フェルマーの最終炒飯~レシピを書くには余白が狭すぎる~
●とある物理学者の野望
「ちっ、まだ理想には程遠いな」
自宅で1人、舌打ちをしている男がいる。名は神田・レイ。東条大学工学部産業物理学科で准教授として教鞭をとっている物理学者だ。だがその外見は物理学者のようには見えない。切れ長の目に滑らかな鼻筋、金髪と、ともすればホストクラブにいても違和感がないルックスで、女子生徒からの人気も高かった。
だが、その彼は今、苦悩で表情を歪めていた。
「理論は完璧だと思っていたが……何か足りないのか、これは」
ブツブツと呟きながら、レイは目の前の物体に目を落とす。
「後1手……いや、2手足りないと踏んでいるんだがな」
その時である。
「ぼうやよ ぼうや かわいいぼうや 学問の徒の 賢いぼうや」
謳うような声が辺りに聞こえてきた。
「……誰だ?」
「あなたの望みを 言いなさい 求めるものを 言いなさい」
次の瞬間、レイは即答していた。
「よろしい、ならば炒飯だ」
「全知を授けt……はい?」
その答えに、謳うような声は突如として謳うことをやめ、聞き返していた。
「聞こえなかったのか。炒飯だ。俺が目指す理想の炒飯、そう、フェルマーの最終炒飯の実現に向けて協力してもらう! さぁ姿を現せ! そして台所に立て!! 炒飯を作るぞ!!」
「……はい???」
レイに急かされるように姿を表したのは白い仮面を被ったドレス姿の女性である。困惑した表情のままキッチンに立たされた女性は周囲を所在なさげに見回す。
「あの、これは」
「俺は常日頃から考えていたのだ、俺の理想とする炒飯の実現には後3手足りないと。その3手を見つけ出すためには研究助手がいなければ始まらん。炒飯4千年の歴史に新たな1ページを刻むために、俺は悪魔にだって魂を売る覚悟でいる。お前はその炒飯の悪魔なのだろう!!」
「いや、違──」
「ならば今すぐ権能を修正しろ!! 今日からお前は炒飯の悪魔だ!!!」
レイの目の前にはパラパラに炒められた白米、ふわふわのスクランブルエッグ、刻みネギ、チャーシューが混ぜ合わされた料理──即ち、炒飯が置かれていた。レイは自分の部屋に突如出現した女性の肩をがっしりと掴み、爛々と輝く瞳を向けて告げた。
「さぁ、始めるぞ──俺のライフワーク、フェルマーの最終炒飯のレシピの証明を!!!」
「たすけて」
思わずヘルプコールする女性。しかしそれに応える者はいなかった──。
●物理学者の異常な愛情 ~または彼は如何にして心配するのを止めて炒飯を愛するようになったか~
「うん、相手が悪かった」
ベルゼ・アール(怪盗"R"/Infected Lucifer・f32590)は遠い目をしていた。
「あの神田・レイって物理学者、私が籍を置いてる大学の准教授なんだけどね? 20代後半で准教授っていう割りと凄い人なんだけど……同時に無類の炒飯好きでもあるのよ」
どれくらい炒飯が好きなのかと言えば、ライフワークとして「フェルマーの最終炒飯」なるレシピを研究したり、半年近く自炊は炒飯だけで生活したりと、その炒飯への愛情は異常なものがあったのだ。
「で、それに運悪く巻き込まれたのがエンドブレイカー世界からやってきたマスカレイドの『白婦人』。ジャグランツっていうバルバを作り上げた魔女の1人で、アクスヘイムでの戦いで中にいた「ジャグランツの王」共々エンドブレイカーたちに討たれたんだけど……エリクシルによって復活したみたいなのよね」
その際に願いの力を移植されたらしく、本家エリクシルと同様に願いを歪んだ形で叶えるのだが、今回はどうも人選に致命的な誤りがあったようだ。レイの願いは「フェルマーの最終炒飯の証明」。あまりにもわけがわからなさすぎて曲解しようにも情報が無さ過ぎた。「世界一の炒飯を目指す」のであれば他の炒飯屋を滅ぼすなどまだ曲解のしようがある。しかし彼がライフワークとしている「フェルマーの最終炒飯」なるブツはその概念を完璧に理解できているのがレイ本人のみのためどう願いを叶えて良いのかすら不明、しかも実現の近道は結局地道な検証と研究が最適解らしく、結果として白婦人はレイの言うがままに行動するしかない。今、白婦人はレイの言うがままに炒飯を作らされ続けている。
「なんで、まぁ、白婦人はある意味被害者です。うん。ついでにいうとそのフェルマーの最終炒飯なる謎の炒飯の試食役としてジャグランツのような獣人UDCが大量発生したのよ。しかも鳴き声が『チャーハン』になるおまけ付き。一応UDCなんでUDC組織がカバーストーリー敷いてタワーマンションの住人を退避させてて、機動部隊も投入して確保・収容を行おうとしてるんだけど……さらにカオスが上乗せされたの」
すでにこの時点でお腹いっぱいなのだが、さらにお代わりがあると聞かされて猟兵たちの目のハイライトは消えていくばかり。
「このタワーマンション、ひとつ事故物件があったのよ。しかもその事故物件に棲み着いてたのがよりにもよって大祓百鬼夜行の時にカクリヨに退避し損ねた妖怪で。なんか神田先生の炒飯への情熱に当てられて『炒飯食うまではとりあえず居座る』って言ってるらしいのよねぇ。なので、自作でも出前でもなんでもいいからとにかく炒飯食べさせてカクリヨに送還するしかないわね。あるいは彼女、カードゲーマーだからカードデュエル挑んでも良いかもしれないわ。ほら、以前大祓百鬼夜行の時に協力してくれた妖怪のプロプレイヤーがいたじゃない。彼女が件の妖怪よ」
放っておくと妖怪もレイかエリクシルに目をつけられかねないため、急ぎ離脱させる必要がある。しかしどいつもこいつも炒飯脳と化した上に3つの世界が絡む混沌とした状況。猟兵たちはすでに油分たっぷりのメガ盛り炒飯を3杯ほど胃袋に叩き込まれたような心持ちである。
「説明だけでお腹いっぱいな気持ちはよーくわかるんだけど、この後実際に炒飯地獄が待ってるからね、覚悟してちょうだいね」
ダイエット中の人は無理して行かなくてもいいから、とベルゼは断りを入れた上でグリモアを操作しポータルを開く。一人の物理学者によって引き起こされたカオスに収拾をつけるべく、猟兵たちは半ばグロッキー状態といった面持ちでポータルの向こう側へと足を踏み入れるのであった。
●炒飯大好き小豆洗いさん
一方その頃、レイが住むタワーマンションの別の一室では。
「私は立ち退きには断固として反対よ! まだ港区の中華料理屋で炒飯食べてないもん!」
トンチキな事を口走る妖怪「八尺様」がいた。長身の女性で白い服を身に纏っている。彼女はTCG「デュエリストブレイド」のプロプレイヤーで、その筋の人間からは「女流最強コントロール」と言われる程の腕前の持ち主だった。プロチーム「Creepy Pros.」の中核メンバーでもある。彼女が生み出したコントロールデッキ【チャイルドロック】は数多の大会で結果を残したことでも有名だ。
「あ、横浜中華街の炒飯もいいわね、今度食べに行こうかしら……ついでにあっちのカードショップも覗いてみたいし……」
常人離れした長身であることを除けば完全に時間を持て余した若い女性といった風なのだが、彼女の脳味噌は今や炒飯とデュエリストブレイドに支配されている。レイの炒飯への情熱が伝染してしまったらしい。もっとも、店売りであるのだが。
果たして、彼女を待ち受ける運命や如何に──。
バートレット
どうも、バートレットです。
※WARNING※
このシナリオはトンチキシナリオです。深く考えると脳がばくはつします。
頭を空っぽにして炒飯を食べながらご参加ください。
ということで、エリクシルを巻き込んだ物理学者の壮大な野望(炒飯)を食い止めるお話です。
え? この物理学者を新宿で見たことがある? 大丈夫、同姓同名の良く似た別人です。
第1章では現場となったタワーマンションの一室に居座る妖怪「八尺様」をなんとか説得して逃がすことになります。選択肢は2つで、「炒飯を作るか出前を取って差し入れる」「カードデュエルを挑む」です。カードデュエルを挑む場合はアスリートアースのカードデュエルと基本は一緒で、ユーベルコードや装備品をカード化して戦うことが可能です。ただし彼女はプロプレイヤーであり、相応に強いため覚悟して臨みましょう。炒飯に満足するか、誰か1人でもカードデュエルに勝利すれば彼女はカクリヨファンタズムへの避難を受け入れます。ちなみに過去に登場した八尺様については以下のシナリオをご参照ください。
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=35286
第2章では集団敵「街を往く獣人」との戦いです。UDC組織の機動部隊が駆けつけてきますので、彼らと協力してジャグランツに似た獣人UDCを全員確保、収容しましょう。なお神田教授の精神影響を受けているためなんか凄いことになってます。詳細は断章にて説明します。
第3章ではいよいよ神田先生と「白婦人」との決戦です。フェルマーの最終炒飯の証明を邪魔されたと判断した神田先生はついに(嫌々従わざるを得なくなってしまったかわいそうな)白婦人と共に実力行使に打って出ます。この狂った状況から白婦人を開放してあげましょう。白婦人を倒すと神田先生も多分冷静になるんじゃないでしょうか。あるいは「よくもこんなトチ狂ったことしやがって」とツッコミの一発を入れてもバチは当たらないかもしれません。
第1章はOP公開と同時に募集開始です。第2章、第3章は断章公開後プレイング受付を開始します。締切等、プレイングの受付状況はタグにてご確認をお願いします。また、MSページに諸注意等記載しておりますのでご一読頂けますと幸いです。
それでは、皆様のアツいプレイングをお待ちしております!
第1章 冒険
『誰を呼ぶ?!ゴーストイェーガーズ!』
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POW : 歌やダンス、場を盛り上げるパフォーマンスで幽霊を追っ払おう!
SPD : 兵器や装置、科学知識や優れた技術を用いて物理的除霊!
WIZ : 荘厳な儀式や呪術、霊的なる力で除霊し浄化しよう……
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
尖晶・十紀
あ、これあれだ。変人と天才は紙一重、って奴だ。
かき卵とカニカマのシンプルな炒飯を【料理】して振る舞うよ
炒飯は油と火力が命、炎が立つくらいの強火で一気に【焼却】し短時間で火を通して。
フライパンのあおりは【パフォーマンス】だけじゃない、米がパラパラになる効果もある……
と、そうだ。折角だしレイの炒飯も食べて貰おうかな?炒飯について研究してるらしいし、多分きっと味は保証できるはず。レイにとっても他人(というか他妖怪)の意見が参考になるかもしれないしね
おまけに研究で大量に作った炒飯も消費できる……Win-Winだ
アドリブ絡み歓迎
クール系切れ味鋭めツッコミ女子
アルジェン・カーム
白婦人…
嘗てアクスヘイムでは多くのエンドブレイカー達と死闘を繰り広げました
彼女が倒れた後も彼女が産み落としたギルバニア…共に恐るべき脅威でした
それが…ちゃーはん?
何故そうなったのでしょうか(苦悩
それはそうと…お腹が…空きました
…炒飯…?
僕自身も興味がありますので折角なので僕の分も頼んで頂くとしましょう
それに…僕自身も美味しいものは好きですからね?
組織の方にも美味しい炒飯の出前を聞いておくとします
ええ
僕はそのゲームに関しては経験がないので差し入れに参りました
僕もちゃーはんというのは初めて食べるので食すとしましょう
では…頂きます
味や隠し味など熱心に研究しつつもその美味しさを心の中で熱く語ります(?
●炒飯とはなんぞや
「あ、これあれだ。変人と天才は紙一重、って奴だ」
一瞬にしてレイの人となりを一言で表現する手段に思考が行き着いた尖晶・十紀(クリムゾン・ファイアリービート・f24470)。その一方で苦悩に表情を歪めるのはエンドブレイカー出身の猟兵アルジェン・カーム(銀牙狼・f38896)。当然だろう、何しろ自分たちが激闘を繰り広げた白婦人、そしてその中から産み落とされた「真なるジャグランツの王」ギルバニアとの激闘を繰り広げたエンドブレイカーの立場としては、なんでその白婦人が炒飯馬鹿にとっ捕まったのか意味がわからない。
「何故そうなったのでしょうか……」
そもそも、アルジェンは炒飯なる料理を知らない。そこで十紀がアルジェンの分も含めて炒飯を作って見せることにした。
「基本的にはご飯と具材を炒めたものなんだけど……」
かき卵とカニカマを使ったシンプルなカニチャーハンを作る十紀。強火で一気に炒めるのがコツである。フライパンをあおって中身を空中に浮かしながら手堅く仕上げていく。
「その動作には何か意味が? 見た目はかなり派手ですが」
「パフォーマンスってだけじゃないんだ。こうすることで米がパラパラになって美味しくなる効果がある」
「なるほど……奥が深いですね……」
完成したカニチャーハンを持って八尺様の元へ訪問する2人。
「炒飯差し入れに来たよ」
「あら猟兵さん。気が利くじゃない」
せっかくなので、と八尺様と並んでアルジェンは炒飯にありついた。
(なるほど、基本的には米を炒めることでその香ばしい風味を味わいつつ具との調和を楽しむ形ですか……しかしかき卵にカニカマ、そして米のシンプルな組み合わせながらそれ故にお互いの風味の邪魔をしない感じ、良いですね。さらにカニカマのお陰で味にコクが出ている。なるほど、これがカニカマ炒飯……興味深い。実に興味深い)
感動に打ち震えるアルジェンは脳内で饒舌に語る一方、外側から見えるのは炒飯を載せたレンゲを口に入れたままプルプルと物理的に震えている姿であった。
「……えっと、彼はどうしたのかしら」
「あぁ、うん、彼は炒飯を食べたことが無いらしくてね」
これもレイがマスカレイドの力によって引き起こした認識災害のようなものなのだろうか、と首を傾げるが、ともかくとして十紀はひとつ提案をする。
「ここを立ち退いたあとで良いんだけど、レイの炒飯も食べて貰おうかな? 炒飯について研究してるらしいし、多分きっと味は保証できるはず」
「あぁ、最上階の炒飯研究家の人よね? 良いわよ」
作りすぎた炒飯を片付けるためにも、八尺様には協力してもらおう、と考える。ひとまず、八尺様もカニカマ炒飯は満足いく味だったという感想をもらい、十紀は内心でガッツポーズをしてみせたのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レナータ・バルダーヌ
カードゲームはさっぱりですけど、【お料理】なら任せてください!
本物の炒飯を食べさせてあげますよ。
アシスタントはお馴染み、謎のゴボウ生物の亜種『愉快なゴボウさん』たちでお送りします。
「ゴボウの妖怪か……会うのは初めてだぜ」
いえ、単純に背が高いだけでは?
「つまりゴボウってことだろ?」
なるほど……あ、お台所をお借りしますね。
マンションの一室ですし、この妖怪さんは自分で作るタイプではなさそうですから、あるのはおそらく家庭用コンロでしょう。
足りない分はブレイズキャリバーの地獄の炎で補う必要がありそうです、炒飯は火力が命っていいますからね。
作るのはもちろん、自家製ゴボウを使った『ゴボウの五目炒飯』です!
●必殺のゴボウ炒飯
「お料理なら任せてください! 本物の炒飯を食べさせてあげますよ」
アシスタントのゴボウっぽい謎生物「愉快なゴボウさん」と共に現場に乗り込むレナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)。ゴボウ栽培と普及をライフワークとしている猟兵である。ゴボウさんたちは八尺様を一目見るや呟いた。
「ゴボウの妖怪か……会うのは初めてだぜ」
「いえ、単純に背が高いだけでは?」
身長の高さだけでゴボウ認定してしまうのはいかがなものかとレナータは突っ込むが、
「つまりゴボウってことだろ?」
彼にとっては十分な根拠だったらしい。
「なるほど……あ、お台所をお借りしますね」
「いいわよ猟兵さん。今度はどんな炒飯を作ってくれるのかしら」
八尺様に断りを入れて台所を借り、ゴボウさんを助手にして調理を始めた。ゴボウとネギ、チャーシューを刻み、卵を溶いて、フライパンで米と共に炒める。家庭用コンロの火力では足りないと考えたレナータは、ブレイズキャリバーの地獄の炎を足して一気に加熱。短時間でカリカリに火を通したゴボウ五目チャーハンがここに完成した。
「いかがでしょう?」
「ゴボウか……」
炒飯にゴボウ。普段馴染みのない組み合わせだが、意外とイケるかもしれない、と八尺様は意を決して一口食べる。途端に口の中に広がるゴボウの香ばしい風味。火を通したことでこの香ばしさがうまく炒飯と噛み合ったのだ。
「あ、イケる! これ結構イケるかも!」
途端にレンゲを動かすスピードが上がる八尺様。レナータは一礼した。
「気に入っていただけて何よりです」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『街を往く獣人』
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POW : 俺達はどこまでも本気になれる
【獣の本能 】に覚醒して【魔獣形態】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 俺達は何人にだってなれる
レベル×1体の、【胸元 】に1と刻印された戦闘用【の『街を往く獣人』】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 俺達はどこにだって隠れられる
無敵の【何にでも変身できるようになる腕輪 】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
イラスト:相澤つきひ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●出現、炒飯ジャグランツ
「立ち退きに関しては了解よ。確かにここにいつまでもいるわけにはいかないものね……」
猟兵たちが振る舞った炒飯を堪能した八尺様は頷き、身の回りのものを荷物にまとめて引っ越す算段を整えた。着替えとカード、そしていくらかの貴重品を手にして外に出た時、このタワーマンションが陥っている現象を目の当たりにする。
「チャーハン!」
「チャーハン!」
チャーハンチャーハン叫びながら|彷徨《うろつ》く獣人たち。そう、こいつらは白婦人の権能によって出現し、レイの願いが発生させた認識災害によって炒飯に脳味噌を汚染されたジャグランツ──「炒飯ジャグランツ」であった! まさか自らの眷属がこんなことになっているとは、ギルバニアも草葉の陰で号泣しているに違いない。
しかもこのジャグランツたちはご丁寧にUDCアース日本の生活に溶け込むべく、現代的なファッションをしている。そのうえで炒飯を求めて彷徨っているのである。そして、階下では突入を行うUDC組織の機動部隊と戦闘を繰り広げていた。
「くそっ、なんだこのチャーハン獣人、やたら強い!」
「ふはははは舐めるなァ!! 我らの奮闘によりレイ様は炒飯の深淵に至るのである!! 全ては炒飯のために!! オールハイルチャーハン!!」
「「オールハイルチャーハン!!」」
なんだこのジャグランツ、知性跳ね上がってませんか。流暢に人語喋ってますよ。しかも忠誠を誓ってるのが白婦人じゃなくてレイ側じゃないですか。うん、やっぱりギルバニアさん草葉の陰で号泣してるんじゃないかなこれ。
「すまん猟兵さん、援護を頼む!! 彼らはUDCとして捕獲、収容しなければならん。なるべく殺さずに捕縛する方向で頼めるか!」
「……私はただのカードゲーマーだから、荒事は任せるわ」
援護要請を求めるUDC組織の機動部隊、そしてすっと身を隠す八尺様。ともあれ、この事態の収拾にはジャグランツたちをなんとかしなければならない。UDC組織としてはジャグランツを収容し保護、今後のために研究をする必要があるため、なんとか捕縛したいところであった。猟兵たちは頷くと、各々策を練り始めるのであった。
巨海・蔵人
アドリブ絡み歓迎
◼️心情
この人?達は炒飯の種類に拘りはないのかな?
上手く誘導出来れば炒飯専門店とか?なんとかなりそうだし、
下手にこの状態を
治したらそれはそれで大変そうだし、そうだね。
よろしい、ならば炒飯だ!
◼️準備
UCのドローン達にはまずは準備をお願いしよう。
護送用にトラックの荷台を食堂車に改造してもらうのと、
女媧芽ちゃんを培養して材料を揃えるの、
お米とか調味料は蔵人君セレクションからだせるから、後は、はじめるよー
◼️炒飯
UCドローン達とも協力していろんな炒飯を作っていこー
押さえてもらってる間に具材を用意して切って調味料を合わせて。
後は炒める中華の魔法、
僕とパンダ師匠の炒飯パーティー始まるよ~
エリー・マイヤー
おいしいチャーハンが食べられると聞いて、食べに来ました。
よくわかりませんが、そこの獣っぽい人たちが店員さんですかね。
とりあえず、初めてなのでおすすめのチャーハンをお願いします。
は?ない?
ちょっと言ってる意味がよくわかりませんね。
そんだけチャーハンチャーハン叫んでるってことは、
当然アナタ達も美味しいチャーハンを作れるんでしょう?
作れますよね?
作れよ。
ほら、そこのUDC組織の人たちが食材持ってきてくれるらしいですから。
ついでにコンロとか鍋とかも何とかしてくれるはずですから。
私達に美味しいチャーハンを食べさせてください。
さもなければ漲るサイキックエナジーで半殺します。
アルジェン・カーム
…嘗て…ジャグランツの襲撃もまた恐るべき脅威であり
数多のエンドブレイカー達が白婦人と凄まじい死闘を繰り広げていました
ええ…ジャグランツの王という驚異…そしてそれらを守るジャグランツの軍勢…
残念ながら僕は当時の戦いには参加できませんでしたが(因みに予約で外れたかも
それでも多くの生死不明者を出しながらも部隊として息を合わせ倒したのです
……ナニコレ
いや本当にナニコレ
とりあえず…バルバとの殺し合いも望みではないので捕獲には協力します
取り合えず買ってきた炒飯で釣ります
殴って気絶させます(UCは拳撃と蹴撃しか使いません
必要時には炒飯を一緒に作ります
とりあえずみんなで炒飯を食べます
…妻にもご馳走しますか
●魔性の炒飯
かつて、エンドブレイカー世界の都市国家「アクスヘイム」においてはジャグランツ襲撃が恐るべき脅威のひとつとして認識されており、数多のエンドブレイカー達が白婦人と凄まじい死闘を繰り広げていた。ジャグランツの王ギルバニアという脅威、そしてそれを守るジャグランツの軍勢との戦いは熾烈を極め、多くの生死不明者を出しながらもジャグランツの王を討ち取ることでエンドブレイカーたちは辛勝したのである。
アルジェンは当時の戦いに参加できなかったものの、エンドブレイカーたちの激闘は目にしていた。故にジャグランツの危険性に関しては理解はしていた、のだが。
「……ナニコレ、いや本当にナニコレ」
眼の前の炒飯ジャグランツという存在はアルジェンの理解を大きく超えていた。まるで宇宙空間の只中に放り込まれたような心持ちになり、思わず遠い目をする。アルジェン自身歴戦のエンドブレイカーとはいえこんなトンチキな事態は前代未聞である。なんだよオールハイルチャーハンって。
「もしもーし」
そんなアルジェンを現実に引き戻そうと声をかけるのはエリー・マイヤー(被造物・f29376)。こちらは多少はトンチキな事態に耐性があった。
「っ?! し、失礼しました……猟兵の方でしたか」
「えぇどうも。美味しいチャーハンを食べに来ました」
エリーの言葉を聞いてアルジェンはまたも遠い目になる。なんで順応してるんだこの人。猟兵ってこういうトンチキな事件にも巻き込まれるのが普通なのか。アルジェンは今後のことを思い頭を抱えた。
「よくわかりませんが、そこの獣人っぽい人たちが店員さんですかね」
「そうなんじゃないですかね、知りませんけども」
アルジェンは心底どうでもいい、といった表情を浮かべてエリーの質問に投げやり気味に答える。一方エリーはふむと頷き、炒飯ジャグランツたちの前に出た。
「とりあえず、初めてなのでおすすめのチャーハンをお願いします」
「ふっ……お嬢さん、そんなものは無いのだよ」
エリーの言葉に、炒飯ジャグランツの一人はニヒルな笑みを浮かべてそう返してくる。
「は? ない?」
「レイ様が追い求めているのはフェルマーの最終炒飯、その探究は永劫にして深淵! 今ここですぐにポンと出せるものではないのだ!!」
かくして始まる押し問答。
「じゃあ現時点で最も理想に近い炒飯で良いです」
「何、貴様我らに妥協を許せと!?」
「そんだけチャーハンチャーハン叫んでるってことは、当然アナタ達も美味しいチャーハンを作れるんでしょう? 現時点の研究成果を見せてくださいよ」
「ならぬ! 我らはこの長い炒飯坂を登り始めたばかりなのだから!!」
「作れよ」
「やだ!」
漲るサイキックエナジー、張り合う炒飯オーラ。両者のぶつかり合いでなんか空間がエラいことになっている。機動部隊が構えるライオットシールドもビリビリ言い始めた。アルジェンはすでに半分置いていかれている。
埒が明かない、といったところで助け舟が現れた。巨海・蔵人(おおきなおおきなうたうたい・f25425)である。
「下手にこの状態を治したらそれはそれで大変そうだし、そうだね。よろしい、ならば炒飯だ!」
「もう何でも良いからどうにかしてください」
アルジェンは顔を覆ったまま蔵人に場を譲る。蔵人はこのために準備を整えていた。トラックの荷台を改造した食堂車をタワーマンションの外に待機。あらゆる食材になりうる女媧芽の培養を行い、米や調味料の備蓄も持ってきていたのだ。
「僕とパンダ師匠の炒飯パーティー始まるよ~」
「ほう、良いだろう! 満足の行く炒飯を期待させてもらおうか!」
「あ、手伝いますよ」
お料理用のパンダ型ドローン「パンダ師匠」と共に調理を開始する蔵人。アルジェンも手伝いに入る。先程炒飯作りの工程は見ていたため問題はなかった。何より、妙ちきりんなことになっているとは言え相手はバルバである。エンドブレイカーの立場として殺し合いは本意ではない。
エリーがサイキックエナジーで押し留めている間、蔵人とアルジェンは炒飯をせっせと作り続けた。料理に関しては手慣れている蔵人と、飲み込みの早いアルジェンが作り上げた炒飯はかなり良い出来栄えに仕上がる。
「じゃ、炒飯食べるから皆こっちねー」
蔵人の案内で、戦闘を中断した炒飯ジャグランツとエリーは食堂車へと向かう。アルジェンや蔵人も含めて炒飯を早速食べる。
「ほう、なかなかやるではないか蔵人とやら。この炒飯は理想形にかなり近いと思われる」
「いやぁどうもどうも」
「うん、なかなかイケますねこれ。お腹空かせてきて正解でした。あ、お代わりください」
炒飯ジャグランツとエリーは炒飯に舌鼓を打つ。
一方、余った炒飯をタッパーに入れるアルジェン。どうやらお土産にするようだ。
(せっかくです、この一件が終わったら妻にもご馳走しましょうか……)
もしかしたら郷里の妻も作れるかもしれない。そう思い、とにかくまずはこの混沌極まる一件を片付けようと改めて誓うのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
尖晶・十紀
アドリブ絡み歓迎
なにこれ、ツッコミどころが多すぎて収拾付かない……割と最初からそんな気配してたけど
殺し、ダメ?ならこの手だ
悪路走破力を活かして地形を利用しダッシュ。
すれ違いざまに選択UCで捕縛していくよ
糸を逃れた奴にはフリオーゾ・ドラムセットから音響弾の乱れ撃ちをお見舞い
獣人の耳には結構衝撃だろうし……音だけだからなるべく外傷も押さえられていいかもね
……組織の人達に……炒飯用意して貰うくらいは、掛け合ってあげようかな……?
レナータ・バルダーヌ
こちらは捕獲のための道具がないので、役割分担が必要ですね。
わたしが念動力で動きを封じているうちに、UDC組織の隊員さんに……どうしました?ゴボウさん。
チャーハン獣人の皆さん、奮闘する方向を間違えてますよ。
何にでも変身できるなら、その腕輪の力でナントカの最強炒飯とやらになればいいのでは?
「だが、頂点は常に一人っていうぜ。レイって奴に認めてもらえる炒飯は一皿だけだろうな」
なるほど……一番すごい炒飯になれるのはどなたなんでしょうか?
上手く誘導に乗ってくれれば、獣人さんたちは競って炒飯に変身を始めるはずです。
愉快なゴボウさんたちと協力して獣人チャーハンを【ダッシュ】で【運搬】、収容してしまいましょう。
●汝は炒飯
「なにこれ」
エンドブレイカーの猟兵と同様の言葉を口にする十紀。
「ツッコミどころが多すぎて収拾付かない……割と最初からそんな気配してたけど」
流石にここまでカオスな事態になってるとは思わなかったと思わず額を抑えて天を仰ぐ。配下の炒飯ジャグランツでこの有様なのだ。つまり白婦人戦はこれを上回るカオスとトンチキの嵐が押し寄せてくるだろうと思わず身構える。
「……で、殺すのはダメ、と」
「あぁ、なるべく捕縛を頼みたい。今までにないタイプの獣人型UDCだからな」
UDC組織機動部隊の隊員に改めて確認をすれば、そんな答えが返ってくる。
「こちらは捕獲のための道具がないので、役割分担が必要ですね」
「じゃあこっちで捕縛するよ。手はある」
レナータはお願いします、と十紀に頭を下げた。
「わたしが念動力で動きを封じているうちに、UDC組織の隊員さんと十紀さんに……」
と、その時、ゴボウさんがレナータの肩をポンポンと叩く。
「……どうしました、ゴボウさん?」
「いや、ひとつ策を思いついた」
耳打ちをするゴボウさんに、レナータはふむ、と考え込む。たしかにその策は有効そうだ。
◆◆◆
「引きずり落としてやる!」
「ぬぅ、志半ばで……後は頼んだぞ同志達よ……!!」
「は、ハイゼンベルグーっ!! くそっ、逃げるぞオッペンハイマー!」
「いいや、最後まで抵抗するのが我らの務めだノイマン!」
なんでこの獣人たちの名前はいちいち物理学者みたいな名前なんだ、と獣人たちを捕縛しながら十紀は考え込むが、この騒動の元凶が物理学者だったことに思い至る。あぁ、そういうことかとまたしても天を仰ぐ十紀。逃げた連中めがけてフリオーゾ・ドラムセットから音響弾の乱れ撃ちを披露すればたちまち獣人たちはのたうち回る。ジャグランツはネコ科の動物と身体構造がある程度類似しており、耳も敏感だ。音響弾は人間以上に効果的な攻撃手段と言える。
音響弾すらも逃れた獣人たちの前にはレナータとゴボウさんが立ちはだかる。
「チャーハン獣人の皆さん、奮闘する方向を間違えてますよ。何にでも変身できるなら、その腕輪の力でナントカの最強炒飯とやらになればいいのでは?」
「フェルマーの最終炒飯だ! ……ふむ、しかし一理ある。我が理想形の炒飯を可能な限り再現すれば、あるいは」
「だが、頂点は常に一人っていうぜ。レイって奴に認めてもらえる炒飯は一皿だけだろうな」
「なるほど……一番すごい炒飯になれるのはどなたなんでしょうか?」
「ぬぅ……ならば近似値でも構わん、フェルマーの最終炒飯の再現を試みるしかあるまい!!」
ここへ来て炒飯ジャグランツたちは炒飯にこぞって変身を始めた。その瞬間レナータと愉快なゴボウさんたちが獣人チャーハンをダッシュで確保し次々と機動部隊の護送車の中に放り込んでいく。
その光景を見た十紀は思わずこう口走っていた。
「古典落語で『饅頭こわい』ってあったけど……うん、チャーハン怖い」
良くも騙したァァァという悲鳴が護送車の中から響き渡るが、十紀は聞こえないふりをするのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『白婦人』
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POW : 魔女の護り
対象を【薔薇の蔓】で包む。[薔薇の蔓]は装甲と隠密力を増加し、敵を攻撃する【薔薇の棘】と、傷を癒やす【純白の果実】を生やす。
SPD : ジャグランツ・パレード
レベル×1体の【バルバ『ジャグランツ』】を召喚する。[バルバ『ジャグランツ』]は【猛獣】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
WIZ : マザーコール
自身が【危機意識】を感じると、レベル×1体の【バルバ『ジャグランツ』】が召喚される。バルバ『ジャグランツ』は危機意識を与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:京作
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●「思考こそが一次言語であり、炒飯は二次言語である。炒飯は、思考の上に作られた、一つの言語に過ぎない」
~ジョン・フォン・ノイマンが言ったかもしれない~
「おのれ……おのれ猟兵……!!」
タワーマンションの最上階の一室。生き残り(犠牲者は全員生け捕りではあるが)の炒飯ジャグランツから報告を受けて状況を察知したレイは思わず口走っていた。
「あのそれ本来は恐らく私の台詞」
「良いからお前は手を動かせ」
「アッハイ」
おずおずと言いかける白婦人にレイはピシャリと注意を飛ばす。白婦人は半泣きで炒飯の調理作業に戻った。
「いかが致しますかレイ様!」
「慌てるなマクスウェル。もう少しだ、後2手を見つけることができればフェルマーの最終炒飯の証明は完了するんだ……!!」
壁のホワイトボードには数式がびっしりと書き込まれている。調味料や具材の最適な分量、火力をどれぐらいにするかを厳密に計算していたらしい。消しては書き直した跡が多く見られている。レイはホワイトボードをにらみつけると、すぐに白婦人に向き直る。
「……よし、次は火力を現在より10|J《ジュール》上昇させる。レシピ変更だ!」
「またァ!? それとジュール単位で火力を指定するのどうにかなりませんか!!」
白婦人は突然のレイの言葉に素っ頓狂な声を上げた。
「ジュールが一番慣れているんだ!! ケルビンで指定したほうが良いとでも!?」
「物理学の素人に無茶振りが過ぎるんですよ貴方は!! どうしてこうなった!!!」
「良いから手を動かせと言っている! 油の量を間違えるな、炒飯と中華鍋の摩擦係数に影響するからな!」
「はい……油の量はμ=0.4を維持……」
レイの迫力に負け、言われるがままに炒飯を作り続ける白婦人。仮面の下の目のハイライトが消えている。色々限界らしい。
そんな折、ついに猟兵たちがレイの部屋へと乗り込むことに成功する。
「レイ様! 敵襲ですッ!!」
「来たか猟兵!! だが俺の探究を邪魔されるわけにはいかん! 優秀な研究スタッフによって俺はあと一歩でフェルマーの最終炒飯の全てを解き明かすことが可能となるのだ!!」
「だからそれ多分本来私の台詞」
「貴様手が止まっているぞ!!」
「すみませんっもう少しで終わりますっ」
文句を言いかける白婦人にレイは有無を言わさぬ口調で畳み掛けた。
「このフェルマーの最終炒飯が完成すれば全ての炒飯は過去となる……邪魔はさせん」
「で、できました……」
「うむ」
白婦人がおずおずと差し出した炒飯をレイは口にする。
「……後1手だ」
「後1手ですか」
「そうだ、だがその前に邪魔者を排除せねばならない。行け、炒飯の悪魔よ!! 奴らを炒飯にしてしまえ!!」
「いや私は炒飯の悪魔ではなく」
「権能を修正しろと言ったはずだッッッ!!!」
「はい私は炒飯の悪魔ですレイ様ッ!!!」
もはやどっちが黒幕なのかわからない状況。猟兵たちはレイの野望を食い止めるべく戦闘態勢を取った。
※なお、戦うのは白婦人です。レイは後方から指示を飛ばすだけです。
エリー・マイヤー
いやー、おいしい炒飯でした。
普通の炒飯でこれなら、フェルなんとかの炒飯はさぞかし…
え?完成させちゃダメなんです?
…まぁ、願いが歪んで|炒飯大災害《チャーハンカタストロフ》とか起きても面倒ですか。
仕方ありません、真面目に止めましょう。
とりあえず、念動力で敵の攻撃を受け止めつつ、
しばらくは防御に専念して敵の行動を観察します。
で、材料が揃ったら【念動サンプラー】でレイさんの声を再現。
「お前こそ理想の炒飯だ」とか「お前が炒飯になるんだよ」とか、
継ぎ接ぎした変な命令を出しまくって敵を混乱させます。
敵の攻撃の手が緩んだら、反撃開始です。
念動力で殴ったり斬ったり捻ったり千切ったりして攻撃しましょう。
●炒飯による大破滅を食い止めろ
「いやー、おいしい炒飯でした。普通の炒飯でこれなら、フェルなんとかの炒飯はさぞかし……」
先刻、仲間の猟兵が作った炒飯を堪能したエリーは期待に胸を膨らませるが、そこに待ったをかけるのがここまで猟兵たちに同行していた八尺様であった。
「ちょい待ち、それってエリクシルってやつの力を借りてるわけだしヤバい代物なんじゃ?」
「え? 完成させちゃダメなんです?」
「気にはなるけどなんかダメそうじゃない?」
ふーむ、とエリーは少し考える。白婦人が不本意とは言えこの状況に噛んでしまっている現状、確かに完成させてしまうのはまずいのかもしれない。
「……まぁ、願いが歪んで|炒飯大災害《チャーハンカタストロフ》とか起きても面倒ですか。仕方ありません、真面目に止めましょう」
炒飯によってもたらされる破局。なんというか想像も付きづらいが、そんなのでUDCアースがろくでもないことになってしまうのも寝覚めが悪い。白婦人を止めるべくエリーは戦闘態勢を取った。
「行きなさい我がぼうやたちよ!」
白婦人が繰り出すのはジャグランツ・パレード。自身の眷属たるジャグランツを呼び出して差し向けるのだが、今この狂った状況で出現するのは当然ながら炒飯ジャグランツである。
「チャーハン!!」「チャーハン!!」
「特撮の戦闘員か何かですかねこれは」
チャーハンチャーハン言いながら襲いかかってくる炒飯ジャグランツたちを念動力で止めつつ、敵の行動を探る。
「回り込め! 数的有利を活かすんだ!」
「御意!!」
炒飯ジャグランツたちに命令をしているのはなんとレイであった。呼び出した白婦人よりも素直に言うことを聞いている。
「なるほど、つまりレイさんの言うことを聞くと」
ふむ、と頷くとエリーは一計を案じる。レイの命令を全て観察して聞き取りながら攻撃を念動力でいなし続け、ついに反撃の一手を打った。
「お前こそ理想のチャーハンだ!」
「お前が炒飯になるんだよ!」
レイの声が響くがその内容は出鱈目であった。炒飯ジャグランツ、そして白婦人は混乱する。
「れ、レイ様?」
「っ!? 俺はそんなことは言っていない……くそっ、こちらの指揮を混乱させる気だ!」
炒飯ジャグランツたちの動きが乱れ、白婦人が炒飯ジャグランツを召喚する手も止まってしまう。そこへ襲いかかるのはエリーの念動力の嵐。
「隙ありです」
「ぐ、ぐおおおお!?」
「しまっ──!」
炒飯ジャグランツたちが次々と宙を舞う。投げ飛ばされ、捻られ、振り回された炒飯ジャグランツたちは戦線が総崩れだ。しかも一部の炒飯ジャグランツの体躯が吹き飛ばされて白婦人に衝突、白婦人も痛手を負う状況。
「炒飯になるのはあなた方です」
「くそっ、やってくれる……!」
自身の声を模倣して反撃してくる猟兵に、レイは戦慄を覚えるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
尖晶・十紀
取り憑いた相手が悪かったね、さすがにそこは同情するよ。ドンマイ。……だけど十紀達は所詮相容れない敵同士、容赦は出来ない
ざーこざーこ、一般人に言い合いで負けたヘボ悪魔。てな感じで挑発、ヘイトを集めて攻撃を集中させよう
共闘仲間がいるなら積極的に庇うよ
敵の攻撃は激痛耐性と根性でどうにか耐え抜いて
問題ない、受けた負傷を逆手に発動できるのが十紀の|異能《UC》
己が血により生み出された大剣を手に、怪力で一気に叩き切るよ
研究に夢中になるのはいいけど、人に迷惑をかけるのは、良くないよ……
アドリブ絡み歓迎
●マスカレイドの失敗、物理学者の失敗
「取り憑いた相手が悪かったね、さすがにそこは同情するよ」
レイに振り回される白婦人を見ながらドンマイ、と呟く十紀。もはや哀れですらあるのだが、とは言えマスカレイド、ひいてはエリクシルは猟兵たちにとって相容れない存在である。故に容赦は不要と戦闘態勢に入ることに一切の躊躇はなかった。
そして彼女が選んだ手段は……。
「やーい、一般人に言い合いで負けたヘボ悪魔ー。ざーこざーこ」
全力の煽りであった。指をさして容赦ない言葉を投げかける。
「い、言いましたねこんちくしょう!!! 絶対許さんわビービー言わしたりますわ!!」
当然白婦人はキレる。思い知らせてやるとばかりにヘイトを十紀に向けて薔薇の蔓を飛ばし、締め上げてきた。棘が十紀の身体をちくちくと刺す痛みに襲われるが、気合と根性で耐えて見せる。
「今ならその発言の撤回を許します!!」
「……やなこった!!」
次の瞬間、十紀の身体から突如生えてきた真っ赤な大剣によって薔薇の蔓が一刀両断される。これぞ十紀の真骨頂。自らの血で作り出された大剣は、相手から受けた傷をトリガーに発動する十紀の異能なのである。
「ふむ、その薔薇の蔓、チャーシューを作る際に使えるな。豚肉をひとかたまり用意しておく」
「棘で穴だらけになるからやめときなよ……」
なんか良からぬことを企むレイに呆れ顔を浮かべる十紀。
「というかそもそもレイさんに一言言いたい」
「なんだ」
「研究に夢中になるのはいいけど、人に迷惑をかけるのは、良くないよ……」
レイは悲しそうな表情を浮かべ、呟く。
「だが、科学の発展には犠牲がつきものなんだ……」
「いやその犠牲が発展の割に合わないから言ってるんだよいい加減にしろ」
「ならばこの炒飯の悪魔を生贄に捧げろと?」
ぞわぁ、と白婦人の背筋に悪寒が走る。こいつならやりかねない。
「そんな急にサバトじみたこと始めるのは違うと思うんですよ!! んな非科学的な!!」
十紀は猛抗議する白婦人を見てぼんやりと思う。
(いっちばん科学から縁遠い存在のアンタが何言ってんだ……?)
ともあれ、戦いは続く。果たしてこのカオスに終止符は打てるのであろうか。
大成功
🔵🔵🔵
巨海・蔵人
アドリブ絡み歓迎
◼️心情(配信中)
師匠、無限とも言える炒飯の大海に向かうものがまた一人、
しかし、見えていない、あれはピ…
はっ!
いけない、危なく聞かれるところだった
◼️エントリー(肩装備米袋)
おくさーん、コメヤデース!
愉快なバイオモンスター蔵人君、中華なお料理仙人の弟子としてお試しレンタルに来たよ?
取り敢えず、UCで疲労回復の炒飯(レイさんのレシピ)をジャグランツ達と白貴婦人さんに差し入れ!
この様に、一度に百種までなら同時に調理と検証できるよ?
後ね、白貴婦人さんには残念(死刑宣告的)なお知らせ。
いまの、後一手は、埋めれたとして、多分、
それで変わった値でまた結果が変わると思うー
ちょっと僕と炒飯グランツ達でお手伝いしてるから、身の振り方考えてみて?
◼️戦い(?)の後に
ここで、レイさんにお知らせ!
これは、フェルマーの最終炒飯ではなく、ピタゴラスの炒飯です。
つまり、レイさんにとってのだけのだね、
フェルマーの最終炒飯には、最低でもアレルギー対応、葱、玉子、米の発明が必要って学会でも証明されたでしょ?
アルジェン・カーム
白婦人との闘いは熾烈を極めました
多くのエンドブレイカーが死闘の果てに彼女を打ち破り…彼女はそれでも魔女としての恐ろしさを示す様にジャグランツの王たるギルバニアを産み落とし…その恐るべき脅威との死闘が繰り広げられました
多くのEBがそれぞれ目的を果たし…それでやっと打ち破れたのです
それだけ…恐るべき脅威でした
という話を遠い目をして白婦人の炒飯食べながら語ります(拷問?
…その…戦う前にどうしても気になる事を聞いていいですか?
今の貴方だと…生まれるのは炒飯ギルバニア…です?
英霊剣群展開発動
UC発動
貴方は間違っている!炒飯に過去も昔もありません!
最も簡単な一つの心理を忘れている!
それを取り戻す為にも…貴方の齎す|終焉《エンディング》…破壊します(気合で決め台詞
【二回攻撃・切断】
超高速で飛び回りながらその速度で切り刻みブーメランで蹂躙し宝剣と聖剣で切り刻む
最後に…僕は伝えましょう
美味しい物は美味しい
でもそれは人の主観です
これは…計算という数値のみの論理ではきっと触れえぬ領域です
食の幸せを忘れないで
レナータ・バルダーヌ
話は聞かせてもらいました、つまり完成には後4手足りないと。
その答え、チャーハン獣人さんたちが変身した数々の炒飯を見たわたしにはもう見えています。
教えて差し上げるのに吝かではありませんけど……。
「ヤツら、どうあっても戦うつもりらしいな」
そのようですね、ゴボウさん。
でしたら受けて立ちましょう。
どちらが最終の名に相応しい炒飯を作れるか、勝負です!
足りない4手……それはゴボウとゴボウとゴボウ、そしてゴボウです!
つまり、最初にわたしが作った「ゴボウの五目炒飯」の具材のうち、ゴボウ以外の四目を全てゴボウに変える……。
これこそ|ファイバー《食物繊維》の最終炒飯、即ち『ゴボウマシマシ炒飯』の完成です!
レイさんは炒飯に嘘はつけないはずです。
わたしか白い人か、どちらが勝ったとしても悔いはありません!
●今は遠き理想の炒飯
かつて、エンドブレイカー達が終焉を終焉させていた時代。ジャグランツの長たる白婦人とエンドブレイカーたちとの戦いは熾烈を極めていた。多くのエンドブレイカーが白婦人の猛攻に倒れる激戦の果てに白婦人はついに敗北する。だが、彼女は最期の瞬間まで脅威を振りまいた。断末魔のまさにその瞬間、ジャグランツの王たるギルバニアを産み落としたのである。
ギルバニアとの戦いはさらに過酷なものであった。白婦人との戦いで消耗したエンドブレイカーたちはひとりまたひとりと仕留められていく。それでも、エンドブレイカーたちは最後まで戦い抜き、ついにギルバニアの首級を挙げることに成功したのだ。まさに、数限りない犠牲の果てに得た尊い勝利であった。
「──多くのエンドブレイカーたちがそれぞれ目的を果たし……それでやっと打ち破れたのです。それだけ……恐るべき脅威でした」
どこか遠い目をして、当時を知るエンドブレイカーの一人、アルジェンは語り終えた。それと同時にレンゲを置いた。
そう、まさにその激戦を繰り広げた相手である白婦人は今、UDCアース東京都に位置するタワーマンションの一室において半泣きで炒飯を作らされており、アルジェンはその白婦人が作った炒飯を食べているというまさに地獄のようなカオスの只中に叩き込まれていた。
「なるほど」
「大変だったんですねぇ当時は」
「どれだけの屍血山河が築き上げられたことやらって感じよねぇ」
「全く、よく勝てたもんだ」
アルジェンの話に聞き入っていた蔵人、レナータ、八尺様、ゴボウさんはうむうむ、と頷く。彼らもまた白婦人の炒飯を食べていた。もう状況が混沌としすぎていてアルジェンの理解は追いついていない。どこで何が間違ってこんなことになったんだと首を傾げる。間違いなくこんな|末路《エンディング》は要らないことだけはわかるのだが。
「私も聞きたいですよ何がどうしてこんなことに……」
台所に立つ白婦人もぽつりと悲壮感を漂わせて呟く辺りがさらに涙を誘う。一方で、レイと炒飯ジャグランツたちは緊張の面持ちで炒飯を食べている猟兵たちを見た。
「で、どうだ。率直な感想を聞こう」
ふむ、と蔵人は考え込む。ドローンに投影されたパンダ師匠がなにやら耳打ちし、うんうんと頷きながら何を言うべきかをまとめていた。やがて考えがまとまったのか口を開く。
「無限とも言える炒飯の大海に向かうものとして尊敬の念を抱く限りです、レイ先生」
「道半ばではあるがな」
「えぇ、ですからここはひとつ我々の炒飯も食べていただきたいと。だよねレナータさん」
蔵人に話を振られたレナータは大きく頷く。
「その通り。炒飯には後4手足りないのであれば答えはもう見えています」
「大きく出たな……」
レナータが豪語するその内容にレイは目を細めた。
「結局何手足りないんですか」
「あれ? これもしかしてまた炒飯作る流れです?」
白婦人は流石にツッコミを入れ、アルジェンは呆れたように誰にともなく呟いた。なんかこの依頼で自分は炒飯作るか食べるかしかしてないんじゃないか、終焉を終焉させる者としてこれで大丈夫なのかとついにアルジェンは自らの存在意義にすら内心で自問を始める。
「さて、それでは我々の解をお見せしましょう!」
「そうだね、僕たちとレイ先生のどちらが最終の名に相応しいかを決めるときだ!」
「どうあっても戦うつもりだってんなら、俺たちが決着をつけてやる!」
今にも最終決戦が始まりそうな雰囲気でキッチンへと赴く蔵人、レナータ、そしてゴボウさん。今まさに、彼らの最終炒飯の調理が始まる。
「足りない4手はゴボウとゴボウとゴボウ、そしてゴボウです!」
先刻作ったゴボウの五目チャーハンの他の四目を全てゴボウに変換して山のような刻みゴボウを大量投入するレナータ。もはやゴボウ以外の具材が全て吹っ飛んでいる。加えて蔵人はホワイトボードの数式を見てふむ、と頷く。
「これで結果がかなり変わるはず。フェルマーの最終炒飯には最低でもアレルギー対応、葱、玉子、米の発明が必要って最新の研究結果が学会に提出されているはずだ」
「何……? 既存の具材では不足だと?」
「レイ先生、あなたがこれまで作ってきたのはフェルマーの最終炒飯じゃない。ピタゴラスの三平方炒飯だ」
その言葉にさっと顔色を変えたレイ。自身もホワイトボードの数式を食い入るように見つめる。そして驚愕に口を開いた。
「馬鹿な……! 具材の順列組み合わせパターンのうち2乗しか想定できていない! この俺がこんな初歩的な見落としを……!」
崩れ落ちるレイ。そのさなかに蔵人とレナータ、そしてゴボウさんの共同作業によって出来上がったのは完全なるゴボウ炒飯であった。
「全ての炒飯を過去にするのは100年ばかしはええぜ! この炒飯を食ってからにしてもらおうか!!」
「そう、これが我々の最終解!」
「|ファイバー《食物繊維》の最終炒飯、即ち『ゴボウマシマシ炒飯』の完成です!」
それは、ポリフェノールと食物繊維の暴力であった。これでもかと注ぎ込まれたゴボウ、ゴボウ、ゴボウ。もはやゴボウと白飯に醤油をぶっかけて炒めただけという極限までの漢らしさ溢れる単純にして明快な料理だ。全ての炒飯を過去にするどころか空前絶後の進化の袋小路であり原点回帰である。
「馬鹿な……!」
「こんな炒飯が認められるというのか……!」
ざわつく炒飯ジャグランツたち。しかしレイは一度目を閉じ沈思黙考をしばし行った後、くわっと目を見開き、一喝する。
「狼狽えるなッ!! 炒飯は……自由だッッ!!」
その言葉に黙り込む炒飯ジャグランツたちは背筋を正す。
「なるほど、|ファイバー《食物繊維》の最終炒飯。面白い。これだから炒飯探究は止められんのだ」
レイの顔には笑みが浮かんでいた。そう、炒飯には無限の可能性がまだ存在する。
「全ての炒飯を過去にする……その結論は我々人類にはいささか早すぎたのだろう」
「いや、そもそも炒飯に過去も昔も関係ありませんって」
ようやくアルジェンがツッコミを入れる余裕ができたとばかりに声を上げる。
「ならば……フェルマーの最終炒飯に至るにはより研鑽を積まねばならんか。……悪魔の力など不要だったということだな」
「えっつまり私はもう開放されると」
「ご苦労だった、炒飯の悪魔よ」
白婦人はレイの言葉に一瞬表情を輝かせるも、炒飯の悪魔扱いはこのままと知り再び崩れ落ちた。
「私は炒飯の悪魔ではないと何度も」
「これからはそう生きるのが良いだろう」
「そんな|終焉《エンディング》要らないッ……!」
なんとマスカレイドがエンディングを否定しだすという始末。よっぽど嫌だったんだろう。と、ここであるジェンには気になることがあった。
「あのう……ひとつ気になることが」
「何ですかッ!?」
白婦人、半泣きでアルジェンを睨みつける。もうなんかヤケクソらしい。
「その、今の貴方だと……生まれるのは炒飯ギルバニア……です?」
炒飯ギルバニア。即ち炒飯ジャグランツどもの元締めにして神。つまり炒飯の神的なSomethingなのだろう。白婦人はそんな奴が自分の中に巣食っている可能性を指摘され……ついにキレた。
「そんなん出てきたらこの世の終わりじゃあああああああ!!」
泣きながら腕を振り回し襲いかかってくる白婦人。アルジェンは最後の気合とばかりに戦闘態勢を整えた。
「かわいそうですが……我々としても貴方がもたらす可能性のあるヤバいエンディングは容認できませんので……貴方の齎す|終焉《エンディング》……破壊します」
エンドブレイカーとしての決め台詞もばっちり言い放ち、なんとか自分たちの土俵に戻ってくることができた。もうこんなトンチキ終わらせてやる、とばかりに戦闘を繰り広げる白婦人とアルジェン。超高速で飛び回りながら斬撃を浴びせるべく宝剣と聖剣を構え、隙を伺う一方、白婦人は蔦を使って防御する。一部の炒飯ジャグランツたちも白婦人を援護しようと飛び出した。
「ちっ、やはり物量……!」
「エンドブレイカー殿、貴方に恨みは無いが炒飯神降臨の邪魔をさせるわけには……!」
「炒飯神なんて胡乱なもの降臨しないでくださいお願いだから!!」
炒飯ジャグランツが肉弾戦を挑みつつ口走るワードに白婦人は悲鳴を上げる。アルジェンは「ホントとっとと終わらせたい」と思いながら英霊剣群を展開し炒飯ジャグランツの接近を遮りつつ、蔦を切り刻んで白婦人へと接近する。
「これで……終わりですッ……!」
万感の思いとともに放たれた斬撃は白婦人の体躯を袈裟懸けに切り裂く。白婦人は「やっと開放された」と言わんばかりに崩れ落ち、骸の海へと還っていくのであった。
「……美味しい物は美味しい。でもそれは人の主観です」
「そこを俺が履き違えていた、と?」
「これは……計算という数値のみの論理ではきっと触れえぬ領域です」
アルジェンはレイに向き直り、自分の見解を述べる。レイは頭を振った。
「だが……俺は科学の徒だ。確かに数値のみの論理で触れ得ぬ領域はあるのだろう。だが、言い換えればそれはフロンティアなんだ。……しかし、お前の言うことにも一理ある。フロンティアの広さを見誤っていた。ひとつの解にこだわりすぎていたことが俺の失策だったのかもしれん」
「レイ様……」
残された炒飯ジャグランツたちは、レイを心配そうに見つめる。レイはホワイトボードを再び見つめる。そして、クリーナーを手にするとホワイトボードの数式をすべて消し始めた。
「レイ様、何を」
「別解があるのならば、その検証をし直さなければならん。こいつはライフワークだ。ついて来れるやつだけついて来い。何……今度は悪魔の手など借りんさ」
炒飯ジャグランツたちはレイの穏やかな笑みとその言葉に滂沱の涙を流した。
「その探究の旅、お供させていただきます! たとえこの身が朽ちるまで時間がかかろうとも!」
「行きましょうレイ様! 生涯をかけた旅路へ!」
やんやの喝采を上げる炒飯ジャグランツたちを見て、アルジェンはやれやれと首を振った。
「……良かったんですかねこれで?」
「まぁ、良いんじゃない? 少なくともエリクシルやマスカレイドの手を借りることはもうなさそうだし」
「食の幸せの一つの形ですよ、これも」
かくして猟兵たちは、とあるマスカレイドが巻き込まれたことによって発生した珍事を収拾することに成功したのであった。この後レイの探究がどうなるのかは、まだ誰も知らない。
大成功
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