御薔薇たぶらかし~黒薔薇の弌
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「エリクシル、だったかしら」
紅いドレスの少女が呟いた。願いを叶えてくれるんですってね、と。
「珍しいわね。貴方にも叶えて欲しい願いでもあるの?」
黒いドレスの少女が呟いた。其れは少し、皮肉気な響きを帯びていた。
「まさか! アタシは叶えたい願いは自分で叶えるわ? 貴方の領で其れを見た、という目撃談が散見されているというだけよ、“黒薔薇サマ”」
「……其れは否定しないわ」
「ええ~!? 願いを叶えてくれるの!? どうしよっかなー! ボクね、お願い事叶えてくれるならいっぱい言いたいな!」
白いドレスの少女が無邪気に言う。やめておきなさい、と静かに諫めるのは、黒いドレスの少女。
「ああいう手合いは往々にして、願いを歪めて叶えるもの。――下手に願いを聞き入れる前に、撃破しなくては」
「そうよねえ?」
少女らしく無垢に、残酷に、紅いドレスの少女が笑う。
「秩序を誰より大事にする黒薔薇サマだもの。……ふふ、何が秩序よ。アンタの領が歪んでいるのは、誰よりアタシが知ってるわ」
「貴方には言われたくないわね。弱肉強食、まるで獣のような法を敷く貴方には」
「ボクは?」
「「貴方は論外」」
紅と黒、少女二人の声が揃った。
「……願いが叶ったらどうなるのかしら」
溜息交じりに、黒いドレスの少女が言う。
そりゃあ、と紅いドレスの少女が楽し気に靴を揺らして。
「アンタの所ならまず、“お金持ちになりたい”って願う子がいるでしょ。どんな形で其れが叶うか知らないけど、きっとロクなもんじゃないわ?」
「貨幣価値がなくなるとか? やっぱりボク、貨幣制には反対だよ」
「――……貨幣という形をとるのが一番平和なのよ。“赤薔薇”を見て御覧なさい、暴力で溢れかえっている」
「強い物がより多く物を得る。当たり前じゃない?」
「んー。どっちも歪んでるぅ」
三色のドレスの少女は、姦しく話し続ける。
其の世界に破滅が近付いている事も知らずに。
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「エンドブレイカーの世界が、小世界を幾つか内包している事は知っているか?」
ヴィズ・フレアイデア(ニガヨモギ・f28146)の唇から落とされたのは、そんな言葉だった。
「其の中に、三色の薔薇が支配する世界というのがある。世界の名前はロザガルド。薔薇世界ロザガルドだ。――赤は力こそ正義。黒は知恵こそ正義。白は平等こそ正義、……そう謳うのだけれども、何処の勢力も一筋縄ではいかない。今回は其のロザガルドの“黒薔薇領”で事件が起きる。成人の儀にエリクシルが入り込み、めちゃめちゃにしてしまうのさ」
黒薔薇領には、18歳を迎えた者を祝う“成人の儀”が存在する。
其処にエリクシルが入り込み、殺戮の限りを尽くすのだと。そうして、何も知らぬ遺された民に“あの時死んだあの人を蘇らせて欲しい”という願いを抱かせるのが目的なのだとヴィズは言った。
「ものすごい暴力的なマッチポンプだよね。是非に止めて来て貰いたい。黒薔薇領の人間はあくまで一般人で、戦闘能力のあるものは少ないが――領主が来る、という予知が入って来てる。彼女は凄腕の魔法使いだ、助力を請うのも良いだろう」
黒薔薇領の領主は幼い少女だが、後方支援を得意とする魔女なのだという。回復などを任せれば、心置きなく戦闘が出来るよ、とはヴィズの言。
「兎に角、この“成人の儀”がつつがなく終われば良い。終わったら、一緒に成人を祝ってあげるのも良いだろうよ。美味しい料理もいっぱい出てるらしいし」
焼きたてのパンに、作りたてのバターを塗って食べましょ。
黒薔薇を模したチョコレートケーキにナイフを最初に入れるのは、誰かしら。
小さなミニパンは薔薇の形。縁起が良いとされているから、其れを食べるのも良いでしょう。
黒い花びらを落としたシャンパンは、子どもたちの憧れ。黒薔薇の知恵をあずかれるようにと願いを込めて、人々は黒い花びらをシャンパンに沈める。子どもには、黒薔薇の花弁を沈めたシャンメリー。色も泡も同じだから、少しだけ大人になった気分に浸れるでしょう。
黒薔薇領は知恵の領。誰もが節度さえ持っていれば、――本来なら、最も平和な領なのだ。
「エリクシルは世界を滅ぼしかねない危険な魔神。どうか気を付けて」
恐らく一番盛り上がる、戴冠の儀の辺りでエリクシルは現れる筈だと。
ヴィズは白磁の扉を呼び出して、開いた。青薔薇が絡む其の扉は、黒薔薇咲き乱れるロザガルドへと猟兵たちを誘う。
key
こんにちは、keyです。
エンドブレイカーは未履修なので、新たに世界を作ってみました。
三色の薔薇と少女たち。エリクシルの魔手が迫ろうとしています。
●目的
「エリクシルの大量殺戮を阻止せよ」
●各章
第一章では、戴冠の儀の直前に猟兵は到着します。
そして丁度時を同じくして、エリクシルが成人の儀に乱入する筈です。
成人の儀に参加しているのは力のない人々。
彼らを護りながら、エリクシルを撃破して下さい。
第二章以降は断章にて説明いたします。
第二章は集団戦、第三章は日常章です。
●プレイング受付
受付、〆切はタグ・マスターページにて適宜お知らせ致します。
●注意事項(宜しければマスターページも併せてご覧下さい)
迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。
また、アドリブが多くなる傾向になります。
知らない人と共闘する事なども在り得ますので、ソロ希望の方はプレイング冒頭に「ハナ」を添えて頂けると助かります。
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此処まで読んで下さりありがとうございました。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『白婦人』
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POW : 魔女の護り
対象を【薔薇の蔓】で包む。[薔薇の蔓]は装甲と隠密力を増加し、敵を攻撃する【薔薇の棘】と、傷を癒やす【純白の果実】を生やす。
SPD : ジャグランツ・パレード
レベル×1体の【バルバ『ジャグランツ』】を召喚する。[バルバ『ジャグランツ』]は【猛獣】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
WIZ : マザーコール
自身が【危機意識】を感じると、レベル×1体の【バルバ『ジャグランツ』】が召喚される。バルバ『ジャグランツ』は危機意識を与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:京作
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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黒薔薇領、成人の儀の会場。
其の広場には誇らしげに正装する青年と、其れを祝う大人たちがいた。
皆黒い服を着ているが、葬列ではない。黒薔薇領では黒こそが最も高貴な色だと、正装にはこの色だと決まっているのだ。
「おめでとう」
「もう18歳なのねえ。この前生まれたばかりだと思っていたのに」
「ありがとうございます。これからは黒薔薇の補佐として、未熟ですが頑張ります」
「お役所へのお勤めが決まったのでしょう?」
「ええ」
黒薔薇の社会システムは、おおよそ現代の人間社会によく似ている。
人は育ち、企業に就職し、そうして社会を回していく。
其れゆえの問題を抱えているのが黒薔薇領だが、――其れはまた、別の時にお話しよう。
そうして成人の儀は進む。祝いの言葉があり、青年は社会の役に立つと誓い、そうして……戴冠の儀が執り行われる。
黒薔薇が絡み付いた冠のようなものを、しずしずとスタッフが持ってくる。青年は跪き、あとは其の冠が頭に乗るのを待つだけ――だった。
其の時だった。招待客の一角がざわついたのは。
「白色のドレスだわ」
「まあ、不吉な……」
その女は。
白に赤を混ぜたようなドレスを着ていた。
他の領の色、祝い事にはそぐわないと人々は騒めく。
女は気にも留めずに歌う。内臓のように、ドレスの下部を収縮させながら。
「ぼうや、ぼうや……わたしのぼうや……」
「ちょっと、此処は今……」
止めに入ろうとした警備員の首が、女の繊手の一振りで消し飛んだ。
――誰もが其れを理解するのに、数秒を必要とした。
今から|《自分たちは殺されるのだ》と理解出来たものは、果たして何人いただろう?
インディゴ・クロワッサン
三色の薔薇の世界!
「うん、とてもイイねぇ…」
僕は藍色(の薔薇)だけど…今回はこの状況をどーにかする側だから、そんな目で見ないで~☆
…なーんてね(笑)
怯える一般黒薔薇さん達を守るよーにUC:黒薔薇の舞 を起動。
勿論、攻撃対象は今回の敵とその配下!
一般黒薔薇さん達が触ってもなーんも痛くないよー
(これで、ちょっとぐらい信用…されたらいいなー)
守りが固まったら、愛用の黒剣:Vergessen を持って、ダッシュとジャンプ併用で突撃だー!
敵の攻撃は可能な限り見切って回避。軽減出来そうなら激痛耐性とオーラ防御で軽減しつつ突貫だー!
串刺しを狙いつつ、フェイント混ぜ込んだ範囲攻撃の衝撃波やら斬撃波で攻撃だ~!
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三色の薔薇が支配する、花の咲き乱れる世界。
「うん、とてもイイねぇ……」
インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)はそう呟いて、辺りを満たす薔薇の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
もし言ってもいいのなら、僕は藍色の薔薇だけれど……今回はこの状況をどうにかする側だからさ、そんな目で見ないで? なーんてね。
「大丈夫だよ」
インディゴの武器が黒い薔薇の花弁へと変わる。無数の黒薔薇は周囲を舞う。魔女は其れに気が付いたのか、己の“子”を生み出した。
ジャガーの頭に、屈強な身体。――バルバ“ジャグランツ”。
「無駄だよっ!」
例え何匹いようとも、この無数の黒薔薇に数で勝る事は在り得ない。藍色の薔薇を刻んだ黒剣“Vergessen”を手に、インディゴは駆ける。
「黒薔薇……? 彼は“御使い”なの?」
「でも、あんな“御使い”、見たことがない」
黒薔薇の民が口々に何かを言っている。
其れってどういう意味? と問う余裕は、残念ながら今のインディゴにはなかったが――黒薔薇の民たちは周囲を優しく舞う黒い花びらに安心しているように見えた。
「アアアアッ!」
咆哮。
ジャグランツが白いドレスの女を守るように前に出る。インディゴは一気に接敵して、まずは黒い花びらで彼を切り刻む!
追跡してくるというなら、こっちから近付いてしまえば問題ない!
時にフェイントを混ぜ込み、衝撃波に斬撃波を混ぜ込んで攻撃していけば、あっという間にジャグランツの身体からは血が滴り落ちて。
「此処にいる人たちに――手出しはさせないよ!」
ジャグランツが耐えきれず、青い塵となって散った瞬間を狙う。
黒剣が、どっ、と女の胸元を捉え――女を見事に串刺しにした。
大成功
🔵🔵🔵
ルテア・ステルンベルギア
心情:
こんな所に迄エリクシルの魔の手が…
薔薇世界ロザガルド、か
悲劇が起きる前に終焉は壊してしまおう
行こうか、キルシュ
18歳を迎えた者を祝う“成人の儀”、
少々気になる響きだけれど
騎士として役目は果たさなければね
参加者たちを背に、盾槍も持ち入りながら
白婦人と対峙しよう
この侵入者は私たちに任せて、
安全な所まで早くお逃げなさいと声掛け
ある程度の安全確保が確認できれば
防衛から攻勢に転じよう
妖精のキルシュを武器憑依させた槍にて攻撃を重ね
ジャグランツが厄介な相手なのは承知の上、
ふたりなら…いや、仲間の皆とも
力を合わせれば道は切り開ける筈だ
アドリブ歓迎
ヴィルヘルム・ファティウス
連携・アドリブ歓迎
薔薇世界ロザガルドねぇ…
エリクシルは何処行っても厄介な事しているようだな
さて、猟兵としての仕事を頑張ろうか
今回は黒薔薇領ってとこの
成人の儀を何とかすれば良い訳だな
参加者たちは一般人だろうから、先ずは安全確保が優先か
警備員がいるなら避難誘導なんかは任せて
僕らは白婦人の足止めに努めるかね
召喚されるジャグランツには、魔鍵でもって応戦して
近接戦はそこまで得意でもないんだがなぁ…
文句は言っても隙を見せたりはしないさ
お得意な黒鉄兵団の紋章を描ききれば、
甲冑騎士たちがお相手するぜ
足止め、数を減らせていければ御の字だな
●
「薔薇世界ロザガルド、か」
聞いた事のない世界。噎せ返るほどの薔薇の香り。
其の中にルテア・ステルンベルギア(キバナの騎士・f39055)はいた。
終焉が近付いているというのなら、悲劇を起こすまでに全て壊してしまえば良い。
「エリクシルは何処に行っても、厄介な事しているようだな」
呟いたのはヴィルヘルム・ファティウス(愚か火・f39128)だった。ああ、とルテアは同意の頷きを返す。願いを歪めて叶える宝石。周囲の小世界にまで影響を及ぼすものだと知っていたなら、終焉を終焉させるものたちの対応もまた違ったものになっていたのだろう。けれど、其れを今嘆く暇はない。
「行こう、キルシュ」
だからいつも通り、ルテアは傍らの友“キルシュ”へと声をかけるのだ。
――“成人の儀”というものに、少し気にかかるものはあるけれど、まずは騎士としての役目を果たさねばならない。
参加者たちと白婦人の間に割って入るように位置したルテアは剣と盾を構え、後ろでどうすべきかとまごまごしている民たちに凛と言う。
「警備員! 誘導は頼むぞ!」
「此処は私が! どうか今のうちに、遠くへ!」
場所ならまた用意出来る。
冠ならまた、用意出来るのだからと。
黒薔薇の民たちは二人の言葉を聞くと、わっ、と蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。ドレスを着た貴婦人の手を、男が懸命に引いていく。
「こんなもんかね」
「ああ。あとは警備の方々に任せるのが一番かと」
何分此処で行われていたのは、成人の儀、だ。
ならば警備員の一人や二人いてもおかしくないだろう、と二人は考える。
「ぼうや……わたしの、ぼうや……」
我が子を探し求めるように、白婦人は虚ろに呟く。
エリクシルが形をとったものなのか、其れとも昔時の魔女が再び姿を現したのか。其れは二人には判り兼ねたが――ただ一つ言えるのは、魔女がバルバを呼び出して己の剣とし、盾となした事だけだ。
「――厄介な相手なのは承知の上!」
黒薔薇の民はもういない。ならば遠慮なく攻撃できるというものだ。
キルシュがくるくると妖精の粉を振りまきながら武器へと憑依する。
飛び掛かって来るバルバが狙ったのはヴィルヘルムだ。魔剣で其の剣を防ぎ応戦する彼に、ルテアは加勢する。
気合の声と共に剣を振り翳し、バルバの屈強な体へと深々とした傷を残す。
「近接戦は其処まで得意でもないが――!」
ざり、とヴィルヘルムの脚が慣れたように動く。其の足先が大地に描くのは、“黒鉄兵団”の紋章である。魔想紋章士――紋章というものを自在に操るヴィルヘルムが呼び出すのは、黒鉄の艶やかな鎧を纏う兵士たち。ルテアに加勢すると、其の剣を、盾を振り翳してバルバを一気に押し返していく。
「白婦人――!」
形勢は猟兵に傾こうとしていた。
ルテアの刃が、ヴィルヘルムの魔鍵が、佇む白い彼女へと迫る。
かつて魔女であった彼女は――避ける事はなく。十字の傷をその胸に受け、ぐらり、と其の細い肢体を揺らめかせる。
「ああ、ぼうや――」
其の瞳は虚ろ。
ただ、ただ、子を見守る母のように……黒鉄兵団と戦うバルバたちを見詰めているばかりなのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
スカーレット・マカレッド
クロウ(f38933)と共闘
白婦人、ギルバニア、か…
懐かしい敵を見たものだな
なぁ、小僧よ
そう呟きクロウに振り返るぞ
確かに出会いたくない顔ではあろうよ
さて、大切であろう成人の儀を邪魔する無粋な婦人にはご退場願おうか
一般人を庇い、被害拡大を防ぐことを最優先
されど此方へ注目が向くよう、【威厳】を発揮
「魔王が参上したのである! これ以上、おぬしの好きにはさせぬぞ!」
高らかに宣言して注意をひこう
クロウの攻撃で牽制後、
【居合い】の力を以て『月光斬』で大きな一撃を見舞おう
クロウの新月と吾輩の満月
月の斬撃をとくと味わうがいい!
クロウ・デイクロス
スカーレット(f38904)と共闘
ああ、そうだな。
前にアイツと戦ってから、もう二十年近く経つのか。
近頃は懐かしい顔と会う事も多いが、コイツとは再会したくなかったぜ。
ともあれ、招かれざる御客人にはお帰り願うとするかね。
まずは被害拡大を防ぐのが最優先。
派手なのは魔王に任せて、俺は【闇に紛れ】【目立たない】ように立ち回りつつ、隙を突いてUCを起動。ギリギリまで視認性を下げた【斬撃波】を飛ばして牽制を行う。
威力はそれなりだが、こうもチクチク刺されたら鬱陶しいだろ?
先に俺を潰そうとしたり、意識が完全に向けば儲けもんだ。
新月にばかり目を向けてて良いのか?
ほら、気を抜けば…眩い満月に瞳を焼かれるぞ、ってな!
●
赤が。
鮮烈な赤が、其処に立っていた。
スカーレット・マカレッド(真赤な魔王・f38904)は其の名を体で表す。真っ赤に燃えるような髪を風に靡かせて、其の赤い唇がぽつりと呟いた。
「白婦人、ギルバニア――懐かしい敵を見たものだな。なあ、小僧よ」
振り返る先には、漆黒の髪を揺らすクロウ・デイクロス(悲劇を許せぬデモニスタ・f38933)がいる。ああ、と苦々しく頷いたのは、会いたくもない顔だった故か。
「前にアイツと戦ってから、……もう20年近く経つのか」
「そうさな。10年も20年もあっという間よな」
「最近は懐かしい顔と会う事も多いが、コイツとは再会したくなかったぜ」
幸いなのは、彼女が“ギルバニア”としてではなく“エリクシルの端末”として現れた事だろう。嘗てほどの脅威ではないはずだ。
其れをスカーレットも心得ている。ふむ、と唸ると白婦人を真っ直ぐに、射抜くように漆黒の瞳で見た。
「薔薇の民よ! 此処に魔王が参上した! 我が名はスカーレット、真赤な魔王スカーレットである! |白き婦人《・・・・》よ、此れ以上お主の好きにはさせぬぞ?」
ざわり、と遠巻きに見ていた聴衆がどよめいた。
「赤ですって? 赤の、魔王……?」
「赤薔薇さまの手の者か……? だが、今はロザガルドでは不可侵条約が結ばれているはずなのに……」
――成る程?
耳をそばだて、薔薇の色が違うだけでこうもざわつくものかとクロウは溜息を吐く。ならば漆黒を揺らし闇に紛れる己は、黒薔薇領に相応しい……のかも知れない。単に色だけで判別するなら、だが。
「わたしの、いとしいぼうやたち」
最早エリクシルに侵食されきって理性も残っていないのか。
嘗て“デモニスタであったもの”は、薔薇の蔓を展開し、ジャグランツを召喚する。ジャグランツは盾のように並び、矛となってスカーレットとクロウの前に躍り出た。
「この魔王に膝をつかぬ獣がおるとは、笑止千万である」
スカーレットはあくまで、見下ろす側だ。
其の真紅にジャグランツの視線が縫い留められた隙を狙って、木漏れ日の影に潜んでいたクロウがムーンブレイドから斬撃波を放つ。其れは衝撃であるがゆえに、音もなく、そして気配もない。ギリギリまで視認性の下がった其れ等はジャグランツを次々と紙切れのように屠り、白婦人の周囲を囲う薔薇の蔓でさえ斬り飛ばす。
「へえ。これが“猟兵”の力――ユーベルコードって奴か」
使い慣れた“アビリティ”とはまた少し勝手が違うが、そう暴れ馬という訳でもないらしい。確かめるようにムーンブレイドを振り、クロウは新月から僅かに見える光のような斬撃波を放ち続ける。
そうなれば白婦人の注意が彼に向くのは必然の事。薔薇の棘が射出され、クロウが先程までいた木々を穿つ。
「――おいおい、其れで良いのか? 新月にばかり目を向けていると――」
「――吾輩の満月が、貴様を喰ろうてやるぞ!」
スカーレットだ!
カエンマル――真紅の刀身がぎらりと凶悪に煌めき、しかし、其れは一瞬の事であった。
すらり、ぱちん。
鞘から放たれたかと思えば鞘の中に消える剣、即ち――
「……!!」
白婦人の腕を一瞬にて斬り飛ばす、居合の一撃である。
「朔と望月――月の斬撃、贅沢であろう?」
「おお……! 矢張りあの方、赤薔薇様の配下なのでは!?」
「凄い力だ……きっと新しい“議席”の方に違いない!」
「もうお一方はもしや、黒薔薇様の……!?」
「ええい、違うわ! いい加減にせぬか聴衆ども!」
「此処まで色で判別されると、いっそ清々しさすら感じるな」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シランス・ウィア
黒薔薇の領地…か
ふふ、親近感が湧く場所です
思わずこの足が誘われました
華々しい成人の祝いの邪魔をするなどといけませんよ?婦人
幸溢れる黒花の会場に紅白を揺らし
殺戮を齎すなどセンスのないサプライズだ
――ゼン
其は黒薔薇咲かせ、命に死を齎すデモンの名
足許に蠢く我が棘を媒体に私が喰らったデモンを召喚
人々を怖がらせぬよう己と同じ年頃の人の姿で
彼は敵に向けるのなら《此度の獲物はアレか?》と一言
そう、アレ
白婦人の命に漆黒の薔薇を咲かせておやり
お前のお気に召すまま――喰らえ
ただ一言、命を与える
ゼンは他の命を糧に黒薔薇を咲かせる悪魔
それが叶うなら須らく交渉成立
○戦
悪魔の足許から無数の棘が飢えた獣が如く婦人に飛び掛かる
召喚された敵は無慈悲に貫き魔力吸収
魔力は悪魔の糧となり白婦人を捕らえられたなら
茨が婦人の肌を抉り滴る命を啜る
満たされる茨から咲くは、艶やかな漆黒の薔薇だった
○守護
オーラ防御
己は赤黒い棘を手繰り盾とし人々の守りに徹する
悲痛な願いは生ませない…
数多の惨劇を齎すというのならば
何度でも…私達は終焉を刻む
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「此処が、黒薔薇の領地」
すう、とシランス・ウィア(静寂の黒花・f38947)は大気を吸い込んだ。薔薇のかぐわしい香りが、そこかしこに満ち満ちている。
「ふふ、親近感が沸く場所です」
だから、つい足が誘われました――と、シランスは片腕を失った婦人を振り返る。
いけませんよ? という声は、まるで幼子をたしなめるように。
「華々しい成人の祝い。其の邪魔をするなどと。幸溢れる黒花の会場に紅白を揺らして、殺戮を齎すなど――センスのないサプライズでしかありません」
だから、シランスはしかるべき罰を与える事にした。
心中で黒薔薇の悪魔の名を呼ぶ。“ゼン”と。
命に等しく死を齎し、黒薔薇を手向けるデモンの名だ。シランスの足元に蠢く棘を媒体として喰らった、デモン。
人々はまるで“シランスが分身した”かのように見えただろう。黒い膚の青年が、白い膚の青年を見る。
「此度の獲物はアレか」
「そう、アレ。あのご婦人の命に、漆黒の薔薇を咲かせておやりよ。――お気に召すままに……喰らうと良い」
其れは絶対にして、ゼンが欲する唯一の命令。
命を糧に黒薔薇を咲かせよう。例え徒花であろうとも、咲き誇れば美しかろう。
白婦人を守るように、ジャグランツが現れる。というより、既にいたと言った方が良い。片腕を誰かに落とされている彼女は、命の危機を感じているのだ。
「哀れな。潔く咲けば痛みも少なかろうというものを」
悪魔がそう告げるとともに、足元から無数の棘が飛び出してジャグランツと白婦人を傷付ける。
突き刺さった長い棘は、其の切っ先から容赦なく生命力を喰らう。其れはジャグランツに与えられた僅かなものとて同じ事。命を吸われ、枯れて朽ちていくジャグランツの身体に、次々と黒い薔薇が咲き誇って行く。
「黒薔薇……!?」
「あ、貴方はもしや、黒薔薇の御使いなのですか!?」
人々を護ろうと傍にいたシランスに、黒薔薇領の人々が問い掛ける。
シランスは初めて、困ったような顔をした。
「いいえ」
そうして、言う。
「私は――終焉を終わらせに来た、異邦人です」
黒薔薇が咲き乱れる。
其れは花園と言っても良いレベルに増殖し、其の分だけ遺骸を増やし、そして白婦人の白いドレスにもぽつぽつと咲き始めていた。
「ぼうや」
「お前の坊やはもう死んだ。薔薇になったのだ、見ろ。美しいだろう」
「いいえ……わたしの、ぼうやは……」
白婦人は其の白を穢されても、膚を棘にえぐられて青黒い塵に変わりながら、其れでも。
まだ、認めない。何一つとして見る事はなく、ただ、エリクシルの端末として動き続けるばかり。
大成功
🔵🔵🔵
カイム・クローバー
黒で染まる舞台に燦然と青い装いを翻す。
『高貴』なんてモンとは縁遠い身だ。それにこの喧騒の中じゃあ、服の色なんざ目立たない。逃げ惑う連中とは反対方向に向けて歩く。
道すがら黒い花弁を落としたシャンパンの入ったグラスを【盗み】軽く一口。
願いを叶えてくれるんだって?シャンパンを揺蕩せながら、適当なテーブルに背を預けて。
祝い事の席だってのに、余興がなくてね。観客は俺と領主様だけだが、余興の一つでも見せて貰えるかい?
余興の中身は猛獣のサーカスってワケさ。
歪な形で叶えられる願い事。けど、ある意味じゃ『正しく』叶ったとも言える。───退屈はしないだろ?
【クイックドロウ】で撃ち漏らしなく。
領主の魔女様はどちらかと言えば支援型らしい。
箒扱いの長柄の刃物や、灰燼に化す劫火と言った派手な技には縁が無いご様子。なら、此処は紳士的に、スマートに、派手に行こう。
空のグラスを放り投げ、UC。
テーブルやら備え付けの飾りを台無しにしたのは悪びれて。(落ちてきたグラスをキャッチ)
──で、だ。シャンパンのお代わりは有料かい?
●
逃げ惑う人々の流れを、遡る男がいた。
真っ黒な装束が川のように流れを作る中、まるで魚が川を上るかのように、一筋――青。
其れはまるで“青薔薇”の存在を示すかのように……カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)はテーブルからシャンパンを失敬して、一口頂いた。其の頃には人々は逃れきり、パーティ会場には己と婦人がいるばかりであった。
「願いを叶えてくれるんだって?」
シャンパンの黄金をくゆらせながら、適当なテーブルに背を預け、戯れるようにカイムは問う。
「――ね、がい。そう。私は、願いを、叶えるための……」
「祝いごとの席だってのに、この通り余興の一つもない。退屈で死にそうだ。観客は俺と――もう一人だけだが、何か良いモノでも見せて貰えるのか? そうすれば俺だって口が滑って、願い事を言っちまうかもしれないぜ」
カイムは肩を竦める。
白婦人は本能で悟る。この男は“戦いを啜るもの”だと。ならば余興はこれしかあるまい。白婦人は何度となく呼び出してきたぼうやを――ジャグランツを召喚し、カイムの前に並び立てる。
「成る程?」
シャンパングラスを持ったまま、カイムはテーブルから離れる。
歪な形で叶えられる願い事。だがまあ、俺にとっては――これは“正しく”叶ったとも言える。だってそうさ、|退屈しないですみそう《、、、、、、、、、、》だものな?
「此処の領主様は、支援型らしいな」
つまり、俺の知る魔女とはイメージが違う訳だ。箒扱いの長柄の得物だとか、何もかもを灰燼に帰す業火だとか、そう言った派手な技とは縁がない。
なら――此処は紳士的に、スマートに、そして派手に行こう。領主様を退屈させたら、首をハネられるかもしれないからな。
ひゅん、とグラスが舞った。其れは既に飲み干されて空だったが――グラス一つでさえ、こいつらのために割るのは勿体無い。
カイムの両手に灯った光が双銃の形を成したかと思えば、次の瞬間にはジャグランツの一体の額に穴が開いていた。ばっ、と青黒い塵が散る。
「異世界だからな、弾代はツケとくぜ領主様! 特注品だから少々値は張るがな!」
――銃撃が躍る!
鳴り響く銃声、タンゴを踊り朽ち果てていくジャグランツ。片腕を失い、ドレス姿の白婦人は何処にも行くあてもなく、ただ悔し気に――カイムという、猟兵という闖入者を睨み付けていた。
其のお綺麗な顔に数発銃弾を撃ち込んで、……カイムの余興は終わり、白きドレスの夫人は青黒い灰へと返って行く。
ぱち、ぱち、ぱち、ぱち。
いとけない拍手が、カイムしかいない筈の会場に響き渡る。
カイムはシャンパングラスをキャッチして、其の無事を確認すると……拍手の主を振り返った。
「で、だ」
「何かしら」
「シャンパンのお代わりは有料かい?」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『シャドウウルフ』
|
POW : 闇の棘嵐
着弾点からレベルm半径内を爆破する【圧縮した闇の弾丸】を放つ。着弾後、範囲内に【大量に飛ぶ闇の棘】が現れ継続ダメージを与える。
SPD : 闇牙乱舞
戦場全体に【暗黒地帯】を発生させる。レベル分後まで、敵は【闇の牙】の攻撃を、味方は【暗闇の加護】の回復を受け続ける。
WIZ : ブラックホール
自身の【影】を代償に【ブラックホール】を創造する。[ブラックホール]の効果や威力は、代償により自身が負うリスクに比例する。
イラスト:lore
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
――シャンパンのお代わりは有料かい?
冗談交じりに青い服の猟兵が問うと、いいえ、と其の少女は言った。
黒く長い髪に、全ての光を呑み込む黒い眸。人形のように膚は白く、そして、冗談にもぴくりとも口元を歪ませない。
年頃にして14~5歳程度に見える其の幼く無機質な少女は、まず感謝を述べた。
「異世界からの客人、貴方がたが我が民を護ってくれた事にまずは感謝します。ですが、もう一つ頼みたい事が」
何だろうか。
別の猟兵が問うた、其の時。白き婦人が崩れ落ちた青黒い塵が、渦を巻いて竜巻のように立ち上り始める。
「名乗っている暇はないから、私の事は“黒薔薇”と呼んで。――…貴方がたが攻撃を加えるタイミングで呼んでくれれば、私は“彼ら”の動きを一時的に止めましょう」
青黒い霧は徐々に粘質を帯び始め、青黒いヘドロとなる。其れ等はアメーバじみて分裂を始め……黒いシルエットへと変質していく。
其れは、群れだった。
狼の群れだ。
光すら呑み込む玄色が狼の群れとなり、パーティ会場を取り囲む。
黒薔薇、と名乗った少女は薔薇をモチーフにしたゴシックドレスを僅かに揺らし、周囲を見回すと――
「貴方がたがもう一仕事してくれるというのなら、私は貴方がたに質問権を与えます。そして、この後恙なく行う成人の儀への列席も。私は本来、秩序を乱されるのが何よりも嫌いなのだけれど――その衣装の色も、不問としましょう。そう、これは……交流権よ。私たちも知りたい事がある。貴方がたもきっと、知りたい事がある。……其の前に、掃除をすべきだわ」
ああ。トイヘを呼んでいれば、少しは楽だったのかしらね。
溜息交じりに“黒薔薇”はそう言って……手元に取り出した分厚い魔導書を、指先でぱらりと開いた。
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※黒薔薇領主“黒薔薇(本名不明)”が加勢します。
シャドウウルフは常に動き走り回る厄介な性質を持っています。
猟兵たちが合図すれば、“黒薔薇”は何らかの力を持ってシャドウウルフを数秒の間拘束するでしょう。
勿論、この魔術の助けを借りる事は必須ではありません。
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スカーレット・マカレッド
小僧…クロウ(f38933)と共闘
ふむ、お主が黒薔薇領主であるな?
聞きたいことは山ほどあるが、まずは会場を荒らす狼の群れの撃退が優先か
往くである、小僧! 吾輩が力を貸してやろうぞ!
左胸をギュッと鷲掴み、滴り落ちる鮮血から猟犬を生み出すのである
この『勇者の心臓』は……吾輩にとって一心同体のもの
ゆえに強力
ゆえに何者にも負けないのである!
【威厳】を以て命ずる、「狼共と遊んでやれ」とな
防御を封じることができたなら、黒薔薇領主に合図をやる
小僧が戦いやすいよう、動きも封じてもらうぞ
ふふん!これで手も足も出まい!
月の出る夜は、猟犬と薔薇にも気をつけるのである!
クロウ!つよーいところを見せるのである!
クロウ・デイクロス
魔王…スカーレット(f38904)と共闘
三色の薔薇、か。何だかマギラントを思い出すな。あっちと同じように色々と複雑そうだけど、今は後回しだ。
仲間を援護しつつ敵群の動きを観察。軌道や配置を見定めながら、同時に月刃へと魔力を籠めてゆく。【魔力供給】
勇者の力、とくと見せて貰ったぜ。こりゃ俺も半端な真似は出来ねぇな。一撃で全滅させるのは難しいだろうが、心意気だけは一網打尽にする気で行くとするか!
魔王の攻撃と黒薔薇領主の足止めを合図としてUC起動。出来る限り多くの敵を巻き込める射線を見定めつつ、一直線に月光砲を叩き込む。
リクエストには応えねぇとな。夜の闇は確かに脅威だが、だからこそ月の光が映えるのさ!
●
「ふむ、お主が黒薔薇領主であるな?」
スカーレットはじろじろと、黒薔薇を名乗る少女を見つめる。モノトーンでまとめられた衣装に、至る所に薔薇の飾り。
少女はぴくりとも表情を動かさず、スカーレットの視線を享受していた。
面白くないである、とスカーレットは溜息を一つ。
「聞きたい事は山ほどあるが、まずはこちらが優先か」
「そうだな。――三色の薔薇。マギラントを思い出すが、こちらもなかなかに複雑なようだ。まあ、平和な“交流会”は後回しだな」
クロウが周囲を警戒する。ぐるりぐるりと巡り続ける狼は、いつでもお前らを狩れるぞとばかりに駆け巡っている。そうして其の内の一頭が、不意に吼えた! 狩りの始まりだ!
「アオォォオオンッ!」
応えるように狼たちは、影からブラックホールを生み出す。其れは光を、総てを吸い込む真っ暗。色を全てまじえたような、真っ暗。
「往くである、小僧! 吾輩が力を貸してやろうぞ!」
スカーレットは握る。己の左胸に宿る勇者の心臓を。嘗て奪った、そして今は己と一心同体の心臓から、赤き雫がぽたり、滴る。
其れは静かに赤き猟犬となり、天へと吼えた。黒薔薇を敷き詰めたような空に、白薔薇のような月が、昇り始めていた。しかし其れでもなお、スカーレットは紅い。
「これは吾輩にとって一心同体のもの。
ゆえに強力。
ゆえに、何物にも負けないのである!
ゆけ、狼たち! 黒き狼どもと遊んでやるのである!」
応えるように吼えたのは、果たしてどちらの狼だったのか。
真紅と漆黒の狼がぶつかり合う。
――そんな勇者の一滴を、クロウはしかと目に焼き付けていた。
「見せて貰ったぜ。こりゃ、俺も半端な真似は出来ねぇな……一撃で全滅は難しいが、心意気だけは一網打尽でいくか!」
クロウはずっと詠唱していた。まるで月光に祈るように、ずっとずっと。
長ければ長いほど、其の月光は眩さを増す――其れはまるで、日を経るごとに月が満ちていくように。
紅い狼が黒い狼の防禦を打ち破り、ブラックホールを埒外の力で噛み砕く。
「今である! 領主!」
「ええ――さあ、応えなさい」
そうして、スカーレットに黒薔薇は応えた。
右手を前に出し、……ぐ、と握る。するとどうだろう、まるで見えない巨人の手に握られたかのように、狼の円の一端を担っていた一団が動きを止めたではないか。
「ふふん! これで手も足も出まい! 月の出る夜には、猟犬と薔薇によくよく気を付けるのである。……クロウ! さあ、つよーいところを見せつけるのである!」
「判ってる! ――ちぃとばかし、眩しいぜ!!?」
そうして、黒き男は応えるのだ。
月光色をした“砲”が哭いた。其れは音もなく――まさに月光が降り注ぐが如く、動きを止めた狼たちを薙ぎ払い――其の玄色を、月光の色で掻き消していく。
「――綺麗ね」
ぽつり、黒薔薇の少女が呟いた。
「そうであろう?」
「いや、お前が答えるのかよ」
何故か得意げに、スカーレットが答えるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カイム・クローバー
容姿を眺める。猟兵には美人が多いが、それに勝るとも劣らぬ美貌。
間違いなく美少女の類だ。惜しむとしたら――。
キリと締まった口元は揺れもせず。華やぐような笑顔は見られそうにない事かね。(肩竦め)
OK。その条件で依頼成立だ。
狼共に背を向けたまま、手を大きく広げて。
領主様自らが戦線に赴いて来るってのは要するに|貴族の務め《ノブリス・オブリージュ》ってヤツかい?
|質問権の行使《報酬の前払い》なんてヤボな事、言うなよ。真剣に聞いてる。
手を借りる気は無かったが…領民を護るのが務めだってんなら、立ったままじゃ居られないだろ?
だが、そうじゃないなら、その手にある分厚い昼寝用の枕を片付けてのんびり構えててくれて良いぜ。
こっちで勝手に終わらせるからよ。
暗闇を駆ける音。猛獣のサーカスの第二幕。
ショーに協力しようと思ってね。猛獣のサーカス、ドッキリショーさ。
UCで身体に闇の牙を受ける。生憎、この程度では死ねなくてよ。
魔剣の【焼却】で暗黒地帯を焼き尽くす。
後は領主様の答え次第。ま、どっちにしろ俺は仕事をこなすだけさ
●
カイムはじっ、と黒薔薇を見る。
其の紫色は何色にも染まらない。赤にも、黒にも、白にも。そして装う青にも。
黒い瞳を向けて、少女は静かに首を傾げた。
「何かしら」
「いや? 猟兵ってヤツには美人がおおいが……其れに勝るとも劣らぬ美貌。間違いなく美少女って言葉がピッタリだと思ったんだが……惜しむとすれば、其の口元は揺らがず、華やぐような笑顔は見られそうにない事だと思っただけだ」
「……変な人ね。笑顔なんて、とうの昔に忘れたわ」
カイムは静かに肩を竦め、……そうして、一つだけ問うた。
影の狼など眼中にないとばかりに背を向けたまま。
「領主様自らが戦線に赴いてくるってのは、要するに――|貴族の務め《ノブレス・オブリージュ》ってヤツかい?」
咎めるように、少女は視線をくべる。
質問を今するのかと。
「そう睨むなよ。こっちは真剣に聞いてる」
「――。元々、成人の儀には私が出るのが習わしなの。名代は余程でなければ立てないわ。……私の領の民が、外敵に脅かされている。私が此処に立つ理由なんて、其れだけで十分なのよ」
「成る程? イベントにも戦にも名代を立てない主義か。俺は好きだぜ、そういうの。手を借りる気はなかったが……どうやら其の魔導書は昼寝用の枕には向いてないらしい」
たらたっ。
狼が大地を駆ける音がする。
「猛獣サーカス第二幕だ。ショーに協力してやるよ、今度は猛獣のサーカス、ドッキリショーだ」
たらたっ!
狼が狙いを定めた。黒薔薇ではなく其の前に立つ男に――闇の牙が襲い掛かる。
カイムは武器すら持たず、其れを受けた。……受けたように、見えた。
「……」
黒薔薇は見る。
カイムがにやり、と余裕の笑みを浮かべるのを。
「生憎、この程度じゃ死ねなくてよ。――ああ、これは俺が知っている“薔薇”からの土産だと思ってくれりゃいい。本人は知らないが、そういう事にしといてくれ。折角領主様にお会いできたのに、手土産の一つもないんじゃ――面子が立たないからな?」
カイムの周囲に、黒い牙が放射線状に排出される!
まるで花咲くように狼たちを黒い牙は貫き、串刺しにする。そうしてカイムはようやっと――ようやっと魔剣を取り出して、其処に黒銀の炎を灯し……暗黒地帯を焼き尽くす。
「――貴方の言う“薔薇”は、そんな色なのかしら?」
「いいや? 俺の一張羅を見てくれよ。……いや。こんな色なんて目じゃない、蒼薔薇を一輪知ってるだけさ」
「そう」
黒薔薇は……其れ以上は興味がないとばかりに、指をくるりと回す。
炎が意思を持ったかのように渦巻いて、牙によって動けなくなっている狼を的確に焼き尽くしていった。
大成功
🔵🔵🔵
インディゴ・クロワッサン
「黒き薔薇の寛大なる慈悲に感謝を。」(礼儀作法
一応、最低限の礼儀はね? 僕も一応藍薔薇だし!(笑)
で、動き回られるのはとっても面倒だけど、闇の棘ってのもめんどくなーい?
そんな訳で、圧縮されてる闇の弾丸は可能な限り見切って斬撃波や衝撃波とかで断ち切って、不発にさせたいね!(部位破壊)
ダメだった時の為にもオーラ防御や激痛/吹っ飛び耐性辺りは常時発動しとくよ。
最悪、黒薔薇さんだけでも庇えればいいなー
「どうか、黒き薔薇の御力を!」
…なんてね!(笑) 合図だと察して敵の動きを止めてくれたら、僕は素早~く(早業)UC:飛翔する黒の刃 を起動して、敵の動きが止まったらぐさーっ!と串刺しを狙うぞ~
●
「黒き薔薇、其の寛大なる慈悲に感謝を」
インディゴは静かに胸元に手を当て、礼をした。
彼は言うならば“藍色の薔薇”だが――此処は彼女の領地だ。最低限の礼儀は尽くさねばならないだろう。
「いいわ。顔を上げて戦う事を赦します」
対して、黒薔薇は一種の傲慢さでもって、インディゴに答えたのであった。まるでそうされるのが当然だと思っているかのように。
「よし、ありがと! ――さーて、動き回られるのはとっても面倒だ! さっさと片付けちゃおう!」
狼たちが影を代償に、ブラックホールを生成していく。……そんなもの量産してどうすんのさ! と、インディゴは斬撃波を飛ばして生成しきる前に破壊する。
吸い込み合ったらどうなるんだろう? ブラックホールがブラックホールを呑み込んだら、どうなるんだろう。
ちょっと興味はあるけれど、試すには場所が悪すぎる。こわーい目もあるしね。
たらたっ、たらたっ。
狼たちは周回しながら、闇の弾丸を四方八方から飛ばして来る。
其れを剣でばちんと弾き、時には受けて耐えながら、インディゴは機を待った。ある程度の目星をつけて、動きを止めて貰った後に最短のインターバルで行動に移れるように。
「黒薔薇さま! どうか、黒き薔薇の御力を!」
――なーんてね。ちょっとカッコつけちゃった。
なんて心中で舌を出すインディゴの心を読んだかのように、少女は静かに溜息を吐き……ぱちり、と指を鳴らした。
ばきばきばき、と大地が隆起する。獣の肋骨のように生まれ出でた土膚の杭は、狼たちを閉じ込めるには十分で。
「よし、今!」
……乱れ飛ぶ黒の刃。飛翔する黒の刃。
愛用の黒剣に似た短剣がインディゴの影から飛び出ると、幾何学模様をかちかちと描いて……其の軌道を全く読ませず、影狼たちを串刺しにした。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィルヘルム・ファティウス
連携・アドリブ歓迎
おや…白き婦人を倒せば終わりでもないのか
僕らは異邦人な訳だし黒薔薇の領主サマに従うかな
さて、もう一仕事を頑張るとするか
走り回る狼の群れってのが厄介だなァ
黒薔薇サンの力で拘束して貰ったところに、
増殖と爆発の特性もちの
フラスコの赤き蠍を解き放っては
数には数の暴力を…ってねェ
数を減らしていって、撃ち漏らした分には
僕も魔道書からの高速詠唱と全力魔法で加勢しようか
…赤色が増えるのはお気に召さないかもしれないが
其処は外敵を退治しきるまでご勘弁を
錬金術でも紋章術でもない魔術も興味深いよなァ
あとでお許しが出たら黒薔薇サンに聞いてみよっと
●
「白き婦人を倒して終わりという訳ではないのだな」
ヴィルヘルムはもう一仕事ありそうだ、とフラスコを手に。
自分たちはいわば異邦人。黒薔薇サマに従おう、と少女を伺う。
「……好きにやっていいわ。そうしなければ、パーティの食事が食い荒らされてしまうもの」
「其れは冗談?」
「ええ」
けれど、少女の顔には表情らしい表情は浮かばない。
笑顔だったら愛らしいのに残念だ、と、ヴィルヘルムは肩を竦めた。
其れで二人の間では十分だった。黒薔薇は静かに魔導書を捲り、指先で文字を描く。光輪がきらり、大きく現れたかと思うと――狼たちをぎゅっ、とひとまとめにして締め付ける。
「赤色が増えるのは、お気に召さないかもしれないが」
ヴィルヘルムはフラスコから、赤い蠍を解き放つ。爆発して、殖えて、更に爆発を起こす。そんな特性を備えた蠍たちは次々と紅い爆炎を放ち、狼たちを焼いていく。
「――赤は嫌いよ。暴力的だもの」
「どうかご容赦を。外敵を退治するために」
「判っているわ。……独り言よ」
黒薔薇の術は錬金術でも、紋章術でもない。
いうなればまるで、御伽噺に出てくるような魔法だ。
とても興味深い。お許しが出るのなら、黒薔薇に魔法体系を聞いてみるのも良いかもしれないな、と、ヴィルヘルムは考えていた。
また一つ、紅い爆炎が上がる。
大成功
🔵🔵🔵
ルテア・ステルンベルギア
心情:
白き婦人を倒せば一安心…とはいかないのだな
黒き影の狼の群れ、中々に厄介そうだ
若き黒薔薇の領主の力も出来るだけ借りて
速やかに平穏を取り戻す為にも尽力しよう
素早く数の多い相手には、
キルシュも私も不得手な面があるのは否めないな
力を借りるため黒薔薇の領主殿に合図を送り
拘束されたところに、鷹のスピリットを召喚して攻撃
発生する暗黒地帯も空なら多少は減退するだろうか
敵からの闇の牙には盾で凌ぎながら
視覚共有でも得た敵の情報は、
戦場を共にする仲間たちにも伝聞していく
脆い穴があれば其処を突いて
崩していくのが戦いというもの
皆で力を合わせれば切り開けるはずだ
アドリブ歓迎
●
「黒……いや、あれは影の狼なのか」
ルテアは数は減りつつあるものの、変わらず囲むように周回を続ける狼たちを見て呟いた。
速やかに平穏を取り戻さなければ。影の狼の関心が、此方に向いているうちに。
だが――素早く数が多い相手に、ルテアもキルシュもやや不得手であるのは否めない。
故に、ルテアは幼き領主を振り返るのだ。
「ご助力願えるだろうか」
「ええ」
黒薔薇と呼ばれる少女は、頷いた。
「……そうね。まずは貴方の手番」
「ああ」
ルテアは頷き、鷹のスピリットを召喚する。ピイ、と高く鳴いた鷹が、獲物を狙う狼たちを獲物と定めて空を支配する。
「――では、こうしましょう」
くるり。少女が指先を回す。
すると大地がべきり、と沈下して……狼たちの行軍を、大きく遅滞させる。其処へ飛び込む鷹の爪、鋭い一撃が狼の命を抉り削って行った。
「……今のを、詠唱も魔法陣もなしで?」
ルテアは驚きを隠しきれない。
少女は指先の一振りで、大地すら操るというのだろうか。
「――後ろ、気を付けた方が良いわ」
「!」
言われてルテアが振り返ると、狼がこちらに迫っていた。
其の牙の一撃を盾で弾く。大きく反った狼の身体に、鷹が一撃を加えれば――狼は今度こそ青黒い塵となって、宙に消えていった。
「“こちら”への道は通りやすくしたわ。ケダモノなら、登りやすい所を登るでしょう」
「其処まで計算を? ――貴方は一体」
ただのうら若き少女ではない。
ルテアは内心で、黒薔薇という少女に慄いていた。
大成功
🔵🔵🔵
シランス・ウィア
…こんなに客が押し寄せてはパーティーも楽しめませんね
ええ、承りました
お任せ下さい、黒薔薇様
ですが、一匹ずつ潰すのでは少々手間ですね
纏めて一掃しましょう
1つ踵を鳴らせば影より漆黒の棘を召喚
己が意思で棘を操作
狼達を1つに纏めよう
広く棘で狼を包囲し誘導
小魚の群れを網で中心に集めるように
ある程度纏まれば上々
逃げられぬようと黒薔薇様へ視線を向け合図
お願いします
一瞬でも拘束叶えば
敵の攻撃も弱まるはず…
そこを、狙う
UC展開・漆黒ノ棘牢獄
逃れる事は赦されず
傷を負わずにはいられまい
棘は滴る傷から命啜り
糧とし艶やかな黒薔薇を咲かす
…掃除だけでは味気がないですね
折角です
私からこの良き日に祝いの黒薔薇を贈らせて下さい
●
「こんなに客が押し寄せては、パーティーも楽しめませんね?」
シランスは冗談交じりに、黒薔薇を見る。
そうね、と呟く少女の口元はぴくりとも上がらない。
ならば、と少女は続けた。
「“お掃除”をしなくてはならないわね。塵は塵へ、灰は灰へ、ゴミはゴミ箱へ。片付けを手伝って下さるかしら、異邦の方」
「――ええ、勿論ですとも。お任せください」
だいぶ数は減った。一匹ずつ潰していっても、そう時間はかからないだろう。
だが――面倒だ。纏めて“掃除”しよう。何事も効率的な方が良いのだから。
とん、とシランスが大地を踵で叩くと、影から漆黒の棘が現れる。其れは大地を這い回り、狼たちを囲って追い込んでいく。其れはまるで、小魚の群れを網で追い込むのに似ていた。
そうして狼たちが棘に追い立てられたのを見て、シランスは黒薔薇へ視線を移す。
「――お掃除のフィナーレだものね。少し面白いものを見せてあげるわ」
サーヴィス精神だろうか。
少女は小さな手をふわり、狼たちに向けると……一度握り、そうしてゆっくりと開いた。
――ざあん!
狼たちを鋭く傷つける、“黒い何か”が現れた。――其れは、蕾だ。棘のように真っ直ぐ突き立つ大きな黒い蕾がゆっくりと膨らむと、まるで何かの仕掛けのように、輪郭だけを残して開花していく。僅かに尖る花弁の輪郭。華やかに開いていく。
――其れは、黒い棘で造られた黒薔薇だった。
「棘……!?」
「これは、貴方の力の真似よ」
狼たちをゆっくりと囲い込む、黒い薔薇の棘オブジェ。
見とれている場合ではないと、シランスはユーベルコードを発動した。
其の黒い棘から、逃れる事は敵わない。逃れられないのならば、傷を負わずにはいられまい。そうして傷を負ったなら、呪詛がたちまち身体に入り込み――そうして啜った命を糧として、シランスの黒薔薇が花開く。
「……綺麗ね」
黒薔薇が呟いた。
「掃除だけでは味気がないですから。折角です。私から、この良き日に祝いの薔薇を」
「そう。……ではこの薔薇は、このままにしましょう。今日は私ではなく、あの子にとっての最も良き日だから」
抱く棘、貫く棘、そうして咲く黒薔薇。
其れ等を見詰めながら、黒薔薇はようやく終わったと、魔導書を閉じたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『都市国家の日常』
|
POW : 街中をあちこち歩き回り、面白い物を見つける
SPD : 露天市場や人々の集まる広場を訪れる
WIZ : 街の伝統的な料理やお菓子を食べる
イラスト:純志
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「見た?」
紅いドレスの少女が、問う。
三つ均等に並べられた席は、薔薇の上に硝子の板を乗せた豪奢なもの。
其の内の一つ――黒薔薇の席は、空いている。
「見た見た! すっごいねぇ、猟兵って! 赤薔薇だと何位の議席につけるかな?」
「さあ。第二席ぐらいには行くんじゃないかしら?」
「キミは譲らないの?」
「なァんでアタシが譲らなきゃいけないのよ。アタシは領主よ?」
「ボクだって領主だよ? でも、これくらい強い|猟兵《ヒト》たちならぁ、領主を譲ってラクしてもいいかもなぁ~~?」
「冗談はやめて頂戴。アンタが其の席を降りたら、白薔薇領がどうなるかなんて……火を見るより明らかだし、アンタが火元だわ」
「えぇ~。ケチ」
こつ。
紅い少女のおでこ靴が、黒い床を叩く。
「さ、つまんないからアタシは領へ帰るわよ」
「続きみないのぉ?」
「あとは黒薔薇さま~って媚びへつらうバカたちばっかりの宴じゃないの。見たくもないわ」
「……猟兵さんたちが、あの子にどんな質問をするのか気にならない?」
「……」
こつ。
再び少女のヒールが床を叩いた。
紅い薔薇の椅子が、埋まる。
「そうだよね、気になるよね? だって、困るもんね? “侵略されたら”」
「――……別にそういうンじゃないわ。縁起悪い事言わないで」
「ふふー」
●
跪いた青年の頭に、少女が黒薔薇を絡めた冠を載せる。
其の様は厳かで、まるで一枚の絵画のようだった。
「これをもて、貴方が立派に咲いた事を認めます」
厳かに少女は言う。
ありがとうございます、と青年は答え……そうして拍手が起こった。
パーティ会場は簡易ではあるが作り直され、成人の儀は無事に終わる。
あとは少しだけ飲食と会話を楽しむ時間。
――黒薔薇は貴方たちを見ていた。待っていた。
彼女も多少なり、“猟兵という存在”に興味を抱いているようだった。
パーティ会場は簡易だけれど、別の所に置いていた飲食物は無事。
黒薔薇を模したチョコ入りのミニ薔薇パンはふわふわで、薔薇の花弁を落としたシャンパンもシャンメリーも無事。
大きな黒薔薇を湛えたケーキは、甘みを抑えたレアチーズケーキ。甘さが欲しいなら、黒薔薇の花弁――チョコレートを取って行くと良いだろう。
薔薇の花束が活けてあるように見えるけれど、其れはエディプルフラワーだ。砂糖をまぶしてあるから、薔薇を食する素敵な気分を味わえる。
極めつけは黒薔薇のローズティだ。炭酸が苦手なら、こちらを選ぶと良い。穏やかな黒薔薇の香りが、気分を落ち着けてくれるだろう。
スカーレット・マカレッド
小僧…クロウ(f38933)と
黒薔薇領主とも話がしたいのである!
おお、薔薇!黒薔薇のケーキであるぞ、小僧!
吾輩は目をキラキラさせるである
子供のようではない!断じて!(むむっ)
ふむ、小僧は紅茶が好きなのであるか?
吾輩も香りを楽しみつつ、あまーいのが好きであるぞ
角砂糖は3つが基本である!
さあさ、クロウ!ケーキを切り分けるである!
紅茶も勿論淹れるであるぞ!ふふん!
黒薔薇領主よ、協力に感謝するであるぞ!
吾輩等を招き入れてくれたことにも心より感謝を
ただ…一つ訊ねたいことがある
お主…否、お主等3色の薔薇の領主は、エリクシルの存在を知っておるのか?
疑っている訳では無いが、お主の動じなさといい、気になっていたのである
願いを叶える宝石に…黒薔薇領主、お主は興味あるのか?
あともう一つは…クロウ、お主に訊ねたいのである
吾輩のゴスロリと黒薔薇領主のゴスロリ、どっちが好みであるか?(じーっ)
※領主と答えられたら終始拗ねて、魔王と答えられたらめちゃ上機嫌になります
クロウ・デイクロス
魔王…スカーレット(f38904)と参加。
茶会のお供が黒薔薇を添えたチーズケーキにブラックローズティーとは。どれもこれも『黒』の名に恥じない逸品だな。見た目の統一感だけじゃなくて、味も一級品らしい。
にしても、そんなにはしゃいでいるとどっちが『小僧』なのか分からなくなるぜ?(悪戯っぽく苦笑しつつ)
昔から珈琲よりも紅茶派でな。さて、と。それじゃあ、ここは一つ執事の真似事でもしてみようかね。
仰せの儘に、魔王サマ?
(黒薔薇チョコと花弁の砂糖漬けを添えつつケーキをカット。慣れた手つきで紅茶を蒸らすと、人数分のカップに注いでゆく。砂糖とミルクはお好み通りに)
スカーレットは黒薔薇の領主と歓談中か。白と紅の領主も会場に残っている様だし、差し支えなければ俺はそちらにも紅茶を勧めつつ話を振りたい。
口先だけで懸念が晴れるとは思わないが…俺たちは『お人好し』でな?
悲劇があれば色に関係なく手を貸すぜ。
はっはっは、そいつは勿論、魔王サマに決まってるだろ?
(と答えつつ、黒薔薇の領主へお道化た様に肩を竦めて見せる)
●
「おお、薔薇だ! 薔薇のケーキであるぞ、小僧!」
スカーレットは其の瞳をきらきらさせて、美しく飾られた黒薔薇のチーズケーキを見つめる。これは何処から切るのであるか? と切り口を探すスカーレットに、クロウは苦笑する。
確かにこのチーズケーキもそうだし、黒薔薇の紅茶もそう、“黒”の名に恥じない逸品ではあるが――
「そんなにはしゃいでいると、どっちが“小僧”なのか判らなくなるぜ?」
「む! 子どものようだと!? 子どもではない! 断じて! 魔王である!」
詫びを入れよ、と傍若無人な魔王は言うのである。
けれど注文は可愛いもので、ケーキを切り分けよとスカーレットはいう。それから紅茶も淹れて欲しいと。
「仰せのままに、魔王サマ」
はいはい、と仕方なさそうにケーキをカットするクロウ。ちゃんと黒薔薇のチョコと花弁の砂糖漬けが添うように。そうして――実は紅茶派の彼は――慣れた手つきで紅茶を蒸らし、カップに注ぐ。
「吾輩は角砂糖3つが基本である!」
「はいはい」
「ではゆくぞクロウ! 領主は……今が手すきであるな!」
そうして赤い魔王と黒き騎士は、黒薔薇の少女と対面する。黒茶色をしたローズティの水面から客人に視線を移した少女は、ああ、と直ぐに君たちが誰なのかを理解したようだった。
「黒薔薇領主よ、協力に感謝するであるぞ!」
「いいえ。其れを言うのはこちらの方。――この領を護ってくださった事、“黒薔薇”として――アネクシヤ・ノワレとしてお礼を言わせて」
「む? アネクシヤ? 其れがお主の名であるか?」
「そう。もう久しく呼ばれていない名だけれど――名乗らないのは失礼でしょう」
どんな光をも吸い込んでしまいそうなオニキスの瞳が、スカーレットとクロウを見つめる。そうであるな、とスカーレットは満足げに笑い。そうして、ふと真面目な顔をした。
「所でお主……否。三色の薔薇の領主は、エリクシルの存在を知っておるのか?」
「……何故そんな事を訊くのかしら」
「疑っておる訳ではない。お主の動じなさが気になっていたのである」
「……跋扈している、という噂が流れていたからよ。実際、此処までの強硬手段に出られたのは初めてだけど」
黒薔薇はあくまで穏やかに言う。
己が疑われる事も織り込み済み、と言った風だった。
「赤薔薇も、白薔薇も、私も。エリクシルというものの存在自体は知っていたけれど、手が出せずにいたの。何が目的なのか判らなかったから……」
「――あれは、願いを叶える宝石である」
「……」
「だが、歪んだ形で叶えてしまうのである。この度の襲撃も、犠牲者を生き返らせたいという願いを誘い出すための手段に過ぎぬのである。……お主は興味があるのか?」
「ないわ」
黒薔薇領主、アネクシヤ・ノワレは即答した。
「赤薔薇の信条ではないけれど――願いは己の力で叶えるものよ。そう出来るようにこの黒薔薇領を作ってきたつもり。今日成人したあの子も、己の力で己の道を切り開いていくでしょう。だから、願いの宝石なんて要らないわ」
「そうであるか。――では、クロウ! 今度はお主に訊きたいのである!」
「あ?」
色に関係なく、悲劇には手を貸したい。例え己たちに色がなくとも。
そう思って周囲の客から情報を集めていたクロウに、ふとスカーレットは声をかけた。
くるり、と振り返った赤い麗人は、黒薔薇の隣に並び立つ。其れはさながら、大輪の花が二輪並ぶよう。
「吾輩のゴスロリとアネクシヤのゴスロリ、どっちが好みであるか?」
「……」
私、巻き込まれてない?
黒薔薇の顔は無表情だが、そのような事を語っているようにクロウには思えた。
あー……と困ったようにクロウは頬を掻き。
「そいつは勿論、魔王サマに決まってるだろ?」
――黒薔薇サマなら、これくらいの児戯は許してくれるだろう。
そう肩を竦めたクロウに、黒薔薇は静かに瞬きをする事で応えた。大丈夫だと。
「そうであるか、そうであるか! 矢張り吾輩は魔王であるから、ゴスロリも似合ってしまうのである! 残念だったなアネクシヤ、ふーっふっふっふっふ!」
「ええ、とても残念だわ」
「そうであるか~!」
――此処までの棒読みで嬉しくなれるなんて、一種の才能だな。
クロウは色んな意味で、スカーレットに心底感心してしまうのだった。
大成功
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インディゴ・クロワッサン
わーい!薔薇の料理だー!
け、ど。その前に、一応礼服に着替えておかないとね(早着替え
「相応しき場所には、相応の装いがなくちゃ、ね♪」
流しっぱなしの髪をゆるーく三つ編みして纏めたら…いただきま~す!(礼儀作法/威厳
ふわふわミニ薔薇パン美味し~♪
|大きい黒薔薇が乗ってる《レアチーズ》ケーキの控えめな甘さは|大きな黒薔薇《チョコ》の甘さを引き立てて最高だねぇ…
花弁入りのシャンパンで喉を潤して…
あ、一般黒薔薇さん達に話しかけられたら、当たり障りのない祝福の言葉を送るよ(審美眼
後は、料理を満喫するまでは黒薔薇さんに話しかけられないように、目立たない/聞き耳/忍び足/見切り辺りを併用して、逃げ回りつつ|食べれる薔薇《エディブルフラワー》とか食べてるけど、捕まっちゃったなら仕方ないね~
UC:無限収納 を起動して、まだまだ在庫のある夜糖蜜を黒薔薇のローズティーに入れて、お話ししよーっと!
「(…と言っても、僕、特に質問とかないんだけどねー)」
だって僕の目的、この食事だもん★
●
「わーい! 薔薇の料理だ!」
インディゴはすっかりと、黒薔薇をモチーフにした料理の数々に夢中。
早着替えで場に相応しい礼服に着替えてしまえば、後は――言ってしまえば無礼講だ。食べて飲んで楽しむぞ~!
相応しい恰好さえ崩さなければ、ある程度の無礼は許されるというものさ。いつもは流しっぱなしの髪も今ばかりはゆるやかに編んで。そうして、
「というわけで、いっただきまーす!」
まずはパンを戴く。
ふわふわのパンは食んでみるともちもちの食感で。チョコの風味が微かにあるのがたまらなく美味しい!
遠慮なく切り分けた|黒薔薇《レアチーズ》ケーキの控えめな甘さに、|黒薔薇《チョコ》の無遠慮な甘さが相まってこれも最高。
喉を潤すなら花弁入りのシャンパン。ついでに花弁を食んでみると……あ! これも食べられる薔薇なんだ!?
あちこちの食べ物を食べ歩きながら、挨拶される「おめでとうございます」に「おめでとうございます」を当たり障りなく返して。
様々な人間と話を交わす黒薔薇をちら、と見て、直ぐに視線を外した。彼女はどうやら、自ら話しかけに行くタイプではないようだ。内心で助かった、とインディゴは息を吐き、次はエディブルフラワーを一輪取って、黒い花弁を食む。
黒薔薇のローズティには、夜糖蜜をそっとかけて甘みを増して飲む。うーん、気高い香りに甘みが混じってとても良い感じ!
――インディゴはそうやって、客に紛れて只管に美食を楽しんでいた。
だって、特に質問とかないもんね!
このシャンパン、上物だなぁ。そう思いながらインディゴはちびりちびり、アルコールを楽しむのだった。
「……やっぱり、赤薔薇では赤いものとか、白薔薇では白いものとかが出るのかな?」
などと、悠長な事を考えていた。
現実は果たしてどうだろうか。赤薔薇領はこのようにパーティを催せるような平和な環境なのだろうか? 白薔薇領はそもそも|食事が出る《・・・・・》ような場所なのだろうか?
薔薇世界ロザガルドを覆う闇は未だ晴れず。しかしインディゴは深く考えず、次の料理へと手を伸ばすのだった。
例えば赤い薔薇なら、ワインは欠かせないよね?
あとは苺を使ったケーキだったり? やっぱり赤と言えば苺だし……あっ! 赤ならトマトを使ったカクテルとかも出るかも!
白は……やっぱりホワイトチョコかな~。普通のチョコも良いけど、ホワイトチョコの甘みも好きだな~、僕!
大成功
🔵🔵🔵
シランス・ウィア
アドリブ◎
祝われる青年が無事に成人として咲けた事を祝福をしながら
折角なのでシャンパンを1杯だけ頂く
好きな花と共に楽しめるひと時に心は踊る
それから黒薔薇様の許へと歩み寄る
先程はご助力、感謝を
黒薔薇様の魔術は大変興味深く
棘オブジェは見惚れてしまいました
黒薔薇は、私の好きな花ですからね
黒薔薇様は猟兵に興味を?
…とはいえ、私は猟兵という存在になってからは日が浅い新参者なので
語れることはあまり多くはないのですが…
数多の世界に悲劇の終焉が予見された時
彼らは此度のように駆けつける存在です
先程の敵のように、命を害しエリクシルの力が発揮などされぬように…
エリクシルに限らず、他の世界でも同じような戦を幾度ともなく駆けてきたそうですよ
…と。他の方々にも同じようなお話をされていたと思います
退屈、されませんでしたか?
よければ、私にもこの領地の事を教えて頂けませんか?
知恵こそ正義と謳う志にも関心があります
叶う事ならば戦以外でもこの領地にまた足を運びたいと思って
…純粋な知識欲ですよ
知らぬ事を知りたいと思うのが私の癖で
●
シランスは戴冠した青年に拍手をひとしきり贈ると、傍のテーブルに置いていたシャンパンを一口頂いた。
好きな花と共に楽しめる一時は心が躍る。様々な黒薔薇を模した料理も見ているだけで愉しい。
「失礼」
そうしてシランスは、黒薔薇領主へと歩み寄る。
「先程のご助力に感謝を述べに参りました」
「あら。……お礼なんて、いいのに」
「いえ。黒薔薇様の魔術は大変興味深く――棘のオブジェは見惚れてしまいました」
黒薔薇は私の好きな花ですから。
そう語るシランスに、黒薔薇の視線は少しだけ柔らかくなる。
「そう。私も好きよ。この黒薔薇という領地も、黒薔薇という花も。そして、未知のものも」
私は魔女だから、とシランスに言う黒薔薇は、泡立つ飲み物を一口。其れがシャンパンなのかシャンメリーなのかは、シランスには判り兼ねた。
「猟兵に興味を?」
「ええ。――何でも、様々な世界を渡るとか?」
「私は猟兵という存在になってから日の浅い新参者です。語れる事は余り多くはないのですが……」
そうしてシランスは語る。
この世界には数多の小さな世界がある、そこから。この薔薇世界ロザガルドもまた、数多の世界にある一つなのだと。
其の世界に悲劇の終焉が予見された時、其れを阻止するために現れる存在、其れが猟兵であると。
「先程の敵のように、命を害し、エリクシルの力が発揮されぬように」
「……成る程」
「エリクシルに限らず、他の世界でも同じような戦を幾度となく駆けてきたそうですよ。……という話を、他の方々もしていたかと」
退屈されませんでしたか。
そう言うシランスに、いいえ、と端的に黒薔薇は答える。だって、その話は初耳なのだもの、と。
「貴方がた“猟兵”は色々な話をするから面白いわね。猟兵がどんな存在かを話してくれたのは貴方が初めてよ。……ええと」
「……ああ。シランスと申します。シランス・ウィア」
「そう、シランス。私はアネクシヤ。アネクシヤ・ノワレ。黒薔薇でもアネクシヤでも、どちらでも構わないわ」
「――いえ、“黒薔薇様”。私にも、この領地の事を教えて下さいませんか」
「……どうして?」
「純粋な知識欲です。知恵こそ正義と謳う志にも興味があります。出来るなら、戦以外でもこの領地に足を運びたいと思っています」
「そう、……気に入って頂けたようで嬉しいわ。ではお話しましょう。この世界には、元々何もなかったのよ」
最初は何もなかった。
其れを3色の薔薇が、各々の思想に染め上げた。
そして中央に木を置いた。命を生み出す木である。生まれた命は無作為にそれぞれの領地に咲き落ちて、それぞれの薔薇の領で生きていく。
其の木の存在を知らない者はいない。だが、其れを見たものも――
大成功
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カイム・クローバー
シャンパンも既に3杯目。
一通り成人の儀を眺め終えた後、4杯目を片手に領主様の席へと。
失礼、Lady。席にお座りしても?
領民達は恐れ多いのか、誰も近くには座ろうとしないように見えた。空席なのは確認済みさ。返事も待たずに椅子を引いて足を組んで座る。
まずはシャンパンの感想でも贈ろうか。…実にコクがある。芯が通ってブレない。良く言えば統率性のある、悪く言えば――|秩序的《規則的》過ぎる味だ。
表情を伺っても変わらずの無表情だろうか?
まぁ、それならそれでいい。此処はシャンパンの品評会の場じゃない。
俺の質問は、赤薔薇領と白薔薇領について。赤薔薇領が暴力を、白薔薇領が平等をってのは聞いてるが、それぞれの領内で気を付ける事はあるかい?
いや、なに。近い内に旅行でもしようと思ってね。青薔薇の魔女様が不思議な力で送り届けてくれる。
――大概、厄介事の依頼とセットなのが残念だが。
手を挙げてローズティーを。
コイツは領主様の分さ。浮かべる花弁はUCを使った青薔薇。
交流権の返礼。またな、次に会えるのを楽しみにしてるぜ。
●
カイムが空けたシャンパンのグラスは、既に3つになろうとしていた。
そうして4杯目のシャンパンを口にしたところで、大きな拍手が起こる。“一種退屈な”成人の儀とやらは終わりをつげ、あとはオタノシミのパーティータイム。
「失礼、Lady。席にお座りしても?」
黒薔薇は豪奢な席に座っている。
領民は恐れ多いと思っているのか、皆立って話をしていた。だがカイムは違う。隣の席をゆらりと揺らし、座って良いかと問う。
「構わないわ」
そう彼女が返答する時には、既にカイムは座っていた。ハナから返答がどうであろうと、席に着くつもりだったのだ。
「このシャンパン、相当に良いものだな。コクがあって、芯が通っていて、ブレない。よく言えば統率性のある――」
悪く言えば、|秩序的《規則的》すぎる味だ。
「……。まるでこの領のようだ、と言いたげね」
黒薔薇は眉一つ動かさず言った。
其の声色は穏やかだった。言われ慣れているとばかりに。
「だが、其れがこの領の良い所……だろ? 俺が訊きたいのは他の2色の薔薇についてだ」
「……」
「赤薔薇は“暴力”、白薔薇は“平等”ってのは聴いてる。だが、何を気を付けるかは聞かされていなくてね。黒薔薇さまの知識を借りに来たという訳だ。俺の知っている“薔薇”は、そう言う所には不親切でね」
「……其の薔薇は何色なの?」
まるで交換条件のように、黒薔薇が問う。
第四の薔薇の色を問う。カイムは返答の代わりに、手の中にぽん! と青い薔薇を作り出した。紛い物だが、限りなく本物に近い薔薇。置かれていた紅茶に青薔薇の花弁を散らすと、す、と黒薔薇の少女へと差し出す。
「青薔薇の魔女様が、不思議な力で送り届けてくれるんだ。大概、厄介事の依頼とセットなのが残念だが。……近いうちに他の色にも旅行しようと思ってね」
「――……赤い薔薇の領は、荒れ果てているわ。…私の領にも問題はあるけれど、其の非ではない。強いものが富み、弱いものは食まれる。其れが赤薔薇領。下手に力を誇示すれば、赤薔薇自身が貴方に挑んでくる事になる」
「へえ? 赤薔薇様は武闘派って訳か」
「ええ。そして、己が其の領で最も強いのだと疑わない。――……判りやすいでしょう」
「本当に」
「でも、……白薔薇領はもっと厄介よ。まず“生きている人間に会う事が困難”なの」
白薔薇の領には傀儡しかいない。
生きている人間は、後ろ暗いものしかいない。
……判りやすいでしょう?
だから私たちはね、何か起きたら真っ先に“白薔薇領を疑う”のよ。
黒薔薇はそう言って、青薔薇の浮かぶ紅茶を取ると、一口飲んだ。
其れはまるで――これからこの世界に騒乱が吹き荒れる事を判っているかのようだった。
大成功
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