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銀河帝国攻略戦㉔～唸る巨砲と輝くモヒカン

作者：背腹かえる

●銀河帝国攻略戦
　『クライングシェル』艦隊 を突破し、帝国旗艦『インペリウム』を遂に射程に捕らえた『解放軍』のスペースシップ。
　接近した解放軍へ向けて『インペリウム対艦兵装群』ホーミングレーザーの一斉砲撃が始まる。宇宙空間を自在に駆け抜けるレーザーは解放軍の回避行動を嘲笑い、その全てが解放軍のスペースシップを貫いた。
　射程の違いから遠距離での反撃もままならない。その様はただ一方的、というより他なかった。

　だが、解放軍に味方する『猟兵たち』には『転移』の力がある。
　ゆけ、猟兵！
　帝国旗艦に肉薄し、解放軍へ勝利をもたらすのだ！

●ホーミングレーザー砲台
「みんなお疲れ様！宇宙ね！戦争ね！」
　宇宙っぽい景色となったグリモアベースでフェアリーのグリモア傭兵、ネミ・ミミーニーズ（f00595）が騒がしくしている。
「戦争についての詳しい説明はエリカさんやプルミエールさんがまとめてくれてるから各自確認しておいてね」
　なんやかんやと『オブリビオン・フォーミュラ』である『銀河皇帝』を討ち取るための戦いが続いているわけだ。

「それで今回のお仕事なんだけど」
　ネミは資料をパラパラとめくる。
　戦況は帝国旗艦『インペリウム』との戦いに入っている。しかしこのインペリウムに搭載された『インペリウム対艦兵装群』の力により解放軍は苦戦している。
　そこで猟兵たちを敵の間近まで『転移』させ、『インペリウム対艦兵装群を無力化する』作戦が提案された。
「今回みんなに壊してもらうのはでっかいホーミングレーザー砲台ね。射程がある上に威力も十分でしかも当たる、スゴイ。でも転移で懐に入っちゃえば砲台からは攻撃されないわ。らくしょーね！って言いたいけど帝国側も猟兵の転移に対抗するために護衛の戦力を用意しているみたい」

　作戦はこうだ。
　まずグリモア猟兵の力で転移、護衛の戦力を掻い潜り、敵の『ホーミングレーザー砲台』を１基叩き壊す。
　破壊すべき目標は『砲身』とそれに繋がる『ジェネレーター』とで構成されている。全部合わせると２０ｍ程になる巨大兵器だ。どちらかのみの破壊だと再利用される恐れがあるため両方破壊してほしい。
「ちなみに宇宙空間での戦いになるわ。そんで作戦目標の破壊を確認次第、私の方で転移して回収するから帰り道の心配はいらないわ」

●護衛戦力について
「『スペースモヒカン』っていう宇宙バイクに乗った連中が待ち構えているわ！」
　素行の悪さから正規軍への所属を認められず、インぺリウム内への立ち入りを禁じられた連中だ。しかしインぺリウム護衛の任務に成功すれば銀河皇帝に認められるかもしれないということで士気はそれなりに高い。
「ガラの悪い連中だけど、この局面でお声がかかる程度には厄介な連中だからね！油断しないでね！賢くないみたいだけど」
　連中は数が多く全滅させることは無理であろう。あくまで目標は対艦兵装なのでこちらにばかり気を取られないよう注意が必要だ。

「さあ！銀河皇帝に猟兵の活躍を見せつけてやるのよ！」
　そう言ってネミは猟兵たちを送り出した。

第1章 集団戦 『スペースモヒカン』

POW   :    ゴミクズは焼却だーっ！！！ 【手にした火炎放射器から放つ炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【暴力的な】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。 SPD   :    俺様のスピードについて来られるか！！ 自身が装備する【イタイ改造を施した宇宙バイク】を変形させ騎乗する事で、自身の移動速度と戦闘力を増強する。 WIZ   :    行くぜダチ公どもっ！！ 【宇宙暴走族の仲間達】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　帝国旗艦『インペリウム』の外壁に取り付けられた巨大な対艦兵装。
　対艦兵装の弱点である空間は思いのほか広い。その広い空間に多数の宇宙バイクが集う。
　
「来るのがわかってる連中を待ち伏せするだけで手柄になるとかほんとラッキーだぜぇ」
「帝国軍もだいぶ痛めつけられて人手不足らしいぜ。なんなら俺ら全員で帝国騎士んなっちまうかぁ？」
「ところで転送ってどんなんだ？」
「そりゃーおめー転送ったらイェーガーのとっておきだぜ？光とかすげーに決まってんだろ」
「マジかよ！？そんなんで奇襲とか寝てても気づくぜ」

「結構いいバイク乗ってるじゃない。貸して？」
「へへっいいだろこいつぁブベッ――！？」
　呑気に談笑していたモヒカンの頭を才堂・紅葉（お嬢・f08859）が掴んで投げ飛ばす。重力ない空間に放り出されたモヒカンは虚しく飛んで行く。
「誰だお前！？ま、まさか猟兵（イェーガー）！？」
　紅葉の忍び足にまったく気づいていなかったモヒカンたちが浮足立つ。

　騒ぐモヒカンたちの前で紅葉は乗り手不在となった宇宙バイクに跨る。
「こいつ！よくもダチ公の！」
　その様を見たモヒカンたちから、ただならぬ怒りのフォースが沸き上がる。
「ダチ公の！ダチ公の命より大事な魂（バイク）に銀河単車魂（ギャラクシィバイクソウル）の誓いもなしに跨りやがったな！」
　ギャラクシィ……何？聞きなれない銀河用語が出てきたがＵＤＣアース出身の紅葉にはよくわからなかった。
「まぁ、バイク想いの素敵な人達ですね。ＵＤＣアースの若者はバイクがあれば盗んで走り出すんです」
　銀河のモヒカンの都合など知ったことではない。言うが早いか、紅葉は慣れた手つきで奪ったスペースバイクを滑らせる。
「舐めたこと言ってんじゃねぇ！ダチ公の魂（バイク）を返しやがれー！」

　紅葉を追ってモヒカンの魂（バイク）が殺到する。どういうわけか必要以上にモヒカンがやってきてしまっている。
「ここよ。付いてきなさい」
　紅葉のバイクはモヒカンたちの隙間を縫って対艦兵装へと近づく。それへ熱い魂（ソウル）と火炎放射器を手にモヒカンたちが続く。
　追いかけてくるモヒカンと対艦兵装との位置関係を確認する。そして――、

「コード：ハイペリア承認。高重力場限定展開ランク１実行」
　紅葉はユーベルコードの輝きと共に飛んだ。
「ダチ公の魂（バイク）を盗んだ上に乗り捨てだブ――！？」
　先頭のモヒカンにダブルニードロップが炸裂する。その勢いでモヒカンの頭部を掴み、宇宙空間の法則を捻じ曲げ対艦兵装へ向けて『落下』を開始する。
　『ハイペリア重殺術・落星』。後続のモヒカンと宇宙バイクを巻き込んでレーザー砲のジェネレーターへと激突する。
「俺たちの魂（ソウル）が１つに！ヨロシクゥ！」
　激突と同時に巨大な爆発が巻き起こる。

　確かな一撃であった。しかし戦いはまだ始まったばかり。
　破壊対象の健在を確認しつつ紅葉は一時離脱する。

「やべーよ！やべーよ！ねえ兄貴！？砲台攻撃されてるよ！？」
　砲台のジェネレーターに直撃した攻撃を見て周囲のモヒカンが妙なテンションで兄貴に話しかける。
「落ち着け！たかが１発だ！ちょっとレーザー砲にヒビ入ったけど壊れたわけじゃねぇ！まだセーフ！帝国騎士団長への出世が帝国騎士副団長になっただけジャン！？」
「マジっすか！マジまだ俺たち偉いすか！」
「おうよ！これ以上は虫１匹通すんじゃねーぞ！」

「それそれ！それなんです！が！兄貴！」
　宇宙に溶け込むマントで身を包んだ小さな何かが砲台に接近している。
「呼ばれて飛び出てボク登場ー！」
「迷彩！小さい！フェアリーが！」
　それが羽の生えた小さいフェアリーであるとわかった時には既にレーザー砲台の根元には到達されていた。
「なになに？あの砲台ぶっ壊せばいいの？」
「砲台！接近！力溜め！」
　それがひっそりと力を溜めている。どう見ても猟兵みたいですね。
「りょーかい！任せとけー！」

「そこまで気づいてたんなら守れー！」
　兄貴モヒカンの声が宇宙空間に響く。そして準備万端のニィ・ハンブルビー（怪力フェアリー・f04621）の『ズバズバの魔法』が炸裂する。
　対艦兵装をも上回る巨大な剣が高速で回転を開始する。その刃がレーザー砲の砲身を先端からスライスしていく。
「やべーっす！マジぱねぇっす！ズバババーン！？」
「落ち着け！あいつはホーミングレーザー砲台だから砲身が短くなっても『イカシタ改造を施しました』って言えばいいんだ！」
　慌てすぎて砲台の守りに入らなかったモヒカンたち。なんとか砲台そのものをスライスされる前にニィを止めに入る。
「邪魔するなら一緒にぶった切っちゃうよー！」
「ちょ！ちょっと待った！砲台をどうぞ！バイクだけはご勘弁を！？」
　ご勘弁と言われても回りだした剣は止まらなかった。

　ずいぶんと砲身の短くなった砲台と真っ二つのバイクを残し、ニィは離脱する。
「にしても、宇宙って綺麗だよねー。こんな状況でなきゃ、もっとゆっくり見れるのになー」

「ちょ、待てよー！？猟兵の襲撃すぐ気づけるとか言ったの誰だよ！？」
　既に２人から奇襲を受けているモヒカンたちに動揺が走る。
「まあ待て。俺たちは油断しすぎていた。猟兵は強い。奴らは隠密行動も得意だ」
「だがな！ここからは俺たちも本気だ！猟兵になくて俺たちにある物を使い！奴らを迎え撃つ！」
「猟兵になくて俺たちにあるもん……？ハッ！」
　俺たちダチ公を繋ぐ絆！銀河単車魂（ギャラクシィバイクソウル）！
　『イタイ改造を施した宇宙バイク』たちが共鳴！輝くは七色の光！鳴り響くクラクション！
「俺たちの魂（ギャラクシィ）が１つに！」
「おうよダチ公！これで宇宙バイク以外のもんが近づいたら即発見！そんで即攻撃！俺たちの勝利だ！」
　ヒュー！！周りのモヒカンたちから歓声が上がる。

「ところでよ？」
「なんだ？」
「バイク以外にはすぐ反応するんだけどよ？」
「猟兵が宇宙バイクに乗ってたら？」
「乗ってたら？」

　共鳴する宇宙バイクの中。明らかに共鳴していない１台のバイクがいる。迷彩機能で目立たないように忍び寄る１台。イタイ改造のない１台。明らかにモヒカンじゃない乗り手。
「いたー！？！？」
「くっ、無理はできませんか」
　モヒカンたちに見つかった。
　リステル・クローズエデン（なんか青いの・f06520）は隠密行動から強行突入へと作戦を切り替える。
　間近にいたモヒカンがリステルの刀によって斬り捨てられる。

「俺たちはもう油断しない！こいつだけは近づけさせねぇ！」
　イタイバイクたちが集い、モヒカンの壁を形成する。流石のリステルもその壁を咄嗟には抜けられない。
　ただ、破壊すべき対艦兵装は射程に捉えていた。

「さて、もう一仕事ですか」
　リステルは手にした苦無にユーベルコードを込める。モヒカンたちの僅かな隙間を狙い『炸裂穿牙』を放つ。
「うぉおおお！？」
　モヒカンの壁を抜けた苦無がジェネレーターを守る装甲板を貫く。
「あっ、刺さった？でも大丈夫だよね？刺さっただけならセーフだよね？」
　モヒカン最後のささやかな希望。
「この刃は牙。穿ち、引き裂き、そして爆ぜよ」
　リステルの詠唱。そして、ジェネレーター内部で苦無が大爆発を引き起こす。
「ああーー！？皇帝様ごめんなさーい！？」

　――ジェネレーター沈黙。
　真っ白に燃え尽きるモヒカンを置いて、リステルは離脱した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「どどどどーなった！？」
「ジェネレーターがオシャカだぜ！？やべーぜ！？」
「まだセーフじゃん！砲台があればジェネレーターの代わりに魂（バイク）を繋げば撃てるじゃんよ！」
「ソレマジ！？俺らの魂（ソウル）ある限り無敵ってことじゃん！」
　猟兵の攻撃からの被害を確認し、応急処置に入るモヒカンたち。寄せ集めとはいえ普段からバイクを扱う者たち。なんとか砲台は起動しうるだけの状態まで修復される。

「とにかく砲台を壊せばいいんだね」
　そんなモヒカンたちの必死の抵抗にトドメを刺しに更なる猟兵が迫る。
　サビエラ・ナヴァツカ（獲物を狩る鹿・f03523）が『白く輝く牡鹿』に跨り戦場に現れる。
　見慣れぬ乗り物にモヒカンたちの間に動揺が広がる。
「あ、あれはなんだ！？魂（バイク）か！？艇（シップ）か！？」
「古い単車図鑑で見たことある！４本足で戦場を駆ける伝説の生き物！」
「それってもしかして！？」

「「馬！！」」

「鹿ですよぅお馬鹿さん」
　独特の調子でツッコミを入れたのは尾崎・ナオ（ウザイは褒め言葉・f14041）。
「だだだ誰だ！？」
　突然の乱入者にビビるモヒカン。
「ナオちゃんですよぅ。お近づきの印にナイフいっぱい☆あげますよぉ」
　ナオはモヒカンの群れの中に無数の黒いナイフを解き放つ。
「ナイフ！？させねぇ！？」
　モヒカンたちはナオのナイフから命より大事な魂（バイク）を守ろうと身体でナイフを受け止める。
「へへ、この程度のナイフ。魂（バイク）の傷に比べたら大したことねぇぜ」
「傷は浅いみたい？でもしっかり毒を塗ってまぁす！」
「なん……だと？すまねぇダチ公、そして相棒。俺は先に――」
　バイクに別れを告げ、モヒカンは散った。

　先陣のモヒカンを超え、サビエラとナオは破壊すべきレーザー砲台を見据える。
「可愛いナオちゃんが敵を引きつけてあげるのでレーザー砲まで突っ込むですよぅ」
「え？……はい」
　ナオの調子に少し戸惑いつつ。サビエラは輝く牡鹿と共に戦場に突入する。
「何が鹿だ！この銀河に俺らの魂（バイク）以上の単車はねぇってとこを見せたるぜ！」
「だから単車じゃないですってばぁ」

　牡鹿とバイクが宇宙空間で激突する。
　一方的な襲撃に苦しんでいたモヒカンたちにとってようやく訪れたバイクによる宙間戦闘である。その盛り上がりは年に一度のイタイ改造フェス以上であったという。
　バイクを、モヒカンを、何もない宇宙空間を自在に蹴り進む牡鹿。そして火炎放射器片手に追いすがるモヒカン。
　モヒカンたちの魂（バイク）は速度で上回りつつも、不規則に跳ねる牡鹿の動きを捉えることが出来ない。
「ヤロウ！なんてーテクだ！」
「俺らの銀河陣形（ギャラクシィ・フォーメーション）を踏み台にしやがって！」

　バイクを翻弄しつつサビエラは弓を構える。狙うはレーザー砲台の砲身。
　森の神々から贈られた弓から矢が放たれる。正面から放たれた矢が砲身に吸い込まれる。
　モヒカンのそれはヤバイっす！の声と共に砲台が破裂する。

「半壊？くっ！」
　サビエラは完全に破壊しきれなかった砲台を見る。と、その砲台にナオがいることに気付いた。いつの間に？
　敵を引きつけていたんじゃなかったのか？そいういえば途中で盛り上がってきたモヒカンが全員サビエラの牡鹿を狙いにきていた気がする。

「みんな頑張りましたぁ。それじゃーナオちゃんがトドメをもらっちゃいますよぉ」
　ナオは零距離で拳銃を連射する。撃ち尽くし、銃を替え、また撃ち尽くす。
　嵐のような早打ちが過ぎ去り、あとには原型を留めないレーザー砲台が残された。

　一連の攻撃を受け、レーザー砲台は完全に機能を停止した。だがモヒカンたちはなんとか砲台を修復しようと瓦礫と化した砲台跡地に張り付く。
「なんとかなるか俺たちの出世街道！」
「気合！気合だ！」
「俺たちの魂（バイク）のパーツを集めて何とか動くようにするんだよお！」
「銀河皇帝さまー！俺たち頑張ってますよー！」

　そんなモヒカンと砲台修復作業を遠巻きに眺める赤い影。
　如月・アストレア（クイック ビー クィーン・f13847）は全ての対艦兵装をぶっ飛ばす意気込みを胸に、この戦場を終わらせにやってきた。

「対艦兵装なら似たようなの持ってるよ♪かもん！くりむちゃん！」
　亜空間から大型の機動戦闘機が現れる。『クリムゾンフレーム』にアストレアが乗り込むとそれは人型へと変形する。
「からの、デストロイド☆ジェノサイダー！」
　対艦隊用超荷電粒子砲にモヒカンもろとも対艦兵装を消し飛ばせるだけのエネルギーが収束していく。

「兄貴兄貴もしかして？」
「修理に気を取られてる間にマズいことになったっす！？」
「あんな堂々とチャージしてるのにどーして誰も気づかないー！？」

「よーし、ぶっ飛ばしていくよー☆射線からは離れてねっ♥」
「離れます！離れさせていただきます姉さん！」
　護衛の任務も、修理のために砲台に繋いだ魂（バイク）も捨てモヒカンたちが逃げ出す。
「これが全力のお仕置きビーム！！！」

　轟くレーザーの超高速連続攻撃により。
　帝国旗艦『インペリウム』の兵装が１つ、完全に消え去ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年02月20日