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銀河帝国攻略戦㉔~黒い海に光を

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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#銀河帝国攻略戦


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●宇宙の海を横切る花火
 無数の砲塔から光が伸び、遥か彼方に華を咲かせる。
 その光景はどこかの世界の花火によく似ていた。
 スペースシップワールドの行く末を左右する銀河帝国攻略戦は佳境に佳境に入っていた。
 猟兵たちが援護した解放軍のスペースシップはいよいよ帝国旗艦インペリウムを砲撃の射程に捉えようとしている。
 だが、彼らの最大射程距離の2倍の射程を持つ無数の砲塔が反撃を許さなかった。解放軍の射程外から一方的な攻撃を浴びせたのである。解放軍のスペースシップのなかには反撃を試みたものもあるが、射程の足りない砲撃ではインペリウムに到達する前に消滅してしまい、友好な打撃を与えられずにいる。
 あと少し。あと少しだけ接近できれば…!
 自らの武器で一矢報いることができぬまま砲撃により中破したスペースシップを駆る者が、悔し涙を流し戦域を脱した。撤退する船は少なくない。きっと、これからも増えていく。
 インペリウム対艦兵装群。
 帝国旗艦に備え付けられた無数のミサイルやビームの発射装置は、堅牢な障壁となって解放軍艦隊を退けていた。

●グリモアベースから覗ける光
「みなさんのお力をお借りしたいです」
 白い軍服に包んだグリモア猟兵の少女、ヴィル・ロヒカルメ(ヴィーヴル・f00200)は軍帽を目深に被りながらそう言った。
 猟兵の援護が必要な場面が訪れていた。
「帝国旗艦インペリウムの抵抗が激しくて、解放軍の宇宙船が思うように近づけてません」
 だから、これを何とかしてくださいと彼女は言う。
 求められるのは対艦兵装群、ミサイルやビームの発射装置の破壊である。破壊すべき兵装部分だけでも20m程度に及ぶ巨大兵器だ。
 強力な対艦兵器である反面、至近距離まで使づいてきたものを攻撃できないという弱点がある。猟兵にはこの弱点をついて破壊してもらいたいのだ。
「対艦兵装群までぼくが送ります。でも、敵も転移して破壊しにくることを想定しています」
 発射装置のそばには防衛部隊が配置されている。転移してきた猟兵を迎撃するための存在だ。この防衛部隊の攻撃を掻い潜って、対艦兵装を破壊しなければならないのだ。
「防衛部隊の撃破は必要ではありません、発射装置にさえ大きな損害を与えられれば、あるいは破壊できれば成功です」
 逆に言うと、防衛部隊が撃破できたところで発射装置へ攻撃できなければ失敗、ということになる。
「難しいことかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。一つの世界の、行く末が掛かってるんです」
 そう言って白い軍服の少女は頭を下げ、説明を締めくくった。


鍼々
 鍼々です。今回もよろしくお願いします。
 今回は初めてのスペースシップワールドのシナリオです。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 戦闘は宇宙空間で行われます。
 シナリオの目的はあくまで、大きさ20m程度の発射装置への攻撃及び撃破です。防衛部隊にダメージを与えることや撃破することは判定に関わらないので注意してください。護衛と戦闘して撃破したものの、装置へ損害を与えられなかった場合は失敗となります。
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第1章 集団戦 『ミサイルファイター』

POW   :    衝角突撃
【機体前方に装備された対艦衝角】が命中した対象を切断する。
SPD   :    ファイターレーザー
【速射式レーザービーム】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    スターシップキラー
【レーダー波】を向けた対象に、【対艦ミサイル『スターシップキラー』】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

皐月・灯
雑魚の相手はそこそこにして、あの装置をブッ壊しゃいいんだな?

敵はレーダー波を向けた対象にミサイルを撃ってくる……
反射波を探知して狙いを定めてるんだよな。

……レーダー波そのものへの干渉は難しい。
なら、標的を大量に増やしてやればいいんじゃねーか?
オレのエレクトロレギオンは、一度に115体まで召喚できる。
広く展開するように布陣してやれば、いいデコイになるだろ。

連中がデコイを狙ってるうちに、オレは発射装置に接近する。
進路を塞ぐ敵だけはブチ砕くが、本命はこっちだからな。

【全力魔法】からの【属性攻撃】で、《轟ク雷眼》を叩き込む。
耐電性能ってヤツを試してやるよ――オレのアザレア・プロトコルでな!




 スペースシップワールドの宇宙は、多くの猟兵たちが知るそれよりずっと暗い。居住可能な惑星がすべて失われている世界では、人を船を照らす光がないのだ。
 だが、銀河帝国によって生み出された兵器は、暗い海を裂いて高速で接近する敵影を捉えていた。
 インペリウム対艦兵装群防衛部隊、配備されたミサイルファイターは一斉に猟兵へレーダー波を向けた。反射波の感知によって高い精度の命中率を誇る対艦ミサイルが牙を剥く。
 元々、対艦兵装群に猟兵が襲撃を掛けるのを予期して迎撃のために配置された部隊だ。彼らは自動的に機械的に接近する猟兵を感知し金属と火薬の詰まった殺意で迎撃するのだ。
 しかし、猟兵もまたそれを承知の上で突入している。
 突如猟兵の周囲にプリズムが舞った。
 否、それは正確な表現ではない。プリズムの正体は猟兵が一斉に呼び出した百を超える小型機械の兵団である。防衛部隊のレーダー波が突如現れた大群によって千々に乱れた。
 発射された対艦ミサイルは広域に散布された機械兵団へと誘導される。
 やがて光と衝撃の炸裂が連続した。スペースシップワールドの片隅に小さな花が咲く。光で真っ白に、そして煙で灰色に塗りつぶされる視界。
 直後、灰色の満ちた空間から一人の少年が飛び出した。
 橙と薄青の光を瞳に湛え、目標の対艦兵装を見据えて、ミサイルの爆発の衝撃を追い風に利用しさらに加速する猟兵の名は、皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)に他ならない!
 煙の尾を引き、灯が防衛部隊の一体に足をつく。少年が齎した多大な運動エネルギーはミサイルファイターを浚い、防衛すべき対艦兵装群へと墜落させていった。
 さながら敵を足蹴にしてスケートボードで滑空するように、少年は目標へ距離を詰める。20mに及ぶ発射装置、それ意外はおまけなのだ。
「安心しろよ。本命はあっちだからな」
 少年の握る拳に術式が躍る。
 ミサイルファイターの機体が発射装置へと叩きつけられる。金属の擦れる音、ひしゃげる音。少年が小さく息を吸う音。
 少年が拳を振り上げたとき、術式の光が増し、真空の宇宙空間にどこか空気の焦げる匂いを生み出した。
「アザレア・プロトコル3番――」
 解放。
 拳が振り下ろされた。耳障りな金属音を生み出しながら防衛兵の装甲が大きく凹む。だが、少年の攻撃はそれだけに留まらない。破片が舞い上がるなか拳を叩きつけたまま少年は力を使う。
 近接肉弾攻撃を絡めた魔術行使。それを、人は魔術拳士と呼んだ。
「轟ク雷眼!」
 術式が力を持ち、ミサイルファイターが瞬く間に雷光に包まれた。それは接触した発射装置にまで伝播し、やがて装置を膨大な熱と光と電気のエネルギーが暴れた。紫電の蛇がのたうち回り、勢いよく随所から爆発と火花が散る。
「吹っ飛べッ!」
 少年の最後の言葉のあと、限界を迎えた発射装置が、ファイターを巻き込んで大爆発を起こした。
 インペリウム対艦兵装群という名の堅牢な障壁に、最初の穴が開いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天通・ジン
いかに兵装が整っていようと、それを操縦する奴次第で結果ってのは変わるもの。インペリウムに乗る皇帝さんは、どうやら戦争が下手らしい。旗艦で必死に抵抗しても、もはや戦局は変わらないっていうのにね。

ま、敵がどうあれ、俺とコイツ(※愛機)なら、突破できるさ。

ユーベルコード【電脳補助下高速戦闘】で急速突破を図る
ミサイルも、弾丸も、レーザーも、躱せればいいんだ。

AIによる戦術予測と戦闘演算の支援下で、敵と相対する。
操縦しつつ、躱しきれない敵機を撃墜するよ。
敵はミサイルファイター、機銃を当てれば爆発するはず。
こちらのミサイルは戦艦用に温存し、たどり着いたら敵兵装へ全弾ぶっぱなす!
残念だったな!

アド歓




 ――インペリウムに乗る皇帝さんは、どうやら戦争が下手らしい。
 帝国の支配者、銀河皇帝の持つユーベルコード、ワープドライブは凄まじい戦略的価値を持つ。あらゆる戦線の距離を無にして奇襲や文壇を可能にし、帝国の隆盛を支えてきたもので、何より重要なのが『ワープドライブを帝国のみが有する』という要素にあった。
 だが、ここにきて前提が崩れ去る。
 フォースナイト、ミディア・スターゲイザーの発見によって。
 彼女の力の発現に端を発した銀河帝国攻略戦は、双方のワープドライブの存在により帝国側の優位は失われ、もはや戦術のみが勝敗を分ける様相を呈していた。
 そして多数の猟兵による奇襲で広域に展開された帝国軍艦隊は次々に撃破されている。残る有力敵は、ほぼ旗艦インペリウムのみと言っていい。
 ――旗艦で必死に抵抗しても、もはや戦局は変わらないっていうのにね。
 暗い海を流星が駆けた。白色のボディに赤い星が描かれた宇宙戦闘用量産戦闘機。ヘルム越しに対艦兵装群を見据えて笑みを作る猟兵の名は天通・ジン(AtoZ・f09859)。
 誘導弾を抱えた戦闘機が兵装群を破壊するべく疾走する。
 途端、配備されていた防衛部隊が一斉にジンへ向いた。ミサイルファイター前方から照射されるレーダー波が彼を捉える。そこから導き出されるのは対艦ミサイルの一斉射撃だ。
 ジンのヘルムに警告が表示される。レーダー波感知、誘導弾の接近を確認。
 彼は素早く機体の制御を手動から自動操縦へ切り替えた。
 膨大なミサイルを前にAIが迂回軌道を描く。すると一斉に軌道を変えるミサイル群が、すだれのような弾幕となって猟兵へ殺到する。加速した機体は次々に弾頭をやり過ごしていく。
 しかし迂回と加速による回避も長く続かない。あわや敵の攻撃が機体後部に追いつこうというとき、突如ジンのヘルムに警告が表示された。
 被弾の危機ではない。いまから慣性に踏ん張って耐えろという警告だ。
 戦闘機が翻り、急激に減速。
 すだれ状に整列していた弾幕が一斉に乱れた。
 機翼から姿勢制御スラスターが連続して点火し、闘牛の群れの合間を縫うように回避してゆく。目標を見失ったミサイルはマタドールの後方で爆発するしかない。
 ヘルムに表示される新たな警告。
 咄嗟にジンが防衛部隊を見れば攻撃の第二陣が襲い掛かってくるではないか。さらに密度を上げた絶対不可避のミサイル弾幕がそこにある。
 だが、彼の瞳に絶望の色はない。不敵な笑みを作りながら機銃のトリガーに指をかけた。
 デア・フィンケンのパイロットの仕事が、ただ自動操縦の戦闘機のなかで踏ん張るだけではないことを教えてやる。
 再び戦闘機が加速した。襲い掛かる弾幕は渦を描きながら殺到するミサイル群と、左右に分かれてからこちらを挟み込む軌道のミサイル群の2パターン。
 ジンのGOサインを受けて機体AIがきりもみ回転で渦巻くミサイル群へ跳び込む。
 機銃が火を噴いた。絶対不可避とされる包囲網に穴をあけてゆく。スラスターもさらに点火される。稲妻めいた軌跡を描いて綻んだ包囲網を通り抜けてゆく。左右から挟み込むはずだったミサイル群が後方で交差し爆発していた。遅い。何もかも遅い。
「高速戦闘解除。さあ――」
 後方に咲く花火に照らされながら、白と赤の機体が流星となって防衛部隊の脇を駆け抜ける。
 青年は武装を機銃から誘導弾に切り替えた。機体底部に搭載されたそれは旗艦インペリウムの兵装群を打ち砕くためのとっておきだ。
「最後の仕上げだ!」
 トリガーが引かれる。一息に全弾撃ちだされた弾頭は、インペリウム表面に熱と爆風の破壊をもたらした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

煌燥・燿
ノノ(f07170)と参加

「空中戦に慣れてるからってノノばかり前に置くのは気が引けるぜ」
ノノが武装の火力で発射装置を壊す間に防衛部隊を引き受ける。

不死鳥降臨・再誕を使用。しなる炎の剣を作り出して。
近づく防衛部隊に巻きつけて破壊する。

対艦衝角はまあ覚悟して武器で受けてみようか! 

装備のフック付きワイヤーを柱や敵に結び付ける事で機動力を得る。

ほんの少しだが、ノノの動きを見るうちに俺も無重力になれて来たぜ。
何時までもノノの尻尾を追いかけるだけで終わったら情けねえからな!

俺そんな推進力を出せる装備は無いから。
離脱をする時はノノの力を借りよう。

技能や装備の使用。アドリブなど歓迎です。


ノノ・スメラギ
ヨウくん(f02597)と参加
「ヨウくんが敵の抑えてくれている間に、ボクは砲台の破壊にまわらせてもらうよ!」
最初はヨウくんと一緒に防衛部隊を相手しつつ、頃合いを見て対艦兵器群に突貫するよ。ヨウくんが防衛部隊を牽制してくれてる間に、対艦兵器群の大掃除だ!
ガンナーズとスライサーを展開、射撃モードのVMAXランチャーと合わせて、UCを使って対艦兵器群の真ん中で一斉攻撃だ! 一網打尽にしてやるよ!(技能:一斉発射、2回攻撃)
爆風とかはシールドデバイスの盾受けとナノメタルコートの防具改造で受けきるよ!
あとはヨウくんの様子を見つつ、頃合いを見てリフターの力でヨウくんを抱えて引き上げるよ!(技能:空中戦)




 暗い海のなか、ぼうっと明かりが灯る。
 明かりの主は猟兵だった。向日葵色の髪を炎で照らし、インペリウム対艦兵装群と防衛部隊を見やる青年の名は、煌燥・燿(影焼く眼・f02597)だった。
 彼の手の炎は剣の形をしている。妖精の加護を受けて白熱した刃だ。
 するりと一振りすればそれはよく伸びて、しなる。炎であり、長い尾のようでもある、妖精の剣。
 そんな武器を持つ燿だが、表情はいまいち晴れない。足元を見て頼りなさそうにしていた。
「大丈夫?」
 青年に声を掛ける者がいる。彼より数歩前の位置から振り返った鎧装騎兵の少女。編んだ長い金髪を首の動きに合わせて揺らす、ノノ・スメラギ(銃斧の騎士・f07170)である。
 彼女はナノマシンと魔導デバイスからなる武装に身を包んでいる。足場のない無重力空間においてもしっかりと安定した姿勢を作れるのは、足元に展開されたフィールドのなせる業だ。
 そう、両者の違いは足元の安定性にある。
「ほんの少しだけど、慣れてきたかな」
 そもそも、宇宙空間での戦いの経験を持つ猟兵は多くない。青年もその例にもれず地上での戦いのほうが得意なのだろう。だが、それでも彼がこの場にやってきたのは。
「それならいっか」
 納得するような言葉を置いて旗艦インペリウムへ振り向いたノノの瞳。その奥に業火のような感情が宿っているように見えたからかもしれない。
「空中戦に慣れてるからってノノばかり前に置くのは気が引けるぜ」
 あるいは、男子としての意地と呼ぶべきものが反応したのかもしれない。ノノは、燿より小柄で年下の少女だった。
 それじゃあ、と人差し指を立ててノノは提案する。
「ヨウくんはここからあまり動かない感じでどう?」
「というと?」
 ノノはうっすら笑いながら振り向いた。その奥からこちらに接近してくる防衛部隊が見える。
「ヨウくんが敵の抑えてくれている間に、ボクは砲台の破壊にまわらせてもらうよ!」
「オーケイ、じゃあそれでいこうか!」

 一条の光が空間を切り裂く。
 しかしその軌跡に猟兵の姿はなく、二人はお互いを突き飛ばして回避行動をとっていた。高速で距離を詰めにくる防衛部隊、ミサイルファイターの先端の対艦衝角が真っ直ぐ燿を狙う。猟兵二人組のうち、機動力の低いほうを狙ったのだろう。
 ノノが気遣わしげな表情を送ったが、燿は安心させるように頷いた。
 やがてミサイルファイターの影が彼の影と重なる。金属の触れ合う甲高い音が響いた。青年の苦悶の声も、敵の装甲がひしゃげる音もない。
 燿は紙一重で体を捻り、炎の剣で攻撃を逸らしてやり過ごしていた。
 ミサイルファイターは攻撃失敗を悟り急旋回する。今度こそ猟兵の体を衝角で貫くためだ。
 だが、再加速した敵機体の前方に青年の体はなかった。搭載されたレーダーがすぐさま敵影を探す。
 果たして燿は、加速したミサイルファイターの後方にいた。擦れ違いざまに放ったフック付きワイヤーを機体に括り付けていたのだ。
「びっくりしたか?」
 ミサイルファイターのAIが猟兵への対処を導き出すが、それよりワイヤーを巻き取った燿のほうが早い。
 伸びた炎の剣がしなり、機体に巻きつく。逃げ場のない高熱に絡めとられた敵はその機能をみるみるうちに狂わされ焼かれて、やがて爆発するのだ。
 燿は寸前に機体を蹴って爆発を逃れながらその勢いを利用して、防衛部隊のいる対艦兵装群のほうへと切りこむ。
 僚機の喪失。そして防衛目標への接近。この二つが重なれば青年の脅威度は一気に跳ね上がる。彼の迎撃に動員されるミサイルファイターの数は多い。第一陣に2機、二陣に2機。合計4機のファイターが燿へと殺到した。
「おおっと、繁盛してきたなこれ!」
 猟兵は炎の剣を片手で大きく振りかぶる。全力で振り抜けば大きくしなるそれは彼の前で弧を描き、レーザービームを弾く。そして空いた手ですかさずワイヤーを飛ばした。
 ワイヤーがファイターへ巻きつくのを確認、急いで巻き取り、敵の上部へと取り付く。密着さえしてしまえばファイターの武装のほぼすべてが無力化されるはずだ。
「悪いね、俺の新しい足場になってもらうぜ」
 さあ、これで無力化した1機と残り3機。せいぜいうまく立ち回って精一杯囮をしてみようか。

 少女の赤い瞳がちらりと戦況を一瞥する。
 断続する破壊音、同行した猟兵の青年は慣れない無重力環境でもうまく立ち回っているらしい。防衛部隊が続々と彼の元へ集まっているのが見えた。
 が、こちらも完全に放置されているわけではない。現に目の前に1機、対艦衝角を突きつけながら高速で飛来するものがいる。
 不的に笑うノノのスーツ、魔力とナノマシンが各種兵装を循環した。
 ボクにはたったの1機?
 随分と舐められたものだ。あるいは燿の努力を称える場面かもしれないが、理屈じゃない。彼女は奮起する。VMリフターが出力を増し、一気に加速した。
 速度を維持しながら彼女は片手に攻撃ユニットを構える。名はVMスライサーという、起動すればビームの刃を形成するブーメラン状のものだ。体を捻り、細い腕から全力で投射すればその刃はたちまち対艦衝角へ真正面から斬り込む。光刃がミサイルファイターにめり込むにつれオレンジ色に赤熱した断面を晒した。
 ついにスライサーが通り抜ければ、後に残るのは真っ二つに溶断されたファイターだけである。その中心を少女は加速を維持して通り抜けた。速く、速く、流星の如く。
「さて」
 やがて旗艦インぺリウムの表面、対艦兵器群まで到着したノノは全身に纏う鎧の砲台に魔力を流し込む。並行して両手で構えるのは複合魔導デバイス、VMAXランチャー。限界まで充填された魔力が燐光を生んだ。
「大掃除だ!」
 ノノの細い指が引き金をひく。合図の元、全身とランチャーの銃口から強大なエネルギーが迸った。
 ミサイルやビームの発射装置の装甲に穴があくまでコンマ1秒。内部の機器が高熱に破壊されるのは一瞬、やがて搭載した燃料と爆薬が熱を受け炸裂するのはほぼ同時。引火と誘爆に次ぐ誘爆でノノが射程内に捉えた兵器群は完膚なきまでに破壊されていく。
「よし!」
 一斉射撃の成果に満足したがのんびりする時間はない。爆風がたちまち彼女のいた場所を飲み込む。だがもうそこにノノはいない。
 リフターを介して大きく跳躍したノノは、爆風を浮遊装甲で受け、それを新たな推力とした。
 目標は、いまだ防衛部隊を引き付けてくれていた燿だ。
「ヨウくん!」
 自らを呼びかける声と、旗艦インぺリウムの兵装の爆発に作戦の成功を察した燿は手を伸ばした。目標を破壊できれば、長居は無用である。
「ノノ!」
 追加でさらに加速した鎧装騎兵のノノもまた手を伸ばす。同行者の彼に、推進力を出せる装備はないのだから。
 やがて二人の影が重なり手と手が握りしめられれば、すべての敵を置き去りにして離脱する。
 勢いよく遠ざかってゆく二人の後ろで、対艦兵器群の誘爆はしばらく続いていた。

 こうして、旗艦インぺリウム対艦兵器群を巡る猟兵と銀河帝国の攻防は、猟兵側の勝利に終わるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月25日


挿絵イラスト