたくしが恨み辛みの幻聴如きで怯える訳が…
めっちゃ聞こえてきましたわー!
まぁ散々悪者をぶっ殺しまくってきたので当然ですけれど…
そんな事を申し上げられても殺っちまったものは仕方ないではありませんの!
皆様がわたくしの前に現れたのがいけないのでしてよ?
皆様方〜!
わたくしにごめんなさいなさって?
余計怒らせてしまいましたわー!
皆様の分まで長生きいたしますのでお成仏してくださいましー!
イライラして参りましたわ!
こういう時は暴力ですわ!
王笏ハンマー!
お妖魔!貴方も巻き添えですわ〜!
万能の魔神『エリクシル』は願いを叶える。
その言葉だけを信じるのならば、人の祈りに応える善なる神にすら思えたことだろう。
だが、エンドブレカーたちは知っている。
その願いのどれもが歪に形を変えて叶えられることを。
『願いの力』を持って己の糧とする『エリクシル』たちにとって幼き仙人『熾天大聖』の持つ『願い』は純粋であり、また強大であった。
『平和』でありますようにと祈る願いは、誰しもの心に宿り、強烈なる力となって発露する。
「噂の『エリクシル』ですわね。要は悪徳商法ですわ」
メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は、封神武侠界の仙界へと降り立ち、憤慨していた。
「そんなお業者はお処刑ですのよ~!」
炎が彼女の目の前で揺らめく。
これが幻影だと知っていたとしても、目の前に広がる光景は息を呑むほどに凄惨たるものであったし、暗澹たる恨みが渦巻く。
この幻影の世界で精神修練に勤しんでいた仙人。
名を『熾天大聖』――その名にメサイアは聞き覚えがあるようでいて、しかして思い出せなかった。
それはいいのだ。
恨み言が世界に充満していく。
メサイアの耳朶を打ち続ける。
「おほほ! わたくしが恨み辛みの幻聴如きで怯える訳が……」
「何故殺す何故壊す何故虐げる」
「我らの前に立ちふさがるからか我らが前に立ちふさがったからか破壊の権化はいつだって暴風のように我らを吹き飛ばす」
その言葉はどれもがメサイアにとって逆恨みも甚だしいものであったことだろう。
これまでメサイアが倒してきたオブリビオンの数を思えば、それも納得というものである。
めちゃくちゃ聞こえてきた幻聴にメサイアは、少しばかり納得してしまった。
「確かに! 散々悪者をぶっ飛ばして来ましたので? 当然ですけれど……そんな事を申し上げられてもやっちまったものは仕方ないではりませんの!」
まさかの居直りであった。
開き直ったと言ってもいい。
そもそもである。
オブリビオンと猟兵は滅ぼし滅ぼされる間柄でしかない。
出会ってしまったのならば、どちらかが消えるしかないのである。ならばこそ、彼女の居直りはある意味で正当なるものであったことだろう。
「皆様がわたくしの前に現れたのがいけないのでしてよ? 皆様方~! わたくしにごめんなさいなさって?」
メサイアのユーベルコードが瞳に輝く。
彼女の言葉は、強い言葉であった。
けれど、その強い言葉はこの修業の場である炎の戦場の幻影においては、自身に返ってくる言葉であった。
「――ッッ!!!!」
渦巻く恨み辛みの言葉は嵐のように轟轟と響き渡る。
あまりにも強烈な言葉の嵐。
「余計に怒らせてしまいましたわー!」
猛烈な批判に晒されているような気持ちになってしまって、メサイアはだんだんとフラストレーションが溜まってくる。
なんで自分がそんなにがなり立てられなければならないのか。
ハッキリ言って理不尽であるとさえ思えたことだろう。
「皆様の分まで長生きいたしますのでお成仏してくださいましー!」
その言葉が決定だであった。
これは己の心を見つめ直し、心を鍛える仙人の修行である。
メサイアの言葉は受け止めるのではなく、受け流すものであった。それが間違っているとは言わない。
全ての人間の心が強靭なわけではないのだ。
時に受け流し、聞かなかったことにするのもまた強さ。
故に彼女はそんな言葉を使ったのかも知れない。
けれど、イライラは募るばかりである。幻影ばっかり幻聴ばっかり。姿かたちの見えない者たちの言葉をまともに受けて入れられるほどメサイア・エルネイジュの堪忍袋の緒は頑丈ではないのである。
「こういう時は暴力ですわ! 揺るぎなき暴力(チカライズパワー)こそがわたくしの心を支えてくださるのですわ!」
迫る妖魔たちを見て、メサイアは王笏の輝き放つハンマーの一撃を叩き込む。
吹き飛ぶ妖魔たちの姿を認めながら、メサイアはブンブン振り回して突き進む。
「お妖魔! 貴方も巻き添えですわ~!」
まさに力押し。
メサイアの快進撃は説法では止まらぬ。
全ては暴力で等しく解決できるのだと知らしめるように、彼女は猛烈な勢いで幻影を吹き飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
……うーん、これぞまさに煉獄……
…何やら恨み言を言ってるけど…怨霊の慰撫は専門外だな…
…まともに会話すると切りが無い…全て聞き流すとしよう…
とは言え、このまま放置するのも後々厄介になりそうだし…
…【起動:応用術式『拡大』】で効果範囲を拡大する魔法陣を展開…
…重奏強化術式【エコー】で効果を増幅させた浄化復元術式【ハラエド】を発動…怨霊を強制的に浄化してしまおう…
…同意の下に成仏することが一番なのだろうけどね…
あ…妖魔の一部もついでに浄化されてる…
……残りの妖魔は光の矢を斉射して始末…先に進むとしようか…
人の業は拭えるものではなく、徒に世をかき乱していくだけであったのかもしれない。
そのような情念、業が渦巻く幻影が見せる戦場にあって、炎は浄化足り得るものであっただろうか。
いずれにしても人の心は弱きものである。
くじかれ、砕かれ、散り散りに成って消えゆく定めであったというのならば、この場が仙人の修業の場であることも頷ける。
精神修練。
そのために見せつけられるこの世の不条理、戦場。
生きる者は殺さねばならず、死せる者は殺されて尚、殺した者に対する恨み辛みをもって妖しき魔の者たちの餌となる。
「……うーん……これぞまさに煉獄……」
響き渡る恨み言にメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は顔をしかめたかもしれない。
彼女は自身が怨霊の慰撫を専門とするところではないと理解している。
この場に響く声は全て幻影でしかない。
けれど、嫌に現実味を帯びた声は、聞く者の心を引き裂く刃となって迫るのだ。
「……まともに会話するとキリがない……」
「殺されたくなかった死にたくなかった生きていたかったずっと心穏やかに生きていただけだったと言うのに何故自分が死ななければならないのか」
「俺が生きていなくて何故あいつだけが生きている」
「殺さなければ殺されてしまう殺してしまえば生きているといえるのなら殺してしまう側に立っていたい」
メンカルの言葉どおりだった。
恨み言に応えると、一つの言葉に十の恨みが返ってくる。
生きとし生けるもの全てに対する怨念めいた言葉。
これが戦場に渦巻く情念の全てであったというのならば、未だ覗いた煉獄は浅いといえるだろう。
人の業はそれほどまでに暗く底が見えないものである。
「……とは言えこのまま放置するのも後々厄介になりそうだし……」
メンカルのユーベルコードが瞳に輝く。
「起動:応用術式『拡大』(ラン・エンハンスメント)……対象を視界内任意に補正、魔女が望むは膨れ逃さぬ天の網」
彼女のユーベルコードが魔法陣を展開する。
それは効果範囲を拡大する術式であり、重奏強化術式『エコー』によって増幅された浄化復元術式『ハラエド』をもって、この幻影の戦場に満ちる怨霊を強制的に浄化していく。
本当であれば、とメンカルはつぶやく。
「……同意の下に成仏するのが一番なのだろうけどね……」
妖魔は彼等の恨み辛みを餌にしている。
ならばこそ、この場に彼等を留めることのほうが害悪であるといえる。
ここが仙人の修業の場であるということもまた頷ける。
こうして世にはびこる怨霊の類を浄化せしめ、妖魔の跋扈を防ぐ。
そうすることによって彼等の心身もまた鍛えられるということなのだろう。そう考えれば理にかなっているとメンカルは思ったかも知れない。
「……あ……妖魔も浄化されてるか……物の序でだ」
メンカルは光の矢を持って妖魔たちを撃ち抜く。
幻影の戦場と言えど、妖魔がいていいものではない。
光の矢でもって消滅する妖魔たちを尻目にメンカルは炎の戦場を歩む。
何処まで行っても炎が渦巻いている。
浄化しても、しきれない。
それほどまでに世界には争いが満ちている。どの世界にあっても、それは変わらぬことのように思えただろう。
他世界を知る猟兵であればこそ、尚更。
人と人がいるだけでも争いは起こる。
人と人でなくても常に生存圏を掛けた争いはそこかしこに。
結局の所、尽きぬ地獄であったのかもしれない。
この光景を見て、心を鍛える仙人たちにとって、その心の中に育つのは平和への希求。
抑え込み、膨れ上がる『願いの力』は膨大そのもの。
ならばこそ、万能の魔神『エリクシル』が目をつけるのも頷ける。
「……そして願いを歪めて叶える。悪趣味、といえるのかもしれにないけれど……」
メンカルは次なる領域に足を踏み入れる。
平和への希求が歪められた時、それは必ずや耐え難き争いが生まれるものであると知るからこそ、彼女はその歩みを急がせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
神明・桐伍
異界からの招かれざる客が非道を働いてくれる。
そも、戦いたくて戦う時もあれば、気が進まぬと思いながら戦う時もある。当然ながら、勝つときもあれば負けるときもあるが、いずれにせよ戦うかどうかを決めるのは我であるから、その帰結に他者の責任を問うことはない。必要だと思えば戦うのみだ。
うだうだと恨み続けるもせんなかろう、身体を動かすと気分がすっきりするぞ。鬱憤晴らしでも構わぬ、自ら「戦う」と決め、妖魔共々かかってくるがよい。
さてさて、幻影にせよこのように澱むものがあるのは邪気の介入があるのやもしれぬ。
妖魔を相手取りつつ龍脈を探り、悪しき流れや乱された流れがあるようならば、気を送り乱れを正そうぞ。
封神武侠界に現れた万能の魔神『エリクシル』。
かの存在らが望むのは『願いの力』である。
己を律し、修行する仙人達の持つ『平和』を望む『願いの力』は恐らく膨大なものであった。
だからこそ、彼等はそれを欲する。
己の力にせんがために願わせ、歪めて叶える。
万能の魔神『エリクシル』たちはそうやって数多の生命を滅ぼしてきたのだろう。
「異界からの招かれざる客が非道を働いてくれる」
神明・桐伍(神将の宿星武侠・f36912)は宿星の呼ぶ声に導かれるようにして仙界へと足を踏み出す。
炎の戦場は幻影。
それは外からの来訪者を留めるための方策であり、同時に此処で修行する仙人の精神修練の場でおあった。
広がる恨み辛みの言葉。
それは争いによって生命を失った者たちの言葉であった。
「殺されたくない殺されたくなんかなかったのに殺さなければ殺されてしまうから仕方なかったんだ俺は悪くない」
「殺して殺して最後に殺されて」
「こんな人生など望んでなど居なかった殺したくもなかったし殺されたくもなかった」
その言葉は争いに飲み込まれたがゆえの言葉であった。
有史以来、人間の社会というものが生まれた時点で。
そも、生命が唯一でなく成った瞬間から争いとは必ず生れ出づるものであったのだ。
「戦いたくて戦う時もあれば、気が進まぬと思いながら戦うときもある。当然ながら、勝つときもあれば負ける時もあるが、いずれにせよ戦うかどうかを決めるのは我であるから」
桐伍は恨み辛みの言葉を前にして言い放つ。
争いが避けられぬのであれば、選択するのは己自身であると告げる。
けれど、そんな言葉に恨み言を糧とする妖魔たちにはたじろぐことはない。
殺されてしまった者たちと、殺してしまった者たちは同義であるからこその堂々巡り。その堂々巡りを切り裂くように桐伍は己の中にある気を練り上げていく。
「その帰結に他者の責任を問うことはない。必要だと思えば戦うのみだ」
妖魔たちを前に桐伍は己の五体に満ちる気でもって相対する。
ユーベルコードに輝く瞳。
「哈!」
裂帛の気合とともに放たれるは、錬気発勁(レンキハッケイ)。
渾身の錬気。
それらが一瞬に幻影たる炎の戦場を走っていく。妖魔も恨み言も、全てを吹き飛ばすかのような気の放出。
それは気晴らしであったのかもしれない。
うだうだと恨み言をつぶやいたとて世界は変わらない。だからこそ、自分が変わらなければならないのだ。
「体を動かすと気分がすっきるするぞ。鬱憤晴らしでも構わぬ、自ら『戦う』と決めかかってくるが良い」
手招区するように桐伍の手が動く。
妖魔たちは一斉に襲いかかるだろう。
これが幻影であることはわかっている。けれど、幻影にせよ、淀むものがある。淀みが生まれれば、澱となって沈んでいく。
体積した澱は必ずや世界に良くない気を運び込む。
万能の魔神『エリクシル』がそうであったゆに。
「悪しき流れ。乱された気。邪気の介入を我は許さぬよ」
身の内にある気を放出し、桐伍は一気に炎の戦場に満ちる邪気を振り払うように拳を振るう。
それは龍脈に存在する悪しきものを打ち砕く。
万能の魔神は、歪めて願いを叶える。
それを知りながら、人の願いをこそ歪めようとする。
許されぬことであると桐伍は拳を振るい、幻影の戦場を後にして新たなる領域へと歩みを進めるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
御堂・伽藍
アドリブ、即席連携歓迎
うらみ つらみ
引き受けるのは、人形の原義
悪路走破忍び足
音もなくゆるゆると征く
落ち着き優しさ祈りお誘いUC
怨恨怨念を余さずがらんどうに詰め込み吞み込む
わたしは がらんどう
生きてすらいない物、我楽多
いいよ だいてあげる
入るが善い、来るが善い
念動力優しさ祈り破魔
弔いの祈りを込めた古銭(すてぜに)をばら蒔き、拾って帰るものは追わず、遮るものは打ち込んで倒して進む(範囲攻撃)
わたしちん あげる
関わり無き者は去れ。さもなくば…祓う!
いこう すすもう
臨や祓え、臨や浄め
みなそこへ みなそこへ
鎮め沈め骸の海へ
己の姿が人の形をしている意味を御堂・伽藍(がらんどう・f33020)は知っている。
胴、その胸に配された護符刃の核。
それが今彼女の中で煌めくようであった。
六腕が手を差し伸べる。
「うらみ。つらみ。引き受けるのは人形の原義」
あらゆる災厄。
あらゆる不条理を肩代わりするための依代。
人の形をしている所以を彼女は、幻影たる炎の戦場においても尚発露する。
此処に溢れるのは人の業。
争いが生まれ、争いによって生み出されたものを受け入れるようになめらかな足取りで進む。
躊躇いなどなかった。
「かみもあくまも、きれいもきたないも。総て受け容れる、我楽多の伽藍堂故に」
彼女の体内はがらんどうである。
小さな空間。
彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
怨念怨恨。あらゆるものを余さず受け入れるように六腕の手のひらが広げられている。その手は遍く負なるものを受け入れるためにあるように。
煌めくユーベルコードは灯火にして篝火であった。
「わたしは がらんどう 生きてすらいない物、我楽多」
差し伸ばされる手に恨み言は響き渡る。
「いいよ だいてあげる 入るが善い、来るが善い」
人が生み出したものであるというのならば、人の手によって救われるべきであると伽藍はつぶやく。
優しさを祈りに込める。
人は死ぬ。
どうしようもなく死んでしまう。
それが定めであるというのは、あまりにも寂しいことだった。救いも何もない。救われない者達が溢れてしまっている。
この幻影たる炎の戦場においてもそうだ。
人の業は、こんなにも簡単に心を切り裂くし砕く。
これに耐えるのが仙人の精神修練であるというのならば、伽藍はそれに手を伸ばす。差し伸べて、救う。
手にした祈りを込めた古銭をばら撒く。
「わたしちん あげる」
だが、と伽藍の瞳は煌めく。
渡し賃たる古銭は救いを求めるものにためにこそある。
妖魔たちが餌とする恨み言を逃さぬと迫っている。
それを見た伽藍は力を躊躇いなく振るう。
「関わり無き者は去れ。さもなくば……祓う!」
救われたいと願い者に手を伸ばし、止めようとする者を打つ衝撃波。
迸る力の奔流は、六腕の全てから放たれる。
「いこう すすもう 臨や祓え、臨や浄め。みなそこへ みなそこへ 鎮め沈め躯の海へ」
歌うような声が響き渡る。
人の業は禊ぎ祓われてこそ。
元より人の心が美しいのであれば、それは穢れやすきものであるともいえる。
手のひらに輝くような、それを掲げ伽藍は見送る。
例え、これが幻影であったのだとしても、救われぬ者などいないのだと示すために、その胸の内側たる胎蔵界伽藍堂(コバマレヌカギリコバマナイ)は今も開かれている――。
大成功
🔵🔵🔵
メリー・スペルティナ
また面倒ごとを持ち込んでくるものですわね!
おのれエレキテルとやら!ですわ!
……で、この声ですけれども。そこに霊魂があるならまだしも、
どちらかと言えば強い想い…残留思念が残っているだけっぽいですわよねこれ
それならいくら声を聴いていたところで一方的なもの、「対話」なんか無理、故に……力尽くで参りますわよ!
来なさい、告死呪装“血の底に澱む冥呪”!!
呪血の鎧を纏い、周囲の「負の感情」も「呪詛」も全てこの血で喰らい、呑み込んでしまいますわ
今更この呪血に抱える怨嗟と憎悪の量がちょっと増えたところで大して変わりませんもの!
あと|なんか《妖魔》が出てきたらブルートヴァッフェで薙ぎ払いますわ!
※アドリブ歓迎です
超人『エンドブレイカー』たちが戦っていた相手。
万能の魔神『エリクシル』――『生命体の願いを叶える』存在。『願いの力』を得るために願いを歪めて叶える存在。
彼等が齎すのはいつだって堕落と破滅の運命。
即ちエンディングである。
その悪しきエンディングを討ち果たすための役目は嘗ては『エンドブレイカー』のものであったが、この封神武侠界にまで手が及んだのならば猟兵の領分にも足を踏み込んだことを知らしめなければならない。
「また面倒事を持ち込んでくるものですわね! おのれエレキテルとやら! ですわ!」
『エリクシル』ね。
メリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)は、仙界の修業の場である幻影たる炎の戦場に足を踏み入れる。
そこかしこから響き渡る恨み言。
戦いにおいて必ず生まれる敗者。死者。殺す者と殺される者が存在するからこそ生まれる逃れ得ぬ連鎖にして怨嗟。
その声を彼女は聞いただろう。
「霊魂があるならばまだしも、どちらかと言えば強い想い……残留思念が残っているだけっぽいですわよねこれ」
恨みの言葉は人の心を刃でもって切りつけるようなものであった。
例え関係のない事柄であったとしても、ネガティヴな言葉が人の心の柔らかな部分を傷つけるものである。
だからこそ、心を鎧わねばならない。
徒に傷つけられぬために。
痛みに喘ぐことのないように。
仙人の精神修練の場としては、確かに理にかなっていたのかも知れない。
「殺したくない殺されたくないただそれだけだったというのに」
「殺してしまった逃れ得ぬ輪廻に足を取られてしまったいつまでたっても血が洗い落とせない」
「いくら声を聞いていたところで一方的なもの。『対話』なんか無理、故に……」
メリーの瞳がユーベルコードに輝く。
周囲の呪詛と負の感情が喰らわれていくように霧消していく。
いや、違う。
メリーの体を覆う竜鎧。
呪血による呪装。
名を告死呪装:血の底に澱む冥呪(ニーズヘグ)。死者の負の感情を食らう竜の鎧がメリーの周囲にあった恨み言の全てを飲み込んでいく。
「力づくで参りますわよ!」
迸るユーベルコードの輝き。
彼女の身に纏った竜鎧は食らう呪詛によって強大な力を得ていく。
この修行場に渦巻く負の感情。恨み言は妖魔にとって格好の餌である。しかし、祖霊所に食い物に出来る存在が此処に居る。
メリーの鎧は妖魔が恨み言を餌にするより早く飲み込んでいく。
強大なまでに膨れ上がった鎧の力が周囲に集まってきていた妖魔たちの生命を吸収していく。
「――……ッ!?」
「もう遅いですわ! 今更生命吸収に気がついたところで!」
メリーの手に血の剣が生み出される。
それは彼女の呪われた血によって生み出された呪血の剣。
閃光のように疾走る赤い刀身。
「汝死者の想いを貪り、そして終末の刻までその呪いを背負う者……起きたからには働きなさい、|血の底に澱む冥呪《ニーズヘグ》!!」
メリーは走り抜ける。
血の色をした閃光となって。この場において彼女を止められる妖魔などいるはずがない。
近づけば妖魔たちは生命力を吸収され、ただ其処に在るだけで恨み言といった負の感情を全て飲み込む鎧があるのだ。
誰も止められるわけがない。
メリーは一気呵成に走り抜ける。
次なる領域を目指し、彼女の言うところのエレキテルこと『エリクシル』に痛烈なる一撃を与えるために。
歪められた願いを正すために――。
大成功
🔵🔵🔵
キャスパー・クロス
殺されたから殺してやる?
そうだねえ、わかるよ
殺されないために殺したのが正当か?
うーん、わかんないねえ
適当に受け流しながら進んでいこう
私だってね、エンドブレイカーだから、こいつらは敵だーって言ってマスカレイドを倒してきたわけだけど
…ま、要するに元人間って相手も珍しくは無かったし
恨みつらみを叩きこまれても已む無しかとは思うよ
でもまぁ、ねぇ
私達は、過去を変えることはできないから
だから、|終焉《みらい》をより良くするために動いていたのさ
どんな後悔や悔恨があれ、今この時、できる最大のことをする……それが私達の矜持だった
色んな声があれこれゴチャゴチャ言ってるけど、要するにお前はマチガッテルって言いたいのかね?
だったら答えは、爽やかな笑顔で一言
「悪いけど、私は私が間違ってたとはビタイチ思ってないから」
怨嗟が、妖魔が、襲ってくるなら
「萌黄色──かかってきなよ」
UC《萌黄色は強か》を発動
【勝者のカリスマ】、それ即ち笑うこと
ケタケタと野卑な笑みを浮かべる妖魔共とは訳が違う
偽りなき信念の笑顔で戦ってやろう
「殺されたくなかった殺されたくなかった戦いなんていきたくはなかった」
「なのに殺された殺したくないのに殺されただから殺さなければならない殺さないと生きていけなかったのだから」
「だから俺は悪くない殺したくないのに殺せと言ったものが悪いのだ俺はころしたkなんてなかったのに」
その恨み言の全ては争いに対する憎しみにが満ちていたことだろう。
誰も彼もが争いを望むわけではない。
穏やかなる日々が続くと信じて疑わなかったからこそ、彼等が突き通されたのは奈落の如き坩堝であったことだろう。
憎しみが憎しみを呼ぶ。
止めようのない連鎖に足を取られ、泥濘の如き呪詛と憎しみに囚われてしまう。
逃げ出すことも抜け出すことも許されぬ争い。
「殺されたから殺してやる? そうだねえ、わかるよ」
炎の戦場に満ちる恨み言にキャスパー・クロス(空色は雅やか・f38927)は頷いた。
「殺されないために殺したのが正当か? うーん、わかんないねえ」
彼女の言葉は穏やかそのものであった。
まるで呪詛の如き言葉を受け流すかのように、そこらを散歩するように彼女は炎の戦場を歩む。
適当に受け流しているとも思えただろう。
どれだけ受け流すのだとしても、呪詛に満ちた言葉は怨嗟という刃となって人の心を切りつける。
通り魔のように斬りつけていくのだ。
けれど、キャスパーは風に揺れる髪を手で抑えながら炎の如く迫る言葉を前に瞳を向ける。
過去があった。
戦いの過去が。
「私だってね、エンドブレイカーだから。こいつらは敵だーって言ってマスカレイドを倒してきたわけだけど」
思い返すたびに思うのだ。
仮面。
人の心を歪め、堕落と破滅の運命を齎す者。
それを倒してきた。打倒してきた。時に人の姿をした者だっていた。珍しいものではなかったのだ。
あらゆるものに仮面がかぶさり、悪意のままに歪められていくのを何度見ただろうか。
そのたびにキャスパーたちエンドブレイカーは打破してきたのだ。
「恨み辛みを叩き込まれてもやむ無しかと思うよ」
仕方のないことだ。
エンディングを破壊するエンドブレイカーと言えど、彼女もまた人である。
仕方のないことだと割り切ることも必要だっただろう。
「でもまぁ、ねぇ」
息を吐き出すようにキャスパーはゆっくりと足を止め……ない。止めることはない。彼女の歩みは何処までも続いていく。
己に羽はなくとも歩み方は知っている。
足を止めないということの意味を彼女は知っている。
「私達は、過去を変えることはできないから。だから、|終焉《みらい》をより良くするために動いていたのさ。どんな後悔や悔恨があれ、今この時、できる最大のことをする……それが私達の矜持だった」
だからこそ、キャスパーは躊躇わないし、立ち止まらない。
この足が歩先をとめどない悲劇が阻むのだとしても。その|終焉《エンディング》を破壊する。
「殺されてしまったのならば何も残らない屍だけが残ってしまうそれだけだそれだけしか残らないどんな言葉もどんな意味もどんな矜持も意味をなさない殺されてしまっては意味がないだから殺すのだ」
その怨恨に言葉にさえキャスパーは笑っていうのだ。
爽やかささえ感じさせるそよ風のような微笑みのままに彼女は真っ向から迫る怨嗟の言葉にすら相対する。
言葉は心を抉るかもしれない。
けれど、キャスパーの歩みを何一つ止めることはできないのだ。
「悪いけど、私は私が間違っていたとはビタイチ思ってないから」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
萌黄色は強か(モエギイロハシタタカ)である。彼女の笑顔が絶えぬ限り彼女は誰も止められない。留めることなどできないのだ。
「萌黄色――かかってきなよ」
彼女は勝者である。
戦いに勝者と敗者が生まれるのならば、戦いの中に生きた彼女が今も尚此処に立つということは、常に勝者であったということ。
笑うことが彼女のカリスマそのもの。
人の負たる感情を食い物にする妖魔には決して浮かべることのできない笑顔であった。
偽りなき信念の笑顔があるからこそ、彼女は負けはしない。
どんなに理不尽なる運命が目の前に迫るのだとしても、笑顔のままに言うだろう。
「どっちにしたって私が勝つ!」
迫る妖魔をなぎ倒し、それでも笑いながらキャスパーは進む。
幻影たる炎の戦場も。
恨み辛みも。
何もかも彼女の心を傷つけることはない。
人の負の側面は否定できない。悪性も肯定しよう。
けれど、彼女の笑顔は、それら全てを打破する。彼女の知るただ一つの術。
笑顔のままに彼女は炎の領域を抜けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林
『熾天大聖』…あのときの彼ですか。まさか、巻き込まれるとは。
一度は縁を結んだのです。向かいましょう。
しかし…怨嗟に憎悪…向けられるのは当たり前でしょう。生きていた時代が時代でしたから。
※戦国時代生まれ
ですが…その呪詛をも飲み込んでいきましょう。今の我らは悪霊。怨嗟も憎悪も、糧といえますから。
UCにて射ぬく。その呪詛は、持っていくこととします。妖魔になぞ、食わせるものですか。
我らは、この先に用があるのです。立ち止まることなぞないのですよ。
幼き仙人『熾天大聖』。
彼は未だ生まれて間もない仙人である。
だからこそ修行が必要なのだろう。幻影たる炎の戦場。
そこに渦巻く人の業。
人が人である限り逃れ得ぬ嵐の輪廻。奪い、奪われ、殺し、殺される。罪と呼ぶのならば人は生まれながらにして罪を背負うものである。
その罪が争いという永劫に続くかのような環に人を捉え続けているのならば、その業にこそ心を置き、鎧う術を身に着けなければならなかったのかも知れない。
「……あの時の彼ですか。まさか巻き込まれるとは」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は複合型悪霊である。
四つの柱たる魂を束ねるのは呪詛。
その一柱たる『静かなる者』は、炎の戦場に満ち溢れる怨嗟と憎悪を受け止める。
それが当たり前のことだと彼は思っただろう。
彼等が生まれて、そして死んだのは戦国の世。
時代が時代であったからといえるのは、のちの時代を知っているからだろう。
「一度は縁を結んだのです。向かいましょう」
恨み言が満ちている中を彼は進む。
呪詛そのものである言葉を、それは水のように(ミズニジョウケイナシ)に受け止めていく。
此処が炎の戦場であるというのならば、水によって打ち消す。
呪詛は苛烈そのもの。
触れれば身を焼くし、斬りつけられるものである。
痛みは疾走り、心を摩耗させていく。
「今の我らは悪霊。怨嗟も憎悪も、糧と言えますから」
ユーベルコードに輝く弓を引く。
放たれる矢は戦場にある呪詛の如き恨み辛みだけを貫く。
「この呪詛は、持っていくことにします。妖魔になぞ食わせるものですか」
「邪魔をするな我らは殺すのだ殺されたのだから殺すのだ生命でしか贖えぬものがあるのだ」
「殺したくなかったのに殺さなければならなかった殺されてしまうからだ生きて痛いから殺したのだ人の生命を殺すのと獣の生命を殺すのと何が違う何も変わらない」
「生きるために殺したのだから肯定されるべきだ恨み言など逆恨みでしか無い」
次々と湧き上がる言葉。
この言葉に晒されながら、仙人は心を鎧う。
心を強くしていく。
人の世に争いは尽きない。
大小様々な争いが満ちている。止めようのないことだ。
わかっている。
だからこそ、『静かなる者』はゆっくりと歩みをすすめる。
「我らは、この先に用があるのです」
例え、それら全て恨み辛みを肯定するのだとしても。
立ち止まれない。
立ち止まってなど居られない。
歪められようとしている願いが在る。万能の魔神『エリクシル』によって歪められた願いは、必ずや世界に堕落と破滅の運命を齎す。
そうなった時、この炎の戦場に満ちる言葉は真実になるだろう。
何処までも膨れ上がっていく。
際限なく膨れ上がって、人を徒に傷つけ続ける。
「抜け出せなくなる。環に囚われて、いつまでも無為に揺蕩うのみ。方向性も、理解も、理由もなく、ただ傷つけるだけの刃に成り果てる」
それを許してはならぬと『静かなる者』は、炎の領域の呪詛を飲み込みながら、次なる領域へと足を踏み出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
紅月・スズ
【SPD】
んー?変心?阪神?韓信?…ともまた別のやつアル?
……まあいいアル!とりあえずそれを殴ればよろしいアルね!
んー、恨まれる覚えは……まさか張角アル?え違う?
なら至高て…始皇帝アルね?…これも違う?
んー……判んないアルねー……って、そうアル相手してる場合じゃないアル
というかきっと考えても答えが出ないアル
護業天象拳は己の気を巡らせる事で天地万物を操る拳、
当然周囲の気の流れを読むは大事アルけど、合わせてばかりで己を強く持たなければ今度は自分を見失うアル
ここで弄される言葉は結局はまやかしアルし、妖魔は……まあ殴れるんだし蹴散らせばいいアル
破邪螺旋穿孔槍を手にぎゅーんと突き進んでいくアルよー
万能の魔神『エリクシル』が狙いを付けたのは、幼き仙人『熾天大聖』の持つ『願いの力』である。
欲望を抑え込み、己を律する修業によって蓄えられた『願いの力』。
その願いは確かに純粋なものであったことだろう。
『平和』への願い。
紅月・スズ(路上格闘僵尸娘・f32726)が足を踏み入れた幻影たる炎の戦場の有様を見れば、その『平和』への願いが強くなるのもまた頷けるものであったかもしれない。
何処を見ても、恨み辛みにあふれている。
殺されてしまったものと、殺してしまったもの。
どちらも溢れ、己の行いに対して逃れ得ぬ罪過に苛まれている。『平和』さえ訪れれば、彼等の恨み辛みも報われるのではないかと思うのは無理なからぬことであった。
「んー? 変心? 阪神? 韓信? ……ともまた別のやつアル? ……まあいいアル! とりあえず殴ればよろしいアルね!」
スズは満ちる恨み辛みの言葉に飛び込む。
彼女にとって、あまりそれは意味のない言葉であったのかもしれない。
この炎の戦場に満ちる恨み辛みは考えても答えのでないものであると彼女自身が理解していたからでもあるかもしれない。
「んー、恨まれる覚えは……」
あるのかもしれない。
いや、戦うのならばこそ必ず生まれるものであった。スズにとって、それは深く考える必要のないものであった。
オブリビオンとの戦いは常に滅ぼし、滅ぼされるものでしかない。
だからこそ、この場に満ちる言葉はどれにも覚えがあり、どれにも覚えがなかった。
「殺されたくないだから殺したのだ」
「どうしようもなかったことなどと言うな殺されたものがいるのだ殺したものが必ず存在している罪の在り処を詳らかにしなければならない生きているということは殺したということだ」
「んー……判んないアルねー……って、そうアル。相手してる場合じゃないアル」
スズにとって、この戦場は急ぎ切り抜けなければならない場所である。
彼女が手繰る護業天象拳とは、己の気を体内に巡らせる事によって天地万物を操る拳である。
その伝承者であるスズにとって、周囲の気を読むのは大事なことであり、基礎の中の基礎であったことだろう。
だが、合わせてばかりではいけないこともまた長年の修行で彼女は体得している。
「己を強く持たねば今度は自分を見失うアル」
だからこそ、己の中にある気と周囲にある自然全ての気を分かつ。
合一すること自在であるのならば、分かつこともまた自在。
活殺自在たる拳は、そのためにこそあるのだと示すようにスズは、瞳を見開く。
「ここで弄される言葉は結局まやかしアル」
恨み辛みを餌とする妖魔たちがスズに迫る。
だが、スズは己を食い物にしようとする妖魔を前に手にした破魔の宝貝を振るう。巨大な衝角の如き一撃が迫る妖魔を貫き、えぐる。
「オマエたちの如き妖魔、殴れるのならば蹴散らせばいいアル」
こともなげにスズは言い放ち、衝角の一撃で散り散りに成って消えゆく妖魔の体を横目に炎の戦場を走り抜ける。
ただひたすらに一つの槍のように彼女は己の体を変じさせる。
一直線に。
時に愚直さもまた必要なのである。
愚を得ぬ知恵など賢しさに堕するものでしかない。ならばこそ、スズは己の中にある気を合一し、また時に分かちながら二重の如き螺旋そのもとなって突き進むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
スミレ・エロイーズ
エリクシル……
わらわ達の世界を超えて、かような場所にまで現れるとは……
ですが、猟兵の力を得た|わらわ《エンドブレイカー》達と諸先輩がたである猟兵の皆様の力があれば
わらわも赴くとしましょう
さて
謂れなき恨み言……はまぁ慣れておりまして
わらわ、この姿ですし
ヒトでない者がヒトの世界で生きているのです
その過酷さ、ご存じ?
そしてわらわはエンドブレイカー
この|地獄《エンディング》を覆せると知っているからこそ
かような言葉に屈することはありませんの
いつだって、希望こそが生を紡ぐ力
破壊するのは新たな未来を創り出すため
そのための道を開けてくださりませんこと?
残念ながらあなた方が存在する未来は訪れないのですから
「『エリクシル』……わらわ達の世界を超えて、かような場所にまで現れるとは……」
スミレ・エロイーズ(ミス・ヴァイオレット・f38978)はピュアリィ『スキュラ』たる姿をもって封神武侠界に降り立つ。
彼女の紫の瞳が見つめるのは幻影たる炎の戦場。
ここが仙界の、さらに特別な修業の場であることを彼女は理解していただろう。
万能の魔神『エリクシル』が訪れた世界は、多くが『願いの力』を得るために『生命体の願いを叶える』ことによって歪められ、滅ぼされる。
このような場所にまで、その魔の手が及ぶことにスミレは頭を振る。
「ですが、猟兵の力を得た|わらわ《エンドブレイカー》達と諸先輩方である猟兵の皆様の力があれば」
そう、戦うのは自分たちだけではない。
どれだけ強大な万能の魔神『エリクシル』であったとしても、赴かぬ理由がない。
歪める者がいるのならば、その歪められた|終焉《エンディング》を打ち砕くことこそがスミレに課せられた使命であるからだ。
しかし、炎の戦場に満ちるのは怨嗟と憎悪。
恨み辛みに言葉が通り魔の刃のようにスミレに迫ってくる。
「殺されたくない殺したくないなのに殺されてしまう」
「どうして俺ばかりが殺されなければならない生きていたかっただけなのにそれなのに殺されてしまう平穏の中に生きていたかっただけなのに」
その言葉は人の心を切り裂く刃そのものであった。
そして、その言葉を贄と餌とするように妖魔たちが集まり、憎悪の環を循環させる。
あまりにも人の業に満ちる場所であったことだろう。
誰もが此処に居ては心を散り散りにされてしまうと思うほどであった。
だが、スミレはやはり頭を振る。
「謂れなき恨み言……はまぁ慣れておりまして」
彼女はピュアリィである。
人とは敵対する者。そして、今は違えどこれまでたどってきた道行きに置いて、彼女もまた謂れなき言葉を投げかけられることの多かった存在である。
見た目が異なるから。
種族が違うから。
言ってしまえば些細な問題である。
だが、その些細な問題を乗り越えることこそが、異なる生命においては最も難しいことであったのだ。
ヒトでない者がヒトの世界で生きていかなければならない。
その過酷さを知る事ができるのは、彼女と同じヒトではないものだけであったことだろう。
此処が例え地獄の如き世界であったのだとしても。
「わらわはエンドブレイカー。この|地獄《エンディング》を覆せると知っているからこそ」
迫る恨み言では止まらない。
屈することはない。
彼女の胸にあるのは希望であった。
「いつだって、希望こそが生を紡ぐ力。破壊するのは新たな未来を創り出すため」
故にスミレは飛び交う憎悪と怨嗟の言葉が生み出す刃を前にたじろぐことなく、歩みをすすめる。
炎の戦場は幻影。
ならば恐れる理由など何一つ無い。
迫る妖魔にすら彼女は怯むことはなかった。
「そのための道を開けてくださりませんこと? 残念ながらあなた方が存在する未来は……」
そう、訪れることはない。
どんなに堕落と破滅が待つ運命だとしても。
それを打ち砕くのがエンドブレイカー!
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
|エイル様《主人様》の! 香りがします!!
というか、どこにもいる気配は無いのですが!
エイル様のお言葉を汚す輩の存在をメイドセンサーが察知しました
滅ぼしますね(満面の笑顔)
『戦いに際しては心に平和を』
ええ、エイル様が直接この世界で発してないのだとしても
この言葉は決して戦いを引き起こすきっかけではなく
戦いを嘆き、戦いを終わらせる言葉
エリクシル……願望を歪めて叶える存在
私、敵認定しました
これより問答無用で排除します
幻影と分かっているのなら遠慮はしません
エイル様への愛で弾き飛ばしましょう
というか、脳内エイル様が行けって言ってるから
誰に何を言われようと関係ないです
はいどいてどいてメイド通りますので!
幻影たる炎の戦場に響き渡るのは、ご主人様を探し求める献身的なメイド(ホンニンハソウオモッテイル)の叫び声であった。
恨み辛みを宣う怨嗟や憎悪、それを餌とする妖魔たちすらもたじろがせる声の響き。
それは誰も容易には突っ込めない雰囲気を漂わせていた。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがします!!」
もうご存知であるところであろう。
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)である。
彼女はもう誰に言われるまでもなく宣言しているようであもあった。
「というか、どこにもいる気配はないのですが!『エイル』様のお言葉を汚す輩の存在をメイドセンサーが察知しました」
怖いなにそれ知らん。
どういう理屈なのかはわからない。
しかし、妖魔たちも怨嗟の声紡ぐ思念も、察した。これは触れてはダメなやつであると。やべーなこのメイドと皆思ったに違いない。
「滅ぼしますね」
満面の笑みである。
これは絶対触れてはならないと理解していながらも、妖魔達はステラを取り囲む。
例え、どれだけ目の前のメイドがやべーなこのメイドって思っていたとしても、襲わねばならないからだ。
「『戦いに際しては心に平和を』ええ、『エイル様』が直接この世界で発していないのだとしても、この言葉は決して戦いを引き起こす切欠ではなく、戦いを嘆き、戦いを終わらせる言葉」
ステラにとっては、その言葉の意味こそが己が『主人様』と仰ぐ存在への忠義の証。
戦いを求めるのではなく。
平和というものを願うがゆえに発せられた言葉であるからこそ、その言葉を弄して願いを歪めようとする存在をこそ彼女は許してはおけぬと憤慨するのだろう。
その言葉と共に彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
心を震わせる言葉は、いつだって心を奮わせるのだ。
「『エリクシル』……願望を歪めて叶える存在」
輝く瞳が見据えるのは、未だ姿を現さぬ万能の魔神『エリクシル』。
「私、敵認定しました。これより問答無用で排除します」
もはや容赦はない。
このやべーメイドに補足された以上、『エリクシル』は滅びる定めしかないのかもしれない。
そして、彼女はこの炎の幻影戦場を一気に貫くように駆け抜ける。
今の彼女の脳内には、マジで幻影たる『主人様』たる声が響いている。
彼女にとって、脳内『主人様』の言葉こそが真理。
行けと言われたから行く。
誰に何を言われたからではない。この戦場に響き渡る怨嗟の声さえも彼女には届かない。
いつだって心にあるのは、あの言葉だけだ。
「はいどいてどいてメイド通りますので!」
妖魔たちはもうめちゃくちゃであった。
どれだけこのやべーメイドを止めようとしても止まらないのである。
自分たちなどまるで存在しないかのごとく蹴散らされてしまう。ドン引きであるとかそんな感情すら浮かばせることすら許さぬやべーメイドの行軍。
「全ては『主人様』のために!」
あらゆる恨み辛みを凌駕する奉仕の心。
それこそがステラの唯一の武器である。
……多分。
いや、うん。そのとおりであろうと思う。自信はない。いい切れるだけの自信がない。
けれど、そんなこと知ったことではないというようにステラの赤い瞳は炎の戦場を突き抜け、新たなる領域へと飛び込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒影・兵庫
うわー地獄って感じですね!せんせー!
(「人が沢山で好き勝手やりゃあどこでも起こりうる光景ね」と頭の中の教導虫が返事する)
やはり蜂皇族の皆様のような存在に管理されるべきでしょうか!?
(「いいえ。それだと人が蜂皇族を超えることができない。それはダメ」)
ダメですか…?
(「ダメ。上限があったら終焉を終焉できないでしょ?そんなことよりさっさと突破しましょう。死者の戯言は完全スルーできるように『催眠術』による自己暗示で強制的に精神を『落ち着き』させます」)
はい!せんせー!では俺は『オーラ防御』で妖魔たちの攻撃を防ぎながら
UC【蠢く霊】で召喚した強襲兵の皆さんに敵を蹴散らしてもらいます!
幻影たる炎の戦場。
そこにうごめく妖魔たちが餌としているのは死せる者達の怨嗟と憎悪。
その恨み言は、人の心を散り散りに切り裂く刃そのものであったことだろう。
この場は仙人たちにとっての修業の場であり、また同時に不心得者を遠ざけるための仕掛けでもあったのだ。
この領域を抜け、第二の領域へと至らねば万能の魔神『エリクシル』によって願いを歪められようとしている幼き仙人『熾天大聖』の下へはたどり着けない。
「うわー地獄って感じですね! せんせー!」
黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は思わず、目の前の光景に驚きを顕にしていた。
広がる炎の戦場にうごめく妖魔。
彼等の姿形もそうであるが、周囲に響き渡る怨嗟の声がまた兵庫の中にある地獄というイメージに繋がったのであろう。
確かに彼の言葉のとおりである。
周囲には殺された者と殺した者が織りなす連鎖の如き環に囚われた煉獄が広がっている。
これだけの光景を見て人の心は絶えられないかも知れない。
逃れ得ぬ争いの連鎖に己もまた組み込まれているということを嫌でも理解させられたかもしれない。
それほどまでにこの領域の炎はゆらぎながらも決して絶えることのないものであった。
『人がたくさんで好き勝手やりゃあどこでも起こりうる光景ね』
彼の頭の中で『教導虫』の声が響き渡る。
その言葉に兵庫は頷く。
ここは人の業の坩堝だ。
「やはり蜂皇族の皆様のような存在に管理されるべきでしょうか!?」
人が人ならざる者によって統治される。
それはある意味で正しいのかもしれない。手っ取り早いとも思えることであっただろう。
だが、その言葉を否定するのは他ならぬ頭の中に響く『教導虫』の言葉であった。
『いいえ。それだと人が蜂皇族を超えることができない。それはダメ』
はっきりとした言葉であった。
否定の言葉に兵庫は考える。
自ら考え、律することができるのもまた人の性であった。
だからこそ、『教導虫』は告げたのだ。
それは思考停止と同じだと。そして、目の前に広がる光景から脱することのできない未来そのものであると。
「ダメですか……?」
それでも導いてほしいと思うのもまた人であろう。
『ダメ。上限があったら終焉を終焉できないでしょ? そんなことよりさっさと突破しましょう』
『教導虫』の言葉に兵庫は頷く。
周囲に満ちる言葉。
それを兵庫は己の心を律する。
自由にできるのが己の心であり、また同時に柔らかく影響を受けやすいものでもある。だからこそ、自分のの心を落ち着かせる。
己は己で決めることができると教わったのだ。
「はい! せんせー!」
元気よく声を上げ、兵庫は炎の戦場を走り出す。
どんな言葉も、どんな恨みも、どんな憎悪も。
何もかも今の己には関係ない。
戯れ言だと思う。
導かれる者がいて、導く者がいる。今の兵庫にとっては、それだけで十分であったのだ。
瞳に輝くユーベルコードは、一瞬で妖魔たちを喰らい尽くす。
鋼鉄をも粉砕する牙を持ち、呪詛や悪霊さえも切り裂く牙足り得る蠢く霊(ウゴメクレイ)――強襲兵たる虫たち。
「強襲兵の皆さんは死んでも強い!」
自分が信じるものが心の真芯に在るのならば、揺らぐことはない。
そのゆるぎない心がこそが今の兵庫を支えている。
けれど、『教導虫』の言うところの力とは、それだけではダメであることを告げている。
上位たる存在を頂けば、そこまでは引き上げられるだろう。
けれど、終焉を終焉させるほどの力を兵庫が得るためには、その可能性を潰すのが上位たるものであると『教導虫』は考えたのかも知れない。
だからこそ、彼女は地獄の如き戦場を駆け抜ける兵庫に教え、導くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 日常
『貴方だけの物語』
|
POW : 天から降る雫を掬う
SPD : 水の地を歩む
WIZ : 水晶の樹に触れてみる
イラスト:オオミズアオ
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
炎の戦場を抜けた先にあったのは、鏡の領域であった。
何処を見ても己を写す鏡が存在している。
足元の澄んだ水も、水晶の結晶の面も、水晶そのものたる樹も。
全てが足を踏み入れた猟兵達を見つめていた。
此処に万能の魔神『エリクシル』が存在している。だが、その姿はこの光景に紛れていて、猟兵たちにもわからない。
声が響く。
「叶えましょう。あなたの願いを叶え続けましょう。飽くなき『平和』への希求。それを叶え続けましょう。世界には争いが絶えず、『平和』を人は求める。あなたはその代弁者。代行者。故に、叶えましょう。あなた自身の発する所、その心のままに、『平和』を」
歪曲するようにたわむ声。
穏やかすぎるがゆえに耳障りな音となって、それは鏡の領域に響き渡る。
まるで木々の枝葉が広がるように。
その言葉自身が樹そのものであるかのようにどんどん広がっていく。
幼き仙人『熾天大聖』もまたこの場にいるのだろう。
彼の強大な『願いの力』全てを叶えることでもって奪い続けようとする『エリクシル』を見つけ出さなければならない。
「此処はあなたの心そのもの。あなたの過去と心を映し出す。どんなに美しい思いも、どんなに醜い思いも、全て詳らかに。逃れたいと思う過去も、望む未来も。全てがあなたの足を止めるものとなる」
その言葉と共に猟兵達飲めの前に現れるのは己自身。
過去であり、望む姿であるもの。
まごうことなき己自身が告げる。
「どうして否定する?」
「願いは叶えられるべき」
「何も間違ってはない」
「己自身の心に問うがいい。この願いが過ちであるのかを」
その言葉が響く。
鏡の領域は猟兵達自身を映し出す。偽り無く、幻影ですらなく。
己自身との対話。
逃れ得ぬ己という真実に猟兵たちは立ち向かい、この水晶の森の如き場に偽装する『エリクシル』の姿を暴き出さねばならない――。
メンカル・プルモーサ
…まさしく水晶の森…だね…
エリクシルが居なければここで暫くこの風景を見てみたかったのだけど…
また声が響いてるな…そして小さい頃の私の幻影…か
うん?願いは叶えられるべき…何も間違っては居ない…?
…私の願いは「知る事」…それは暗闇の迷宮を一歩一歩と先へ進む行為に似ている…
…願いを使って何かを知ったとしても…それは迷宮のどこかに転移する罠に等しく…ただただ現在地が判らなくなるだけ…
…それを私は幼少期からしっかり教わっている…
…なるほど…つまりはそこか…【尽きる事なき暴食の大火】を目の前の幻影へと叩き付けよう…
…過去から問うには相性が悪かったのかな…私の幻影のふりをしていたエリクシルを燃やし尽くすよ…
水鏡の如き水面が波紋を広げていく。
一歩進むたびに、その波紋は数をなし、水鏡たる水面を歪めていく。
歪むのは光の粒であり、その光を受けて水晶の結晶を生やす樹々が揺れ動く。
「……まさしく水晶の森……だね……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、此処が万能の魔神『エリクシル』の存在する鏡の領域でなかったのならば、しばらく滞在してこの光景を眺めていたいと冴え思ったことだろう。
それほどまでに見事な光景であったのだ。
煌めく美しい光景に心を奪われる暇すら与えられないのが猟兵の戦いというものである。
声が響き、反響し、彼女の心の中を覗き込む。
その気安くも無頓着な足取りの如き侵入はしかしてぬるりと潤滑油を差したかのようになめらかでもあった。
瞬きの間に現れたのは小さな少女。
その少女の姿にメンカル自身は見覚えがあった。
幼き日の自分。
これが幻影であるとハッキリ言えるのはメンカルが毅然とした意志を持っているからであろう。
「願いは叶えられるべき。何も間違っていないし、何も間違えない。私の願いは『知る事』。それは暗闇の迷宮を一歩一歩進む行為に似ている。だから灯火が必要。導いてほしいと思うこともまたあるはず」
それが『願い』であるというのならば、メンカルは頭を振る。
言い聞かせるまでもないことだと彼女は言うだろう。
彼女にとって、願いによって叶えられた『知る事』とは意味のないことであった。
そう、『知る事』は己の足で着実に踏み固めていくこと。
どれだけ一足飛びに暗闇を乗り越えて、叡智の輝きを手にするのだとしても、それは足元の覚束ない頼りない地面に足をおろしたのと同じ。
迷宮であったのだとしても、周囲のわからぬ何処かに転移することと同義。
「その『願い』は自分の足元が、自分が立っている場所をわからなくするだけ……それを私は幼少期からしっかり教わっている……」
だから、目の前の幻影に惑わされることはない。
いつもの変わらぬ表情。
自分の幼き頃の顔はこんな顔だったのかと、メンカルはまた一つ『知る事』が出来た。
願いを叶える万能の魔神。
その存在にとって、メンカルの願いは小さなことだった。
けれど、小さな願いを己の手で一つ一つ積み重ねていくことこそが、彼女の大いなる道筋を照らす灯火となるのだ。
故に、尽きる事なき暴食の大火(グラトニー・フレイム)は此処に輝く。
「……なるほど……つまりはそこか……」
白き炎が幻影を燃やしていく。
如何なる存在をも燃やす白色の炎は、幻影を飲み込み、炎となって消えていく。
「……過去から問うには相性が悪かったのかな……」
既に完成されていた知性は、付け入る隙を与えない。
メンカルを前にして『願いを叶える』という行為は誰かにしてもらうことではなく、自分自身で手にするものであるということを理解しない限り、『エリクシル』はメンカルの『願いの力』を得ることは叶わないだろう。
ゆっくりと燃える白い炎。
そのゆらめきが鏡の領域に立ち上る。
未だ見えぬ『エリクシル』の影。
燃える白い炎はメンカルの知性を知らしめるように広がっていく。
水晶の樹々。
多く存在するそれらに囲まれながら、メンカルはまた一歩『知る事』を叶え、彼女にとって障害たり得ぬ『エリクシル』の偽装の先へと足を踏み出すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メサイア・エルネイジェ
はっ!?この
おさない
かわいい
しょうじょは……
昔のわたくしですわ〜!お可愛いですわ〜!
勿論今もお可愛いですわ
いぇい!
むむ!また悪徳お業者が何か仰っておりますわね
わたくしの願いはオブリビオンと悪者退治!
暴力で皆を笑顔に!パワーアンドおピース!
でもこれはわたくしの使命でして他人にどうこうして頂く事ではなくてよ?
勝手にお平和になられたら暴力できませんもの
勝利の美酒だって味わえませんわ〜!
因みにわたくし今は禁酒中ですわ…手がぷるぷる致しますわ…
ご自分で作ったお料理はご自分で作るから美味しいのですわ
お平和も同じですわ!
という訳で早速願いを成就致しますわ!
王族に変装すると不敬罪で極刑ですのよ!
王笏ハンマー!
鏡の領域に現れるのは己自身。
過去の光。
残光はいつだって影を伴うものである。
しかして、その姿を見た今を生きるものは、残響であると笑うだろうか。
「はっ!? このおさない、かわいい、しょうじょは……」
メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は鏡の領域にて、己の前に現れた過去の自分を見て目を見開く。
あどけない表情。
見上げるくりくりの瞳。
ほっぺたはりんごのように赤く。
どこをどうとっても、どこに出しても恥ずかしくないほどの美少女がそこにいた。
「昔のわたくしですわ~! お可愛いですわ~! 勿論今もお可愛いですわ、いぇい!」
ぶいぶいとメサイアは過去の己を抱えてくるりくるりとその場を回る。
しかし、領域に響く声が、その私服なるひとときを台無しにしてくれる。
「願いは叶えられるべきですわ。全ての願いは等しく叶えられる権利を持っている。ならば、全部叶えて差し上げるべきだとおもいませんこと?」
幼き日の自分が言う。
その言葉は過去の己の言葉であったのかもしれない。
けれど、メサイアにとってそれは自分の言葉ではなく、万能の魔神『エリクシル』の放つ言葉であった。
「わたくしの願いはオブリビオンと悪者退治! 暴力で皆様を笑顔に! パワーアンドおピース!」
キラキラとした瞳が互いの瞳を映し出している。
曇りのない、一点の淀みもない言葉であった。
メサイアはきっと本気で思っているだろう。
救いを齎す者の名を持つが故に、彼女は救う。そうしなければならないという思いがあるからこそ、出奔したのだ。
幼き日の己もそれが理解できるだろう。
確かに平和を願えば『エリクシル』は叶えてくれるのだろう。
けれど、それは彼女にとって異なるものであった。
「でもこれはわたくしの使命でして他人にどうこうして頂くことではなくてよ?」
「何故です? 力あれば叶うのならば、それは正しいことではなくて?」
その言葉にメサイアは笑う。
「勝手にお平和になられたら暴力できませんもの」
その言葉に水晶の結晶に亀裂が走る。
そう、メサイアが求めているのは勝利の美酒である。
暴力でもって平和を成す。勝ち取ると言ってもいいのかも知れない。そうすることこそが彼女の心を満たしてくれる。暴力が、力が、彼女の渇望を癒やしてくれるのだ。
手が震える。
いや別に禁断症状とかそういうんじゃないはずである。
「因みにわたくし今は禁酒中ですわ……手がぷるぷる致しますわ……」
別の意味でやっべーことになっている!
しかしメサイアは晴れやかな表情で抱えた過去の己をそっと水鏡の如き水面に下ろす。
「我慢しなくてもいいのではないですの? 何もかもやりたい放題で、願いたい放題で、それでいいじゃありませんか。願えばすぐにできますわ」
「ご自分で作ったお料理はご自分で作るから美味しいのですわ。お平和も同じですわ!」
振るう王笏の輝きがユーベルコードに満ちる。
そぉい! と振るう一撃。
それが結晶を砕くように過去の自身を打ち砕く。
「王族に変装すると不敬罪で極刑ですのよ!」
揺るぎなき暴力(チカライズパワー)は彼女の手の中にある。
砕けて散った結晶のかけらを踏み割り、メサイアは前に進む。
どれだけ簡単にお手軽にインスタントに願いでもって平和を得るのだとしても、傷つかぬ者の手に渡る平和は簡単に砕かれてしまう。
だからこそ、己の手で勝ち取るものにこそ意味があるのだとメサイアは己の手にした王笏を振るい鏡の領域を進むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
キャスパー・クロス
そうだね、私は、『平和』を望んできた
願いが過ちかと我が胸に問うなら、それは過ちではないね
水面に、水晶に映る自身の姿がよく見えるよう
【空中浮遊】からの【推力移動】で先へ先へと進もう
ゆっくりと、ふわふわと、軽やかに、雅やかに
私達エンドブレイカーは、終焉に抗ってきた
|運命《さだめ》られた終焉を、自分の力で壊してきた
自分の未来を運命に委ねてちゃダメだってことを知って、学んで、積み重ねてきた
そうして、今がある
平和への願いは真。偽りもなく、過ちでもないと胸を張れるよ
でもねぇ、それを誰かに『叶えてもらう』ってのが…間違ってるのさ!
私は、私達を縛る運命を壊し、自由に羽撃くために力を行使してきた
故に私には足跡は無い、ずっとずっと、未来に向かって空を奔ってきた!
過去の私が目の前に姿を表すって?
私は過去に何も遺していない。私の過去を模そうと形を成すこと自体──おかしな話!
「移色……!」
《移色は謐か》を発動
滞空時間はしっかり稼いだ。成功率を上げてエリクシルの偽装を【見切り】、蹴撃からの【斬撃波】で破壊する!
「『平和』を望むことは悪いことかな?『平和』を得られるのなら、他の何も厭わなくておいいのじゃないかな?」
その言葉は己の言葉であったかもしれない。
己と同じ声色。
己と同じ姿。
鏡の領域に合って、それは自分を映し出しているかのようでもあった。
キャスパー・クロス(空色は雅やか・f38927)は目の前にある過去の自分の幻影を前にして頷く。
「そうだね、私は、『平和』を望んできた。願いが過ちかと我が胸に問うのなら、それは過ちではないね」
鏡の領域にある水面は波紋に揺れている。
交わる波紋は過去と今とが交わる光景でもあったことだろう。
水晶の結晶の多面に映る自分の姿。
空に浮かび上がる体。
浮遊感が内臓を押さえつけるようでもあった。
けれど、それがキャスパーにとって嫌なことではなかった。羽のように軽やかに空を征く。
己の在り方であると言われたのならば、それがそうだ。
「私達『エンドブレイカー』は、終焉にあらがってきた」
「戦いに、戦いばかりに目を向ければそういうことになる。戦って、戦って、滅ぼして、終わりのない連鎖の中に自分が組み込まれている」
「|運命《さだめ》られた終焉を、自分の力で壊してきた」
「運命とは齎されるものであり、自分の前に現れるもの。それを壊すことが許されたのは、自分がエンドブレイカーであるから。けれど、そうでないものはどうすればいい」
「自分の未来を運命に委ねてちゃダメだってことを知って、学んで積み重ねてきた」
人生とは積層である。
精霊建築の都市が上へ、上へと積み重ねられていくのに似ていた。
多くを失いながらも上を、空を目指す。
未来というものに不安を覚えるからこそ、定められたものを寄す処にする。それは当然のことであった。
しかし、それを壊すことができるのを知ったのだ。
自らの足で歩んでいける。
その力。
「そうして、今がある」
キャスパーは鏡写しのような自分を見る。
願うものを求める万能の魔神『エリクシル』。彼等は歪める。いつだって歪めて叶える。
善きにつけ悪しきにつけ。
「平和への願いは真。偽りもなく、過ちでないと胸を晴れるよ」
「本当に? 願いそのものが過ちであるから、過程もまた間違うものではない? それならば、誰かに『叶えて』もらった方が良いとは思わない? 失敗しても、歪められても、その結果を誰かのせいにできる」
映し身の如き幻影の己が応える。
それをキャスパーは否定する。頭を振る。
揺れる髪の向こうにキャスパーの瞳が在る。移色は謐か(ウツシイロハシズカ)だった。
「それは……間違ってるのさ!」
ユーベルコードに輝く瞳。
彼女がふわりと空に浮かび続けたのは、ユーベルコードのため。
「私は、私達を縛る運命を壊し、自由に羽撃くために力を行使してきた。故に私には足跡はない、ずっとずっと、未来に向かって空を奔ってきた!」
空に在りて見下ろす領域は鏡ばかりであった。
水晶の結晶も。
結晶の樹々も。
水鏡の如き水面も。
何もかもが自分自身を移している。過去の自分が映し出されている。
「私は過去に何も遺していない」
今を此処にと宣言するからこそキャスパーは、その移ろう色を空と共に同じ色にする。
「私の過去を模そうと形を成すこと自体――おかしな話! 空は私と共にある!」
見定める。
幻影は彼方に。
そして、己の蹴撃は己を映し出さぬ結晶の樹を見やる。
子供が近くにいる。
あれが幼き仙人『熾天大聖』であろう。星写す黒い瞳が己を見ている。あれこそが『平和』を願う者。
そして、同時に『平和』を齎すために『存在』する者。
衝撃はが水面を揺らし、幻影を消し去る。
樹々に紛れた『エリクシル』に一撃を見舞ったキャスパーは見るだろう。
あれこそが万能の魔神。
エンドブレイカーが戦い続ける、願いを歪める者――。
大成功
🔵🔵🔵
黒影・兵庫
はて?俺ではなくせんせーが映っていますね
(「なるほど。黒影を狙ったところでアタシが邪魔をするから先にアタシを堕とそうってわけね」と頭の教導虫が呟く)
大丈夫ですか?
(「大丈夫よ」)
”大切な人を亡くし残される辛さを知ったでしょ?黒影と出会い、体を捨て、一緒になったのも取り残されないため
そして少しでも長く一緒に居られるように黒影を猟兵にして生命の埒外へと導いた
なら貴女はここで止まるべき。危険を冒さずとも永遠の命を”
(「いらない。アタシは自分が培った力以外を信用しない。そんなものを黒影に混じらせない!黒影!掃除の時間よ!鬱陶しい幻ごときれいさっぱりしちゃいなさい!」)
はい!【蜂皇清掃術】発動!
黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は不思議に思っていた。
この鏡の領域は猟兵の姿を映し出す。
過去に在りし己自身。
心の中を覗き込み、寸分たがわぬ己を生み出す。
それがこの鏡の領域であったはずだ。
だが、彼の目の前にあったのは己ではなかった。
「はて? 俺ではなくせんせーが映っていますね?」
水面が刻む波紋の上に立つのは、金色の髪をなびかせる女性であった。
兵庫にとってはいつも共に居てくれる『教導虫』の姿であり、どうしたことだろうと首をかしげる。
理解できなかった。
けれど、『教導虫』は把握していた。
この鏡の領域に合って万能の魔神『エリクシル』は猟兵を妨害する。けれど、『教導虫』を頭の中に内包する兵庫は足止めできない。
なぜなら『教導虫』が必ず邪魔をする体。
『なるほど。だから先にアタシを堕とそうってわけね』
意図は理解できた。
けれど、『教導虫』の姿をした幻影が言う。
『何も間違っては居ないわ。願いは叶えなければならないもの。願いは生命の基本原理。欲するがゆえに願う。願いは必ず生命を突き動かす。どんなものにも、それは宿って然るべき』
その言葉が領域に反響していく。
兵庫は確かに『教導虫』の言葉だと思っただろう。
聞き分けることができない。
相対する存在の発する言葉の全てが正しいと思ってしまう。
『大切な人を亡くし残される辛さを知ったでしょう? 黒影と出会い、体を捨て、一緒になったのも』
取り残されないためだと告げる幻影の言葉。
その言葉は彼女の心を抉るものであったかもしれない。
二度目の別離を得たくないがために『教導虫』がしたことを糾弾するように幻影の言葉が続く。
取り残されること。
それは生命の長さが異なるが故に、必ず訪れる瞬間である。
また逃れ得ぬ摂理でもあった。
残されることの苦しさを、悲しさを彼女は知っている。
少しでも長く。先延ばしにしたいという願いが、兵庫を猟兵に、生命の埒外に導いたのだとすれば、それは。
『なら貴女は此処で止まるべき。危険を冒さずとも永遠の生命を』
願えばいいと幻影が笑う。
理解できてしまうだろう。自分が何を望んでいるのか。他ならぬ己自身であるからこそ、『教導虫』は理解できてしまう。
しかし、彼女は頭を振るようにして言葉を紡ぐ。
大丈夫ですか、と尋ねる兵庫に彼女は短く言い放つ。大丈夫だと。なんてことはないのだと。
『いらない。アタシは自分が培った力以外を信用しない。そんなものを黒影に混じらせない!』
生命が願う存在であるというのならば、それを叶えようとする『エリクシル』が望むのは『願いの力』。
けれど、意志の力でそれを否定せしめるのもまた生命である。
『黒影! 掃除の時間よ! 鬱陶しい幻ごときれいにさっぱりしちゃいなさい!』
その言葉とともに兵庫の瞳がユーベルコードに輝く。
鏡の領域に合って、その光は一瞬でオーラの矢となって全方位に走る。
爆発的な光は、蜂皇清掃術(ホウオウセイソウジュツ)。
矢は鏡のように映し出す水晶の結晶を打ち砕き、幻影を貫く。
「はい、せんせー! きれいさっぱりです!」
兵庫の混じりけのない瞳の輝きだけが『教導虫』に映し出される。
敵の目論見がなんであれ、願いは自分の手でつかみ取るものである。
決して叶えてもらうものではないと、『教導虫』は、その身を持って教え導く者に示すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メリー・スペルティナ
過去……というかこれ数年前(猟兵としての活動開始の少し前)ですわよね?
まあその辺までしか記憶が遡れないので当然かもしれませんけど
ですが……同じなのは見た目だけですわね
真に応えるべきは口にした願いに非ず、内に抱えしその願いへと至る「想い」。それが想いを宿すこの呪血の所持者、もはや亡き死者達の祈りと呪い、その全てを背負うと決めたわたくしの矜持。
口にした願いの表層をなぞり、言葉を弄ぶだけのエレキシルとやらに委ねる願いなど、「メリー・スペルティナ」にはありませんのよ!
ヒルフェで幻影を切り捨て、UCを使っての突破を試みますわ!
このわたくしに、不可能などありませんのよ!
(注:華麗にこなせる訳ではない)
鏡の領域は過去の己を映し出す。
過去の自身は言うだろう。
願いを叶えることは何も間違ってはないのだと。願いを叶えようとすることこそが生命体の原理であると。
しかし、メリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)は告げる。
「真に応えるべきは口にした願いに非ず」
過去たる己を前にしても、その言葉は違えることがなかった。
結局の所、彼女にとって目の前の存在は見た目が同じだけの影法師でしかなかった。
自分の記憶は多くはない。
猟兵として存在していたのは数年前からだ。それ以前の記憶がない。だからこそ、この鏡の領域にあっては、目の前の自身が数年前の姿をしていたとしても間違いではなかった。
「何に応えるというのです。願いに答えればいいだけの話。何も間違ってはないのです。叶えたいとは思いませんか。己を知りたいと思いませんか。心残りになりませんか。公開しませんか」
その言葉はメリーの心をえぐろうとするだろう。
けれど、メリーは宣言する。
「いいえ。内に抱えしその願いへと至る『想い』。それが想いを宿すこの呪血の所持者、もはや亡き死者達の祈りと呪い、その全てを背負うと決めたわたくしの矜持」
自らの表層をなぞられたのが、この鏡の領域の示す特性であるというのならば、メリーは否定するだろう。
願うことも。
祈ることも。
何もかも『そこ』に帰結する。
己の抱える矜持。『想い』に応えるこを委ねることなどないのだ。
言葉を弄する『エリクシル』。
「何故です。願えばすぐにでも貴女の『想い』も矜持も報われるというのに。最短を往かぬのは怠慢ではありませんか」
「あなたに委ねる願いなど、『メリー・スペルティナ』にはありませんのよ!」
血晶石の刃が唸りを上げるように、慟哭の振動を放つチェーンソー剣が揮われる。
幻影を切り裂き、呪詛と妄執を断ち切る。
駆動する刃。
「このわたくしに、不可能などありませんのよ」
水面を切り裂くように走り抜ける血の閃光。
メリーはひた走る。
『エリクシル』が偽装しているであろう樹々を切り裂く。結晶が飛び散り、水面に波紋を幾重にも重ねていく。
何処までも走ることができると彼女は思っただろう。
止められるものではない。
なぜなら、彼女は全ての亡き死者の祈りと呪いを背負っている。
その矜持こそが彼女を前に、前にと進めさせるのだ。
ただ一人の心の表層をなぞっただけの存在に止められる道理などないのだ。
「ふふん、この程度、わくしになら楽勝ですわね!」
振るうチェーンソー剣が水晶の樹々をなぎ倒す。
最早どれだけ幻影を作り出しても無意味。
メリーは気品や格好をかなぐり捨てる。華麗にこなせることなど必要としていなかった。
世界を堕落と破滅の運命に堕そうとする存在を許すことは、彼女の矜持に照らし合わせてみても相容れぬものである。
強化された呪式に後押しサれるように運命は変転する。
不可能のを凌駕するユーベルコードの輝きを持って、彼女は鏡の領域を踏み割るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『静かなる者』にて
これはまた、綺麗なところですね…。
炎といい鏡といい、身の内にいる人たちに関連はするのですが。
※炎は『侵す者』、鏡は『不動なる者』の領域
白髪に青目…ええ、私の生前…『梓奥武孝透』という男単独での姿ですか。久しいですね。
願いは『大切な人たちと、平和である世を迎えること』でしたか。
たしかに、願い自体は間違いではないですがね。
それは万能のものによって叶えるものではないのですよ。
人と人とが手を取り合い、妥協点を見つけ、協調する…そういうものです。
停滞ではなく進むためにも、そうであらねば。その可能性を、残さねばならぬのですから。
というわけで、UC使ってでも叩きのめしましょう。
水晶の樹々が見せる鏡面はきらびやかであった。
美しいとさえ思えたことだろう。
「これはまた、綺麗なところですね……炎といい鏡といい、身の内にいる一太刀に関連はするのですが」
目の前に広がる領域。
そこに馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱たる『静かなる者』は思うところがあるようであった。
炎は『侵す者』。
鏡は『不動なる者』。
領域が示すとおり、己達に関連したものは、容易に想像を働かせる。
水面の水鏡を覗き込めば、そこにあるのは己自身であった。
生前の己。
名を『梓奥武孝透』。
「久しいですね」
自分自身であるというのに『静かなる者』は懐かしさすら覚えて口にする。
目の前の己自身。
過去たる象徴。白き髪が風に揺れ、青き瞳が自分を見つめている。
「大切な人たちと、平和である世を迎える事ができる千載一遇の好機。それに何故手を伸ばさぬ」
その言葉は偽りなき自分のもの。
願っていた。
永久に続けばいいとさえ思える平和。平穏。心穏やかに、呪詛と恨みとはかけ離れた世界を生きる望み。
どれもが望めば手に入る。
それほどまでに万能の魔神『エリクシル』の力は強大であった。
「確かに」
間違ってなど居ない。
自身の願いは恐らく今も違えることはないだろう。
けれど、と『静かなる者』は頭を振る。
「それは万能のものによって叶えるものではないのですよ。人と人とが手を取り合い、妥協点を見つけ、協調する……そういうものです」
万能の魔神『エリクシル』が叶えるのは、いつだって歪められた願いである。
どれだけ真摯に願いに向き合ったとしても、その叶えられた結果は必ずや破滅と堕落を生み出す。
その時滅びるのは世界のみならず己の心。
故に『静かなる者』は見据える。
過去の自分に言い聞かせるのと同時に、自身の心にこそ問いかけるのだ。
「それを停滞と呼ぶのではないか。諦観と呼ぶのではないか。折り合いをつけると言葉で言えば心地よいのかも知れない」
「停滞ではなく進むためにも、そうであれねば」
力強く『静かなる者』は告げる。
その言葉は力そのものであった。
白き弓を引き絞る。弓矢の鋭き切っ先が向けられるのは過去の自分そのもの。
「その可能性を、残さねばならぬのですから」
引き絞った一射は氷の矢となって過去の自身の眉間を貫く。
続けざまに放たれる矢が次々と過去の幻影を貫いて砕く。砕け散った破片が水面を揺らす。
だが揺れない心がある。
求めるものは己の一人の手では届かぬものである。
最早届かぬ願いであったとしても、己以外の誰かのためにこそ戦うことを消えたからこそ、自身たちは悪霊でありながら猟兵として束ねられ存在することができる。
「その過去は凍えていきなさい」
過去は過去のままに。
決して『今』を侵食してはならぬと言うように砕けて散った幻影を背に『静かなる者』は『エリクシル』の残影を追うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
紅月・スズ
過去アルかー、そもそも全然覚えてないアルね!
まー今のワタシは護業天象拳を極める以外ないアルし関係ないネ
お!あれがそうアルね!では早速【迅雷襲】アル!
(会話もせず「自分」が出てきた途端雷化した腕「掃天雷爪」で盛大にぶん殴る)
あれー?何で何もしてこないアル?こんなんじゃ修練にならないアルよ?
こうなればやっぱりその……えーと……「エリック汁」とかいうのを殴るしかないアルね
じゃあまずは見つけないとアル。周囲の気の巡りを探っていくアルよ
んー?倒したワタシっぽいものが何かいってるアルね。
というか「願いそのもの」の是非と「それをエリック汁が叶える事」の是非はそもそも別物じゃないアルか?よく解らないケド
紅月・スズ(路上格闘僵尸娘・f32726)は戦えればそれでいいと思っていた。
それ以上の願いはなかったのかも知れない。
強者との戦いを求めてさまよう僵尸であるから、と言われてしまえばそれまでであったかもしれない。
いや、単純にそれ以上のことを覚えていられないだけなのかもしれない。
彼女は自身が僵尸になった由来も、何故『護業天象拳』を受け継いでいるのかもさえ覚えていない。
そんな彼女の目の前に立つ幻影が言うのだ。
「――」
いや、言葉を告げられるよりも早く、スズは走っていた。
踏み込む。
振るう拳の一撃。
迅雷襲(ソコハワタシノマアイアル)――己の腕を成した雷。
その振るう一撃は迅雷のごとく。
迸る雷は水晶の樹々を揺らし、水面に波紋を激しく刻み込むだろう。
「あれー? なんで反撃してこないアル? こんなんじゃ修行にならないアルよ?」
スズにとって、目の前の幻影は過去の己自身であろうとも関係なかった。
全く覚えていないからという理由だけではない。
今の彼女の中にあるのは、『護業天象拳』を極めるという目的だけだった。それ以外の何も必要としなかったし、関係さえないと切り捨てる。
ユーベルコードの輝きに瞳が満ちている。
戦って、戦って、戦い続けて練磨されていく拳。
未だ己の拳は頂きには程遠く。洗練されているとは言えないのかもしれない。
修練だけが彼女の存在意義。
「――」
幻影は絶句しながらも迸る雷と共にスズと拳を交える。
過去の投影たる幻影の技の冴えは、『今』のスズには及ばない。
当然のことだ。
弛むことのない練磨を続けるスズと過去とでは力量に歴然たる差がある。わかりきっていたことだ。
彼女が修練にならないと言った言葉は正しかった。
「こうなればやっぱりその……えーと……『エリック汁』とかいうのを殴るしかないアルね。どこ行ったアル?」
振るう拳が雷の爪となって幻影たる過去の己を引き裂く。
「願えば、すぐに叶うものであるというのに。どうしてそこまで急くアル? 願いそのものは変わらぬものであるはずなのに」
その言葉にスズは首をかしげる。
「『願いそのもの』の是非と『それをえりっくしるが叶える事』の是非はそもそも別物じゃないアルか? よくわからないケド」
スズは首を傾げたままだ。
答がでないとも思ったのかもしれない。
幻影がどれだけ言葉を弄するのだとしても、結局の所、スズが出来るのは一つだけだ。
練磨すること。
磨き上げること。
それをわざわざ叶えられるまでもない。
周囲の気をめぐる。
この領域に合って鏡は幻影を生み出すものである。ならばこそ、偽装している『エリクシル』の姿を捉えるためには、龍脈から溢れるであろう力の奔流を辿る。
「――強い力がいるアル」
領域にあるのは二つ。
一つは仙気満ちる存在。
それが幼き仙人『熾天大聖』であると彼女は理解するだろう。そして傍らにあるもう一つ。
それこそが『エリクシル』でるとスズは理解するだろう。
偽装している存在をスズは気によって感知する。
「過去の自分では修練にならないアル。なら、『えりっくしる』……? ぶん殴らせるアル!」
スズは水面を跳ねるようにして、飛ぶ。
眼下にある存在に拳を叩き込むために。
如何なる願いも、己自身の拳が掴みとらんとするように、雷が腕より迸るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
神明・桐伍
手近な水晶の表面をついと撫で
む、敵の造り出した罠でなければ、景色の美しさを愛でられたであろうに。残穢至極だ。事前に其れと教えてくれたナイアルテ殿に感謝せねばな。
幻影が現れれば指環が熱を発して意識に警鐘を鳴らす
映るのは平素の森での閑かな暮らし、戦い無き時に軍の者達と過ごす和やかな時間・・・か。覚えておらぬ昔のことも、或いは映し出されるかと思うておったが。
・・・所詮はまやかしか
幻影を切り払い
「平和を希う優しき願いを護る」
何かが気に掛かるように思ったが、気のせいであろう。行くか。
美しさとは裏腹なるは世の理。
鏡の領域に足を踏み出した神明・桐伍(神将の宿星武侠・f36912)が眼前に広がるのは水晶の結晶が彩る光景。
「敵の造り出した罠でなければ、景色の美しさを愛でられたであろうに。残念至極だ」
事前にそれであると知らされていなければ、この光景を何も知らずに眺めることとなっただろう。
そして、現れるであろう己の過去の幻影に惑わされていたかもしれない。
そう思えば、この光景の理を知ることが出来たのは幸いであった。
来るとわかったものに対しての心得を桐伍は持ち合わせている。
彼の指にはめられた指輪が熱を帯びる。
知らせているのだ。
危機が己に迫っていると。
警鐘が鳴り響くように熱に寄るじわじわとした痛みが体に走る。
「これは……」
少しの期待があったのかもしれない。
桐伍にとって過去とは覚えていないもの。失ったものであるのかもしれないし、捨て去ったものであるのかもしれない。
どちらにせよ、消え失せたからこそ求めるのもまた人の性であると言われたのならば、それは詮無きことであった。
故に多少の期待に満ちた眼差しで見る鏡の領域が生み出した幻影。
そこにあったのは平素の自分の姿であった。
森。のどかな暮らし。
戦いとは無縁のように思える穏やかで和やかな時間。
「或いは……覚えておらぬ昔のことも、と思うておったが」
手にした直剣を振るう。
幻影は幻影でしか無い。まやかしだ。自分を乱すもの。惑わすもの。それらが目の前にあるのならば、桐伍は躊躇わない。
期待はずれだと思ってしまったのは、やはり知りたいと願っていたからだろうか。
はたまた万能の魔神『エリクシル』であれば、彼が忘れてしまった人間であった頃のこともまた思い出すことができるのかもしれない。
そう『願え』ば、きっと『エリクシル』は応えるだろう。
ただし、歪めて叶えることに相違はない。
「ならば、それは我にとって意味のない記憶であろうよ」
ユーベルコードに輝く瞳が直剣に刻まれた己の星宿と予言詩を映し出す。
幻影を振り払うように、宿星天剣戟の斬撃が幻影の穏やかなる日々を切り裂く。
今彼が立つのは穏やかなる日々ではない。
戦いの場だ。
だからこそ、目の前の光景に意味はないと切り払って進む。
周囲に存在する水晶の樹々。
これが『エリクシル』の偽装したものであるというのならば、この領域のいずれかに存在している筈だ。
まやかしの如き光景を切り払った桐伍は前に進む。
失われた過去を背にして進む。
間違いであるか、それとも正しいのか。
答えは未だ彼の中で出ないかもしれない。
その背中に言葉が投げかけられる。過去を写す水晶から放たれた言葉であったのならば、桐伍は振り返ることもなかった。
「平和を希う優しき願いを護る」
その言葉は聞き覚えがあったかもしれない。
自分の言葉であったかもしれない。
どれもが可能性の言葉でしかなかった。
憶測でしかなかった。不確定であったし、どれ一つ確かなものなどなかった。
桐伍の心に一つ引っかかるものがあったが、気のせいだと頭を振る。
「……行くか」
立ち止まっては居られない。
少しの時間も彼は立ち止まらない。そうして今まで生きてきたのだ。神将として、猟兵として。
記憶が擦り切れたとしても、己の中にあるものが揺らぐことはない。
護ること。
それだけが己の成すべきことであると示すように宿す星は輝きを曇らせることなく、水晶の樹々の静寂を剣閃で切り裂く――。
大成功
🔵🔵🔵
スミレ・エロイーズ
過去とは自分の後ろについて歩いてくるモノ
話しかけられたら、思わず振り向いてしまいますわ
まぁ
アレはスキュラの里を出た頃でしょうか
全然人を襲わない個体でしたので皆からボロクソに言われておりましたのよねえ……
そしてヒトの領域に辿り着き……まぁ攻撃されますわねえ
よく死ななかったこと
かの方が通りすがらなかったら確実に死んでましたわ
あのほわわん性格には振り回されましたが随分と助けられました
ええ、ここに至るまでの全てが大切な道筋
捨てるモノなど一切なく
……で?
わらわの願い聞きたいのですか?
今の幸せを守るためにその障害を破壊する
エリクシルの力など不要です
何故ならエンドブレイカーの力が無くとも
未来は変えられるから
人の歩みは轍へと変わる。
それは軌跡であったし、同時に歩む人の形をなすものである。
故に人は過去から逃れることはできない。惑い、立ち止まる瞬間にあっても、ぴたりと己の背に張り付く影のごとく。
故に、鏡の領域は仙界にあってなお、人を逸脱しているであろう仙人の精神にすらゆらぎを齎す。
今までの行いが正しいのか。
それとも間違っていたのか。
揺らぐ心は天秤のように。揺らぐことが悪ではないと知るのならば、己の心の置所を見定めねばならない。
揺らぐ心は常に二つの相反するものが存在するがゆえである。ならば、その心の置き場は常に中心。ゆらぎながらも、その支点を得るからこそ人は歩み、過去を振り返ることができる。
「まぁ……」
故にスミレ・エロイーズ(ミス・ヴァイオレット・f38978)は水晶の樹々の中振り返る。
過去とは己の後ろに付いて歩いてくるモノ。話しかけられたのならば思わず振り返るのもおかしくはなかった。
思わず、とスミレは口に出していた。
過去の己の幻影。
スキュラの里を出たばかりの頃であっただろうか。
同じピュアリィとして人を襲わぬ我が身は、同族からも疎まれる。人の領域にたどり着けば、人を害するモノとして排斥される。
痛みと苦しみが過去にあるのならば、今の自分がどのような存在であるかを知らしめるだろう。
過ぎ去った痛みも、苦しみも。
目の前にすれば再び蘇るようであった。体のあちこちから悲鳴を上げるような痛みが走る。
「よく死ななかったこと」
そんな痛みすらもスミレは他人事のように思っていた。
何故ならば、過去は変わらないからだ。どれだけ死に至るような痛みを受けても、この後に訪れる過去を彼女は知っている。
木漏れ日のような穏やかな笑みを思い出す。
まるで綿毛のようなものに包まれているような感覚。通りすがったあの人が居なかったのならば、確実にそこで生命は終わっていたであろう。
間違いなく、そうであったのだ。
痛みは必ず癒える。
肉体は再生する。心もまた傷跡という名の轍となる。
今の自分に至るために必要だった道程にして道筋。
「捨てるモノなど一切なく」
目を背けることもない。
懐かしき日々を思い出す。振り回されながらも、助けられ、助け。いや、自分がそう思っていただけかもしれない。そう思いたかっただけなのかもしれない。
口さがない者は言うだろう。
それが偽善であると。偽りであると。
「……で?」
スミレは断じる。今が幸せであると。今の幸せを生み出してくれたのが偽善であったというのならば、それを真に変えるのが己の行動であるとスミレはいい切る。
幻影などに囚われる謂れなど何一つない。
「わらわの願いを聞きたいのですか? 今の幸せを守るためにその障害を破壊する。即ち、『エリクシル』の破壊。不要なのです、そのような力など」
なぜならば、とスミレの瞳は未来を見据える。
堕落と破滅ではない。
偽善と言われても、より善きを願った者の瞳が見据える未来を掴み取るためには。
「何故なら、エンドブレイカーの力が無くとも、未来は変えられるから」
それを知った。
それを理解した。
故にスミレは幻影たる過去に微笑みを向け、万能の魔神を否定する――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
ええ、なんと秀逸な防御機構でしょうか
これ、やられる方はたまったものじゃないですねぇ
さて
私の願いと言いますと……エイル様との邂逅なのですが
え?叶えてくれるんです?
歪んだ形であっても今すぐ?マジで?ほんとに?
出来ないでしょう?
願いは叶えられるべき
ですが、この願いは誰にも渡せない私だけのモノ
ゆえに、私は追いかけ続けることをやめない
これが願いに繋がる願いなのです
というわけでメイド通ります
それはそれとして過去の私ということは
エイル様の
(物理的に)隙(間)の無い後方警備をしていた頃が見れるのでは?
つまり照れエイル様を外から観察ハスハスできるのでは!!!!
ちょっと立ち止まって見ていきますね(正座)
人の心を覗く鏡。
この鏡の領域に存在するおおよそ鏡と呼べるもの全てが足を踏み入れた猟兵たちの心の内側を照らし、映し出す。
過去の幻影。
それは生み出されたものではなく、自身の心の中にあるものである。
故に足を止める。
彼等にとって、それが真実であればあるほどに足を止めざるを得ない。
「ええ、なんと秀逸な防御機構でしょうか。これ、やられる方はたまったものじゃないですねぇ」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は思わずつぶやいていた。
願いを叶える万能の魔神『エリクシル』。
彼等の目的は『生命体の願いを叶える』事によって得られる『願いの力』である。
この封神武侠界において目をつけたのが幼き仙人『熾天大聖』。
彼の願いは純粋であり、また膨大である。
人の願いと祈りを見て存在する彼に内包された『願いの力』が全て解き放たれたのならば、世界一つなど容易く壊されてしまう。
だからこそ、ステラは前に進む。
「私の願いといいますと……」
「貴方の願いは邂逅でしょう? 愛しき『主人様』との。願い、焦がれ、想い」
「え? 叶えてくれるんです? 歪んだ形であっても今すぐ? マジで? 本当に?」
食い気味であった。
びっくりするくらい乗り気であった。
先程まで後方有能メイド面していたメイドとは思えないほどの神速の対応であった。
幻影の自身にぐいぐい行く姿は、ちょっとあれであった。
その気迫をもうちょっと他のことにも回せなかったのかと思わんでもない。
「出来ないでしょう?」
目の前の幻影にそれが出来ないことを示す。
自分が如何なる存在であるのかをステラは理解している。
願いは叶えられるべきである。
だが、その願いは、自分だけのものである。他の誰にも託せないものである。自分の足で進み、自分の手で伸ばさなければならないもの。
「この願いは私だけのモノ。故に、私は追いかけ続けることをやめない。これが願いに繋がる願いなのです」
ステラは己の幻影を押しのけて前に進む。
そう、誰にも止められない。
もしも、彼女を止めることが出来るものが在るとしたら、それは諦観という名の己自身の心のみである。
彼女が諦めないのならば。
追い求め続けるのならば。
彼女は止まらない。立ち止まらない。諦めない。己が『主人様』と定めた存在を追いかけ続ける。
それが自分の願いであると自覚しているからこそ、惑わされることなどないのだ。
「というわけでメイド通ります」
水晶の見せる鏡にさえ彼女は視線を送らない。
前に、ただ前に進む。
あの背中を追って。あの熾火の導く向こう側へ……。
「それはそれとして過去の私ということは、『エイル』様の……」
物理的に隙間の無い後方警備をしていた頃が見られるではないかと彼女は水晶の前に正座していた。
台無しである。
諸々台無しである。
やっぱりメイドは有能だった! 完! としたかったのに台無しである。
ハスハスしながらステラは第三者の視点から自分の中の幻影を見るというまたとない好機を逃さない。
自分の中の過去だから、盛られている気がしないでもない。
「照れ『エイル』様はすはす」
本当に台無しである――!
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『世界平和の樹』
|
POW : 平和を乱す者には罰を
【主枝の一撃】が命中した敵を【鋭利な葉が茂る梢】で追撃する。また、敵のあらゆる攻撃を[鋭利な葉が茂る梢]で受け止め[主枝の一撃]で反撃する。
SPD : 力を合わせて平和を守りましょう
【支配下にある生物】から無限に供給される【かのような】生命力を代償に、【爆発する実】を、レベル分間射撃し続ける。足を止めて撃つと攻撃速度3倍。
WIZ : 皆の願いが実を結ぶように
【宝石と化した花】から、物質を透過し敵に【魅了】または【宝石化】の状態異常を与える【紫色に煙る花粉】を放つ。
イラスト:すずや
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「待鳥・鎬」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鏡の領域の奥に『それ』はあった。
紫水晶の結晶が樹木の形を成したかのような存在。
『世界平和の樹』――それこそが万能の魔神『エリクシル』であった。
一見しては本当に水晶の樹にしか見えない。
けれど、猟兵たちはひと目見てそれが万能の魔神『エリクシル』であると理解するだろう。
「叶えました。私が叶えました。『平和への願い』を。あらゆる世界に『平和』を齎すために争いを呼び込む存在を生み出す。ああ、けれど」
その穏やかな声色が歪曲して響き渡る。
幼き仙人『熾天大聖』の姿はもはやない。
だが、その湾曲して響き渡る声の主『世界平和の樹』は確かに苛立っていた。
「不完全です。あらゆる世界に平和のための争いを生み出す種を撒くはずが、不完全に終わりました。願いは叶えられず。それも全て猟兵、あなた方のせいです。全ての世界に『平和を齎すための存在』を生み出す事ができませんでした」
あと一歩だったのに、と『世界平和の樹』は歪曲する声色のままに告げる。
ざわめく枝葉。
震える幹。
張り巡らせる根。
その全てが『エリクシル』が得るはずだった完全なる『願いの力』を損失に苛立っていた。
「猟兵。あなた方の介入のせいです。全て叶えられなかった。あなた方こそが『平和』への妨げ。平和を乱す者。故に」
『世界平和の樹』の周囲に集まる妖魔達の姿。
そのどれもが『世界平和の樹』の養分。
供給される生命力を持って相対する猟兵たちを滅ぼさんと、迸る歪曲した声が仙界の領域に駆け抜ける――。
メサイア・エルネイジェ
まあ!わたくしが平和を乱す者ですって?
失礼ですわね〜
わたくしは誰がどう見ても愛と平和の使徒ですわよ!
エリクシルの悪徳商法もこれまでですわ〜!
あの信者っぽいお妖魔達からお養分をお吸いになられているようですわね
まさに悪徳業者ですわ!
ネメジストでびしびし撃って数を減らしておきますわ
見た目が結晶なので切るより殴る方が有効そうですわ
その綺麗な枝葉を吹っ飛ばして差し上げますわ〜!
王笏ハンマーで梢をぶん殴って返すハンマーで主枝をへし折って差し上げますわ
枝葉が良い感じに減ってまいりましたら反撃致しますのよ
根っからの性悪には正義の鉄槌ですわ!
一気に近付いてディバインハンマー発動承認!
光になっておしまいなさい!
「平和を乱す者には罰を与えねばなりません。願われた願いは、全て私のもの。故に叶えなければならなかったというのに、あなた方のせいでそれさえも失われてしまった。それは万死に値する事柄です」
万能の魔神『エリクシル』――『世界平和の樹』は、その水晶の如き樹そのものたる体躯を奮わせる。
大気を震わせるような歪曲した声は、たわむように不快な音となって猟兵たちの耳朶を打つ。
震える音と共に煌めくユーベルコード。
樹木をもした体から放たれる鋭い梢の一撃が猟兵たちに襲いかかる。
「まあ! わたくしが平和を乱す者ですって? 失礼ですわね~」
メサイア・エルネイジェ(放浪皇女・f34656)は光輪負う機械鎧の輝きと共にエルネイジュの王笏を振るって梢の一撃を振り払う。
「わたくしは誰がどう見ても愛と平和の使徒ですわよ!『エリクシル』の悪徳商法もこれまでですわ~!」
振るう一撃によって砕ける水晶の切っ先。
枝葉が伸びる鋭い切っ先は、確かに先鋭化されていて、撃ち込まれればそれだけで彼女の機械鎧を貫き、血肉を切り裂くだろう。
だが、メサイアは手にした収束荷電粒子砲による射撃でもって梢の一撃を寄せ付けない。
「勢いが衰えない……あの信者っぽいお妖魔達からお養分をお吸いになられているようですわね! まさしく悪徳業者ですわ!」
「いいえ。いいえ。違います。全ては『平和』のため。『平和』を願う生命体がいるからこそ、これらは全て生命を私に捧げてくれる。彼等も思っているのです。心の奥底で平和への願いを。恨み辛みを糧にしてなお、自らの心の平穏を求めている」
誰が否定できるであろうか。
如何なる者にも心の中に平穏を持つ。
それは形が違うかもしれないし、他者とは相容れぬものであったかもしれない。
その願いを、『エリクシル』は歪めて叶える。
幼き仙人『熾天大聖』の『願いの力』は膨大そのものであったが、猟兵たちが駆けつけたことによって、それを得ることが叶わなかったと『世界平和の樹』は言った。
ならば、まだ何一つ失っていないとメサイアは手にした収束荷電粒子砲の一撃で持って梢の一撃を打ち砕く。
「見た目はお綺麗かもしれませんが、言ってることは悪徳業者そのものですわね! 耳障りの良い言葉ばかりを吐き出して、それで騙せるとお思いになって?」
その綺麗な枝葉をふっとばして差し上げますわ、とメサイアはエルネイジュの王笏を掲げる。
ユーベルコードの輝き。
放つ一撃が迫る枝葉の一撃を吹き飛ばす。だが、次から次に生え揃う枝葉は猛攻そのももの。
踏み込み、メサイアは茂る水晶の向こうの主幹を見つめる。
「いいえ。私は叶える者。世界平和を願う者の心に応えるもの。ならば、貴方のやっていることは破壊だけ。破壊では平和は生まれない。平和とは争いの後に生まれるもの。破壊だけでは、再生だけでは決して成り立たぬものであればこそ、私が叶えるのです」
迫る枝葉を王笏をもってメサイアは砕いてへし折る。
「根っからの性悪ですわね! 自分の独善的な言葉だけで全てを断じる。そういう御方には!」
きらめくユーベルコード。
「超天極光断罪神罰聖皇姫槌(ディバインハンマー)! 発動承認!」
王笏の輝きが世界に満ちる。
鏡の領域に在りて、その輝きは万華鏡のようにきらめいてまばゆく。
「セーフティデバイス、リリーブ! ディバインヘル! ディバインヘヴン!」
告げる言葉は絶対たる破壊の主たるが所以。
「光になっておしまいなさい!」
放つ一撃が迫りくる水晶の如き枝葉の全てを光へと変え、さらなる衝撃でもって『世界平和の樹』を打ち据える。
轟音と光が世界に満ちていく。
破壊は確かにあらゆるものを壊すしかない。
再生はあらゆる破壊の後先にしか存在し得ない。
ならば、人は願うのだ。
再生と破壊だけではない、その後に願うもの。
それが『平和』であるというのならば、メサイアは『世界平和の樹』が叶えようとしている争い在りきの平和を否定する。
「愛と平和の使徒たるこの! メサイア・エルネイジュがやってやりますわよ!」
振るう一撃が主幹へと叩きつけられ、周囲に暴威を振りまきながら、歪なる願望を齎す存在を叩き伏せるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『静かなる者』にて
あなたのもたらそうとしていた平和は、平和ではありませんでしたからね。断るのは当然ですよ。
さて、先制でUC(状態異常力)使いまして。認識は陰海月と霹靂に任せまして。
まずは白雪林で一撃を。
その枝の一撃も、反撃も。我らには強化ですから。そのまま受けていきましょう…。
その後に、四天霊障からの呪詛を。ええ、強化された生命力吸収ですよ。
見える形をとらぬこれに、さて…どのように反撃するおつもりで?
あなたのは独善であり、一方的ですから。
オブリビオンではないですけれど…我ら四悪霊が呪うに値する存在ですよ。
※
陰海月に霹靂、『平和はそういうものじゃないもん!』とぷきゅぷきゅクエクエ!
砕ける幹。
散る破片。
どれもが万能の魔神『エリクシル』である『世界平和の樹』の一部であったし、また同時に膨れ上がる力の気配に馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は告げる。
「あなたのもたらそうとしていた平和は、平和ではありませんでしたからね。断るのは当然ですよ」
「何故です。平和を実感したければ、争いがなければなりません。平和とは他者と手を取り合うこと。争いという起因なくば平和とは呼べません。だから争いを引き起こし、それを止める存在を生み出すのです。何か相違がありますか」
その言葉に『静かなる者』は頭を振る。
平和の意味を取り違えている。
いや、意図して歪めているのかもしれないとさえ思っただろう。万能の魔神『エリクシル』は確かに『生命体の願いを叶える』。
けれど、そのいずれもが歪められる。
意図しない結果に叶えられた生命は、絶望の淵に立たされるだろう。
こんなはずではなかったと。
だが、それすら『エリクシル』たちにとっては関係ない。
『願いの力』を得るためだけに彼等は『願いを叶える』。
その後のことなど関係ないのだ。
「四悪霊は滅びず」
ユーベルコードによって輝く瞳。
放たれる枝葉の一撃が梢の切っ先と共に『静かなる者』を貫く。
貫かれた体からは血潮が溢れない。
「何度でもいいましょう。あなたの言うところの平和とは平和ではない」
体を再構築し、生み出し封じてきた呪詛でもって『静かなる者』は己の肉体を強化していく。
枝葉の一撃が穿つたびに膨れ上がっていく呪詛。
「あなたのは独善であり、一方的ですから」
「相互である必要が何処にありますか。求められ、与えるだけ。私が得るのは『願いの力』。願われなければ叶えることはありません」
だから歪めるのだ。
そう願うように仕向けるのだ。
平和を望み続ける限り、生命は自分に願うだろう。
平和を。
常に求める。争いだけが残れば、『願いの力』は膨れ上がっていく。希求する平和への思いが、常に『世界平和の樹』に力を与えてくれる。
「そうして根こそぎ吸い上げてしまえば、それは最早、平和ですらない。オブリビオンではないですけれど……我ら四悪霊が呪うに値する存在です」
封じられた呪詛を解き放ち、放つ弓矢が『世界平和の樹』を貫く。
影にいる『陰海月』と『霹靂』の声が聞こえる。
彼等が自分を見ているから、認識しているからこそ力が震える。
生み出される呪詛を束ね、押さえつけている術式。
そのどれもが境目をなくしていくほどに膨れ上がっている。
「私を呪うということは『平和』への願いそのものを呪うということ。生命の望むそれを貴方は呪うのですか?」
「呪いと祝福とは表裏一体。受け入れる受け入れないの問題ではなく、その願いを歪める存在をこそ私達は許してはおけぬのです」
オブリビオンに対する憎しみ。恨み。それらが今までの四悪霊を支えてきたものである。
滅ぼされたのだから滅ぼさなければならない。
あの炎の戦場に満ちる恨み言は、自分たちにも頷けるものであったかもしれない。
けれど、それらを踏み越えてこそである。
猟兵である以前に自分たちは四つで一つなのだ。
互いを認識し、互いのことを思い、故に力を発露する。
四悪霊・『戒』(シアクリョウ・イマシメ)たるユーベルコードはそのためにこそある。
「平和とはそういうものじゃないと叫ぶ者がいるのです。今はただそれだけで十分でしょう」
薄く微笑むように、影の中より響く声に『静かなる者』は頷く。
放たれた矢が一瞬で『世界平和の樹』の幹を貫く。
それは平和を歪めて叶えようとする醜悪成る存在への答えとなって、それを否定するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
キャスパー・クロス
っっはーーー
やっと分かりやすい敵出てきた!!
っしゃー!慣れない禅問答で肩凝ってたんだ、全力でぶっ飛ばす!!
機を伺って一撃、なんて性に合わない
【2回攻撃】&【連続コンボ】の【早業】で何度も何度も何度でも、生命力の供給が間に合わなくなる程に叩き伏せる!んで勝つ!
いいねいいね、分かりやすいね
“お前がいなければ平和な世界だからお前を倒す”か!
はははは!やれやれ!お前みたいな奴がいるから戦争が無くならないんだよ!!
……なんて、自分のことは棚に上げて【挑発】してやろう
どうもコイツ、明らかに苛立っているから
攻撃の矛先を私に向けてやれば、他の猟兵達も楽になるでしょうしね
さあ──そのどっしりお構えあそばされた樹の姿で、避けられるものなら避けてみろ!
「白練色ッ!!」
《白練色は礼やか》。執拗に執拗に雨垂れが石を穿つように、損傷した箇所の【傷口をえぐる】ように【急所突き】を重ねる
円の動きで爆発する実を【受け流し】、爆風は私の風の【オーラ防御】で相殺!
バッドエンドが立ち塞がるなら、ぶち壊れるまで戦い抜くさ!
樹々が生い茂るように枝葉が伸ばされていく。
それが『世界平和の樹』。
願う心があるのならば、平和を希求する生命に応える。万能の魔神『エリクシル』としての『世界平和の樹』は、その樹木たる姿を猟兵たちにさらけ出す。
砕かれた幹が結晶に覆われ、傷を塞ぐように膨れ上がっていく。
従えた妖魔達の生命力を得て、樹木は更に巨大に育っていく。
「平和を求めましょう。平和を願いましょう。私は叶えます。あなた方の願いを叶えます。だから、願ってください。平和を。争いの中にこそ平和への思いが最大限に高まるのならば、そのために争いを行いましょう。そうして平和を甘受するのです」
その言葉が響く。
恐るべき敵である。
願いを叶え続けることによって得られた『願いの力』は『エリクシル』を育て上げる。
「っっは――やっとわかりやすい敵でてきた!!」
しかし、そんな恐るべき敵を前にしてもキャスパー・クロス(空色は雅やか・f38927)はむしろ開放されたかのような声を上げる。
いや、事実解放されたのかもしれない。
慣れない禅問答の如き仙界の領域。
不心得者を遠ざけるための領域はキャスパーにとって肩が凝るものであったことだろう。
ぐるりと肩を回し首を鳴らす。
「全力でぶっ飛ばす!!」
他の猟兵が打ち込んだ打撃が幹を砕き、穿った瞬間にキャスパーは飛び込む。
打算があったわけではない。
機を伺うなんていうのが、もっとも性に合わないと彼女自身は思っていたが、その踏み込みは期せずして機を伺うような形になっていた。
瞳に輝くユーベルコード。
彼女の身にまとう衣装。
その白練色は礼やか(シロネリイロハイヤヤカ)であった。
体を回転させながら叩き込まれる徒手空拳の乱打。
「いいねいいね、わかりやすいね」
「私が求めるのは『平和』を求め『願う生命体』のみ。あなた方は、私の言うところの平和を乱す存在」
「そういうのが一番わかりやすよ! はははは! やれやれ! お前みたいなやつがいるから戦争が無くならないんだよ!!」
キャスパーは自分のことを棚に上げていると自覚している。
目の前の『エリクシル』は明らかに苛立っている。自分が手に入れるはずだった『願いの力』の殆どを得られないままに猟兵の介入を許したからだ。
どれだけ穏やかな声色を使っていたのだとしても、この領域に響き渡る歪曲したかのようなたわむ声の色はキャスパーにとって苛立ちに彩られていると判断できるものであった。
ならばこそ、挑発する。
放たれるエネルギーの弾が爆発し、周囲に暴風を吹き荒れさせる。
体をしたたかに打ち据える痛み。
どれもが妖魔の生命を吸い上げることによって成り立つ無限の如き弾幕。
万能の魔神『エリクシル』らしい攻撃であると言えるだろう。
「それこそ私の望むところです。平和は争いなくば感じられぬもの。不可逆たるものではなく、逆接に存在する徒花のようなものであるのですから。だからこそ、私はあなた達の存在を認めるわけにはいかないのです。私の得るはずだったものを」
「奪ったって、その機会をないものにしたってね! ならさ!」
爆発の中をキャスパーは駆け抜けていく。
何処までも愚直に。
一直線に。
己の心の赴くままに。
彼女の体も、心も。
羽が羽撃くように自由だった。
空を見上げ、大地を蹴る。水面が波紋を描き、空を映し出す。
白き衣が羽撃くように空に在りて、キャスパーの瞳は再びユーベルコードに輝く。
体を回転させるようにして放つ拳は、まるで花を咲かせるようでもまった。
「さあ――そのどっしりお構えあそばされた樹の姿で、避けられるものなら避けてみろ!」
放つ拳。
それは雨だれが石を穿つかのように、他の猟兵に穿たれた幹へと叩き込まれる。
急所を突き崩すように。
傷口をえぐるように。
執拗に放たれる拳の連打は、一撃一撃は軽いものであったことだろう。致命傷に至ることはなかったかもしれない。
「あなたは言ってしまえば、生命体全てのバッドエンドそのもの!」
放たれる爆発する実を回転する勢いのままに受け流し、身にまとうオーラが受け流していく。
くるり、くるりと爆発の勢いすら得てキャスパーは拳を叩きつける。
止まらない。
きっと自分の拳はこのときのためにあったのだとさえキャスパーは思っただろう。
万能の魔神は、如何なる存在であったのだとしても、歪めて終わらせる。
破滅と堕落の運命と言う名のエンディングを齎す。
だから、キャスパーは。
「バッドエンドが立ち塞がるなら、ぶち壊れるまで戦い抜くさ!」
そう、羽なくとも空の飛び方を知っている。
あの日見た空の高さを知っている。
自由という翼こそが今キャスパーの背にあるのだ。生き様は何も変わらない。だが、彼女の道行きは変えることができる。
どこまでも彼女の翼は広がり、その道の先へと続いていける。
だからこそ、彼女はユーベルコードに輝く拳の一撃を水晶の如き『世界平和の樹』という偽りの帰結をこそ叩き壊す。
「じゃあね、『世界平和の樹』。あなたの言うところの『平和』が『終焉』を齎すのなら、それを壊していけるのは私達だけじゃあないんだよ」
振るう拳の一撃が根を張った『世界平和の樹』すら打ち上げる。
砕けていく結晶、水晶の破片、水面が揺れに揺れ、墜ちる『世界平和の樹』が轟音を立てて、キャスパーの目の前に堕す。
「誰だって理不尽を前に立ち向かうことができるんだから――」
大成功
🔵🔵🔵
黒影・兵庫
さっきの鏡の領域の底意地の悪さ!あんなもの作る奴の考える平和がまともな平和とは思えねぇけどな!
(「それより平和を齎すための存在ってのが気になるわ。少なくとも1つ以上の世界に危険な存在が生み出されたってことじゃない?」と頭の中の教導虫が話しかける)
はい!せんせー!さっさとそいつらを倒さないといけませんね!
(「その前に目の前のコイツを片付けてからね。黒影。ここはアタシに任せてくれない?さっきのお返しもしたいし」)
承知しました!ではせんせー!お願いします!
(UC【蜂蜜色の奔流親】発動)
鏡の領域で見た己の幻影。
それはあの場にいた猟兵の心の中を映し出す鏡そのものであった。
幻影であれど、あれは真。
偽りなき真である。
過去であるがゆえに今とは違うのだとしても、あれは相対すべき本当のことであった。
だからこそ、底意地が悪いと言わざるを得ないだろう。
過ちもあれば、正しさもある。
二つの相反するものを内在させるからこそ生命であるというのならば、あれは万能の魔神『エリクシル』の持つ醜悪さの発露であったのかもしれない。
少なくとも黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)にはそのように思えた。
「あんなもの作る奴の考える平和がまともとな平和とは思えねぇけどな!」
迫る枝葉の一撃。
それは大地を割るかのように水面に叩きつけられる。
砕け散る水晶の破片。
紫水晶そのもので出来たような樹木。
それが万能の魔神『エリクシル』たる『世界平和の樹』の姿であった。打ち付けられた枝葉から伸びる梢が、その切っ先が兵庫に迫る。
「平和は必ず訪れるものです。必ず齎されます。私が叶えましたから。そのために争いを齎しましょう。逆接の花が咲き誇るように」
『世界平和の樹』が告げる言葉に兵庫は何一つ頷けるところがないと断じる。
『それより平和を齎すための存在ってのが気になるわ。少なくとも一つ以上の世界に危険な存在が生み出されたってことじゃない?』
頭の中の『教導虫』が告げる。
「はい! せんせー! さっさとそいつらを倒さないといけませんね!」
揮われる枝葉から伸びる梢の切っ先が兵庫を襲う。
既のところで躱しながら、兵庫は討たねばならぬ敵を見る。
美しい樹木の姿。
『平和』を希求する願いが在るからこそ、その姿は美しいのかもしれない。
生命とは争うものである。
争いから逃れられない宿命であったのかもしれない。
同じ人間であっても争うのだ。
一つの種であったとしても、同じものが二つ存在すれば潰し合う。それが生命であるというのならば、『平和』を求めるのは逆接的な行いであったのかもしれない。
故に『世界平和の樹』は歪める。
その願いを歪めて叶えるのだ。
『その前に目の前のコイツを片付けてからね。黒影』
『教導虫』の言葉に兵庫は頷く。
二人の間のやり取りはロスなく、そして誤解なく通じ会える所に意味をがある。そして、それは同時に強みでもあったのだ。
「承知しました! ではせんせー! お願いします!」
『ええ、さっきのお返しと行きましょうか!』
ユーベルコードが輝く。
「俺がせんせーを信じる限り! せんせーは無敵です!」
千変万化するオーラが迸る。
それは想像から創造される無敵の『教導虫』の抜け殻であった。
疑念など無い。
兵庫が信じる『教導虫』は何者にも負けない。自分を導いてくれる存在に対する絶対の信頼こそが、蜂蜜色の奔流親(イエローハニー・オーラペアレント)の強みに転じるのだ。
「平和を願う以上に大切なことなどありますか? いえ、ありません。だからあの『願いの力』は強大だったのです。その全てを得られる筈だったというのに。あなた方の介入でそれが叶わなくなりました。それが私にはどうにも許しがたいのです」
穿たれ、傷口を広げるように主幹に亀裂が走っている。
それはこれまで叩き込まれた猟兵たちの一撃に寄るものであろう。
『そんなことは知ったことではないわ。どれだけ平和を掲げるのだとしても』
「そうです、せんせー!」
迸る一撃が『世界平和の樹』を打ちのめす。
信じるものがある。
それは平和でもなければ、信念と呼ぶものでもなかった。
兵庫にとって、それは『教導虫』そのものであった。
彼女だけは兵庫にとってかけがえのないものであり、同時に何一つ疑うものではない。
だからこそ、その力は陰ることなく万能の魔神たる『エリクシル』すら打ちのめすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メリー・スペルティナ
ふん、よく言いますわよ
彼の為でもなんでもなく、要は自分の計画を崩されたから怒っているだけじゃありませんの
何処までも自分本位、誰かの願いを食い物にし肥え太る存在でしかないですわね
UCを使用、行動時の見栄えとか気品とかを犠牲に行動を成功させますわ!
上に立つ者として、想いを背負う者として、時に己の体を張るのも大事ですのよ!
クロスボウで足を止めている敵へと大雑把な狙い(行動の難易度を下げる意図)で「使い捨て血晶石」を放ち、呪詛を撒いていきます
周囲の妖魔は大鎌の形状へと武器改造した『ブルートヴァッフェ』で雑に薙ぎ払い、
余裕があれば本体への黒剣『シュバルツシュテルン』で一撃し、更に傷を抉ってやりますわ!
砕け、ひしゃげる水晶の大樹。
万能の魔神『エリクシル』たる『世界平和の樹』は、その主幹を砕けさせながらもユーベルコードに輝く。
放たれる種子は爆発を巻き起こし猟兵たちの接近を拒む。
これほどの打撃を与えてなお、『世界平和の樹』は折れない。砕けた水晶の樹皮はすぐさまに結晶化し塞がれていく。
あまりにも強大な力。
万能の魔神たる所以を示すように『世界平和の樹』は未だ其処に在った。
「平和のために。そのための願いを叶えられるはずでした。ですが、あなた達の介入によって、不十分に叶ってしまった。私が得るはずだった『願いの力』は。こんなものではなかったはずだというのに」
その言葉にメリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)は鼻を鳴らし、『世界平和の樹』に真っ向から踏み込む。
爆風が吹き荒れる中を、躊躇うことなく突き進む。
「よくいいますわよ」
どんな爆発も、どんなこうげきも、どんなユーベルコードも。
あらゆる事柄に対してメリーは自身の格好や気品といったものをかなぐり捨てる。
目の前の攻勢は確かに苛烈そのものであった。
『世界平和の樹』は猟兵たちに追い込まれながらもこれほどまでの力を未だ有している。少しでも気を抜けば打倒されるのは此方だと理解しているからこそ、メリーは己の身にまとう気品など勝利の前には意味を成さないとかなぐり捨てる。
「彼の為でもなんでもなく、要は自分の計画を崩されたから怒っているだけじゃありませんの」
「違います。平和のためです。平和のための願いのためです。それを」
「何処までも自分本位、誰かの願いを食い物にして肥え太る存在でしかないですわね」
運命は変転する。
爆発する種子がメリーを打ち据えるという確定した事象すら、メリーの瞳に輝くユーベルコードは否定する。
そこに気品さはない。
優雅さはない。
どこにも普段の彼女の身に纏う機微はなかった。
あるのは、目の前の存在をだとしなければならないという意志のみ。
否。
「上に立つ者として、想いを背負う者として、時に己の体を張るのも大事ですのよ! たったそれだけのことですのよ!」
クロスボウを構え、放つ矢。
それが『世界平和の樹』の足を止める。
根に突き刺さり、移動させないようにしてからメリーは爆風の中を突っ切っていく。
使い捨ての血晶石をばら撒き、呪詛に周囲を満たす。
鏡の領域に乱反射する血結晶の赤。
その煌めきの中をメリーは突っ切っていく。
「その想いも、私が叶えましょう。叶えて」
「いりませんわよ、そんなもの!」
メリーの呪われた血より溢れる大鎌の刃が『世界平和の樹』を切り裂く。
迫る枝葉がメリーを捉える。
だが、その枝葉を切り裂くのは、禍々しき黒剣の刃。
翻る剣閃は、メリーの血を吸い上げ威力を底上げする。
「今はもう亡き者たちの想いに応える。それがメリー・スペルティナという私自身ですわ! 見栄えも気品も、その想いの前には! 貴方のいうところの願いを叶えることなど無意味と知りなさい!」
変転した運命の中を走り抜けるメリーの振るう黒い剣が、願いを歪める存在を切り裂く――。
大成功
🔵🔵🔵
紅月・スズ
「|襟苦汁《えりくしる》」見つけたアル!
って、何で怒てるアル。「平和を乱す者」が居るから皆が心に平和を望むとか言ってた筈アル
他人には押し付ける気だったのに自分が押し付けられたのが嫌アルか?
我儘アルねー!まあいいアル!やる事は変わらないネ!
なんだか触ると痛そうアル、というか痛いアル
僵尸だからあんまり関係ないケド、受け止められて厄介だから【炎腕】を使うネ
気が肉体を巡るのなら同じように気を巡らせれば炎も自分の体のように動かせる訳アル
その枝で炎を止められるアル?殴って掴んで燃やして砕いちゃうネ
ちょっと邪魔な妖魔はギュっと掴んでひーとえんど!するアル
どしたアル?万能の魔神の力、もっと見せてほしいアル!
黒き剣の閃きが主幹を切り裂く。
砕けた水晶の結晶が水面に落ちて波紋を起こす。
その波紋を踏むようにして駆け抜ける者がいた。
「『|襟苦汁《えりくしる》』見つけたアル!」
紅月・スズ(路上格闘僵尸娘・f32726)は、万能の魔神『エリクシル』、『世界平和の樹』へと飛び込む。
だが、その飛び込む一撃は覆い茂るような枝葉によって阻まれる。
水晶の如き樹。
それが『エリクシル』の正体であった。
これまでそうであったように『生命体の願いを叶える』事によって『願いの力』を奪ってきた彼等は、今回も『平和』への希求を持って願いを歪めようとしていた。
即ち、『平和』を実感するために争いを引き起こす。
そのための存在として『熾天大聖』を歪めること。
しかし、それは半ば阻止されていた。
猟兵たちの介入によって阻止されたのだ。それを証明するように『世界平和の樹』は明らかに苛立っていた。
歪曲するようにたわむ声が、その証明であったのだ。
「って、なんで怒ってるアル」
「あなた達のせいで歪んだ。私の計画が。私が得られるはずだった『願いの力』は半分にも得られていない。それが」
枝葉が再びスズに襲いかかる。
スズは僵尸であるがゆえに痛みには無頓着であった。けれど、枝葉で己の技の全てを受け止められるのは厄介であった。
「『平和を乱す者』がいるからみんなが心に平和を望むとか言ってた筈アル。他人に押し付ける気だったのに、自分が押し付けられたら嫌アルか?」
「私は願いを叶える者。叶えた願いの力を得る者。押し付けることではない。私は平和を望む生命体の願いを叶えるだけ」
「どっちにしたって歪めて掠め取ろうってだけアル! まあいいアル! やることは変わらないネ!」
満ちるユーベルコードの輝き。
護業天象拳とは万物に己の気を巡らせ、合一せしめて自在に操る拳である。
故に彼女の腕はユーベルコードによって炎を宿す。
いや、違う。
炎を己の腕と成すのである。
「気が肉体をめぐるなら、同じように気をめぐらせれば炎も自分の体と同じアル!」
炎腕(ウデガモエテルアル)は迸る。
唸りを上げて巨大な炎となったスズの気が『世界平和の樹』へと迫る。
どれだけ枝葉を広げようとしても、それを一掴みにする巨大な炎の腕。
つかみ、砕き、燃やす。
ただ、それだけである。単純なものである。
「この程度で。私の体は」
「水晶だから燃えないっていうアルよね。けど、その力の源である妖魔たちは違うアル!」
スズの狙いは『世界平和の樹』だけではなかった。
彼女が見ていたのは『世界平和の樹』に生命力を供給しているタンクの如き妖魔達。
かの妖魔たちを排除すれば、傷口を塞ぐように結晶化する力も弱まるはずである。ならばこそ、スズはその炎の腕でもって妖魔たちを一気に掴みかかる。
「……」
「図星アルね! 腕は二本アル!」
枝葉を振り払う炎の腕。
気を合一することによって得られるのが炎の腕であるというのならば、彼女の腕は二本。
その片腕で枝葉を防ぎ、もう片方で妖魔たちを握りつぶすのだ。
「ひーとえんど! アル!」
妖魔たちの断末魔の声が響き渡り、明らかに猟兵たちの攻撃によって穿たれた傷を覆う結晶の力が弱まる。
「どうしたアル? 万能の魔神の力、もっと見せて欲しいアル!」
スズは挑発でもなんでもなく、ただ心からそう願う。
強き者と戦い、己が受け継いだ護業天象拳を極める。
それが彼女の願いであり行動原理。
しかし、『世界平和の樹』はそれを叶えられない。それを叶えるということは、自身を滅ぼされるということ。
「戦うことが願いの存在」
「ま、とりあえう戦えればそれでいいアルね!」
放つ炎の拳が水晶の幹を打ち砕く――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…平和を起こすために争いを生み出す……うーん……判りやすく本末転倒していらっしゃる…
…エリクシルに願うとそう歪む…と言うよりも『願いを自分の都合の良いように歪めて解釈する』と言う事かな…
…となればここで滅ぼすしか無いね……
…【尽きる事なき暴食の大火】を発動…全てを燃料とする白い炎を周囲に展開…
…まずは漂う花粉を全て燃やしてしまうとしよう…そしてそのまま花粉から花や周囲の妖魔へと延焼させていこう…
…そしてそれらを飲み込んで勢いが強くなった白い炎を世界平和の樹へとぶつけるとしようか…
…ここで終焉を迎えるのはお前だよ…そのまま燃え尽きるといい…
炎の拳が『世界平和の樹』を打ち据える。
根を張り巡らせた水面から吹き飛ぶほどの衝撃が戦場たる鏡の領域に満ちる。
砕けた水晶が破片を撒き散らしながら、バウンドするように『世界平和の樹』は、足たる根を再び張り巡らせる。
「世界に平和を齎すために。そのためには逆接の争いが必要不可欠。強く、強く平和を願うのならば、醜くむごたらしい争いが必要なのです。そのためには」
紫の花粉が吹き荒れる。
それは万物を魅了し、宝石化させる呪いの力。
その力を前にメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は白き炎を手にし、前に進む。
全てを燃料とする白い炎。
尽きる事なき暴食の大火(グラトニー・フレイム)は、彼女に迫る紫の花粉すらも燃やし尽くしていく。
呪いすらも燃えるための燃料にしか過ぎない白色の炎。
メンカルは、その白き炎を瞳に写しながら『世界平和の樹』を見上げる。
「……平和を起こすために争いを生み出す……」
逆接なる言葉。
その言葉を本末転倒だとメンカルは理解する。
そのとおりだ。
けれど、それが万能の魔神『エリクシル』である。
願いを叶える。必ず叶える。けれど、その全てを歪めて叶えるのだ。
「……『エリクシル』に願うとそう歪む……というよりも『願いを自分の都合のようように歪めて解釈する』ということかな……」
「私は叶えるだけです。『生命体の願いを叶えること』それが私たち『エリクシル』。歪められるのは、生命体の業故に。私達は『願いの力』を得るために、こうして願いを叶えている」
『平和』のために。
その言葉の耳障りの良いことは言うまでもない。
甘言そのものであるともいえるだろう。
争いがあるから平和を求めるというのならば、皮肉でしかなかった。
平和を謳歌するためには争いを前にしなければならない。
人はそうして立ち向かってきた。終わらぬ争いの輪廻に取り込まれるのだとしても、それでも求める。
希求する。
「……となればここで滅ぼすしか無いね……」
万能の魔神『エリクシル』を放置すれば、必ずや世界に破滅が訪れる。
願えば叶うとすれば、人は必ず堕落する。
それは抗い難き誘惑そのもの。
滑り落ちるように。水が上から下に流れていくのと同じように、必ずや堕落が始まる。『平和』とはその堕落を肯定する甘やかな言葉だ。
「ダメだとわかっていても、すがってしまう……それを人の弱さだというのならば」
「そのとおりです。生命体は願う。私達よりも何も出来ず、弱い存在でありながら、私達が持たぬ『願いの力』を持っている。これはただの契約です」
満ちる宝石化の呪いを尽くメンカルは燃やし尽くしていく。
ただ燃やすだけではない。
暴食の大火は、膨れ上がり、分裂していく。
「……ここで終焉を迎えるのはお前だよ……そのまま燃え尽きるといい……」
膨れ上がった炎が分裂し、さらに呪いを燃やし尽くしていく。
誰も犠牲にはしない。
誰も終わらせない。
願いの力は、正しく使われるべきだ。
「……叶わなくとも、人は前に進んでいける。叶えなければ進めないと思っているお前たちよりずっと先に、終焉すらも超えて進んでいける」
白色の大火が呪いを飲み込み、『世界平和の樹』すらも燃やし尽くさんと枝葉すら飲み込んでいく――。
大成功
🔵🔵🔵
神明・桐伍
どの道平行線で終わる論議ならば、端からせずとも同じであろう。無駄は省かせていただくぞ。
疾!
鳳凰翻を飛ばして爆発する実を受け流し
抜けて来るようであれば斬撃波で落とす
氷嵐虎と共に樹の生命力供給源である妖魔共を討ち減らせば、本体の枝、幹と可能な限り蹴り砕こう。
唯、『熾天大聖』殿の姿が見えぬのが気に掛かる。
樹に取り込まれて仙気を奪われているのか、願いが齎した惨劇を嘆く陰気を養分にされているのか。撃破が遅れれば御身が危ういかも知れぬ。
何方かに逃れて居られれば良いが。
・・・この焦りは、いつか何処かで
「願いを叶えるのです。『願いの力』のために。私達が持たぬものを得るために。何故否定するのです。願いを叶えることは生命体にとっての至上命題のはず。なのに何故否定するのです」
万能の魔神『エリクシル』、『世界平和の樹』は白色の炎に包まれながらも枝葉を振るう。
その枝はから放たれる種子が周囲に爆風を巻き起こす。
誰も近づけさせぬというかのような力の奔流。
ユーベルコードが煌めくたびに『世界平和の樹』は追い込まれていた。
しかし、万能の魔神たる『エリクシル』の力は猟兵達の攻勢を前にしても一歩も引くことはなかった。
それほどまでに強大な存在。
「どの道平行線で終わる論議ならば、端からせずとも同じであろう」
神明・桐伍(神将の宿星武侠・f36912)は月牙交錯する鴛鴦鉞を投げ放ち、爆発する種子を切り裂く。
爆風が吹き荒れ、桐伍へと迫るも斬撃波で切り裂く。
「無駄は省かせていただくぞ」
「無駄ではありません。生命体の願いを叶えることが私の役目。平和への希求。平和への願い。私達は聞くことによって願いを叶える。願われなければ叶えることができないのです。だから、無駄と知れるまで語るまで」
「そのような戯れ言を言うから!」
種子が乱舞するように桐伍へと迫る。
そんな彼を乗せ、疾駆するは氷嵐巻き起こし、天を駆ける白虎。
その背に桐伍はありて、戦場を走り抜ける。
「『熾天大聖』殿はどうした!」
唯一の気がかり。
『エリクシル』たる『世界平和の樹』が狙っていた膨大な『願いの力』を持つ存在。
幼き仙人の姿が、此処にはない。
もしも、と思ってしまうのだ。
この惨劇を引き起こしたのが自分であると知ったのならば、幼き仙人は如何なるように思うか。
「私はいいました。あの願いは不完全に叶えられたと。あなた達の介入によって、不完全に叶えられました。全て叶えることができなかった。それが」
「仙気を奪われているということか!」
振るう月牙の斬撃が迫る枝葉を振り払う。
いや、焦りが桐伍の中に満ちていく。
いつか何処かで感じた焦りだ。どうにもならぬものをどうにかしようとしている。そうであるような感覚。
嫌な感覚だと桐伍は思っただろう。
臓腑からこみ上げてくる嫌悪感。自分では同しようもないほどの焦り。状況。そのどれもが桐伍の無いはずの記憶を、そして胸の何処かを突き刺すようであった。
「願いは、『全ての世界に平和を』。そして、世界に争いがみちるのであれば、『争いを止めるための存在』を生み出す。全ての世界を救おうという救世主願望。それこそが、数多の『存在』を生み出すのです」
「わからぬことを! 願いが齎した惨劇! それを歪めたのは貴様であろう!」
桐伍の瞳がユーベルコードに輝く。
白虎の背を蹴って、極音速に至る桐伍の体が繰り出すクレセント・スラッシャーの一撃が鏡の領域に三日月の衝撃波を刻む。
枝葉の防御も間に合わない。
仮に間に合ったとして、その防御すらも桐伍の蹴撃は切り裂く。
「無垢なる願いを歪めた代価、貴様には此処で潰えることで支払ってもらおう!」
三日月の衝撃波が残影となって残る。
「受けよ、三日月の一撃を!」
それを足場にして高く飛び上がった桐伍の音速を超える蹴撃が一直線に叩き落され、雷鳴のように戦場を支配するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
ちっ、至福の『|エイル様《主人様》タイム』が終わったではないですか!!
私の平和を乱すとは……悔しいですがちゃんと争いを生み出しているようですね
ですが!
『平和』を叶えてくれるのでしょう?
あなた自身が私の平和を乱す者
すなわち、私の平和への礎ならば
願いを叶えるためにちゃんと死んでもらえますね?(笑顔)
【シーカ・サギッタ】
死の舞踏をあなたに
舞うように体を回転させながら
その度に指の間に挟んだナイフを投げつけましょう
的は大きく外しようもありません
魅了も効きませんし
ええ、エイル様に魅了されている私には無意味!
宝石化は回避しないといけませんがそのための舞踏です
そういえば生身だけで戦うの久しぶりですねえ
「ちっ」
開口一番舌打ちであった。
それはステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の舌打ち。
彼女の至福なる『主人様タイム』が終わりを見せたことに寄る舌打ちであった。
完全に逆恨みであるし、彼女の仕事は万能の魔神『エリクシル』である『世界平和の樹』を打倒することである。
今の今まで彼女は鏡の領域において過去の幻影たる『主人様』の姿を追いかけまくっていた。
他の何も目に入らない。
だからというわけじゃないが肝心なことを見逃しているような気がしたが、それどころではなかったのである。
「私の心の平和を乱すとは……悔しいですがちゃんと争いを生み出しているようですね」
ステラは『世界平和の樹』の力を認める。
いや、そこで認めていいのかなと誰もが思ったかも知れない。
けれど、戦いは佳境に差し掛かっている。
「ですが!『平和』を叶えてくれるのでしょう? あなた自身が私の平和を乱す者。即ち、私の平和への礎ならば、願いを叶えるためにちゃんと死んでもらえますね?」
正直、人様に見せられない感じの笑顔である。
泣いた子が泣き止むか、もっと泣き出すかの二択である。
それほどの笑顔を浮かべながらステラは、己を魅了し宝石へと変えんとする紫の花粉を翻るスカートで振り払いながら指にナイフを挟み込む。
「死の舞踏をあなたに」
揺らめくユーベルコードの輝き。
紫の花粉の向こう側に輝くステラの瞳を『世界平和の樹』は見ただろう。
舞うように回転する体。
その遠心力を活かした回転に寄る投擲。
指に挟み込んだナイフが走り、閃光のように『世界平和の樹』に叩き込まれる。
如何なる防護をも貫通するナイフの一撃。
シーカ・サギッタの一撃は狙いを外さない。
なにせ相手は大樹である。
「狙いを外しようがありません」
それに、とステラは笑う。
「あなたには何故魅了が利かないのです。平和とは生命体の希求するところのもののはず。だと言うのに何故」
「簡単なことです。ええ、『エイル様』に魅了されている私には無意味!」
あまりにもざっくりとした説明であった。
それで覆せるほど万能の魔神『エリクシル』の放つユーベルコードは脆弱ではない。
だというのにステラは魅了されない。
彼女の頭の中を覗いてみれば答えが出る。
使命よりも、メイドとしての在り方よりも、何よりも彼女が崇拝して止まない『主人様』への想いのほうが大きいのである。
脳内グラフで示せば、多分一色である。
正直困惑のほうが大きい。
「どれだけ私にまやかしを見せるのだとしても、私の中にある本物の『エイル様』の姿が、声が、命ずるものが! すべてを凌駕するのです!」
流石にあまりにもあんまりな理屈であった。
けれど、事実ステラはあらゆる防護を貫く投げナイフでもって魅了も宝石化の呪いすら貫く。
其処に宿る意志が、彼女の至福を害するものを許さぬと言っているようでもあった。
叶えるべき願い。
それを持ってステラは『世界平和の樹』のユーベルコードすらも貫く。
「投げナイフはメイドの嗜み、ですので」
これくらいは造作もないとなんでも無いように言い放ち、ステラは優雅にステップを踏み、降りかかる紫の花粉を振り払って見せるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
スミレ・エロイーズ
やっとお出まし
いえ、奥からこそこそといつも通りですわね
力を行使するのは|収穫の時《願いを歪める》だけ
最後だけかすめ取る盗人に容赦する余地も無く
エンドブレイカーとしても自由農夫としても見逃すわけにはいきませんわ
目には目を、樹には樹を
【スーパーライフベリー】を地面に
攻性植物を生み出しましょう
さぁお行き
いかな枝や梢が鋭くても刃物ではないのですから
攻性植物の枝や蔓で受け止めて絡め取ってしまえば動けないでしょう?
ええ、そちらの枝の数だけこちらも攻性植物を生み出せば終わる話
さて
この幹を砕くには攻性植物では力不足
ですから世界平和の樹まで近づき
至近距離にて【黒鉄兵団の紋章】を
鉄の一撃、耐えられまして?
砕ける水晶の大樹。
万能の魔神『エリクシル』たる『世界平和の樹』に穿たれた傷は最早結晶化によって塞がれることはなかった。
これまで猟兵たちの攻勢は、『世界平和の樹』に残された力を削ぎ落とし、その主幹を幾度となく穿ってきた。
枝葉がどれだけしげるのだとしても、それら全てを振り払うだけの力を猟兵たちは有していたのだ。
「何故。理解できません。何故願わないのです。平和を。生命体が争いに塗れているのならば、必ず願うはずの願いを」
『世界平和の樹』にとって、生命体とはそれだけの存在であった。
争いを生み出し、争いの中でこそ平和を望む。
平和においては平和を自覚できぬもの。
それが生命体である。
だからこそ、スミレ・エロイーズ(ミス・ヴァイオレット・f38978)はそれを否定する。
「力を行使するのは|収穫の時《願いを歪める》だけ。最後にかすめ取る盗人に容赦する余地もなく」
己がエンドブレイカーであること。
そして猟兵であること。
何よりも自身の身に宿るあらゆる荒野を開拓せしめる自由農夫として、かの存在は見逃すわけにはいかなかったのだ。
スミレの瞳がユーベルコードに輝く。
「目には目を。樹には樹を」
希少植物『スーパーライフベリー』が地面に埋め込まれる。
それは鏡の領域たる水面が広がる地面に一気に根を張り、水を吸い上げて急成長していく。
またたく間に広がっていく根。
それは『世界平和の樹』の張り巡らせる根すらも絡め取るように成長していく。
「さぁお行き」
スミレの言葉に応えるように『スーパーライフベリー』の根は広がり『世界平和の樹』の枝葉すら捉えて見せるのだ。
締め上げ、砕きながら水晶の如き枝がへし折れていく。
「いかな枝や梢が鋭くても刃物ではないのですから。ええ、そちらの枝の数だけこちらも攻性植物を生み出せば終わる話」
スミレはゆっくりと歩み寄る。
ぎりぎりと締め上げるように根が『世界平和の樹』の枝葉をへし折っていく。
猟兵達によって刻まれた主幹の傷は最早塞がらない。
「口惜しいといえるでしょう。この結果は。全てが半端に終わってしまった。半ばに終わってしまった。世界に平和をという願いを叶えるために。私が得られるはずだった膨大なる『願いの力』を奪うことすら叶わなかった。叶えようとしただけであなた方の介入を許してしまった」
それこそが己の敗因であるというように『世界平和の樹』は根によって締め上げられていく。
砕ける音が響いていく。
もはや逃れ得ぬ滅びが差し迫っているというのに、万能の魔神『エリクシル』は何処か他人事であった。
「それだけ生命体の持つ平和を希求する思いが強かったということですわ。それはきっと鉄のように固く、砕けぬもの。歪めることもできぬものであったのですわ」
だから、とスミレは踏み出す。
人の意思は確かに歪められる。
けれど、時に人の意志は鋼鉄にさえ勝ることがある。
エンドブレイカーたちがそうであったように。
理不尽たる運命に立ち向かう意志こそが、願いを歪める力にさえ打ち勝つのだ。
故にこれまでも彼等は示してきた。
堕落と破滅の運命。
即ちエンディング。
それを|終焉《終わら》せることを。
「故にわらわたちは言うのですわ。|終焉《エンディング》を|終焉《終わら》せると。それこそが『エンドブレイカー』であると」
放たれる一撃が『世界平和の樹』を貫き、破壊する。
砕けていく紫水晶。
落ちて破片が飛び散るも、それを受け止める水面はもはやない。
波紋は広がること無く。
ここで終焉を遂げる。
歪められた潔斎航路は続く。
人の心に『平和』を求める心がある限り、歪められてなお正しさを示すように。
「征きましょうか。終焉の先を。未だ見ぬエンディングを破壊するために――」
大成功
🔵🔵🔵