「鮭の季節だ」
唐突に梟がグリモアベースで告げた。成る程わからん。
「此度はサムライエンパイア世界における蝦夷地調査の依頼だ」
梟別・玲頼(風詠の琥珀・f28577)は改めて集まった猟兵達に告げる。蝦夷地とは現代で言う北海道の事。
北海道の魚と言えば鮭である。ホッケやニシンやサンマも旨いがやはり鮭である。
「今年もUDCアースの北海道では鮭の遡上が確認されている。同様の時期にサムライエンパイアの蝦夷地でも鮭の遡上が見られるのか?と言うのを調査して貰う」
向かって貰う場所、と現代の地図で玲頼が示したのは苫小牧市と登別市の中間にある海岸線――白老町の辺りだ。
「タラコで有名な虎杖浜もこの辺りだが、小さな川も幾つか流れていてな。鮭の遡上が見られる事だろう」
河口の海でも、遡上してきた陸の川沿いでも、もっと上の山の方でも。鮭がみっしり昇ってきているだろうと梟神は告げる。
「捕りすぎぬ程度に捕って、秋の恵みを享受してくると良かろう。ただし邪魔者が入るがな?」
冬眠前のクマが🐻クマー!と。
「私が案内するとヒグマが出るだと? はは、気のせいだ。それに貴殿達もコイツくらいは見た事あろう」
どん、と玲頼が置いたのはヒグマが鮭を咥えている木彫りの民芸品。このデザインが普及するくらい、アイヌの人々はこの光景を見てきたのだとカムイは語る。
「昔は|ヒグマ《キムンカムイ》と我ら|シマフクロウ《コタンクルカムイ》で遡上してくる鮭を奪い合ったものだ……としみじみしてる場合では無いか」
行ってくれるか?と問い、掲げた手羽の先にグリモアの光を描いて玲頼は告げる。
「土産に何匹か頼む。雌なら筋子も採れるしな?」
夕飯はイクラ使った海鮮親子丼に決定。
天宮朱那
天宮です。
こないだ鮭の遡上を初めて生で見たもので。川に鮭がみっちみちで凄かったのですよ。
アイヌにはカムイチェプ(神の魚)と呼ばれて食料だけじゃなく皮も衣服に使われてたのです、鮭。
世界は蝦夷地、今の白老町付近。具体的な地形はマップサイトなどで見ても見なくても。砂浜続く海岸線です。
未開拓の地なので自然のまま。人には会えません。いくつかの川を鮭が遡上してくるので好きに鮭漁しつつ調査して下さい。
一章では鮭漁及び周辺調査。ついでに鮭食べるならこちらで。焼いても煮てもチタタプしても。
二章は「この川の鮭は俺のもんだクマー」とヒグマが来ます。群れとしてますが実際はあっちこっちに出没するイメージで。熊鍋したいなら止めない。
複数合わせは迷子防止に相手の名前(ID)かグループ名記載を。
技能の『』【】等のカッコ書きは不要。技能名のみ羅列は描写がシンプルになります。
公開と同時にプレイングは受付開始。
マスターページやタグ、Twitter(@Amamiya_syuna)などでも随時告知をしますので確認頂けますと幸い。
適度に人数集まったら〆切目安の告知予定。再送お願いする事も。ご容赦願います。
第1章 冒険
『海鮮山鮮』
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POW : 山で獲ろう
SPD : 海で獲ろう
WIZ : 陸で獲ろう
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
山立・亨次
こないだ偶然にも鮭漁に使う銛を作ったんだよな
(※アイテム『清流の門番』)
必要な時に、必要な分だけ
獲りすぎないように……とは言え
数多そうだし、慎ましくなることはないだろ
さて調理するか
塩焼き、ちゃんちゃん焼き、マヨネーズのホイル焼き
焼き物だけでも色々出来るから万能だよな
あとは石狩鍋と……生食は危険だがルイベにするのはアリか
製氷機能付きの冷凍スペースに切り身を保存しておこう
チタタプ? 作れと言われれば作るが……
そう言えば、この時代の蝦夷地には……
……いや、考えてもしょうがねえことだな
(少し、自身が僅かに血を引く民族のことを考えた)
水の流れが速くなりつつある川の中流。水の中には我先にと上流を目指す鮭がぎっしり。
「こないだ偶然にも鮭漁に使う銛を作ったんだよな」
山立・亨次(人間の猟理師・f37635)は手にした銛を見ながらポツリと呟いた。
マレクと言うアイヌの伝統な鮭漁の道具――送り出した|梟神《コタンクルカムイ》も懐かしそうに見つめていた様であった。
それは一般的な銛とは違い、柄の横に鉄鈎が付いているのが特徴だ。刺せば鉄鈎が柄から外れ、繋がった紐で獲物を釣り上げる形になる。返しは無いが暴れる鮭を逃がさぬ工夫が篭められているのだ。
「さて……必要な時に、必要な分だけか」
獲りすぎないように……とは言われて来たが。目の前に広がる遡上の光景はまさに鮭尽くし。
「――数多そうだし、慎ましくなることはないだろ」
無論、捕った分はしっかり頂くつもりである。何せ亨次は猟理師。自然の恵みを己の手で享受し、美味しく命を循環させる事が彼の生き方なのだから。
そんな訳で。
簡易的に設営した料理スペース。並べられた獲れたての鮭がまだ尾ビレをびちびち言わせているのを見やると亨次はさて……と一息ついて言った。
「調理するか」
戦場猟理・極――! ユーベルコードの域に達した調理技術は恐ろしい速度にて、水揚げされたばかりの鮭を美味しい料理へと変貌させていくのだ。
まずは大きな一本まんまの鮭に包丁を入れ、綺麗に捌いていく。身を三枚におろし、背骨と頭はざっくり切って汁物の具にするとして。一部の身は切り身にし、今回使わぬ分は製氷機能付きの冷凍スペースにイン。都度解凍すればいつでも美味しい鮭が頂ける。
まず塩で処理しての焼き。シンプルに鮭の旨味を堪能。ちゃんちゃん焼きにすれば、鮭の旨味が野菜達にも染み込んで相乗効果による絶品。マヨネーズのホイル焼きはまろやかな味わいと合わさってご飯が止まらなくなるのは間違い無い。
土鍋には既に石狩鍋がスタンバイ。ぶつ切りにした身やアラを入れ、根菜やネギと共に味噌で煮込む。これまた旨味が存分にスープに染み出た逸品。
「生食は危険だが……ルイベにするのはアリか」
凍らせた切り身を後でそのまま切って供すれば舌の中で脂の乗った鮭の身がとろけるのは間違い無い。
チタタプは――作れなくは無いがまた今度。あれは本来、皆で叩いて作るべきものだから。
「そう言えば、この時代の蝦夷地には……」
一瞬だけ。亨次は手を止めて山の方を見つめる。サムライエンパイアは江戸時代初期の日本と酷似した世界。|地球《アース》世界の歴史と照らし合わせてふと考え――かけてやめた。
(「――考えても、しょうがねえことだな」)
亨次の脳裏に過ったのは、自身が僅かに血を引く民族の事。漁に用いた先程の銛を見つめ、青年は命と先祖に感謝するように僅かにだけ瞑目すると、料理を口に運んでしかと味わい堪能するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
サーラ・ビアンコ
鮭。秋の味覚じゃな
前に食べた鮭は美味しかったのじゃ
海岸線を歩いて、あまり大きくない川に近付けそうな所を選ぶ
明らかに食い気につられているが、それを周辺調査と言い張ろうとしていたり
砂は歩き難いのじゃ
砂利の海岸は楽じゃの
河口から少し上って川岸に近付けるところを探して、石を伝って川の中へ
多少濡れるのは覚悟の上じゃ
…妾より、鮭の方が大きい気がするのじゃぞ
熊さながらの気合を入れたパンチで岸へと弾き飛ばす
妾は料理出来ぬので、鮭は持ち帰りじゃ
捕らえた鮭は花飾りを使って、倉庫へと収納していく
帰ってから、美味しい料理にしてもらうのじゃ
料理得意なのが何人もいるからそれぞれジャンルの違う鮭料理…楽しみじゃのぅ
海岸線をトコトコと歩く白猫一匹。蝦夷地には珍しい生き物の姿に、ウミネコが物珍しそうに遠目で見つめながらニャアと鳴くのが聞こえてくる。
「鮭。秋の味覚じゃな」
サーラ・ビアンコ(La fanciulla del gatto・f27059)は金色の尻尾をゆるりと振りながら、以前に食した鮭の味を思い出す。あれも至極美味であったが、今回の鮭もきっと脂が乗って美味しいに違いない。
しかし出掛けに見送ってくれた仲良し梟には周辺調査と言い張った。明らかに食い気で来ている――と言うのがバレバレだと気が付いていないのはこの猫だけである。
手つかずの砂利の海岸は歩くのも楽だ。砂地は歩くと埋もれてしまう感覚がどうにも嫌で避けながら進む。そしてしばし歩いていけばそこまで大きくも無い川に辿り着く。
水面を覗きこめば、そこにはミッシリと我先に遡上する鮭の姿。しかし崖っぷちの様な河口の川岸からは流石に手が届かない。上流目指してサーラは更にトコトコ歩いて良さげな場所を探す。
ザアザア流れる水流の音が心地良い。横目に上っていく鮭を見ながら同じ方向に進んで行けば、足場になりそうな石が散見される川辺を見つけた。
ぴょん、と軽快に石から石を伝ってサーラは川の中へ行く。水飛沫で毛皮が多少濡れてしまうのは覚悟の上。美味しいものの為には我慢だって出来る。
「……妾より、鮭の方が大きい気がするのじゃぞ」
間近に近付いて良く解る、鮭のサイズ感。体長1m近くはあるのではなかろうか。寝転がって伸びをした自分と多分大差無い。だからと自分より大きいものを恐れる様な猫でも無い。
「てやっ!!」
熊が川の中で豪快に鮭を吹き飛ばすかの様に。見た目は金魚鉢の中の金魚を掬って飛ばすかの様な、気合の入ったねこぱんち。唸るフックが水中の鮭を思い切り岸目掛けて吹き飛ばす。何故小さな猫がこんな力があるかと言うと、多分猟兵ぱわーに違いない。
びちびちばたばた。岸に吹っ飛ばされた鮭達は突然の陸地にびっくりしながら跳ね回っているが、やがて抵抗する力も酸素も失ってぐったりしていった。
「大漁なのじゃ!」
捕れた鮭を満足げに肉球でてしてしつつきながらサーラはご機嫌に尻尾を揺らす。
さて、流石に野性的にこのままガブリと言う訳には行かない。普通の野良猫ならやりかねないが、サーラは賢い淑女猫である。そんなはしたない真似は出来るものか。
だからと言って料理は出来る訳でも無く。
「よってお持ち帰りなのじゃ」
小さな花飾りでちょこんと触れれば、抵抗する力も無くした鮭達がどんどん吸い込まれていく。消えた先はサーラの秘密倉庫。収納しといて後で戻ったら料理上手達を捕獲してお願いするだけだ。
「美味しい料理にして貰うのじゃ。料理得意なのも何人かいるしの。それぞれ違うジャンルの鮭料理に……」
想像するだけで思わずじゅるりとよだれが出そうなのを前脚で押さえ。
「うふふ、楽しみじゃのう」
お腹の虫が鳴きそうなのを抑え切れなくなるのも、時間の問題。
大成功
🔵🔵🔵
御簾森・藍夜
【朱雨】
今日は心音が喜ぶ美味いいくら持ち鮭を捕る…!
「すまん心音、火を起こしを頼む」
あの鮭では心音が怪我をする
さてお前達、仕事だ!鮭獲るぞ!
UCの狼と鮭獲り
黒鷹で跳んできた鮭殴る
いける
やれる
たぶん
くっ強いな…!あいつら負けそうなんだが…!
(見つけた一際大きな腹の膨らんだ鮭
狼に追い立てさせ、川縁ぎりぎりで―…!
ジャンプした瞬間、黒鷹で思い切り殴り上げ岸側へ
っしゃ勝った…!
UCで冷凍鮭にして、命は最後まで美味しく心音と頂こう
ん、ありがとう(綺麗なままなら暁をぎゅ
心音、食うぞ
ふむ…ならハラス
(笑顔の心音に顔が緩み
ん、あっつ、うま…!
旨いか?良かった…
筋子は持って帰って漬け丼でもするか?旨いぞ、きっと
楊・暁
【朱雨】
川上りって初めて見た
鮭、美味ぇよな!
よーし、獲って獲って獲りま――え?火?いいけど…?
そんな危ねぇか?(首傾げ
手際良く火を起こしつつ(野戦経験豊富)見守る
…狼…そういう使い方もあるのか…
でもオーバーキルに…はなってねぇな
寧ろ苦戦してねぇか…?
少しハラハラしつつ火鋏振り回しながら応援
頑張れ藍夜ー!行けっ!そこっ…ああー惜しい…!
勝利したら感動&拍手&抱き留め
お疲れ様、藍夜!大物獲れたな!!
火の準備は万端だぞ
尻尾ぱたぱた
よーし、食おう食おう!
藍夜が獲ったんだ
先に食いてぇところ選べよ
じゃあ俺はカマにする
藍夜、いい焼き加減だぞ(あーん
俺も食う
―ん、脂のってて美味ぇ!
漬け丼!?美味そう!楽しみだ
冷たい風が頬を撫でる北の大地、ザァザァと川の流れる音が響く。上流から水が留めなく海に流れ落ち、それに抗い遡らんとする魚達が銀色の光を輝かせながら跳ねるのは命の躍動そのもの。
「うわぁ……」
楊・暁(うたかたの花・f36185)は川の畔からその光景を目の当たりにすると、思わず口をポカンと開けて固まってしまったのだ。
「鮭の川上りって初めて見た」
想像していた以上に川を埋め尽くす魚達。しかも一匹一匹が大きい。
既に川で大渋滞を起こしてびちばたしている獲物達を前にし、御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)は特に腹がたっぷり膨らんでいる推定メスにロックオン。
(「今日は心音が喜ぶ美味いイクラ持ち鮭を捕る……!」)
心の中で決意する藍夜の心は割とテンションが高いが表情は普段と変わらず、ぽつりと呟くに留まり。
「絶対美味いに決まっているな、あれは」
「ああ、鮭、美味ぇよな! よーし、獲って獲って獲りま――」
狐の尻尾をぱたぱた揺らしながら暁は腕まくりをして前に進み出ようとした所――何故か藍夜は手でそれを制したのだ。
「すまん心音。火起こしを頼む」
「――え? 火? いいけど……?」
自分も鮭捕りするつもりだった暁は首傾げると、藍夜は水面で荒ぶる鮭に目配せして告げる。
「あの鮭では心音が怪我をする」
「怪我って……そんな危ねぇか??」
過保護すぎやしないだろうか、と疑問も感じるが。その気持ちは有り難く受け取るとして素直に身を退き、河川敷の石を集めて簡単に囲いを作るとその中に手際良く火を熾す。昔の野戦経験が役立つもので、焚き火は赤々と燃えて焼かれるお魚待ちスタンバイOK。体育座りして藍夜の漁を見守る事にする。
「さてお前達、仕事だ! 鮭獲るぞ!」
『アオォォーン!!』
冷気が増したのは大地に試されているせいではない。藍夜の喚び出した氷月狼の群れは暴風雪夜の内より出でる。流水すら凍りそうな空気を纏いながら氷狼は勢い良く川に飛び込み、その牙を魚に突き立て爪で岸に飛ばす……予定だったのだが。
「成る程、狼……そういう使い方もあるのか……。でもオーバーキルに――は、なってねぇな」
びちばたびちばた。
鮭も黙って食われたり捕まるつもりは毛頭無い。必死に流れに抗うのと同等に狼の攻撃に抗うのだ。
狼と鮭の大乱闘を見つめる暁は心配そうに藍夜に声をかける。
「寧ろ苦戦してねぇか……?」
「いける。やれる。――――――たぶん」
「たぶん、って」
「――くっ、強いな……! あいつら負けそうなんだが……!」
氷狼達が川に呑み込まれそうなその様子に藍夜も流石に任せっぱなしとは行かなくなってきた。片手に黒鷹握りしめ、川の縁に立つと跳んできた鮭をぶん殴って岸に飛ばす。
藍夜の参戦で『鮭の群れ vs. 氷狼達』のデスマッチも狼軍優勢に傾き出す。一際大きく腹の膨らんだ鮭を見つけた藍夜は氷狼達に淵まで追い立てさせる。
「頑張れ藍夜ー! 行けっ! そこっ……ああー、惜しいっ……!!」
その間も暁は火鋏をブンブンと振り回しながら応援。火の粉が散るのも気にならぬ程。
じゃぷん、と水飛沫と共に鮭が水面に飛び跳ねる。その瞬間を藍夜は見逃さない。思い切り振り上げた黒鷹の一撃が鮭の身を吹き飛ばし、岸へと打ち上げた。
「っしゃ、勝った……!!」
思わず空いた拳を掲げる藍夜。その決定的瞬間を見届けた暁は思わず立ち上がり感動と賞賛の拍手を贈った。
「お疲れ様、藍夜! 大物獲れたな!!」
「ん、ありがとう」
軽く水飛沫を受けていた藍夜は片腕で軽くハグしてから礼を述べ。狼達の力で多く獲った分は冷凍保存も完璧。持ち替えれば暫くは旬の味を楽しめる事だろう。
暁の用意した火の準備も万端。まずは新鮮な内に焼いて頂くとしよう。
火で炙る間も良い香りが周囲を満たす。ぽたぽたと余分な脂が落ち、銀色の川に焦げ目が付いていけばそろそろ食べ頃だろうか――藍夜は鮭が刺さる串を軽く回して確認し、そして告げる。
「心音、食うぞ」
「よーし、食おう食おう!」
尻尾ぱたぱたさせながら暁は頷き、そしてそうだと笑みを向けた。
「藍夜が獲ったんだ。先に食いてぇところ選べよ」
「ふむ……ならハラス」
「じゃあ俺はカマにする」
向けられた笑みに思わず藍夜も表情が緩む。
火から下ろされたホカホカの焼き鮭。ハラスの部分を箸で取り、暁は藍夜の口元に持っていく。
「藍夜、いい焼き加減だぞ」
あーん、と口の中に放り込めば、熱々なそれに慌てる様なリアクション。
「あっつ……! うま……!」
火傷しそうな熱さの向こう側に感じるは優しい旨味と甘味。切り身の塩鮭とは全然違う、生から焼いたからこそ味わえる絶妙な風味。
「――ん、脂のってて美味ぇ!」
暁も口いっぱい頬張って、その美味しさに目を細めて夢中になって食べている。その様子に藍夜も良かったと満足げに頷いた。苦労して獲った甲斐があったと言うものだ。
「さっき取り出した筋子は持って帰って漬け丼でもするか? 旨いぞ、きっと」
「漬け丼!? 美味そう!楽しみだ」
戻ってからも楽しみは続く――想像しただけで美味しいに違いないと暁は期待に胸膨らませるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
一年・彩
鮭!それは珊瑚色の秘宝!
食べ放題やったー!
一度でいいからやってみたかったんだよねえ鮭食べ放題…ほら、若い内に食えるものは食っとけって言うじゃん
部位にもよるけどこの時期脂乗ってて超美味しいし!
わぁ…鮭みっしり…うんうん、元気が良くて良いね良いね…
まあそれを今から食うんだけど!
威勢がいいのは嫌いじゃないぜ!
まずは焼鮭
こいつは塩焼きだなー脂と塩味が一緒に溶けていい塩梅
皮もぱりっと焦げ目をつけるとうーんこの苦み、溜まんない!
白米が欲しくなるよねえ
鮭と言えば石狩鍋も欠かせないよね、だって蝦夷だし
わあ…味噌の海で頭と切り身の鮭がダンシングしててキュン…
お味噌に鮭の出汁が溶けてこれはもう実家に帰ってきたって感じがして本当もう…実家UDCなんだけどネ!
チタ、タプ…?
えっ未知の領域だけど気になる…!
チタタプ、チタタプ…これは根気が入るねえ…でもその分絶対美味しいものが食べられるんだからうーん一石二鳥!
お鍋食べたけどお外でやると寒いからオハウってのにしようかなー
味付けはお任せしちゃお!
はあはあ鮭三昧…最高!
鮭――そう、それは珊瑚色の秘宝だと彼女は云った。
「食べ放題やったぁーっっ!!」
この話を聞いた瞬間、一年・彩(エイプリルラビット・f16169)は思わず両の拳を天に突き上げた。
え、そんなに喜ぶの??と梟神が見つめる先で彩はうんうんと一人頷き語るのだ。
「一度でいいからやってみたかったんだよねえ鮭食べ放題……!」
――そもそも滅多にあるシチュエーションでは無い。
「ほら、若い内に食えるものは食っとけって言うじゃん」
うら若き18歳の乙女。育ち盛りは過ぎたけど、まだまだお腹は空くし胃袋に限界は無いのである。
「部位にもよるけどこの時期脂乗ってて超美味しいし!」
多分ご飯が止まらないやつ。おにぎりでも持っていけば良かったと後で後悔する羽目になるのだろう。
そんな訳で転送された先。彩の目の前に広がる川の水面には銀鱗の輝きに溢れていた。
「わぁ……鮭みっしり……! うんうん、元気が良くて良いね、良いねっ……!!」
時々水面を跳ねる活きの良い鮭達の姿に感動し、ついつい見惚れる。
まあそれを今から食うんだけど! 視線はどちらかと言うと食欲に基づいた模様。
「威勢がいいのは嫌いじゃないぜ!」
びちばたびちばた。そんな彼女の思考が伝わったのかどうか、鮭達は益々もって水面を跳ね回っていた。
数刻のち。彩の前には捕獲された大量の鮭。どうやって捕ったかって? 考えるな感じろ。
「こいつは塩焼きだなー」
と一匹をまず三枚に下ろす所から調理は始まる。丁寧に銀色の鱗に包丁を入れれば、中には美しい赤い身が詰まっている。見るからに脂の乗ったそれに手早く塩を振り、馴染んだ所で串代わりの枝を刺して焚き火で直火焼き。
ぽたりぽたりと地面に落ちる余計な脂の焼ける香りが既に食欲をそそり、赤い身は徐々に文字通りのサーモンピンクへと変化していく。銀色の皮もしっかりパリッと焦げ目を付ければそのまま頂ける事間違い無し。
「いただきまーす」
あむっと齧り付けば、口の中に広がる旨味。脂と塩味が一緒に溶け込んで幸せな味わいに蕩けそう。
「うーん、皮もこの苦み、溜まんない! 白米が欲しくなるよねぇ……」
どうせなら炊きたてご飯が欲しい所。何故米と飯盒持って来なかったと思うも、鮭がメインで鮭しか考えて無かったし致し方ない。それに胃袋を鮭で満たすなら余計なものが入る余地など、ない。
次に彩が作るは鍋。鮭と言えば石狩鍋である。何せ蝦夷だし。
切り身もアラも全部鍋に放り込み、味噌仕立てでぐつぐつ野菜と一緒に煮込む。冬のこの時期は白菜が美味しいが、玉ネギやキャベツ等の西洋野菜も一緒に煮込むのが北海道流なのだとか。と言うのも北海道の郷土料理は殆どが明治以降に出来たものが故らしい。
「わあ……味噌の海で頭と切り身の鮭がダンシングしててキュン……」
川で水面に飛び出る鮭を横目に鍋で汁面に踊る切り身を見る。何と言う幸せ。
おたまでよそってまずは汁から頂けば、ぶわぁっと口いっぱいに広がる風味。お味噌に鮭の出汁が見事に溶け込み、野菜の旨味がハーモニーとなって引き立ててくれる。
「これはもう実家に帰ってきたって感じがして本当もう……実家って言ってもUDCなんだけどネ!」
そう言えば、味噌鍋ならと梟神がバターを渡してくれていた。器によそった鮭と味噌出汁の中に少し投入し、恐る恐る食べてみると……。
「――!!!?」
声にならぬ声。味噌も鮭もバターの甘いまろやかさと融合する事で更なる甘味と旨味を引き出されるでは無いか。
「バター……酪農王国、恐るべし……」
なお、鮭のチーズ焼きなども道民としてはお勧めしておくと帰還後に梟は彼女に語った。
「チタ、タプ……?」
アイヌの伝統料理とは聞いていた。本来は複数人で作るものらしいが、未知の領域が気にならない筈が無い。
作り方やり方は全部調べて来た。ありがとうUDCのインターネット。ググれば大体分かるものだ。
「チタタプ、チタタプ………」
小さなまな板の上に鮭のアラから身からを載せ、包丁二本を両手に持ってトントンとリズム良く叩いて刻んでいく。言わばミンチを手作りするようなもの。これは根気がいる。
「……でもその分絶対美味しいものが食べられるんだから、うーん、一石二鳥!」
二鳥の片方は美味しいものだと思うが、もう片方は何なのだろう。この体験そのものだろうか。骨も内臓も全部纏めて刻み叩く事で、栄養全て、その命全てを頂く――先住民達のそんな思いが伝わってくる気がした。
さて、出来たチタタプは団子にして軽く塩で味付けした汁に投入。
「お鍋食べたけど……寒いからオハウってのにしよう」
アイヌの鍋料理と聞くオハウ。ネギも加えて火を通せば、澄まし汁に鮭の旨味が溶け出してさっぱりしつつも深みのある味わい。味噌仕立てとは違い、鮭そのものの風味が口いっぱいに広がった。
「はああぁぁ……鮭三昧……最高!!!」
お腹いっぱい胸いっぱい。
鮭ですっかり胃を満たした彩はごろんと枯れ草の地面に寝転がる。
寒さを忘れる程、身も心も温かく満たされていた。
うっかり寝そうにならない様に――これから熊が来るから、ね?
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ヒグマの群れ』
|
POW : 暴食の牙爪
【鋭い爪による斬撃や巨大な口による噛み付き】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : 凶乱の暴風
【見るもの全てが敵に見える狂乱状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ : 肉食獣の咆吼
【鋭い爪による斬撃や巨大な口による噛み付き】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【大きさ二倍の体躯】に変身する。
イラスト:元町
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
美味しく鮭が調理される匂いに釣られて奴らはやってきた。
∩___∩
/ ● ● ヽ
| ( _●_) ミ クマー
ヒグマである。そろそろ冬眠時期の筈だが、雪降るギリギリまで腹拵えをして巣ごもりしようと言う食欲旺盛なクマたちである。
彼らは自分の縄張りと一方的な主張を以て猟兵達に襲いかかるのだ。この川の鮭は我らのものだ、と言わんばかりに。鮭を捕った猟兵達はこのヒグマとの戦いはまず避けられないだろう。
追い払うだけでも良し、気絶させて放置も良し、がっつり倒して美味しく頂くも良し。
ちなみにこの時期のヒグマは冬眠に備えてドングリしこたま食って肥えているので肉が美味しいらしい。
集団戦だが、各々の所に同時多発的に出没するだけなので一人一頭を相手にして頂ければ良い。
一頭でも充分強いので心して戦え、とコタンクルカムイは見送った。
沢山のヒグマ相手に無双したいなら止めない。難易度跳ね上がるけどな!!
そんな訳で、蝦夷地年末大決戦。
> 猟兵軍 vs. ヒグマの群れ <
ファイッ!!(ゴング音)
山立・亨次
……ヒグマか
いや、話は聞いてたけどな
実際遭遇すると気が引き締まる
真っ向勝負だ
真っ直ぐ立って、低く唸りながら相手の出方を窺う
攻撃はよく見て対処しよう
そこまで複雑な動きはしねぇ筈だ
回避する時も『逃げている』感を出さないよう、極力最低限の動きで
自分より弱い存在だと、そう相手に思わせないことが大事だからな
カムにも視肉を飛ばさせて援護させながら
森人の叡智(包丁)で着実に弱らせていこう
油断なく相手の消耗具合を確認して
確実にトドメを刺せる見込みが立ったら
ユーベルコードで狙っていこう
悪いが、俺の方が強い
――いただきます
(自分にも、相手にも言い聞かせるように、宣言し)
さて、少し席を外す
霊送りがあるからな
帰ってきたら、熊料理作って振る舞おうか
「……ヒグマ、か」
山立・亨次は目の前に現れた黒き巨体にコクンと唾を呑む音を己で感じた。
キムン・カムイ――山の神とあの梟は言っていたか。成る程、確かにこの自然溢れる山の神に相応しい威容。話に聞いていたとは言え、こうして実際に遭遇すると何とも気が引き締まる。
『グルル……』
「ウー……」
真っ向勝負。唸り声上げる熊に対し、亨次もまた真っ直ぐ立ったままに低く唸り返す。
睨み合い。双方退かぬ姿勢にて互いに相手の出方を窺うかの如く。
『グアアァァッ!!』
先に動いたのはヒグマの方であった。その巨大な口を開け、鋭い爪を大きく亨次に向けて振り下ろしてきた。
その動きは単純至極。亨次はその爪の軌道を逸らす様に手にした包丁を構え受け流すだけで良かった。
『ガァァッ!!』
柔は剛を制す――極力動きは最低限。けして彼は退かぬ。この自然界において、逃げるものは即ち弱者であり敗者。自分よりも弱き存在だと認識された段階で勝敗が決まる。
受け流した先から包丁「森人の叡智」が熊の肉を削ぐ。表面の毛皮を剥ぎ取る様に入る切り目、血管より溢れ出る血が周囲に散る。
再びヒグマが亨次を頭から齧り付こうとする。が。
ぷぷぷぷぷ。
後ろに置かれたリュックの上。ミニチュア視肉のカムが文字通り己の身を削った遠距離攻撃で亨次の援護。
『ウガァッ!』
「気を取られたな?」
その隙に亨次の得物がヒグマの喉元を突く。太い動脈を断ち切った感触。引き抜いた先、死に物狂いのヒグマの次の爪は数歩横に動き回避。体勢だけはしかと保つ。あの爪は、牙は身を崩した時に受けては危険すぎる。
真正面から立ち向かいながらも、亨次の攻撃はまるで獲物を生きたまま解体して行くかの如く。腱を断ち、皮を削ぎ、血を抜く――消耗していくヒグマの様子を見ながら届かせる包丁にはカケスの神霊が宿る。
「今から、お前の命を……"頂く"」
狩猟神饌・直会……ユーベルコードの域に達したその包丁捌きはオブリビオンであろうと食材へと変えるもの!
「悪いが、俺の方が強い」
たった一言。亨次は返り血を拭う事無くヒグマに告げた。
『が、ぐぉぁっ!?』
言葉が通じずとも、熊は本能で解ったのだ。己は今、食われる側に――被捕食者に回ったのだと。
傷だらけになりながら、ヒグマがその身を翻す。漸く逃げるに思い至ったか。だがそれも既に遅い。
「――いただきます」
自分にも相手にも言い聞かせるかの様な、たった一言の宣言。
食とは即ち、命を頂くと言う事なのだと体現するかの如き包丁捌き。トドメ刺されたヒグマは息絶え、その肉は無事に勝者であり捕食者たる亨次のものとなったのだ。
熊の肉を調理する前に。亨次は森の奥に足を運ぶ。
霊送り。
蝦夷地の先住民族は、獲物とした動物は地上に来た神であり、肉は土産物であると解釈していた。
このヒグマも|山の神《キムン・カムイ》である――なれば送り返すのが礼儀であろう。
「さて、熊料理作って振る舞おうかね」
他の猟兵達も熊に襲われ、各々死闘を繰り広げている事だろうが。
猟理師たる彼ほど上手くジビエに精通し、その場で作れる者はいない筈だ。
冷え込む北の大地。熊肉鍋の味わいはさぞかし身に染みて温まる事であろう。
大成功
🔵🔵🔵
御簾森・藍夜
【朱雨】
熊だ
…熊だ!生、熊…!
見ろ心音、あれがヒグマか?なるほどでかい
へぇ肉
…肉かぁ
…いいな、肉
ジビエというのも近年流行り始めているし興味のある部門だ
…心音、熊獲りに行くぞ
触れられたくない…だが心音に目を付けられるのも…
しかたない…行くか
ほぼ同じ高さの熊の顎を一発殴り組み合いUC
心音、こいつ止めないと向かってくるぞ
(割口より本気で力一杯止めている)
暴れたいだけ暴れておけ
花を散らすほど“ぬいぐるみ”同然だ
燃えて散れ
おっと…転んだら危ないだろ、心音(受け止め笑って
なに、俺は一人じゃないからな
鍋には具が足りないし炙りで味見るというか…どうバラしたら?
余りは期間限定にしてうちでジビエサンドとか出すか?
楊・暁
【朱雨】
本当だ…!実物初めて見た
ジビ…あいつオブリビオンじゃ…?
…まぁ、いっか!熊なら食えるよな!(肉好き
おう!獲りに―って取っ組み合いかよ!?
藍夜お前銃持ってるだろ!?
出遅れたし突っ込み所多すぎるし
風景と状況がシュール過ぎて言葉もねぇ…
…え?あっ、ああ
そうだ止めねぇと
真横に刀構えUC
花にも藍夜にも当てない様に熊の背へ炎を
どうせ後で焼くんだ
同じだろ
お疲れ様、藍夜(抱きつき
大丈夫
俺よりお前だ。無茶しすぎだろ…怪我したらどうすんだ
心配で見上げ
次の言葉にはほわり笑み
…で、こいつどうする?やっぱり鍋か?
まぁ他の動物の解体と似てんだろ(懐刀出しやる気満々
いいな!ジビエサンド
―じゃあ、まずは味見といくか!
川の側にのそりと現れたその巨影に、御簾森・藍夜は一瞬固まった。
「熊だ」
最初はその一言のみ。だがそれが現実だと認識した途端、表情を変えぬまま声だけは確実に興奮を帯びていく。
「……熊だ! 生、熊……!! 見ろ心音!!」
「本当だ……! 実物初めて見た……!」
心音、と本来の名で呼ばれた楊・暁もまた、向こうに見える黒き巨体に目を見張った。
「あれがヒグマ……か? なるほどデカい」
茶髪の梟が言っていた気がする。身長190cmある藍夜より大きいと。山の神・|ヒグマ《キムンカムイ》は毛皮と肉を纏って人里に遊びに来るのだと。
「へぇ、肉……かぁ」
「藍夜……??」
ポツリと傍目には脈略無い呟きに暁はキョトンと首を傾げる。
「……いいな、肉。ジビエというのも近年流行り始めているし興味のある部門だ」
「ジビ……あいつオブリビオンじゃ……?」
「ブルーアルカディアでは魔獣と呼ばれるオブリビオンを食用にしているとも聞く。同じ様なものだ、問題無い」
ここはサムライエンパイアだ。そんな同じ様に考えて果たして良いのだろうか、と暁は一瞬思考するも。
「…………。……まぁ、いっか! 熊なら食えるよな!!」
ドラゴンとか虫とかじゃ無いし。熊なら常識範囲だ。結局好きな肉の誘惑には耐えられなかった。
「そんな訳で心音、獲りに行くぞ」
「おう!」
今のところ幸いにもあのヒグマは二人の存在に気が付いているのかいないのか、川を昇る鮭を太い腕で掬って獲っている様子。豪快。
ゆっくり近づき距離を計りながら、藍夜はふと共に来た仲間をちら見して思う。
(「触れられたくない……だが心音に目を付けられるのも……」)
この小柄な少年(24)をあの熊の凶爪の前に晒して良いものか、と。
仕方無い――そう思った瞬間、藍夜は暁より先に足を踏み出しており。
がすっ!
『グマァァッ!?』
ほぼ同じ背丈の熊に対し、藍夜はその顎に一撃拳を叩き込んでいた。
「――は?」
今、素手で熊に殴りかかった?? 暁は言葉がそれ以上出ず、一瞬固まった。
「さぁ踊ろうか――」
藍夜は熊の突進を抑える様に組み合い、同時にユーベルコードを発動――世界は万斛の月来香花開き、満月昇る明けぬ夜へ。さながら藍夜と熊は月下に踊る二人の如く――……。
「いやツッコミどころしかねぇだろ!!??」
森でクマさんとダンス、と言えばメルヘンチックだが。目の前は生憎リアリティ高めな凶暴熊との異種格闘技戦。風景と状況の激しきシュールさとツッコみどころの多さにそれ以上言葉が出てこなかった暁だったが。
「心音……こいつ止めないと向かってくるぞ……」
藍夜からの僅かに震える様な声を耳にして我に返る。
「……え? あっ、ああ――って取っ組み合いかよ!? 確か藍夜お前銃持ってるだろ!?」
良く見たら本気で力一杯止めているらしい。そもそも体格差は歴然。敢えて言えば、熊は足元の花を踏み荒らす毎にその力を減じていると言う事か。
『グオオォォッ!!?』
「暴れたいだけ暴れておけ」
今宵、花を散らす無粋は赦されぬ。
「花を散らすほど“ぬいぐるみ”同然だ」
それこそが藍夜の広げた|領域《フィールド》の力。目の前の青年を頭から喰らう事すら叶わぬ猛獣は唸り声を上げ続け、その手足を振り回すも何故か獲物の肉には爪が刺さり届かない。
「そうだ、うん、止めねぇと」
奇行にこれ以上ツッコミ入れる暇は無い。暁が真横に刀を構えると、その刀身から朧揺らめく焔が立ち上る。
「どうせ後で焼くんだ――同じだろ」
とん、と花を踏まぬ様に石の上を蹴って暁は剣を振り上げる。駆ける炎と斬撃は熊の背を捉え、焼ける臭いが立ち上ると同時に麻痺の効果が襲い。
「燃えて散れ」
力がガクンと抜けた所で藍夜は熊の首に腕を掛けると引きずり倒す様に地面に叩き付け。見事巨大熊を素手で仕留めきったのであった。
「お疲れ様、藍夜」
「おっと……」
駆け寄り抱きつく暁を受け止めながら、藍夜はその口元を緩めて告げる。
「転んだら危ないだろ、心音」
「大丈夫。俺よりお前だ。無茶しすぎだろ……」
怪我したらどうすんだ、と心配そうに見上げるその瞳は僅かに潤んでいる様にも見えただろうか。思わず苦笑いを浮かべながら、藍夜は安心しろとばかりに暁の頭に軽くぽふっと手をのせて。
「なに、俺は一人じゃないからな」
「藍夜……」
緩やかに花咲く様に心音は笑み浮かべ、再びぎゅっと相手の温もり確かめるかの如く抱きついたのだった。
で。目の前には仕留めた熊一頭。指さして暁は問う。
「こいつどうする? やっぱり鍋か?」
「鍋には具が足りないし炙りで味見でも……というか」
……どうバラしたら?と根本的な問題提起。そこまで考えて無かったのかと軽く呆れるものの、暁は懐刀取り出して熊に近付いた。
「まぁ他の動物の解体と似てんだろ。任せとけ」
やる気満々で血抜き開始。皮も丁寧に剥げば毛皮として高く売れるか、もしくは藍夜の店のオブジェにしたって良いかも知れない。
「余りの肉は期間限定にしてうちでジビエサンドとか出すか?」
「いいな、ジビエサンド!!」
この巨体から一体何キロの肉が獲れるのやら。先程鮭を焼いた焚き火を再び起こし、まず炙ってみれば癖もありそうだが美味しそうな香りが立ちこめる。
「じゃあ、まずは味見といくか!」
「ああ、いただきます、と」
命に感謝する様に手を合わせてから齧り付いた炙り肉、不思議と濃厚な旨味が二人の口いっぱい広がって。
同時に力が漲る気がしたのは死闘の疲れが肉で癒されたから、なのかも知れない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
マリアベラ・ロゼグイーダ
エドワード(f28411)もとい兄さんと一緒
アドリブ連携可
あら本当、兄さんの同類がきたわ
釣り針に引っ掛かってた誰かさんに比べて鮭が取れる分熊としては上の存在ね
でもあれね。あちらはなんだか殺る気満々ね。怒らせることした記憶が無いのだけれど…
ならここは大人しく
ナワバリバトルよ
|私《兎》の方が強いって事はっきり分からせてやらないとだわ
狂乱状態に陥っている熊の攻撃を見切りと武器受けを使いながら近づき、傘の範囲内に入ったらUCで攻撃よ
今日は鮭と熊汁が食べられるのね、最高だわ
兄さんに止められて命は取らないでおきましょう
……っち。命拾いしたわね
代わりに鮭一本持っていくわ。熊鍋の代わりに鮭汁堪能するわよ
エドワード・ベアトリクス
マリアベラ(f19500)ことマリーと行動
アドリブ連携可
おい熊が来たぞ…って誰が同類だ誰が
この姿になる前から鮭など取ってないわ!
あちらは先住の民、ここは退くぞマリー…おい何故武器を構えるのだ
縄張り争い?明日の晩飯?それをわざわざ異国ましてや異世界でやる必要などどこに―あっもう遠くに行ってしまった
っていかん、マリーの四撃目が当たる前に攻撃を制止させるぞ
落ち着け、縄張りを広げた所で管理できないしこんな大きな熊どうやって持っていくのだ。巨体すぎて(多分)グリモアベースに持っていけんぞ!?
なんとか宥めたら熊にUCを使用し、回復かねて眠らせる
その間に撤退だ
うん…鮭一匹位なら持っていけるのではないか?
「おい熊が来たぞ」
鮭捕り放題の話にやってきたエドワード・ベアトリクス(運命の王子様(くま)・f28411)は、川の近くまで来た所で黒い巨影を見つけて共に来た妹に声を掛けた。
「あら本当、兄さんの同類がきたわ」
マリアベラ・ロゼグイーダ(薔薇兎・f19500)が首を傾げてそちらを見やり、ちらりとエドワードと見比べれば。明らかにむすっとした声色で彼は告げるのだ。
「誰が同類だ誰が」
どっちもクマである。向こうはリアルクマでこっちはデフォルメクマではあるが。そもそもエドワードは己がクマである事に不本意なのだ。
「しかも釣り針に引っ掛かってた誰かさんに比べて鮭が取れる分熊としては上の存在ね」
「そんな罠にクマー……いや違う! それに鮭などこの姿になる前から取ってないわ!」
さっき捕らえた鮭の尻尾を掴みながらマリアベラの台詞に逐一ツッコミを入れざるを得ないエドワード。鮭漁に精を出す王子様とか想像するだけであまりにひどい。
「でもあれね……あちらは何だか殺る気満々ね」
怒らせることをした記憶は無い、と首を傾げるマリアベラ。だが少なくとも向こうのデカい熊は鼻息荒く前傾姿勢。今にも噛み付いてきそうな凶悪な面を此方に向けている。
「そりゃ、あちらが先住の民が故、だろうな?」
縄張りを荒らす余所者に対して敵意を向けているのだと言う熊の気持ち、熊の姿でなくても解る、流石に。
「ならここは大人しく――」
「ああ、ここは退くぞ、マリ……」
「ナワバリバトルよ」
「…………。いや。おい。待て。なんで武器を構えるのだ」
傘を構えた妹の言動にエドワードは困惑の声を上げるしか無かった。
「|私《ウサギ》の方が強いって事はっきり分からせてやらないとだわ」
「あ、おま――……!」
短い手を伸ばしたのも虚しく。エドワードの制止が入る前にマリアベラはヒグマに向かってまっしぐらに駆け出していき。既に狂乱状態に陥りつつある熊の爪を傘で受け流しながら懐に潜り込む!
「今日は鮭と熊汁が食べられるのね……最高ね!」
縄張り争い? 明日の晩飯? エドワードは妹の行動原理に呆れを通り越して一瞬宇宙熊状態。わざわざ異国、ましてや異世界でそれをやる必要がどこにあると。一言で言うと「WHY??」である。
『グオォォォ!!!』
「ふふ、ごきげんようヒグマさん。そしてさようならね」
連続した突きがヒグマに刺さる。一突き、二突き、そして三突き。赤き薔薇の花弁はまるで血の色。一撃毎にヒグマの足元がおぼつかなくなっていくのが解る。
だが、最後の一撃――が決まる寸前。マリアベラの腕にエドワードが飛びつき、攻撃を強制制止させた。
「止めないで兄さん、あと少しだったのに!」
「いいや落ち着けマリー。縄張りを広げた所で管理出来るのか。それにこんな大きな熊をどうやって持っていくのだ」
マリアベラの攻撃の代わりにエドワードはヒグマに向けて花々を風に乗せて放つ。ずぅんと倒れたその衝撃だけで地面に震動が走り、兄妹の身体も一瞬地面から浮いた。
「……この巨体、グリモアベースにも持っていけんぞ?」
「……っち。命拾いしたわね」
傘の先ですっかり眠りに落ちたヒグマの頭をつついたマリアベラ。兄の使った技……回復も兼ねた眠りの花香、そうそう目覚める事は無い筈だ。
「今の内に撤退するぞ、いいな」
「そうね。代わりに……鮭一本持っていきましょ」
見ると川から勢いで飛び出てビチバタする鮭の姿。ひょいと尻尾掴んで身を抱えればなかなかの大きさ。
「ん……鮭一匹位なら持っていけるのではないか?」
「熊鍋の代わりに鮭汁堪能するわよ」
楽しみだわ、と兎耳をピョコピョコさせるマリアベラの笑みに、エドワードは肩を竦めつつも釣られて笑うしかなかったのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
サーラ・ビアンコ
怜惺(f31737)とじゃ
夢中で鮭を捕っていたら、近くに何やら獣の気配
顔を上げると川の向こう側で明らかに怒り狂った熊さんとご対面
く、熊じゃの
妾この大きさは流石に…いや、妾も猟兵。勝てぬ敵では無い筈…なのじゃが
…大きいのぅ。これはちょっと怖いぞ
そんな時に遠くから熊と睨み合いを続ける妾を呼ぶ声
おお、味方!!りょーせーぇ、熊怖いのじゃー助けるのじゃー
引き付けるのも気にせず駆け寄り肩に飛び乗って
髪の中に隠れる様に埋もれ
鮭はちゃんと確保したのじゃ
こうなったらあの熊も鍋にしてやるのじゃ!
味方が来たのでやる気全開で毛針を飛ばし威嚇と牽制を
怜惺、止めは任せるのじゃ!
熊は食べるのに後でちゃんと回収するのじゃぞ
樹・怜惺
サーラ(f27059)と
鮭取りに行くっつって飛び出してったンは良いんだけどさァ
持って帰る方法なくね?ってなったので迎えに
おーい…何かピンチかアレ
鮭は収納ユベコ使ってると聞いて一安心
次は目の前に大問題ってな
めっちゃ熊じゃん
マジヒグマ?でけェなー
サーラ、ヨユーで一口じゃね?
まあイイや、熊相手なら一寸は楽しめそうだなァ
しっかり掴まってろよサーラ!
毛針と同時に動き、筋肉の硬さ確認に数発殴ってすぐに離れる
うっわヤベェ、まあサーラがいるからさっさと終わらせるか
もう一回今度は足元に毛針飛ばして貰って
一撃必殺
鍋にして食ったるわコラァ!!
どつき倒した後は熊はサーラに収納させて、メニュー考えつつこの場を離れる
「鮭取りに行くっつって飛び出してったンは良いんだけどさァ」
寒っ、と身震いしながら北の大地に降り立った樹・怜惺(Guardiano della Dea Verde・f31737)は北風吹く海岸線を歩きながら周囲を見回し何かを探していた。
土産を待つのじゃ!(ふんす)と元気良く出て行った白い毛玉を思い返し、怜惺は暫くしてから思ったのだ。
――持って帰る方法無くね?と。何せ普通サイズのネコだし。鮭って多分彼女くらい有るし。
なら迎えに行ってやるか、とそんな軽い気持ちで彼はサムライエンパイアの蝦夷地にこうして出向いた訳だが。
「あ、見っけ。おーい……って」
目的のネコを見つけた怜惺は、その更に先に見えた巨体にうわぁと変な声を出した。
「何かピンチか、アレ」
そう、サーラ・ビアンコは大ピンチであった。
鮭を捕るのに夢中で近くまで接近に気付かなかったのは不覚。近くにまで来た獣の気配に顔を上げると、のそりと自分を睨み付けるヒグマと目が合った。
『グルルル……』
「く、熊じゃの……」
怒ってる。明らかに怒り狂ってる。オレサマの縄張りで何してくれてるんだこの野郎って顔してる。
思わず後ずさりしそうになった足を理性で必死に止める。動物だから解る。退けば負けを認めた様なもの。襲いかかってくる筈だ、と。
(「この大きさは流石に……いや、妾も猟兵。勝てぬ敵では無い筈……なのじゃが……」)
睨み合いを続けるクマとネコ。2mを超す背丈はあろうクマに対し、6分の1の大きさしか無いネコでは体格差がありすぎる。
(「……大きいのぅ。これはちょっと怖いぞ」)
尻尾を膨らませて頑張ってこっちも威圧してみるが、今にもくるっと尻尾を巻きそうなのを堪えていたその時。
「あ、見っけ。おーい……って」
「!!」
聞き慣れた声に振り返れば見慣れた金髪長身の仲間の姿。
「おお、味方!! りょーせーぇ、熊怖いのじゃー! 助けるのじゃー!!」
ダダッと脇目も振らずに怜惺に向けて猛ダッシュするネコ。ヒグマが追い掛けてくるのも忘れてまずは合流に一目散。
「うっわ、めっちゃ熊じゃん」
「そうなのじゃ、来てくれて助かったのじゃ」
ぴょーんと怜惺の肩に飛び乗ったサーラは彼の長い髪の中にモゾモゾと隠れる様に潜り込む。
「マジヒグマ? でけェなー……サーラ、ヨユーで一口じゃね?」
『ぐまぁぁぁ!!!!』
オレサマオマエマルカジリ。怜惺の頭すらも一口で囓ってきそうな巨大な頭部が迫って来るも、この青年は動じない。
「まあイイや、熊相手なら一寸は楽しめそうだなァ」
両手の指をパキポキ鳴らしながら怜惺は構えた。腕っ節なら負ける気はしない。
「そう言えば鮭は……?」
「ちゃんと倉庫に確保したのじゃ! こうなったらあの熊も鍋にしてやるのじゃ!」
虎の威を駆る何とやら。先程までひたすらビビってたサーラも怜惺の髪に隠れて安心したのか強気に鍋宣言。尻尾を振るうと毛針が次々と放たれ、熊の目玉や口や鼻目掛けて突き刺さる。
「しっかり掴まってろよサーラ!」
同時に怜惺が動く。熊の身体を試しに数発拳を叩き込んで相手の硬さを確かめながら素早く間合いを取った。
「――って硬ェなこいつ!」
「妾が牽制を続けるのじゃ! 頑張るのじゃ!!」
「ンだな。さっさと終わらせるか。次は足元頼むわ!」
サーラに告げ、怜惺は再び強く地を蹴った。
金の毛針が熊の剛毛の隙間を縫ってその皮膚に突き刺さる。
『ギャッ』
小さな傷でも痛みは痛み。熊が一瞬怯み、体勢を崩した今がチャンス!
「怜惺、止めは任せるのじゃ!」
「鍋にして食ったるわゴラァ!!」
一撃必殺の拳が正中線たる熊の鼻先に喰らい付く。人間でも急所であるそこに破壊の拳をまともに喰らったヒグマは頭蓋骨をも破壊される衝撃と共に、その巨体を仰け反らせて大地にずぅんと仰向けに沈んだのであった。
「……はぁ、はぁ、やった……か??」
「やったのじゃ! エラいのじゃ!!」
てしてしと怜惺の肩を叩いて勝利にはしゃぐサーラ。
死んだのを再三確認されたヒグマは、無論、彼女の秘密倉庫に収納されてお持ち帰り。
「ヒグマの肉も美味いと言っておったのぅ」
「ああ、どうやって食うか考えねェとなー」
晩ご飯を色々考えながら、一人と一匹は帰路に着く。きっと丸ごとヒグマ肉お持ち帰りに、土産を頼んだ梟神も目を丸くする事だろうから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵